テレビや新聞が触れない東京地下の謎を解き明かす『帝都東京地下の謎 完全版』

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『帝都東京地下の謎 完全版』
(著:秋庭俊/洋泉社)
 日本の国家機関が集中する、首都・東京。この地下がどうなっているのか、考えたことはあるだろうか。  2000年以降、東京の地下は目に見えて大きく変化してきた。00年には都営地下鉄大江戸線の全線開通、08年には、もっとも新しい路線・東京メトロ副都心線が開通した。それにともない、池袋駅や渋谷駅の地下再開発も、続々に進みつつある。 「東京の地下の謎に迫る時間は、もうあとわずかしか残されていないのかもしれない」  『帝都東京地下の謎 完全版』の中でそう語るのは、著者の秋庭俊氏。テレビ朝日報道局で社会部、外報部の記者を経て、02年に『帝都東京・隠された地下網の秘密』(同)を発表。以来、知られざる東京の地下網の存在を追い続け、本書では、70冊以上にのぼる膨大な資料を元に、関係者への取材を行い、独自の分析で迫っている。  東京の地下には、"危機管理"という名目で関係者が語りたがらない、歴史や謎がいくつも存在している。とりわけ、戦後GHQの占領時代に立ち入り禁止区域に指定された、大手町、霞ヶ関、永田町、赤坂見附などには、それが顕著に見られる。  例えば、千代田線霞ヶ関駅。  一般的にはほとんど知られていないが、この駅は旧海軍の防空壕を改築して誕生したのだという。防空壕自体は、陸軍本部によって1942(昭和17)年に完成し、戦争末期にはこの防空壕の中で海軍の指揮がとられていた。  現在、綾瀬行きの線路が敷かれているところが、防空壕地下1階部分にあたり、改札や駅事務所にあたる場所が地下2階、そして地下3階もあったが現在は砂が詰められ、駅の下で眠っているのだという。   さらに、丸ノ内線赤坂見附駅。  この駅はホームを挟んで銀座線と向かい合わせになっていて、地下1階のホームは二路線の下り、地下2階は上り、という構造になっている。普通に乗り降りしている分には、不思議には思わないかもしれないが、日本で唯一戦前から走っていた銀座線が開通していた、27(昭和2)年銀座線開通当初から2段重ねのホームだった、というと何か疑問が出てこないだろうか。丸ノ内線は、GHQの融資により、戦後占領の時代が終わる1952年の少し前にようやく着工が始まる。けれど、不思議なことに丸ノ内線で使用されているトンネル自体は、銀座線の開通時にすでに存在していたという。  『東京地下鉄道丸ノ内線建設史』の線路図によると、丸ノ内線のカーブの長さが、通常400や200など分かりやすい数字が並ぶ中に、R182.881という数字が存在する。これは、戦前に使われていた単位の200ヤードに相当。戦後に作られたとされているのにも関わらず、なぜヤード方が用いられているのだろう。  ごく自然に考えれば、丸ノ内線の計画はもっと以前から進められていたのか、あるいは以前に別の目的で作られ、それを利用して線路が敷かれたのか――。 「地下空間がすでにそこにあれば、建設費は10分の1で済むといわれる。そこに地下鉄が敷かれるとわかっていれば、巨万の富を築くこともできる。(中略)情報を伏せている限りは、かつての地下鉄網は巨大な利権として眠っている(後略)」。  秋庭氏は、地下の起源は江戸時代につくられた地下水路や地下道と考える。それが江戸時代以降、明治、大正、昭和、平成とさまざまなかたちで再利用され、補修されてきたのだ、と。    本書では、地下鉄駅ほか、『巨大冷暖房施設が眠る 新宿中央公園』、『首都高一のパニック・ポイント 三宅坂ジャンクション』など、謎を体感できる東京の地下スポット15を紹介。後半ページでは内容を掘り下げ、東京の地下計画の歴史、地図の嘘などについて詳細に書かれている。  これまでの歴史の中で、情報を知る者たちは、地下について何を公表し、何を隠そうとしてきたのだろうか。 (文=上浦未来)   ●秋庭俊(あきば・しゅん) 1956年東京都生まれ。横浜国立大学卒業。作家・ジャーナリスト。テレビ朝日報道局で社会部、外報部の記者を経て海外特派員を務める。米軍のパナマ侵攻、ペルー左翼ゲリラ、カンボジアPKO、湾岸戦争などを取材。96年同局を退社、執筆活動に入る。著書に『帝都東京・隠された地下網の秘密』『帝都東京隠された地下網の秘密[2]』(どちらも洋泉社)、『新説 東京地下要塞』(講談社)、『大東京の地下99の謎』(二見文庫)など多数。
帝都東京地下の謎【完全版】 深まる謎。 amazon_associate_logo.jpg
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松江哲明監督が綴る「松江哲明」のドキュメンタリー

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『セルフ・ドキュメンタリー
映画監督・松江哲明ができるまで』
(河出書房新社)
 『童貞。をプロデュース』や『あんにょん由美香』、そして『ライブテープ』といった数々の刺激的なドキュメンタリー作品を制作し続ける映画監督・松江哲明。現在最も注目される若手ドキュメンタリー映画監督である彼の半生を綴った著作『セルフ・ドキュメンタリー 映画監督・松江哲明ができるまで』(河出書房新社刊)が話題を呼んでいる。  映画好きの少年が次第に「映画ごっこ」に夢中になっていく青春時代から、最新作『ライブテープ』撮影の裏側まで。33年にわたる半生が描かれたこの本には、松江監督の映画にかける思いに満ち溢れている。映画学校での悶々とした日々も、AV監督としてハメ取りをしながらドキュメンタリーについて巡らせた思いも、親交の深かった由美香さん(林由美香、ピンク映画の女優であり『あんにょん由美香』のテーマとなった女優。2005年死去)への溢れんばかりの愛も、喜びも悲しみもすべてが血肉化して作品に結びついていることに驚かされる。   例えば、松江監督がモチーフとして執拗なまでにこだわる「童貞」というテーマ。代表作である『童貞。をプロデュース』はもちろんのこと、童貞をテーマにした対談集『童貞をプロファイル』(二見書房)みちパン!セ」シリーズに収められている『童貞の教室』(理論社)など、「童貞」に対して人一倍強いこだわりを持つ松江監督。本書においても「童貞とは捨てる、捨てないの問題ではなく、セックスを経ずに生きてしまった経験値のこと」と語られるような正しすぎる童貞分析からは、監督の愛情が溢れ出る。  叙情的すぎるほどのナイーブな筆致で綴られる本書を一読すれば、監督自身が類い稀なる童貞力を持っていることは明らかだ。彼は童貞をただの「ネタ」として撮影しているわけではない。 「僕が加賀(賢三。『童貞。をプロデュース』の主人公)を撮りたいと思った理由は、童貞であることにじたばたする姿にかつての自分を見たからだ。(略)童貞である加賀を客観的になんて撮れないのだ」  童貞にキャメラを向けるとき、それは監督自身の「童貞」に対してキャメラを向けている。いや、もしかしたら童貞だけではないのかもしれない。在日韓国人でもAV女優でも、ミュージシャンでも、キャメラを向けた相手は、松江監督自身なのだろう。だから、この著作のタイトルは監督自身をドキュメントした映画ジャンル『セルフドキュメンタリー』なのではなかったか。  松江監督自身もデビュー作『あんにょんキムチ』でも、己を曝け出しながらセルフドキュメンタリーを製作している。学生時代の作品ながら自身の在日というアイデンティティに等身大の目線で向き合ったこの作品で各地の映画賞を獲得した松江監督。最も自分に近い場所からドキュメンタリーを出発させた彼が、本書の中でドキュメンタリー映画についてこう綴っている。 「僕にとってドキュメンタリーとは手法であり、物語を描くための手段だ。現実を素材にして、キャメラで記憶し、その膨大な時間をもう一度シナリオを書くように再構成して、自分が見たいストーリーを演出する」  古くは田原聡一郎が「自分のつくったドキュメンタリーはやらせである」と発言し、森達也は『ドキュメンタリーは嘘をつく』(編集は松江哲明)というそのままズバリのタイトルを冠しているように、ドキュメンタリーとはけっしてありのままの事実ではない。それは、監督の視線によって、現実をもとにしたフィクションにしか過ぎない。ましてや林由美香、前野健太、AV女優に童貞と、アクの強いさまざまな被写体を撮りながら、常に"松江節"ともいえるオリジナリティで被写体を自分のものにしてきた松江監督。この『セルフドキュメンタリー』というタイトルに込められた戦略も自ずから見えてくるのではないだろうか。  自分の半生を素材に「映画監督・松江哲明ができるまで」の物語を綴った松江監督。そのストーリーは、もしかしたら映画好きのいじめられっ子が一流のドキュメンタリストになるまでの、松江監督一流の刺激的なフィクションなのかもしれない。  本書にはこんな記述もある。 「リアル(ドキュメンタリー)もフェイク(ドキュメンタリー)も関係ない。『何が伝わったか』それが一番大切なことだと思う」  真実か虚構か、それは問題じゃない。この青春物語を読んで得られた感覚こそが、すべてなのである。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])    ●松江哲明(まつえ・てつあき) 1977年東京生まれのドキュメンタリー監督。99年に在日コリアンである自身の家族を撮った『あんにょんキムチ』でデビュー。他の作品に『童貞。をプロデュース』(07年)、『あんにょん由美香』(09年)、『ライブテープ』(09年)などがある。<http://d.hatena.ne.jp/matsue/>
セルフ・ドキュメンタリー 映画監督・松江哲明ができるまで 世界を駆けるドキュメンタリー作家・松江哲明が、初めて自らの映画作りを振り返る1冊。この10年で松江が掴んだドキュメンタリー観とはいったい何か。特別付録にドキュメンタリー作家こそ観るべき劇映画50本を紹介。2310円(税込)。 amazon_associate_logo.jpg
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形のない物、信じられますか? 雫井脩介が挑む新境地『つばさものがたり』

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『つばさものがたり』(小学館)
 雫井脩介は1999年、『栄光一途』(新潮社、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞)でデビューし、05年には『犯人に告ぐ』(双葉社)で第7回大藪春彦賞を受賞、今もっともノッているミステリー作家の一人である。『犯人に告ぐ』『クローズド・ノート』(角川書店)は映画化もされるヒット作となった。  その雫井氏の拓いた新境地が『つばさものがたり』(小学館)。  君川小麦は26歳のパティシエール。東京のパティスリーで修行に励んでいたが、乳ガンを患い、自分の余命が長くないことを知る。決心の末、店を辞め、亡くなった父の夢「家族で小さなケーキ屋を開く」ことを叶えるために、実家の北伊豆へと帰ってくる。町外れのテナントを借り、君川洋菓子店をオープンさせるが、小麦の兄・代二郎の息子で5歳の叶夢(かなむ)は「ここは流行らないよ」と言う。何故かと問いただせば「レイという天使がそうが言った」と。小麦たちは身を粉にして働くが、レイの言ったとおり、店は立ち行かなくなり......。  ミステリー作家らしい明瞭な構成で、非常に読みやすい作品となっている。作中人物を通して、作者の人間愛を垣間見ることが出来る優しい物語だ。訪れるラストには涙を禁じえない。  この物語は、叶夢とレイの物語でもある。レイは叶夢以外の人には見えない。子どもとは、誰もが等しく"レイ"を抱えている、不可解な存在だ。それが本当にいようがいまいが、周りの大人たちがその存在を肯定してあげることで、子どもは初めて羽ばたくことが出来るのではないだろうか。夢も同様に形のないものだが、信じることでその存在はにわかに輪郭を帯びてくる。この『つばさものがたり』は、つらいとき、挫折しそうなときに読みたい小説である。小麦や叶夢、レイの生きる姿に、つばさを羽ばたかせる自信と勇気をもらえるだろう。 (文=平野遼) ・雫井脩介(しずくい・しゅうすけ) 1968年愛知県生まれ。専修大学卒。00年に第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』でデビュー。05年に『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の著書に『クローズド・ノート』『犯罪小説家』(双葉社)『殺気!』(徳間書店)などがある。
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サラリーマンはどこから来て、どこへ行くのか?『サラリーマン漫画の戦後史』

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『サラリーマン漫画の戦後史』
(著:真実一郎/洋泉社新書y)
 僕は2003年に新卒で中堅エロ本出版社に就職し、2年ほど編集者として働いたのち、社員数10人にも満たない零細出版社に転職した。前者は、会社組織としては堅実で保守的だったけれど、やっぱり仕事内容は家族に話せない程度に特殊だった。後者はワンマン社長が仕切る悪い意味で同人サークルみたいな出版社。  いずれにせよ、こうしてフリーライターになる前、会社に勤めて会社から給料をもらっていた当時の僕はれっきとしたサラリーマンだったわけだ。でも、それはいわゆる「サラリーマン」とは似ても似つかないし、就活中は「オレ、編集者になる」とか言って、サラリーマンという雇用形態は意識の外にあった。  本書『サラリーマン漫画の戦後史』は、人口のボリュームゾーンでありながらあまり語られることのない「サラリーマン」を、漫画を通して見つめ直したものだ。自らも現役サラリーマンである著者・真実一郎氏は、まず「勤勉で謙虚」「献身的」といった理想的かつ最大公約数的なサラリーマン像はいつ形成されたのかを探り、そのルーツを1950~60年代に人気を博した源氏鶏太の「サラリーマン小説」に見る。  源氏作品の特徴は、〈人柄主義〉と〈家族主義〉に貫かれた勧善懲悪ストーリーにあるという。そこでは仕事の成果よりも人柄がモノを言い、会社は永く帰属すべき疑似家族として描かれ、誠実な主人公に敵対する卑劣漢は必ず失脚する。終身雇用に守られながら年功序列の出世レースを人柄のよさで乗り切ってハッピーエンド──そんな世界観が、高度経済成長を支えたサラリーマンに広く浸透したというわけだ。  この〈源氏の血〉を正当に継承し、リバイバルさせたのが『課長島耕作』(弘兼憲司)である、というのが著者の見立て。そして、源氏=島耕作ラインを軸に、サラリーマン漫画の変遷を時代時代の世相とダブらせながら掘り下げていく。  たとえばバブル期、島耕作がブイブイいわせていたその裏で、『妻をめとらば』(柳沢きみお)の主人公は過労と孤独に押しつぶされ、『気まぐれコンセプト』(ホイチョイ・プロダクション)は享楽的な「ギョーカイ人」を茶化し、『お茶の間』(望月峯太郎)は生き方に悩むサラリーマンに「フリーター」という選択肢をチラつかせた。  読ませるのは、このバブルが終焉したあとのサラリーマンの物語。90年代以降、それまで曲がりなりにも受け継がれてきた〈源氏の血〉は薄れていく。終身雇用も年功序列も崩壊し、会社はサラリーマンを守る「家族」ではなくなり、グローバル資本主義の前で「人柄」は無力だった。『宮本から君へ』(新井英樹)は反・島耕作的なスタンスで「バブル」という時代そのものと格闘し、当の島耕作でさえ、もはや不倫と社内政治にかまけていられなくなり、部長→取締役→常務→社長と昇進するにつれビジネス情報漫画にシフトしていく。  00年代に入ると〈源氏の血〉の解体は本格化。『働きマン』(安野モヨコ)におけるさまざまな人の働き方を否定も肯定もせずフラットに並べる手法は、〈仕事観が多様化し、普遍的なサラリーマンの理想像が分からなくなってしまった時代だからこそ生み出された〉と著者は指摘する。あるいは、会社コミュニティに背を向け趣味に没頭する『ぼく、オタリーマン。』(よしたに)、弱小デザイン事務所を舞台に上下関係のない「サークル的な緩い組織」でやりがいを見出す『午前3時の無法地帯』(ねむようこ)など、サラリーマンたちは〈島耕作の呪縛から解放されたかのように等身大に振る舞い始めた〉。  戦後のサラリーマン・ファンタジーは解体され、「サラリーマン」の公約数が最小の"1"になりつつあるいま、サラリーマンはどう生きるべきか? 著者は、自分にしかできないワン&オンリーな能力で会社に認められる『特命係長只野仁』(柳沢きみお)を引き合いに出し、〈次は我々が自分自身の「特命」を生きる番だ〉と、力強く締めくくる。  もし今後「サラリーマン研究」的なものがなされるなら、その基本書になりそうなくらい、戦後から現在に至るサラリーマンの栄枯衰勢と社会構造の変化が手際よくまとめられた良書である。 (文=須藤輝) ●真実一郎(しんじつ・いちろう) 神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒業。現役サラリーマン。広告から音楽、漫画、グラビアアイドルまで幅広く世相を観察するブログ「インサイター」(http://blog.livedoor.jp/insighter/)を運営。『SPA!』(扶桑社)、『マイコミジャーナル』(毎日コミュニケーションズ)、『モバイルブロス』(東京ニュース通信社)、『Invitation』(ぴあ)などでコラムを連載。座右の銘は「巨悪も美女も眠らせない!」。
サラリーマン漫画の戦後史 リーマン万歳! amazon_associate_logo.jpg
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『70年代ロマンポルノの記憶』 日活ロマンポルノって何だったの?

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『70年代ロマンポルノの記憶
―河合孝雄ヌード写真集』
(鹿砦社)
 『団地妻 昼下がりの情事』『後ろから前から』といった名作のリバイバル製作やDVD化、そしてフランス、韓国を始めとした海外での上映など、近年再評価の機運が高まりつつある日活ロマンポルノ。アダルトビデオ前史の男たちの下半身を奮い立たせ、ピンク映画の代名詞となるまでに至ったロマンポルノだが、実は崔洋一(『血と骨』、『カムイ外伝』)や黒沢清(『アカルイミライ』、『トウキョウソナタ』)、そして森田芳光(『失楽園』『間宮兄弟』)といった大物監督たちが修行の場として、まだ見ぬ自作のための実力を養う場でもあった。ただのピンク映画にはとどまらず、21世紀の日本映画界に並々ならぬ影響を与えた「映画の学校」がロマンポルノだったのだ。  そもそも、「ロマンポルノ」とは何だったのだろうか? 映画全盛期であった昭和30年代から、映画界は徐々にその勢いを失い、映画の製作本数は激減、監督やスタッフなどの映画人たちの仕事はだんだんと減っていった。そんな時代に、日活は成人向け映画の製作に乗り出した。1971年〜88年にかけて製作されたそれらのシリーズは「日活ロマンポルノ」と名付けられ、実に700本あまりの作品が製作された。監督やスタッフなどは、それまでの映画界を支えていた一流の映画人たち。ポルノという響きに抵抗を示す者もいたものの、一般映画よりは少ないが成人映画としては潤沢な予算を使用できることもあり、"裸さえ出ればどんなストーリーでも構わない"という条件を逆手に取って、数多くの映画人たちの貴重な創作の場となった。しかし、17年間にわたって日本中の男性を喜ばせ、次世代を担う監督たちを育て上げた日活ロマンポルノも、80年代に登場したアダルトビデオの勢いに押され、ついに打ち切りとなってしまう。  40歳以上の男性ならば、その名前を聞くだけで、思い出とともに股間が膨らんでしまう方も多いであろう「日活ロマンポルノ」。奈美悦子や天地真理、岡本麗などといった今では実力派として知られる名女優たちも、かつてはロマンポルノでその魅力を振りまいていた。そんなロマンポルノ女優たちの艶姿は写真家・河合孝雄氏による写真集『70年代ロマンポルノの記憶』(鹿砦社)でも確認することができる。70人あまりの女優による裸体の競演は、30年以上の時代を隔てているとは言え、現在でも十分に美しく、いまだに"現役"の姿を留めている。その70人の中にはロマンポルノから映画・テレビ界へと進出していった白川和子、宮下順子、美保純といった女優たちの若き日の一糸まとわぬ美しい姿も刻まれている。  21世紀に入り、ヘアヌードは当たり前、ネット上にはモザイク処理すらもされていない画像が氾濫し、アダルトビデオでは中出しが当たり前になり......とエロスに対する過激さは年を追うごとにエスカレートするばかり。そんな状況に慣れきってしまった男子諸君にとって、ヘアすらもほとんど見ることができないロマンポルノや前述の写真集は刺激が少なく、"抜く"には物足りないと思われるかもしれない。しかし、写真集を眺めると、そこには牧歌的でおおらかなエロスが許されていた時代の香りが残り、往年の日本のエロスを知ることができる。過激さだけを求めることがエロではない。想像力で補いながら、妄想力を爆発させ、生命力が噴出する。そんな面倒な方法でも、無修正ビデオ以上のエロスが堪能できるのだ!  往時を知るおじさまのみならず、エロスの明日を担う若い読者にも、ぜひ日活ロマンポルノの素晴らしさを感じ取ってほしい。 (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●かわい。たかお 1938年4月30日、東京都大田区生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。同校在学中体育会山岳部に在籍。出版社写真部を退社後フリーに。ロサンゼルスに遊学する。日活、東映所属女優を多数撮り続け、「平凡パンチ」(現、マガジンハウス刊)など多数の男性週刊誌に掲載。女優撮影カメラマンとして第一人者。
70年代ロマンポルノの記憶―河合孝雄ヌード写真集 芸術作品です。 amazon_associate_logo.jpg
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サブカル好き必見! 何かとマニアック過ぎる「F-Files図解シリーズ」

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 今までの雑学本ではテーマになりにくかった、人の想像力や創作力、幻想力を刺激するありとあらゆるジャンルについて、分かりやすく、マニアックに紹介してくれる面白いシリーズ本がある。  「F-Files図解シリーズ」と名付けられたそれは、ファンタジー書籍の老舗として知られる新紀元社刊の人気シリーズ。2005年10月に第一巻となる『近代魔術』が発売され、以後、『クトゥルフ神話』『錬金術』『UFO』『中国武術』など、これまでに27冊を発売。そのジャンルは多岐に渡り、澁澤龍彦から矢追純一、はたまたミリタリー、ゲームオタクまで、実にさまざまなファンたちを虜にしているのだ。  一つひとつの項目は見開き2ページで完結し、左ページに解説、右ページに図解という形式で簡潔にまとめられているが、読み応えは十分。例えば最新刊の『悪魔学』では、悪魔とはそもそも何なのかという概念解説から始まり、悪魔学基礎編・発展編、魔女の悪魔学、グリモワールの悪魔学と続く。  また、少々マニアック過ぎる解説もこのシリーズの魅力だ。  「悪魔を召喚するにはどんな準備が必要か?」という章では、   「最初にすべきことは断固たる決意を固めることである。悪魔を操縦するのは並大抵のことではないからである。(中略)そして、悪魔を呼び出す直前の1週間は女人との関係を断つなどして身を清めなければならない。食事は1日2回とし、食事の前には主に祈りをささげなければならない」  また、『特殊警察』の中の「狡猾な犯人との人質交渉は?」では、 「犯人を退屈させないように注意する。(中略)良心の呵責は期待できないため、投降をうながしても意味はない。犯人をうまくおだてて気を緩ませ、自尊心をくすぐりながらもミスを誘発させる会話術が人質交渉チームには求められる」  はたまた、『近接武器』「武器がない! そのときどうする?」では、 「どんなショボイ武器であっても、素手で戦うよりはマシである。(中略)農作業用の『鎌』はそのままでも武器として使えるし、『出刃包丁』はダガーの代わりに、『テーブルナイフ』や『フランクフルトの串』はスローイングナイフや手裏剣のように投げることが可能だ」  などなど、残念ながら日常生活でなかなかそんな機会にはお目にかかれないが、妙に実用的な解説が繰り広げられる。  このシリーズの担当編集である新紀元社・川口さんによると、もともとファンタジーゲームに出てくる用語やアイテムなどの元ネタを解説する「Truth In Fantasy」というシリーズがあり、そのファン層を中心に、ゲームファン以外にも親しみやすく、手軽に手に取ってもらえるようにと作られたのが、このシリーズだという。 「編集はわたし以外にも何人かいて、それぞれが興味のあるテーマを取り上げているので、こんなにジャンルがバラバラなんです。とくにシバリはないので、他社さんでは敬遠されるテーマでも扱えるんです。たとえば、死後の世界について解説している『天国と地獄』なんかは、この作りだからこそできたものだと思います。とにかく分かりやすさにこだわってつくっていますが、こういったテーマをこんなに詳しく書いて、いったい誰が得するのかと思うことも......(苦笑)」  読者層はテーマごとにガラリと変わるものの、下は小学生から上は50~60代までというから実に幅広い。1冊にかかる制作期間は著者によってまちまちだが、2カ月のものから数年を費やしたものまであるという。ちなみに、これまでで一番売れたのは、『ハンドウェポン』と『北欧神話』とのこと。  サブカル好きにはたまらない、この絶妙なテーマチョイス。版型もB5変形と、図解というわりには持ち運びに便利なサイズだ。このシリーズでゲームや映画、コミックなどの元ネタが分かれば、今までと違った、ツウな楽しみ方ができるかも!? (文=編集部) ・新紀元社 <http://w3.shinkigensha.co.jp/books/F-Files.html>
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メトロポリタンのレイニーブルーなミッドナイト 『Jポップな日本語』

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『Jポップな日本語』(主婦の友社)
 「Jポップ」  それは、1988年にFMラジオ局J-WAVEが、日本におけるポピュラーな音楽のことを総称して呼び始めた造語を指す。わたしたち日本人にとって、もっとも身近な音楽であり、ひと度耳にすれば、それぞれの「あの頃」の記憶が色鮮やかによみがえる。  音楽の世界にはいつの時代にも人気の歌手がいて、時代を反映した流行の歌が存在している。身を切り裂くような辛い思いをしたときも、心の底から沸き上がる感情に胸躍らせたときも、いつもどこかで流れていたメロディ。  そんななかでも最も心に響くのは、やっぱりJポップ。日本語で綴られた歌詞はストレートに胸を突く。自分の体験と重ね合わせ、「あぁ、こんな思いをしているのはわたしだけじゃないのね」と、歌詞を何度も反芻させ、心を落ち着かせる。  それらの名曲には、当然それぞれに違う思いが込められているはずだが、実はJポップ界には、昔から変わらない熱い定番メッセージというものがある。そんなメッセージを集めたのが『Jポップな日本語』(主婦の友社)という本だ。  「夢はきっと叶う」  Jポップ界では、「夢がなければ人は死んだも同じ」(本文より一部抜粋)だと言われているそうで、夢がない人には残念だが、夢がなくては人生は始まらないのだ。  「決まったレールの上を歩くな」  また、何の苦労もせず生きている人も毛嫌いされるそうで、「人生で一度ぐらいは〈どん底〉を味わえ」というコンセプトの元、発信されている。  また、「自分に嘘つくのはやめよう」、「遠くから見守っているよ」、「キミは小さく震えていた」などお決まりのフレーズは、手を代え品を代え、頻繁に使われ続けている。   極めつけは、「永遠」と書いて「とわ」、「運命」と書いて「さだめ」、「本気」と書いて「マジ」。これら独特の漢字の読み方を作りだしてしまうのもJポップ界の特徴で、もはや辞書に載っていてもおかしくない、というほど定着度が高い。  著書の井上ノリミツ氏は、高校受験の時にFMラジオを聴き始め、Jポップにのめりこんだという。ミュージシャンを夢見て「ガラスのプリマ」「あばずれ」「売女」などの曲を発表。残念ながら夢はあきらめてしまったが、長年Jポップな歌詞に触れ合い続けてきた人物だ。  そんな井上氏が、日本語ならではの美しいコトバや表現は、Jポップに凝縮されている、と考え、本書ではとりわけ80年代、90年代、そして現在によく使われている歌詞をまとめている。  この本を読み終えたときには、雪が降ってきたら、「天使のカケラが舞い降りてきたよ」なんて、自然と口をついて出てくるぐらい、美しい日本語が使えるようになっているハズ、なのです。 (文=上浦未来) ・いのうえ・のりみつ 70年代、東北地方の海沿いの町に生まれる。高校受験の時に、FMラジオを聴き始め、J-ポップにのめりこむ。高校2年の夏、チンピラとダンサーを夢見る安キャバレーの女恋物語を歌った「ガラスのプリマ」という初めのオリジナル曲を狭い範囲で発表。その後「あばずれ」「ふたまた」「売女(ばいた)」を発表し、ついに男の切ない気持ちをたくみに歌った「元カノからもらったものが捨てられない」、上下関係に悩む中学生女子の気持ちを歌った「今日の漢字テスト読み(仮名)だっけ?」の「青春三部作」を完成させる。その後、夢を諦め、派遣社員、日雇いバイト、レンタルビデオ店員と次々転身し、現在も精力的に活動している。  
Jポップな日本語 イカすぜ! amazon_associate_logo.jpg
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当時のDが語る番組改変事件の真相『NHK、鉄の沈黙はだれのために』

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『NHK、鉄の沈黙はだれのために』
(柏書房)
 2001年に起きたNHKの番組改変事件を覚えておられるだろうか。これは、01年1月30日に放送されたETV2001シリーズ「戦争をどう裁くか」の第2回「問われる戦時性暴力」を放送した際、当初の企画と放送内容に大きな隔たりがあり、不正確な情報が一方的に放送されたとして、VAWW-NETジャパン(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク)がNHKを訴えた事件だ。各メディアがNHKを激しく批判し、右翼団体がNHKを襲撃したりと、大きな事件となった。番組内容改変には、安倍晋三や中川昭一など、議員の圧力があったとされている。判決はVAWW-NETジャパンの敗訴(=NHKの勝訴)となった。番組制作における政治介入は、「表現の自由」「編集の自由」を侵害するとともに、放送法の「政治的に公平」「事実を曲げない」という原則に反しているとして、現在も議論の対象となっている。  10年弱が経過した今日だから、語れる言葉がある。『NHK、鉄の沈黙はだれのために』は、当時NHKのディレクターとして「問われる戦時性暴力」の制作に直接携わった永田浩三氏が、番組改変に至った経緯や当時の心境、裁判の様子などをこと細かに記したノンフィクションだ。当時現場にいて、事件の渦中にあった人の言葉は、ドキュメンタリー番組さながらの迫力がある。  事件の争点はこうだ。VAWW-NETジャパンが主催した「女性国際戦犯法廷」を取材し、日本軍の犯した性犯罪に対する最終判決が「昭和天皇の有罪」となった。放送前、安倍晋三、中川昭一ら議員数名が放送内容を改変するよう圧力をかけ、NHKが改変に応じたとされる。その結果、「天皇有罪」はもちろん、「従軍慰安婦」や「慰安所」の存在そのものを削られ、「女性国際戦犯法廷」を一方的に非難するような内容となってしまった。永田氏は「反日ディレクター」と罵られ、関係した数名が職を辞した。現場は作業に追われ、下請け制作会社とは絶縁状態になり、上層部はなかなか真相を語らない。チーフプロデューサー・長井暁氏の告発、番組制作局長・伊藤律子氏の涙など、関係者一人ひとりの証言から、パズルのように"真相"が浮かび上がってくるのが面白い。  NHKは番組改変事件の裁判に勝ったが、裁判記録だけでは事件の真相は見えてこない。NHKが"鉄の沈黙"をしいて守ったものは、だれのための何だったのか。メディアのあり方を考えさせられる一冊である。 (文=平野遼) ・ながた・こうぞう 1954年大阪生まれ。東北大学教育学部教育心理学科卒。77年NHK入局。81年、ラジ・ドキュメンタリー『おじいちゃんハーモニカを吹いて...』で芸術祭賞・放送文化基金賞。ディレクターとして、『ぐるっと海道3万キロ』(アジア放送連合賞)、『日本その心とかたち』、NHK特集「どんなご縁で」(テレビ技術大賞)、『NHKスペシャル』の「又七の海」「社会主義の20世紀」など担当。91年からはプロデューサーとして『クローズアップ現代』『NHKスペシャル』を担当し、多くの番組を制作する。NHK番組改変事件の現場となった『ETV2001』では、シリーズ「戦争をどう裁くか」の編集長。2002年、国谷裕子キャスターらとともに『クローズアップ現代』で菊池寛賞を共同受賞。NHKアーカイブス・エクゼクティブディレクターをへて、09年から武蔵大学社会学部メディア社会学科教授。精神保健福祉士。著作に『いつだって一期一会・カメラマン新沼隆朗』(共編著、武蔵野書房)、『NHK番組改変事件』(証言、かもがわ出版)、『知っていますか子どもたちの食卓』(共編著、日本放送出版協会)など。
NHK、鉄の沈黙はだれのために だからNHKってさ......。 amazon_associate_logo.jpg
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プリウスから目玉おやじまで『見てみたかった!おもしろ断面図ワールド』

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『見てみたかった! おもしろ
断面図ワールド』(宝島社)
 エロ漫画における表現で定番となっている手法のひとつに、結合部の断面図描写というものがある。要するに膣内でペニスが締め上げられたり、ペニスの先が子宮をコンコン叩いたり、子宮に精液がドバッと注ぎ込まれたりする様子を断面図で表したもの。こういう絵をフツーのエロ絵に挿んで、「ナカはこんなことになってます」と、読者のエロイメージを焚き付ける思惑がある。その描写自体でヌケるかヌケないかはさておき、ふだん見ることが不可能な部分を具体的なビジュアルで認知することで、文字通りモノの見方が変わる。人によっては実践的な知識として重宝するかもしれない。  さて、本書は『見てみたかった!おもしろ断面図ワールド』(別冊宝島 スタディー)との書名が示すように、さまざまな乗り物、建造物、家電などの構造や仕組みを断面図や透視図を用いて図解したものだ。その多くは、トヨタ自動車の「プリウス」をはじめ、パナソニックのフルハイビジョンテレビ「VIERA」、ダイソンの掃除機「DC26」、キヤノンの一眼レフデジカメ「EOS」といった実際のメーカー品で、どれもテレビCMや電気屋さんで見かけるモノだけにとっつきやすい。  ただ、それらの断面図から各メーカーの技術力の高さはうかがえるものの、解説文がいかにも製品カタログ的で、広告クサい部分もなきにしもあらず。なのだけれど、そこへドイツ戦車の代名詞「TIGER ・(ティーガーワン)」や、旧日本軍の戦闘機「零戦」に戦艦「大和」、アメリカ海軍の「ヴァージニア級 原潜」、ルパン三世でおなじみの「ワルサーP38」、さらには最古の電子楽器といわれる「テルミン」など、マニア色ないし趣味色の濃いブツが突拍子もなく、しかし当たり前のように割り込んでくる。建造物では「国会議事堂」から「自由の女神」、「タージマハル」に「黒部ダム」と、その節操のないラインナップが面白かったりする。  極めつけは本書を締めくくるカテゴリー「幻想」で取り上げられている、「バルタン星人」(ウルトラマン)、「目玉おやじ」(ゲゲゲの鬼太郎)、「UFO」、「マッハ号」(マッハGoGoGo)の4つ。ここでも「なぜその4つ?」と首を傾げてしまう。というか、ここまで一応は学習図書的図鑑の体を保っていたのを、最後に台無しにした感じ(※褒め言葉)。  本書の「はじめに」には、〈断面図や透視図を見るだけで、「そーだったのか!」って、目からウロコがボロボロ落ちる〉とある。その「そーだったのか!」を最も強く感じたのは、ファンタジー世界の人(?)やモノの断面図だった。  あの目玉おやじの目の奥には実は2つの目があって、透視ができるうえに夜目も利くとか。脳に内蔵された"地獄テレビ"で遠くで起こっている出来事を脳内に映し出したり、"ことばのコンピューター"を使って虫語や植物語などを話したり。その身に危険が迫るとヘソからラッパの音が出て、もし踏んづけられてぺしゃんこになっても、すぐに蘇生する不死身機能付き。シンプルな外見のくせに、ナカはすごいことになっていた。 (文=須藤輝)
見てみたかった! おもしろ断面図ワールド ギョーテン。 amazon_associate_logo.jpg
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落涙必至──徳光正行が語る、故・三沢光晴の知られざる素顔『伝説になった男』

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『伝説になった男~三沢光晴という人~』
(幻冬舎)
 2009年6月13日、広島県立総合体育館グリーンアリーナでGHCタッグ王座選手権に臨んだ三沢光晴は、相手のバックドロップを受けて意識不明となり、そのまま帰らぬ人となった。人気レスラーのあまりに突然の死だった。あれから1年余りが経とうとしている。  2代目タイガーマスクとして人気を博し、全日本プロレスで最も権威のあるとされる三冠ヘビー級チャンピオンを五度獲得。ジャイアント馬場亡き後、全日本プロレス社長に就任し、2000年に新団体「プロレスリング・ノア」を立ち上げるなど、数々の偉業を成し遂げてきた"エルボーの貴公子"三沢光晴だが、その素顔とは一体どんなものだったのか? 『伝説になった男~三沢光晴という人~』は、徳光和夫の次男でタレントの徳光正行氏が、三沢光晴との17年に渡る交流を振り返ったエッセイだ。飲みの席での行動・言動など、一般の評伝にはないエピソードが数多く記されている。三沢のイメージカラーであるエメラルドの装丁が、故人の勇姿を彷彿とさせる。   徳光氏と三沢光晴との交流は1992年、パーティーの席で父・徳光和夫に紹介されたことが始まり。それからというもの、頻繁に飲みに誘われ、弟同然に可愛がってもらった。徳光氏にとって三沢は、兄貴であり、恩師であり、そしてヒーローだった。気さくで、面倒見がよく、動物好き、下ネタ好き。普段は優しいが、間違った時には毅然と叱ってくれる。どんなに小さな約束も決して破らない。男が惚れるような男っぷりだったと徳光氏は語っている。ノアを立ち上げる際、全日本プロレスからほとんどの選手が付き従ったという話からも、その人徳のほどがうかがえる。かつてノアに所属した"アパッチ・タワー"高山善廣いわく「三沢さんは"社長"というよりも"親分"だ。企業の社長にしては少し優しすぎたのかもしれない」  三沢光晴はエメラルド色のタイツを履いている時、"大"をしないという。常にヒーローであり続けた男の美意識の現れだろう。この本は"伝説になった男"三沢光晴の、リングの上では見ることのできない姿を知ることができる貴重な一冊だ。読めば一層、その早すぎる死が悔やまれるのである。 (文=平野遼) ・徳光正行(とくみつ・まさゆき) フリーアナウンサー・徳光和夫氏の次男。現在は東京MXテレビ『ザ・ゴールデンアワー』にてメインMCを務め、ニュースの報道や、外国人パネリストとの文化比較討論などを視聴者に伝えている。父と同じく、大の野球ファンである。また、熱狂的なプロレスファンでもあり、生前の三沢光晴とは夜な夜な錦糸町界隈で飲み明かしたほど親密であった。著書に『せんえつですが......。徳光和夫の日常』(幻冬舎)がある。
伝説になった男―三沢光晴という人 永遠のヒーロー。 amazon_associate_logo.jpg
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