ファミコンといじめ。ひとり親への偏見を子供に伝えないで!

 娘ちゃんから「かぁか〜! Wiiとマリオカート欲しい!」とねだられたら「ねー! かぁかもマリカー欲しい!!! でも、かぁかデッドオアアライブ(格ゲー)の方が好きなんだよね~」と、適当に流し続けて早2カ月。シングルマザー女子大生の上原由佳子です。

 今回は……の前に! 皆様にお知らせがあります。なんと、今週から「シングルマザー女子大生・上原由佳子の事件簿」が、隔週から毎週になりました☆ この連載の話をいただいた時もドキドキしましたが、まさか編集部から毎週連載の提案があるとは思っていなかったので、嬉しさのあまりスキップしたい気持ちでいっぱいです。というわけで、皆様これからもよろしくお願いします。

 前々回、「昭和家電と貧困」について書きましたが、上原家はゲーム機も昭和のまま。そう、いまだファミリーコンピューターから更新されていないのです。平成生まれの娘ちゃんが遊んでいるソフトももちろんファミコン。「テトリス」「スーパーマリオ」「星のカービー」「ロックマン」ばかりやっています(笑)。

 読者の皆様が小学生のころは、どんなゲームが流行っていましたか? それこそこの原稿を書いている横で娘ちゃんが遊んでいるファミコンのソフトや、「たまごっち」「ポケモン」などでしょうか? そして流行のゲームとともに思い出すのは友達から、「え? お前、ゲーム持ってないの? ダサッ!!(笑)」と言われた/言った/言われているのを見たといった、ほろ苦い記憶じゃないでしょうか?

 上原が小学生の頃も同級生の間ではそんな「人と違うこと」が許されない空気がありました。でも大人になるにつれて、いろんな価値観を自分なりに受け入れる努力をする人が増えていく……はずです。そうであって欲しいと思いますし、そうありたいと上原は思っています。

 ひとり親世帯の子どもが「お前ん家、お父さん/お母さんいないくせに!!」とか、あるいは祖父母に預けられているために「お父さんもお母さんもいないんだろ!!」と友達からイジられて、傷つくことも珍しくないと思います。今となっては、上原と娘ちゃんの間で笑い話になっていますが、実は娘ちゃんも「人と違うこと」で傷ついていた時期がありました。今回は「人と違うこと」という、ちょっぴりデリケートなテーマに触れてみたいと思います。

◎「親いないだろ!」と言われた娘ちゃん

 上原の娘ちゃんは、学校のお友達が大好きで、先生のお手伝いも率先してやる子です。趣味はパズルとLEGOで、好きなテレビ番組はサスペンス系ドラマ。少しぬけている部分もありますが、保護者面談では「落ち着きがないね★」「いつもキャッキャッしている」という評価を受ける、どこにでもいる明るい6歳児です。しかし、そんな娘ちゃんが保育園に通っていた4歳児の頃、一度だけ「保育園行きたくない」と泣きついてきたことがありました。

 娘ちゃんに、「どうして?」と理由を聞いたところ、「お友達がね、『お前!! お父さんもお母さんもいないくせに!!!!!』って言うの」とのこと。娘ちゃんが保育園に通い始めた頃に、上原はフルタイムのアルバイトを始めていました。朝8時には家を出て18時に退社。それから猛ダッシュで高校に行き、22時半ごろに帰宅する生活でしたから、保育園の送り迎えは祖母にお願いしていました。

 まあ、想定できる範囲の子ども同士のいざこざではあるのですが、まさか保育園児が、しかも4歳児クラスで「親いないだろ」発言があるとは考えもしませんでした。「小学生くらいになったらあるだろうな〜」程度に思っていた上原が甘かった(苦笑)。

 とりあえず、娘ちゃんに「かぁかは仕事も高校も行ってるから、事情を知らない人から見ると親がいないように思えるのかもしれない。でも、ちゃんと娘ちゃんとの時間は大切にしたいと思ってるし、かぁかが出来ることはするつもりだよ。本当にごめんね」と謝り、「ひとり親世帯に対する世間のイメージ」と「人と違うこと」について話してみました。

 恋愛の原稿にも書いたとおり、ひとり親世帯はあまり良いイメージを持たれていないことが多いこと、そして少数派だからイジられるネタになってしまうこと、「人と違うこと」を受け入れられない人も少なからず存在して、受け入れられない人にも理由があって、そういった人達の考えも理解する必要があることを伝えてみました。4歳児に(笑)。

 すると「お友達に、どうしてあんなこと言ったのか聞いてみる!!」と娘ちゃん。上原は娘ちゃんが話し合おうとする姿勢を持ったことに、嬉しくて涙腺が緩みそうになりました。

◎なんとなくかわいそう、なんとなく叩く

 後日、友達に話を聞いた娘ちゃんから報告を受けた上原は、激しい憤りを覚えます。

「お友達のお母さんが言ってたんだって!!」

 話し合いができた達成感と、友達が直接的に「親が送迎しないなんてヘンだ」と思っていないことを素直に受け止め、屈託ない笑顔で話す娘ちゃん。でも上原には娘ちゃんの笑顔がとても切ないものに見えたし、どう返事して良いのかも分かりませんでした。

「そっか〜。ちゃんと話できたなら良かったね!! かぁかは保育園の送り迎えはできないし、学校あるから行事に参加するのも難しいし、お友達のお母さんの“普通”とウチは違うんだろうね」とだけ話しました。

 大人になると多様性を受け入れようとする。そんな考えは甘かったと後悔しています。ゴシップ的なネタとして、自分と違う人達の存在を扱ってしまう大人も少なくないかもしれない。娘ちゃんの友人の保護者がどんな話をしていたのか詳しくはわかりませんが、それでも、娘ちゃんのことを思うと、この保護者が自身の子どもに話した内容は、上原の理解を絶するものです。これが、保育園児同士だったから良かったのかもしれませんが、幼稚園児や小学生になると話はより深刻になります。少しずつ子供同士の仲良しグループが作られるようになる時期ですし、「人と違うこと」が排除の対象になりかねません。

 誰かを吊るし上げて人を傷付けて楽しさを感じても、それは一瞬の快楽でしかなく、自身の快楽のために人を傷付け続けるのは好ましくありません。ましてや、その快楽のために大人が、「自分と違う人」排除することを子ども達のコミュニティにまで持ち込むなんてもってのほかです。

 でも、よくよく考えてみると大人同士でのひとり親に対する偏見って、目を背けたくなるくらい酷いものばかり。普段から「子どもがかわいそうだ」とか言われるし、何か悲しい事件が起これば「ひとり親だからだ」とか言われるし、若い母親なら性的な対象として攻撃されますし……。

 表面的な部分だけを面白おかしく取り上げて、課題としては考えてないんだろうな、と思ってしまいます。上原としては、そういう扱いをする人達の考えも理解したいです。とはいえ、どんなに理解しようとしても、正直……かなり難しいです。

 上原の周りだけかもしれませんが「かわいそうだ」とか、「ひとり親だから」とか、そういう論調の人達ほど、ひとり親が置かれている環境をデータで見たことが無かったり、どうしてそうなるのか考えたことが無かったり、思考停止している気がしています。こちらが理由を尋ねても「なんとなく」とか、「だって、かわいそうじゃん?」とか、感情論での返答が多いため、共感することはできないし、理解するのも難しくなってしまいます。どうしたら理解を得られるのかは、上原の今後の課題にとっておきます(笑)。

 まあ上原としては煮え切らない部分もあるのですが、娘ちゃんいわく「え? かぁか居るし、かぁかも学校行ってるんだから仕方ないでしょ」らしいので、何も言うまい!!!(笑)

 ……とはいえ、未だにファミリーコンピューターで時が止まっている上原家。そして今日もファミコンのスーパーマリオをしている娘ちゃん。きっと、同級生はNintendoDSやWiiで遊んでいるはず。ファミコンという「人と違うこと」がきっかけで、また娘ちゃんがイジられることがないよう、かぁかは願っています☆

■上原由佳子/1988年生まれ。沖縄県在住。シングルマザー女子大生。女子力の欠片もなさを小学1年生の娘ちゃんから指摘される、どうしようもない系アラサー女子。

大きさ・固さだけじゃない! 良きセックスをもたらす“角度”に注目してみよう

 女同士で“ち●こトーク”をする時にピックアップされるのは、たいてい“大きさ”であることが多いのではないでしょうか?

 「やっぱり大きいほうがいい」「いや、大きすぎると痛い」「でも小さすぎるのも困るかも」から始まり、「好きな人なら大きくても小さくても関係ない!」という着地点に至る。そして後日、「彼氏のち●こが小さすぎて感じない」なんて悩みを抱えたりして。こうしたセックスにまつわる不毛なガールズトークが私は好きです。

 ただ、セックスの満足度を左右するのは、大きさ以上に“ち●この角度”ではないかなと思っています。「いや、固さだ!」という声もありますが、個人的には角度重視派です。

 私は挿入時に、まんまんのお腹側、いわゆるGスポットを刺激されるのが好きなので、鋭角に勃起する上向きのち●こがタイプです。ち●こがおへそに付くのでは? と思うような勃ち具合だとなお嬉しい。このち●こだと、正常位の時のGスポットへの刺激が容易なんです。特に、対面座位から女性が仰向けになり、男性にそのままの姿勢で突いてもらうとGスポットに直撃することが多く、場合によってはハメ潮を吹くこともあります。その後のベッドがびしょ濡れになるので、自宅ではなるべくしたくないですが……。

 ただ、みんながみんな上向きち●こであるワケはなく、中にはち●この真ん中から軽く折れるような形で亀頭が下を向いている下向き曲がり竿タイプの男性もいます。下向き曲がり竿さんとセックスした時、正直言って正常位ではあまり感じられません。亀頭が下を向いているのですから、当然Gスポットにはかすりもしないのです。

 大好きな正常位なのに気持ちよくない……と落胆していたのもつかの間、体位をバックに変えるとあら不思議! Gスポットにガンガン当たるではありませんか。正常位時ではGスポットの逆側に当たっていた下向き曲がり竿さんの亀頭ですが、バックであれば亀頭の位置も逆になり、Gスポットにうまくフィットしたということです。一度は諦めかけていた下向き曲がり竿さんとの気持ちいいセックスを、こんな簡単なことで実現できるなんて……!

 相手とのセックスが気持ちよくない原因が、ち●この大きさや固さであった場合、すぐに改善するのは難しいかもしれません。自在にち●この大きさや固さを変えられる人なんていないに等しいですからね(余談ですが、ごくたまにセックス中に「ま●こ締めて!」などと言い放つ男性がおりますが、その都度「だったらお前もち●この大きさ変えてみろや」と思ってしまいます)。しかし問題が角度の場合は、体位を変えることですぐに解消されるかもしれません。また、自分自身で「まんまんのどこが感じるのか」を把握し、ち●この角度を確認して、挿入時に亀頭がどこに当たるのかをイメージできれば、より効率よく快感を得られる可能性も上がります。

 ただ、自分が一番感じるところを知るというのはなかなか難しいんですよね……。なんとなく気持ちいいと思っても、具体的にどこが気持ちよかったのかわからなかったり。まんまんの中は直接見えるワケではないですし、その日の濡れ具合によってもまた違ったり。私もGスポットが一番感じると気づけたのはここ数年のことです。これまで、いろんなセックス特集などで目にする「自分が気持ちいいと感じる場所を知るためにオ●ニーをしよう!」との呼びかけにはピンとこなかったのですが、オ●ニーでもなんでもいいから自分の快感スポットを知ることは、後々のセックスの満足度につながるのだなと理解できました。

 そうしてやっと見つけた性感帯でも、「体質の変化なのか、ある日突然全く感じなくなり、また振り出しに戻る……」なんてこともあり得ます。セックスは永遠の試行錯誤かもしれません。なにはともあれ、「好きな人のち●こなら大きくても小さくても関係ない!」と言いつつ、実はパートナーのセックスに「もうちょっとどーにかならないものか……」と感じている方は、ぜひ“ち●この角度”と“自分の快感スポット”を照らし合わせてみてください!
(Lollipop-Rumiko)

シングルファザーの困難、働き方を見直さなければ変わらない。安藤哲也氏インタビュー

 給与取得者の1人あたりの年間平均給与は414万円(国税庁)に比べて、母子家庭の平均就労年収は約181万円(厚生労働省)と、年収で200万以上の差があることが分かっています。母子家庭が、年収のみならず様々な困難に置かれていることをメディアが取り上げたことで、母子家庭の貧困の現状は広く知られることになりました。

 その一方で、シングルマザーの貧困といっても一様ではなく、それぞれに様相は違っています。つい「かわいそうな弱者」ばかりに注目すると、比較的高所得の母子家庭の困難を見逃してしまう。それは、シングルファザーについても同じことが言えるのではないでしょうか?

 父子家庭の平均就労年収は360万円と母子家庭に比べて200万円近く高額です。年収面では母子家庭よりも恵まれているといえそうですが、何も困っていないわけではない。むしろ「困っていない」と思われがちなために生じる困難や、父子家庭ならではの問題を抱えている可能性があるでしょう。

 そこで今回は、父子家庭に限らず父親への支援を行っているNPO法人ファザーリングジャパンを設立した安藤哲也さんに「シングルファザーの困難」についてお話を伺いました。「男は仕事」と考えられがちなために会社を休めない。娘を持つ父親が突き当たる「生理」や「下着」の問題。世間からの冷たい目など、父子家庭が抱えている問題は様々です。

◎世間の目が、父子家庭を苦しめる

―― 安藤さん自身、仕事に熱中しすぎて家に帰る時間が遅くなり、育児もできず、夫婦関係も怪しくなった会社員時代があったそうですね。

安藤 ええ、当時は仕事が面白くてしかたなかったし、責任も大きくなっていた時期でした。そのために家のことが疎かになってしまい、子供との愛着も失われ、妻とも不穏になっていました。だからね、家に帰っても楽しくないんですよ。「楽しく過ごしたくて結婚して、子供を作ったのに、なんでこんな息苦しいんだろうなあ」と考えていたら、働き方に問題があることに気がついた。それから朝方の働き方に切り替えて、週2回保育園に子供を迎えに行くようにしました。すると育児の楽しさに気がつけたし、家の居心地もよくなったんですよ。

心の余裕ができてから職場を眺めてみたら、多くの子供がいる男性が僕と同じような息苦しさを抱えていました。こりゃあ日本中のお父さんにとっての課題だなと思い、NPO法人ファザーリングジャパンを立ち上げたんです。

―― ファザーリングジャパンは様々な活動をされていますが、今回はその中でもシングルファザーの困難についてうかがいたいと思っています。シングルファザー特有の困りごとはあるのでしょうか?

安藤 2009年に出会った会社員のシングルファザーは、子供の世話をするために早く帰らなくてはいけないので残業が出来ず、残業代がなくなり、さらに会社からの評価も下がって年収が激減。行政に相談したら「児童扶養手当は母子家庭のみが対象です」と一蹴されたそうです。いまは父子家庭も対象になっているけど、当時、児童扶養手当の支給は母子家庭のみだけだったんですよ。

母子家庭の貧困が注目されていますが、父子家庭でも実家が遠方にある、または両親が亡くなっていたり高齢で子供を見てもらえない人はいます。そうなると自分でやらなければならず残業が不可能、出張もできないために会社での評価が下がるんです。働く親は困ってることは一緒。だから性別でわけるのはおかしいと思い、父子家庭支援の活動を始めたのです。

―― 「男は外で働き、女は家にいる」という性別役割分業にばかり注目しすぎると、その構造に当てはまらない人が困っているということを見過ごしてしまうリスクがあるということですね。母子家庭のみを対象としていた児童扶養手当が父子家庭も対象となったということは制度的には改善されつつあるということでしょうか?

安藤 2010年に父子家庭が児童扶養手当の対象になってから変わってきましたね。平成26年度から遺族基礎年金の対象に父子家庭も入るようになりました。しかし26年度以前の父子家庭も対象が入っていないから、改善するように働きかけているところです。職業訓練も「母子家庭等」が対象で、「等」の中に「父子家庭」が入っていたものが、「ひとり親家庭」という表記に変わってる。これは大きいです。母子家庭と父子家庭が同等の扱いになったわけですからね。「等」じゃよくわからない。「父子家庭」が隠されていたんですよ。

でも法律が改正され制度面ではこれ以上悪くなることはないと思います。課題は、ひとり親家庭の親でも短時間で成果を出し認めてもらえるような「働き方の見直し」にあると考えます。

―― 育児の面で父子家庭だからこそ困ることには何があるのでしょうか?

安藤 父子家庭に限りませんが、育児って3歳くらいまでがまずしんどいんですよ。よく病気するから仕事を休まないといけないし、家で見ている時間もとにかく手がかかる。男性の育休もまだまだ広まっていないし、かといって仕事を辞めるわけにはいかないから、時間も足りないし、子育てと仕事を両立すると負担が大きいんですよね。小学校の高学年になると、子供がひとりで時間を過ごせるようにもなるから、だんだん楽になるんだけど。

それから娘を持つ父子家庭の場合は、思春期になると生理とか、下着の問題に直面すると聞きます。お父さんが知識を持っていないこともあるし、娘もそういう話を父親とすることを嫌がるケースも多い。

―― どうやって問題を解消するんでしょう? 学校に相談するとか?

安藤 地域のお母さん方と繋がっておくと、ママ友として面倒をみてくれるケースがあります。だからシングルファザーには、なるべくPTAとか地域の集会には出て、家庭の事情をある程度話して理解してもらった方が良いよって言っています。

誰かと繋がることが大事です。男性って、自分でなんとかしようと抱え込んじゃうんですよ。2013年に江東区で、4人の子供をもつシングルファザーが子供の一人を虐待死させてしまった事件がありました。あのお父さんも子育てに熱心だったという話だけど、辛い局面もあったと思います。それを我慢して抑圧を抱え込んでいたから爆発してしまった。毎日、ご飯作って、洗濯して、掃除して、子供の学校の準備をして、宿題もみて、仕事いって……これをずっと一人で繰り返している。孤独だし、日々の不満のはけ口がない。もう限界だったんだと思います。

―― 孤立していることがストレスの原因になっているわけですね。

安藤 そう。家事や育児をしながら仕事をするのはもちろん誰でも大変なんだけど、彼らは家事だけで疲れているわけじゃないんですよね。ご飯だって掃除だって、やっているうちに上手くなります。彼らにとって最も大きなストレスの要因は世間の目や職場の目です。男性が育休とるとまだ珍しがられる社会ですからね。冷ややかな目で見られるからどうしても肩肘張って頑張っちゃう。

悩みを抱えていない父子家庭なんてありません。NPO法人「全国父子家庭支援連絡会」には、子供を寝付かせたシングルファザーから夜中に悩み相談の電話やメールがくるらしいです。でも実効的な支援としてはもっと身近な地域の人たちが手を差し伸べることが大事かと思います。地域の子供を守り、育むためにも。

◎つまらない仕事では、会社に戻らない

―― 父子家庭になった理由は、離婚が74.3%、死別が16.8%とあります。安藤さんの実感はデータと一致しますか?

安藤 ほぼ一緒ですね。最近よく聞くのは、夫が家のことを顧みずに仕事ばかりして、不満を抱えた妻が家を出てしまうケース。「もう無理です。子供たちのことはよろしくお願いします」って置手紙を残して。あとはママが産後うつになって実家に戻って子供は夫がみて、そのまま離婚してしまったり。実情は多様化してます。

子供が生まれたお父さんに対して、僕はセミナーでこう言います。「想像してみて。明日、妻がいなくなったら子供抱えながら仕事できますか?妻がずっと家に居てくれると思ったら間違いだよ。」って。

―― そこでハッとして行動を変えられる人はあまりいない気がします。

安藤 気付くのは2割くらいかな。まあなってみなきゃわからないんだよね。

―― 変わりたいけど、仕事が忙しくてどうにもできない人も少なくないのでは?

安藤 そうでしょうね。ただ働き方にも無駄があると思います。仕事を朝方に変えるとか、長文のメールを打たないで3行くらいにして、さっさと上がれるようにすれば、時間を作ることはできるよね。待っていても時間なんて出来ないんだから、自分で作らないと。

それに子供が寝付いてから帰宅したってできることはあるんです。ストレスの溜まった妻の話を聞いてあげたりさ。育児家事はあまりやってくれないけど、話をちゃんと聞いてくれる夫にはお母さんの不満は溜まりにくいんです。心の余裕ができれば、母親だって翌朝も子供と笑顔で向き合える。これは子供にとってもいいこと。家事育児で大変な妻を受け止め認めてあげることは実は立派な間接育児なんですよ。

でも日本の男性はそういうことを教わらないままに父親になっているし、子供ができたら家長・大黒柱として仕事をがんばっちゃう。だから僕はそういうお父さんのことは責めません。悪いのは「お父さんの中に刷り込まれている古い意識のOSと、職場の働き方OSが古いことだよ」って言います。

―― 安藤さんは働き方を変える必要性を主張されています。いま政府は女性を労働力として活用しようとしていますが、けっきょく「男性なみに長時間働ける女性」を生み出そうとしているようにしか見えません。働き方そのものが変わるわけではなく、労働者の対象が男性だけでなく(男性なみに働ける)女性にまで広がったにすぎないように思います。

安藤 政府が批判されているのは、女性が男性なみに長時間働かなくちゃいけないとキャリアを積めない方向性で議論しているからです。でもそれは間違い。女性に活躍してもらいたいんだったら、これまでの男性の働き方、長時間労働や休暇が取りづらい状況をなんとか変えないと。欧米の諸国のように夕方には仕事を終えて家族と夕食が食べれるような社会にしたいですね。これから日本は少子化で労働者の数も減るんだから、時間制約のある社員でも働きやすい環境と働き方の改革をしないといけませんね。

―― messyは女性の読者が多いのですが、女性についてはいかがでしょうか? 女性の専業主婦志向が増えているという話もあります。

安藤 女子大で授業してるけど、やっぱり専業主婦志向の学生がまだ多数いるんですよ。自分のお母さん世代に専業主婦がまだ多いから、そこがロールモデルになっているのでしょう。その時代のOSが再生産で刷り込まれている感じ。「男性に養ってもらおう」「物事は男性が決めるものだ」ってどこかで思い込んでいる若い女性はまだ多い気がします。

女性がやりがいのある仕事に就けないっていうのも問題です。就職したのに単純な誰でも出来るような仕事ばかりさせられたら、出産したら「子供育てるほうが私にとっては重要な仕事だ」って思ってしまうでしょう。

逆に独身時代に面白い仕事をして男性と同じように評価されてきた女性は、子供を産んでも育児が落ち着いたら会社に戻っている。だから企業における女性への支援って出産後だけじゃなくて、その前にどれだけ面白い仕事がさせていたかが重要な点だと思います。そういう女性は育児する男性をパートナーに選ぶでしょうしね。

―― 男性もそうですが、言われただけではなかなか気がつけないのでは。

安藤 誰かに言われてもなかなか変わらないのは男性も女性も一緒です。アドバイスとしては、自分でキャリアデザインして、どうすれば幸せになれるのかを考えてみることです。昔みたいに結婚すれば経済的に安定するなんてことはありえません。もし都内のマンションに暮らして子供を育てたかったら年収600万くらいはいるでしょう? でも30歳で年収600万円以上の男性なんてめったにいませんよ。女子大でそういう現実的な話をすると「困ります」なんて言われるけど、「いやいや、だったら君も働けばいいんだよ。二人あわせて700万くらいの収入があれば、そこそこな生活ができるよ」と教えています。子育てに養育費や教育費でどれだけのコストがかかるのかを考えたら、おのず答えは出ると思うんですが。将来、子供が欲しいと思っている人は、どうして結婚するのか、どうして子供が欲しいのか、そして子供が幸せになるにはどうすればいいのかを一度パートナーになる人とじくり話し合って考えて欲しいなと思います。
(構成/カネコアキラ)

安藤哲也(あんどう・てつや)
1962年生まれ。二男一女の父親。出版社、書店、IT企業など9回の転職を経て、2006年にファザーリング・ジャパンを設立。「育児も、仕事も、人生も、笑って楽しめる父親を増やしたい」と、年間200回の講演や企業セミナー、父親による絵本の読み聞かせチーム「パパ’s絵本プロジェクト」などで全国を飛び回る。子どもが通う小学校でPTA会長、学童クラブや保育園の父母会長も務め、“父親であることを楽しもう”をモットーに地域でも活動中。 2012年には社会的養護の拡充と児童虐待・DVの根絶を目的とするNPO法人タイガーマスク基金を立ち上げ、代表理事に。現在、寄付集めや全国で勉強会の開催を手掛ける。著書に『パパ1年生~生まれてきてくれてありがとう』(かんき出版)、『できるリーダーはなぜメールが短いのか』(青春出版社)等多数。

猥褻な女の乳首と、不快な男の乳首

 8月中旬に作成されたこちらのtogetter。この夏に開催されたコミックマーケット88での出来事をまとめられたものです。

【男の乳首】“女装少年”のポスターも「乳首を隠した方が良い」と警察から指導が入ったらしい【コミケ88】

 同人誌を販売するブースに貼られた、女装した少年(いわゆる『男の娘』というヤツです)のポスターに対して警察の指導が入り、これまで隠さなくても良かった少年の乳首を今後は隠さないとNGになったらしい……という報告ツイートを発端とした議論が並んでいます。

 女装少年の乳首は猥褻物か否か? 非常に興味深い話です。警察の指導が事実だとするならば、この指導はつまるところ「『男の娘』の乳首は猥褻である」と公権力と判定したという証跡になります。これまでは「男の娘は、男なんだからセーフ」としていたものが、「やっぱり猥褻だし、取り締まらなきゃ」と仕切り直されたということでしょう。漫画『スラムダンク』の名台詞を無意味に引用すれば「魚住は今ファウルの境界線を引いたんだ」です。

◎そもそも女の身体は猥褻なのか?

 そこでの「猥褻かどうか」の判定が、女性に見えるかどうかの如何であれば、繰り返し【messy】上で議論されている「マンコは卑猥な存在か」という問題と重なるように思われます。男の乳首は猥褻じゃないが、男の娘の乳首は実質的に女性に見えるから指導せざるをえない、というのであれば、女性の身体は猥褻だ、ということの再定義になってしまう。

 もうひとつ興味深いと思うのは、このファウルの境界線の引き直しに戸惑いを覚える人たちの声です。いや、実際、私も「どういうことなんだ……?」と戸惑ったひとりではあるんですが、ここで戸惑ってしまうことはイコール「男性の乳首はOKだが、女性の乳首はNG」という前提で生きていることを示している。警察と違うのは、戸惑いを覚えた私たちが「男の娘は、男だからOKだ」と思っているのに対して、警察は「いや、男の娘は実質的に女だからNGだ」と見なしている部分ぐらい。結局これは、男の乳首そのものの猥褻性うんぬんではなくて、「男の娘」への認識の違いですね。女性の乳首が猥褻であることは自明の大前提としたうえで、話がなされている。

◎男の乳首はなぜ猥褻でないのか

 ともあれ、男の乳首はどうして出してもいいんですかね。結果にコミットするプライベート・ジムのCMを見ても、元プロボクサーや、日本を代表する人気アイドルのメンバーらが「男として」乳首全開で出ていますし、松岡修造が絶叫する世界水泳の中継でも男性選手の乳首は隠されていない。

 逆に女性の乳首は、あらゆるところで隠されまくっている。そのように隠されまくっているからこそ、乳首が出たときに騒がれる。大胆な濡れ場、ヘアヌードが披露されると写真週刊誌とその読者たちは、驚くほど隠された乳首に貪欲になるでしょう。水着を着た女性の、乳輪や乳首がハプニングで「見えた/見えない」ことについて、ああでもないこうでもないと議論(?)が交わされるくらいには、女性の乳首が「見える」ことは、男性にとって一大事です。ペニスやヴァギナ以上に、男女の身体で扱いの格差がある部位、それが乳首なのではないでしょうか。

◎不愉快な男の乳首、そしてその不安

 男の乳首は出しても怒られない。でも、本当にそうなのか。

 先日、飲み会で同席した女性から「Facebookやってたら、40代の中年の男が突然『ジムに通ってるんだ』と、上半身ハダカの写真をあげてて。そういうの見ると、ホントに嫌な気分になるんだよね~。オッサンの乳首なんかめちゃくちゃゲンナリするじゃないですか~」という言葉を聞いて、私、ドキリとしてしまいました。「え!? 不愉快になる乳首とかあるの!? じゃあもしかして、男の乳首も『出すなや、隠せ』って話になる!?」と。

 その女性曰く、毛が生えていたり、異様にピンクだったり、太っていてヴォリュームがある男性の乳首を見てしまうと「うわぁ……」と不快に思うそうです。しかし結果にコミットするジムのCMのコミット後の姿みたいなのは、まあ、なにも思わない。どうやら、彼女にとってダメな乳首とアリな乳首があるらしい。

 男として30年近く生きてきて、女性の乳首がどうのこうのってのは(色とか大きさとか)、まあ、考えたことがないわけではないですけど、男性の乳首もどうこう批評される対象であるという意識はまるでなかった。男が「見られる性」であることに無頓着で、一方的に女を「見る」習慣だけを身に着けていることは、フェミニズムでもよく指摘されることですが、男が女の乳首を「アリ/ナシ」判定するように、女も男の乳首を「アリ/ナシ」判定していておかしくないんですよ。「俺の乳首は、アリなのかナシなのか!」。

 しかも女性の場合、ヌードグラビアや映画の濡れ場やAV出演しない限り、不特定多数の人間に乳首を観察されることはなく、性交渉の相手くらいですよね。海やプールという場所でもバストは水着に覆われている。一方、男性の乳首は、無防備に露出している……。なんだかいっそ、「男も乳首を出しちゃダメ!」な世の中に生まれたかったような気がしてきました……!!
(カエターノ・武野・コインブラ)

ある日突然、チクチクに…。男性のアンダーヘアに関する考察と個人的願望

 部屋が暗かったので、最初は気づかなかったんです。肌を合わせたとき「チクチクするなぁ」と感じてはいましたが、気に留めませんでした。ですが、インターバルを経ての第2ラウンド。冗談めかして、彼のボクサーブリーフをがっと脱がせたところ……なにこれ! アンダーヘアが中途半端に刈られていてるんですけど!? いつもは黒々しているところが肌色で、そこからポツポツと5mmほどの毛が顔を出しているのを前に、私は我が目を疑うことしかできませんでした。

 どうしたの? と訊くと、自分でバリカンで刈ったといいます。この事実をどう受け入れればいいのか……。真っ先に頭に浮かんだのは、浮気でした。相手の女性の趣味に合わせて自ら陰毛をカットしたのではないかと。でも、「ねぇ、浮気?」と訊ねたところ、言下に否定されました。いったんは胸をなでおろしたものの、釈然としません。

 次に思いついたのは、ケジラミです。ケジラミは薬を処方されても、結局はヤツらの住処となり栄養供給源となる毛そのものをなくすのがいちばん効果的だと聞きます。

 ちなみに、私が大学時代におつき合いしていた男性は水泳部に所属していましたが、そこでは競泳用水着の貸し借りが日常茶飯事だったそうです。ある日、チームメイトから借りた水着で、ケジラミが伝染った! と聞かされました。そして、私が彼のヘアをすべて剃りました。「伝染してしまったかもしれないから」と、私も全部剃ってもらいました。これが私の人生初のパイパン状態です。まあ、ほんとうに水着の貸し借りによってもらったケジラミかどうかはわかりませんよね。ですが、当時の私はまだ幼かったというか単純だったというか、とにかくみじんも疑わなかったのです。

◎浮気ではないなら…?

 そんなわけで私のなかでは、陰毛を剃る→ケジラミという連想がすぐに成り立ちます。しかしそれにしたって、背景には浮気があるのではないか……? 私がケジラミを持っていないということは、一体、彼のケジラミはどこから……? ストレートに疑問をぶつけたところ、「よくそんなこと思いつくなあ」と笑われました。それでも私が食い下がり、しつこく浮気かケジラミかの二択で問い詰めたところ、しまいには「馬鹿!」と怒られました。

 彼の説明によると、単に「暑さのせいで蒸れがあまりにひどかったので、発作的にバリカンで刈った」ということでした。これを信じるかどうかは……うーん、私もいろいろ考えたのですが、信じる要素のほうが大きいと判断しました。

 彼のデリケートゾーンをくまなくチェックしたのですが、毛が刈られているのは、女性でいうところの<Vライン>だけです。睾丸に生えるひよひよとした毛はそのまま、会陰から肛門にかけて、つまり<Iライン>から<Oライン>にかけてもワイルドなままでした。プレイとして刈るのであれば、全面的に処理するはず。しかもバリカンではなく、シェーバーを使いそうなものです。赤ちゃんのようにツルツルにしたほうが羞耻心を刺激されますもんね。チクチク生えているのは、別の意味での恥ずかしさにつながるでしょうが、美しくはありません。男性器が丸見えなのは美しいかどうかはさておくとしても、はなはだ中途半端で潔くありません。

 そして、Vラインだけの剃毛ではケジラミ対策にもなりません。彼のことばを真に受けすぎるお人好しだといわれるかもしれませんが、アンダーヘアの状況から得られる情報を総合したところ、「暑いから剃った」を私は信じることにしました。で、ここからは私が彼に提案するターンです。

「全部剃っちゃえばいいじゃん」

と。これは私が以前から考えていることなのですが、男女の別なくアンダーヘアっていらなくないですか?

 私自身からは以前からたびたびブラジリアンワックスで脱毛していましたが、もう本格的になくしてしまおうと、医療レーザーに切り替えることにしました。もう陰毛、いらない。ブラジリアンワックスをゆるやかながら続けてきたのでだいぶ毛量が少なく、毛も細くなってきたので、痛みも少しはましになっているだろうと予想したうえでの決意です。以前経験した医療レーザーは、痛すぎてヘンな汗をかきました。何かの拷問かと思うほどつらかったです。

 ただ、それでも無毛を目指すのは、なんといっても快適だからです。下着のなかでも蒸れないし、さっとぬぐえば汚れが残らないので衛生的。特に生理のときはその違いを実感します。セックスのときも毛がないと直接肌にふれられるので、気持ちいいですしね。

◎男女のアンダーヘア観

 この快適さ、男性にも通じますよね。男性のほうが毛量は多いし下着で覆われる面積は広いし、デリケートゾーンのコンディションはなかなかに悪いです。入り組んだ形状の女性器と比べて、男性器はまるまる洗えるため、シャワーを浴びた直後の衛生状態はいいにしても、そもそもの皮脂量などは女性よりずっと多い。そんなこんなで、においの温床となったり、いろんな不快の原因となる毛はやっぱりなくていいと思うのです。そしてOラインにおいてはウォッシュレットを使えない状況下だと、ほんと毛に汚れが残りやすいので最も毛をなくしてほしいゾーンです……ビロウなお話でスミマセン。

 私は洋モノのポルノ作品を観たことは数回だけですが、その少ない鑑賞体験のなかで、無毛の男優さんを何人か見ました。ボカシがかかっていたし、白人だと陰毛の色も薄くて肌と一体化して見えにくい……ということも考えられますが、あれはおそらく無毛です。私はそれを見て、「ああ、これは気持ちいいだろうな」と思ったのです。毛と毛をこすり合わせるより、肌と肌をふれ合わせるほうが絶対に心地いいじゃないですか。

 以前、ここmessyのコメント欄でアンダーヘアについての議論が起きていました。たいへん興味深く拝見していたのですが、アンダーヘアの捉え方には、男女差も個人差も大きいのですね。にしても、「女性がアンダーヘアを処理するのは、気合が入りすぎていて引く」とか「男の毛は、女のクリトリスを刺激するからそのままがいい」とか、この手のコメントにはドン引きです。「私の身体は陰毛1本に至るまで私のもの、どうしようと私の自由」です。まして、俺の毛で女を気持ちよくできるなんて、たかが毛にそこまでの性ファンタジーを託せる男性って、ほんとスゴいですよね~。

 よって、私も「全部剃っちゃえば?」というリクエストは伝えつつも、最後の1本に至るまで彼自身の毛なので、「私のために剃って!」という言い方はしません。彼自身が、無毛にすることのメリットを感じてくれるよう、私からプレゼンするのみです。シャレでやってみよう、ぐらいのノリに持っていければ上々! できれば剃るんじゃなくて、ワックス脱毛してほしいんですけどね、そのほうが肌触りがいいから。無毛男子、流行らせたいです。まあ、たぶん無理ですけど。

(桃子)

“理想の男らしさ”が重い。現代を生きる男性の抱える「生きづらさ」とは?

 男性のジェンダー意識の低さがたびたび炎上騒ぎを起こしている昨今。その原因の一端は「男の生きづらさ」にあった!? 今回は、男性学の専門家である武蔵大学・田中俊之先生に、桃山商事の清田代表がお話をうかがいました。

◎「男らしさ」と「カッコ良さ」が一致しなくなった現代

清田代表(以下、清田) 桃山商事は「失恋ホスト」といって、恋愛に苦しむ女性たちからひたすら愚痴やお悩みを聞かせてもらうという怪しげな活動をしているのですが、そういうことを続ける内に、「恋愛で起こる諸問題はほとんど男に原因があるのでは?」という極端な考えになっていきました。

田中俊之(以下、田中) messyでも男叩きの連載をしてますよね(笑)。

清田 はい、その名も「クソ男撲滅委員会」という……。そんな中、田中先生の『男がつらいよ─絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)を読んで、ハッとさせられたんです。男には男特有の「生きづらさ」があって、それは社会構造が生み出したものでもある。しかし、男性自身も、女性たちも、そのことをあまり理解していない。だからいったん落ち着いて、男性特有の「男性問題」について基礎から学びましょう──。そう説いた本書は、男女ともに必読の書だなと感じました。

田中 ありがとうございます。ジェーン・スーさんも「男がつらくなくなれば、女も少しは楽になる! だって男のプライドの皺寄せは、女子供にもくるんだもの。」という帯文を寄せてくれたんですが、男性問題に対する理解を深めることは、女性にもメリットがあると考えています。

清田 そこで今回はまず、実は男自身もよくわかっていない「男らしさ」というものについてお聞きしたいのですが、下記にそのイメージを列挙してみました。これに関してはいかがですか?

強い
女性を守る
勇気がある
決断力がある
頼りになる
経済力
武骨
そっけない
寡黙
言い訳しない
……etc

田中 確かに世間にはこういったイメージが流布していると思いますが、ここには新旧の男らしさが混在しているように思います。まず男らしさの定義ですが、社会学的には「その社会で男性が肯定的に評価される特性のこと」となるんですね。例えば昭和の時代であれば、お酒に強く、車が好きな男性というのも、肯定的に評価されたかもしれません。でも、今だったらどうでしょう?

清田 お酒に強いと「男らしい」ように見えるかもしれないけれど、飲み会の席で女性にお酌を強要するとか飲めない人にアルハラするとか、負のイメージも同時にあります。車に関しては、「若者のクルマ離れ」なんて言葉もありますし。「怪獣が好き」という項目も、“男の子っぽい”けれど、男らしさではないかも。

田中 寡黙とか素っ気ないというのも、今だと「コミュ障」って思われるかもしれないし、細かいことを気にしないというのも、「そんな人と一緒に仕事したくない」って受け止められてしまうかもしれない。

清田 1970年代には「男は黙ってサッポロビール」なんてCMも流行りましたが、それが今だとコミュ障に映ってしまうかもしれないわけですね(笑)。

田中 私が大学で行った「男性のファッション」に関するアンケート調査で、90年代に流行ったストリート系ファッションは「男らしいけどカッコ良くない」というイメージを持たれていることがわかりました。これはヤンキー文化などにも通じることだと思います。このように、男らしさは時代によってイメージが変わるし、さらに現代では、その概念自体、あまりに過剰だと鬱陶しがられるようにすらなっているわけです。

◎思った以上に強固な「男はかくあるべし」の固定観念

清田 だとしたら、今の時代に肯定的な評価を受ける男らしさというのは、一体どんなイメージになるのでしょうか。

田中 これがわりと厄介で、男性の生きづらさの一因にもなっています。

清田 それはどういうことですか?

田中 今って“マルチな能力”が求められる時代だと思うんですよ。源流はSMAPにあると思うのですが、「カッコ良くて、歌えて、踊れて、料理ができて、やさしくて、しかも、おもしろい」という魅力を持った彼らのブレークによって、男らしさのイメージは更新されました。

清田 確かに今の芸能界で売れている男性って、みんなマルチな能力を持っていますね。

田中 「決断力がある」「言い訳しない」「堂々としている」といった普遍的な要素も持ちつつ、そこにコミュニケーション能力や家事能力などがプラスされた、というイメージでしょうか。友だち同士で集まったらおもしろさを発揮できるし、彼女と二人きりでいるときは何かキリっとしてるし、いざとなったら頼りになるし、みたいな。

清田 なかなかハードルが高いですね……。

田中 そうなんです。そういう“理想の男らしさ”と、現実の男性とのギャップが、実はかつてないほど広がっているのが今の時代だと思うんですよ。特に私(※先生は今年40歳)くらいの「団塊ジュニア世代」は、昭和的男らしさと平成的男らしさの狭間で板挟みになっている。そういった男性たちに「40男(よんじゅうおとこ)」と名づけ、「現実を見つめて地に足の着いた生き方を見つけていこう」と呼びかけたのが新刊『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)です。

清田 「理想は理想、自分は自分」って割り切れればまだ楽かもしれませんが、社会から強制されるジェンダーロールを内面化してしまったり、「そういう男じゃないとモテない!」「ただしイケメンに限る!」等と思い込んでしまったりで、男性も自縄自縛に陥っているのかもしれませんね。かく言う自分の中にも、「いろんなことを高いレベルでこなしつつ、誰にも負けないスペシャルな何かがひとつ欲しい!」みたいな、非常にお見積もりの高い願望が正直あります。でも、現実は理想とほど遠く……そのギャップに苦しむ日々です。

田中 「男はかくあるべし」という固定観念は、思った以上に強固です。例えば草食系男子に対する批判は、「男は性に積極的であるべき」という固定観念の裏返しでしょう。挙げ句の果てには少子化の責任まで草食系男子が一部負わされてしまうんですから、たまったもんじゃありません。また、『男がつらいよ』にも書きましたが、男には「平日昼間問題」という困難もあります。日本の成人男性って、平日の昼間にブラブラしているだけで怪しまれてしまうんです。これも「普通の男は会社で働いているものだ」という固定観念によるものでしょう。

清田 子供好きの田中先生が、街で見かけた幼稚園児たちに微笑みかけたら、保護者たちから警戒されてしまったというエピソードも著書にありましたね(笑)。

田中 おそらく、「怪しい男がニヤついてる」と思われたのでしょう。手を引く親御さんが、心なしか足早になりました。とはいえ、私の中にも男性性に関する固定観念はやっぱりあるんです。大学の教え子に100キロくらいある柔道部の男子がいるんですが、一緒に飯を食いに行ったとき、彼に「今日はいっぱい食べていいよ」と勧めてしまったんですよ。でも実は彼、わりと少食タイプだった。

清田 大盛りハラスメント(笑)。「体格がいい男=たくさん食べるだろう」って、勝手なイメージを抱いちゃうことはありますね。

田中 そうそう。それって少食の彼にしてみればつらいことですよ。でも多くの場合、無意識・無自覚で我々は他人にそういうことを求めてしまう。だからこそ、固定観念は強固だなと思うわけです。

◎男性のライフコースがあまりに狭すぎる問題

清田 しかし、そういう固定観念に違和感を唱えること自体が、難しかったりしませんか? 例えば僕はフリーランスの文筆業者で、しかも自動車の運転免許を持っていないんですね。こんな感じで生きてると、会社員をやっている友人や諸先輩方から「お前このままじゃヤバいぞ」って頻繁に忠告を受けるんです。個人的には楽しい日々を送ってるつもりなんですが……そう言っても、なかなか信じてもらえない。

田中 男性のライフコースがあまりに狭すぎるという問題がありますよね。学校を卒業して、正社員として就職して、結婚して、マイホームを買って子供を養って、定年退職して老後は悠々自適に暮らす……と、男性はそういう人生を歩むことが「普通」とされていて、これ以外のライフコースがほとんどない。

清田 自分にはそんな人生、到底歩めそうにないです……。

田中 そもそもこれは、右肩上がりの経済成長を前提にしたライフコースだったんですよ。でも、バブル崩壊やリーマンショックを経て、男性の平均収入は大幅に下がっています。また、特に若い世代の不安的な働き方も問題になっていますよね。そんな現代にあって、かつて普通だった生き方はすっかり「普通」ではなくなり、むしろ一種のステータスにすらなっている。なのに、それ以外の選択肢がいまだに整備されていないし、固定観念からズレた男性の生き方に対してまるで寛容じゃない。

清田 社会は大きく変化しているのに、ライフコースが全然変わっていない。それも男性の生きづらさの一因になっているわけですね……。だとすると、どうすれば良いのでしょうか?

田中 ひとつは、やっぱり“実践”していくしかないと思うんですよ。例えば以前『AERA』(朝日新聞出版社)の企画でご一緒した小島慶子さんなんかは、「夫が仕事を辞める」という経験をされています。固定観念からズレたものに接したとき、人は基本的にビックリしますが、子持ち家庭で夫が働かないって相当のズレですよね。

清田 そうですね。

田中 小島さんはかなり柔軟な考え方の人だと思うんですが、そんな彼女ですら「ちょっとあり得ない」と思ったそうです。でも、お子さんもいるので、小島さんが働くしかない状況になり、今はそれで幸せに暮らしている。実際にやってみれば変わるんですよね。例えば男性の育児休暇なんかも一緒だと思うんですが、今は取得者が全体の2%しかいないからみんな怖くて取れないけど、これが10%とかになってきたら「取ればいいじゃん」って風潮になると思うんです。そうやって数が増えて、「俺もやっていいんだ」ってなれば、固定されたイメージも変わらざるを得ないわけで。

清田 空気が変わりますよね。例えば先生もツイッターでやり取りをされていた格闘家の青木真也選手が最近、自身のブログで「男だったら家族を養ってナンボみたいなのも働き方が多様化する中でその価値観を維持し続けるのは無理でしょう」ということを書いていました。格闘家って、旧来的な価値観で言ったら男らしさの極北にありそうな人ですよね。そんな青木選手が「男だったらとか男なのにってのが苦手と言うか理解出来ない」と発言した意味は大きいなと。

田中 『AERA』でも、2014年9月に「男がつらい」という大特集が組まれていました。男性問題に対する注目は、近年少しずつ高まっているように思います。

清田 でも、一方で男性に言葉を届けるのって、すごく難しいと思いませんか? 桃山商事の連載も、確かに「クソ男撲滅委員会」というタイトルからして男叩きみたいな内容になってる感は否めませんが、基本的には失恋ホストで見聞きした話をベースに、「女の人たちは男のこういうところに憤りや悲しみを感じている。だから一緒に気をつけていきましょう!」というメッセージを発しているつもりなんですね。でも男の人からは、「男をひと括りにするな!」という拒絶反応か、「あ~いるいる、そういう男もいるよね」って他人事感あふれるリアクションがほとんどで、言葉が響いている実感がまったくありません。

田中 それはとてもよくわかります。私の本にしても、男性に当事者意識を持って読んでもらえているかというと、正直言って微妙なところです。清田さんが仰っているように、どうしても男性たちは自らの問題について「他人事」な感じを受けますよね。

清田 男性問題を知ることは、男性自身の生きづらさを緩和することにつながるはずなのに……なぜ言葉が届かないのでしょうか? このあたりの話を、後編でじっくりうかがいたいと思います。

(取材・構成/桃山商事代表・清田隆之)

■田中俊之(たなか・としゆき)
武蔵大学社会学部助教。1975年生まれ。武蔵大学人文学部社会学科卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。博士(社会学)。学習院大学「身体表象文化学」プロジェクトPD研究員、武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師を経て、2013年より武蔵大学社会学部助教。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。2014年度武蔵大学学生授業アンケートによる授業評価ナンバー1教員。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめ、多様な生き方を可能にする社会を提言する論客としてメディアでも活躍。著書に『男性学の新展開』(青弓社)、『男がつらいよ─絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)など。

おまたから邪気、胎内記憶…謎物件をまとめて観察できる貴重なヒーリングビジネスショーに潜入

 ビッグサイトで行われる夏祭りといえば、オタクの場合は世界最大規模の同人誌即売会ですが、スピ界の場合は癒しに満ちたヒーリングビジネスショー「Iフェア」です。

 「心とカラダそして地球にやさしい、癒し関連の商品・サービスが一度に体感できる」と謳われる祭りでは、この夏、どんな謎物件に出会えるのでしょうか? 酒の席の勢いで、うっかり「私も行ってみたーい♪」と口走ってしまった仕事仲間のKちゃんを道連れに、ゆりかもめでいざ夏のビッグサイトへ!

 会場に着き、まずは入り口で配られているMAPをチェック。すると、ああ! あの(一部で)有名な、ありがとうコーヒーが!

 そうです、昭和の仮面ライダー・藤岡弘、氏がプロデュースする「藤岡、珈琲」です。現代の侍という異名も持つ藤岡弘、の武士スピリッツが込められた、ワイルドで野趣あふれるコーヒー。有名である理由は、藤岡イズムあふれる、独自の淹れ方です。スポイトを使っているかのようにポトリ、ポトリとごく少量ずつお湯を落とし、コーヒーに向かって、「おいしくなってください……おいしくなってください……ありがとう……」と唱えます(ご興味ある方は、「藤岡弘」「珈琲」でYouTubeを検索!)。

 一度飲んでみたかったんですよ、嬉しいなあ。早速ブースへダッシュすると、あ、ご親切に、試飲があるんですね。

Kちゃん「おいしいね。普通に」

 そうですね。普通においしいコーヒーですね。藤岡弘、ご本人が、呪文を唱えながら淹れたら、もっとおいしかったのかも。とりあえずお土産用に1袋ずつ買い求め、次はあてもなく会場内をプラプラ歩いてみることに。

 目の端に、不思議なシルエットが映りました。ざっと見渡してみるとフロアの隅っこで、三角帽をかぶった人たち。あれは一体何!?

 近づいて話を聞いてみると、ピラミッド型と水晶のパワーで体があたたかくなり、頭が癒されてスッキリするのだと言います。発泡ポリエチレン素材を三角形にし、2cmほどの水晶玉をセットしたものが……は、はっせんえん!

 かぶらせてもらうと、「どうです? あたたかくなってきましたか?」と、店主。確かにあたたかさは感じましたが、それは発泡ポリエチレンの保温効果じゃあないのかな。

◎珍説が堂々と語られる

 過去に当連載でご紹介した、布ナプキンや空気パンツも参戦していらっしゃる。

 特に布ナプキンは、カラーセラピーを取り入れたという新しい(?)試みです。赤を使うと子宮が元気になり、ピンクを使うと卵巣が元気になるのだとか。それなら赤いパンツをはいた巣鴨のおばあちゃんたちは、みんな子宮が若返ってしまうのだろうか。そんなことを考えながら商品を眺めていると、聞こえてきました。こんなセールストークが。

 「布ナプを使っていると、昔の女性のように経血を自分でコントロールできる体になっていくんですよ!

 で た !! サラッと言いましたね、今。根拠なき「昔の女はできていた」! この祭りは、謎物件ウオッチャーを名乗る私の興味を全方向カバーしてくれそうな勢いです。

 各ブースで行われている占いやヒーリングの有料コンテンツは、どこもイベント価格のリーズナブル設定。新規ユーザーを引き込むスタンダードな商法に、俗世間を感じさせられます。

 うってかわってこちらもイベント価格……ですが、それでも28万円弱とすんごいお値段で、俗世間とは遠い世界を感じさせられます。

 LEDライトの色によって健康効果が変わるそうで「携帯の待ち受けにしても効果がありますよ!」と写メを快く許可してくれた、ビシッとスーツ姿の販売員さんたちでした。

◎子宮教がここにも

 会場内ではたくさんの無料講演も開催されています。「虹色の結界をつくり、愛され女性になりましょう!」という講演では、幸せを呼びよせるウオーキングのデモンストレーションで、スタイル抜群の講師が〈床のものを拾うときの姿勢アドバイス〉としてこんな解説をしていました。

女性講師「床のものを拾うときは、ひざをしっかり閉じてしゃがみましょうね。ひざをガバッと開いてしゃがむと、女性はおまたに穴が開いていますから、そこから邪気が入ってくるんですよ。子宮が攻撃されるんです!」

 へ、へえ……。肛門や鼻の穴からは邪気が入らないのか、疑問~。子宮にはネガティブな感情がたまったりカルマがたまったり、毒を吸い上げる器官になったりと、大忙しです。

 この日はウオッチング仲間・W氏も偶然来ていて、彼の目当ては2年ぶりに来日したというオーストラリア人のサイキックヒーラー。講演ではこんなパフォーマンスが行われていたと報告してくれました。

W氏「来場者からの質問に答えてくれるんですけど、特定のお客さんに『あなたの周りに名古屋に関係する人がいますね』『あなたの周りに歩けない人がいますね』みたいなことを言いだすんですよ」

 でも、お客さんの回答は「思い当たりません」という残念なものだったそう。能力を発揮するのに、人種の壁でもあるんですかね。

W氏「場が変な空気になったからか、おおざっぱに客席を指し『このあたりに新聞や雑誌を何週間も続けて読んでる人がいますね』とすごく該当者が多そうなことを言うも、誰も手を挙げない。サクラ使わずにガチでやってるのは、すごいですよね。その後は何事もなかったかのように荘厳な音楽を流してヒーリングを行い、『ヒーリングをしたら私の身長が高く感じたでしょ』と、まったくありがたみのない言葉で締めくくっていました」

 周りの人からスリムに見られるようになるヒーリング法なら、私も伝授していただきたいです。

◎子どもの存在はすべて親のため

 その後、食材通販会社のブースでもらった雑誌には、「白砂糖で思考停止!」という記事や、「障害児の出産は親の責任」発言で炎上した内科医の対談が掲載されていてげんなり気分が加速。立ち見で人があふれかえっていた池川明氏の公演では、相変わらず全くブレない胎内記憶トークで、

「子どもはお母さんを鍛えるためにやってくる」
「虐待する親でも、〈親を鍛えるため〉子どもが自分で選んでやってくる」
「妊娠中に旅行に行っていいかどうかは赤ちゃんに聞いてみればいい」
「子どもは神様に近い存在だから、正しい答えを出してくれる」

 などが語られておりました。ああ、全く癒されない……。

 あ、でも、胎内記憶の話が『婦人公論』の〈真夏の怪奇現象特集〉で取り上げられたというお話だけは、笑わせていただきました!

 ……こうなったら、有料コンテンツに救いを求めてみましょう。そんなわけで、次週はペットや腸についてアレコレアドバイスされる、有料コンテンツの体験レポートをお届け予定です。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

男子からの「好き」を集めて自己肯定の材料にしていた。元サークルクラッシャー・鶉まどかの考えていたこと

 サークルクラッシャーという存在がいます。何らかのコミュニティを、主に恋愛関係によってぶち壊す(=クラッシュする)人のことで、そのほとんどが女性を示しています。とはいえ、私自身が通った大学で所属したサークルにサークラらしき影はなく……その後に就職した先にも「クラッシュしてやるぞ」と意気込む女性の気配はまったくなく……半ば都市伝説的な存在なのかな、と勝手に思うようになっていました。それだけに、7月に上梓された『岡田斗司夫の愛人になった彼女とならなかった私』(コア新書)は衝撃でした。

 著者の鶉まどかさんは、サークルクラッシャーでした。どのようにしてサークルをクラッシュするのか、どうしてクラッシュするのか、サークラに惚れちゃう男性の特徴やサークラの方法論などなどが書かれた本書は大変興味深い。同時に、ここに描かれる社会現象は、サークラに留まりません。タイトルに「愛人」とあるように、権力者に口説かれて愛人化してしまう若い女性たちに対しての警鐘も鳴らしています。

◎サークルはどこにでもある

――4年生大学をスムーズに卒業し、現在は上場企業にお勤めだという鶉さんは、ブログにて「サークラの極意」をこつこつ書き溜め、今回この本にまとめたんですよね。勤務先ではこのことを公表しているんですか?

鶉 非公式ではありますが、してますね。昨日部長に本も渡してきました。「えー!? サークルクラッシャーだったの?」って言われて(笑)、「あーそうですね、すいません」みたいな、恥ずかしさはあったんですけど(笑)。

――今こうやって顔出しで活動してらして大丈夫?

鶉 多分、大丈夫です。一応、事前に上司とかに話をして、「こういうことなんですけど、大丈夫ですか?」って。部長も割と心の広い人なので、「いいんじゃない」と言ってくれて。

――それは良かったです。まず最初に、鶉さんが渡り歩いた「サークル」についてお伺いしたいのですが。鶉さんがサークラしていたのは主に大学生時代ですが、対象となったサークルは大学のそれだけじゃないんですよね。

鶉 基本的にオタサーですね。アニメとかゲームとか。大学とか会社とかの所属先は関係ナシに、オタク趣味の人が集うサークルってたくさんあるんですよ。もともと、私がアニメやゲームを好きで、少しは知識があったのでわりとすんなり入りやすかったです。多分これが鉄道オタクのサークルだったら、私は入れなかった。

――知識を一から頑張って覚えないといけないから?

鶉 そうです、覚えなきゃいけない。無理だなって。アニメとかゲームが好きな子って自分から能動的にその趣味を選択していない人が多いんですよ。何でかと言うと、アニメって、初期投資がいらないじゃないですか。まぁゲームは多少かかるんですけど。

――テレビでやってますもんね。

鶉 そう。アニメを放送時間に視聴して、Twitterで「〇〇たん萌えす~」って実況ツイートしていれば友達が出来るじゃないですか。

――じゃあサークル入りするきっかけは常にネットのTwitterとかですか?

鶉 Twitterとか、ちょっと昔ならmixiとか。あとは普通に、インカレみたいな複数大学のオタサーみたいなのがあったりして。

――インカレのオタサーっていうのもあるんですね。

鶉 そうなんです。インカレって言うとオシャレですけど、単純に学校の枠を超えたオタサーみたいなだけです(笑)。いろんな大学のオタクが集まってるっていう。それから私は一時期、同人活動というか、小説の二次創作をしてコミケに出展していたんです。だから同じように同人誌をつくっている人とか、私の小説を読んでくれた人とかと「じゃあコミケ終わったら打ち上げ行きましょう」ってなって飲み会になって、ユルく繋がったり。

――鶉さんは社交的なんですね。コミケに出展するのは、サークルに所属しないといけないのかと思っていましたが、たった一人で出来るものなんですか。

鶉 個人で出来ます。お金さえ払えば出来るので。コミケとか同人イベントって、狭いパイプ椅子と机を一個渡されて自分のブースをつくるだけなので、そこで一日、たとえば11時から3時までいると両隣の人と仲良くなったりしますね。あるいは自分の二次創作物の宣伝をTwitterに書くことで、同じカップリング好きな人や、小説書いてる人と交流が持てたり、「じゃあ一緒に何人かで同じテーマで本を出しませんか」って、ゆるっと繋がりが出来ていく感じですね。オタクっていうとコミュニケーションが下手そうなイメージがあるかもしれませんけど、そうやって普通に繋がって、コミュニティを広げていくんですよ。

――そうなんですね。鶉さんのやっていたジャンルは何だったんですか?

鶉 「東方Project」というゲームの二次創作で、イベントのお客さんは圧倒的に男性が多くて、男女比8対2くらい。

――それは女性が少ないから、繋がりを持つだけでモテそうですね。好きなジャンルがBLだったり、男性ファンの少ない分野だったりすると、男の子とは繋がりがなくなるのかなと思って。

鶉 なくなりますね。実は私、高校生の頃はBLの二次創作をしてたんですけど……気付いたんです。これではモテないっていうことに。

――趣味の活動の場で、モテたかったんですか?

鶉 なんでもいいからモテたかったですね。

そもそもサークラとは?

――高校生までは、全く恋愛関係のときめきと無縁だったと。女子校だったこともあるし、男性にウケる外見でもなく、社交的でもなかったんですね。でも高校卒業間際にダイエットをして綺麗になり、大学入学後にサークルクラッシャーとなって……それも今はご卒業されたと。鶉さん、今おいくつでしたっけ?

鶉 24歳です。東方の同人活動を始めたのは21歳になる直前くらいでしたね。

――この本を読むと、大学入学した18歳から今日まで、猛スピードで駆け抜けた印象を受けます。サークラを始めたのは何歳で?

鶉 19歳の終わり頃からでしたね。だから期間としては決して長くないというか、サークラ期間は2~3年くらい。

――ダイエット成功して、いきなり自信がついたんですか?

鶉 そんなすぐには自信つかないですよ。高校までは超太ってて、そのうえ母親からも「あんたは太ってて醜い」って呪詛を吐かれて育って、自己肯定感が一切なかったんです。自分が一般的な普通の男の子に愛されるワケないという大前提のもと、生きてました。イケメンでもない、普通にそのへんを歩いているごくごく普通の男の子であっても、私のことなんて好きになるハズないだろうと思ってました。でもその一方で、痩せて普通の洋服を着られるようになったし、家にいたくないし、何かバイトとかしたいと思って、キャバクラの面接に行ったんですよ。

――いや、何でキャバクラに……? キャバクラで働くのって、ある程度、自分にの容姿に自信を持っていないと、第一歩のところを踏み出せないと思うんですが。

鶉 太ってた高校時代、通りすがりに、男子校の生徒集団から「何あいつキモい」と聞こえるように言われたり、物を投げられたり、ワザとコーラをぶちまけられたりしたことがあるんです。超怖かった……。ところが高校卒業間際、痩せた私に、その男子校の別の生徒がラブレターを渡してきたんですよ。「嘘でしょ!?」ってすごい不思議に思ったけど、痩せたからなのかなって。でもそれで、いきなり男の子と普通に話せるわけじゃない。だから、「男の子といっぱい話す練習をできる場」「あるいは自分が女の子として認められる場」で、自尊心を育みたい! っていう流れでの、キャバクラですよ。

――なるほど。容姿に少しの自信がついたし、次のステップを踏みたいと。

鶉 キャバクラはお給料が普通のバイトよりは少し良い、という理由もあります。大学進学したら、もう母親から解放されたいって気持ちも芽生えて、女友達の家を泊まり歩くようになったんですね。でもそうすると生活費やおこづかいは自分で捻出する必要があると。そんな時に、オタク向けのキャバクラがあると知って、面接を受けに行きました。オタク向けのキャバクラっていうのは、きらびやかなキャバクラのイメージとはちょっと違います。キャストとして働く女の子は全員、アニメ・漫画の知識がないと面接に受からない。衣装ももちろんドレスではなく、かといってナースとかメイドとかのコスプレでもなくて、全部アニメやゲームに登場するキャラクターの衣装で、そのキャラについて語れる子じゃないとそれを着ちゃいけないっていうルール。

――非オタク女性には敷居が高いですね。鶉さんはアニメや漫画の知識があったから、受けてみようと思ったんですね。

鶉  はい。そして奇跡的に面接に受かることができて、半年間、キャバ嬢としてサークラの基礎を学びました!

――サークラの基礎とは?

鶉 女の子は、男の子のイメージ通りに振る舞う、ということです。

――アニメキャラになりきるように?

鶉 そうですね。そこのキャバクラに来るお客様は、ガチのオタクでお金もそこそこ稼いでいる業界人の人が非常に多かったです。たとえばフィギュアの原型師さんとか、結構有名な漫画家さんとか、そういう人が非常に多くてですね。しかも皆、語りに来てるので、ビックリする程セクハラとかがないクリーンなキャバクラ。

――働きやすそうな環境ですね。

鶉 でも入店する時に店長から言われてびっくりしたのが、「指の毛は絶対に剃れ」ということ。

――なんで特に「指毛」?

鶉 「オタクの男の人は、女の子に指の毛が生えてるっていうだけで悲しんで、自分の理想と違ったって言って帰っちゃう人がいるから」だと説明されたんです。何それって思うじゃないですか(笑)、三次元の女性なんだから指に毛も生えるし、汗もかくわーみたいな。でも実際そういうお客様たちを接客していくと、「あ、本当にこの人たちは二次元の理想の女の子たちに自分が受け入れられるっていう夢を捨てられないんだ」ってことがわかりました。

――現実に存在する人間女性の真の姿は拒絶したくなるんですかね。

鶉 そうですね。そこで働いているうちに、「じゃあキャバに来ないようなオタクの男の子たちってどうなんだろうな」って疑問を抱いて、好奇心からあるアニメ系のオフ会に行ってみました。そうしたら実際、キャバクラに来ている人たちはオタクだけれどもお金があって、「キャバクラに行こう」って思える人たちなので、まだ意識が高かったなっていうのを思い知りました。私がクラッシュしていった「普通のオタクの男の子たち」は、もっと「女の子への理想と憧れ」が強烈だったので。

――クラッシュと言いますけど、それは「自分に男を惚れさせて、サークルというコミュニティを破壊する」という意味で合ってますか?

鶉 壊したいわけじゃないけれど、「男の子から好きって言われたい」という欲望で突き進むと、結果的にサークルが壊れてしまうという。

――サークラの最初は、飲み会で全然仲良くしゃべってたわけじゃないのに、一言会話を交わしただけの男の子にいきなり告白された経験から始まってるんですよね。

鶉 はい。「好き」って言われるのって、めちゃくちゃ楽しいんだなと知ってしまって。正直、私は自己肯定感がすごく低かったけど、でもオタクの、カーストの低そうな男子のことをバカにしているというか下に見ている気持ちもありました。なので、「これくらい(レベルを)下げれば私のことを好きになってくれる男子がいるんだ」とわかって。あとは、女性比率の低いオタクサークルに遊びに行ってみて、「ああ、ここなら私は“女の子扱い”してもらえるんだ」って実感できたのもうれしかった。

――オタサーの姫、と呼ばれる存在とサークラ女性は違うんですよね?

鶉 誤解されがちですけど、違うんですよ。私はシンプルな服装をしていたけれど、いわゆるオタサーの姫って呼ばれるような子たちとかは、超フリフリの服にスニーカーを合わせて、ポニーテールですっぴんみたいな、個性的な格好をしている子が多いです。普通の、ファッション誌に興味のある男女だったら「えっ?」って思うような格好だけど、そういう子が超チヤホヤされる。ただ、オタサーの姫は男集団の紅一点なので、彼らにとっては誰でもいいんです、女の子であれば。それくらい彼らの中での女の子に対する求めるものってすごく「女の子である」ってことが大切なので。

――彼ら、というのは、鶉さんに「クラッしゃられた(=クラッシュされた)」サークルの男性たちということですよね。

鶉 はい。そして「女の子である」ことと、もう一つ大事なのが、「自分たちをキモいって言わないこと」。本にも書いたんですけど、共学校で学生時代を過ごした場合、彼らの多くは女子生徒から「あいつキモいよね」って言われた経験を結構引きずってる。私もそうだったので、気持ちはわかります。

――なるほど。

鶉 「あいつキモいなー」とか「あいつオタクなの?」とか「アニメとか見てるらしいよ」みたいな陰口を、あるいは面と向かって言われた経験を、ものすごく根に持ってるんですよね。非常に傷つき、被害者意識をこじらせてるんです。「俺と喋ってくれる女なんてどうせいねーよ」って思ってる。なので、オタサーの姫でも私でも誰でもいいんですけど、女の子が趣味の場に来て同じ趣味の話をしてくれるっていうだけでも株がガーンって上がるんですね。

――それこそめちゃくちゃ嬉しいんですね。

鶉 めちゃめちゃ嬉しい。異性が自分に関心を示してくれたっていうことがとても嬉しいんですよ。で、オタサーの姫がいる光景を身近で見られるところはゲーセンですね。たとえば音ゲーのコーナーに、紅一点でチヤホヤされてる女の子がいます。見た目的には、多分ほんとに渋谷を普通に歩いてる女子高生とか女子大生の子たちの方が何倍も可愛くても、もうそれは関係ないんですね。彼らにとっては見た目よりも、まず自分を受け入れてくれる女の子が大事なので。

――鶉さんはオタサーの姫にはならず、サークラの道を選択してますよね。それはやっぱり「好き」を欲していたけど、「付き合う」は欲してなかったから? つまり、「好き」をもらうための行動をいろいろ画策するものの、実際に「好き」と言われても鶉さんはその男子と交際しない。するとだんだん気まずくなったりしてそのサークルを離れたり、サークル自体が崩壊したりする。どうして鶉さんはサークラにハマッたんでしょうか?

鶉 「あ、好きって言ってもらうのって、こんな簡単なんだ」って思って、ちょっと面白くなって。で、サークルの男子を攻略する(=「好き」と言わせる)3つのやり方パターンがわかったんです。【1】自分から二人っきりで会うきっかけを作る、【2】相手の理想通りの振る舞いをする、【3】恋愛感情がないとは伝えない。これを編み出し、次々にクラッシュさせて。

――それをすることに抵抗はなかったんですか? 男性の気持ちを弄んでいる罪悪感とか、あるいは変質的に好かれてしまう気持ち悪さとか。「好き」って言われることは鶉さんにとって、純粋に嬉しいだけだったんですか?

鶉 純粋にめちゃめちゃ嬉しかったですね。私ほんとに、花の女子高生時代に近くの男子高校生に石を投げられたりしていたので。

――まあ、その近隣男子高校生の件は本当にひどすぎますよね……。

鶉 そういうことがあったから、同世代の“フツーっぽい見た目の男性”は怖すぎるわって思ってました。大学入って、友達も出来たけど、家族とは上手くいってないし、私このまま孤独に死んでいくんだろうかっていう気持ちが強かったので、私のことを「好き」と言ってくれる男子が現れただけでめちゃくちゃ嬉しい、「あーやったぁ!」っていう感じでしたね。

――でもそこで、「好き」を繋ぎとめたいと思えば男女交際に発展させてたかもしれないですよね。「ありがとう、私もあなたのことが好き、付き合おう」ってならなかったのはどうして?

鶉 もっとたくさんの人からの「好き」が欲しくなったからです。それに、私のことを「好き」と言ってくれた男子のことを、私自身が好きかどうかと言ったら全然そうじゃないし。やっぱり自分も好きな相手とじゃないとお付き合いはできないですよね。私は「好き」っていう言葉が好きで、その言葉をたくさん集めたかっただけなんだと思います。サークラをしていく過程で、私に恋してくれた男の子のことを私も好きになったことはなかったです。すごく付き合いたいって思う男の子は出てきませんでした。で、サークルとは別のところで「すごい付き合いたい!」と思う男の子に出会って、初めて彼氏彼女になりました。そうしたらサークラをする必要がなくなったので、いったんサークラ活動を止めたんですよ。自分の中では、その彼との一対一の関係が大切になったし、彼からの「好き」が嬉しくて他の人の「好き」は必要なくなったんです。彼が私を好きで私もこの人が好き、これで十分満たされたので。

――好きでもない男性からの「好き」の言葉は、たくさん集めて自尊心を高めるために利用することは出来たけど、一対一の「好き同士」の関係の方がよほど心地よいものだったと。まあ一方的に相手から好かれてもね、私だったらすごくイヤだなと思う。サークラ時代、ストーカー被害に遭ったりはしなかったんですか? 気がある素振りを見せておいて振るんだから、恨みを買うこともあったのでは、と思うのですが。

鶉 ストーカーっぽいことは、なくはなかったですけど、そんなに危険な目には遭わなかったですね。

――それは幸いでした。

◎就活にサークラ経験が活きた

――大学へはちゃんと行っていたんですか?

鶉 初めの一年間は、あまり行かずで全然単位が取れなくて。二年生からはこれじゃいかんと一念発起して、めちゃめちゃ大学に行くようにしました。無事に単位を全部取得して卒業して、就職活動もちゃんとやれましたね。

――学外のサークラ活動やバイトに明け暮れていたような感じですけど、大学の友達は、いたんですか?

鶉 いました。普通に男女混合のゼミも入ってましたし、オタクじゃなく、普通の友達が出来ましたね。

――そっち側で「じゃあゼミクラッシュしようかなぁ」とは思わなかったですか?

鶉 クラッシュするための学外のサークルなら、クラッシュ後に人間関係が継続することはないから別にいいんですけど、恋愛関係のいざこざを経ても卒業までずっと一緒にいなきゃいけないゼミの仲間の関係性は、崩したくなかったですね。立場を悪くしたくないから。

――言ってみれば、クラッシュさせるために入るサークルっていうのは、鶉さんにとってすごいどうでもいい集まりなんですね。

鶉 そうです。ワンナイトラブみたいな。

――サークラは男性から「好き」と告白されることがゴール。告白されても、鶉さんは「ありがとう」と受け流すだけで、付き合わないんですよね? セックスなんかもしない?

鶉 しないです。何でセックスをしないかっていうと、セックスをすると相手からの私に対する純粋な「好き」が歪むじゃないですか(笑)。

――歪むかな? 執着が強まる場合もあるように思いますけど。

鶉 「セックス出来ないけどめっちゃ好き」っていうのと「セックス出来るから好き」っていうのは多分、男性の中ではズレてると思うんですよ。一回してしまうと、「次に会ったときにもまたエッチ出来る女の子」って思われる。「ヤレるかヤレないか分からないけど超好き」っていう子でいたかったんです。私がサークラとして自覚していたこと、あるいは他のサークラの子たちと話してあらためて認識したのは、サークラ女子はみんな「純粋に私のことを好きって言って欲しい」という気持ちが異様に強いんです。

――セックスという付加価値なしに、自分を受け入れて欲しいんですね。

鶉 それともうひとつ、「縛りゲーム」みたいな要素もありましたね。若い女の子が持っているセックスの価値が非常に高いとされているこの世の中で、セックスをチラつかせれば、いやセックスまでいかなくともキスとかをすれば、すぐクラッシュ対象の男の子がコロッていっちゃうのはもう目に見えてるんですよ。だから、それをしないで私の持っている他の資質、たとえば会話のやり方とかで相手の好きゲージをどれだけ上げられるかみたいな、一種のゲーム的な感じを楽しんでいるところもあったんです。「セックスはしない縛り」というルールありきで、他の技術、会話、デートに誘う、夜電話を掛ける、メールをする、そういったことを駆使して、どこまで相手の「好き」のボルテージを上げられるかっていうゲームでしたね。

――そうなんですね。鶉さんは、自分の狙った通りに「好き」と告白してくる“クラッシャられ体質”の男性たちのことを、本心ではどう思ってたんですか?

鶉 最初は「え、バカじゃん」って思ってたんです。だって、本にも書きましたけど、初対面で「焼酎お好きなんですね」って一言声を掛けただけで後は何も喋らなかった男性が、帰りの電車でいきなり告白してきたんですよ。意味が分からないじゃないですか。でも同時に、それが先ほども言ったように嬉しくもありましたし、面白くもありました。「焼酎お好きなんですね」で、好きって言われちゃった、って。じゃあ、サークルの集まりで女性経験のまったくなさそうな男の子たちに「休みの日何してるんですか?」とか、「今度一緒に遊びに行きませんか?」って話しかけたらどうなるのかな? もっともっと「好き」を集められちゃうのかな? と。そして実際、そうなった。

――他にどんなことをすると「好きになられちゃう」んですか?

鶉 相手の肩に、手をポンッと置くとか。そのくらいの軽いボディタッチは、すごく意識されます。飲み会でお酒飲んでて「一口貰っていい?」って言ったらもう好きになられちゃう。でもすぐに告白してくるような勇気のある人は絶対数が多くないので、何度もデートに誘ってあげて、彼らに「イケるかも」と思わせてあげる。

――いくら鶉さん自身の自己肯定感が低かったといっても、そういう人たちとそういうやり方で積極的に関わり続けることは面倒くさくならなかったんでしたか? よくそんなこと続けられるな、と思って。

鶉 クラッシュを、ですか? クラッシュというか、そういう人たちを相手にし続けることですか?

――し続けることです。本を読んでいてすごいなって思ったのが、クラッシャられ体質の男性たちを“離乳食系男子”と命名したくだりです。サークラとしての鶉さんは、まさに赤ちゃんの相手をする保護者ぐらい、手取り足取り彼らを嬉しがらせるようなことをやってあげて、「好き」を引き出す。それに対して、鶉さんの女友達が「そんなに努力して何になるの?」みたいなことを言ったと。私も、そんなに頑張って好きじゃない男から「好き」って言われて、別に付き合わないしサークル壊れるだけで何にも残らないのに、よく出来るなあと思っていて。自己肯定感を高めたかったというけれど、好きでもない人からどんなに「好き」を集めて貯めても、そのうち虚しくなるんじゃないかな、充足感に繋がらないんじゃないかなと思って。それを今日は特に聞きたかったんです。

鶉 私も結局、さっきも少し触れた初彼が出来たことで、サークラはすっごい虚しいっていうことに気付いたんですよね。その人と会った時に、「こうやって誰かと一対一で深い関係を築くのってすごい楽しいんだ」とわかって、これまでしてたことってそんなに楽しくなかったなってすごい思ったんです。その彼は同世代だったけどもう私はサークラ経験によって「男の子怖い!」って恐怖心を少しずつ拭えていたし、彼はサブカル系男子で物知りで、一緒に喋るのが楽しくて、食事に行ったりしても普通に楽しいんです。私がリードして手取り足取り離乳食を与えてあげなくても、すごく楽しい。「あ、普通に対等に人間と話せるってこんなにいいことなんだ」って。ただ、その彼に振られてから、また自暴自棄みたいになってサークラを始めたりもしちゃうんですけど(苦笑)。

――それで東方の方に行ったんですか?

鶉 そうなんです。ちょうどその頃、mixiが衰退してきていて、前みたいにオフ会がポンポン開かれることが無くなっていて。mixiってほんと趣味の合う人たちで出会うという点ではすごいいいコミニケーションツールだったんですけど。Twitterにもツイプラとかがあるんですけど、なかなか全盛期のmixiのようには機能しなくて。で、私も大学に真面目に行き始めたのと、就活を控えていた時期ということもあって、「同人だったらゆるっと仲間が作れるな」と思い立ち、そっちに流れました。

――大学に真面目に通いながら就職活動もして同人活動も頑張る、って、精力的ですよね。就活では病まなかったですか?

鶉 就活はそんなに病まなかったですね。わりとトントンと決まったんですよ。というのも、いざ就活をしてみたら、「私これ、得意かも。出来る!」って思ったんですね。

――就活得意とか聞いたことないですよ(笑)。どういうことですか?

鶉 就活って、自分の人生の一部を切り取って自分の良さをPRするものじゃないですか。その点で、サークラ活動と通じるものがあったんですよ。サークラって自分の良さを相手に合わせてうまいことPRしまくるようなものなので、私は知らず知らずのうちに自己PR手腕がすごく鍛え上げられていたという(笑)。就活で病むって自分を取り繕うっていうところに病む人が非常に多いんですよね。

――私もそれでした、PRできるところなんか無いよーって。

鶉 大した経歴もないのに、立派な経歴があるように見せなきゃいけないとか。大学生活で得た成果なんてなくても、「何をどう頑張ってこんな成果が~」とPRしなきゃいけないし、「御社の魅力」も語らなきゃだし。でも、私は初対面の人たちのいいところを見つけて話すっていうことを2年間続けてたおかげで、志望動機もスラスラ書けましたね。

――すごい特訓をしましたね。

鶉  そうなんですよ。サークラが、就活に活かせたっていう。いい悪いはともかく。うん、サークラ活動では、どんな人でもいいところを見つけて褒めてあげる・どんな相手でも、相手の好きな女の子のタイプっていうのを察知して理想通りに動くのが基本だったので。これを応用して「面接企業の欲しい人材になる」就活をしました。もとの自己肯定感がすごい低かったぶん、自分が全然大した人間じゃないことなんてわかりきっていて、「ありのままの私で勝負して認めてもらわなきゃ」って幻想が無かったので、「ありのままの自分を取り繕って話すのが辛い」という気持ちにもならなかったのが、就活においては良かったかもしれないですね。

――今、そうして希望していた会社に入社して広報の仕事をしていて、それは満足してますか?

鶉 楽しんでますね。やりたい仕事にやっぱり就けたっていうのはすごい良くて。広報をずっとやりたかったので。PRが好きなので(笑)。

――天職かもしれませんね。

◎毒状態だった母親の変化

――高校まではすごくお母さんとの関係が悪かったんですよね。で、大学に入る時に痩せられて、すごい綺麗になって、お友達もいっぱい出来て、社交的になって、鶉さんは変わったわけじゃないですか。それでお母さんとの関係も変わりました?

鶉 大学一年生の、ほとんど実家に帰らず女友達の家を転々としていた時に、このまま家を出るか、家に戻るか二択だなってずっと考えていたんですけど。ただやっぱり実家は実家で、母と折り合いが合わなかったとはいえ、めっちゃ暴力を振るわれたとか金銭的にタカられるとかそういうのではないので、戻ろうと決めて、二年生から実家に戻ったんです。母は子供時代の私に過度な期待を押し付けていて、私がその期待に応えられなかったことで関係が非常に悪くなっていたわけなんですが、私も冷静に考えて、それこそ「子供としてありのままの自分を全部受け入れてもらう」じゃなくて、母となんとか折り合いがつけられないかなと思って。結論を言うと、今は関係が良好です。

――お互いに折り合いをつけられたということですか?

鶉 はい。家族関係が好転したのには、私が考え方を変えたこと以外にも、2つの理由があるんです。まず、母が承認欲求を子供以外で得たこと。

――というと?

鶉 私と弟が大学進学して、手がかからなくなったということで、母はもともと好きだったフランス語の習得に励むようになったんですよ。母はフランスがすごく好きだったけど、子供が生まれたことで、やりたいと思っていたことをセーブしていたんですね。そのぶんの抑圧が、子供に向かっていたんだと思います。うちの母は「子供がいるから自分はこういうことしちゃいけない」とルールを決めて律儀に守っている人でした。私と弟が大学生になるまで、夜に自分の友達と出掛けるようなことが20年間ほとんど無かったんですね。同窓会とかも全部断って、「家にいなきゃ、お母さんだから」っていう。母の考える“いいお母さん像”にハマるように頑張っていたんだと思います。

――そんなお母さんが、変わった?

鶉 私と弟がもう子供じゃないよっていう年齢になって、母は時間を持て余すようになって。父が「母はフランス語が好きだから、フランス語をやらせてみてはどうか」と考えて、カルチャーセンターのフランス語に行くことを勧めたんですよ。そしたら母はフランス語にのめり込んで、ぐんぐん上達していって。さらに父が、母に一週間のフランス一人旅をプレゼントしたんですよ。

――お父さん、優しいですね。

鶉 それまで感情の乱高下が激しかった母がめきめき回復していって、フランス語教室のお友達と一緒に夜、フレンチを食べに行くとか、そういうことも出来るようになり。おまけに、ちょうど父がフランス出張の機会があって、母に「通訳として来てくれ」って。

――お母さんにとって、すごい自信になりますね。

鶉 そうなんですよ。出張先で、父は「あなたの奥さんのフランス語はすごい!」と褒められたそうです。母は承認欲求が満たされて、今はすごい元気です(笑)。だからやっぱり、「お母さんだからこれをしちゃいけません、あれもしちゃいけません、昼も夜も子供のために生きなさい」って自らに課すのは不健康だったんだと思います。たとえば、夕ご飯のおかずにハンバーグを作ったけど、ひとつが焼き上がりに崩れてしまった。それを食べるのはうちではいつも母でした。父や子供たちには綺麗に焼けたハンバーグを並べて。

――些細なことだけど、献身というか。

鶉 そうです。そういうことが積み重なって、「自分のしたいことが出来ない、子供のために私は自分を犠牲にしてるのに子供は思うように育たない」ってなると、母親は子供と自分の関係の中で、自分を責めるし子供も責める。子供を責めたことで、また自分を責めるっていう負のループ。だけど、家庭外に自分を認めてもらえる場所を見つけられたことで、母はループを抜け出して元気になれたんじゃないかと思います。私が大学に入ってすぐの頃は、私の帰りが夜11時くらいになると、母は心配と怒りと入り混じった形相で、家の前で立って待ってたんですよ! でも今、私は24歳の実家暮らしですけど、仕事とか飲み会とかで終電帰りになっても、母は普通にぐうぐう寝ている。

――もう子供を管理しなくても安心出来るようになったんですね。

鶉 それはすごく良いことだなって思って。家族内のみで関係を限定しちゃうと、「私を認めて!」って承認欲求が他の家族に過剰に向きすぎて、家族みんながツラくなってしまう。たとえば母みたいに専業主婦で自分のための息抜きもしないタイプだと、夫と子供にすごい期待を向けてしまって、危険なのかなって。

――本人がツラいだけでなく、夫と子供にかかる期待=負担も大きすぎますよね。

鶉 いくら自分が完璧な妻・完璧な母であろうとしたって、夫と子供が完璧とは限らないじゃないですか。そこから逃れられて、母はもう今とても生き生きしていて、すごい良かったなって。これ、いい話(笑)。

――後編では、『岡田斗司夫の愛人になった彼女とならなかった私』という本のタイトル通り、愛人体質の女性と、愛人を求める男性たちについてのお話を伺っていきます。

(撮影・取材・構成=下戸山うさこ)

■鶉まどか/ 1990年、東京都生まれの元サークルクラッシャー。現在は都内で働くOL。

セックスのため女はここまでしなきゃいけないの!? もうひとつのセックス特集

 ページをめくるたび、これは21世紀に作られた雑誌なの? とめまいに襲われました。先週さんざんツッコミを入れた『an・an』のセックス特集は、まだマトモだったんだ……と知りました。そう、『an・an』はツッコめるんですよ、笑いという余地を残してくれているから。チンコ=教会なんて、まるでダチョウ倶楽部。「笑うなよ、笑うなよ」といいながら、笑ってもらうのを全力で待っている。うんざりする記事が多くても、毎年つい手にとってしまうのは、それゆえです。

 で、今回はじめて『GLITTER』9月号のセックス特集を読みました。その感想をひと言でいうなら、

「私たち女性は、ここまでして男性にセックスしてもらわなきゃいけないの!?」

でした。女性から男性に積極的に働きかけ、セックスをすること自体はすばらしい。みずからの欲望をただしく見極め、その解消のため能動的に行動するって、健全で当たり前のことですよね。欲望が薄く、セックスそのものに消極的な人もいますが、それはそれでセックスとの距離感を決める必要があります。相手がいることなので自分だけで決められないことも多々あるとはいえ、それでも主体性をもって自分がどうするかを決めていいのです。欲望の強さやセックス観は人それぞれでも、「自分の性の主体は、自分にある」というのは誰にとっても同じです。

 同特集は「メンズ113人に聞きました! 本音リサーチ」から始まります。類似の特集では、「私たちのセックス事情をリサーチ!」的なものからはじまるのがスタンダード。読者、もしくは読者と同年齢層の女性たちへのアンケート結果です。でもまあ、セックスする相手について知るのも大事といえば大事……と自分に言い聞かせながら読み進めたのですが、早々に失望しました。

 ここでは「私たちはどんなセックスをしているのか、したいのか」ではなく、「男はどんなセックスをしているのか、したいのか」に重きが置かれています。そんな姿勢で行われたアンケートだけに、よくもまぁこれだけ好き勝手なことをいえるなという回答だらけ。「ベッドで相手がどんなことをしたら燃えますか」→「何でも言うとおりにしてくれたら燃える」とか、「セックスレスになった原因」→「いつも彼女のイキかたが一緒で飽きた」とか。男性の幼稚で身勝手なセックス観をあぶり出すという意味では有意義でした。

 いくら匿名のアンケートでもそんなことを平気でいう男と私は寝たくありません。が、同特集ではこの後、どうしたらそんな男たちに抱いてもらえ、悦んでもらえるかの具体策が続々と展開されます。以下、その一例を紹介しましょう。

◎身体は男性好みにカスタマイズ

 アンケートによると、男性の約半数は「最近ドキドキしていない」そう。そんな男性の関心を引くべく、とにかくフェロモンを出せと読者を煽ります。フェロモンと女性ホルモンを混同しまくる内容も、エストロゲンを増やせばフェロモンが出ると誤解を招く記事も、指摘することすらアホらしい……。極めつけは、「メンズを引き寄せるフェロモンボディの作り方」。〈ウエスト、お尻、脚と男性が好きな部分が詰まった下半身を徹底的に鍛えるのがコツ〉といわれて、せっせとエクササイズに励む女性がもし本当に存在したら、肩をたたいて「ねえ、自分のためにきれいになろうよ」といってあげたいです。

◎マグロは万死に値する

 とにかくマグロ・バッシングがすごい! 無反応だとつまらない、というのは私も理解できます。でも私が男性だったら、それ以上に不安に駆られるでしょう。これはセックスにかぎった話ではないですよね。手料理をふるまって、何もいわず表情も変えずただ黙々と食べている男性がいたら、「おいしくなかったのかな?」と思います。長いつき合いで「こういう無反応な人なんだ」とわかっていれば別ですが、そうでないうちは自分自身を省みる人が多いのではないでしょうか。しかし、覆面座談会に出てくる男性たちは、自分に問題があるとは露ほども考えません。それどころか、「マグロは本当に男性を傷つけますよね。少しは動いてほしいし、演技でもいいんです」と、まさかの演技希望!

 セックスはコミュニケーションですから、盛り上げるため表現が多少オーバーになるのはアリ……というのが私の持論です。気持ちいいときに、あえぎ声をちょっと盛ってみたら、相手だけでなく自分も興奮に火が点くというのはよくあること。会話における〈話法〉みたいなものです。でもそれは、女性が自身の選択によって行うべきこと。男性の求めに応じて、まったく感じていないのに演技をするばかりでは自分がすり減ります。しかし、その男性はこう続けるのです。「(無反応の女性として以来)それから自信喪失して、5年間バイアグラを飲んでましたね」「マグロは男の人生を終わらせます」……なぜ女性が反応しないのかを考えず、己の自信のために演技を強要する男のセックスライフなんて、さっさと終わってくれていいですよ。

◎男性は疲れているので気を使え

 同特集ではなぜか「男は疲れている」という前提で、話が進みます。えーと、女性だって疲れていますけど? なのに、疲れてその気にならない男性のために、あるいは疲れているから前戯は省いてさっさと挿入だけしたい男性のために、女性はひたすら気を遣わなければならないそうです。

 前戯ナシのセックスは多くの場合、女性の心身に負担を強います。いきなり挿入されて気持ちよくなれるわけがない。でも、ここで男性に「前戯しなきゃ」というプレッシャーを与えてはダメ、というのが『GLITTER』流。そのストレスで男性の性欲が減退しては元も子もないという理由から、まず女性から男性への愛撫を先にして、射精寸前まで導くという方法が勧められます。こうして男性をいったん焚きつけたら、あとは男性自身が自分の興奮をさらに高めるために女性を愛撫しはじめますよ……というのがその理屈。彼女が俺を愛撫するのは、俺の興奮のため。俺が彼女を愛撫するのも、俺の興奮のため。とんだジャイアニズムです。

◎女は与える性、男は受ける性

 そして、すべての前戯が女性の気遣いなしには進みません。男性が的はずれなところを愛撫していたら、そっと手を取り感じるところに誘導する、どこを触れば感じるのかを鏡に映して見せながらレクチャーする、感じるポイントはよがり声とあえぎ声で教えてあげる……。よがり声とあえぎ声の違いもよくわかりませんが、すべて「どこが感じるの?」などと訊けない男性をやさしく導き、「そこじゃない」といわれると傷つく男性を守るための提案です。どうして男性から「考える」という行為をまるまる奪ってしまうの? セックスの最中、相手のことを考えることそのものが悦びにもなるのに。

 おっと失礼! その理由、ちゃんと書いてありました。「男性はデリケートな生き物。女性からセックスについてアレコレ言われることに敏感に反応してしまう傾向に。だからこそ、やさしく教えてあげて♡」。そんなコミュニケーショ不全の男性がお好きな女性は、過保護な母親よろしくボクちゃんに教えてあげてください。私はそんな男、まっぴらごめんです。

◎セックスレスの原因は女性にあり

 いまは日本の夫婦の4割がセックスレスといわれていますが、結婚していなくてもレスになる人が多いというのも周知の事実。それを予防するためには、まず原因を探らねば! ということで「男はなぜセックスしようといわなくなる?」という項目を見てみると、男性を萎えさせる女性のセリフ集が紹介されています。「今はダメよ。夕食の支度をしなくちゃ」「時間がないわ」「頭痛がするわ」「生理中だし、おなかも痛いし」って、頭痛や生理痛などの不調も口にできない関係って、セックスレス以前に何か問題がありますよ。しかもそれで萎える男って、人としてどうですか。

 また、レス状態にある男性へのアンケートでは、約9割が「改善策を考えていない」と回答。ゆえに、レスを解消するのも女性の役目です。その打開策は、2~3分で済む「ショートセックス」! 前回も書いたように、セックスという習慣を維持するために、自分が乗り気でなくても相手の欲求を受け入れる日があってもいいと私も思っています。でも、それは程度問題。あまりに頻繁だと、男性の排泄に女性がつき合うだけになります。それって、オナホールじゃん。でも『GLITTER』的解釈は違います。このショートセックスは女性にもメリットがあるとか。「オーガズムを感じるふりをする必要もなくなる」って……つまり、ふだんは演技している前提なんかい! そりゃセックスレスになるほうが自然ですって。

 ……と、すみません、怒りに任せて長々と紹介してしまいました、すみません。そうなんです、私は同特集を読んでいて、はっきりと怒りを覚えました。女性が主体的に性を愉しむことをあまりに無視した内容。気を遣った代償として抱いてもらい、最中は顔色をうかがって演技をする。女性の快感は、一体どこへ? ああ、怒りというのは間違いでした。私は哀しいのです。これをセックスというなら、私はセックスしなくていい。でもこれは、セックスではなく性サービスです。どうかこれを真に受けた読者が、自己犠牲の上に成り立つ性サービスをくり返して、自尊心をすり減らしませんように。

 ただ、「忘れられない刺激的な体験談!」として紹介されている読者体験談の半分は、外国人とのセックスなんですよね。せめてこれが、「女性にここまでしてもらわないとセックスできない日本の男って、結局ダメじゃん」という『GLITTER』流の皮肉であってほしい。そうだったら、少しは溜飲が下がるのですが。……いや、下がらないですね、やっぱり。

■桃子/オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

「ていねいな暮らし」系が陥りやすい、女性とはこうあるべきという価値観

 今年の〈と学会・トンデモ本大賞〉にて紹介された、『運を呼び込む 神様ごはん』(ちこ著・サンクチュアリ出版)。前編ではエクストラ発表と学会会員・本郷さんが取り上げたトンデモポイントをご紹介しましたが、後編ではその世界観の背景について語ってもらいました!

 結局、家庭で実践するには少々ハードルが高いという印象に終始した、ゆにわ流〈神様ごはん〉。それだけでなく、さらにもう少し掘り下げて読んでみると〈男尊女卑の考えが根底に見受けられる〉と、本郷さんは指摘します。

本郷「おいしい手作りの食事を出せばすべてがうまくいくということは、逆に言うと女が常に手作りの食事を作らねばならないというプレッシャーを与えられているわけですよね。『神様ごはん』には、女は台所にこもってればいいんだという、男尊女卑の古い考えを感じます。情報過多によって、〈男に選ばれる女でなければ価値がない〉〈価値を認められなければ生きている意味がない〉という価値観に染められちゃった人たちが、神様ごはんのような世界へいっちゃうんじゃないでしょうか」

 雑巾がけをして天津祝詞(あまつ のりと)を唱えたり、米を炊くたびに米と水の恋愛ドラマを想像するなど、私は正直いちいちそんなことやってられないと思ってしまうことばかりなのですが、『神様ごはん』を読んで実践しようと思う読者はどんな方たちだと思いますか?

本郷「いわゆる〈ていねいな暮らし〉という言葉に弱い人たちですよね。30代くらいから上にいくあたりの年代って、子どものお受験があったり、女性としての価値がどんどん下落していることに気づいて、でも目をそむけたかったり。そういう人が自分の存在意義を高めるために、こういった世界にのめりこむのかもしれません」

◎いにしえに惹かれる心

 この神様ごはんの世界は〈古神道〉の考えに基づいているとのことですが、実は子宮を崇める女性たちも〈古神道〉を引き合いに出しています。この手のスピ物件は、なぜ〈古〉を引っ張りだしてくるのか……という疑問に対する本郷さんの指摘は、実に分かりやすいもの。

本郷「単に〈古〉をつけると、現代で出回っている各宗派からつっこまれても平気だからでしょう。今あるものを利用すると『じゃあ氏子になりなさい』『檀家に入りなさい』と、既存のコミュニティに組み込まれるじゃないですか。ぶっちゃけ言ってしまいますが、今の人たちって宗教から利益は欲しいけど義務は背負いたくないというのが本音ですよね。それにはやはり既存のコミュニティやヒエラルキーがガッチリできているところに入りたくない。だから、すでに絶えてしまっているような、組織がなさそうなほうに行きたがるんじゃないかなと思うわけです」

 さらに、古神道と同じくらいよく使われるのが〈言霊〉の効果。ちなみに『神様ごはん』では、流し台(シンク)と思考(シンク)は連動しているので、流し台は常に美しく整え邪気を洗い流す。身体(しんたい)は神体(しんたい)だから、大事に扱うと神が宿ると解説されています。子宮教でも「産道=参道」なんて言っていますが、コレはどうとらえればいいのでしょうか。

本郷「単純に、読者に『え~! そうだったんだあ~』と思わせるためだけのもの。表面的に、読者を納得させて〈気づき(笑)〉という快感を味わわせるためだけにやってるんじゃないかと。古神道にこだわったら、古語の世界ですから、おそらく今ではもう探しようのない言葉とかあるはずなんですよ」

 そもそも、ダジャレレベルのものを〈言霊〉と言ってしまうことが、少々罰当たりなような気がします。

◎料理の神は、ここにいた!

本郷「本当の意味でお料理を神聖に一所懸命行うのだったら、土井善晴さんのお料理を見習うべき。NHK『きょうの料理』で神回と呼ばれるものがあります。具なしのおにぎり、いわゆる塩むすびを作るだけなんです。手をきれいに洗うところから始めて、塩むすびを作るまで15分! 宗教はまったく関係ないけれど究極の料理オタクであり、誰よりもお料理と向き合っている。あれこそが、神様ごはんでしょう(笑)」

 霊的なパワーを呼び込まなくても、愛情のこもったおいしいごはんは誰でも作れるもの。実用的でいて、〈神〉が宿る回もあるという『きょうの料理』で腕を磨き、おいしい料理という幸せをかみしめてはいかがでしょう。毎日の営みであるごはんに開運効果まで求めていては、神様もさすがにお疲れになるでしょうから。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)