卒業すればただのフリーター!? 伊勢谷友介も村上隆もビックリ!! 東京藝大&五美大の虚像と実態

――「サイゾーpremium」内で、今もっともバズっている記事をお届け!!  発売中のサイゾー9月号はサイゾー初となる「現代アート」大特集。現代アートをさまざまな角度から裏読み深読みしています。その中でも「サイゾーpremium」で今最もバズっている記事をご紹介します。 ■今回のピックアップ記事 『卒業すればただのフリーター!? 伊勢谷友介も村上隆もビックリ!! 東京藝大&五美大の虚像と実態』(2013年9月号特集『現代アートが今ヤバい!』より) ──「東京藝術大学がトップ」くらいの知識はありながらも、一般大学を卒業した者にとっては未知の世界である美術・芸術系大学。それらの大学や学生の特徴、そしてそのヒエラルキー構造まで、アーティストの卵たちが奏でるキャンパスライフの実態に迫る!
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江戸末期に横浜に生まれ、東京帝国大学文学部を卒業、1889年(明治22)年に東京美術学校を開設した岡倉天心先生。
 芸術を志す者がその第一歩を踏み出す場所として一般に想起されるのは、美術大学・芸術大学であろう。日本におけるその”最高学府”が、村上隆や会田誠から伊勢谷友介までを輩出した東京藝術大学(以下、東京藝大)であることも、多くの読者ならご存じかもしれない。しかし、それらの大学の入試がどのようなもので、入学後に学生たちは何を学ぶことができ、そして卒業後にはどんな進路が待ち構えているのか等々については、門外漢には未知の世界ではなかろうか。そこで本稿では、一般大学とはまったく異なる美術・芸術系大学(以下、美大)の実態について考察してみたい。  現在、日本には27の美大が存在する。うち、国公立は8つ。北は秋田、南は沖縄にまで点在し、最も新しいものは2012年に創設された秋田公立美術大学である。元来、国公立美大同士の結びつきは非常に強い。 「東京藝大をはじめとした国公立美大5校(東京藝大、京都市立芸術大学、愛知県立芸術大学、金沢美術工芸大学、沖縄県立芸術大学)では『五藝祭』という催しが3年に一度行われています。共同で美術展やパフォーマンスイベントが開催されており、その歴史は40年をゆうに超えています」(東京藝大卒業生) 「五藝祭」運営の中心となるのは、美大の最高学府、東京藝大。官立の美術学校として前身の東京美術学校が創立されたのは1887年で、もちろん美大の中で一番古い歴史を持つ。岡倉天心、フェノロサという日本の近代美術史上に巨大な足跡を残す2人が開設に携わり、卒業生も、戦前から日本の美術史を支えてきた華々しい名が並ぶ。 「文化勲章受章者数も、他の美大を押さえたぶっちぎりの1位です。日展や二科展など日本の画壇を代表するコンテストにも、多くの入賞者を輩出しています」(東京藝大卒業生)  東京藝大は大きく美術学部と音楽学部に分かれ、東京・上野にある本部キャンパスは、道を挟んで仲良く2つの学部が隣り合う。本稿で主に取り扱う美術学部には現在、絵画科、彫刻科、工芸科、デザイン科など7つの学科が用意されており、最難関とされる絵画科日本画専攻には、25名の入学定員に514名が受験(平成24年度入試)、倍率20倍を超える非常に狭き門となっている。同時に東京藝大は、国内最難関の音楽大学としても君臨しており、滝廉太郎や山田耕筰など偉人レベルの音楽家から、葉加瀬太郎やフジコ・ヘミングなど一般にも人気の音楽家などを数多く輩出しているのだ。  そんな東京藝大を含め、東京には「五美大」と呼ばれる名門美大群が存在する。東京藝大のほか、多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京造形大学、女子美術大学がこれに当たる(それぞれ通称:多摩美、ムサ美、造形、女子美)。 「イメージとしては、東京六大学を想起してもらうとわかりやすいでしょう。東京藝術大学はもちろん東京大学、さまざまな特色がありながらも学力では東大にかなわない早慶やMARCHクラスが、他の私立美大。一般大学でいうところの偏差値が美大では絵画的な技術に当たり、受験でチェックされます。五美大に通うことはそれだけで大きなステータス。いずれも受験倍率は高く、入学するには一定以上の実力が求められますね」(美術雑誌編集者)
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東京藝大の学校案内や入試要項など。毎年9月に開催される同校の学園祭「藝祭」のパンフレットには、卒業生の伊勢谷友介くんの姿も。カッコいいす!
 人気の五美大だが、受験倍率は東京藝術大学が群を抜く。学科による差はあるが、私立美大は2~3倍程度なのに対し、東京藝大は10倍強。その理由を、東京藝大卒業生のある現代美術家は次のように分析する。 「定員が非常に少なく、希少性が高いということがまず挙げられるでしょう。東京藝大の美術学部は、全学科集めても一学年240人。それに対して私立美大の定員は1000人規模。しかし学費面においては、東京藝大の年間授業料が50万円程度なのに対し、他の私立美大は軒並み200万円を超えます。『東京藝大でなければ進学させることができない』と、経済的な理由から子どもをさとす親も多いですね」  狭き門であることが希少性を生み、また一般大よりも高額である美大の授業料の中で格安ともいえる学費が、東京藝大の人気を後押ししているというわけだ。  では、美大の入試を突破するためには、どのような能力が求められるのか? そこでキーとなるのが、「美術予備校」の存在だ。 「美大に入るためには、美術予備校で学ぶことが大前提」と語るのは、私立美大卒のある予備校講師。  美術予備校は全国に点在しており、東京都内のすいどーばた美術学院、新宿美術学院、御茶の水美術学院(それぞれ通称:どばた、新美、お茶美)が三大予備校といわれている。それぞれに得意な学科があり、どばたは彫刻科、新美は油画科、お茶美はデザイン科に多くの生徒を送り込んでいる。さらに代々木ゼミナールや河合塾など一般予備校も80年代から本格的に参入、既存校としのぎを削っている。近年は少子化の影響から美大受験者は減少傾向にあり、し烈な生徒の奪い合いが発生、東京藝大に何名合格させたかという実績は、受験生やその保護者に対して強いアピールポイントとなっているのだ。では、美術予備校では具体的に何を学ぶのか? 前出の予備校講師が続ける。 「学科によって異なるので一概にはいえませんが、石膏デッサンには最も多くの時間が割かれます。数十名の学生がヴィーナス像などの石膏像をキャンバスで取り囲み、一斉に鉛筆デッサンを行い、数時間で一枚の絵を仕上げる。ヌードデッサンや花瓶や果物などの静物デッサンも含め、そうした課題を年間に100枚以上提出することを通して、基礎的な画力を磨いていきます。このデッサン力が美大受験突破のために必要不可欠であるため、一般高校の美術の授業などでは、とても対応できないわけです」  しかしこのデッサン力訓練が、本来のクリエイティビティを損なわせるのではないかと問題視する向きもある。 「美術予備校がデッサンを中心とした技術を重点的に教えることは、30年以上も前から問題視されてきました。もちろんそうしたカリキュラムが組まれるのは美大受験の科目がデッサン画など画力を重視してきたためですが、現代美術においては絵がうまい・へたの表面的な技術力だけが重要視されるわけではない。写真や映像など直感的なメディアによる作品も台頭しており、より自由な表現が必要とされているためです。そのため近年、美大では受験科目にデッサンを必要としない学科も設立され、美術予備校にもその影響は及び始めています」(前出・美術雑誌編集者)  私立美大では、入試にデッサンを必要とせず小論文やコンテンポラリーダンスなどの自由な自己表現によって選考する学科が90年代より相次いで設立されてきた。東京藝大も、基礎的な画力は必要とされない「先端芸術表現科」が99年に開設。現代美術に特化し、コンピューターを使った美術作品の制作など、より多角的な教育が行われ、センター試験など一般的な学力も重視。早慶レベルの学力が必要とされる学科となっている。そうした新しい学科への受験に対応するため、美術予備校も新たな講師陣を招き入れるなど変革を余儀なくされているという。  しかし、油画科や日本画科など長い歴史を持つ学科では、いまだに相当なデッサン力が必要とされるのも事実。そして、そうした美術予備校での日々が「学生たちに美大ヒエラルキーを内面化させていく」と、現役私立美大生は語る。 「予備校講師の半数以上が、現役の美大生によるアルバイト。浪人生にとっては憧れの先輩です。なかでもダントツの人気を集めるのは東京藝大生で、彼らは一般に浪人経験が長く、教えるのもうまい。そうした環境が『とにかく行くなら東京藝大』という意識を生み、美大に入るためなら何浪でもするという予備校生を再生産していくわけです。あの村上隆も東京藝大の学生時代は予備校講師をしていたのは有名な話ですし、かわいい女子予備校生がパッとしない東京藝大の講師と付き合っているという光景もよく見かけますよ(笑)」 ■東京藝大に憧れて学歴ロンダリング
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美大のキャンパス内では、こんな風景もよく珍しくない。なんてアートな雰囲気!
 さて、そうした美術予備校での日々を乗り越え、見事合格した者だけが迎える華のキャンパスライフ。現代美術史や色彩学など美大特有の必修授業も存在するが、一般大学同様、心理学や経済史などの一般教養も多い。ただし、そうした「勉強」の比重はかなり低く、美術作品の課題提出が何よりも優先されるという。 「といっても、予備校時代に年間100枚程度の課題を提出させられていたのに対し、大学に入ってからは前期と後期合わせて2作程度作品を提出すればいいだけ。出席もいいかげんだし、一般大と違って語学も必修でない場合が多い。必然的に、怠惰な生活を送る学生は多いですね」(東京藝大生)  美大生といえば、学生時代から積極的にクリエイティブな活動を行っている者が多いようなイメージも持たれがちだが、実際には「美大合格がゴール」とばかりに燃え尽きてしまう学生も少なくないのだ。では美大生の多くは、結局何も学ばないまま卒業してしまうのだろうか? 「いえいえ、そこまで甘くはない。美大で最も重要なイベントは”講評会”。年に2回程度、学期末などに行われ、学科の生徒、教授も参加する場に絵画作品や映像作品を提出し、発表する会のことです。そこでの評価が大学院への進学や教授からの就職先の推薦などに関係するのはもちろん、付与される単位数も多いので卒業そのものにとっても大きな意味を持ちます。普段の授業にはあまり顔を見せない学生も、この日は全員参加が必須。数カ月かけて制作した渾身の作品を、自らプレゼンしながらアピールしていくのです」(前出・東京藝大卒業生)  日々作品を制作するために、美大ではたいていひとりにつき8畳程度のアトリエが学内に用意される。先に挙げた五美大では、最新のソフトがインストールされたパソコンまで用意されていることも珍しくない。しかし、それでもなお東京藝大への想いがつのる私立美大の現役学生は多いという。 「たとえ五美大に入れたとしても、東京藝大へのコンプレックスは程度の差こそあれみな持ち続けています。僕も最初は武蔵野美大に入ったんですが、結局2年間仮面浪人をしていました」(同)  なかでも、受験時期が他の美大に比べ最も早く、試験内容も東京藝大に類似している東京造形大の学生の中には、東京藝大への再入学を狙い、大学に通いながらなお美術予備校に通い続ける者さえ少なくないという。また、最終学歴を「東京藝術大学」とするため、大学院から東京藝大に進学する者も。いわば”学歴ロンダリング”である。 つづきはコチラから! 「サイゾーpremium」では他にもスタジオジブリと宮崎駿に迫る記事が満載です!】語りたがりからメンヘラ巨乳まで──東京五美大の学生はこんなだ!【会田誠×辛酸なめこ】現代アートは高尚なものじゃない!サイゾー的アーティスト・ガイド! この美術家がヤバい!タブーに挑む最尖端芸術
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スタジオジブリはもう死に体!? 関係者も嘆く国民的アニメスタジオの危機

――「サイゾーpremium」から、今ホットな話題に関する記事をお届け!!  1日、日本を代表するアニメ映画の巨匠宮崎駿監督(72)の引退が発表され、その波紋は日本メディアだけでなく海外メディアにも伝わっています。『風立ちぬ』が大ヒット中のなか、その引退を惜しむ声は後を絶ちません。「サイゾーpremium」では過去に幾度も宮崎駿作品やスタジオジブリのアニメ制作に関する記事をあげてきました。今回はその中から、『コクリコ坂から』(11)公開中に持ち上がったスタジオジブリに関する懸念を振り返ってみます。 ■今回のピックアップ記事 『スタジオジブリはもう死に体!? 関係者も嘆く国民的アニメスタジオの危機』(2011年8月号特集『ブームの闇、暴きます。』より) ──宮崎駿監督の実子である宮崎吾朗氏が監督を務め、物議をかもした『ゲド戦記』から早5年。吾朗監督の新作『コクリコ坂から』が公開された。駿パパとのタッグで作り上げた本作は、またも酷評の嵐になるのか? それともスタジオジブリ新時代の到来を告げる嚆矢となるのだろうか!?
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原作の『コクリコ坂から』
 日本アニメ界が世界に誇るアニメーション監督・宮崎駿。その愛息・宮崎吾朗が初監督作品『ゲド戦記』を発表した2006年からちょうど5年。待望の第2回監督作品『コクリコ坂から』が、今月16日より全国東宝系にて封切られた。  いわゆるアニメファン向けの"アニメ"とは一線を画し、国民的アニメ映画の供給源として確固たる地位を築き上げているスタジオジブリ(以下、ジブリ)。吾朗氏が監督、脚本(丹羽圭子と共作)を一手に手掛け、鈴木敏夫プロデューサーが提案した「主人公・アレンによる父殺し」というセンセーショナルなアニメオリジナルのエピソードに話題が集中した問題作『ゲド戦記』に続く新作ということで、本記事が世に出ている頃にはすでに劇場に足を運んだ読者もいるだろう。  話題作を継続的に発表し続けるジブリだが、かねてよりいくつかの問題点が指摘されている。  85年より宮崎駿と盟友・高畑勲を中心として、アニメ制作を行ってきたジブリが、これまでに発表した長編アニメ映画は17作。そのうち、2人が監督した作品は12作に上る。  高畑勲の作風は、『火垂るの墓』(88年)『おもひでぽろぽろ』(91年)に代表されるような、重く地味なものが多く、かと思えばファミリー向けに制作された『ホーホケキョ となりの山田くん』(99年)は記録的な客の不入りとなり、公開翌年の00年度2月期決算では21億円の特別損失を計上するという壊滅的な結果を生んでしまった。  一方、宮崎駿監督は順調にヒット作を世に放ち続け、01年の『千と千尋の神隠し』で約304億円という空前の興行収入を記録したものの、以降『ハウルの動く城』(04年)では約196億円、『崖の上のポニョ』(08年)にいたっては約155億円と、その数字は右肩下がりだ。  もちろんほかのアニメ映画と比べれば、大ヒットといえるものだが、これらの成功によって、将来的にもジブリの順風満帆な活動が約束されているわけではない。 「ジブリは、アニメスタジオには珍しくスタッフのほぼ全員を社員として雇用していますが、これは宮崎駿監督の要求するものを作れるクリエーターを確保しておき、作品のクオリティを保つため。その上、宮崎駿監督の作品は製作期間が約2年と、普通のアニメ映画と比べて圧倒的に長く、『ゲド戦記』や『借りぐらしのアリエッティ』といったほかのジブリ作品と比べても大体倍の期間です。当然、製作費も膨大なものになります。『千と千尋の神隠し』以降、すべての作品がヒットしているので、赤字にこそなってはいませんが、今までの作品で大儲けして資金をプールしているということは考えにくい。作品が大コケした場合、ジブリの存続も危ぶまれるような大ばくちを毎回打っているといった状態なんです」(元ジブリ関係者)  さらに、宮崎駿は今年で70歳を迎えるなど、中心スタッフの高齢化に伴い、本誌でもたびたび取り上げてきた宮崎駿の後継者問題が、近年のジブリには常につきまとっている。  こうした現状を打開すべく、ジブリは02年に『猫の恩返し』(監督・森田宏幸)、冒頭でも言及した『ゲド戦記』(監督・宮崎吾朗)、10年には、若い人材の登用と超大作の制作を基本路線とした「スタジオジブリ経営5カ年計画」のもと、『借りぐらしのアリエッティ』(監督・米林宏昌)を制作。30代、40代の若手監督を起用した作品をコンスタントに発表し、後継者育成には意欲的な姿勢を見せている。興行収入を見ると、『猫の恩返し』は約64.6億円、『ゲド戦記』は約76.5億円、『借りぐらしのアリエッティ』は約92.5億円と、いずれも申し分のない結果を残している。しかし、いまだに100億円単位の興行収入を叩きだし続ける宮崎駿作品と見比べると、どうしても見劣りしてしまう。  一方で、『時をかける少女』(06年)『サマーウォーズ』(09年)で、一躍日本を代表するアニメ監督として名をはせた細田守監督の才能をいち早く見いだし、02年に『ハウルの動く城』監督として抜擢。しかし、制作に関するトラブルから、その才能を生かすこともなく放逐している。また、『マイマイ新子と千年の魔法』の監督を務め、国内外から高い評価を受けた片渕須直監督は、『魔女の宅急便』(89年)の監督に起用されながらも、宮崎駿の現場復帰によって、監督補に退くこととなった。このように、ジブリでは才気あふれる人材を擁しながら、その才能を十二分に発揮できる場を提供しているとは言い難いのが現状だ。  かつて鈴木敏夫プロデューサーは「つくるべきものがなくなったら、会社を畳むだけ」(本誌06年11月号)と語っていたが、宮崎駿一強時代の終焉と同時にジブリは終わりを迎えてしまうのだろうか。  これら一連のトピックに対しての見解を伺おうと、ジブリの名物プロデューサー鈴木敏夫氏に取材をオファーしたところ、スケジュールの都合が合わず断念。実に残念である。 ■ジブリよりファン多し!? 隆盛するアニメスタジオ  そんな世代交代の必要性が問われているのは、ジブリだけではない。  現在、100以上存在するともいわれるアニメ制作スタジオの勢力図にも、近年変化が訪れつつある。 『けいおん!』や『涼宮ハルヒの憂鬱』をはじめとする大ヒット作を多数発表する「京都アニメーション」や、今年、アニメ誌のみならず一般メディアにも数多く取り上げられた話題作『魔法少女まどか☆マギカ』を制作した「シャフト」など、ゼロ年代のアニメブームを経て、アニメファンから高い支持を集めるアニメスタジオが新たに台頭し始めている。  スタジオジブリの先行きが不透明な今、これら気鋭のスタジオが多くの人々に愛される作品を生み出し、国民的アニメスタジオとしてジブリの地位に取って代わることは今後ありうるのだろうか。  はたまた宮崎吾朗が見事アニメーション監督として大成し、ジブリ新時代を到来させるのだろうか。  サブカルチャーをはじめとする若者文化に精通する社会学者・宮台真司氏による『コクリコ坂から』評や、アニメ業界関係者のリアルな本音とともに、次世代のアニメ業界を担うスタジオ像について考えてみたい。 (構成/有田 俊) ■描かれるのは親への親愛!? スタジオジブリ『コクリコ坂から』とは? 監督:宮崎吾朗 企画・脚本:宮崎駿 声の出演:長澤まさみ 岡田准一ほか 脚本:丹羽圭子 原作:高橋千鶴、佐山哲郎(角川書店刊)
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(C)2011 高橋千鶴・佐山哲郎・ GNDHDDT
 宮崎吾朗監督による、5年ぶり、2作目の監督作品となる『コクリコ坂から』。原作は1980年に「なかよし」(講談社)にて連載されていた少女マンガ。舞台は、東京オリンピックの前年である1963年、横浜のとある高校では、古いけれど歴史と思い出の詰まった文化部室の建物、通称・カルチェラタンを取り壊すべきか、保存するべきかという紛争が起こっていた。カルチェラタン保存運動の中で、同校に通う少女・松崎海は風間俊という少年と出会い、運動の手助けをすることとなる。俊は建物を保存すべきだと生徒たちに訴え、海は建物の良さを知ってもらうために大掃除を開始。運動を通して徐々に惹かれ合っていく2人だったが、そんな2人の前に思わぬ障害が立ちふさがる。なんと2人は実の兄妹かもしれなかった......。途方に暮れる海と俊は、それでも現実に立ち向かう覚悟を決め、戦争と戦後の混乱期の中での親たちの生き方に思いをはせる。果たして2人がたどり着く未来とは──高校生の2人を中心に、親子二世代にわたる青春を描いている。 「サイゾーpremium」では他にもスタジオジブリと宮崎駿に迫る記事が満載です!】『風立ちぬ』──宮崎駿の業と本質が凝縮された本作を受け、次の世代に課せられた使命日本人は、「宮崎駿」を、まったくワカッテナイ!? 賛否評論な宮崎作品の正当性を批評家たちが問う花盛りのアニメスタジオ番付 スタジオジブリに代わるアニメスタジオはどこだ?
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大晦日は村田&井上!? 大人&先物買いしたフジテレビの胸算用

――「サイゾーpremium」から、今ホットな話題に関する記事をお届け!!  ボクシング・村田諒太選手が、8月25日、東京・有明コロシアムで行なわれたプロデビュー戦で見事にTKO勝利を挙げました。次戦も今年中に行われる予定だそうで、村田フィーバーが起こる予感も。しかし、その裏にはやはりテレビ局と電通の思惑があったようで…。 ■今回のピックアップ記事 『大晦日は村田&井上!? 大人&先物買いしたフジテレビの胸算用』(2013年6月号NEWS SOURCEより) ■フジテレビが見越す大晦日の生中継 長らくボクシング中継では影の薄かったフジテレビが、高校7冠の実績を持つ井上尚弥のプロ第3戦で、21年ぶりにゴールデンタイムで生中継を放映した。大枚をはたいて獲得した金メダリスト・村田諒太と新怪物・井上尚弥の2枚看板を武器に、TBS、テレビ東京に続いてボクシング中継で大晦日に参戦するともっぱらの噂だが――。
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『101%のプライド』(幻冬舎)
 今夏にプロデビューが予定されている、ロンドン五輪金メダリストの村田諒太。既報の通り、アマチュアボクシング界の至宝であった村田をプロに引っ張り出したのは、フジテレビ&電通の強力タッグによる力業だった。数千万円とも噂される破格の契約金に加え、東洋大学の職を辞す村田にフジのグループ会社での正社員待遇を保証してまで本人を口説き落としたというから、まさに資本力にモノを言わせた大人買いである。  そんな村田の所属先は過去に輪島功一ら3人の世界チャンピオンを輩出した三迫ジム(東京都練馬区)。同時に、業界最大手である帝拳ジムとの共同プロモートになることも発表された。これは一般的には知られていないレアケースだが、まずはその経緯を解説しよう。  そもそも長年に渡ってフジのボクシング番組に試合を提供してきたのは三迫ジムだ。フジが絡むことから、村田が三迫ジム所属になるのは自然な流れであるが、本来、日本テレビ系である帝拳ジムがサポートに絡むのは極めて異例。これは村田自身がプロ入りの条件として、帝拳ジム入りをかたくなに主張したためだと業界内で囁かれている。 「古くは大場政夫から西岡利晃まで、多数のチャンピオンを輩出してきた帝拳は世界に広いネットワークを持ち、国内随一のプロモート能力を備えたジム。特に村田の主戦場となる重量級のマーケットはアメリカ中心で、国内で世界タイトルマッチを組むのは容易ではありません。本気でプロの頂点を目指すなら、帝拳以外は考えられないという村田の主張は正しい」(某ジム会長)  帝拳ジムはプロモート面だけでなく、レベルの高い海外での練習環境を提供するなど、村田育成プロジェクトの中枢を実質的に担うことになる。業界内ではこれを「長年培われてきたクラブ制度【1】を崩壊させかねないウルトラCだ」(別のジム関係者)と揶揄する向きもあるが、国民的な知名度を誇るトップアスリートの参画は、ボクシング界を活性化させる話題に疑いはない。  こうした中、村田がプロ転向を発表した4日後の4月16日、当のフジが21年ぶり【2】にゴールデンタイムでボクシングの生中継を 敢行 したことも話題になっている。  中継されたのは、高校7冠のアマチュア実績を引っさげてプロ入りした、井上尚弥のプロ第3戦。ノンタイトル戦でありながら生中継がついたのは、辰吉丈一郎や畑山隆則を凌駕する素材と期待される井上であればこそ。村田のプロテスト中継(これまた異例のことだが)とのセット放送で、2時間の枠を用意する力の入れようだった。しかし、井上の過去2試合は、フジではなくTBSが中継してきた。局をくら替えしてのこのVIP待遇の裏には、フジの並々ならぬ野心が見え隠れする。 「井上が所属する大橋ジムでは、井上が価値のある商品に育つことを見越して、TBSとは1試合ごとの単発契約にとどめていたとか。そこで井上獲得に名乗りを上げたフジが破格の契約金を提示。TBSも負けじと提示額を吊り上げ、『大橋ジムとしては理想的な競り合いが繰り広げられた』ともっぱらです」(スポーツ紙記者)  村田獲得が大人買いなら、こちらはいわば先物買い。そもそもテレビ業界にとってボクシング中継は、ここぞというタイミングで高視聴率を叩き出す優良コンテンツのイメージが根強い。近年の亀田興毅の20%超えはいうに及ばず、1994年の薬師寺保栄vs辰吉丈一郎の一戦(関東地区平均で39・4%、関西で43・8%)などはもはや伝説的だ。  とりわけ昨年の大晦日には、井岡一翔を擁するTBSと内山高志を擁するテレビ東京がボクシング中継で好成績を挙げたのに対し、裏番組で『料理の鉄人』あらため『アイアンシェフ』で煮え湯を飲まされたフジである。村田と井上が、近い将来の大晦日商戦への切り札として期待されるのはもはや必然だろう。  だがしかし、井上第3戦はゴールデン枠にもかかわらず、平均視聴率6・9%という結果に甘んじた。 「番組制作を担当したプロデューサーK氏は、ボクシング界とお笑い界に太いパイプを持つことで知られる人物。CSのボクシング番組でも、昨年からMCに千原ジュニアを起用するなどファン層拡大のテコ入れに努めてきました。今回、村田&井上のために用意された2時間番組でも千原のほか、パネラーに9人の元世界チャンピオンを招くなど、少しでも視聴者の興味を引こうと努力していましたが、視聴者の声を拾ってみると、今ひとつMCと元王者たちの対話がかみ合わず、全体的に間延びした印象が指摘されています」(同)  いささか不安が残るフジの思惑だが、一方で、確かな収穫もあった。プロテストで元日本王者とのスパーリングに臨んだ村田が、随所にプロに向けたモデルチェンジを感じさせる出色の出来と好評なのだ。 「アマ時代はブロック主体で地味なスタイルが目についたが、フリッカージャブを振ったり、世界ではやりのL字ガードを見せたり、プロで頂点を獲るための試行錯誤が感じられた。それまで『あのスタイルでは、プロでは厳しい』と見ていた関係者が翌日、『順当に育てばイケるかも』と手のひらを返していたのが印象的です(笑)」(某ジム・トレーナー)  こうなると、井上で思い通りの数字が取れなかったフジにとって、村田への期待は俄然高まるはず。「今年は無理でも、来年の大晦日なら世界挑戦もあり得るのでは!?」(同)との声も上がっている。  そして、村田特需に期待を寄せるのは、テレビ局だけではない。これまで日が当たりにくかった国内の重量級ボクサー【3】が、こぞって村田との対戦をアピールしているのだ。なにしろ村田の対戦相手に選ばれれば、生中継がつくのは確実で、一気に全国区の知名度が得られる。まして、あわや 村田食い を果たそうものなら、即座に世界戦線に踊り出るのも夢ではない。もっとも、テレビならではの弊害も囁かれている。 「局の都合で、弱い相手ばかりを選んで勝ち星を積み重ね、いざ世界へ挑む段階でボロを出すパターンを我々は何度も目撃してきました。これでは拙速なキャリアづくりを強いられ、せっかくの素材を潰してしまうことになる。村田クラスの注目度でそれをされるのは、競技全体のイメージダウンにもつながります」(前出・スポーツ紙記者)  テレビ局にとってボクシングは、あくまでビジネス。それゆえの論理が、不世出の逸材に重い足枷とならなければ良いが……。 (友清哲) 【1】クラブ制度 日本では伝統的に、プロボクサーは所属ジムが管理する制度が主流。これに対し、海外では選手がトレーナーやマネージャーを選んで契約する手法が採られている。後者のほうが人気選手同士のビッグマッチが組みやすいメリットがあるといわれている。 【2】21年ぶり フジテレビがボクシングの試合を生中継するのは、92年11月のWBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ、ヘナロ・エルナンデス vs 渡辺雄二戦以来のこと。渡辺は10戦10勝(10KO)のパーフェクトレコードを持つイケメンボクサーで、同局の大きな期待のもとに王者エルナンデスに挑んだが、6RTKO負けで戴冠は叶わなかった。 【3】重量級ボクサー 長らく日本重量級の第一人者として活躍してきた石田順裕もそのひとり。石田はこの3月に引退を表明したばかりだが、先だって催されたトークショーで村田との対戦希望を明言。村田の持つ抜群の知名度は、去りゆく選手の後ろ髪を引くほど魅力的なのだ。 「サイゾーpremium」では他にもスポーツの裏側に迫る記事が満載です!】金正日総書記死後も変化なし!? チョン・テセが語る朝鮮とサッカー中田英寿の祖父は朝鮮総督府のエリートだった!? 覗き見厳禁! 狂気のスポーツタブー本一番ダークなスポーツは野球!? 切っても切れないスポーツと闇社会
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宇多田ヒカルが”ブーム”を終わらせた!? ディーヴァの進化と退化の20年史

――「サイゾーpremium」から、今ホットな話題に関する記事をお届け!!  巷では22日に転落死した歌手の藤圭子さん(62)の話題でもちきりとなっていますが、娘であり同じく歌手の宇多田ヒカルさん(30)の動向にも注目が集まっています。  2010年8月に「『人間活動』に専念しようと思います」と宣言し、活動を休止。しかし、休止中にも彼女の楽曲は再評価され続け、歌手としての存在感が薄れることはありません。今回はサイゾー2013年8月号に掲載され反響を呼んだ『ディーヴァの進化と退化の20年史』をお届け。宇多田ヒカルという希代のアーティストが母親から譲り受けた才能についても言及しています。 ■今回のピックアップ記事 『宇多田ヒカルが"ブーム"を終わらせた!? ディーヴァの進化と退化の20年史』(2013年8月号特集「絶体絶命 音楽業界」より) ――日本の女性歌手に対して"ディーヴァ"という言葉が使われるようになったのが、90年代半ばあたり。現在までにそのワードは一般的に浸透したが、歌姫のJ-POP界における立ち位置や社会に対する役割は、どのように変化してきたのか? 鹿野淳氏、水無田気流氏、磯部涼氏の三者が分析!
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(絵/河合 寛)
■アメリカの流行をパクる!? 黒人音楽系 90年代後半、同時代のUSヒップホップ/R&Bを導入したトラックの上でソウルフルに歌い上げたUA、CHARA、MISIA、birdなど。宇多田ヒカルもデビュー時はアリーヤの日本版のようだったが、その後は特殊路線を進んで迷走?

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(絵/河合 寛)
■輝かしい過去に未練はナシ! 脱90年代系 2000年代以降に新たな支持層を獲得した、90年代デビュー組。小室ファミリーから抜け出した安室奈美恵や、JUDY AND MARYという偉大な過去を払拭したYUKIなどは、今も人気が衰えない。本誌がしばしばネタにしてきた椎名林檎も、ここに入るか?

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(絵/河合 寛)
■会いたすぎて震える歌詞! ギャル演歌系 2000年前後にギャルの教祖となった浜崎あゆみと、西野カナや加藤ミリヤといったその劣化版。歌詞はベタな感情しか綴られていないのが特徴である。西野カナのパンチライン「会いたくて会いたくて震える」は一時期、ネット上で笑いのネタにされました。

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(絵/河合 寛)
■YUIフォロワーが大繁殖! SSW系 SSWはシンガーソングライターと読む。メンヘラに勇気を与える絢香や、合唱コンクールみたいなアンジェラ・アキなど、さまざまなタイプが存在する。フォークギター片手に「CHE.R.RY」を大ヒットさせたYUIは、miwaをはじめとするフォロワーを量産。

 UAの『11』(96年)が90万枚、CHARAの『Junior Sweet』(97年)が100万枚、MISIAの『Mother Father Brother Sister』(98年)が300万枚売れたあの頃。同時代のUSヒップホップ/R&Bを取り込んだトラックの上で歌う彼女らは、"ディーヴァ(歌姫)"と呼ばれはじめた。  90年代半ばから起きたそのディーヴァ・ブームは、宇多田ヒカルの登場で頂点に。彼女の『First Love』(99年)は国内で860万枚以上売れた。が、今世紀に入りブームは沈静化し、ディーヴァという言葉自体が拡大解釈され、文化圏の異なる種々の女性歌手がJ-POP界で併存。その一類型を2000年前後に確立したのが浜崎あゆみだ。彼女の歌詞はギャルに訴求したが、現在媒体露出の多い加藤ミリヤや西野カナなどは、同じくギャル層に支持されている。  一方、90年代のポップ・アイコンになりながら00年代以降に新たなファンを得たのが、JUDY AND MARY解散後のYUKIや、小室ファミリーを脱した安室奈美恵。2人の人気は今も上昇しているようにさえ見える。  近年ではJUJUやAIといった歌手を音楽番組で目にするが、あのディーヴァ・ブームから約20年、歌姫の音楽性や歌詞や市場はどう変容したのか? 「ROCKIN’ON JAPAN」(ロッキング・オン)元編集長で「MUSICA」(FACT)創刊者の鹿野淳氏、詩人/社会学者でありながらJ-POPの歌詞分析もしてきた水無田気流氏、日本のアンダーグラウンドなヒップホップやクラブ・ミュージックに詳しい磯部涼氏の三者に考察してもらおう。 ■時代とズレていった宇多田ヒカルの特殊性 鹿野(以下、鹿) ディーヴァというと僕はセクシーでアーティスティックなイメージですが、CHARAは91年のデビュー時、その意味のディーヴァ感はなかった。エピックソニーは尖った女の子としてプロモーションしていましたが、当時の奇抜な格好は今のきゃりーぱみゅぱみゅに近い。95年のデビュー時からディーヴァ感があったのがUA。キャバレーのシンガー出身というストーリーだったり、デビュー・シングルが藤原ヒロシのプロデュースだったり、アーティスティックな面があった。当時、彼女に取材したときに、テクノDJのジェフ・ミルズのオールナイト・イベントに一緒に行きました。そういうアンダーグラウンドな音楽も、自分の生活圏でかじっていたんです。あの頃は渋谷系もあり、ラヴ・タンバリンズのeliなどが登場し、初めて邦楽が洋楽と同時代性を持った。そんな時期に女性歌手にアーティスティックなイメージが生じ、ディーヴァという大人っぽい言葉が使われだしたのは、自然な流れです。 水無田(以下、) 文学では80年代頃から女性が主体的にエロスを語ることが盛んに行われだしました。しかし90年代になると、現代詩や小説の世界でそれは廃れ、特に現代詩は詩語の純粋性を重視し、結果ポップなものから遊離したのですが、音楽の世界では自らの言葉と肉体で表現するディーヴァが登場したのが興味深いです。 鹿 ただ、あの頃のディーヴァはポップなものではなく、クラブでも聴けたりする音楽として僕は受け取っていました。そんなディーヴァ像をプロデューサーとして確立したのが大沢伸一。CHARAをディーヴァにしたのも、UAやbirdをヒットさせたのも、クラブ/ブラック・ミュージックを下敷きに音楽を作った彼の功績。 磯部(以下、) 90年代中頃、日本のアンダーグラウンドなヒップホップがメジャーからリリースされ、それがわりと売れた。その女の子版として、同時代のUSのR&Bを取り入れたプロダクションでディーヴァがデビューした側面も。例えばDJ WATARAIがリミックス、MUROがラップでフィーチャーされたMISIAのアナログが当時、レコード村と呼ばれた渋谷の宇田川町で何千枚も売れた。日本でいうディーヴァって要は、日本人女性の身体性と心情を黒人音楽を通していかに表現するかということだと思います。そういう試み自体は昔からあり、あの頃にようやくうまくいき始めたのかなと。そして90年代終わりに早くもディーヴァ・ブームのクライマックスが訪れた。それが宇多田ヒカルの登場。彼女はUSのR&B歌手アリーヤの日本版みたいなプロダクションでデビューしましたが、日本人の10代の女子の心情を見事に表現していた。 「Automatic」(98年)の歌詞は完成度が高いですね。まず、「automatic」や「computer screen」といった英語での縁語使いが巧い。また、「ひとりじゃ泣けない/rainy days」「指輪をさわれば/ほらね/sun will shine」と対句でさりげなく脚韻を踏んでいます。口ずさみやすい韻律と比喩表現が噛みあった歌詞です。当時は旧来の主体性や自我に拘泥せず、軽やかに恋愛を歌う女性像が求められた、まさにそこに現れたのが彼女。しかし「ほれてる」という、母親・藤圭子の演歌の世界で使われるような言葉もあり、英語圏のロマンチックラヴ・イデオロギーとは異なる性愛表現も。それを10代の帰国子女が使ったのに驚きましたが、以後は帰国子女でなければ許されないほどベタな歌詞に……。  桑田佳祐にしろBOØWYにしろ、長い間、日本のポップスは日本語と英語のチャンポンを使っていましたが、初期の彼女の歌詞はそれとも違い、アメリカン・スクールの子たちの会話を盗み聞きするようなリアルさがあった。「Addicted To You」(99年)の「君にaddictedかも」というラインで表されるのはベタな感情ですが、語感が特殊だから新鮮に聴こえた。 鹿 彼女の音楽は1stアルバムでそのオリジナリティが完成していました。母親は演歌歌手で、父親はPiLみたいなポストパンクが好きな音楽プロデューサー。そんな両親に音楽的英才教育を受け、かなり独特な音楽観に。また、基本的にはネクラですが、だからこそオープンマインドなアメリカン・スクールに通った。そのため、内面には悲しさと解放感が同居。これらが結晶となったのが1stです。でも、それ以降はいろんな批評や情報を受け入れ、表現が時代とシンクロするようになりました。  彼女自身がトラックのプロダクションにかかわってますが、USのR&Bのモードを踏襲しているようで全然違い、かなりオリジナル。それがだんだん時代と離れ、独自の内面的な表現に。黒人音楽は、流行にいかに対応するかが重要です。極端な話、イケてたらパクリでもOK。とっぴな洋服を着ればいいのではなく、モードをどう着こなすかが求められるファッションと一緒。そんな意味で宇多田は独特すぎましたが、ディーヴァのモード性を保持するのが安室奈美恵。小室哲哉のプロデュースでアイドル的な人気を集めましたが、自身にプロダクションの主導権が移ってからUSのR&Bのモードを彼女なりに表現するように。 鹿 宇多田ヒカルがUS進出につまづいた理由は、まさにそこ。一方、ディーヴァの説得力の自己プロデュースに成功したのがYUKI。JUDY AND MARY解散後、ソロになった彼女はセールスが下がった時期もありましたが、特にお子さんを亡くす不幸があった頃の『joy』(05年)からは、そういった経験も糧にして爆発的に女性としての説得力を備えた。今はほとんどプロモーションもしていませんが、人気を持続している。  ソロ以降の彼女の歌詞はいわゆる女性共感系ですが、JAM時代のガーリーさも引き継ぎつつ、母性や強さの表現にも成功。他者に欲望されることを欲望する女性の心性を乗り越える歌詞でもある。「ハローグッバイ」(04年)には「私が見てきたすべてのこと/むだじゃないよって君に言ってほしい」とあります。女性の価値は経年と経験により確実に下落し、それはアイドル的な消費のされ方をするとなおさらですが、そんな女子の現実を力強く歌っているのです。 ■浜崎あゆみの歌詞を内面化した女性たち 鹿 そうやって考えると、ディーヴァの価値観の根本にあるのが、女性の共感を呼ぶということなのかな。YUKIは女性ファンがほとんどだし、宇多田もそう。  圧倒的に女性ファンが多いのが浜崎あゆみ。ほぼ10割です。ただ、歌詞は「僕ら」語りが多い。 「Boys & Girls」(99年)の頃から「僕ら」遣いが目立ちます。「輝きだした/僕達を誰が止めることなど出来るだろう」と、ここに歌われるのは恋人同士とも取れますが、浜崎とファンとの絆、仲間意識を強調する歌詞にも読める。また、「YOU」(98年)には「きっとみんなが思っているよりずっと/キズついてたね/疲れていたね/気付かずにいてごめんね」とありますが、仲間との共感の目線か、男の子から向けられたい視線か、あえて特定されていない。 続きを読む (全文無料公開中です) 「サイゾーpremium」では他にも音楽業界の裏側に迫る記事が満載です!】混乱するYUKI、お祈りを欠かさないUA……ディーヴァたちのキテレツ&トンデモ発言集【音楽レーベルPR担当座談会】芸能事務所の力で番組にゴリ押し新盟主はアミューズ!?ビーイング、エイベックスが"荒らした"? タイアップがアニソンにもたらした功と罪
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【会田誠×辛酸なめ子】現代アートは決して高尚なものじゃない!

8月19日発売のサイゾー9月号は「現代アート」大特集!タブーな表現に挑む新進気鋭のアーティスト紹介をはじめ現代アートの儲け方、はたまたタレント芸術家のお値打ち、現役美大生たちの本音などなど…ここでしか読めないアートの裏側に迫ります!
 本誌発売日に先駆けて今回は「会田誠×辛酸なめこ」の特別対談を先行公開!森美術館で行われた「天才でごめんなさい」展における抗議騒動の真相や、センセーショナルな作品を生み続ける会田氏が考える「タブーな表現」、はては女性の趣味まで……あますところなく現代アートの雄に迫りました!
premiumサイゾー無料キャンペーン中のこの機会に是非ご一読あれ! ――9月1日まで開催されている「瀬戸内国際芸術祭2013」の夏の会期に出展するため、現在香川県男木島に滞在し、制作を続けている美術家、会田誠。草間彌生、奈良美智らと並ぶ、日本を代表するアーティストのひとりだ。そんな会田氏に、現代美術界の現状と自身の活動について聞くべく、同氏が所属するミヅマアートギャラリーにかかわりが深い辛酸なめ子女史と共に、男木島に向かった―。
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(写真/田中まこと)
 日本の現代アート界を牽引する作家のひとりである会田誠は、ロリータやエログロ、戦争などのモチーフを多用するその作風から、一部では取り扱い注意作家とも呼ばれている人物だ。実際、2012年11月から13年3月まで東京・六本木の森美術館で行われた個展「天才でごめんなさい」では、「四肢切断された全裸の少女が首輪をされて微笑んでいる『犬』という連作をはじめ、性暴力性と性差別性に満ちた作品が多数展示され、女性の尊厳を傷つけている」と、「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」から抗議を受けた。そんな同氏とは18歳の時に出会い、何かと接点が多かったというコラムニストの辛酸なめ子。20年来、会田氏の作品を見てきたという彼女と共に、タブーを破り続ける会田氏の創作活動と、現代美術界の現状について本人を直撃した。 辛酸なめ子(以下、辛酸) 今日、こうして男木島で「瀬戸内国際芸術祭2013」(以下、瀬戸芸)の作品を見させていただいて、六本木の展覧会とはまったく環境が違うな、と思いました。会田さん、すっかり男木島に適応されていらっしゃいますよね。 会田誠(以下、会田) いやー、それはあまりできていないですよ。過疎の地域を活性化させるための芸術祭とか野外作品展とか、ホント苦手でしたからね。過去にも、青森の芸術祭に一度参加したことがあるくらいで。 辛酸 六本木にいる会田さんは近寄りがたい感じでしたけど、男木島にいると気さくに話しかけられるのかなぁ、という気もしました。 会田 六本木でだって気さくなつもりだったけどね(笑)。今、現代美術は二極化しているんですよ。大都市のギャラリーや立派な美術館で展示を行う都市型と、地方の広い土地や建物の中でやる、社会的に意義のある、何かを提言するような地方型の2つにね。比較的都市型志向の僕でも、時には何かの間違いで地方に呼ばれることがある。今回は、「昭和40年会」として一緒に参加している小沢剛、大岩オスカールらが、北川フラムさんという瀬戸芸のディレクターと仲が良くて。そのつながりで、僕も呼んでもらえたという感じなんですよ。まあ、僕はアトリエを持っていないので、もともとどこかに長期滞在して制作をするのが好きでしてね。だから、どうせ男木島でやるならひと夏いたいな、という思いもあって参加したんです。 辛酸 なるほど。島での活動は、気分転換にもなっているかもしれませんね。森美術館で行われた会田誠展「天才でごめんなさい」の際には、出展作品の内容をめぐりツイッターで炎上気味になったこともありましたけど……ここではツイッターの鳥アイコンが「バーカ」と言っている絵(写真参照)があったりして、何か発散されているみたいです。 会田 まあそれはあるね(笑)。電脳空間じゃなく、リアル空間で発散しよう、っていう。 辛酸 あの絵をまた、写真に撮ってツイッターで拡散する人がいないかと心配です。 会田 大丈夫でしょう。ネットは熱しやすく冷めやすいですから。 辛酸 でも、リアル空間でもPAPSから抗議されてましたよね? 会田 あの騒動は、最初から僕の出る幕はなかったんですよ。抗議したPAPS側も、「会田が下品な絵を描くのは表現の自由」だと言っていた。つまり、描くこと自体は勝手だと。ただ、「それを公共性の高い美術館でやるのはどうか?」という、美術館側へのクレームに的を絞っていたんです。 辛酸 展示した美術館側の責任問題になっていたんですね。 会田 そういうことです。森美術館に展示した作品は、そもそも美術館のような場所で展示されることを想定していない、学生時代から描きためてきたものを、たまたま展示してもらえたんです。公営の美術館だったら、教育委員会の目がありますから、展示してもらえないだろうな、と思う作品ばかりでした。それを、私営である森美術館が「どうぞ」と言ってくれたから、展示できたものでした。 辛酸 そうだったんですか。てっきり、ネットの攻撃、炎上と相まって悩まれていたのでは、と老婆心で案じておりました。 会田 悩みねえ……別になかったかな。鈍感力は高めなほうだし(笑)。ネットでの匿名の書き込みって、ただ炎上しているからやってくる暇人たちでしょう。彼らには「うるさい」の一言しかないですよ。まさに、ハエという漢字が入った「五月蠅い」と書きたいぐらい(笑)。体の不自由な人が僕の作品を見て傷ついたという話ならこちらも心が騒ぐけど、大多数は関係ないじゃないですか。 つづきはコチラから! 8月14日までにご登録の方は初月無料でお読みいただけます! (構成/佐々木正孝)
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会田 誠(あいだ・まこと) 1965年、新潟県生まれ。美術家。美少女、エログロ、ロリータ、戦争などをテーマとした、センセーショナルな作品で知られる。代表作は『あぜ道』『切腹女子高生』『紐育空爆之図(戦争画RETURNS)』など。「ここ数年、海外コレクターにも買ってもらえるようになってきたおかげで、僕の作品は不当に値段が上がっている(笑)」と言うが、ミヅマアートギャラリーでの個展を中心に、国内外でその注目度は高まっている。
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辛酸なめ子(しんさん・なめこ) 1974年、東京都生まれ埼玉県育ち。現在は、マンガ家、エッセイストとしての活動が目立っているが、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻を卒業し、アート作品の制作も行っていた。過去には会田氏も所属するミヅマアートギャラリーにて、個展「ソウルメイトをさがして…」なども開催している。

芸能人クスリ年表付き!法社会学者が見た芸能スキャンダルの裏に潜む"学術的"現代ニッポン犯罪事情

――ただ今無料キャンペーン中「サイゾーpremium」から、今ホットな話題に関する記事をお届け!!  今月1日発売の「週刊文春」(文藝春秋)にて「シャブ&飛鳥の衝撃」というセンセーショナルな見出しと共に、歌手CHAGE and ASKAのメンバー飛鳥(55)の薬物中毒疑惑が報じられました。飛鳥氏側の事務所や親族は疑惑を否定しているものの、騒動はとどまる気配がありません。サイゾーでは過去に、薬物使用で逮捕された芸能人などをはじめ、芸能人と犯罪の関係についての論考を掲載。同時に、芸能スキャンダルを通して見えてくる日本の警察・検察の問題点にも言及しています。さらに、2010年までの芸能人おクスリ年表付きでご紹介! ■今回のピックアップ記事 『法社会学者が見た芸能スキャンダルの裏に潜む"学術的"現代ニッポン犯罪事情』
(2010年4月号特集『スキャンダル&ゴシップ白書』より)
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桶川ストーカー事件をきっかけとして成立したストーカー規制法。
 朝青龍問題は、なぜ闇に葬り去られずに事件化したのか? なぜ、最近また日本の犯罪件数が減少傾向にあるのか? そのウラにある、共通した日本警察&検察に特有の問題点を、気鋭の法社会学者・河合幹雄が読み解く! ──まず、朝青龍の知人への暴行騒ぎと引退について。引退は当然、との見解が大勢を占める中、以前であればタニマチなどの仲裁でもみ消せたはず、という見方もあります。法社会学者のお立場から、河合先生はどうご覧になりましたか?

河合幹雄(以下、) どういうケースだともめごとが顕在化するかというのは、法社会学のメインテーマのひとつですから、とても興味深く見ていました。まず、ああいうスキャンダルの裏側を見極める際には、2つの視点が重要になります。ひとつ目は、同様の問題を過去に何度も起こしていて、ついに進退窮まったのか、それとも、その問題一回で挙げられたのか、という点。朝青龍の場合は明らかに前者で、有能な人材だから日本相撲協会としては守りたかったけど、とうとうかばいきれなくなったケースです。逆に、一発で問題化するのは、敵対する何者かによって追い落とされるケースですね。まあ、ハメる相手がそう都合よく人を殴るわけではないので、一般的な追い落としの事由としては、セクハラが最も多用されます。 ──2つ目の視点というのは?  個人と組織のどちらが標的なのか、という点です。朝青龍のケースでいうと、明らかに、彼を引退させるのが目的ではなく、相撲協会が標的にされていますね。昔から、芸能人やスポーツ選手が酔っ払って人を殴るなんてことは日常茶飯事だし、誰かがきちんと謝りにいって金を積めば、それでもみ消せるはずの話です。ところが、報道によると、朝青龍に殴られたのは、裏社会に通じる人物で、押尾学やのりピー夫妻とも交流があると噂されるいわくつきです。もし暴力団がらみとなると、今回の問題をネタに相撲協会から恒常的に金をせびるという形になる恐れがありますから、相撲協会としては、朝青龍を引退させるなどによって、幕を引くしかなかったと解釈できます。組織のスキャンダルの解決法としては、よくあるパターンです。それに、相手が単なる一般人でないとなれば、相撲界と暴力団の関係を断ち切りたい警察としても、看過できませんからね。 ──つまり、朝青龍本人というより、その取り巻きの危機管理能力に問題があった、と。  そう。そういう店に彼を連れて行ったこと自体がね。言い換えれば、「もみ消せる店で暴れろ」ということです(笑)。となると、さんざん指摘されている通り、やっぱり高砂親方がダメなんですよ。相撲協会による親方の処分は、2階級降格という厳しいものでしたが、これは、対外的に格好をつけたのではなく、本当の意味での罰だったと見るべきでしょうね。 ──では、そうした芸能・スポーツ界のスキャンダルを受け止める社会の側に、何か変化は見られますか?  とにかく「寛容性」がなくなってきていますよね。服装の乱れと会見での発言でバッシングされた國母和宏選手の一件もそうですけど。国民の鬱積のはけ口のようになっていて、報道も、服装の乱れも傷害事件も一緒くたに、とにかく誰かを叩こうとする。それから、今も昔も、一般社会では、薬物事件などの犯罪を起こして復帰するのは非常に難しいことですが、少なくともかつての日本には、芸能人だから大目に見る、という風潮がありました。実際、美川憲一や萩原健一などなど、何事もなかったかのように活躍している芸能人はたくさんいますからね【下のコラムを参照】。 ──確かに昨今の日本社会では、芸能人と一般人を区別しなくなってきている気がします。  芸能・スポーツ界は世間とは別の世界なのだ、と特別視する感覚がなくなってしまったんです。というより、そもそもそういう別世界と対比されるはずの「世間」というもの自体がなくなった、というべきかもしれません。地域コミュニティなどが失われ、つながりのあるのは家族と友達とテレビとネットだけ、という。そうした風潮が、この先どう変わっていくのかはわかりませんが、のりピーが復帰できるかどうかが、それを見極めるひとつのポイントになるでしょうね。 ■警察官を増員させるため手を加えられる犯罪件数 ──07年の千葉英国人女性殺害事件では、市橋達也容疑者の逃亡を許すという初動捜査ミスがやり玉に挙げられました。そうした警察のスキャンダルに関して、近年、なんらかの傾向は見られますか?  確実にいえるのは、"現場"がダメになっている、ということです。ベテランの刑事から、「今の若い刑事はホントに捜査力がない」という話をよく聞かされますけど、腕利きの捜査官を鍛えるシステムが消えてしまったんですよ。その理由は単純で、よくも悪くも、凶悪犯が減ったことによって、修羅場をくぐる経験が不足しているからなんです。警察官を定年まで勤め上げても、市橋容疑者みたいに、必死に戦って逃げるヤツにはまずお目にかかれません。裏を返せば、昔の犯罪者はもっと怖かったとも、日本がより安全な国になったともいえるでしょう。
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1999年に起きた桶川ストーカー事件をきっかけに、警察への告訴が受理されやすくなるなどし、刑法犯の認知件数は激増、「治安悪化」が叫ばれることともなったが、検挙件数はほぼ横ばい。その他のデータからも、データ上、治安は決して悪くはなっていないことがわかる。【註】「一般刑法犯」とは、刑法犯全体から自動車運転過失致死傷等を除いたもの。
──一般刑法犯の認知件数の推移【右のグラフを参照】を見ると、1997年から02年まで、年平均約17万件ずつ増えていたのが、そこから逆に09年まで、年平均約16万件ずつ減っています。これも、そうした捜査力の低下が影響しているんでしょうか?  いや、これは単に上層部から、「認知件数を減らせ」という指令が出ていて、なるべく事件化せずに処理しているからです。性犯罪の被害者が署へ相談に来ても、告訴と見なさず帰したり、他殺かもしれない事件を、事故や自殺で処理したり。そもそも、00年から02年の間に急激に増えたのも、99年の桶川ストーカー殺人事件を受けて、「被害届けがあればすべて受理せよ」という通達があったからなんですよ。 ──そうした命令を出す意図は?  直接的には、警察官の増員のためです。増員してもらうために認知件数を増やし、増員の成果が出たと証明するために減らすわけです。実のところ、こうした操作は、どこの国でもやっていることです。ちょっと考えればわかることですけど、捜査力というものは、本来、増員すると直後はかえって低下するはずなんですよ。なぜなら、新人を教えるために人手を割かなければなりませんからね。 ──なるほど。もめごとが事件化、スキャンダル化するかどうかには、警察の方針が強くかかわってくるわけですね。  そう。いま話題の埼玉と鳥取の連続不審死事件も、警察が把握していながら顕在化せず、週刊誌が書き立てたことによって急展開したのかもしれません。週刊誌に載ったから捕まえたのか、週刊誌に意図的に情報を流したのかはわかりませんが、おそらく後者でしょう。立件できると踏んだ現場の刑事の判断でね。特に、自分を過信している知能犯の場合、報道によって圧力をかけられて余計な行動を取り、それがきっかけで捕まるということもよくあるんです。 ──逆に、立件できそうになくて消えていく事件もあるわけですね。  ええ。その意味でいま注目しているのが、先月発覚した、ローソンの連結子会社の幹部2人が、150億円を使い込んでいた事件です。史上最高額といえる巨額不正流用事件なのに、新聞各社の扱いはすごく小さくて、踏み込んで書いていたのは「日刊ゲンダイ」ぐらいなんですよ。間違いなくいえるのは、150億円という金額から、個人ベースの事件ではなく、かなりの大物の絡んだ背景がありそうということです。一般的に、こうした事件が問題化せず見逃してもらえるパターンは、その周辺で集められた金が、社会のためになる使われ方をしていて、だからこそ捜査機関にストップがかかるというものです。検察も警察も、ある案件を捜査しようとすると、幹部を通して「そこ、ちょっと待った」とストップがかかる。「コイツはこんないいこともやってるから、オレが身柄を預かる」という、まさに日本の古い村社会のようなシステムがまだ生きているんですね。 ──では、昨今の検察の捜査力について感じることは?  事情を知る誰もが口を揃えるのが、特捜がオカシイということです。しかし、それだけではありません。検察官とつきあうと、検事正クラス、あるいは法務省の局長、課長級には、バランス感覚に優れた人間的にも素晴らしい人材がいくらでもいる一方で、組織全体としては、公訴時効の廃止など、理解に苦しむ動きが目立ちます。社会学者の立場から、その原因のひとつとして指摘できるのは、検察幹部の大部分が、娘婿になるなどして閨閥のようなものを形成しているとされる点です。腐敗しているといったような低次元のことではなく、どうも内向きの視点で動いているように見えるんです。逆に言えば、日本全体の将来のために、検察が何をしようとしているのか見当がつかないようでは困る、ということですね。 (構成/松島 拡) 河合幹雄かわい・みきお) 1960年生まれ。桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)。京都大学大学院法学研究科博士課程修了。社会学の理論を柱に、比較法学的な実証研究、理論的考察を行う。著書『安全神話崩壊のパラドックス』(岩波書店、04年)では、「治安悪化」が誤りであることを指摘して話題となった。その他、『終身刑の死角』(洋泉社新書y、09年)など、多数の著書がある。 【表現者だからしょうがない!?】 ■芸能人おクスリ年表 77年 岩城滉一:覚せい剤取締法違反、懲役1年・執行猶予3年       井上陽水:大麻取締法違反、懲役8カ月・執行猶予2年 78年 勝新太郎:アヘン法違反、書類送検 83年 萩原健一:大麻取締法違反、懲役1年・執行猶予3年       清水健太郎:大麻取締法違反、起訴猶予 84年 美川憲一:大麻取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 86年 清水健太郎(2度目):大麻取締法違反、懲役1年・執行猶予4年 88年 尾崎豊:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 89年 今井寿(BUCK-TICK):麻薬取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年 90年 勝新太郎:ハワイ・ホノルル空港でマリファナ・コカイン所持、罰金1000ドル・国外退去 91年 勝新太郎:大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予4年 92年 ミッキー吉野(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月、執行猶予3年 93年 江夏豊:覚せい剤取締法違反、懲役2年4カ月 94年 清水健太郎(3度目):覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役1年6カ月 95年 長渕剛:大麻取締法違反、起訴猶予 97年 sakura(元L'Arc〜en〜Ciel):覚せい剤取締法違反、懲役2年・執行猶予3年 01年 いしだ壱成:大麻取締法・覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年       田代まさし:覚せい剤取締違反法、懲役2年・執行猶予3年 02年 西川隆宏(元DREAMS COME TRUE): 覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 03年 中島らも:大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法違反、懲役10カ月・執行猶予3年       岡村靖幸:覚せい剤取締法違反、懲役2年・執行猶予3年 04年 清水健太郎(4度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年4カ月       田代まさし(2度目):覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役3年6カ月 05年 岡村靖幸(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月       岡崎聡子(4度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年6カ月 06年 大森隆志(元サザンオールスターズ) :覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予4年       西川隆宏(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月 07年 赤坂晃(元光GENJI):覚せい剤取締法違反、懲役1年 6カ月・執行猶予3年       嶽本野ばら:大麻取締法違反、懲役8カ月・執行猶予3年 08年 岡村靖幸(3度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年       加勢大周:覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予3年       倖田梨紗:覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 09年 小向美奈子:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年       倖田梨紗(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年4カ月       岡崎聡子(5度目):覚せい剤取締法違反、懲役3年       鈴木茂(元はっぴいえんど):大麻取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年       押尾学:麻薬及び向精神薬取締法違反       酒井法子:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年       成田昭次(元男闘呼組):大麻取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年       赤坂晃(2度目):覚せい剤取締法違反 10年 YOU THE ROCK★:大麻取締法違反       中村耕一(JAYWALK):覚せい剤取締法違反 【ただ今絶賛無料キャンペーン中「サイゾーpremium」では他にも"芸能界と薬物"を徹底追及する記事が満載です!】次の逮捕者は誰? またまた浮き彫りになり始めた芸能界薬物汚染の実態!押尾事件の背後で噂された疑惑の財界人たちは今......石丸元章×磯部涼 「ダメ。ゼッタイ。」は絶対正しいか? 法的、医学的尺度を超えたDRUGの本質
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 現在、夏の大感謝セールとして実施中の「サイゾーpremium」初月無料キャンペーンですが、この度、ご好評に付き、期間を延長いたします!!  2013年7月31日(水)としていた入会期限が、2013年8月14日(水)までとなります。同日までは、楽天にてお申込みのお客様は"初月無料"となりますので、この機会に是非ご利用ください!!
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 加えて、現在キャンペーン特別企画として、サイゾーpremium会員様限定で、絶版となった幻のジャニーズ暴露本『SMAPへ』(木山将吾/鹿砦社)を公開中です。  性的虐待、ホルモン注射、盗聴器……ジャニーズJr.として雑誌やテレビで活動した後、「光GENJI」でデビューの予定まであったという作者・木山将吾氏が、自身の体験を元に、ジャニーズ事務所の実態をつづった衝撃の書が『SMAP――そして、すべてのジャニーズタレントへ』。  サイゾーpremium会員なら、そんな『SMAPへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(鹿砦社)が無料で読めちゃいます! 衝撃の告白から目が話せません!!
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KDDI憎し!! ソフトバンクが総務省でブチ切れ騒動!?

――ただ今無料キャンペーン中「サイゾーpremium」から、今ホットな話題に関する記事をお届け!!  7月29日、ソフトバンクの孫正義社長は周波数の追加割り当てをめぐって、総務省を行政訴訟する準備を進めていることを明らかにしました。総務省がUQコミュニケーションズ(KDDIグループ)に周波数を割り当てるという日本経済新聞の報道を受け、孫社長は怒り爆発。「電波の割り当ては元総務省の電波部長が天下りしている先の企業に出来レースで決まっているんですか」などと抗議したとのことですが果たしてどうなることやら。サイゾーでは2013年の1月号ですでに孫社長のKDDIおよび総務省への怒りを取り上げていました。 ■今回のピックアップ記事 『KDDI憎し!! ソフトバンクが総務省でブチ切れ騒動!?』(2013年1月号NEWS SOURCEより)
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『ソフトバンク 新30年ビジョン』(ソフトバ
ンククリエイティブ)
「AXGPと同じだというこのデータは本当か?」(SB) 「同じ国際標準を採用しており、同じになるはずだ」(UQ) 「AXGPには我々独自の技術が入っていて国際標準のままではない。だから同じのはずがない」(SB) 「少なくとも、干渉に関するデータは同じになるはず。違うという根拠がわからない」(UQ)  11月22日、霞が関は総務省内の会議室。KDDIの子会社であるUQコミュニケーションズ(以下、UQ)とソフトバンク(以下、SB)、それぞれの担当者が強い口調でやり取りをし、場の空気は非常に重くなった。  その会議は、携帯電話など電波利用における通信技術の国内利用許可を下す「情報通信審議会」の分科会「携帯電話等高度化委員会」。UQはWiMAXによるデータ通信サービスをより高速化するため、新規格「WiMAX Release 2.1」の利用許可を総務省に申請している。総務省では、携帯電話会社の技術者や大学教授などで構成する委員会で技術検討を行っており、この会議がまさにそれ。通常ならばあくまでも技術的な確認をする場であり、激しいやり取りなど起きようはずもない。にもかかわらず、UQ側の説明に対し、SBの担当者が強烈に噛み付いたのだ。その場では、総務省の担当者が別途UQの主張を検討する場を設けることを提案して収まったものの、いきなり難癖を付けられた形のKDDIサイドは終始困惑。だが、一方のSB側にしてみれば、KDDIに対して圧力を掛ける動機は明白に存在したのである。 「社内では今、完全に”KDDIシフト”が敷かれていて、KDDIに勝つためならなんでもやれという雰囲気。だからこの発言も、同社の足を少しでも引っ張るためだと思いますよ」と語るのは、あるSB関係者。 「要は、iPhone5での競争に負けたのがきっかけ。うちの孫正義社長がメディアを通してKDDIを攻撃したりキャッシュバック増額競争を仕掛けたりしていることは知られていますが、そのほかにもこうして、ユーザーに見えないところでKDDIに対してプレッシャーをかけているわけですよ」(同)  これまでも孫社長は、ライバルたちを攻撃してきた。近いところではプラチナバンド獲得の際。900MHz帯電波を手に入れるため、同帯域を持つドコモやKDDI対してSBだけが持たないことの不当性を繰り返し訴えたことは記憶に新しい。また昨年には、NTTが持つ固定回線インフラを分社化する「光の道」構想を政権与党民主党にロビイングし、NTTや総務省に対して強くプレッシャーをかけてきた。  しかし、それらSBの圧力もこれまでは政策決定や行政方針に対してというレベルでのもので、冒頭で述べた分科会のような場ではあり得なかった。というのも分科会に参加するのは各社の幹部級などではなく技術者のため、彼らならではの”仁義”や”親近感”もあり、激しくやり合うようなことはなかったのだ。だからこそ今回の激しいやりとりに、SB以外の委員はあっけにとられたのである。 ■ソフトバンクの総務省軽視!?  従来SBは、行政側に圧力こそ掛けるものの、国の立場や決定は尊重してきた。だがここにきて、総務省の軽視とさえいえる態度を取り始めている。その一例が冒頭の会議。そしてそのもうひとつの例が、10月に発表されたイー・モバイル買収だろう。 「今回の買収劇の裏には、孫さんのKDDIへの対抗心が強くあるようです。というのも、実はKDDIもイー・モバイルに買収を持ちかけていたとの噂がありましたが、企業買収によって新たな電波帯域を手に入れることは総務省の電波行政方針にそぐわないため、KDDIは諦めたらしいのです。ところが孫社長は、それをやってのけてしまったわけです」(証券アナリスト)  イー・モバイルが持つユーザーと電波帯域を手に入れた上、KDDIの鼻をあかすことができたこの買収は、孫社長にとってまさに一石三鳥だったというわけだ。  だが、やはりトップにはドコモが居座っている。だからこそ、というべきか、孫社長が下した決断は予想を超える巨大なものだった。イー・モバイルの買収から2週間後に発表されたのは、米第3位の携帯電話会社「スプリント・ネクステル」【1】買収。買収金額は約201億ドル(約1兆5700億円)と、かつてのボーダフォン買収に匹敵する巨額投資であり、これによってSBは、なんと世界第3位の携帯電話事業グループを形成するにいたったのである。  日本を飛び出し、世界に打って出るというかねてからの目標を達成する。その偉業実現を前にして、総務省への配慮などもはや不要なものと孫社長は考えているのかもしれない。 「しかし、実はSBは一般に知られているよりも中国企業との結びつきが強いため、米当局がこの買収を認めない可能性もまだ残されています。こうした事態を避けるためにこそ、企業の海外進出に際しては通常、行政による支援が欠かせません。大企業の海外進出は、市場のルールをめぐる国家対国家という側面もありますからね」(前出アナリスト)  だがSBは、それらを振り切って海外を目指しているかのように見える。その裏には、「国の支援など無用」という、孫氏の”無頼精神”が潜んでいるのだろうか。 (三森黒介) 【1】「スプリント・ネクステル」の買収 この買収劇に対する業界内の評価はネガティブなものも多い。その主な理由は2つ。ひとつは、米国と日本の携帯電話事業の違いである。ほぼ全人口に行き渡った日本とは異なり、米国ではまだ契約者数増加の余地が大きい。しかし、日本よりも国土が広くユーザー層も多様な米国では、日本以上にインフラ投資が難しいといわれており、日本での営業ノウハウがどこまで通用するかは未知数なのだ。そして2つ目が「iPhone依存」の問題。日本国内のSBユーザー数増加は完全にiPhoneに依存しており、もし仮にアップルが方針転換をしたりiPhone自体の求心力が落ちたりした場合、SBの勢いは一気に削がれてしまう可能性は高い。もしかしたら今回のスプリント・ネクステル買収は、iPhone頼みの危うさを自覚するがゆえの、孫社長の打ち手なのかもしれない……。 【ただ今絶賛無料キャンペーン中「サイゾーpremium」では他にもソフトバンクの裏側に迫る記事が満載です!】ソフトバンクが頼り続ける”モバイル戦略”の危うさ──グループのビジネス戦略を徹底分析!『あんぽん』著者・佐野眞一が語る「“うさんくささ”が生んだ孫正義のカリスマ性の本質」連結子会社100社以上、グループ企業70社以上のソフトバンク──”借金”の歴史と”使い捨て人脈”の系譜
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フジロック、サマソニ、ライジングサン……利権と欲望が絡む夏フェス裏ガイド

――ただ今無料キャンペーン中「サイゾーpremium」から、今ホットな話題に関する記事をお届け!!  26日から始まった「FUJI ROCK FESTIVAL'13」を皮切りに今年も"夏フェス"の季節がやってきました。普段なかなか見ることのできない豪華アーティストたちの生のライブが体感できるとあり毎年大盛況の夏フェス。今やCD売り上げの低迷が続く日本の音楽業界を支えるひとつの柱にもなったフェスですが、その裏側には業界のさまざまな思惑や利権が渦巻いているとか……。サイゾーでは過去に"夏フェス"を徹底研究しています。フェス参戦前夜にご一読あれ! ■今回のピックアップ記事 『フジロック、サマソニ、ライジングサン......利権と欲望が絡む夏フェス裏ガイド【1】』(2009年8月号「夏フェス【裏】ガイド」より)
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「FUJI ROCK FESTIVAL'13」公式HP。
──2000年以降、低迷を続けている音楽業界にあって、ほぼ唯一好調と言われてきたのがロック・フェスティバル産業だった。00年には30億円程度だったフェス産業の規模は、わずか3年で3倍以上にもふくれあがったが......。  今や、100億円以上の市場規模で推移している夏の風物詩、音楽フェス。上記の4大フェスを筆頭に、現在では年間100以上のフェスが全国津々浦々で開催されている。そう、まさに業界は"フェスバブル"の様相を呈しているのだが......業界関係者が語る。 「正直、音楽興行は儲かりにくいビジネスです。周知の通り興行は、戦後、ヤクザらが仕切ってきた歴史があるため、シマをめぐる不文律やぶら下がりの業者がいまだに多い。そのため支出を切り詰めにくい構造が出来上がっており、新規団体が参入しづらい状態だった。その不文律を打ち破ったのが出版社のロッキング・オン。異業種参入の同社が主催しているロック・イン・ジャパン・フェスは、既存業者とのしがらみがないゆえに収益構造を効率化できました」  また、一度に数万人規模の動員を実現するロック・フェスは、新人をプロモーションする絶好の機会でもある。あるレコード会社制作担当はこう語る。 「新人アーティストは出演料をもらうのではなく、出演料を払うことを求められる。ただ、音楽誌に1ページのカラー広告を打ったとして50万円、フジロックが要求する"協賛金"は30万円。音楽誌の影響力がなくなった現在、喜んで協賛金を払うレコード会社は少なくないんじゃないかな」  つまり、現在フェスには、広告メディアとしての機能もあるのだ。もちろんこの金額はあくまで一例であり、少額のギャラが支払われる例、高額の協賛金を求められる例、果ては億単位の出演料が支払われる例などアーティストによってさまざま。だが、こうした"フェスバブル"にも陰りが見え始めている。06年以降、観客動員数が漸減、フジロック関係者によると、09年は不況の影響もあり、スポンサーの数も例年よりも減る見込みだという。 「近年赤字を出しているサマーソニックを主催するクリエイティブマンはエイベックスに借金をしていて、07年のサマソニに倖田來未が出演したのはそのバーターだともっぱらですよ(苦笑)。また、影響力を自覚して増長しているフェス側に反感を持っている関係者は多い。05年に桜井和寿とともにap bankをスタートさせた小林武史は、フェスが結局新たな利権の場になっていることに憤慨を覚えて、既存フェスへの出演を控えて、アーティストたち自身が主催するしかないと決断したという話ですし、くるり主催の京都音楽博覧会(07年)、ASIAN KUNG-FU GEN ERATION主催のNANO-MUGEN FES.(03年)など、アーティスト主催のフェスはその後増え続けています」(前出の業界関係者)  最初のフジロックが開催されてから12年。フェスの登場によって部分的ながらやっと再編された興行利権の構造は、新たな既得権益のために、すでに業界内で敬遠され始めている。フェスははたして、何をもたらし何を壊したのか。音楽フェスをめぐるビジネス(と、裏話)を考察したい。 【ただ今絶賛無料キャンペーン中「サイゾーpremium」では他にも音楽業界をぶった斬る記事が満載です!】新人の出来レース、3Kバイト、海外の汚フェス......音楽フェスがもっとわかる4つのキーワードライブ頼みでこの先生き残っていけるのか―!? 日本の音楽業界、最新見取り図【鹿野淳×水無田気流×磯部涼】が分析するディーヴァの進化と退化の20年史
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薬ネット解禁は甘利大臣の力業!? 選挙直前官邸秘レポ

――ただ今無料キャンペーン中「サイゾーpremium」から、本日公開の最新号をいち早くお届け!! ■月刊サイゾー8月号ニュース 『薬ネット解禁は甘利大臣の力業!? 選挙直前官邸秘レポ』(2013年8月号「NEWS SOURCE」より) 参院選でねじれ国会解消なるか?……2012年12月26日に発足した安倍晋三内閣。株価上昇機運は弱干弱まりつつも、基本的には追い風の中で7月の参院選を迎えられそうだ。参院選直前の官邸内外の動きはいかに……!? 【座談会参加者】 A:全国紙経済部若手記者  B:全国紙政治部中堅記者 C:全国紙経済部デスク D:経済誌中堅記者
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『池上彰の 政治のニュースが面白いほどわかる本 』(中経出版)
A 安倍晋三政権の発足から半年、官邸に変化はありますか? B とりあえず、官邸記者クラブで経済部の記者を見ることが増えたっすね。安倍政権は経済政策を重視しているから、6月12日に安倍内閣としての「成長戦略」を取りまとめた産業競争力会議とか、岡素之・住友商事相談役が議長をやってる規制改革会議とか、経済関係の会議が官邸で頻繁に開かれていて、経済部の記者がしょっちゅう取材に来てる。政治部は閣僚人事や派閥抗争といった政局取材が中心だけど、安倍政権は政権基盤がしっかりしているから党内抗争がまったくなく、政治記者の仕事は開店休業状態(苦笑)。 C 確かに政治部のやつらは政策に興味がないよなぁ。安倍政権になってから政治部の記者だけでは手に負えない話題が多くて、経済部の記者を官邸に常駐させる新聞社が増えた。経済部は忙しくてたまらねえよ。 D それはそうと、安倍政権の経済運営で気になるのはやはり株価の動き【1】。日経平均株価は、野田佳彦前首相が衆院解散を表明した12年11月14日に8664円だったのが、5月23日には1万5942円までつけましたが、そこから下落に向かって6月末には1万3000円前後にまで落ち込みました。アメリカの株式市場の下落や中国経済の悪化懸念という外部要因があるけど、参院選前の安倍政権にとっては痛いですね。 A 知り合いの為替ディーラーが「市場は快感にすぐ慣れる年増女と同じ」なんてヒドイこと言ってましたけど、最初は新味のあったアベノミクスにも、欲求不満を感じ始めたのがこの時期でしたね。成長戦略にしても、6月5日に素案を発表した際に市場から「インパクト不足」と烙印を押されてしまったから、6月14日の閣議決定までに、薬のインターネット販売解禁への異論を押し切りました。 B 成長戦略の素案を発表しても株価が意に反して上がらなかったもんだから、成長戦略を仕切っている甘利明・経済再生担当大臣が相当焦ったらしいっすね。薬のネット販売に抵抗していた厚生労働省に「とにかくやれ!」と激しい剣幕だったとか。 C でも安倍政権も、最強官庁・財務省には及び腰のようだな。成長戦略でも市場や企業が最も強く求めていた法人税減税には触れず、最終案でも設備投資や研究開発の減税拡充などでお茶を濁した。これは税収減を嫌う財務省が最後まで首を縦に振らなかったからで、官邸も財務省と真っ向から戦うのはやめたんだろう。 A それでも読売新聞なんかは、6月13日付の朝刊1面で「成長戦略 投資減税を追加」と大きな見出しを付け、記事も実質的な法人減税をするような書きっぷりでした。 C 読売さんの安倍政権シフト【2】は露骨だよ。安倍首相が6月5日に成長戦略の第3弾を発表した際にも、1面トップで「民間活力の爆発」なんていう見出しを掲げていて、客観報道を是とする日本の新聞とは思えなかったよ(笑)。安倍政権の最大のサポーターと思われている産経新聞なんかは、この成長戦略第3弾について1面で「乏しい新味『4の矢』催促」なんて見出しを付けていて、むしろ読売より距離感を感じるよな。産経は安倍政権となんかあったのかと勘ぐりたくなるよ(笑)。 ■村木事務次官人事に厚労官僚は反発!? C それはそうと参院選後、安倍政権の経済運営はどうなるんだ? A とりあえず成長戦略を進めていくために税制改正論議を前倒しで始めると宣言していたり、話題になりそうな政策の弾を込める準備をしています。官僚たちは「参院選までに休みを取らないと、夏休みがなくなる」なんて焦っていますよ。 B 産業競争力会議もまた議論を再開させる予定ですが、民間議員のメンバーを入れ替えるかどうか検討しているみたいっすね。というのも、ご存じ三木谷浩史・楽天会長兼社長が「事務局に民間人を入れろ」とか「薬のネット販売解禁もできないようなら辞任する」といった発言で政府を引っかき回していて、自民党サイドからは「いつから三木谷のポチになったんだ!」と批判が激しくなる一方らしいっす。 C そうなると、三木谷を強力にプッシュしていて、麻生太郎・副総理兼財務大臣には嫌われてる竹中平蔵・慶応大学教授はどうなるんだ? B 竹中さんは、三木谷氏の陰にうまく隠れて批判を受けないようにしていますね。国家戦略特区構想にからんで4月に行った会見で記者から「競争力会議への不満は?」と問われても、「今は前に向かって動いているので評価は避けたい」と模範解答でかわしていました。 D ところで、官僚たちの安倍政権への評価はどうなんですか? B 6月に決まった幹部人事で官邸主導の強引な人事が行われたことで、かなり不満が高まってきてる。厚生労働省では、冤罪事件で有名な村木厚子社会・援護局長が事務次官に昇格して話題を呼んだけど、最初は大谷泰夫・厚生労働審議官が本命とされていたのに、女性活用を打ち出す官邸サイドが覆したとみられてる。 A 経産省でも、朝日新聞が高原一郎・資源エネルギー庁長官の事務次官昇格を報じましたが、結局は立岡恒良・官房長が昇格することになりました。朝日は完全な誤報でしたが、検討段階で官邸サイドが、原発を推進する資源エネルギー庁長官がトップになることで反原発派の反発が強まることを避けるため、早い段階で候補者リストから高原氏の名前を外したみたいです。 C 参院選をうまく乗り越えても、安倍政権には株価下落と官僚の反抗という難題が待ち受けていそうだな。 (構成/月刊サイゾー編集部) 【1】株価の動き 安倍政権は7月の参院選に勝利してねじれ国会に終止符を打つことを至上命題としており、そのために一貫して株価を上げるための政策を投入し続けてきた。というのも、無党派層は景気が良ければ政権与党を支持する傾向があるからだ。実際、報道各社の世論調査を見ても、株価がピークだった5月の調査以降は徐々に内閣支持率が下がってきている。参院選直前に成長戦略を仕上げ、そこで株価をピークに持っていって参院選に突入するという流れが安倍政権にとってのベストシナリオであったろうが……。 【2】安倍政権シフト 官邸サイドは、安倍政権に友好的な産経や読売よりも、朝日新聞を重視している模様。2月には安倍首相が朝日の木村伊量社長と会食、6月にも曽我豪政治部長からの単独インタビューを受けたりと、蜜月そのものなのだ。というのも、菅義偉官房長官が06年からの第1次安倍内閣は朝日新聞によるネガティブキャンペーンで潰されたと気にしているからだとか。実際、官僚が菅官房長官に政策を提案しても、「これだと朝日新聞に悪く書かれるだろ」と懸念を示すことが多いという。 【ただ今絶賛無料キャンペーン中「サイゾーpremium」では他にも最新号の記事を続々配信中!】音事協会長選で画策する芸能界重鎮の思惑とドンの体調不良日本IBMで横行中"恐怖の"クビ切り! 雇用規制緩和先取り!?!【月刊カルチャー時評】『進撃の巨人』──圧倒的な破壊のファンタジーから人間ドラマへ、人気作はなぜジャンルを跳躍したのか
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