北朝鮮、サウジアラビア、コンゴ民主共和国……独裁国家はどんな国!?『独裁国家に行ってきた』

dokokusai.jpg
『独裁国家に行ってきた』(彩図社)
 独裁国家といえば、古くはナチスドイツのヒトラーや旧ソ連のスターリン、現代でいえばお隣北朝鮮の金正恩など、人を人とも思っていない冷酷非道な指導者がパッと浮かぶ。だが、そんな恐ろしい独裁者イメージがつきまとう国々に行ってみたいと思う人などそうそうおらず、実態は謎である。『独裁国家に行ってきた』(彩図社)は、そんな独裁国家の旅行記だ。著者のMASAKI氏は、旅を仕事にすべく世界各地で買い付けをするアパレルバイヤーとして稼ぎながら、なんと204カ国に訪れ、世界をあちこちと飛び回る奇跡の旅人で、治安上や宗教上の理由で入国困難な独裁国家へも、執念ともいうべき粘着力とお金をかけて訪れている。  本書で紹介されているのは、全部で15カ国。大統領の気分次第で法律が決まるトルクメニスタン、独裁政権に終止符を打ち、新たな国づくりに湧くリビア、おなじみの北朝鮮、ハイパーインフレを起こして経済崩壊中のジンバブエ、イスラム教徒の聖地サウジアラビア、警察までもがカツアゲに勤しむベネズエラ、日本人観光客も多い超アナログ国家キューバ、ロシアとの統合を夢見るベラルーシ、勝ち組独裁国家のシンガポール、かつての資源大国ナウル、世界で最も残虐な国のひとつコンゴ共和国・コンゴ民主共和国、世界一幸せな国ブータン、復興の兆しが見えないリベリア、情勢が泥沼化するシリアと、いかにもな超危険な独裁国家から、これも独裁国家なのかと驚くほど先進的な国まで、幅広いラインナップで、とにかくすべてに読み応えがある。  入国できるんだ、と驚かされる国もいくつもあり、事実上イスラム教徒以外は入国拒否のサウジアラビアでは、滞在に許された時間はたった48時間。酒を飲むと鞭打ち80回の刑を受ける国で、ノンアルコールのバドワイザーを飲み、非ムスリムでありながら、聖地メッカを目指し、イスラム教オンリーエリアへと突入していく。また、超危険地帯・元ベルギー領のコンゴ民主共和国では、事前にきちんとビザを取得しているにもかかわらず、入国時に賄賂目的で警察の詰所へ連行。荷物をまさぐられたり、パソコンを床に落とされ、警察官は「ここはコンゴ民主共和国だ! ポリスを尊敬しろ!」を連呼するばかり。「すべての現金を見せろ!」と言われて反抗すると激高し、集団リンチ状態へ……。そのやり方は、かつて自分の元妻を蹴って死なせたり、逆らう者は容赦なく殺してきた前モブツ大統領がやってきた独裁国家そのままの悪夢を体験。  その一方で、規制と罰金で見事な経済成長を遂げ、何もかも整いすぎたシンガポールや、現在、鎖国状態だからこそ意外にも一般市民はいい人だらけの北朝鮮など、行ってみなければわからない独裁国家の実態も。凡人には知り得ないけれど、知るべき世界がここに! (文=上浦未来) ●MASAKI 1981年7月29日愛知県生まれ。札幌大学卒業。旅をしながら飯を食う方法を模索して現地で買い付けたものをヤフオクで転売するなどして稼ぎ、世界204カ国を回っている旅人。海外専門ツアコン、旅行ライター、雑貨・アパレルバイヤー、モデル、旅行評論家などの活動を通して、テレビ、ラジオなどメディア出演多数。世界旅行の楽しさを多くの人に知ってもらうため、全大陸に宿の設立を計画中。

デモに何万人集まっても世の中が変わるワケない! 本気で革命をしたい人のための2冊

shishoutoshitenofashizumu08.jpg
『思想としてのファシズム』(彩流社)
 気がついたら、どこかでデモが行われるのも当たり前の時代になってきた。  脱原発・安保法制・反ヘイト・行動する保守等々、思想は無数で催しも全国津々浦々で星の数ほど。新聞やテレビでも、そうした報道を目にすることは多い。  けれども、社会のさまざまな問題に興味はあっても、そうした活動には背を向けている人も多いのではなかろうか。就職ができなくなるとか、個人的な問題で背を向けているのではない。 「あんなぬるいデモやらなにやらで、世の中が変わるはずなどない」  そう。今の「社会運動」と呼ばれるものは、ものすごくスケールが小さい。護憲か改憲かというテーマは大きく見えるけど、単なる国民国家の内輪の話ではないか。 「そんなセコイことやってられるか! 俺たちが変えるのは世界なのだ」  世界革命か最終戦争かは知らないけれど、巨大なオトギバナシを夢想する人々にとっては、憤懣やるかたない時代。  しかし、いよいよデモなんてやったところで、なにも変わらないという真実に目覚める人が増えているのか? 本気で世界を変える意志を語る本が相次いで刊行されている。  その筆頭が千坂恭二『思想としてのファシズム「大東亜戦争」と1968』(彩流社)だ。  この本は、10代でアナキズムの思想家として注目を浴びた千坂氏の43年ぶりになる新著だ。「中野正剛と東方会」に始まり、さまざまな視点から、今では多くの人々が「絶対悪」だと思い込んでいるファシズムを捉え直そうとする本書。中でも「世界革命としての八紘一宇──保守と右翼の相克」では、天孫降臨から神武天皇の東征を語り、こう記す。 <驚くべきことに神武の東征革命軍は、ニニギ的外部注入論によって組織され、畿内大和の保守勢力を制圧し、在地の改革国家ではなく、外部による革命国家を樹立し、八紘一宇としての世界革命を志向したのである。>  つまり、日本は建国以来、世界革命を目指す革命国家だというのである。なんと痛快なことか! 膨大な知識を用いて記される文章は、千坂氏を知らずに読む人にとっては相当の決意がなければ大変な作業かもしれない。そんな人にはまず巻末に収録されたロングインタビューから読むことをおすすめしたい。ここでは千坂氏の生の声で、さらに鋭い切れ味を感じることが出来る。大東亜戦争の本質について「アングロサクソン帝国主義秩序の粉砕です。日本人は戦後洗脳されたのです」と語り「戦後の皇室は、敵の捕虜になっているようなものです」とまで言い切る千坂氏は、現代において革命家は現れうるか? という問いにも強烈な一言を放つ。 <今は革命家というのは犯罪者と病人以外には存在しないかもしれません。(中略)何かわけわからないけれども現代が気に入らない、もやもやしている、くそう、許せない、レンタカー注文して、秋葉原で人をひいてやろうと、こういう計画性のない人間にしか無理なんです。>  一連の文章の中で千坂氏は「立ち上がろう」とも「革命を起こそう」とも鼓舞したりはしない。しかし、行間からは選挙で選ばれたり、論壇で有名になった者たちが「影響力」を持ち体制内での改革に終始してしまうことへの批判がにじみでているような気がする。ページをめくるごとに既存の体制が幻想に過ぎないという思いは明確になり、読む者を「世の中をひっくり返してやろう」という決意へと導いていく。そして、そうした決意を持っていても間違いじゃなかった。異常者・病人よばわりするなら、勝手にしやがれ! という信念までもが生まれていくのである。
gendaibouryokuron06841.jpg
『現代暴力論 「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)
 さて、そんな既存の体制という幻想に対する怒りをもっとストレートに記したのが栗原康『現代暴力論 「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)だ。  まず、何がすごいかといえば、本郷あたりの社会科学系書籍が専門の出版社じゃなくて、KADOKAWAから出版されているのが信じられないくらい、強烈な主張が綴られているのである。著者の栗原氏は現在、東北芸術工科大学非常勤講師の職にあるという。とてもそれだけでは生活が成り立たないと思ったら、本人が「はたらかないで、たらふく食べたい」「年収は100万円にもみたない」と記しているから、正直すぎて信用できる。  同時に、もしや栗原氏は虎ノ門事件で摂政宮(後の昭和天皇)を暗殺しようとした難波大助が狂人と思われないように第三高等学校を受験したエピソードにならって、何か世の中が仰天するようなたくらみのために、非常勤講師の職についているのではないかと思ってしまった。それほどまでに栗原氏は、ひらがなを多用した独特の文体で既存の社会運動に対する怒りと諦観を表現し、暴力を肯定する。 <「これでデモができなくなったらどうするんだ。おまえらのせいで再稼働をとめられなくなるんだぞ」。わたしたちは、なにかわるいことでもしているのだろうか。なんだかひどい負い目を感じさせられる。>  そう、今渇望されているのは、こうした本音なのだ!  新しい社会運動などと称するものの権力性を批判する言葉は新鮮だ。それ以上に栗原氏が研究している大杉栄の文章を引きながら語られる米騒動の解説などは、まるで見てきたかのように軽快に楽しく語られる。「暴力論の教科書」として紹介される『水滸伝』の解説など、相当楽しすぎたのか「竹中労の『黒旗水滸伝』ではない」なんて書いてある。  いくら読者が限定されそうな本だからって、ここで何人が笑うんだ! 思わず、二重橋の前で陛下に一礼した後に「チェストー」とやりたくなるではないか!(意味がわからない人は『黒旗水滸伝』を読んでください)  もちろん栗原氏も「べつにいまテロリズムをやろうよとか、そういうことがいいたいわけじゃない」とは書いている。でも、同時に物を壊したりも人を殴ったりも、警察にくってかかったりもしないデモを「おわっている、死んでる」と、ぶった切る。おそらくは、知識人やらに持ち上げられる、ピースフルな運動がやがて犯罪者か病人のひと暴れによって粉砕され、本当の祝祭としての暴動がやってくる未来を見ているのであろう。  革命か維新か最終戦争か。そんなものが、いつやってくるかは、わからない。でも、この2冊の本の登場は、体制内の社会運動などに満足せず世の中を変えたいと願い、スタンバイする人々が増えていることを示しているだろう。  夏も終わる。紅燃ゆる反逆の血潮が匂う秋がやってくる。俺たちの真の敵は「時代」だ。 (文=昼間たかし)

クドい! めんどくさい! 暑苦しい! この夏オススメの「こだわる男マンガ」4選

kudoixs.jpg
 例年にも増して猛暑日が続く2015年夏ですが、エコ冷房、クールビズ全然意味なし! マンガ読みのみなさんにおかれましては、エアコンをガンガン効かせた部屋に引きこもるのが、この夏を快適に過ごす最も正しいやり方であることは言うまでもありません。  しかし、古来より暑い夏こそ、あえて熱いお茶を飲んだほうが暑さが引くなんていわれていますね。実はマンガもそれと同じ。暑い時ほど読むマンガも暑苦しくてクドいやつのほうが、暑気払いに向いているんです。  そこで今回は、この夏にぜひ読んでほしい、クドくて、暑苦しくて、めんどくさい、マンガのジャンル「こだわる男マンガ」をご紹介したいと思います。そんなマンガのジャンル聞いたことないと思う方も多いかもしれません。それはそうでしょう。ついさっき僕が作りましたから。でも、昨今「やたらとこだわる男が登場するマンガ」がウケていることは事実なのです。  例えば、ドラマ化された『孤独のグルメ』や『食の軍師』、あるいは最近単行本化されてスマッシュヒットしている『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』、これらのマンガはみんな「こだわる男」がテーマです。どうやら今の世の中、こだわる男たちが求められていることは間違いなさそうです。 というわけで、この夏にチャレンジしてほしいおすすめ「こだわる男マンガ」を4作品ご紹介しましょう。
zaolc081101wb
■『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』(著:清野とおる/ワイドKC モーニング)  『東京都北区赤羽』の清野とおる先生が講談社の「モーニング・ツー」で現在連載中のマンガが『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』です。文字通り、あることにこだわっている「おこだわり」な人たちが毎回紹介されるのですが、その「おこだわり」がどれも一癖あるヤバいやつばかりです。少しだけ紹介しておきますと、 ・ポテトサラダを割り箸でねぶるように食べ続ける男 ・マンションのベランダで生活することにこだわる男 ・さけるチーズをいかに極細に裂くかにこだわる男 ・喫茶店で、あえて「アイスミルク」を頼む男  などなど……客観的に見て、ほんっとにどうでもいいこだわりばかり。でも、それがいい。こだわりがしょーもなければしょーもないほど、内容が反比例して面白くなっているのです。しかもなぜか、この「おこだわり」を自分でも真似してみたくなるのです。僕もこのマンガを読んで、実際にシャノアールでアイスミルクを頼みましたからね。これは、北区赤羽という土地を一大ギャグタウンに変えてしまった「清野とおるマジック」といえるかもしれません。
zaolc081102wb
■『ネイチャージモン』(著:刃森尊、原案:寺門ジモン/ヤンマガKCスペシャル)  ご存じ、ダチョウ倶楽部の寺門ジモンこと「ネイチャージモン」の奇行っぷりを大胆にフィーチャリングしたルポマンガです。本やテレビなどで、肉へのこだわりがハンパでないことはすでに有名ですが、マンガで読むと、あらためてそのこだわりが尋常ではないというのがわかります。ちなみに単行本表紙の暑苦しさは、「こだわり男」マンガの中でも最凶レベルとなっております。  例えば、ネイチャージモンが東京一の焼き肉屋「スタミナ苑」で焼き肉を食べるために、以下のような儀式をします。 1.事前に30分以上筋トレをする。 2.徒歩で3時間半歩いて店に行く。 3.開店の2時間前から店の前で待つ。 4.待っている際は背中でオーラを出し、店のマスターにプレッシャーを掛ける。  焼き肉食べるだけなのに、すごくウザい! それも、ケタ外れのウザさです。そのほかにも…… ・牛肉が好きすぎて、家畜商の免許を取って松阪牛のセリに参加する。 ・世界最古のステーキを求めてイタリアに行く。 ・世界一のステーキを食べに、日帰りでニューヨークに行く。  などなど、規格外すぎる肉へのこだわりが満載。  また、肉以外にもオオクワガタへのこだわりもすごいです。というかこのマンガ、ほぼ肉とクワガタのことしか描いていません。それなのに単行本9巻も出ているんですから、いろいろ狂っていますよね。
zaolc081104wb
■『ダンドリくん』(著:泉昌之)  『ダンドリくん』は『食の軍師』と同じ、泉昌之先生(泉晴紀先生と久住昌之先生の合作名)の作品です。基本的に泉昌之先生の作品はすべて、画がクドくて説明がウザいギャグマンガばかりなのですが、この『ダンドリくん』はそんな中でもとりわけウザく、そんなウザさを嗜むために生まれてきたようなマンガといえます。  主人公のダンドリくんは、日常生活におけるダンドリに異常にこだわり、いかに日々を合理的に過ごすかばかりを考えている男です。要するに、すごくめんどくさいヤツなのです。  例えば、朝起きて顔を洗って歯を磨く、そして朝食へという早朝の一連の行為も、ダンドリくんにかかれば、まったく逆の順番になります。飯を食って、歯を磨いて、顔を洗う。そうすれば、最後に顔を拭くだけで全部終了。ムダがありません。  さらに、トイレのドアを開けっぱなしにしてテレビを見ることで、朝の情報収集と用便が同時にできるという合理的アイデアも紹介してくれます。確かに合理的だけど、人としてはどうなんでしょうか……。  このように、役に立つような立たないような、大きなお世話のようなダンドリ流ライフハックが次々と紹介されていきます。  ファッションについても、一家言あります。ダンドリくんの推奨する究極ファッションアイテムはズバリ、ベスト(チョッキ)です! ベストだと冬の暑い日にも脱がなくて大丈夫、夏の寒い日は着ていて大助かり。つまり、冬も夏もいちいち脱ぎ着せずに着っぱなしでいい。そんなハイブリッドさがベストの素晴らしさです。  またベストだと、着る時セーターのように、下のシャツがまくれ上がらないように袖を押さえておいたりするような必要もありません。注射打つ時もいちいち脱がなくてもいいし……ってダンドリくんのベスト推しがウザすぎる!!  こういった比較的どうでもよいことを、いちいちドヤ顔で解説してくるマンガなのですが、ダンドリにこだわりすぎるあまり、かえって非効率になっているダンドリくんを嘲笑ってあげるのが、このマンガの正しい楽しみ方です。
zaolc081105wb
■『それはエノキダ!』(著:須賀原洋行/モーニングワイドコミックス) 「こだわる男マンガ」の中でも、あらゆるジャンルに異常なこだわりを見せる、オールマイティにウザいマンガが『それはエノキダ!』という作品。  主人公は、物事がキッチリしていないと我慢できない神経質な男「榎田君」。物事がキッチリしていると「キモチE」、キッチリしてないと「キモチ悪い」というのが口癖です。  例えば、エレベーターでは「閉」ボタンを押して出て行く。一見よくある光景ですが、榎田君の場合、あらゆるエレベーターの機種でスムーズに「閉」が押せるように日頃から訓練を積んでおり、ボタンがドアの右にあろうが左にあろうが目をつむったまま「閉」が押せます。  異常に物持ちがいいのも特徴。何かについていた輪ゴム、ケーブルなどを束ねている針金ビニール、クリーニングに出すとついてくるハンガー、刺し身についているワサビや納豆についているカラシなどを生まれてこの方、ずっと捨てずに取ってあり、タンスは4段とも輪ゴムでいっぱい、冷蔵庫の中はワサビやら魚の容器のしょう油だらけ。断捨離の思想とは対極にいる男です。  オーディオへのこだわりも尋常ではありません。 ・ケヤキの無垢材やギリシャ産ラムスキンを使った、36万円最高級ヘッドホンを購入。 ・アンプやスピーカーの振動を抑えるための重しとして、鉛の板80kg・6万8,000円分を購入。 ・銅線の純度が99.99997%、1mあたり10万円のスピーカーケーブルを使用。  など、こだわりのためなら金に糸目をつけない恐るべきピュアオーディオぶりを発揮。  ト○タのハイブリッドカー「プリ○ス」を購入した時の話もかなりヤバいです。 ・徹底的に上り坂を避け、常に下り坂を走り続けるため、目的地にたどり着けない。 ・真夏でもエアコンをつけず、後部座席に巨大な氷を置いて走行。 ・燃費にいい高速道路を使うため、インターチェンジの近くに家を引っ越す。  などなど、究極の燃費走行を極めんとする、クレイジーなハイブリッドカーマニアたちが登場します。明らかにこだわっている方向性がおかしいです。  こんな感じのマンガなので、ページ内が説明、ウンチクだらけで1ページあたりの文字数がものすごく多くて、読んでいるとクラクラしてくる上級者向けの「こだわる男マンガ」です。 ***  というわけで、クドい、めんどくさい、暑苦しい、でもそこがいい、この夏オススメの「こだわる男マンガ」をご紹介してみましたが、いかがだったでしょうか? どのマンガもあきれるほどにクドく、実生活で役に立たない知識であふれています。なんの対策もせずにいきなり読むと、暑苦しくて本当に熱中症になってしまう可能性もありますので、よく水分をとって、涼しいところで読むことをオススメします。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

かわいすぎて悶絶! おっさんたちをキュンキュンさせる「もちる女子」って?

mochiru.jpg
 皆さんは、「いくえみ男子」という言葉をご存じでしょうか? マンガ家・いくえみ綾先生の作品に出てくる男子キャラクターたちのことで、いわゆるイケメンとは違う、塩顔で痩せ形、唇は薄め、オシャレすぎず飾りすぎず等身大。だけど、身近にいそうでいない。草食系なようで、実は肉食なロールキャベツ男子……ってどんな男子なのかサッパリ想像がつきませんね。とにかく、いくえみ綾先生の描く男子は女子を胸キュンさせてやまないのです。いくえみ男子だけを特集した『いくえみ男子スタイルBOOK』(集英社)なんてムック本まで出ているほど、もはや確固たるブランドを確立しているといえます。  少女マンガ界には「いくえみ男子」がいるのに、少年マンガ・青年マンガの世界には「○○女子」は存在しないのでしょうか? 残念ながら「いくえみ男子」ほど確固たるブランドを確立したキーワードはなさそうです。そんな中で今、新たに提唱したい「○○女子」があります。それは、星里もちる先生の作品に出てくる女子キャラクター、すなわち「もちる女子」であります。  星里先生のマンガに出てくる女子キャラクターは、いわゆる萌えマンガのかわいさとは系統が異なる、万人に愛されるかわいさを持っています。そんなかわいい女子たちが、冴えない主人公に惚れるというのが星里マンガのお決まりのパターン。しかも二股、三股あり、ハーレム設定ありと、男のロマンがトゥーマッチに盛り込まれています。僕たちがこの冴えない主人公に自分を投影させてしまった瞬間、胸のキュンキュンが止まらない“もちるワールド”が始まってしまうのです。  もちる女子のタイプは、多岐にわたります。癒やし系・ドジッ娘・不思議ちゃん・妹系・お姉さん系・ツンデレ系、ロングヘアーにショートヘアー、幼なじみから会社の後輩まで、我々ミドルエイジ男子が惚れがちな、あらゆる女子タイプが登場します。しかも、そのほぼすべてのキャラクターがかわいく魅力的。今回は、そんな「もちる女子」登場作品の中から、特にキュンキュンできるおすすめ作品をご紹介します。
71Wo+XyK+8L._SL1200_.jpg
■『りびんぐゲーム』  星里先生の代表作といえば、『りびんぐゲーム』を思い浮かべる人も多いでしょう。主人公は、中小企業ナミフクDMサービスのちょっと冴えない若手社員、不破雷蔵(ふわ・らいぞう)。  雷蔵の職場、ナミフクDMサービスはオフィス移転に失敗し、急遽主人公雷蔵のアパートの部屋を無理やりオフィスにすることに。雷蔵は、自分の生活空間を会社に占領されてしまいます。  この時点ですでにありえない展開なのですが、さらに中卒15歳の女の子、氷山一角(ひやま・いずみ)が雷蔵の後輩として入社。このいずみこそ、同僚であり、後輩であり、妹的存在でもあり、恋人でもある、我々男子の理想を詰め込んだ「もちる女子」なのです。  いずみは、15歳のため自分一人ではアパートを借りることもできず、やむを得ず会社……つまり、雷蔵の家に住み込むことになります。冴えないサラリーマンが自分に好意を持つ15歳の女の子と一つ屋根の下で同居、しかも顔はあどけないくせに大人顔負けのエッチなカラダを装備しているという……なんという淫行スレスレの展開でしょうか。  2人きりのシーンでは、「先輩、あたしのこと、嫌いですか? それとも……なんとも思ってませんか?」などの年上殺しのセリフが次々飛び出す、うらやまけしからん展開がひたすら続きます。もし自分が雷蔵の立場だったら……手を出さずに我慢できるのか? 16歳になったら、手を出してもいいのか? 等々、男子読者の妄想は無限に広がっていくのです。自分、40代ですけど、胸キュンいいすか?
71BltEGDA-L._SL1200_.jpg
■『夢かもしんない』  こちらは、星里版『ゴースト』とでも言うべきラブコメ作品です。主人公、加勢晴夫は妻子持ちですが、ワーカホリック気味で家族を顧みないため、夫婦仲は冷め始めています。  日々の生活にお疲れな加勢の前に突然現れた幽霊の女の子、夢野すみれ。すみれはなぜか加勢の前にだけ現れ、仕事も家庭もうまく行っていない加勢を「ハッピーにしてあげる」と明るく励ましてくれます。そんなすみれの正体は、若くして亡くなった人気アイドルだったのでした。  さらに、加勢は会社の後輩、佐藤ひろみ(癒やし系)に慕われ、「今日は一人に……しないで下さい……」なんて先輩殺しのセリフを繰り出された結果、不倫関係になってしまいます。でも、不倫のシーンすらも爽やかで全然ドロドロしてないあたりが、星里先生の手腕を感じます。  果たして、このまま加勢の家庭は壊れてしまうのか? そして、すみれが加勢の前に現れた目的とは!? 妻と、娘と、会社の後輩と、アイドルの幽霊。つまり、3人+1ゴーストの女子たちに囲まれて、いろいろヤキモキしちゃうラブコメです。
61ull9Qll+L._SL1200_.jpg
■『オムライス』  一つ屋根の下、美女に囲まれて生活したい、そんな男のロマンであるハーレム状態をついに実現してしまったマンガ、それがこの『オムライス』です。  主人公・今井光は、ワケありのバツイチ無職青年。そして、登場する女子たちは今井珠子(歯科医)、羽子(アーティスト系)、葉子(女子大生)、緑(不思議ちゃん)という美人四姉妹。  無職で生活に困窮していた光は、ひょんなことから同じ今井姓というだけの理由で、今井四姉妹の住む家に居候することになります。マンガとはいえ、ここまで豪快かつ無理やりなハーレム設定は、なかなかお目にかかれません。  光は、今井四姉妹の四女、緑(不思議ちゃん系)と恋仲になるのですが、途中から光の元嫁、稲森はるなが光のことが忘れられず押しかけ、元女房として今井家に居候するようになり、緑とはるなの奇妙な三角関係が勃発。 結果として、女子5人の中に男1人というハーレム状態、それって、どう考えてもエロゲの設定だろといわんばかりのカオスさで、これまたうらやまけしからんのですが、一つ屋根の下に男女が入り乱れる異常な雑居状態でもごく普通にラブコメを展開してしまうのが星里作品の特徴であり、「住宅ラブコメ」の伝道師といわれるゆえんでもあります。
71Qswz8BRWL._SL1200_.jpg
■『ルナハイツ』  『オムライス』で実現した男の夢、ハーレム状態をさらにパワーアップさせたのが、この『ルナハイツ』です。  主人公は、婚約者・友美によって一方的に婚約破棄された男、南條隼人。南條は新婚生活を送るために購入した一軒家を、ローンの支払いのために女子寮として会社に提供することになります。しかし、家主である南條は男一人、その女子寮(ルナハイツ)に同居することになるのです。  今風にいえば、シェアハウスってことなんでしょうけど、やっぱり女子の中に男一人というのが普通のシェアハウスとは根本的に違うところです。ハーレムシェアハウスです。いやー、ありえない。でもうらやましい…・・・。なぜこんな夢設定を毎回考えつくんでしょうか。  同居する女子寮メンバーは大月窓明(おおつき・まどり)、日高りん、茅ヶ崎裕子、土屋重子の4人。この中で、ヒロインのまどり(サバサバ系)と、りん(ロリ系)が南條をめぐって三角関係に。さらに南條を振った元婚約者・友美が浮気相手との子を宿した妊婦姿で登場。普通に考えると、どのツラ下げて……って感じなのですが、なんと友美も同居してしまいます。ここまでいくと、カオスすぎて胸キュンどころではありません。 ***  そんな感じで、男のロマンをこれでもかといわんばかりに過積載したモテ設定。読後感のいい、ほのぼのストーリー。そして、なんといっても、ほぼ全員がかわいい「もちる女子」……。星里先生の作品は、今宵もおじさんをキュンキュンさせてやまないのです。おじさんおじさん言ってますが、青年誌の掲載作品が多いというだけで、おじさん以外でももちろん楽しめますよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

イノベーションか、それとも凶器か――人間とロボットの共生のカギを握る『ドローンの衝撃』

51OQbyt1o7L.jpg
『ドローンの衝撃』(扶桑社新書)
 4月に起こった、首相官邸ドローン落下事件を覚えているだろうか?  ネガティブな事例であったためか、同事件はドローンの名を日本で広く知らしめる契機となった。あれから約3カ月。ドローンという言葉は、一般に広く定着したかのように見える。現在、日本ではドローンに対する世論が二分されている。ドローンを商業や趣味に積極的に採用しようという企業や個人が増えつつある一方で、自治体を中心に飛行制限・禁止するための議論が活発に行われている。イノベーションか、規制か――。これまで世界を変えてきたテクノロジー同様、ドローンもまた、メリットとデメリットを推し量られながら、社会における立ち位置を見定められているという状況にある。     扶桑社新書『ドローンの衝撃』では、ドローンとは何かという問いに始まり、日本および世界の関連市場の規模や関係者の声を解説していく。また、その未来の展望についても、荒削りではあるがブループリントを提示していく。  特に注視したいのが、ドローンを取り巻いた議論を日本国内の視点だけではなく、国際的な視点から俯瞰している点だろう。ドローン市場は、日本単独で存在するものではない。本書は、ドローンの開発、流通、そしてシェア争いがすでに激しく繰り広げられ始めているということを指摘しつつ、各国のプレイヤーたちの声を拾い、その全体像の一端を解き明かそうとする。また同時に、日本が無人飛行機の分野で優れた歴史を持つことや、世界のライバルと比べて優位な点を持つことについても、関係者へのインタビューで明らかにしていく。    また、同書には、以下のような問いが提起されている。    「ドローンの未来に必要なのは世論の同意」 「ドローンはロボットと人間の共生の第一幕を開く」  この2つの問いは、最近のドローンの現場で盛んに叫ばれているテーゼである。  現在、ロボット関連市場が世界経済における新たな投資先として注目されているものの、商業用に広く普及・利用することが難しいという問題点を抱えている。ここにはさまざまな問題があるのだが、ひとえにリスクや人間への影響がまだ定かではないという点、言い換えれば、人間とロッボトのあるべき関係がまだはっきりしていないという要因が大きい。本書では、そういう状況を打開し、ロボットと人間の共生の先鞭となる存在としてドローンに注目する。  またそれは、ロボット大国として名高い日本の未来にも少なからず影響するのではないかと、本書は指摘する。日本のロボット市場は現在約6,000億円といわれているが、安倍政権は「今年はロボット革命元年だ」とし、ロボット産業の振興を経済政策の目玉のひとつとして据えている。15年1月に最終的にまとめられた「ロボット新戦略」では、2020年までに4倍の2兆4,000億円まで市場を拡大することを目標に掲げた。  日本が、ロボット大国としてさらなる発展を遂げるか否か。ドローンの市場、法制度、そして世論がどのように変遷していくかが、その未来を占うひとつの試金石となりそうである。  なお、同書は技術を解説した専門書ではない。どちらかというと、ビジネスの全体を俯瞰しようという意図がある。そのため、ちまたで話題になっているドローン関連市場の現在地に興味がある方々にとって、有益な新書になるはずである。

「人はそれぞれ自由に生きればいい」蛭子能収の最強の生き方を学ぶ

519km9hmRbL.jpg
『蛭子能収のゆるゆる人生相談』(光文社)
 クズだなんだと言われようともテレビに引っ張りだこで、大人気の蛭子能収。最近では、自由に生きる蛭子さんの人生哲学も注目されている。そんなノッてる蛭子さんが読者の人生相談に答える、週刊誌「女性自身」(光文社)のコーナーが書籍化された。『蛭子能収のゆるゆる人生相談』がその本。  ゆるゆるとはいえ、中にはヘビーな相談内容もある。そんな悩みに対し「はっきり言ってめんどくさいです」と言いつつも、的確な回答や金言を連発している。 「上に立つ立場になっても実力がないのなら、立派なことをしようと力まない方がいいですよ。(中略)上司に適しているかどうかなんて自分じゃ決められないし、ダメだと思われたっていいじゃないですか」(店長を任されるプレッシャーに悩むエステティシャンへの回答) 「オレは、仕事をしている間は、雇い主に自分の考えも時間も拘束されていると割り切っているので、嫌なことがあっても我慢できますね」(職場のわがままな上司に悩む女性への回答)  どうだろう、蛭子さんの、この職業観。できないものはできない。自分ができることを、自分のやり方でやるしかないのだ。ダメな自分を受け入れられる上司なら、ダメな部下への理解もあるだろう。結果的に全員がハッピー。なんなの、この名回答。  そして、仕事は自分の考えさえも拘束されることを理解していれば、煩わしい人間関係の悩みからも解放される。ただ仕事をして、お金をもらうのみ。余計なことは考えない。つまり、自我を捨てよということだろうか。すごすぎる……。悟りを開いていらっしゃるのでしょうか、蛭子さんは。    ほかにも、 「自由で楽しく生きるためには、後ろめたい気持ちにならないことも大事。そのためには、しっかりルールを守らなければいけません」(厳しい校則に納得がいかない女子高生への回答)  など、「おっしゃる通り」と感心する回答ばかり。まったく、誰よ、蛭子さんのことをクズだなんていう人は。失礼よ!  とはいえ、やっぱりクズかも……というエピソードもちゃんとある。 「事務所には美人マネージャーとワンランク下のマネージャーがいたんです。美人には「どうせオレなんか」と思い、美人じゃないほうのマネージャーに結婚しようと付きまとったことも。でも、すぐに彼女も辞めちゃったんです。このときに「ブスに限って、いい男を求めている」と気づけたのですが、それも彼女を作ろうと行動したからこそ」(交際経験のない49歳女性への回答)  付きまとわれて仕事も続けられなくなった女性マネージャーをブス呼ばわりした挙げ句、教訓を得るという身勝手さ……! ドイヒー!  しかし、本人はいいことを言っているとか、ひどいこと言っているとか考えずに、ただ自由に楽しく生きているだけ。そんな蛭子さんに、誰が文句を言えましょうか。蛭子さんのように生きられたら、どんなにいいことだろう。そんな蛭子さんの生き方を学べる本書は、今よりちょっとだけかもしれないけれど、人生をラクにしてくれるはずだ。 (文=ナカダヨーコ)

10年分のギネス記録が、この1冊に!『人はなぜ世界一が好きなのか?』

51KJGAoBEZL.jpg
『人はなぜ世界一が好きなのか?』(KADOKAWA)
 「世界一」は響きがいい。世界一の何々と聞くと、なんだかものスゴイ偉業を成し遂げているように聞こえる。たとえ、その内容が口にストローを400本詰め込んだり、洗濯ばさみを顔に161本とめたり、耳毛が18.1cmも伸びている、というだけだとしても――。  『一歩踏み出す人のためのビックリ挑戦・記録図鑑 ギネス世界記録 人はなぜ世界一が好きなのか?』(KADOKAWA)は、数々の世界一の記録が収められた『ギネス世界記録』年鑑本の過去10年分をひもとき、独自の目線でギネス世界記録をまとめた1冊である。選者には「デイリーポータルZ」の関係者、作家の宮田珠己氏、書籍デザイナーの早川いくを氏らが名を連ね、1分間勝負、集まる、おもしろ夫婦、ギネス記録男、走る家具、スプーン系、からだ自慢など、様々な切り口のギネス世界記録がピックアップされている。  また、実際に世界一になった個人や企業・団体のサクセスストーリーのインタビューも充実し、冒頭にはなんと「高須クリニック」の高須克弥院長が登場。まさか、整形の回数でギネス世界記録か!?  と思いきや、そうではない。高須院長いわく「自分の体で実施した整形回数」というのを出そうかと思ったけれど、もう数が多すぎちゃって。初めのうちは全部テレビでオンエアしたり、動画を撮ったりして記録してたけれど、今はもう気が向いたらやっちゃいますからね。いちいち記録に残ってない」とのことで、じゃあなんの記録かというとゴルフなのだ。一体ゴルフでどんな記録を打ち立てたのか、はたまたなぜ記録に挑戦したのか、高須院長にとってギネス世界記録とは? などが語られ、普段とは違う高須院長の一面を知ることができる。  また、消しゴムの削りカスをヒモにして、9.19mつなげた「最も長い消しゴム削り」でギネス世界記録を打ち立てた田中優光君のインタビュー内容には心ゆさぶられる。1999年生まれの田中君は、中学2年生の時にギネス世界記録に挑んだ。これまでに消しゴムを使った記録がないことを事前に確認し、10種類以上の消しゴムを使い比べて、どの消しゴムが削りカスが長くつなげられるのかを実験。当日は「公共の場所で記録挑戦を実施すること」という規定にのっとり、どんな状況でも安定した削りカスが出せるようにと、まな板を持参して記録に挑み、9m超えの大記録を打ち立てた。写真の印象では物静かで控えめな見た目の彼だが、インタビューでは「正直、目立ちたいという気持ちもありました」という若者らしい本音も垣間見せる。ギネス世界記録取得後、担任の先生から「やったな!」と握手を求められ、教室のみんなに拍手してもらい、記念撮影もした。図書室に置かれた『ギネス世界記録』には、“田中君が達成した”とふせんが貼ってあり、それまで話したこともなかった生徒から質問攻めに遭ったりもしたという。これぞ、まさに青春。世界一を成し遂げたことで人気者になれる、という素晴らしいエピソードではなかろうか。  本書には本気ですごいと驚く記録よりも、圧倒的に「なんだって、こんな記録に挑戦しようと思ったんだろう?」「なんだソレ!?」とツッコミどころ満載の記録が次々に登場する。ひょっとしたら自分も挑戦できるかもという内容も多数あり、ギネス世界記録の申請&挑戦の仕方もまとめられているので、いっちょ世界一に挑んでやろうかと意気込んでみるのもいいかもしれない。 (文=上浦未来)

ネットの寵児「LINE」はどこへ向かう? 突然の上場廃止のもくろみとは――

yabailine0603-1.jpg
『ヤバイLINE 日本人が知らない不都合な真実』(光文社新書)
 5月27日、LINEの出澤剛社長は日本外国特派員協会で講演し、今後のLINEの世界戦略について言及。WhatsAppなど、世界の強豪メッセンジャーアプリに挑む上での課題、また自社サービスの優位性について語った。  会見後、記者団からは、IPO(新規株式公開)に可能性について質問が飛び交った。が、出澤氏は、明言を避け、従来通りの見解を示した。 「企業の成長にとって、資本の調達は非常に重要な要素なので、IPOを含めた選択肢は、常に検討したり議論したりしています。ただ、具体的に決まっていることはありません」(出澤氏)  昨年、上場の目玉として注目を浴び、突如、延期を発表したLINE。その理由は果たしてなんだったのか、また今回も上場の名言を避けた理由はなんなのか? 光文社新書『ヤバイLINE 日本人が知らない不都合な真実』では、その複雑な実情について分析している。  この本を読んだ感想で言うと、その複雑さの最も大きな要因は“親会社との関係性”にありそうである。LINEの親会社は韓国最大のIT企業「NAVER」である。NAVERは、GoogleやYahoo!などを押しのけ、韓国シェアナンバー1検索ポータルとして盤石の地位を築いており、LINEの成功でさらに盤石な体制を築きつつある。両社は親会社と子会社という関係だが、相互に依存し合っている。LINEが上場するかどうかは、NAVERなしには考えられない問題なのだ。  今年もLINEは上場を騒がれている。であれば、韓国NAVERの挙動もともに観察すべきである。この本には、そうしなければならない理由がいくつも書かれている。  また『ヤバイLINE』には、次のような一節がある。 「日本国内のユーザー数は約5,800万人。これは日本の人口の約45パーセントに相当する。一日に利用するユーザーの割合は、63.6パーセント。単純に見て、日本人4人にひとりがLINEを毎日使用している計算になる」  ここ数年で、LINEを取り巻く環境は大きく変わった。何よりも変わったのは、LINEに対する日本人の感覚である。本書では、「LINEは日本の国民的プラットフォーム」になったと指摘する。  一方で、LINEはどう変化したのだろうか? どのようなビジネスを展開し、いま何を目指そうとしているのだろうか? また現在、LINEが国民的に普及したことにより、トラブルも日常茶飯事になった。イジメ、売春、犯罪などなど……。LINE社は、インフラとしての社会的責任をどう考えてくるのだろうか?  本書は、そんなさまざまな問いの答えを見つける上でヒントを与えてくれる。同時に、LINEを使うすべての人が、ふと立ち止まって考えなければならないことが込められている。特に、LINEを使う子を持つ親には必見の一冊である。

日韓国交正常化50周年、本当にこのままでいいのか?『韓国インテリジェンスの憂鬱』

nikkaninteri0601.jpg
『韓国インテリジェンスの憂鬱』(KKベストセラーズ)
 今年6月22日は、日本と韓国にとって、ちょっと特別な日ということをご存じだろうか?日本と韓国はその日、国交を結んでちょうど50周年を迎えるのだ。しかし現在、国交正常化50周年を記念する祝福ムードはまったくなく、むしろ日韓関係は過去最悪に冷え込んでいるとさえいわれている。  過去最悪の日韓関係、その原因はどこにあるのだろうか――。それを韓国人に、しかも名だたる知識人に直接ぶつけてみた意欲作が『韓国インテリジェンスの憂鬱』(KKベストセラーズ)だ。  本書には、6人の韓国人識者が登場する。トップバッターは、ヒュンダイ自動車の元CEOで、国会議員を務めたこともあるイ・ゲアンという人物。ヒュンダイ自動車といえば、韓国が“世界ブランド”と自賛する自動車企業だが、日本の自動車技術を取り入れて成長した企業だ。その元CEOイ氏は、日韓の経済協力についてこんなことを話している。 「1962年に韓国が初めて経済開発計画を行ったときは、何でも日本から学べばいいと考えていました。また、日本にもその意思がありました。日本にとって韓国は“生徒”だったのです。両国は長らく先生と生徒の関係でしたが、いつしかその差は縮まりました。先生と呼ぶには生徒が大きくなりすぎましたし、かといって相互に恩恵を与えられるほど生徒が成長したわけでもないという時代を迎えています。相互関係というのは、互いに補完的か、代替的な関係でなければ成り立たないのですから、現状のままだとお互いにメリットは少ない」(本文より)  最近、「日韓の経済協力にはメリットがないのでは?」と考える人が増えているが、イ氏も同じように見ているのだ。  本書にはその他、弁護士、歴史学者、社会学者などが登場するのだが、特に興味深かったのは韓国外務省(外交通商部)で東北アジア局長を務めたチョ・セヨン氏のインタビュー記事だ。チョ氏は、1998年の日韓パートナーシップ宣言の韓国側担当者で、小渕恵三首相と金大中大統領の首脳会談で通訳も務めたほどの人物。こちらも日韓関係に精通した、なかなかの人物というわけだろう。 ただ、他の登場人物が“一人語り調”でまとめられているのに対して、チョ氏の部分だけは編著者がわざわざ前書きで「本人の希望もあってインタビュー形式で掲載した」と断っており、なにやら特別な事情があったようにも見える。実際に、チョ氏のインタビューはかなり刺激的な内容。すべてを紹介できないのが残念だが、例えば、日本の嫌韓現象の原因についての返答はこうだ。   「日本の立場としては、日本の経済協力によって韓国が豊かになれたのだから、日本に対して態度も良くなると考えていたのに、韓国は豊かになると過去問題を主張するようになりました。(中略)そんな中で韓国が中国と関係を深め、日本に反発するので、裏切られたという思いもあるのかもしれません。その余裕のなさが嫌韓感情として表れるのでしょう。慰安婦問題、独島(竹島の韓国呼称)問題などのきっかけがあると、寂しい心が嫌韓感情として表れる。ヘイトスピーチもそうです」(本文より)  なんとも一方的な意見だが、もし現在の韓国外務省の感覚も同じようなものであるとしたら、日韓関係がギクシャクする理由もなんとなくわかる気がする。誤解のないように断っておくが、本書に登場する人物には、もちろん「ハッ!」とさせる鋭い指摘も多い。  いずれにせよ、韓国知識人の“レベル”を知る上でも、役に立ちそうな『韓国インテリジェンスの憂鬱』。韓国の国内問題、韓国人の日本観、そして次の日韓関係50年を考える上で、目を通しておいて損のない一冊だ。

“迷”作短歌集が文庫本で復刊!『念力家族』が短歌の常識を覆す!

nennrikikazsoku05226.jpg
『念力家族』朝日新聞出版
 「短歌」といえば、俳句と並び日本が生み出した代表的な定型詩であり、万葉の昔から現代まで読み継がれてきた言葉の芸術。そこには、日本人が古来から育んできた美しき心が映し出されている。西行法師は「願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃」と自分の死を見つめ、在原業平は「名にし負わば いざ言問はん都鳥 わが思ふ人はありやなしやと」と京都を離れた悲しみを綴った。まさにクールジャパン。31文字が織り成す叙情的な風景こそが、日本民族の豊かな感性なのだ!  ……だが、歌人・笹公人の歌集『念力家族』(朝日文庫)に収められている短歌は、どうも様子が違っている。 「ベランダでUFOを呼ぶ妹の 呪文が響く我が家の夜に」 「ワシントンの伝記を読みし弟が 庭の桜の木を伐っている」 「エジソンに勝たんと発明繰り返す 父の背中の鳩時計鳴る」 「中華丼天丼カツ丼親子丼 牛丼うな丼兄の食欲」  ここには、「わび・さび」や、「美しい日本」はない。その代わりに、キャラ立ちした「念力家族」たちのバカバカしくも愛すべき姿が見えてくるのだ!  もともと、2003年に1,000部限定の通信販売で単行本として発売された本書。通信販売としては異例の好評を博し、04年にインフォバーンから一般発売されると、一躍、新人歌人・笹公人の名前を世に知らしめた。それから12年、今年3月にはなんと『念力家族』がNHK Eテレでまさかのドラマ化という展開に! これを記念して、文庫本として復刊されることとなったのだ。  1975年生まれの笹が繰り出す作品の数々は、まるで深夜ラジオの投稿ネタのようなシュールな笑いに満ちている。そのひねくれたユーモアセンスと、鋭く突き刺さる言葉の数々が、糸井重里、山田太一、大林宣彦、そして蜷川幸雄ら、各界の一流どころの感性を刺激する。格調高い「短歌」のイメージを覆すその作風は、作者自ら「お笑い短歌」と表現されているほどだ(インタビューで、笹は「爆笑問題を見てお笑い芸人への夢を諦めた」と語っている)。もともと、寺山修司に影響を受けて短歌を志した笹だが、寺山が、演劇や映画などさまざまなジャンルを横断しながら活躍したように、テクノポップバンドのミュージシャンやラジオパーソナリティとして活動していることも、型破りな作品を生み出し続ける一因だろう。  そんな笹が生み出した短歌は、短歌の常識を覆すものばかり。念力をモチーフにした短歌が異例なら、ビッチの美人生徒会長を描くことも異例だし、金星人が登場する短歌など聞いたことがない! ほとんど冗談としか思えない設定のキャラばかりがひしめき合い、31文字の宇宙には独特の世界観が広がっているのだ。  もはや、ツイッターでは「偶然短歌bot」がWikipediaから勝手に短歌(のようなもの)を生成している時代。日本が生み出した最古の文学である短歌も、日々アップデートが繰り返され続けなければならないのだ。シュールな笑いと、バカ家族の日常が醸し出すノスタルジーが詰め込まれている21世紀型短歌は、これまで歌集など手に取ったことがない人にこそ、ぜひ読んでほしい!