安室奈美恵(40)の引退発表は地元、沖縄でのコンサートが終わった3日後の20日の夕方だった。40歳の誕生日を迎えた日に当たるこの日、彼女は「来年9月16日をもって引退する」とブログに綴った。所属のレコード会社の一部の幹部へも数時間前に報告したというように、安室自身が1人で数年前から抱いていた引退時期だったという。現場のスタッフも「聞いてないよ」と寝耳に水だったようだ。 「安室は所属のエイベックス内で個人事務所として独立して活動しており、直接的な上司はいない。仕事もすべて個人の判断。引退も自分の判断で発表を20日にしたとしても、誰も文句は言えない」(音楽関係者) 突然の引退は決して不思議ではない。これまで安室はすべて自分自身で決断してきている。芸能界入りのきっかけになった「沖縄アクターズスクール」も友達と見に行ったところ、当時のマキノ雅弘校長に「レッスン料免除」でスカウトされ、金銭的な負担をかけないことを約束して母親を説得して入った。バス代もかかることから、歩いて1時間の距離を通ったことは有名な話。さらに沖縄空手の稽古も学び、今のキレのあるダンスの基礎となった。やがて東京の芸能プロの目に止まり芸能界入りを決意したのも自分の判断。母親には事後報告だった。スターを夢見て上京したが、2年間は鳴かず飛ばずの苦しい時代が続いた。 時にはホームシックに陥ることもあったが、決して沖縄に戻ることなくスターになるという決意は変わらなかったという。やがてソロ歌手としてヒットを飛ばし、「アムラーブーム」を作った。人気の最中、今度はバックダンサーだったSAMと電撃結婚。「デキ婚」とはいえ、まだ二十歳。人気のピーク時の出産、育児による休養はマイナス。一説には「妊娠では反対のしようもない」と押し切る形で結婚を決めたという話も。ちなみに、芸能界のデキ婚ブームは安室から始まった。結婚も母親には事後報告だった。当時、母親はその時のことを著者にこう語っていた。 「私も中学卒業後に集団就職で当時は、船で上京しました。就職先が埼玉のSAMさんの実家の大きな病院だったので、相手を聞いたときは驚きました。なんという巡り合わせだろう、と。それも結婚を後押ししたかもしれません。それに、私も沖縄の人とデキ婚でした。別に打ち合わせしたわけではなく、私と奈美恵の運命みたいなものがすべて重なるようでした」 育児休暇を挟んで復帰。「ハングリー精神の強い子」と言われるように、休養期間など関係なかった。歌も踊りもさらにパワーアップ。ダンスミュージックの第一人者となり、他の追随を許さない、ナンバー1の座に付き、今もその座は揺るぎない。 それだけに引退には「なぜ?」の声も多いが、この時期の引退は歌手・安室奈美恵の美学だろう。安室の引退は元プロ野球選手の城島健司氏とかぶる。捕手として大リーグで活躍した実績のある城島氏の引退は阪神の二軍時代だった。人気も実績も十分の城島氏としては寂しいものだったが、「一塁手に転向か指名打者なら一軍のレギュラーとしてまだ活躍できるのに、彼は捕手にこだわった。捕手としてできないなら、引退する」という話を野球担当記者から聞いた。 安室もダンスミュージックにこだわってきた。歌って踊るスタイルはアスリートでもある。すでに年齢的には限界に近い。かといってドレスでしっくり聴かせる歌手やタレントに転身の選択は安室にはない。そしてファンも望まない。あくまでもダンスミュージックの安室である。城島の捕手へのこだわりと同じように、アーティストとしてのパフォーマンスができなくなったら、引退するのが安室の美学だろう。「パワーが落ちた」と言われてまで続ける前に引退を決めた。世界のホームラン王・王さんが「30本を打てているのに辞めた」のとも同じである。 加えて、私生活も微妙に影響している。仕事ではすでに頂点に立ったが、女性として幸せはまだ遠い。結婚後、不幸が襲った。母親が殺害される事件。その後、SAMとも離婚。長男の親権を巡り揉めたこともあった。 今は溺愛する息子と2人暮らしが続く。すでに第二の故郷なのか、京都の一等地に3億円といわれるマンションの一室を購入。東京と京都で暮らしていると言われている。その息子も来年二十歳。そろそろ親離れする時期でもある。今度は女としての幸せを見つける時期になっている。業界の男性との恋愛話も取沙汰されており、「引退後に再婚を考えているのでは」という説もある。その時はすでに私人。メディアも騒ぐことはできない。かつて「普通の生活がしたい」と言って引退したキャンディーズのように、復帰はないだろう。山口百恵、ちあきなおみに続き、安室が3人目の「伝説の歌姫」として語り継がれていくことになる。 (敬称略) 二田一比古 1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。『namie amuro LIVE STYLE 2016-2017 [DVD]』(Dimension Point)
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『HiGH&LOW』で描かれる「絆」は綺麗事なのだろうか? EXILEのドキュメンタリー番組から山王連合会問題を読み解く
──ここまでは、ハイロー狂いの識者の皆様に集まっていただき、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』についてさまざまな考察を行ってきました。最後に、長らくLDHをウォッチしてきたサイゾーpremium編集部が、本作に散りばめられた「EXILEイズム」について、NHKで放送されたEXILEドキュメンタリーの内容に言及しながら考えていきます。
「(一人ひとりが)いつまでもお互いにチーム同士必要とされ続ける存在でい続けないと、人間関係って壊れていくから。同情してずっと暮らしていこうよっていうチームじゃないじゃん、俺たちって」 まるで『HiGH&LOW』に登場するセリフのようですが、そうではありません。これはハイローの祖、 HIROさんがドキュメンタリーでEXILEメンバーに語った実際の言葉です。察しの良い方ならば、この言葉が『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』で起きた「山王連合会の内部分裂=DTC問題」について考える上で、非常に重要な証言になることがわかるのではないでしょうか。やはりハイローの物語を読み解くには、EXILEのストーリーをおさらいするのが有効です。そこで本稿では、2014年にNHKで放送されたEXILEドキュメンタリーを参照しながら、『HiGH&LOW』について考察してみたいと思います。 SWORDとよばれる地区にひしめく5つのチームが抗争を経て、ヤクザや海外マフィアとの戦いに発展していく……という「全員主役」がキャッチコピーの本作ですが、ストーリーの核となるのは山王連合会というチームです。 山王連合会の起こりは、物語の実質的な主人公・コブラとその親友ヤマトが、やむなく犯罪に手を染めてしまった幼馴染・ノボルの帰ってこられる場所を作るために結成したというものでした。その後チームには、山王商店街で暮らすバイク好きやケンカ好きが集まっていったのだと推測します。 今回の映画『END OF SKY』では、そんな山王連合に内部分裂が生じます。ヤクザとの全面戦争に息巻くコブラやヤマトたちとは打って変わって、あまり乗り気になれないほかのメンバーたち。銭湯の一人息子テッツは、ヤクザの地上げに応じなければ赤字の銭湯を続けていくことが厳しい状況です。同じく山王商店街で商店をひらくダン、床屋を営むカニ男など、山王商店街には「現状」を守りたい人間がいます。しかし、寂れていくばかりの山王商店街ではそれも難しい。ヤクザの地上げに応じれば、新天地で各々の商売を続けていくことができるかもしれないわけです。 DTCとはダンとテッツに、鬼邪高校から流れついたチハルが加わったチームを指します。チハルもドラマシリーズで父親の借金に悩まされていたので、「今ある生活を守りたい」というダンやテッツに共感したのかもしれません。 一方コブラ・ヤマト・ノボルの主張は、山王商店街ひいてはSWORD全体にヤクザの手が及べば、一時的には状況が良くなったとしても、近い将来きっと後悔するだろう、というものです。今の生活が多少立ち行かなくなったとて「正義」を守るべきだと。 現状を守るためにヤクザとのケンカから手を引きたいDTCらと、ヤクザという反社会組織に抗い正義を貫きたいコブラたちは、山王連合会の溜まり場で激しくぶつかります。この話し合いの中で、このまま争いに突入したらテッツの実家の銭湯は潰れてしまうとダンが訴えますが、当のテッツにコブラはこんなようなことを言います。 「お前は本当にやれるだけのことはやったのか?」 実はこのシーンに関してだけ言えば、コブラと観客に微妙な温度差があるように感じるのです。ツイッターなどで感想を検索していると、やはりコブラとDTCの対立について語っている向きもいて、その多くがざっくりと言えば「そりゃないよコブラちゃん」「DTCの主張のほうがもっともじゃないのか?」というものでした。 我々観客がそう思うのも無理はありません。ヤクザに店を売らないと銭湯を続けられないテッツに対して、「お前は本当にやれるだけのことはやったのか?」と語りかけるコブラの言葉は、あまりに辛辣ではないか。やれることと言ったって、萎びた商店街の銭湯の息子にできることは限られているだろうし、実家を手伝ってるだけで偉いじゃんテッツ! そう感じる人が多いのではないかと推測します。そしてそれは、もしかしたら我々がDTC側の人間であるからなのではないでしょうか。 日々、生きているだけで精一杯です。多分、筆者も中野の自宅をヤクザに地上げされたら喜んで応じてお金をもらうでしょう。だって私たちは毎日学校へ通うだけで精一杯、家事をするだけで精一杯、通勤するだけで精一杯、目の前の仕事をこなすだけで精一杯なのです。 将来を見据えて、高い志や、将来の目標や、具体的なビジョンを描くことが大切であるということはもちろん分かります。けれどそんなもので今日明日のお腹は膨れないので、ただ日々を粛々とこなし受け流し小銭を稼いで生きていくしかない。そういう人間のほうがこの世界には多いはず。つらい。 山王連合会の話し合いを劇場でぼんやり見ていると、コブラが問いかけてきます。「お前は本当にやれるだけのことはやったのか?」と。やってますよ! 毎日毎日業務に追われてせっせこせっせこ片付けてますよ! それじゃダメなんですか!? と喚き散らしたくもなる。ですから、DTCはそれそのまま私たちの姿なんじゃないかと思ったのです。 しかし、一方で長らくLDHウォッチを続けた結果EXILEを内在化させた筆者は、コブラの主張こそがEXILEの意志であることを瞬時に察知しました。EXILEの意志はそのままハイローの正義なので、結論から先に言うとコブラがDTCに今後歩み寄ることはないと推測します。ハイロー世界(=EXILEユニバース)ではDTCの主張は決して通りません。 ではその「EXILEの意志」とは何なのか? 紐解く鍵は、2014年7月にNHKで放映されたEXILEドキュメンタリー『EXILE~夢を追い続ける者たちの真実・500日密着ドキュメント』の中にあります。 このドキュメンタリーは2012年の『第63回NHK紅白歌合戦』の舞台裏から始まり、13年にパフォーマー勇退を決めたHIROさんと、そんなHIROさんの穴を埋めるべく新体制に向けたメンバーらの活動、さらに新メンバーオーディションの舞台裏に、北大路欣也の重厚すぎるナレーションと共に迫っていく内容です(このキャスティングは「白戸家」繋がりでしょうか)。 2013年の1月1日、LDH会議室にメンバー全員が集合し、HIROさん勇退に向けた話し合いが行われます。EXILEに三が日なんかありません。ATSUSHIさんが言うには「他のメンバーがどういうビジョンを描いているかお互い知らないから、それを共有することでEXILEの未来が見えてくる」のだそうです。そこで各々は、自身が考えるこれからのビジョンについて語ります。「ダンス教育に携わりたい」「ダンスでできる社会貢献をしていきたい」など、メンバーたちが語る将来設計はさまざまです。中でもアッパーなキャラクターでお馴染みのSHOKICHIさんは「ソロで歌いたい」と夢を語り、「ゆくゆくはダルビッシュになりたい」と宣います。いきなりなんだと思うでしょうが、彼の主張はこうです。 「EXILEではダンスばっかりやらせて頂いてるじゃないですか。その中で一番後ろで踊っているヤツが、ソロ(歌手)でガンガン活躍したら『EXILE SHOKICHIを歌わせないで後ろで躍らすの?』みたいな。例えば野球でいうとライトにダルビッシュがいる!みたいな(驚きを世間に提供できるんじゃないか)」 これにはメンバーも大ウケです。SHOKICHIさんはもともと歌手志望でしたが、EXILEではパフォーマーに甘んじていました。その打開策としての「ライトにダルビッシュ」という例え話が、ほかのメンバーやHIROさんの心を掴んだようでした。 そんな賑やかな話し合いのなか、EXILEのイメージからは少し離れる上品なグレーのカーディガンを着た黒髪の彼は少々浮かない顔です。小林直己さんです。 「単刀直入に言うと、ビジョンは今はっきり言えるようなものはないです」 訥々とそう話す直己さん。そらそうだと思います。全員が全員、明確なビジョンを描いてはいられないだろう。将来に迷ったり、未来が見えなかったりするのもまた人間らしさじゃないか、と。しかし直己さんは続けます。 「HIROさんから言われた言葉で今年のテーマにしようと思うのが『NAOKIはもっとEXILEになったほうがいい』」 なんですか。この世界中の理不尽をありったけ詰め込んだような「もっとEXILEになったほうがいい」というパワーワードは。一体どういう意味なんですかHIROさん。どうしちまったんですか。 「もっとEXILEになる」って何?もしも上司に「君はもっとサイゾーになったほうがいいよ」と言われたら次の日に辞表を提出するだろうなと思いながら、筆者は「私は絶対にEXILEにはなれない」と絶望に近い気持ちに陥りました。 ただのEXILEでいるだけでは、EXILEにはなれないのです。いよいよ何を言っているんだとお思いでしょうが、もう少しお付き合い頂きたい。実際にほとんどのEXILEのパフォーマーたちは、「ただのパフォーマー」にとどまっていません。あるものはコーヒーショップを開き、あるものは演劇を始め、そしてあるものはアパレルブランドを立ち上げました。今のメンバーたちは皆EXILE以外のグループを兼任したり、新しいプロジェクトを立ち上げたりして、「ただのEXILE」など一人もいない状況が完成しつつあります。 ATSUSHIさんは言いました。 「歌にしろ芝居にしろ、死ぬ気でやっている人は(他にも)いるわけだから、(明確なビジョンを)決めていかないと生き残っていけない」 この元旦に行われたEXILE会議は、そのまま山王連合会の話し合いに通ずる部分があります。山王連合会=EXILEとすれば、あの時の直己さんがDTCでしょうか。山王連合会=EXILEという街があって、そこで生きていくだけで大変でしょうし、もうそれだけで充分に立派だと思います。でも、その街では、ただ生きているだけではダメなのです。テッツは銭湯を守るだけではダメで、「ダルビッシュになりたい!」くらいの大きなビジョンを描かなくては、山王連合会=EXILEでは認められないわけです。 例えば、あの時テッツが「山王商店街では銭湯ばっかりやらせて頂いてますが、その銭湯がスーパー銭湯だったらヤバくないですか? さらに番台にDJ卓とか置いて昼は銭湯、夜は踊りながら浸かれる銭湯とかにしたらノリノリでマジでヤバくないですか?」くらいのプレゼンができていれば、コブラも考え直したかもしれない。HIROさんみたいなノリで「それ、ヤバイね」とか言ってくれたかもしれない。 ビジョンを描けない者はEXILEにあらず。ただ今ある生活(=現状)を守りたいだけのDTCに移入しているようでは、我々はEXILEにはなれないのです(なりたいかどうかは別として)。 ここで、冒頭のHIROさんの言葉に戻ります。 「いつまでもお互いにチーム同士必要とされ続ける存在でい続けないと、人間関係って壊れていくから。同情してずっと暮らしていこうよっていうチームじゃないじゃん、俺たちって」 この言葉こそ、コブラがDTCに伝えたかった真意であり、山王連合会ひいては『HiGH&LOW』のあり方なのではないか。ハイローは「仲間の絆」を描いたストーリーですが、ともすればこの「絆」という言葉には綺麗ごとや馴れ合いのような響きを想起されがちです。しかし、ドキュメンタリーでHIROさんが語った「絆」は、いたってシビアな側面も持ち合わせていました。互いに必要とされ続ける「仲間」でいるためには、互いの努力や発展が不可欠である、と。だからDTCは努力しなければならない。銭湯が潰れても食っていけるような努力をして、その先のビジョンを描かなければコブラが認めてくれることはないでしょう。 DTCはやっぱりそのまま私たちの姿なんじゃないかと思います。うだつの上がらない市井の人々の代表として、目の前の生活に手一杯で夢やビジョンを描ききれないものの存在を描いてくれたんじゃないでしょうか。そしてそんなDTCに「やれるだけやったか!」と発破をかけてくれるコブラの存在が、そのままハイロー=EXILEのメッセージなのかもしれません。 ところで、13年元旦のEXILE会議で「もっとEXILEになったほうがいい」と言われた直己さんは、その後兼任する三代目J Soul Brothers大ブレイクを経て俳優・パリコレモデルに邁進、サイゾー7月号のインタビューにご登場いただいた際には「言葉ではなくエンターテインメントの奥のほうで感じてもらおうというのが、EXILEの哲学なんです」とその哲学を熱っぽく語ってくださいました。 なるほど、これが「もっとEXILEに成る」ということか。さらにEXILEを超越し、ターミネーターにまでなった直己さんの姿を見ていると、眩しいばかりです。 さて、今日も今日とて日々を暮らすのに精一杯、やはり先のビジョンなんか描けない筆者は、コブラに発破をかけもらうため劇場へ足を運びます。だって『HiGH&LOW』には力があるから。EXILE TRIBEから溢れ出る生命力をじゃぶじゃぶと浴びることができる、いわば「観る栄養剤」です。サイゾーpremiumでは、これからも懲りず恐れず、いつかHIROさんに「ヤバイね」と言ってもらうことを夢見ながら『HiGH&LOW』を追っていこうと思います。 あーあ、いつかEXILEになりたいな。いや、これは本当に。 (文/サイゾーpremium編集部)EXILEのドキュメンタリー番組のワンシーン。(絵/骨つぎ子)
小説家も唸る! 海猫沢めろんが語る「『HiGH&LOW THE MOVIE2/ END OF SKY』の脚本ココがスゴい!」
──小説家の海猫沢めろん先生がハイローにハマってしまったという(コブラ推しだそう!)。そこで今回は「小説家は『HiGH&LOW』をどう見るか」という視点でご寄稿いただいた。『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』の脚本がいかに素晴らしいか、めろん先生のハイロー論とはいかに。
なにかがおかしい。 気づいたのは、去年の夏頃だった。 ある時期から突然、ツイッターのタイムラインで「HiGH&LOW」という言葉を頻繁に見かけるようになった。 どうやらEXILEの映画らしい。 EXILEか……。 俺のフォロワーとはどう考えても接点がなさそうだが……なにが起きているんだ。 インターネットスキルを駆使して情報を集めてみると、腐女子関係にウケているということはわかったのだが、どうもそれだけではなさそうだ。友達の男子も興奮している。わからん。まあ、そのうち見てみるか。 そう思ったこともすっかり忘れ、半年が経った。 その頃の俺は、知り合いのいない熊本に引っ越したせいで、あまりにもストレスが溜まっていた。 そんな時、誰かが「HiGH&LOW」という映画を観ると気分が良くなるよ、と教えてくれた。 気軽に摂取するとヤバいことになる気がしたが、TSUTAYA DISCASを使うと3日後にはDVDが手元に届いていた。 観た。 角刈りオッドアイのオッサンが暴れ、李とかいう韓国人が「すごぉい」と口にした瞬間、笑った。 だが、バイクに乗った金髪のイケメンが「ぶっ殺されてえのかてめえら……」と凄んだとき、俺のなかでなにかが覚醒した。 ……これは。 ……すげえ……。 ……すげえ、とにかくすげえ……。 ……わかんねえけどなんかすげえ……。 出てくる役者のオーラとアクションのレベルが高すぎる。 まったく前知識がなかったので、映画に出てるのは全員EXILEだと思っていた。 「ははーん……なるほど、これは全部、実際のEXILEのバックとかで踊ってるダンスチームにちがいない。映画を見ればLDHのことがすべてわかるって寸法か。雨宮兄弟ってやつは3人組のPerfumeみたいな感じだろう……そういえばこのTAKAHIROってやつは見たことがあるぞ。斎藤工ってやつもEXILE一族か。そういうことか。MUGEN=ZOOだろ? たぶんこの琥珀さんとかいうおっさんを演じてるのが、HIROって社長で、九十九さんが副社長……わかってきたぞLDHが」 完全にまちがっていた。 そんな俺が今回、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』通称『ザム2』を観てきた。 とてもおもしろかった。 非常にアホっぽい感想だが、こう言える映画はなかなかない。 俺は普段小説を書いているので、映画を見ているとテクニカルな部分が気になってしまうことが多い。撮影技術についてはあまりわからないが、脚本やストーリーテリングの部分についてならわかる。 この映画の脚本は相当レベルが高い。 世界観とアクションがカオスすぎるため、脚本が注目されることは少ないだろうが、これは間違いない。 ザム2の脚本には、少なくとも3つ素晴らしい部分がある。 【1】「セリフ」 ザムはドラマ版に比べ、かなりセリフがタイトだ。長いセリフは、どうしてもアクションシーンのテンションを殺してしまう。最小限で最大の効果を産むセリフが必要だ。 「琥珀さん!」「パリタイ」「だーるまさんが転ぶかな」等、役者のアドリブで喋ってる部分もあるが、とにかくワンフレーズでキャラが見えるセリフは秀逸。 特に注目すべきはザム2前半で、山王連合会のコブラがホワイトラスカルズのROCKYに、「立てなくなったらいつでも呼べ」と告げる場面だ。 後半、文字通りROCKYが立てなくなったところへ駆けつけるコブラ……前半の伏線を受けるセリフがいくらでも思いつく見せ場だが、あえてここに言葉はない。 結果的にセリフがなくとも、ビンビン感情が伝わってくるシーンになっている。 もともとあった脚本が現場で変更された可能性もあるが、だとすればその判断は正しい。 すべてが過剰なこの映画において、さりげない引き算演出を入れるあたり、実にクレバーだ。 【2】「マクガフィン」 マクガフィンとは、映画において重要なキーになるアイテムのことだ。 ヒッチコックのインタビュー集『映画術』(『定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー』晶文社)で、彼は「映画内でキーになるものなんて爆弾だろうが、マイクロフィルムだろうがなんでもいいんだ」的なことを言っている。 要するに「なんかみんなが狙ってる重要そうなアイテム」であればそれでいいのである。 マクガフィンの中身にこだわる必要などないのだ。 ザムにおけるマクガフィンは当然ながら、あの「USBメモリ」である。 あれなんなの? なんで琥珀さんUSB返したの? 使い方わかんなかったんじゃない? ていうかパソコンにセットしたとき勝手に刺さるギミックなんなの? 意味あんの? とかいろいろ疑問はあるだろうが、そんなことはどうでもいい。問題はあれをめぐって映画が動いているということなのである。 あのUSBのマクガフィンぶりは素晴らしい。 改めて、マクガフィンっていうのはこういうことだよな、と再認識させてくれる。 【3】「感情線」 映画や小説やマンガ、あらゆる物語を書く上で起承転結やらなんやらという構造を気にする人がいるが、実はそれは重要ではない。 本当に重要なのは読んでいる人と物語のテンションがシンクロすることなのだ。 ストーリーテリングでは理屈のつながりよりも、感情のつながり——感情線を優先すべきなのである。 映画でよくあるのが、この感情の上げ下げを音楽で補うという手法だ。 たとえば映画内の悲しいシーンでは当然観客も悲しくなってもらいたい、だがセリフと演技だけでは限界がある。 そこで音楽を流すわけだが、まるでPVのようにわかりやすすぎるほどに場面の感情に即していると、わざとらしすぎて白けることも多い。 ところがザム2ではともすれば陳腐になりがち、諸刃の剣とも言えるPV的演出が、圧倒的なアクションと画の説得力によって完璧な効果を上げているのだ。 ……と書くと、物語的な整合性を置き去りにしてテンションで突き抜けるタイプの映画か……と思うだろう。 しかし、実はドラマ版も含めて「HiGH&LOW」全体を見ると、キャラクターたちの背景にある行動原理やバックグラウンドはかなりしっかりと考えられていることがわかる。謎すぎる琥珀さんの過去もおそらく今後語られていくはずだ(たぶん)。 というわけで、ザム2は、非常に考えさせられる映画だった。 小説という仕事は言葉を使うだけに、理屈と整合性にこだわりがちだが、そんなことはどうでもいい気がしてきた。 今後、キャラクターが狂っている理由がわからないという指摘をする編集者がいたら「ぶっ殺されてえのかてめえら……」と返そうと思う。 ザム3も期待してます。 海猫沢めろん(うみねこざわ・めろん) 1975年生まれ、大阪府出身。高校卒業後、紆余曲折を経て上京。文筆業に。『左巻キ式ラストリゾート』(星海社文庫)でデビュー。『愛についての感じ』(講談社)で第33回野間文芸新人賞候補。カリスマホストがクラウドファンディングを利用して子育てに挑戦する新刊『キッズファイヤー・ドットコム』(講談社)が好評発売中。海猫沢めろん氏の最新小説「キッズファイヤー・ドットコム」(講談社)
「コブラ=岩田剛典どうする問題」勃発!『HiGH&LOW』新作映画で浮かび上がった課題と期待
――「LDHウォッチャー」を自称するサイゾーpremiumでは、去年に引き続き『HiGH&LOW』に殴られてしまったライター2人による対談を決行。前編では、ヤンキーマンガとEXILE史学に詳しいライターの藤谷千明さんと、アクション映画に明るい加藤よしきさんによるハイロー愛が炸裂したが、後編では『HiGH&LOW』に現時点で残された課題について熱く語っていく。「岩田剛典を“ガンちゃん”とは呼べない」問題や、「ハイローは何ジャンルか?」議論、さらには北野武の名言も飛び出る後半戦もご笑覧あれ。(なお、今回も同席している編集は重度のLDHオタです) ※本編には『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』のネタバレが含まれますのでご了承ください。すでに『FINAL MISSION』も最高の予感(『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』特報映像より)
アクション映画としての矜持!常軌を逸した演者たち!そして「ヤンキー卒業問題」…『HiGH&LOW』新作の”ヤバさ”を語り尽くす!
――EXILE TRIBEが一堂に会したお祭り映画である『HiGH&LOW』に殴られ、非公式ブックまで制作してしまったサイゾーpremium編集部が、ハイロー新作映画にまた殴られた!
ということで、昨年の『HiGH&LOW THE MOVIE』の公開時に行った、ヤンキーマンガとEXILE史学に詳しいライターの藤谷千明さんと、アクション映画に明るい加藤よしきさんによる対談を今回も再び敢行。前回は「村を焼かれた窪田正孝」「国産の海外映画」「HIROさん版『エヴァンゲリオン』説」などのパワーワードが飛び出すアツいものとなったが、それから1年がたち、8月19日に公開された続編『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』を2人はどう見たか? 「HiGH&LOW」の世界を語り尽くします。(なお、今回も同席している編集は重度のLDHオタです) ※本編には『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』のネタバレが含まれますのでご了承ください。『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』予告編より
藤谷 去年の対談の時点で「続編はあるだろう」と言ってはいましたが、まさか2、3を立て続けに公開するとは……(編注:『HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION』は11月11日公開予定) 加藤 あの頃の俺たちはただ、適当なことをしゃべっていただけだった……。 藤谷 適当なことをしゃべるのは間違っている。でも、適当なことをしゃべりたいと思う気持ちは間違ってないですよ! 加藤 とにかく本論に入る前に、まずは「関係者の皆様、ごめんなさい」と言っておきたいです。昨年の対談を読み返すと、本当に適当なことを言っていて目も当てられないです。申し訳ない。【ポイント①】いきなりだけど、エンドロールがすごい!
編集部 とはいえ、昨年の対談を今読み返すとかなり的を射ているなと、手前味噌ながら感じます。前回、加藤さんが「ハイローはヤンキーの『エヴァンゲリオン』だ」と言っていましたが、最近公開された『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』の予告編は完全に『エヴァ風』の作りでした。偶然とはいえ、予言的中です。というわけで、今回も好き勝手に語っていきましょう! まずは新作について率直な感想をお伺いしたいです。 加藤 『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』(以下、ザム2)は、まためちゃくちゃおもしろかったです。昨年の『HiGH&LOW THE MOVIE』(以下、ザム)と比較した時に、すごく洗練されていましたね。テンポよく切るべきところは切って、増えたキャラクターも個性が立っていて魅力的で、ますますハイロー世界が楽しくなったと思います。それにザムへの世間の反応を取り入れて「ここまでやっていいんだ」と作り手側も理解したのでしょうね。 “ターミネーター源治”(小林直己)や、あの圧巻のカーチェイスのように、前作のリアリティラインだったらおそらくできなかったであろうものが実現されていた。 そして何より言っておきたいのが、ラストシーンからのエンドロール! 藤谷 あれは本当に素晴らしいですね。コブラ(岩田剛典)が九龍グループの善信(岸谷五朗)に前蹴りをかまして、SWORDが全員集合して、バーン!と「END OF SKY」のロゴが出て、「HIGHER GROUND」が流れるというタイミング、最高以外の言葉が見つからない。 加藤 本当に、完璧なタイミングでした。スパッと終わるのが気持ちいい。いくら続編がある前提とは言え、あそこで映画を終わらせるって、今の邦画においてすごく勇気があると思いました。そして「終わったー!」と思ったらとんでもない映像が流れはじめて、「どうなってるんだよ!」ってなりました。直前に善信が「隠蔽できるんだよ……!」って力強く言っていたわりに、街が本当にめちゃくちゃになっていて、全然隠蔽していないところも込みでたまらなかったです。唯一の欠点は、横の映像がすごすぎて、スタッフロールに全然目が行かないことでしょうか。 藤谷 「エンドロールをきちんと観ずに帰ってしまう問題」っていわれるじゃないですか。ザム2のこれは絶対に席を立てないですよ。ザム3の、おそらく本編有数の大変な場面がバンバン流れてくる。普通の映画だったら多少は出し渋ったりするかもしれない。それが一切ない恐ろしさを感じました。使徒が襲来しそうなこの予告編。
藤谷 アクションに関しては、前作も十分にすごかったですが、さらに進化していました。一番すごかったのは、言うまでもなくカーアクション。中盤の源治VS雨宮兄弟(TAKAHIRO、登坂広臣)&琥珀さん(AKIRA)・九十九さん(青柳翔)でしょう。これは歴史に残るアクションシーンですよ! 加藤 日本映画で観たことのない映像でした。あの車の縦回転は、日本で初めてやったらしいですね。 藤谷 クリストファー・ノーランの『ダークナイト』【1】でもやってましたが、「キャノンロール」というそうですね。今回のザム2のキャノンロール、本当に志の高い回転ですよ。 加藤 USBを奪った敵の車に向かって九十九さんがダッシュしてからの、フロントガラスへの飛び込みもすごかった。最近の韓国映画では、車の中から擬似ワンカットのようにして撮影するアクションシーンがあるんですが、あれの応用且つそれ以上のインパクト、ケレン味がありました。あとは、琥珀さんと源治の殴り合い。あれはもう怪獣映画みたいでしたね。 藤谷 私はあのシーンで、『マトリックス1』【2】終盤のモーフィアスとエージェントのバトルを思い出しました。攻撃力も守備力もカンストしてる人同士の殴り合いというか。 加藤 琥珀さんが殴ったあと、源治がユラ〜ッと立ち上がりますよね。普通だったらそこで「えっ?」とひるみそうなものですけど、琥珀さんが躊躇なく戦いを続けるところが良い。2人のキャラが出ている。 藤谷 前作でのベストバウトは劉VSスモーキーで意見が一致しましたが、今回はどうですか? 加藤 格闘シーンでいうと、源治VS琥珀さんと、クライマックスのジェシー(NAOTO)VSコブラですね。ツイッターで拡散されているジェシーVSコブラのgif動画は、永遠に観ていられる。ジェシーのあの着地は一体どうなってるのか、今も理解できないです。ダンスではよくある動きなのかもしれませんが、戦っている最中にああいう形で入れてくるのは初めて観たので衝撃を受けました。それと、ジェシーがすごくて見逃しがちなんですが、あのシーン、コブラもコブラで一瞬壁を蹴って体勢を変えているんですよ。みんなサラッとすごいことをやっていますね。【ポイント②】歴史に残るカーアクション!車に飛び込む九十九さん!
加藤さんが永遠に見ていられるジェシーVSコブラのシーンは5:32から(「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY」Action Special Trailerより)
藤谷 話の本筋には深く関わっていないですけど、ヤマト(鈴木伸之)VSブラウン(岩永ジョーイ)も印象に残っています。アクションとしては“ガタイのいい人VS細身で身体能力の高いすばしっこい人”というバランスがすごくいい。しかもブラウンがナイフを使うじゃないですか。『クローズZERO』【3】しかり、ヤンキーものでナイフを使うのは “切羽詰まった卑怯な人”という記号になりがちなんですが、ブラウンはかっこいいナイフ使いという見せ方になっていた。それと、ブラウンが英語でしゃべってくるのに対して、ヤマトが持ち前のIQの低さで「は?」と「ダイジョブー?」で済ますのが秀逸でしたね。私の考える「ハイロー感」はあれなんですよ。ブラウン役の岩永ジョーイさん、たしか『クローズEXPLODE』【4】『TOKYO TRIBE』【5】にも出演していたと思うんですが、改めて調べたら元ジャニーズJr.で石原軍団という経歴の持ち主でした。ここで彼を投入してくるとは……。 加藤 RUDE BOYS新メンバーのユウ役だった佐野岳くんも、すごい動きをしてましたね。彼はぜひザム3では、幹部クラスとのタイマンシーンをやってほしいです。 藤谷 彼は『仮面ライダー鎧武』(テレビ朝日)【6】の頃から、生身ですごいアクションをしていたことが話題になっていました。メンディーもよく出てる『最強スポーツ男子頂上決戦』(TBS)でもその高い身体能力を発揮してます。去年の10月にツイッターで「それにしても、アクション映画でたいなーーー!」ってツイートしていて、ファンは「ハイローに出て!!」って言ってたんです。そしたら、本当に出た。LOVE、DREAM、HAPPINESSとはこのことですよ(?)。ザム2のオープニング、無名街の廃墟でのジャンプシーンで、満面の笑みの佐野岳くんがスクリーンに大写しになると私は毎回泣いてます。もう5回は泣きました。 加藤 ただ、ジェシーVSコブラが素晴らしいがゆえに、どうしても最後のロッキー(黒木啓司)VS蘭丸(中村蒼)がかすんでしまうんですよね……。2人とも、すごくいい動きはしているんですよ。でもほかが派手すぎるから……。単純に、2人とも動きやすい恰好をしていないから、そんなにアクロバティックなことはできないというのはありますが。 藤谷 ガラスで手を傷つけたりするような、、蘭丸が反則技を使うことで動きが鈍くならざるを得ない部分もありますしね。 加藤 でも、ロッキーがコブラのバンダナを拳に巻いて、怪我をしている手で蘭丸を殴るのは、印象に残る良いシーンになっていました。アレがあるから、なんだかんだで燃えましたね。新たなハイロースター誕生の予感…(岩永ジョーイHPより)
藤谷 蘭丸については、もちろん中村蒼さんはこれまでにない役をすごく頑張っているんですけど、鑑賞後の印象として、新キャラの中ではジェシーに食われてしまっていたような。。ジェシーは良くも悪くもインパクトが強いし、フックになるキメ台詞も多い。「お仕事ですからねぇ。make money〜?♪」もアドリブだったという話がありますし、セリフのひとつひとつが“ヤバい”んですよ。 加藤 ジェシーと源治は、ハイローの世界を理解しきった上で演技のベクトルが定まっていると思うんですよ。「この世界ならこれくらいやっていい」っていうことを、よくわかっていた。普通の俳優だったら、「サン・キングス刑務所にいて、オレンジ色のツナギの囚人服を着て、懸垂しながら登場します」って言われたら困惑すると思うんですよね。でもそこで「そういうことね」と理解して、「じゃあこれくらいやっていいな」ってぱっとつかめる反射神経はすごいと思う。蘭丸は、普通の映画だったら十分ラスボス感はあると思うんです。ただ、いかんせんこれはハイローなので。一方、九龍グループの新キャラたちは、全員そこをしっかりつかんでいましたね。【ポイント③】演者はまず常軌を逸すべし――過剰であるほど輝く世界
藤谷 クライマックスの善信もそうだし、克也(加藤雅也)、植野(笹野高史)、源(高嶋政宏)、藤森(木下ほうか)、全員がハイローの世界観やベクトルをしっかり理解している感じがありましたね。やはり場数のなせる技でしょうか。特に木下ほうかさんの肩のすぼめ方が最高でした。 加藤 高嶋さんの、あの窓ガラスのシーンも最高でした。あれくらいやっていい世界観だというのを、ベテラン俳優さんたちはつかんでいたんでしょうね。岸谷さんの「隠蔽できるんだよ……!」の言い方とか。 藤谷 村山役の山田裕貴さんは、ドラマ版から培ってきた経験と本人の反射神経が相変わらず働いてました。今回も「鬼邪高校、課外授業始めまーす」とか「だるまさんがころぶかな?」とか、抜群なアドリブをぶち込んでいたみたいですし。でも、このままハイローがシリーズ化したら、LDH外の若手の俳優がどんどん出ることになるでしょうが、大変ですよね。まず常軌を逸した芝居・キャラクターを自ら作っていかなければならない……。 加藤 若手の俳優たちにとって、一種の修練の場になったら面白いですね。九龍の皆さんみたいに、はっちゃけた演技をどんどん提案してキャラを立たせていくみたいな。 継続しての出演陣でいうと、雨宮雅貴役のTAKAHIROがすごくよかったです。琥珀さんにUSBを託すときの「兄貴が死んでさ」の言い方が、クールでありつつ声が震えている感じを出していた。『THE RED RAIN』を踏まえて、TAKAHIROさんの中でキャラが固まったんだな、と。ベテラン勢の迫力も圧巻。
藤谷 ザムのラストの琥珀さんが改心して泣いているシーンと、『THE RED RAIN』で雅貴が兄である尊龍(斎藤工)を失って雨の中で泣いてるシーンが左右対称で交互に挿入されるところも、画として美しくてすごく考えられていましたね。なおかつ、雅貴役のTAKAHIROさんと琥珀さん役のAKIRAさんは、06年の“同期入社”ですし。 編集部 2人は、「EXILE第2章」で加入したボーカルとパフォーマーです。ファンの間では「2章コンビ」と呼ばれていますし、本人らも「俺たちは二人三脚」と公言しています。だから、ザム2での琥珀さんと雅貴の共闘は「EXILE〜〜〜〜!!!」ってなりました。『HiGH&LOW Special Trailer 「THE RED RAIN」』より
加藤 カーアクションシーンがあまりにすごいので、「琥珀さん&九十九さんと雨宮兄弟の映画だ」と思う部分はありますよね。 藤谷 琥珀さんの映画であり、それについていく九十九さんが「琥珀さん、俺車ダメだわ」で前半は全部持っていくじゃないですか。 加藤 ただ、最後の前蹴り一発で、あそこからコブラの映画になった感じがしたんですよ。変な話ですが、あのエンドロールはエンディングかつ、コブラの物語のオープニングでもあると思うんです。 そもそも、ここまでアクションとキャラクターの話ばかりしてきましたけど、ストーリーのこともちゃんと言っておきたいです。最初に「続編が公開される」と聞いたときは、正直「引き伸ばしにかかるのかな?」と思ってたんです。いま、洋画でも邦画でもユニバース化して引き伸ばしている作品がすごくたくさんある。でもハイローは違った。物語が急展開を迎えて、決着の仕方はわからないにせよ、終わりに向かって突き進んでいる感じもすごく気持ちよかったです。「スターウォーズ」の『帝国の逆襲』みたいな感じで、単純に物語としての続きが気になる。ドラマシリーズはキャラ紹介の色合いが濃かったけれど、ザム2からはストーリーで引っ張っていくんだな、と感じました。 藤谷 正統進化を遂げてましたね。昨年の対談で「アクションの尺がもっと欲しかった」という話をしましたけど、今回はストーリーを引っ張る形でアクションがありながら、ドラマ自体の強度も上がって、厚みが出てきました。 ザム2の予告編でコブラが「一緒にいるだけが仲間じゃねぇ」って言っているのを観た時は、ヤマトとコブラの「シビル・ウォー」(『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』【7】)になるのかと思ったんです。それがコブラ・ヤマト・ノボル(町田啓太)対ダン(山下健二郎)・テッツ(佐藤寛太)・チハル(佐藤大樹)という分裂になるのは意表を突かれました。ドラマのシーズン1ではコブラ&ヤマト対ノボルという対立がありましたが、あれは一言でいうと「進路の問題」で、道を誤ってしまったノボルを、コブラとヤマトが説得しようとしていた。今回の対立は、どちらかが間違っているわけではない。 ここで浮上してくるのが、「不良(アウトロー)の進路問題」なんですよ。1990年代以降のヤンキーものって、『莫逆家族』(田中宏/講談社)【8】にしても『サムライソルジャー』(山本隆一郎/集英社)【9】にしても、不良少年がどうやって自分の進路を決め、生活を選ぶかがひとつのテーマになっています。バブル期に連載されていた『BADBOYS』(田中宏/少年画報社)【10】だとそのまま青春の終わり=物語もそこで終わっていたのが、その続編的位置づけの『グレアー』や、さらに続編の『KIPPO』では嫌というほど仕事や家庭といった「その後」にどう向かい合うのかが描かれているんです。「その後」問題はこの20年くらいの不良コンテンツのトレンドといってもいい。でもこれらの作家たちや、『クローズ』『WORST』の高橋ヒロシにしたって、誰もこの問題に答えを出せていないんです。先述の『サムライソルジャー』は渋谷のギャングの抗争の裏にヤクザのカジノ計画があるという話で、ハイローを思い起こさせる設定が結構あります。この作品も、最終的には「不良少年は居場所がないし粗暴だけど、今時の無気力な若者よりは熱いやつらの方がいい」みたいなポエムな軟着陸になってしまい、どうしてもすっきりしていない。この山王連合会シビル・ウォーも、まだ落としどころが見えてこないので、その点は心配ではあります。 加藤 「ヤンキーの進路問題」にうまく応えたヤンキーマンガは、まだないですよね。一応『クローズ』は最後に「卒業後はこういう進路にいきました」みたいな説明は入るけど、その後の生活で高校時代と同じ輝きを持てているか、というのは絶対描かれない。 藤谷 そこはまだ誰も結論が出せていないんですよ。ハイローにもつながるところとして、当たり前ですけど、喧嘩シーン、アクションのほうがコンテンツとして引きが強い。不良がリアルに将来に迷ったり葛藤しているのって、メイン読者からすればそこまで興味のあることではないでしょうし。 そもそもコブラたちって、MUGENのときは「からまれてるヤツを助けただけなのに警察に目つけられた」ってプンスカしてましたけど、山王連合会は不良だからって迫害されている描写もない。だからチハルの言葉じゃないですけど、「山王連合会って、何と戦ってるんですかね?」となるのも仕方ないのでは。 加藤 そこでザム2では、九龍という敵がより明確に出てきたのかもしれないですね。 藤谷 確かに、物語がこれまでふわっとしていたのが、九龍と直接対決の場面が出たことでちょっと固まってきました。そこがまさに正統進化なんですけど、それによって山王のアイデンティティはかえって揺らいできている。これまでは作中でもなんとなく見過ごしていた、進路というか「生き方」問題が浮き彫りになって、観てるほうも「あれ?」と。 またマンガの話になってしまうんですが、山本隆一郎の新作『元ヤン』【11】は、「地元を愛する元ヤンが、同じく地元を愛する全国のヤンキーたちと戦って全国制覇しようとする話」なんです。「全員主役」ならぬ「全員山王」みたいな。ハイローもウッカリすると自分たちの問題を先送りにして、ほかの地区の山王みたいな連中と戦う話になる可能性も……。 加藤 その問題に対しては、作り手側も自覚は絶対にあるでしょうね。だからザム2のクライマックスで、DTC(ダン・テッツ・チハルの略)は仲違いしたまま喧嘩に本当に参加しなかった。別の作品を引き合いに出して恐縮ですが、僕は映画『ワイルド・スピード』が好きで、最新作の『アイスブレイク』【12】もすごく面白かったんですけど、どうしても引っかかるところがあるんです。『アイスブレイク』では、ヴィン・ディーゼル演じるドムという“ファミリー”のリーダーが、いろいろあって悪事に手を染める。その過程で、前作『スカイミッション』の敵で、ファミリーの一員を殺害したデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)が仲間に加わるんです。『ワイスピ』って絶対最後にファミリーでバーベキューをするんですけど、そこに普通にジェイソン・ステイサムがいる。 藤谷 ハイローでいうと、二階堂(橘ケンチ)がしれっと山王のお祭りにいるようなものですね。「お前、龍也もノボルも轢いたじゃねーか!」っていう。 加藤 そうそう。だから観ていて、「え、いるの!?」ってなっちゃうんですよ。殺されたキャラが好きだった人からすれば、納得がいかない。そこに誰かが作中で疑問を呈してほしいんですけど、ドムが「俺はこいつを許す」みたいな空気を出したら、みんな「ドム……!」ってなってしまう。忖度ですよ。そこに違和感があって、今までのシリーズほど乗り切れなかったんです。対してザム2では、DTCが普通に出て行ってしまう。 藤谷 「実はあとから参戦します」じゃなくて本当に来ないのは、セオリーを破ってますよね。 加藤 本当はあそこで助けに来るのがいちばん簡単ではあるんですけど、それを撮らなかった。そこで作り手側が、山王の進路問題というか、カジノができることによって街がどうなっていくのかというテーマに真摯に向き合おうとしているのが伝わりました。 藤谷 もうひとつ進路問題でいうと、村山たち鬼邪高3人組も謎ですよね。ザムのラストでは「俺たちはもう卒業だ」「山王入れてくんねぇ?」って言ってたのに、今回も学ラン着てるし。 加藤 ただ、村山たちは卒業して「旅に出る」とか言い出してもいいと思うんですよ。『今日から俺は!!』(西森博之/小学館)【13】みたいに、3人でバイクか何かに乗って「じゃあな〜」って遠ざかっていくとか。達磨も「それからも幸せに賭場を続けていきました」で済む。ラスカルズはすでに店を経営している。山王だけが“将来”という、決着を付けないといけない問題に直面している。 藤谷 無名街は……? 加藤 無名街は、明日を生きるほうが大切だから……。 藤谷 俺たちは、生きることを決してあきらめない……。 加藤・藤谷の熱いハイロー談義はまだまだ終わらない! 後編は明日公開予定です。 (構成/斎藤岬) <プロフィール> 加藤よしき ライター。1986年生まれ。「Real sound」などで執筆。『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』(洋泉社)に寄稿。 ブログ:http://blog.livedoor.jp/heretostay/ twitterID:@daitotetsugen 藤谷千明 ヴィジュアル系とヤンキーマンガとギャル雑誌が好きなフリーライター。1981年生まれ。執筆媒体「サイゾー」「Real sound」「ウレぴあ」ほか。 twitterID:@fjtn_c <註釈>【ポイント④】山王連合会分裂で芽生えた「ヤンキー卒業問題」
【1】『ダークナイト』 2008年公開/監督:クリストファー・ノーラン/主演:クリスチャン・ベール/アメリカン・コミック『バットマン』を原作とした実写映画作品。敵役・ジョーカーを演じたヒース・レジャーの存在感は語り草に。ちなみにコブラ役の岩田剛典も好きな映画に本作をあげている。
【2】『マトリックス』 1999年公開/監督:ラナ・ウォシャウスキー、リリー・ウォシャウスキー/主演:キアヌ・リーブス/SFアクション映画の金字塔にして、CG映画のレベルを引き上げたといわれる傑作。
【3】『クローズZERO』 2007年公開/監督:三池崇史/主演:小栗旬/若手イケメン俳優×ヤンキーマンガ実写化作品における00年代最大のヒット作。ハイローも存分にこの作品の影響を受けているはずだ。興行収入も25億円を記録した。
【4】『クローズEXPLODE』 2014年公開/監督:豊田利晃/主演:東出昌大/興行収入は11.4億円にとどまり、大ヒットした小栗旬主演の『クローズZERO』『ZERO II』ほどのヒットはしなかったが、一部のマニアには受けた作品。ちなみに、コブラ役・岩田剛典の映画初出演昨品でもある。
【5】『TOKYO TRIBE』 2014年公開/監督:園子温/主演:YOUNG DAIS/井上三太による同名マンガの実写映画。近未来のトーキョーにひしめくトライブ(族)たちの暴力と愛と友情を描く。アクション監督は『THE RED RAIN』のアクションも手がけた匠馬敏郎。ハイローでは「9」役でおなじみのラッパーANARCHYも出演している。
【6】『仮面ライダー鎧武』 2013年10月~2014年9月放映/テレビ朝日系/監督:田﨑竜太、柴﨑貴行、諸田敏、中澤祥次郎、石田秀範、金田治(ジャパンアクションエンタープライズ)、山口恭平/主演:佐野岳/平成仮面ライダーシリーズ第15作目の作品で、戦国武将とフルーツを組み合わせたイメージのライダーが活躍した。とにかく果汁がほとばしる。
【7】『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 2016年公開/監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ/主演:クリス・エヴァンス/「マーベル・コミック」の実写映画を同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う『マーベル・シネマティック・ユニバース』シリーズの13作品目。共にアベンジャーズとして活動していたキャプテン・アメリカとアイアンマンが、志を同じにしながらも激しく対立する。正義とは何か?ヒーロー映画につきまとう問題に挑んだ傑作。
【8】『莫逆家族』(田中ヒロシ/講談社) 1999年~2004年「週刊ヤングマガジン」にて連載/かつて暴走族だった主人公・火野鉄は青春を封印し手に職をつけて働いていたが、族仲間と再会し再びアウトローの道へひた走っていく。2012年に徳井義実(チュートリアル)主演で実写映画化。同作には、日向役の林遣都や家村会会長役の中村達也、龍也役の井浦新などハイローでもおなじみの面々が出演している。
【9】『サムライソルジャー』(山本隆一郎/集英社) 2008年~2014年「週刊ヤングジャンプ」にて連載/数々の不良集団が乱立する渋谷は、最強の不良集団「ZERO」によって均衡状態が保たれていたが、「ZERO」の頭・桐生達也が渋谷統一を宣言したことにより、抗争が勃発する。
【10】『BADBOYS』(田中宏/少年画報社) 1988年〜1996年まで「ヤングキング」にて連載/広島県を舞台に、富豪の家に生れながら不良になることを決意した主人公・桐木司の青春グラフィティ。2011年には三浦貴大主演で実写映画に。2013年には中島健人(Sexy Zone)をメインに据え『BAD BOYS J』のタイトルでテレビドラマ化され、多くのジャニーズ事務所のタレントたちが出演した。このドラマの脚本を書いた渡辺啓はLDH所属で、ハイローの脚本家チームにも参加している。
【11】『元ヤン』(山本隆一郎/集英社) 2015年から「週刊ヤングジャンプ」にて連載中/そのタイトル通り「元ヤン」の主人公・矢沢正次が再び不良として立ち上がり、「不良界の天下統一」を目指すストーリー。
【12】『ワイルド・スピード アイスブレイク』…2017年公開/監督:F・ゲイリー・グレイ/主演:ヴィン・ディーゼル/2000年から続く人気カーアクション映画『ワイルド・スピードシリーズ』の最新作。ハイローの久保茂昭監督はザム2のカーアクションを考えるにあたり『ワイルド・スピード』を参考にしたと、映画パンフレットで明言している。
【13】『今日から俺は!!』(西森博之/小学館) 1988年から1990年まで「増刊少年サンデー」にて、1990年から1997年まで「週刊少年サンデー」にて連載/千葉を舞台に主人公・三橋貴志と伊藤真司が他の不良と戦ったり、珍事に巻き込まれたりするバトル兼ギャグマンガ。93年には実写Vシネ化も。
アクション映画としての矜持!常軌を逸した演者たち!そして「ヤンキー卒業問題」…『HiGH&LOW』新作の”ヤバさ”を語り尽くす!
――EXILE TRIBEが一堂に会したお祭り映画である『HiGH&LOW』に殴られ、非公式ブックまで制作してしまったサイゾーpremium編集部が、ハイロー新作映画にまた殴られた!
ということで、昨年の『HiGH&LOW THE MOVIE』の公開時に行った、ヤンキーマンガとEXILE史学に詳しいライターの藤谷千明さんと、アクション映画に明るい加藤よしきさんによる対談を今回も再び敢行。前回は「村を焼かれた窪田正孝」「国産の海外映画」「HIROさん版『エヴァンゲリオン』説」などのパワーワードが飛び出すアツいものとなったが、それから1年がたち、8月19日に公開された続編『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』を2人はどう見たか? 「HiGH&LOW」の世界を語り尽くします。(なお、今回も同席している編集は重度のLDHオタです) ※本編には『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』のネタバレが含まれますのでご了承ください。『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』予告編より
藤谷 去年の対談の時点で「続編はあるだろう」と言ってはいましたが、まさか2、3を立て続けに公開するとは……(編注:『HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION』は11月11日公開予定) 加藤 あの頃の俺たちはただ、適当なことをしゃべっていただけだった……。 藤谷 適当なことをしゃべるのは間違っている。でも、適当なことをしゃべりたいと思う気持ちは間違ってないですよ! 加藤 とにかく本論に入る前に、まずは「関係者の皆様、ごめんなさい」と言っておきたいです。昨年の対談を読み返すと、本当に適当なことを言っていて目も当てられないです。申し訳ない。【ポイント①】いきなりだけど、エンドロールがすごい!
編集部 とはいえ、昨年の対談を今読み返すとかなり的を射ているなと、手前味噌ながら感じます。前回、加藤さんが「ハイローはヤンキーの『エヴァンゲリオン』だ」と言っていましたが、最近公開された『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』の予告編は完全に『エヴァ風』の作りでした。偶然とはいえ、予言的中です。というわけで、今回も好き勝手に語っていきましょう! まずは新作について率直な感想をお伺いしたいです。 加藤 『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』(以下、ザム2)は、まためちゃくちゃおもしろかったです。昨年の『HiGH&LOW THE MOVIE』(以下、ザム)と比較した時に、すごく洗練されていましたね。テンポよく切るべきところは切って、増えたキャラクターも個性が立っていて魅力的で、ますますハイロー世界が楽しくなったと思います。それにザムへの世間の反応を取り入れて「ここまでやっていいんだ」と作り手側も理解したのでしょうね。 “ターミネーター源治”(小林直己)や、あの圧巻のカーチェイスのように、前作のリアリティラインだったらおそらくできなかったであろうものが実現されていた。 そして何より言っておきたいのが、ラストシーンからのエンドロール! 藤谷 あれは本当に素晴らしいですね。コブラ(岩田剛典)が九龍グループの善信(岸谷五朗)に前蹴りをかまして、SWORDが全員集合して、バーン!と「END OF SKY」のロゴが出て、「HIGHER GROUND」が流れるというタイミング、最高以外の言葉が見つからない。 加藤 本当に、完璧なタイミングでした。スパッと終わるのが気持ちいい。いくら続編がある前提とは言え、あそこで映画を終わらせるって、今の邦画においてすごく勇気があると思いました。そして「終わったー!」と思ったらとんでもない映像が流れはじめて、「どうなってるんだよ!」ってなりました。直前に善信が「隠蔽できるんだよ……!」って力強く言っていたわりに、街が本当にめちゃくちゃになっていて、全然隠蔽していないところも込みでたまらなかったです。唯一の欠点は、横の映像がすごすぎて、スタッフロールに全然目が行かないことでしょうか。 藤谷 「エンドロールをきちんと観ずに帰ってしまう問題」っていわれるじゃないですか。ザム2のこれは絶対に席を立てないですよ。ザム3の、おそらく本編有数の大変な場面がバンバン流れてくる。普通の映画だったら多少は出し渋ったりするかもしれない。それが一切ない恐ろしさを感じました。使徒が襲来しそうなこの予告編。
藤谷 アクションに関しては、前作も十分にすごかったですが、さらに進化していました。一番すごかったのは、言うまでもなくカーアクション。中盤の源治VS雨宮兄弟(TAKAHIRO、登坂広臣)&琥珀さん(AKIRA)・九十九さん(青柳翔)でしょう。これは歴史に残るアクションシーンですよ! 加藤 日本映画で観たことのない映像でした。あの車の縦回転は、日本で初めてやったらしいですね。 藤谷 クリストファー・ノーランの『ダークナイト』【1】でもやってましたが、「キャノンロール」というそうですね。今回のザム2のキャノンロール、本当に志の高い回転ですよ。 加藤 USBを奪った敵の車に向かって九十九さんがダッシュしてからの、フロントガラスへの飛び込みもすごかった。最近の韓国映画では、車の中から擬似ワンカットのようにして撮影するアクションシーンがあるんですが、あれの応用且つそれ以上のインパクト、ケレン味がありました。あとは、琥珀さんと源治の殴り合い。あれはもう怪獣映画みたいでしたね。 藤谷 私はあのシーンで、『マトリックス1』【2】終盤のモーフィアスとエージェントのバトルを思い出しました。攻撃力も守備力もカンストしてる人同士の殴り合いというか。 加藤 琥珀さんが殴ったあと、源治がユラ〜ッと立ち上がりますよね。普通だったらそこで「えっ?」とひるみそうなものですけど、琥珀さんが躊躇なく戦いを続けるところが良い。2人のキャラが出ている。 藤谷 前作でのベストバウトは劉VSスモーキーで意見が一致しましたが、今回はどうですか? 加藤 格闘シーンでいうと、源治VS琥珀さんと、クライマックスのジェシー(NAOTO)VSコブラですね。ツイッターで拡散されているジェシーVSコブラのgif動画は、永遠に観ていられる。ジェシーのあの着地は一体どうなってるのか、今も理解できないです。ダンスではよくある動きなのかもしれませんが、戦っている最中にああいう形で入れてくるのは初めて観たので衝撃を受けました。それと、ジェシーがすごくて見逃しがちなんですが、あのシーン、コブラもコブラで一瞬壁を蹴って体勢を変えているんですよ。みんなサラッとすごいことをやっていますね。【ポイント②】歴史に残るカーアクション!車に飛び込む九十九さん!
加藤さんが永遠に見ていられるジェシーVSコブラのシーンは5:32から(「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY」Action Special Trailerより)
藤谷 話の本筋には深く関わっていないですけど、ヤマト(鈴木伸之)VSブラウン(岩永ジョーイ)も印象に残っています。アクションとしては“ガタイのいい人VS細身で身体能力の高いすばしっこい人”というバランスがすごくいい。しかもブラウンがナイフを使うじゃないですか。『クローズZERO』【3】しかり、ヤンキーものでナイフを使うのは “切羽詰まった卑怯な人”という記号になりがちなんですが、ブラウンはかっこいいナイフ使いという見せ方になっていた。それと、ブラウンが英語でしゃべってくるのに対して、ヤマトが持ち前のIQの低さで「は?」と「ダイジョブー?」で済ますのが秀逸でしたね。私の考える「ハイロー感」はあれなんですよ。ブラウン役の岩永ジョーイさん、たしか『クローズEXPLODE』【4】『TOKYO TRIBE』【5】にも出演していたと思うんですが、改めて調べたら元ジャニーズJr.で石原軍団という経歴の持ち主でした。ここで彼を投入してくるとは……。 加藤 RUDE BOYS新メンバーのユウ役だった佐野岳くんも、すごい動きをしてましたね。彼はぜひザム3では、幹部クラスとのタイマンシーンをやってほしいです。 藤谷 彼は『仮面ライダー鎧武』(テレビ朝日)【6】の頃から、生身ですごいアクションをしていたことが話題になっていました。メンディーもよく出てる『最強スポーツ男子頂上決戦』(TBS)でもその高い身体能力を発揮してます。去年の10月にツイッターで「それにしても、アクション映画でたいなーーー!」ってツイートしていて、ファンは「ハイローに出て!!」って言ってたんです。そしたら、本当に出た。LOVE、DREAM、HAPPINESSとはこのことですよ(?)。ザム2のオープニング、無名街の廃墟でのジャンプシーンで、満面の笑みの佐野岳くんがスクリーンに大写しになると私は毎回泣いてます。もう5回は泣きました。 加藤 ただ、ジェシーVSコブラが素晴らしいがゆえに、どうしても最後のロッキー(黒木啓司)VS蘭丸(中村蒼)がかすんでしまうんですよね……。2人とも、すごくいい動きはしているんですよ。でもほかが派手すぎるから……。単純に、2人とも動きやすい恰好をしていないから、そんなにアクロバティックなことはできないというのはありますが。 藤谷 ガラスで手を傷つけたりするような、、蘭丸が反則技を使うことで動きが鈍くならざるを得ない部分もありますしね。 加藤 でも、ロッキーがコブラのバンダナを拳に巻いて、怪我をしている手で蘭丸を殴るのは、印象に残る良いシーンになっていました。アレがあるから、なんだかんだで燃えましたね。新たなハイロースター誕生の予感…(岩永ジョーイHPより)
藤谷 蘭丸については、もちろん中村蒼さんはこれまでにない役をすごく頑張っているんですけど、鑑賞後の印象として、新キャラの中ではジェシーに食われてしまっていたような。。ジェシーは良くも悪くもインパクトが強いし、フックになるキメ台詞も多い。「お仕事ですからねぇ。make money〜?♪」もアドリブだったという話がありますし、セリフのひとつひとつが“ヤバい”んですよ。 加藤 ジェシーと源治は、ハイローの世界を理解しきった上で演技のベクトルが定まっていると思うんですよ。「この世界ならこれくらいやっていい」っていうことを、よくわかっていた。普通の俳優だったら、「サン・キングス刑務所にいて、オレンジ色のツナギの囚人服を着て、懸垂しながら登場します」って言われたら困惑すると思うんですよね。でもそこで「そういうことね」と理解して、「じゃあこれくらいやっていいな」ってぱっとつかめる反射神経はすごいと思う。蘭丸は、普通の映画だったら十分ラスボス感はあると思うんです。ただ、いかんせんこれはハイローなので。一方、九龍グループの新キャラたちは、全員そこをしっかりつかんでいましたね。【ポイント③】演者はまず常軌を逸すべし――過剰であるほど輝く世界
藤谷 クライマックスの善信もそうだし、克也(加藤雅也)、植野(笹野高史)、源(高嶋政宏)、藤森(木下ほうか)、全員がハイローの世界観やベクトルをしっかり理解している感じがありましたね。やはり場数のなせる技でしょうか。特に木下ほうかさんの肩のすぼめ方が最高でした。 加藤 高嶋さんの、あの窓ガラスのシーンも最高でした。あれくらいやっていい世界観だというのを、ベテラン俳優さんたちはつかんでいたんでしょうね。岸谷さんの「隠蔽できるんだよ……!」の言い方とか。 藤谷 村山役の山田裕貴さんは、ドラマ版から培ってきた経験と本人の反射神経が相変わらず働いてました。今回も「鬼邪高校、課外授業始めまーす」とか「だるまさんがころぶかな?」とか、抜群なアドリブをぶち込んでいたみたいですし。でも、このままハイローがシリーズ化したら、LDH外の若手の俳優がどんどん出ることになるでしょうが、大変ですよね。まず常軌を逸した芝居・キャラクターを自ら作っていかなければならない……。 加藤 若手の俳優たちにとって、一種の修練の場になったら面白いですね。九龍の皆さんみたいに、はっちゃけた演技をどんどん提案してキャラを立たせていくみたいな。 継続しての出演陣でいうと、雨宮雅貴役のTAKAHIROがすごくよかったです。琥珀さんにUSBを託すときの「兄貴が死んでさ」の言い方が、クールでありつつ声が震えている感じを出していた。『THE RED RAIN』を踏まえて、TAKAHIROさんの中でキャラが固まったんだな、と。ベテラン勢の迫力も圧巻。
藤谷 ザムのラストの琥珀さんが改心して泣いているシーンと、『THE RED RAIN』で雅貴が兄である尊龍(斎藤工)を失って雨の中で泣いてるシーンが左右対称で交互に挿入されるところも、画として美しくてすごく考えられていましたね。なおかつ、雅貴役のTAKAHIROさんと琥珀さん役のAKIRAさんは、06年の“同期入社”ですし。 編集部 2人は、「EXILE第2章」で加入したボーカルとパフォーマーです。ファンの間では「2章コンビ」と呼ばれていますし、本人らも「俺たちは二人三脚」と公言しています。だから、ザム2での琥珀さんと雅貴の共闘は「EXILE〜〜〜〜!!!」ってなりました。『HiGH&LOW Special Trailer 「THE RED RAIN」』より
加藤 カーアクションシーンがあまりにすごいので、「琥珀さん&九十九さんと雨宮兄弟の映画だ」と思う部分はありますよね。 藤谷 琥珀さんの映画であり、それについていく九十九さんが「琥珀さん、俺車ダメだわ」で前半は全部持っていくじゃないですか。 加藤 ただ、最後の前蹴り一発で、あそこからコブラの映画になった感じがしたんですよ。変な話ですが、あのエンドロールはエンディングかつ、コブラの物語のオープニングでもあると思うんです。 そもそも、ここまでアクションとキャラクターの話ばかりしてきましたけど、ストーリーのこともちゃんと言っておきたいです。最初に「続編が公開される」と聞いたときは、正直「引き伸ばしにかかるのかな?」と思ってたんです。いま、洋画でも邦画でもユニバース化して引き伸ばしている作品がすごくたくさんある。でもハイローは違った。物語が急展開を迎えて、決着の仕方はわからないにせよ、終わりに向かって突き進んでいる感じもすごく気持ちよかったです。「スターウォーズ」の『帝国の逆襲』みたいな感じで、単純に物語としての続きが気になる。ドラマシリーズはキャラ紹介の色合いが濃かったけれど、ザム2からはストーリーで引っ張っていくんだな、と感じました。 藤谷 正統進化を遂げてましたね。昨年の対談で「アクションの尺がもっと欲しかった」という話をしましたけど、今回はストーリーを引っ張る形でアクションがありながら、ドラマ自体の強度も上がって、厚みが出てきました。 ザム2の予告編でコブラが「一緒にいるだけが仲間じゃねぇ」って言っているのを観た時は、ヤマトとコブラの「シビル・ウォー」(『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』【7】)になるのかと思ったんです。それがコブラ・ヤマト・ノボル(町田啓太)対ダン(山下健二郎)・テッツ(佐藤寛太)・チハル(佐藤大樹)という分裂になるのは意表を突かれました。ドラマのシーズン1ではコブラ&ヤマト対ノボルという対立がありましたが、あれは一言でいうと「進路の問題」で、道を誤ってしまったノボルを、コブラとヤマトが説得しようとしていた。今回の対立は、どちらかが間違っているわけではない。 ここで浮上してくるのが、「不良(アウトロー)の進路問題」なんですよ。1990年代以降のヤンキーものって、『莫逆家族』(田中宏/講談社)【8】にしても『サムライソルジャー』(山本隆一郎/集英社)【9】にしても、不良少年がどうやって自分の進路を決め、生活を選ぶかがひとつのテーマになっています。バブル期に連載されていた『BADBOYS』(田中宏/少年画報社)【10】だとそのまま青春の終わり=物語もそこで終わっていたのが、その続編的位置づけの『グレアー』や、さらに続編の『KIPPO』では嫌というほど仕事や家庭といった「その後」にどう向かい合うのかが描かれているんです。「その後」問題はこの20年くらいの不良コンテンツのトレンドといってもいい。でもこれらの作家たちや、『クローズ』『WORST』の高橋ヒロシにしたって、誰もこの問題に答えを出せていないんです。先述の『サムライソルジャー』は渋谷のギャングの抗争の裏にヤクザのカジノ計画があるという話で、ハイローを思い起こさせる設定が結構あります。この作品も、最終的には「不良少年は居場所がないし粗暴だけど、今時の無気力な若者よりは熱いやつらの方がいい」みたいなポエムな軟着陸になってしまい、どうしてもすっきりしていない。この山王連合会シビル・ウォーも、まだ落としどころが見えてこないので、その点は心配ではあります。 加藤 「ヤンキーの進路問題」にうまく応えたヤンキーマンガは、まだないですよね。一応『クローズ』は最後に「卒業後はこういう進路にいきました」みたいな説明は入るけど、その後の生活で高校時代と同じ輝きを持てているか、というのは絶対描かれない。 藤谷 そこはまだ誰も結論が出せていないんですよ。ハイローにもつながるところとして、当たり前ですけど、喧嘩シーン、アクションのほうがコンテンツとして引きが強い。不良がリアルに将来に迷ったり葛藤しているのって、メイン読者からすればそこまで興味のあることではないでしょうし。 そもそもコブラたちって、MUGENのときは「からまれてるヤツを助けただけなのに警察に目つけられた」ってプンスカしてましたけど、山王連合会は不良だからって迫害されている描写もない。だからチハルの言葉じゃないですけど、「山王連合会って、何と戦ってるんですかね?」となるのも仕方ないのでは。 加藤 そこでザム2では、九龍という敵がより明確に出てきたのかもしれないですね。 藤谷 確かに、物語がこれまでふわっとしていたのが、九龍と直接対決の場面が出たことでちょっと固まってきました。そこがまさに正統進化なんですけど、それによって山王のアイデンティティはかえって揺らいできている。これまでは作中でもなんとなく見過ごしていた、進路というか「生き方」問題が浮き彫りになって、観てるほうも「あれ?」と。 またマンガの話になってしまうんですが、山本隆一郎の新作『元ヤン』【11】は、「地元を愛する元ヤンが、同じく地元を愛する全国のヤンキーたちと戦って全国制覇しようとする話」なんです。「全員主役」ならぬ「全員山王」みたいな。ハイローもウッカリすると自分たちの問題を先送りにして、ほかの地区の山王みたいな連中と戦う話になる可能性も……。 加藤 その問題に対しては、作り手側も自覚は絶対にあるでしょうね。だからザム2のクライマックスで、DTC(ダン・テッツ・チハルの略)は仲違いしたまま喧嘩に本当に参加しなかった。別の作品を引き合いに出して恐縮ですが、僕は映画『ワイルド・スピード』が好きで、最新作の『アイスブレイク』【12】もすごく面白かったんですけど、どうしても引っかかるところがあるんです。『アイスブレイク』では、ヴィン・ディーゼル演じるドムという“ファミリー”のリーダーが、いろいろあって悪事に手を染める。その過程で、前作『スカイミッション』の敵で、ファミリーの一員を殺害したデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)が仲間に加わるんです。『ワイスピ』って絶対最後にファミリーでバーベキューをするんですけど、そこに普通にジェイソン・ステイサムがいる。 藤谷 ハイローでいうと、二階堂(橘ケンチ)がしれっと山王のお祭りにいるようなものですね。「お前、龍也もノボルも轢いたじゃねーか!」っていう。 加藤 そうそう。だから観ていて、「え、いるの!?」ってなっちゃうんですよ。殺されたキャラが好きだった人からすれば、納得がいかない。そこに誰かが作中で疑問を呈してほしいんですけど、ドムが「俺はこいつを許す」みたいな空気を出したら、みんな「ドム……!」ってなってしまう。忖度ですよ。そこに違和感があって、今までのシリーズほど乗り切れなかったんです。対してザム2では、DTCが普通に出て行ってしまう。 藤谷 「実はあとから参戦します」じゃなくて本当に来ないのは、セオリーを破ってますよね。 加藤 本当はあそこで助けに来るのがいちばん簡単ではあるんですけど、それを撮らなかった。そこで作り手側が、山王の進路問題というか、カジノができることによって街がどうなっていくのかというテーマに真摯に向き合おうとしているのが伝わりました。 藤谷 もうひとつ進路問題でいうと、村山たち鬼邪高3人組も謎ですよね。ザムのラストでは「俺たちはもう卒業だ」「山王入れてくんねぇ?」って言ってたのに、今回も学ラン着てるし。 加藤 ただ、村山たちは卒業して「旅に出る」とか言い出してもいいと思うんですよ。『今日から俺は!!』(西森博之/小学館)【13】みたいに、3人でバイクか何かに乗って「じゃあな〜」って遠ざかっていくとか。達磨も「それからも幸せに賭場を続けていきました」で済む。ラスカルズはすでに店を経営している。山王だけが“将来”という、決着を付けないといけない問題に直面している。 藤谷 無名街は……? 加藤 無名街は、明日を生きるほうが大切だから……。 藤谷 俺たちは、生きることを決してあきらめない……。 加藤・藤谷の熱いハイロー談義はまだまだ終わらない! 後編は明日公開予定です。 (構成/斎藤岬) <プロフィール> 加藤よしき ライター。1986年生まれ。「Real sound」などで執筆。『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』(洋泉社)に寄稿。 ブログ:http://blog.livedoor.jp/heretostay/ twitterID:@daitotetsugen 藤谷千明 ヴィジュアル系とヤンキーマンガとギャル雑誌が好きなフリーライター。1981年生まれ。執筆媒体「サイゾー」「Real sound」「ウレぴあ」ほか。 twitterID:@fjtn_c <註釈>【ポイント④】山王連合会分裂で芽生えた「ヤンキー卒業問題」
【1】『ダークナイト』 2008年公開/監督:クリストファー・ノーラン/主演:クリスチャン・ベール/アメリカン・コミック『バットマン』を原作とした実写映画作品。敵役・ジョーカーを演じたヒース・レジャーの存在感は語り草に。ちなみにコブラ役の岩田剛典も好きな映画に本作をあげている。
【2】『マトリックス』 1999年公開/監督:ラナ・ウォシャウスキー、リリー・ウォシャウスキー/主演:キアヌ・リーブス/SFアクション映画の金字塔にして、CG映画のレベルを引き上げたといわれる傑作。
【3】『クローズZERO』 2007年公開/監督:三池崇史/主演:小栗旬/若手イケメン俳優×ヤンキーマンガ実写化作品における00年代最大のヒット作。ハイローも存分にこの作品の影響を受けているはずだ。興行収入も25億円を記録した。
【4】『クローズEXPLODE』 2014年公開/監督:豊田利晃/主演:東出昌大/興行収入は11.4億円にとどまり、大ヒットした小栗旬主演の『クローズZERO』『ZERO II』ほどのヒットはしなかったが、一部のマニアには受けた作品。ちなみに、コブラ役・岩田剛典の映画初出演昨品でもある。
【5】『TOKYO TRIBE』 2014年公開/監督:園子温/主演:YOUNG DAIS/井上三太による同名マンガの実写映画。近未来のトーキョーにひしめくトライブ(族)たちの暴力と愛と友情を描く。アクション監督は『THE RED RAIN』のアクションも手がけた匠馬敏郎。ハイローでは「9」役でおなじみのラッパーANARCHYも出演している。
【6】『仮面ライダー鎧武』 2013年10月~2014年9月放映/テレビ朝日系/監督:田﨑竜太、柴﨑貴行、諸田敏、中澤祥次郎、石田秀範、金田治(ジャパンアクションエンタープライズ)、山口恭平/主演:佐野岳/平成仮面ライダーシリーズ第15作目の作品で、戦国武将とフルーツを組み合わせたイメージのライダーが活躍した。とにかく果汁がほとばしる。
【7】『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 2016年公開/監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ/主演:クリス・エヴァンス/「マーベル・コミック」の実写映画を同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う『マーベル・シネマティック・ユニバース』シリーズの13作品目。共にアベンジャーズとして活動していたキャプテン・アメリカとアイアンマンが、志を同じにしながらも激しく対立する。正義とは何か?ヒーロー映画につきまとう問題に挑んだ傑作。
【8】『莫逆家族』(田中ヒロシ/講談社) 1999年~2004年「週刊ヤングマガジン」にて連載/かつて暴走族だった主人公・火野鉄は青春を封印し手に職をつけて働いていたが、族仲間と再会し再びアウトローの道へひた走っていく。2012年に徳井義実(チュートリアル)主演で実写映画化。同作には、日向役の林遣都や家村会会長役の中村達也、龍也役の井浦新などハイローでもおなじみの面々が出演している。
【9】『サムライソルジャー』(山本隆一郎/集英社) 2008年~2014年「週刊ヤングジャンプ」にて連載/数々の不良集団が乱立する渋谷は、最強の不良集団「ZERO」によって均衡状態が保たれていたが、「ZERO」の頭・桐生達也が渋谷統一を宣言したことにより、抗争が勃発する。
【10】『BADBOYS』(田中宏/少年画報社) 1988年〜1996年まで「ヤングキング」にて連載/広島県を舞台に、富豪の家に生れながら不良になることを決意した主人公・桐木司の青春グラフィティ。2011年には三浦貴大主演で実写映画に。2013年には中島健人(Sexy Zone)をメインに据え『BAD BOYS J』のタイトルでテレビドラマ化され、多くのジャニーズ事務所のタレントたちが出演した。このドラマの脚本を書いた渡辺啓はLDH所属で、ハイローの脚本家チームにも参加している。
【11】『元ヤン』(山本隆一郎/集英社) 2015年から「週刊ヤングジャンプ」にて連載中/そのタイトル通り「元ヤン」の主人公・矢沢正次が再び不良として立ち上がり、「不良界の天下統一」を目指すストーリー。
【12】『ワイルド・スピード アイスブレイク』…2017年公開/監督:F・ゲイリー・グレイ/主演:ヴィン・ディーゼル/2000年から続く人気カーアクション映画『ワイルド・スピードシリーズ』の最新作。ハイローの久保茂昭監督はザム2のカーアクションを考えるにあたり『ワイルド・スピード』を参考にしたと、映画パンフレットで明言している。
【13】『今日から俺は!!』(西森博之/小学館) 1988年から1990年まで「増刊少年サンデー」にて、1990年から1997年まで「週刊少年サンデー」にて連載/千葉を舞台に主人公・三橋貴志と伊藤真司が他の不良と戦ったり、珍事に巻き込まれたりするバトル兼ギャグマンガ。93年には実写Vシネ化も。
真木よう子の「異変」にドラマスタッフもビクビク
「主演・真木よう子」は見納めか? 8月31日に放送された真木主演のドラマ『セシルのもくろみ』(フジテレビ系)第8話の平均視聴率は自己最高の5.3%(ビデオリサーチ調べ)を記録したものの、次回第9話で最終回となることがわかった。 放送前に9話で打ち切りとの情報が流れたためか、前回から0.9ポイントも上昇する皮肉な結果に。舞台裏をテレビ関係者が明かす。 「全10話の予定でしたが、ドラマは序盤から視聴率3%台を連発。主演の真木自らがツイッターで低視聴率ぶりを嘆いたり、それを揶揄した一部報道に噛みつく一幕も。さらにはコミケ参加表明をめぐる炎上やツイッター削除など、とにかくネガティブな話題ばかり振りまいていた。スポンサーも早くから降りるタイミングを見計らっていて、当初は6~8話で終了する方向で調整されていました。しかし、スポンサーがフジテレビとの付き合いを考えてギリギリまで譲歩。この数字でよく9話までやらせてもらえたなという印象です」 真木はコミケ参加をめぐる一連の騒動で炎上したツイッターのアカウントを削除。同日8月29日にはドラマの収録をドタキャン。かなりメンタルが弱っていたようだ。 「実際、ドラマ終盤の収録では、スタッフがほかの共演者に対して、『真木さんを怒らせないようにNGを出さないでください』と、異例のお願いをしていたといいます。スタッフから見ても、彼女のメンタルに異変が感じられたのでしょう。打ち切りとなったタレントは商品価値が半減するのに加え、真木には『ヤバイ女』というイメージがついてしまった。しばらく『主演・真木』にGOサインを出すスポンサーは現れないでしょうし、脇役の出演機会も激減するでしょうね。ドラマの打ち上げはかなりこじんまりとしたものになるそうですよ」(前出・テレビ関係者) “もくろみ”が外れまくりの真木だが、女優生命を繋ぎ止めるためにも最終回も自己最高視聴率で締めくくりたいところだろう。『セシルのもくろみ(フジテレビ)』公式サイトより
アンチにもサービスしてこそ一流!?【手越祐也】が確立した、新しいアイドルの賞味法を考えてみる
以前どこかで、「芸能人は、一般人からの愛と軽蔑を同時に受ける存在」といったことを書いた記憶があります。芸能人の中でも、毀誉褒貶がいちばん激しいのが「アイドル」という職種だと思います。演技力とか歌唱力とか、ソングライティングの能力とか、そういったことが二の次とされがちな分野だから、どうしてもアンチが出てきてしまうのかもしれません。 そんなアンチに、どう対応するか。これは大きく分けて3つのやり方があります。 1.完全に無視する。そもそもアンチという存在を認識しない 例えばデビュー当時の松田聖子は、「人気」と「ぶりっ子バッシング」がかなり拮抗していたのに、聖子(およびスタッフ)は、バッシングなどまったく目に入っていないかのようにふるまっていました。それはそれで異常なほど胆力のいることです。 「そもそもアンチなんてこの世に存在しない。私(ぼく)のことを嫌いな人なんて、この世に存在するはずがない」 という、壮大すぎる大前提の下に生きているわけだから。このスタンスでやっている人が、うっかりツイッターなんかで「私は好きな人だけに向けて仕事をしていくんだ」的な宣言をしてしまうのは、アンチを喜ばせるだけです。 「俺ら(あたしたち)のこと、しっかり目に入ってんじゃん。頑張って目に入らないようにしてるだけじゃん」というのは、今も昔もアンチの大好物です。 2.アンチという存在がいることを大前提にして、対抗策を生み出す これに関してはAKBグループがうまい。『アンチ』という曲を(カップリング扱いではあるものの)リリースしたり、前田敦子が「私のことは嫌いでも、AKB48のことは嫌いにならないでください」と涙ながらに絶叫したり。 ちなみに、この2番目の方法の先駆者は、私は小泉今日子だと思っています。90年代中盤あたりの『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』で、デビュー当時の営業回りのことが話題になったとき、キョンキョンは、 「(営業先で)てめえなんかこんなとこ来んじゃねえよ! とか言われましたよ」 と言い、司会のダウンタウンから「うわ。そんときどう思った?」と訊かれると、 「来たくて来てんじゃねえよ! って言いたくなっちゃった」 とサラッと答え、きっちり爆笑を生み出していました。さすが、「自意識のコントロール」と「嗅覚」にかけては、当時のアイドル界のみならず芸能史上でもトップ集団に位置するだろうキョンキョンの実力を、まざまざと見せつけられた思いがしたものです。 で、最後は、いちばん新しい方法です。 3.アンチの存在をはじめから勘定に入れたうえで、そちらの側にも一定のサービスを施す 「アンチも笑わせる。楽しませる」わけだから、かなりきつい業務といえるでしょう。この3番目の方法に関して、トップを独走しているのが、NEWSの手越祐也です。 ちなみに私は、NEWSはけっこう好き。『チャンカパーナ』あたりは歌謡曲のいい部分をきちんと引き継いだ作りでレベル高いし。KinKi Kidsの初期の曲とか、修二と彰(亀梨和也と山下智久のユニット)の『青春アミーゴ』あたりにも通じる、年長者にも大変やさしい「サービス」になっているから。 さて、そんな手越が出演する『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)に、唯一の「イケメン枠」で出ている手越ですが、その扱いの、いい意味での「ひどさ」と言ったらありません。 手越が何かカッコいいことをやり遂げた後に、NEWSの持ち歌が流れ、手越単体のPV風の映像が流れるのが、この番組のお約束。もちろん、生粋のファンにとってはたまらない絵ヅラでしょう。しかしこれ、扱い方としては、『めちゃイケ』で体を張りすぎて事故ギリギリの結果が生まれてしまったときに、スロー映像とともに『空に太陽がある限り』を流されていた「スター・にしきのあきら」と全く同じカテゴリーだったりします。 また、「手越が課題をやり遂げるまでの悪戦苦闘」のシーンに挟まれるナレーションがいちいちひどい(繰り返しますが、いい意味で)。課題に挑戦する際、「いけるでしょう」という手越のコメントのあとに「神様、どうかいけませんように」というナレーションが入る。で、手越が失敗するごとに入れられる「イエーイ」というナレーションが、どんどんボリュームが大きくなっていったり。 2年ほど前のオンエアになりますが、「視聴者の中学生から届いた」という「どうしたらダンスが上手くなるのでしょうか」という相談メールに、手越が答えるという場面がありました。語りだすうちにどんどんナルシシズムをあふれさせていく手越が、実際にダンスのお手本を見せようとした途端、容赦なくそれを途中でぶった切り、画面一面のラベンダー畑に切り替えたシーンはいまでも覚えています(しかもそれをワイプで見ていたウッチャンが「ありがとう!」とスタッフの判断にお礼を言っていた)。 最近では、「手越に改めてほしいこと・七カ条」と称し、手越の性格からスキャンダルまで、メッタメタにイジリまくっていました。 「手越祐也のことが嫌い」という層はもちろん、「好きでも嫌いでもない。というか、どうでもいい」という層(手越に限らず、すべての芸能人は、この層がいちばん多いものです)に対して、「手越の取扱説明書」を念入りに作りこんでいるのです。日本テレビは、新しく出てきた芸人に対するトリセツの作り方がほかのテレビ局とは比較にならないくらい上手いのですが、ゴールデンの時間帯でアイドルにここまでひどいトリセツを、たっぷりの愛情とともに披露してみせる「思い切り」が、あの番組を視聴率トップに押し上げている要因のひとつなのでは、と思います。 で、これが成立するのは、生粋のファンがこのイジり方を許容し、一緒に楽しんでいるからこそ。日本の「アイドル賞味法」は、ここまで進化したわけです。一般人の「メディア空間で空気を読む」能力は、世界中で日本がいちばん高いような気がします。 そう言えば、「AKBは視聴率を持っていない」と、いろんなメディアで言われてきましたが、私が知る限り、年に1度の(AKB的)大イベント・総選挙のライブ中継以上に視聴率が高かったのは、『めちゃイケ』の抜き打ちテスト企画でした。要するに「AKBの人気者決定戦」ではなく「AKBのバカ決定戦」のほうが高人気。「アンチ」や「どうでもいい」層に向けてのサービスが含まれていないと数字を取ることができないなんて、厳しい時代になったものです。 ちなみに私個人は、手越祐也はかなり好きです。アイドルとして、というよりは芸能人として。人格というバケツに大小数えきれないほどの穴が空いていて、水がバッシャンバッシャンと漏れ続けているようなスキだらけのキャラクターを、「ポジティブ」の一点突破でカバーしている様子は、見ていて楽しい。 「この人、芸能界くらいしか生きるところがないんだろうな」「芸能界に進めなかったら、かなりの確率で人生が破綻していただろうな」という人が、収まるところにちゃんと収まっているのは、なんと言うか、励まされるんですよ。「誰もがそれぞれ穴だらけだけど、誰もがそれぞれ輝ける場所がちゃんとある」ということを見せてもらっている感じがしますから。 高山真(たかやままこと) 男女に対する鋭い観察眼と考察を、愛情あふれる筆致で表現するエッセイスト。女性ファッション誌『Oggi』(小学館)で10年以上にわたって読者からのお悩みに答える長寿連載が、『恋愛がらみ。 ~不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)という題名で書籍化。人気コラムニスト、ジェーン・スー氏の「知的ゲイは悩める女の共有財産」との絶賛どおり、恋や人生に悩む多くの女性から熱烈な支持を集める。月刊文芸誌『小説すばる』(集英社)でも連載中。
アリスとの仲が心配だけど、俺が「大丈夫」って言えばすずはきっと大丈夫で
広瀬アリスとすず、どっちが人気あるの?
今、この質問をされて、正確に答えられる人がいるだろうか?
「どっちが好き?」ならば簡単だ。個人の好みだから。だが「どっちが人気?」ということになってくると、なかなかに判断が難しい。
これが、有村藍里と有村架純であれば「次元が違う」くらいのレベルで「架純」と即答できる。髙嶋政宏と高嶋政伸であれば「どっちでもいい」とぞんざいに扱えもするだろう。だが、こと広瀬姉妹においては、なんとなく気を使ってしまわないだろうか? ぶっちゃけ、ちょっと前であれば「すず」と言い切れる時期があった。ただ、この時もアリスの完敗というよりも、3:7ぐらいの割合であったと思う。おそらく本人たちもそのへんは感じていたのではなかろうか。個人的には、それでも仲むつまじい2人の姿を観ていたら「アリスを応援したい」という気持ちが出てきたことは確かだ。そこに「お姉ちゃんがかわいそう」という感情がなかったかと言えば嘘になる。
「そんなの優しさじゃない!」そう言われればそれまでだ。「でも、本当はすずが好きなんでしょ?」と聞かれたら「違う」と否定できたかどうかもわからない。でも、始まりがそんなでもいいじゃないか。今僕が好きなのは、アリスなのだから。
おそらく、私みたいな人が結構いたのではないだろうか。ここへきて、アリス人気が上がってきているように感じる。女優としての売れ具合もさることながら、大人になったせいか“エロさ”がにじみ出てきた。彼氏ができたことによる影響もあるだろう。しかも、もともとサバサバしたキャラクターだったせいか、彼氏ができたことによるマイナスダメージはあまりなかったように見受けられる。
このアリスの快進撃によって、広瀬姉妹の人気バランスは、今や5:5もしくは6:4をいったりきたりしている状態だ。ファンとしてはできる限りこの均衡を保ってほしいと思っているが、勢いがある分、今後アリスのほうが突き抜ける可能性は大いにある。そうなってくると心配なのは、すずである。
もともと人気があっただけに、そろそろアンチも現れてきた。また、一時期は姉より人気があったという自覚もあるだろう。加えて、生まれた時から周囲にちやほやされやすい“末っ子体質”ということも相まって、アリスの急成長を前に、やる気をなくしてしまわないだろうか? 自暴自棄になって恋人でもつくった日には、目もあてられない。どちらかといえば清純派なだけに、その代償は大きいだろう。
アリス派なんだから、それでいいじゃないかと思われそうだが、その状況を一番悲しむのはアリスだ。だから「アリスが伸びるところは見たいが、すずが堕ちるところは見たくない」。これがアリス派としての本音ではなかろうか。そもそも姉妹の仲がいいこともポイントであって、これが元で2人が仲たがいしては意味がない。後年、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)あたりで「あの時は、口をきくのも嫌だった」などとやって欲しくないのである。
できることなら、アリス派とすず派が手を組み、情勢によって「アリス派であってもすず側」を「すず派であってもアリス側」を公言し、人気のバランスをとっていきたいところだ。その上で我々もすずの恋愛事情に理解を示さねばならない。だいたい姉が目の前でイチャイチャしていたら、自分もしたくなるのが人情というもの。
そもそも、アイドルがファンの前で結婚宣言するご時世、スキャンダルにいちいち腹を立てていたのでは、こちらの身がもたない。すずが清純派とはいえ、何も知らないわけではあるまい。基本、Bくらいまでは経験していると思って向き合ってみてはどうだろう。Bって言わないのか、最近は。ペッティング!? Pとか!?ちょっと激しめのペッティングはP´みたいな。とにかくそんな“パルコ世代”の性において、受け手側も寛容になればタレント、ファン共にwin-winの関係が築けるはずだ。身近な人の急な訃報はショックだが、余命宣告されていれば、少しは気持ちの整理がつくというもの。すず派の方々には、ぜひとも参考にしていただきたい。そして、我々アリス派は、そんなすずごと支えていく所存である。
ちなみに、私にも4歳下の弟がいるのだが「広瀬アリスとすずどっちが好き?」とメールしたところ「香美」と返ってきた。近々、弟とは縁を切るつもりである。
西国分寺哀(にしこくぶんじ・あい)
浅田真央の現役引退により、今後、浅田姉妹にも同じような問題が起きるのではないかと心配している40代男性。清純派のイメージを守るため独身を貫いている。
女性から口説かれる、愛されるキャラクター…不倫の天才・火野正平の生き方
現在、NHK BSで放送中の「こころの旅」は2011年にスタートした。俳優の火野正平(68)が自転車に乗って日本全国を回る番組で旅と人との出会いがテーマ。子役で芸能界に入り、名脇役として幅広いジャンルで活躍する火野のイメージとはほど遠い番組。火野の起用は「冒険だった。またスキャンダルで騒がれるなど、番組に影響することも考えられるとして当初は不定期だった」とNHK関係者はいう。火野は芸能界で屈指のプレイボーイと言われた男。いかにも健全なNHKの旅番組とはミスマッチ。 放送記者によれば、「まったく飾らない人で、いつも自然体。俳優特有の威張った感じもないし、人なつこく親しみやすいキャラが意外や大受け。不評だったら即座に止めるか、別の人に替えるかを考えていた」そうだが、余計な心配だった。今や好評で定期番組として人気を博す隠れた名番組になっている。 決して二枚目ではないが、年を重ねても無邪気な子供っぽさは昔のまま。「あの無邪気さが女性の母性本能をくすぐり夢中にさせた」と芸能関係者は回顧する。 とにかくモテた。二枚目俳優がモテるイメージの強い芸能界に革命を起こしたと言っても過言ではない。最近のタレントや芸人はモテると言っても、自ら合コンなどに出向き一生懸命マメに口説き落とす。火野とは雲泥の差。火野は女性から口説かれることのほうが多かった。 「女を意識して口説くことはないよ。気がついたら付き合っていただけ。女房は大阪で子供と暮らしているし、特別に不倫を意識したことはないね」という話をさりげなくしていたこともある。 過去、火野との不倫が報道された人は優に10人は下らない。有名なところでは、小鹿ミキ、新藤恵美ら女優が4人。歌手は2人。他に女優・鳳蘭のマネージャーともあった。すべて共演などがきっかけだった。「今度、ゴハンでも食べに行こう」の延長で付き合う。「二枚目俳優は食事だけでも女性は意識するが、火野なら居酒屋でも付き合える。そんな雰囲気があった」と映画スタッフから聞いた。付き合いも堂々としたものだった。隠れてコソコソと会うこともないから、すぐにマスコミにバレる。今井絵里子と橋本健氏が新幹線で手を繋いで寝ているところを撮られたが、火野と歌手の仁支川峰子が芸能人で最初に新幹線内で仲良く寝ているツーショットを撮られている。それが写真誌に掲載されても、「いい感じの2人」とさほど騒ぎになるとこもなかった。小鹿ミキと半同棲しているとき、何度となく2人を取材した。夫婦のように堂々としていた。喫茶店内で大きな声で喧嘩することもあった。とても芸能人同士のカップルには見えない。2人を見ていると、明らかに小鹿が惚れているのが分かった。 「放っておけないのよね。私が付いていないとこの人、ダメになってしまうようなタイプ」と小鹿は言っていた。 脇役が多く、主役クラスほど稼いでいたわけではない。稼いだ金は大好きな競艇に使う。財力で愛人を持つタイプではなく、金はなくとも女が尽くすタイプ。出会いと別れを繰り返しても、一度たりとも揉めたことはない。別れた女性に恨みを言われることもなかった。別れた女性に男の下半身事情を雑誌で明かされたこともない。「いい想い出」と女性は火野を語る。マスコミの格好のネタになっても逃げ隠れすることもなく、「そのまま好きなように書いたら」とメディアも面食らう対応で沸かせた。一時はワイドショーのマスコット的な存在として、毎日のように番組を賑わした。不倫しても愛された男。火野正平。万人に愛されるキャラが今、NHKの番組で生かされている。最近の不倫するタレントには到底マネできない。 (敬称略) 二田一比古 1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。『こころ旅フォトブック』(日本文芸社)
























