「やっぱり、ほしのあきと……!」100億円をカジノで失った大王製紙前会長の“華やかすぎる”懺悔録『熔ける』

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『熔ける 大王製紙前会長・井川意高の懺悔録』(双葉社)
 井川意高・大王製紙前会長といえば、複数の自社関連会社から借り入れた総額100億円以上の大金をカジノで失うという私的使用が発覚し、2011年11月に東京地検特捜部に背任容疑で逮捕された人物。今年6月には懲役4年の実刑が確定。10月には収監され、現在は受刑中の身である。  そんな井川前会長が収監前に書き上げていたという“懺悔録”が、11月13日に出版される。タイトルは『熔ける 大王製紙前会長井川意高の懺悔録』(双葉社)。国内シェア第3位を誇る製紙メーカー創業家の長男として生まれ、幼き頃からスパルタ教育と帝王学を叩き込まれた井川前会長が、エリート街道を歩みつつ、なるべくして大王製紙のトップに就いたものの、カジノで身を滅ぼしていくさまが克明に描かれている。  中でも注目が集まるのが、逮捕後、週刊誌などで頻繁に報じられてきた女性芸能人との関係だ。本書の惹句にも「東大に現役合格、赤字子会社を立て直した20代、42歳で社長就任、有名人との華麗なる六本木交遊、噂に上がった女性芸能人たち……すべてを手にしていたはずの男は、なぜ“カネの沼”にハマり込んだのか?」と、気になる言葉が並んでいる。  井川前会長と「噂に上がった女性芸能人」といえば、藤原紀香やほしのあき、熊田曜子らが有名だ。本書でも当然、彼女たちには触れているのだが、その記述はキワどくも、無難なところに落ち着いている。  まずは、藤原紀香。「噂になった女性有名人との本当の仲」との項で真っ先に触れられているのだが、なぜか彼女だけ匿名扱いである。  「今や日本を代表するセクシーな大物女優」と藤原サイドに気を使った表現で、「私とその女優とは、何か深い関係があったわけではなく、単なる昔からの古い友人の一人だ」と、肉体関係があったことを否定。それでいて、井川前会長の軽井沢の別荘に彼女が来た時には、他の友人と一緒にプールやサウナに入ったなどという親密エピソードを披露している。  対して、興味深いのが、ほしのあきに関する記述だ。ほしのとは、22歳の頃から、ブレークするまでは、月1~2回は食事する間柄だったという。井川前会長が飲みの席から「遊びにこない?」と電話をすると、「たとえ忙しかろうとも、20分でも30分でも顔を出してくれる」。さらに、ほしのからローションティッシュという高級ティッシュをおねだりされると、「かわいいヤツじゃないかと苦笑しながら、ほしのさんにダンボール1箱分のローションティッシュをプレゼントしてあげた」と述懐している。  そんなほしのに対して井川前会長は、肉体関係の有無は言及していない。藤原とは、はっきりと「深い関係はない」と断言しておきながら、ほしのにはそれをしないということは、読者の印象からしたら「クロ」だろう。本書の中でも、ほしのについては最も紙幅を割いており、特別な関係性がうかがえるのだ。  ほかにも、噂の相手として名前が出たことがある、熊田曜子や山本梓とは一度しか会ったことがないとし、櫻井淳子とは2~3回飲みの席で一緒になった程度、滝川クリステルとは会ったことすらないとしている。  また本書には、夜の街で接点を持った有名人たちとのエピソードが多数綴られている。宮沢りえや市川海老蔵、岩佐真悠子、AKB48のメンバーらとおぼしき少女らの“いかにも”な、夜の顔の描写も面白い。さらに、女性芸能人との交遊と同様、週刊誌などで報じられた「関東連合」や同組織の元リーダー・石元太一との関係にも言及している。  ただ、本書の読ませどころは、あくまで井川前会長の華麗なる半生とカジノによって没落していく様子。有名人との交遊録を売りにはしているものの、“暴露本”という要素は薄い。腐っても、華麗なる一族の御曹司。「誰や誰とナニしたのか?」という下衆の心には付き合ってくれていないのが残念だ。

なんでこんなところに!? 崖、島、絶景にぽつんと建つ家々の写真集『世界の絶景の家』

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『世界の絶景の家』(エクスナレッジ)
 世の中、とんでもない絶景に家があるもんだ!   『世界の絶景の家』(エクスナレッジ)は、「うわぁ~、すごい!」と、口に出さずにはいられない絶景に建つ家々の写真集。モロッコのサハラ砂漠、グリーンランドの氷山、スペイン・アンダルシアのひまわり畑、ブータンの標高3000メートル以上の断崖絶壁……などなど、世界中が舞台で、誰かの家だけでなく、ホテル、教会、僧院も含め、55カ所が紹介されている。あまりの美しさに、“世の中にはこんな素晴らしい絶景があるのか”と、心がワナワナと震えるが、同時に“なんでまたこんなところに!?”と疑問も膨らむ。  ゆっくりとページをめくっていく中で「おぉ、ここは!」と目に留まったのが、以前、筆者が訪れたことがある、ボリビアのウユニ塩湖の「塩の家」。  近年、旅行者を中心に話題のスポットなので知っている人も多いかもしれないが、ウユニ塩湖は、南北約100キロ、東西約120キロに広がる塩の湖で、雨季には鏡のように空が湖に映し出され、「天空の鏡」と表現される。その景色が、本当にこの世の景観とは思えぬ美しさで、夜になると見たこともない数の星が湖に映り込み、まるで宇宙にやってきたかのようになる。「塩の家」は、そんな素晴らしき景色を一晩中、満喫できるホテルで、本書『絶景の家』の世界の中に入り込めるのだ。
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本書より
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 ただ、絶景ということは、イコール辺鄙な場所。とんでもない場所であり、究極に不便な場所の可能性がある。このホテルも、電気は大人数お客さんが宿泊した時だけに点灯し、普段はろうそくのみ。当然、お風呂にも入れないし、水や食料はとても貴重。朝食に出されたパンはいつもなのか、運が悪かったのか、カピカピ。そんな状況ではあったが、それでも、この景色を見たいがために、ウワサを聞きつけ、旅行者が次々にやってくる。  本書には、ウユニ塩湖のほか、モンゴルのテレルジ国立公園内の巨大な岩の前に建つ家や、高さ82メートルの溶岩の頂にある、フランスのサン・ミッシェル・デギレ礼拝堂、見上げればオーロラがゆらめく、アラスカのデナリ国立公園内の小屋など、実際に訪れることができる場所も多く紹介され、旅好き、絶景ファンにとっては、情報収集できる本としても大いに役立つ。ページをめくるたびにじーっと見入ってしまい、「あぁ、行ってみたい!」と、どうしようもなく旅に出たくなる一冊だ。 (文=上浦未来)

メディアの注目度もアップ中! ネトウヨのアイドル“竹田恒泰萌え”とは?

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『竹田恒泰責任編集 日本を元気にする本』(学研パブリッシング)
 2020年の東京オリンピック開催決定の効果で今、滝川クリステルが注目を浴びているが、実はもう一人、にわかに引っぱりだこの人物がいる。それは、JOC竹田恒和会長の息子で、「明治天皇の玄孫」である慶應義塾大学の非常勤講師・竹田恒泰だ。最近はワイドショーをはじめ、『もてもてナインティナイン』(TBS系)や『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)などのバラエティ番組にも出演。“旧皇族”という肩書と強気な反韓発言で、ネット上では「若きイケメン」「たたずまいに気品がある上に、日本古来の伝統を体現した本物の教養を持つ人」と、ネトウヨを中心に支持を集め、辛酸なめ子にも「聖なる王子様」と呼ばれる人物だ。  その人気を象徴するように、9月には“まるごと一冊 竹田恒泰”を謳ったムック『竹田恒泰責任編集 日本を元気にする本』(学研パブリッシング)を発売。「日本に新しい風を吹かせる貴公子を徹底解剖」しているのだという。果たして、ネトウヨを魅惑する気品とはいかなるものか、この本から紹介しよう。  まず、ページをめくって早々に度肝を抜かれるのが、『日本で一番忙しい男と行った「サハリン鎮魂の旅」同行記』なる記事だ。北方領土返還を求めている竹田の活動にスポットを当てた旅行記なのだが、竹田は日本最北端にある宗谷岬の突端に立ち、唐突に「樺太を返せぇぇぇーーー!」とロシアに向かって絶叫。立ち寄った北方記念館では、樺太で殉死した乙女の写真を見て「おんのれぇ~!」と怒りをたぎらせたという。これには同行した編集者さえも思わず「ええええええっ」と引き気味なのだが、確かに「明治天皇の玄孫」をウリにする人物とは到底思えない言葉遣いの荒さは、かなり気になる。Q&Aのコーナーでも「歴史上の人物でなってみたいのは?」と聞かれ、「大日本帝国連合艦隊司令長官の山本五十六。もう一度アメリカとやったら、今度は勝てると思うから」と勇ましく答えているが、この“口だけ番長”感は……ちょっとコワい。  さらにプライベートを明かしたコーナーでは、湘南の閑静な住宅街の一角にあるという邸宅を紹介。明治天皇から竹田家に贈られたというステンドグラスや、「皇室御用達」の籐椅子などをアピールしているが、ご自慢の「後陽成天皇真筆の掛軸」も人からもらったものだといい、お宝である『孝明天皇紀』もインターネットの古本屋サイトで購入したというから、「旧皇族」というよりも“皇室オタク”のようなノリである。  しかも、愛車のロールスロイスは「カーセンサー」で探して購入したそうで、こだわりの財布を披露したくだりでは、財布を買うと最初の2週間は「財布に可能性を気づかせるため」に、入る限りの1万円札を入れるという「金運上昇法」を紹介。そういえば、過去には貸倉庫の保管料滞納をめぐって、父・恒和と揃って“詐欺師親子”と「週刊新潮」(新潮社)に書き立てられたこともあった彼。本書では、「今まで食べた中で一番高額な料理は?」という質問に「東京六本木の纏鮨だって5万円くらいだろうし。そんな高い料理って、食べたことありましたかね」と中途半端なセレブ感を披露しているものの、意外とその内情は厳しいのでは? と邪推したくなる部分も……。  ただ、「旧皇族」と紹介されることも多いが、終戦後に皇籍離脱していることを考えれば、恒泰に皇族だった時期は一度もない。しかし、本書でも“竹田宮の血統の高貴さ”を強調したりと、並々ならぬ皇族への強いこだわりを見せている。とくに昨年、女系天皇問題に際して「旧皇族の一族(一部)が集まって皇統の問題を協議しました」「いざとなったら男系を守るために、一族から復帰者を用意する必要があると意見が一致しました」と発表するなど、皇族復帰を画策しているように映る行動も。一応、「もちろん、自ら皇籍復帰を希望する者はいませんが」と断ってはいたが、家を重んじる割に38歳にして独身であることから、ネット上では「愛子様との結婚を狙っているのでは?」という声も上がっているほど。そんなまさかと思うが、結構やりかねない感があるから、これは目が離せない。  ちなみに本書の見どころは、思いのほか、本人の写真が多用されていることだろう。明治神宮の鳥居をバックにニッコリ微笑む竹田、海に向かって何かを叫んでいる様子の竹田、リビングでくつろぐ竹田──はっきり言ってビジュアルは“残念な長谷川博己”“面長になったくるりの岸田繁”といったところだが、「旧皇族」ならば、これでもイケメンとして許される……のだろうか? (文=エンジョウトオル)

祝AKB48論客卒業! 小林よしのり“AKBトンデモ語録”を振り返る

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『ゴーマニズム宣言スペシャルAKB48論』(幻冬舎)
 戦争論や天皇論で鳴らした『ゴーマニズム宣言』よりも、いまや“AKB論客”と呼ぶべき存在となってしまった、マンガ家の小林よしのり。昔からのファンには「ただのロリコンに成り下がった」と揶揄され、片やAKBファンからは「また指原の悪口かよw」と半笑いされるという悲しいポジションにも負けず、中森明夫や宇野常寛、濱野智らとAKB語りを続けてきた。しかし、9月末に発売した『ゴーマニズム宣言スペシャルAKB48論』(幻冬舎)をもって「『AKB評論家』として積極的に広告塔を引き受けるようなヲタは卒業したい」と宣言。本書ではAKBに現代日本の希望を見だしたり、独自のヲタ論などを展開している。そこで今回は、AKBの発展にくみしてきた小林に敬意(!?)を表して、これまで物議を醸した小林のAKB発言を振り返りたいと思う。  まず取り上げたいのは、「かなりアウト」な、キモさスレスレの迷言だ。いつ仕事してるのか? と心配してしまうほど、AKBグループ公演や発売されるシングル、PV、出演番組などの感想を逐一ブログにしたためてきた小林。その中には、推しメンが増加して困った際に発した「困惑こんこん丸だよ」のように、ファンも引いてしまうほどのキモ発言も度々登場してきた。  例えば、河西智美の写真集が「児童ポルノに抵触しているのでは?」と騒動になり雑誌回収&写真集発売中止に陥った時には、小林は問題となった写真を「聖母と天使の宗教画みたいで、少し残念。微笑ましいという感覚が、エロを減殺してる」と表現。あれが宗教画に見えるというのだから、「どうみてもエロだろ」というツッコミも野暮と言わざるを得ない、すべてを封殺してしまう、空恐ろしい擁護である。  また、常日頃から「(メンバーは)娘みたいなもの」と言ってはばからない小林だが、「BUBKA」(白夜書房)でHKT48のメンバー数人と対談を行ったあとの「わしから見れば、みんな赤ちゃんみたいに顔がかわいくて、ミルク飲ませたくなった」という発言は、さすがにドン引きな一言。赤ちゃんみたいと言いつつも、ミルクという言葉が持つ“含み”くらい気付いていると思うのだが……。  だが、よしりん先生が最も大きな話題をさらったのは、『アウト×デラックス』(フジテレビ系)出演時の「大島優子とセックスしたい」発言だろう。『AKB48論』でも、その後、大島から「私はあの発言、うれしかったんですよ」「だって、AKBの中で私だけが女として見られているってことですから」と言われたことを明かし、「なんという頭のよさ! なんという優しさだろう!」と優子評価がさらに高まったことを描いている。これは小林のキモさというよりも、60絡みのオッサンをいとも簡単に籠絡してしまう大島の“オヤジ転がし”ぶりをあぶり出した名エピソードといえるだろう。  このように、AKBにハマッたおじさんの痛さをものの見事に体現してきた小林だが、その一方で“AKB言論”として果たした役割はとても大きい。たとえば、前出の河西智美が「週刊文春」(文藝春秋)にAKS社長の窪田康志との「お泊まり不倫」を報じられた際、あらゆるメディアは“黙殺”したが、小林は「あまりにも河西のイメージ通りで、がっかりだ」と世間の声を代弁するかのような一言を発表。そればかりか「運営会社の社長ってのも、どうかしてるぜ 自社の商品に手をつけるのは、芸能界では普通なのか?」と、毅然とその“喜び組体質”を批判したのである。  また、同じように各メディアには黙殺されたが、「文春」が柏木由紀とJリーガーの合コンを暴いた時も、「世間的には20歳過ぎの女性が朝までコンパしたって非難はできないが、わしが父親なら娘を叱る」「公式に謝罪だけはしたほうがいいとわしは思う」と明言。本来はAKBのシステムを語る上で言及すべき“暗部”にも踏み込む姿勢は、臭い物にはフタをし、運営のご機嫌をうかがって嬉々と「恋するフォーチュンクッキー」を踊る宇野や濱野とは一線も二線も画す部分だろう。  ……とはいえ、この小林の態度は“推しメン外のスキャンダル”だからこそ強気ともいえる。前田敦子が佐藤健との合コンで“泥酔お尻丸出し”写真を撮られ、その現場に居合わせた大島がコンサートで泣いて謝罪した時には、「前田敦子が今もっとも信頼を寄せてるのが大島優子なんだから、あっちゃんが好きな男にコクる場面に立ち会ってやるのは友情じゃないか」と、無茶苦茶な論理で援護。逆に“天敵”である指原莉乃のスキャンダルが発覚した際には「写真を流出させたりするようなしょうもない男と付き合ってしまう脇の甘さ」と、かわいそうなほどに非難している。この都合の悪い話には目をつぶり、都合がいい話は思いきり強調する点は『ゴー宣』の方法論と同じ。ついでに言うと『AKB48論』では、指原の顔がかなり憎悪に満ちた描き方がされているのだが(まともに描いた箇所には、わざわざ「かなりかわいく描いてしまったかも」と書き添えるほど)、これも『ゴー宣』ではおなじみの“味方=美麗、敵=悪人顔”という描き分けと一緒である。このことからもわかるように、小林がネタとして指原に暴言を吐いていたのではなく、かなり本気で嫌っているようだ。  ──こうして小林の発言を振り返ると、ツッコミどころは多々ありながらも、ある意味ヲタを楽しませ、運営に一石を投じてきた部分があることは確か。中には小林の“卒業宣言”に対して、「AKB評論家として引退してもヲタは辞めないだろうから、またきっと復活してくれるはず」と期待を寄せる者も少なからずいるようだ。だが、忘れてはいけないのは、あれだけ入れ込んでいた薬害エイズ問題でも運動がある程度の成果を挙げた途端、手のひら返しをして川田龍平批判を始めたり、『戦争論』や「新しい歴史教科書をつくる会」で若者の右傾化をさんざん煽りながら、突如ネトウヨ批判に転じたりという“前科”があること。熱を上げるものの、冷めるのも早いよしりん先生。もしかしたら、そのうち「AKBが日本をダメにした」などと言い出したりして……!? (文=エンジョウトオル)

祝AKB48論客卒業! 小林よしのり“AKBトンデモ語録”を振り返る

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『ゴーマニズム宣言スペシャルAKB48論』(幻冬舎)
 戦争論や天皇論で鳴らした『ゴーマニズム宣言』よりも、いまや“AKB論客”と呼ぶべき存在となってしまった、マンガ家の小林よしのり。昔からのファンには「ただのロリコンに成り下がった」と揶揄され、片やAKBファンからは「また指原の悪口かよw」と半笑いされるという悲しいポジションにも負けず、中森明夫や宇野常寛、濱野智らとAKB語りを続けてきた。しかし、9月末に発売した『ゴーマニズム宣言スペシャルAKB48論』(幻冬舎)をもって「『AKB評論家』として積極的に広告塔を引き受けるようなヲタは卒業したい」と宣言。本書ではAKBに現代日本の希望を見だしたり、独自のヲタ論などを展開している。そこで今回は、AKBの発展にくみしてきた小林に敬意(!?)を表して、これまで物議を醸した小林のAKB発言を振り返りたいと思う。  まず取り上げたいのは、「かなりアウト」な、キモさスレスレの迷言だ。いつ仕事してるのか? と心配してしまうほど、AKBグループ公演や発売されるシングル、PV、出演番組などの感想を逐一ブログにしたためてきた小林。その中には、推しメンが増加して困った際に発した「困惑こんこん丸だよ」のように、ファンも引いてしまうほどのキモ発言も度々登場してきた。  例えば、河西智美の写真集が「児童ポルノに抵触しているのでは?」と騒動になり雑誌回収&写真集発売中止に陥った時には、小林は問題となった写真を「聖母と天使の宗教画みたいで、少し残念。微笑ましいという感覚が、エロを減殺してる」と表現。あれが宗教画に見えるというのだから、「どうみてもエロだろ」というツッコミも野暮と言わざるを得ない、すべてを封殺してしまう、空恐ろしい擁護である。  また、常日頃から「(メンバーは)娘みたいなもの」と言ってはばからない小林だが、「BUBKA」(白夜書房)でHKT48のメンバー数人と対談を行ったあとの「わしから見れば、みんな赤ちゃんみたいに顔がかわいくて、ミルク飲ませたくなった」という発言は、さすがにドン引きな一言。赤ちゃんみたいと言いつつも、ミルクという言葉が持つ“含み”くらい気付いていると思うのだが……。  だが、よしりん先生が最も大きな話題をさらったのは、『アウト×デラックス』(フジテレビ系)出演時の「大島優子とセックスしたい」発言だろう。『AKB48論』でも、その後、大島から「私はあの発言、うれしかったんですよ」「だって、AKBの中で私だけが女として見られているってことですから」と言われたことを明かし、「なんという頭のよさ! なんという優しさだろう!」と優子評価がさらに高まったことを描いている。これは小林のキモさというよりも、60絡みのオッサンをいとも簡単に籠絡してしまう大島の“オヤジ転がし”ぶりをあぶり出した名エピソードといえるだろう。  このように、AKBにハマッたおじさんの痛さをものの見事に体現してきた小林だが、その一方で“AKB言論”として果たした役割はとても大きい。たとえば、前出の河西智美が「週刊文春」(文藝春秋)にAKS社長の窪田康志との「お泊まり不倫」を報じられた際、あらゆるメディアは“黙殺”したが、小林は「あまりにも河西のイメージ通りで、がっかりだ」と世間の声を代弁するかのような一言を発表。そればかりか「運営会社の社長ってのも、どうかしてるぜ 自社の商品に手をつけるのは、芸能界では普通なのか?」と、毅然とその“喜び組体質”を批判したのである。  また、同じように各メディアには黙殺されたが、「文春」が柏木由紀とJリーガーの合コンを暴いた時も、「世間的には20歳過ぎの女性が朝までコンパしたって非難はできないが、わしが父親なら娘を叱る」「公式に謝罪だけはしたほうがいいとわしは思う」と明言。本来はAKBのシステムを語る上で言及すべき“暗部”にも踏み込む姿勢は、臭い物にはフタをし、運営のご機嫌をうかがって嬉々と「恋するフォーチュンクッキー」を踊る宇野や濱野とは一線も二線も画す部分だろう。  ……とはいえ、この小林の態度は“推しメン外のスキャンダル”だからこそ強気ともいえる。前田敦子が佐藤健との合コンで“泥酔お尻丸出し”写真を撮られ、その現場に居合わせた大島がコンサートで泣いて謝罪した時には、「前田敦子が今もっとも信頼を寄せてるのが大島優子なんだから、あっちゃんが好きな男にコクる場面に立ち会ってやるのは友情じゃないか」と、無茶苦茶な論理で援護。逆に“天敵”である指原莉乃のスキャンダルが発覚した際には「写真を流出させたりするようなしょうもない男と付き合ってしまう脇の甘さ」と、かわいそうなほどに非難している。この都合の悪い話には目をつぶり、都合がいい話は思いきり強調する点は『ゴー宣』の方法論と同じ。ついでに言うと『AKB48論』では、指原の顔がかなり憎悪に満ちた描き方がされているのだが(まともに描いた箇所には、わざわざ「かなりかわいく描いてしまったかも」と書き添えるほど)、これも『ゴー宣』ではおなじみの“味方=美麗、敵=悪人顔”という描き分けと一緒である。このことからもわかるように、小林がネタとして指原に暴言を吐いていたのではなく、かなり本気で嫌っているようだ。  ──こうして小林の発言を振り返ると、ツッコミどころは多々ありながらも、ある意味ヲタを楽しませ、運営に一石を投じてきた部分があることは確か。中には小林の“卒業宣言”に対して、「AKB評論家として引退してもヲタは辞めないだろうから、またきっと復活してくれるはず」と期待を寄せる者も少なからずいるようだ。だが、忘れてはいけないのは、あれだけ入れ込んでいた薬害エイズ問題でも運動がある程度の成果を挙げた途端、手のひら返しをして川田龍平批判を始めたり、『戦争論』や「新しい歴史教科書をつくる会」で若者の右傾化をさんざん煽りながら、突如ネトウヨ批判に転じたりという“前科”があること。熱を上げるものの、冷めるのも早いよしりん先生。もしかしたら、そのうち「AKBが日本をダメにした」などと言い出したりして……!? (文=エンジョウトオル)

お蔵入り、連載中断、編集長交代……未完マンガはどうして生まれるのか?

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『別に放り出した訳ぢゃないんだけど…。~未完の漫画が或る理由~藤沢とおる単行本化初作品集』(一迅社)
 世の中には、いつまでたっても続きが出ない。なぜかはわからないが、未完のまま休載中、もしくは終了してしまったマンガがたくさんある。『ドラえもん』や『イタズラなkiss』のように、作者が亡くなってしまった場合は仕方がないが、やはりせっかく楽しみに読んでいたのに、いつまでたっても未完のままというのはどうも気持ちが悪いもの。しかし、そんな読者のモヤモヤした思いに答えるマンガが登場した。それが、『別に放り出した訳ぢゃないんだけど…。~未完の漫画が或る理由~藤沢とおる単行本化初作品集』(一迅社)だ。  『GTO』の作者としても知られる藤沢とおるが、完結していなかったり、短すぎたりして今後コミックスが出る予定のない作品ばかりを集めて作ったというこの本。未完のままここに収録されたマンガに対して、なぜ未完になってしまったのか。なぜ単行本にならなかったのか、というエピソードを語ったインタビューも掲載されているので、そこからどうして未完マンガや未収録マンガが生まれるのか見てみよう。  まず1つ目は、自分がギブアップしてしまった場合。藤沢がもともと「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載していたという『ひみつ戦隊モモイダー』は、モモイダーという改造人間の女の子5人組が登場する、ゆるーいギャグマンガだった。でも、これは作者にとって「初のショートマンガ」だったので、毎回オチを考えるのがつらくなってきて「ギブアップしちゃった」そう。この本に収録されているのは単行本化した後に描いた読み切りで、ページ数も16しかなく、次の単行本をつくるためにはあと170Pほど描き下ろさなければならなかったので、そのままお蔵入りになってしまっていたようだ。こんなふうに、自分の意思でやめたのなら未完でもまだ納得できる。  自分の意思は関係なく、雑誌自体が廃刊になってしまうことも。5年ほど前、「コミックチャージ」(角川書店)という月刊誌で連載されていた『あんハピっ!』がまさにそれだ。この作品は、疫病神と呼ばれている警部・黒天あん子と何度も死にそうになりながら決して死なない強運の持ち主・桜庭刑事が出会ってコンビを組み、事件を解決していくというもの。しかし、雑誌がなくなってしまったので、彼らがコンビを組んだところで話は終わっている。当時はどんどん新興雑誌が出ていたらしいが、「どれも創刊して数カ月とかさ、1年以内に廃刊になっちゃった」んだそう。「個人的にも続けたかった」と語っているが、やはり雑誌がなくなってしまったら自分の力だけではどうにもできないし、仕方がないのかも。  さらに、編集部とモメて、やめてしまう場合もあるようだ。『愛しのDUTCHOVENガール』というグルメマンガは、連載中に編集長が交代し、「編集部の方針が変わったとかで、いきなり作品内容を変えろ」と言われてしまったそう。納得できず、編集長を呼ぼうとしたら、編集長は「来やしない」。しかも、その理由が「打ち合わせの時間帯が夜」だから。作者は昼に仕事をしているので、編集と話す時間はおのずと夜になってしまうのに、マンガの仕事は二の次にして「編集長の都合に合わせろ」と言われたら、さすがに怒りも湧いてくる。あと1話分ぐらいで単行本にもできたし、まだ主人公の顔も見えていないのに、こんなに中途半端な形で終わってしまったのは残念だろう。それに、作品に対する愛着はあっただろうし、担当編集との仲も悪くはなかったそうなので、余計に腹立たしいかもしれない。  きっと、ほかの作者の未完で終わっているマンガや単行本に収録されなかった作品には、こんなふうにさまざまな事情があるのだろう。でも、その理由がわかっていれば読者も少しは納得できるし、もし作者本人が「描きたくない」「描けない」というわけではないのなら、「描いてほしい」「待っている」と伝えることもできる。そうすれば悲しい思いをする人も少なくなるので、作者のみなさんには、せめて未完の理由を教えていただきたいものだ。

吉野家、マック、サイゼリア……同じ味なはずなのに何かが違う?『全国飲食チェーン本店巡礼』

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『全国飲食チェーン本店巡礼 ルーツをめぐる旅』(大和書房)
 モスバーガー、CoCo壱番屋、ガスト、てんや、餃子の王将、牛角、築地銀だこ……などなど、日本中にあふれる全国飲食チェーン店たち。これらの記念すべき1号店は、一体どんなお店だったのか?  そのルーツに迫った本が『全国飲食チェーン本店巡礼 ルーツをめぐる旅』(大和書房)だ。チェーン店といえば、同じ味に、同じメニュー、同じような店内……と、何もかも「だいたい一緒」が大前提のような気がするのだが、本店は何かが大きく違う! 「天下一品総本店」本店で食べたラーメンの味に感動した著者が、本店めぐりに目覚め、ブログ「本店の旅」を開設。本書を出版するに至った。TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』「本店道特集」をはじめ、メディアで話題沸騰中の新感覚グルメガイドなのだ。  紹介されている48店舗はどれも超有名飲食チェーン店で、その誕生秘話やエピソードは、“今まで何度も訪れていたお店にこんなルーツが!”と驚かされることばかり。だが、その中でも群を抜いて内容が濃かったのが、日本牛丼界のドン「吉野家」だ。  彼のお店の本店は築地市場場内にあり、創業はなんと1899年! ほかの飲食チェーン店が1970年代から急増したのと比べると、ダントツで歴史が長い。本店は今でも牛丼ひと筋で、「つゆだく」「ねぎだく」「つゆだくだくねぎだく」「あたま」など、独特の注文が繰り出され、それを店員さんは伝票を取らず、すべて頭に叩き込む。かつて吉野家といえば、どの店舗でも伝票を使わず、“みんなよく覚えられるな~”と思っていたのだが、いつしか伝票制になり、寂しくもあったが、ここ本店では健在だ。  お客は築地市場で働く、食にうるさいプロが常連で、味に厳しく、極端にせっかち。そんな中で生まれた「はやい・うまい・やすい」の牛丼文化が、本店を訪れれば、身に染みて体感できる。本書には、吉野家の成り立ちが、さらに深く掘り下げて書かれているので、一度その事実を確認してから訪れてみれば、かなり感慨深いものになるはず。  なお、「本店巡礼作法」なるコーナーがあり、どうやって満喫するかも紹介されているので、地元で人気のチェーン店などがあれば参考にして、全国あちこちへ出かけてみよう! (文=上浦未来)

“同性愛嫌い”ではなかった!? 石原慎太郎が書いた「BL小説」のすごい中身

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『石原慎太郎を読んでみた』(原書房)
 ロシアが今年施行した「同性愛宣伝禁止法」という同性愛差別を肯定した法律によって、ソチ冬季五輪のボイコット運動が世界各地で勃発している。この騒動を見ていてつくづく思うのは、石原慎太郎が都知事を辞めていてよかったということだ。ご存じの通り、石原といえば数々の“同性愛差別発言”で知られる人物。同性愛者に対し「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう」と暴言を吐いたり、過激な性表現が焦点となっていた都青少年健全育成条例改正案をめぐる発言でも、なぜか「テレビなんかにも同性愛者が平気で出るでしょ。日本は野放図になりすぎている」と論点と思いきりズレた話を展開し始めたりと、賛成派さえ困惑に陥れたことも。  プーチンにも負けず劣らずの、同性愛を憎悪するホモフォビア日本代表──。しかし、そんな石原に思わぬ過去があった。なんと、こともあろうかBL小説を書いていたというのだ。  石原がしたためたBL小説とは、『待伏せ』という1967年に発表された短編。今では読むのが困難な作品だが、これを発掘しているのが、書評家・豊﨑由美と評論家・栗原裕一郎の対談本『石原慎太郎を読んでみた』(原書房)だ。  同書によれば『待伏せ』は、石原がベトナム戦争真っただ中に現地へ取材に出かけた後に執筆した作品。ベトコン討伐のために掘った穴で夜を過ごす主人公が、「光も音も何もない空間で、だんだん現実感が薄れていって、自分の身体感覚すらも失われてしまう極限状態」が描かれているという。  問題はここからだ。主人公は状況にたまらなくなり、隣のカメラマンに手を伸ばす。すると、相手もぎゅっと指を握り返すのだ。そして、<二人の手は互いに躊躇しながらさぐり合い、相手を握りしめる>のである。さらに物語は、<いつ離していいのか迷いながら、二つの手はからんだまま、地の上に置かれてあった>と続く……。  これには栗原も「初体験のシーンなんかに転用できそうな描写が続きますが、これはやはりあれですか、萌え?(笑)」と言い、豊﨑も「萌えでしょう!」と大きく同意。背中に「コワイ」「ナガイ、ヨル」などと文字を書き合って会話するという少女マンガも真っ青な胸キュンシーンもあり、石原嫌いで知られる豊﨑でさえ「かーわーいーいー!」と発言してしまうほど。「セックスよりも濃いっ」とBL萌えのお墨付きを与えるだけでなく、「たとえ芥川賞候補作であっても、A評価で推せるくらいの秀作ですよ」と、純文学としても高く評価している。  芥川賞さえ獲れちゃうほどのBL小説……都青少年健全育成条例改正案の騒動ではBLを愛する腐女子にとっても敵対関係だった石原だが、果たして彼のBL作品はいかなるものか。ぜひ読んでジャッジを下してみてほしいものだ。

写真家はレントゲン写真の夢を見る? X線写真家が写し出す、美しきスケルトンの世界

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『世界で一番美しいレントゲン図鑑』(エクスナレッジ)
 昔、『志村けんのバカ殿様』で、女性の服が透けて見える眼鏡というコントをやっていた。ゴールデンタイムでおっぱいを放送するのにまだ寛容だった時代。男子たちは突如現れたおっぱいに、こぞって注目をした。そして、ひとしきり笑った後、「ああ、こんな眼鏡があれば……」と誰しもがため息をついたものだ。  外からはうかがい知ることができない内面への欲求は、男子ならずとも普遍的なもの。そんな欲求を具現化したような写真集が『世界で一番美しいレントゲン図鑑』(エクスナレッジ)だ。イギリス人写真家、ニック・ヴィーシーによる、タイトル通り、レントゲン写真によってスケスケの美しさを描き出した一冊となっている。  防護服に身を包み、防護グラスで完全防備する様子からは、とても写真家に見えないニック。彼の仕事場は写真スタジオではなく、厚さ700ミリの高密度コンクリートでできた専用のレントゲンハウス「ブラックボックス」。ここでX線写真を撮影し、現像したフィルムをスキャン。パソコンで編集を行った上で、ため息が出るばかりに美しいスケルトン写真を完成させていく。
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本書より(以下、同)
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 これまでに数千枚のX線写真を手がけてきた写真家は、被写体としてさまざまなジャンルのものに挑戦する。本書でも、スニーカー、自転車、電球、ゲーム機、パソコン、ギターなどの物体をはじめ、中指を立てられた手、バスに乗る人々、イギリスのバンド「スーパーグラス」のメンバーなどを撮影。また、花や昆虫などの自然物や、おそらくファッション誌には掲載されることのないスケルトンの洋服写真など、そのレンズは多岐にわたる物体に向けられる。  中でも彼の代表作となるボーイング777の写真は圧倒的だ。数カ月の制作期間をかけ、500個を超えるボーイング777の部品をX線写真で撮影。格納庫に納められたボーイング777の内部が再現されている。この一枚で、ニックは数々の写真賞を受賞した。  しかし、この風変わりなスタイルによって、彼は普通の写真家には考えられないような苦労をする。人体に有害な強い放射線を使用するため、生きているモデルは使えない。フリーダと呼ばれる骸骨を使用したり、献体された遺体にポーズを取らせて撮影する……と、あまり気分のよくない撮影も強いられるそうだ。撮影の最中の事故で2度も被ばくを経験しているし、夢で見る映像もX線写真のようになってしまうという。 41pmXgX2RlL._SS400_.jpg  では、なぜそこまでの危険や苦労を冒しながら、彼はX線写真を撮影するのだろうか? その意図について「僕たちは見た目にとらわれた世界に生きている」と語るニック。「表面の下にあるものを見せることによって、そのような表面的な外見へのとらわれに対抗したい」と、単なる好奇心や美的欲求だけではなく、明確なコンセプトのもとに、彼はX線写真を撮り続けている。  医療目的のみならず、郵便物のチェックや空港の手荷物検査などでもX線写真は使用されている。「監視社会に貢献する装置と技術でアートを作り、僕たちの生活から個性と自由を奪いかねない複雑で高度な機器を使って美を生み出すことができたら実に楽しい」と語る写真家。彼にとって、X線写真は社会への挑戦も意味している。毒を薬に変えることによって、新たな美を生み出しているのだ。  一時期より薄れたとはいえ、福島第一原発の事故以降、日本人は放射線の恐怖を意識しながら暮らしている。雑誌や広告にも使用されている彼の写真は、単なる美的趣味だけにとどまるものではない。原発事故を経験し、放射線を身近に感じざるを得ない日本人だからこそ、また違った角度から美しさを眺められるのではないだろうか? (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●ニック・ヴィーシー 1962年、イギリス出身。独学で写真を学び、数々の賞を受賞。『世界で一番美しいレントゲン図鑑』は2008年度IPA国際写真家協会賞書籍部門第1位獲得。

「阿漕」「引っ張りだこ」「金字塔」の語源は? 百聞は一見に如かず『目でみることば』

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『目でみることば』(東京書籍)
 「几帳面」って、何かの面のこと? 「図星」の図って? 「羽目を外す」の羽目は? 普段、何気なく使っている言葉も、よくよく考えてみると一体なんのことやら、なぜこんな表現を? と疑問を感じることが多い。  『目でみることば』(東京書籍)はバカバカしくも大真面目に、言葉の語源を写真で表現した、非常に画期的な写真集。例えば、ずうずうしく、あくどいという意味で使われる「阿漕(あこぎ)」。この言葉には穏やかな海の写真が紹介されていて、一瞬“んっ?”と首をかしげさせられるのだが、実は阿漕の由来は、三重県津市に実在する阿漕ヶ浦。ここは、伊勢神宮に供える魚を獲るための漁港で一般的には禁漁区なのだが、かつては密猟をする人が絶えず、あくどい商売をする人のことを、こう呼ぶようになったのだという。  また、悪事や欠点を隠したつもりでも、その一部がバレてしまう「頭隠して尻隠さず」は、『古事記』『桃太郎』などにも登場する、日本で昔から親しまれている“ある鳥”が、臆病な上、飛ぶのが苦手で、危険を察すると草むらなどに隠れるのだが、しっぽが見えている様子からできた言葉で、草むらへ、とっとっとっと、と隠れていく、まさにその瞬間が写真に収められ、“なるほどこういうことか!”と、すぐに納得できる。  そのほかにも、「独活(うど)の大木」「瓜二つ」「金字塔」「引っ張りだこ」「反りが合わない」などなど、全部で40の言葉の語源が紹介されている。  著者は、言葉の謎や魅力を解き明かす創作活動「ことば探検プロジェクト」などを展開する、ライター&脚本家のおかべたかし氏。カメラマンには、「語源探しは、宝探しそのもの」と語る、雑誌、広告で活躍する山出高士氏を迎え、すべて撮り下ろし。2人が日本全国へと撮影に出かけ、5年もの歳月をかけて完成させたこだわりの一冊に仕上がっている。どのページをめくっても、「ほぉ~、へぇ~」と驚き、言葉の歴史、雑学が一発で頭に残ること、間違いなし!  (文=上浦未来) ●おかべたかし 1972年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務後、編集者、ライター、脚本家。著書に『赤ちゃんを爆笑させる方法』(学習研究社)、『ブログ進化論』(講談社)、『Web2.0殺人事件』(イースト・プレス)など、漫画脚本作品に『ヒーローマスク』(小学館クリエイティブ)がある。