フロより迷路!? 異次元の世界が広がる迷路宿へ『四次元温泉日記』

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『四次元温泉日記』(筑摩書房)
 近年まれに見る大寒波が襲う日本列島。こんな季節、やっぱり行きたくなるのが温泉だ。 「ほぁ~~~」  冷え切った体を湯船に沈めた瞬間、思わず魂の抜けたような声が出てしまうのは私だけではないはず。わが国は温泉大国であり、全国各地に有名な温泉地がある。もちろん温泉ファンも多く、ガイドブックに始まり、愛好家たちによる温泉本は数知れず。けれど、今回紹介する『四次元温泉日記』(筑摩書房)は、今までの温泉本とはずいぶん違う。なぜなら著者の宮田珠己氏は、温泉にまったく興味がないからだ。 <私の見たところ、温泉は風呂であり、風呂は家にあり、その家風呂さえも入るのが面倒くさい。人は何を好き好んで風呂に入るためだけに遠くに出かけるのか、その意味がわからんと前々から不思議に思っていた>  こんな出だしで始まる本書だが、もう1点、他の温泉本と違う特徴がある。それは、"迷路"と温泉のコラボである。  というのも、宮田氏は迷路のように複雑化した旅館やへんな宿が大好きで、そういう"迷路宿"を探しては泊まり歩いている人物なのだ。  今回の温泉旅行は、おもに温泉通の知人2人と宮田氏の3人旅。三朝温泉(鳥取県)、湯の峰温泉(和歌山県)、四万温泉(群馬県)、微温湯温泉(福島県)、瀬見温泉(山形県)別府鉄輪温泉(大分県)など、東北から九州までを網羅。全国各地には"迷路宿ファン"の間でも有名な"迷路宿"というものがあるらしい。  そういう宿には本書の表紙写真のように、まっすぐに歩けないほど右に傾いた階段や、なぜか二手に並走する廊下、中ニ階の三階のような空間が現れるなど、通常ではちょっと考えられない、ナゾのしかけに満ちている。    宮田氏が泊まったホテルの名前はほとんど伏せられているが、読んでいると、どの宿か探し出して訪れたい願望がふつふつと沸いてくる。  前半は迷路宿がメインに話が進んでいくのだが、次第に温泉そのもの、温泉の持つ独特の空間にも宮田氏が惹かれていく様子が伝わってくる。風呂嫌いの人が温泉好きになる過程、これも読みどころのひとつかもしれない。  これまで誰も追及しなかった、"温泉"と"迷路"という奇妙な組み合わせ。これを読めば、まだ見ぬ温泉界の四次元へどっぷり浸かれそうだ。 (文=上浦未来) ●みやた・たまき 1964年、兵庫県生まれ。旅エッセイを中心に執筆活動を続ける。『東南アジア四次元日記』『わたしの旅に何をする。』『ときどき意味もなくずんずん歩く』(幻冬舎文庫)『ウはウミウシのウ シュノーケル偏愛旅行記』(白水Uブックス)『旅の理不尽 アジア悶絶篇』(ちくま文庫)、『なみのひとなみのいとなみ』(朝日新聞出版)、『スットコランド日記』『スットコランド日記 深煎り』『だいたい四国八十八ヶ所』(本の雑誌社)など、著書多数。『東南アジア四次元日記』で第3回酒飲み書店員大賞を受賞。
四次元温泉日記 『千と千尋』の油屋とかね。 amazon_associate_logo.jpg
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「持ち物検査は一切なかった」福島第一原発潜入ジャーナリスト・鈴木智彦の見た景色(後編)

IMG_9407_.jpg前編はこちらから ――先ほど、原発内で覚せい剤の注射器が見つかったという話がありましたが、今回鈴木さんが潜入した時も持ち物チェックなどはなかったんですか? 鈴木智彦氏(以下、鈴木) ない、何にもない。オレ自身、ラップトップ(パソコン)と一眼レフカメラを持って行ったし。もし事故が起こったら、その場で発信しようと思ってさ。フクイチの敷地内では携帯電話の回線もつながる。 ――作業員の持ち物検査なんかしている余力はなかった、ということでしょうか? 鈴木 通常の原発というのは本当に厳格なセキュリティーでタバコも持ち込めないんだけど、当時のフクイチだけはすべての規則が当てはまらない。拠点となっていたJヴィレッジからのバス乗ってフクイチに向かうんだけど、オレが入った時に、バスの中から外にいる民間の警備員に向かって身分証を見せるということを始めたんだよ。オレがいる間はその身分証に顔写真が入っていなかったんだけど、出た後には顔写真入りになっていったから、どんどん厳しくなっていった。震災直後はチェックは何もなかったそうだけど、時間が経つにつれて東電が徐々に「通常」を取り戻していったんだろうね。 ――作業中に危険を感じたことはありましたか? 鈴木 ないない。だって、何も知らされないもん。何かあったとしても、宿泊先である温泉旅館のテレビで知るんだもん。作業員たちは自分たちの持ち場の状況しか知らないし、東電としても作業員にグランドデザインを話す必要はないと考えているんだろうね。情報が漏れることに気を使っているようだったからさ。週刊誌とかに作業員の話が載ったりすると問題になって、「テレビや雑誌のインタビューを受けるな」という指示があったよ。なので、実際に原発の中で作業員をしているより、外で取材したほうがよく分かった。 ――鈴木さんは原発に入る前に、造血幹細胞を採取(編註2)しています。その費用は医療関係者の厚意を受けても、10万円という高額な費用をご自身で払っています。作業員のほとんどはそういった施術を受けず作業をしていますね。 鈴木 もちろん彼らも頭のどこかでは「遠い未来に白血病とかになったらイヤだな~」と思っているんだろうし、若い子にも造血幹細胞の話とかもしたんだけど、なかなかみんな行かなくて。考えないようにしてるんだろうね。そもそも、危険性を真剣に考えたら原発では働けないよ。事故が起こって、協力企業もすぐに撤収したところもあったし、辞めた人もいた。「原発で働く=死んでくれ」だから。 ――作業員の被曝リスクに関する話というのは、東電側から説明があるんですか? 鈴木 ちょっとはあるけど、「ちゃんと管理するからなんともないですよ」って話。管理というのは数字の話なんだけどね。 ――鈴木さんがいたころは作業員に高額な日当が付き、作業員が高級外車を乗り回すようになったそうですね。 鈴木 ただね、東電はいまだに「危険手当」を出していないから。東電がそれを出しちゃうと、フクイチが危険だと認めたことになるわけだから、協力企業が作業員に出していたわけ。でも今や日当は2,000円~3,000円ぐらいにまで下がってきているし、協力会社も経営が苦しくなって今後原発から撤退する企業が増えていくでしょう。 ――日立、東芝などプラントメーカーは事故収束に関するアイデアなどを持っているのに、情報共有ができていないことも指摘されていますね。 鈴木 日本のプラントメーカーは、日立、東芝、三菱があるんだけど、これまで三菱はフクイチに入っていなかったのね。去年の年末に三菱がフクイチに入ってきたから、企業間のパワーバランスが崩れて、情報共有もできているんじゃないかな。でも、「冷温停止状態」=「通常状態」になったということで、東電からお金が出ないのね。事故収束にお金を出すべきだと思うんだけどね。 ――フクイチだけじゃなく、福島第二原子力発電所の危険性も指摘されていますね。 鈴木 直接行ったわけじゃないんだけど、いまだにオレは福島第二原発が怪しいと思っている。12月の終わりに東芝が3号機に入る予定だったのに、入らなかったんですよ。8月の終わりに4号機に日立が入ったあとで、「4号機が爆発してるんじゃないか」というウワサが広がったの。メディアも事実確認に行ったけど、掴めなかったみたい。現状に関しても、現場のごくごく一部の人しか知らないみたい。第二原発は一見普通に見えるんだけど、炉心周りの業者に聞くと、みんな「怪しい」と口をそろえるわけ。いろんな専門家に聞いてみたけど、可能性は否定できないと言ってた。 ――フクイチを目の当たりにし、原発で働いた鈴木さんでさえ「脱原発とは言えない」と書かれたことが驚きでした。 鈴木 この目で見て、ここまで調べて、今のフクイチが「完全にアウトな状態」と分かっているのに、今すぐ「脱原発」って言えないのよ。それだけ原発というものが共同体に組み込まれていて、今の日本から原発を抜くのは相当に難しいし、実際に原発をなくしたら大変なことになる。今はフクイチから帰ってきたから、「基本的には原発はないほうがいいな」と言えるけど、オレみたいな一時的に働いただけの人間でも、あそこで友達もできたし、雇用を生み出しているのを見ると、「原発はいらない」とは言えなくなるんだ。オレも"原発ムラ"の一員になったということなんじゃないのかな。だから、地元の人なんてもっと言えないと思うよ。 (取材・文=小島かほり) ※編註2:血液の細胞(造血幹細胞)を前もって保存しておくことで、放射線被曝などで血液になんらかの障害・症状が出た時に移植する治療法 ●すずき・ともひこ 1966年、北海道生まれ。ジャーナリスト、写真家。広告カメラマンを経てヤクザ専門誌「実話時代」編集部に入社。「実話時代BULL」編集長を務めフリーに。以降、暴力団専門ジャーナリストとして取材活動を続けている。近著に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)、『ヤクザ1000人に会いました!』(宝島社)など。東日本大震災後の7月から約2カ月間にわたって事故を起こした福島第一原発に作業員として潜入。取材をまとめた『ヤクザと原発~福島第一潜入記~』(文藝春秋)を上梓。
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「持ち物検査は一切なかった」福島第一原発潜入ジャーナリスト・鈴木智彦の見た景色(後編)

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IMG_9407_.jpg前編はこちらから ――先ほど、原発内で覚せい剤の注射器が見つかったという話がありましたが、今回鈴木さんが潜入した時も持ち物チェックなどはなかったんですか? 鈴木智彦氏(以下、鈴木) ない、何にもない。オレ自身、ラップトップ(パソコン)と一眼レフカメラを持って行ったし。もし事故が起こったら、その場で発信しようと思ってさ。フクイチの敷地内では携帯電話の回線もつながる。 ――作業員の持ち物検査なんかしている余力はなかった、ということでしょうか? 鈴木 通常の原発というのは本当に厳格なセキュリティーでタバコも持ち込めないんだけど、当時のフクイチだけはすべての規則が当てはまらない。拠点となっていたJヴィレッジからのバス乗ってフクイチに向かうんだけど、オレが入った時に、バスの中から外にいる民間の警備員に向かって身分証を見せるということを始めたんだよ。オレがいる間はその身分証に顔写真が入っていなかったんだけど、出た後には顔写真入りになっていったから、どんどん厳しくなっていった。震災直後はチェックは何もなかったそうだけど、時間が経つにつれて東電が徐々に「通常」を取り戻していったんだろうね。 ――作業中に危険を感じたことはありましたか? 鈴木 ないない。だって、何も知らされないもん。何かあったとしても、宿泊先である温泉旅館のテレビで知るんだもん。作業員たちは自分たちの持ち場の状況しか知らないし、東電としても作業員にグランドデザインを話す必要はないと考えているんだろうね。情報が漏れることに気を使っているようだったからさ。週刊誌とかに作業員の話が載ったりすると問題になって、「テレビや雑誌のインタビューを受けるな」という指示があったよ。なので、実際に原発の中で作業員をしているより、外で取材したほうがよく分かった。 ――鈴木さんは原発に入る前に、造血幹細胞を採取(編註2)しています。その費用は医療関係者の厚意を受けても、10万円という高額な費用をご自身で払っています。作業員のほとんどはそういった施術を受けず作業をしていますね。 鈴木 もちろん彼らも頭のどこかでは「遠い未来に白血病とかになったらイヤだな~」と思っているんだろうし、若い子にも造血幹細胞の話とかもしたんだけど、なかなかみんな行かなくて。考えないようにしてるんだろうね。そもそも、危険性を真剣に考えたら原発では働けないよ。事故が起こって、協力企業もすぐに撤収したところもあったし、辞めた人もいた。「原発で働く=死んでくれ」だから。 ――作業員の被曝リスクに関する話というのは、東電側から説明があるんですか? 鈴木 ちょっとはあるけど、「ちゃんと管理するからなんともないですよ」って話。管理というのは数字の話なんだけどね。 ――鈴木さんがいたころは作業員に高額な日当が付き、作業員が高級外車を乗り回すようになったそうですね。 鈴木 ただね、東電はいまだに「危険手当」を出していないから。東電がそれを出しちゃうと、フクイチが危険だと認めたことになるわけだから、協力企業が作業員に出していたわけ。でも今や日当は2,000円~3,000円ぐらいにまで下がってきているし、協力会社も経営が苦しくなって今後原発から撤退する企業が増えていくでしょう。 ――日立、東芝などプラントメーカーは事故収束に関するアイデアなどを持っているのに、情報共有ができていないことも指摘されていますね。 鈴木 日本のプラントメーカーは、日立、東芝、三菱があるんだけど、これまで三菱はフクイチに入っていなかったのね。去年の年末に三菱がフクイチに入ってきたから、企業間のパワーバランスが崩れて、情報共有もできているんじゃないかな。でも、「冷温停止状態」=「通常状態」になったということで、東電からお金が出ないのね。事故収束にお金を出すべきだと思うんだけどね。 ――フクイチだけじゃなく、福島第二原子力発電所の危険性も指摘されていますね。 鈴木 直接行ったわけじゃないんだけど、いまだにオレは福島第二原発が怪しいと思っている。12月の終わりに東芝が3号機に入る予定だったのに、入らなかったんですよ。8月の終わりに4号機に日立が入ったあとで、「4号機が爆発してるんじゃないか」というウワサが広がったの。メディアも事実確認に行ったけど、掴めなかったみたい。現状に関しても、現場のごくごく一部の人しか知らないみたい。第二原発は一見普通に見えるんだけど、炉心周りの業者に聞くと、みんな「怪しい」と口をそろえるわけ。いろんな専門家に聞いてみたけど、可能性は否定できないと言ってた。 ――フクイチを目の当たりにし、原発で働いた鈴木さんでさえ「脱原発とは言えない」と書かれたことが驚きでした。 鈴木 この目で見て、ここまで調べて、今のフクイチが「完全にアウトな状態」と分かっているのに、今すぐ「脱原発」って言えないのよ。それだけ原発というものが共同体に組み込まれていて、今の日本から原発を抜くのは相当に難しいし、実際に原発をなくしたら大変なことになる。今はフクイチから帰ってきたから、「基本的には原発はないほうがいいな」と言えるけど、オレみたいな一時的に働いただけの人間でも、あそこで友達もできたし、雇用を生み出しているのを見ると、「原発はいらない」とは言えなくなるんだ。オレも"原発ムラ"の一員になったということなんじゃないのかな。だから、地元の人なんてもっと言えないと思うよ。 (取材・文=小島かほり) ※編註2:血液の細胞(造血幹細胞)を前もって保存しておくことで、放射線被曝などで血液になんらかの障害・症状が出た時に移植する治療法 ●すずき・ともひこ 1966年、北海道生まれ。ジャーナリスト、写真家。広告カメラマンを経てヤクザ専門誌「実話時代」編集部に入社。「実話時代BULL」編集長を務めフリーに。以降、暴力団専門ジャーナリストとして取材活動を続けている。近著に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)、『ヤクザ1000人に会いました!』(宝島社)など。東日本大震災後の7月から約2カ月間にわたって事故を起こした福島第一原発に作業員として潜入。取材をまとめた『ヤクザと原発~福島第一潜入記~』(文藝春秋)を上梓。

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「シャブ中の作業員も……」福島第一原発潜入ジャーナリスト・鈴木智彦の見た景色(前編)

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ジャーナリストの鈴木智彦氏
 ジャーナリストとしては初めて、福島第一原子力発電所(以下、フクイチ)に「作業員」として潜入した鈴木智彦氏。上梓した『ヤクザと原発』(文藝春秋)は暴力団専門ライターとしての経験、人脈を駆使してひもといた「ヤクザ」と「原発」という巨大利権の関係、そして作業員だからこそ見ることができた「フクイチ」の真実が記されている。今回は鈴木氏に、「震災とヤクザ」「原発の問題点」をテーマに話を聞いた。 ――『ヤクザと原発』の冒頭には、鈴木さんが暴力団に同行し、被災地に炊き出しに行った記述がありますね。震災直後には暴力団の炊き出しが報道されていましたが、組織側には人道支援以外の意図はあったのでしょうか? 鈴木智彦氏(以下、鈴木) お巡りさんは震災直後から記者クラブにも「(暴力団が支援を行うことで)復興利権への足がかりを意図している」と注意を促していたけど、そこまで計算して動いていないと思うんだよね。そんな状況じゃなかったじゃない。ボランティア自体は神戸(阪神・淡路大震災)の時もやってたし、ヤクザの伝統ではある。震災におけるヤクザのシノギで太いのは、土建がメインだけど、そんなの地元の組織ががっちり守っているんだろうから、炊き出しや物資の輸送ぐらいでどうにかなるような簡単なものじゃない。それでも「本当に純粋な人道支援なのか?」ということを知りたくて付いて行ったんだけど、僕が知っている限り、ボランティアによって何か復興利権に関わったという話は聞いていないなぁ。 ――本でも書かれているように、ヤクザと原発の関係も本当に深いですね。原発建設の話が浮上した段階から、電力会社と交渉し、反対派を押さえ込み、用地整理をして、地元の建設業者に仕事を振り、漁業権の事前補償の"代理人"まで務めている。今回の事故による補償にはヤクザは絡んでいないんですよね? 鈴木 原発を作る段階で、海が汚染されて漁ができなくなることを想定した、事前補償というのが支払われる。実際に何かあってからでは、補償が支払われるには何年もかかるからね。今回の事故による補償というのは東電との話し合いになると思うけど、難航するだろうね。ただそこにはヤクザはもう入ってこれないと思う。暴力団排除条例もあるし、警察がものすごくうるさいから。 ――ヤクザが直接的に原発にかかわっている部分は? 鈴木 原発というのは電力会社の下に東芝や日立など原発プラントメーカーがあって、その下には10次請け以上の協力会社がある。仕事を右から左に流して、賃金を中抜きするのよ。ただね、例えば5次請けの下にヤクザの企業が入ってくるとするじゃん。でもそこが友達同士だったりするから、ペーパーを交わさないの。だから表面的には5次請けしかないんだけど、実際は10次請けまであったりする。 ――契約書がないから、東電は気づいてないということですか? 鈴木 うん。ただ、事故後に協力企業に「暴力団と関係ありません」という誓約書・確認書は出させている。でもそれは"調べる"んじゃなくて、なんか問題が露見した時に「調べてましたよ」と言うためのアリバイ作りだから。実際に東電が暴力団のフロント企業を排除したケースもあったんだけど、言わないんだよね。ヤクザがいたってことを証明する形になっちゃうから。その企業は地元では誰でもヤクザがやっているって分かるから契約を解除されたんだけど、今は原発周辺のガレキの撤去に回ってる。そっちのほうがお金がいいみたいよ。原発は日当が下がってて、割に合わないから。 ――実際に、鈴木さんが原発に入った時にヤクザは作業員としていましたか? 鈴木 刺青している人は本当にいっぱいいた。だけど、実際にその場でヤクザと確認できたのは、一人だけ。でも帰ってきてから調べたら、わんさかヤクザがいたね。というのも、帰ってきてから仲良くなった人と連絡を取り合うと、「鈴木さん、実は......」と教えてくれたり。あと、自分がヤクザ経由で入ってきたと知らない人もいたしね。 ――どういうことですか? 鈴木 実際に現場で仲良くなった人がいたんだけど、戻ってきてから知り合いのヤクザから電話がかかってきて「鈴木さん、原発いたらしいね。うちの○○から聞いたよ」と言われたの。要はその作業員は、「人集めろっていうから来ました」といった感じで、集められた一人だったわけ。だから自分がヤクザ経由で原発に入っているなんて気づいていないんですよ。 ――地方ならではの人間関係を使っているんですね。本書の中でもう一つ衝撃的だったのは、15年前の話とはいえ、フクイチの作業員にヤクザの覚せい剤中毒者がいて、注射器が落ちていたという証言です。 鈴木 実は、今回のフクイチ事故後にも作業員が覚せい剤で逮捕されているんだよ。地元メディアも一切報道していないけど。いわゆる"工場労働"に覚せい剤というのはものすごく相性がいいわけ。単純作業だし。 ――本書にも書かれていましたね。シャブを打てば時間が経つのも早いし、「掃除してろ」と命令すれば一心不乱に掃除してくれるから、使う側もシャブ中をコントロールしやすいと。話は逸れますが、震災後1~2カ月の間で、いわゆるドヤ街から人がいなくなり、原発に連れて行かれたというウワサがネット上を飛び交ってましたが。 鈴木 本当に? それ原発じゃなくて、建築なんじゃないの? オレもゴールデンウィークの前ぐらいにドヤ街に行ったけど、そんなことなかった気がするけど。原発関連の求人票はあったけどね。実際に行った人もいたと思うけど......。でもまだそのころは緊急対応で、スキルのない人はまだ要らなかったはず。ガレキの撤去とかはやってたけど、そのほかの仕事は本当のプロにしかできないから、人手が必要になるのはこれからだと思うけどなぁ。オレも原発に入った時に、西成とか山谷から来ている人を探そうと思ったんだけど、確認できなかった。 ――「被災地での求人」とあったのに、実は原発での作業だったという騒動がありました(※編註1)が、これは稀なケースだったんですか? 鈴木 その報道が出てからすごく厳しくなって、今はもう"騙し"はなくなったよね。ドヤ街に、ちゃんと「原発内のお仕事です」という求人票はあったけど。 (後編につづく/取材・文=小島かほり) ※編註1:大阪・西成地区の男性労働者が「宮城県で運転手」という求人に応募したところ、実際は福島第一原発付近でガレキの撤去作業をさせられたことが発覚。 ●すずき・ともひこ 1966年、北海道生まれ。ジャーナリスト、写真家。広告カメラマンを経てヤクザ専門誌「実話時代」編集部に入社。「実話時代BULL」編集長を務めフリーに。以降、暴力団専門ジャーナリストとして取材活動を続けている。近著に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)、『ヤクザ1000人に会いました!』(宝島社)など。東日本大震災後の7月から約2カ月間にわたって事故を起こした福島第一原発に作業員として潜入。取材をまとめた『ヤクザと原発~福島第一潜入記~』(文藝春秋)を上梓。
ヤクザと原発 福島第一潜入記 闇深し。 amazon_associate_logo.jpg
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河童から"オッケルイペ"まで 古今東西の妖怪が大集合『怪しくゆかいな妖怪穴』

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『怪しくゆかいな妖怪穴』
(毎日新聞社)
「高知県香南市の山の中には、『笑い男』という妖怪がおったそうな。ある役人が山へ狩りに行こうとすると、村人に月の1日、9日、17日は、笑い男に会ってしまうから、やめたほうがいいと言われた。けれど、役人は村人の言うことも聞かず、家来をつれて山の中へ入ってしまった。すると、どこからか笑い声が聞こえて、役人を指さしてゲラゲラと笑っている。しかも、その声はだんだんと高くなり、まわりの石や木が笑っているように見えはじめ、そのうち風や川の音までもが大笑いしているようにひびいた。役人たちは大あわてで逃げ出したが、その笑い声は耳にこびりついて離れず、死ぬまでずっとその笑い声に悩まされたのだった」(本文要約)  これは、『怪しくゆかいな妖怪穴』(毎日新聞社)中で紹介されている「笑い男」のエピソード。  本書は、毎日新聞社が発行する「毎日小学生新聞」にて連載中の、「妖怪穴」の記事をまとめた妖怪図鑑のような本で、妖怪100種類を紹介している。  有名どころの河童、座敷わらし、鬼、のっぺら坊、ろくろ首などに始まり、沖縄に現れるイタズラ好きの"キジムナー"や、北海道のアイヌに伝わる、強烈なオナラをして人間にかがせるだけの"オッケルイペ"など、個性豊かな妖怪まであれこれ登場している。   また、同じ名前の妖怪でも古今東西各地で特色があり、性格や行動がまったく違うこともある。例えば、人間とは思えないほど美しい"山姫"。主に東北から九州地方の深い山に現れるとされており、岡山県では気に入った人に宝物をプレゼントしてくれるいい妖怪だが、鹿児島県垂水市では、吸血鬼のように生き血を吸う、と恐れられている。  節分や大みそかなど、特別な夜になると現れる"夜行さん"は、目が1つしかない鬼のような妖怪。馬に乗ってどこからともなく現れる、秋田県のナマハゲがその代表例だ。なぜか、夕食のことを話題にしている家があると、窓からけむくじゃらの手を差し込んだり、よくわからない奇妙なものを投げ込んだりしてくる。  けれど、徳島県三好市では、お願いをすれば何でもくれる鬼の王様のような存在で、香川県吉野川の下流から香川県東部にかけては、首のない馬のことをそう呼んでいるのだという。  本書には、こうした妖怪紹介のほかに、「妖怪とは何か」「妖怪の分類」「妖怪の歴史」など、妖怪の秘密を解く「妖怪のひみつ」コラムに加え、"お化けは夏だけ出るの?"など、妖怪に関する素朴な疑問に答える「妖怪なんでも質問箱」コーナーも掲載されていて、読み応えもバッチリ。子どもでなくても十分楽しめる。  妖怪の研究は、一般の人たちが伝えてきた風習や信仰、民話などから、先祖の生活や文化の歴史を勉強する民俗学のひとつ。日本人がかつて何をおそれ、どんなことに注意し、生活してきたのかが見えてくるはずだ。 (文=上浦未来) ●村上健司(むらかみ・けんじ) 1968年、東京生まれ。フリーライター。妖怪探訪家、全日本妖怪推進委員会・世話役。幼いころから妖怪に興味を持ち、全国の妖怪伝承地を取材。主な著書は、『京都妖怪紀行』『日本妖怪散歩』(角川書店)『日本全国妖怪スポット(全四巻)』(汐文社)『手わざの記憶』(中央公論新社)のほか、水木しげる氏との共著『日本妖怪大事典』(角川書店)、京極夏彦・多田克己との共著『妖怪馬鹿』(新潮社)などがある。 ●宇田川新聞(うだがわ・しんぶん) 1971年、東京生まれ。木版画などの作品で、雑誌の挿絵や書籍の装画を多く手がける。主な著書に『ニンニクの絵本』(共著、農山漁村文化協会)『木版画手習帖』(池田書店)がある。 ●天野行雄(あまの・ゆきお) 1970年、岡山生まれ。妖怪造形家。アートユニット「日本物怪観光」を主宰。イラストや立体作品など日本各地の妖怪を紹介している。『人工憑霊蠱猫』(講談社)文庫シリーズの装画を担当。
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【関連記事】 ・淡々とした人の狂気こそおぞましい 平山夢明監修『人間崩壊』頭が痺れて動けない! 真藤順丈が作る新しいバイブル『バイブルDX』妖怪並みの衝撃! 変態おじさんとの思い出がフラッシュバックする『バカ男子』 
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河童から"オッケルイペ"まで 古今東西の妖怪が大集合『怪しくゆかいな妖怪穴』

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『怪しくゆかいな妖怪穴』
(毎日新聞社)
「高知県香南市の山の中には、『笑い男』という妖怪がおったそうな。ある役人が山へ狩りに行こうとすると、村人に月の1日、9日、17日は、笑い男に会ってしまうから、やめたほうがいいと言われた。けれど、役人は村人の言うことも聞かず、家来をつれて山の中へ入ってしまった。すると、どこからか笑い声が聞こえて、役人を指さしてゲラゲラと笑っている。しかも、その声はだんだんと高くなり、まわりの石や木が笑っているように見えはじめ、そのうち風や川の音までもが大笑いしているようにひびいた。役人たちは大あわてで逃げ出したが、その笑い声は耳にこびりついて離れず、死ぬまでずっとその笑い声に悩まされたのだった」(本文要約)  これは、『怪しくゆかいな妖怪穴』(毎日新聞社)中で紹介されている「笑い男」のエピソード。  本書は、毎日新聞社が発行する「毎日小学生新聞」にて連載中の、「妖怪穴」の記事をまとめた妖怪図鑑のような本で、妖怪100種類を紹介している。  有名どころの河童、座敷わらし、鬼、のっぺら坊、ろくろ首などに始まり、沖縄に現れるイタズラ好きの"キジムナー"や、北海道のアイヌに伝わる、強烈なオナラをして人間にかがせるだけの"オッケルイペ"など、個性豊かな妖怪まであれこれ登場している。   また、同じ名前の妖怪でも古今東西各地で特色があり、性格や行動がまったく違うこともある。例えば、人間とは思えないほど美しい"山姫"。主に東北から九州地方の深い山に現れるとされており、岡山県では気に入った人に宝物をプレゼントしてくれるいい妖怪だが、鹿児島県垂水市では、吸血鬼のように生き血を吸う、と恐れられている。  節分や大みそかなど、特別な夜になると現れる"夜行さん"は、目が1つしかない鬼のような妖怪。馬に乗ってどこからともなく現れる、秋田県のナマハゲがその代表例だ。なぜか、夕食のことを話題にしている家があると、窓からけむくじゃらの手を差し込んだり、よくわからない奇妙なものを投げ込んだりしてくる。  けれど、徳島県三好市では、お願いをすれば何でもくれる鬼の王様のような存在で、香川県吉野川の下流から香川県東部にかけては、首のない馬のことをそう呼んでいるのだという。  本書には、こうした妖怪紹介のほかに、「妖怪とは何か」「妖怪の分類」「妖怪の歴史」など、妖怪の秘密を解く「妖怪のひみつ」コラムに加え、"お化けは夏だけ出るの?"など、妖怪に関する素朴な疑問に答える「妖怪なんでも質問箱」コーナーも掲載されていて、読み応えもバッチリ。子どもでなくても十分楽しめる。  妖怪の研究は、一般の人たちが伝えてきた風習や信仰、民話などから、先祖の生活や文化の歴史を勉強する民俗学のひとつ。日本人がかつて何をおそれ、どんなことに注意し、生活してきたのかが見えてくるはずだ。 (文=上浦未来) ●村上健司(むらかみ・けんじ) 1968年、東京生まれ。フリーライター。妖怪探訪家、全日本妖怪推進委員会・世話役。幼いころから妖怪に興味を持ち、全国の妖怪伝承地を取材。主な著書は、『京都妖怪紀行』『日本妖怪散歩』(角川書店)『日本全国妖怪スポット(全四巻)』(汐文社)『手わざの記憶』(中央公論新社)のほか、水木しげる氏との共著『日本妖怪大事典』(角川書店)、京極夏彦・多田克己との共著『妖怪馬鹿』(新潮社)などがある。 ●宇田川新聞(うだがわ・しんぶん) 1971年、東京生まれ。木版画などの作品で、雑誌の挿絵や書籍の装画を多く手がける。主な著書に『ニンニクの絵本』(共著、農山漁村文化協会)『木版画手習帖』(池田書店)がある。 ●天野行雄(あまの・ゆきお) 1970年、岡山生まれ。妖怪造形家。アートユニット「日本物怪観光」を主宰。イラストや立体作品など日本各地の妖怪を紹介している。『人工憑霊蠱猫』(講談社)文庫シリーズの装画を担当。
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フィリピン貧困層に助けられながら生きる"困窮邦人"『日本を捨てた男たち』

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『日本を捨てた男たち』(集英社)
 「フィリピンへ移住」と聞くと、どんなイメージをするだろうか。  年中温暖な気候の南国で、会社をリタイアした老夫婦が物価の安さを利用し、大きな家を買ったり借りたりして悠々自適に暮らす......。  個人的な妄想をいえば、こんな感じだ。  しかし、本書『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』(集英社)には、そんな夢のような世界で生活をする人々は登場しない。異国の地でホームレス状態で暮らす、"困窮邦人"と呼ばれる日本人が主人公なのだ。彼らは無一文で、現地の人にお世話になりながらその日暮らしを続けている。  そもそも「困窮邦人」とは、海外で経済的に困窮状態に陥っている在留邦人のこと。2010年に在外公館に駆け込んで援護を求めた邦人数は、全世界で768名にも上る。  中でもフィリピンの困窮邦人数は332名ともっとも多く、2位のタイ92名を大きく引き離す。また、2001年から10年連続最多で、他の国を寄せ付けない重症さだ。  著者の水谷竹秀氏は、04年からフィリピンの「日刊マニラ新聞社」で働く記者。取材生活をする中で彼らに興味を持ち、追いかけ始める。 「異国の地でこんな惨めな状態になって、一体どんな思いで日々生きているのか」  当初は、そんな短絡的な発想があったものの、何かそれだけではない、惹き付けられるものがあった。  本書には、水谷氏が出会った5人の男性困窮邦人が登場する。  日本のフィリピンパブで出会った女性を追いかけてフィリピンに来たものの、お金を使い果たしてしまった48歳。知人に紹介されたフィリピン人女性との婚約が偽装結婚だった58歳。暴力団に500万円以上の借金をつくり、それから逃れるために国外逃亡してきた37歳......。 「助けて下さい、お願いします」 「日本の弁当を届けて下さい」 「空腹で意識が飛びそうになります」  1年以上にもおよぶ取材中、何度となく繰り返されたのは、援助の懇願、甘えにも似た要求。そして唐突に浴びせられる罵倒。彼らへの同情心も次第に薄れ、彼らと対等に向き合っていない自分自身との葛藤もあった。  水谷氏は、本人だけでなく、周辺の人や日本で暮らす彼らの両親にまで会いに行く。その中に、困窮邦人のひとりが「神様みたいな人」と慕う、フィリピンのお母さんのような存在の人物がいる。彼は毎日、彼女の店の仕事を手伝わせてもらい、その代わりに、多少の賃金と、朝昼のごはんを分けてもらっていた。  小太りで目が垂れ、いかにも人のよさそうなお母さんは、こう話す。 「私たちのような貧しい人は、自分たちがつらい経験をしたら、同じ経験をさせたくないと思います。金持ちには、貧しい人の状況を理解することはできない。(中略)だから、彼にはテーブルにある物は食べてもらっていいし、石けんやシャンプー、たばこぐらいはあげてもいい」(本文より)  陽気で人懐っこいフィリピン人は、困窮邦人にも優しい。たとえ彼ら自身が貧しくとも、困っている人がいれば、まっすぐな優しさを与えている。  モノは豊富だけれど、どこか閉塞感があり、助けを求めづらい日本。お金もモノもないが、笑いながら手を差し伸べてくれる人がいるフィリピン。  私たちが、求める豊かさの先は......と、考えさせられる1冊だ。 (文=上浦未来) ●みずたに・たけひで 1975年三重県桑名市生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業。ウェディング写真専門のカメラマンを経て、2004年からフィリピンの日本語新聞「日刊マニラ新聞社」の記者を務めている。主に殺人事件や逃亡犯逮捕などの邦人事件、邦人社会に関する問題などの社会部ネタを担当している。2011年、本作品で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。
日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」 ある意味、しあわせ? amazon_associate_logo.jpg
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何だか妙!? 毎日同じ行動をとる不思議な生物の研究報告書『サラリーマン生態図鑑』

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『サラリーマンの生態図鑑』(大和書房)
 日本の労働人口のほとんどを占め、全国各地どこでも出没する、サラリーマン。でも、ちょっと視点を変えてみたら......。 ・毎日同じような服を着て、ネクタイを締めている。 ・名刺交換やあいさつの仕方など「暗黙の了解」が存在している。 ・報連相(ホウ・レン・ソウ)など、謎の言葉を使う。  さらに、「電話してください」と言いながら、親指と小指を立てて受話器のカタチを作って耳に当てるポーズをとる。人の前を通るときは手刀を作って頭を下げて通り抜けようとする。電話をしながらお辞儀するほか、やたらとジェスチャーで物事を伝えたがる。  なんだか妙じゃないか。そんな彼らを、謎に満ちた新種の生物"サラリーマン"として研究した報告書。それが『サラリーマンの生態図鑑』(大和書房)だ。  本書では、小学2年生のタカシ君、サラリーマン研究をライフワークにする博士が登場し、なぜか毎日同じような行動をとる不思議な生物"サラリーマン"の日常を朝から晩まで、徹夜に時間外、休日まで逐一追っている。  内容は、「基礎編」「仕事編」「掟とルール編」「時間外編」の4項目。例えば「基礎編」では、「外見の特徴」「カイシャへの集合」「群れのヒエラルキー」「裏ボスの見分け方」「カイシャを出る」など、会社勤めをするにあたっての基本的な行動などを紹介。「仕事編」では、内勤と外回りの違い、根回しの特徴などをまとめている。  そして「掟とルール編」では、「基本の謝罪」「高度な謝罪」「サラリーマンの終了」「サラリーマンの強制終了」ほか、非情な内容を伝えている。なお、本書によれば、リストラとは「愛嬌のあるリスのような親しみやすさで近づき、距離を詰めた瞬間に正体を現したトラが一気に息の根を止める。そんな例え話で語られたことが始まりである」らしい。  これらに加え、「サラリーマンの習性 これだけは覚えておきたい四十八手」という特別コーナーがある。そこには、電話で最敬礼、ネクタイハチマキ、支払い譲り、手のひら返しなどが、図解的な写真を使い、見事なまでに無駄にしっかりと紹介されている。  また本書は、全体を通して、写真のクオリティーとそれに付随する説明書きのレベルが抜群に高い。サボりの温床「キッサ・テン」、パソコンで顔を隠しいないふりをする、遅刻決定の朝ほか、ツボにハマると抜け出せない箇所があちこちに散りばめられているので、小さな記事も見逃せない。  ふざけているように見えるこの本だが、それは1つ1つの記事がちゃんとサラリーマン生活の深い部分を押さえているからこそ。......たぶん。あいさつの角度、トイレ内でのボスの見分け方など、意外とちゃんと勉強になる内容も多いので、これから社会人になるフレッシュマンたちにとっては、この本1冊で社会人のマナー本としての利用価値がある(?)かもしれない。  これを読めば、サラリーマンがいかに不思議で、人間的で、魅力的な生き物かが分かるはず。新たな見方で、そっと身近なサラリーマンを観察してみてみよう。 (文=上浦未来) ●アコナイトレコード(あこないとれこーど) どうでもいいことや無駄なことのなかに面白さを追求する謎の企画集団。「まさか? バカげている!」と思われることを実行するのがモットーである。著者『困ったときのベタ辞典』(大和書房)が話題に。 公式サイト <http://www.aconiterecord.com/> ●鵜川太郎(うがわ・たろう) 1976年福岡県生まれ。アコナイトレコード代表。株式会社オルトプラス取締役COO、株式会社コムニコ社外取締役。開発したアプリ「ダービーズキングの伝説」がGREE Platform Award 2010優秀賞を受賞。Spapp! にて「30秒でわかる。ソーシャルアプリの裏×表」を好評連載中。 ●高橋毅(たかはし・たけし) 1972年東京都生まれ。プランナー、その他いろいろ。新聞社系列会社、広告制作会社勤務を経てフリーランス。屋号はTRAIN(トレイン)。2011年アコナイトレコード正式加入。 FC東京サポーター。ブラジリアン柔術(永遠の)白帯。
サラリーマン生態図鑑 謎多き生き物。 amazon_associate_logo.jpg
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注目の女流ノンフィクション作家が描く、"食"を通したドキュメンタリー『食べる。』

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『食べる。』(集英社)
 第1話「インジェラ」エチオピア、第2話「サンボル」スリランカ、第3話「水」スーダン――。本書の目次を開いてみると、あまりなじみのない国名と料理の名前が並んでいる。  これだけを見ると、ひょっとしたら一瞬、何かゲテモノ料理の体験本かと思われるかもしれない。けれど、この本はそういった類の本ではない。  『食べる。』(集英社)は、著書である中村安希氏がじっくりと現地の人と向き合い、"食べる"ということを通じて現地の人たちと過ごした日常の一片を伝える、全15編のドキュメンタリーだ。  中村氏は26歳からの2年間、ユーラシア・アフリカ大陸の47カ国をめぐる旅に出た。その体験をもとに書いた『インパラの朝』(集英社)では、第7回開高健ノンフィクション大賞を受賞。本書は、同賞受賞後の第1作として、集英社の読書情報誌「青春と読書」(2010年6月~2011年8月号)に連載されたものを再構成してまとめたもの。 「私は、自宅のテレビから得られる膨大な知識よりも、旅で得られるわずかな手触りにこそ真実があると考えています」  本文にそう書かれている通り、そこで暮らす人々や旅行者と食卓を囲み、じっくりと料理を味わう様子や料理風景、そして出会った人との会話などがごく丁寧に描かれている。  例えば、スリランカの民家でおばあちゃんが教えてくれた「緑のサンバル」。 「庭で摘んだばかりの、あの名前の分からないつるについた緑色の葉っぱを細かく刻み、器に入れて調味料を足した。その所作はいつも一定で、迷いも焦りもなかった。(中略) さっぱりとしたライムの香り、サクサクした食感、青唐辛子のまっすぐな刺激、その絶妙なバランスが爽やかで、食べているといつも清々しい気持ちになった」(本文より)  ネパールでは、一年を通じて最大の行事「ダサイン祭」に参加。ヤギの頭部と胴体を真っ二つに切り落とす"首切りの儀式"で解体されたヤギのレバ刺し(のようなもの)、臓物の混合カレー、そして皮膚のスパイス炒めが振る舞われた。 「私は噛みつく角度を何度も変え、柔らかそうな皮を選び、前歯や奥歯を使い分けて再挑戦した。無駄だった。一家のおばあちゃんが不思議そうな顔でこちらを見ながら、皮をガリリと噛み切った」(本文より)  そのほか、滞在中は好きになれなかった、通称"ゲロ雑巾"と呼ばれるクレープのようなエチオピアの主食「インジェラ」が無性に食べたくなって再びエチオピアを訪れるエピソードや、ルーマニア人の若い女の子が作ってくれた日本のtamagoyakiのエピソードなどが綴られている。  旅をしていれば必ず食事をする。たとえ一人旅をしていても、その横には不思議と誰かが側にいたりするものだ。    ここに書かれている内容に、衝撃的な話や悲惨な体験、お腹を抱えて笑うようなエピソードがあるわけではない。ただ、一緒に食事をした人たちがどんな人であったか、どんな考え方をしていたのかが、自分の耳で聞いたかのようにしっかりと記憶に残る。   この本を読み終えたとき、私はすっかり中村氏の横で現地の人と食卓を囲み、ごはんを食べ、お酒を飲み、一緒に過ごしたかのような錯覚に陥っていた。そして、ふと思う。彼らは、今頃どうしているのだろうかと。 (文=上浦未来) ●なかむら・あき ノンフィクション作家。1979年京都府生まれ、三重県育ち。2003年カルフォルニア大学アーバイン校、舞台芸術学部卒業。日本とアメリカで3年間の社会人生活をおくる。著書に、『インパラの朝』(集英社)、『Beフラット』(亜紀書房)がある。
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マンガ学部よりも就職はラク? 全国初のポピュラーカルチャー学部は成功するのか?

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京都精華大学公式HPより
 昨年12月、全国で唯一マンガ学部を持つ京都精華大学が、今度はポピュラーカルチャー学部を新設することを発表し注目を集めている。この学部には、音楽コースとファッションコースの2つのコースが設置される予定だ。  既に開設されている特設サイトでは、想定される就職先として音楽コースでは「ミュージシャン」「ソングライター」「DJ」「サウンドエンジニア」「音楽サイトや雑誌の編集者・ライター」「音楽プロデューサー」を、ファッションコースでは、「ファッションデザイナー」「バイヤー」「アパレルブランドプロデューサー」「ショップオーナー」「ファッション雑誌やウェブサイトのデザイナー・ライター・編集者」などを挙げている。加えてファッションコースでは「批評眼と伝える技術をもった批評家や編集者という、ファッション文化の担い手も育てる」とも記している。  同大学のマンガ学部は定員200名あまりだが、そのうちデビューしたり、マンガ・アニメ業界に就職できるのは、ごく一握りに過ぎないのは既に知られている通り。  華やかな職業を羅列したところで「そんなに、うまくいくものか?」と疑ってしまう。  ところが、大学事情に詳しい人々に話を聞いてみたところ「これはなかなか手堅い経営戦略だ」という称賛の声ばかり。誰もが口をそろえるのは、学費を払うであろう親に対する訴求力の高さだ。 「才能の有無にかかわらず、音楽系の専門学校を志望する高校生は意外に多いのです。しかし、親は"学費を出すのであれば四年制大学に進学してほしい"と考えるのが当たり前です。このコースは、両者のニーズをうまく一致させているといえるでしょう」(都内大学職員)  つまり、大学での授業内容や卒業後の進路は、「人並みに大学に行ってくれるんなら......」と、親の心をくすぐることができるものといえる。  また、ファッションコースも、手堅い就職を期待させるコースだと分析される。 「全員がファッションデザイナーになるのはとても無理でしょう。でも、ショップの販売員であれば、さほど困難とは感じないハズです。おそらく、販売員になりたいギャル系の女のコあたりを入学志望者に想定しているのではないでしょうか」(同大学職員)  さらに、音楽とファッション、どちらのコースもマンガ学部より「就職」あるいは「デビュー」させるのは簡単にできるのではないかという指摘も。 「マンガ家になるには、最低でも商業誌に16ページくらいの作品をひとつは掲載しなくてはならない。そのハードルは極めて高いといえます。けれど、音楽ライターやファッションライターならどうでしょう? ページの埋め草的な文章を400字でも書けば、デビューしたとしてカウントできますからね」(ファッション誌編集者)  どうも景気のよい話だけれど、やはり「そんなにうまくいくワケがない」という意見もある。ジャンルによって違いはあるものの、ファッションの販売員の出世コースは20歳で店長、25歳を過ぎたあたりで管理職というのが当たり前の世界だ。出世する人材の大半は、高校を中退して17歳くらいで就職した人々だとされる。つまり、大学を出てからでは感性を磨く時間もなく、既に手遅れなわけだ。  また、特設サイトでは「楽器が弾けなくても、服づくりの経験がなくても。音楽とファッションにひたりきれる場所がここにある」という宣伝文が掲載されているのだが、ここには誰もが苦笑する。 「DTMだったら、楽器は弾けなくても作曲できるかもしれませんが、それで音楽業界に就職できるかといえば......」(音楽業界関係者)  開設後、一体どんな学生が集まるのかが注目される。 (文=三途川昇天)
ライターになるための練習問題100 名乗ったモン勝ち。 amazon_associate_logo.jpg
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