
『想ひ出のいかすプロレス天国』
(鹿砦社)
佐々木といえば、佐々木希ではなく佐々木健介だったあのころ、特にプロレス好きでなくとも、男子ならば一人ぐらいはお気に入りのレスラーがいたのではないでしょうか。ちなみに筆者は毒霧を吐く覆面レスラー、グレート・ムタが好きでありました。しかしながら、その正体が武藤敬司だったとは長い間知りませんでした。サンタクロースの正体が父親だったような、軽い喪失感があったのを記憶しております。
シャイニング・ウィザードをマネして足をつった日もひと昔。『想ひ出のいかすプロレス天国』(鹿砦社)は、戦後~1990年代に活躍したプロレスラーたちを振り返った一冊だ。漫画家のマエオカ・テツヤ氏がイラストとマンガを、ライターのブルドッグ打越氏が文章をそれぞれ担当し、各レスラーの思い出をコミカルに語っている。力道山や馬場猪木、鶴藤長天(ジャンボ鶴田・藤波辰爾・長州力・天龍源一郎)らスター選手はもちろん、外国人レスラーに女子プロレスラー、陰日なたになって活躍したバイプレーヤーたちも余すことなく紹介しており、さながらプロレスラーのアルバムを見ているようだ。三沢光晴や橋本真也、ラッシャー木村など、鬼籍に入った選手も数多く、涙を誘われる。
しかし、けっこう酷な描かれ方をしているレスラーもいる。
仲野信市は80年代後半~90年代前半、全日(全日本プロレス)で活躍した選手だが、「仲野の印象を私はあまり記憶していない。(中略)技にしても存在感にしても記憶に薄い。これは私だけの印象だと思うが......。」(本文より)と、仲野選手にはあんまりな描かれ方。ほかにも「残念なレスラー」「名前負けした選手の一人」と散々に言われるレスラーも。
だが、そのようないちファンの視点から見た率直な感想がこの本の最大の特徴であり、街頭テレビの前にたむろしているような、プロレス黄金時代の熱気をわれわれに伝えてくれる。あのころ、確かにプロレスは、最高にイカしていたのだ。
(文=平野遼)
●マエオカ・テツヤ
1967年和歌山市生まれ。大阪総合デザイン専門学校卒業後、デザイン会社、出版社を渡り歩き、89年芳文社新人ギャグ漫画展に入選、「月刊まんがタイム」誌にて「フクザツ・the・乙女心」で漫画家デビュー。漫画家稼業の傍ら専門学校数校で講師を務め、サブカルチャー誌、アウトドア誌、情報誌等でエッセー、コラムも執筆。98年に和歌山へUターン後、二代目桂枝曾丸と出会い「創作落語」や「和歌山弁落語」の制作を開始。2006年よりテレビ和歌山『@あっと!テレわか』に出演し「瓦版屋のてっちゃん」として活躍、同年7月に出版した和歌山弁の解説書『持ち歩きペラペラ和歌山弁』はベストセラーになる。現在、上記以外には大阪アニメーションスクール特別講師でもある。
●ブルドッグ打越
本名・打越保、和歌山県出身、1949年生まれ。現エンタイトル出版編集長。編集の傍らライターとして活躍。
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異性をオトすにはやっぱり雑学!? 役に立たないうんちく満載『犬も猫舌』

『犬も猫舌』(ワニブックス)
「知識」を大量の水が流れる滝に例えたとき、その水しぶきの一粒に相当するのが「雑学」だろう。取るに足りないと言えばその通りだけれども、その一滴が脳に染み、退屈な時間に潤いをもたらしてくれることもある。そんな一滴一滴を、テレビ番組の司会やクイズ番組のパネラーなどとして、知的なキャラクターがなじみ深い松尾貴史氏が監修した雑学本が、この『犬も猫舌』(ワニブックス)だ。
まえがきによると「戦前に比べると、現代の日本人一人あたりが得る情報は、一説によれば5,000倍」だそう。本書が刊行された2003年にその数字だから、Twitterなどでまさに滝のように情報を得ることが当たり前となってきた現在では、どのくらいになるのだろうか。
ちょうど、その03年に深夜放送からゴールデンに移行したテレビ番組『トリビアの泉~素晴らしきムダ知識~』(フジテレビ系)によって盛り上がった雑学ブームは、現在では過ぎ去ったか、もしくは収集の場所を本やテレビからインターネット上に移したという感もある。が、それでもこの本を今読むに値するものとしている理由には、松尾貴史氏がキュレーションを担当していることのほかに、五月女ケイ子氏によるシュールなイラストの力も大きい。表紙のイラストは「犬に猫舌であることを告げる大天使サラリーマン・ミカエルの図」だそう。100個ほど掲載されている雑学一つにつき一枚のイラストが付いているので、大変ぜいたく感がある。雑学を読んで、ひとしきり「へぇ」とか「ふーん」とか「ふむ」と思った後に、この意味不明、もといシュールなイラストに目を移す。その時生まれる雑学とイラストの不思議なハーモニーが、ちょっと癖になるのだ。
あとがきによれば、松尾氏は本書を監修するに当たって、ある隠しテーマを設けたという。それは「若い女性にうんちくを語ってもらいたい」というもの。雑学を披露するのはもっぱら男性、というかおっさんで、女性は『トリビアの泉』でも「へぇボタン」を押す役割しか与えられてないが、女性にも小粋かつ知的に雑学を「キメて」ほしいという。
確かに、一般的には、女性は雑学を仕入れることより、男性が語った雑学にいかに反応するかという技術を習得する方が大きな命題で、かつ男性側もそれを求めている場合が多いと言えそうだ。その状況は現在も変わっていない。
そこで、「隠しテーマ」を知らなければ、積極的に雑学を人に話す気はなかった「若い女性」である筆者は、本書で仕入れた雑学の披露にチャレンジしてみた。
取りあえず「スヌーピーの犬小屋には地下室があって......」(その地下室の中に何があるか、続きは本で!)という雑学を、「キャラクター系の話題は女性としても話しやすい」という理由で選び、仕事関係の知人男性に、雑談を装って話してみた。
すると、相手は、スヌーピーの持つ意外な秘密にちょっと驚いてくれた後、「スヌーピーは芝生が嫌いだから、いつもあの犬小屋の上にいる」という新たな雑学を教えてくれ、その後は知っている人も多いだろう「ライナスの毛布」の話など、「スヌーピーと精神的コンプレックス」という話題で会話を展開させることができた。これは、結構知的な会話と言えるのではないだろうか。やればできるものだ。
ただ、唐突なネタ振りで相手を驚かせしまったようなので、そこに気をつければもっとうまく雑学を披露することができそうだ。それには、やはりシチュエーションに合わせた雑学を選ぶこと、TPOに合った雑学が自然と口から出てくるようにしないといけないと身をもって学んだ。これは、男女を問わない課題。本書を読んで雑学を披露したい欲求に駆られたなら、ぜひさらに読み込んで、雑学を頭に染み込ませた上でチャレンジするのがオススメだ。
(文=萌えしゃン)
ペット目線で飼い主の女の子を愛でるフェチ写真集『Pet’s Eye』第2弾が発売!

"僕はペット、ご主人様はキュートでセクシーな女の子"、こんな幸福な設定があっていいのだろうか!?
ローアングルのペット目線で女の子の日常がのぞけちゃう写真集『Pet's Eye』シリーズ第2弾『Pet's Eye 2 Past & Present』(マイウェイ出版)が、4月15日に発売される。昨年出版され、好評につき一時品薄状態にまでなった前作に続き、「女のコが一番無防備なのは恋人の前じゃなくペットの前だ」というコンセプトはそのままに、パンチラ・胸チラといった「見えそう感」が更にアップ! 前作を穴が開くほど楽しんだファンも、新たに楽しめる内容となっている。
『Pet's Eye 2 Past & Present』で無防備な姿を見せてくれたご主人様は、清楚なルックスが魅力の人気グラドル・木嶋のりこちゃんと、かわいすぎる着エロアイドルこと笹原りむちゃん。
もちろん彼女たちの着替えも入浴も見放題(だってペットだから)。制服姿で階段の上から無邪気にジャ~ンプしたり、ミニスカートでしゃがんで「いっぱい食べてね」なんてペットフードをくれたり、コタツの中で一緒にぬくぬくしたり......、そんな完全に心を許した彼女たちを眺めていると、一瞬は罪悪感に似た感情に襲われるものの、ついまたスカートの下に潜り込み、上を見上げてしまう僕(ペット)がいる......。まあ要するに、女の子が好きで好きでたまらないすべての男どもに捧ぐ逸品なのである。
ちなみに、タイトルに「Past & Present(過去と現在)」とあるのは、ノスタルジックな懐かしさを感じさせる女の子と、現代の女の子のそれぞれの写真を、この一冊に収録しているため。それにより、前作にも増して幅広い妄想天国が楽しめるよう仕上がっているのだ。現実では、女の子たちから警戒心丸出しの視線を送られ悔しい思いをしている男性諸君も、たまには従順なペットになりきって、エッチで幸せな日常を疑似体験してみては?
(文=林タモツ)
パチンコは必敗? 20兆円産業の黒いウラ話『コワ~いパチンコ店の話』

『コワ~いパチンコ店の話』(宝島社)
パチンコの客離れが深刻となっている。どの店も空席が目立ち、ホール内はガラガラ。地方となるとさらに深刻で、長く営業を続けてきたホールも相次いで閉店している。2004年7月、風営法の遊技規則が改定され、それまでの"4号機"と呼ばれていたパチスロ機種から、出玉の増減が少ない"5号機"が主流となった。「万枚出した(=コイン1万枚。20万円)」というような、高いギャンブル性が魅力のパチスロであったが、上記の法改正や貸金業法の改正、中・長期化する不況の影響で、最盛期には1万8,000店以上あったパチンコ店は1万2,600店ほどに、30兆円を超えていた業界全体の売り上げは21兆円弱(2009年時)に落ち込んでいる。
このようなご時勢だから、パチンコ店も生き残りを賭けて必死なようだ。『コワ~いパチンコ店の話』(宝島社)は、別冊宝島編集部がパチンコ業界の黒~いウラ事情を取材した本だ。台に細工をして強制的に出玉を出す"ゴト師"の最新手口や、遠隔装置や裏ロムを使って出玉をコントロールする店側の不正、警察とパチンコ業界の密接すぎるつながりなど、業界の暗部を全5章43項目にわたって紹介している。パチンコ業界関係者のインタビューや、パチンコライターによるコラムも充実しており、読みごたえのある内容となっている。
ことにパチンコホールの客に対する嫌がらせはひどい。「ホールコンピューターで電圧を調整し、回転数を制御する」「遠隔装置で確変を強制的に終了させる」「一回の大当たりで出玉を600円分カット」「設定を変えないニセのイベントで客を動員」「サクラを雇い、私腹を肥やすホール関係者」「高性能監視カメラで女性客のキワドイところを覗き見する店員」「換金の際、勝ち金から1.5%の手数料を徴収する交換所」など、セコイ悪事は数知れず。「出している客に冷房を直撃させて帰らせる」なんて露骨な嫌がらせもある。こんな行為を続けていれば、客足が遠のいていくのも自然だと言える。
すべてのパチンコ店が悪事を働いているわけではないが、悪徳ホールが増えたのは事実。悪徳ホールはアノ手コノ手、さらなる新しい手口で客の懐から金を抜こうとする。パチンコ店の一方的なカモにされないための『コワ~いパチンコ店の話』。パチンコファン、必見の書だ。
(文=平野遼)
80年代の思い出がフラッシュバック! 『僕らのナムコ80’sトリビュートコミック』

『僕らのナムコ80'sトリビュート
コミック』(ジャイブ)
「俺、ゼビウスが好きだったんだ」と誰かが言えば、「ああ、ノートで情報交換したよね」「バキュラって弾を256発打ち込まないと倒せないんだっけ?」「僕はマイコンで『タイニーゼビウス』をプレーしてたよ」「細野晴臣が『ビデオ・ゲーム・ミュージック』ってLPを出したよね」という具合に、聞いてもいないのに今も誰かが次々と答えてくれる。そんな熱気と愛情が、1980年代のテレビゲームにはあふれていた。
やがて彼らの話題の中心はゲームそのものから、当時の思い出話へと移っていく。「学校帰りに100円玉握りしめて駄菓子屋に通ったんだよね」「中学生にカツアゲされちゃってさ」「ファミコン版を買ってもらってうれしかったなあ」「そういえば、ゲーセンで知り合った友達もいたけど、結局最後まで名前が聞けなかったんだ」。
テレビゲームがごく身近な存在となった80年代。子どもたちの生活は、常にゲームとともにあった。その中でもとりわけナムコのゲームは、テレビゲーム黎明期より冒頭の『ゼビウス』をはじめ、『ギャラガ』『ドルアーガの塔』『ワルキューレの冒険』など、質・量ともに他メーカーから頭ひとつも2つも飛び抜けた作品ばかりだったように思う。
そんなテレビゲームにハマりまくった子どもたちだが、そのうち何人かはゲームを卒業していった。何人かは今でもゲームを愛し続け、プレーし続けている。そのうちさらに何人かは、ゲームに関わる仕事に就くようになった。彼らが再び一つの場所で交わることは、おそらく二度とないかもしれない。それでも、もし彼らがもう一度一つの話題で屈託なく盛り上がることができるとするならば、彼らが一生懸命攻略しようとした思い出のゲームを回顧する時ではないだろうか。
『僕らのナムコ80'sトリビュートコミック』(ジャイブ)は、そのきっかけとなりうる一冊である。80年代をゲームセンターや駄菓子屋の喧騒の中で過ごしたヤスダスズヒト、雑君保プ、押切蓮介、久松ゆのみら14人の漫画家たちがさまざまな視点とアプローチで一時代を築いたナムコゲームの魅力を、そして彼らのナムコへのほとばしる愛を描き出す。「ナムコ直営ゲームセンター・キャロットでの思い出」「ナムコットブランドのプラスティック製パッケージのかっこ良さ」「高校をドロップアウトした主人公が通っていたゲームコーナーでの小さな恋」「かつて存在したナムコの広報誌『NG』で連載されていた漫画『午後の国』の書き下ろし新作」など、「あったあった!」と膝を叩いて笑い懐かしんだ後に、ちょっとだけセンチメンタルで爽やかな感動が読者の胸を包み込む。そんな「あの頃」が蘇るような漫画が誌面を飾っている。
過去を振り返るという行為は後ろ向きな行為だろうか? いや、そんなことはないはずだ。何が自分たちの心をとらえて離さなかったのか。何が自分と友人を繋いでいたのか。そして何が自分たちに影響を与えたのか。そんな己のルーツを確認する行為は、きっと不安と波乱に満ちた現代を生き抜く活力を我々に与えてくれるはずだ。
先行きの不透明なこんな時代だからこそ、自分たちが熱中したゲームの思い出に浸って一休みしてみるのもいいかも知れない。
(文=有田シュン)
写真家・小林伸一郎が切り取る瀬戸内の穏やかな日常『島波』

『島波 瀬戸内景』(講談社)
昨年開催された「瀬戸内国際芸術祭2010」には、現代芸術のフェスティバルにもかかわらず、93万人もが訪れた。距離的に近い広島や大阪はもちろん、東京からも数多くのアートファンが押し寄せ、地方で開催される芸術祭としては異例の大成功を収めたことは記憶に新しい。この芸術祭の成功や、しまなみ街道から眺める美しい風景など、観光地としての瀬戸内には近年注目が集まっている。
大小合わせて3,000もの島々が点在する瀬戸内。日本のエーゲ海と比喩されるその美しさは、以前から小津安二郎や大林宣彦、木下恵介、そしてヴィム・ヴェンダースまで多くの映画人を魅了してやまない。そんな瀬戸内の素朴な風景や、そこに暮らす人々の生活のワンシーンを切り取った写真集が小林伸一郎による最新刊『島波 瀬戸内景』(講談社)だ。
青々と広がる海や、緑に覆われた島々、そしてノスタルジーを覚えさせる古ぼけた街並みを背景に写し出された人々の姿は、あたかもタイムスリップをしたような錯覚にさせられる。離島の堤防で犬の散歩をする老人、海水浴場ではしゃぐ子どもたち、桟橋で連絡船を待つセーラー服の女子学生など、ゆるやかな時間の中で生きる人々の顔はどこか生き生きと魅力的に感じられる。もちろん、代表作である『廃墟遊戯』(メディアファクトリー)や『亡骸劇場』(講談社)などで高く評価された小林氏の得意とする、廃墟や産業遺産などの写真も豊富に盛り込まれている。
あとがきにて、小林氏は瀬戸内への思いを述べている。若き日に氏が放浪の旅をしたという瀬戸内。しかし、30年の歳月を経て眺めたとき、その姿は大きく変わっていたという。かつてはアートシーンで最も話題を集める場所でもなければ、日本の技術力の粋を集めて建設された橋も架かっていなかった。昔日を追体験するかのように、この写真集には、最新の観光地としての瀬戸内は存在しない。ここに存在するのは、日本の原風景とも言えるような瀬戸内の穏やかな日常であり、30年前となんら変わることはない瀬戸内に生きる人々のあるがままの暮らしである。この写真集に掲載されているのは、瀬戸内に生活する無名の人々のポートレートであり、人々の息遣いや手触りが感じられる産業遺産や風景写真だけである。
時代の波を逃れた風景は、いつもわれわれの心を魅了してやまない。「流行の観光地」として消費される風景としての瀬戸内ではなく、永遠に続く日常として『島波』の風景はまぶしく輝いている。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
●こばやし・しんいちろう
1956年生まれ。講談社出版文化賞写真賞、コニカ写真奨励賞、東京国際ビエンナーレ・キヤノン賞などを受賞。主な写真集に「亡骸劇場」「東京ディズニーシー」「廃墟遊戯」「軍艦島」「Tokyo Bay Side」など。
全部タダ! 遊べる・学べる・癒やされる東京の0円スポット『FREE TOKYO』

『FREE TOKYO~フリー(無料)で
楽しむ東京ガイド100』
(ブルース・インターアクションズ)
都内で無料で楽しめるスポットを集めたガイドブック『FREE TOKYO~フリー(無料)で楽しむ東京ガイド100』(ブルース・インターアクションズ)が話題だ。「皇居」や「東京証券取引所」など、意外と知られていない見学可能な施設をはじめ、「東京藝術大学奏楽堂」で木曜日の午前中に開催されるクラッシック音楽のコンサートほか、日にちや曜日限定で無料体験できるイベント情報が100カ所にわたり紹介されている。
どれも、芸術や知的好奇心をビシバシ刺激してくれるスポットばかりで、あちこち出掛けたくなる。歴史好きに特におススメなのは、港区麻布台にある外務省の一施設「外務省外交史料館」。日独伊三国同盟条約や日ソ基本条約の調印書のほか、学生時代に教科書で勉強したような条約の数々の原本が保管され、所定の手続きを踏めば閲覧することができる。傷んで解読不能になってしまった史料もあるが、実際に目にするだけでも歴史ファンにはたまらないはず。さらに、「日本銀行金融研究所 貨幣博物館」では、日銀が初めて発行した紙幣や戦争に突入する前後の紙幣、1927年の金融恐慌下に発行された裏面の印刷がない紙幣などが展示され、貨幣から当時の日本の様子や歴史が見てとれる。
ほかにも、ドラマ『華麗なる一族』(TBS系)の舞台となった「旧前田候爵家駒場本邸」や、プライベートシアターを有し、事前予約制で毎週土曜日に映画を上映している「メゾンエルメス」などが紹介され、全体的に、文化的でどこか高貴な印象のスポットが多い。
だが、そんな中、異彩を放っているのが「目黒寄生虫博物館」。ここは、寄生虫を専門に扱った世界で唯一の研究博物館で、近年、不思議系女子やカップルのデートスポットとしてひそかに人気を集めている。館内には、ギネス級(!?)の8.8mのサナダムシをはじめとする約300種類の寄生虫が展示されていたり、寄生虫の生活や研究成果などを知ることができたりする。また、研究室長が描いた寄生虫の絵をベースにしたTシャツなどのグッズも見逃せない。
「最近、出無精になってるな」と思う人は、ぜひ本書を見て、気になる無料スポットへ出掛けてみては?
(文=上浦未来)
●ジョー横溝
1968年生まれ。早稲田大学卒業。ラジオDJ、構成作家、雑誌インタビュアーなどとして活躍。著書に『timeless piece 未来にのこしたい仕事』(pヴァイン・ブックス)がある。
新幹線の現役運転士が語る時速270キロの世界『新幹線を運転する』

『新幹線を運転する』
(メディアファクトリー)
フランスのTGV、ドイツのICEと高速鉄道は数あれど、日本の新幹線の正確さは世界に類を見ない。速さではTGV(時速320キロ)に抜かれたが、1964年、世界に先駆けて開業して以来長らく、新幹線は世界最速の鉄道だった。そもそもダイヤがほとんど乱れず、定刻どおりに運行している国は日本だけ。このシステムこそ、鉄道大国と言われるゆえんだろう。
新幹線が優れているのはテクノロジーだけではない。『新幹線を運転する』(メディアファクトリー)は、ノンフィクション作家・早田森氏が一人の現役新幹線運転士に取材し、運転士業務の知られざる実情に迫った新書だ。驚異の運転技術や緻密に決められた仕事の流れ、運転室からの風景など、普段、われわれが見ることのできない舞台裏が子細に描かれており、鉄道ファンならずとも興味深い一冊だ。ちょうど、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』のようなドキュメンタリー番組を見ている感じだと言えるだろうか。巻末には5人の現役東海道新幹線運転士による座談会も収録されている。
木内辰也氏は、東海道新幹線が開通した1964年生まれの現役東海道新幹線運転士。幼いころから電車が大好きで、旧・国鉄に入社したのち、在来線運転士などを経て、幾度もの厳しい審査・試験に合格して新幹線運転士となった。列車長も兼務するキャリア21年のベテラン運転士で、JR東海の社内コンテストにおいて優勝したほどの人物だ。運転士の技術とは、定刻に到着する、停止位置どおりに止まることはもちろん、「ATCに当てない運転が上手な運転」であると木内氏は語っている。東海道新幹線では、区間ごとに細かくATC(自動列車制御装置)の制限速度が決まっている。余計なブレーキをかけず、かつ運行ダイヤを乱さず到着させるためには、絶えず制限速度ギリギリで走行しなければならない。そのため、東海道新幹線全17駅間の距離・通過時刻・制限速度など、木内氏の頭にはあらゆる情報がインプットされている。そんなスゴ腕運転士の木内氏であるが、ゲーム「電車でGO!」(タイトー)はあまり得意ではないらしい。
意外にも、新幹線の運転士をメインに扱った本はこれまでに少ない。
「走りがあまりにスムースすぎるため、『生身の人間が運転している』ことすら、すっかり忘れていた」
と、著者の早田氏がまえがきで述べているように、運転士の存在を忘れるほどに新幹線は安全で正確な運行をしている。その安全・正確・迅速の裏側をあらためてクローズアップしたのがこの『新幹線を運転する』である。"新幹線の運転士"として、尋常ならざる気概とプライドを持って仕事に臨む木内氏の姿に、読者は大きく心を動かされることだろう。
(文=平野遼)
●はやた・しん
ノンフィクション作家。1960年東京都生まれ。千葉大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、独立。雑誌を中心に活躍してきた。読む者の心を揺さぶる筆致に定評があり、書籍のライターとしての仕事も数多い。ノンフィクション作家としては、本書がデビュー作となる。
大人が読んでも面白い! 韓国発『科学漫画サバイバルシリーズ』がアツい!?

シリーズ最新号『人体のサバイバル3』
(朝日新聞出版)
誰もが子どものころに一度は読んだことがあるであろう、学習漫画。一般的には、伝記モノや歴史モノなどのイメージが強いが、今、少し毛色の変わったジャンルが人気を集めているという。
それが、『科学漫画サバイバルシリーズ』(朝日新聞出版)だ。『無人島のサバイバル』、『アマゾンのサバイバル』、『火山のサバイバル』など、さまざまな状況下で生き残るための科学知識が身に付けられる学習漫画で、現在までに約30冊が刊行されている。
このシリーズは韓国の教育書専門の出版社「ミレエヌ」が出版しているもので、韓国国内をはじめ、中国や台湾、タイなどでも翻訳版が大ヒット。「中央日報」によると、2008年に日本で翻訳版が発売されて以来、累計販売部数は50万部を突破している。実は、日本の出版市場で学習漫画がここまでの部数を記録したのは初めてのこと。さらに、漫画市場においてもこれまで韓国漫画が実績を挙げた例はなく、これもまた異例。
文、イラストともタイトルごとに異なるのだが、基本となるストーリー構成はパターン化されており、やんちゃな少年と頭脳明晰だが少し気が強い女の子、そしてサバイバル知識に長けた少年(もしくは父親や博士)の3人組が、それぞれのテーマに挑む。
例えば『火山のサバイバル』では、フィリピンへ火山探査旅行に出掛けた3人が乗った飛行機がジャングルに墜落。硫黄が立ち込め、泉が沸き立つ密林から脱出する途中、火山が大噴火を起こす。絶対絶命の状況から逃げ延びるまでを描いたストーリーだ。噴火の仕組みと現象、火山の種類、地球の構造、マグマの神秘などを分かりやすく説明するだけでなく、竹筒を使った仕掛け網の作り方や干物の作り方、薪を使った火のおこし方など、実際にアウトドアで使えそうなサバイバル術も伝授。オールカラーというぜいたくな作りに加え、ミニコラムも充実している。学習色が強い日本の学習漫画とは違い、ストーリーにはさまざまな伏線が張られており、エンタテインメント的な側面も強い。
紀伊國屋書店新宿南店の学参書担当によると、「発売された08年当時からコンスタントに売れているので、うちでは常時、コーナーを作っています。特に人気が高いのは『恐竜世界のサバイバル』ですね。このシリーズが出た後、学研から『サバイバルシリーズ』と同じ執筆、イラスト陣で『チャビの世界大冒険』という、地理や歴史、文化をテーマにした類似のシリーズが出ましたが、こちらの売り上げはイマイチですね。やっぱり『科学』というテーマの方が、子どもたちの好奇心をくすぐるのでしょうか」。
今月21日には、東日本大震災の影響を受け、このシリーズの『地震のサバイバル』がAmazonの児童学習分野で1位になったことが、出版元のミレエヌから発表された。子どもが地震や災害に対する正しい知識を持つ上で、とても役立つ教材のひとつとして注目を集めているようだ。
子どものころに夢中になったテーマがたくさん詰まったこのシリーズ。子ども向けとはいえ、大人が読んでも読みごたえがあり、あのころの懐かしさがこみ上げてくることだろう。「なにをいまさら......」とひねくれず、ぜひ読んでみることをお勧めしたい。学ぶのに遅いことなんてないですよ?
(文=編集部)
エロジャケ300枚以上を厳選! 『THE BEST OF EROTIC JACKET』

THE BEST OF EROTIC JACKET』
(ブルースインターアクションズ)
ゴスペルから始まり、ブルース、ジャズ、R&B、ソウル、ロック、ファンク、ヒップホップ、クラブミュージックなど、さまざまなジャンルに派生していったブラック・ミュージック。
そんなブラック・ミュージックの中でも、特にエロ要素が強いジャンルと言えば、ギャングスタラップ(以下、Gラップ)とソウルだろう。
1980年代後半、ヒップホップシーンにはさまざまなスタイルが登場する。ほのぼのゆるゆる系De La Soulや、人種差別問題など政治的なメッセージが強いPublic Enemy、そしてリリックに金、女、ドラッグ、銃が散りばめられたGラップ。Ice-Tの出現で西海岸に生まれたGラップは、その後、N.W.A、SNOOP DOGの登場で全盛期を迎える。SNOOPの"ヤリチン"キャラ効果もあり、「Gラップ=エロ」というイメージが定着。曲のイメージを視覚化したレコードのジャケットも、どんどんエロ化していく。くっきり食い込んだTバックをはじめ、ぷるんぷるんのおっぱい、コワモテラッパーとビッチの淫靡な絡みなど、エロジャケはGラップに欠かせない重要な要素となる。

BIGTYME BOYZ & H2 THO「BEACH PARTY 2 K 2」
『THE BEST OF EROTIC JACKET』より(以下、同)
エロいのはジャケだけではない。PVもまたしかり。ヒップホップのPVクリエーターと言えばHype Williamsが有名だが、彼はエロも含め、ヒップホップのいろいろなイメージを作り上げた人物。シーンには、HypeのゴージャスでセクシーなPVをマネた模倣作が続々と現れる。こうした作品は「よりエロく」をキーワードに、どんどんドぎつい表現へと突き進んだ。そしてHype作品のような上品さは排除され、より明快なエロがヒップホップシーンでは好まれるようになった。
GラップのジャケやPVがお尻&おっぱいの"パーツ型"エロとするなら、ソウルは"雰囲気"勝負。情熱的かつエロティックなラブソングが多いソウルには、喘ぎ声や吐息は付き物。魂を込めて表現されるその世界は、ある意味、正統派なエロス。「ソウルは頭で理解するものではなく、股間で感じるもの」という名言もあるほど、ジャケも雰囲気(シチュエーション)そのものが妙にエロい。

WILD CHERRY「WILD CHERRY」
前置きが長くなったが、そんなGラップとソウルのLP盤、CD、カセットテープのジャケットの中からエロジャケット300枚以上を厳選してまとめた本が『THE BEST OF EROTIC JACKET』(ブルースインターアクションズ)だ。
ソウル好きにはおなじみ『甘茶ソウル百科事典』(同)を手掛けたテリー・ジョンスン、ムーディ・ムーニー、黒門ビリーの3人が、とっておきのお宝ジャケットを下品なコメント付きで紹介していく。一応、音としても聴けるものを中心にチョイスしたというが、中身は完全にヴィジュアル勝負。麗しき黒人美女の裸体がこれでもかと拝める充実のランナップなのだが、一番ページが割かれているのはやっぱりお尻。男はみんなお尻好き。デッカイおっぱいもいいけれど、結局行きつくところはお尻なのだ。

SWEET P「I TOAST MYSELF」
先述したGラップやソウルのジャケの他、"殿下"ことPRINCEの乳首を隠したセミヌード、"ハダカの帝王"ISAAC HAYES の「裸に鎖ガウン」など、変態的な妖しさを含んだ男性陣の甘美な「男(ホモ)ジャケ」もなかなかの味わいだ。
また、かつて雑誌「お宝ガールズ」(コアマガジン)とフリーペーパー「tribal」で連載されていた、知る人ぞ知る伝説のエロ談義「ERO SOUL Beyaaaaaatch!」のバックナンバーや、幻のエロ絵画家アンディ・パンティのビッチ画なども掲載されている。
音楽ファンはもちろんのこと、単なる助平もブラック・ミュージックの新しい楽しみ方が発見できる一冊だろう。









