東村アキコ『ヒモザイル』炎上の根幹に、専業主婦が夢を叶え自立する機会を奪われてきた「呪い」がある~泥臭いフェミニズム・メンズスタディーズとしての東村アキコ漫画 後編

 前回は、東村アキコの漫画『ヒモザイル』に関して、ヒモ男性を肯定する要素があった。金なし仕事なしモテないダサい、けど夢はある男性に対して、「夢を叶えるためには正攻法以外にも手段はある」というメッセージが込められていたからより炎上したと述べました。

■泥臭いフェミニズム・メンズスタディーズとしての東村アキコ漫画 前編 〜誰が殺したヒモザイル〜
http://mess-y.com/archives/26341

 それでは、金なし仕事なしモテないダサい、けど夢はある男性が、「夢を叶えるためには正攻法以外にも手段はある」という理念のもと、高給取り女性の好む容姿と性格で家事労働を負担する主夫となり、傍らで夢を追いかけることの、どこが読者の逆鱗にふれたのか、もう少し詳しく論じていきます。

◎女性の自立を妨げてきた「専業主婦の呪い」が反転している

 この件に関して、「無理矢理男女をマッチングするなんて、絶対うまくいかない」という批判は、少し的外れです。たとえ、出会いに誰かの強引な介入があったとしても、それとは関係なく当人たちの気が合ったり、好みが合ったり、利害が合ったりして婚姻に至ることはあります。反対に、当人たちが相思相愛だと信じている恋愛や婚姻関係だって、破綻することはままあるからです。

 私は、『ヒモザイル』炎上の核心にあったのは、次の懸念に尽きると考えています。

<ヒモザイルたちが専業主夫業の傍ら夢を追いかけ叶った時、経済的に自立した元ヒモザイル男性に、女性は捨てられるのではないか?>

 つまり、ヒモザイル男性の抱く「夢」こそが、専業主夫と働く女性の結婚の継続にあたる障害になり得るもの、と捉えられたのです。高給取りの女性にとって、専業主夫男性の「夢」がリスクになり得るということです。

 夢を叶えたヒモザイル男性が、『マイ・フェア・レディ』原作の『ピグマリオン』の主人公女性のように、自立して去ってしまう可能性は大いにありますよね。

「配偶者が夢を叶え経済的に自立したら、家事をやらなくなるのではないか?」
「配偶者が夢を叶え経済的に自立したら、子育てをやらなくなるのではないか?」
「配偶者が夢を叶え経済的に自立したら、自分を捨てて家から出て行くのではないか?」

 それは、長い間女性の自立を妨げてきた呪いにほかなりません。

 学問や仕事の機会、賃金の不平等といった社会的な差別や、「三歳児神話」や「過剰な母乳信仰」のような個人の精神の自由を否定する言説によって、女性が学問を修めること・働くこと・自立することなどは妨げられてきましたし、今も、それらの障害は完全に消えていません。

 フェミニズムやウーマン・リヴは、長く、この性別によるハンディを解消すべく、女性の権利を向上させるために戦ってきた運動です。「配偶者の夢が叶うことが婚姻継続のリスクになる」というような理屈によって、権利や自由を奪われてはいけないのは、女性であろうと男性であろうと同じです。専業主婦であろうが、専業主夫であろうが、「収入のない(少ない)方だけが相手の利益のために尽くす」ということ自体が間違いなのです。

「配偶者の夢が叶うことが婚姻継続のリスクになる」

 このことは、「専業主夫+働く女性」「専業主婦+働く男性」という夫婦モデルにおいては、「収入がない(または少ない)方が家事を負担する」、「収入がある(または多い)方が、より良い思いをすべきである(権力が強い)」という構造が成立することが多いという事実を浮き彫りにします。

 『ヒモザイル』は、ミサンドリーとミソジニーとメンズリヴが同居したメンズスタディーズの物語であり、『ヒモザイル』を批判するジェンダースタディーズ的見解の陰には、以前は「ミソジニー」として女性の自立を妨げていたものが反転し、「男性が自立するために結婚を利用するのは許せない」「ヒモは許せない」という思いがあったことは忘れてはなりません。

 また、『ヒモザイル』の炎上からは、「売れないヒモミュージシャンは、売れっ子になれば糟糠の妻を捨て売れっ子の女優やタレントに乗り換える」という、今なお火が消える気配がないゲスの極み乙女。&ベッキー不倫事件にも似た匂いを嗅ぎ取れます。「(お金と時間を)尽くした女(妻)が不利益を被るなんて許せない」わけです。『ヒモザイル』の炎上は、これらの複雑な利害関係をあぶり出したのです。

◎内面化した差別意識から逃げない『タラレバ娘』

 さて、「とにかく女が損をしないようにする」というのは、一見、とてもフェミニズムっぽい言葉ですが、勘違いしてはいけません。

 「女性や様々なマイノリティーが、マイノリティーであるという理由によって、差別や不利益を被らないようにする」ということが、フェミニズムであり、ジェンダースタディーズなのです。マイノリティーの権利向上は、マイノリティーの特権化でも、マジョリティーの権利侵害でもないのです。

 「誰かが損をしたり不利益を被るかもしれないから、○○という権利は制限しよう」というのは、ざっくり言えば公共の福祉の概念ですが、こうした公共の福祉的監視がジェンダースタディーズと結びつくことを、私はとても危惧しています。

 なぜなら、「大勢の人が不愉快な思いをする」とか、「道徳に反している」と言う理由で権利を制限されることこそ、マイノリティー差別の歴史に他ならないからです。

 私が、『ヒモザイル』や『東京タラレバ娘』といった東村アキコ氏の漫画を、メンズスタディーズ、フェミニズムのひとつだと考える理由は、これらの作品に、「正攻法じゃなくても、とにかく、思ったまま突き進んじゃえ!」という、フェミニズムという名前の出来る前のフェミニズム、あるいは、1990年代後半に輸入されたクィアスタディーズや、安野モヨコの『ハッピーマニア』のような、自由を求めるエネルギーを感じるからです。

 『東京タラレバ娘』の主人公で脚本家の鎌田倫子と、その友人でネイリストのかおり、実家の居酒屋で働く小雪は、「2020年の東京オリンピックまでには結婚したい」という原動力によって、「明らかに価値観が合わない相手との恋愛」や「元カノ兼セフレ」「不倫」といった、目的が結婚であれば、明らかに方向性を間違えていたり、現実逃避であったり、ハードルが高かったりする恋愛に向かって、猪突猛進に進んでいきます。彼女たちは、自分が進んでいる方向が明かにベストではないと気付きつつも、「わかっちゃいるけどやめられない」「わかっちゃいるけど止まれない」とばかりにもがき続けるのです。

 確かに、『東京タラレバ娘』の世界観は、「行き遅れ女の井戸端会議」「30代は自分で立ち上がれ もう女の子じゃないんだよ」とか、「女は結婚すればセコンドにまわって 旦那さんや子供をサポートしながら生きていく」といったエイジズムやルッキズムや女性蔑視に満ちています。主人公たちは、そうした差別を突きつけられる度に傷つき、怒りつつも、そうした差別的な視線と無関係になれず、それどころか、「あの女より顔もスタイルもマシ」「もう33歳だけど40オーバーの独身女よりは全然マシ」と差別を内面化してすらいます。

 「でも いくら「マシ」を数えたって 私の人生全然幸せじゃない」主人公の倫子は、人を年齢や性別や容姿で比べることと、自分自身の幸せが無関係であることをわかっていながら、若くて才能があって、向こう見ずで図々しい女性に引け目を感じます。

 エイジズムやルッキズムや女性蔑視といった差別を否定しつつも、どこか若さや美しさに引け目を感じてしまう。差別を否定しようとする人間の抱える矛盾を描くことは、「自分の抱える差別意識をなかったことせず向き合うこと」の描写でもあり、『東京タラレバ娘』は、こうした、人間が抱える矛盾を描くバランスがとても上手いのです。

 それは、「清廉潔白な反差別思想」「曇りなきフェミニズム」のような完璧で高尚なものではなく、泥臭く垢抜けないものなのかもしれませんが、差別を否定しつつも、どこかで差別を内面化している人間が、それでも、差別とは別の価値の発見、「自分の幸せ」を見つけるために奔走する『東京タラレバ娘』は、多くの読者に、極めてフェミニズム的な思索と感動をもたらす物語であると思うのです。

 そして、『東京タラレバ娘』におけるジェンダースタディーズ的バランス感覚の良さ、ミソジニーを孕みながらも力強いフェミニズムの物語になっているさじ加減は、「主人公にとって嫌な女を憎まない・貶めない」ことにもあります。

 鎌田倫子からWEBドラマの脚本の仕事を枕営業によって奪った元グラドルの美人脚本家も、脚本家として才能があり良い仕事をする人物でしたし、倫子から偶然脚本の仕事を奪い、あまつさえ「(仕事を辞めたら)ココ(事務所)そのまま貸してください!」「そしたら私 敷金礼金引っ越し代ナシで 事務所で仕事ができる!」という図々しいことを言う倫子のアシスタントのマミちゃんも、バイタリティと才能のある脚本家です。「不当なこと」や「ズルい」と言われることをする女性とその人物が持つ才能を、無関係なものとして描いているのです。

 「不当さ」や「ズルさ」よりも「才能」が勝つ、言い換えれば、「誠実さ」や「人間性」ではなく、「その作品が面白いか否か?」が判断基準となる世界、それは、創作においては極めてフェアな世界です。

 もう一つ、東村アキコ的なフェミニズムの特徴は、「損をしたくない・不利益を被りたくない」ではなく、「得をしたい・やらない後悔よりやって後悔した方がいい」という理念が貫かれていることにあります。それは、「即物的である」とか「功利主義である」といった批判も十分に受けそうなものではありますが、東村アキコ漫画には、「とにかく思ったまま突き進みたい」「どうにかして自己実現したい」といった、勢いとエネルギーと、自由さとポピュラリティがあります。

 泥臭く清廉潔白とは言えない東村アキコのフェミニズム・メンズスタディーズには、そうであるがゆえに描けるリアリティと、自己実現・自己肯定に向けたエネルギーや自由さがあり、だからこそ批判を浴びる以上に多くの人を虜にするのではないでしょうか。

柴田英里
現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。@erishibata

女性器も筋トレ Bluetooth対応の最新膣トレグッズ

お風呂のあとにお湯がジャーって出ちゃうの、女性器鍛えたら治るかな?――人類が女性器に加えてきた、美白・脱毛・装飾などなどの“女性器カスタマイズ”の歴史をふりかえる連載「女性器カスタマイズAtoZ」。今回は、「膣トレ」のお話です。(連載・全10回予定)

***

膣の締まりをよくするトレーニング、通称「膣トレ」。

この言葉を広めたのは、お察しの通りあの女性誌です。2009年、『an・an』(マガジンハウス)の「感度がアップしてしかもキレイになれちゃう膣トレーニングBOOK」から話題になりました。

ですが、実はこの「膣トレ」には、なんともう70年近い歴史があるってご存知でしたか? ということで今回は、人類が膣トレを誕生させるまでの秘話から、専門店に聞いた最新膣トレグッズまで、膣トレ70年史を一挙に振り返ってまいりたいと思います!

◎なぜ膣トレをするの? 膣を鍛えて得られる効果

膣トレで鍛えられるのは、正確には「骨盤底筋群」と呼ばれる筋肉です。ここを発達させることにより、女性、また女性器の持ち主には次のようなメリットがあります。

(1)膣オーガズムを得やすくなる(いわゆる「中イキ」)
(2)尿モレ対策になる
(3)膣から子宮が飛び出てしまう病気「子宮脱」の予防になる
(4)入浴後に膣からお湯がジャバーって出ちゃう現象が改善される
(5)自分自身の女性器をきちんと知り、大切にする意識が育つ

2010年に出版された『ちつ☆トレ』(荻原かおる著 マガジンハウス)には、以下のような膣トレ体験報告が挙げられていました。

・始めて3日で膣イキを体験しちゃった(香さん・23歳)
・尿モレが完全になくなり、締まりがアップ(Tさん・43歳)

 ということで膣トレは、自分のためになるものなのに……なぜか「膣トレは女が男を喜ばせるためのものだ!!」って思ってる人も、世の中にはいますよね。

◎それは、誰のための膣トレか

例として、雑誌『SAPIO』(小学館)に掲載された記事をみてみましょう。

「男の気持ちを分かっていない 女たちの勘違いが「暴走中」なのでは?
女性誌で百花繚乱のセックス特集。でもよくよく見てみると、どこかマヌケでピントがずれているような……。」

ヤバい。見出しの時点でもうヤバいです。見事に期待通りのイタさ。もうニヤニヤが止まりません。このうえ更に期待感をあおるのは、これに続く文章を書いているのが、あのみうらじゅん氏であるということですね。

「だいたいにして、「膣トレ」と聞いただけで男は萎えるものなんです。「私、膣トレやってんだ」って言われたら困るよね。
まずは「ズボンの上からでも勃たせる大特集」をやってほしい。ズボンの下にはパンツもあって、セックスに至るまでに2回障壁がありますからね。「ズボンから勃っていたらこっちはもう大丈夫」ということに早く気付いてほしいですね。そこをお留守にして、いくら『an・an』を買って膣トレーニングをやられたとしても、杉本彩さんじゃないんだから、順序逆転もいいところです。」
(SAPIO 2010年9月29日号/通号493 p.86~88より引用)

あ~あ……やっちゃってるわ。

ひいき目に見れば、これはあくまで男性読者を喜ばせるために発表された文章だからこんなことになっちゃってるんだろうと思うんですが、それにしたってこちらの発言はあまりにも雑でした。

「『膣トレは尿モレや子宮脱防止になる!』など、女性はセックスをすぐ「医学」や「健康」に結びつける癖があるんですね。」
(SAPIO 2010年9月29日号/通号493 p.86~88より引用)

違うの。違うのよ、みうらさん!

そもそも膣トレっていうのは、男性医師が始めたものなのよ!!

◎膣トレ誕生秘話

そうなんです。この世に膣トレを生んだのは、男性産婦人科医なんです。その名はアーノルド・ケーゲル、1894年アメリカ生まれ。彼が膣トレを開発したのは、自分のちんちんを締めあげてもらうためではありません。産後の尿モレに悩む患者たちを救うためでした。

当時の医学では、尿モレは手術で治すことになっていました。しかし、その手術の効果は、たった6カ月しかもたないというお粗末なものだったのです。

「手術以外の解決策はないものだろうか……」

もちろん、手術をしていればお医者さんは儲かります。けれど、たった6カ月しかもたない手術を繰り返し、患者たちに大きな負担を強いることに、ケーゲル先生は疑問を抱いたのです。

さっそく彼は研究に取り掛かりました。忙しい日々の中で、診察や治療もこなしつつ、病院から帰宅した後、自宅で妻にも意見を聞きながら……。やがてついに尿モレ解決策をまとめあげたころには、研究開始からなんと15年もの月日が経っていました。

そんな努力の結晶として発表されたのが、膣圧計測器「ケーゲル・ペリネオメーター」です。これは、messyの膣トレコンテストでも使用された機器の原型となったものですね。自分の膣の締まり具合を数値で把握できるようにすることで、膣トレをサポートし、手術なしで尿モレを解決しようというわけです。

ケーゲル先生はその後も、膣圧計測器を安い値段で多くの患者に提供し、「ケーゲル体操」と呼ばれるトレーニングを世に広め続けて生涯を終えました。

ちなみにケーゲル先生自身は、前妻に毒殺されかけるなど、かなり女運の悪い男性だったようです(参考記事:シカゴトリビューン ※原文英語)。それでも多くの女性のために、ケーゲル先生が私欲を捨てて努力したからこそ、今の私たちには膣トレがあるのですね。

だけどぶっちゃけ、思うよね。

体操よりも、楽したい……。

ということで最後には、専門店に聞く最新の膣トレグッズをご紹介いたしましょう!

◎入れとくだけでOK!? Bluetooth対応!? 最新膣トレグッズラインナップ

今回お伺いしたのは、女性のみで運営するセックスグッズストア「LOVE PIECE CLUB」。ネットショップもありますが、ショールームにずらりと並ぶ膣トレグッズはなんとも壮観です。

上品なスタッフさんに案内され、女性限定の店内で見る最新膣トレグッズは、色や形もさまざま。さくらんぼ型の可愛いボールや、入れておくだけでOKなめんどくさがり屋さん向け、バイブ付きで一台二役のタイプなど色々ありました。

その中でもヤバかったのが……「マジックケーゲルマスター」。

 なんと……
 こいつ……
 しゃべるんです!!!!!!

ぴよっと出ているしっぽは、Bluetooth用のアンテナ。これでスマホと連動し、「しめて~ ゆるめて~」などと声をかけてくれるんです。

他にも、膣圧を測る機能はもちろん、膣トレを続けるとアプリ内の植物が育っていく楽しみなど、膣トレを続けられる工夫がいっぱい!

ケーゲル先生、膣トレもここまで来ましたよ……。70年前のお医者さんの15年間の研究に敬意を表しつつ、現代に生きる私たちも、女性器をしっかり鍛えていきましょう。ほかならぬ、自分自身のために。

参考文献:
Deborah Sundahl 著 「Female Ejaculation and the G-spot」p.40
荻原かおる著「ちつ☆トレ」p.3

取材協力:LOVE PIECE CLUB(http://www.lovepiececlub.com/)

牧村朝子
1987年生まれ。タレント、文筆家。2013年にフランス人女性と同性婚、現在フランス在住。セクシャリティをテーマに、各種メディアで執筆・出演を行う。将来の夢は「幸せそうな女の子カップルに”レズビアンって何?”って言われること」。
twitter:@makimuuuuuu
ブログ:http://yurikure.girlfriend.jp/yrkr/

女性器も筋トレ Bluetooth対応の最新膣トレグッズ

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膣の締まりをよくするトレーニング、通称「膣トレ」。

この言葉を広めたのは、お察しの通りあの女性誌です。2009年、『an・an』(マガジンハウス)の「感度がアップしてしかもキレイになれちゃう膣トレーニングBOOK」から話題になりました。

ですが、実はこの「膣トレ」には、なんともう70年近い歴史があるってご存知でしたか? ということで今回は、人類が膣トレを誕生させるまでの秘話から、専門店に聞いた最新膣トレグッズまで、膣トレ70年史を一挙に振り返ってまいりたいと思います!

◎なぜ膣トレをするの? 膣を鍛えて得られる効果

膣トレで鍛えられるのは、正確には「骨盤底筋群」と呼ばれる筋肉です。ここを発達させることにより、女性、また女性器の持ち主には次のようなメリットがあります。

(1)膣オーガズムを得やすくなる(いわゆる「中イキ」)
(2)尿モレ対策になる
(3)膣から子宮が飛び出てしまう病気「子宮脱」の予防になる
(4)入浴後に膣からお湯がジャバーって出ちゃう現象が改善される
(5)自分自身の女性器をきちんと知り、大切にする意識が育つ

2010年に出版された『ちつ☆トレ』(荻原かおる著 マガジンハウス)には、以下のような膣トレ体験報告が挙げられていました。

・始めて3日で膣イキを体験しちゃった(香さん・23歳)
・尿モレが完全になくなり、締まりがアップ(Tさん・43歳)

 ということで膣トレは、自分のためになるものなのに……なぜか「膣トレは女が男を喜ばせるためのものだ!!」って思ってる人も、世の中にはいますよね。

◎それは、誰のための膣トレか

例として、雑誌『SAPIO』(小学館)に掲載された記事をみてみましょう。

「男の気持ちを分かっていない 女たちの勘違いが「暴走中」なのでは?
女性誌で百花繚乱のセックス特集。でもよくよく見てみると、どこかマヌケでピントがずれているような……。」

ヤバい。見出しの時点でもうヤバいです。見事に期待通りのイタさ。もうニヤニヤが止まりません。このうえ更に期待感をあおるのは、これに続く文章を書いているのが、あのみうらじゅん氏であるということですね。

「だいたいにして、「膣トレ」と聞いただけで男は萎えるものなんです。「私、膣トレやってんだ」って言われたら困るよね。
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あ~あ……やっちゃってるわ。

ひいき目に見れば、これはあくまで男性読者を喜ばせるために発表された文章だからこんなことになっちゃってるんだろうと思うんですが、それにしたってこちらの発言はあまりにも雑でした。

「『膣トレは尿モレや子宮脱防止になる!』など、女性はセックスをすぐ「医学」や「健康」に結びつける癖があるんですね。」
(SAPIO 2010年9月29日号/通号493 p.86~88より引用)

違うの。違うのよ、みうらさん!

そもそも膣トレっていうのは、男性医師が始めたものなのよ!!

◎膣トレ誕生秘話

そうなんです。この世に膣トレを生んだのは、男性産婦人科医なんです。その名はアーノルド・ケーゲル、1894年アメリカ生まれ。彼が膣トレを開発したのは、自分のちんちんを締めあげてもらうためではありません。産後の尿モレに悩む患者たちを救うためでした。

当時の医学では、尿モレは手術で治すことになっていました。しかし、その手術の効果は、たった6カ月しかもたないというお粗末なものだったのです。

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もちろん、手術をしていればお医者さんは儲かります。けれど、たった6カ月しかもたない手術を繰り返し、患者たちに大きな負担を強いることに、ケーゲル先生は疑問を抱いたのです。

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そんな努力の結晶として発表されたのが、膣圧計測器「ケーゲル・ペリネオメーター」です。これは、messyの膣トレコンテストでも使用された機器の原型となったものですね。自分の膣の締まり具合を数値で把握できるようにすることで、膣トレをサポートし、手術なしで尿モレを解決しようというわけです。

ケーゲル先生はその後も、膣圧計測器を安い値段で多くの患者に提供し、「ケーゲル体操」と呼ばれるトレーニングを世に広め続けて生涯を終えました。

ちなみにケーゲル先生自身は、前妻に毒殺されかけるなど、かなり女運の悪い男性だったようです(参考記事:シカゴトリビューン ※原文英語)。それでも多くの女性のために、ケーゲル先生が私欲を捨てて努力したからこそ、今の私たちには膣トレがあるのですね。

だけどぶっちゃけ、思うよね。

体操よりも、楽したい……。

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その中でもヤバかったのが……「マジックケーゲルマスター」。

 なんと……
 こいつ……
 しゃべるんです!!!!!!

ぴよっと出ているしっぽは、Bluetooth用のアンテナ。これでスマホと連動し、「しめて~ ゆるめて~」などと声をかけてくれるんです。

他にも、膣圧を測る機能はもちろん、膣トレを続けるとアプリ内の植物が育っていく楽しみなど、膣トレを続けられる工夫がいっぱい!

ケーゲル先生、膣トレもここまで来ましたよ……。70年前のお医者さんの15年間の研究に敬意を表しつつ、現代に生きる私たちも、女性器をしっかり鍛えていきましょう。ほかならぬ、自分自身のために。

参考文献:
Deborah Sundahl 著 「Female Ejaculation and the G-spot」p.40
荻原かおる著「ちつ☆トレ」p.3

取材協力:LOVE PIECE CLUB(http://www.lovepiececlub.com/)

牧村朝子
1987年生まれ。タレント、文筆家。2013年にフランス人女性と同性婚、現在フランス在住。セクシャリティをテーマに、各種メディアで執筆・出演を行う。将来の夢は「幸せそうな女の子カップルに”レズビアンって何?”って言われること」。
twitter:@makimuuuuuu
ブログ:http://yurikure.girlfriend.jp/yrkr/

「奨学金返済のために風俗で働く女子大生」 社会問題を解決するために「風俗」を掲げる手法の限界

 奨学金を返済するために風俗で働く女子大生の存在が注目されています。火付け役は、昨年10月に上梓された中村淳彦氏による『女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル』(朝日新聞出版)でしょう。本書は、生活費を稼ぐために、あるいは昨今問題となっている「奨学金」の返済をするために、女子大生が風俗で働いている実態を描き、日本で貧困が深刻な問題になっていることを示しています。

 11月には『NEWS23』(TBS系)でも、「学費借金400万円 増える 風俗で働く女子学生」という特集が組まれました。しかし、togetter「NEWS23で取り上げられた奨学金を風俗等で返済する女子大生特集を観た人々」を見れば明らかなように、番組で取り上げられたのは、風俗ではなくキャバクラで働く女子大生でした。キャバクラも風俗の一形態ではありますが、「風俗」と聞いて私たちが思い浮かべるのはデリヘル、ピンサロなどの性風俗です。「風俗」という言葉のほうが「キャバクラ」よりも話題性があると踏んだ、番組側の戦略なのでしょう。

 しかしこうした手法をとることは問題の実像を曖昧にしてしまいます。問題の根幹にあるのは、貧困や奨学金であるにもかかわらず、この取り上げ方では「風俗」ばかりひとり歩きしてしまうリスクがありますし、そもそも「風俗を扱えば話題になる(からキャバクラとは書かなかった)」という考え方は、風俗を特別視しているという意味でスティグマを制作側が持っているのではといぶかしんでしまいます。

 そもそも、私は「奨学金を返済するために風俗で働く大学生」は決して多くないと考えています。奨学金は、卒業後に借金という形で圧し掛かってきますが、在学中は支払い免除となっているので、「借金をしている」という感覚が弱い。卒業後の奨学金を返すために在学中に働く人は少ないのではないでしょうか。もちろん、経済的な余裕が無い中で、奨学金を使って大学に通っている学生には、生活費や学費を稼ぐために風俗で働く人もいるでしょう。しかし、それは「奨学金の返済」が目的とは言えない。そもそも問いの立て方が間違っているのではないかという疑念があります。

◎問題は「風俗」にあるのか

 さて、以前より「福祉行政は風俗産業に敗北している」「風俗がセーフティーネット化している」といった言説が見られます。そうした現実はあるのかもしれません。経済的困窮など様々な事情で困難な状況に陥っている人々への福祉はまだまだ十分だとは言えない。ただ一方で、風俗はあくまでビジネスであり、福祉として、セーフティーネットとして期待するべきものではありません。

 さらに言えば、脆弱な社会保障・社会福祉を批判するために、「ビジネスであるにもかかわらず、風俗がセーフティーネットとして機能している」という論調を展開することは、「“あの風俗”がセーフティーネットになってしまっている」という、風俗への否定的な価値観がうかがい知れます。または「セーフティーネットとしての風俗」なら“まだ”許せるという意識の現われなのかもしれません。

 風俗を「コンビニバイト」に変えてみてください。「コンビニバイトがセーフティーネットになってしまっている」。何を言いたいのかよくわからなくなりませんか? なぜ「風俗」では成立するのに「コンビニバイト」では成立しないのか。それは風俗に対しての特別視があるからです。あくまで風俗はビジネスの一形態でしかありません。こうした言説を展開する人の価値観が透けてみえる可能性があります。

 奨学金返済のために風俗で働いている女性が仮にいるとして、それの何が問題なのでしょうか。繰り返しになりますが、風俗はあくまでビジネスであり、他の賃金労働となんら変わらないはずです。一連の問題提起の中で注目するべきなのは「風俗」ではなく、「奨学金」なのです。

 もちろん、奨学金返済のためであれ、他の違った理由であれ、望まない就業を強いられているのであれば、そうした状況を改善する必要はあるでしょう。

 考えられるのは、風俗業界の労働環境を見直すことがひとつあります。風俗は他の業界と比べて肉体的な接触の多く性感染症のリスクも高いですし、また個室、あるいは限定された空間の中で接客されるため、利用者から暴力を振るわれた場合、自分で対応しなくてはいけない場面がでてきます。業界全体での定期検査の実施、スタッフの配置などを変えることで、この問題は改善されるはずです。あるいはマイナンバー制度が始まる際の混乱が顕著なように、他の業界では当然行われている確定申告、納税などが、あやふやにされているところが見られます。他の業界とも同様の「ビジネス」であるためは、他の業界が当たり前にやっていることをやらなくてはいけません。

 風俗業界に限定された話ではありません。そもそも「望まない就業」をしなくてはならない背景には、「働かなくてはどうにもならない」という貧困問題があります。ここをどうにかしなければ根本的な解決には至りません。また、女性の多くが奨学金返済に苦しんでいるのであれば、その背景には男女の賃金格差があるのかもしれません。卒業後に返すあてのある人と、就職できるかどうかもわからず、就職したとしても低賃金で、お給料を返済に充てる余裕がない人とでは、在学中の焦燥感にも違いが生まれることは十分に考えられます。また、ここでは踏み込んで書きませんが、性搾取の問題も考えなければいけない重要なトピックスだろうと思います。

◎客寄せパンダだけに注目してはいけない

 以前執筆したように、ある条件下では、奨学金を受け取りながら4年間大学に通った場合、その間に576万円の借金を背負い、月に約3万2000円返還しても完済まで20年かかる計算になりました(返還総額は775万1445 円)。いま計算したものは有利子ですが、奨学金のほとんどが有利子です。これを無利子にすると、200万近く返済総額が減る。それだけでもかなりの負担軽減になるでしょう。

 奨学金を借りる家庭の中には、そもそも経済的な余裕がほとんどないという家庭も多くいます。生活費や学費を稼ぐためにアルバイトをしていて、学業が疎かになってしまう学生が出ているかもしれない。有利子が無利子になると、単純に考えて200万ほど浮くわけですから、それを生活費や学費に当てられるようになり、アルバイトを熱心にしなくとも済むようになる可能性があるでしょう。就職活動を十分に準備して行う余裕も生まれると思います。

 ちなみに、「奨学金.Net」には、返済義務のない給付型の奨学金を出している企業や財団がまとめられています。企業や財団に頼ることなく、国全体が給付型の奨学金制度を確立してくれるのが理想ですが……。

 さて、いま見たように奨学金問題を考える際に「風俗」の話はいっさい出てきません。「風俗」で働く女性を通して、奨学金や貧困を考えることは効果的で、重要なのかもしれませんが、風俗にばかり目がいって、問題を解決するための建設的な議論が出来なくなってしまっては元も子もないでしょう。

 深刻な問題を伝える際に、人目を引くために、センセーショナルな話題や言葉を持ち出すことは度々あります。だからといって、Aを伝えるためにBを疎かにしていいということはありません。スティグマを抱えている「風俗」の問題を疎かにしているのが、冒頭で紹介した『NEWS23』の姿勢なのだと思います。センセーショナルな話題に飛びついてしまうのは人間の性だと思いますが、そこで止まるのは、メディアの思うが侭でなんだか悔しい気がしませんか?
(門田ゲッツ)

本当にあった生活保護の水際作戦 大学進学を諦めたシングルマザーの実体験

 いつもスッピン、メガネ、サンダルで、女子力の欠片もない上原だけど、いつか白馬に乗ったイケメン王子様が救いの手を差し伸べてくれるはず! シングルマザー女子大生・上原由佳子です。

 ここ数年、白馬の王子様が迎えに来てくれる日を願わなかったことは無い! と、言っても過言ではありません。だって「あなたを助けたい!」「あなたを救ってあげたい!」と大きな声で、社会の中心で愛を叫んでいる人達は多いけど、上原の狭いせまーい視野に入っている人達は、いまだに救われなていないんだもの。

 ただ、上原が無計画に大学進学してみたり、突拍子もないことを言ったりするのは、“救われたい”と言うより“変わりたい”と思っているからのような気がします。だけど、切実に“救われたい”と願ったことがありました。

 それは、生活保護の申請に行ったときのことでした。今回は、上原が「生活保護の水際作戦」にあった話をしたいと思います。

◎こんな家出て行ってやる! その前に。

 大学進学も決まっていた一昨年の11月、上原は突如、大学に進学することが怖くなりました。

 祖母の家に住ませてもらっているから生活が困窮することはないものの、日々繰り返される祖母の嫌味と暴言。機嫌が良いときは優しい祖母ですが、数時間単位で機嫌が変わり、不機嫌なときには、「死ね」「消えろ」「出て行け」「気持ち悪い」と独り言のように、私に呟いてきます。そんなときに上原が娘ちゃんを叱ると、「お前は気持ち悪いんだよ! お前が娘ちゃんを叱るな!」と罵倒される。娘ちゃんは娘ちゃんで、上原が叱られても祖母に言いつければ助けてもらえると考えている節があって、上原の言うことを聞いてくれません。祖母のお世話になっているのは確かですから何も言い返せませんし、出て行くお金もありません。いつまでも祖母の機嫌を伺いながら、この家で生きていかなくちゃいけないんだと考えると、いつか不満が爆発して、突発的に娘を殺してしまうのではないか、と思うほど当時は追い詰められていました。

「もう無理だ。大学入学は辞退して働こう。でも、新しい家に移るお金がないから、生活基盤が整うまでは生活保護を受けられるようにしなきゃ」

 そう考え、市役所に相談しに行くことにしました。

◎これが噂の水際作戦?

 市役所に着くまでのバスの中で、感情的になって話をしたら伝わないから落ち着いて話そう、と何度も自分に言い聞かせていました。福祉課は普段、子ども手当や児童扶養手当の申請をしている課とは違う雰囲気が漂っています。なんか薄暗い気がするし、長い間洗濯していなそうな汚れた服を着た人がいるし、相談ブースからは相談者らしき人の怒鳴り声が聞こえてくる。異様な光景に恐怖を感じて、順番が来るまでスマホゲームをして気を紛らわせることに。お、これ今週の最高スコアじゃね?

「うえはらさーん」

 名前を呼ばれて相談ブースへ。そこには、色白でぽっちゃりした中年女性が優しそうな笑顔で迎えてくれました。ああ、よかった……。福祉課の人って冷たそうなイメージがあったけど、この人なら大丈夫かも。親身になって話を聞いてくれる中年女性に、祖母の暴言で気が狂いそうなこと、このままだと娘を虐待してしまうんじゃないかと不安を抱えていること、娘にとってもよくないんじゃないか、そりゃあもう、これでもか! ってくらい洗いざらい抱え込んでいた気持ちを話しました。

「辛かったでしょう、たくさん我慢してたんですね……。上司に報告して申請書お持ちしますね」

 女性の丁寧な対応に、私はホッとしました。大学には行けなくなっちゃうけど、祖母から罵倒されることも、上原の怒りが娘に向く心配も無くなる……。やっと終わるんだ。これで救われる。

 数秒後、奥から別の女性の激しい怒鳴り声が聞こえてきました。

「はあ!? 一軒家で間借り!? しかも若いんでしょ? 受給できるわけないでしょ!!!!! 家族に頼るように言いなさい!!!」
「いや、でも……親族からの支援は受けられないと。」
「親族を頼るように説得しなさいよ!!!(激怒)」

 これを水際作戦と呼ぶのでしょうか。私は、水際作戦を実行されているのでしょうか。生活保護の申請は、誰でも出来るものだし、親族がいるから……って、親族と上手くいかないから相談してるんだし、窓口での申請拒否は違法なんだけどな……。

 ああ、どうしよう、ダメだ、涙が出そう。せめて、聞こえないようにしてくれたら良いのに。私を帰したくて、わざと聞こえるようにしてるのかな? このまま生活保護も諦めて、祖母の家にずっといて、私が錯乱状態に陥って何かしでかしてしまったらどうしよう。娘に手を上げないためにも、娘を置いて上原ひとりで出て行くしかないのかな……。不安に押し潰されそうになっていると、中年女性が申し訳なさそうな顔で戻ってきました。

「上原さん、頼れる親族はいないかな?」
「いまお話したように親族を頼って辛くて、頭がおかしくなりそうだから来たんです」
「生活保護を受給したら大学はいけないけど、それでもいいの?」
「はい」
「でも、大学いくために勉強してきたんでしょ?」

 よくないけど、こうするしかないんです。

「……あの、さっきの会話筒抜けでしたよ」
「……えっ」
「それに、いちおう制度を調べて相談に来ているので、これが水際作戦なんだってことも知ってます」
「ごめんなさい。私の力不足で……」
「あ、いや…………私のせいで不快な思いをさせてしまって申し訳ないです。あんなに怒鳴られたらイヤですよね」

 「私の力不足で」ってどういうこと? 窓口の職員さんに力があるかないかで、生活保護が受給できるかどうかが決まるの? それっておかしくない?

「上原さん、こんなに冷静に話せるのに、どうして困窮しちゃったんでしょう……」
「感情的に話しても伝わらなかったことがあるので、冷静に話してるだけで、さっきの会話が聞こえた時点で泣きたい気持ちでいっぱいですよ……。もう帰ります……」

◎白馬の王子さまはどこ?

 上原は、シングルマザーの当事者団体で活動していたし、貧困問題のシンポジウムにも参加して勉強してきました。だから、支援団体に繋がっても制度利用ができないと“救われない”ことくらい知っています。上原も活動の中で見てきた人たちと同じように“救われない”んだ。悔しさとやり場のない怒りで涙が溢れてきました。

 バスに乗る気力がない。やっぱり私は、祖母の家にいて、進学するしかないんだ。勉強して、同じような仕打ちを受ける人が少しでも減るように、いつか、どこかに、人目に触れるカタチで今日の出来事を書き残そう……。

 と、悔し涙を原動力に変え、数カ月後に進学した直後、ラッキーなことに、この連載がスタートしました(爆笑)。ちょっぴり……、いや、かなり早すぎた気はしますが、これが上原の水際作戦体験記です。

 涙でまぶたが腫れてブサイクに磨きをかけていた“あの日の私”を救ってくれる白馬の王子様はあのとき現れませんでした。でも、「変えてくれるひと」の存在があり、今があります。幸い、祖母の暴言攻撃は一時的に落ち着いていますし。それに普段は、本当に優しいんですよ。

 あの日の上原のように苦しんでいる人達は、たくさんいます。生活が困窮していたり、精神的/肉体的に限界を感じていたりする。ひとり親の起こす事件が報道されるたびに自分と重ねて見てしまいます。上原だって、ボタンを1つかけ間違えたら事件と同じ結果になっていたでしょう。どんなに「助けて!」と言っても、どんなに「助けたい!」「救いたい!」と言われても、結局救われなかった人達は、次第に誰にも迷惑をかけないために孤立して、出来るだけ傷付かないように殻に籠もって、必死に生き延びているのだと思います。だって、上原がこうして思い出して書くだけでも辛いのに、いま、そういった環境に置かれている人達は、もっともっと辛いし、苦しいですよね。

 さて、この原稿を書いている間、思い出して泣くのを回避するために2回の漫画休憩を挟みました(笑)。メガネ男子に癒された上原はいま、二次元の女の子になりたい! と、切に願っております。いや、原稿も二次元の世界と近い距離にある……。きっと、文字の世界は自由ですよね! だから、最後にこれだけ……。

「クズな上原に恋してくださぁぁぁぁああい!!! 上原もK沢さんみたいな歳上男子に何から何まで全て保護されたいですーーーーー!!!(真顔)」

■上原由佳子/1988年生まれ。沖縄県在住。シングルマザー女子大生。女子力の欠片もなさを小学1年生の娘ちゃんから指摘される、どうしようもない系アラサー女子。

ベッキー&ゲス川谷不倫騒動はどこでも起こっている…小町の不倫トピ乱立現象

 紅白初出場を果たした「ゲスの極み乙女。」のヴォーカル・川谷絵音(27)との不倫交際を新年早々「週刊文春」(文藝春秋)に報じられたベッキー(31)。誌面には川谷サイドから漏れたと見られるLINEのスクリーンショットも掲載。離婚届を“卒論”と置き換えての2人のやり取りも明らかにされた。交際当初、ベッキーは川谷が妻帯者と知らなかったとも報じられ、芸能界ではベッキー擁護の声が多いが、LINEのやり取りからはベッキーが妻の存在を知った上で離婚を促している文面があり、とても擁護できたものではない。

 さて偶然にも、小町では年末から不倫発覚トピが乱立している。今回紹介するのは、川谷の妻と同じく、不倫を知った妻側からの相談4件だ。3件めの夫以外は全員、不倫したうえで妻に離婚を要求している。

「主人が浮気をしていました」

 トピ主(30代後半・女性)は同い年の夫との間に3人の子どもがいる。数年前、家を新築した。そんなある日、夫のケータイを盗み見たところ、LINEのやり取りから不倫を知ってしまった。

「主人に『どうしたいの?浮気なの?本気なの?』と聞いても『わからない』とのこと。子供も3人いるため仕事、子育てに忙しく、夫婦関係もこの1年間ありませんでした。それは悪かったと思っていますが、それを理由にする主人には腹が立ちます」

 トピ主は自分のこれまでの行いも反省するが、やはり夫への怒りが消えず、「相手の女性はどんな人かわかりませんが、LINEでは『早く一緒になりたいね』などと書いてありました。悔しいやら悲しいやら気持ちがまとまりません。どうしたらいいでしょうか?」と相談している。

 “仮面夫婦を続けるか離婚か”、“まずは弁護士に相談し慰謝料を算出してみる”など具体的なアドバイスが並ぶが、トピ主は「今の状況でそこまでやるべきなのか私にはわかりません。相手の女性もわかりませんが、調べてみた方がいいのでしょうか?それとも、しばらくは素知らぬ顔で様子をみた方がいいのでしょうか?」とまだ混乱の中にいる様子だ。夫は「甘えさせてくれなかったり、夫婦関係を求めても応えてくれなかったり。そういうところが嫌だった」と言っているが、改善のために妻と話し合うのではなく、外部の女性に甘えや肉体関係を求めたわけである。

「臨月です、浮気されてるような気がします」

 トピ主(30代女性)には夫との間に1人子どもがおり、トピ立ての時点(2015年11月)で第二子妊娠中の臨月だった。「最近、夫の行動に不審な点が見られるようになりました」という。それは「子供を寝かしつけながら私も一緒に寝てしまうことがほとんどなのですが、この2週間ほど、私たちが寝た後で夫が外出する」こと。「健康診断に向けウォーキングをしている」というが、なぜか車の鍵と携帯電話を持って出て行くという。トピ主は観察を続けてみた。すると、そっと家を出た後は1時間半ほど、車の中にいたのだという。おいおい健康診断どうなった。

「夫は真面目な性格で、結婚してから5年、浮気の心配などはしたことがありません。温和なタイプではないけれど、ちゃんと優しさを持っており、娘の良き遊び相手です。ですが、ウォーキングを始めた頃から、私や娘に対して『閉ざした』感じになり、口数も減りました」

「滅多に行かないのに『友人に飲みに誘われ参加したい』『里帰りをもう少し早めたら?』などなど、言動をつなげていくと、浮気のための段取りに思えてならないのです」

 こういう場合、皆様ならどうするか? という相談だ。これだけではハッキリしないが、さすが小町、「限りなくクロ」「悲しいけどそういう勘って当たる」など、ほぼ夫の不倫を疑う声でコメントは埋まった。そんな中、トピ主は2人分のランチの領収書を発見し、さらに不倫の疑惑を深めていく。証拠を掴むために購入したボイスレコーダーを仕掛けたところ、意外なほどアッサリと不倫相手との密会の様子が録音できてしまった。

 トピ主は調査会社に電話をしてみたが依頼できなかった。「はじめは面白半分で証拠探しとかしていたのに、精神的にきつくなってきました。何の罪もない娘に厳しく接してしまうのが情けなくて苦しくて。証拠を抑えるとか万全の体制でとか、全て投げ出して今すぐ夫を責め立てたいです」と悩みは深くなる。もうすぐ2人目が産まれるので離婚はしたくないという気持ちもあるためだろう。

 その後、トピ主は里帰り出産し、つかの間の安息(?)を得るが、タイミングがあったことから夫と話し合いを重ねたところ、「(妻を)女性として見れない」「うまくやっていけるとも思えない」と言われ、最終的に「離婚したい」と切り出されてしまった。いやいや有責者が第二子誕生のタイミングでそれを言うって……。妊娠~子育て大忙し中に不倫する夫には頭に来る。

「旦那のW不倫」

 トピ主(40代女性)は夫との間に小学生と未就学児の2人の子がいる。このたび夫のケータイを盗み見て不倫を知ってしまった。

「相手は職場の季節パートの子持ち主婦で、夏からの関係。過去のメールは消去されていましたが、ここ数日のメールで、今週からまた一緒に働く事(基本的に密室で2人きり)が判明。不倫女の文章は肉体関係のおねだりを示唆するような内容が多く、吐き気がしました。私は明るい家庭を築く為に努力をしていたつもりでした。旦那は家族を愛してくれ、本当に幸せだなぁと昨日までは思っていたのに。子供が寝た後、温かいご飯をと毎日遅い旦那の帰宅を待っていたのに『遅いのは浮気してたからなんだなー』とマヌケな自分に笑ってしまいます」

 夫は土下座して謝ってきたうえ、不倫相手とは別れることを約束したが、トピ主の心は追いついていかない。心の持ちようを教えてくれという相談だ。

 しかし、コメントでは心の持ちようではなくケジメをつけろ、という声が相次ぐ。トピ主もそれに呼応、相手に慰謝料を請求するべく動き始めた。すると不倫相手の夫から連絡があり、会うことが決まる。先方は意外にもマトモな方で「向こうの要求はとにかく子供と世間体を守りたい事。そしてこの件は早く終わらせて忘れてしまいたいという事でした。私と利害が一致したのでお互い二度と接触しない様に誓約書を交わしましょうという事になりました。私と違って浮気は自分のせいと認める度量も持ち合わせる誠実な方でした」とトピ主は言う。

 ところが、この対応についてコメントで賛否巻き起こる。「相手の旦那に言わないことを条件に仕事を辞めさせる、で手打ちにしときゃ良かった」「一番悪いのは自分を裏切った夫」「夫だけの責任って思ってるの?」「相手の女性に慰謝料請求したなら、トピ主さんもトピ主さん夫も無傷ではいられませんよ。向こうの旦那さんから慰謝料請求されるでしょう」などなどだ。

 結局トピ主夫と不倫相手夫が2人で会い、“もう二度と会わない”と誓約書を交わして帰ってきたという。しかしこの“不倫相手夫”は当日マスクをして顔は分からず、この人物についても本当に不倫相手夫ではなく偽物では? という疑惑が。当初、感情に任せて動いたトピ主の対応は後から振り返ってみると色々抜けが多い。配偶者の不貞発覚後は、全知識と全人脈を総動員して冷静に当たらなければならないのだと勉強になった。結局不倫相手はパートを退職した。水面下で関係は続いているのかどうかは、分からない。

「旦那から不貞を隠して離婚を要求されてます泣」

 最後はゲス川谷夫婦そのものといった感じのトピで締めたい。トピ主(30歳)は夫(23歳)と結婚して7カ月。子どもはいない。1カ月半前に夫が田舎に帰省し同窓会に出席してから、様子がおかしい。携帯をチェックすると女性とのデート画像を発見した。問いつめたところ「同級生にたまたま会って懐かしくて遊んだ。体の関係はない。ずっと考えていたが離婚して欲しい」といわれた。いや、これもう不倫してるでしょ。理由を聞けば「思っていた結婚生活と違った、使えるお金が少ない、私が家事を怠っている等で好きな気持ちがなくなった」と主張する。トピ主は、出来ることは改善する、と話し合おうとしたが「気持ちは変わらない、早く離婚したい」の一点張り。いやいや……。

 悩んだ末、夫の主張する離婚理由が本当であれば、別れようと決意したトピ主。しかし、こう考えてようやく冷静になってみると、夫の行動におかしな点があることにも気づいたたため、調査会社に依頼したところ不貞の証拠を掴み、同窓生なんかではなく夫と同じ会社の29歳女性が相手であることが分かった。「離婚を切り出されるまで夫婦関係は良好でした。だからこそやり直せるかもという可能性も捨てきれません」と悩んでいる。これからどう動けば良いかという相談だ。

 夫は、トピ主が夫の不倫に気づいており、証拠を掴んでいることを知らない。結局、弁護士に相談し、離婚と慰謝料請求の準備を夫や不倫相手に告げないまま進めていたのだが、もともとトピ主夫婦の結婚に反対しており離婚にも賛成している義母がしびれをきらし、両家の親とトピ主夫婦での話し合いがもたれることになった。「義母の来る目的としては、私は不倫に気付いてない事になってるので、息子が離婚したいと言ってるのに私がワガママ?を言って離婚しないので私の両親と話して私を説得してもらうらしいです」という。ややこしくなった。この話し合いでどう動くべきか。不倫相手との示談はこの話し合いの前にするか、後にするか、という相談をトピ主レスでしてから、更新がない。結局どうなったのかむちゃくちゃ気になる。

 妻が夫の不倫を知った時、相手がゲス川谷のように芸能人でなければ情報を週刊誌に流してそれを示し、言質を取ることもできない。不貞行為をはたらかれただけで辛いものだが、それ以上の不利益を被りたくないなら、調査会社に依頼して確たる証拠を押さえまくったり、弁護士に相談するなど積極的に動く必要がある。調査費用ぐらいはへそくっておいたほうがよいと痛感した。

(ブログウォッチャー京子)

ハタチで痴漢風俗にハマった男「お金がないのに、通うのを辞められないんです」

風俗で働く女の数以上に、風俗でヌく男たちがいる。
人前でハメるAV女優の数以上に、人知れずヌく男たちがいる。
そんな名前のない男たちの、地味めなインタビュー。

◎きっかけは大学の帰り道

ダイ(23歳)
某有名国公立大4年生、文系学部。ストレートで入学するも、去年1留が決まった。関東の実家住まい。コールセンターのバイト代で稼ぐ、月約8万のお金で学生生活をやりくりしている。女友達はたくさんいるが、彼女になった関係はこれまでに1度もなし。

「僕、風俗通いを辞めたいんですよね」

とある勉強会で仲良くなったダイ。某国家試験資格の取得を目指す、いたってマジメな青年だ。いつもニコニコして、天真爛漫な笑顔が印象的だ。ところが師走の上野で、ずいぶんと暗い顔をしたダイとばったり出くわした私は、彼をお茶に誘った。「ウーロン茶でいいです」、と言うと、ダイはぽつりぽつり、今の悩みについて話しだした。

――どうして風俗通いを辞めたいの?

ダイ「お金がないのに、通うのを辞められないんです。週1回、多いと2回行っちゃうんです」

―どんな風俗に行くの?

ダイ「ピンサロ※1とセクキャバ※2、あとはたまにデリヘル※3です」
※1 ピンクサロンの略。手コキ、フェラなど対面接客でヌキ(=射精へ導くサービス)を行う店。
※2 セクシーキャバクラの略。女のコへのHなおさわりを売りにしたキャバクラ。ヌキはない店が多い。
※3 デリバリーヘルスの略。ホテルまたは個人宅まで女のコが出向いて、本番(=セックス)行為以外でヌキを行う。

――今、23歳だっけ。何がきっかけで風俗に行くようになったの?

ダイ「大学1年生の時、体育会系の部活をやってたんですよ。その帰り道に、チャイナエステの看板を見つけて。なんとなく、Hなこともするのかな、っていう下心を持ちつつも、普通のマッサージを受けるつもりで入ったんですね」

――じゃあソコでHなマッサージに出会ったんだ。

ダイ「そう。全身をほぐす普通のマッサージを30分くらいしたところで、やっぱり下半身のほうに手がどんどんと来て。そこで『エンチョウ(延長)スル?』って聞かれて。『はい』、って即答。チャイエスでヌイてもらったのが1番はじめの風俗体験でしたね」

――気持ちよかった?

ダイ「はい。40歳くらいの、見た目は普通のおばさんがヌイてくれたんですけど。それが初めて人に触ってもらってイった経験でした」

――その時、彼女はいなかったの?

ダイ「彼女じゃないけど、いちゃいちゃする女の子はいたんですよ。その子と3回くらいセックスに挑戦したけど、僕は緊張のあまり、うまく挿入できなかったんです。それでその子とも何となく疎遠になって。僕、彼女という存在がいたことは1度もないんですよね」

――ダイに彼女がずっといないのは意外だなぁ。なんでだろ?

ダイ「う~ん、告白したことは何回かあるんですけど、仲のいい男友達としてしか見てもらえないんですよね……。あと、好きになる子は大体彼氏がいるし」

――なるほど。じゃあ、風俗は18歳からハマっていった?

ダイ「そうですね。大学の2つ隣の駅に、ピンサロがいくつか入ったビルがあるんですよ。おととしの年末だったかな、精神的な余裕もお金もない時で。でも怖いもの見たさというか、『やってみたことがないことをしたい』っていう気持ちで、ピンサロに行ってみたんですよね。朝なら、フリー※4で4000円だったし。意外と安いなって」
※4 女性を指名しないで入ること

◎Facebookでも繋がったピンサロ嬢

――どんな店だった?

ダイ「女のコが浴衣を着てる、和風ピンサロ。28歳くらいの女性がついてくれて、すごく優しくて。僕がピンサロはじめてで、緊張してるのもわかってくれて。色気があった。目とか雰囲気とか、吐息とか。『緊張しなくて大丈夫だよ』ってリードしてくれましたね」

――時間は、全部で30分くらい?

ダイ「そうそう。あ~、なんか懐かしい。5分くらいおしゃべりをして、キスして、抱きしめられて。おっぱいはCくらいだったかな。最初だから全然うまくブラジャーが外せなくて。やっとブラを脱がせて、乳首を舐めさせていただき……(笑)。今思えば確実に演技なんだろうけど、感じた反応をしてくれたのが、やっぱり嬉しかったですね。そのピンサロは、つい最近まで通ってました」

――今も同じ子を指名してるとか?

ダイ「いや、結局“推し変※6”しちゃった。でも半年くらいは、最初についてもらったコを指名して通ってましたね」
※6 自分が推薦する(推す)女のコを変えること

――何で“推し変”したの?

ダイ「ある日の激安デーの時、たまたま自分の気分で、違う女のコを指名したんですよ。ピンサロって客同士のブースを区切る、わりと低めの壁があるんですけど、サービスが終わった帰り際、ふっと周りを見渡したんですね。そうしたら、自分が元々指名していたコが見えた。で、当たり前だけど、その子が別のお客についてて……」

―えっ、まさかそれで冷めた?

ダイ「そうなんです。というよりは、『ああ、僕も違う女のコについているのがきっと見られたんだよなぁ』と思ったら、申し訳ないような、さみしいような気持ちになって……。それでその子に通うのをやめました」

――へぇえ。

ダイ「僕が指名しなかったんだもん、当たり前なんですけどね。でもそれがきっかけで、別のピンサロに行くようになったり、また同じ店に戻ったりして」

――どのくらいのペースでピンサロを利用してたの?

ダイ「はじめは1カ月に1回、2カ月に1回とか。でも1人の女のコにハマると、1週間に1回行ってました。1度、すごく好きになったコに、小さい花束とメアドを渡したことがあって。うまくいって、お店の外で時々会ってました」

――スゴいね。まさか付き合った? またはヤったとか。

ダイ「いやまぁ、僕に全然その気がなかったわけではないんですけど、単に外で会って、話をするだけ。セックスとかは何もなし。あとご飯も完全にワリカンでした。五右衛門とかの、フツーのパスタ屋なんかで会って。年も19歳同士で同い年だったし、気が合う異性友達の感覚でした。楽しかったなぁ」

――Hなことは、何もしなかったの?

ダイ「あっちには彼氏がいたんですよ。本名とFacebookを教えてくれてたから、Facebookの投稿で彼氏の存在を知って」

――ピンサロで働いていることは、彼氏は知ってたのかな?

ダイ「知ってたみたい。その子は親との関係が良くなくて、彼氏の家に居候してたみたいだし。それにほぼ、毎日ピンサロで働いてましたから。しかも1回10時間勤務とか。僕は半年そのコのところに通ったんですけど、お店の外では3回くらい会ったかなぁ」

――外で会う時は、どんな話をしてたの?

ダイ「彼女は犬の美容師になるのが夢で、そういう将来の話ですね。あとは仕事の話。『今日は優しいお客さんがいた』って言われると、焼きもちみたいな感情もわいて。僕は、ピンサロの店で会っていても、今日は話をするだけでいいやって思うこともよくありました」

――話をするためにお店に行ってたのね。

ダイ「でもその子、すごく優しくて、結局いっぱいサービスしてくれるんですよ。ぼくの(精子)をゴックンしてくれたこともあって。そこまでしなくてもいいよって、逆にあわてちゃいました。とはいえ、嬉しかったです。1年くらい通ったかな」

――今はどんな関係なの?

ダイ「その子がお店を辞めることになってからは会ってなくて。今でもFacebookで繋がってるんですけど。お店を辞めたあと、2回くらいご飯に誘ったけど、両方断られました。だからもう誘わないほうがいいなって思って。たま~に、僕の投稿に“いいね”って押してくれますけどね」

◎20歳で痴漢風俗と出会う

――そうなんだ。で、ピンサロの次はセクキャバに行ってみた?

ダイ「やっぱりそれも、街を歩いている時に、看板を見て知って。2年生のハタチの頃ですね。『セクキャバって何だろう?』と思って、ネットで調べて『絶対行ってみよう!』と思って。そこも和風パブなんですけど。女のコが横について、上はお触り自由。ベロちゅーもOK。でも下は、服の上からでも絶対にさわっちゃだめ」

――どうだった?

ダイ「40分でお酒もついて4000円と、高くはないんですけど、女のコの接客レベルがあまりよくなかったんです。ベロチューの時、にんにく臭いコとか。身体も態度もデカいコとか。でもその店がきっかけで、他のセクキャバも調べるようになったんですね」

――次にハマったのは?

ダイ「痴漢コースがあるセクキャバです」

――イメクラ※7みたいな感じかな。
※7 イメージクラブの略。痴漢、赤ちゃんプレイ、OL、病院など、コンセプトに沿った物語プレイを提供する店

ダイ「そうそう。これは画期的と思って。僕、痴漢したことはないけど、『痴漢したい』と思うことがほぼ毎日あったんです。電車に乗ったら、万が一でも触らないように、カバンを自分の前で持って、音楽を聞いて、性欲をごまかしてました。大学でも、性犯罪被害のことを学んでたんです。女のコにトラウマを与えるから、痴漢は絶対にダメだ、って思ってて……そこに救世主のようにそのセクキャバが現れたんですよ。通いましたね」

――料金はいくらくらいだった?

ダイ「早い時間帯で、40分6000円。とにかくハマって。週1は普通で、でも時々ガマンしようと思って1週間休むと、結局その次の週に2回行っちゃうとか。3年は通ったかな」

――最短サービスで6,000円、月4回で2万4000円か。月8万のバイト生活で、四分の一以上を風俗に使うのは明らかに厳しいよね。

ダイ「大学の普通の飲み会やランチもあるし。あとは授業で使う本代もかかる。お金が足りない月はたまにキャッシングでも借りちゃうんです。でもそのセクキャバ通いは、なかなかやめられなかった」

――どんなサービスだったの?

ダイ「狭いブースに女のコが制服のコスプレをして、目隠しされて立ってるんです。BGMが山手線のアナウンスなんですね。自分も痴漢常習者を演じて、なりきる。『感じてるわけねーじゃん!』って自分にツッコミつつ、『感じるんだろ』ってささやいてみたり。めちゃめちゃ興奮するんです」

――でもヌキまでは無いんだよね?

ダイ「無いですね。でもある時、Hなことが好きな女のコがいて、ヌキNGなのにヌイてくれました。下も触らせてくれて、アソコがびちゃびちゃでしたね。結局、そのコの手で(精液を)最後まで出しちゃうんですけど、僕はその後、デートの予定があったんですよ」

――デートの前に、セクキャバに寄ったの?

ダイ「はい。その日は前からいい感じになってる女のコとのデートで、セクキャバと同じ駅にあるレストランを予約してたんです。でもその日は朝からムラムラしてて。夜の約束までヒマだったし、昼の安い時間帯に、ついでにセクキャバに行っちゃおう、と思って」

――へぇー。

ダイ「まさか僕もイクまで遊ぶつもりじゃなかった。でもたまたまそういうコがついてくれて……。ところが『おしぼりに(精液を)出さないで。拭くのもダメ。ヌイたことが店にバレるから』と言われて、結局自分のズボンを汚しちゃった。『これからデートなのにヤバい』と思って、店を出てすぐにG.U.で買い替えました」

――デートはどうだったの?

ダイ「夜になって、あらためてレストランの場所を確認したら、そのセクキャバから歩いて30秒の場所だったんですよね(笑)。デート自体は、可もなく不可もなく、友達の延長みたいな感じで終わりましたね。セクキャバでヌイてくれたコも、他のお客さんにも同じことをしてたみたいで、いつのまにかいなくなってなした。辞めさせられたんじゃないかな」

――そんなにサービスができる子だったら、もっと稼げる風俗に移ったとか。

ダイ「いや、その子はパニック障害があって、どうやら完全な密室がいやだったみたいなんです。それで簡単な仕切りがあるだけのセクキャバを選んだみたい」

――なるほど。

ダイ「僕は結局、ヌキがない痴漢セクキャバじゃ物足りなくなって、そのあとに痴漢コースがあるデリヘルを見つけて使ったんですよ。でもデリヘルはホテル代がかかるから、どんなに安くても1回で2万はトンじゃう。しかも僕、ギャンブル癖もあって」

――ますますお金が無くなるね。

ダイ「パチンコがほとんどなんですけど、負けたあと、もうこのイヤな気持ちを発散したい、みたいな感じでまた風俗に行っちゃうんです」

◎精神科医も風俗話はスルー

――ネガティブな気分で、風俗に行くの?

ダイ「もっと昔は『性欲を発散したい』とか、『今日は調子がいいぞ』って時に行ってたような気がするんですよね。でも最近は、なんていうんだろう……、落ち込んでる時ですね。ギャンブルで負けた時以外でも、友達や家族とうまくいかなかったとか、とにかく、言葉にできない気分の時。気持ちが沈んでるというか、自分でもよくわかんないさみしさがある時。そういうタイミングで行くようになりました」

――でもお金が続かなくて、もう風俗通いを辞めたいと?

ダイ「はい。お金もそうだし、あと、やっぱり自分のストレスをギャンブルや風俗で発散するのって、なんかヤバいよなって気がつき始めて……。空しい気持ちとか、性やギャンブル以外で向き合えないかなって……。僕、ギャンブルや風俗しなかった日の日数を、ノートに日記みたいにつけてるんです。書くと少し落ち着くので」

――すごい。自分を客観的に見れてるよ。今日はどうして、そんなに暗い顔をしてたの?

ダイ「じつは12日前に、またチャイナエステに行っちゃったんですよ。その前まで、30日間、風俗行かなかったんです。でも『1カ月辞められた!』って思った瞬間、気がゆるんだのかな。たまたま、街で看板を見て、本当に何も考えずに入っちゃったんです」

――そうだったのか。

ダイ「僕、精神科にも相談したんですよ。だけどお医者さんは、ギャンブル癖のほうにはいろいろ言ってくれるんですけど、風俗のほうは、何にもコメントしてくれなくて……。男性のお医者さんも、女性のお医者さんも、あまり触れてこない。完全にスルーされてます。でも僕は、もうホントに風俗を完璧に辞めたいんです」

ふぅー、とダイは静かにため息をついた。

ダイは自分を「性依存」ではないかと疑い、いろんな依存症の人たちが集まる自助グループにも顔を出してみたものの、自分の体験を話す気持ちになれなかったという。こんなに(男向けの)性サービスが充実している国なのに、風俗のことで苦しんでいるダイの悩みは、カウンセリングルームでも自助グループでも、行き場がないようだった。

今年は、ダイにとって何か進展があればいいのだが。

「また報告しますね」。

そう言って、ダイは上野の雑踏にまぎれるように去っていった。

■鈴木えみ/元デリヘル嬢(副業型、関東近郊の中級店)。写真はデリヘル勤務当時の“パネル”として使用していたもの。フリーター、時々ライター。

ポークビッツサイズのアレを許せる場合と許せない場合

◎アレが小さく、まさにポークビッツな彼とのセックスに満足できません。

<mihoさん>25歳/独身女性

 2カ月前に付き合った彼氏のモノのサイズが小さくて悩んでいます。まさにポークビッツ、手の親指程度しかありません。前戯も特別気持ち良いわけではなく……。

 とはいえ彼は気持ちいいらしく、会う度にセックスを求められるのですが、正直私はノリ気になれません。もともとセックスは好きだったのですが、前戯よりも挿入が好きだったのでまったくヤリたくないんです……。

 彼のことは好きで付き合ったのですが、今となっては少しバカにした気持ちさえ生まれています。「体の相性が合わない」という理由だけで別れると、引きずってしまいそうで怖いです。私はどうすれば良いのか、アドバイスをいただけると嬉しいです。

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 mihoさんの彼はポークビッツちんちんの持ち主なんですね……。ポークビッツだったとしても、何度もセックスしていくうちに慣れたり、挿入がダメなら前戯で気持ちよくなることに重点を置いたり、または「彼が好きだ」という気持ちで気にならなくなる場合もありますが、mihoさんの場合はそうなっていくのは難しいように感じます。

 なぜかというと、「少しバカにした気持ちさえ生まれています」と感じているということは、もはや「体の相性が合わない」という問題だけではなくなっているからです。発端はちんちんのサイズでも、mihoさんの彼に対する感情そのものにネガティブな影響を及ぼしていますよね。この先お付き合いを続けても、セックスに対して前向きになれないだけでなく、それ以外の場面でも彼に対して「ポークビッツのくせに」とか思ってしまって、負の感情がどんどん出てくるような気がします。そもそもちんちんのサイズは、手術でもしない限りサイズアップしないし、なかなか変えられないものですよね。彼の個性のひとつというか。それを受け入れられないならお付き合いは長く続かないと思います。

 また、ルックスも性格もちんちんも満点の人はなかなかいないし、全て完璧であることを求めていたら誰ともお付き合いできなくなったりしますが、相手をトータルで見た時に自分の中で妥協できる・できないラインってあるんじゃないでしょうか。

 総合で200点として「ルックスや性格を重視するから、ちんちんは30点くらいでいい」と思っている人が、「ルックスや性格が90点でちんちんが10点」の人と付き合っても、ちんちんの不足分の20点はなかなか補えないということもあり得ます。ちんちんに100点は求めていなくとも、自分の中で許容できる30点に満たないなら、ルックスや性格によるカバーすらできなかったり。またはルックスや性格が120点と超高得点だったら、10点のちんちんも許せるということもあるかもしれません。

 mihoさんも、もし彼のちんちんがあと3cm大きくて、小さくとも自分の中で許せるサイズであったら、セックスに不満を覚えていたとしても「ルックスも性格もいいから我慢できる」となっていたかもしれませんし、ちんちん以外でものすごく好きな部分があればポークビッツが全く気にならなかったかもしれません。でもそのどちらでもなかったんですよね。

 なかなか変えられないことでモヤモヤしながらお付き合いしても、mihoさんにとっても彼にとっても時間がもったいないんじゃないでしょうか。まずは彼との関係をきっちり清算して、新しい恋に進みましょう!

■Lollipop-Rumiko/通称ロリルミ。中学1年で済ませた初体験を皮切りにビッチ街道を突っ走ってきたが、ここ数年それに疑問を感じ始めている26歳。しかしまだ完全にビッチを卒業することはできず。好きな男性のタイプは、ちょっとSなクンニスト。最近の悩みは、夕方になるにつれてクッキリしてくるほうれい線と、過度の飲酒と白米の食べ過ぎによってできた腰回りのぜい肉。

バイブフォビアを公言する男って、自分の無知と偏見が恥ずかしくないの?

 私がバイブレーターの収集をはじめてから8年近く。ラブグッズを取り巻く環境はずいぶん変わりましたが、ラブグッズの使用はまだまだ〈特別〉です。誰もがする当然の行為であれば、雑誌のセックス特集で「おもちゃって使ったことある?」というアンケート項目はないはずです。「セックスのとき挿入ってする?」という項目はありませんものね。

 たしかにラブグッズがあろうがなかろうが、セックスもオナニーも成立します。だからこそ、グッズを取り入れた行為は特別なのです。英語にすると、スペシャル。快感をランクアップしたり、コミュニケーションを濃密にするために使うスペシャルな道具、というほうがニュアンスが伝わるでしょうか。でも、〈特殊〉な行為ではありません。どうせするなら気持ちいいほうがいい、というのはごく自然な感情です。人間は道具を創り、それによって生活を向上してきました。そこにあるものを「なくてもいいから、使わない」で留まるのか、「もっとよくなるために、使う」かは個人の判断ですが、後者がいなければ文明は発展しなかったでしょう。

 とはいえ、道具を使う人/使わない人がそれぞれ自分の判断を信じ、かつ互いの判断を尊重すればいいのですが、困るのは「理解できないし、使いこなすこともできない。だから使っている人を否定する」という人種です。

 先日、「スマホゲームとアダルトグッズは創造性を欠如させる原因に」を読みました。グッズ愛好家としてはこのタイトルを見た瞬間にカチンときて……ということはありません、むしろ「またか……」と嘆息しました。いるんだよね~、こういうバイブフォビアの男。

◎バイブを嫌い、恐怖する男たち

 バイブをはじめとするラブグッズ、およびそれを使用する女性を頭ごなしに否定することを、私は〈バイブフォビア〉と名づけました。フォビアとは、ホモフォビア(同性愛嫌悪)、ゼノフォビア(外国人嫌悪)のように使われますが、病的な嫌悪や恐怖をあらわす後置詞です。深刻なフォビアや社会問題になっているフォビアもあるので、軽々しく使うべきではない……とも考えたのですが、このフォビアもほかの嫌悪と同様に〈無知〉〈誤解〉〈偏見〉に根ざしたものなので、こう名づけても的外れではないでしょう。

 同コラムのなかでは、次のような論が展開されています。

・人間のエロスは創造性があるから燃えるわけで、女性ならオモチャを使わずに、手ごねハンバーグよろしく、自分の手でおいじりなさるがよろしい。

・手でやるってことは、みだらな妄想を抱くわけで、それが人間のクリエイティブ性を生み出すってもんでしょう。

 道具を使うことぐらいで阻害される貧しい想像力、クリエイティビティの持ち主ならでは発想ですね。ご自身がそうだからといって、なぜ他人もそうだと思うのでしょう? それとも、これってmessyの「スピリチュアル百鬼夜行」でツッコまれているような、「粉ミルクはだめ、母乳じゃないと!」「紙ナプキンはだめ、布ナプキンじゃないと!」的な、根拠レスの自然志向なんでしょうか?

・おもちゃを使っている女性は、反応はいいけど、恥じらいとか、エロい雰囲気とかに欠けていると思う。例えばの例で恐縮だが、「どこ、気持ちいいんだ~」とか聞いても、オモチャ派はダンマリか、開き直って「○ま○こ」とか軽く言うし。

 えーっと、この方はそんな女性たちと何人会ったことがあるのでしょうか? 200本超のバイブを所有する私ですが、女性器をその呼称で呼ぶのは好みません。それをいうことがエロスだとも思わないし、逆に口にしないことで奥ゆかしさが演出されるとも思っていません。男性からどう思われるかはどーでもよく、ただ好まないから口にしない。けれど、グッズの使用有無と羞恥心とのあいだに相関関係が本当にあるのだとしたら、それはそれでたいへん面白いデータですね。ご自身の貧しい性体験のみで語るのではなく、相応な数のサンプルをとったうえで、世に発表していただきたいです。

 貧しい性体験、と断言してしまいましたが、同コラムから見えてくるこの方の性行為は「セックス」ではなく「サービス強要」にしか見えないからです。

・大人のオモチャに、はまってる女子は、昭和のエロさが少ない。恥じらいがとても重要と言いたいのです。

 羞恥心やモジモジ、セックスでは大いにスパイスになりますよね。しかし、恥じらいとは自然発生的なもの。どんな性経験がゆたかな人でも、然るべきシチュエーションでは恥じらいが生まれます。でも、「女性が恥じらう姿を見ることで興奮する俺」のために、それを求められるのは御免です。じゃあ、女性が恥じらうシチュエーションを自分から提供しなさいよ、という話です。そしてそれは、「どこが気持ちいいか言ってみろ~?」というチープで創造性に欠けたプレイではないことは断言できます。

 この後に、女性は金銭でいかようにもできるし、お金を払ってもらった女性はセックスに応じなければいけないという主旨の記述もあります。世のほとんどの女性はこんなセックス観の男性と、小金を積まれたところで寝たくないですけどね。

 女性の性感もセックスファンタジーも、この方が思っているほど貧しくありません。ラブグッズのようなツールを取り入れることでより豊かな性感をさらに増幅させ、イマジネーションを広げることを知っている女性もたくさんいます。また、ここでは、「OLのお姉さんが、『あ~イライラする、ちょっくら抜いて寝るか』って、ウィーンウィーンすると気持ちいいし、寝付きもいい」ことにダメ出しされていますが、それの何が悪いの? サクッとイッて寝たい夜もあって当然。その振り幅の広さこそ女性らしさ、というより人間らしさでは? でも、そんなオナニーはこの種の男性にとってはツマンナイってことでしょうね。女性のオナニーは男性のためにあるわけではないので、それでいいのです。

◎結局は、コワイだけ

 彼らは「俺ではイカない女が、バイブではサクッとイク」のが許せないし、コワイのです。生身の人間とふれ合う快感と、ツールによってもたらされるそれは別もの、ということも知らなから、「かなわない!」と勝手に敗北感を味わい。でも、それを認めたくはない。だったら、その存在自体を否定してしまうのが、いちばんです。

 私はこのコラムを書いた男性を個人攻撃したいのではありません。バイブフォビアのおっさん、の超典型的なサンプルである、というだけです。女性のセックス観の豊かさといまどきのラブグッズのバリエーションの豊かさに対する〈無知〉、女性の快感も羞恥心も俺たちを満足させるためにあるという〈誤解〉で、「俺はバイブに絶対かなわない」という恐怖心をコーティングし、頭ごなしに攻撃する。どのフォビアもそうですよね。LGBTの実態を知らない無知ゆえのホモフォビア、外国人によって自分の存在がおびやかされるという誤解ゆえのゼノフォビア。LGBTや外国人の方と接点がない人ほど、やみくもに怯え、否定します。

 差別感情からなるフォビアを振りかざす人はこれからどんどん淘汰されていくべきで、そうするのは「無知や誤解、偏見はダサい」とみなし、まっとうなバランス感覚で世の中を見ている人たちでしょう。同じく、まずは女性たちが自分の性と向き合い、こうした誤解を片っ端から否定し、バイブフォビア男を絶滅させられればメデタシメデタシ。自分でも、戯れ言にいちいち目くじら立てるのって大人げないと思わなくもないのですが、無知や誤解による嫌悪は人を傷つけます。当事者じゃなくても傷つきます。女性の性をこうも低く見られると、女性としての尊厳に引っかき傷ができます。だから、それを見過ごすのは、バイブコレクターとしても個人としてもイヤなのです。

■桃子/オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

「きみのエキスをチュウシュツして飲み干したい」駿台セクハラ参考書の例文は“生きている言葉”なのか

 「彼女のなだらかなキュウリョウをうっとりと眺めた」
 「きみのエキスをチュウシュツして飲み干したい」

 駿台予備学校の著者・霜栄氏による、『生きるセンター漢字・小説語句』(駿台文庫)で使われている例文に多数の性的な表現が使われており、ネット上で、「セクハラ」ではないかと話題になっています。

・駿台文庫のセンター試験用漢字問題集 「胸のデカさに俺はキョソを失った」など例題の文章が下品すぎると話題に

 Togetterにもまとめられているように、こうした例文が多数収録されています。

「教授と私のミッセツな関係を誰にも気づかれてはいけない」
「一定スイジュン以上の女の子しかここには入れないんだよ」
「夫婦間の家事ブンタンなんて幻想だ」
「私の人生に男性はフカケツなの」
「葬式にて坊主がコジンを『いい人』に仕立て上げる」
「ああ、あの、生え際がだいぶスイタイしてる人?」

 ウェブで複数の媒体が記事にしたことで現在プチ炎上中となっていますが、本件について出版社の駿台文庫に問い合わせしました。

◎自主回収へと対応を変更

―― 本書出版の意図は。

「本参考書は、『生きるセンター漢字・小説語句』ということで、変化の激しい現代において、生きている言葉を使うことで、生徒に役立ててもらうことを意図している」

―― 参考書の性質上、誤字脱字など含めて厳しいチェックがあるかと思うが、差別的な表現などの規定や検討は無かったのか。また報道では検証の際に女性スタッフも参加していたとあるが、問題視する声はあがらなかったのか。

「企画の段階で精査している。女性スタッフの参加もあった」

―― チェック体制は性差別的な表現のチェックが甘かったという見解でよいのか。

「行き過ぎた表現がありご不快な思いをさせてしまったことについてはお詫び申し上げる」

―― チェック体制の見直しを検討する予定は。

「規定の変更や表現について精査することを検討している」

―― 過去に本書籍について同種の指摘はなかったのか。またどの程度の問い合わせがあるのか。

「なかった。主にネット上で議論されているもので、今もマスコミ関係者からの連絡はあるが、一般の方からの問い合わせは無い」

―― 著者である霜栄氏の授業についてクレームなどはあったか。

「広報では特に聞いていない」

―― 自主回収という報道があるが、今後の対応に変更はないか。

「書店への新規出荷停止をした上で、既に書店に並んでいるものについては自主回収を行うことにした」

―― 既に出版されている他の書籍についても確認する予定は。

「刊行されているものも含めて、チェック体制を見直して精査する」

◎差別的でないユニークを

 問題発覚後には、アマゾンレビューやtogetterで肯定派と否定派がそれぞれの見解を述べているのですが、発覚以前から同種の指摘はなされていました。一方は「まじめな例文ばかりの面白くない参考書より目立つ。アダルト系も充実している」という評価であり、もう一方は「面白いが、くだらない。オーソドックスな使われ方を示して欲しい」という評価に分かれています。

 共に「面白い」ことは一定程度評価しているようです。問題となった『生きるセンター漢字・小説語句』の著者である霜栄氏のその他の参考書(『生きる現代文読解語』『生きる漢字・語彙力』)もユニークな例文を使った問題が多数あり、広報担当者の「生きている言葉を使うことで、生徒に役立ててもらうことを意図している」という回答は、「ユニーク」である点を指しているのであろうと思われます。しかし当然ながら「ユニーク」であればなんら問題ないというわけではありません。

 本件を「問題視しなくともよい」とする人たちからはこんな意見がみられます。

「問題集の目的は点数をとらせることにある」
「駿台トップの講師が書いている以上、そういったことを考えていないはずがない」
「こんなもんにまでイチャモンつけるのか」
「性欲と結びつけることで学習効率を高めていて合理的」

 参考書の価値は、受験勉強での使い勝手でかなりの部分が決まるのでしょう。その意味で、たとえ性差別的な表現が使われていようがいまいが、「使えるならいい」とする人は一定数いるのかもしれません。しかし、それが「差別的表現を使っていい」ことにはならないのは当然です。ある問題を解決するために、別の問題を軽視していいはずがありません。特に性差別は往々にして優先順位が下位とされ、疎かにされることが度々あり、「ユニークさ」が「差別的な表現をしないこと」に優先されてしまっている現状は、社会の構図を反映しているのだろうと思います。

 特に本書は学習参考書という性質上、多くの女子生徒が使用しています。こうした不愉快な表現によって使用を敬遠する人もいたかもしれません。本書の特徴である「ユニークな例文」が有用であると駿台文庫が考えているのであれば、性差別的な表現を使うことで、損をしていることになります。「ユニークであること」と「差別的でないこと」は両立しますから、チェック体制を見直して、広く有用な参考書を出版していただきたいですし、また著者の霜栄氏は、現代文の講師なのですから、より社会の情勢に敏感であって欲しいと思います。

(門田ゲッツ)