ベストセラー作家・海堂尊に聞く「“チーム・バチスタ”シリーズ、そして日本エンタメ界の未来」

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 2006年に刊行された、海堂尊さんのメディカル・ミステリー『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)。「東城大学医学部付属病院で相次いで発生している術中死を、心療内科医・田口公平と厚生労働省の役人・白鳥圭輔のコンビが調査してゆく」というこの作品は、スピーディな展開と魅力あふれるキャラクター、医療現場のリアルな描写が話題を呼び、デビュー作ながら大ヒットを記録した。  以降、『ナイチンゲールの沈黙』『ジェネラル・ルージュの凱旋』『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』(すべて宝島社)と相次いで続編が刊行され、今日までシリーズ累計1,000万部超という驚異的なセールスを誇っている。08年に竹内結子&阿部寛主演で映画化、同じく08年に伊藤淳史&仲村トオル主演でドラマ化もされているので、ご覧になった方も多いだろう。  そして今年7月に刊行された最新作『ケルベロスの肖像』は、シリーズ第6作にして完結編。田口&白鳥コンビの物語にピリオドを打った理由とは? そして気になる今後の展開は? 著者の海堂尊さんにインタビューした。 ■シリーズ完結にふさわしい盛り上がり 海堂尊(以下、海) シリーズをこういう形で終わらせよう、というのは、実はデビュー前から考えていたことです。『チーム・バチスタの栄光』、『螺鈿迷宮』(角川書店)、そしてこの『ケルベロスの肖像』はさまざまな医療の崩壊を描いた三部作になっている。当初は、この三作を書き上げて、覆面作家のままソッと消えてゆこうと思っていました。でも、いざデビューしてみるとそうは問屋が卸さなくて……(笑)。ほかの作品を書いていたせいで、三部作の完結までこんなに時間がたってしまったんです。  シリーズ完結の経緯について、こう語ってくれた海堂さん。作品の舞台となるのは、今回も東城大学医学部付属病院だ。ある日、病院長のもとに「八の月、東城大とケルベロスの塔を爆破する」という謎めいた脅迫状が届けられる。誰が、何のために? 「ケルベロスの塔」が意味するものとは? これまで数々の事件を解決してきた心療内科医・田口公平は、院長の命を受け、密かに調査を開始することになる。  爆破予告があり、それを田口が調査するというアイデアも、デビュー前に考えていた通り。考えてみると、構想7年の作品ということになりますね。一度「これだ」と思ったアイデアは忘れないんですよ。7年前に思いついた大枠に、デビュー後に書いてきたさまざまな作品の要素が入り込んで、今ある物語が出来上がりました。  同一の世界観のもと、すべての作品が(出版社の壁すら越えて)リンクし合っているのも海堂ミステリーの大きな特徴だ。中でもこの『ケルベロスの肖像』は、『ブラックペアン1988』(講談社)や『螺鈿迷宮』など、他社のシリーズで描かれた事件にもあらためてスポットが当てられ、一大フィナーレを飾るのにふさわしい盛り上がりを見せている。  現実世界では、地球上のあらゆる出来事が同じ時間軸の中に存在していますよね。例えば今ここで僕がインタビューを受けている間も、ほかのどこかではプロ野球選手の秘密特訓が行われているかもしれないし、将棋の重要な対局も指されていたりするわけです。虚構世界も現実世界と同じような構造じゃないかな、と思ったりするんですよ。バラバラに見える物語世界も、どこかではつながり合っているはず。僕はそれを統一したいんです。とはいえ、デビュー以来20作も書いてくると、登場人物だけでも1000人近くと、なんだかものすごい数になっています。執筆前におさらいするだけでも大変ですね(笑)。三部作のゴール地点として、今回の『ケルベロスの肖像』のことはずっと頭にありました。『ブラックペアン1988』や『螺鈿迷宮』を書いていた時も、これは『ケルベロス』に絡めたら面白くなりそうだ、と考えていましたしね。  シリーズ当初はやや頼りないキャラクターとして描かれていた主人公・田口公平も、病院内の濃すぎる面々に揉まれるうち、次第に人間的に成長。今作では病院内の重要ポストを担う人物として、頼りがいのある一面を見せている。  確かに、ずいぶん成長してくれたなと思います。『チーム・バチスタの栄光』には「願いごとは叶う。ただし半分だけ」っていう田口のセリフが出てくるんです。今回の作品にも、まったく同じセリフが出てきますが、さらにもう一行つけ加えられているんですね。ここを書くことができた時は、「ああ、いよいよ終わるんだな」と、ちょっと感慨深いものがありました。ひょっとしたら、この一行をつけ加えるために、シリーズ6作を書き継いできたのかもしれません。 ■とにかく面白い物語を書きたい  本シリーズでは、死体を画像解析することによって死因を特定しようという新技術「Ai」(オートプシー・イメージング)が、非常に大きな役割を果たしている。これまでほとんど一般に知られることのなかったAiも、『チーム・バチスタの栄光』の成功によって、かなりポピュラーなものになった。そして海堂さん自身、医師として長年Aiの普及・推進に努めてきたという経歴を持つ。  よく誤解されるんですが、Aiを普及させようと思って『チーム・バチスタの栄光』を書いたわけではないんですよ。長年Aiの普及に関わってきたのは事実ですし、それがあったからこそ思いついた物語だったんですが、そもそもの動機は「面白い物語を書きたい」ということ。「あまり知られていないAiという技術を使えば、面白いミステリーが書けるんじゃないか」と思ったんです。「これはAiの普及に使えるな」と気づいたのは、本が出てからですね。  今作では、田口が所長を務める「Aiセンター」が建設され、いよいよAiが本格的に医療の現場に導入され始める。一方、現実社会でもAiの実用化をめぐって大きな変化があった。  今年の5月に、死因究明関連法案という法律が国会で可決されました。不備の多い法律ですが、とりあえずAiを軌道に乗せるところまでは来た。これまで作家をしながら、Ai導入のために働いてきましたが、個人でできる範囲は一段落。あとは現場の専門家の方々に任せる段階が来たのかなと思っています。 バチスタ・シリーズが終わり、Aiの仕事が終わり、長年関わってきたものが続けて手を離れた、そんな12年でした。
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勤務風景
 こう聞くと、シリーズの展開と海堂さん自身のプロフィールが重なっているようだが、作品はあくまでフィクション。キャラクターに特定のモデルなどは存在しないそうだ。  特定のモデルを念頭に置くと、逆に動かしにくくなってしまうんですよ。大学病院内でのゴタゴタを描いてはいますが、人が集まる組織ならどこでも起こり得ること。医療関係以外の方に「こういう人っていますよね」と言っていただくと、「普遍的な事件を書いているんだな」とあらためて思います。僕はあまり出世欲がなかったので、大学病院内の生々しい事件って、実際にはそれほど目にしていないんです(笑)。  あくまで主眼は、面白い物語を描くこと。医療をめぐるさまざまな問題を取り上げながら、海堂さんの姿勢は一貫して変わらない。  物語って、現実を忘れさせなければ意味がないと思うんです。本1冊の値段は、ちょうど映画1本と同じくらい。映画の世界にひたるように、小説でも現実を忘れてハラハラドキドキしてもらいたい。そのためにはストーリーはもちろん、文章の細かな部分にもかなり気を使っています。「ミステリー」というジャンルは僕にとって、エンターテインメントの王様。すいすい読めて、とにかく面白い。そんな物語を書きたいと思っています。 ■エンタメ、そして今後の展開  長びく不況のため、本やCDが売れないといわれて久しい。エンターテインメントの第一線で活躍してきた海堂さんには、今日のエンタメ業界はどう映っているのだろうか?  難しい質問ですが、もっと活気があってもいい気はしますね。ミリオンセラーがどんどん出る世の中のほうが、賑やかで面白いに決まっている。特に最近は、コンテンツを無料で楽しもうという風潮が強くなってきていて、正直どうなんだろうなと思います。エンタメにもっとお金を使って、本やCDを思いっきり買って、「ああ、俺ってバカだなあ」と反省する(笑)。そういう世の中であってほしいですね。  ちなみに海堂さんは大の音楽ファン。毎回、作品を書く際に聴く“テーマソング”を決めていることでも知られている。 海 今回のテーマソングは、ポルノグラフィティの「EXIT」。執筆中はエンドレスで流していたので、400~500回は聴いているでしょうね。今でもまだ「EXIT」を聴くと手が動きます。音楽はどんなジャンルも好きですが、うまくても下手くそでも、ピンで勝負しているアーティストが好きですね。ひとりで勝負している姿って、やっぱり心を動かされるものですから。アイドルでいうと、最近はやりのグループアイドルよりも、きゃりーぱみゅぱみゅが好き、という感じかな(笑)。  ユーモラスな掛け合いで人気を博した、田口公平&白鳥圭輔の名コンビ。その活躍は、もう読むことができないのだろうか? 海 そこは堅苦しく考えず、書きたくなったらチャレンジします。こう言うと「完結編詐欺だ」なんて叱られるかもしれませんが(笑)、気長にお待ちください。これから「野性時代」(角川書店)で連載を再開する作品「輝天炎上」は、『ケルベロスの肖像』を別の角度から描いたもの。同じ事件を、もうひとつの当事者の側から描いてゆくつもりです。 クライマックスのシーンなどは『ケルベロスの肖像』と共通しているので、当然田口・白鳥コンビも登場します。そちらも併せて読んでいただけるとうれしいですね。 海堂尊(かいどう・たける) 1961年、千葉県生まれ。千葉大学、同大大学院医学系研究科博士課程修了。その後外科医、病理医を経て、現在、独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センターAi情報研究推進室室長。05年に『チーム・バチスタの崩壊』で、『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。その後、数々のミステリー小説を発表すると共に、『死因不明社会ーAiが拓く新しい医療』(講談社)で08年度科学ジャーナリスト賞を受賞するなど、幅広く活躍中。

『おもかげ復元師』震災で300人以上の遺体を修復した「復元納棺師」が見た風景とは?

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“復元”のようす
 容貌が変化してしまった遺体の硬直を解き、マッサージで顔色を変え生前の安らかな表情に復元して納棺を行う「復元納棺師」として、岩手県を拠点に活動している笹原留似子さん。東日本大震災の折には、ボランティアとして300人以上の方の遺体を復元した。その際の様子を含めた死の現場を描いたエッセイ『おもかげ復元師』と、震災で復元した方のお顔を描いた『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)を8月に上梓。『震災絵日記』は、ボランティア活動を終えたあと、実際に遺体を復元したひとりひとりを思い出しながら描いたという。 ――震災の時は、10キロも痩せたそうですね? 笹原留似子(以下、笹) そう、もともとはすごく細かったんですけど(笑)。被災地はどこもお店は開いていないし、また、たとえ食べ物を持参していても、復元作業に入って集中すると、途中で休憩はしません。3時間の復元が3件続くと、朝から晩まで食事する時間はないですね。体力も必要ですが、あの時は神経も使いました。遺体安置所では、遺体の復元を必要とするご遺族がいつでも話しかけられるような雰囲気も作っておかないとならないから。  * * *  震災では津波によって傷ついた遺体も多く、また発見されたのが数日後というのは早いほう、中には数週間後、数カ月後というケースも珍しくなかった。当然ながら時間がたつほど傷みは激しくなる。愛する人を亡くすということだけでも耐え難いのに、その変わり果てた姿にさらにショックを受け、死を受け入れることができない遺族も多い。愛娘を直視できない両親、「こんなのお父さんじゃない!」と泣き叫ぶ子ども……。エッセイを読むと、どのような姿でどうお別れするかは、遺族がその後どう生きていくかに大きく影響することがわかる。  一般的な納棺師は、遺体から出る臭いを抑える処置や死化粧はするが、激しい損傷の復元はしない。海外ではエンバーマーが復元を請け負う場合もあるが、それは亡くなって間もない場合だけ。たとえ腐敗しウジがわいていても復元を請け負う笹原さんのような存在は、世界を探しても非常にまれだ。  * * *  例えば顔に穴が開いている時は、そこから体液や血液が出ないよう止める作業をしながら、同時に陥没部を埋めていきます。亀裂で顔が広がってしまっている場合は元に戻し、それを火葬まで安定した状態でもたせるようにします。震災では、一部が白骨化したような方の復元も行いました。それまで経験したことがなかった作業なので難しかったけれど、ご遺族の前で「できない」とは言えませんでした。物資が不足する中、生前の写真を見ながら、脱脂綿など、あるものをなんとか組み合わせて復元しました。ワックスを使うこともありますが、それだけでは形が崩れるので、さらに加工して、ご遺族が触れられるような状態に仕上げていきます。お別れの際、「実際に触れる」ということは、とても大事なことですから。
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笹原さんのメイク道具
――技術はすべて独学だそうですね。  そうです。だから復元を始めた頃は、「このご遺体にはどう向き合ったらいいんだろう」と、よく困りもしました。けれどそういう時には、どこからか泣き声が聞こえてくるんですよ。「お父さんに会いたい」「お母さんに会いたい」「子どもに会いたい」って。そうすると、なんとかしてこの方をご家族に受け入れてもらいたい、という気持ちになるんです。がんばって生きてきたのに、最期に受け入れてもらえないなんて寂しいじゃないですか。残されたご家族が大好きだった顔に戻れば、その方の人生がさわやかに締めくくられるんです。責任は大きいですよ。特に震災では、幼い子どもを残して亡くなった方も多くいらっしゃいました。あまりに損傷が激しいと、子どもとの対面を避けるご遺族もいる。子どもが親と対面してちゃんとお別れするのは、死を受け入れるために大切なことのひとつです。  * * *  笹原さんは、ただ姿形を復元するだけではなく、遺族の心のケアも行うという。そのため、復元後は残された家族に参加してもらい、一緒に死化粧をしたり仏衣を整えたりして納棺する「参加型納棺」を提唱している。そこで遺族は初めて涙を流すことができ、思い出を語り、生前の家族の関係が戻ってくることも少なくないのだ。  * * *  納棺の時、私は、例えば「目は閉じますか? 開けますか?」とご家族に相談します。「みなさんのことを確認されたいかもしれないから、開けたままでもいい。でも、開いていると眼球の水分が抜けて、高さがちょっと変わったりする可能性もありますよ」と。そうした会話によってご家族は、亡くなった方のためを思って、どうすればいいかを一生懸命考える。参加型納棺は、そうした時間の積み重ねです。そうしてご家族は、ご遺体と対面しながら、いろんな感情を吐き出すことができる。私もご家族とコミュニケーションを取りながら、悲しみの中に何があるのかを把握し、お話をさせていただいています。私が話した内容を、亡くなった方の言葉として受け止める方も多いですね。「まるでお母さんが言ってるみたい」って。でも本当はそれは、ご家族自身の潜在意識の中にある声を、私が引き出してあげただけなんです。 ――過酷な復元処置をし、遺族の話をひたすら聞いて、笹原さんご自身には相当なストレスがたまるのではないでしょうか? 笹 この参加型納棺は、私にとってのケアにもなっていると考えているんです。ご家族同士、深いところで心が通じている、本当にいい時間なんですよ。そこに私も入れてもらって……大好きなんです、この仕事。ただ「つらい」ばかりだったら、続けていないと思います。もちろんご家族によっていろんなケースがありますから、たまに悪口で終わることもあります。ご遺族の嘘泣きも、すぐにわかりますよ(笑)。「嫌いだったけど、実際にいなくなると寂しいね」なんて言う人も。家族、いろいろあって当たり前、それもありだと思うんです。ふだん社会の中では仮面をつけているけれど、死の場面では、人の“素”の部分が出るんですよね。  * * *  死を受け入れて生きるとは、どういうことなのか? 笹原さんの著書は、それを教えてくれているのではないだろうか。 (文=安楽由紀子) ●笹原留似子(ささはら・るいこ) 1972年、北海道生まれ。岩手県北上市在住の「復元納棺師」。復元・納棺を専門とする株式会社「桜」の代表を務める。東日本大震災で300人以上の遺体を生前の姿に戻す「復元ボランティア」を行ったことが高く評価され、2012年、社会に喜びや感動を与えた市民に贈られる「シチズン・オブ・ザ・イヤー」を受賞。同年8月には、納棺現場での忘れられないエピソードなどを綴ったエッセイ『おもかげ復元師』と、震災後に復元して見送った方々の顔を描いたイラストエッセイ『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)を出版した。

渋谷のギャルが記した天真爛漫な“韓国獄中記”『韓国女子刑務所ギャル日記』

 街で出会ってしまったら、すかさず道を譲りたくなるような存在感にあふれるヤマンバギャル。ここ数年は、その数もやや少なくなっているものの、実はその人気はヨーロッパをはじめとする海外に飛び火しており、世界を侵食し始めているという。  今や、世界を股にかけるギャル文化の中心で「アゲアゲ」な日常を送っていたヤマンバギャルが、ある日突然韓国の警察に捕まってしまい、3年間を刑務所で過ごすこととなった……。そんな顛末を記したちょっと変わった獄中記が『韓国女子刑務所ギャル日記』(辰巳出版)だ。  本書を執筆したあきは、渋谷を中心に活動するギャル・サークルの元リーダー。ダイエットに勤しみ、マンガ喫茶に通い詰め、キャバクラ嬢として夜の世界で大活躍と、自由気ままに青春を謳歌していた。そんな彼女の生活が一変するのは20歳の時。知り合いから紹介された「マレーシアで何日か遊んで、荷物を持って帰ってくるだけで30万円」という怪しいアルバイトを引き受けてしまったのだ。  関西国際空港にて覚せい剤密輸容疑で逮捕された女子大生が記憶に新しいが、当然、そんなおいしいバイトが無事に終わるはずもない。マレーシアで受け取ったスーツケースを手に指示された韓国へ向かうと、入国審査でストップがかけられる。スーツケースをこじ開けられると、二重底になっていたそこには大量の覚せい剤が……。異国の地で、彼女は身に覚えのない覚せい剤密輸の現行犯で逮捕されてしまった。  その日から、彼女の長い3年間は始まる。  だが、自分の犯した罪を深く反省したり、あるいは塀の中という独特の世界で自分を省みたり……という獄中記にありがちな展開をみせることがないのが、この本のユニークなところ。同じ外国人部屋に収監された日本人受刑者の上から目線に腹を立て、同房の中国人の班長を「デブ」「むかつく」と罵る。塀の中でもマイペースを貫き、いつものようにダイエットを続ける彼女。タバコも酒も携帯も取り上げられ、生活スタイルは変われども「自分らしく生きる」という揺るがない信念には呆れを通り越してただ敬服するばかりだ。  もちろん、3年の間に彼女の中にも少しずつ変化は芽生える。WBというニックネームの受刑者と友情を育み、日本にいる両親に対しても「迷惑をかけた」と反省し、感謝の気持ちを思い出す。「一番じゃなきゃ嫌だ」という性格の彼女は、3年間の努力の末についに部屋の班長に指名された。受刑者たちから中国語や韓国語を学び獄中で記していた日記も韓国語や中国語で書くことができるようになり、日本に帰国した現在も中国語の勉強を続けており、通訳になるのが彼女の夢だ。  韓国女子刑務所の内情や、そこで考えた男や金に対するギャルの心情など、気になる部分もリアルに綴られている本書。獄中で執筆された日記の原文や、手書き文字によって当時を振り返った現在の気持ちが書きこまれており、さまざまなレイヤーから、彼女の刑務所体験を知ることができるだろう。  塀の中でも、受刑者を罵り、友情を育み、天真爛漫に過ごすあき。彼女の手にかかれば、犯した罪を反省し、更生をするはずの刑務所も「私は中にいたことを後悔するどころか誇りに思う」と、自己実現の道具と化してしまうのだった。どんな世界でも臆することなく「自分らしく生きる」ギャルたちの図太さは、その文化と同様に世界レベルなのではないだろうか……。 ●あき 1988年、東京生まれ。日本国籍(華僑)の父と、日本人の母との間に生まれる。私立中学校を中退後、北京の日本人学校へ入学。帰国後の高校時代にギャル・サークルの代表になる。2008年10月、身に覚えのない薬物密輸の容疑により韓国で逮捕される。2011年、満期出所で日本に帰国。

アジア人と結婚する「なでしこ姫」増加と「生涯未婚率」上昇のやるせない関係

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『絶食系男子となでしこ姫
国際結婚の現在・過去・未来』
(東洋経済新報社)
 20代半ばを過ぎると、友人の結婚式や結婚式の2次会の案内状が届き、自らの結婚を考える機会が増える読者も多いのではないだろうか。しかし、2010年の国勢調査によると、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合)は男性が20.1%、女性が10.6%と30年前に比べ男性では約8倍、女性では2倍以上に増えているという。  そんな中、アジア人男性と結婚し、現地で暮らす日本人女性=「なでしこ姫」が増えている。そんな「なでしこ姫」たちへのインタビュー調査をもとに書かれたのが『絶食系男子となでしこ姫 国際結婚の現在・過去・未来』(山田昌弘、開内文乃:著/東洋経済新報社)である。  本書では、「なでしこ姫」や「絶食系男子」(草食系にとどまらず、異性との交際をあきらめたり、そもそも異性との恋愛自体を面倒くさいがる男性)というキャッチーなキーワードを用いながらも、国際結婚を通し、それが日本の社会や経済、ジェンダーの問題とどうつながっているのかを分析している。今回、著者であり、家族社会学、ジェンダー理論、グローバリゼーション論を専門とする開内文乃氏に、現在の結婚難、そして「なでしこ姫」現象について話を聞いた。 ――1980年には30代前半の未婚率は男性が14.3%、女性が7.7%でした。それが2010年では、30代前半の未婚率は男性が47.3%、女性が34.5%と大きく上昇しています。現在の結婚難というのは、やはり経済的要因が大きいのでしょうか? 開内 本書の共著者である中央大学の山田昌弘先生(中央大学文学部教授)がよく言われるように、20代半ばから30代半ばの未婚女性の約4割が期待する結婚相手の年収は600万円ですが、それに該当する未婚の男性は2~3%しかいない。大企業などで働く父親をもつ女性にとって、結婚相手に望む年収は、その父親の年収を基準に考えることが多い。また、86年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性が社会に進出し始めました。彼女たちは父親を基準とし、同じような職場環境で働くことを望みます。これは、男性にも同じことがいえます。父親が大企業で働くような家庭で育った男女は、自分の父親の仕事を基準として就職先を考える傾向があるのです。そういった大企業に勤める父親をもつサラリーマン家庭で育つと、結婚にしても、就職にしても、親の期待や育った環境から大きく外れることがなかなかできない。しかしながら、現在のような経済状況のもとでは、男性ですら大企業の父親と同じようなポジションを得ることは厳しい。日本では女性の管理職比率が先進国最低レベルにあるように、女性が父親と同じようなポジションを得ることはさらに難しい状況です。父親と同じような職場環境で働けなかった女性は、せめて結婚後の生活は自らが育ってきた生活環境に近く、また子どもも同じような生活環境で育てたいと考えます。だからこそ、結婚相手には父親と同じくらいの稼ぎを求めるのです。しかし、若い男性側は厳しい経済状況の人が多いので、ミスマッチが起きているのです。 ――2010年に明治安田生活福祉研究所が行った「結婚・出産に関するアンケート」では「結婚後の生活は主に夫が支えるべきだ」という質問では、「YES」と「どちらかというとYES」と答えている独身女性が71.4%を占めています。 開内 特に若い男性は、自分たちを取り巻く経済状況を自覚しているので、結婚相手の女性には結婚後の生活費を稼ぐのを共働きである程度助けてほしいと考えています。しかしながら、女性側が共働きとして考えているのは、衣食住の生活費は男性が稼ぎ、女性はパートタイム労働で足りない分を稼ぐ。パートタイム労働で得た収入は海外旅行や子どもの習い事、家族イベントといった余剰に使いたいのです。このように共働きということだけを考えても、男女間では意識の差があります。こういった意識の差は恋愛だけならば問題ありません。しかし、結婚という未来のビジョンを一緒に描こうとなった時に、この差が問題となってきます。 ――男女の意識の差のほかに、結婚難の要因となっているものはなんでしょうか? 開内 日本では職業においても性役割、つまり男性的職業と女性的職業があります。男性が多い職場と女性が多い職場に分かれてしまう。そうすると、例えば同じ会社内でも、なかなか男女が出会えない。社外での出会いは、適齢期の人たちは仕事が忙しいのでなおさら難しい。そういった構造的な問題も大きな要因のひとつです。意識的にも構造的にも、男女間のミスマッチが起きているのが、結婚難の要因ではないでしょうか。 ■新たな結婚の流れ「なでしこ姫」とは? ――本書では、経済発展している中国や東南アジアの国々の男性と結婚し、現地で暮らす女性を「なでしこ姫」と名付けています。国外における「妻が日本人、夫が外国人」という婚姻件数が88年では約2,000件だったのに対し、その後増え続け、06年には8,000件を超えています。なぜ、そのような結婚が増えているのでしょうか? 開内 適齢期を過ぎても結婚しない男性は、エリートといわれる年収600万円以上の男性にも多い。この手の男性は結婚に非常に慎重なタイプか、結婚のチャンスをものにできないタイプの2つに分かれる。前者は、いつも恋人がいるのに結婚しない男性でしょうか。彼らは冷静で、自分の商品価値をよくわかっている。だから、恋愛は別として、いざ結婚となると自分の人生設計を考慮し、相手を見つけようとしがちです。つまり、恋愛相手と結婚するとは限らない。後者は恋愛経験が乏しく、女性の扱いに慣れていない男性でしょうか。このタイプはエリート男性であっても、30歳を超えると「絶食系男子」になりやすい。身もフタもない話になるのですが、エリート層の男性が本当に結婚する気があるのなら、簡単に結婚相手を見つけられる現状がある。だから、エリート層の男性は、結婚が早いか遅いかに分かれてしまう。理想とされる男性の中で、「婚活」女性の求める人は本当に少ないのです。  また、上昇婚を望む女性は、エリート男性と恋愛をすれば結婚にまで到達できるという幻想が強いことも多い。女性誌に「男性にいかにして愛されるべきか」などの特集が組まれ、愛されさえすれば結婚できると流布されているのが顕著な例です。しかし、アジア人男性と国際結婚するなでしこ姫は、上昇婚を目指す女性とはタイプが異なる。なでしこ姫は「モテない女性だ」と考えている人が多いが、それは違う。なでしこ姫はどちらかというと恋愛経験が豊富で、恋愛が必ずしも結婚に結びつかないことに気づいてしまっている女性です。 ――モテる女性がアジア人を選んでいると? 開内 モテる女性は経験上、モテる男性が必ずしも結婚に向いているわけではないことを知っている。そんな彼女たちが海外へ行き、現地の男性と親しくなった時に、中国や東南アジアの男性というのは、「結婚を前提に付き合ってほしい」と声を掛けてくれることが多い。それまで、恋愛をしても結婚に至らなかった経験のある彼女たちは、「この人は少なくとも結婚はしてくれる」と思うのです。また、中国や東南アジアの男性は上昇志向が強く、リスクをとって這い上がってやろうという気持ちが強い。日本のエリート男性や絶食系といわれる男性のように、リスクヘッジばかりしているのとは正反対です。そこに魅力を感じるのかもしれません。 ――現地で暮らすとなると、アジアとはいえ、日本の両親や友人たちの元からは遠くなりますよね? 開内 社会学では世界の中核都市をグローバル・シティと呼んでいます。例えば、それは香港などです。香港などのグローバル・シティである限り、日本の地方へ行くより移動時間や移動費用などは現実的に抑えられるので、日本に住む両親にも孫の顔を見せられる。だから、結婚生活を維持することができる。また、彼女たちの父親というのは、先ほど話したような大企業勤めのサラリーマンではないことが多いです。そういった家庭環境で育った女性たちは、普通のサラリーマン家庭の保守的な価値観だけが正しいとは考えていない。だからこそ、国際結婚にチャレンジしやすい。また、国際結婚により日本では難しい仕事と家庭の両立を目指すことができる。 ――最近、研究者や技術者などの海外への頭脳流出が話題になっていますが、「なでしこ姫」という現象は頭脳流出、人材流出につながるのでしょうか? 開内 頭脳流出というよりは、国民流出だと思います。「なでしこ姫」はある程度の高い教育を受けている方が多いのですが、頭脳流出というのは、高度な技能を持ったエリートが国外で働くことを選択し、国内の技術が衰退してしまう問題を指します。なでしこ姫の問題はそれとは違う。彼女たちがもし中産階級の男性だったら、ある程度の企業で、ある程度の役割を果たし、日本の社会や経済を動かしていくであろう女性たちです。さらにいえば、日本で結婚していれば、将来、日本の社会や経済を動かしていく子どもを育てるであろう女性たちです。そういった意味で、日本の国力の衰退に関わる国民流出と考えるべきでしょう。 ――そのような日本社会の中核を担っていくような女性たちは、今後も国際結婚をし、海外へ移っていくのでしょうか? 開内 内閣府が行った「結婚・家族形成に関する調査」では、「結婚相手が外国人でも構わない」という質問に男性は28.4%が「YES」と答えたのに対し、女性では46.3%が「YES」と答えました。これを東京の大学で調査すると、約70%の女性が国際結婚に好意的です。また、海外生活を経験したことのあるようなグローバル化したエリート男性は、日本人女性を結婚相手として選ぶことが多く、非常に保守的な考え方の人が多い。ですから、彼らは身近にいるグローバルに活躍する「なでしこ姫」とは結婚しません。そう考えると、日本人女性の国際結婚は増えていくのではないでしょうか。 ――結婚難についての対策はありますか? 開内 本書で、私と山田先生は、ジェンダーに関する問題を「なでしこ姫」や「絶食系男子」というキャッチーなキーワードで読みやすく書きました。しかし、本書で書いたことは社会構造の問題であり、経済や社会保障の問題とも関わってきます。一番の問題となるのは、就職も結婚も難なく手にした「勝ち組」の男性の意識でしょうか。「勝ち組」の彼らはモテ格差も就職格差もジェンダー格差も他人事なので、シビアでいられる。彼らが自分とその仲間以外の問題を見ようとしないなら、日本の恋愛だけでなく、男性間の格差も構造も変わりません。ですが、そのような「勝ち組」の男性と結婚し、とりあえず社会保障として守ってもらうのが、日本人女性の生き方として、一番、リスクが少ないのかもしれません。 ――本書を、どんな人に読んでもらいたいでしょうか? 開内 バリキャリ系の女性を応援したい男性に読んでほしいです。そういう男性には大きな心で、自分の力でやっていきたいという女性を温かく見守ってほしいですね。 (構成=本多カツヒロ) ●ひらきうち・ふみの 一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程退学。現在、中央大学文学部兼任講師、フェリス女学院大学文学部非常勤講師。専門は家族社会学、ジェンダー理論、グローバリゼーション論。主な訳書に、C.コーワン&P.コーワン『カップルが親になるとき』(共訳、勁草書房)、Z.バウマン『幸福論――“生きづらい”時代の社会学』(共訳、作品社)がある。

驚きと発見の連続!? ツウな大人の社会科見学『TOKYO 研究所紀行』

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『TOKYO 研究所紀行』(玄光社)
 “大人の社会科見学”がブームになって久しい。食品工場やビール工場にはじまり、日清の「カップヌードルミュージアム」のようなテーマパークがオープンするなど、とくに身近なメーカーものが人気を集めている。そんな中、あまり一般的には知られていない穴場スポットがあるのをご存じだろうか。それは、研究所だ。研究所と聞くと、無機質な部屋の中で、白衣を着た研究者たちが液体が入った試験管を振って反応を調べたり、最先端の装置を使って小難しい研究をしているというイメージがあるかもしれないが、実は実際に訪れ、見学することができる施設もあるのだ。  そんな研究所の魅力を、写真と紀行文で紹介するガイドブックが『TOKYO 研究所紀行』(玄光社)だ。研究所といっても、地球や環境の研究から、生命、宇宙、最新テクノロジーなど、そのテーマはさまざま。一見、私たちのくらしと関係のないことのように思えるかもしれないが、それは大間違い。私たちのくらしをよりよいものにするため、あるいは、限りある資源を有効に活用し、未来の子どもたちへ残すために重要な研究ばかりだ。   たとえば国立環境研究所(茨城県つくば市)では、地球環境、資源循環・廃棄物、環境リスク、地域環境、社会環境システムなど8分野を柱に、最新設備と専門知識を駆使した研究が30年以上にわたって続けられている。東日本大震災で津波を受けた木屑の焼却実験を行ったのも、この施設だ。汚染物質が生命に与える影響などについても研究されており、メダカやファットヘドミノー、ヌカエビのほか、一生かかってもお目にかかれないであろう種類と量のミジンコなどが飼育されているという。また、700種2,000株を超える藻類には魅了されること間違いなし。  また、長年に渡りあらゆる研究分野をリードしてきた東京大学の総合研究博物館(東京都文京区)は、300万点以上の学術標本を収蔵。研究部には多くの研究者が所属し、日々世界レベルの研究を進めている。さらに、ここの特徴は、博物館活動そのものも研究されているという点。常設展「キュラトリアル・グラフィティ 学術標本の表現」では古人骨にはじまり、貝塚からの出土品、縄文人の全身骨格のほか、80冊の標本資料報告集もオブジェとして展示。時代時代の最先端研究を追体験することができる。  本書には上記のような研究所の紹介に交え、研究所にゆかりのある学者や大学教授らのコラムも寄稿されているが、ベストセラー『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)で知られる生物学者の福岡伸一氏は自身が学者になった理由について、次のように書いている。  昆虫少年だった福岡氏はある日、台風で横倒しになった大木に、野外でも図鑑でも見たことがない小さな虫が貼りついているのを発見する。図書館で調べられるあらゆる図鑑を調べたが、どこにも載っていない。「これは新種の発見では?」と高鳴る胸を抑え、その虫を入れた小瓶を握りしめて上野の国立科学博物館に持ち込んだ。親切な係員の誘導でバックヤードに通され、詳しい先生に見てもらえるという。その先生こそ、日本の昆虫学の権威・黒澤良彦氏だったのだが、黒澤氏はその虫を虫メガネでしばらく調べてから、こう言ったという。「これはありふれたカメムシの幼虫です」。しかし、福岡少年はがっかりするどころか、“虫の研究を職業としている人がいる”という大発見に興奮し、そしてこれが研究者を目指すきっかけになった、と。  研究所は、「知らないものを見てみたい」という私たちの好奇心に対し、広く門戸を開いてくれている場所でもある。研究所見学を通して、今まで知らなかった世界や少し先の未来に触れることで、世の中の見方が少し変ってくるかもしれない。

かわいさはパンダに負けず劣らず!? “ブサかわ”生物大集合『生きもののヘンな顔』

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『生きもののヘンな顔』(幻冬舎)
 昨年3月に2頭のジャイアントパンダが上野動物園に来て以来、日本中がパンダフィーバーに包まれている。7月にはその1頭「シンシン」の赤ちゃんが誕生したものの、わずか6日後に肺炎で死んでしまうという悲しい事件があったが、今月10日には和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」で新たに赤ちゃんパンダが誕生。また、ジャニーズ事務所が東日本大震災復興支援プロジェクトの一環として、仙台市・八木山動物公園へのパンダ招致を計画しているなど、何かと世間の話題を集めるパンダ。その獰猛な生態とはかけ離れた、タレ目でおっとりとした雰囲気が人気を支えているようだが、世の中にはパンダに負けず劣らず、個性的な表情をもった愛すべき生きものたちがたくさんいる。  『生きもののヘンな顔』(監修/小宮輝之、構成・文/ネイチャー・プロ編集室、幻冬舎刊)は、哺乳類から昆虫まで、さまざまな生きものの面白い表情を横断的に紹介するビジュアルブックだ。生きものの種類別ではなく、表情や色・形、体のパーツごとに章立てされたユニークな構成となっている。
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アルパカ(『生きもののヘンな顔』より)
 たとえば、メスに求愛するために鼻の穴やのど袋を赤く膨らますズキンアザラシやオオグンカンドリ、大きな口を開けてあくびをするアルパカやダチョウなど、普段はなかなかお目にかかれない、生きものたちのかわいらしい表情が並ぶ。かと思えば、真っ赤な顔にハゲ頭がトレードマークのアカウアカリや、おでこが突き出したコブダイ、ほとんど毛のないからだにゴマつぶのような目と長い歯を携えたハダカデバネズミなど、コミカルでちょっとグロテスクな、“ブサかわ”系生きものも登場。
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コブダイ
 威嚇という行為ひとつをとってみても、その形はそれぞれ。ライオンのように牙をむき出しにしてうなり声を上げる“ザ・威嚇”もあれば、一見大喜びしているようにしか見えないスパイクヘッドキリギリスや、大きな口を開け真っ赤な舌を見せるマダガスカルヘラオヤモリなど、実にユニークだ。
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マンドリル
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ジャクソンカメレオン
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メキシコサンショウウオ
 本書のあとがきで監修者の小宮輝之氏が、 「それぞれの生きものは何億年、何万年の年月をかけて、独特な姿に進化してきた。その姿を特徴づけている顔は、それぞれの生きものが、種ごとに与えられた地球上のすみかで、もっともくらしやすい姿に到達した、真面目で真剣な顔なのである」 と述べているように、彼らの“ヘンな顔”には深いワケがある。パッと見は「かわいい~」「気持ち悪い」だけで終わってしまいがちだが、この本を片手に、その顔に隠された秘密を探るべく、動物園や水族館に足を運んでみるのもいいかもしれない。 ●こみや・てるゆき 1947年東京生まれ。明治大学農学部卒業。上野動物園前園長。おもな著書に、『目からウロコの動物園』(保育社)、『日本の野鳥』(学習研究社)、『物語 上野動物園の歴史 園長が語る動物たちの140年』(中央公論新社)、『鳥あそび 野鳥おもしろ手帖』(二見書房)などがある。

「アートには本当に力があるのか?」アートセンターから避難所へ 被災地の劇場・いわきアリオスの挑戦

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いわきアリオス
 福島県いわき市にある公共劇場「いわきアリオス」は2008年4月にオープンした公共劇場だ。4つのホールとともに16のリハーサル施設、キッズルーム、交流施設などを備えた総合的なアート施設として、常に市民に開かれた活動を行ってきた。2011年3月11日、開館からの延べ来館者数が200万人を突破するであろう記念すべきその日、アリオスは震度6弱の地震に見舞われた。『文化からの復興 市民と震災といわきアリオスと』(水曜社)は、開館から震災後までのいわきアリオスの活動をまとめた一冊だ。  2008年の開館より、一貫して市民のための運営を行ってきたアリオス。公共劇場には珍しいマーケティング部を設置し、市民にとって何が必要なのかをリサーチしながら運営されてきた。世界的に有名なオーケストラや劇団のステージ、有名なアーティストのライブ、そして、市民参加型のアートプロジェクトなど、その活動は多方面に及ぶ。しかし、3月11日を境に、その活動は大きな変更を余儀なくされた。  3月11日からアリオスに与えられたのは、被災者の避難所としての役割だ。もともと、避難所に指定されていたのはアリオスの前庭だけだったが、「屋根のある公園」というコンセプトのためか、自然と屋根のあるアリオス内部が避難所として使用されるようになった。間断なく強い余震が襲い、およそ50km離れた福島第一原発では水素爆発が発生する中、避難所の人々は人生で味わったことのないような不安に苛まれている。「アートには本当に力があるのか?」これまで、市民とともに活動を行い続けてきたアリオスは、アートの現実に直面した。 「いわきアリオスは『アートセンター』として、何も期待されていないことだけは明らかだった。(中略)そもそも、避難所暮らしをしていたスタッフたちすら、舞台芸術に触れようとする意欲が失せ、舞台芸術の持つ『力』が信じられなくなっていた」(本書より)  アートに関わる人間だけでなく、日本中のほとんどの人々が「今、自分に何ができるか」を考えただろう。原発から50km、“被災地の劇場”として、アリオスはその最前線に立たされた。そんな混乱した状況の中、支配人の大石時雄はこのように語った。 「まずは、これからここに暮らし、生きようとしている人たちが、今本当に何を必要としているのかを、見て、考えるべきではないか。それなしに、自分たちの『思い』だけで走れば、断言するが、アリオスは市民にとって『要らないもの』と思われるはずだ」  そして、震災後のアリオスの活動は、リサーチから始まった。東京23区の2倍という広大な面積を持ついわき市。同じ市内とはいえ、津波に襲われた小名浜地区をはじめとする海岸沿いと山間部では、被災の状況がまったく異なっている。その被災格差を熱心にリサーチしながら、要望のあった地域に向けて、出張コンサートやワークショップなどを行う「おでかけアリオス」を再開。劇場そのものは、安全性の確認が取れるまで長期休業となるが、それ以外の場所ならば活動が可能だ。音楽家や劇団、落語家などを招聘して行われた「おでかけアリオス」のプロジェクトは2011年度に90回を数え、震災後を生きる多くの市民にとっての希望となった。  アリオスのマーケティングマネージャー・森隆一郎が掲げるのが、「OS」としての劇場だ。これまでの文化施設はアプリケーションとしての「作品」の提供に主眼が置かれていた。しかし、OSという考え方を導入すれば、ロビーの運営というインターフェース、市民に向けてソースコードを公開し、新たなアプリの開発を促すなど、これまでの公共劇場が見えていなかった部分が明らかになってくる。  震度6の地震に襲われても、この軸はブレなかった。アリオスはOSとして、市民たちが震災後のモヤモヤとした感情を話し合う「いわき復興モヤモヤ会議」を開催したり、市民からは映画の巡回上映会や、原発事故によって外で遊ぶことのできない子どもたちに遊び場を提供する「こどもプロジェクト」などが提案され始動した。アリオスというOSにのっとって、市民からさまざまなアプリが開発され、それをまた別の市民が楽しむ。一時はビジー状態だったOSは、1年半を経て、復興に向けて徐々に起動を開始している。  パソコンを例にすれば、「パソコンがあればなんでもできろんだろ?」と、PCを使えないおじさんたちが言う言葉にイラッとするように、「アートはなんでもできる」と、関係者ですら考えがちだ。しかし、パソコンにもできることとできないことがあるように、アートは万能薬ではない。そのユーザーの使い方によってもまた、効果は異なってくる。だからこそ、アリオスでは熱心に市民にリサーチを行い、マーケティングを実施しながら「必要な」アートを模索し、それが本当に効果を上げるための施策に頭を悩ませてきた。その結果、未曾有の災害が襲ってきても、アリオスは「今すべきこと」と「今すべきでないこと」を冷静に選択できた。 「震災のおかげで、『いわきアリオスはこうあらねばならない』という固定概念は、さらに取り払われた。いわきアリオスの未来の台本は、このまちに住む人たちが、日々、少しずつ描き足していくのだ。  大震災から1年の経験は、いわきアリオスのこれからに、確かなビジョンを与えてくれた」(本書より)  今年7月にいわきの街を訪れると、あたかも平静を取り戻しているように感じた。しかし、夏休みの子どもたちが外で遊ぶ姿は見られず、ところどころ地震によって歪んだアスファルトがそのままになっている。建物だけではなく、そこに住む人々の心が復興を遂げるためには、まだまだ多くの時間がかかることだろう。その中で、200万人目の来館者に被災者を迎えたアリオスが果たす役割は大きいはずだ。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])

「結局、コミケはニコ動に喰われていくのか?」他誌じゃ書けない本音満載『マンガ論争』Vol.07

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『マンガ論争』vol.7 2012年夏号発行
「コミケはニコニコ動画に喰われているのか?」  マンガやアニメの周辺情報を掲載する専門誌『マンガ論争』が、一足お先に編集部に届いた。最新号となる「Vol.07」で同人誌即売会とニコ動やpixivとの関係を探る特集「広がる同人、廃れる同人」が掲載される。  『マンガ論争』は、本サイトでも、情報誌などでは絶対に書けないマンガやアニメの際どい情報を取材・執筆している、昼間たかし氏が、マンガ評論家の永山薫氏と共同編集人を務める年2回刊の専門誌だ。協力として、コミックマーケット準備会及びコミティア事務局が名を連ねることからも、掲載される情報の精度は極めて高いと評価されている。誰ともなく「ジャーナリズムが存在しない」と評価される、マンガ・アニメ情報誌とは一線を画した存在だ。 「日刊サイゾーの記事と同じく、“こんなことを書きやがって……”というクレームも皆無ではありません。ですが、マンガやアニメの世界を、よりよくしたいという気持ちは同じですから、大抵は話し合えば、わかってくれますよ」(昼間氏)  最近は、本サイトに掲載されたスウェーデンのマンガ「児童ポルノ」裁判で活躍した昼間氏だが、本誌ではなぜか先月スウェーデン大使公邸で催されたパーティーに招待されたことも明らかに。 「なんの懐柔策かと思いましたが、和気藹々とスウェーデン料理に舌鼓を打ってきましたよ。大使をはじめ大使館の方々とも話をしましたが、あのニュースは大きな話題になっているようです。なにより、“児童ポルノ”の所持禁止を唱える人ですら(強硬に規制強化を主張する国際NGO)エクパットのやり方に疑問を持っている言質を引き出すことができました」(昼間氏) ■別に炎上してもかまわない、もうちょっと勉強してこい  さて、今号での特集のトップ「広がる同人、廃れる同人」は、同人誌即売会に取って代わる存在として、ニコニコ動画やpixiv、そしてソーシャルゲームに焦点を充てたもの。今年春に「今後の開催の危機」に陥り注目を集めた新潟の老舗同人誌即売会「ガタケット」の代表・坂田文彦氏や、コミックマーケット共同代表・市川孝一氏らのインタビューなどを交えながら、本音の分析を展開している。さらに、この特集ではコンプガチャ問題の後も発展を続けるソーシャルゲームについて「既に勝ち組は決まっている」と、業界関係者の声を交えながら記している。 「同人誌即売会の大きな要素であったコミュニケーションの機能は、急速にネットに取って代わられつつあります。取材の中で、幼い頃からネットでのコミュニケーションに親しんできた人たちを、即売会の“リアル”の空気感を楽しめるように導いていく方法を、今のうちに模索していなければならないのではないかと思いました」(昼間氏)  また、特集「激変する著作権の世界」では、改めてトレパク問題について解説。トレパクを検証する人々こそが、時として著作権侵害を犯してしまっていることまで記し、著作権の正しい知識を持つことを求めている。この特集は、TPPやダウンロード違法化など、著作権をめぐる様々な問題を、改めて基礎知識のレベルからまとめたもの。著作権をめぐる問題は、あまりにややこしく、今さら聞けない事柄も多くなっているのが事実、ぜひ押さえておきたい内容だ。 「トレパク検証自体が著作権法に触れる恐れがあります。検証している人たちは、もう少し勉強をしたほうがよいでしょう」  と、このページを担当した、永山薫氏は語る。  どの特集にも、どこか炎上しそうな危険を感じる文字が並ぶのだが、本人たちはあまり気にしていない様子だ。 「炎上を楽しむような人たちとは実のある議論にはならないので、相手にするのは時間の無駄です。もちろん、リアルで姿を現せば相手をしますけれども、そんな人は数えるほどしかいないと思います。どっちにしても“楽しむ”のではない主義主張があるんだったら、自分の信念に殉じて華々しく散って欲しいものです」(昼間氏) ■特典も準備して「おもしろく、ためになる本」を目指す  今回で「Vol.07」を迎えた『マンガ論争』だが、今号から次号にかけて「より、多くの人々に手にとってもらいやすくするために」と、内容や装丁共に大幅にリニューアル。表紙を今年発売されたゲーム『シャイニーデイズ』のヒロインたちが飾る。 「すべてを見ることができないほど、多くのマンガ・アニメ・ゲームがある現在は、大変楽しい。だからこそ、この世界を維持し発展させていくために、本誌を通して今置かれている状況を知って置いて貰いたいと思います。そのためには、まだまだ本誌の内容は、固いかも知れません。ですので、さらに“おもしろくて、ためになる”方法を模索していきたいと考えています」(昼間氏)  普段から、どんな小さい記事でも、編集方針をめぐって常に乱闘寸前だという『マンガ論争』。そこには、あまねく作品に対する愛がある。  本誌は、8月10日から開催されるコミックマーケットの特設販売ブースで先行発売される。会場購入特典として『School days』をはじめとする『デイズシリーズ』のイラストレーター・ごとうじゅんじ氏による、桂言葉の特典ペーパーが準備されているとのこと。 ●『マンガ論争』vol.7 2012年夏号発行 特集1:「広がる同人、廃れる同人」 特集2:「激変する著作権の世界」 特集3:「表現の自由の最前線に突撃レポ!」 特集4:「2012年上半期マンガとアニメのキーポイント」 インタビュー: 市川孝一(コミックマーケット共同代表)/坂田文彦(ガタケット代表)/ メイザーズぬまきち(ゲームクリエイター)ほか 編集:永山薫・昼間たかし 協力:コミックマーケット準備会・コミティア事務局 発売:株式会社エヌスリーオー 定価:1,000円(税込) ※コミックマーケットでの先行販売※ 日時:8/10(金)~8/12(日) 販売場所: コミックマーケット会場内東4ホールガレリア側(救護室横) コミックマーケット購入特典として、イラストレーター・ごとうじゅんじ氏の桂言葉描き下ろしペーパーを配布予定。 Facebookページにてカウントダウン実施中!!! http://facebook.gwbg.ws/manga0810

「結局、コミケはニコ動に喰われていくのか?」他誌じゃ書けない本音満載『マンガ論争』Vol.07

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『マンガ論争』vol.7 2012年夏号発行
「コミケはニコニコ動画に喰われているのか?」  マンガやアニメの周辺情報を掲載する専門誌『マンガ論争』が、一足お先に編集部に届いた。最新号となる「Vol.07」で同人誌即売会とニコ動やpixivとの関係を探る特集「広がる同人、廃れる同人」が掲載される。  『マンガ論争』は、本サイトでも、情報誌などでは絶対に書けないマンガやアニメの際どい情報を取材・執筆している、昼間たかし氏が、マンガ評論家の永山薫氏と共同編集人を務める年2回刊の専門誌だ。協力として、コミックマーケット準備会及びコミティア事務局が名を連ねることからも、掲載される情報の精度は極めて高いと評価されている。誰ともなく「ジャーナリズムが存在しない」と評価される、マンガ・アニメ情報誌とは一線を画した存在だ。 「日刊サイゾーの記事と同じく、“こんなことを書きやがって……”というクレームも皆無ではありません。ですが、マンガやアニメの世界を、よりよくしたいという気持ちは同じですから、大抵は話し合えば、わかってくれますよ」(昼間氏)  最近は、本サイトに掲載されたスウェーデンのマンガ「児童ポルノ」裁判で活躍した昼間氏だが、本誌ではなぜか先月スウェーデン大使公邸で催されたパーティーに招待されたことも明らかに。 「なんの懐柔策かと思いましたが、和気藹々とスウェーデン料理に舌鼓を打ってきましたよ。大使をはじめ大使館の方々とも話をしましたが、あのニュースは大きな話題になっているようです。なにより、“児童ポルノ”の所持禁止を唱える人ですら(強硬に規制強化を主張する国際NGO)エクパットのやり方に疑問を持っている言質を引き出すことができました」(昼間氏) ■別に炎上してもかまわない、もうちょっと勉強してこい  さて、今号での特集のトップ「広がる同人、廃れる同人」は、同人誌即売会に取って代わる存在として、ニコニコ動画やpixiv、そしてソーシャルゲームに焦点を充てたもの。今年春に「今後の開催の危機」に陥り注目を集めた新潟の老舗同人誌即売会「ガタケット」の代表・坂田文彦氏や、コミックマーケット共同代表・市川孝一氏らのインタビューなどを交えながら、本音の分析を展開している。さらに、この特集ではコンプガチャ問題の後も発展を続けるソーシャルゲームについて「既に勝ち組は決まっている」と、業界関係者の声を交えながら記している。 「同人誌即売会の大きな要素であったコミュニケーションの機能は、急速にネットに取って代わられつつあります。取材の中で、幼い頃からネットでのコミュニケーションに親しんできた人たちを、即売会の“リアル”の空気感を楽しめるように導いていく方法を、今のうちに模索していなければならないのではないかと思いました」(昼間氏)  また、特集「激変する著作権の世界」では、改めてトレパク問題について解説。トレパクを検証する人々こそが、時として著作権侵害を犯してしまっていることまで記し、著作権の正しい知識を持つことを求めている。この特集は、TPPやダウンロード違法化など、著作権をめぐる様々な問題を、改めて基礎知識のレベルからまとめたもの。著作権をめぐる問題は、あまりにややこしく、今さら聞けない事柄も多くなっているのが事実、ぜひ押さえておきたい内容だ。 「トレパク検証自体が著作権法に触れる恐れがあります。検証している人たちは、もう少し勉強をしたほうがよいでしょう」  と、このページを担当した、永山薫氏は語る。  どの特集にも、どこか炎上しそうな危険を感じる文字が並ぶのだが、本人たちはあまり気にしていない様子だ。 「炎上を楽しむような人たちとは実のある議論にはならないので、相手にするのは時間の無駄です。もちろん、リアルで姿を現せば相手をしますけれども、そんな人は数えるほどしかいないと思います。どっちにしても“楽しむ”のではない主義主張があるんだったら、自分の信念に殉じて華々しく散って欲しいものです」(昼間氏) ■特典も準備して「おもしろく、ためになる本」を目指す  今回で「Vol.07」を迎えた『マンガ論争』だが、今号から次号にかけて「より、多くの人々に手にとってもらいやすくするために」と、内容や装丁共に大幅にリニューアル。表紙を今年発売されたゲーム『シャイニーデイズ』のヒロインたちが飾る。 「すべてを見ることができないほど、多くのマンガ・アニメ・ゲームがある現在は、大変楽しい。だからこそ、この世界を維持し発展させていくために、本誌を通して今置かれている状況を知って置いて貰いたいと思います。そのためには、まだまだ本誌の内容は、固いかも知れません。ですので、さらに“おもしろくて、ためになる”方法を模索していきたいと考えています」(昼間氏)  普段から、どんな小さい記事でも、編集方針をめぐって常に乱闘寸前だという『マンガ論争』。そこには、あまねく作品に対する愛がある。  本誌は、8月10日から開催されるコミックマーケットの特設販売ブースで先行発売される。会場購入特典として『School days』をはじめとする『デイズシリーズ』のイラストレーター・ごとうじゅんじ氏による、桂言葉の特典ペーパーが準備されているとのこと。 ●『マンガ論争』vol.7 2012年夏号発行 特集1:「広がる同人、廃れる同人」 特集2:「激変する著作権の世界」 特集3:「表現の自由の最前線に突撃レポ!」 特集4:「2012年上半期マンガとアニメのキーポイント」 インタビュー: 市川孝一(コミックマーケット共同代表)/坂田文彦(ガタケット代表)/ メイザーズぬまきち(ゲームクリエイター)ほか 編集:永山薫・昼間たかし 協力:コミックマーケット準備会・コミティア事務局 発売:株式会社エヌスリーオー 定価:1,000円(税込) ※コミックマーケットでの先行販売※ 日時:8/10(金)~8/12(日) 販売場所: コミックマーケット会場内東4ホールガレリア側(救護室横) コミックマーケット購入特典として、イラストレーター・ごとうじゅんじ氏の桂言葉描き下ろしペーパーを配布予定。 Facebookページにてカウントダウン実施中!!! http://facebook.gwbg.ws/manga0810

おっさんゲーマー集まれ! 最新技術を盛り込んだ、アーケードゲーム業界の今

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「アーケードゲーマー」(ホビージャパン)
 そういえば、久しくゲームセンターに行っていない。かつては学校が終われば毎日のように立ち寄り、格闘ゲームや音ゲーにありったけの100円玉を突っ込みまくっていた筆者だが、ここ数年はとんとご無沙汰である。理由はいろいろあるが、どうもオンラインゲームやカードゲームといった2000年代に入ってからのアーケードゲームのトレンドに手を出すことが億劫だった、というのが大きいだろう。「やっぱりゲームは一人でチクチクと攻略していくべきだ」「顔の見えない奴と対戦なんかできるか!」という、前時代的なこだわりもあったのかもしれない。  同様の保守的なゲームファンが増えているのかどうかは不明だが、「警察白書」によると、1986年には2万6,573軒あったゲームセンターの数も、2010年には7,137軒にまで数を減らしているそうだ。コンシューマゲーム機のスペック向上に伴い、アーケードゲームの優位性が失われてきたことや、オンライン対戦が家庭でも楽しめるようになってきたことで、わざわざゲームセンターに出向かずとも世界中のプレイヤーと対戦できるようになってきたこと。また少子化や不景気による利用者数の減少といった社会的な理由なども考えられるが、だからといってゲームセンターは、いや、アーケードゲームは終わったのか? そうではないはずだ!  そう力強く叫ぶのが、ホビージャパンより発行されたゲーセン情報誌「アーケードゲーマー」だ。最新の技術を盛り込み、かつてないアイデアを投入したアーケードゲームが集う「ゲームの実験場」として、日本のゲーム黎明期より存在し続けているゲームセンターは、今日も新たなゲームの可能性とエキサイティングな体験を我々に提供し続けているのだ。そんな「ゲームセンターの本質」を探るという観点から、今のゲームセンターの魅力を提示している。
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 シューティングゲーム、アクションゲーム、格闘ゲーム、音ゲー、トレーディングカードゲームと次々と新たなトレンドを生み出してきたアーケードゲームシーンだが、本書はそれらに連なる「今のゲームセンター」のトレンドとして、オンラインゲームを大々的にフィーチャー。また、巻頭のオンラインゲーム特集の後は、ゲームセンターの進化の歴史を振り返る大型筐体の特集が組まれている。この記事では、新たな技術を貪欲に取り込み、ゲーマーに新たなエンタテインメントを提供し続けてきたアーケードゲーム業界の熱気を感じることができる。  ここで多くのオールドゲーマーは気づくはずだ。かつて我々は、新たなゲームが登場するたびに嬉々として100円を投入していたではないか、と。『ハングオン』『スペースハリアー』『アフターバーナー』『R-360』『ビートマニア』に『ダライアス』……。『忍者ハヤテ』なんてLDゲームもあったっけ。全部が全部大成功というわけでもなかったし、今ももろ手を挙げて名作というにははばかられる、エッジすぎる迷作も少なくなかった。それでも我々は新作ゲームに挑み続けていたではないか。新たなジャンルのゲームが登場したなら、我先にと台に列をなしたじゃないか。仮にゲームセンターという文化が緩慢な死を迎えつつあるとするならば、その戦犯は新たなゲームに対する好奇心を失った、我々オールドゲーマーだったのではないだろうか。 IMG_8824_.jpg IMG_8825_.jpg  というわけで、書を捨てゲームセンターに行ってみた。そこには、最新技術が惜しみなくつぎ込まれた未知のアーケードゲームが待ち構えていた。ゲームセンターならではの大画面や大音響に圧倒されつつプレーする久々のアーケードゲームは、すっかりおっさんになってしまった筆者にはちょいとばかりテンポが速すぎるような気もしたが、まあ、何回かトライ&エラーを繰り返すことで対応できるようになるだろう。見知らぬプレイヤーとのやりとりも、存外に面白い。対戦後のコメントのやりとりにはニヤリとさせられることも多いし、うまく連携がハマった時の「つながっている感」はオンラインゲームならでは。  こんなふうにアーケードゲームの面白さを再確認させてくれたことだけでも、本書の存在意義は大きい。それもこれも、業界の広告媒体となった大手ゲーム雑誌には出せないゲーム愛あふれる誌面づくりがあればこそ。ただの情報誌として以上に、ゲームファンならいつもそばに置いておきたい一冊である。 (文=有田シュン)