50年前のラノベ? 山田風太郎の知られざる傑作青春ミステリー『青春探偵団』

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『青春探偵団』(ポプラ文庫ピュアフル)
 ご存知のとおり、山田風太郎は『甲賀忍法帖』シリーズなど、忍者物の大家として知られた作家だ。1981年に『魔界転生』が映画化され、近年では『甲賀忍法帖』『柳生忍法帖』が、それぞれ『バジリスク~甲賀忍法帖~』『Y十M ~柳生忍法帖~』として漫画化されるなど、再び脚光を浴びている。年月を経るごとに評価が高まっている作家の一人である。  山田風太郎は子ども向けの青春ミステリー小説も手がけている。『青春探偵団』は、秋山小太郎ら6人の高校生が、町や学校に起こる難事件・珍事件を解決していくミステリーの連作短編集。初出はなんと1956年(昭和31年)というから驚きだ。  とある町の北はずれ、城山の麓にある霧ガ城高校には、男女二つの寮がある。山の東側に男子寮の青雲寮、西側に女子寮の孔雀寮。そこの寮生で霧ガ城高校の同級生、秋山小太郎、穴沢早助、大久保大八、織部京子、伊賀小笹、竹ノ内半子ら6人の男女は「殺人クラブ」という探偵小説愛好会に所属し、探偵小説の批評やトリックの新案、いじわるな先生や舎監にしっぺがえしする方法などを日々討論している。カンニングのうまいやり方を考えたり、脱獄――夜、寮を抜け出す行為を繰り返したりして学校生活を送っている6人は、ふいに殺人事件に巻き込まれることとなり......。  背景や表現など古臭く感じるところもあるが、文章の格調高さ、伏線を回収する構成力、結末の歯切れのよさなど、一流のエンタテインメント作家の技を存分に堪能できる作品となっている。  オススメの一編は、「泥棒再入来」。秀才だが不良ぶったところのある秋山小太郎は、宿敵である舎監の宿直・タラバ蟹に挑戦するため、一人"脱獄"を決行する。しかし、そんな時、舎監の臨時点検があり、さらに泥棒が寮内に侵入するという大ピンチ。町には警官が徘徊し、いつなんどき脱獄がバレるかも分からない。警官が来て、寮の屋根裏に設けた秘密の小部屋の存在がバレたら、安らぎの場所が失われてしまう。小太郎は女子寮にかくまわれるが、またそこから脱出するのも難しく......。小太郎は無事、青雲寮へ帰ることが出来るのか?  スピード感あふれる展開が爽快で、6人の厚い友情が感じられる一編だ。また、結末の小太郎のセリフも痛快でかっこいい。  何しろ54年前の作品なので、現代の小説に読み慣れている人は、違和感があることだろう。女子の造形などジェンダーにまみれているし、言葉遣いも古臭い。だが、違いは違いとして楽しめば、当時の文化背景などがよく分かり、現代の小説とは異なった楽しみ方が出来る。半世紀を経ても残っている作品には、色あせない面白さが確かにあるのだ。 (文=平野遼) ・山田風太郎(やまだ・ふうたろう) 1922年兵庫県生まれ。東京医科大学在学中の47年、雑誌「宝石」の懸賞小説で『達磨峠の事件』が入選。49年に『眼中の悪魔』『虚像淫楽』で、第2回日本探偵クラブ賞を受賞。翌年に作家デビュー。58年に『甲賀忍法帖』を連載開始し、忍法帖ブームを起こす。伝奇小説から、明治もの、室町ものといわれる時代小説、エッセイまで幅広く活躍。著書に『八犬傳』『魔界転生』『警視庁草紙』『柳生十兵衛死す』など多数。01年没。
青春探偵団 傑作。 amazon_associate_logo.jpg
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国益の元に隠された秘密交渉 教科書には載っていない『戦後「裏」外交史』

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『戦後「裏」外交史』(洋泉社)
 昨年秋、ノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作内閣政権下で、日本国内への核持ち込みを認める密約が結ばれていたことが報じられた。沖縄における基地問題も相まって、国内では安全保障についての議論が盛んに行われている。北朝鮮の核政策を巡る6カ国協議も再開に向けて動いており、いま、外交問題がにわかに熱を帯びているのだ。  よく、日本人は外交が下手だと言われるけど、戦後65年の間、なかなかどうして、裏でさまざまなネゴシエートがなされていた。『戦後「裏」外交史』は、戦後、外国との交渉の水面下でどんな動きがあったのかをたどったムックだ。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の統治政策から北朝鮮による拉致事件まで、日本外交史の裏舞台が詳細に記されている。表紙には、吉田茂、佐藤栄作、田中角栄、竹下登、小泉純一郎といった"お歴々"の顔が並び、いずれも腹に一物も二物もありそうな笑顔だ。外交ジャーナリスト・手嶋龍一と元防衛大臣・石破茂、衆議院外務委員長・鈴木宗男のロングインタビューも掲載されており、読み応えのある内容となっている。  戦後、GHQと日本政府の間に多くのフィクサー(黒幕)が暗躍して、両国の仲介を果たした。右翼の幹部であったり、ヤクザであったり、女優であったりと、フィクサー達の肩書きはさまざま。白洲次郎や渡辺恒雄、最近では佐藤優など著名な人物の名前もちらほら見受けられる。  例えば、1972年の沖縄返還。「冷戦構造下における戦略上の拠点として必要」と、アメリカは返還を渋ったが、「密約」を結ぶことで沖縄返還が成立。その密約の秘密交渉にあたったのが、若泉敬という京都産業大学の教授。アメリカが支払うべき沖縄の土地復元費用を日本が肩代わりする密約も同時に結ばれた。71年、毎日新聞の西山太吉記者がこの密約をスッパ抜いたが、国家公務員法違反で有罪となる(西山事件)など、沖縄返還交渉は、とかくキナ臭く、国家にとってアンタッチャブルな事柄なのだ。現在も外務省は密約の存在を公式に認めていない。  この政治家やフィクサーたちの行為は、決して清廉ではない。のちに逮捕された者、失脚した者も少なくない。だが、国と国がケンケンガクガクで凌ぎを削る交渉のテーブルで、必要とされていたある種の必要悪であったといえる。教科書には書かれていない、テーブルの下でスネを蹴り合うような"ウラ外交"は喜劇に似ている。 (文=平野遼)
戦後「裏」外交史 怖っ。 amazon_associate_logo.jpg
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“シェー”は世界共通!?  赤塚不二夫も公認『世界のシェー!!』

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『世界のシェー!!』(理論社)
 "シェー!"。それは、説明するまでもなく、故・赤塚不二夫先生が描いた『おそ松くん』に登場する、おフランス帰りのキャラクター「イヤミ」お得意のポーズだ。このポーズを世界中の人々にしてもらうと、どうなるか。  この本『世界のシェー!!』は、1992年1月、写真家の平沼正弘氏が東アフリカ・北マラウィーの小さな村を旅する途中、唐突にひらめいて、撮影がスタート。以来、旅行へ行く度にシェーのポーズを撮り続け、撮影した国の合計は、ゆうに100カ国を越える。訪れた先も、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなどの有名どころを始め、イラク、パレスチナ、パプアニューギニア、サントメ・ブリンシベ、エルサルバドルなど、ちょっとディープな国まで、多岐に渡る。  本をパラパラとめくっているだけで、世界中を旅して、いろんな人に会ったような気分になり、高揚感を感じる。さらに、1点、1点、写真をじっくり見ていくと、お国柄や人柄によって、「シェー」というひとつのポーズに、これだけ個性が出るものかと、驚かされる。  例えば、メキシコで大きな麦わら帽子を被った男性は、手の曲げ具合にどこか情熱的なフラメンコのような踊りを感じさせるし、ナイロビのホテルマンは、優雅にポーズを決めながらも絶妙な角度に顔を傾け、目を閉じて口を大きく開け、歌声が聞こえてくるような気さえする。アジア圏の人は、全体的に動作が小さく、こじんまりとしたポーズが特徴で、ミャンマーに住む首長族の人々のポーズは、足を地面につけたまま交差させ、手の平は頭にそっと添えるだけ、という控え目な民族の性格が見事に表されている。  これらの写真を持ち、平沼氏は97年に故・赤塚不二夫先生の元へ訪れている。そして、それを見せると、赤塚先生は「シェーはいいねえ」と、ひとこと。  本書の写真を見ていると、だれもが楽しそうにポーズを決めていて、赤塚先生の感想通り、「シェーはいいねえ」。この一言に尽きる気がする。  ルワンダ人も、ザイール人も、マダガスカル人も、トルコ人も、スペイン人も、クロアチア人も、インド人も、中国人も、ベトナム人も、マサイ族も、赤塚先生も、シェーをするときは、みんな笑顔。 「シェー!」は、人を笑顔にする。モジモジしながら、控えめに笑いながらポーズする人、豪快に手と足を使い、ピカーッ晴れ渡るような笑顔でポーズを決める人、美しい笑顔で優雅なポーズをとる人など、世界にはいろんな人がいる。  ああ! この笑顔の元へ旅に出かけたい。なんだかどこかへ行きたくて、ムズムズしてきた。 (文=上浦未来)   ●平沼正弘(ひらぬま・まさひろ) 北海道、冬は沖縄に滞在しつつ、世界を放浪。現在は「四国八十八ヵ所」巡礼のなかで、「シェー!」を撮りためている。ホームページは、<http://shayman.tamaliver.jp/>
世界のシェー 特大・世界シェー地図、付いてます。 amazon_associate_logo.jpg
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一歩間違えれば大事故!? 大人が本気で楽しむ『あぶない科学実験』

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『あぶない科学実験』(彩図社)
 学生時代、誰もが足を踏み入れた少し怪しげで特殊な教室――理科室。  一歩中へ入ると、薬品の匂いが鼻をつき、直立不動の不気味な人体模型が無言でお出迎え。棚にはビーカー、ガスバーナー、試験管などの器具がぎっしり収められている。  そこで教科書通りに行われた実験と言えば、危険など皆無で安全が確保されたエレガントなものばかりだった。  けれど、今回紹介する『あぶない科学実験』はレベルが違う。あとがきに、教訓として「人様が借りているビルの中で爆発が起きると自分以外の人間がヨダレを垂らすほど怒られる」と書かれているほどで、一歩間違えれば、「やっちまった!」と叫ばずにはいられない、実験が繰り広げられている。  著者であり、今回すべての実験を担当したのは、サイエンスライターの川口万友氏。2009年に発売された『大人の怪しい実験室 都市伝説の検証』(データハウス)では、コーラで骨は溶けるのか、某ハンバーガーショップで噂されるミミズバーガーは本当なのか、などの検証を行い、話題を呼んだ。  本書では、都市伝説ではなく、"あぶない"実験を中心に25件の実験の様子をレポート。備長炭を使って火花を飛び散らしたり、水道管でエアバズーカーを作ってジャガイモを50メートル以上飛ばしてみたりしている。  その一例をもっと具体的に紹介しよう。実験No.22の"爆裂! テルミット反応"。用意するものは、酸化鉄粉末、アルミニウム粉末、マグネシウムリボンで、酸化鉄とアルミニウムの粉末を8:3の割合で空き缶に入れ、フライパンの上に置く。空き缶にマグネシウムリボンを加え、点火。すると、2200度にも達するすさまじい炎がブワっと噴出し、みるみるうちに、フライパンを溶かす。  「酸化鉄+アルミニウム→酸化アルミニウム+鉄、つまりは酸化鉄がアルミニウムによって還元されるわけだ。アルミニウムに熱を加えると、手近な酸化鉄から酸素を奪い、酸化アルミニウムに変わる。同時に酸素を奪われた酸化鉄は鉄に還元され、その時に高温が発生する」(本文より)という、テルミット反応の結果、であるらしい。うーん、まったくわけが分からない......。  これは、一瞬ではあるけど、火の量が半端ではないので、ある程度知識があり、激しい炎に対し並々ならぬ魅力を感じる理系男子におすすめ。  興味はあるけど、炎上したりするのは正直コワイ。そんな乙女なアナタは、家で簡単にできる実験No.09"緑色の不気味焼きそば"をお試しあれ。  これは非常に簡単な実験で、紫キャベツを使って通常通り焼きそばを作るだけ。すると、不思議なことに不気味な緑色のやきそばが完成する。その理由は、紫キャベツに入っている"アントシアニン"という色素。この色素はアルカリ性の物質と交わると、青色になるという性質を持ち、焼きそばの麺に含まれている、かん水というアルカリ成分がアントシアニンと反応して色が変化する。これは、酸性は赤、アルカリ性は青に色を変えるリトマス試験紙の思い出すと分かりやすい。  この焼きそばをよりマズく見せるコツは、色を際立たせるため、ソースではなく塩焼きそばにすること。彼氏と別れたいという女子は、彼を自宅に招き、無言でスッとこの焼きそばを差し出せば、距離を置かれること間違いなし。 「実験はうまくいかない。それはもう見事な失敗の連続である。(中略)手を動かし足を運び、ヤケドしたり壊したりしているうちにただ暗記するだけの数式、アルファベットが並んだだけの無色の化学式が不意に鮮やかに色づく。やってみて初めて自分の"わからない"ことがわかるのだ」(本文より)  科学はまずは試してみること。失敗を恐れず、けれど実験前には、科学の知識を少し入れて、試してみよう。くれぐれも、家を吹っ飛ばしたりして事件にならないようご注意を。 (文=上浦未来) ●川口友万(かわぐち・ともかず) 1966年生まれ。富山大学理学部卒。サイエンスライター。"サイエンスにもっと笑いを!"がモットー。パソコン誌の編集者を経てフリーに。『月刊PCfan』にて、本書の元になった「サイエンス自作系」を好評連載中。著書に『大人の怪しい実験教室~都市伝説の検証』(データハウス刊)、『これからの自転車読本』(東京地図出版刊)
あぶない科学実験 サイエンスに笑いを! amazon_associate_logo.jpg
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“オブローダー”が厳選! 知られざる地域史が見えてくる『廃道をゆく2』

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『廃道をゆく2』イカロス出版
 「廃墟ブーム」と言われて久しい。というより、もはや一般化し、サブカルチャーの一形態としての地位を獲得した感がある。朽ちていく建築に宿る虚無感や退廃的なムードを切り取った写真集や、実際にそこを訪れたい人のためのマニュアル本が現在にいたるまで数多く出版されているのは周知の通り。  本書『廃道をゆく2』は、簡単に言ってしまえばそんな廃墟ガイド本の「道」バージョンだ。写真・執筆は、廃道サイト「山さ行がねが」を運営する平沼義之氏や、ウェブ同人誌「日本の廃道」の永冨謙氏をはじめとする総勢9人の「オブローダー」(「廃道探索者」を表す造語)たちで、全国各地に散らばる計51本の「棄てられた道」を文字通り「探索」している。なお、「2」というからには続編にあたるわけだが、前作と基本スタンスは変わらず、重複する廃道もない。本書を読んでから前作に遡ってもまったく問題ない。  雑草や薮に浸食された舗装路、塞がれた隧道(ずいどう※「トンネル」の古い表記)、苔むした石造りの橋梁、岩壁を切り通した跡......掲載された写真の数々には廃道を彩るさまざまな要素が克明に捉えられている。それらはもちろん素晴らしいが、本書のキモは、ただ単にビジュアルで情緒に訴えるだけでなく、廃道がまだ廃道でなかった時代の人々の暮らしぶり、すなわち地域の歴史を掘り下げようとする執筆陣の姿勢にある。これは特に意図されたというよりは、オブローダーが廃道巡りにおもむく際に抱く欲求ないし動機みたいなものがそのまま表れたのだろう。  たとえば、奈良県吉野郡川上村を抜ける東熊野街道。この廃道で特筆すべきは、それ自体からまた無数の廃道が派生していることだ。本書の言葉を借りれば「廃道のテーマパーク」。川上村は吉野杉の本場であり、その吉野林業を大成させたのは幕末~明治の森林王・土倉庄三郎だ。廃道によって結ばれた集落を辿っていけば、土倉の功績や「林業という産業システムにおける道の役割」が見えてくるし、ひいては「隣村隣県との交通史に繋がっていく」。「道」というものは必ずどこかに通じている。そのネットワークが途切れて欠損した部分が廃道であり、廃道探索とは「地域史のミッシングリンク」に光を当てる作業でもある、というわけだ。  あるいは、富山県南砺市にある「中の谷隧道」と「栃折隧道」。いずれも抜け穴のような、狭く、そのわりには長い「歩行者専用」のトンネルだ。この地域は1971(昭和46)年まで、冬場は豪雪に閉ざされ外界から孤立してしまう山村だったそうだ。しかし、急病人が出たり物資が足りなくなったりすれば、遭難覚悟で雪の峠を越えねばならない。だったら、土の中を進んだほうが安全じゃないか。との村民の思いから、人しか通れないサイズ、逆に言えば、人さえ通れればいい「雪中隧道」が掘られたのだという。  また、この廃隧道というのは、土木建築史的観点から見ても興味深い点が多々ある。簡素な素堀から、重々しい石積み、レトロな煉瓦積み、さらには洗い出しの化粧コンクリートで仕上げたモダンなものまで、個性豊かな隧道写真はさながら近代土木技術の見本市のようだ。実は、道路トンネルの建設技術は鉄道由来だが、鉄道に比べて体系的な資料に乏しく、どのように発達していったのかはよく分かっていないらしい。つまり隧道には謎解きの楽しみもまだまだ残っているのだ。  本書を「廃墟ブームに乗った、二番煎じのサブカル本でしょ?」みたいに侮ってはいけない。 (文=須藤輝)
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アイデアは自分で考えない!? 人気放送作家の『アイデアを盗む技術』

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『アイデアを盗む技術』(幻冬社)
 料理の世界では「味を盗め」とよく言われるが、そんなに簡単に盗めたら苦労はしない。しかし親方は、その苦労を弟子に強いる。盗むことは、イコール発見そのものに他ならないからだ。  その、親方が教えてくれない盗む技術を記した裏ワザ的新書が『アイデアを盗む技術』。『ザ! 鉄腕DASH!!』『行列のできる法律相談所』『人生が変わる1分間の深イイ話』『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)などを手がける放送作家・山名宏和氏が、他人のアイデアを盗むちょっとしたコツを、自身の経験談や例え話をふんだんに用いて、分かりやすく伝授してくれる。アイデアを生むときの心の動き、モノを見る姿勢、既存のアイデアの加工法など細やかに解説しており、新人中堅ベテラン、仕事をする全ての人のタメになる良著だ。  構成は、大きく分けて「視線のスイッチを入れる技術」「感情の動きを取り出す技術」「他人の視線を利用する技術」「テレビの発想を盗む技術」の全4章。経験談が中心だが、その話はオフィス内の出来事ではなく、エレベーターの故障や郵便配達員のことなど、日常の些細な出来事ばかり。普段から"面白い"を探す視線をスタンバイ状態にしておいて、なぜ"面白い"と感じたか、立ち止まって考えることが重要である。すぐ仕事に役立つわけではないが、何年も経って、ふとしたところでその "面白い" が企画に生かされることがある、と山名氏は語っている  他人のアイデアをそのまんま使ったらただの盗用になってしまうが、他人の"面白い"発想・着眼点を借りることは出来る。『人生が変わる1分間の深イイ話』も、よその番組のアイデアを発展させて作られたのだという。『アメトーーク!』における、芸人をひな壇に並べる手法や、「○○芸人」とくくるグルーピングの手法を借りて、1分間の時間しばり、出演者による「深イイ」評価といった仕掛けに発展させた。特別な演出を用いなくとも、既存の手法を発展させ、組み合わせることで面白い番組が成立するのだ。  山名氏曰く「アイデアは思いつくものではなく見つけるもの」。  高杉晋作は辞世に「おもしろきこともなき世をおもしろく」と詠んだ。つまらない日常における"面白さ"の発見こそが、アイデアの源泉となる。この本を読んで『アイデアを盗む技術』を盗んでやろう。"面白い"は道端にゴロゴロ転がっている。 (文=平野遼) ・山名宏和(やまな・ひろかず) 1967年生まれ。放送作家。主にバラエティーを中心に活躍。現在も、『ザ! 鉄腕DASH!!』『行列のできる法律相談所』『人生が変わる1分間の深イイ話』『ダウンタウンDX』『たけしのニッポンのミカタ』など、数々のテレビ・ラジオ番組の構成を行うほか、映画や舞台の脚本なども手がける。また社会人向けの企画・発想法の講座「アングル」を定期的に開催し、講師も務めている。著書に『ニッポンの少数民族』『だから直接聞いてみた』(ともに宝島社、共著)、『企画術の教科書』(インデックス・コミュニケーションズ、共著)、『大人の宿題』(サンマーク出版)など。
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「ちょっと困った人」かどうかが気になる人のための『発達障害に気づかない大人たち』

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『発達障害に気づかない大人たち』
(星野仁彦・著、祥伝社新書)
 政権発足から沖縄訪問に到るまで、失言でひたすら失笑されまくっている鳩山首相。5月末で命運も尽きるかと叩かれるのも当然なほどの前言撤回グセである。  しかし、あなたは鳩山首相を批判することができるほど立派な人間ですか? ついつい、問題を先送りしてしまっていませんか? 自分は大丈夫、鳩山なんかと一緒にするなという人でも「そういえば身近に鳩山さんみたいな困ったやつ、よくいるよなぁ」と、思い当たるフシがあったりしませんか?  『発達障害に気づかない大人たち』では注意欠陥・多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群(AS)など、知能が高く学業が優秀であっても顕在化する発達障害について多く触れている。この本が示すADHDやASの特徴を読めば読むほど、鳩山首相がなんらかの発達障害を抱えているのではないかと疑わざるを得ない。  序章16~17ページでは大人の発達障害を疑ってみる必要がある「ちょっと困った人」の傾向を、こう羅列している。  物事の優先順位が分からない、やるべきことを先延ばしにする、仕事のミスが多い、時間に遅れる、約束を守らない、忘れ物が多い、人の話を聞かない、人の気持ちが分からない、人付き合いがうまくできない、場の空気が読めない、キレやすい、落ち着きがない、後先考えずに行動する、片づけられない......。(同書16ページより抜粋)  「やるべきことを先延ばしにする」「約束を守らない」「人の気持が分からない」「後先考えずに行動する」――いずれも鳩山首相が普天間をめぐる行動、言動で問題とされた点である。  発達障害はなんらかの理由で脳の発達がアンバランスになり、社会性や感情のコントロールを欠いた状態であると考えられている。しかし障害の種類によっては知能の遅れを伴わないため、成績が優秀であるほど、あの子はちょっと変わっているが頭がいいから大丈夫だろうと、発達障害による問題点を大人になるまで見過ごされていることが多いのだという。  社会に出ると、社内の上司や同僚、社外のクライアント、彼女や妻あるいはその親類、公的書類を提出する役所の公務員など、さまざまな人たちと交流しなければならない。そこで社会性のなさが露呈しダメなやつの烙印を押され、大人の発達障害が露見することが多い。  しかし鳩山首相の場合、衆議院議員に当選するまでは学問の仕事に就いていた。大学助手、助教授の仕事はサラリーマンに比べれば対人ストレスは低いだろうし、ある程度研究に重きをおける状態だったとすれば、社会性に乏しいが創作や専門分野の技能に強い発達障害者には、打ってつけの職場だったはず。  もしおかしな点があったとしても、東京大学工学部を卒業する頭脳の持ち主だけに「天才にありがちな奇人」として見過ごされただろう。そもそも金持ちのボンボンだけに、月額1,500万円の非公式子ども手当てが示すように、子どもの時だけでなく政界入り以降も、ご母堂をはじめとする周囲のフォローで問題は霧散していたはずだ。  けれども一国の首相ともなればこれ以上はないというくらい、言動、行動が注目される。発達障害者が仕事をこなしていくには職場と家族の理解、サポートが必要とされているが、現状の叩かれ具合を見ると、残念ながら組閣後は、鳩山首相に対するサポートが不十分だったのではないだろうか。  『発達障害に気づかない大人たち』第2章で提示されているADHDの特徴を、鳩山首相の対応する言動、行動とともに箇条書きにしてみよう。 ・多動(運動過多)──いつも落ち着きがなくソワソワしている  ※見た目にソワソワしている ・不注意(注意散漫)──気が散りやすく、集中できない  ※自分の言いたいことだけを一方的に話してしまいがち ・衝動性──後先考えずに思いつきで行動してしまう  ※「国外、最低でも県外」 ・仕事の先延ばし傾向・業績不振──期限が守れず、仕事がたまる  ※普天間移設案決定の期限が2009年末→2010年3月末→5月末とずるずる延びる ・感情の不安定性──「大きくなった子ども」たち  ※よく「63歳児」と叩かれている ・低いストレス耐性──心配と不安が感情の暴発を招く  ※人前では我慢できているのでは? ・対人スキル・社会性の未熟──空気が読めず、人の話が聞けない  ※野党、メディア、沖縄、米国を相手にしたときに、約束事が守れない(「トラストミー」)、場面や状況に応じた対応ができない(仲井真沖縄県知事を訪ねる際に黄色いかりゆしシャツ)、頭の中で考えていることをうまく言葉で表現できない(接続詞ばかりの長くて意味不明なコメント)、感謝、反省、共感などの気持ちをうまく表現できない(「きょうはいい天気です」)、人に助けを求めたり、要求を断ることができない(米国に対して安全保障の見直しを持ちかけるでもなく、沖縄に対して最初から県外は無理ですと頭を下げるでもない) ・低い自己評価と自尊心──マイナス思考と募る劣等感  ※「私は愚かかもしれません」 ・新奇追究傾向と独創性──飽きっぽく一つのことが長続きしない  ※自民党→新党さきがけ→旧民主党→現民主党 ・整理整頓ができず、忘れ物が多い──仕事はできるが家事は不得手  ※普天間にかぎらず達成できた公約がない ・計画性がなく、管理が不得手──低すぎる「生活の技術」  ※脱税疑惑。お金の管理は秘書に任せっぱなしだったと思われる ・事故を起こしやすい傾向──「ジャイアン型」が危ない  ※自分で自衛隊機を操縦するわけではないので、ここは安心 ・睡眠障害と昼間の居眠り──寝ていても起こる睡眠不足  ※菅直人さんのように居眠りする場面は見られない ・習癖──男性に多いチック症、女性に多い抜毛癖  ※少なくとも人前では見られない ・依存症や嗜癖行動に走りやすい──「自己投薬」したがる脳  ※アルコール依存などはなさそう ・のめり込みとマニアックな傾向──男性に多い過集中とこだわり傾向  ※趣味はタッチフットボールとクラシック音楽鑑賞らしい。こだわる言葉は「友愛」と「思い」  ADHDの特徴は一般的にもよく見られる欠点ではあるので、これらの事象をもって、鳩山首相がADHDであると断定することはできないだろう。が、そう思われてもおかしくない点が多々あるのは確かだ。  鳩山さん、もしご心配でしたら、この本を読んで改善のために努力してみませんか? 『発達障害に気づかない大人たち』は、そう言いたくなる具体的な知識がギュッと詰まっている。  ちなみに著者の星野氏(心療内科医、医学博士、福島学院大学大学院教授)自身もADHDだそう。人の振り見て我が振りを直したくなる一冊だ。
発達障害に気づかない大人たち アタシもかしらん? amazon_associate_logo.jpg
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押井守の勝敗論第2弾 名匠巨匠をぶった斬る『勝つために戦え! 監督篇』

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『勝つために戦え! 監督篇』(徳間書店)
 押井守は、映画界・アニメ界で極めて特異な位置にいる監督であろう。アニメ『うる星やつら』、OVA『機動警察パトレイバー』で名を上げ、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』で米ビルボード誌1位を獲得、一躍有名監督となった。アニメ、実写、演劇、ラジオ、ゲームなど幅広い分野で活躍している。が、メガヒットは一度もない。  押井氏曰く「負けなきゃ勝ち」。そんな氏が勝敗論について語ったのが『勝つために戦え! 監督篇』(徳間書店)。「COMICリュウ」(同)誌上で連載していたコラムをまとめたものだ。前作『勝つために戦え!』(同)で語り尽くせなかった映画監督の勝敗論に的を絞り、古今東西の名匠巨匠を歯に衣着せぬ物言いでぶった斬る。あるいは誉めちぎる。かねてより親交のある宮崎駿を「孤独な人だ」と評し、ジェームズ・キャメロンの『アバター』に敗北宣言、ウォシャウスキー兄弟を「ゲイなんじゃねえか?」と疑う。創作秘話とともに、押井守の人柄や映画についての考えが丸ごと分かる内容となっている。巻末にはスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏との対談もあり、読み応えのある納得の一冊だ。360ページ超のボリュームもうれしい。  宮崎駿は「負け」、ジェームズ・キャメロンも「負け」、ゴダールは「勝ち」。押井氏の勝敗論とは、一体どういうものなのだろうか。宮崎やキャメロンのような興行収入を更新する監督は、勝ち続けなければならない宿命にある。勝ち続けることは不可能で、いわばその構造を作り出してしまったのが不幸であり、負けである。逆に、興行的に当たらなくても映画を撮り続けていられる監督――ゴダール、北野武、押井守などが、不敗の構造を持つ「勝ち」側の監督なのである、と押井氏は語る。  この本で一貫して語られる勝敗論は、幸福論に他ならない。映画監督の幸せとは、映画を撮り続けていること。赤字黒字に関わらず映画を撮れる、その特異な位置を確保できた者こそ、映画界における勝者なのだ。負けなきゃ勝ち、負けだと思わなければ不敗。勝ち負けは世間の評価ではなく、自分の中だけの価値基準だということをこの本は教えてくれる。1日3時間ほど働き、好きなサッカーを観て、熱海で犬の散歩をする押井監督は、幸せそうである。 (文=平野遼) ●押井守(おしい・まもる) 1951年生まれ。東京都出身。東京学芸大学教育学部美術教育学科卒。タツノコプロ、スタジオぴえろを経て、フリーの映画監督に。アニメや実写映画を中心に、ゲームクリエイター、小説家、脚本家、漫画原作者、劇作家、大学教授と幅広く活動している。代表作に『うる星やつら』『機動警察パトレイバー』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』など。
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宗教にまつわる素朴な疑問を解消『なぜ人は宗教にハマるのか』

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『なぜ人は宗教にハマるのか』
(著:島田裕巳/河出書房新社刊)
 宗教と言うと、何を思い浮かべるだろうか。  怪しい、危険だ、関わるとお金を巻き上げられる......。日本では、マイナスイメージが強く、何かしらの宗教に入っている人とは一歩引いて接してしまっている場合が多いかもしれない。それは、1995年に起きた地下鉄サリン事件や、01年のアメリカ同時多発テロなどの衝撃的な事件が、"宗教は信仰のためなら人殺しをも辞さない"という印象を作りあげ、攻撃的でない宗教に対しても不信感を募らせているように思える。  けれど、アジアや中東を訪れると、年齢や趣味を聞くことと同じぐらいの調子で「あなたの宗教は何ですか?」と聞かれる。それに対して、ほとんどの日本人は、「お寺で葬式を行うし、仏教かな。でも別に信仰しているとは言えないし......」と悩んだ末、「無宗教」と答えるだろう。  だが、本当に無宗教なのかと考えてみると、正月の初詣や結婚式など、重要な時期や出来事には、いつも寺や神社が関わっているし、神社に訪れる機会があれば、深く考えることもなく賽銭を投げ入れ、「今年も健康でいられますように」などと祈ってみたりする。 「何もない空間に向かって祈るわけはなく、そこに神が存在していることを前提に祈っているのではないだろうか」  これは、本書『なぜ人は宗教にハマるのか』に書かれている内容を一部要約したものだが、言われてみれば確かにその通りで、物心ついた時からの習慣になっている。物心ついた頃から、という点で言えば、例えば、戒律が厳しいように見えるイスラム教においても、わたしたちが何となく神社で祈っているように、1日5回神に祈ることを習慣として、欠かせないものになっているように思える。ただ、宗教と意識して祈っているか、意識していないかが、日本とイスラム教徒では大きく異なる。  著者の島田裕巳氏は、『日本の10大新宗教』(幻冬舎新書)では、創価学会を始めとする新興宗教の現状を綴り、『葬式は、要らない』(同)では、他国と比べ異常なまでに費用が高い日本の葬儀は本当に必要なのかと疑問を投げたり、身近な宗教を研究する宗教学の第一人者。学生時代には、「ヤマギシ会」という、農業を基盤とした共同生活を特徴とした団体に世俗生活を捨て、7カ月ほど入った経験があり、信者目線からも宗教を考えられる人物だ。  本書には、「親に押しつけられる宗教もある」「学校が宗教」「友だちの宗教」「宗教って何だろう」「危険な宗教もある」などの項目が並ぶが、その中でももっとも興味を引くテーマが、「どうして宗教にハマるのか」。  普通に生活している中で、人はどういう経緯で宗教の信者となるのか。そのきっかけ、原因、さらには宗教が流行する時代背景までもが書かれ、簡単に理解できるよう説明されている。  宗教に関する本は、始めはすんなり読み始められても、専門家が書くがゆえに、どんどんと話が込み入り、複雑になりすぎて、最後には読むことを断念してしまうことが多い。けれど、この本の対象読者は、"中学生以上大人まで"なので、非常に分かりやすい。  生きていれば、幸せに暮らしたいと願う。それが、人によっては、何かしらの宗教を信じ、祈りを捧げ、心の安定や安らぎを得ることかもしれない。無理に押しつけられる宗教は困るが、本人が宗教によって幸せで満たされているならば、それを否定する理由は何もない。  とは言え、外国人ならともかく、日本人で何かしらの宗教に入っていると聞くと、やっぱり違和感を受ける。この違和感の理由はどこから来るのか。そもそも宗教は、一体、何なのか。宗教のことを一度じっくり考えてみる良い機会になるかもしれない。 (文=上浦未来) ・島田 裕巳(しまだ・ひろみ) 1953年生まれ。東京都出身。東京大学大学院人文科学研究科博士課程終了。専攻、宗教学。95年のオウム事件に際し、事実誤認報道に基づくメディアのバッシングに遭い、日本女子大学を辞任。その後、オウムの考察を糸口に、探求の対象を現代日本社会全体に拡げて『オウム なぜ宗教はテロリズムを生んだのか』(トランスビュー)に結実した。現在は、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員。
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【関連記事】 「日本の農業は弱い」なんて誰が言った?『日本は世界5位の農業大国』 海外で明るい逃避生活を始めよう! 誰でも出来る『バンコクで外こもり!』 須藤元気がほのぼのフォトエッセイ 元天才格闘家が猫から学ぶ人生哲学

須藤元気がほのぼのフォトエッセイ 元天才格闘家が猫から学ぶ人生哲学

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『Let's 猫』(朝日出版新聞)
 トリッキーな闘い方で人気を集めた元格闘家の須藤元気。リングを下りた彼は今、北海道へと移住し、愛猫「プーチャン」「メイチャン」、そして家族とともにログハウスで暮らしながら、なおも自分流の生き方を模索中だ。  そんな須藤が、二匹の愛猫や家族との暮らしをつづったフォトエッセイ『Let's 猫』(朝日新聞出版)を刊行、話題となっている。北海道への引越しにまつわるドタバタ劇や、妻への想い、犬派だった須藤が二匹と出会って"改心"する心の動きなど、心温まるエピソードが猫というフィルターを通してゆったりと描かれている。  2006年に現役を引退し、映画監督、俳優、タレント、講演活動、ミュージシャンなど活躍の場を広げているが、著書『風の谷のあの人と結婚する方法』(ベースボール・マガジン社)が19万部のベストセラーとなるなど、文筆業での評価も高い。今回で9冊目の著書を書き終えた自由人・須藤元気に、今の想いを聞いた。 ──今回、ネコのフォトエッセイを出そうと決めたきっかけは? 須藤元気(以下、須藤) 昨年、北海道へ移住したんですけど、日々の暮らしや想いを飾らない言葉で綴るには、猫というフィルターを通すのもおもしろいかなと思いまして。あと、まぁ、単純に「猫本」って人気あるみたいなんで売れたらいいなと(笑)。 ──「猫本」は市場で根強い人気ですからね(笑)。この本で読者に伝えたいことは? 須藤 これはもうズバリ、「猫の生き方から学ぶ哲学」。これにつきます。 ──人は猫から哲学を学べると。 須藤 学べるではなくて、学ぶべきです。学ばないとダメです(笑)。 ──でも須藤さんは、どっちかというと犬好きでしたよね。 須藤 そう。よく知ってますね。まぁ、これは自分だけの感じ方かもしれないんだけど、人間社会というのが、ある種管理された「犬社会」に思えてき。特に都会に住んでたからそう感じたのかもしれないけど。ま、犬には罪はないんですけど。で、そこに猫との出会いがあったと。そこらへんは本を読んでいただけると(笑)。 ──で、北海道へ移住を? 須藤 とりあえずピラミッド型のログハウスに住みたかったんですよ(笑)。そうなると広い土地が必要だった。それで土地探しから何からいろいろしてたら、「じゃ、北海道か」みたいな。 ──実際に猫と暮らしてみて須藤元気がもっとも影響されたことって? 須藤 いろいろあるんだけど究極を言っちゃうと、「遊びたいときに遊び、寝たいときに寝る」。これかな。うん、そうなりましたね。 ──まんま猫ですね(笑)。帯の「人生で大切なことは彼女(ネコ)たちから教わった」は実に象徴的な言葉です。それにしても、フォトエッセイの作業は楽しかったんじゃないですか。 須藤 日々の生活の一部みたいな作業でしたね。遊びの延長というか。それでいて書き綴ることで忘れていたことを確認できたり。とりあえず、嫁さんはイラストがうまいことを知りました(笑)。「ヘタウマ」なんですけどね。あと、猫を撮影してると、いい感じで寝転んでくれたり、キーボードの上を歩いてくれたり。なんかこいつ、役どころが分かってんじゃないかって思いましたよ(笑)。 ──あ、奥様のイラストは本当に素晴らしいです。本の世界観と見事にマッチして。あれ、仕事きますよ(笑)。写真はご夫婦でお撮りになったそうですが、こちらもお上手ですね。 須藤 カメラがいいんです。ライカM8。まぁ、猫のことが好きなんで、そこらへんが投影されているというのはあるのかも。もちろん、プロの方から見たらシビアなご意見もあろうかと思いますけど、これはこれでいいかなと。 ──あの、昔、リングで闘ってたんですよね......。 須藤 いやぁ、よくあんなことできたと思いますよ(笑)。もうできないですね。猫からしたら、自分のことを撮影しているこの人間が、かつて血だらけになって殴り合ってたなんて想像できないでしょうね。 (構成=浮島さとし) ●すどう・げんき 1978年、東京生まれ。高校時代にレスリングを始め、拓殖大学短期大学在学中に全日本ジュニアオリンピックで優勝。世界ジュニア選手権日本代表に。卒業後はアメリカで美術を学びながら格闘家としての武者修行も開始。帰国後プロデビューし、K-1やHERO'Sで活躍。06年現役引退。08年に母校のレスリング部監督に就任。東日本学生リーグ戦で優勝、最優秀監督賞を3回受賞。
Let's 猫 いろんな意味で、すごい人だよね。 amazon_associate_logo.jpg
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