冨樫義博、「週刊のスタイルには合わなくなっている」と実感!? 『H×H』は連載開始しても10話分しか連載しない説…

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「DVD付分冊マンガ講座 ジャンプ流! vol.21」(集英社)
 現在休載中の『HUNTER×HUNTER』で知られるマンガ家・冨樫義博の制作の裏側に迫った「DVD付分冊マンガ講座 ジャンプ流! vol.21」が、11月2日に発売された。冨樫といえば、休載の多さからたびたび「冨樫仕事しろ」という声が上がるが、今回の「ジャンプ流!」では冨樫が“仕事をしている”様子を見ることができる。  これまでに、鳥山明や尾田栄一郎といった「週刊少年ジャンプ」作家の制作術に迫ってきた「ジャンプ流!」。この「ジャンプ流!」の一番の目玉といえば、付属のDVDで作家たちの作画風景や制作現場を映像で見られることだろう。冨樫は“休載作家”としておなじみになってしまっているが、今回のDVD内では、ばっちり作画をしている。  今回映像に収められたのは、『HUNTER×HUNTER』の人気キャラ・クラピカのカラー作画風景。ちなみにこのクラピカは、今年4月に『HUNTER×HUNTER』の連載を再開した回のカラートビラに登場しているイラストだ。  冨樫と言えば、前回の連載再開時、「ジャンプ」の巻末目次にて、寝たきりになるほど腰痛が深刻化していることを告白していたが、今回のDVD内では座っての作業が出来ていた。そんな作画中には、「なるべくこの下描きをやっている間にやる気を出す」と、制作時の心境を話す一幕が。  作画に対するモチベーションを下げないよう工夫している様子の冨樫だったが、それもそのはず、マンガ制作において一番好きな作業は「ダントツにネーム作業」だという。「ネームの前段階に『どんな感じにしよう』と考えている時がピーク。最初の作業がピークなので、どんどんテンションが下がっていく」そうで、「その後の作業が、本当に作業になってしまわないように、自分の中で工夫をしているつもり」……と明かしていた。  カメラを作業現場風景に移しても、「ネームを考えることが好き」と語っていた冨樫。その時、手に取っていたヒソカとカストロの戦いを描いた第52話の原稿は、ネームに時間を費やしすぎた結果、ミリペンで締め切りギリギリに仕上げたものだとか。 ――といった冨樫の作画風景や制作現場に迫ったDVDだが、その中で“休載が多い”と評判の『HUNTER×HUNTER』において、冨樫が気になる発言をしていた。  撮影当時の制作現場には、前回の連載再開時(16年20号~31号)に掲載された10話分の原稿があったのだが、それについて冨樫が「前、10話入れてまた少し間を開ける予定だったのが、腰を悪くしまして、それで中途半端に9話で終わってしまったので、反省を踏まえて、(今回は)先に10話分を上げてしまおうと」と、語ったのだ。 『HUNTER×HUNTER』の単行本に収録される話数は、だいたい10話。前々回となる14年の連載再開時は、休載を挟みながら9話分を連載し、長い休載に入っていた。そして、前回の連載再開時に11話分が連載され、6月に最新刊となるコミックス33巻が発売された。  なんとなく予想はついていたが、『HUNTER×HUNTER』は連載が再開されれば、ひとまず単行本を発売できる10話までは連載する――ということだろうか。確定ではないが、“連載再開されれば、10話は連載される”と思ってもよさそう(?)。裏を返せば、“連載開始されても10話しか読めない”ということになるが……。  たびたび「仕事しろ」と言われてしまっている冨樫だが、DVDの最後には「考えるのに時間をかけたり、週刊のスタイルにはあわなくなっているのは自分でもわかっている」と、語る一幕も。7月からまた休載に入ってしまった冨樫だが、ファンが納得するストーリーを考えていると信じて、連載再開を待つしかなさそうだ。 (雑誌やマンガ作品に関して、言及のない限り、版元は集英社)

【実写映画レビュー】「精神的BL」要素アリな『デスノート Light up the NEW world』は、続編ではなく“二次創作”?

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『デスノート Light up the NEW world』公式サイトより。
『デスノート Light up the NEW world』は、2006年に前後編で公開された実写版『デスノート』『デスノート the Last name』の続編である(後述する原作コミックの続編ではない)。前作で犯罪のない社会を目指してデスノートを使い、世界中の犯罪者を粛清したキラこと夜神月(やがみ・ライト)が、世界的名探偵Lによって追い詰められ絶命してから10年後の話だ。  キラの遺志を継ぐため、世界に存在する6冊のデスノートを集めようとするサイバーテロリスト・紫苑優輝(菅田将暉)が行動を開始する。紫苑を追うのはデスノート対策本部特別チームの捜査官・三島創(東出昌大)と、Lの後継者である世界的名探偵・竜崎(池松壮亮)。ふたりは反目しながらも共同で捜査を進める。いっぽう紫苑は、かつて月を愛したデスノートの元所有者・弥海砂(あまね・みさ/戸田恵梨香)に接触するが……。  実は本作、続編というより壮大な二次創作と呼ぶにふさわしい。前作実写版を観てからでないと、話についていけないからだ。オリジナルに精通したファンにしかツボがわからない二次創作同人誌と性質は同じ。無論、ニワカは門前払いだ。よく知られた『デスノート』の基本設定は、「ノートに名前を書かれた者は死ぬ」「ノートの所有者にだけ死神が見える」だが、これでは全然足りない。最低でも「“死神の目”の効力」「名前はノートの切れ端に書いても有効」「デスノートの所有権を放棄すると、所有者はノートに関するすべての記憶が消える」程度は了解しておかないと、劇中で何が起こっているのか、登場人物たちが何を怖がっているのか、なぜそのような行動をとるのかが、ほとんど理解できないのだ。  一例を挙げよう。竜崎は自宅の電灯スイッチに自分が所有するデスノートの切れ端を常に貼り付けているが、これは竜崎が毎日出かける前にノートの所有権を放棄して記憶をなくし(デスノート所有者であることを自発的に忘れ)、帰宅してスイッチに手が触れるたびに、それを思い出すようにしているからである。  なぜそんな七面倒臭いことをするかというと、デスノートの所有者は“死神の目”を持つ別のノートの所有者に、所有者であることがバレてしまうからだ。……などと説明しても、『デスノート』という作品に触れたことがない人は、何のこっちゃだろう。劇中ではほんのわずか説明されるだけなので、初見で理解することは不可能。しかし終始こんな調子である。一見さん完全排除の映画と覚悟すべし。  だいたい、物語の大前提である「人間界で同時に存在していいデスノートは6冊まで」というルール自体、原作では文字情報としてチラッと登場したのみで、本編では使用されていない設定である。そんな誰も覚えていないマニアックな設定を掘り出して1本作ってしまうなんぞ、二次創作的態度以外の何物でもない。  本作を完全に満喫するためには、前作2本(合計4時間半弱)を視聴したうえで、できれば各種ルールが明文化されている原作コミック(集英社/全12巻、完読までの所要時間5~6時間目安)も、サブテキストとして読んでおく必要がある。そこまでコストをかければ、前作の韻を踏んだシーンでニヤけられるし、三島の過去が明らかになるスーパー大どんでん返しもきっちり理解できる。  ただし、意外なところで別の楽しみ方ができる点もぜひ強調しておきたい。実は本作、「精神的BL」と呼ぶべきか「バディ関係性萌え」と呼ぶべきか……「三島×竜崎」の絆描写が、香港ノワールばりに激アツなのだ。超絶論理バトルのダイナミズムを旨とする『デスノート』からすれば外道な見立てではあるが、さすがに無視することはできない。本作が「壮大な二次創作」たる第二の理由は、ここにある。  当初、三島と竜崎は捜査方法やポリシーでことごとく衝突する。しかし一部の観客はある瞬間から、この衝突はツンデレの「ツン」部分であり、実は心の底では惹かれあっているふたりの「プレイ」なのではないか? という疑念(妄想)にとらわれはじめる。その根拠は三島と竜崎のキャラクター配置だ。竜崎はLの後継者だが、三島も三島で紫苑とは“別の意味で”キラこと夜神月の遺志を継ぐ存在であることが明らかになる。そう、「三島×竜崎」≒「月×L」なのだ。  これが何を意味するのか。そもそも『デスノート』という作品は前作実写版も原作も、夜神月とLというふたりの天才が繰り広げる超ハイレベルな頭脳戦が最大の魅力だ。ふたりは容貌も性格も思想も対称的だが、「惹かれ合う天才同士」という構図には、ある種の芸術的官能が漂っていた。  原作では中盤でLが月に殺され、Lの後継者ニアが苦戦の末に月を葬るが、「月はLに直接とどめを刺してほしかった」というファンの声も少なくなかった。それゆえ、Lが月に勝利して終わる2006年の実写版は、原作と異なる結末にもかかわらず、特に女性ファンには好評だったという経緯がある。この「月とLの特別なつながり」というファン大好物のネタを、それぞれの魂を引き継いだイケメンふたりに再演させた壮大な二次創作こそが、本作というわけである。  バディ関係性萌え映画だと捉えれば、本作が終始貫くスタイリッシュで耽美的な画面タッチにも合点がいく。捜査本部や竜崎のマンションのインテリアは無機質・シンプル・モダン。どのシーンも終始モノトーン基調で、常に曇天下のように彩度を落とし気味。黒、白、銀、ペールグレーなどを基本色に、挿し色の真紅や荘厳なオレンジが印象的に挟まれる。まるでゴシックV系バンドのMVのような、あるいは格式ある舞台美術のような虚構性の高さ。三島のダークスーツ萌え、竜崎の重い前髪萌えもポイントが高い(何のポイントだ)。  終盤、傷を負い、ボロボロになりながら支え合って地下道を進む三島と竜崎の姿は、香港ノワールのギャング映画と見まごうほどに美しい。立場上、敵対すべきはずのふたりが、惹かれ合う人間同士として命を支え合っている。これ、もう恋人同士でよくないか? 「精神的BL」が決してオーバーな見立てでないことは、その直後にはっきりする。竜崎にデスノートを与えた女性型の死神アーマによる、ある決定的なセリフによって、「三島×竜崎」がまぎれもなく「カップル」であることが断定されるのだ。まさかの“公式”アナウンス。これには本当に驚いた。えーと、これなんの映画でしたっけ?  入口は超大ヒット作品のマニアックな設定をこねくり回した難解な二次創作。しかし出口は耽美でスタイリッシュな精神的BL――という驚愕の結末。副題の「NEW world(新しい世界)」の意味についてしばし考えさせられる、秋の夜長であった。 (文・稲田豊史)

パリピの巣窟「渋谷ハロウィン」にオタクが楽しめる要素はあるのか? 意を決して調査してみた

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渋谷のハロウィンに恐る恐る突撃。
■渋谷ハロウィンにオタクが楽しめる要素はあるのか?  ここ近年ですっかり日本に根付いたハロウィン文化。特にメッカである東京・渋谷には、今年も各々自由に仮装をした若者らが集結し、その盛り上がりが多数のメディアに取り上げられた。  だが、こういったハロウィン文化を素直に楽しんでいるのは(特に渋谷で)、いわゆる「リア充」や「パリピ」といわれる人々がメイン――大変うがった見方をしているかもしれないが、自身もオタクで、オタク系ニュースサイト「おたぽる」に関わる身としてはそう感じている。実際、この時期になるとTwitterではオタクと思しき層の嫌悪感たっぷりのツイートが見られる状態だ。  実は、「おたぽる」を運営するサイゾーは渋谷に社を構えており、渋谷のハロウィンは取材しようと思えば、すぐ現地に向かうことができる。しかし、“オタク向けではない”ということで、これまでは避けてきた(……というよりも、個人的に「近づきたくなかった」)。  だが、今年はハロウィンの直前、渋谷の一部が歩行者天国になるというニュースが飛び込んできた。前々から渋谷でのハロウィン警備には警察が出動していたが、近年の盛況を受けて車道を開放すると警察が判断したのだ。恐怖的なモノも感じたが、ハロウィンがそこまで盛況している、ということも改めて実感させられた。  前置きが長くなってしまったが、今回は「そんなに盛り上がっているのなら……」と、重い腰を上げ、渋谷のハロウィンの取材を決定。望み薄ではあるが、“渋谷ハロウィンにオタクが楽しめる要素はあるのか”というテーマを掲げ、リア充とパリピの巣窟へ足を運んだ。 ■渋谷ハロウィンに“コスプレイヤー”はいるのか  編集部が取材したのは、ハロウィン当日となる10月31日の夜8時すぎ。道玄坂を下ると、すでにロイヤルホストとモスバーガーがあるビル前から歩行者天国になっていた。その時点で、すでにかなりの人だかり。道路を封鎖する柵越しの群衆を見て、同行した男性社員(オタク)と「ゾンビ映画のよう」「ウォーキング・デットっぽい」などと談笑していた。実際、ゾンビ(の仮装をしている人)もいた。
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 今回、取材するにあたり“渋谷ハロウィンにオタクが楽しめる要素はあるのか”というテーマを掲げたが、その要素のキモとなるのは仮装ないしはコスプレだろう。ひとまず、アニメ系の格好をしている人を探してみる。  ちなみに、仮装とコスプレの違いについては、「コミックマーケット」を主催するコミケットが明文化している。

“仮装とコスプレの違いは、前者が「ただ着ている」のに対し、 コスプレは、そのキャラクターや衣装に対し愛情を持っている点です。 ここが大きな違いと言っていいでしょう。 コスプレとは、作品・対象への愛情表現が立体化へと進んだ形なのです” ――コミケット公式サイト「コスプレって何?」より。

 渋谷のハロウィンにコミケの考えを当てはめるのは、少々違うような気もするが、今回はキャラに愛情を持っている「コスプレ」をしている人を捜索することに。  すると、『東京喰種』の金木研&鈴屋什造、『名探偵コナン』の江戸川コナン&怪盗キッド、『マクロスF』のランカ・リーのコスプレイヤーさんに遭遇。どれも、コミケのコスプレブースにいそうなクオリティーだ。
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どことなく“ハロウィン感”があるからか、『東京喰種』レイヤーさんは彼ら以外にもちらほら。
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広く知られている作品なだけに、周囲の注目度も高かった『コナン』レイヤーさん。
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残念ながら、シェリルは不在だった。
 その後も、『ハウルの動く城』のハウルや『Re:ゼロから始める異世界生活』のレム&ラムのコスプレイヤーさんに会うことができた。撮影後、「その格好は仮装ですか? コスプレですか?」と聞いてみたが、これらのレイヤーさんは全員「コスプレをしている」という認識だった。
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なお、隣では『黒子のバスケ』の黄瀬くんが変身中でした。
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人気の『リゼロ』レイヤーさんも。
 その一方で、『美少女戦士セーラームーン』のコスチュームを身につけた女子たちにこの質問をぶつけてみると、笑顔で「仮装だと思います」と答えていた。渋谷のハロウィンなら個人的にはこれで全然オッケーだと思うが(かわいいし)、以前友人のコスプレイヤーがハロウィンのアニメ系仮装勢に対し、「キャラへの愛がない」と怒りを抱いていたことをなんとなく思い出した。
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中央の女子はこの日誕生日だったそうで、テンション高めだった。
 その後とはいうと、ドンキに売ってそうなマリオに、これもドンキにあるピカチュウの着ぐるみ……といった仮装勢だらけ。しまいには、Tバックにフリーザのマスクを被っただけの“戦闘力が低そう”な仮装もいた。目立てればいい、楽しければいいという風な印象を受けた。先程のハウルレイヤーの男性も「アニメコスプレ少ないですよね?」と語っていたが、本当にその通りで“コスプレ”はほとんど見つからない。
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ノリノリでポーズを決めてくれた。
 先程登場した数少ないコスプレイヤーさんの中には、「去年の渋谷はアニメコスプレが多くて、目立っていたからコスプレしてみました」と語るレイヤーさんも。なお、今回シャア・アズナブルに扮した弊社の男性社員も取材に同行したのだが、「シャアだ!」と反応していたのは主に『ガンダム』世代の中年サラリーマンがメイン。格好が格好なだけに、目立ってはいたのだが、なんと「マジンガーZ?」と反応する若い女子が……。イマドキ女子にシャアが通じないという、衝撃的な事実が発覚した瞬間であった。
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自前です。
■人だらけでまったく前に進めない  その後、取材班はセンター街へと移動。しかし、道路びっしり人だらけでまったく前に進めない。コミケに向かうりんかい線の車内に匹敵しそうな混雑ぶりである。しかし、仮装する彼らは“どこに向かっている”のだろうか――それだけが疑問であった。
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 また、そこらに耳を傾けてみると、初対面らしき男女グループが「どこから来たの?」「埼玉」などと会話していた。なんと、今回撮影を担当した弊社の男性社員(30代)もギャルになぜか「ハッピーバースデー!」と絡まれていた。こういった雰囲気は渋谷ならではと言えるが、ネクラ気味のオタクな筆者は少し興ざめしていた。  なお、センター街にある相席居酒屋は、「コスプレ・仮装での入店可!」と店前で宣伝しており、話を聞いてみると、「仮装している人が結構入っています」とのこと。これだけの人が集まってれば、ハロウィンきっかけで交際がスタートしたカップルもいそうである。  スクランブル交差点では警察が「信号が変わります!」「止まらず進んでください!」と人波を誘導していたが、その先の渋谷TSUTAYA前やハチ公前広場はまともに歩ける状態ではない。しかし、その中では美女仮装集団に多数のカメラが向けられるという、コミケでもたびたび見られる現象が発生していたり、若者が集まって写真撮影をするといった光景が見られた。
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 人混みに疲れ、渋谷マークシティと渋谷駅をつなぐ連絡通路に避難し、上からスクランブル交差点を見下ろす。よく見ると、帰宅中のサラリーマンがハロウィン勢に巻き込まれていた。そんな風景を見ながら、渋谷といえば発売されたばかりの『ペルソナ5』の聖地だったな……今日は“改心”されないとダメな人が多そうだな……とぼんやり考えていた。ちなみにこの日、『ペルソナ5』のコスプレはいなかった。
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 1日のみの取材なので、なんとも言えないが、ちゃんとしたコスプレを見たいならば、渋谷ハロウィンは不向きであるようにも感じた。本稿ではあまり言及はしないが、正式なコスプレイベント以外の場でのコスプレは、マナー違反とされているのも関係していると思われる。その一方で池袋ではドワンゴとアニメイトが参画する「池袋ハロウィンコスプレフェス」が開催されているので、コスプレ目当ての人は池袋に向かったほうが良さそうだ。  ここまでの流れでなんとなく察しがついていると思うが、“渋谷ハロウィンはオタク向けではない”ということを今回再認させられた。ただ、お祭りのような雰囲気は少し愉快でもあった。筆者は取材後、人酔いで一晩中吐き気を催すことになったが……。 (文/編集部)

小池百合子東京都知事、公約守る! 『リボンの騎士』コスプレで池袋凱旋

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『リボンの騎士』の主人公・サファイアのコスプレを披露した小池百合子東京都知事。
 東京都の小池百合子知事が29日、東京・東池袋中央公園で行われた「池袋ハロウィンコスプレフェス2016」オープニング・セレモニーに登場。昨年、同イベントで『魔法使いサリー』の主人公・夢野サリーのコスプレ姿で登場して観客を沸かせた小池だが、今年は昨年公約していた手塚治虫の『リボンの騎士』のサファイアの衣装で登場。「今回で2回目の出場です。リボンの騎士をまとうんだと、今日はサファイアでやって来ました!」と集まった大勢の観衆に笑顔で手を振った。 「池袋ハロウィンコスプレフェス」は毎年、サブカルチャーの聖地と呼ばれる池袋東口エリアで開催される国内最大級のハロウィンフェスのひとつ。昨年は7万人の参加者と約1万人のコスプレイヤーが世界各国から集結。今年も29日、30日の2日間にわたって池袋東口エリアで開催された。
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 小池都知事は「前回は魔法使いユリーということで、ネットでも評判になりました。お約束通り今年はリボンの騎士を纏ってみました」とご機嫌。「この繋がりは全部、池袋のある豊島区の中にあるトキワ荘から出発しています」といい、「このリボンの騎士は手塚先生の作品。トキワ荘の主と言ってもいい方。そしてわたしが『なかよし』という本でずっと読んでいた漫画でもあります」と話し、「コスプレは何を着るかでその人の世代がわかりますね」と照れ笑い。  報道陣からは「戦う少女をイメージしたのですか?」との質問も飛んだが「単にわたしが(手塚先生の)大ファンだから」とコメント。「似合っていると思いますか?」との問いには「似合っているかどうかは皆さんに判断してもらえれば。今朝、鏡で確認しましたけど、こういうのは一回覚悟したらもうなりきるしかありませんから」と余裕の表情。
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「今や漫画やアニメはクールジャパンの代表格になりました。東京オリンピック2020年大会を控えますが、これもスポーツのみならずサブカル含め、日本の文化の発信の源としたいと考えております。世界の文化を取り入れて、日本風にアレンジしてしまうというこのすごさ。これからもどんどんそういう日本の文化を世界に発信していきたい」と話していた。 (取材・文=名鹿祥史)

堀江由衣、マスコミに「絶対撮らないで!」と懇願!? 劇場版『まほプリ』は3回泣くほどの出来に!

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『映画魔法つかいプリキュア!~』公式サイトより。
 今年2月からスタートし、物語も佳境に入りつつあるアニメ『魔法つかいプリキュア!』(テレビ朝日系/以下、『まほプリ』)。  その劇場作『映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!』が10月29日から公開。23日に完は成披露イベントが開催され、キュアマジカル/リコ役を演じる“ほっちゃん”こと堀江由衣や、キュアミラクル/朝日奈みらい役の高橋李依、早見沙織、齋藤彩夏、AKB48の“まゆゆ”渡辺麻友とともに登壇しトークを繰り広げたというのだが、マスコミに向けて“あるお願い”をする一幕があったという。  当日、取材に訪れたというワイドショー関係者がイベントの模様を語る。 「堀江はアニメ『AKB0048』で6代目 柏木由紀を演じ、以前、同作でまゆゆと共演したこともあってか『こういう形で共演も嬉しいです』と、キャリアを感じさせるコメントで、まゆゆを感激させていました。それに、もう1人の主人公、朝日奈みらい/キュアミラクルを演じる高橋から『由衣さん』と、下の名前で呼ばれたりと、慕われている感じでした」  台本チェック中に、3度も泣いてしまったと語るなど、劇場版の出来に自信を窺わせつつ、和気あいあいといった感じでイベントは進行。また時折、堀江の野心を“ギラつかせる”瞬間も見られたそうで……。 「劇中で100年に1度の願いが叶う石にかけて、何か叶えたい願いはない? という話題になったときに『膝下が3センチ伸びたセレブになりたい』と言い、膝を指していました。ただ、『絶対に撮らないでください、すいません(苦笑)』と、恥ずかしくなったのか“懇願”もしてました」(前出のワイドショー関係者)  そんな堀江は以前イベントで「(『まほプリ』)2年目に入るというのが私の野望です!」と語ったこともあったそうだが、「高橋が、『TVシリーズは終わりに全速力で向かっていて』『無事に走りきれますように』と、終わりに向かっているともとれるようなことを話してましたよ」(前出のワイドショー関係者)とのこと。とりあえず、その堀江の野望が叶うかどうかは劇場版の成績にかかっているのかもしれない。

「AKB48じゃんけん大会」田名部生来の優勝に見る“競わされるアイドルたち”の「矛盾した胸の内」

——地下アイドル“海”を潜行する、姫乃たまがつづる……アイドル界を取り巻くココロのお話。 161026_himeno.jpg  トークショーの終盤、他愛のない質疑応答の時間に、「ギャンブルはしないんですか?」という質問が寄せられた。  ファンの人が些細なことでも、いいやと思わないで質問してくれることに嬉しさを感じながら、「ただでさえギャンブルみたいな職業なので、しないです」という言葉が口を衝いて出ていた。笑い混じりのその声が、マイクを通じてスピーカーから流れてくるのを聞いて、私は胸の中で「本当にそうだな」と改めて納得してしまった。  女の子たちが、「いのち短し 恋せよ乙女」とも歌われる短い若き時代を、恋愛禁止を掲げて、アイドルという職業に費やす行為はギャンブルに変わりない。興味のない人には遊んでいるように見えるかもしれないが、当たるかわからないアイドル業に青春を賭しているのだから、彼女たちにとっては戦いである。もちろん遊びでやっている子も大勢いる。同じようにパチンコや競馬も、遊びでやっている人もいれば、戦うように本気でやっている人もいるのだろうと思う。  ライターの仕事を始めて、最初に担当してくれた編集さんはスロットと麻雀が大好きだった。「僕は本当にギャンブルが好きだから、別に千円賭けてじゃんけんするとか、そんなことでも良いんですよ」と言っていたのを覚えている。17歳だった私はたしかに少し面白そうだと思ったが、まさか23歳になっても自分がギャンブルみたいな仕事をしているとは思わなかった。  先日の「AKB48じゃんけん大会2016」で、田名部生来さんという23歳のメンバーが優勝したことを知った。人気や知名度に関係なく、じゃんけんで大所帯のセンターになれる可能性があるなんて痛快だし、アイドルにぴったりでわくわくする。彼女が「3期生の苦労人」や「干されメン」などと呼ばれて苦労しながら、今年でデビュー10年目を迎えていると聞いて、私まで愉しい気持ちになった。当日の会場では、同期の渡辺麻友さんや柏木由紀さんが、自分のこと以上に嬉しいと号泣する場面もあったという。彼女の優勝コメントが「私みたいな変な女がセンターで申し訳ない」だったことにも胸を締め付けられた。  アイドルを志していた少女が、こんな謙虚なコメントをするようになるまでどんなことがあったのだろう。  一体どんな思いで、何をモチベーションに、アイドルとして10年間を過ごしてきたのだろう。  AKB48の総選挙では圏外だとしても、私みたいな地下アイドルとは比べものにならないくらい仕事は大きくて華やかだと思う。しかし常に大勢の女の子達と比較され続けるのは、これまた想像も付かない辛さだろう。  私たちアイドルの競争はいつもへんてこだ。  ゴールがどこにあるのか、何をしたら得点が増えるのかわからない競技場で、それぞれがまったく違う競技をしながら、めいめいに争っているせいだ。技術があっても、順位が高い子の真似をしても、勝てるわけではないのが、アイドル業の面白さであり難しさでもある。  AKB48の総選挙も、別に歌やダンスやルックスで順位が付けられているわけではない。人間力や、芯の強い気持ちや、親近感を覚えるような適度な隙も必要だろうし、事務所の力や運も実力のうちになる。ひとりのメンバーに対して大量に票を入れることについては度々議論になるけど、それだけ誰かを夢中にさせるのもアイドルとしての力に違いない。 ■競争型アイドルイベントの功罪  2014年の「じゃんけん大会」へは取材に行った。 「じゃんけん大会」は衣装が統一されておらず、メンバー本人が自己プロデュースできるようになっている。同じ衣装を着て一斉に歌って踊っているライブの時とは、まったく異なる印象を受けた。自由になったメンバーは、男性受けからかけ離れた衣装(優勝した田名部さんも、ネクタイを頭に巻いた酔いどれサラリーマンの格好をしていた)や、反対に可愛いアイテムを追加しすぎてごちゃっとした雰囲気になっている子もいた。女の子達が自分の思うように戦う姿は、今まで自分が見てきた地下アイドル達と酷似していて驚いた。  地下アイドルもまた、よく競わされる。投票制のライブや、番組の企画や、公開オーディションなんかで。集客やグッズの売上で順位を付ける企画はお金が動く上に、地下アイドル達が勝つためにインターネットでファンに呼びかけるので、イベントや番組側にとってはお金のかからない宣伝にもなる。きちんとした企画もあれば、そういうことを主な目的としたイベントも多い。  それでも、少しでも知名度が上がれば、何かに繋がればと思う地下アイドルは後を絶たない。  かくいう私も、活動を始めた当初は3つの投票制ライブに出演していた。どれも集客や売上とは関係なく純粋な投票イベントだったので、地下アイドル同士も穏やかな雰囲気だったけれど、勝てない時は悲しかったし、ずっと勝てない人としてポジションを築いて人気になっていく子もいて非常に勉強になった。人それぞれ自分に合った戦い方があるのだ。歌や踊りよりもずっと、ファンの人の目をみることや、声援に応えることが大事なこともわかった。いまでも最初に経験しておいて良かったと思っている。  競争型のイベントにはいろんな女の子がいる。1位になれないことに心折れて脱落してしまう子もいれば、あらゆるイベントに出場しては勝ち続けている子もいる。しかし、前者の子がほかの場所で高く評価されることもあれば、後者の子は努力する目標が常に目の前にないと不安なので小さなイベントに延々出続けているだけということもある。何をしたらほかの子たちから頭ひとつ抜けられるのかわからない世界にいるのだから、気持ちは痛いほどわかる。私たちはこうして、このへんてこな世界で戦っている。  そもそもアイドル界には頂点というものがない。  ナンバーワンではなくオンリーワンを認めるアイドル文化は、いまのアイドルたちが受けてきたゆとり教育に似ている。オンリーワンは嬉しいけれど、誰だって自分と同じ人間はいないのだからそれは当たり前のことで、この世界に入ったからには少しでも存在を認められたいし、時には順位付けされて自分の立場に良くも悪くも納得したい欲が生まれる。こうした矛盾の中でアイドルが爆発しないように、AKB48の総選挙も、地下アイドルの投票イベントも需要が絶えない。ファンにとっても自分の応援の仕方が合っているのか、自分の応援は報われているのか目に見える貴重な機会だ。  私はいま積極的な戦いの時期を経て、なるべくほかの地下アイドルと競わなくていい隙間産業を常に探している。それなので誰とも競っていないのだけれど、自分の性格を考えると競ってばかりいたらとっくに引退しているだろうし、こうしてやり過ごすこともまたひとつの戦い方だと思う。  しかし、そこまでして地下アイドルを続けたい理由は自分でも明確にわかっておらず、辞め時のわからなさも含めて、この仕事はギャンブルみたいだと思う。 ●姫乃たま 1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。地下アイドル、ライター。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。フルアルバムに『僕とジョルジュ』があり、著書に『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー社)がある。11月23日にフルアルバム「First Order」を全国発売決定。 ★公式サイト<http://himeeeno.wix.com/tama> ★公式Twitter<https://twitter.com/Himeeeno> ★「恋のすゝめ/僕とジョルジュ」<https://youtu.be/KH4HGsKyFEo> <ライブ情報> 姫乃たま3rdワンマンライブ「アイドルになりたい」 日時:2017年2月7日(大安吉日) OPEN18:00 START19:00 会場:渋谷WWW(東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下) 前売り券¥2500 当日券¥3000 ACT:姫乃たま / 僕とジョルジュ DJ 中村保夫(和ラダイスガラージ) チケット絶賛発売中!▼ http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002205215P0030001

ラグビーが好きな人、“出し切った”ことがある人なら共感できる熱いドラマを熱く作る!『ALL OUT!!』プロデューサーインタビュー!

 雨瀬シオリが月刊「モーニング・ツー」(講談社)で連載中、ハードで迫力あるプレイシーンと、めちゃ熱いキャラクターたちが紡ぐドラマで人気の本格高校ラグビーマンガを原作に、ついに今月から放送が始まった『ALL OUT!!』。  高校生の全国大会がTV中継され、かつては有名なTVドラマの題材にもなった人気スポーツでありながら、ラグビーを題材としたTVアニメは、意外にもこの『ALL OUT!!』が史上初となる。  作画にかけるカロリーも高そうだが、20日に放送された第3話では熱い試合シーンを披露し、アニメファンをうならせ、原作ファンを喜ばせた。  本作の制作に、果敢に名乗りを上げた製作委員会は、どんな意図や想いがあったのか、また“史上初のラグビーテレビアニメ”制作にはどんな苦労があるのか。製作委員会に名を連ねるアスミック・エース株式会社、コンテンツ事業部の青井宏之プロデューサーに、熱い『ALL OUT!!』への想いを語っていただいた!
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(C)雨瀬シオリ・講談社/神高ラグビー部
■『ALL OUT!!』は見ている人に何かお土産を持たせられる作品! ―― 他誌さんの清水健一監督へのインタビューで、「プロデューサーが原作に熱く惚れ込んでいて……」という記事もありました。そこも含めて、まずTVアニメ初のラグビーマンガ『ALL OUT!!』のアニメ化決定の経緯を教えてください。 青井宏之(以下、「青井」) 清水さんがおっしゃったのは、MADHOUSEの林(雅紀/アニメーションプロデューサー)さんだと思いますが、そもそも『ALL OUT!!』のアニメ化したい! となったのは大体2014年の2月、コミックス3巻が出ているころです。原作を読んで、すごく熱い物語だし、雨瀬さんが描く絵も魅力的で、アニメーションになったら心打つ素晴らしいものが生まれるんじゃないかとわくわくしました。  私自身スポーツアニメが好きだったんですが、『ALL OUT!!』はキャラクターのドラマ性が強く、他のスポーツアニメに共通する、王道のスポ魂ものの魅力があると感じたので、こちらから講談社さんに相談しました。  アニメーション制作がMADHOUSEさんとトムス・エンタテインメントさん、2社体制になったのは、その当時トムスさんと別作品でもご一緒させていただく機会もあり、相談させてもらい、その流れで「制作はこういう体制でとうでしょうか」となりまして。その中で先ほどお話に出た、林さんが熱く『ALL OUT!!』に興味を持ってくれて、清水さんに監督をお願いしようとなったんです。 ―― 清水監督が野球やサッカーと比べると少ないであろう、ラグビー経験者なのは大きいですよね。 青井 そうですね、すごく恵まれた作品だと思います。本当にめぐり合わせですね。清水さんは高校時代にラグビーをご経験されたそうですが、「やってる」「やってない」ではずいぶん違うと思います。たとえばラグビーにまったく接点がない人は、去年の「ラグビーワールドカップ2015」(以下「W杯」)まで、おそらく「ノックオン」(プレーヤーがボールを落とし、ボールが前へ進んでしまう反則)が何なのか、わからなかったと思うんです。中にはアメフトとごちゃ混ぜになっている人もいたかもしれませんね、アニメやマンガの影響で。  ただ、僕はラグビーが題材だからというわけではなく、単純に「面白いからアニメ化しよう」というところから始まっているんですよ。作品に惚れ込んで、この『ALL OUT!!』のキャラクターが動いて、声が加わり、音が加わったら、やっぱり人の心を動かすというか、見ていて胸を打つような作品になるだろうと。エンタテインメントというものは、見ている人に何かお土産を持たせられるような作品であればと思っていて。『ALL OUT!!』はそれが原作からほとばしっているので、アニメーションにしたときにより強固なものになればいいなと思っています。
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主将・赤山の後ろ姿。後背筋が頼もしい
■4年に1度のお祭りW杯にあわせて発表、“花園”ともコラボ!? ――清水監督を含め、スタッフさんの顔ぶれについても一言ください。シリーズ構成の横谷(昌宏)さんがMADさんとお仕事するのは珍しいですよね。 青井 横谷さんは、他作を見ても、キャラクターのドラマや掛け合いが非常にうまい方です。『ALL OUT!!』はキャラクターが命ですが、そこを膨らませることができる。横谷さんと入江(信吾/脚本)さんはトムスさんが声をかけて制作に入ってもらいました。  ラグビーで何が大事か、他のスポーツ作品と何が違うかっていったら「筋肉」だと思うんです。OP映像を見ていただいたらわかると思うんですが、お尻アップ、胸アップと、筋肉の描き込みっていうのは、リアルに描き込まず、貧弱になってしまうとラグビーではなくなってしまう。筱(雅律/キャラクターデザイン)さんは『BLACK LAGOON』シリーズや『はじめの一歩』シリーズなどに関わり、体の質感を描くことには長けている方です。『ALL OUT!!』のキャラクターというので、MADさんからこの方でといった形で話がありました。 ―― 各アニメーターさんにとっては、野球でいうと、キャッチボールすらしたことがないというレベルのラグビーを描くのは苦労があったのでは?  青井 苦労されていると思います。MADさんの話を聞いていても、「前にボールを投げたらダメ、『ノックオン』はわかる。以上」といった方が多いんです。加えて各キャラクターの動きだけではなく、試合シーンを描くときは「このポジションがこのアングルで写ったとき、何番はどの辺にいなくてはならないか」という、キャラの立ち位置や動かし方も難しい。  清水さんに加えて、副監督の牛嶋(新一郎)さんもラグビーの経験者ですし、他にも経験者がいらっしゃるので、知識を共有しながら、チェックされています。リアルのラグビーの100%の再現は難しいかもしれませんが、ラグビーを知っている人が「これが違って気になってちゃんと集中できない」という事態は最低でも避けるため、非常に気にかけて、考えてながら進められています。 ―― 業界にそんなにいないであろうラグビー経験者が制作チームにいるのは心強いですよね。 青井 MADさんも、この作品のために、力を入れて集められたんだと思います。そして、(原作の)編集の方も経験者なので、コンテの段階で抜けがないかチェックできる体制ができています。 ―― 宣伝についてもお聞かせください。『ALL OUT!!』は昨年9月にアニメ化が発表されました。放送開始まで1年間もあるのはかなり長いほうですが、やはりこれはW杯の影響ですか?  青井 W杯は4年に1度のお祭りですから、やはり宣伝としたら合わせたくなりますよね。普通に考えたら今年の4月以降に告知してもいいとおもうのですが、できるだけ前宣伝で刷り込ませて、知ってる人は知っているといった形にしたかった。さらに19年には日本でW杯が開催されるわけですし。  幸運なことに発表してから2日後に、あの南アフリカ戦(※)があったわけですよ。最後の最後でトライを狙いに行くっていう、ラグビーを知らない人が見ても興奮する試合になって……たしかに早い発表でしたが、結果的には最高のタイミングになりました。  ※昨年9月20日(現地時間)に行われた、W杯イングランド大会1次リーグB組の日本vs南アフリカ戦。優勝候補の南アフリカを相手に、圧倒的不利を予想された日本が34対32で劇的な逆転勝利を飾った。 ―― 「全国高校7人制ラグビー大会」や、ラグビーボールブランド「GILBERT」ともコラボされたり、オフィシャル的な動きが活発だなという印象があります。 青井 リアルラグビーのファンのかたにも観ていただきたいというのもありますし、ラグビーを題材にしたアニメなので、そういったところにも力を入れております。今後も広げられるよう力を入れておりますので注目していただければ幸いです。 ■スポーツやラグビーが好きな人たちにザワついてほしい! ―― 多くのスポーツアニメの人気を支える女性アニメファン、特に男性と男性の友情物語が大好きな層には、どうプロモーションしていかれるんですか? 青井 スポーツアニメの魅力は、練習、試合を通してキャラクターの成長がみられるということですよね。作品の世界観を壊さずに、丁寧に作品を知ってもらうよう届けられるよう気を付けております。そして、アニメファンだけではなく、スポーツやラグビーが好きな人たちにも、「こういう作品があるんだ!」ってザワついてほしいなと。  いろんな層の方たちが興味を持って盛り上がっていただくことで、「『ALL OUT!!」ってキテるよね」っていうのが広がれば、作品としてのバリューが上がって、次につながっていくのかなと思いますし。 ―― リアル高校ラグビー部員などが見てくれていたりするとうれしいと? 青井 そうですね。原作コミックはすでに多くの方が読まれているようで、購読者層を聞いても、ラグビー経験者の男性が多いと聞いています。そこがより広がって、そうでない人たちにも、熱いスポーツものとして楽しんでほしい。『ALL OUT!!』はキャラクター同士、高校生のぶつかり合った熱い想いが、読み進めていけばいくほど、いろんなキャラにスポットが当たって、より熱く広く複合的に物語が広がっていきますから。 ―― キャラクターも多いので、キャスティングも大変だと思うんですが、主人公の1年生2人に若手を起用されたのには、どんな意図があったのでしょうか? 青井 祇園健次(千葉翔也)と石清水澄明(安達勇人)、特に祇園はこの物語を通じて、ラグビー初心者から始まってどんどん成長していきます。声優さんも、キャラクターと一緒に成長していけるような方、これから成長していく過程、いい意味でまだ色がついていない、キャスティングにしたいなと。もちろんまだ未熟な部分も多いかもしれないし、実際当初は収録に時間がかかったりもしたんですが、だんだんペースがつかめてきて、キャラと一緒に成長していっているので、そういったところかなと。  一方で「先輩後輩」の間柄、まとめる人、神高ラグビ―部の顔にならなければいけない方は、経験者、実力のある方が大事かなということで、細谷さん(佳正/赤山濯也役)、逢坂さん(良太/八王子陸役)に。このメインの4人は早く決めました。
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部のお母さん的存在・八王子
 ネットの反応とかを見ていると、「これ逢坂さんだったんだ!」っていう反応もあるので、逢坂さんだってわからないかもしれません。いろんな作品で主人公格のキャラを演じられていますが、それらとはまた違った、温かみのある神高の「お母さん」みたいな感じかもしれません。  赤山役の細谷さんもいいですよね。色気がある感じで。キャプテンなので威厳と渋みのある声と言えば、細谷さんかなと。実際、『ダイヤのA』ではキャプテンもやっていますし、『ハイキュー!!』ではキャプテンではないにしろ、エース役をやっていますし。独特ですよね、色気があって。低めのああいう声を出せる人はなかなかいないと思うので、ぴったしハマったかなと思っています。 ――これだけ人数がいると、キャスティングの他、収録ブースが大変なことになっていそうですが……。試合の時は男性ばかり30人くらいいるわけですよね? 青井 収録ブースから人が溢れていましたね。ブースの椅子が足りなくなって、立ったままの人もいました。ベテランの方がいらっしゃると空気が変わったりすることがありますが、男子だらけなので、やっぱりわちゃわちゃしていますね。楽しい現場です。
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重く響くプレー中の音も聴きどころ
■スタッフも“ALL OUT”、出し切って頑張ってます! ―― 1~2話目を見て、非常に原作を丁寧に描かれているなと思ったのですが、ラグビーならではの試合シーンも早く見たいのにという声もあると思います。 青井 3~4話は慶常との試合が描かれていますが、非常に熱い試合になっています。清水さんも「3~4話を見てくれ!」とおっしゃっているので、試合ならではのスクラムやラインアウト、それぞれのキャラのドラマが動いて1話で描かれた石清水のトラウマが解き放たれたり、見ごたえあるシーンも多く、1話、2話と違った見方ができて面白いと思います。  そもそも清水さんが雨瀬さんの原作を非常にリスペクトされているんですよね。キャラクターの絵ヅラとか、なんとなく持っている空気感が、「アニメになったらこんな感じだよね」という部分を、大事にされているんです。 ―― 清水監督は、音にもこだわっているということで、音がリアルに感じられたので、試合シーンも迫力がありましたね。 青井 音は、大学のラグビー選手たちに協力していただき、キックの音、体と体がぶつかる音を収録し、それを加工して使用しています。音響スタッフ陣も力を入れてやっているのでそこも聴きどころの一つです。  あとは審判の笛の音も、ダビングの際にいつも確認していますね。サッカーとかもそうだと思うんですけど、経験者の方でも笛の音までは普段、意識しないじゃないですか、「ピッピー」なのか「ピッピッピー」なのか。「正しくは何なんだろう」と議論しながらやっています。ラグビーってこういう感じなんだと、祇園と一緒に学んでいくような感覚を、ラグビーには普段興味がないという方に、覚えてもらえるとうれしいです。 ―― シーズン的にもちょうどいいですよね、リアルラグビーに興味が湧いたら、今は生試合をすぐに見られます。 青井 放送時期を10月にしたっていうのも、そういうことなんです。トップリーグは8月からもう始まっていますが、学生のラグビーシーズンはやっぱり秋から冬にかけてですから。10月放送開始にさせていただいたからこそ、いろんな取り組みをご一緒できるんです。これが4月放送開始だったら、TVアニメが始まったタイミングで、ラグビーシーズンが終わってしまっていますからね。 ―― 最後に、スポーツモノが好きな男性主体のアニメファンや、女性ファンに向けて一言ずつお願いします。 青井 “ALL OUT”という単語は、「すべてを出し切る」という意味なんですけど、スポーツじゃなくても、学生時代や今までで、何か一つのものに打ち込んだことがある人であれば、胸にじんわりきて共感できる、本当に「あぁ!」といった形で共感できるものだと思います。 「史上初のラグビーテレビアニメ」ですから制作は大変ですが、スタッフも“ALL OUT”、まさに出し切って頑張っていますので、ぜひご覧になってほしいです。 ■TVアニメ『ALL OUT!!』 ・公式サイト http://allout-anime.com/ ・公式Twitter @allout_anime ・放送情報  TOKYO MX 毎週木曜日 深夜24時~  MBS 毎週金曜日 深夜27時10分~  BS11 毎週土曜日 深夜25時~ ・J:COMオンデマンド、JCOMオンデマンド メガパック、milplus、auビデオパス、ひかりTV、バンダイチャンネル、Hulu、OnGenムービー、U-NEXT、アニメ放題、フジテレビオンデマンド、ビデオマーケット、Google Play、楽天SHOWTIME、HAPPY動画、Amazonビデオ、ニコニコ動画、GYAO!、TSUTAYA TV、dアニメストア、dTV、ゲオチャンネル、UULA、DMM.comにて配信 (C)雨瀬シオリ・講談社/神高ラグビー部

ラグビーが好きな人、“出し切った”ことがある人なら共感できる熱いドラマを熱く作る!『ALL OUT!!』プロデューサーインタビュー!

 雨瀬シオリが月刊「モーニング・ツー」(講談社)で連載中、ハードで迫力あるプレイシーンと、めちゃ熱いキャラクターたちが紡ぐドラマで人気の本格高校ラグビーマンガを原作に、ついに今月から放送が始まった『ALL OUT!!』。  高校生の全国大会がTV中継され、かつては有名なTVドラマの題材にもなった人気スポーツでありながら、ラグビーを題材としたTVアニメは、意外にもこの『ALL OUT!!』が史上初となる。  作画にかけるカロリーも高そうだが、20日に放送された第3話では熱い試合シーンを披露し、アニメファンをうならせ、原作ファンを喜ばせた。  本作の制作に、果敢に名乗りを上げた製作委員会は、どんな意図や想いがあったのか、また“史上初のラグビーテレビアニメ”制作にはどんな苦労があるのか。製作委員会に名を連ねるアスミック・エース株式会社、コンテンツ事業部の青井宏之プロデューサーに、熱い『ALL OUT!!』への想いを語っていただいた!
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(C)雨瀬シオリ・講談社/神高ラグビー部
■『ALL OUT!!』は見ている人に何かお土産を持たせられる作品! ―― 他誌さんの清水健一監督へのインタビューで、「プロデューサーが原作に熱く惚れ込んでいて……」という記事もありました。そこも含めて、まずTVアニメ初のラグビーマンガ『ALL OUT!!』のアニメ化決定の経緯を教えてください。 青井宏之(以下、「青井」) 清水さんがおっしゃったのは、MADHOUSEの林(雅紀/アニメーションプロデューサー)さんだと思いますが、そもそも『ALL OUT!!』のアニメ化したい! となったのは大体2014年の2月、コミックス3巻が出ているころです。原作を読んで、すごく熱い物語だし、雨瀬さんが描く絵も魅力的で、アニメーションになったら心打つ素晴らしいものが生まれるんじゃないかとわくわくしました。  私自身スポーツアニメが好きだったんですが、『ALL OUT!!』はキャラクターのドラマ性が強く、他のスポーツアニメに共通する、王道のスポ魂ものの魅力があると感じたので、こちらから講談社さんに相談しました。  アニメーション制作がMADHOUSEさんとトムス・エンタテインメントさん、2社体制になったのは、その当時トムスさんと別作品でもご一緒させていただく機会もあり、相談させてもらい、その流れで「制作はこういう体制でとうでしょうか」となりまして。その中で先ほどお話に出た、林さんが熱く『ALL OUT!!』に興味を持ってくれて、清水さんに監督をお願いしようとなったんです。 ―― 清水監督が野球やサッカーと比べると少ないであろう、ラグビー経験者なのは大きいですよね。 青井 そうですね、すごく恵まれた作品だと思います。本当にめぐり合わせですね。清水さんは高校時代にラグビーをご経験されたそうですが、「やってる」「やってない」ではずいぶん違うと思います。たとえばラグビーにまったく接点がない人は、去年の「ラグビーワールドカップ2015」(以下「W杯」)まで、おそらく「ノックオン」(プレーヤーがボールを落とし、ボールが前へ進んでしまう反則)が何なのか、わからなかったと思うんです。中にはアメフトとごちゃ混ぜになっている人もいたかもしれませんね、アニメやマンガの影響で。  ただ、僕はラグビーが題材だからというわけではなく、単純に「面白いからアニメ化しよう」というところから始まっているんですよ。作品に惚れ込んで、この『ALL OUT!!』のキャラクターが動いて、声が加わり、音が加わったら、やっぱり人の心を動かすというか、見ていて胸を打つような作品になるだろうと。エンタテインメントというものは、見ている人に何かお土産を持たせられるような作品であればと思っていて。『ALL OUT!!』はそれが原作からほとばしっているので、アニメーションにしたときにより強固なものになればいいなと思っています。
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主将・赤山の後ろ姿。後背筋が頼もしい
■4年に1度のお祭りW杯にあわせて発表、“花園”ともコラボ!? ――清水監督を含め、スタッフさんの顔ぶれについても一言ください。シリーズ構成の横谷(昌宏)さんがMADさんとお仕事するのは珍しいですよね。 青井 横谷さんは、他作を見ても、キャラクターのドラマや掛け合いが非常にうまい方です。『ALL OUT!!』はキャラクターが命ですが、そこを膨らませることができる。横谷さんと入江(信吾/脚本)さんはトムスさんが声をかけて制作に入ってもらいました。  ラグビーで何が大事か、他のスポーツ作品と何が違うかっていったら「筋肉」だと思うんです。OP映像を見ていただいたらわかると思うんですが、お尻アップ、胸アップと、筋肉の描き込みっていうのは、リアルに描き込まず、貧弱になってしまうとラグビーではなくなってしまう。筱(雅律/キャラクターデザイン)さんは『BLACK LAGOON』シリーズや『はじめの一歩』シリーズなどに関わり、体の質感を描くことには長けている方です。『ALL OUT!!』のキャラクターというので、MADさんからこの方でといった形で話がありました。 ―― 各アニメーターさんにとっては、野球でいうと、キャッチボールすらしたことがないというレベルのラグビーを描くのは苦労があったのでは?  青井 苦労されていると思います。MADさんの話を聞いていても、「前にボールを投げたらダメ、『ノックオン』はわかる。以上」といった方が多いんです。加えて各キャラクターの動きだけではなく、試合シーンを描くときは「このポジションがこのアングルで写ったとき、何番はどの辺にいなくてはならないか」という、キャラの立ち位置や動かし方も難しい。  清水さんに加えて、副監督の牛嶋(新一郎)さんもラグビーの経験者ですし、他にも経験者がいらっしゃるので、知識を共有しながら、チェックされています。リアルのラグビーの100%の再現は難しいかもしれませんが、ラグビーを知っている人が「これが違って気になってちゃんと集中できない」という事態は最低でも避けるため、非常に気にかけて、考えてながら進められています。 ―― 業界にそんなにいないであろうラグビー経験者が制作チームにいるのは心強いですよね。 青井 MADさんも、この作品のために、力を入れて集められたんだと思います。そして、(原作の)編集の方も経験者なので、コンテの段階で抜けがないかチェックできる体制ができています。 ―― 宣伝についてもお聞かせください。『ALL OUT!!』は昨年9月にアニメ化が発表されました。放送開始まで1年間もあるのはかなり長いほうですが、やはりこれはW杯の影響ですか?  青井 W杯は4年に1度のお祭りですから、やはり宣伝としたら合わせたくなりますよね。普通に考えたら今年の4月以降に告知してもいいとおもうのですが、できるだけ前宣伝で刷り込ませて、知ってる人は知っているといった形にしたかった。さらに19年には日本でW杯が開催されるわけですし。  幸運なことに発表してから2日後に、あの南アフリカ戦(※)があったわけですよ。最後の最後でトライを狙いに行くっていう、ラグビーを知らない人が見ても興奮する試合になって……たしかに早い発表でしたが、結果的には最高のタイミングになりました。  ※昨年9月20日(現地時間)に行われた、W杯イングランド大会1次リーグB組の日本vs南アフリカ戦。優勝候補の南アフリカを相手に、圧倒的不利を予想された日本が34対32で劇的な逆転勝利を飾った。 ―― 「全国高校7人制ラグビー大会」や、ラグビーボールブランド「GILBERT」ともコラボされたり、オフィシャル的な動きが活発だなという印象があります。 青井 リアルラグビーのファンのかたにも観ていただきたいというのもありますし、ラグビーを題材にしたアニメなので、そういったところにも力を入れております。今後も広げられるよう力を入れておりますので注目していただければ幸いです。 ■スポーツやラグビーが好きな人たちにザワついてほしい! ―― 多くのスポーツアニメの人気を支える女性アニメファン、特に男性と男性の友情物語が大好きな層には、どうプロモーションしていかれるんですか? 青井 スポーツアニメの魅力は、練習、試合を通してキャラクターの成長がみられるということですよね。作品の世界観を壊さずに、丁寧に作品を知ってもらうよう届けられるよう気を付けております。そして、アニメファンだけではなく、スポーツやラグビーが好きな人たちにも、「こういう作品があるんだ!」ってザワついてほしいなと。  いろんな層の方たちが興味を持って盛り上がっていただくことで、「『ALL OUT!!」ってキテるよね」っていうのが広がれば、作品としてのバリューが上がって、次につながっていくのかなと思いますし。 ―― リアル高校ラグビー部員などが見てくれていたりするとうれしいと? 青井 そうですね。原作コミックはすでに多くの方が読まれているようで、購読者層を聞いても、ラグビー経験者の男性が多いと聞いています。そこがより広がって、そうでない人たちにも、熱いスポーツものとして楽しんでほしい。『ALL OUT!!』はキャラクター同士、高校生のぶつかり合った熱い想いが、読み進めていけばいくほど、いろんなキャラにスポットが当たって、より熱く広く複合的に物語が広がっていきますから。 ―― キャラクターも多いので、キャスティングも大変だと思うんですが、主人公の1年生2人に若手を起用されたのには、どんな意図があったのでしょうか? 青井 祇園健次(千葉翔也)と石清水澄明(安達勇人)、特に祇園はこの物語を通じて、ラグビー初心者から始まってどんどん成長していきます。声優さんも、キャラクターと一緒に成長していけるような方、これから成長していく過程、いい意味でまだ色がついていない、キャスティングにしたいなと。もちろんまだ未熟な部分も多いかもしれないし、実際当初は収録に時間がかかったりもしたんですが、だんだんペースがつかめてきて、キャラと一緒に成長していっているので、そういったところかなと。  一方で「先輩後輩」の間柄、まとめる人、神高ラグビ―部の顔にならなければいけない方は、経験者、実力のある方が大事かなということで、細谷さん(佳正/赤山濯也役)、逢坂さん(良太/八王子陸役)に。このメインの4人は早く決めました。
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部のお母さん的存在・八王子
 ネットの反応とかを見ていると、「これ逢坂さんだったんだ!」っていう反応もあるので、逢坂さんだってわからないかもしれません。いろんな作品で主人公格のキャラを演じられていますが、それらとはまた違った、温かみのある神高の「お母さん」みたいな感じかもしれません。  赤山役の細谷さんもいいですよね。色気がある感じで。キャプテンなので威厳と渋みのある声と言えば、細谷さんかなと。実際、『ダイヤのA』ではキャプテンもやっていますし、『ハイキュー!!』ではキャプテンではないにしろ、エース役をやっていますし。独特ですよね、色気があって。低めのああいう声を出せる人はなかなかいないと思うので、ぴったしハマったかなと思っています。 ――これだけ人数がいると、キャスティングの他、収録ブースが大変なことになっていそうですが……。試合の時は男性ばかり30人くらいいるわけですよね? 青井 収録ブースから人が溢れていましたね。ブースの椅子が足りなくなって、立ったままの人もいました。ベテランの方がいらっしゃると空気が変わったりすることがありますが、男子だらけなので、やっぱりわちゃわちゃしていますね。楽しい現場です。
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重く響くプレー中の音も聴きどころ
■スタッフも“ALL OUT”、出し切って頑張ってます! ―― 1~2話目を見て、非常に原作を丁寧に描かれているなと思ったのですが、ラグビーならではの試合シーンも早く見たいのにという声もあると思います。 青井 3~4話は慶常との試合が描かれていますが、非常に熱い試合になっています。清水さんも「3~4話を見てくれ!」とおっしゃっているので、試合ならではのスクラムやラインアウト、それぞれのキャラのドラマが動いて1話で描かれた石清水のトラウマが解き放たれたり、見ごたえあるシーンも多く、1話、2話と違った見方ができて面白いと思います。  そもそも清水さんが雨瀬さんの原作を非常にリスペクトされているんですよね。キャラクターの絵ヅラとか、なんとなく持っている空気感が、「アニメになったらこんな感じだよね」という部分を、大事にされているんです。 ―― 清水監督は、音にもこだわっているということで、音がリアルに感じられたので、試合シーンも迫力がありましたね。 青井 音は、大学のラグビー選手たちに協力していただき、キックの音、体と体がぶつかる音を収録し、それを加工して使用しています。音響スタッフ陣も力を入れてやっているのでそこも聴きどころの一つです。  あとは審判の笛の音も、ダビングの際にいつも確認していますね。サッカーとかもそうだと思うんですけど、経験者の方でも笛の音までは普段、意識しないじゃないですか、「ピッピー」なのか「ピッピッピー」なのか。「正しくは何なんだろう」と議論しながらやっています。ラグビーってこういう感じなんだと、祇園と一緒に学んでいくような感覚を、ラグビーには普段興味がないという方に、覚えてもらえるとうれしいです。 ―― シーズン的にもちょうどいいですよね、リアルラグビーに興味が湧いたら、今は生試合をすぐに見られます。 青井 放送時期を10月にしたっていうのも、そういうことなんです。トップリーグは8月からもう始まっていますが、学生のラグビーシーズンはやっぱり秋から冬にかけてですから。10月放送開始にさせていただいたからこそ、いろんな取り組みをご一緒できるんです。これが4月放送開始だったら、TVアニメが始まったタイミングで、ラグビーシーズンが終わってしまっていますからね。 ―― 最後に、スポーツモノが好きな男性主体のアニメファンや、女性ファンに向けて一言ずつお願いします。 青井 “ALL OUT”という単語は、「すべてを出し切る」という意味なんですけど、スポーツじゃなくても、学生時代や今までで、何か一つのものに打ち込んだことがある人であれば、胸にじんわりきて共感できる、本当に「あぁ!」といった形で共感できるものだと思います。 「史上初のラグビーテレビアニメ」ですから制作は大変ですが、スタッフも“ALL OUT”、まさに出し切って頑張っていますので、ぜひご覧になってほしいです。 ■TVアニメ『ALL OUT!!』 ・公式サイト http://allout-anime.com/ ・公式Twitter @allout_anime ・放送情報  TOKYO MX 毎週木曜日 深夜24時~  MBS 毎週金曜日 深夜27時10分~  BS11 毎週土曜日 深夜25時~ ・J:COMオンデマンド、JCOMオンデマンド メガパック、milplus、auビデオパス、ひかりTV、バンダイチャンネル、Hulu、OnGenムービー、U-NEXT、アニメ放題、フジテレビオンデマンド、ビデオマーケット、Google Play、楽天SHOWTIME、HAPPY動画、Amazonビデオ、ニコニコ動画、GYAO!、TSUTAYA TV、dアニメストア、dTV、ゲオチャンネル、UULA、DMM.comにて配信 (C)雨瀬シオリ・講談社/神高ラグビー部

フリマアプリ「メルカリ」のゲームアカウント売買容認に違法性はあるのか? 弁護士に聞いてみた!

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フリマアプリ「メルカリ」公式サイトより。
 誰でも簡単にショッピングを楽しめるフリーマーケットアプリ「メルカリ」。スマホで手軽にファッションアイテムや雑貨、家電、本やマンガなど、幅広い商品の出品、購入が行えることから、若者や女性を中心に利用者が拡大。先月には日本国内でのダウンロード数が3,500万、アメリカ版は2,000万を超え、日米合計で5,500万ダウンロードを突破する大ヒットサービスだ。  しかし、今このアプリで『ポケモンGO』などの人気ソーシャルゲームのアカウントやゲームアイテムが売買されており、各ゲームの運営元が禁止している「リアルマネートレード」が横行。物議が醸されている。 「メルカリ」の利用規約を見ると、「第9条 商品の出品」には、法令に違反する商品や偽ブランド品、金融商品など、出品が禁止されている商品が記されており、その中には、「(15) 物品ではないもの(情報、サービスの提供、会員権などの権利を含むがこれに限られないものとします)」という記述がある。電子データであるゲームアカウントやゲームアイテムなどはこれに該当するはずなのだが、「メルカリ」を見てみると、『ポケモンGO』や『Fate/Grand Order』、『モンスターストライク』、『白猫プロジェクト』などの人気ゲームのデータが出品されているのだ。 “出品禁止商品”であるゲームデータが出品されている現状について、「メルカリ」側は公式Twitter(@mercari_jp)で、「多くのお客さまからご要望をいただき、現在『電子データ類』の出品は可能になっている」と説明。  しかし、ほとんどのソーシャルゲームの運営元が、アカウントやゲームデータなどの売買を禁止している。実際に『ポケモンGO』のトレーナーガイドラインでは、「アプリ上での売買アカウントの販売や交換。もし不正行為の疑いがある方を発見した場合は、ヘルプセンターから連絡してください」との記述があり、『Fate/Grand Order』も利用規約の「第14条 禁止事項」で「(7)本アプリの内外を問わず、アカウント並びにアイテム、仮想通貨及びゲームデータ等を現金若しくはこれに類似するものにより売買し、又は交換取引をする行為」と注意を呼びかけており、こういった違反者にはアカウントの剥奪や全データの抹消のペナルティが課される場合が多い。  それにもかかわらず、アプリ上でゲームアカウントやデータが多数取引させている現状に、一部のユーザーからは不信の声が続出。Twitter上では違反者を指摘する声も多数寄せられているが、メルカリ側は「権利者が禁じているもの、個人情報の記載されたもの等については引き続き出品を禁している」「権利者よりご連絡をいただいた際には内容を確認のうえ、然るべき対応を行っている」と回答。ユーザーの声も虚しく、現在もゲームのアカウントなどが多数出品されている状況だ。  いくらアプリユーザーから要望があるからとはいえ、運営元が禁止しているにも関わらず、ゲームデータの売買を容認することに違法性はないのだろうか。弁護士法人 ALG&Associatesパートナー弁護士の山岸純氏に聞いたところ、次のように解説してくれた。 「レベルを高くしたり、アイテム等をたくさん持っているキャラクターを育てるためには、ゲーム内で課金するなど各ゲームの運営元に対し、相当のお金を支払うことになります。ゲーム内でレア・アイテムを取得するには、ゲーム内で課金するなどして、各ゲームの運営元に対し、お金を支払うわけです。  本来であれば、ユーザーはこれらの運営元に対しお金を払い、レベルアップしたりレア・アイテムを取得するわけですが、もし、これらがゲーム外で取引されるならば、本来、運営元に入るべきお金が入らないという結果を招くことになります。  したがって、この点が『アイテム購入などの課金によって利益を生む』という運営元のビジネスモデルを妨害することになるわけですから、業務妨害罪(刑法233条)が成立する可能性が生じます(3年以下の懲役か50万円以下の罰金)。  ところで、メルカリ側は、『権利者よりご連絡をいただいた際には内容を確認のうえ、然るべき対応を行っている』とのことですが、上記のとおり、“被害者(権利者)”はあくまで運営元となるので、権利者から被害の申し出があった場合に対応する、という態度はいわば正しいことになります。  なお、“アプリ上での売買を容認すること”ことをもって、幇助(他人の犯罪を助けること)の責任を問うのは難しいでしょう」  こういったリアルマネートレードは、業務妨害罪にあたる場合もあるが、「メルカリ」の運営方針については責任は問われないとのこと。運営元からの申告がない限り、メルカリがゲームデータの出品を取り締まることはなさそうだ。なお、メルカリ側は違反商品の出品について、「対応に時間をいただいているが、確認した不適切な商品やいただいた通報はひとつひとつ事務局で確認している」という。出品を取り下げるには、しばらく時間がかかりそうだ。  今回は「メルカリ」を例に挙げたが、こういったマネートレードは、他のフリマサービスやオークションサービスでも見受けられる。法的には問題がなくても、今後さまざまなトラブルを招きかねないだろう。ユーザーのためにも、今一度、運営方針や利用規約の見直しを検討してもらいたいものだが……。 (協力=山岸純/ALG&Associates弁護士)

安ければ本は読むもの? トラブル続きのamazon読み放題サービスを著者の立場で考える

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amazonの売れ行きをグラフ化した無料サービス「著者セントラル」。
 amazonが8月から月額980円で一部電子書籍作品を読み放題できる「Kindle unlimited」サービスを行っている(以下、読み放題サービス)。しかしこのサービス、amazon側が出版社側に提示していた条件を引き下げたために、途中で一部の出版社が書籍の提供を取りやめたケースもいくつか報道されている。10月には講談社が、勝手にamazonが読み放題の対象から自社の著作をはずされたとご立腹な様子のリリースも出している。他人事のように書いているが、私が以前出した書籍もこの読み放題サービスの対象になっている。本稿では、著者の立場からこのサービスについて考えたい。 ■年内限定のamazon特典報酬、アッサリと引き下げられる  各種報道がされているが、amazonは読み放題サービス開始の2016年8月3日から年末までは、出版社(よって著者にも)に上乗せした条件で代金を支払うと約束していたものの、思った以上に読まれてしまったのか年末まで待てずに条件の緩和を打診し、それに乗れなかった出版社が作品の引き下げを進めている。  このamazonのやり方には批判も多い。出版社は著者と個々に調整という結構な手間をこなして配信に至っているはずで、「2016年内までは支払い条件がそれ以降よりいいですから」と説得していたはずだ。5ヶ月もない「いい条件」の期間をアッサリ削らされたら、著者もたまったものではないが、再度著者に説明しなくてはいけない出版社もたまったものではない。百、千と作品を提供している出版社の、再度の調整でかかる手間は相当なものだろう。  しかし、さらにたまったものではないのは、このサービスに月額980円払っている利用者だ。登録時には存在していた書籍が翌日いきなりごっそり抜け落ちているかもしれないのだ。読み放題サービスは30日の無料体験があるが、無料期間中にしっかり解約する財布の紐が堅い人がamazonの見通しよりはるかに多かったのかもしれない。出版社や著者に支払う代金の条件は守り、30日間無料体験側の期間なり条件なりを絞ればいいとも思うが、それはなされていない。  詳細は伝えられていないのでこれは憶測だが、講談社ご立腹の件もこの条件変更でもめてこじれた末の結果なのかもしれない。 ■amazonが著者に提供している気の利いたサービス「著者セントラル」  この読み放題サービスの件に関してはamazonのやり方に思うところはあれど、一方で、amazonには著者として感謝しているところも多い。まず、2014年に発行された私の本は、書店だと置いているところはまずない。書籍名と駅名など地名を入れると、近隣の書店の在庫を調べてくれるウェブサービス「テイクストック」で自著を調べると、八重洲ブックセンターや丸善本店など巨大書店が聳え立つ東京駅周辺でも、もう在庫すらない。数年前に発売され売れ行きも芳しくない本を置く余裕など書店にないのはよく分かる。なのでamazonが自著をいつまでも取り扱ってくれること自体、とても助かる。  私の本同様、世の中に出回る多くの本が初版止まりだ。重版を続ける一握りの大ヒット作が、残りの初版止まりの振るわない本を支える構図になっている。本が版を重ねることを指す『重版出来』は、ドラマ化された漫画のタイトルになるほどめでたいことなのだ。  私は趣味で同人誌を出している。同人誌は自分の金で出すため大変だが、責任を全て自分一人で取れる気楽さがある。一方商業出版はそうはいかない。出してもらっているのであり、多くの人が関わったものだ。ある経済評論家が本を書くより売る努力をしているといった旨をつぶやき炎上したことがあったが、いい内容だと確信した上で大抵の本が世の中に出ているはずなのに、一握りの売れる本とそれ以外の大多数の売れない本に分かれてしまうのが現実なのだから、売る努力をする経済評論家の発言はいたって正論だ。  知名度のある人が書けば話題になるし売れやすい。何を書いたかでなく誰が書いたかは重要視される。そんな中で新人にチャンスを与えてくれたのだから、塁に出るのがルーキーの仕事だったはずだが現時点で初版止まりと役割を果たしきれていない。今回の読み放題サービスは、出版社が賛同するなら私も賛同する方針だ。  そしてやはり読み放題サービスになると読まれる。amazonでは「著者セントラル」という売れ行きをグラフ化したサービスを著者に無料で提供している(図)。図の通り、「何冊売れたか」は分からないが、amazonのランキング何位にいるかは分かる。図を見ると、8月3日以降の読み放題サービス開始時以降から1ヶ月はランキングが跳ね上がったまま落ちない。毎日別の人が読んでくれたのだろう。8月以前の心電図のようなアップダウンが激しい状況からグラフの形が明らかに変わっている。私自身は、本は読みたいものだけ読めればいいし、読書熱自体高いときと低いときがあるので、月額制の読み放題サービスには利用者としてまったく魅力を感じなかったが、「安ければあれこれ読んでみるのもアリ」という人が案外いることを知れただけでも発見だった。 ■フジテレビと朝日新聞に出たところで本は売れない  ちなみに私の書籍のテーマはネット依存で、本の内容に関しフジテレビと朝日新聞社から取材を受けた。超巨大メディアに報じられたらさすがに売れるのではとソワソワしたものの、両社とも広告主への配慮からか私の書籍名は一切紹介されないまま放送、発行され、もちろん先方の仕事上それは仕方がないことだろう。しかし、やはりその程度だとわざわざ私の名前を検索し、書籍までたどり着いてくれる人など相当少ないはずだ。  案の定、テレビ、新聞取材当日と翌日の売れ行きを著者セントラルで見てみると普段どおりのしめやかさだった。「マスメディアに出れば本は売れる!」といったコンサルティングも見かけるが、いいものを書けば売れると限らないように、新聞やテレビに出れば売れるなんて、そんな単純な話ではない。ちなみに私の場合は、リアルな販売の場では横浜の書店で特設販売コーナーを設けてもらった際と、amazonではネットメディアで書評が紹介された日や、ネットで多くの読者がいるブロガーの人に紹介してもらった日、これらの日の方がテレビや新聞に出た日よりもずっと売れた。  そしてamazonでの売れ行き状況を著者が把握できるのも、amazonの著者セントラルがあるからだ。全国に店舗のある紀伊國屋書店でも、全店売上データがわかる「PubLine」というサービスを提供しているが、月額10万円と個人として利用するにはかなり厳しい金額だ。著者セントラルは無料で利用できる(著者セントラルは「自著」の売れ行きしかわからないので、全体の売れ行きがわかるPubLineとはサービスの幅がまったく違うが)。  個人的には店舗で働く仕事も長くしているため「店舗で試したあとで、ネットで底値の店舗を探して購入」という購買行動をする人には天の裁きが下るようにと思っているし、ひとつの企業だけが圧倒的に強い状況は業界、消費者双方に望ましくなく、そもそも同じ条件ならなるべく日本企業のモノやサービスを購入したい。なのでamazon一強、amazon無双な状況は望ましくないと思うが、amazonは著者セントラルのような、他がやらないいいサービスを無償で著者に提供している。黒船は黒船になる理由がある。  ちなみに私の著者セントラルのグラフは読み放題サービスを始めだした8月上旬から1ヶ月ほどは下がることなく景気がよかったが、だんだん低空飛行になりつつある。読み放題サービスに加入する人がラインナップ減少報道の影響で減ってきているのか、本の読み放題は一部の人にだけ刺さるサービスだったのか。今後も見ていきたい。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])