『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る“怪獣愛”、そして“家族愛”!

『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る怪獣愛、そして家族愛!の画像1
商業デビュー30年を迎えた河崎実監督。『大怪獣モノ』には河崎監督の“怪獣モノ”としての全てが注入されている。
 特撮映画のアイコンとして世界中に知られている怪獣王ゴジラ。2016年7月に東宝系で全国公開された『シン・ゴジラ』は興収80億円の大ヒットを記録したが、同時期にもう一本の怪獣映画が劇場公開されていたことを覚えているだろうか。バカ映画の巨匠と呼ばれる河崎実監督が特撮映画への万感の想いを込めて撮り上げた『大怪獣モノ』がそれだ。『地球防衛少女イコちゃん』(87年)で商業デビュー以降、おかしな映画を撮り続けて30年。自分の好きな世界だけを追い続けてきた河崎監督の不屈のインディペンデント精神には、感嘆を覚えずにはいられない。オールスターキャストを擁した『シン・ゴジラ』の話題にすっかり呑み込まれた『大怪獣モノ』の今だから話せる裏話、そして自分の好きな世界で生きていくということ、さらには東京スポーツの紙面を飾ったニュースの真相にまでタブーレスで語ってもらった! ──『シン・ゴジラ』に便乗する形で劇場公開された『大怪獣モノ』ですが、DVD&ブルーレイも『シン・ゴジラ』と同じ3月22日(水)リリースと徹底しての便乗商法。河崎作品はブレがありませんね! 河崎 もちろん、僕の作品はブレませんよ。『シン・ゴジラ』のキャッチコピーは〈ニッポン対ゴジラ〉ですが、『大怪獣モノ』のDVDのコピーは〈地底怪獣対大巨人〉です。DVDのパッケージデザインも『大怪獣モノ』は黒に赤と『シン・ゴジラ』と逆になっています。『シン・ゴジラ』がポジなら、『大怪獣モノ』はネガの存在なんです。 ──『大怪獣モノ』と『シン・ゴジラ』はネガ&ポジの関係ですか。両作品を観ることで、今の日本の特撮シーンの裏表を知ることができるわけですね。 河崎 そうです。昨秋スペインのサン・セバスチャン映画祭に呼ばれて行ったんだけど、『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督も一緒でした。彼は『ゴジラ』(84年)の撮影現場から叩き上げで監督になったわけだけど、僕は子どもの頃から円谷プロに通って怪獣倉庫でウルトラ警備隊のヘルメットをもらい、それで自主映画を撮ったという反則技で監督デビューしちゃった人間(笑)。根っこは同じ円谷英二の怪獣映画なんだけど、映画はつくっている人間のパーソナリティーが出るから、出来上がる作品はまったく異なるものになるわけです。樋口監督と僕では違うし、もちろん庵野秀明監督とも違う。ちなみにサン・セバスチャン映画祭では『シン・ゴジラ』は会議シーンが長すぎて最初は「また会議かよ」とスペインの観客は言ってたんだけれど、ゴジラが登場すると拍手喝采で沸いてたね。怪獣と巨人が戦う見せ場満載の『大怪獣モノ』はスペインのノリに合ってたみたいで、みんなずっと笑ってくれてうれしかったなぁ。ウクレレえいじさんの志村喬のマニアックなモノマネなんて絶対分かってないはずなんだけど、何故かバカウケで(笑)。日本での劇場公開では完敗したけど、スペインでは『大怪獣モノ』のほうが人気だったんです。僕の作品はラテン系にはウケるんです。
『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る怪獣愛、そして家族愛!の画像2
特撮映画を撮り続ける河崎監督。『シン・ゴジラ』と違って、怪獣はCGではなく着ぐるみを使用。皮膚感覚へのこだわりがある。
──『シン・ゴジラ』の7月29日公開に先駆けて、7月16日に公開した『大怪獣モノ』ですが、劇場公開はやっぱりダメでしたか。あっさり認めるところも河崎監督らしい。 河崎 劇場公開はね、ちょっとしたタイミングで変わってくるんで難しいですよ。樋口監督の『日本沈没』(06年)のときは、僕は『日本以外全部沈没』(06年)を公開して、これは大ヒットしました。『日本沈没』が7月公開だったのに対して、『日本以外全部沈没』は9月に公開したんだけど、逆に少し後のタイミングだったことが良かったみたいだね。『大怪獣モノ』は『シン・ゴジラ』の2週間前に公開したんだけど、『シン・ゴジラ』の大ヒットフィーバーがすごすぎて、埋もれちゃいましたね(苦笑)。『ゴジラ』に対抗して『コチラ』という題名にしようかというアイデアもあったんです。アチラを立てれば、コチラは立たずというキャッチコピーでね。これは「シャレを理解しない人もいるから」と忠告をうけて止めました。松竹系で『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(08年)も撮ったけど、これは僕の映画の中で最大の製作費だったけれど思ったほどヒットしませんでしたね。一般の人はゴジラ以外の怪獣にはまったく興味がないことがよく分かりました。 ■成功した作家はみんな変態だった!! ──『大怪獣モノ』はゴジラのパロディというよりは、『フランケンシュタイン対地底怪獣』(65年)のオマージュ作ですよね。 河崎 『ゴジラ』(54年)と『ウルトラマン』(66~67年)との狭間に作られたのが『フランケンシュタイン対地底怪獣』と『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(66年)なんです。ウルトラマンが登場するまでは、怪獣と戦っていたのは巨大化した人間でした。つまり、ゴジラとウルトラマンとのミッシングリンクに当たる作品なんです。それをね、僕なりにリメイクしたのが『大怪獣モノ』。もしもウルトラマンが地球にやって来なかったら……という一種のパラレルワールドです。それで、どうせなら格闘能力の高いプロレスラーを怪獣と戦わせようと、飯伏幸太選手をキャスティングしたんです。飯伏選手のいいパンチがヒットして、怪獣の中のスーツアクターは本当にノックアウトされた状態でした。怪獣をあそこまでボコボコにするのは、テレビじゃできないですよ。今の地上波テレビはコンプライアンスでうるさいから。
『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る怪獣愛、そして家族愛!の画像3
これが問題の注射シーン。公衆の面前での、いきなりの人体実験は果たして成功するのか!?
──怪獣と巨人がストリートファイトを繰り広げる『ウルトラファイト』(70~71年)を思わせます。 河崎 樋口監督は初代ウルトラマンをリアルタイムでは観てなくて、ウルトラマンやウルトラセブンの対決シーンだけを再編集した『ウルトラファイト』世代なんですよ。『~ファイト』は我々の大好物です。巨人が戦うという設定は、米国のAIP映画で『戦慄!プルトニウム人間』(57年)と続編『巨人獣』(58年)があったし、手塚治虫原作のテレビアニメ『ビッグX』(64年)も主人公が巨大化して戦うという内容でした。『ビッグX』の原作コミックではシャープペンシル状の注射器で変身するんですが、『大怪獣モノ』で主人公が注射器を刺されて変身するのは『ビッグX』が元ネタ。注射器で薬物を注入して変身するなんて、ヤバいよね。それで『ビッグX』のテレビアニメはシャープペンシルを持つだけで変身するように変わったんです。そして『ビッグX』の変身アイテムが、『ウルトラマン』のベータカプセルへと受け継がれた。怪獣映画を観て育ったボンクラ少年が大人になってもこうして撮り続けているわけだけど、そういった娯楽作品の歴史は意識してつくっているんです。梶原一騎原作、桑田次郎作画の漫画『ゴッド・アーム』も格闘家が改造手術をうけて超人化するという内容でした。円谷英二、手塚治虫、梶原一騎、桑田次郎……と僕の好きなものをすべて詰め込んだ結晶が『大怪獣モノ』なんです。 ──手塚治虫の変身ものといえば、『ふしぎなメルモ』(71~72年)も忘れられません。キャンディーを舐めた女の子が大きくなったり、小さくなったりと、子ども心に観ていて妙な気分になりました。 河崎 手塚治虫の変態ぶりが現われているよね(笑)。 ──作家性って、突き詰めていくと変態性だと言えそうですね。 河崎 そうですよ、作家はみんな変態ですよ。三島由紀夫なんて切腹マニアでしたからね。変態性のない作品なんて、逆にいえば退屈なだけです。壇蜜主演で『地球防衛未亡人』(14年)を撮りましたが、これは怪獣を攻撃することで性的興奮を覚える未亡人が主人公で、興行的にも成功しました。モノをつくる上で変態性はとても重要な要素でしょう。 ■敬礼シーンに秘められた特撮界ちょっといい話
『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る怪獣愛、そして家族愛!の画像4
地底怪獣モノと戦うのは、人気イケメンレスラーの飯伏幸太。特撮セットで華麗なスープレックス&空中殺法を繰り広げる。
──『大怪獣モノ』の変身後の主人公には人気プロレスラーの飯伏選手を起用。近年のプロレスブームを反映させたキャスティングですね。 河崎 飯伏選手をキャスティングできたのはよかったんだけど、2015年の暮れに撮影する予定が、彼が椎間板ヘルニアになって撮影中止になったんです。これには困りました。長州小力が注射をうったら長州力に変身するという別のストーリーも考えて、長州力に出演の打診もしたんだけどね。まぁ、飯伏選手が復活して、16年の春には撮影することができたんで、7月の公開に間に合ったんです。台詞は棒読みですが、さすが人気レスラーだけあって撮影現場での呑み込みの早さや表現力は素晴しいものがありましたよ。現役時代の長嶋茂雄が主演した『ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗』(64年)という映画があったけど、あれも長嶋選手は台詞を棒読み。でもいいんです、スター選手なんだから。力道山が主演した映画もありました。最近はスターが主演した映画がないでしょ。そういったスター主演映画をつくりたかったというのもありましたね。鈴木みのる選手にも出てもらったけど、彼もいいよね。新日本プロレスで1988年にデビューして、今もバリバリの現役でしょ。彼こそ“プロレスモノ”だよね。 ──元プロボクサー赤井英和の実娘であり、DTT所属の美形レスラーでもある赤井沙希も謎の女役でいい感じです。 河崎 飯伏選手は芸能関係での所属はオスカープロモーションになっていて、彼女もオスカー所属という縁で出演することになったんです。プロレスの才能はもちろんのこと、彼女は女優としての才能もありますね。峰不二子的なセクシーなキャラクターをうまく演じてくれたし、あのルックスでアクションもできる。父親の血が流れているんだなと感じさせますよね。
『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る怪獣愛、そして家族愛!の画像5
愛する美和(河西美希)のため、陽出人(斉藤秀翼)は戦うことを決意する。今回の河崎作品は恋愛要素も入っている!
──『ウルトラマンレオ』(74年)に主演した真夏竜、『ウルトラセブン』(67年)のアマギ隊員こと古谷敏、『帰ってきたウルトラマン』(71年)のスーツアクターだったきくち英一、実相寺昭雄監督作品の常連だった堀内正美……とウルトラシリーズゆかりの俳優たちも大挙出演。 河崎 真夏さん、いいでしょ? 70歳を過ぎた真夏さんに女装癖のある博士役をやらせるなんて、どーかしていますよね(笑)。でも本人はすごく喜んでくれた。特撮もののヒーロー役をやると、そのイメージが強すぎて、いろんな役が来なくなるものなんです。役者ってね、幾つになっても面白い役をやりたがるんですよ。まぁ、今回のキャスティングでいちばんの肝になったのは毒蝮三太夫さんでしょう。毒蝮といえば、やはり『ウルトラマン』のアラシ隊員。ネロンガの光線を浴びても死なず、最終回にはウルトラマンを倒したゼットンをペンシル爆弾でやっつけています。毒蝮こそ最強の男なんです。うちの嫁がまむしさんのファンで、『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』(TBSラジオ)の公開収録の現場に行って出演交渉しました(笑)。『大怪獣モノ』の中で、古谷さんが演じている防衛長官が「毒蝮に敬礼!」というシーンがあるでしょ。あれはかつて古谷さんが経営していたイベント会社が倒産して困っていたときに、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』で共演した毒蝮さんが救いの手を伸ばしたというエピソードが背景にあるんです。だから古谷さんの敬礼ポーズにはすごく実感がこもっているんです。 ■東スポの記事は正しかった!? ──『ウルトラマン』をリアルタイムで観て育った河崎監督は、いわば第一オタク世代。自分の好きな世界を追い続けてきた河崎監督が15年に一般女性と結婚したのには驚きました。東京スポーツは「19歳年下女性と交際4カ月スピード婚」と報じましたが、東スポの記事は正しいんでしょうか? 河崎 いや、その通りです。14年に出逢って、その翌年に56歳で結婚しました。聞いた話だけれど40歳過ぎて初婚で結婚できる確率は3%らしいから、ほとんど絶滅危惧種みたいなものだよね。本当、人生何が起こるかわかりません。うちの嫁は一般女性です。女優はこりごりですよ(苦笑)。女優と結婚しようと映画監督が考えるのは、ヒモになるという要素もありますね。篠田正浩、大島渚、長谷川和彦(以下略)……。みなさん女優と一緒になっているけど、映画監督の仕事だけじゃ不安定だし、妻が働いて支えるというね。また、その稼ぎを映画にぶっこんじゃう。監督が女優と結婚するって、そういうことですよ。 ──19歳年下の奥さまは特撮好きなんですか? 河崎 残念ながら、嫁は全く特撮に興味がないんですよ。世代も違うし趣味嗜好も違うけど、今まで自分が知らなかった世界を知ることもできて面白いですよ。 ──『地球防衛未亡人』の公開時に「夕刊フジ」のインタビューで「好きなことを続ける秘訣は?」と河崎監督は尋ねられ、「親兄弟を犠牲にすること。あと女もね、ハハハ」と答えていますが……。 河崎 うちの嫁とまだ出逢う前でしたね、そのインタビューは。僕は兄弟はいないけど、確かに両親には迷惑かけっぱなし。実家はフグ料理屋なんだけど、父親は90歳を越えた今もフグを調理していますよ(笑)。ひとり息子がバカ映画を撮り続けたことを、よく許してくれたなと感謝しています。まぁ、これから嫁にも迷惑かけると思いますが……。『地球防衛少女イコちゃん』で監督デビューしてから今日まで、ノープランでよく仕事が続いたものだなと自分でも思いますよ(笑)。 ■自分の好きな世界で生きるということ
『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る怪獣愛、そして家族愛!の画像6
これまで、あまり語られることのなかった河崎監督の私生活。今後の作風にどんな影響が現われるだろうか。
──大槻ケンヂ著『サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法』(白夜書房)には「運と才能と継続していくことが大事」とありますが、河崎監督的にはどうでしょうか? 河崎 僕もサブカルで食べているわけだけど、余裕のある生活は難しいよね。でも、サブカルの人は何故か忙しい人ばかり。大槻ケンヂ、みうらじゅん、吉田豪……、みんな忙しくしている。それって毎日くだらないことに夢中になっているからなんだよね。実相寺監督もいつも忙しそうだった。 ──実相寺監督はピンクちらしの収集で忙しかったんですよね(参照記事)。 河崎 そうそう、ピンクちらしのコレクターでね。ピンクちらし以外にも「けろけろけろっぴ」も集めていました。生前、実相寺監督に訊いたことがあるんですよ。「映画を撮ってないときは何をしてるんですか?」と。その答えが「乞食だよ」と。実相寺監督は晩年東京藝術大学の教授になったけど、それ以前は自分のことを乞食だと言っていたんです。フリーで仕事やってる人間って、みんなそうじゃないですか。仕事があるときはあるけど、仕事がないときは乞食ですよ。実相寺監督はズバリ言う人でした。常に本音でしゃべる人でしたね。『帝都物語』(88年)を撮る前まではCMの監督も多くやっていましたが、あまりにも心ないスポンサーから口出しされて、CMはやらなくなったそうです。それもあってね、僕はスポンサーの前で「天才監督です!」と自称するようにしているんです。実相寺監督は本当の天才で、僕は天才のふりをしているだけなんだけど(笑)。普段から天才・鬼才と自称しておくことは重要ですよ。 ──バカ映画の巨匠として、これからも特撮映画を撮り続けていくわけですね。 河崎 映画監督にはキャリアは関係ありません。これから撮る作品をどれだけ面白いものにできるかしかない。ただ同じことを続けていくのもあれなんで、クラウドファンディングで300万円集めて、新作を撮ることが決まっています。ウェブ漫画の『干支天使チアラット』の実写版です。この製作費はスポンサーからどうのこうの言われることのないお金なんで、気兼ねせずに自由に狂った映画を撮ることができます。応援してくれる人たちがスポンサーだから、くだらないことで大笑いしたい仲間と一緒に作品づくりができる喜びもあるし。今その脚本を執筆中です。脚本の内容や小ネタのアイデアで行き詰まることが多々あるんだけど、『大怪獣モノ』で毒蝮さんを起用するアイデアはうちの嫁との何気ない会話からひらめいたんです。普段の夫婦の会話が、実は企画会議になっているかもしれませんね(笑)。 (取材・文=長野辰次/撮影=後藤秀二) 『大怪獣モノ』 監督/河崎実 脚本/中野貴雄、河崎実 主題歌/ベッド・イン「太陽を信じて……」 出演/飯伏幸太、斉藤秀翼、河西美希、赤井沙希、鈴木みのる 3月22日(水)、キングレコードよりDVD&ブルーレイ発売 (c)2016「大怪獣モノ」製作委員会 http://mono-movie.com 『大怪獣モノ』Blu-ray&DVD/メイキングスペシャル映像
●かわさき・みのる 1958年東京都生まれ。明治大学在学中より自主映画『フウト』『エスパレイザー』などで注目を集め、オリジナルビデオ作品『地球防衛少女イコちゃん』(87年)で商業デビューを果たす。『飛び出せ!全裸学園』(95年)、『実写版 まいっちんぐマチコ先生』(03年)などのオリジナルビデオ作品で活躍後、『いかレスラー』(04年)、『コアラ課長』(06年)、『かにゴールキーパー』(06年)といった着ぐるみ映画で劇場を賑わし、『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(08年)はベネチア映画祭に正式出品された。筒井康隆原作『日本以外全部沈没』(06年)やモト冬樹主演『ヅラ刑事』(06年)、壇蜜主演『地球防衛未亡人』(14年)はスマッシュヒットを記録。日本の特撮界を舞台にした『アウターマン』(15年)は永井豪の『デビルマン』を思わせる驚愕の内容で、ファンを驚かせた。河崎監督が主演も兼ねた『電エース』シリーズも30年にわたるロングラン人気を誇っている。

『ちびまる子ちゃん』1時間スペシャルにゴールデンボンバー登場! 「さくらももこ脚本まつり」最後回の反応は!?

1703_maruko1094.jpg
『ちびまる子ちゃん』公式Twitter(@tweet_maruko)より。
「連載30周年記念! さくらももこ脚本まつり」ということで、原作者・さくらももこが脚本を担当中のTVアニメ『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)。3月19日放送回は1時間スペシャルで、てんこ盛りの内容だったため、内容を紹介していきたい。  まずは現在OPを担当しているゴールデンボンバーが本編へ登場。「おどるポンポコリン」を歌い終わってアニメの本編にも駆け付けたという設定で、さくら家の居間にメンバーの4人がきてそれぞれ少しずつセリフも口にした。出演時間はごくごくわずかだったが、ネットでは「金爆めちゃめちゃかわいい」「ゴールデンボンバーもついにここまで上り詰めたか」「鬼龍院の空きっ歯にも笑った」とさまざまな声が上がるなど大反響となっていた。  そしていつものようにストーリーが始まる。まずは「『ぜんぜん知らない親せきの人』の巻」。友蔵のいとこにあたる正司という男性の息子が友蔵に「会いたい」と言ってさくら家に訪ねてくることに。ところが友蔵は正司という男すら全く覚えが無いのに、さらにその息子がわざわざ来るなんてと困り果てている。もちろん他の家族もそのような人物を全く知らないため、みんなして「会いたくない」と言いだす。  とはいえ断るわけにもいかないので、結局正司の息子を家に招待することに。約束の日、正司の息子でキヨシというとても人柄が良さそうな男性がやってきた。キヨシは名古屋で開業医をしており、豪華なお土産を持ってきたうえ、まる子とお姉ちゃん(さきこ)にそれぞれ5,000円ものお小遣いをくれた。これにより「会いたくない」と言っていたまる子はすっかりキヨシを良い人認定。  キヨシの訪問の目的は半年前に他界した正司が中学生の頃、その時にまだ赤ちゃんだった友蔵を描いた絵を友蔵に渡すことだった。なんとも言えない画力の絵を渡され戸惑う友蔵とまる子だが、そこは適当なリアクションをしてやり過ごす。その後は豪華なお寿司などを頼んでみんなで盛り上がるのだった。  とそんな中、ヒロシが帰宅。すぐに宴会に加わり酒を飲むと、酔っ払ったひろしはキヨシが持ってきた絵を見て「ギャハハハ! 変なの」「下手だなあ。下手だなあ」と毒舌を吐きまくってしまう。これによりまる子と友蔵は二度とキヨシがさくら家に来ないであろうと確信するのだった……。  今回の放送では「『近所の桜祭り』の巻」というもう一本の長編が放送されたのだが、短編も2本放送された。  1本は「『小杉の大食いチャレンジ』の巻」。大盛りチャーハンを食べきったら3,000円がもらえるという企画を小杉の家の近くの定食屋でやっているらしい。挑戦料に1,000円かかるため、小杉は永沢と藤木に500円ずつお金を出してくれと依頼。もし成功したらお金は倍にして返すという。  永沢は断ったが藤木はこの話に安易に乗ってしまう。しかし藤木は承諾した後に「なんで小杉なんかのことを信用してしまったのだろう」と挑戦する前から後悔。結果、藤木の悪い予感は見事に的中し小杉は挑戦失敗。500円損をするのであった。視聴者からは「小杉に投資する価値なんて無しってみんな知ってた」といった声が上がった。  もう1つの短編は「『おじいちゃんの散歩』の巻」。散歩ついでにスーパーでおつかいをした友蔵は、そこで風船をもらい、まる子にあげたら喜びそうだとゴキゲンでスキップしながら帰宅。ところがこの様子を見た大野君と杉山君がまる子に「さくらのじいさんらしき人が風船持って歩いていたぞ」と伝えると、まる子は「そんな変なじいさん、うちのおじいちゃんじゃないよ」と真相を知らずに友蔵をディスってしまうのであった。 「久しぶりにちびまる子ちゃん見てるんだけど結構面白いな」「久々に見ると面白いわこれ」「最近のちびまる子はキレッキレで面白い。さすが原作者脚本」と上々の反響だった今週の『ちびまる子ちゃん』。この放送をもってさくらももこ脚本キャンペーンは終了するが、年に一度くらいはキレキレの原作脚本をまた見たいものだ。

『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?

『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?の画像1
『Fate/Grand Order』公式サイトより
『Fate/Grand Order』((C)TYPE-MOON / FGO PROJECT)の新たなエピソード「悪性隔絶魔境新宿」にて、「新宿のアヴェンジャー」が新たに登場、サーヴァントとして追加されました。  さて、新宿のアヴェンジャーの外見ですが、「3mを超す巨大な狼と、それに跨った全身を鎧に包んだ首のない騎士」というもので、狼以外は前回記事でご紹介したアメリカの伝承「スリーピー・ホロウの首なし騎士」そのものです。
『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?の画像2
<Wikimedia Commonsより。首なし騎士に追われる主人公・イカボット>
 新宿のアヴェンジャー、狼の方はひとまず置いておいて、騎士側の原典は短編小説集『スケッチ・ブック』(ワシントン・アーヴィング著/1820年)に収録されている、アメリカの古い伝承を元にした小説「スリーピー・ホローの伝説」となります。この作品から「人間に襲いかかる、身に鎧をまとった首なしの騎士」というモチーフが生み出され、さらに同小説を原作とした映画『スリーピー・ホロウ』(1999年)などで「鎧の上にマントを羽織り馬に乗った、首なしの騎士が人を襲う」という姿が映像化されたことにより、その外見が広く知られることとなりました。  ところで、新宿のアヴェンジャーとその元ネタを確認した時に、ふと疑問に思ったことがあります。「スリーピー・ホロウの首なし騎士」は、“首がない”という特徴的な外見から、同様に首のない妖精「デュラハン」と混同されがち、というよりは今やほぼ同一視されている、としても過言ではない存在です。  昨今の創作作品における「首なしの怪物」をモチーフとしたキャラクターは、首なしの鎧を着た騎士「スリーピー・ホロウ型」と、首なしの頭部が別にある妖精「デュラハン型」、果たしてどちらのタイプが多いのでしょうか。  ここで一旦説明を挟みます。デュラハンとは、イギリスの西にある島国アイルランドに伝承の残る「首のない人間女性(男性とする伝承もある)の姿をした妖精」で、役目は「人間に死を予告する」ことです。デュラハンは首なし馬に乗るか、あるいは4頭の首なし馬に引かせた馬車に乗ってどこからともなく現れ、誰かの家の前に止まります。これが死の宣告であり、その家からは近いうちに死者が出るのです。外見のバリエーションとしては「手に自分の首を持って現れる」というものもあります。  簡単に分類すると「首なしの騎士」がスリーピー・ホロウで、「頭部を手に持つ首なしの人間」がデュラハンとなります。  話を戻しましょう。今回は、比較的最近の作品に登場する「首のないことが特徴」というキャラクターを「スリーピー型」「デュラハン型」と分けて、どちらの属性を持っているのか分類しまとめました。  ただし、あくまでも筆者が知っている限りでの紹介となります。キャラクターや作品に抜けなどありましても他意はございませんので、その点はご容赦下さい。 ■セルティ・ストゥルルソン『デュラララ!!』(作:成田良悟/電撃文庫)
『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?の画像3
TVアニメ『デュラララ×2』公式サイトより
 TVアニメ化もされた人気ライトノベル『デュラララ!!』の主人公格の女性です。猫耳の付いた黄色いフルフェイスヘルメットを被り、黒一色のライダースーツに身を包み、バイクに乗って活躍しています。彼女はヘルメットこそ被っていますがその中に頭はなく、首の断面からは黒いモヤが上がっているのみです。作中では「池袋に出没する首なしライダー」として「生きた都市伝説」とも呼ばれています  彼女の外見は「首のない女性」であり、作中でも「アイルランド出身の妖精デュラハン」と説明されています。また使用する武器も大鎌という、死神のイメージを抱かせるものとなっています。鎧をライダースーツに、首なし馬をバイクに変えた、とのことですが、ほぼ完璧な「デュラハン型」と言ってよいはずです。  ちなみに名前の「ストゥルルソン」は、『スノッリのエッダ』など北欧神話の原典の著者として知られている「スノッリ・ストゥルルソン」という、12世紀の人物の名前と同一です。セルティの出身地が北欧に近いアイルランドであることから、名前の元ネタはここに求められると思われます。 ■町京子『亜人ちゃんは語りたい』(作:ぺトス/講談社)
『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?の画像4
TVアニメ『亜人ちゃんは語りたい』公式サイトより
 胴体と頭部が分離しており、胴体が頭部を持って移動する必要がある、頭部と胴体が若干離れても問題はない、という亜人(デミ)の女子学生です。作品内の設定では、亜人は人間から突然変異的に産まれる存在で、ただ単に伝承におけるデュラハンの特徴を持っている人間、となります。  さて、自分の首を手に持った女性、という姿は完全に「デュラハン型」となりますが、その他の乗り物や伝承における役割は、作品の設定から見るに取り入れることは不可能です。よって妖精デュラハンの伝承における姿を忠実に再現したキャラクター、と言えるでしょう。 ■ララ『モンスター娘のいる日常』(作:オカヤド/徳間書店)
『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?の画像5
『モンスター娘のいる日常』(作:オカヤド/徳間書店)、第7巻表紙
 15年にTVアニメが放送され、愉快で攻めた表現が話題となった『モンスター娘のいる日常』に登場する中二病のデュラハンで、自らを死神と自称する少女です。真っ黒な大鎌を手に持ち、甲冑にロングコートを羽織る、という厳しい姿をしていますが、普段はそれらを身に着けようとしません。また頭部と胴体は付け外しが可能であり、胴体と頭部で性格が異なる、という描写が見られます。  死後の世界を意識している、自らを死神と名乗る、死神の象徴である大鎌を持つところは「デュラハン型」ですが、甲冑やロングコートなどの外見は「スリーピー型」です。 ■ユリ・アルファ『オーバーロード』(作:丸山くがね/KADOKAWA)
『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?の画像6
アニメ『オーバーロード』公式サイトより
 現在総集編劇場版が公開中で、TVアニメ第2期シリーズの制作も決まった『オーバーロード』に登場するメイドチーム「プレアデス」の副リーダーです。種族は動死体(ゾンビ)、首なし騎士(デュラハン)と設定されています。作中では常識外れな人物ばかりの主人公側には珍しい、人間に近い感性を持つ存在です。また、首にチョーカーを巻いて胴体と頭部を繋げており、取り外しは自由自在といいます。  首なし騎士と書いてデュラハンと読ませる、という種族名はまさに「スリーピー型」ですが、それとは裏腹に近接格闘を得意とする、メイド服、首の取れている描写があまり見られないなど、首なしの怪物をモチーフとしたキャラクターとしてはひと味違う存在と言えるでしょう。 ■ベルディア『この素晴らしい異世界に祝福を!』(作:暁なつめ/KADOKAWA)
『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?の画像7
TVアニメ『この素晴らしい異世界に祝福を!』第1期公式サイトより
 第1期のボス(?)で、現在放送中の『2』でもちょくちょく姿を見せる、主人公たちと敵対する魔王軍幹部です。外見は頭部の分離した、胴体に鎧を着込みマントを羽織った騎士という出で立ちで、誇り高い騎士の性格を持っています。種族は明確にデュラハン、元々は不当に処刑された騎士、と設定されています。  言うまでもなく、分離した頭部を手に持つ以外はすべて「スリーピー型」の特徴で表されています。最もよく見られる典型的な、スリーピー型と完全に同一視されたデュラハンです。 ■赤蛮奇『東方project』 (上海アリス幻樂団)  古今東西の妖怪や怪異が登場する『東方project』ですが、こちらには“らしい”キャラクター「赤蛮奇」が登場します。こちらは胴体から頭部を取り外し独立させ、空を飛ばす能力を持っています。  この能力はデュラハン型ともスリーピー型とも異なり、分類としては古代中国の伝承を由来とする、寝ている間に頭が胴体から離れ、頭部のみが空を飛ぶ人種「飛頭蛮(ひとうばん)」をモチーフにしたものと思われます。有名な所では『三国志演義』に登場する朱桓(しゅかん)という武将が、この人種に遭遇したというエピソードが残されています。  ちなみに、日本では首が伸びる「ろくろ首」が有名ですが、その一種として、飛頭蛮と同じく頭が分離して空を飛ぶ「ぬけ首」という妖怪が存在しています。 ■デュラハン『真・女神転生デビルチルドレン』シリーズ(アトラス)  00年から03年にかけて、シリーズ6作(派生作品含む)が展開した人気RPG『真・女神転生デビルチルドレン』に登場するいち悪魔となりますが、是非に知って頂きたいため、あえて紹介しています。  同作品のデュラハンは、自分の頭部と首なし馬の人形を手に持つ少女型の悪魔で、説明には「死神の女の子。彼女が現れると、近々その家から死者が出ると言われている」と書かれています  ゲーム『女神転生シリーズ』には、手に首を抱えた女性騎士の姿でもデュラハンが登場していますが、さすが女神転生と言えましょうか、正確な伝承を知った上で作られた完璧な「デュラハン型」です。 ――ここまでに挙げた作品だけでなく、モブキャラとして首なしの怪物が登場する各種作品も併せて見直してみると、やはり「馬に乗った首なしの騎士」というスリーピー・ホロウの怪物に、いくつかのデュラハンの要素、特に分離した頭部を手に持つ、という特徴を足して「デュラハン」と呼んでいる作品のほうが圧倒的に多く、現在において双方はほぼ同一視されている、と見てよいでしょう。  ただし「FGOの新宿のアヴェンジャー」や「デビルチルドレンのデュラハン」のように、首無しの男性騎士を「スリーピー・ホロウ」、死を予告する首なし女性を「デュラハン」と、双方の違いを理解した上で明確に分類している作品も少なからず存在しています。とは言え、首なしの怪物を登場させるにあたって、武器や鎧を身に付けていたほうが見た目が映えるということもあり、難しいところです。  創作作品に「首なしの怪物」をデュラハンととして登場させる場合は「女性とする」、「首なしの馬」、「死に関連する」などのデュラハンの特徴をできるだけ多く取り入れるのがよいでしょう。ダメ押しとしてアンデッドなど、明確な別種族として「男性の首なし騎士」を登場させれば、「こいつわかってやってるな」という感じになるはずです。 ■文・たけしな竜美  オタク系サブカルチャー、心霊、廃墟、都市伝説、オカルト、神話伝承・史実、スマホアプリなど、雑多なジャンルで記事執筆、映像出演、漫画原作をしています。お仕事募集中です! Twitter:https://twitter.com/t23_tksn

羽海野チカの人気コミックの実写化! 神木隆之介主演『3月のライオン』に隠された“危ういテーマ”とは?

羽海野チカの人気コミックの実写化! 神木隆之介主演『3月のライオン』に隠された危ういテーマとは?の画像1
映画『3月のライオン』公式サイトより。
 TVアニメーションが昨日最終回を迎えた、羽海野チカ原作コミックの実写映画化『3月のライオン』2部作の公開がいよいよ始まった。将棋の世界を舞台に、17歳のプロ棋士・桐山零が世代もタイプも異なる様々なライバルたちと闘い、また隣町で暮らす川本家3姉妹と交流することで成長を遂げていく青春ストーリーだ。主人公・桐山零に『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14年)、『バクマン。』(15年)の神木隆之介、さらに染谷将太、高橋一生、伊藤英明、加瀬亮……と人気俳優をキャスティング。自分の居場所を確保するために全力で闘わなくてはならない主人公たちのヒリヒリする葛藤が描かれ、将棋に興味がない人でも大いに共感できるドラマに仕上がっている。  豪華キャストを束ねて本作を撮り上げたのは『るろうに剣心』シリーズを大ヒットさせた大友啓史監督。アニメ&実写版『ハチミツとクローバー』や羽海野がキャラクターデザインで参加した『東のエデン』などの実績のあるアスミック・エースがNHKを退職した直後の大友監督に打診し、『るろうに剣心』シリーズが完結した2014年ごろから本格的に始動。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』で瀬田宗次郎役を好演した神木を主役に起用した形となった。大友監督いわく「『るろうに剣心』を撮り終え、まだ神木隆之介のすべてを撮り切っていないように感じた」ことが起用理由だった。なるほど、剣術では天才的な強さを誇るものの、内面の脆さを抱える瀬田宗次郎は、『3月のライオン』の桐山零とどこか通じるものを感じさせる。  子どもの頃から大人の俳優たちに交じって仕事をしてきた神木自身のプロフィールも、幼い頃から将棋を差し続けてきた桐山零の境遇と重なる。2歳からタレント活動を開始したキャリア充分な神木だが、今回は将棋盤を挟んで、豊川悦司、伊藤英明、佐々木蔵之介、加瀬亮といった演技スタイルの異なる実力派俳優たちと視殺戦を繰り広げることになる。森義隆監督の『聖の青春』(16年)ではギミックを排した、ストイックなまでの長回しで松山ケンイチと東出昌大の対局シーンが描かれただけに、『3月のライオン』はCGを多用した派手な絵づくりになるのだろうと思いきや、こちらもゴツゴツとした男臭い闘いの連続となっている。もともと大友監督はNHK時代に経済界を舞台に男たちの闘いを描いた『ハゲタカ』(07年)でブレイクし、『るろうに剣心』シリーズではキャスト本人に極力アクションをやらせた人。CGに頼らずに、俳優たちの潜在能力を引き出そうとするオーソドックスな演出が今回も功を奏したと言えそうだ。  前編はよく言えば手堅く、辛めに言えば原作コミックのような遊びがないのが難点だが、4月22日(土)公開の後編は原作にないエピソードも盛り込み、映画独自のクライマックスへと怒濤の展開が待っており見応えがある。闘っているのは零だけでなく、家族の温かさを知らずに育った零にとって桃源郷のように思えていた天真爛漫な川本家3姉妹も闘うことを余儀なくされる。次女のひなた(清原果耶)は学校で理不尽なイジメの標的にされ、母親代わりとなって川本家を支えていた長女のあかり(倉科カナ)、さらには末っ子のモモ(新津ちせ)さえも、つらい闘いを強いられることになる。  後編のキーパーソンとなるのが、川本3姉妹の実の父親である川本誠二郎(伊勢谷友介)。この誠二郎はあかりたちの母親を棄てて、愛人と共に家を出ていった超無責任男。駆け落ち先でも再びトラブルを起こしたらしく、猫なで声で川本3姉妹に擦り寄り、あかりたちに都合よくたかろうとしている。反省顔で近寄ってきては、疑うことを知らない善良な人間の生き血をチューチュー吸う恐ろしい寄生人間だ。ルールの決まった将棋の世界では腕の立つ零だが、血の繋がりを楯に3姉妹にまとわりつく誠二郎には大苦戦するはめに。二枚目エリート役を演じることの多い伊勢谷友介のサイコーのクズ人間ぶりは、後編の大きな見どころと言って過言ではない。  肉親と幼い頃に死別している零にとって、血縁を口実に川本家に寄生しようとする誠二郎は到底許すことができない。クズ人間・誠二郎を容赦なく口撃する零だが、実は将棋がこの世界になければ零をはじめとする棋士たちも、みんな似たり寄ったりの存在である。プロ棋士になれたから良かったものの、そうでなければ生活能力はまるでない。原作とは異なり、映画版の零は通学先の高校では担任教師・林田(高橋一生)以外とは誰とも交流できずにいる。自分自身がダメ人間と紙一重であるがゆえに、余計に零は誠二郎を厳しく責め立てる。ひとつの芸事を極めて生きていくことの喜び、そして危うさの両面が『3月のライオン』には隠されている。 (文=長野辰次) 『3月のライオン』 原作/羽海野チカ 脚本/岩下悠子、渡部亮平、大友啓史 監督/大友啓史 出演/神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、佐々木蔵之介、加瀬亮、前田吟、高橋一生、岩松了、斉木しげる、中村倫也、尾上寛之、奥野瑛太、甲本雅裕、新津ちせ、板谷由夏、伊藤英明、豊川悦司  配給/東宝、アスミック・エース 前編3月18日(土)より、後編4月22日(土)より全国ロードショー (c)2017映画「3月のライオン」製作委員会 http://www.3lion-movie.com

今年も“劇場アニメ”の隆盛は続く!? 「今」を見据えた神山健治節が唸る『ひるね姫~知らないワタシの物語~』レビュー

【劇場アニメレビュー】今年も劇場アニメの隆盛は続く!? 「今」を見据えた神山健治節が唸る『ひるね姫~知らないワタシの物語~』の画像1
(C)2017 ひるね姫製作委員会
『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』など、絶好調の域を超えるほどであった2016年国産アニメーション映画の勢いは、2017年も留まることなく、むしろ加速するばかりの様子ではある。また、ちょうど今年は国産アニメーション映画生誕100周年。それを記念するかのような意欲的な新作も続々登場し始めてきた。  神山健治監督の『ひるね姫~知らないワタシの物語~』も、まぎれもなくその1本であり、国産アニメ映画としてもこの春一番の話題作と言って過言ではないだろう。  2020年の東京オリンピックを間近に控えた夏の岡山県倉敷市。小さな自動車修理工場を営む元ヤンの父・モモタローと二人で暮らす高校生の森川ココネは、最近よく同じ夢を見る。それは機械づくりの国ハートランドを舞台にした、魔法を使える姫君エンシェンのファンタジックな冒険譚であった……。  そんなある日、突然モモタローが警察に連行され、同時に何やら怪しい男たちがココネを訪ねてくる。彼らは夢の中の世界で悪漢として登場してくる者たちであり、当然ながら現実世界でもワル。要は東京の大手自動車メーカー志島自動車取締役・渡辺一郎らが、モモタローのタブレットを奪おうと躍起になっているのだ。  やがてココネは渡辺らの追及をかわし、真実を探るべく幼なじみのモリオとともに、東京へ赴くが……。  今回は神山監督自身が創作したオリジナル・ストーリーの映画化だが、これまで彼が手掛けてきた『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』シリーズ(02年~)や『東のエデン』シリーズ(09年~)『009 RE:CYBORG』(12年)など近未来SFポリティカル作品群とは似て非なる味わいに満ち溢れている。  押井守が主宰した押井塾出身というキャリアも手伝ってか、その弟子筋といったイメージが強く、現代社会をリアルに見据えながらハードSFを構築していくクールな旗手といったイメージが強い神山監督ではあるが、その実『精霊の守り人』(07年)のようなヒューマニステックなファンタジーものにこそ、この人の本領が発揮されているのではないかという気もしていただけに、今回はまさにドンピシャリの内容であった。 (その伝では、同じく押井の弟子筋・沖浦啓之が00年に異世界ポリティカル・サスペンス『人狼JIN-ROH』で監督デビューを果たした後、12年にほのぼのオバケ・ファンタジー『ももへの手紙』を発表したこととも、どこか相通じているように思える)。  ……というか、実はこの作品、よくよく見据えるとファンタジーでも何でもない、ごくごく普通の少女が自動車メーカー絡みの陰謀に巻き込まれていく過程を追った青春ジュヴナイル・サスペンスなのだが、そこに彼女が見る夢の中の世界を巧みに交錯させていくことで、およそ映画でしか成し得ない壮大なるファンタジック・ワールドが繰り出されていくのであった。  これこそが本作最大のキモといってもいいだろう。  2020年というほんの少し先の未来を舞台にしているだけあって、その風景は現代の田舎とほとんど変わることはなく、むしろノスタルジックな情緒まで誘うが、一方で夢の中の世界はアニメならではのコテコテ・ファンタジーである。  主人公ココネのどこかのんべんだらりとした風情も実にイマドキで、高畑充希の声も良い意味でつかみどころがなく、真夏の暑さにうだっているかのような思春期特有の倦怠感と、そんな日常を打ち破られてのスリリングな冒険にワクワクしていく躍動感などがいきいきと描出されている。  ヴォイス・キャストということでは、今回は江口洋介(モモタロー)や満島新之介(モリオ)など著名俳優が多く出演しているが、中でも古田新太の悪役(渡辺一郎)ぶりは実に頼もしく、また意外と言っては失礼だが、自動車会社会長・志島一心を演じた名優・高橋英樹が、ベテランの年輪を自然に醸し出しながら、何とも味わい深くも素晴らしい好演!  さらに釘宮理恵や高木渉、清水理沙など、アニメファンなら勝手知ったる声優陣もそれぞれ好演しており、こういった混合編成が今回は功を奏していることも特筆しておいていいだろう。  メカ方面でも、昨今話題のVRやAIなどをモチーフにした機器が現実世界に登場するあたり、さすがは近未来ハードSFに長けた神山作品といった貫録を提示しているが、同時に現実世界ではモモタローが改造したサイドカー、夢の世界では変形してロボットになる“ハーツ”が、どことなく『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の人気キャラ、タチコマを彷彿させるものがあり、そういった些細なところでの可愛らしさもまた神山作品ならではの味わいであったことに改めて気づかされる。  そう、かつて『東のエデン』のキャラクター原案に『3月のライオン』でおなじみ羽海野チカを起用するなど、やはり神山作品の本質は愛らしいキャラクターたちの等身大の世界を描出するところにあるのではないか。また、そう考えると彼のハードSFものが、設定などを少しでもリアルなものとして作品世界に溶け込ませようと腐心しているのも理解できる。 『君の名は。』の新海誠監督もそうだが、神山監督も東日本大震災を機に創作意識が大きく変わったようで、特にこれまでのように世界を救うヒロイズムを過信していいのか、そのことにも慎重にならざるを得なくなったようだ。  別に正義が悪を討つ勧善懲悪の世界は、それはそれで映画という虚構の中に存在して構わないとは個人的に思っているが、「世界を救うことに無頓着な少女」のちょっとした冒険譚もまたアニメーションは魅力的に描けることを、神山監督は「今」という時代を見据えながら見事に証明してくれた。  繰り返す。今年も国産アニメーション映画は大変なことになりそうな好景気色濃厚ではあるが、本作はその先陣を切る快作として、強くお勧めしたい。 (文・増當竜也)

【劇場アニメレビュー】人数が絞れて見せ場が豊富! 安心してサイリウムを触れる『映画プリキュア ドリームスターズ!』

【劇場アニメレビュー】人数が絞れて見せ場が豊富! 安心してサイリウムを触れる『映画プリキュア ドリームスターズ!』の画像1
『映画プリキュア ドリームスターズ』公式サイトより。
 2004年の『ふたりはプリキュア』からテレビ放送を開始したプリキュア・シリーズは、05年『映画ふたりはプリキュア』より劇場用映画シリーズを製作し、3月18日公開の最新作『映画プリキュア ドリームスターズ』で22作目となるのだが、映画プリキュア・シリーズは歴代プリキュアを総登場させるオールスターズもの(主に春公開)と、毎年テレビでそのつどオンエアされているプリキュア・シリーズの劇場版(主に秋公開)と大きく二つに分けることができる。  この中でオールスターズものは09年春の『映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員集合!』(メインのプリキュアは『フレッシュプリキュア!』の面々)に始まるが、さすがに毎年確実に増えていくプリキュア・キャラをそのつど総登場させるのはストーリー的にも設定的にもしんどく、また物理的にも過去にプリキュアを演じた女性声優陣をどれだけ集められるかといった問題もあったりして、秋の単体劇場版に比べると年々苦労がしのばれるようになっていた。  事実ここ数作は、一応歴代プリキュア勢揃いを謳いつつも(16年の『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!』は総勢44人!)、ちゃんと活躍したり、台詞があるキャラがかなり限られていて、結果としてシリーズのファンをモヤモヤさせてしまうことも往々にしてあったように思う。  その意味でも、本作『映画プリキュア ドリームスターズ!』は、春のオールスターズからドリームスターズへのマイナーチェンジとでもいうべきか、今回は現在放送中の『キラキラ☆プリキュアアラモード』および前作『魔法つかいプリキュア!』、前々作『GO!プリンセスプリキュア』の3世代に絞ってキャラを登場させている。  これは冬の劇場版『仮面ライダー×仮面ライダー』シリーズや『スーパー戦隊VS』シリーズが新旧合作スタイルを披露し続けているのと同じ方法論であり、一番無理のないやり方ともいえるものだが、とかく『忠臣蔵』の時代から豪華絢爛なるものを良しとしてきた東映映画の伝統に倣いつつ、落ち着くところに落ち着いたというべきか。  もっとも、上映時間の3分の1くらいはあるのではないか? と、時にストーリーの流れまで妨げかねないほどに長々と繰り広げられる歌舞伎もどきのキャラ大見え変身シーンを銀幕の大画面で堪能するのが好みだったので、そこだけは少し残念ではあるか……(と、いつの時代も見る側はどこか不平不満を漏らしては作り手を困らせてしまうものではある)。  また本作のユニークな試みとしては、このところ東映アニメーションが力を入れているCGアニメーション技術を効果的に採り入れていることだろう。  今回の監督は、15年秋の『映画GO!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て』の中の短編『プリキュアとレフィのワンダーランド』の演出で第1回CGWORLD賞を受賞した宮本浩史。  そして今回は、プリキュアたちの通常世界を2Dセルタッチで、異世界「桜が原」はCGで表現。その異世界の危機を訴えに、こちらの世界へやってきた少女サクラの願いを聞き入れて、プリキュアたちが双方の世界を行き来することで、画調が変わるとともに世界観の空気までも変わり、見る者に臨場感を与えてくれている。  特に「桜が原」はCGならではの映像美を駆使して、春の“和”の心を巧みに表現し得ており、なかなかどうして国産CG技術も大したものではないかと、見ているだけで嬉しくなってくるものがある。  さらには映画プリキュア・シリーズならではの(というか、東映まんがまつり時代からの伝統ともいえる)、観客に向かって応援上映形式も今回は飛躍的に効果を上げている。  もともと観客にミラクルライトを渡して上映中にフリフリしながらプリキュアたちを応援するというパターンは、07年の第4作『映画Yes!プリキュア5 ~鏡の国のミラクル大冒険!~』から始まったものだが、こちらもここ数作は「クライマックスに採り入れときゃいいよね的」なマンネリ感もなきにしもあらずではあったが、さすがに最近のアニメや特撮ものなどの掛け声上映が定着してきたせいもあってか、今回は上映中時折キャラがドラマから抜け出し、観客に応援を促すタイミングが従来よりバランスよく(しかもそのシーンは3DCGで表現!)、これなら子どもたちも楽しくライトをふってくれることであろう。  まあ、正直に申すと、劇中もっともっとライトを振ってもらう行為が多くてもいいくらいに思う。10分に1回絡みがあれば後は何をやってもいいというのが日活ロマンポルノならば(本当はそれ以前のピンク映画からしてそうだったのだが)、10分に1回ライトをふらせてこその東映プリキュア映画といった貫録もあっていいように思える。  ゲストキャラも、シズク役を演じた木村佳乃は幾度かアニメ映画の声優は経験済みだし、何の違和感もなく、エンデングの主題歌も良好。また今回の悪役を南海キャンディーズの山里亮太がやってるが、この人『手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャーTHE MOVIE 忍者・イン・ワンダーランド』(16年)でも敵役を憎々し気に演じていたが、戦隊にプリキュアときたら次は仮面ライダーへの出演も期待したいところ?  70分という上映時間の配分も今回はバランスよく、最近のオールスターもの(これからはドリームスターものと形容したほうがいいのかな?)の中では出色の出来であった。  こういった楽しい作品を、お子さん連れで見に行ける、世のお父さんお母さんがうらやましく思える次第である。 (文・増當竜也)

高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!

高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像1
(C)2017 ひるね姫製作委員会
 3月18日、ついに公開を迎える神山健治監督によるオリジナル劇場アニメ『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』(以下、『ひるね姫』)。 『東のエデン』シリーズや『攻殻機動隊S.A.C』シリーズなど、スタイリッシュなSF&アクションの印象が強い神山監督だが、初の劇場オリジナル作『ひるね姫』の舞台は2020年、東京オリンピック開催直前という近未来というのにも近すぎる超近未来、主人公は普通の女子高生・森川ココネ(演:高畑充希)と意表をつく組み合わせで、意外に思ったファンも多いかもしれない。  ただ、物語はココネが頻繁に同じ夢を見ることを端とし、次第に現実が歪みはじめ、さらに事件にも巻き込まれてしまう。自分が見る夢には何か秘密があるらしいと感じ取ったココネは、事件解決のために東京まで出かけることになるのだが――というもの。夢と現実が交錯し、2つの世界を行ったり来たりするSFであり、ロードムービーでもある。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像2
神山健治監督
 AI、ネットワークといったモチーフも盛り込まれているし、重厚な世界設定、緻密な物語といった神山監督作品らしい一面もうかがえるが、それにしてもなぜ“夢”をテーマとして描こうと思ったのか。制作を終えたばかり、取材続きでちょっとお疲れ気味にも見える神山監督に、『ひるね姫』の見どころ、気になることをいろいろと聞いてみた! ■ “世代の断絶”を描くために選んだ“自動運転” ―― 『ひるね姫』の物語はどのように構築されていかれたのか、教えてください。 神山健治監督(以下、神山) まず普通の女子高生の個人的な家族の話を作っていこうということでスタートしました。ただ、ファンタジーとして飛躍する何かしかけも欲しいということで、僕自身、子どもが小さかったときに、寝る前にはお話を聞かせてあげていたことがあったので、それが現実になってくるお話はどうだろうかと――そこからだんだん話が広がっていったという感じです。 ―― 映画のパンフレットのインタビューでも応えられていましたが、最初から世界を救ったり、難事件に挑むというのは考えていなかったんですね。 神山 そうですね。なるべく今回はそういう話ではない、もっとスケールの小さいものでいいのではないかと。むしろ何も起きないことが現代ではファンタジーなんじゃないかというところからスタートしていった感じです。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像3
ハーツ。現実世界では自動運転も可能なサイドカー、夢の世界ではロボットに変形、意志を持ち空をも飛ぶ
―― 何も起きないということですが、構成要素はすごい山盛りで。気になるキーワードがいっぱいあるんですが、まずは「自動運転」は安倍総理大臣が「東京オリンピックは自動運転を~」と触れたニュースもあったり、だいぶ現実が追いついてきた感じもあります。 神山 社会の一番ミニマムケースが家族になるのではないかと思っていまして、その中で“世代”に関することもテーマの一つとして描いてきたいと思っていまして。その時、「テクノロジー」がわかりやすく世代の差異を浮かび上がらせられるんじゃないかなと考えたんです。  日本は、昭和=20世紀の成功体験が足かせとなって、21世紀になってだいぶ経つのになかなか新しいステージにいけないでいる。そういった日本の現状について、若い人たちには、意識的な垣根はないんだけど、成功体験を持っている上の世代によってもたらされたものが、足かせになっているんじゃないかなっていう思いがありまして。   “世代の格差や断絶”を、テクノロジーをキーワードに描こうしたときに、かつて成功した「自動車産業」を使ってみた。インフラを含めて、大きく自動車そのものも変わってこようとしている時代に、自動車の世界一のシェアをとっている日本の車が、スタンドアローンなまま、ネットとつながらないのはなんで? という疑問もありまして。  そういうところから、「自動運転」というのは、“世代の格差や断絶”を表現しようとした時、一番わかりやすいのではないかと考えたんです。 ―― なるほど。ちなみに「2020年」という時代は、なぜ選ばれたのですか? 神山 東京オリンピックも日本にとっての最大の成功体験でしょう。これは後付けなんですけど、21世紀にもう一度同じ東京オリンピックをやったら若い人たちはどう受け取るのかなと思って、今より少し未来ということになったという感じです。 ―― 2、3年なんてあっという間ですから、ほぼ現代ですよね。 神山 そうですね。そんなに遠い未来ではなくなりましたね。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像4
ココネの父・モモタロー
■もう一つの世界“夢の世界”を分かりやすく伝えるための『桃太郎』 ―― ココネが見る夢の世界が、スチームパンクのようでもあり、おとぎ話のようでもあり、面白かったです。 神山 絵のほうから考えていく際、ファンタジーの世界というとどうしても中世ヨーロッパのようなものになりがちなんですが。今回はココネの父親であるモモタロー(演:江口洋介)が若き日に東京に行って感じたことが、あの夢の世界の根本にあり、それをココネ自身が夢想して出来上がった世界、ということで、あのような世界になっています。 “ファンタジー=昔話”となりがちなんですけど――ココネは男親に一人で育てられていましたから、与えられていたおもちゃなんかも、自動車工場にあった機械だったんじゃないかなとか、そういったバックボーンを想定しながら作り上げられた設定となっています。 ―― パンフレットを拝見したところ、娘さんに見せてあげたい作品という監督の発言もあります。試写を見てもモモタローの活躍が多くて、“お父さん目線”を意識された作品だなと感じましたが、やっぱり監督の思い入れが込められた結果でしょうか? 神山 それはあるでしょう。物語の裏側にはお父さんとお母さんの両親の想いが当然流れていて、それをココネが追体験していくという話ですから、当然そういう部分はあると思います。 ―― 岡山という舞台は、監督がたまたま選ばれたそうですが、『桃太郎』をモチーフにしたのは、岡山が舞台と決めてからですか? 神山 岡山が舞台になってからですね。 ――なぜ『桃太郎』だったんでしょうか? やはり岡山といえば、という感じですか? 神山 それも当然ありますが、なるべく夢の世界の設定を、直感的にわかりやすいようにできないかと考えてのことです。どうしても、夢の世界の設定を語るだけでそれなりに時間がかかってしまう。なるべく直感的にわかってもらおうということで、誰でも知っているおとぎ話の『桃太郎』をモチーフにしてみたんです。岡山を舞台にしているのでそれがちょうどいいんじゃないとか、そういうところからの選択ですね。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像5
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像6
上:柔らかい感じの岡山の自然描写 下:エンシェンのお供、現実世界ではキーアイテムとして活躍するジョイ
―― ちなみにココネのお父さんがモモタローで、その友人に猿モチーフの佐渡さん(演:高木渉)、雉がモチーフの雉田さん(演:前野朋哉)がいますが、犬はどこに…… 神山 犬はここにいます。(ポスターのジョイを指して)分かりにくいんですけど、柴犬なんですよね。熊かなとかいろいろ思う人もいるんですが、一応ジョイが犬なんです(笑)。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像7
神山監督の歴代ヒロインとココネの意外な共通点とは? 
■出来上がって気づいたココネと神山監督作品のヒロインとの共通点とは!? ―― 個人的に『攻殻機動隊S.A.C』シリーズの草薙素子、『精霊の守り人』のバルサなど、強くてかっこいいヒロインが神山監督はお好きに違いないと思っているんですが、彼女たちとココネとの違いや共通点はどんなところですか? 神山 ボクは確かに今まで世界を救うようなヒロインを多く描いてきたので、できれば今回はそうではなく、等身大の女の子がどういうことを考えているのかというところから、出発して物語を作りたいと考えていましたから、そこはまぁ大きく違うかなと思いますね。  ただ、ココネにもちょっと普通の子よりも大胆な行動力があったり、そういうところに、今までぼくが描いてきたヒロインだったりヒーローに近い部分もちょっぴりあるのかもしれません。  なるべく普通の子にしようと思って描いていたけど、出来上がってみて、僕が今まで描いてきたキャラクターと共通している部分も案外あるなと思って、自分でも少し意外だったというか(笑)。 ―― たしかに、決断力というか、「こうといったらこう!」というか…… 神山 いざとなったときの行動力はなかなかのものかと。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像8
手前左が、佐渡モリオ 
―― 他のキャラクターたちで、出来上がったら予想より面白くなったというキャラクターはいますか? 神山 映画だと深く描けるキャラクターって本当に数人しかいないんですけど、モリオ(佐渡モリオ/演:満島真之介)というキャラクターはエスコートする側なんですけど、割と直感で動くココネと、ロジックで考える彼は、対比として面白いキャラクターになったかなと思います。  あとは、喋らないんだけど、モモタローがなかなかね……完成したのを観終えたスタッフから、「かっこいい」という感想は出ていました。 ――ある程度の年齢にいった男性だと、「こういうお父さんになりかたかったな」という夢を託せるキャラクターになっているなと思いました。 神山 なるほど。そうかもしれないですね。 ―― 高畑さん、江口さん、高橋英樹さんや古田新太さんなど大物俳優を起用されていますが、このキャスティングにはどんな理由があったんでしょうか? 神山 やっぱりキャラクター性と演じる方たちのパーソナリティーが、ある程度共通しているものがないと、同じ“演じる”といってもそこに真実味が出てこないというか。基本的には、僕は声だけ聞いてキャスティングするようにしているんですけど。  たとえばココネというキャラクターは、最初はもうちょっとギャルっぽい感じの子かなっていろいろ想像しながら探していたんですが、タイトルが『ひるね姫』に決まって、普段はぼんやりしている女の子が、いざとなるとわりと行動力もあってというのが、高畑さんの声を聞いたときに、僕が想像していた以上に、「あ! こういう子に違いない」とリアルに感じられたんですよね。キャラクターの深みというか、僕が想像していたキャラクターよりも広がるんじゃないかなというところがありました。  あとは、「デイ・ドリーム・ビリーバー」を歌ってほしいというのがありまして。あの曲は主題歌というかむしろ演出の一部だと僕は考えていたんですね。主題歌ではあるけれども、もうこれはダイアローグと同じくらい重要な意味合いがあるんです。他の人に歌ってもらったのでは意味が変わってしまうので、ぜひ高畑さんに歌ってもらいたいなという意味でも彼女をキャスティングしました。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像9
新規も、従来のファンにも期待してほしいと神山監督
―― 連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)などを見て、高畑さんをいつか起用しようとか、そういう野望が以前からあったというわけではないんですね。 神山 朝ドラ主演がまだ発表されてはいなくて、オファーを受けていただいたのは、朝ドラの撮影が始まる前くらいですかね、実は。初めてお会いしたのもその頃です。 ―― 最後に、2016年は劇場アニメの大躍進の年でした。今年も劇場アニメに期待するファンや関係者は多いと思いますが、監督はそういったプレッシャーというか、期待みたいなものを感じたりされますか? 神山 僕自身はあまりないですし、むしろありがたいなというか。劇場でオリジナルアニメーションを観るということのハードルが以前よりは下がっていると思いますから。  昨今、配信サイトなどがどんどん増えている中で、劇場でアニメーションを観る、しかもオリジナル作品を観るっていうことに対しての垣根が下がっているタイミングだと思うので、それはありがたいなと。そういう流れがうまくきたときに、僕も劇場作品をたまたま作れて、公開にこぎつけられたので、大変ありがたいなという風に思っています。  そういう意味で『ひるね姫』はほんわか日常っぽいアニメ風にスタートしておきながら、一見ジャンルの違う冒険だったり、メカアクションだったりがてんこ盛りで、でも最後はチャーミングなラブストーリーになっていますから、幅広いお客さんに観ていただけたらと思っています。結果、今まで僕が作ってきた作品ともつながっているなと感じる部分もありますし、従来のファンのみなさんにも期待していただければと思います。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像10
■『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』 公式サイト http://www.hirunehime.jp 2017年3月18日公開 原作・脚本・監督:神山健治 アニメーション制作:シグナル・エムディ 配給:ワーナー・ブラザース映画 (C)2017 ひるね姫製作委員会

高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!

高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像1
(C)2017 ひるね姫製作委員会
 3月18日、ついに公開を迎える神山健治監督によるオリジナル劇場アニメ『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』(以下、『ひるね姫』)。 『東のエデン』シリーズや『攻殻機動隊S.A.C』シリーズなど、スタイリッシュなSF&アクションの印象が強い神山監督だが、初の劇場オリジナル作『ひるね姫』の舞台は2020年、東京オリンピック開催直前という近未来というのにも近すぎる超近未来、主人公は普通の女子高生・森川ココネ(演:高畑充希)と意表をつく組み合わせで、意外に思ったファンも多いかもしれない。  ただ、物語はココネが頻繁に同じ夢を見ることを端とし、次第に現実が歪みはじめ、さらに事件にも巻き込まれてしまう。自分が見る夢には何か秘密があるらしいと感じ取ったココネは、事件解決のために東京まで出かけることになるのだが――というもの。夢と現実が交錯し、2つの世界を行ったり来たりするSFであり、ロードムービーでもある。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像2
神山健治監督
 AI、ネットワークといったモチーフも盛り込まれているし、重厚な世界設定、緻密な物語といった神山監督作品らしい一面もうかがえるが、それにしてもなぜ“夢”をテーマとして描こうと思ったのか。制作を終えたばかり、取材続きでちょっとお疲れ気味にも見える神山監督に、『ひるね姫』の見どころ、気になることをいろいろと聞いてみた! ■ “世代の断絶”を描くために選んだ“自動運転” ―― 『ひるね姫』の物語はどのように構築されていかれたのか、教えてください。 神山健治監督(以下、神山) まず普通の女子高生の個人的な家族の話を作っていこうということでスタートしました。ただ、ファンタジーとして飛躍する何かしかけも欲しいということで、僕自身、子どもが小さかったときに、寝る前にはお話を聞かせてあげていたことがあったので、それが現実になってくるお話はどうだろうかと――そこからだんだん話が広がっていったという感じです。 ―― 映画のパンフレットのインタビューでも応えられていましたが、最初から世界を救ったり、難事件に挑むというのは考えていなかったんですね。 神山 そうですね。なるべく今回はそういう話ではない、もっとスケールの小さいものでいいのではないかと。むしろ何も起きないことが現代ではファンタジーなんじゃないかというところからスタートしていった感じです。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像3
ハーツ。現実世界では自動運転も可能なサイドカー、夢の世界ではロボットに変形、意志を持ち空をも飛ぶ
―― 何も起きないということですが、構成要素はすごい山盛りで。気になるキーワードがいっぱいあるんですが、まずは「自動運転」は安倍総理大臣が「東京オリンピックは自動運転を~」と触れたニュースもあったり、だいぶ現実が追いついてきた感じもあります。 神山 社会の一番ミニマムケースが家族になるのではないかと思っていまして、その中で“世代”に関することもテーマの一つとして描いてきたいと思っていまして。その時、「テクノロジー」がわかりやすく世代の差異を浮かび上がらせられるんじゃないかなと考えたんです。  日本は、昭和=20世紀の成功体験が足かせとなって、21世紀になってだいぶ経つのになかなか新しいステージにいけないでいる。そういった日本の現状について、若い人たちには、意識的な垣根はないんだけど、成功体験を持っている上の世代によってもたらされたものが、足かせになっているんじゃないかなっていう思いがありまして。   “世代の格差や断絶”を、テクノロジーをキーワードに描こうしたときに、かつて成功した「自動車産業」を使ってみた。インフラを含めて、大きく自動車そのものも変わってこようとしている時代に、自動車の世界一のシェアをとっている日本の車が、スタンドアローンなまま、ネットとつながらないのはなんで? という疑問もありまして。  そういうところから、「自動運転」というのは、“世代の格差や断絶”を表現しようとした時、一番わかりやすいのではないかと考えたんです。 ―― なるほど。ちなみに「2020年」という時代は、なぜ選ばれたのですか? 神山 東京オリンピックも日本にとっての最大の成功体験でしょう。これは後付けなんですけど、21世紀にもう一度同じ東京オリンピックをやったら若い人たちはどう受け取るのかなと思って、今より少し未来ということになったという感じです。 ―― 2、3年なんてあっという間ですから、ほぼ現代ですよね。 神山 そうですね。そんなに遠い未来ではなくなりましたね。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像4
ココネの父・モモタロー
■もう一つの世界“夢の世界”を分かりやすく伝えるための『桃太郎』 ―― ココネが見る夢の世界が、スチームパンクのようでもあり、おとぎ話のようでもあり、面白かったです。 神山 絵のほうから考えていく際、ファンタジーの世界というとどうしても中世ヨーロッパのようなものになりがちなんですが。今回はココネの父親であるモモタロー(演:江口洋介)が若き日に東京に行って感じたことが、あの夢の世界の根本にあり、それをココネ自身が夢想して出来上がった世界、ということで、あのような世界になっています。 “ファンタジー=昔話”となりがちなんですけど――ココネは男親に一人で育てられていましたから、与えられていたおもちゃなんかも、自動車工場にあった機械だったんじゃないかなとか、そういったバックボーンを想定しながら作り上げられた設定となっています。 ―― パンフレットを拝見したところ、娘さんに見せてあげたい作品という監督の発言もあります。試写を見てもモモタローの活躍が多くて、“お父さん目線”を意識された作品だなと感じましたが、やっぱり監督の思い入れが込められた結果でしょうか? 神山 それはあるでしょう。物語の裏側にはお父さんとお母さんの両親の想いが当然流れていて、それをココネが追体験していくという話ですから、当然そういう部分はあると思います。 ―― 岡山という舞台は、監督がたまたま選ばれたそうですが、『桃太郎』をモチーフにしたのは、岡山が舞台と決めてからですか? 神山 岡山が舞台になってからですね。 ――なぜ『桃太郎』だったんでしょうか? やはり岡山といえば、という感じですか? 神山 それも当然ありますが、なるべく夢の世界の設定を、直感的にわかりやすいようにできないかと考えてのことです。どうしても、夢の世界の設定を語るだけでそれなりに時間がかかってしまう。なるべく直感的にわかってもらおうということで、誰でも知っているおとぎ話の『桃太郎』をモチーフにしてみたんです。岡山を舞台にしているのでそれがちょうどいいんじゃないとか、そういうところからの選択ですね。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像5
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像6
上:柔らかい感じの岡山の自然描写 下:エンシェンのお供、現実世界ではキーアイテムとして活躍するジョイ
―― ちなみにココネのお父さんがモモタローで、その友人に猿モチーフの佐渡さん(演:高木渉)、雉がモチーフの雉田さん(演:前野朋哉)がいますが、犬はどこに…… 神山 犬はここにいます。(ポスターのジョイを指して)分かりにくいんですけど、柴犬なんですよね。熊かなとかいろいろ思う人もいるんですが、一応ジョイが犬なんです(笑)。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像7
神山監督の歴代ヒロインとココネの意外な共通点とは? 
■出来上がって気づいたココネと神山監督作品のヒロインとの共通点とは!? ―― 個人的に『攻殻機動隊S.A.C』シリーズの草薙素子、『精霊の守り人』のバルサなど、強くてかっこいいヒロインが神山監督はお好きに違いないと思っているんですが、彼女たちとココネとの違いや共通点はどんなところですか? 神山 ボクは確かに今まで世界を救うようなヒロインを多く描いてきたので、できれば今回はそうではなく、等身大の女の子がどういうことを考えているのかというところから、出発して物語を作りたいと考えていましたから、そこはまぁ大きく違うかなと思いますね。  ただ、ココネにもちょっと普通の子よりも大胆な行動力があったり、そういうところに、今までぼくが描いてきたヒロインだったりヒーローに近い部分もちょっぴりあるのかもしれません。  なるべく普通の子にしようと思って描いていたけど、出来上がってみて、僕が今まで描いてきたキャラクターと共通している部分も案外あるなと思って、自分でも少し意外だったというか(笑)。 ―― たしかに、決断力というか、「こうといったらこう!」というか…… 神山 いざとなったときの行動力はなかなかのものかと。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像8
手前左が、佐渡モリオ 
―― 他のキャラクターたちで、出来上がったら予想より面白くなったというキャラクターはいますか? 神山 映画だと深く描けるキャラクターって本当に数人しかいないんですけど、モリオ(佐渡モリオ/演:満島真之介)というキャラクターはエスコートする側なんですけど、割と直感で動くココネと、ロジックで考える彼は、対比として面白いキャラクターになったかなと思います。  あとは、喋らないんだけど、モモタローがなかなかね……完成したのを観終えたスタッフから、「かっこいい」という感想は出ていました。 ――ある程度の年齢にいった男性だと、「こういうお父さんになりかたかったな」という夢を託せるキャラクターになっているなと思いました。 神山 なるほど。そうかもしれないですね。 ―― 高畑さん、江口さん、高橋英樹さんや古田新太さんなど大物俳優を起用されていますが、このキャスティングにはどんな理由があったんでしょうか? 神山 やっぱりキャラクター性と演じる方たちのパーソナリティーが、ある程度共通しているものがないと、同じ“演じる”といってもそこに真実味が出てこないというか。基本的には、僕は声だけ聞いてキャスティングするようにしているんですけど。  たとえばココネというキャラクターは、最初はもうちょっとギャルっぽい感じの子かなっていろいろ想像しながら探していたんですが、タイトルが『ひるね姫』に決まって、普段はぼんやりしている女の子が、いざとなるとわりと行動力もあってというのが、高畑さんの声を聞いたときに、僕が想像していた以上に、「あ! こういう子に違いない」とリアルに感じられたんですよね。キャラクターの深みというか、僕が想像していたキャラクターよりも広がるんじゃないかなというところがありました。  あとは、「デイ・ドリーム・ビリーバー」を歌ってほしいというのがありまして。あの曲は主題歌というかむしろ演出の一部だと僕は考えていたんですね。主題歌ではあるけれども、もうこれはダイアローグと同じくらい重要な意味合いがあるんです。他の人に歌ってもらったのでは意味が変わってしまうので、ぜひ高畑さんに歌ってもらいたいなという意味でも彼女をキャスティングしました。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像9
新規も、従来のファンにも期待してほしいと神山監督
―― 連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)などを見て、高畑さんをいつか起用しようとか、そういう野望が以前からあったというわけではないんですね。 神山 朝ドラ主演がまだ発表されてはいなくて、オファーを受けていただいたのは、朝ドラの撮影が始まる前くらいですかね、実は。初めてお会いしたのもその頃です。 ―― 最後に、2016年は劇場アニメの大躍進の年でした。今年も劇場アニメに期待するファンや関係者は多いと思いますが、監督はそういったプレッシャーというか、期待みたいなものを感じたりされますか? 神山 僕自身はあまりないですし、むしろありがたいなというか。劇場でオリジナルアニメーションを観るということのハードルが以前よりは下がっていると思いますから。  昨今、配信サイトなどがどんどん増えている中で、劇場でアニメーションを観る、しかもオリジナル作品を観るっていうことに対しての垣根が下がっているタイミングだと思うので、それはありがたいなと。そういう流れがうまくきたときに、僕も劇場作品をたまたま作れて、公開にこぎつけられたので、大変ありがたいなという風に思っています。  そういう意味で『ひるね姫』はほんわか日常っぽいアニメ風にスタートしておきながら、一見ジャンルの違う冒険だったり、メカアクションだったりがてんこ盛りで、でも最後はチャーミングなラブストーリーになっていますから、幅広いお客さんに観ていただけたらと思っています。結果、今まで僕が作ってきた作品ともつながっているなと感じる部分もありますし、従来のファンのみなさんにも期待していただければと思います。
高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、神山健治監督インタビュー!の画像10
■『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』 公式サイト http://www.hirunehime.jp 2017年3月18日公開 原作・脚本・監督:神山健治 アニメーション制作:シグナル・エムディ 配給:ワーナー・ブラザース映画 (C)2017 ひるね姫製作委員会

「絵がダサイ」有吉弘行が『ジャンプ』新連載を痛烈ディス!? しかし「注目して欲しい」という想いも

「絵がダサイ」有吉弘行が『ジャンプ』新連載を痛烈ディス!? しかし「注目して欲しい」という想いもの画像1
『Dr.STONE』週刊少年ジャンプ公式サイトより
 3月12日放送のラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系)で、有吉弘行が「週刊少年ジャンプ」(集英社)の新連載マンガを得意の毒舌で評し、そのコメントにマンガ・ジャンプ好きから注目を集めている。  有吉が触れたたのは2017年14号より連載がスタートした『Dr.STONE』(集英社)。同作は、原作を『アイシールド21』(集英社)の稲垣理一郎、作画を『サンケンロック』(少年画報社)や『ORIGIN』(講談社)のBoichiが担当する新連載ということで、期待を寄せられていた一作。 『Dr.STONE』は、ある日世界に降り注いだ謎の光によってほぼ全ての生物が石化してしまうというストーリーからスタート。強靭な精神力によって、石化している約3,700年の間意識を失わなかった真面目で体力馬鹿な“大樹”と、その友人で科学に詳しい“千空”は、西暦5738年に石化から解放され、文明が滅びた石の世界(ストーンワールド)で冒険を始める――。  壮大なSF冒険譚を期待させてくれる同作には「既にめちゃめちゃ面白い」「第一話で確信した。これは確実にヒットする」「ここ最近の色んな新連載の中でも別格のクオリティだわ」と、SNSなどネット上では好意的な意見が多く上がることに。しかし有吉の見方は違ったようだ。  有吉は多くの気になる点や引っかかるところがあると指摘し、まず「ちょっと絵がダサイのよね」「絵が古いんだよな」と作画を一刀両断。千空に関しては「凄い髪型をしていて非常に絵がダサイ」と具体的な箇所を挙げていた。さらに千空は石化している間ずっと時間を数えて意識を保っていたのだが、それについても「ありえない」といった感じで大笑いしていた。また、壮大すぎる設定については「大丈夫?」と心配をする場面も。  ただ有吉は単に同作をディスっているわけではないらしい。「最近、ジャンプでちょっとハズレが多くて」と、マンガファンとして「ジャンプ」の近況を憂いているという姿勢をアピール。 「『Dr.STONE』注目して欲しいんですよ」と有吉は話し、ダサいといってる絵についても「上手いのは上手い、意図しているのかちょっと古いタッチ」とフォローもしていた。3月12日には自身のTwitter(@ariyoshihiroiki)で、少年ジャンプ編集部アカウント(@jump_henshubu)の『Dr.STONE』宣伝ツイートをリツイートし、「うーWBCすげぇ試合。プロレスもDr.STONEも気になるが、頑張って日本!!」と綴っていた。この有吉のツイートには稲垣理一郎もTwitter(@reach_ina)で「わ、ちょっと嬉しい!」と反応。  有吉も注目の『Dr.STONE』は今後どんな展開を迎えていくのか。非常に楽しみだ。

「コクタイシャリコクタイシャリ」『サザエさん』でタラオが謎の呪文でいじめっ子を撃退! あのレアキャラも久々登場!?

「コクタイシャリコクタイシャリ」『サザエさん』でタラオが謎の呪文でいじめっ子を撃退! あのレアキャラも久々登場!?の画像1
アニメ『サザエさん』公式サイトより。
 3月12日に放送されたTVアニメ『サザエさん』(フジテレビ系)。今週もネット民たちが楽しく実況をしながら視聴していたので、ネットの声とともに内容を紹介したい。  この日最初に放送されたのは作品No.7594の「タラちゃん涙の味」。開幕早々大泣きしているタラオのシーンから始まるや、タラオ嫌いのネット民の一部からは「タラヲうるせええええ」「開幕タラヲかよ」と敵意を剥き出しに。サザエも珍しく厳しく叱り「男の子がいつまでも泣かないの」と注意。だがこのサザエの言葉にもネット民は「男女差別すんな」とツッコミを入れる。  そんな中、卒業式で泣いている女子学生を見たタラオは「女の子なら泣いても怒られないから」と、女の子になりたいと言い始める。女々しいタラオを見てカツオは「男は顔で笑って心で泣くもんなんだ」と小5とは思えない言葉で諭す。これには「さすがカツオさん!」「さすカツ」とネットで恒例のカツオアゲ。  タラオから心で泣く方法を聞かれたカツオだが、なにも用意していなかったため、たまたま目に入った学校の時間割表を見て、泣きたくなったら「『コクタイシャリ』という呪文を唱えればいいんだよ」と国語・体育・社会・理科の頭文字を取った適当な呪文を教える。  そしてある日、リカちゃんと公園でブランコをしていたタラオの元に、いじめっ子のタケオがやってきてブランコを奪い取ろうとタラオを突き飛ばす。するとタラオは涙をこらえるために「コクタイシャリ、コクタイシャリ」と唱え始め、その不気味な様子を見てタケオは逃げていく――最終的には、伊佐坂家の長女・浮江が「泣き虫の子はみんな優しい」と言うと、タラオも「コクタイシャリ」の呪文を唱えるのをやめるというオチに。ジェンダー論に踏み込むのかと一瞬思わせておきながら、いつも通りのクオリティを披露したのだった。  次に放送されたのは作品No.7600の「健康がいちばん」。波平ももう年なので、健康のために適度な運動をしてほしいと思うフネやサザエだが、休みの日はグータラしてなかなか動かない。するとまたもやカツオが登場し「僕に任せて」と波平に運動をさせると言い出す。  カツオは、タラオを波平と遊ぶように仕向け、肩車での飛行機ごっこなどのハードな遊びをさせる。「軍師カツオ」「さすがカッツォさん」「さすカツ」とここでもカツオに賛辞の声が。最終的にカツオの作戦を知った波平は「バッカモーン」と激怒するものの、家族のみんなは波平の体を心配しているだけだと言われると丸く収まるのだった。  最後に放送されたのは作品No.7593の「こんにちはご先祖さま」。お彼岸ということで磯野家の先祖にお供え物をしようという話。波平そっくりな霊体の磯野家の先祖、磯野藻屑 源素太皆(いそのもくず みなもとのすたみな)が久しぶりに登場し「スタミナキタ――」「太皆さんくっそ久々に見た」「磯野藻屑源素太皆久しぶりに見たわw もうそんな時期か」といった声が上がっていた。  3月19日は『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)が1時間スペシャルを放送するため『サザエさん』は休みだが、3月26日には放送2,400回記念スペシャルが放送される。一家が熊本・大分へ行くのだが一体どんな展開となるのか。楽しみに待とう!