50年前のガイドブック掲載店の今を追う!『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』

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『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』
(アスペクト)
 今からさかのぼること、約50年。日本では、1963(昭和38)年に『鉄腕アトム』のアニメ放送が始まり、坂本九が歌う「見上げてごらん夜の星を」が大ヒット。1964年には東京オリンピックが開催され、日本中が沸いた。一方、アメリカでは、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されるという悲劇が起こった時代でもある。  今回紹介する『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』(アスペクト)は、そんな激動の時代に発売された飲食店のガイドブックに掲載された店が、今はどうなっているのかを追った、新たな試みのガイドブックのような、エッセイのような1冊だ。  この企画は、もともと@niftyの娯楽サイト「デイリーポータルZ」(http://portal.nifty.com/)内にアップされた記事がきっかけで書籍化されたもの。「デイリーポータルZ」では、実際に行ってみたらお店が車庫や出会い系カフェになっていたなど、現在は営業していなかったバージョンの報告もあるが、本書では今も変わらず営業しているお店20軒を掲載。内容もボリュームアップされている。  それにしても、50年という年月はやはり恐ろしく長い。  著者で、フリーライターの地主恵亮氏がガイドブックを参考に訪れてみると、当時の地図の目印がほぼ何も残っていなかったり、「THE・昭和」だった店の外観が超モダンなビルに変わっていたり、当時250円だったどぜう(どじょう)鍋が1,500円に大幅値上げされていたりと、さまざまな場面で時代の移り変わりが感じられる。  また、かつてのガイドブックの内容にも歴史が感じられる。例えば、日本初の本格インド料理店のページでは、"インドカレー"という料理の解説にページの大半が費やされていたり、沖縄料理店に関しても、当時は"ミミガー"の存在が一般的にはあまり知られていなかったようで、「豚の耳をさしみ風に仕立てたみみがあという食べ物。80円」と記されているなど、とても興味深い。  そして、一番気になるのはやっぱりそのお味。50年以上も続いているだけあって、実際どれも口の中でとろけていくほどおいしかったようで、地主氏も大満足。人はおいしい物を食べると本当に幸せな気分になれるんだな~ということが、文章からひしひしと伝わってくる。  本書のお店情報は50年前ではなくもちろん最新なので、ぜひとも長年愛され続けている老舗の味を求めて出かけてほしい。地主氏いわく名古屋、京都、大阪、神戸版などもやってみたいとのことなので、続編にも期待! (文=上浦未来)   ●じぬし・けいすけ フリーライター。1985年福岡生まれ。武蔵野美術大学卒業。思い立ったが吉日で行動している。ウェブサイト「デイリーポータルZ」にて、本書の元ネタである「50年前のガイドブックに載っている店巡り」のほか、「美味しすぎる立ち食いそば巡り」「弟の彼女と行く国内最大のケーキショー」「シャッター押してくださいとお願いされる方法」「サングラスを外してキャーキャー言われたい」「トイレが近くなる飲み物調べ」など多数の記事を執筆。
昔のグルメガイドで東京おのぼり観光 春になったら。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・全部タダ! 遊べる・学べる・癒やされる東京の0円スポット『FREE TOKYO』学生気分で訪れたい! 大学併設の博物館『TOKYO大学博物館ガイド』「なんでもない日が素晴らしい」都会の日常に溶け込む『東京空気公園』
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50年前のガイドブック掲載店の今を追う!『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』


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『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』
(アスペクト)
 今からさかのぼること、約50年。日本では、1963(昭和38)年に『鉄腕アトム』のアニメ放送が始まり、坂本九が歌う「見上げてごらん夜の星を」が大ヒット。1964年には東京オリンピックが開催され、日本中が沸いた。一方、アメリカでは、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されるという悲劇が起こった時代でもある。  今回紹介する『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』(アスペクト)は、そんな激動の時代に発売された飲食店のガイドブックに掲載された店が、今はどうなっているのかを追った、新たな試みのガイドブックのような、エッセイのような1冊だ。  この企画は、もともと@niftyの娯楽サイト「デイリーポータルZ」(http://portal.nifty.com/)内にアップされた記事がきっかけで書籍化されたもの。「デイリーポータルZ」では、実際に行ってみたらお店が車庫や出会い系カフェになっていたなど、現在は営業していなかったバージョンの報告もあるが、本書では今も変わらず営業しているお店20軒を掲載。内容もボリュームアップされている。  それにしても、50年という年月はやはり恐ろしく長い。  著者で、フリーライターの地主恵亮氏がガイドブックを参考に訪れてみると、当時の地図の目印がほぼ何も残っていなかったり、「THE・昭和」だった店の外観が超モダンなビルに変わっていたり、当時250円だったどぜう(どじょう)鍋が1,500円に大幅値上げされていたりと、さまざまな場面で時代の移り変わりが感じられる。  また、かつてのガイドブックの内容にも歴史が感じられる。例えば、日本初の本格インド料理店のページでは、"インドカレー"という料理の解説にページの大半が費やされていたり、沖縄料理店に関しても、当時は"ミミガー"の存在が一般的にはあまり知られていなかったようで、「豚の耳をさしみ風に仕立てたみみがあという食べ物。80円」と記されているなど、とても興味深い。  そして、一番気になるのはやっぱりそのお味。50年以上も続いているだけあって、実際どれも口の中でとろけていくほどおいしかったようで、地主氏も大満足。人はおいしい物を食べると本当に幸せな気分になれるんだな~ということが、文章からひしひしと伝わってくる。  本書のお店情報は50年前ではなくもちろん最新なので、ぜひとも長年愛され続けている老舗の味を求めて出かけてほしい。地主氏いわく名古屋、京都、大阪、神戸版などもやってみたいとのことなので、続編にも期待! (文=上浦未来)   ●じぬし・けいすけ フリーライター。1985年福岡生まれ。武蔵野美術大学卒業。思い立ったが吉日で行動している。ウェブサイト「デイリーポータルZ」にて、本書の元ネタである「50年前のガイドブックに載っている店巡り」のほか、「美味しすぎる立ち食いそば巡り」「弟の彼女と行く国内最大のケーキショー」「シャッター押してくださいとお願いされる方法」「サングラスを外してキャーキャー言われたい」「トイレが近くなる飲み物調べ」など多数の記事を執筆。
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アメコミDCコミックのキャラを完全網羅した大事典『THE DC COMICS ENCYCLOPEDIA』


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『THE DC COMICS ENCYCLOPEDIA』
(小学館集英社プロダクション)
 日本の三大出版社といえば、講談社、集英社、小学館であるが、アメコミにも勢力を二分する2つの出版社が存在する。「スパイダーマン」「X-MEN」などを擁するマーベル・コミック、そして「スーパーマン」「バットマン」など長く人気を誇っているDCコミックである。スーパーマンが誕生したのが1938年、バットマンが39年であるから、そのキャラクターたちがいかに長く愛され、幾人もの作家により語り継がれ、描かれてきたかがわかる。  1つの出版社の75年に及ぶ歴史がすべて収められた事典はほかに類を見ない。『THE DC COMICS ENCYCLOPEDIA』(小学館集英社プロダクション)は、DCコミックのキャラクターを一同に集結させた大事典だ。延べ1,000人以上のヒーロー&ヒロインがアルファベット順に収録され、オリジナルのイラストとともに、初登場年月日、本名、本拠地、身長体重、目・髪の色、特殊能力などデータが子細に記されている。本のサイズはなんと縦31cm、横26cm、厚さ3.3cmと超特大の豪華愛蔵版。装丁も超人のように硬く、力強く、ダイナミックだ。
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 「スーパーマン」「バットマン」のほかにも、宇宙の治安を守る銀河警察「グリーンランタン」、閃光よりも速く移動する「ザ・フラッシュ」など、人気を博したヒーローは沢山いる。だが、その中でも「キャプテン・マーベル」は特異でアンタッチャブルな存在だ。10代の少年ビリー・バットソンが「シャザム!」と唱えると、空を飛び、弾丸をも跳ね返す屈強な中年男性へと変身する。1940年、フォーセット・コミックによって生み出されたキャプテン・マーベルは当時、スーパーマンに比肩するほどの人気を誇っていた。しかし、スーパーマンに酷似した外見・設定のため、DCコミックから訴えられ、フォーセット社はコミック事業から撤退。のち、DC社がライセンスを取得し、キャプテン・マーベルはDC社へ"移籍"する形となった。しかし法廷闘争の間、マーベル・コミックが「キャプテン・マーベル」という同一名のヒーローを作ってしまったため、本家キャプテン・マーベルは商品としてキャプテン・マーベルを名乗ることができなくなってしまい、何ともわけのわからない存在となってしまった。この裁判は初のコミック著作権裁判として、コミック業界に大きな影響を与えている。
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 1930年代末に誕生したアメコミは今なお世界中で愛され、映画 『ダークナイト』『キック・アス』のように、新たな切り口で創り続けられている。日本のマンガに与えた影響も多大だ。アメコミヒーローは、時を超え、場所を変え、異なる作家によって紡がれてきた神話だといえる。『THE DC COMICS ENCYCLOPEDIA』のページを繰ればいつだって、マイナーヒーローも、グラマラスなヒロインも、クセのある敵役も、その活躍が目に浮かんでくるのである。 (文=平野遼)
The DC Comics Encyclopedia ちょっと高いけど! amazon_associate_logo.jpg
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創価学会をモデルにしたあの問題作が28年ぶりに電子書籍で復刊!

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最近では、Twitterでも人気を集める
志茂田氏。
 高度経済成長時代に躍進を続けるマンモス教団と、その教団に君臨するトップへの不信感で苦悩する青年信者――。1980年代に創価学会をモデルにして描かれた志茂田景樹の小説『折伏鬼(しゃくぶくき)』が、このほどiPhoneの電子ストアアプリ(グリフォン書店)から電子書籍として復刊される。自身もかつて創価学会員として活動した経験を持つ志茂田氏が、一人の架空の青年部員の視点を通して教団内部の矛盾を描いた問題作だ。初版から30年近くが経つ今も古書店では高値がつき、Amazonでもプレミア値がつくなど(2月16日現在の中古価格は約3,000円)注目度は依然として高い。復刊に向けた今の気持ちを志茂田氏に聞いた。 ――文春文庫で出たのが1984年ですから28年ぶりの復刊です。 志茂田景樹氏(以下、志茂田) 今も若い方が古書などで読んでくれているようですね。創価学会の歴史を全然知らなくて、これを読んで驚いたという声も聞きます。ネットで最初に評判になったのは10年くらい前なんですが、最近のネット上の書き込みを見ると「古書店で見つけたけど高すぎてムリ」とか「図書館でやっと見つけたので読みます」とか。そういう方々にも今回の電子書籍化で手軽に読んでいただけると思います。 ――志茂田さんご自身が、かつて熱心な学会員だったそうですが。 志茂田 入信が昭和38年で、40年には退転(脱会)したので、活動期間は3年弱でしょうか。当時の創価学会は、若者たちを吸引する一種の熱気のようなものがあって、僕自身も教団の中に埋没しながら、自分の夢をいっとき託したという時期があったわけです。辞めてからもしばらくそれを引きずっていたところがあり、区切りをつける意味もあってこの本を書いたというのもありますね。 ――今回電子化される『折伏鬼』は、二代会長の戸田城聖氏のいわゆる「折伏大行進」で大躍進した時代をモデルに描かれています。また、『新折伏鬼の野望』のほうは、三代会長の池田大作現名誉会長の若かりし頃の、いわば教団の成熟期が描かれています。今の世代は「学会イコール池田氏」というイメージが強いですので、『新――』のほうが読んでピンとくるかもしれません。 志茂田 そうかもしれませんね。二代戸田会長の時代は75万世帯の信者を獲得し、教団に一番熱気が渦巻いていた時期。当時の入信者は病気と貧乏人が多かった(笑)。つまり、現世利益を説いていたわけで、会員もある意味で純朴な動機で、正しいかどうかは別にして、一生懸命に家族や友人を折伏していた。三代の時代(池田大作氏の時代)になってからは政治に進出し、いろんな意味で教団が拡大していった。僕はちょうどその時期に青春期を迎えて、教団の青年部でかなりアクティブにやっていました。僕らの頃は親の代からの学会員という二世会員がずいぶんいたので、家族を折伏する必要もなかったんです。僕自身の親は信者ではなかったですけどね。 ――志茂田さんは友人をかたっぱしから折伏していたのですか。 志茂田 学会の王道とすればそうすべきところなんでしょうが、実は個人単位でもあまりしなかったです。個々でどうこうではなく、組織単位で自分の力を試してみたいという野心といいますか、純粋な信心とは別の次元でエネルギーを吐き出していた気がします。当時の青年部は軍隊的な組織で、そういう体制の中で、たとえば大学の文化祭とか体育祭の中で学生をマスで集めて教団に強引に導いていく。だから、選挙の時なんかはすごかった。今では考えられないことをしていましたよ。 ――たとえばどんなことをされていたのですか。 志茂田 対立候補の選挙ポスターが貼ってあると、僕ら行動隊が行って、針金を切って外して燃やしてしまうとかね。そんなのは日常茶飯事。完全な公職選挙法違反。あと、選挙に限らずだけど、街中で寺を見つけるとお坊さんに法論をふっかけたり。法論といっても今思うと勝手な理屈で(笑)。でも大勢の学会員で押しかけていくから、向こうも閉口してしまうんですよ。 ――『新折伏鬼の野望』には、まさにその時代が描かれています。主人公がそうした教団の空気に同化できず、冷静に自分を見つめ直し、同時に会長の人間性や教団の様々な矛盾に疑問を持ち始めていく。 志茂田 あの時代(編注:池田会長の時代)は国内で会員数が膨張しきってしまい、教団の拡大を海外へ求めた時代ですね。三代会長がやたら外国を訪問して、いろんな名誉賞をかきあつめていた頃でもある。「ナントカ名誉学長」とかいうのを何百と持っていますからね。そういう実績でノーベル平和賞をもらえると思っていたのかもしれませんが、ノーベル賞の選考委員の目もふし穴ではないですからね。 ――創価学会が大教団になってから数十年が経過してオウム真理教が出現しました。志茂田さんは『新折伏鬼の野望』のあとがきに「オウム裁判の決着により、オウムの再生が始まった」と書かれていますが、オウムの今後をどうご覧になりますか。 志茂田 結論から言うと、オウムはなくならないと思います。むしろ、これからさらに膨張するでしょうね。地下鉄サリン事件以降、オウムは「アレフ」と「ひかりの輪」に分かれますが、それでも消滅しないというのが宗教の強さであり、怖さなんです。過去の例を見ると、大正時代に神道系の「大本(おおもと)教」という新宗教があり、亀山城を買収したり大正日日新聞を傘下に収めたりと派手な動きをしていたんですが、大正10年に不敬罪と新聞紙法違反で摘発され、教団トップ以下幹部が逮捕され、神殿も破壊されました。一種の弾圧なんですが、そこから分派したのが「生長の家」と「世界救世教」。弾圧を経てさらに大きな教団が生まれているんです。 ――「大本教」はその後、昭和10年にも治安維持法で大弾圧をされています。 志茂田 それでも教団は三分裂して、今どれも活発に活動しています。創価学会も草創期に摘発されていて、初代会長や幹部が獄中に入っています。弾圧された教団ほどなぜか生き残り、潜伏期間を経た後に、ある時期がくると大きく復活しているんです。むしろそういうファナティックな力がないと教団は生き残っていけない。弾圧されて枝分かれして、時代の中で変質を続けながら、エネルギーを失わずにしぶとく生き残る。打たれ強いんです。だから10年、20年後は「ひかりの輪」も「アレフ」も、両方とも今より大きくなっていると思いますよ。今は数百人規模ですが、このまま消えることだけはないでしょうね。 (文=浮島さとし) ●グリフォン書店 <http://itunes.apple.com/jp/app/id429342467?mt=8&ls=1>
折伏鬼 (1980年) 紙派のあなたに。 amazon_associate_logo.jpg
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名品かハタマタ迷品か!? 前の持ち主の"痕跡"を探る『痕跡本のすすめ』

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『痕跡本のすすめ』(太田出版)
 古本屋でずっと読みたかった本を見つけ、喜んで中身を見るとガックリした、という経験はないだろうか。外見はそこそこキレイで値段も良心的なのに、何かをこぼしたシミがあったり、メモ書きがあったり。    しかし、世の中にはちょっと変わった趣向を持つ人もいるようで、前の持ち主が残していった書き込みや挟み込み、破れ、よごれ、ヤケといった"痕跡"にこそ魅力があると感じ、収集している人がいるという。その第一人者が、『痕跡本のすすめ』(太田出版)の著者であり、「古書 五っ葉文庫」店主の古沢和宏氏だ。  本書は、古沢氏が大学在学中から10年以上じっくりと時間をかけて収集してきた、この世に1点だけの名作(迷作?)を紹介する、世界初の痕跡本コレクション&楽しみ方入門本。  紹介されている60冊ほどの痕跡本はどれも持ち主の気配が濃厚で、何か迫りくるような熱気が込められた名作ばかり。そのトップを飾る1冊が、『まだらの卵』(ひばり書房)だ。  この本は、グチャグチャの死体やらいびつな生き物が出てくる、かなりグロテスクな作風のホラー漫画。この本の痕跡は、まるでこの作品を自分なりに精いっぱい読み解き、よりホラー感をアップさせようと試みたかのような無数の穴、穴、穴。  表紙の中心部から広範囲にわたって針でメッタ刺しにされ、深いところでは20ページ目にまで達する。針で刺された部分がブツブツと浮き出て、しかもそこが長い年月の経過よってできたシミで黄色く変色し、まるで鳥肌のよう。コ、コワイ......。   自分がゲイだという事実に悩んでいる男性らしき人物が持ち主だったベンクト・ダニエルソンの『愛の島々』(新潮社)では、「同性愛」と「割礼」という単語にのみ特化して丹念に赤線が引かれていたり、がむしゃらな勉強家が持ち主だったと見られる『空想から科学へ』(岩波文庫)には、「空想から科学への社会主義の発展」という章にだけ、余白を埋めつくすほどの注釈と、何色ものボールペンを駆使した書き込みがある痕跡本なども。  また書き込み以外にも、安楽死に関する本、それも安楽死の是非を問うページに挟まっていた仏壇の写真や、孫から祖父へ送られた「この手がみはぜったいすてては、いけません しぬまですててはいけません」と記された無邪気な脅迫文入りの本などもあり、残された痕跡の種類は本によってさまざま。  近年、大手古本屋「ブック○フ」の影響で、新品同様のキレイな本が売買されることがごく当たり前になった。それゆえ、"誰かの持ち物だった"という事実をどこか忘れがちになってしまったような気がする。  大切に読み込まれた痕跡本は、ただキレイな古本とはまったく違う。痕跡本はとにかく読みづらい。けれど、そこには、前の持ち主と本との物語が刻まれ、誰も知らない秘密やミステリーが隠されている。その痕跡を探し出し、面白がり、価値があるかどうかを判断するのは、本を手に取った人次第。  本書で紹介されている、痕跡本をアナタはどう読み解く? (文=上浦未来) ●ふるさわ・かずひろ 1979年滋賀県生まれ、愛知県在住。「古書 五っ葉文庫」店主。大学在学中に古本の楽しさ、奥深さに目覚める。やがて、大切に読み込まれた本には持ち主との物語が刻まれていることに気づき、書き込みやよごれが残る本を「痕跡本」と名付け、収集を開始。現在、日本各地のブックフェア、古本市などで痕跡本の面白さを一般に広めるため、精力的にイベントを行っている。本書は初の単行本となる。
痕跡本のすすめ わかる人にはわかる。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・バナナは人類の救世主!? そのありえないポテンシャル『バナナの世界史』フロより迷路!? 異次元の世界が広がる迷路宿へ『四次元温泉日記』河童から"オッケルイペ"まで 古今東西の妖怪が大集合『怪しくゆかいな妖怪穴』
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名品かハタマタ迷品か!? 前の持ち主の"痕跡"を探る『痕跡本のすすめ』

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『痕跡本のすすめ』(太田出版)
 古本屋でずっと読みたかった本を見つけ、喜んで中身を見るとガックリした、という経験はないだろうか。外見はそこそこキレイで値段も良心的なのに、何かをこぼしたシミがあったり、メモ書きがあったり。    しかし、世の中にはちょっと変わった趣向を持つ人もいるようで、前の持ち主が残していった書き込みや挟み込み、破れ、よごれ、ヤケといった"痕跡"にこそ魅力があると感じ、収集している人がいるという。その第一人者が、『痕跡本のすすめ』(太田出版)の著者であり、「古書 五っ葉文庫」店主の古沢和宏氏だ。  本書は、古沢氏が大学在学中から10年以上じっくりと時間をかけて収集してきた、この世に1点だけの名作(迷作?)を紹介する、世界初の痕跡本コレクション&楽しみ方入門本。  紹介されている60冊ほどの痕跡本はどれも持ち主の気配が濃厚で、何か迫りくるような熱気が込められた名作ばかり。そのトップを飾る1冊が、『まだらの卵』(ひばり書房)だ。  この本は、グチャグチャの死体やらいびつな生き物が出てくる、かなりグロテスクな作風のホラー漫画。この本の痕跡は、まるでこの作品を自分なりに精いっぱい読み解き、よりホラー感をアップさせようと試みたかのような無数の穴、穴、穴。  表紙の中心部から広範囲にわたって針でメッタ刺しにされ、深いところでは20ページ目にまで達する。針で刺された部分がブツブツと浮き出て、しかもそこが長い年月の経過よってできたシミで黄色く変色し、まるで鳥肌のよう。コ、コワイ......。   自分がゲイだという事実に悩んでいる男性らしき人物が持ち主だったベンクト・ダニエルソンの『愛の島々』(新潮社)では、「同性愛」と「割礼」という単語にのみ特化して丹念に赤線が引かれていたり、がむしゃらな勉強家が持ち主だったと見られる『空想から科学へ』(岩波文庫)には、「空想から科学への社会主義の発展」という章にだけ、余白を埋めつくすほどの注釈と、何色ものボールペンを駆使した書き込みがある痕跡本なども。  また書き込み以外にも、安楽死に関する本、それも安楽死の是非を問うページに挟まっていた仏壇の写真や、孫から祖父へ送られた「この手がみはぜったいすてては、いけません しぬまですててはいけません」と記された無邪気な脅迫文入りの本などもあり、残された痕跡の種類は本によってさまざま。  近年、大手古本屋「ブック○フ」の影響で、新品同様のキレイな本が売買されることがごく当たり前になった。それゆえ、"誰かの持ち物だった"という事実をどこか忘れがちになってしまったような気がする。  大切に読み込まれた痕跡本は、ただキレイな古本とはまったく違う。痕跡本はとにかく読みづらい。けれど、そこには、前の持ち主と本との物語が刻まれ、誰も知らない秘密やミステリーが隠されている。その痕跡を探し出し、面白がり、価値があるかどうかを判断するのは、本を手に取った人次第。  本書で紹介されている、痕跡本をアナタはどう読み解く? (文=上浦未来) ●ふるさわ・かずひろ 1979年滋賀県生まれ、愛知県在住。「古書 五っ葉文庫」店主。大学在学中に古本の楽しさ、奥深さに目覚める。やがて、大切に読み込まれた本には持ち主との物語が刻まれていることに気づき、書き込みやよごれが残る本を「痕跡本」と名付け、収集を開始。現在、日本各地のブックフェア、古本市などで痕跡本の面白さを一般に広めるため、精力的にイベントを行っている。本書は初の単行本となる。
痕跡本のすすめ わかる人にはわかる。 amazon_associate_logo.jpg
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メディア最大のタブー「電通」は日本人を洗脳し続けた黒幕だった!?

IMG_0712.JPG  これまで自己啓発やコーチング関連の著作でヒットを飛ばしてきた脳機能学者・苫米地英人氏が、サイゾーから出版した新刊のテーマは、なんと「電通」。タイトルも『洗脳広告代理店 電通』と刺激的だ。本書の中で苫米地氏は、「電通こそ、日本人を洗脳し続けてきた黒幕である」と喝破する。脱洗脳の権威としても知られる同氏が、本書に込めたメッセージとは? ――苫米地さん、最新刊のタイトルは過激ですね。 苫米地 いいタイトルだよね。メディアタブーである電通の批判本を出版したサイゾーにも敬意を表したい。 ――電通さんにはお世話になっているので、これで広告売り上げが激減するかもしれません(苦笑)。 苫米地 その分、この本をしっかり売って、稼いで(笑)。 ――もちろん、そうしたいです。なので、ここでしっかり宣伝させていただきます。苫米地さんはかねてから、「テレビは権力者、利権者にとって都合のいい洗脳メディア」と主張されていますね。 苫米地 そこは、もはや説明不要だよね。在京テレビ局の莫大な利益と社員の高い給与を支えているのは、国に認可事業として保護され、テレビ事業が寡占化している点と、大企業によるスポンサード。まさに権力者と利権者に支えられているんだ。だから、彼らに都合のいい放送になるのは、火を見るより明らか。本書では「バイオパワーが働いている」と表現しているけど、「バイオパワー」というのは、監獄の中の囚人に「監視されている」というプレッシャーを与えておくと、実際に監視されているかどうかにかかわらず、模範的な行動をとることを指すんだ。テレビは特に、広告主を目を気にしたバイオパワーで動いているといっていい。以前、私も某テレビ番組にゲスト出演した時、電通についてしゃべったことがあるけど、同社にとって不都合な部分はすべてカットされてたよ(笑)。 ――そもそも、テレビは洗脳道具として優秀だと主張され続けていますね。 toma9431.jpg 苫米地 視覚情報で訴えかけるメディアだからね。人間は視覚情報に強い臨場感を覚える。臨場感とは、まさにそこに物理的に存在するかのように、自身が強く認識する感覚のことで、洗脳の定義のひとつは、ある人が持っている臨場感を、第三者が他の臨場感に書き換えてしまうことと言える。このあたりは『洗脳広告代理店』内で詳しく解説しているけど、テレビが放つ視覚情報というのは、視聴者に高い臨場感を与えるから、使い方によっては洗脳道具になり得るんだ。例えば、大衆的に人気のある政治家は、テレビの露出が多い者ばかりだよね。彼らは政治家個人の資質ではなく、テレビの露出量やそこから与えられるイメージによって、支えられている。これは、テレビの洗脳的機能が生み出した状況なんだ。だから、私は常々「選挙に出る人物は、過去3年間はテレビやラジオなどのメディアには一切出ていない者に限る」という法律を作るべきなんだと言っているわけ。有権者が、各政治家について能動的に情報を得て、判断して、投票先を決めるということこそ、民主主義の根源なんだから。 ――そんなテレビを支配しているのが、電通だということですね。 苫米地 そう。テレビ局を支えているのが広告収入で、その収入の窓口として、圧倒的なシェアを握っているのが電通。2位の広告代理店の倍以上のシェアというのは尋常ではないよね。テレビという社会的影響力が圧倒的に強いメディアを、一社が牛耳っているということを当たり前のように受け取っていてはいけないんだ。そのことによる弊害を検証する必要がある。ところが、新聞や雑誌といったほかのメディアも含めて、電通と取引のある企業はどこもそれをしない。私が『洗脳広告代理店』を通して一番言いたいのは、国民一人ひとりがそうした状況にまずは疑問を持って、ということ。 ――電通は、ある意図を持ってテレビをコントロールしているのですか? 苫米地 そう。一例として、『洗脳広告代理店』の中では、米国巨大金融資本の依頼を受け、「郵政民営化」の流れを作る上で電通が動いていたという説を紹介している。このことを指摘した政治評論家の森田実さんは、その後、テレビから干されてしまった。森田さんは、その裏では莫大な金が動いていた、とまで指摘しているんだ。実際、今から振り返ると、小泉政権が大勝した2005年の"郵政選挙"の時の日本の空気は異常だった。あれは、小泉さんのパーソナリティが突出していただけでなく、テレビを中心としたマスメディアが、郵政民営化を是とする空気を作り出していた。その証拠に、当時、自民党に投票した人に聞いてみるといいよ。「郵政民営化のメリットはなんですか?」って。ロジカルに答えられる人はほとんどいないはず。あの時は、多くの人が論理を抜きに郵政改革を支持してしまったんだ。テレビの洗脳的効果が発揮されたんだよ。 ――『洗脳広告代理店』では、米国と電通の関係にも踏み込んでいますね。 苫米地 推測を絡めてだけど、電通が郵政民営化を含め、なぜ米国の意向を汲んだ動きをするのかを、歴史的事実をもとに言及している。かなり大胆に踏み込んで書いたよ。そこはぜひ本書で確かめてほしい。ここまで書いたら、私は二度とテレビからお声はかからないかもね(笑)。 ――出版後の反響はどうですか? 苫米地 電通社員の知り合いも多いんだけど、この本を読んで、本質的な反論をしてくる人はいないよね。自分たちのしている仕事の不条理さは、当事者としてわかっているんだろう。と同時に、問題があるとわかっていても、彼らにはどうしようもないというあきらめもあるみたい。ただ、私は本書の中では、電通や広告業界、メディア業界、そしてそれに対峙する国民の今後のあるべき姿も提示している。権力者側にいるメディアを取り戻すために、ぜひ国民一人ひとりが考え、行動をするためのきっかけにしてほしいんだ。
洗脳広告代理店 電通 買ってね♪ amazon_associate_logo.jpg
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28歳・がん余命半年から生還 生きる勇気が湧く等身大の闘病記『命はそんなにやわじゃない』

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『命はそんなにやわじゃない』
(かんき出版)
 日本人の死因は依然としてがんが第1位にある。2005年に新たに診断されたがんは67万 6,075例、09年にがんで死亡した人は34万4,105例(独立行政法人国立がん研究センター調べ)であり、医療技術が進歩した現在も不治の病であることに相違ない。さらにがん患者は年々増加傾向にあり、若年化も進んでいるという。  20代後半~30代前半、筆者の周りでも幾人もの人ががんを患い、亡くなっている。がん患者の本音――心のうちとは一体どのようなものなのだろうか。『命はそんなにやわじゃやない』(かんき出版)は、命のマガジン「メッセンジャー」編集長で、シンガーソングライターの杉浦貴之氏が、自身の闘病体験を綴った自伝だ。杉浦氏は99年、28歳の時にがんを患った。余命半年と告げられた直後から、入院生活、退院してからのがん治療遍歴、仕事の悩み、"夢"を見つけるまでの心の動きを細やかに記しており、がんになるまでの前半生の回想や、自作の歌詞も交え、巷によくある"闘病もの"とは一線を画した内容となっている。また、各章末に「元気なるコツ」「元気になるのを遅らせたこと」が箇条書きでまとめてあり、わかりやすく要点を把握できる。  とはいえ、杉浦氏の闘病は決して順風満帆だったわけではない。腫瘍摘出後も、抗がん剤の副作用に苦しみ、ひどい腸閉塞にたびたび襲われ、わらにもすがる思いで、各地の医師や療養施設を訪ね歩き、マクロビオティックや瞑想、ヒーリングなど、手当たりしだい手をつけ、スピリチュアルにはまってスコットランドのパワースポットまで訪れたこともある。そんな中、元NHKのディレクターで、がん克服の講演会を開いている川竹文夫氏の「あなたは自分でがんを作った」という言葉を聞いて、杉浦氏は自身の心の中に深く潜っていくようになる。仕事も辞め、宮崎での一人暮らしやNPOの代表などを経て、がんで苦しむ人のための雑誌、命のマガジン「メッセンジャー」を創刊。さらに05年、病院のベッドで思い描いていた「ホノルルマラソン出場」という夢まで叶えてしまうから、そのヒューマンパワーたるや、すさまじいもの。 「『命はそんなにやわじゃない』命は儚く、儚く、脆い。しかし、命はしぶとく、強く、逞しい。どちらにも揺れる命だけど、ぼくはぼくの体験から、『命の可能性』を伝えていく。(中略)ぼくは命の使い道を見つけたのだ。がんに苦しみ、腸閉塞に5度も見舞われ、たくさんの挫折を味わいながらたどり着いたこの道こそ、自分が歩むべき道だった。そして振り返り、足跡を眺めると、何一つ無駄なことはなかったことに気づいた」(本文より) 「過去の出来事すべてが宝物」と杉浦氏は語っている。僕らは過去に対してこのように思えるだろうか。病床にあった人の言葉は率直で、真摯で、力強い。この本はがん闘病記であり、病を克服した青年の成長物語でもある。もし、身近に病で苦しんでいる人がいたら、この本を見舞いに携えてはいかがだろうか。僕らの千のなぐさめの言葉より、きっとその人の励みとなり、生きる勇気を与えてくれることだろう。 (文=平野遼) ●すぎうら・たかゆき 1971年生まれ。愛知県西尾市出身、岡崎市在住。命のマガジン「メッセンジャー」編集長、シンガーソングライター。 <http://www.taka-messenger.com>
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バナナは人類の救世主!? そのありえないポテンシャル『バナナの世界史』

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 今年も、東京マラソンではドール社がランナーに向けて数万本のバナナを無料配布する。バナナ=健康食というイメージは、すっかりお馴染みのものとなった。しかし、一方で、その安さから「バナナ=貧乏食」というイメージもぬぐいきれない。どこか滑稽で、安っぽいイメージが付きまとうこの果物。日本人にとって、バナナは身近すぎるあまり、不当に軽んじられているのではないだろうか。『バナナの世界史 歴史を変えた果物の数奇な運命』(太田出版)は、そんなバナナの既成概念を変える良書だ。本書を執筆したのはダン・コッペル。『ナショナルジオグラフィック』などにも寄稿するアメリカ人ジャーナリストだ。  本書が描くバナナの歴史を辿ると、そこに見えてくるのは、アメリカを中心とするグローバル化の歴史だ。熱帯地方からアメリカへのバナナの輸入が増大したのはおよそ150年前の南北戦争が行われていた時代。この当時、蒸気貨物船が普及してきたことによって、収穫からの賞味期限が短いバナナを、カリブ海の島々からアメリカまで輸送することができるようになった。その後、わずか数十年で、アメリカの食卓には欠かせない食べ物として君臨し、今でもその地位は揺らいでいない。  バナナをめぐっては、これまでにさまざまな争いが行われてきた。グローバリゼーションを押し付けられる立場となったエクアドルやグアテマラ、コロンビアといったバナナ生産国。「ドール」や「チキータ」などのバナナ企業の力はあまりに強く、時に法律や内戦にまでも干渉してくる。さらには、中南米に対する覇権を獲得したいという思惑を持つアメリカ政府の後ろ盾も獲得したバナナ企業は、税金も支払わずにプランテーションでの大規模バナナ栽培を行ってきた。しかも、多量の農薬を必要とするバナナ栽培農薬の労働環境は最悪極まりなく、農薬の影響によって肌が青く変色してしまったり、無精子症を患ってしまったりする労働者は後を絶たない。だが、彼らとしても報酬のいいバナナ農園の仕事は魅力的。命と賃金を天秤にかけ、労働者たちはバナナ農園で働いている。  素朴すぎる食べ物だからこそ、バナナには語るべき側面があまりにも多い。著者の探究心と溢れんばかりのバナナへの愛には、ただ頭が下がるばかりだ。では、なぜ、著者がバナナのためにここまで懸命になるのだろうか。それは、バナナはこれからの地球の命運を握っているからである。  昨年、地球上の人口は70億人を突破した。今後も人類は増加する一方で、2025年には80億、2040年には90億人に迫るという予測も出されている。増え続ける人類の空腹を満たすために、バナナに寄せられる期待は大きい。人口が爆発的な勢いで増加するアフリカやアジアなどの熱帯地域で生育し、栄養価もとても高い。「ウガンダが飢餓に苦しまずにすんでいるのは、バナナによるところが大きい」と言われるほど、バナナは熱帯地域にとって重要な食べ物なのである。  だが、そんな救世主を取り巻く状況は安寧ではない。一般的には知られていないが、「シガトカ病」「パナマ病」「BXW」といった疫病が世界的に流行しており、バナナは絶滅の危機を迎えている。この解決のためには、一刻も早い品種改良が求められるものの、種を付けないバナナの品種改良は容易ではない。この改良を一刻も早く実現するために、著者は病気に強い遺伝子組み換えバナナの必要性を主張するが、政府や消費者がそれを受け入れるには時間がかかるだろう。その間にも、世界中のバナナ農園では、病気に感染し立ち枯れしたバナナが処分されていく。  まるで、大河ドラマのような壮大な物語と、未知の可能性が詰まった果物。バナナは世界を救うのか、それとも世界からバナナは消えてしまうのか。マラソンやダイエットに役立つだけがバナナの本質ではない。バナナの行方は人類の行方も左右するのである。 (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●ダン・コッペル 自然、科学、アウトドアを専門とするジャーナリスト。「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」「ナショナルジオグラフィック」「ワイアード」などの雑誌に寄稿。ロサンゼルス在住。
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フロより迷路!? 異次元の世界が広がる迷路宿へ『四次元温泉日記』

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『四次元温泉日記』(筑摩書房)
 近年まれに見る大寒波が襲う日本列島。こんな季節、やっぱり行きたくなるのが温泉だ。 「ほぁ~~~」  冷え切った体を湯船に沈めた瞬間、思わず魂の抜けたような声が出てしまうのは私だけではないはず。わが国は温泉大国であり、全国各地に有名な温泉地がある。もちろん温泉ファンも多く、ガイドブックに始まり、愛好家たちによる温泉本は数知れず。けれど、今回紹介する『四次元温泉日記』(筑摩書房)は、今までの温泉本とはずいぶん違う。なぜなら著者の宮田珠己氏は、温泉にまったく興味がないからだ。 <私の見たところ、温泉は風呂であり、風呂は家にあり、その家風呂さえも入るのが面倒くさい。人は何を好き好んで風呂に入るためだけに遠くに出かけるのか、その意味がわからんと前々から不思議に思っていた>  こんな出だしで始まる本書だが、もう1点、他の温泉本と違う特徴がある。それは、"迷路"と温泉のコラボである。  というのも、宮田氏は迷路のように複雑化した旅館やへんな宿が大好きで、そういう"迷路宿"を探しては泊まり歩いている人物なのだ。  今回の温泉旅行は、おもに温泉通の知人2人と宮田氏の3人旅。三朝温泉(鳥取県)、湯の峰温泉(和歌山県)、四万温泉(群馬県)、微温湯温泉(福島県)、瀬見温泉(山形県)別府鉄輪温泉(大分県)など、東北から九州までを網羅。全国各地には"迷路宿ファン"の間でも有名な"迷路宿"というものがあるらしい。  そういう宿には本書の表紙写真のように、まっすぐに歩けないほど右に傾いた階段や、なぜか二手に並走する廊下、中ニ階の三階のような空間が現れるなど、通常ではちょっと考えられない、ナゾのしかけに満ちている。    宮田氏が泊まったホテルの名前はほとんど伏せられているが、読んでいると、どの宿か探し出して訪れたい願望がふつふつと沸いてくる。  前半は迷路宿がメインに話が進んでいくのだが、次第に温泉そのもの、温泉の持つ独特の空間にも宮田氏が惹かれていく様子が伝わってくる。風呂嫌いの人が温泉好きになる過程、これも読みどころのひとつかもしれない。  これまで誰も追及しなかった、"温泉"と"迷路"という奇妙な組み合わせ。これを読めば、まだ見ぬ温泉界の四次元へどっぷり浸かれそうだ。 (文=上浦未来) ●みやた・たまき 1964年、兵庫県生まれ。旅エッセイを中心に執筆活動を続ける。『東南アジア四次元日記』『わたしの旅に何をする。』『ときどき意味もなくずんずん歩く』(幻冬舎文庫)『ウはウミウシのウ シュノーケル偏愛旅行記』(白水Uブックス)『旅の理不尽 アジア悶絶篇』(ちくま文庫)、『なみのひとなみのいとなみ』(朝日新聞出版)、『スットコランド日記』『スットコランド日記 深煎り』『だいたい四国八十八ヶ所』(本の雑誌社)など、著書多数。『東南アジア四次元日記』で第3回酒飲み書店員大賞を受賞。
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