
『広辞苑の中の掘り出し日本語』
(バジリコ)
どうも。「抱籠」を抱いて、「じゅんのび」なうです。わたし今「寝臭い」かも......。ちょっと前まで「ステッキガール」をしていたんですが、「無気根者」なので、最近は「ぬめり歩い」てます。「へへやか」過ぎて、このまま「ほたえ死に」しちゃいそう。
上の文章は、『広辞苑』(岩波書店)に載っている言葉で作ったもの。
といっても、『広辞苑』を引いたわけではない。言葉を使うことを生業としてきたライターの永江朗氏が『広辞苑』を読んでいて見つけた、知らなかった言葉や誤解していた言葉、グッときた言葉を集めたという『広辞苑の中の掘り出し日本語』(バジリコ)の中に出ててくる言葉を組み合わせてみたのだ。
冒頭の部分を普段使う言葉で言い換えると、「竹を編んで造った円筒形の籠(夏の夜、寝るときに抱えて涼を納める)を抱いて、(新潟県で)くつろいでいます。私、今寝過ぎて出るにおいがするかも。少し前まで、男性に(ステッキのように)同伴して散歩することでお金を稼いでたんだけど、根気がないんで、最近は遊び歩いています。のんびりしすぎて、このまま遊び暮らして死んじゃいそう」
カギカッコ内の言語はどれも耳慣れないものばかりだけれども、使ってみると、ギャルのブログ風の文章のようで、意外とハマる。
一口に馴染みのない言葉といっても、「抱籠」のように今や言葉だけではなく、その存在自体にもなかなかお目にかかれなくなったもの、「ぬめり歩く」や「へへやか」など感覚としてすんなり理解できるもの、「寝臭い」のように「寝過ぎて出るにおいってどんなにおい?」と想像すら難しいものや、「じゅんのび」のように「なぜ新潟県限定?」と謎の深まるものなど、種類はいろいろ。
本書では、そんな言葉の背景や使われ方について著者が思いをはせたコラムが、一つひとつの言葉に添えられている。ひとつの言葉につき1ページ、原稿用紙1枚と少しくらいの文章量で、サラっと読めてしまうくらいのボリュームだ。
内容も「ためになる」というようなお堅いものではなく、本書に載っている言葉で言えば「すずろ」(なんとなく心がひかれるさま。「すずろ歩き」のような「あてどもなく、あそこここと散歩すること」という意味がぴったり)にライトに書かれている。
書籍や家具、雑貨、洋服などのアンティークショップや古物市を眺めるのは面白いものだけれど、本書はその言葉版。使われていた当時の様子に思いを巡らせたり、時には実際に自分で使ってみたりして、掘り出しものを満喫してみよう。
(文=萌えしゃン)
「05本」タグアーカイブ
ユーモアとリアルな貧乏レシピが絶妙なバランスで混在『正しい貧乏青年の食卓』

『正しい貧乏青年の食卓』
(ポット出版)
今はなき伝説のカルチャー誌「BURST」(コアマガジン)の連載コーナーをまとめて単行本化した『正しい貧乏青年の食卓』(ポット出版)。日頃我々は飽食の時代を生きていると言われているが、それでも金がなければ食費を切り詰めなければならない。牛丼屋に行く300円すらポケットに入ってなかったら、その時こそ、この本の出番だ。一冊丸丸、創意工夫に満ちた「オリジナル低コストめし」のレシピがビッチリと詰まっている。
例えば、パスタにスナック菓子の「カール」チーズ味を混ぜた「カール・ボナーラ」。これは「粉チーズを買うのは高いので、茹でたパスタにカールをまぶすことで、チーズ感を出そう」という努力から生まれたもの。本文によると、カールに口の中の水分を奪われないように注意する必要があるそうだが、想像する限り、味はなかなかイケそうではある。
「ワンタンしゃぶしゃぶ」は名前だけ見ると普通においしそうだが、必要なのはワンタンの皮のみ。しかし、これが意外とバカにできない。作法はしゃぶしゃぶと全く同じだし、そのままゴマだれやポン酢につけて味わうことも可能。白いご飯にもきっと合うに違いない。要は、肉とワンタンの皮の違いにだけ目をつぶれば良いだけの話なのだ。心頭滅却すれば火もまた涼し、人間ハングリーになれば何だって大丈夫になるものだ。多分......。
「もやしで一週間しのぐ方法」も興味深い。もやしは安くて栄養価が高いのにもかかわらず、「炒め」だけで消費するには役不足だということで、和洋中、もやしのフルコースが紹介されている。例えばもやしを片栗粉と一緒に炒めてあんかけ風にする「もやし中華」、もやしをホイルに包んで加熱する「燃やしもやし」、もやしをカレールーで煮込んだ「もやしライス」などなど。料理の材料費より、本のパルプやインク代の方が高そうなのがミソだ。

「カール・ボナーラ」

「ワンタンしゃぶしゃぶ」

「もやしライス」
とにかくこれらの料理は本当にごく一部であり、実際に掲載されているメニューははるかに豊富で驚かされる。
思い返してみると「BURST」誌で連載されていた90年代は、今よりも若干世相に余裕があり、このコーナー自体ユーモラスな読み物という印象を放っていたものだった。しかし世の中がどんどん不景気になり、もう「ヤバイんじゃないか?」という今のタイミングで単行本化されてみると、あら不思議。非常に実用性の高い料理本になっていることに気付かされる。
つまりこの本は、その時の景気や世相次第でカラっと笑える「面白い本」にもなりうるし、実用性の高い「貧乏料理のリアルレシピ」にも変身するし、要はカメレオンみたいな摩訶不思議な一冊と言えるかもしれない。
ついでに私事で恐縮だが今財布の中に小銭しかないので、ここだけの話、今夜辺り早速この本を参考にディナーを味わう予定である。
(文=みんみん須藤)
●ライノ曽木
1967年兵庫県生まれ。本名・曽木幹太。法政大学文学部卒業後、出版社勤務を経て写真家、コラムニスト。
●みんみん須藤(みんみん・すどう)
1974年6月14日、埼玉県大宮市生まれ。物書き。音楽をはじめ、大衆芸能や庶民文化に関する原稿を書いている。雑誌「TV Bros.」(東京ニュース通信社)ほかで連載中。
元警察官が語る正しい通報の仕方『これからの「正義の通報」の話をしよう』
電車内での痴漢や殴り合い、自転車の窃盗など、日常の中で私たちが犯罪を目にする機会は多い。そして、その犯罪を見て見ぬふりしてしまうことも少なからずあるのではないだろうか。いじめを見て見ぬふりするように、犯罪を見て見ぬふりすることは、結果的に犯罪者に手を貸していることにならないだろうか。
実のところ、犯人逮捕の一番のきっかけは通報によるものであり、通報があるかないかでは、犯罪の検挙率が格段に違う。さらに軽犯罪を通報することが、重犯罪の防止につながるなど、通報は犯罪抑止に極めて重要な意味をもっているのだ。『これからの「正義の通報」の話をしよう』(LEADERS NOTE)は、元警察官で、犯罪抑止・通報ジャーナリストの渡邊一浩氏が、正しい110番通報の仕方を記した本だ。
渡邊氏は、約6年半、交番や駐在所に勤務し、住民に「駐在所だより」を配布するなど独自の広報活動を展開。その結果、数多くの逮捕実績を挙げ、地域の検挙率を飛躍的にアップさせたというスーパーおまわりさんだ。その豊富な経験をもとに、効率的で効果的な通報の仕方を、実際に起こった事例をまじえて丁寧に教えてくれる。
しかし、通報をしても曖昧な情報だけでは捜査は難しい。「要件(何が起きたか)」「いつ」「どこで」「犯人を目撃したかどうか」「犯人の特徴・逃走方向など」「通報者の名前と連絡先」をしっかり告げることがスムーズな捜査につながってくる。そして、110番通報で一番重要なことは「すぐにその場で連絡する」こと。犯人がまだ近くにいる間に捜査できれば、逮捕率はグッと高くなるのだ。
通報の手順の他にも、5章「通報による逮捕事例」、6章「タイプ別通報マニュアル」など、警察の視点から「通報→捜査→逮捕」の流れを描いており、興味深い。
他人の被害を通報しても、直接的なメリットはないように思える。しかし、犯罪が増えれば、自分も被害に遭う可能性が高くなるのは必然だ。通報することは、他人を守り、自分の身を守ることとなる。街の治安は、市民自らの"声"にかかっている。
(文=平野遼)
●わたなべ・かずひろ
1976年生まれ。元警察官(奈良県警)。立命館大学卒。在職中は、主に交番や駐在所のおまわりさんとして勤務し、これまでにない斬新な手法で独自の広報活動を実施。広域重要窃盗団をはじめ、数々の被疑者を逮捕した経験を持つ。その経験を活かして全国の治安を良くするべく、大好きだった警察官をやめ、犯罪抑止・通報ジャーナリストとして、通報・犯罪・防犯などに関するさまざまな情報を発信中。
公式サイト:http://justice-110.com/
公式ブログ:http://ameblo.jp/justice-110/

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「明日咲」「流星」「祈翼空」……DQNネーム、いくつ読める? 『クイズ いまどき日本人の名前』

『読めるかな!? クイズ いまどき
日本人の名前』
(スコラマガジン)
DQNネーム――。ウィキペディアによると、<マンガ・アニメ・ゲームなど架空のキャラクターからとった当て字の名前のように、読みづらい名前や、常識的に考えがたい言葉を(戸籍上の)名前にすること。一般的に使われる「珍名」とほぼ同義>だという。男の子なら「~郎」や「~男」「~太」、女の子ならば「~子」や「~美」「~代」などがスタンダードだった時代はとうに過ぎ、最近では、初見では読めない、個性的な名前が好まれる傾向にあるという。
『読めるかな!? クイズ いまどき日本人の名前』(スコラマガジン)はその名の通り、難解な名前をクイズ形式で学べる一冊だ。「絆美(ばんび)」「祈翼空(きっく)」といった初級編から始まり、中級編、上級編、達人編と続くのだが、達人編までいくと、もはや漢字本来の読みなど跡形もない。「明日咲(つぼみ)」、「流星(ねがい)」など、読み方よりも意味やイメージを重視する名前が並んでいる。
このDQNネーム、芸能人たちも好んで子どもにつけているようで、タレント・土屋アンナの長男は「澄海(すかい)」くん、次男は「心羽(しんば)」くん。アクション俳優・千葉真一の長男は「真剣祐(まっけんゆー)」くん、次男は「郷敦(ゴードン)」など、親の強烈キャラに負けず劣らず、なかなかパンチが利いている。
確かに子どものころは珍しがられ、「かわいい」ともてはやされることもあるだろうが、困るのは彼らが大人になってからだ。先日もネット上の大型掲示板で「DQNネームです。死にたい...」というスレが立ち話題になっていたが、否応なしにDQNネームを付けられた子どもたちが大人になり、恥ずかしい思いをしているケースは少なくないようだ。
DQNな親にDQNネームを付けられてしまった彼らは、一生、その名前を背負って生きていかなければならないのだろうか。
実は、DQNネームから逃れる方法がある。現行の戸籍のシステムには、読み方という概念はなく、漢字だけがコードとして登録されている。また住民票においても、自治体によってフリガナの記入欄がある場合もあるが、任意のため、必ず記入しなければならないということはない。記入している場合でも、役所で申請書を1枚書けば、簡単に読み方を変更することができる。このように、名前の読み方には法律的な根拠はどこにもない。たとえば先の「絆美」を「きみ」、「流星」を「りゅうせい」と変更することも可能なのだ。
名前とは、生まれてきた子どもに親が一番初めにあげるプレゼント。夢や願いを込め、字画を調べ、悶々と頭を悩ませるものだが、個性を求めれば求めるほど、DQNネームになってしまう可能性がある。そして多くの場合、親はそれがDQNだとは気付いていない。そんなDQNネームで悩んでいる人は、親には内緒でこっそり、読み方を変えることをお勧めしたい。
メディア界の革命児・宇川直宏が挑む視覚コミュニケーションの可能性『@DOMMUNE』

『@DOMMUNE』(河出書房新社)
誰もが手軽に利用できるとあって、人気を集めているUstream配信。現在、さまざまな番組が配信されているが、そのパイオニア的存在であり、日本初のライブストリーミングチャンネルが「DOMMUNE」だ。この番組は、月曜から木曜まで東京・恵比寿にあるスタジオから生配信され、19~21時のトークプログラムと21~24時のDJプログラムの2部で構成されている。2010年3月の開設からこれまで、約700番組/2,000時間を無料で配信している驚異のチャンネルだ。
このほど、その主催者である宇川直宏氏が、DOMMUNEという、未踏の視覚コミュニケーションの可能性を書き綴った『@DOMMUNE』(河出書房新社)が発売された。これまでDOMMUNEに登場してきたアーティストたちとの対話形式をメインに、宇川氏自身がDOMMUNEをひもといていく。
「DOMMUNEとは民放の劣化版ではなく、滅びゆく紙メディアの墓場だ」と語る宇川氏は、休刊してしまった「STUDIO VOICE」(INFASパブリケーションズ)や「広告批評」(マドラ出版)、「エスクァイア」(エスクァイアマガジンジャパン)といった、自身と関わりの深かった紙メディアが蘇生する場としてDOMMUNEを位置付ける。そのためトークプログラムでは、宇川氏の趣味嗜好が色濃く反映された、ディープかつ、マニアックなサブカルプログラムを中心に配信されている。また、無料配信にもかかわらず、音響システムのクオリティーが非常に高く、DJプログラムでは音にうるさい音楽ファンたちをうならせている。
そんなDOMMUNEがUst番組という枠から飛び出し、その存在感をより強く世間に知らしめたのは、震災後の緊急配信と東日本大震災復興支援イベント「FREE DOMMUNE 0」、そして「DOMMUNE FUKUSHIMA!」の開局だろう。
日本中が混乱の中にあった震災4日後、DOMMUNEではいち早く義援金を募る音楽配信を開始。国内外のアーティストによる計8回の緊急配信を行い、750万円以上の義援金を集めた。さらに、1年前から企画されていたDOMMUNE主催のフリーフェスのコンセプトを"復興支援イベント"と変え、「東日本大震災復興支援イベント『FREE DOMMUNE 0』」を企画。普段はキャパ50人のスタジオから配信しているプログラムを、1万人以上最大2万の規模に拡張させ、より多くの義援金を集めることを目的としたこの壮大なプロジェクトには、その趣旨に賛同した国内外50組近いアーティストの出演が決定。前代未聞のフェスに注目が集まったが、まさかの悪天候のため、急きょ、中止を余儀なくされてしまった。
そして「DOMMUNE FUKUSHIMA!」の開局。これは、いまだ収束の目途すらたたない原発事故が起こった福島を孤立させるのではなく、そこから何か新しいことを世界に向けて発信していきたいという、ミュージシャンの大友良英氏らが中心となって立ち上げた「PROJECT FUKUSHIMA!」のプロジェクトの一環で、福島に住む人たちの手によってリアルな情報を発信していくために作られたメディアだ。DOMMUNEがこれまで培ってきたノウハウを、いわばのれん分けした形となったDOMMUNE FUKUSHIMA!は月に2度、DOMMUNEのプログラムのひとつとして配信されている。
グラフィックデザイナー、VJ、映像作家などなどさまざまな肩書きを持つ宇川氏は現在、その片書きをすべて捨て、365日DOMMUNEに全エネルギーを集中させている。無料配信にもかかわらず、なぜそこまでしてまでこのプロジェクトに賭けているのか。宇川氏は言う。「DOMMUNEは極私的な『現在美術』作品」だと。
図らずも、震災をきっかけにメディアとしての役割を見直されたUstream。活字メディアだけでなく、民放テレビ局も崩壊へのカウントダウンが始まっている今、DOMMUNEは"ファイナルメディア"として、日々その存在感を増している。はたしてこの快進撃はどこまで続くのか、今後も目が離せない。
(文=編集部)
ドバイの商業ビルとシロアリの意外な関係に目からウロコ! 『アラマタ生物事典』

『アラマタ生物事典』(講談社)
中国古来の薬学が起源となり、日本でも江戸時代に栄えた歴史ある学問「本草学」。その目的をかみ砕いて言えば、あらゆる生物の効能を発見すること。
生物事典とは、生き物の姿形の特徴や、「こんなところに生息している」「エサはこういうもの」などといった生態が解説されたものですが、荒俣宏監修による『アラマタ生物事典』(講談社)は本草学の視点が取り入れられ、どの生物がどんな役に立つのかが分かる、まったく新しい生物事典なのです。
「怖い......」
それが最初にページをめくった時の正直な感想でした。
は虫類や昆虫、さまざまな菌や植物のドアップ写真の数々が出てくる本書ですが、そのヴィジュアル的な迫力だけでなく、この「怖い」という感情は「畏怖」に行き当たります。
例えば、「オオキノコシロアリ」という生物。
この項目には、オオキノコシロアリの群れが女王アリを囲んでいる様子や、巣の外観などの写真がふんだんに使用されているのですが、女王は他のアリとは全然違った姿をしているし、巣は見たこともないような形をしているしで、ギョッとしつつ、2度見3度見してしまいます。加えて、シロアリと言えば害虫というイメージがありますが、解説を読んでみると、このオオキノコシロアリはヒトの身長よりも高い巣を作って、そこに独自の換気システムを築き、サバンナという厳しい気候のなかで常に一定の温度・湿度を保ち、その中で自分たちでキノコを育てて食料にしているそう。
それだけでも十分すごいのですが、さらに本草学的視点から見ると、その換気システムがドバイの商業ビルの構造に取り入れられていたり、そのキノコがヒトにとっては珍味中の珍味とされていたりと、驚きと尊敬の念が増します。
このように、人間には考えつかず、その生物をマネして自分たちの生活に取り入れようと思わせられるほどのスゴイ能力を秘めているからこそ、「怖い」と感じるのかもしれません。
マネと言えば、この事典には「ヒト」の項目もあるのですが、そこには「ヒトをここまで進化させてきたのは、ヒトの脳にある『ミラーニューロン』という細胞の、他人の心や行動を『マネ』する働きによるものではないか」と書かれています。そして、印象的なのが次の一文。
「キミが新しい技術を開発したいと思ったら、生物の成分や構造をマネするのが近道なのだ」
子どものころ図鑑を見るのが好きだったり、学生時代に理科便覧にハマった経験がある人も多いのではないかと思いますが、ヒトがそうやってほかの生物のことを知ろうとするのは知的な営みなのではないでしょうか。
漢字にはルビ付きで写真やイラストも満載と、子どもから大人まで楽しく読めるように作られたこの一冊は、知的欲求を満足させるのにぴったりです。
(文=萌えしゃン)
戦艦大和、最後の出撃時の食事とは? 『自分でつくる うまい! 海軍めし弁当』

『自分でつくる うまい!
海軍めし弁当』(経済界)
毎年8月になると、われわれ日本人は戦争のことを思い出す。戦後、日本の夏は常に戦争の残り香をはらんでいると言えるだろう。「あの戦争を振り返る」と言うと、とかく軍部の暴走や戦災体験などがクローズアップされがちだが、当時の人はどのような日常生活を送っていたのだろう。
たとえば、艦上の食生活。戦時中、海軍で食べられていた弁当を再現したのが『自分でつくる うまい! 海軍めし弁当』(経済界)。以前、当サイトで紹介した『零戦の操縦』(アスペクト)など、一風変わったミリタリー本を手がけてきた青山智樹氏とバーバラ・アスカ氏のふたりが著した最新刊だ。
陸軍と比べ海軍は、戦闘中、出撃時、潜水艦内など、何かと弁当を食べる機会が多い職場。零戦のパイロットや戦艦大和の乗組員が機上・艦上で食べた弁当を、現代の家庭でも簡単に作れるよう、写真とレシピを添えて紹介している。海軍の弁当は、いずれも栄養豊富、保存が効いて、手軽に食べられるものばかり。合理性と美味しさを兼ね備えた弁当だ。思いのほか、バラエティーにも富んでいる。
昭和20年4月7日、戦艦大和、最後の出撃時の弁当は、「塩にぎり3つ。付け合わせにたくあん、または牛肉の大和煮」と実に男らしい。大和の乗組員3,000人分、約1万個のおにぎりを、60人の主計科員だけで握ったというから、その苦労がしのばれる。手に水を浸す時間もなく、主計科員たちの手はやけどで真っ赤に腫れ上がったという。戦艦大和のほかにも、昭和16年12月8日、真珠湾攻撃時の空母瑞鶴の弁当などが掲載されている。
あの日あの時、歴史の1ページを想像しながら作り、食べると、海軍めしもいっそうおいしく感じられることだろう。栄光ある帝国連合艦隊の"めし"、ぜひお試しあれ。
(文=平野遼)
●あおやま・ともき
1960年生まれ。作家・軍事評論家。東海大学理学部物理学科卒。戦記・架空戦記小説の著作多数。近著は『零戦の操縦』『戦艦大和3000人の仕事』(ともにアスペクト)。
個人HP「青山智樹の仕事部屋」<http://www.din.or.jp/~aoyama/>
個人サークルHP「超兵器科学研究所」<http://insightnet.seesaa.net/>
Twitter:@aoyama_tomoki
●バーバラ・アスカ
1972年生まれ。作家・編集者。立教大学法学部卒。出版社、編集プロダクションを経て、2004年よりフリー。主な著作・にプロデュース作品には『マンガを読んで小説家になろう』(大内明日香名義)、『超ライトノベル実戦作法』(ともにアスペクト)、『やりなおしたい30歳以上のための就職読本』(大内明日香名義 幻冬舎)などがある。
「出版評論社@Web」<http://bestseller.jp/>
「評論放送」<http://hyoron.jp/>
Ustreamチャンネル「評論放送」<http://www.ustream.tv/channel/hyoron-broadcast>
ログピ <http://logpi.jp/bestseller>
オレの蒐集品どうしよう? オタクの死に仕度を紹介した『オタクの逝き方』

『オタクの逝き方』(BUILTRUNS)
8月4日、元日本代表DF松田直樹選手(34)が、練習中に心筋梗塞で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。多くのファンやサッカー関係者がその死を悼み、Jリーグの試合前には黙祷が捧げられた。松田選手の他にも、ミュージシャンのレイ・ハラカミ氏(40)、ニコ動で活躍した歌手・ntmP(ナツメピー)氏など、若くしての急逝が相次いでいる。
「もし死んだら、オレのコレクションどうしよう?」
松田選手と同年輩のオタク諸氏も、我が身と愛蔵品のその後を案じたのではないだろうか。『オタクの逝き方』(BUILTRUNS)は、オタクの死に仕度の作法を紹介した本だ。遺言状作成の手順や、相続に関する法律のことなどが萌えマンガで描かれ、楽しみながら読み進めることができる。他人には見せられないヤバ~いデータ、数百万円の価値がつくコレクション、運営していたウェブサイトなど、オタクには普通の人以上に処理に困るモノがたくさんある。特に、偏った嗜好のエグい同人誌やエロ画像などが家族に見つかってしまっては、死んでも死にきれない。
そんな時、便利なのが「僕が死んだら...」というPCソフト。ショートカットを生成し、実行すると事前に登録しておいたファイルを秘密裏に消去してくれるというスグレモノ。設定した期間、PCを起動せずにおくと、登録したファイルを自動的に消去してくれる「死後の世界」も有効だ。いずれも無料でダウンロードすることができる。
もちろん、PC関連以外の処理方法も仔細に記されている。ラブドール(ダッチワイフ)の大手メーカー・オリエント工業は、無料でラブドールの引き取り&供養を行ってくれるので、未亡人となったワイフのその後も安心だ。
死は、いつ何時、誰のもとに訪れるか分からない。別段オタクでなくとも、他人に見られたくないデータや蒐集品が少なからずあるだろう。自身の名誉を傷つけないために、また他人を不快にさせないために、最低限の"死に仕度"を整えておくことは、現代人としてのマナーであるのかもしれない。
(文=平野遼)
日本一有名になってしまった村・飯舘村村長が綴った"までい"な暮らし

『美しい村に放射能が降った
~飯舘村長・決断と覚悟の120日~』
(ワニブックスPLUS新書)
前例のない原発事故が多くの人々を混乱させている。右往左往する政府や自治体、東京電力、原子力安全・保安院、そして学者や知識人、言論人と呼ばれる人々も例外ではない。ある人は「不謹慎であるけども」という前置きをしながら「原発は現代アートみたいなもの」と皮肉っていた。受け取る側の解釈一つによって、同じ数字が「ただちに健康に影響はない」ものであると同時に「今すぐに避難しなければならない」ものとなってしまう。
ホットスポットであることが判明し、計画的避難区域に認定された福島県相馬郡飯舘村。わずか人口6,000人あまりの小さな村は、突如として日本でいちばん有名な村となってしまった。この村の村長である菅野典雄氏による手記『美しい村に放射能が降った ~飯舘村長・決断と覚悟の120日~』(ワニブックスPLUS新書)が発売された。
阿武隈高地の北部に位置する飯舘村を、3月11日以前に知っていた人はどれほどいただろうか? 美しい自然とおいしい農作物、人間味あふれる人々。「平凡な日本の美しい田舎」と菅野氏が表現するように、そこは数ある小村の一つでしかなかった。本書には、この飯舘村を豊かにするために村長として奔走した彼の日々が綴られている。村の女性たちを海外に送り出す「『若妻の翼』プロジェクト」や、男性の育児休暇促進のために制定した「パパクォーター制度」など、そこには菅野氏が飯舘村のために全力を尽くしてきた歴史があった。
そんな飯舘村の歴史を象徴するような言葉が、「までい」という方言だ。
「真手」、つまり両手が揃った状態のことであり、「丁寧に」「心を込めて」といったニュアンスのこの言葉。それにあやかり、村長は村の生活を「までいライフ」と表現する。飯舘村では村人たちがともに支え合いながら楽しく、美しく、心安らかに歩んでいける暮らしを目指していた。
しかし、3月11日、村を大地震が襲い、降り出した雪とともに放射能が舞い降りた。
住民たちは避難する者、取り残される者、あるいはこの村に残ることを決める者とに分かれた。村長は村に留まることを決意し、「村を残すこと」を最大の目標とする。「放射能の害よりも避難の害の方が大きい場合だってある」と本書で綴っているように、村人にとって、故郷としての村を残すことは、命と同じくらい重要なことだった。
4月11日、計画的避難区域に指定され、1カ月を目安に全村避難を迫られるも、なかなか避難は進まない。避難にあたり、村長が政府に対して粘り強く交渉を続けていたためだ。そのような村長の行動は、「命を危険に晒すな」といった批判を全国から集めた。確かにその批判は正論かもしれない。しかし、避難"後"の村を考えた場合、村人たちの生活を守ることもまた村長としての重要な仕事だった。
6月22日、飯舘村役場は福島市役所飯野支所に開設され、一部の老人ホームや事業所を除き、避難は完了。この避難にあたり、村長は飯舘村に戻るまでの時間を「2年間」と明言した。しかし、この8月にも新たにプルトニウム239の親核種であるネプツニウム239が数千ベクレル検出され、その状況が絶望的であることが改めて明らかとなってしまった飯舘村。本当に「2年間」で村民たちが村に戻ることができるかは定かではない。しかし、村人たちの希望をつなぎ止めるためには「2年間」という約束が必要だった。この数字には、村長の村人に対する「までい」な気持ちが表れている。
『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)で一躍時の人となった社会学者の開沼博氏は、当サイトのインタビューで以下のように語った。
「何か原発について声を大にして主張したがる人に読んでいただければと思います。主張するなと言っているのではありません。その気持ちが圧倒的な「善意」に基づくという自覚があったとしても、実は知らぬ間に暴力や抑圧に転化してしまっていることを受け止めなければならない」
原発事故は、それぞれの立場の違いを浮き彫りにした。東京に住んでいる人/福島に住んでいる人、原発に関連のある人/原発とは無関連の人、子どもがいる人/いない人、それぞれの立場によってそれぞれの正論が存在する。今必要なのは、その正論を別の立場から批判することではなく、立場の違いを尊重しながら、他人の言葉に耳を澄ますことではないだろうか。
「村を守る」ことを仕事とする、菅野村長の言葉に静かに耳を澄ませてみると、東京では想像できない飯舘村の「までい」な暮らしが広がってくる。
(文=萩原雄太[かもめマシーン]
●かんの・のりお
1946年、現・飯舘村生まれ。70年帯広畜産大学草地学科卒業。酪農を営み、乳牛60頭を飼うかたわら、89年から7年間、飯舘村公民館の嘱託館長を勤める。96年10月、村長選挙で当選し、第5代目飯館村村長に就任、以来4期連続で勤める。合併しない「自主自立の村づくり」を進め、小規模自治体の良さを活かした子育て支援や環境保全活動、定住支援などユニークな施策で知られる。「丁寧に、心を込めて、大切に」という意味の方言から取った「までいライフ」を村の暮らしのモットーに掲げる。
大地震で激変した不動産事情 タワーマンションはもう誰も買わない!?

地震に強いマンションとは、「耐震」以外にも、
揺れのエネルギーを吸収する「制震」「免震」
という要素も求められるという
3.11に起きた東日本大震災は、日本人のマインドに様々な変化をもたらしたと言われている。不動産市場も例外ではなく、震災の前と後では購入者の心理に明らかな変化が見てとれる。大きな流れとしては、「液状化のリスクがある臨海部が敬遠され、地盤のしっかりした内陸部の土地の価格が徐々に上がりつつある」(都内不動産業者)というもの。中でも震災後に落ち込みが目立つのが、神奈川県の鎌倉市や三浦市を含む湘南地区だという。
どちらかと言えば、これまで「憧れの土地」(前述の不動産業者)として位置づけられていた湘南も、「やはり津波のイメージが強い。当面は様子見が続きそう」(同)という状態。「(財)東日本不動産流通機構」(以下、流通機構)の調べでも、湘南地区における中古マンションの成約件数は昨年比10.7%減と落ち込みを見せている。また、この辺りは三浦半島断層群が存在し、先の大地震の影響で、震度6強の地震発生確率が高まったと発表されたことも影響しているようだ。
神奈川県以外では、液状化を起こした千葉県の浦安市や船橋市も深刻な状態。流通機構の調べでは、成約件数は昨年比28.9%減。同地区に強い不動産コンサルタントは「もう浦安は壊滅状態ですよ」と次のように嘆く。
「金融機関は地域ごとの土地価格を評価指数として表にしているのですが、今その表からは浦安が削除されている状態です。数字のつけようがないほど動きがストップしてしまっているということです」
また、震災以降、人気が急降下しているのが、いわゆる「タワーマンション」だ。
「豊洲や有明といった臨海エリアのタワーマンションを売っ払って、地盤がしっかりした山の手などの中層マンションや、一戸建て物件を買いたいという要望が増えています。タワーマンションで3.11地震を体感した人にとって、あの揺れは本当に恐怖だったようですからね」
さらに、今後は関東直下型大地震に対する恐怖心もあり、"タワー離れ"の動きが完全に止まることはないと見る専門家も多い。
それどころか、大手デベロッパーの中には、タワーマンション開発へ向けて広大な土地を取得済みのところも多く、「その土地が丸々残ってしまっているデベロッパーにとっては大きな悩みです。今後のタワーマンションは供給過多で暴落の恐れも指摘されています」(同)というから深刻だ。
一方で、これまでも多くのメディアが報じている通り、震災後に人気が高まっているのが、東京では立川市や国立市、国分寺などの武蔵野エリア。3.11の地震で液状化をおこさなかった「地盤がしっかりしている地域」(同)ということになる。同地区の不動産業者によれば「たしかに徐々にではありますが、土地の価格に反映はされてきています」とのこと。ただし、これが今現在販売されているマンション価格に直ちに反映されることはないという。
「マンションというのは、まずデベロッパーが土地を仕入れて、建築確認を取り、設計図面を引いてからゼネコンに発注し、竣工して販売する。それまでのスパンが3年はかかります。現在売りに出されている物件は、土地が安かった2~3年前にスタートしているプロジェクトです。土地代が安く済んだ物件は、浮いた予算を建物に投入できますから、その意味ではお買い得物件が多いと言えるのではないでしょうか」
いずれにせよ、仮に今後10年大きな地震が起きなかったとしても、日本人が不動産を選ぶ視点から「地震」という要素が消えることはないだろう。これからの不動産選びは、地盤の構造や海との位置関係、自治体のインフラ状況などを考慮の上、地震保険の研究や建物の耐震性能チェックの習得なども必須条件として求められそうだ。










