迫力カーチェイスに、“50人斬り”アクション……“血煙”が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!

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原作:モンキー・パンチ (C)TMS
 2012年、27年ぶりの新作TVアニメシリーズとして制作・放送された『LUPIN the Third~峰不二子という女~』(日本テレビ系)。モンキー・パンチの原作コミックに漂う、アダルトでハードボイルドな雰囲気を再現したことで、旧来の『ルパン』シリーズのファンからも若いアニメファンからも人気を獲得し、話題となった。  そのテイストを引き継ぎ、監督を『REDLINE』などで知られる小池健、脚本を新TVシリーズ『ルパン三世』(シリーズ構成・脚本)、TVドラマ『相棒』(脚本)の高橋悠也が務めて制作、劇場で公開された『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(14年、以下『次元大介の墓標』)。  次元大介がルパン三世の相棒になるまでのストーリーを、シリアスに格好良く描いた『次元大介の墓標』も好評を博したことで、続けて制作された『Lupin the Third』シリーズ第3弾作品『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』(以下、『血煙の石川五エ門』)がついに2月4日公開!  特報や予告動画では、前作をも上回る渋さ、格好良さが見てとれる『血煙の石川五エ門』。その格好良さはどう構築されているのか、そしてどんな見どころが待ち構えているのか。小池健監督を直撃! ■「我々がよく知っている五エ門に成長するまでの、過程の一つを」 ―― もともと石川五エ門というキャラクターには、どんな印象を持っていましたか? 小池健(以下、「小池」) これはファンの皆さんと同じかもしれませんが……命を尊んで、無駄な殺生はしない。冷静で運動能力が高く、剣術の腕がすごいというところでしょうか。 ―― TVアニメシリーズの初期や原作マンガでは結構お茶目だったり、女性に弱かったりする一面がありますよね。 小池 たしかに原作、それにTVアニメの1stシリーズの初登場回などでの、おごり高ぶっている生意気な感じがあって――自分の剣の腕前に過剰に自信を持っていたその姿が印象に残っていたので、そういう雰囲気を踏襲してみたいという気持ちがありました。そこで、若いころの粋がっている五エ門から、我々がよく知っている五エ門に成長するまでの、過程の一つを描いたエピソードとしてやれれば面白いのかなと。 ―― なるほど。ただ、若いころも成長後も、五エ門は口数が多くありません。主人公として描くのには難しいタイプだったのでは? 小池 そうですね。そういうキャラですから、もともと剣術の腕前は高くて、そこからさらに高みに行くためにはどうしたらいいかと考えたときに、やはりメンタル面を拾ってあげるのがいいのではないかな、と。そういった構想をもとに、脚本の高橋(悠也)くんと組み立てていきました。  彼のメンタル面を拾ったエピソードは過去にもあったと思いますが、今回のように1 時間ビッチリかけて、五エ門の修行シーンや、プライドをへし折られてから這い上がっていく姿を描いたエピソードはなかったと思うので、やりがいがありましたし、上手くお話を組み立てられたかなと思います。 ■「いつ敵になるか味方になるのかわからない、緊張感のある関係性に」 ―― 前作『次元大介の墓標』は、何だかんだで次元とルパンはパートナーであり相棒なんだなと感じましたが、今回の『血煙の石川五エ門』ではルパンが観察、傍観者のポジションを崩しませんでした。この距離感が面白かったです。
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修行中の五エ門を見守るルパンと不二子
小池 『ルパン』シリーズ全体の時間軸からすると、本作はTVアニメの1stシリーズでルパンと五エ門が初めて会った直後ぐらいをイメージしています。あの時は、五エ門はルパンの命を狙っていて、お互いが敵同士だったじゃないですか。今回のお話では仕事が絡んでいないので敵同士ではないけれど、仲間でもないという関係性なんです。  ルパンはオールマイティなキャラではあるんですけど、スキルが高い人間が好きで、スキルの高い人間を見つけて、仕事の相棒にしていきたいというキャラクターなんだと思うんですよ。ですから仕事によっては敵味方になることはあるんだけど、五エ門に対しても、いずれはできれば仕事を共にする一員にすることができれば、と考えている――そんな距離感を心がけました。 ―― 若い五エ門が、我々がよく知る五エ門になっていく過程でもあり、ルパン一味が一味になっていく過程も描かれているわけですね。 小池 そうですね。今回は、五エ門が高みに立つためのお膳だてを、ルパンが知らず知らずのうちにやっているという流れになるように、バランスに注意して物語を組み立てたつもりです。それは次元や不二子との関係性も一緒です。原作やTVアニメ1stシリーズの初期の、いつ敵になるか味方になるのかわからない、という緊張感のある関係性を、このシリーズでは保っていきたいなと考えています。 ―― そういったキャラクター同士の関係性でいうと、今作で銭形警部も本格的に登場しましたね。
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銭形警部。まだICPOではなく公安にいるらしい
小池 まだ彼はガッツリとルパンを追っているわけではないんですよ。色んな犯罪を追っているうちに、ルパンがいろいろなところで絡んでいることに気づき始めた、という段階です。ルパンを彼が生涯の敵として心定めていく、という過程もいつか描ければとは思いますが……。  あと、ルパンがあれだけのツールとオールマイティな力を持っているので、銭形のほうもそれと互角か、それ以上という見え方にしないといけない。ですから渋く知的なところも見えるように、と思いながら描きました。 ■“「100人斬り”は無理でしたが、50人は斬っています」 ―― 若き日のルパンたちを描くということで、『次元大介の墓標』では東西・分裂国家が舞台になっていましたし、今回のゲストキャラも、大きな戦争から帰還した元兵士という時代を感じさせる設定が面白いなと思ったのですが。 小池 そうですね、昭和の中期ぐらいというイメージが伝わるといいなと。またルパンたちがまだ若い、"昔である”という感覚を味わっていただきたいなと。テクノロジーの部分、ビジュアル的にも時代的にあまり突飛にならないように調整しています。 ―― 今回は五エ門が主人公で、こういったタイトルだったので、任侠映画みたいだなと思ったんです。この辺は意識された部分ですか? 小池 ……どっちかというと、時代観を掴んでほしいというのが先ですね。武器にしてもドスとか、昔からある銃に武器設定しています。またそういう武器設定にしておくと、鉄竜会にしても幅のあるアクションを見せられるだろうなと。それが結果的に任侠風な雰囲気につながったのかなと思います。任侠風に見せようというのではなく、時代観や相手たちのアクションや立ち位置を考えたら、たまたまそういう位置に落ち着いたという感じです。
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次元は、今作でももちろん登場
―― 結果『次元大介の墓標』のガンアクションとはまた全然ベクトルの違うアクションになりましたよね。また、我々は五エ門が人を斬るシーンを意外と観たことがなかったんだなと気づきました。 小池 モノはよく斬っているんですけどね、「つまらぬものを」(笑)。修行を積んで高みに立った彼の、人を斬っていくシーンをどう見せるのか、どう描けばリアリティを出せるのか。かなり慎重に考えまして、相手側=斬られる相手をスパンスパンと斬られていくというアクションに、とくに注力しましたし、苦労した部分でもあります。 ―― ラストのアクションは人数もすごいし、すごい迫力でした。アクションを担当される監督という方を立てられたんですか? 小池 いえ、割り振りをして、自分が分量を管理させてもらいました。脚本には“100人斬り”と書いてあって、それは無理だ! と(笑)、少し減らさせてもらいましたけど、それでも50人は斬っています。  斬られるモブキャラクターに“あ・い・う・え・お……”と番号を振っていって、一応“あ”から“ん”までいったので、鉄流会の面々とあわせて約50人。絵コンテの段階ですでに、どのキャラがどの位置でどれぐらいに斬られるのかを配置していき、その前後のアクションを原画マンさんたちに丁寧に埋めてもらうという形で、まとめました。 ―― 人数が多いだけじゃなく、かなりヌルヌルと動いていましたよね。 小池 そうですねぇ、枚数もかなりかかりました……前作と比べても5,000枚ぐらい多くなっています。2.5万から3万枚になっていますので、かなりボリュームを感じてもらえるのではないかと思いますね。 ―― ここまでしっかり剣戟アクションをガッツリ見せてくれるアニメは、最近は少なかったのかなと思います。PG12ということで、タイトルどおり血煙もあがっていて、迫力がありました。
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血煙をあげて斬り進む五エ門
小池 最初の企画の段階では、「今回はR18でいこう」と話していたぐらいなんですよ。血が吹き出たりすることを、あまり怖がらず見せていこうと。とはいっても、ただ残酷なところを見せたいわけではなく、五エ門の剣術が優れている、斬鉄剣の切れ味がすごいということを強調するための描写です。腕が飛んだりするようなシーンもありますけど、結果的にPG12で収められて良かったです。 ■「カーチェイスは前作にもあったし、今回もやりたかった」
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珍しく羽織着用の五エ門。手に持つ斬鉄剣も派手め
―― 今作の五エ門は、珍しく羽織を着用していたり、刀のこしらえが派手だったり、物語前半はデザインも普段とは違っていましたね。 小池 先ほどのお話ともつながっていますが、まだ若くて粋がっている五エ門を表現したかったんです。物語の導入部では自分の力を過信しているところがあるので、高価な紋付羽織や豪華な刀のこしらえも、「自分はもらって当然」と思っている――というのを現すためのデザインとなってます。 ―― 『次元大介の墓標』に登場したヤエル奥崎は、次元と同じくガンマンだったのに対して、『血煙の五エ門』のゲスト・ライバルキャラはホーク。ライバルキャラが剣豪だったり、剣術使いではないというのが、ちょっと意外でした。
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五エ門に襲い掛かるホーク。超タフネスな斧使い
小池 前作のヤエル奥崎が知的で、計画をキッチリと立てて行動するキャラクターだったので、対照的なキャラにしたいと考えて、ホークをパワー系のキャラクターにしました。五エ門が刀なので、飛び道具は使わせず、日常で彼が使っている斧を使わせようと考えました。刀と斧の対比も、よい感じで出たのかなと思います。 ―― そのホークがバイクで追ってくるシーンは恐怖感も迫力もありました。小池監督といえば『REDLINE』(10年公開の長編劇場アニメ)を連想するアニメファンも多いと思いますし、『ルパン』シリーズも歴代の各作品で印象的なカーチェイスシーンがありますから、期待しているファンも多いかと。今作でのカーチェイスの見どころは? 小池 そうですね。カーチェイスは前作でもありましたし、当初から今作でも踏襲したいと考えていました。そこで、これまでバイクというのはありそうでなかったので、バイク対車ということにしました。  ホークのアイテムにバイクを選んだのは、どんなことがあっても傷つかずに追ってくるというキャラクターって怖いよねというのがあったので、某有名映画を多少意識したというか……得体の知れないものが追ってくる怖さの部分、イメージ的なところを参考にさせていただきました。見た目は全然違いますが。 ―― 五エ門が主人公のせいか、全体的にシックな感じの影使いで、それが格好いいなと感じたりもしました。画面作りはどんなイメージで構築されたのでしょうか? 小池 それは背景の水イメージが強いんだと思いますね。舞台が日本という設定ですので、墨画っぽい美術も楽しんでいただければと思い、力を注いだ部分です。加えて五エ門自体が、モノクロというか、白と黒のカラーリングでできているキャラクターなので、よりそういった印象が強く残ることになったんでしょうね。  画面の色あいでいえば、雨が降っているというシーンが印象的になるように、かなり意識して作りました。この作品で、そのシーンが特に印象に残っているとなるとうれしいですね。“血煙”もまた、よく映えると思いますし。 ■「まだ描いていないキャラを描きたい、という野望はあります(笑)」 ―― 特別先行上映会の舞台挨拶では、小池監督もルパン役の栗田貫一さんも「強くて格好いいルパンを」というお話をされていましたが、監督的には手応えはいかがですか? 小池 そうですねぇ、前作の『次元大介の墓標』とはまた違う見え方になると思うのですが、五エ門のメンタル面、そして高みの境地に達するまでの過程を、ルパンたちがどう見守っているのか。実に渋く、格好いい関係値になっていると思いますので、そこを楽しんでいただけるとうれしいです。  ただ、これは触れておきたいんですが、「これまでの作品と全然違います」というわけではないんですよ。ルパンはルパン。連綿と続く『ルパン』シリーズの中で、今回は五エ門にスポットを当てたお話ですという姿勢で、スタッフ一同で制作にあたりました。『血煙の石川五エ門』もまたルパンらしい作品になったと思いますので、楽しんでいただきたいです。 ―― シリーズといえば、特別先行上映会の壇上で浄園(祐)PDが「この次も……」という野望をお話されていましたが、やはり監督にも「こいつのお話もやってみたいなぁ」という野望がおありだったりしますか? 小池 メインキャラクターで描いていないキャラクターもまだいますから、それを描きたい気持ちはありますし、前作の伏線の回収という構想もあったりなかったりしますから(笑)。もちろん野望はあります。ありますが、全ては今作の反響次第ですので、応援していただけたらうれしいです(笑)。 ■『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』 ・17年2月4日(土)新宿バルト9ほかにて<4週間限定>全国公開 ・公式サイト:http://goemon-ishikawa.com/ 原作:モンキー・パンチ (C)TMS

【劇場アニメレビュー】“Project Itoh”最終作がようやく公開へ! ドライ&クールなアクションとキャストの熱演でシリーズの最高傑作に!?『虐殺器官』

【返事待ち】【劇場アニメレビュー】Project Itoh最終作がようやく公開へ! ドライ&クールなアクションとキャストの熱演でシリーズの最高傑作に!?『虐殺器官』の画像1
「Project Itoh」公式サイトより
 何はともあれ、完成してよかった! 伊藤計劃第3弾となるアニメーション映画『虐殺器官』の話である。  多くのファンが知るところではあるが、デビューからおよそ2年、2009年に34歳の若さで早逝した作家・伊藤計劃が遺した3本の小説を劇場用アニメーション映画化するプロジェクト“Project Itoh”。  その第1弾『屍者の帝国』(伊藤の遺作となった未完の小説を、盟友の円城塔が書き継ぐ形で完成させた)が15年10月2日に劇場公開。そして本来なら『虐殺器官』が第2弾として15年11月13日に公開予定であったが、その制作が難航したため代わって『ハーモニー』が同年同月同日に公開。しかし、結局『虐殺器官』は制作スタジオ・マングローブの倒産によって公開が延期となってしまった(記事参照)。  しかし、本作のために新たなスタジオ「ジェノスタジオ」が元フジテレビPDの山本幸治らにより設立され、およそ1年の時を経て完成。17年2月3日より、ようやく劇場公開される運びとなったのだ。  原作小説『虐殺器官』は伊藤のデビュー作であり、9・11テロ以降の世界情勢を反映させた架空の近未来世界が舞台にはなっているが、現実がいつこうなってもおかしくないという、ぞっとするほどのリアリティを体感させてくれる衝撃作でもある。一方では主人公の米軍特殊部隊隊員クラヴィス・シェーバー大尉の一人称で進みながら、難解な台詞廻しなど独自の雰囲気を湛えつつ、後進国にて虐殺を扇動しているという謎の元MITのアメリカ人言語学者ジョン・ポールを追跡&殺害するミッションのためチェコ・プラハへ潜入するクラヴィスらの運命が描かれていく。  正直、文字で読み進めていくと「虐殺器官」「虐殺の文法」などなどと、難解な言葉が多々登場しては惑わされ(その惑いもまた原作の魅力ではあるのだが)、エンタテインメント性の高さはともかく、これが映画になるのかな? などと余計な不安を感じないでもなかったのだが、いざ完成した作品を見ると、意外なまでにシンプルな印象をもたらしているのに驚いた。  要は特殊部隊の主人公による暗殺ミッションのお話で、実は『地獄の黙示録』(79)あたりの名作群を彷彿させるような普遍的なストーリーであったことを、本作は明快に提示してくれているのだ。  作画も極めてシンプルで淡白な印象だが、それが徹底した情報管理システムに支配されているドラマの背景や世界観と巧みにマッチしており、非常に効果的でもある。  観念的な表現がキモでもある作品ゆえに、説明台詞もかなりのものではあるが、意外にそれも気にならず、むしろ理屈ではなくスッと感性的にこちらの脳裏に響いてくる。  これには各キャラクターが魅力的に構築されていることが大きな理由として挙げられるだろう。クラヴィス役の中村悠一とジョン役の櫻井孝宏、双方のクールで美しい声質がもたらすヴォイス・バトルとでもいった幻惑的な緊張感が、作品の資質とマッチしている。  また、今回のヒロイン、ルツィアの峰不二子的なものとは微妙に異なるアダルトで、憂いある存在感と、それに即した小林沙苗の声の印象は、正直このところのキャピキャピ・アニメ声に慣らされていた側からすると、実に新鮮に映え響くものがあった。  惨酷味も合わさった戦闘シーンのドライ&クールさも特筆もので、このテイストならばハリウッドで実写映画化も十分可能ではないかと思わずにはいられなかった。それほどまでに現代社会から剥離していない、地に足の着いたダーク・サスペンス・ファンタジーたりえているのである。  テロの脅威に対抗すべく管理システムを徹底化させるアメリカなどの先進国と、紛争の絶えない後進国との対比からもたらされる文明批判のメッセージもまたシンプルに見る者の胸に届けられる。  原作に即した本作独自の用語も多々出てくるが、それ以上に「アマゾン」「マクドナルド」など現実の単語の数々が、痛切に響くのもいい。  ラストへ至る展開に関しては、日本でも公開されたばかりのオリバー・ストーン監督の『スノーデン』からみなぎる反体制的反骨の姿勢ともどこかかぶさるものがあった。  原作との差異をチェックすることも含めて、本作は結果として“Project Itoh”3作品の中で意外にも伊藤計劃の世界に触れる入門編として一番適した作品に仕上がっているのが、やはり驚きであった。  個人的嗜好としては『ハーモニー』のほうがお気に入りではあったが、巷で伊藤作品に抱きがちな難解なイメージを払拭させてくれるのは断然こちらのほうだろうし、少なくとも本作を見た後は、原作既読者も未読者も伊藤小説に触れてみたくなること必至。  その意味でも本作は、長きにわたったプロジェクトの成果という点で、実はもっとも成功している作品と言えるのかもしれないし、それを抜きにしても近未来的異世界サスペンス映画として好もしい味わいを持つものである。 「小粋なプログラムピクチュアの快作を見せてもらったなあ」  これが鑑賞後、真っ先に脳裏に浮かんだ言葉であった。  これからご覧になるかたがたも、本作ならではの「虐殺の文法」を存分に楽しんでいただきたい。 (文・増當竜也)

「悔しいとは思わない」『千と千尋』を手がけたスタジオジブリの敏腕P・鈴木敏夫氏、迫り来る『君の名は。』を絶賛!

「悔しいとは思わない」『千と千尋』を手がけたスタジオジブリの敏腕P・鈴木敏夫氏、迫り来る『君の名は。』を絶賛!の画像1
映画『君の名は。』公式サイトより。
 昨年8月の映画公開から爆発的ヒットを続け、今月13日にはIMAX上映がスタート。先日23日発表の映画興行収入ランキングでは、公開22週目にして再び首位を獲得した『君の名は。』。累計興収は235億円を超え、このままいけば、254.8億を記録した歴代興収3位の『アナと雪の女王』(14年)にも迫る勢いだ。  映画の大ヒットへのやっかみからか、クリエイターの中には批判的な声を上げている者もいるが、映画の公開時には、映画監督の岩井俊二氏が「新海作品はマグリットの『ピレネーの城』に似ている。大胆不敵にして不朽の説得力。『君の名は。』はそんな彼の集大成だと言いたい。けど彼の『ピレネーの城』はもっともっと高みにあるような気もする」と絶賛。作詞家の秋元康氏も「心が震えた。風が木々を揺らすように、心の奥底がざわざわした。(中略)新海誠が描く世界は、“それでも”希望に満ちている」とコメントを寄せ、その他にもさまざまな著名人が賞賛の声を上げている。  そして、世界に誇るアニメーション作品を次々に生み出してきた「スタジオジブリ」で、『千と千尋の神隠し』をはじめとする数々のアニメ映画を手がけヒットに導いてきた敏腕プロデューサー・鈴木敏夫氏もそのうちの1人だ。26日発売の「週刊文春」(文藝春秋)のインタビューでは、公開前に東宝の宣伝部長に請われ映画を観たという同氏が「“あの世”という言葉が何度も効果的に使われていて、新海誠さんは宮崎駿のファンなんだと直感しました」とコメント。  また、『千と千尋の神隠し』と同じように、“少女が異世界に迷い込む”といったストーリーであることについて、「いつか誰かが作る予感はあった」と指摘。これには宮崎駿監督も「そうだよねぇ。俺はやらないけど、やっぱりそっちいくよねぇ」と手を叩いたそうだが、鈴木氏は「芝居をするキャラクター、セリフ、音楽がどれも背景を際立たせるように作ってある」「吸い込まれそうな高い秋の空が特に印象的でしたね」と『君の名は。』を絶賛している。  スタジオジブリ作品の興行収入を調べてみると、2004年以降、日本映画の国内歴代興行収入トップ3を『もののけ姫』(97年/興収193億円)、『ハウルの動く城』(04年/興収196億円)、そして『千と千尋の神隠し』が12年間にわたり独占している。しかし、『君の名は。』によってその牙城は打ち砕かれ、現在はトップに君臨する『千と千尋の神隠し』にじわじわと迫っている状況だ。  また、米国の情報サイト「BOX OFFICE MOJO」によれば、『君の名は。』の日本を含む全世界興行収入は、今年1月8日までに2億8101万2839ドルを記録し、それまで1位であった『千と千尋の神隠し』の2億7492万5095ドルを上回ったとか。  それだけに、危機感は感じていないのか気になるところだが、鈴木氏は、「そういう日がきても悔しいとは思わないかな」とバッサリ。さらに、「記録を作るのは愉快だけど、いつも抜かれると思っているし、抜いた方が面白いんじゃないかなって思いますよ」「これだけのヒットは、いろんな条件が重ならないと起きないですから」と、全く気にしていないようす。 「第89回米アカデミー賞」では、スタジオジブリが製作に参加した日・仏合作映画「レッドタートル ある島の物語」がノミネートされた一方で、残念ながら、『君の名は。』は落選。しかし、アメリカやカナダ、スペインでは、4月7日より公開が決定し、世界125の国と地域で公開が予定されているだけに、『君の名は。』がどこまで記録を更新するのか、そして、『千と千尋の神隠し』の大記録を打ち破るのか、今後も注目したい。

区役所の誰が責任を負うのか? 人気コスプレ会場「中野マンガアート コート」の不法占拠(?)をめぐる裁判がはじまる

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学校法人 タイケン学園グループ公式サイトより。
 昨年10月に明らかになった、中野にあるマンガ・アニメの文化施設「中野マンガアートコート」(区立桃丘小学校跡地)をめぐり、所有者である中野区が契約を解除した後も、運営を行っていた学校法人「タイケン学園」が退去に応じていないとされる事件。  25日、この事件をめぐって、ふたつの裁判が始まった。裁判は中野区がタイケン学園に対して土地建物の明け渡しを求めたものと、タイケン学園が中野区に対して、賃貸権の存在を求めるもの。 「中野マンガアートコート」は、2011年10月に中野区とタイケン学園の連携事業として、5年間の予定で開設。マンガの授業を実施する「マンガスクール中野」のほか、同人誌印刷の大陽出版株式会社がプロデュースする「Taiyoh’sShop中野マンガ製作所」を設置。同人誌即売会やコスプレイベントなども開催されていた。  ところが、中野区の主張によれば、昨年までに「学園による複数の重大な違反行為が判明」が判明。8月をもって契約を解除したが、依然として、タイケン学園側が退去を拒否しているのだという。また、中野区議会の資料によれば、昨年3月の段階でタイケン学園側からは5年の契約期間が終了した後も、継続使用を求めてきたという。  25日の法廷で明らかになったのは、退去を拒否していた施設のうち「マンガスクール中野」の運営企業・有限会社マンガヴィジョンなどは、中野区との和解に応じる方針というもの。退去した上で、訴訟において中野区に協力するかわりに、中野区は金銭の請求を行わないということである。  今後、裁判は中野区とタイケン学園(グループのタイケン国際学園も含む)との争いになると見られている。 「中野マンガアートコート」は、中野区が主導する形で官民一体のマンガ・アニメを用いた施策として、事業者を募集。審査の結果、タイケン学園が選ばれたという経緯がある。開設当初より、タイケン学園については、過去に学位商法を行っていた疑惑などもあり、行方が不安視されていた。しかし、中野区は一切の問題に口をつぐんできたという経緯がある。  また、中野区の施策に連動する形で、14年には地域の民間事業者などを中心に「COOL中野推進協議会」が発足。同協議会では、架空の学園を舞台にしたストーリーをマンガやアニメ化して売り出す「桃丘学園プロジェクト」などを行うとされていた。  しかし、同協議会のサイトは昨年3月のさいとう・たかを氏による講演を最後に、まったく動きは見られない。現在も、大陽出版社長の中田學氏を前理事として社団法人としては存続しているようだが、内実は不明だ。  当初より行方が不安視された末の裁判。中野区の責任は厳しく問われることになるだろう。  双方の主張や問題点については、今後さらに詳しく報じていく。 (文=昼間たかし)

中学時代は生きづらさのかたまりだった……地下アイドル以前の姫乃たまの世界

——地下アイドル“海”を潜行する、姫乃たまがつづる……アイドル界を取り巻くココロのお話。 170124_himeno.jpg  私が通っていた中学校は、敷地の真ん中に池があった。  ある日、授業中に落とした鉛筆が、同級生達の足元を延々と転がっていくのを見て、ふと校舎が傾いているんじゃないかと思った。窓から身を乗り出してみると、たしかに校舎も体育館も、中央の池に向かって傾いているようだった。そのまま私も池に向かって飛び降りてしまいたかった。  放課後、誰もいない教室の床にそっと鉛筆を置いてみたら、ころころと池があるほうへ転がっていった。校舎は本当に池に向かって傾いていた。  早く、校舎も、体育館も、校庭も、池に向かって傾いて沈んでほしい。  そう思わずにいられなかった。遠くの廊下から生徒達の騒ぐ声が聞こえてきて、死にたい気持ちと、殺したい気持ちが、同時に押し寄せてきた。  先日取材中に、「姫乃さんは地下アイドルになったことで居場所を見つけたって言うわりに、生きづらそうですよね」と対談相手から言われて冷やっとした。その通りだけど、理由を話す気になれなかったからだ。  私にとって、中学時代は生きづらさのかたまりだった。  誰とも噛み合わない会話や、集団行動への嫌悪感からは、自分の社会性のなさを突きつけられるようだった。  学校も地獄、きっと大人になってからも私は社会で生きていけない人間なのだろう。  あの頃の恐怖は、大人になって居場所を見つけてからも拭いきれない。私は手放しで安心することはないし、何年も文章にすらすることができなかった。  中学生の時、なにもかもすべてがダメ、という感じだった。誰だって多かれ少なかれそうだったのかもしれないし、「そんなことない、楽しかった」という人もいるのかもしれない。私にとって学校生活をそつなく送れる子たちは少し変で、ものすごく特別に見えた。その子たちも、本当のところは何を思っていたのかわからないけど、もし本心は辛かったのだとしたら、私には辛抱強さが足らないのだと思う。  いずれにせよ、誰かと中学時代の話をすることはないので、私はいまだに少しだけ孤独だ。  私の中学校生活はまさに終わりなき日常だった。  ノストラダムスの予言はとっくに外れていたし、ブルセラブームも廃れていたうえに、上の世代が暴れん坊だったせいで、誰の素行も悪くないのに校則の締め付けばかりがきつくなっていた。少しでも目立つ奴がいたら校則のせいにしてすぐに潰してやろうという雰囲気が学校中に充ち満ちていた。  地毛が栗色の子が黒染めさせられているのを見て、身震いした。とにかく生徒が自然体でいることは許されなかった。  そんな環境に入学してすぐ、私は女の先輩たちから「生意気」と言われるようになった。年齢がひとつふたつ違うだけで、こんなに人に対して強く当たっていいものかと驚いた。  母親は、「私も先輩から生意気だってよく言われた」と慰めてくれた。私も母親も、意志の強そうな顔立ちをしている。  最近も似顔絵を描いてもらったら、「キツイ顔になっちゃいました」と謝られた。でも似顔絵はよく似ていた。服装や喋り方に緩和されているだけで、私はキツイ顔をしている。中学校でみんなと同じ制服を着ると、それが際だった。  私と同じ中学を卒業している伯母は、体育館に呼び出されて馬乗りにされたと話してくれた。さすがにそれはひどすぎるのでは……と思ったけど、馬乗りするほど暴力的になれない環境が先輩たちを陰湿にしているのも明らかだった。  いつまでこの生活が続くのか。人生はずっとこんなものなのか。退屈と絶望だけがあった。  同級生とは話が合わなくて、オタク気質の子と仲良く喋ることが多かったけど、私はアニメにもボーイズラブにも興味がなかったので、肝心なところでわかり合うことができなかった。担任の先生からは、「なんか目立つから」という理由で三つ編みで登校するようにお願いされた。  私はヒップホップが好きだった。「妄走族」っていうグループが好きで、ずっと『PROJECT 妄』というアルバムを聴いていた。今でも聴いている。  喧嘩がどうとか、大麻がどうしたみたいな歌詞ばかりだけど、ラップにできるほど、好きなことや主張があるって羨ましくて、同じような趣味の人たちが集まっているところも羨ましかった。彼らも十数年前には私と同じ町で中学生として生きていたはずなのに、住む世界が全然違った。  私は、ずっとこんな世界で生きていくのだろうか。  去年の12月に、DJとして三重県の伊勢市に呼んでもらった。そこで10代の男の子と会った。彼はそろそろと近づいてきて、「大阪までCD買いに行きました」と話し掛けてくれた。驚いたし、嬉しかった。  いろんな話を聞いた。音楽が好きで、でも好きなバンドはみんな東京にいて、地元には話せる友人があまりいないこと。好きなバンドの曲はカラオケで配信されていないから、iPhoneから音源を流してカラオケで踊っていること。最近、音楽活動を始めて、彼の周りにはやっぱり同じような子があんまりいないこと。  彼と会ったのは伊勢市の一軒家を改装したようなイベントスペースで、DJ機材や面白いカセットや洋服が並んでいた。彼は大人たちに囲まれてライブをしていた。 「俺、いつか……」と言ったまま悩んで、「絶対やってみせるんで!」とまっすぐな目で私に言った。ふと、中学生だった自分を思い出した。何十人もいる教室で誰とも話が合わなくて、先生って全然しっかりしてなくて、何もなかったあの頃。  彼は自分で居場所を見つけていて、すごいなと思った。  もし地下アイドルになっていなかったら、私は今頃どうしていただろう。  居場所を見つけるのが下手だった私。  今でも時々、私の中で中学生の自分が怯えているような気がする。 ●姫乃たま 1993年2月12日、下北沢生まれの地下アイドル/ライター。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を中心に、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。音楽作品に『First Order』『僕とジョルジュ』、著書に『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー社)がある。7インチレコード「恋のすゝめ」「おんぶにダッコちゃん」をリリース。 ★Twitter<https://twitter.com/Himeeeno> ★姫乃たま3rdワンマンライブ「アイドルになりたい」 日時:2017年2月7日(大安吉日) OPEN/START 18:00 / 19:00 会場:渋谷WWW(東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下) ADV./DOOR¥2,500 / ¥3,000 ACT:姫乃たま / 僕とジョルジュ DJ 中村保夫(和ラダイスガラージ) チケット絶賛発売中!▼ http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002205215P0030001

クッパ、デデデ大王、ギルガメッシュ……レトロゲームから学ぶ! 悪役キャラクターの“処世術”

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『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂)
“ドラクエ派かFF派かを聞いているのに「俺、ロマサガ派」って答える奴、クラスに一人はいるよねー!”  レトロゲームあるあると共に失礼します。昨年末に『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ』が発売されてから、レトロゲームブームの火がふつふつとたぎり始めた今日この頃ですが、テレビをつけると芸能界や政界には、スキャンダルを起こす憎まれ役が、『魔界村』(カプコン)のゾンビよろしく絶えず出てきています。  そんな憎まれ役の皆々様には、レトロゲームに登場する敵役に注目していただきたい。どんな悪事を働こうとも、長く愛される秘訣がそこにはあるのです。  今回は、レトロゲーム界の敵キャラを紹介していきます。全国のビジネスマン諸氏には、処世術として活用できること請け合いです。  昨年は、不倫問題が多く目立ちましたね。ゲス不倫から始まり、スポーツ界、歌舞伎役者、育休議員にまで至る始末。  普段から、ふらふらと曖昧な態度ばかり取っているから、こういった浮気心が芽生えてくるわけです。あっちもいい、こっちもいいと、どっちつかずな態度よりもバシッと一つに道を指し示さなければいけません。男らしく一つの道をバシッと貫く男気の見本といえるキャラといえば、『マリオ』シリーズ(任天堂)でお馴染みの「クッパ」ではないでしょうか。  こいつと決めたらガオーと咆哮一発、毎回ピーチ姫を強引に奪い去っていきます。思いかなわずマリオに奪還されますが、それでもめげずに隙あらばさらっていくうちに、心なしかピーチ姫もガードが甘くなって、若干さらわれようとしている感は否定できません。 『スーパーマリオワールド』のオープニングのセリフでも「またもや、ピーチが姿を消した」と、“またもや”と言われる始末。マリオも、「どうせ、俺なんかよりクッパに心が動いてんだろ?」と思っているのでしょう。  裏でコソコソするのではなく、堂々と奪い去るくらいの強引さ、そして恋が実らないと悟るや否や、自らマグマにダイブする思い切りのよさ。この男気にキノコ王国の住民たちも「天晴れ!」と称賛を送ったことでしょう。  もし、どうしても浮気心が芽生えてしまったのなら、「俺は、今から浮気をするぞー!」と火を吹くくらいの勢いで高らかと宣言してみてはいかがでしょう。あまりの潔さに、奥さんは目をヨッシーのたまごのように丸くして許してくれるやもしれません。  逆に、火の玉を投げてくるほどの怒りで踏んづけられたら、ベランダから飛び降りるくらいの男気をみせましょう。それでもダメなら亀のように甲羅に閉じこもって怒りが収まるのを待ちましょう。それでもダメなら、マンマミーヤです。皆さんがんばってください。
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『星のカービィ』(任天堂)
 続いての問題は、世界中の人が不安を抱えている、アメリカのドナルド・トランプ新大統領です。ワンマンの独裁主義に見えるトランプ大統領とどう付き合っていけばいいのか、世界の人たちがコンフュ状態です。  レトロゲーム界には、トランプ大統領に似ているキャラがいます。『星のカービィシリーズ』(任天堂)の「デデデ大王」です。可愛らしいペンギンのような見た目とは裏腹に、ハンマーをブンブンと振り回すプププランドの暴君。性格は、自分勝手でわがまま、いたずら好きで子どもっぽい。独占欲が強く、国中の食料を独り占めしますが、デデデ本人は悪気はないらしいのです。  その他にも戦闘兵器といった軍事力の保有、単独でも見劣りしない行動力の高さなど、肩書きにふさわしい大王らしい面もあるが、政治的なことは行っておらずプププランドの国民もデデデ大王の行動には全く興味を持っていないとされています。  まるで、トランプ氏をモデルにしたんじゃないかと思うほど似通ったキャラ設定。ここはひとつ、プププランドの国民から、このようなリーダーとの付き合い方を学ぼうではありませんか。    プププランドの国民代表といえば、もちろんカービィ。彼は気兼ねなく、デデデ大王の背中に乗ります。デデデ大王がちょっかいを出すためいざこざに発展することはありますが、実はお互いに嫌ってはおらず、カービィが協力を仰いだ時は快く応じてくれる一面もあります。  そうなんです、我々はトランプ大統領に対して怖がり過ぎなんです。ワンマン経営のリーダーは嫌われ者が多く、人が近寄ってくれません。ということは、デデデ大王もトランプ大統領も寂しい思いをしているに違いありません。かわいい奴じゃないですか。その心の隙間に入り込み、軽い感じで接してみれば意外と関係がうまくいくかもしれませんよ。ハンマーでブン殴られない程度にがんばってください。
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『ファイナルファンタジーIV』(スクウェア・エニックス)
 そして、昨年から世間を騒がせている問題といえば覚せい剤です。レトロゲーム界にも言っていることがころころ変わる、シャブ中のようなキャラがいます。『ファイナルファンタジーⅤ』(スクウェア・エニックス)の「ギルガメッシュ」がそうです。  顔には歌舞伎における隈取のような模様があります、この時点ですでに“ヤバイ”。しかも、武具コレクターなのに、使用している剣が偽物だと本人だけが気づいていないという、なんとも“しぇしぇしぇのしぇー”なキャラなのであります。敵になったり味方になったりころころ立場を変えるレトロゲーム界のASKA氏ですが、『FF』シリーズの中でもとても人気のキャラの一人であります。  なぜ彼が愛されるのか、それは詫び芸にあるのではないでしょうか。ギルガメッシュは最後の最後に、主人公たちがピンチの時に現れて敵を道連れに自爆するのです。はい、これでチャラ。  芸能界において考えると、マッキーが覚せい剤で捕まって出てきたあとに『世界に一つだけの花』をSMAPに楽曲提供しました。はい、これでチャラ。  いかがだったでしょうか? レトロゲームの悪役たちはかくも愛らしく、かくも身勝手。そのキャラクターから、我々生身の人間でも生かせるパターンを見いだすことができます。 (文=渡部ダイシ)

マニアックな銃がてんこ盛り! 『バイオハザード:ザ・ファイナル』がミリオタに刺さりすぎな件

マニアックな銃がてんこ盛り! 『バイオハザード:ザ・ファイナル』がミリオタに刺さりすぎな件の画像1
『バイオハザード:ザ•ファイナル』公式サイトより
 武器で見る映画第5回は、絶賛公開中の『バイオハザード:ザ・ファイナル』です。言わずもがな原典は、カプコンから発売されたホラーアクションアドベンチャーゲームです。  銃や鈍器でTウィルスをはじめ各種ウィルスに感染したゾンビやクリーチャーをバンバン倒しつつ、逃げたりする、そんなゲームなわけですけど、ミラ・ジョヴォヴィッチのアクション代表作といっても過言ではないですよね。今作は、ファイナルということで、シリーズの大団円にふさわしい内容となっています。  そんなバンバン銃をブッ放す映画なわけですから、さぞアクションシーン満載で、武器がわんさか出るだろうと思いきや、今回は今までに比べてアクションも武器も少なめだったように思います。ホラー要素多めで、原作の雰囲気に寄せたということでしょうか。  まずは、冒頭の戦闘シーンでアリス(ミラ)が敵から逃げるために搭乗するのが、AMゼネラル社の軍用車両ハンヴィーです。ハンヴィーは「HMMWV」と書きます。 「High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle」の頭文字をとって通称“ハンヴィー”です。高機動多用途装輪車両って意味です。軍用車両といえば、やっぱジープが有名ですよね。日本の公道でもよく見かけます。  しかし、1985年から徐々に、ハンヴィーへと取って代わっていきます。ちなみにジープもハンヴィーも、アメリカ軍に配備されている軍用車両の総称です。なので、特定の一車種の呼称ではありません。  このハンヴィーを「俺も乗りたいから民間用を造って売ってほしい」と言い出したのが、ハリウッドスターのアーノルド・シュワルツェネッガーで、民間用として生産されたのがハマーです。どこかでこの知識を披露してください。  続いて、アリスたちの敵のアンブレラ社の兵士が装備しているアサルトライフル、アーセナル「AR-M4SF」。このアーセナルという会社はブルガリアの火器、弾薬、工作機械を製造している会社です。そして、ARシリーズはかの有名な「AK-47」のクローンモデルです。クローンモデルといっても、全く同じというわけではなく、AKの特徴的な木製部分を廃しています。 「AR-M4SF」は、その中でもコンパクト化し、発砲時の光を抑えるフラッシュサプレッサーを装着し、フラッシュサイトやレーザーサイトを内臓できるように改修されているモデルです。現代戦専用ってことですね。  バイオハザードシリーズが面白いのは、武器がコロコロ変わるのと、はやりの武器をすぐ出すところです。アンブレラ社の特殊部隊や警備兵たちは、過去作品で全く違う武器を装備していました。  アンブレラ社の兵士からアリスが奪ったハンドガンは、この連載でも紹介したことのある「グロッグ17」です。グロッグはオーストリア製です。ブルガリア製「AR-M4SF」とグロッグって「なんて、チグハグな装備なんだ!」って心の中で叫んでしまいました。よく見ると、このグロッグ、コンペンセイターが付いているじゃありませんか。最初気づきませんでしたが、横から見るとはっきりわかりました。  コンペンセイターとはなんぞや? そうお思いの方も多いと思います。コンペンセイターとは、発砲時の排出ガスを強制的に上方向に排出する装置です。どういう効果があるかというと、上に向かってガスが出るということは、下方向に力が入ります。そうすることで、弾丸の発射時の跳ね上がりと相殺して銃口をまっすぐにしたままにできるのです。簡単にいえば、反動抑制装置です。  一般的にはコンペンセイターはハンドガンに使用し、ライフルなどに装着する反動抑制装置は「マズルブレーキ」といいます。このコンペンセイターは映画において、反動抑制装置以外の大きな効果を持ちます。それは、特殊装備っぽくてカッコいい! の一言に尽きます。他のモブキャラの装備と違うからオリジナリティも出せるし、ハンドガンの銃身も長くなるから、アリスが振り回している時、非常によく映えるんですね。  本当にアクション映画の主人公たちは、このコンペンセイターをよく使います。特に二丁拳銃をふりかざするような主人公に多い気がします。ちょっと気にして見てみると面白いですよ。  どんどん紹介していきましょう。敵の本拠地で調達した武器は、ドイツのヘッケラー&コッホ社製「MP5K-PDW」です。実はこれ、映画版バイオハザードの第1作で、特殊部隊が装備していたものなんですね。「PDW」これもこの連載を読んでくださっている方ならわかるはずです。「Personal Defense Weapon」の略です。 「MP5」も映画でよく出てくる現代を代表するサブマシンガンです。サブマシンガンの部類では非常に精度が高いので、実際、対テロ作戦部隊などでよく使用されています。  日本の警察の警備部所属の特殊急襲部隊SATでも、MP5は使用されています。サブマシンガンはアサルトライフルほど威力はなく、ハンドガンよりも制圧力が高いので、犯罪者相手には“ちょうど良い”のでしょう。  MP5Kの「K」なんですが、「K」はドイツ語の「クルツ Kurz」。意味は「短い」です。そもそもサブマシンガンは短機関銃なんで、さらに短くしているMP5Kは短短機関銃ということになります。  アリスが使う武器で特に目立った二つの武器を紹介しましょう。一つは「三連ショットガン」です。水平に銃口が三つ並んだ異様なショットガンです。切り詰められて、短くなっています。アリスはこれを片手で扱います。こんな武器知りませんでした。調べたら、ありませんでした。  しかし! 似てる武器を発見してしまいました! 銃口が三つあるショットガン、その名を「トリプルスレッド」です! ただし、水平には並んでません。つまるところ、架空の武器なのです。これは、ゲーム版バイオハザードに出てきたショットガンで、原作へのリスペクトといえるのではないでしょうか。  そして、もう一つ! これはこの映画のポスターにも出てきます。アリス演じるミラ・ジョヴォヴィッチが拳銃を二丁構えています。その拳銃は銃口が二つもあるのです。両手に構えると四つの銃口です。圧巻です。  こんなもんあるわけないだろ! これも架空の銃器だろう! そうお思いでしょう! これは……あります! 存在します! イタリアのアーセナルファイアアームズ社が製作した、恐らく世界初であろう二連拳銃、「AF2011-A1」がそれです。  45口径の銃身銃口が二つ。トリガーも連結していて、撃てば2発同時に発射される仕組みとなっています。かなり持ちにくい、はずです。とても扱いきれる代物じゃないはずです。  じゃあ、なぜこんな拳銃作ったのかというと、名機「コルトガバメント1911」の100周年記念に作ったそうです。2011年製作ということで「100年分だから、もう一個銃口くっつけようぜ!」と言ったかどうかはわかりませんが、だいたいそんなところでしょう!  架空の銃に引けを取らない派手で個性的な実銃の数々、実戦では使えない代物も数多あります。しかし、映画になると、これが主人公の最強のパートナーとなります。  このように、銃に詳しければ全人類の危機でも、生き残ることができるわけです。いやぁ〜、武器って本当に素晴らしいものですね〜。 (文=二木知宏[スクラップロゴス])

腐女子の存在がリアルゲイを自由にする──業界初の実録BL『たとえばこんな恋のはなし』は、こうして誕生した!

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『たとえばこんな恋のはなし』(作:波真田かもめ/リブレ)
 なんと! 看板に偽りなどないホンモノの実録である。  リブレの人気BL雑誌「月刊マガジンビーボーイ」2月号から連載が始まった、波真田かもめさんの作品『たとえばこんな恋のはなし』。  この作品、業界でも初めての、実在するゲイカップルの取材をもとに描かれる「実録BL」なのである。  BLを愛好する(主に)女性をターゲットにした「実録」とは、どんなものなのか。さっそく読んでみて、驚いた。
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 物語は、高校時代の経験からゲイであることを自覚していた主人公・明良の視点で始まる。明良は、高校時代から、同級生などにも惹かれてはいたものの「ノンケに恋をしちゃいけない」と考え本気で恋愛をしていなかった。そんな彼がノンケの男性と同棲を始めてしまうのである。  ネタバレになってしまうので詳細は省くけど、出会いは最悪。しかも、ゲイの主人公が押せ押せでノンケを口説くのかと思いきや、違う。ノンケのほうが「転勤で東京に来た」という理由で押しかけ同棲が始まるのだ。  いやいや、これまで数々のヒロインが押しかけてくる作品は知ってるけれども、ノンケのほうが、押せ押せでやってくるなんて!  こんな驚きの作品はどうやって出来上がったのか、好奇心を抑えきれずに編集部を訪ねた。
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「月刊マガジンビーボーイ」の編集・廣瀨茉衣子さんが語る作品誕生のきっかけは、こうだ。 「友人つながりで、主人公の明良のモデル・柳賢斗さんにお会いしたのですが、そのときに、旦那さんともう10年も一緒に暮らしているというのです。それで、いろいろとお話をお伺いしていたら、周りにいた腐女子の皆さんも目の輝きが違っていて……これだ! と思ったんです」  これは結構な驚きである。現実のゲイとBLとの間には、あくまで現実とフィクションという溝があるのだと思っていた。ところが、BLが、当たり前に存在しているものとして、世間に知られるようになったからだろうか。必ずしもそうではなくなっているようだ。  廣瀨さんは、作品制作にあたって柳さんから「腐女子が自分たちを認めていることによって、自由に生きられるようになってきていると感じている」という言葉も聞いたという。
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 なるほど、男性向け作品でも、昨今は男の娘やTSFジャンルが幅広い層の支持を受けるようになっている。BLでも同じような現象、すなわちフィクションが現実に作用することが起こっているということだろうか。  そんな驚きばかりの実録を描く波真田先生は、よい意味でフィクションを感じさせない作風が特徴。今回も、日常系BLといえば波真田先生しかいない! ということで決まったのだという。  連載は全5回を予定しており、次号以降も、リアルな日常が描写されていくという。  しかし、やっぱり気になるのは同棲が10年も続いていること。廣瀨さんも、そこは気になったようで、柳さんに尋ねてみたところ…… 「2人の寝床をシングルベットにしておくのがケンカを長引かせないコツ」  なるほど。相手の心音の聞こえる距離感は、心を落ち着かせるのか! でも、普段は狭そうだな……。 (文=昼間たかし)
月刊マガジンビーボーイ
「月刊マガジンビーボーイ」2017年2月号
■月刊マガジンビーボーイ公式サイト http://www.b-boy.jp/magazine/bboy/ ■「ビーボーイ編集部」ツイッターアカウント @bboy_editor

【劇場アニメレビュー】人気の《豪華客船編》をアニメ化! ただ作画が気がかりな『劇場版 黒執事 Book of Atlantice』

【劇場アニメレビュー】人気の《豪華客船編》をアニメ化! ただ作画が気がかりな『劇場版 黒執事 Book of Atlantice』の画像1
『劇場版 黒執事 Book of Atlantice』公式サイトより
 ファンには今さらと思われるかもしれないが、原作の枢やなが描くコミック『黒執事』(スクウェア・エニックス)について軽く説明しておくと、19世紀末のイギリスを舞台に、家族を殺された復讐のために悪魔と契約した名門貴族ファントムハイヴ伯爵家の13歳の領主で、“女王の番犬”としても暗躍するシエルと、彼に仕える非の打ちどころのない執事セバスチャン(実は彼こそが悪魔である)の主従を主軸に、さまざまな怪事件に遭遇&対処していくもので、2006年から『月刊Gファンタジー』(スクウェア・エニックス)にて現在も連載中。  08年と10年、14年の三度にわたってTVアニメ化され、15年にはOVA『黒執事 Book of Murder』上下巻も発表され、こちらは劇場で先行上映された。また09年には舞台化、14年には実写映画化もされている。  いわゆるイケメンキャラまみれのこのシリーズ、アニメ版ではオリジナルキャラも登場して一層華やかな世界が展開されており、当然ながら女子を中心に大人気ではあるのだが、トウのたったおっさんが見ても十分面白く感じられるのは、やはりシエルとセバスチャンの対立と信頼が合わさった複雑な関係性が作品の主軸としてしっかり据えられているからで、その緊張感があるからこそ、ストーリーに多少の誇張や飛躍が見られてもさほど気にならず、彼らのギスギスした(?)言動を微笑ましく堪能することができるのだ。(舞台は未見。実写版は……ハハハ)  そして17年1月21日より劇場公開となる『劇場版 黒執事 Book of Atlantice』は、原作の中でもファンの人気が高いと言われている《豪華客船編》の映画化で、監督:阿部記之、構成:吉野弘幸などテレビアニメ第3期およびOVAを手掛けたスタッフの多くが参加している。  とはいえ、この《豪華客船編》、多くのファンを敵に回してしまうかもしれないが、個人的にはさほど興の乗るエピソードではない。  要はゾンビ(ただし、噛みつかれた者がゾンビ化することはないようだ)を積んだタイタニック号のような、そのうち事故に遭って沈没する運命にある豪華客船カンパニア号にたまたま乗り合わせたシエルとセバスチャンの活躍を描いたものであり、映画ファンとしては『タイタニック』に『ゾンビ』といった元ネタが露骨すぎて、これが漫画での展開ならば微笑ましく思えるが、銀幕の大画面にかかる映画で同じシチュエーションとなると、どうにもおもばゆいものがあるのだ。  実際、かなりアクティヴな要素を併せ持つエピソードではあるが、ただ一緒にいるだけでそこはかとない素敵な緊張関係が醸し出されていくシエルとセバスチャンの「静」としての魅力が、「動」的設定の数々によって十分引き出されていないのではないかといった懸念もないではない(私自身が、彼らの静的な要素にこそ惹かれているからかもしれないが……)。  もっとも、アクティヴな面が強調されればされるほど、映画としての派手さやケレン味は増幅されていくので、さほどこのシリーズの世界観を熟知していないイチゲンさんでも、死神などの細かい部分はともかくとして、活劇としてのダイナミズムを楽しみながら、ひいては本シリーズのファンになることも期待はできるだろう。  そう思うと、こちらも多少のこだわりはさておいて、映画ならではの醍醐味に身を任せ……たいとは思いつつ、やはりどこか乗り切れないところがある。  特に、この手のイケメン・アニメにありがちではあるが、突然挿入されるギャグ・ショットなど、それが漫画ならブレイクタイム気分で素直に笑えるのだが、そのまま映像に定着させると往々にして化学変化を起こし、お寒い空気が流れてしまうことがままあることを、作り手はもっと意識したほうがよろしいかと思う(『タイタニック』の船首のパロディ・シーンなど、マジに赤面してしまう……)。  もちろん好もしいシーンもいくつかあり、中でもシエルさまLOVEの許婚エリザベスが本性を現してしまうシークエンスに至っては、それだけで本作を見て良かったと思わされるものがあった。  クライマックスのシネマティックレコードのくだりも、もしかしたらこれゆえに『黒執事』ファンは《豪華客船編》を愛してやまないのかもしれないと唸らされる説得力はある。  ところで、私がマスコミ試写会で見せてもらったのは作画がまだ完全ではない版だったのだが、そのせいかちょっと引き気味の画になると、目の位置などが福笑いみたいになっているものもあったりして、なかなか画面に集中できないというか、いや集中すればするほどそういった画が気になって仕方がなかった。  聞くと、公開日に向けて鋭意手直し中ではあるとのことではあったが、やはりこの手の作品は「顔が命」と言っても過言ではないだろうから、どの程度修正されているか、公開後のファンの口コミなども楽しみにしたいものではある。  とりあえず私が見た版の段階では、OVA『Book of Murder』のほうが断然作画は上(というか、見ていてストレスがたまらない)という印象であった。  また、そこで思い出したのだが、OVAは嵐で外界から隔離されたファントムハイヴ家内で起きる連続殺人事件を描いたもので、メイドのメイリンや料理人バルドロイ、庭師フィニアン、そして何といっても家令のタナカさんといった、ファントムハイヴ家の使用人たちが大活躍する。  実は私、『黒執事』キャラの中で、特に彼らが大好きなのだ。  当然、シエルとセバスチャンが屋敷を出て船旅を満喫(?)している今回は、彼らの出番など望むべくもなく(スネークがお供してくれているのはせめてもの救いか)、そうしたモヤモヤ気分を晴らすべく、本作鑑賞後は直帰して、即OVA版を見直してしまった次第。  やはり『黒執事』はアウトドアよりインドアのほうが楽しい!(といった意見に、ファンがどれだけ賛同してくれるかはわからないが……) (文・増當竜也)

「黒歴史」は抹消? 双日の神戸開港150年記念サイトで復刻されたマンガ『栄光なき天才たち』の改変が酷い!

栄光なき天才たち
双日 神戸開港150年 特別サイトより。
 こんな堂々とした「黒歴史」の抹消を、誰も疑問に思わなかったのだろうか。  日本でも指折りの総合商社・双日が2017年の神戸開港150年を記念して開設した特別サイトを見て、文字通り「開いた口がふさがらない」気分を味わった。  このサイトでは「スペシャルコンテンツ」として、同社の源流である鈴木商店が描かれたマンガ『栄光なき天才たち』を復刻し、公開しているのである。 『栄光なき天才たち』は作:伊藤智義(一部)、画:森田信吾によって、1986年から「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に連載された作品である。この作品の特徴は、一般の偉人伝とは異なり、異形を達成しながらも、生前は正当な評価を受けなかった人物や、栄光を逃したり一瞬の輝きだけで忘れ去られた人物を数多く取り上げている点である。  連載当時は、話題になった作品であるが、現在は単行本は絶版。2014年にはイーブックで電子書籍化もされているのだが、どういう権利関係なのか、収録されているのが、ごく一部の作品だけになっているという、埋もれた名作なのである。  そうした中で、読むことが困難になっていた鈴木商店編は、大正時代に第一次世界大戦に伴う好況で世界に名を轟かせながらも没落していった一大商社の姿を描いた、重厚な人間ドラマであった。  それが再び、しかも無料で読めるとは、さすが大企業は太っ腹! そう思って読み始めた。  物語は、明治時代に誕生した貿易商・鈴木商店が、番頭の金子直吉の采配の下で、発展していく姿を描く。とりわけ、第一次世界大戦の勃発と共に、当時ロンドン支店勤務だった高畑誠一によって手がけられた、日本を介さない三国間貿易によって、その売上は当時の日本のGNPの一割へと達していくのである……。  しかし、栄光も長くは続かなかった!  ……いや、長く続かなかったハズである。  なぜ、そう記さなくてはならないかといえば、現在サイトで公開されているのは、栄光の部分だけだからである。  そう、栄光の後にタイトル通り「栄光なき天才」となってしまった顛末が描かれるのだが、物語は「『栄光なき天才たち・鈴木商店』双日特別版は、こちらで終了となります」と、予想外の打ち切りになってしまているからである。  ナンダ、コレは……と、驚きながらサイトの下部を見てみると「載された全てを掲載してはおりません。ご了承ください」と、連載当時を知る読者の怒りを、最初からわかっていたかのような断り書きが。  本編では、この後、大戦の終了と共に好況が終焉。さらに米騒動を経て、昭和恐慌に飲み込まれる形で鈴木商店は倒産へと至るまでのドラマが克明に描かれていた。  だが、そこは会社にとっては、なかったことにしたい部分であろう。なぜなら、倒産を前に、もう鈴木商店には先がないことを見切った高畑誠一が密かに社員に声をかけ、破綻後に設立した新会社が日商、双日となったことが描かれているからである。  実業家としては評価すべき「見切り千両」の場面だけれども、読み方によっては会社を裏切ったと、とれなくもない。さすがに、そこまでを自社の歴史として公開してしまうのは、ためらいがあったのか?  だったら、こんなサイトにしなければよかったのに……。幻の名作に再会した喜びが、一転裏切られた気分になった新年である。 (文=昼間たかし) ■双日 神戸開港150年 特別サイト http://sp.sojitz.com/kobe150/