世界の立ち入り禁止エリアを写真付きで公開!『絶対に行けない世界の非公開区域99』

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ダニエル・スミス『絶対に行けない世界の非公開区域99 ガザの地下トンネルから女王の寝室まで』(日経ナショナルジオグラフィック社)
 インターネットの普及により、地球上でまったく未知の場所というのは、失われてしまったかのように思える。ところが、「いやいやそんなことはない!」と言うかのように発表された1冊が『絶対に行けない世界の非公開区域99 ガザの地下トンネルから女王の寝室まで』(日経ナショナルジオグラフィック社)。ロンドン在住のジャーナリスト、ダニエル・スミス氏が、公式報告書や新聞社をはじめ、信頼できる報道機関などの膨大な情報をわかりやすく整頓し、世界中の非公開区域99カ所を紹介している。ヒトラーが自殺をして最後を迎えた地下壕、教皇とローマカトリック教会に関する最重要文書が保存されているバチカン機密文書館、グーグルが極秘で完成させた巨大なデータセンター、おびただしい量の廃棄物が海に浮遊する太平洋巨大ゴミベルトなどなど、驚くような非公開区域の存在を浮き彫りにし、それにまつわる事実を補足している。  タイトルにもある、「ガザ地区とエジプトをつなぐ地下の密輸トンネル」のページを開くと、真っ暗なトンネルの中で光の先を見つめる男性、エジプト側から密輸されてきた荷物を中身がわからないまま必死で引き上げる男性の写真が飛び込んでくる。紹介文には、トンネルはどんなところに作られるのか、1本作るためににかかる金額が一体どれぐらいなのか、これまでに何本ぐらい作られてきたのか、どんなものが送られているのかなどの詳細が記され、ともかく彼らがいかに決死の思いで、この密輸トンネルを使い、暮らしているのが伝わってくる。  また、宇宙や地球外生命体などに興味がある人は、宇宙人の地下基地があると疑われている、アメリカニューメキシコ州の「ダルシー基地」に注目してもらいたい。かつて宇宙人が地球にやってきてアメリカ政府と共謀し、人体実験やマインドコントロールを行っているというウワサが一大ブームになったが、そのウワサを発信した主であるポール・ベネウィッツが、本拠地と指摘した場所である。ベネウィッツは1970年の初めから、空に奇妙な光が現れるのを何度も目撃し、近くの空軍基地に何か関係があるのでは、と指摘。基地自体はかねてから極秘の開発を行っているとのうわさが絶えなかった場所で、当時、牛の殺戮体が相次いで発見されるなど、謎の現象が報告されていた。その後、徹底的に証拠をかき集めるも、結局、変人としてのレッテルを貼られ、精神的なバランスを崩して亡くなってしまう。今も謎が多く残る場所だ。  最も身近な場所で気になったのは、コカ・コーラのレシピ保管庫。コカ・コーラは世界中で愛され、毎日17億杯も飲まれているといわれているが、その原材料に何が入っているのか? それを答えられるのは社内でもごくわずかだという。レシピは当然ながらパソコンで記録されることはなく、鋼鉄製の巨大な金庫に収められ、厳重に保管されていている。ここに限ってはなんと誰でも訪れることができるので、アメリカに旅行へ出かけた時に訪れてもいいかもしれない。もちろん、警備員、監視カメラが配置され、数メートル離れた柵越しだが。  このように“絶対に行けない”に差はあれど、こんな場所が世界にはあるのかと衝撃を受ける内容に仕上がっている。世の中にはまだまだ知られざる場所が山ほどある。きっと私たちが住む日本にも……。 (文=上浦未来)

「半グレ老人」急増中!? ストーカー、売春、万引……超高齢化社会を生きる『老人たちの裏社会』

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『老人たちの裏社会』(宝島社)
 孔子は、『論語』において「七十にして心の欲する所に従いて矩を踰えず」、つまり「欲望に従って道徳から外れることがなくなった」と語っている。しかし、30にして立たず、40にして惑い続け、50にして天命のなんたるかを知らない現代社会。70を越えてもなお、道徳の規範を乱す高齢者は少なくない……。  『老人たちの裏社会』(宝島社)で、ジャーナリストの新郷由起が描く高齢者たちは、読者の予想をはるかに超えて道徳をはみ出してしまった者ばかり。4人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎え、彼らは万引をし、売春をし、暴力を振るい、ストーカーになり……と、若者と変わりない犯罪行為や迷惑行為を行っているのだ。  青少年の犯罪という印象が強い万引だが、2013年には未成年者の検挙数1万7,000人に対して、65歳以上の高齢者はなんと2万8,000人あまり。実に、万引検挙者の3人に1人が老人という状況になっているのだ。その動機として、少ない年金では生活ができなくて思わず万引に手を染めてしまった……と、苦しい経済状況を語る高齢者も少なくない。しかし、その一方で、家庭での不満が鬱積し「生きている感じがする」と語る高齢女性や、「大した金額じゃなきゃ、見つかってもそれほど怒れないでしょ」とうそぶき、万引が見つかって問い詰められると「年寄りをいじめて何が楽しいんだ」と逆ギレし……など、「スリルを感じたい」と遊び半分で万引に手を染める若者以上に悪質な事例も多いのだ。  そして、そんな「元気な」高齢者たちは、恋愛やセックスに対しても貪欲。出会い系サイトやシニア専門の婚活パーティーで恋愛を求める老人は、伴侶に先立たれた寂しい生活を共に過ごすパートナーを探すのみならず、自らの性欲を満たすためにも積極的に異性を探している。そんな彼らの下心につけ込んで、年老いた女性たちは個人売春やデート商法、結婚詐欺などさまざまな手法でその預貯金を巻き上げていく。  また、デリヘル嬢やAV女優として活躍しながら、マニアックなニーズに応える高齢女性も少なくない。かつて、「性欲がない」と思われていた老人たちだが、そのあふれんばかりのバイタリティは、草食系と呼ばれる若者顔負け。62歳のデリヘル嬢が「自分がどれほど干からびていたか、どんなに飢えていたのかを思い知りました。いくつになっても女の部分が消えてなくなるわけじゃないんですね」と語る姿からは、生涯にわたって尽きることがない性欲という業の深さを思い知ることだろう。  これら、高齢者をめぐる問題の根底にあるのは、進歩した医療技術によって、かつてよりも格段に向上したシニアの体力と、リタイアした彼らが持て余す時間の大きさ。人生のタイムリミットを意識しながら、「やり残したこと」に対して焦りながら、性欲や物欲を引き金にして犯罪や迷惑行為に手を染めていくのだ。  社会は彼らを「高齢者」の枠に押し込めて接点を持とうとせず、「普通」の社会から遠ざけていく。そんな社会で子や孫などの親類とも疎遠になれば、孤独感や疎外感などの満たされない思いは募るばかりとなる。ストーカーとして、若い女性につきまとっていた男性は「あのときは情熱があって1日が充実していた」と、遠い目で述懐する。犯罪行為や反社会的行為は、彼らが見つけることができた唯一の生きがいとなってしまった……。  元気な老人が増えるのは、超高齢化社会を迎えた日本にとって明るい話であるはず。しかし、元気が余って犯罪に手を染めるような老人が増えるのは困りもの。そのためにも、本書が警告を発する「老人」のあり方について、もう一度考える必要があるのではないだろうか? (文=萩原雄太[かもめマシーン])

芸妓、ラブホ、殺人事件……男女の“欲望”が渦巻く『迷宮の花街 渋谷円山町』

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『迷宮の花街 渋谷円山町』(宝島社)
 本橋信宏氏の前作、『東京最後の異界 鶯谷』(宝島社)は、奇妙な街を追ったノンフィクションだった。博物館や寛永寺などが集まる文化エリアから坂を下ると、そこにはうらぶれたラブホテルやデリヘル事務所が密集する。21世紀にありながら、時代の波を寄せ付けない鶯谷の現実を描き出した本書は、高く評価された。そして、この『異界』シリーズの第2作目として選ばれた土地は、渋谷駅から徒歩10分。道玄坂から神泉にかけて広がる「円山町」という地域だ。  ラブホテルが密集し、風俗の案内所がギラギラした照明を浴びせかける円山町には、ライブハウス「Shibuya O-EAST」や「club asia」「club atom」、映画館「ユーロスペース」が立地する。かと思えば、昭和元年創業の「名曲喫茶ライオン」や、昭和26年創業の老舗インド料理店「ムルギー」などの有名店があり、アクセスのよさからサイバーエージェントをはじめとする企業がオフィスを構えるエリアでもある(実は、「サイゾー」の編集部もここからほど近い道玄坂にある)。時間によって、場所によって、そして足を運ぶ人によって、円山町は玉虫色にその姿を変えていく。  『迷宮の花街 渋谷円山町』(宝島社)は、この不思議な繁華街の歴史を追ったノンフィクションだ。いや、歴史というよりも、「記憶」という言葉のほうが正確かもしれない。100年にわたって、この街はさまざまな変遷を遂げてきた。  江戸時代までは火葬場が設置され、雑木林の広がる丘だった円山町は、明治から大正にかけて料亭と置屋、そして待合の3つがそろった「三業地」に指定されると急速に発展していく。大正10年には、芸妓置屋137戸、芸妓402人、待合96軒を数える都内でも有数の花街へと成長していった。  映画監督の森田芳光は、生まれ育ったこの街を舞台に、デビュー作『の・ようなもの』を撮った。生家のすぐ横にあったトルコ風呂の記憶が、秋吉久美子演じる新たなトルコ嬢の姿として共感を呼んだ。また、『円山・花町・母の町』を歌った三善英史は、「母になれても 妻にはなれず」という歌詞を、円山町で芸者として生計を立てていた母を思い浮かべながら歌い、NHK紅白歌合戦にも出場を果たした。芸者とトルコ風呂、かつてそこは退廃的な物語が似合う街だったのだ。  そのイメージが一変するのが1980年代後半から。バブル経済に向かう狂乱の中で、芸者に代わり、立ち並ぶラブホテルが円山町の代名詞となっていく。現在、70軒あまりのラブホテルが林立する円山町では、固く腕を組んだカップルたちが、昼夜を問わずその路地へと吸い込まれていく。また、カラオケやゲームなどのアミューズメントが充実し、和風やアジアンなどさまざまなコンセプトで内装がしつらえられた設備は外国人の興味も集め、いまや「Love Hotel Hill」として旅行ガイドに紹介されるほどとなっている。  さらに、男たちの欲望を刺激する風俗店も数多い。普通のデリヘルだけでなく、電マ練習場、母乳デリヘル、デブ専門デリヘルなど、男たちのアブノーマルな性癖も、この街は受け入れている。カップルのありきたりなセックスだけではなく、不倫、乱交、スワッピング、SM、フェチ、さまざまな性欲が渦巻き、大量の精液を垂れ流す町、それが円山町の姿となった。  そして、そんな街を震撼させた事件が「東電OL殺人事件」だ。1997年3月19日、ひとりの売春婦が死体で発見された。この町で売春婦が殺されることは、少なくないこと。しかし、彼女は、売春婦であると同時に、慶應大学経済学部を卒業し、東京電力の企画部経済調査室副長にまで上り詰めたエリートだった。年収1,000万円以上の彼女が、なぜわずか2,000円で自らの体を売らなければならなかったのか? その謎は、世間の好奇の目を集め、週刊誌、月刊誌などさまざまな媒体が彼女の素顔を暴こうと躍起になり、この街を舞台に激しい取材合戦が展開された。だが、20年弱の時間を経ても、まだ事件の真相は明らかになっていない……。  丹念に言葉を拾いながら、本橋が記述する100年間にわたる円山町の記憶からは、「欲望」という共通点が見えてくる。表の世界ではおおっぴらにできない種類の欲望は、細い路地が密集する迷宮のようなこの街へと静かに群がってくる。だが、その「異界」は、また変化の波にさらされようとしている。渋谷駅の再開発によって、道玄坂と宮益坂をつなぐ「スカイウェイ」が2027年に完成すれば、この街の姿も大きく変わってしまうことだろう。その時、円山町にはどのような欲望が集まってくるのだろうか? それとも、「異界」としての役割を終え、なんの変哲もない街へと変わってしまうのだろうか? 時代を追うごとにフラットになっていく東京の街で、願わくば、円山町という異界が残されることを期待したい。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])

矢沢永吉『成りあがり』のマンガ版が、原作以上にロックしすぎて“ルイジアンナ”な件

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『成りあがり』(角川書店)
 みなさんは、永ちゃんこと矢沢永吉の自伝『成りあがり』(角川書店)を読んだことはありますでしょうか? 永ちゃんの少年時代や青年時代の超貧乏な苦労話に始まり、伝説のバンド「キャロル」の結成から解散までの秘話、そしてソロミュージシャン矢沢永吉として成功する、文字通りロック界のスーパースターの成りあがりの過程が書かれています。  これは幾多のタレント自伝の中でも傑作と言わざるを得ない作品で、永ちゃん独特の「アイラブユーOK」な口調から繰り出される数多くの名言があらゆる世代の心を打つ自伝であり、悩める男たちへの熱いエールであり、ビジネスマン向けの自己啓発本としても役に立つという、すごい名著なのです。 「家に金入れないでヘイベイビーとかって感覚、オレは嫌いなんだよ。ロックンローラーの資格ない」 「マジメなのよ、オレ。えらいマジメ。オレ。えらいマジメなの。結婚前提でどう?」 「バカはダメよ。バカはやめろと言いたい。まわりが迷惑するから。義務教育、ポイントだけ押さえて、あとはファッファッとしてればいい」 「ロックンロールはオレにとっちゃ空気みたいなものなんだから。息を吸って、吐き出せばもうロックンロールができあがってる」 (『成りあがり』より)  などなど、ページをめくるたびにロックなノリの名言連発。自伝物によくある、いかにも“ゴーストライターが書いてます”みたいな小ギレイにまとまった文章じゃなくて、永ちゃんらしい、フィーリングが先行するこの感じが逆に新鮮で、普段本を読まないような人たちでも思わず最後まで読んでしまう、そんな不思議な魅力があります。  その名作『成りあがり』がマンガにもなっていたのは、ご存じでしょうか? 実は本作は過去に2回、マンガ化されています。1度目は1993年、2度目は2008年で、どちらも『成りあがり』を原作としながら、とても同じものとは思えない、まったく別のマンガとなっています。今回は、この2つのマンガ版『成りあがり』をご紹介したいと思います。
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■コミック版成りあがり(作画:江原良道/風雅書房)  93年に発刊されたコミック版『成りあがり』のストーリーは、原作の時系列に沿って忠実に描かれており、原作の細かいセリフの言い回しや解説についても、マンガでありながら相当細部まで再現。名著のコミカライズとしてかなり気を使って描かれているのが感じられます。  そういう意味では非常に自伝マンガらしい構成なのですが、一方で画についてはまさかのギャグテイストでブッ飛んでいます。幼少期、広島時代の永ちゃんは新聞の4コマ漫画に出てきそうなガキンチョで、コボちゃんやサンワリ君あたりを想起させる画のタッチなのですが、純然たるキッズでありながら、なぜか磯野波平のように両サイドの髪を残して頭頂部がスッカスカという非常にかわいそうなルックスで描かれており、貧乏で苦労しているのがビンビンに伝わってきます。  高校生からバンドデビューするまでの永ちゃんは、頭頂部スカスカからフサフサへと無事トランスフォームしたものの、今度はなぜか西川きよし師匠かシンプソンズかというほどに、目玉が飛び出たギョロ目のキャラクターに変貌します。ところどころで普通にリアル永ちゃんの顔になるシーンがあるので、明らかに意図的にギョロ目キャラとして描いているのですが、その意図が全然わかりません。まあシンプソンズは、アメリカではロック色の強いアニメなので、ロックつながりといえばロックつながりですが……。  さらに驚かされるのが、女子キャラです。男子キャラが軒並みギョロ目のシンプソンズ状態なのに対し、女子キャラはなんと『きまぐれオレンジ☆ロード』を彷彿とさせる、昭和な香り漂う美少女です。永ちゃんの初体験のシーンでは、シンプソンズな永ちゃんがオレンジ☆ロードのひかるちゃんみたいな女子キャラとまぐわって、絶頂とともに富士山がドカーンと爆発するという、シュールな様子が描かれています。この世界観は、ちょっとほかに例えようがありません。  通常自伝マンガといえば、多少なりとも美化して描かれるものですが、この作品は完全にその真逆を行っています。あえてこのブッ飛んだキャラクターでの自伝をOKした永ちゃんの器のデカさが、実にロックであるといえます。
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成りあがり 矢沢永吉物語(作画:きたがわ翔/角川グループパブリッシング)  続いて08年、比較的新しめの『成りあがり』コミカライズ作品。こちらは、作画がきたがわ翔先生です。きたがわ翔先生といえば、『19(NINETEEN)』『B.B.フィッシュ』『ホットマン』等の作品でイケメン&美女が多数登場しまくっていますので、この時点で永ちゃんがきっちり美麗イケメンに描かれることは確定路線であり、安心して読むことができる自伝作品であるかのように思われました。  しかし、この『成りあがり 矢沢永吉物語』は、別の意味で壮絶にロックしていました。なにしろこのタイトルですから、普通に考えれば誰もが主人公は永ちゃんだと考えるところですが、実は違うのです。この作品の主人公は「内田忠志」なる、仕事に疲れたサラリーマンなのです。……誰だよ、お前。  忠志の父・平太は熱狂的な永ちゃんファンであり、忠志は子どもの頃から父親・平太に永ちゃんのコンサートに連れて行ってもらっていました。しかし思春期、反抗期となりだんだんと疎遠になってしまい、大人になった今はすっかり話さなくなってしまったのでした。  そんな忠志に、実家からの一本の電話が……。父・平太が病気で亡くなったのです。実家に戻り、父親の形見である永ちゃんのライブビデオや『成りあがり』を発見。忠志が父の遺した『成りあがり』を読み進めるのに合わせて『成りあがり』のシーンがマンガで描かれていくという、非常に凝った構成になっています。  つまり主人公の忠志、父の平太、そして永ちゃんという3人のキーパーソンが作品中に存在し、しかも途中で平太が永ちゃんに影響されてこっそり書いていた手書きの自叙伝『裏・成りあがり』が遺品として見つかるくだりでは、平太の少年・青年時代の回想シーンにさかのぼります。さかのぼったと思ったら現代の忠志の時代に戻ってみたり、今度は永ちゃんのバンド結成時代へ場面転換してみたり……。ちょっとした、バック・トゥ・ザ・フューチャー状態です。  さらにややこしいのは、主人公の忠志、若かりし頃の平太、若かりし頃の永ちゃん……3人とも、きたがわ先生らしいスッキリしょうゆ顔のイケメンとして描かれており、今読んでいるのが3人のうち一体誰の話なのか、だんだんわからなくなってきます。単なる自伝コミカライズにとどまらないこの複雑なギミックこそ、まさにロック……。ロックはロックでも、プログレッシブ・ロック寄りですけど。とにかくナメてかかるとノックアウトされる、ハンパな自伝じゃなかったのです。 ***  というわけで名著『成りあがり』と、そのコミカライズ作品を2作品ご紹介しました。マンガ版はどちらも原作を読んだ後なら超絶楽しめること請け合いであり、逆に原作を読んでなければ、あまりのファンキーモンキーベイビーすぎる展開にお口ポカーンになってしまう可能性がありますが、日本人男子ならば3冊とも必読の作品であることは言うまでもありません。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

ツッコミどころ満載の愛すべき“怪書”150冊が集結!『ヘンな本大全』

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『ヘンな本大全』 (洋泉社MOOK)
 珍書プロデューサーとして注目を集めるハマザキカク氏が、新刊『ヘンな本大全』 (洋泉社MOOK)を発表した。珍書やヘンな本とは、「一体誰が読むのか?」「なぜこんなテーマで1冊に?」と、ツッコミどころ満載ながら、本に携わった人たちは大マジメで作ったのであろう、愛すべき怪書たちのこと。著者のハマザキカク氏は、年間約8万冊も出版される新刊をすべてチェックし、それを日々、Twitterで珍書速報として流し、「本の雑誌」でも珍書の新刊を紹介。昨年には、自らが独断と偏見で1人で選ぶ「珍書大賞」を創設し、約20もの各ジャンルごとに与えた受賞作を紹介する「珍書フェア」が、神保町の「書泉グランデ」や秋葉原の「書泉ブックタワー」で開催されるなど、その勢いは止まらない。  本書では、そんなハマザキカク氏が選んだ、珍書大賞受賞作品の紹介と受賞理由から始まり、食べられる帯や生米とスパイス入りの缶に入った本など「ヘンな装丁」20冊の紹介へと続く。そして、今回メインとなっているのが、それぞれの分野で秀でた専門家約20名が推薦する、“ヘンな本”=珍書ガイドである。  『死ぬかと思った』(アスペクト)シリーズで有名な林雄司氏は「ヘンなビジネス書」、当サイトでもおなじみの北村ヂン氏は「ヘンな性愛本」、『へんないきもの』シリーズが大ヒットした早川いくを氏は「ヘンな生き物本」、辺境地や未確認生物に強いノンフィクション作家・高野秀行氏は「ヘンな旅本」、プロインタビューアーの吉田豪氏は「ヘンなタレント本」と「ヘンなアイドル本」、辛酸なめ子氏は「ヘンなセレブ本」などなど、絶対面白い本選んでくれるでしょ! という期待感のある人が登場し、1テーマ5冊程度ずつ紹介している。  どれもこれも、かなり興味をそそる本ばかりが紹介されているのだが、個人的に気になったのは、林氏が最初はちょっとバカにして買ったものの、ドはまりしたという『松岡修造の人生を強く生きる83の言葉』(アスコム)。「崖っぷちありがとう! 最高だ!」「勘違いを特技にするんだ」など、なんとなく意味がわかる前向きな言葉のほか、「上海見てみろ。上海になってみろ!」「今日からおまえは富士山だ!」など、人智を超えた名言まで飛び出す。意味としては、「日々変わる上海のように自分もなってみよう」「僕らしさを取り戻すには富士山が最も近い存在でした。(中略)はっきりした理由はありません」とのことのようで、林氏いわく「意味がわからないのに読んだ人を前向きな気持ちにさせるという目的は達成しているわけで、言葉というよりも歌みたいなものなんじゃないかと思うのだ」(本文より)ということ。机にあるだけで、前向きになれそうだし、なんかやけどしそうだ。  続いて、神保町で特殊古書店「マニタ書房」を経営する、とみさわ昭仁氏の「ヘンな成り上がり本」セレクトで、『ガブガブいっちゃえ!』(三天書房)。個人的にはあまり記憶がないのだが、「カブガブいっちゃうよ~」で一世を風靡した、ホスト王・零士氏のモテマニュアル本で、出版された2000年はバブルはもう終わってるハズなのに、圧倒的なバブル感が素晴らしい。いったい彼からどんなモテマニュアルが学べるのか、現代に合うのか、大変気になるところだ。それから、「たき火の会」主宰のお酒大好き・石原たきび氏が選ぶ、「ヘンな酒本」がテーマの『こどものためのお酒入門』(イースト・プレス)。子どもに酒の魅力を伝えるという、なかなかの無茶な内容で、しかも、子ども向けだからといって、お酒というテーマに一切妥協はナシ。帯に書かれた「未成年でも大丈夫!」の大丈夫ではない感が、ハンパじゃない。  このほかにも、サイゾー読者がどっぷりハマりそうな本が続々と登場。その道のプロが選んだ本だけでも100冊以上、それ以外にもハマザキカク氏が選んだ数々の珍書が珍書大賞受賞作を含め、約50冊も登場しているので、アナタにぴったりの一冊どころか、困っちゃうぐらい何冊も見つかるはず。面白い本が見つからない、と嘆いているアナタはぜひ参考にしてほしい。 (文=上浦未来)

いったい誰が買うのか!? 『妹に教えたい世界のしくみ』が売れている……だと?

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『図でわかる!妹に教えたい世界のしくみ』(笠倉出版社)
 書店に行けば、ベストセラー書籍の影に隠れて「いったい、この本は誰が買うんだろう……」という本が、意外なほど数多く並んでいる。もちろん、そんな本のほとんどは、さっぱり売れないまま書店の棚から姿を消してしまうのだが、なぜか重版がかかるほど好調な売れ行きを記録しているのが『図でわかる!妹に教えたい世界のしくみ』(笠倉出版社)だ。「知った気になれる!」「政治宗教の派閥や力関係から経済のしくみまでいいかげんに図表化!」というキャッチフレーズが躍り、pixivでも人気の「米」氏による渾身の妹イラストが描かれた表紙。いったい、どんな人間が、なんのためにこの本を購入してしまうのだろうか……?  う~ん、手にとって実際に本書の内容をひもといてみよう。  「日本政府のしくみ」や、「自民党派閥の系譜」といった、社会の教科書や資料集に掲載されているような役に立つ知識から、「コーヒーの種類」「自己破産のしくみ」「刑務所の一日」といった話のネタや、もしもの時のために使えそうなもの、さらには「大仁田のカリスマのしくみ」「まんがタイムの家系」「エグザイルトライブの構成と変遷」といったトリビアにすらならない情報までが記載されている本書。まさに「世界のしくみ」の名に恥じず、ジャンルもカテゴリーも横断して、あらゆる世界が図表化されているのだ。  例えば「タモリのレギュラー番組年表」のページを見てみよう。そこには『空飛ぶモンティ・パイソン』(東京12チャンネル/現:テレビ東京ほか)から始まり、『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)を経由し、1982年から『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)といった長寿番組が始まるタモリの歴史が手に取るように見えてくる。また、79年を境に、アイパッチからサングラスに衣装を変えたという、かゆいところに手が届く情報もうれしい。いや、役に立つかどうかは別問題だが……。  あるいは「日本のプロレス団体の系譜」というページでは、力道山の「日本プロレス」から枝分かれをして、細分化を繰り広げてきた日本プロレス史を一望できる。プロレスマニアでもない限り、使い道のない知識ではあるが、その歴史が一望できると、途端に理解した感を感じてしまうのはいったいなぜだろうか?  しかし、本書は、あくまでも「いいかげんに図表化」されたものであり、注意が必要だ。ブルースやカントリーから始まり、ビートルズやレッド・ツェッペリン、ガンズ・アンド・ローゼズを経由したロックの歴史が、なぜか「押尾学」に行き着く「押尾学に至るロックの系譜」には、とてつもない違和感を覚えるし、「オーケストラのしくみ」の章では、オーケストラとともに、矢沢永吉や米米CLUBのバンド編成の比較も描かれている……。  本書をめくり終わった後には、なぜか、古今東西のあらゆる知識が身についた気分になれるだろう。「いいかげんに図表化」というキャッチだけでなく、本文中にも「説明不足どころか間違っているところもありますけど、察してください」と書かれているにもかかわらず、その内容は(ネタを除けば)正確であることと、わかりやすいことに異常な執念が注がれている。書店で見かけたら、ぜひ「妹」になって、「世界」の幅広さと奥深さを味わっていただきたい。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])

アオシマの合体プラモデルを一挙紹介!『アウトサイダー・プラモデル・アート』

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『アウトサイダー・プラモデル・アート』(双葉社)
 70年代後半~80年代初頭。あの頃、プラモデルは「おもちゃの王様」だった――。既存のアニメスケールプラモデルの概念を覆し、「創造のプラモデル」を標榜した青島文化教材社。 「ガンプラがつくれないならオリジナルロボットをつくろう」 「版権を買って原作に忠実なプラモをつくるより、合体ロボットにしちゃおう」  そんな、極めて野心的で極めて創造性の高いプラモメーカーが生み出した、異形にして今見ると圧倒的にクールなプラモ群を紹介するビジュアルブック『アウトサイダー・プラモデル・アート』(双葉社)が発売された。  当サイトの人気連載「バック・トゥ・ザ・80'S」でも好評を博したアオシマの「合体シリーズ」。本書は、あらゆるロボットを分離合体式のプラモデルに仕上げた「合体シリーズ」を網羅したビジュアルブック。頭だけ、腕だけ、足だけのロボットなど、今見ても圧倒的にクールなそのプラモ群は、まさに独創性と瞬発力の産物!  また、当時のプラモ事情を知る関係者に取材し、ガンプラブームに沸き上がる当時の風潮と、そこにおいての「合体シリーズ」の意義をまとめ上げ、プラモ史のオーラルヒストリーとしても楽しめる内容となっている。  80年代に少年期を過ごした人々の胸をアツくする一冊だ。

東電、リクルート、4大証券会社が頼った“情報屋” 日本経済界の裏側で暗躍した「兜町の石原」とは

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『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)
 一般的に「情報誌」といえば、「ぴあ」や「東京ウォーカー」などを思い浮かべる人が多いだろう。しかし「兜町の石原」こと、石原俊介が発行していた「現代情報産業」は、そんな雑誌とは一線を画す“情報誌”だ。発行部数は1,000部にも満たず、価格は法人の場合で年額12万円。だが、内容はわずか7ページあまりの冊子にすぎない。  しかし、ここには「プロ」たちが喉から手が出るほど欲しがる情報が詰まっていた。  伊藤博敏氏によるルポルタージュ『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)は、この石原俊介の半生に迫った一冊。平和相互銀行事件、リクルート事件、総会屋利益供与事件、山一證券の経営破綻などの有名事件の陰で、「兜町の石原」は情報を収集し、重要な働きを行っていた。  リクルート、東京電力、野村・日興・山一・大和の4大証券、第一勧業銀行といった日本でも有数の企業が頼り、多額の顧問料で遇した石原。情報に対するその比類なき嗅覚は、日本を代表する企業の幹部から、新聞やテレビ局各社の記者、政治家、検察関係者、そして暴力団、右翼といったアンダーグラウンドの勢力まで、あらゆる人間が認めるところであり、石原の事務所はさまざまな人々が押しかける「情報交差点」として機能する。毎晩のように銀座の高級クラブで豪遊しながら、企業幹部や政治家から得た「生の情報」は、その道のプロフェッショナルですら舌を巻くものだった。  では、石原はどのような情報を収集し、どのようにして暗躍したのだろうか? 本書から、その実例を引いてみよう。  1997年、日本の金融界は揺れていた。総会屋・小池隆一に大手証券会社が利益供与していたことが発覚し、これが第一勧銀にも波及。歴代の経営陣が逮捕される事態に発展した。この時、第一勧銀の顧問に就任していた石原の活躍を知るのが、当時・同行に勤務していた小説家の江上剛だ。石原はこの事件が表面化する前から、独自の情報ルートで「事件になる。早く準備を進めたほうがいい」「一勧は大変なことになるぞ」と、江上に忠告している。野村證券に疑惑の目が向けられた段階から、石原は事の成り行きを正確に読んでいたのだ。  さらに、検察とも通じ、捜査情報を入手していた石原は、江上に対して「地検の強制捜査は5月20日だ。準備しておいた方がいい。特捜部は、頭取クラスまで(逮捕して)持って行きたがっているぞ」と、強制捜査の1週間前に電話をしている。おかげで、江上は役員や部長クラスに対して「強制捜査の心得」をレクチャーし、幹部の逮捕後に備えることが可能となった。  リクルート事件は、1988年に発覚した未公開のリクルートコスモス株を政治家に賄賂として譲渡した事件であり、中曽根康弘前首相(当時、以下同)、竹下登首相、宮澤喜一副総理・蔵相、安倍晋太郎自民党幹事長、渡辺美智雄自民党政調会長といった政治家の関与が取り沙汰された。この時、リクルートの顧問を務めていた石原の動きを、事件関係者は「石原さんがいなかったら、事件そのものがなかったかもしれない」と述懐する。  この事件では、日本テレビによって、リクルートコスモス社長室長の松原弘が、社民連の楢崎弥之助代議士に現金贈与を申し出る映像の隠し撮りが図られていた。この事実をつかんだ石原は、リクルート広報課長に対して「気をつけろ」と忠告していたにもかかわらず、松原は楢崎代議士に現金を贈って封じ込めを画策する。そして、その時の映像が撮影され、ニュース番組で放送されたことから大問題に発展した。石原の持つ情報を、リクルートは正しく使うことができなかったのだ。  だが、「気をつけろ」と言う石原の言葉は、事件をもみ消すことや圧力をかけろという意味ではない。その証拠に、石原は、顧問を務める企業であっても、「現代情報産業」に事件の全容を書き続けた。彼は、自分の仕事を「今そこにある危機を伝え、どう対処するか」であると生前に語っている。2000年代、原発不祥事に揺れる東京電力の社員に対して、石原はこんな檄を飛ばしていた。 「石原さんは不祥事が発覚した際、マスコミに公表する、責任の所在をはっきりさせるなどの結論を先延ばしにすることを何よりも嫌いました。アドバイスは『とにかく早め、早めに先手を打て』でした。でも、うち(東電)は図体が大きいぶん、どうしても決断が遅れてしまう。すると呼び出されて、『君らは日本を背負っているんだろ。ダメじゃないか。早く結論を出せ』と迫られたものです」(元東電社員/本文より)  しかし、2000年以降、徐々に総会屋や暴力団などの裏社会が企業から締め出されていくことによって、石原の仕事も徐々にかげりを見せていく。それまで社会の中で必要悪とされていた裏社会は徹底的に排除され、石原自身も暴力団との関係を絶たざるを得なくなった。時代の波が「兜町の石原」の席を奪っていったのだ。そして、インターネットの台頭によって、情報の持つ価値も大暴落していく……。13年4月、石原は71歳で息を引き取った。  40年にわたって情報屋として暗躍した石原の人生を振り返ると、バブルをピークにこの世の春を謳歌し、衰退していった日本経済界の裏面が見えてくる。コンプライアンスが重視され、クリーンになった経済界に、もはや石原のような裏と表とをつなぐ交差点は必要とされないだろう。石原の死は、一時代の終焉を意味するかのようだ。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])

うどんも、そばも、ハンバーガーも! 全国レトロ系自販機の魅力を詰め込んだ『日本懐かし自販機大全』

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『日本懐かし自販機大全』(タツミムック)
 全国各地至るところに自販機が存在する“自販機大国”ニッポン。その数、およそ500万台ともいわれる。とくに、飲料やタバコの自販機は揺るぎない地位が確立され、街角や駅、高速道路のパーキングエリアで日常的に利用する人も多いと思う。そんな市民権を得ている自販機とは別に、うどん、そば、ハンバーガーなどが販売される“食品自販機”の存在をご存じだろうか?  「えっ、食品が自販機で出てくるの!?」「腐らないの!?」と驚く読者もいるかもしれないが、その歴史は40年以上もさかのぼり、上記の食品以外にも、トーストサンド、カレーライス、お弁当などバラエティ豊か。昭和59(1984)年の全盛期には25万台も存在していたほど、メジャーな存在だった。当時は、自販機数台をズラリと並べた自販機コーナーが「オートスナック」「コインスナック」「ベンダーショップ」と呼ばれ、郊外で続々とオープン。世の中が24時間営業ではなかった頃、硬貨を入れると、あっという間に熱々の食べ物を提供してくれる食品自販機は、実に重宝された。しかし、24時間営業の店が普及するとともに次第に廃れてしまう。  時を経て、2015年。食品自販機は機械の老朽化もあり、絶滅しかかっているものの、全国にはまだまだ現役で存在している。今ならまだ出合える! と、その魅力を余すことなく伝えている一冊が『日本懐かし自販機大全』(タツミムック)である。著者の魚谷祐介氏は、食品自販機をこよなく愛し、まるで時が止まったような昭和レトロな懐かしさを感じる食品自販機=“懐かし自販機”と名付け、懐かし自販機を求めて全国各地を旅する、この道の第一人者。本書では、食品自販機の歴史、年季の入った名機たちの紹介、気になる内部のメカニズム、実際に訪れることができる全国各地の自販機コーナーの紹介、自販機の神と呼ばれる、島根と山口のめん類の自販機のメンテナンスを一手に引き受けるプロ・田中健一氏へのインタビューなど、実に濃い内容が盛り込まれている。  自販機というと、相手は当然ながら機械。ところが、魚谷氏は自販機の神・田中氏とのインタビューの中で「ファストフードやファミレスと違うのは、機械なのに血が通っている感じがするところですかね。さらに、時代の中で淘汰されながらも、この辺りの店舗みたいにいいもの(おいしい食品を提供する自販機)だけが残っているんだと思う」(本文より)と語る。  「機械」と「温かみ」は、正反対に位置しているように感じるが、食品自販機は飲料やタバコなどと違い、賞味期限が短く、しかも、よりおいしいものを提供しようと考れば、手間がかかる。つまり、食品を提供するために、毎日中身を入れ替え、鮮度をチェックしたりと、裏で支えている人がいるということなのだ。無人なのに感じる人情――。知れば知るほど奥深い、哀愁漂う自販機の世界を、ぜひともこの本で堪能してもらいたい。 (文=上浦未来) ●うおたに・ゆうすけ レトロ系フード自販機の第一人者であり、Webサイト「懐かし自販機」(http://jihanki.michikusa.jp/)を管理運営するマルチクリエーター。ミュージシャン、Webデザイナー、フォトグラファーとして多岐にわたり活動中。本質的には“旅人”。風情と味わいを求めて、現存する全国すべての“懐かし自販機”を訪ねて取材、記録している。

「お手」や「おかわり」をマスターするかも!? 金魚をどんぶりで育てる『どんぶり金魚の楽しみ方』

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『どんぶり金魚』(池田書店)
 金魚を飼うというと、大きな水槽にエアーポンプやろ過装置、照明の設置、水草を植えたり……と、なかなか面倒臭いイメージがある。ところが、そんな余計な器具を一切使わず、どんぶりと水で育てよう! という画期的な飼育方法を薦める1冊が『どんぶり金魚の楽しみ方』(池田書店)だ。  著者は、金魚博士の異名を持つ東京海洋大学長・岡本信明氏と、日本インターネット金魚愛好会副会長&日本らんちう協会常任理事を務める、金魚飼育歴40年の川田洋之助氏。その出会いは、東京海洋大学で開催された、普通の飼い主が形にとらわれない自慢の金魚を持ち寄る品評会「素人金魚名人戦」なるもので、川田氏は岡本氏が出陳した小さな金魚の“シロちゃん”に衝撃を受ける。涼しげで、ろくに水も入らないガラスの器の中で泳ぎ、近づくと、シロちゃんが遊んで遊んで~と顔をもたげ、愛嬌たっぷりで、会場のお客さんもメロメロだったという。  金魚に愛嬌!? と驚かされるのだが、その理由はどんぶりで飼うので、水槽のように隔てるものがなく、エサをあげる時の距離が近いから。エサのやり方次第で「早く! 早く! ゴハンちょうだ~い」と、手渡しができちゃうほどなつかせることも可能だというのだ。これに、川田氏は器と金魚の新たなコラボの可能性を確信し、有田焼の器と自作の抹茶椀、生け花の水盆などで、数年間金魚を飼うなど、岡本氏と2人で研究を重ね、この本が誕生した。  大きなルールとしては、毎日水換えをする、エサは1粒ずつ、ひとつの器に一尾だけなど本当に簡単だが、さまざまな金魚がいるし、長生きさせるにはコツがたくさん。本書では、どんぶり飼育に向く“金魚”や器の選び方、どんぶりに入れる前に金魚にしてあげると長生きすること、仲良くなるエサのやり方、金魚の眺め方、世話の基本、病気と治療法などが、かなりわかりやすく写真付きで説明され、どれも難しいルールはないので、これならやってみようかなという気になる。室町時代に中国から渡ってきて、大名や豪族の楽しみとして飼育され、後に江戸時代に庶民へと広がった、金魚。浮世絵にも登場するほど美しいその姿は、まさに生きる芸術品。自分好みのどんぶりで、金魚を眺めて癒やされちゃおう。 (文=上浦未来) ●おかもと・のぶあき 1951年愛知県生まれ。東京海洋大学長。東京海洋大学海洋生物資源学科教授。研究分野は魚類病態生理学・魚類遺伝生理学。主に魚を病気から守るための研究を行っている。金魚博士の異名を持ち、国際誌「アクアカルチャー」などの編集委員ほか、素人金魚名人戦に参加するなど、金魚の普及に努めている。監修書に『育てて、しらべる日本の生きものずかん14金魚』(集英社)、共同監修書に『金魚 長く、楽しく飼うための本』『原色金魚図鑑 かわいい金魚のあたらしい見方と提案』『金魚のことば 君のきもちと飼い方がわかる82の質問』(すべて池田書店)がある。 ●かわだ・ようのすけ 1952年東京都生まれ。金魚銀座 座主(CEO)、素人金魚名人戦代表、日本インターネット金魚愛好会副会長、(社)日本らんちう協会常任理事、土佐金保存会副会長。金魚飼育歴40年。長年の飼育のノウハウを生きるかし、著書に『カラーガイド金魚のすべて』『らんちうのすべて』『四大地金魚のすべて』(すべてエムピージェー)、共同監修書に『金魚 長く、楽しく飼うための本』『原色金魚図鑑 かわいい金魚のあたらしい見方と提案』『金魚のことば 君のきもちと飼い方がわかる82の質問』(すべて池田書店)がある。