
バホそばドン丼以外に怪しいメニューはないが、他人丼は関東ではあまり見ない。
札幌駅から20分ほどのところにある琴似駅。その駅からさらに5分ほど歩いたところにある、ごく普通のおそば屋さんのメニューに、何がなんだかさっぱりわからない丼を発見した。その名も、
『バホそばドン丼』
である。
東京生まれ東京育ちの筆者にとって、この名前の中で理解できるのは、“そば”と“丼”だけ。バホとドンに関しては、北海道の方言なのかどうかすら不明である。いや、そばと丼に関しても、内地ではひとつのメニューになることはまずない。普通、そばは「○○そば」であり、「丼」はごはんものを指すからだ。強いて言うなら「○○そば××丼セット」だろう。
とりあえずその謎のメニューを頼むと、筆者とほぼ同時に入店した道民と思える隣のテーブルのカップルの男性も、「バホそばドン丼?」と、半疑問形で同じものを頼んでいた。
ということは、地元民でも理解できないメニューということ。方言でも、その地域のソウルフードでもないメニュー、ますます気になってきた。
店は外観も内部も、ご主人もその奥様と思える厨房の女性も、まったく普通である。その温厚そうな夫婦の仮面の下に、どんな策士の顔が隠れているというのか?
ほどなくして着丼したメニューは、「なるほど、これがバホそばドン丼か!!」というようなインパクトは、ほぼなかった。

見かけは普通のカツ丼とお新香、お味噌汁のセットと思えたが……。
それは、隣テーブルの男性も同じだったようで、とりたてて驚きの声も歓声も聞こえては来ない。パッと見、普通のカツ丼じゃないか。この街では、カツ丼を「バホ~」と呼ぶとしたら、そっちの方が驚きである。
しかしよく見ると、筆者が知っているカツ丼には見かけない食材がチラッと見切れている。エビだ。ということは天丼か? いやいや、天丼にしてはエビが衣に包まってない。
驚いたのは次の瞬間だった。カツとエビの間から見えていた不思議なものを箸でつまみ上げると、それが“そば”だったのだ。

カツとごはんの間にそばを隠したのは、やっぱりある意味トラップに違いない。
そばは普通、汁の中かざるの上に盛られているかのどちらかである。それなのに、このそばは、カツとエビの下、ごはんの上に隠すように盛られている。まるで陸に上がった亀もしくはイグアナ、いや、カエルかカバか? いずれにしろ、ごはんの上には似つかわしくない。
しかし、ひとたびクチに運んでみると、違和感は感じられないどころか、非常に親近感ある味わいなのだ。先週も今週もどこかで食べた……。そう、いつも食べている駅そばのもりそばカツ丼セットじゃないか。それにエビまで付いている、オトクな盛り合わせなのだった。

すすきののキャバ(ハード)のお姉さんに教えたら驚いていたので、道内でも一般的ではないらしい。
しかし、納得できないのはその不可解なネーミングである。ご主人に伺うと、
「実は、TV番組の中で生まれたメニューで、『バホバホ隊』というチームが命名したのでこんな名前になりました(笑)」
納得。ちなみにごはんは普通の1.5倍あるという。女性が完食するのはチト苦しいかも。
「バホそばドン丼」フツーにうもうございました。
札幌市西区 三徳『バホそばドン丼』700円
インパクト ☆☆
味 ☆☆
店 ☆☆
(写真・文=よしよし)