ありのままの自分でいることが許される場所――ウソと本当を見分ける方法『いつ恋』第5話

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フジテレビ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』
 ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』では、2つの家が用意されている。ひとつは練(高良健吾)が暮らす安アパート。もうひとつは、静恵ばあちゃん(八千草薫)が暮らす一軒家だ。この2つの家は、ドラマの中で異なる機能を持っている。練の安アパートはウソの場所であり、静恵ばあちゃんの一軒家は本当の場所である。登場人物はそのことに気付いてはいないかもしれないが、この機能によって動かされている。  第1話、練の安アパートでは練と木穂子(高畑充希)が寄り添って眠っていた。後々明かされるが、木穂子はこのとき自分がバリバリのキャリアウーマンであると練にウソをつき、そういった自分を演じていた。殺風景な部屋はまるでセットのようで、人間のにおいというものがあまりない。何より、福島から出てきた練にとっては東京という街自体がウソの街だともいえるし、このアパートで交わされる会話はどこか空虚だ。  一方で、静恵ばあちゃんの一軒家には生命力が満ちている。瑞々しく花が咲き、太陽の光に照らされる。登場人物たちもこの家にいるとどこか自然な笑顔になり、いつもより生き生きとしているようだ。この家では、本当の自分でいることが許されている。東京という街に居場所のない彼ら彼女らにとっては、まるで自分の家のような場所だといえるだろう。  だから第5話の修羅場は、静恵ばあちゃんの家で起きなくてはならなかった。ここは本当の場所だ。逆にいえば、ウソが許されない場所でもある。これまで練が、音(有村架純)が、木穂子が重ねてきたウソが、練の幼なじみである小夏(森川葵)の告発によって暴かれる。「だって、だってよ! みんなウソついてるもん。だって練が好きなのは木穂子ちゃんじゃねえべした。この人(=音)だべした!」と、小夏は心からの声を叫ぶ。登場人物の中で唯一東京に憧れ、東京の人間になろうとしている小夏の会津弁が、この言葉が真実であることを物語っている。  その見方はすべての恋愛がそうであるように、ひどく独善的で一面しか見ていない。我々視聴者は小夏が知らない練と音と木穂子の物語を知っているから、そんなに単純なものではない、と言うことはできる。もっと人は複雑なんだと。だが、小夏の言葉が真実であるというのも確かだ。そして、小夏もまた、練に片思いをしていると我々は知っているため、彼女の言葉は胸に突き刺さる。 「……練は、そったおっかねえ顔する人じゃねがったもん。ウソばっかついでっからだ。言ったら? 好きなんだったら、好きです、って言ったら? 練、好きよ。練、好きよ、って。好きよ。好きよ。好きよ。好きよ……!」  好きよ、という連呼は、小夏がずっと練に言いたくて、それでも言えずに隠していた言葉だ。ここは本当の場所なのであり、だから好きよという言葉も隠し通すことができない。彼女は練と音と木穂子のウソを告発しながら、自分自身のウソにも気付いてしまう。場所の力はそれほどに強い。人は誰だって、いつかは自分のウソと向き合わなければならないのだ。  そして彼らが向き合わなければならないのは、自分がついたウソだけではない。ドラマ内の日付は2011年3月。タクシーの運転手が「おめえ知ってたが? 坂上二郎さんが亡ぐなっちまったんだってよ」と、2011年3月10日にこの世を去ったコメディアンの話をしている。東日本大震災という圧倒的な現実は、原発の安全神話という大きなウソを丸裸にした。誰もが自分の生き方と向き合ったあの日、練は、音は、果たして何を思うのだろうか。  第5話の中で、音が静恵ばあちゃんと話していた。音は「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」と語り、「私、私たち今、かけがえのない時間の中にいる」とつぶやいた。我々視聴者もまた、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』という、かけがえのない時間の中にいる。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは@aizawaaa

視聴者が主体として考える作品とは──開始3分で面白さを伝える方法『いつ恋』第4話

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フジテレビ系『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』
 ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の第4話、今回も怒濤の展開と丁寧な描写によって視聴者を涙にくれさせたわけだが、視聴率は8.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と振るわなかった。この連載では視聴率に対してどうこう言ったりくさしたりということではなく、あくまでも作品について書いているが、しかしなぜこれほどの作品が、この程度の視聴率しかないのかについては考えておきたい。作品の質と視聴率が、あまりにもかけ離れている。  結論から言えば、この作品は面白すぎるのではないか。言葉を換えれば、作品としての密度が高すぎるのではないか、と言えるかもしれない。  好き嫌いは感性の問題だが、面白いかそうでないかは、多くの部分を理屈が占めている。特にフィクションの脚本という観点からいえば、好き嫌いを別にして、面白いかそうでないかを理詰めで判定することは可能だ。第4話では、開始わずか2分でそれがわかる。このドラマは、明らかに面白いということが。  前回の最後で、交際相手に殴られて入院した木穂子(高畑充希)を練(高良健吾)が見舞っている、そのシーンだ。木穂子は練の後ろから「あんな長いメール送られて、正直引いた人」と尋ね、練の右手をつかんで「はい」と言って手を挙げさせる。さらに「この女ウソばっかりついてって思った人」と尋ね、再び「はい」。そして3度目、「ちょっと重いから別れたいって思ってる人」と尋ねて手を挙げさせようとするが、練は力を入れて拒否する。練、向き直り、「木穂ちゃんは木穂ちゃんです」と言って、自分で手を挙げる。そして2人はお互いを抱き寄せ、木穂子はか細い声で「もう駄目かと思ってた。普通の恋人同士になろうね。なれるよね」と練に言うのだった。ここまでで、ドラマの第4話が開始してからおよそ3分だ。  ドラマとはこういった脚本の上に、役者が演技でニュアンスを表現し、監督が演出を加えることにより、情報量が足されていく。基本的には情報量と面白さは比例関係にあり、情報量が多く含まれた映像作品は面白い、あるいは見応えがあるといった表現で評される。だがそこでは、見る側の意識も試される。ただ漫然と流れてくる映像を目にするのではなく、作品の情報を深く知ろうとする姿勢が、情報量の多い映像作品では必要になる。  たとえば先ほどのシーンでいえば、会話という情報のほかに、特に木穂子のパーソナリティが情報として隠れている。彼女はそのまま本音を言うのが苦手な人で、それは練の後ろに立って顔を見られないようにしていることからわかる。言葉と仕草が本心とずれていることから、言葉で気持ちを伝えるのが得意だとは思っていないということも。そして、思っていることと逆のことを言うという木穂子のパーソナリティは、その後の「普通の恋人同士になろうね。なれるよね」という言葉を不安なものにする。口ではそう言いながらも、実は彼女はそうできると信じていないのではないか、という暗い予兆までもが、この3分間に情報として潜んでいる。それは決して偶然にそうなっているのではなく、そうやって作られているのだ。  テレビドラマを、というかテレビに限らずフィクションの映像作品を観るという行為は、そういった意味で知的遊戯だ。それは単体の映像物としてそこにあるのではなく、観る存在であり考える存在である主体を必要とする。フィクションの映像作品を観るということは、ドラマであれ映画であれ、無料であれ有料であれ、受動的な行為ではなく、あくまでも主体的な行動なのだ。  テレビドラマがつまらなくなった、あるいは薄っぺらいものとなった、と言われて久しいが、それはもしかしたら、情報量の多い作品、それはつまり主体として考えるという行為が要求されるような作品を避けて通るようになった我々視聴者の視聴行動にも原因があるのではないか。少なくとも、この作品ほど深く語れる、考えることのできるテレビドラマは、近年では稀である。それを例えば、視聴率が低いからどうせつまらないに違いないなどといって観ないというのは、あまりにももったいない。  テレビとは、ただだらだらと流れるものではなく、作り手と受け手の共同作業だ。ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』を面白くするのは、我々視聴者の仕事でもあるのだろう。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは@aizawaaa

降板・交代劇が相次ぐ今春の改編 番組の「顔」が代わることで変わることとは?

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テレビ朝日系『報道ステーション』公式サイトより
 この春ほど、番組における「顔」とは何か? を考える機会はない。  発端は、『報道ステーション』(テレビ朝日系)のキャスター降板を発表した古舘伊知郎。以降、さみだれ式にというか雪崩のようにというか、さまざまな名物番組で司会者、パーソナリティ、MCの降板・交代劇が相次いでいる。ざっと振り返ってみよう。 ◎『報道ステーション』古舘伊知郎→富川悠太(テレビ朝日アナウンサー) ◎『ニュース23』(TBS系)膳場貴子・岸井成格→星浩(朝日新聞社特別編集委員) ◎『クローズアップ現代』(NHK)国谷裕子→7名の女性アナウンサー交代制 ◎『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)石坂浩二→福澤朗  新司会者がまだ発表されていない番組でも、 ◎『めざましテレビ』(フジテレビ系)加藤綾子が卒業 ◎『スッキリ!!』(日本テレビ系)上重聡が卒業 などがある。  また、顔が代わる、という意味では、フジテレビの昼の顔・小堺一機の『ごきげんよう』が終了。ラジオ業界でもTBSラジオの、というよりもラジオ業界の朝の顔『大沢悠里のゆうゆうワイド』が、この春で終了する。  この流れとは別に、ベッキー降板によって顔を代えざるを得ない『にじいろジーン』や『人生のパイセンTV』(共にフジテレビ系)といった番組も。  もちろん、春は番組改編期。これまでにも名物番組の終了や司会者交代が話題に上ることはあったが、ここまで一気に「顔」が代わる春は異例だ。  特に報道系での司会者交代劇が多いが、番組の顔が変わることで、今後どんな変化やメリットが起こるのか考えてみたい。 (1)視聴習慣の変化→ライフスタイルが変わる  視聴者のテレビ離れが叫ばれる昨今。そんな危機的な状況のテレビを支えているファンの多くは、面白いかどうか、以上に「習慣」でテレビをつけていることが多い。朝はこのチャンネル、月曜はここ、週末はここ……時計代わりであり、カレンダー代わり。変えたいと思っても、意外と変えるキッカケはなかったりする。だからこそ、この春の司会者降板はいいキッカケになる。テレビとの接し方が変われば、おのずとライフスタイルももっと自由に、能動的に変わってくるはずだ。 (2)裏番組が面白くなる  視聴習慣が変わることを待ち望んでいるのは、地上波テレビ各局も同じ。特に、これまでその時間帯のトップを走っていた人気番組の後塵を拝していた「裏」番組にとって、視聴者を奪う絶好のチャンス。出演者や制作スタッフの熱も高まるはずだし、いい意味でテコ入れを図ってくる可能性は高い。 (3)安易な「便乗リニューアル」が増える  あまり歓迎したくない変化の可能性としては、今後「便乗リニューアル」が増えそう、というものがある。特に、司会者を代える機会を探していた局にとっては、絶好のチャンス、とばかりにリニューアルに踏み切る可能性は高い。  もちろん、「顔」が代わることをキッカケに面白い番組へと発展するのなら大歓迎だ。だが、多くの場合、「予算削減」の事情とも相まって局アナやフリーのアナウンサーを起用する方向に動きそう、というのも懸念点。もちろん、アナウンサーの職人的役割は重々承知しているが、それが番組に「格」や「華」をもたらすか、といえばそんなことはまずないだろう。 ……と、ここまで書いていたら、『スッキリ!!』上重アナの後任として、ハリセンボンの近藤春菜の出演を調整中、というニュースが入ってきた。そうそう、期待したいのは、こういう変化です。さすがは、目下一人勝ち状態の日本テレビ。やるべきことがわかっている。  それに比べてフジテレビは、「早朝4時から午後7時まで15時間生放送編成」というのが春の改編の売りらしい。求めているのは、そういうことじゃないと思うんだけどなぁ。 (文=オグマナオト)

“テレ東の脱ぎ要員”石川梨華の入浴シーンに興奮度ゼロ! 辻希美に上から目線で結婚を心配される屈辱も……

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石川梨華オフィシャルブログより
 先月30日に放送された『北陸・青森・函館へ! パパママ&女子会の旅』(テレビ東京系)に、元モーニング娘。の石川梨華が登場。旅の途中には、温泉でくつろぐシーンも見せたのだが、ネット上では「また太った?」「モー娘。現役時代ならまだしも、もはやまったく興奮しない」など、否定的な意見が飛び交った。 「石川は佐藤藍子、杉原杏璃らと共に、東北新幹線で青森へ“女磨きの旅”に出たのですが、入浴シーンに関して、現在38歳でAカップの佐藤と、現在31歳で05年にモー娘。を卒業してからは何かと体型の変化を指摘されている石川に、ネット上では『ミスキャストじゃないか?』『色気を感じられない』と指摘する声が多く、『杉原の谷間一択!』『杉原のプロモ』といった声も上がっていました。石川は、昨年10月に放送された『赤城山麓&わたらせ渓谷 秋の群馬 すごろくの旅8』(同)で、元メンバーの保田圭と一緒に入浴シーンを見せた際にも、『ファンはまだしも、一般的な需要があるとは思えないのだが』と否定的な意見が寄せられていました。また、テレビ東京のいくつかの他番組でも温泉に入るシーンを見せていることから、『テレ東の脱ぎ要員になった』と揶揄する声も上がっているようです」(芸能関係者)  最近では、島崎和歌子に似てきたと指摘されることも多くなってきた石川だが、42歳でいまだ独身の島崎のように「結婚できないのでは?」と心配する声も上がっているようだ。 「去年12月29日に、安倍なつみが俳優の山崎育三郎と結婚したことで、石川を除いた、モー娘。の初代から4期生までのメンバー全員が結婚を経験したことに。現役時代はトップを争うほどに人気者だった石川なだけに、ファンからも『結婚しないのはうれしいけど、まさか30歳過ぎるまで独身でいるとは思いも寄らなかった』と驚きの声が上がり、同期の辻希美からは、先月28日に行われた三井のリパークの“キティちゃん駐車場”のお披露目式典に出席した際、『梨華ちゃんはね、なんか大丈夫かな? できるかなって。このまま(結婚)しないのかなって、ちょっと思ったりもします』と、上から目線で心配される始末。同期とはいえ辻は石川より3歳年下であるだけに、ネット上でも『かなりの屈辱だろうな』と同情する声が上がっていました」(同)  石川は、14年に西武ライオンズの投手・野上亮磨との熱愛報道が流れたものの、その後は特に音沙汰がない。野上と現在も交際が続き、ゴールイン目前なのか、あるいは別の誰かと新しい愛を育んでいるのだろうか。

迷走続けるフジテレビ 打ち切りの『ごきげんよう』、昼ドラの後枠は低視聴率番組の“拡大”!?

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フジテレビ系『ライオンのごきげんよう』より
 迷走を続けるフジテレビが、またもや疑問符がつく方向に打って出る。  フジは今春の改編で、昼の長寿番組『ライオンのごきげんよう』(月~金曜午後0時55分~)と昼ドラ(同午後1時25分~)を打ち切ることが明らかになっていたが、なんと後継番組は“なし”。空いた枠は、いずれも低視聴率で苦しむ『バイキング』(同午前11時55分~)、『直撃LIVE グッディ!』(同午後1時55分~)の放送枠を拡大するというのだから、開いた口がふさがらない。 『バイキング』は50分拡大され、午後1時45分まで放送。この後に、『グッディ』が現行より10分早く始まる。『グッディ』の終了時間はこれまでと同じ午後3時50分で、『みんなのニュース』(同午後3時50分~7時)につながる。  これにより、フジの月~金曜は、5分間のミニ番組『国分太一のおさんぽジャパン』(同午前11時25分~)を除き、『めざましテレビアクア』(同午前4時~)に始まり、『めざましテレビ』(同午前5時25分~)、『とくダネ!』(同午前8時~)、『ノンストップ!』(同午前9時50分~)、『FNNスピーク』(同午前11時30分~)、『バイキング』、『グッディ』、『みんなのニュース』と続き、実に15時間にわたって生放送となる。  好視聴率番組を拡大して、“てこ入れ”するなら話がわかるが、低視聴率の『バイキング』『グッディ』の放送時間を拡大するなど、まさに狂気の沙汰だ。昨年3月30日にスタートした『グッディ』など、1年で打ち切りも検討されたほどのひどさなのに、番組継続どころか、MCである安藤優子キャスター、俳優・高橋克実が続投するというのだから絶句する。 「新番組を立ち上げるとなると、大変な労力と新たな制作費がかかってしまいます。コストをかけるくらいなら、『バイキング』の放送時間を拡大しようということになったようです。それなら、『バイキング』レギュラー陣のギャランティを多少上乗せするくらいですみますから。表向きは“強化”と言ってますが、視聴者も、首をかしげるでしょう」(テレビ関係者)  まさに、フジの迷走ぶりに拍車がかかったとも思える今回の措置。どう考えても、この“てこ入れ”が実を結ぶとは思えない。今後も午後0時、1時台は『ひるおび!』(TBS系)、2時、3時台は『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)の独走状態が続き、フジが苦戦することに間違いなさそうだ。 (文=森田英雄)

登場人物の誰もが、“特別”な存在になる――人が人を好きになる方法『いつ恋』第3話

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フジテレビ系『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』
 ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の第3話は、人が人を好きになる行程が描かれている。  順を追って説明したい。まず今回は、木穂子(高畑充希)の場面から始まる。彼女は主人公である練(高良健吾)の交際相手だ。第1話では練と一緒に寝ていたが、第2話では妻子のいる男と付き合っていることが明らかになった。代理店に務めるキャリアウーマンであり、派手な服装で、大人の色気もある。時折、博多弁の混じるその口調は、これまで多くの男を手玉に取ってきたのだろうと思わせる。  そんな木穂子が、家具屋でカーテンを選んでいる。そういえば前回、練の部屋が殺風景だからカーテンや家具を買うだのなんだの言っていた。人生の成功者だ、金もあるのだろう。ヒロインの音(有村架純)が、必死に介護施設で働いているのとは大違いだ。彼女はカーテンを買う。そして、日もすっかり出た時間帯にもかかわらず、コンビニ店「ポプラ」の前で酒を飲んでいる。通りがかるカップルがこそこそ言っているが、そんなことを彼女は気にしない。人生の成功者から見たら、他人の目などは些細なことであり、堂々とした様子である。  一方、我らが練と音は徐々に惹かれ合っていく。屋外で行われている小さなコンサートをこっそり二人で聴くシーン、アルプス一万尺の手振りもぴったりと合い、二人はそれぞれ別の場所で、今度会ったときに相手に見せようと路傍に咲く花を携帯電話のカメラで撮影している。その小さな、それでも美しい花は、地方から東京に出てきて理不尽さや寂しさと戦う二人を象徴している。誰に見られることはなくとも、花は美しく咲くのだ。それは、練と音も同じである。  どう考えても、お似合いなのは練と音だ。まるで、運命が選んだような二人じゃないか。そして、音が練に告白する。けんかをするかのような激しい口調で「好きやからに決まってるやん。引っ越し屋さんのこと、好きやからに決まってるやん」と唇を奪う。絶対に付き合うべきだ。木穂子なんて、ほかに好きな男がいるんだし。それに、練には似つかわしくない。きっと、純朴な練の気持ちにつけ込んで、火遊びしてるぐらいの気持ちだろう。練はもっと、つらさを内に秘めて無理をしてでも必死で頑張るような相手が、絶対に似合うはずなのだから。  長々と書いたが、ここまでがフリである。こうやって思っていた視聴者は、見事にだまされていたのだった。  終盤になり、木穂子は人生の成功者などではなかったことが明かされる。代理店に務めているのは事実だが、実際は事務であり、地味な仕事ばかりで、練に会うときだけはトイレで服を着替えて都会的な自分を演じている。「私は朝起きたとき、今日一日をあきらめます」という、心の底からの叫び。冒頭、家具屋でカーテンを買う前には、実は銀行でお金を下ろしていて、コンビニの前で発泡酒を飲んでいたのは成功者として堂々としていたわけではない、ただ、人生をあきらめていただけだった。場面の意味は変わる。そして同時に、視聴者から木穂子への思いも変わる。練、何をやっているんだ。お前が幸せにしなければいけないのは音でない、目の前にいる木穂子その人だ、と。  こうして、人は人を好きになる。すべての視聴者にとって、木穂子が特別な存在になった。人はギャップによって恋に落ちるという。まさしくそれは真実であるということを、視聴者は体験として知るのだ。『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』というこの歴史的な作品は、二つの意味で恋愛ドラマだ。登場人物同士が恋をし、そしてまた、視聴者が登場人物に恋に落ちるという意味で。  特に近年の坂元裕二作品では顕著だが、彼が紡ぐ物語には、類型的な人物が存在しない。ストーリーを進めるためだけに配置されたキャラクターは皆無であり、誰もが自分の人生を生きている。練がそうであるように、音がそうであるように、木穂子もまたそうだ。さらに、練の幼なじみの小夏(森川葵)にも、好きな人がいるという事実も発覚する。小夏もまた、自分の人生を生きている。そして、これが恋愛ドラマである以上、全員が幸せになることは不可能だということを私たちは知っている。誰かの恋が、かなわないのだ。そしてその誰かは、それが誰であろうとも、視聴者にとって特別な人間である。 『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は、間違いなく日本のテレビドラマの歴史に残る作品だ。このドラマは、恋愛ドラマの定義自体を変えてしまった。架空の人物の恋愛模様を他者としてのぞき見するのが過去の恋愛ドラマだとしたら、この作品は、視聴者が人物に恋をして、幸せになってもらいたいと心から願いながらもそれがかなわない。恋愛ドラマであり、かつ、それは恋愛そのものだ。恋愛がそうであるように、見ればあまりにも美しく、そしてあまりにも苦しい、そういった作品である。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは@aizawaaa

「誰が出ているか」から「誰がつくっているか」で見る時代に――テレビを面白くする“規格外”局員たち

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『水曜日のダウンタウン』TBSテレビ
「ドラマで当たっているわけでも、なんでもない。バラエティやから言うて、ものすごいおもろいことを言うわけでもないし」  ベッキー不倫疑惑騒動を受け、上沼恵美子が発言したこの「ベッキータレント評価」が話題を呼んでいる。上沼の言い分もわからないではないが、一方で、こんな思いも頭をもたげる。 「今のタレントって、みんなそうなんじゃないの?」と。  上沼は「したたかさ」と表現していたが、昨今のタレントに求められるのは、具体的なスキルよりも「処世術」であり「関係性」だ。結果、視聴者には伝わりにくいバーター出演や、事務所の力関係に“配慮”した「キャスティングありき」の番組づくりにつながってしまう。  だから、今のテレビはつまらない、とも評される。  くしくも、ベッキー問題と同タイミングでメディアをにぎわせたSMAP騒動でも、「事務所の威光」があらためて露呈した。いい加減、こうした事務所の力関係、人間関係に重きを置くテレビ業界、番組づくりにはシビアな目が向けられていいはずだ。  それはつまり、より「企画主導の番組づくり」にウェイトシフトしていく、ということ。その際、鍵を握るのが「誰がつくっているのか」という視点だ。実際、最近話題に上る番組は、決まって「テレビ局員」の存在が前に出ているものばかり。ここにこそ、光明があるはずなのだ。  パッと思いつくだけでも……、 日本テレビの古立善之(『世界の果てまでイッテQ!』『月曜から夜ふかし』) テレビ朝日の加地倫三(『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』) テレビ東京の佐久間宣行(『ゴッドタン』『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』) TBSの藤井健太郎(『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆正解は一年後』) フジテレビの竹内誠(『IPPONグランプリ』『THE MANZAI』『ワイドナショー』) などなど。  彼らに加え、20代でもフジテレビ『人生のパイセンTV』の“マイアミ・ケータ”こと萩原啓太、テレビ朝日『しくじり先生』で題字まで書いてしまっている北野貴章などが、ここにきて一気に注目度を高めている。  もちろん、テレビ局員が名物だ、出たがり人間だ、という番組は、これまでにも数多くあった。たとえば、日本テレビ『電波少年』の土屋敏男。そして、フジテレビであれば『オレたちひょうきん族』をはじめ、明石家さんまの番組には欠かせない“デタガリ恵介”こと三宅恵介。とんねるずが散々ネタにした“ダーイシ”こと石田弘と、“小港さん”こと港浩一。90年代以降なら『夢で逢えたら』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『笑う犬の生活』などを手がけた吉田正樹や『めちゃ×2イケてるッ!』の片岡飛鳥。  だが、彼らはかなり特異な例。同時期に大勢のテレビ局員が話題に上ることは少なく、また、そのほとんどがフジテレビ発、という一極(局)集中型だった。  それが一転、各局で同時多発的に、テレビ局員の名前で番組が注目されるようになってきたのが、ここ最近の傾向だ。テレビ局の危機、が叫ばれる今だからこそ、その身内から既存の番組をぶち壊して新しい価値を生み出す担い手が出てきている、と見なすこともできるだろう。  この流れを的確に捉えているのが、千原ジュニアだ。ジュニアは3月、舞台『6人のテレビ局員と1人の千原ジュニア』を開催する。 「6人のテレビ局員」とは、末弘奉央(NHK『超絶 凄ワザ!』)、内田秀実(日本テレビ『ヒルナンデス!』)、そして前述した加地倫三(テレビ朝日)、藤井健太郎(TBS)、佐久間宣行(テレビ東京)、竹内誠(フジテレビ)という面々だ。  この企画は、2006年2月に開催した放送作家たちにすべて委ねる舞台『6人の放送作家と1人の千原ジュニア』の第2弾となる。放送作家の面白さを打ち出そうとした前回を経て、今回は「テレビ局員」こそが時代の先端である、というジュニアの嗅覚は見事だ。  彼らを先頭に、事務所でもタレントパワーでもなく、テレビを面白くするのは制作スタッフなのだ、という気概を取り戻してほしい。  SMAP騒動の折、ネット上では「花屋の店先に並んだ花はどれもみんな世界にひとつだけの花だけど、一番偉いのは『花屋』なんだよ」というツイートが大いに拡散された。言い得て妙なたとえではあるが、同時にこうも言える。「そもそも、花屋があるビルがみすぼらしければ人は寄ってこない」。  規格外のテレビ局員を改革の旗頭として、つい立ち寄りたくなるテナントビルを築き上げてもらいたい。 (文=オグマナオト)

“見たくないもの”の中で、2人は――善意で世界を変える方法『いつ恋』第2話

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フジテレビ系『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』
ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の第2話は、練(高良健吾)と音(有村架純)が東京で再会するまでを描く。第1回ではぐれてしまった2人だが、音は練の住んでいる雪が谷大塚で暮らしている。生活圏も一緒で、お互い会いたいと願っている2人だが、すれ違ってばかりで会うことができない。恋愛ドラマとしての、正当ともいえる展開だ。  この第2話では、出会えない2人の日々の暮らしを描いているわけだが、練は第1話で明かされた通り引っ越し屋で、東京に出てきた音は介護施設で働いている。このドラマの脚本を務める坂元裕二は、特に『Mother』(2010年、日本テレビ系)以降は現代劇に社会性をまぶすのを得意としているが、この職業の選び方も、まさに現代ならでは。どちらも、いわゆるブラック企業としてスポットライトを浴びることが多い職種だ。  実際、練は引っ越しの最中に商品を壊したという濡れ衣を着せられて、自腹での弁償を命じられる。音は音で、過酷な労働環境に苦しんでいる。練の上司が言う「今は、どこの従業員も自腹だよ」という言葉と、音の上司が言う「みんな頑張ってるし、ワガママ言わないよね」という言葉は、ブラック企業の体質そのものだ。“みんなつらいのだから、お前もつらくあれ”という、論理的でないのに説得力のあるその考え方は、現代の日本社会の闇を感じさせる。  ブラック企業では、誰かの善意で仕事が成り立っている。たとえば音は、すれ違いざまに先輩から「お風呂の掃除、お願いできる?」と言われ、自分が犠牲になることでその役目を担う。介護職も、引っ越し屋も、あるいはほかのあらゆるブラック企業も、誰かが善意を持って犠牲になることで成立している職種だ。それは、最近ニュースで取り上げられるバス業界も食品業界も同じことで、言ってみれば、誰かの善意を犠牲にすることによって企業の収益を効率化するというのが、ブラック企業の仕組みである。  旧来のドラマであれば、その仕組みを壊してカタルシスを得るという手法が取られるのだろう。その善意が、間違った人を改心させる、あるいはその善意が誰かから感謝されるというような形で。だが、坂元はそうしない。それが2016年のリアリティだ。弁償を命じられた練は「腕立て伏せを300回したら、金を払ってやる」と先輩に言われ、チャレンジするのだが、それを見た先輩や上司は改心などしない。むしろ、見たくないものを見てしまった、という顔を浮かべてその場を立ち去ってしまう。善意で世界を変えることはひどく難しいものだ、というリアリティと残酷さがそこにはある。  多くの人々にとって、善意、あるいは正しさは、目に入れたくないものだ。『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』では、なおかつ視聴者もそこに巻き込む。練の弁償代は、恋人である木穂子(高畑充希)が支払っていたという事実が明かされ、2人はお茶を飲み、練はこの店の勘定は自分が払うと宣言する。だが、財布の中は小銭ばかりだ。かつ、足りない。「すぐ下ろすんで、30円貸してください」と苦しそうに告げ、さらに木穂子の財布には万札しかない。この気まずさはどうだ。見ていて声を上げてしまうほどで、こんな景色は見たくない。見たくないものを見られるか、という問いかけが、ここで視聴者に対してもなされているのだった。  そう、善意で世界を変えることは難しい。だが、不可能なことでもない。第2話のクライマックスは、練と音の再会の場面だ。街を歩く音が、犬の鳴き声を聞く。その犬は、練がいつもエサをやっていた近所の飼い犬だ。犬を思う、という、実生活にはなんの役にも立たない2人の善意が、共鳴し、2人を引き寄せる。善意を持って生きるというのは、特にこの時代、難しくてつらくて残酷だ。しかし、そこには希望がある。善意を持ち続けることでしか起きない奇跡が、確かにあるのだ。  ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は、第2話にして視聴率が10%を切ったことが話題になっている。確かに暗くて、地味で、見たいものではないかもしれない。だが、ここにはいまの日本のリアルが確かにある。視聴者の心意気こそが、いま問われているのかもしれない。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは@aizawaaa

テレビ史に残る名ドラマになるという確信──“偶然”を“奇跡”に変える方法『いつ恋』第1話

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『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』フジテレビ
 まず断言してしまうが、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は、フジテレビ月9の歴史に名前を刻む名作になるだろう。月9というか、テレビ史に残る作品だ。たとえば『東京ラブストーリー』(同)や『101回目のプロポーズ』(同)をリアルタイムで見ていたら、あるいは北海道が舞台というつながりで『北の国から』(同)をリアルタイムで見ていたとしたら、こんな気持ちになっていたのかもしれない。あらゆる場面が美しく、そして尊い。これがテレビで無料で見られる(かつ、公式サイトでは第1話の放送終了後7日間、無料配信までされている)というのがほとんど奇跡に近い、珠玉のテレビドラマだ。  脚本は坂元裕二。1991年に『東京ラブストーリー』の脚本を手掛け、社会現象を起こした張本人が、月9での恋愛ドラマに帰ってきた。近年は『それでも、生きてゆく』(2011年/同)、『最高の離婚』(13年/同)、『問題のあるレストラン』(15年/同)など、社会性の強い人間ドラマで視聴者をうならせてきた坂元が、満を持してのストレートな恋愛ドラマ。視聴者からの事前の期待も高かったわけだが、第1話において、すでにそのハードルをやすやすと飛び越えている。  恋愛を物語るということ。それは坂元にとって、脚本を書くという行為とおそらく本質として似ているのだろう。ゼロから何か出来事を起こすということではなく、登場人物に実際に起こった出来事を取捨選択して描くというのが坂元の手法だ。だから、そのリアリティが私たちの心を打つ。それは恋愛を物語るという行為も同じであり、人はしばしばただの“偶然”を、自分たちに起きた“奇跡”だと捉え、そうして特別な恋に落ちる。そこには語り手の意図が実は確かに存在しているのだが、恋をしている者はそれに気付かない。だからこそ、その恋は特別なのだ。  実際、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』でも、かなりの“偶然”が起こっている。ヒロインである音(有村架純)に手紙を渡すため北海道へ出かけた練(高良健吾)は、クリーニング店で初対面を果たしてから、3度も北海道で出会っている。そんなことがあるだろうか? 結構広いぞ、北海道。だが、あるのだ。あるから描かれている。それは“偶然”ではなく、ただの“奇跡”だ。  この“偶然”を、作劇上のご都合主義だと切り捨ててしまうのも理屈としては可能だが、そうさせないのが坂元の脚本、特にセリフだろう。実際に登場人物が生きている、今もどこかで暮らしていると思わせるリアリティがある。そのリアリティがあるからこそ、“偶然”は“奇跡”として私たちに届く。たとえば音と練の、こんなやりとりだ。 音「(トラックの荷台に積まれた大量のダンボール箱を見て)何が入ってんの?」 練「桃の缶詰です」 音「わたし、こんなに桃の缶詰持ってる人、初めて見た。これだけで、あなたのこと好きになる人いると思うよ」 練「(戸惑い)」 音「ねえ、東京ってさ、ひと駅ぶんぐらい歩けるって本当?」 練「本当です」 音「(すぐさま)ウソだ」 練「3駅ぐらい歩けますよ」 音「(練の胸を叩いて)ウソ言うな! 3駅って、選手やん」 練「選手じゃないです」 音「競技やん」 練「競技じゃないです。3駅歩く競技、ないです」 音「(笑ってアメを渡して)アメ食べ」  有村架純と高良健吾の演技によって、このセリフは本当に生きている人間の言葉になる。特に有村が演じる音の、本心を言うときにだけ関西弁になってしまうという設定、あるいは相手の言葉を待たずに自分の意見を言う勝手な性格、心の底では北海道を出たいと願っている彼女の気持ちが、このやりとりの中に集約されている。ちょっとあまりにも美しすぎるとしか言いようがない。  こういったリアリティこそが“偶然”を“奇跡”に変えているわけだが、それでも“偶然”をただのご都合主義として捉えたい方もいるかもしれない。そういった方には、こう言っておきたい。これはあくまでも、音が語る物語なのだと。この作品は音の主観で描かれていて、それは物語の最初の場面で示唆されている。  幼少期の音が、公園で草に向かって話しかけている。「あんな、お年玉返すから、お母さん返してほしいねん」と。そこで母親(満島ひかり)の声がする。「音」と、彼女を呼ぶ声が。幼少期の音が振り返ると、そこには彼女の養父となる男(柄本明)が立っている。  母親はすでに亡くなっている(音は母親の遺骨を抱いている)から、ここで母親の声が聞こえるというのは現実的にはおかしい。にもかかわらず、それが起こっているということは、これは音の主観であるということだ。だからこの物語は、音が振り返るひとつの特別な恋愛の話であり、少なくとも第1話において「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」と語っているのは音だ。これはあくまでも音が語る物語であり、実際にどこまで何が起こっていたのかを、他者である我々は知ることができない。音は練と3度も会っていないのかもしれないし、養母は本当は立ち上がっていないのかもしれないし、大雨の中でサイレンなんて鳴っていなかったのかもしれない。だが、音にとってそれは確かに起こったことであり、恋愛というのはしばしばそういうものだ。  こうして“偶然”は”奇跡”に変わる。それは恋愛に許された、あるいはテレビドラマを創るという行為に許された、ひとつの特権なのだ。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは@aizawaaa

かもめんたる、デニス、はんにゃ……2015年“消えたタレント”は?

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かもめんたる公式サイトより
とにかく明るい安村、藤田ニコル、おかずクラブなど、今年もたくさんのニューフェイスがブレークを果たしたが、その一方で、テレビから姿を消した人気者も少なくない。そこで、番組出演データを元に“消えたタレント”を調べてみた(出演時間は、2013年、14年それぞれのプライムタイムで比較)。 ●山岸舞彩(アナウンサー・元タレント) 2014年 36時間19分(31回) 2015年 3時間28分(3回) 増減率 -90.5% 『NEWS ZERO』(日本テレビ系)のキャスターとして知られていたが、今年7月下旬に結婚を発表、9月いっぱいで同番組を降板、芸能界を引退した。 ●川越達也(料理人) 2014年 39時間56分(23回) 2015年 4時間13分(4回) 増減率 -89.4% 『お願い!ランキング』(テレビ朝日系)をきっかけに、イケメンシェフとしてブレーク。ここ数年、減少傾向が続いているが、2015年は9割減。最近は、ディナーショーやイベントへの出演が目立つ。 ●アイドリング!!! 2014年 62時間53分(38回) 2015年 11時間27分(9回) 増減率 -81.8%  活動10年を迎えた今年10月末でメンバーが全員卒業し、活動休止状態に。先日、元メンバーの菊池亜美が「卒業生全員にAV禁止令が出されている」と発言し、話題に。はたして、裏切り者は!? ●デニス(お笑いコンビ) 2014年 41時間2分(25回) 2015年 7時間36分(4回) 増減率 -81.5%  ブラジル人とハーフの植野行雄と松下宣夫のコンビ。植野は昨年、マテンロウ・アントニーらと共にハーフ芸人としてブレークしたが、今年は出演時間が激減。植野のピンでの出演が増えたのかと思いきや、こちらも約8割減となっている。 ●みかん(ものまねタレント) 2014年 43時間16分(28回) 2015年 8時間10分(4回) 増減率 -81.1%  土屋アンナや西川史子のものまねでブレークするも、今年はジャニーズJr.ものまねのジャガーズや、ジャイアンものまねのカズマ・スパーキンといった変りダネに席巻されてしまったようだ。 ●かもめんたる(お笑いコンビ) 2014年 31時間23分(19回) 2015年 9時間38分(5回) 増減率 -69.3% 「キングオブコント2013」で優勝。昨年「王者になったにもかかわらず、ぜんぜんブレークしていない」と語っていたが、そんな状態から今年はさらに7割減に。「キングオブコント2015」王者で、現在ブレーク中のコロコロチキンペッパーズの未来は果たして……。 ●水沢アリー(タレント) 2014年 31時間58分(30回) 2015年 10時間56分(15回) 増減率 -65.8% 「第2のローラ」と呼ばれ、強烈なキャラクターで13年にブレークするも、ハーフタレント戦国時代を生き残れず……。さらに今年は、ハーフモデル・藤田ニコルのブレークでさらに窮地に。 ●今井華(モデル) 2014年 32時間15分(22回) 2015年 12時間6分(10回) 増減率 -62.5%  テラスハウスメンバー。露出減の裏には、「タメ口」が反感を買ったというウワサも。 ●はんにゃ 2014年 30時間34分(17回) 2015年 11時間55分(8回) 増減率 -61.0% 『はねるのトびら』(フジテレビ系)でブレークするも、その後の出演は右肩下がり。さらに、今年9月いっぱいで『ピラメキーノ』(テレビ東京系)も終了し、プライムタイムで6割減となった。 ●クリス松村(タレント) 2014年 53時間42分(44回) 2015年 20時間59分(25回) 増減率 -60.9%  こちらもここ数年、右肩下がり。オネエタレント枠も最近は入れ替わりが激しく、今年は“ニューキャマ系”GENKINGが登場するも、露骨なゴリ押しに視聴者から反感を買っている模様。 ***  引退、活動休止は仕方がないにしても、芸人のブレークサイクルは年々早くなっているようだ。来年、とにかく明るい安村や、おかずクラブ、厚切りジェイソンといった面々が、このランキングに名を連ねないことを祈りたい。 (提供:テレビ出演ランキング※出産・産休の女性タレント、亡くなったタレントは除外 ※プライムタイムの出演が減っていても、全日で出演が増えているタレントは除外