読者にも好評! 都条例の不安の中で生まれた前代未聞の「18禁BL」がもたらす可能性

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リブレ出版公式サイトより
 男性同士の恋愛やセックスを描くボーイズラブ(BL)マンガ。従来、男性向けと違い、18禁表示を行ってこなかったこのジャンルに堂々18禁を看板に掲げた書籍が登場し、注目を集めている。  この書籍を発行したのはBLジャンルの大手として知られるリブレ出版だ。話題のアンソロジー形式の単行本『PINK GOLD』は、「BL。なのに18禁。それって…超デンジャラス!!」をキャッチコピーに数量限定発売。BLを数多く取り扱う全国書店のほか、ネットでも販売されている。  まず気になるのは、BLジャンルでは18禁コーナーを設置していない書店の店頭で、どのように区分陳列し、販売しているかというところ。BLジャンルを多く取り扱う都内の某書店を訪れてみたところ、ほかの書籍と同じく平積みにされているが「18歳未満には販売できません」「レジで年齢をお聞きする場合がございます」という文面が記された紙と一緒にシュリンクされた状態。店頭で18歳未満が中身を読むこともできないし、対面販売のため、客が誤って購入する可能性を防ぐ十分な措置を取っていた。  この単行本が企画された契機は、一大騒動の末に改定された東京都青少年健全育成条例が施行された昨年7月のことだ。この条例は改定により「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現する」雑誌や書籍を規制(東京都青少年健全育成審議会による不健全図書指定)できるよう求めたものだが、「規制される内容が曖昧」「表現を萎縮させる」として大きな反対運動が繰り広げられる中で成立したもの。改定された条例が施行されてから一年を過ぎて、新たな条文に抵触する「不健全図書」が出ていないのは本サイトでも報じている通りだが、やはり現場での不安の声は大きかった。今回、『PINK GOLD』の編集を担当した、岩本朗子氏は語る。 「条例が施行されてから不安は拭えませんでした。作家さんの中からも『不健全指定されたらどうしよう』とか『指定されて書店に置いてもらえなかったらどうしよう』といった不安の声をお聞きしました。編集部のスタッフからも『作家さんには自由に表現してほしい。でも、作家さんに、どんな助言をすればいいのか?』という意見が挙がり、編集部内で何度も話し合いました」  岩本氏の発言からは、条例改定反対の立場の主張の一つである「表現が萎縮する可能性」が、現実のものとなっていることがうかがえる。そうした中で、流れを変えるきっかけになったのは、書店から寄せられた声だ。 「売り場担当の方から作家さん宛にいただいたお手紙の中に、『仮に不健全指定されても、返品しないで区分陳列する道を模索したい(筆者注=不健全図書指定を受けた雑誌・単行本を、即返品する書店は多い。Amazonでも、東京都で不健全図書指定を受けたものは、すぐに消える)。それが、作家さんのために自分たちにできることだから』というメッセージがありました。そんなこともあり、じゃあ18禁本を出せないかなと考えたんです」(岩本氏)  ただ、前例のない(これまで18禁扱いになっていたのは、BLかゲイマンガか判然としないものだけ)、BLに「成年コミック」の黄色い楕円マークをつけて販売することは、簡単ではなかった。まず、書店のBLコーナーに18禁の棚は設けられていない。そのため、書店で売ってもらえない可能性、あるいは店頭に並んでも女性は恥ずかしくて手に取らないのではないかという懸念があったのだ。 「まさに未知の領域ですから、まったく売れないかもしれないけど、それでも出版してみようと決まったんです」(同)  こうして始まった編集作業。18禁だからと躊躇する作家はおらず、「久々に自由に描くことができた」と喜ぶ声が多かったという。 「とにかく作家さんには自由に描いてほしいし、読者さんが望むものを作っていきたいと思っていました。もちろん、全年齢向けでも表現の部分はあまり縛りを設けず、自由なテーマで描いてください、とお願いしていますが、今回はあらためてその部分を強調しました」(同)  問題なのは性器の消しの部分だが、これもやはり未知の領域。そこで、男性向けを参考に30冊あまりを読み込んで「参考」にしたのだとか。これらのエピソードから、誰もやったことがない領域を切り開いていく作家と編集の情熱を伝わってくる。  その情熱は読者に届いているようで、ネット上や編集部に寄せられている反応は「おおむね好評」なのだとか。 「官能的な描写が読めるだけではなく、近親相姦や18歳以下のキャラクターのエッチといった全年齢向けでは描きづらくなっている作品が収録されているので、読み応えがあったという意見もいただいています」(同)  店頭での売り方についても、冒頭で述べたように年齢確認はきちんと行われているようだ。また、どこの書店でもシュリンクはかけて販売するように配慮してくれたり、店頭には並べずに引換券を置き、レジに持ってきたら渡す形で販売という書店もあるという。  また表紙デザインも、女性がレジに持っていく時に恥ずかしくないように配慮したり、男性向けにはない気遣いがなされている。ただ、男性向けと同様の「成年コミック」の黄色い楕円マークは、ちょっと違和感がある。 「女性向けの成年コミックマークを作りたいなと、デザイナーさんとも相談したんですが目立つと目をつけられるのではないかなと不安もあって……。だから、最初は男性向けと同じマークにしてみました」(同) 現在、出版社が利用している「成年コミックマーク」は遡れば、90年代前半に全国的にエロを扱う漫画が「有害」だとバッシングを受けた「有害コミック騒動」を機に、1991年に出版倫理協議会(日本雑誌協会・日本書籍出版協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会の4団体による自主規制団体)が導入したもの。賛否はあるだろうが、「18禁BL」が、今後量産されていくならば女性向けの新たなマークを導入するのは、是であると筆者は考える。8月の東京都青少年健全育成審議会ではBLから『愛玩奴隷 クライマーズハイ!』(ジュネット)が不健全図書指定を受けているし(正直、男性向けならマークをつけるレベルである)、BLもマークを導入することで、多彩な表現の場を確保できることになるのではあるまいか。来年以降、書店のBLコーナーにも18禁の棚が出現するかもしれない。 (取材・文=昼間たかし)

読者にも好評! 都条例の不安の中で生まれた前代未聞の「18禁BL」がもたらす可能性

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リブレ出版公式サイトより
 男性同士の恋愛やセックスを描くボーイズラブ(BL)マンガ。従来、男性向けと違い、18禁表示を行ってこなかったこのジャンルに堂々18禁を看板に掲げた書籍が登場し、注目を集めている。  この書籍を発行したのはBLジャンルの大手として知られるリブレ出版だ。話題のアンソロジー形式の単行本『PINK GOLD』は、「BL。なのに18禁。それって…超デンジャラス!!」をキャッチコピーに数量限定発売。BLを数多く取り扱う全国書店のほか、ネットでも販売されている。  まず気になるのは、BLジャンルでは18禁コーナーを設置していない書店の店頭で、どのように区分陳列し、販売しているかというところ。BLジャンルを多く取り扱う都内の某書店を訪れてみたところ、ほかの書籍と同じく平積みにされているが「18歳未満には販売できません」「レジで年齢をお聞きする場合がございます」という文面が記された紙と一緒にシュリンクされた状態。店頭で18歳未満が中身を読むこともできないし、対面販売のため、客が誤って購入する可能性を防ぐ十分な措置を取っていた。  この単行本が企画された契機は、一大騒動の末に改定された東京都青少年健全育成条例が施行された昨年7月のことだ。この条例は改定により「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現する」雑誌や書籍を規制(東京都青少年健全育成審議会による不健全図書指定)できるよう求めたものだが、「規制される内容が曖昧」「表現を萎縮させる」として大きな反対運動が繰り広げられる中で成立したもの。改定された条例が施行されてから一年を過ぎて、新たな条文に抵触する「不健全図書」が出ていないのは本サイトでも報じている通りだが、やはり現場での不安の声は大きかった。今回、『PINK GOLD』の編集を担当した、岩本朗子氏は語る。 「条例が施行されてから不安は拭えませんでした。作家さんの中からも『不健全指定されたらどうしよう』とか『指定されて書店に置いてもらえなかったらどうしよう』といった不安の声をお聞きしました。編集部のスタッフからも『作家さんには自由に表現してほしい。でも、作家さんに、どんな助言をすればいいのか?』という意見が挙がり、編集部内で何度も話し合いました」  岩本氏の発言からは、条例改定反対の立場の主張の一つである「表現が萎縮する可能性」が、現実のものとなっていることがうかがえる。そうした中で、流れを変えるきっかけになったのは、書店から寄せられた声だ。 「売り場担当の方から作家さん宛にいただいたお手紙の中に、『仮に不健全指定されても、返品しないで区分陳列する道を模索したい(筆者注=不健全図書指定を受けた雑誌・単行本を、即返品する書店は多い。Amazonでも、東京都で不健全図書指定を受けたものは、すぐに消える)。それが、作家さんのために自分たちにできることだから』というメッセージがありました。そんなこともあり、じゃあ18禁本を出せないかなと考えたんです」(岩本氏)  ただ、前例のない(これまで18禁扱いになっていたのは、BLかゲイマンガか判然としないものだけ)、BLに「成年コミック」の黄色い楕円マークをつけて販売することは、簡単ではなかった。まず、書店のBLコーナーに18禁の棚は設けられていない。そのため、書店で売ってもらえない可能性、あるいは店頭に並んでも女性は恥ずかしくて手に取らないのではないかという懸念があったのだ。 「まさに未知の領域ですから、まったく売れないかもしれないけど、それでも出版してみようと決まったんです」(同)  こうして始まった編集作業。18禁だからと躊躇する作家はおらず、「久々に自由に描くことができた」と喜ぶ声が多かったという。 「とにかく作家さんには自由に描いてほしいし、読者さんが望むものを作っていきたいと思っていました。もちろん、全年齢向けでも表現の部分はあまり縛りを設けず、自由なテーマで描いてください、とお願いしていますが、今回はあらためてその部分を強調しました」(同)  問題なのは性器の消しの部分だが、これもやはり未知の領域。そこで、男性向けを参考に30冊あまりを読み込んで「参考」にしたのだとか。これらのエピソードから、誰もやったことがない領域を切り開いていく作家と編集の情熱を伝わってくる。  その情熱は読者に届いているようで、ネット上や編集部に寄せられている反応は「おおむね好評」なのだとか。 「官能的な描写が読めるだけではなく、近親相姦や18歳以下のキャラクターのエッチといった全年齢向けでは描きづらくなっている作品が収録されているので、読み応えがあったという意見もいただいています」(同)  店頭での売り方についても、冒頭で述べたように年齢確認はきちんと行われているようだ。また、どこの書店でもシュリンクはかけて販売するように配慮してくれたり、店頭には並べずに引換券を置き、レジに持ってきたら渡す形で販売という書店もあるという。  また表紙デザインも、女性がレジに持っていく時に恥ずかしくないように配慮したり、男性向けにはない気遣いがなされている。ただ、男性向けと同様の「成年コミック」の黄色い楕円マークは、ちょっと違和感がある。 「女性向けの成年コミックマークを作りたいなと、デザイナーさんとも相談したんですが目立つと目をつけられるのではないかなと不安もあって……。だから、最初は男性向けと同じマークにしてみました」(同) 現在、出版社が利用している「成年コミックマーク」は遡れば、90年代前半に全国的にエロを扱う漫画が「有害」だとバッシングを受けた「有害コミック騒動」を機に、1991年に出版倫理協議会(日本雑誌協会・日本書籍出版協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会の4団体による自主規制団体)が導入したもの。賛否はあるだろうが、「18禁BL」が、今後量産されていくならば女性向けの新たなマークを導入するのは、是であると筆者は考える。8月の東京都青少年健全育成審議会ではBLから『愛玩奴隷 クライマーズハイ!』(ジュネット)が不健全図書指定を受けているし(正直、男性向けならマークをつけるレベルである)、BLもマークを導入することで、多彩な表現の場を確保できることになるのではあるまいか。来年以降、書店のBLコーナーにも18禁の棚が出現するかもしれない。 (取材・文=昼間たかし)

謎の鬼才が贈る、世にもシュールな短編DVD『喜安浩平の世界』

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痩せた男A 「そっとな、そっと……」 ガッチリ男B 「最初オレがゆっくり押すから、お前は足を上げてじっとしてればいい」 痩せた男A 「あアッ――、俺、こんな態勢初めてだ……」 ガッチリ男B 「そりゃ誰だって最初は“初めて”サ……。イクぞ!」  これは男2人の逢瀬のワンシーン、ではない。俳優で声優の喜安浩平氏が、脚本・演出・出演をすべて担当したアニメーションDVD『喜安浩平の世界』(キングレコード)に出てくる第2話「はじめての自転車」での1コマである。『はじめの一歩』(日本テレビ系)や『テニスの王子様』(テレビ東京系)などを代表作に持つ喜安氏なだけに、メジャーどころを狙った作品なのかと思いきや、これがえらくやりたい放題暴れてくれているのだ。
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 全8編のアニメーションはすべて会話劇。第1話「はじめてのインタビュー」、第2話「はじめての自転車」、第3話「はじめてのお祭り」と、各話は独立しているものの、どれも“はじめての○○”がテーマになっている。どの話も淡々と進む独特の演出が目立つ中、セリフ、カメラワーク、イラスト、どれをとっても妙に力の入っているのが、冒頭の痩せた男Aとガッチリ男Bが登場する「はじめての自転車」だ。  長髪の痩せた男Aと、チョビヒゲでガッチリ体型の男Bが、(おそらく)自転車の練習をしているのであろう場面から始まる。最初の画面に映っているのは、2人の男性の肩のあたりまで。なぜか両者とも、肌を露わにしている。炎天下での自転車の練習は暑いのだろうか? *** 痩せた男A 「いいか……? そーっと、だからな?」 ガッチリ男B 「分かってるって。なんだよ、臆病だな(ウインクしながら)」 痩せた男A 「こっちは初めてなんだからな! あっちょっと! 手ェ動かしちゃダメだってば!」 ガッチリ男B 「動かしてないって。ホラ……ちゃんと支えてるよ……。間違っても手は離すなよ? どこイッちゃうか分かんないんだから」 ***  もう一度言うが、痩せた男Aの、初めての自転車の練習に、ガッチリ男Bが付き合ってやっているシーンである……たぶん。確かに、自転車の練習では後ろを支えてあげないとならないし、手をハンドルから離すと、“どこイっちゃうか分かんない”のは間違いない。甘酸っぱくいやらしい“練習”はこの調子で続く。 *** ガッチリ男B 「お前、震えてるんじゃないか?」 痩せた男A 「震えてなんかないよ(ハァハァ)」 ガッチリ男B 「頑張れ、キモチイイから……」 ***  一連の掛け合いを繰り返し、ようやく発車に成功したラストシーンで初めて、画面に自転車が映る。「登場人物のセリフは全部、“自転車の練習”でのセリフでしょ? 何か?」と喜安浩平氏の高笑いが聞こえてきそうである……。  しかも、この「はじめての自転車」のみ、第2話、第5話、第8話に収録されている3本立てのシリーズモノ。ただでさえこの手のネタは扱いがナイーブだというのに。もしかして、DVDタイトルの“喜安浩平の世界”って、そういうこと? そういう、新しい世界へご案内ということ、なの……? (文=朝井麻由美)

【東京ゲームショウ2012】TGSフォーラム基調講演にみる、ソーシャルゲーム優位の不変

tgs0467.jpg  「日本ゲーム産業に今、必要なコト ~ゲームビジネス新時代の展望~」と題した第1部に登壇した鵜之澤会長は、確かに市場構造は変化してはいるが、ゲーム市場全体としては衰えていないと強調した。 「どうしてもメディアでは、わかりやすいストーリーとして、家庭用ゲームの本数が落ち、ソーシャルゲームやスマートデバイスに取られている、という書かれ方になる」(鵜之澤会長)  途中に示された2012年CESA白書が出典の棒グラフでは、家庭用ゲームの国内ソフトウェア、ハードウェア出荷規模は、ともに緩やかな右肩下がり。ソーシャルゲームへの移行が進み、そちらが優位に立ちつつあることは間違いない。  ただ、大手6社の業績に大きな変化はない、とするデータも映し出された。  そもそも現在は、ゲームビジネスの構造が変化している時期であり、以前から市場にいたゲームメーカー/パブリッシャーは、それによくついていっている──と鵜之澤会長は評価している。ソーシャルということより、フリートゥプレイ(基本プレイ無料)という入口の設定の仕方のほうが、ゲームに大きな影響を与えているのだと。  新しいアプローチの例として挙げたのは、任天堂の3DSソフト『ファイアーエムブレム 覚醒』(2012年4月発売)。  任天堂の岩田聡代表取締役社長に直接取材して聞き出したという数字は、 ・3DSの国内ネット接続経験率 75% ・有料追加コンテンツDL数 120万 ・有料追加コンテンツ売上 約3.8億円  スタンドアローンで「純ゲーム」を楽しむ傾向が強いと思われがちな任天堂ユーザーですら、オンラインを嗜むということは、受け手の準備もすっかり整い、ゲームそのものから離れているわけではない証だと言いたいのだろう。
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鵜之澤伸一氏。
 バンダイナムコゲームスで6月末からサービスを開始した『ガンダムバトルオペレーション』は、基本無料+アイテム課金ビジネスモデルで、その後2カ月間の累計売上が7億円。7月4日にサービスインしたセガの『ファンタシースターオンライン2』は、その後の2カ月間でユーザーIDが90万IDに達したという。  こうしたコンソールからネットワークへの移行を捉え、市場規模を的確に表した新しい指標がない、その指標を用いて正しい情報発信を行い、日本のゲーム産業は元気だというメッセージを伝え、グローバルな競争に打ち勝ちたいというのがCESAの意向のようだ。  ただ、世界市場における日本製ゲームの地位が低下したのは、技術開発力が相対的に劣化してきたからでもある。的確な情報発信をするだけでなく、質の高いゲームを送り出していかなくてはならないが、その準備はできているのだろうか?  8月30日に開催された『メタルギア』生誕25周年記念イベント「METAL GEAR 25th ANNIVERSARY PARTY」で発表されたデモ『METAL GEAR SOLID GROUND Zeroes』は、海外製ゲームに対抗し、世界に打って出るための武器、FOX ENGINEによるものだった。品質の裏打ちなしに日本製ゲームの復興はない。
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田中良和氏。
 件の「METAL GEAR 25th ANNIVERSARY PARTY」で発表されたソーシャル版『METAL GEAR SOLID SOCIAL OPS』に、ヒントがあるかもしれない。  第2部「スマートデバイスがもたらすソーシャルゲームの進化」に登壇したグリーの田中社長は、席上、グリーに供給される『METAL GEAR SOLID SOCIAL OPS』のトレーラーを公開した。  これまで発表された『メタルギア』シリーズのストーリーを追体験できるというこのゲームは、少なくとも外見的には、従来のソーシャルゲームの枠を超えて家庭用ゲーム並みの品質を保っている。  それ以外にも「ストーリー性のあるゲームで、ソーシャル性を維持したもの」が構想されていると田中社長は言う。  状況としては家庭用ゲーム機が3DCGに移行したPlayStation、SEGASATURNの登場時に近いのだろうか? ドライブゲームなど、従来の家庭用ゲームにあったカテゴリーのソフトを、グリー上に揃えようとしているようにも見える。  ゲーム市場のソーシャル適合化と、ソーシャルゲームの内容の家庭用ゲーム化。この変化がゲーム業界に活気をもたらすことになるのかもしれない。 (取材・文=後藤勝)

トム・クルーズが4オクターブの美声を初披露!『ロック・オブ・エイジズ』

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(C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
 今週は、ミュージカル×映画、文学×映画という2パターンのコラボが楽しめる洋画と邦画の新作を紹介したい。  『ロック・オブ・エイジズ』(9月21日公開)は、80年代に大ヒットしたロックナンバーを中心に構成された人気ミュージカルの映画化。ロサンゼルスのライブハウス「バーボンルーム」で働くドリュー(ディエゴ・ボネータ)とシェリー(ジュリアン・ハフ)は、歌手になる夢を語り合ううち互いを意識するように。そんなバーボンルームに、カリスマロックスターのステイシー・ジャックス(トム・クルーズ)の出演が決まる。だが、酒と女におぼれ自堕落な生活を送るステイシーは、キャリアの曲がり角に立っていた……。  メガホンを取ったのは、やはりミュージカル映画の『ヘアスプレー』(07)やテレビドラマ『glee/グリー』のエピソードも手がけたアダム・シャンクマン監督。若い主役2人は日本ではまだ知名度が低いが、4オクターブの声域を持ちながら意外にも映画で歌うのは初めてというトム・クルーズの熱唱、熱演は必見だ。アレック・ボールドウィンやキャサリン・ゼタ=ジョーンズらベテラン勢も加わって、ジャーニー、ボン・ジョヴィ、スターシップといった80年代を代表するロックバンドの名曲をノリノリで披露。『glee/グリー』音楽総指揮のアダム・アンダースが本作でも音楽総指揮を務めており、“オトナ版グリー”といった趣もある。  一方、『BUNGO~ささやかな欲望~』(9月29日公開)は、昭和の文豪たちが残した傑作短編を、30~40代の気鋭の監督らが映像化したオムニバス作品。全6作品を3作品ずつ「見つめられる淑女たち」編と「告白する紳士たち」編に分け、2編はそれぞれ別料金で上映される。  「見つめられる淑女たち」編に含まれる『注文の多い料理店』は、宮沢賢治の有名な原作を『パビリオン山椒魚』(06)、『パンドラの匣』(10)の冨永昌敬監督が映画化。山で狩猟中に迷子になった藤子(石原さとみ)と左右吉(宮迫博之)は、山猫軒という西洋料理店を見つける。次々に出される奇妙な指示に従い、店の奥へと進んでいく2人だったが……。原作の若い紳士2人を不倫カップルに置き換えた脚本(菅野友恵)が、ストーリーの奥行きと陰影を深めた。冨永監督らしいユーモラスでシュールな世界観とこだわりの音響効果が絶妙だ。同時上映は『乳房』(三浦哲郎原作、西海謙一郎監督、水崎綾女ほか出演)と、『人妻』(永井荷風原作、熊切和嘉監督、谷村美月ほか出演)。  「告白する紳士たち」編に含まれる『握った手』は、坂口安吾の原作を『リアリズムの宿』(03)、『マイ・バック・ページ』(11)の山下敦弘監督が映画化。内気な大学生の松夫(山田孝之)は、映画館で衝動的にOL・綾子(黒木華)の手を握り、握り返されたことから綾子と付き合うことに。女性心理に不安を抱いた松夫は、心理学に詳しい女学生・由子(成海璃子)の手を唐突に握ってみるが……。山下監督の“ダメ男三部作”を彷彿とさせる松夫のキャラクターがいい味。山田と成海のシリアスな演技がじわじわと笑いを誘う。同時上映は『鮨』(岡本かの子原作、関根光才監督、橋本愛ほか出演)と、『幸福の彼方』(林芙美子原作、谷口正晃監督、波瑠ほか出演)。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ロック・オブ・エイジズ』作品情報 <http://eiga.com/movie/56679/> 『BUNGO ささやかな欲望 注文の多い料理店』作品情報 <http://eiga.com/movie/77359/> 『BUNGO ささやかな欲望 握った手』作品情報 <http://eiga.com/movie/77357/>

『おもかげ復元師』震災で300人以上の遺体を修復した「復元納棺師」が見た風景とは?

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“復元”のようす
 容貌が変化してしまった遺体の硬直を解き、マッサージで顔色を変え生前の安らかな表情に復元して納棺を行う「復元納棺師」として、岩手県を拠点に活動している笹原留似子さん。東日本大震災の折には、ボランティアとして300人以上の方の遺体を復元した。その際の様子を含めた死の現場を描いたエッセイ『おもかげ復元師』と、震災で復元した方のお顔を描いた『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)を8月に上梓。『震災絵日記』は、ボランティア活動を終えたあと、実際に遺体を復元したひとりひとりを思い出しながら描いたという。 ――震災の時は、10キロも痩せたそうですね? 笹原留似子(以下、笹) そう、もともとはすごく細かったんですけど(笑)。被災地はどこもお店は開いていないし、また、たとえ食べ物を持参していても、復元作業に入って集中すると、途中で休憩はしません。3時間の復元が3件続くと、朝から晩まで食事する時間はないですね。体力も必要ですが、あの時は神経も使いました。遺体安置所では、遺体の復元を必要とするご遺族がいつでも話しかけられるような雰囲気も作っておかないとならないから。  * * *  震災では津波によって傷ついた遺体も多く、また発見されたのが数日後というのは早いほう、中には数週間後、数カ月後というケースも珍しくなかった。当然ながら時間がたつほど傷みは激しくなる。愛する人を亡くすということだけでも耐え難いのに、その変わり果てた姿にさらにショックを受け、死を受け入れることができない遺族も多い。愛娘を直視できない両親、「こんなのお父さんじゃない!」と泣き叫ぶ子ども……。エッセイを読むと、どのような姿でどうお別れするかは、遺族がその後どう生きていくかに大きく影響することがわかる。  一般的な納棺師は、遺体から出る臭いを抑える処置や死化粧はするが、激しい損傷の復元はしない。海外ではエンバーマーが復元を請け負う場合もあるが、それは亡くなって間もない場合だけ。たとえ腐敗しウジがわいていても復元を請け負う笹原さんのような存在は、世界を探しても非常にまれだ。  * * *  例えば顔に穴が開いている時は、そこから体液や血液が出ないよう止める作業をしながら、同時に陥没部を埋めていきます。亀裂で顔が広がってしまっている場合は元に戻し、それを火葬まで安定した状態でもたせるようにします。震災では、一部が白骨化したような方の復元も行いました。それまで経験したことがなかった作業なので難しかったけれど、ご遺族の前で「できない」とは言えませんでした。物資が不足する中、生前の写真を見ながら、脱脂綿など、あるものをなんとか組み合わせて復元しました。ワックスを使うこともありますが、それだけでは形が崩れるので、さらに加工して、ご遺族が触れられるような状態に仕上げていきます。お別れの際、「実際に触れる」ということは、とても大事なことですから。
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笹原さんのメイク道具
――技術はすべて独学だそうですね。  そうです。だから復元を始めた頃は、「このご遺体にはどう向き合ったらいいんだろう」と、よく困りもしました。けれどそういう時には、どこからか泣き声が聞こえてくるんですよ。「お父さんに会いたい」「お母さんに会いたい」「子どもに会いたい」って。そうすると、なんとかしてこの方をご家族に受け入れてもらいたい、という気持ちになるんです。がんばって生きてきたのに、最期に受け入れてもらえないなんて寂しいじゃないですか。残されたご家族が大好きだった顔に戻れば、その方の人生がさわやかに締めくくられるんです。責任は大きいですよ。特に震災では、幼い子どもを残して亡くなった方も多くいらっしゃいました。あまりに損傷が激しいと、子どもとの対面を避けるご遺族もいる。子どもが親と対面してちゃんとお別れするのは、死を受け入れるために大切なことのひとつです。  * * *  笹原さんは、ただ姿形を復元するだけではなく、遺族の心のケアも行うという。そのため、復元後は残された家族に参加してもらい、一緒に死化粧をしたり仏衣を整えたりして納棺する「参加型納棺」を提唱している。そこで遺族は初めて涙を流すことができ、思い出を語り、生前の家族の関係が戻ってくることも少なくないのだ。  * * *  納棺の時、私は、例えば「目は閉じますか? 開けますか?」とご家族に相談します。「みなさんのことを確認されたいかもしれないから、開けたままでもいい。でも、開いていると眼球の水分が抜けて、高さがちょっと変わったりする可能性もありますよ」と。そうした会話によってご家族は、亡くなった方のためを思って、どうすればいいかを一生懸命考える。参加型納棺は、そうした時間の積み重ねです。そうしてご家族は、ご遺体と対面しながら、いろんな感情を吐き出すことができる。私もご家族とコミュニケーションを取りながら、悲しみの中に何があるのかを把握し、お話をさせていただいています。私が話した内容を、亡くなった方の言葉として受け止める方も多いですね。「まるでお母さんが言ってるみたい」って。でも本当はそれは、ご家族自身の潜在意識の中にある声を、私が引き出してあげただけなんです。 ――過酷な復元処置をし、遺族の話をひたすら聞いて、笹原さんご自身には相当なストレスがたまるのではないでしょうか? 笹 この参加型納棺は、私にとってのケアにもなっていると考えているんです。ご家族同士、深いところで心が通じている、本当にいい時間なんですよ。そこに私も入れてもらって……大好きなんです、この仕事。ただ「つらい」ばかりだったら、続けていないと思います。もちろんご家族によっていろんなケースがありますから、たまに悪口で終わることもあります。ご遺族の嘘泣きも、すぐにわかりますよ(笑)。「嫌いだったけど、実際にいなくなると寂しいね」なんて言う人も。家族、いろいろあって当たり前、それもありだと思うんです。ふだん社会の中では仮面をつけているけれど、死の場面では、人の“素”の部分が出るんですよね。  * * *  死を受け入れて生きるとは、どういうことなのか? 笹原さんの著書は、それを教えてくれているのではないだろうか。 (文=安楽由紀子) ●笹原留似子(ささはら・るいこ) 1972年、北海道生まれ。岩手県北上市在住の「復元納棺師」。復元・納棺を専門とする株式会社「桜」の代表を務める。東日本大震災で300人以上の遺体を生前の姿に戻す「復元ボランティア」を行ったことが高く評価され、2012年、社会に喜びや感動を与えた市民に贈られる「シチズン・オブ・ザ・イヤー」を受賞。同年8月には、納棺現場での忘れられないエピソードなどを綴ったエッセイ『おもかげ復元師』と、震災後に復元して見送った方々の顔を描いたイラストエッセイ『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)を出版した。

渋谷のギャルが記した天真爛漫な“韓国獄中記”『韓国女子刑務所ギャル日記』

 街で出会ってしまったら、すかさず道を譲りたくなるような存在感にあふれるヤマンバギャル。ここ数年は、その数もやや少なくなっているものの、実はその人気はヨーロッパをはじめとする海外に飛び火しており、世界を侵食し始めているという。  今や、世界を股にかけるギャル文化の中心で「アゲアゲ」な日常を送っていたヤマンバギャルが、ある日突然韓国の警察に捕まってしまい、3年間を刑務所で過ごすこととなった……。そんな顛末を記したちょっと変わった獄中記が『韓国女子刑務所ギャル日記』(辰巳出版)だ。  本書を執筆したあきは、渋谷を中心に活動するギャル・サークルの元リーダー。ダイエットに勤しみ、マンガ喫茶に通い詰め、キャバクラ嬢として夜の世界で大活躍と、自由気ままに青春を謳歌していた。そんな彼女の生活が一変するのは20歳の時。知り合いから紹介された「マレーシアで何日か遊んで、荷物を持って帰ってくるだけで30万円」という怪しいアルバイトを引き受けてしまったのだ。  関西国際空港にて覚せい剤密輸容疑で逮捕された女子大生が記憶に新しいが、当然、そんなおいしいバイトが無事に終わるはずもない。マレーシアで受け取ったスーツケースを手に指示された韓国へ向かうと、入国審査でストップがかけられる。スーツケースをこじ開けられると、二重底になっていたそこには大量の覚せい剤が……。異国の地で、彼女は身に覚えのない覚せい剤密輸の現行犯で逮捕されてしまった。  その日から、彼女の長い3年間は始まる。  だが、自分の犯した罪を深く反省したり、あるいは塀の中という独特の世界で自分を省みたり……という獄中記にありがちな展開をみせることがないのが、この本のユニークなところ。同じ外国人部屋に収監された日本人受刑者の上から目線に腹を立て、同房の中国人の班長を「デブ」「むかつく」と罵る。塀の中でもマイペースを貫き、いつものようにダイエットを続ける彼女。タバコも酒も携帯も取り上げられ、生活スタイルは変われども「自分らしく生きる」という揺るがない信念には呆れを通り越してただ敬服するばかりだ。  もちろん、3年の間に彼女の中にも少しずつ変化は芽生える。WBというニックネームの受刑者と友情を育み、日本にいる両親に対しても「迷惑をかけた」と反省し、感謝の気持ちを思い出す。「一番じゃなきゃ嫌だ」という性格の彼女は、3年間の努力の末についに部屋の班長に指名された。受刑者たちから中国語や韓国語を学び獄中で記していた日記も韓国語や中国語で書くことができるようになり、日本に帰国した現在も中国語の勉強を続けており、通訳になるのが彼女の夢だ。  韓国女子刑務所の内情や、そこで考えた男や金に対するギャルの心情など、気になる部分もリアルに綴られている本書。獄中で執筆された日記の原文や、手書き文字によって当時を振り返った現在の気持ちが書きこまれており、さまざまなレイヤーから、彼女の刑務所体験を知ることができるだろう。  塀の中でも、受刑者を罵り、友情を育み、天真爛漫に過ごすあき。彼女の手にかかれば、犯した罪を反省し、更生をするはずの刑務所も「私は中にいたことを後悔するどころか誇りに思う」と、自己実現の道具と化してしまうのだった。どんな世界でも臆することなく「自分らしく生きる」ギャルたちの図太さは、その文化と同様に世界レベルなのではないだろうか……。 ●あき 1988年、東京生まれ。日本国籍(華僑)の父と、日本人の母との間に生まれる。私立中学校を中退後、北京の日本人学校へ入学。帰国後の高校時代にギャル・サークルの代表になる。2008年10月、身に覚えのない薬物密輸の容疑により韓国で逮捕される。2011年、満期出所で日本に帰国。

本格的メディアミックスが始まった! まだまだ伸びるソーシャルゲーム業界の可能性

 今年5月の「コンプガチャショック」で、先行きを危ぶむ声も出たソーシャルゲームだが、まだまだ伸張は止まらない。8月に発表された6月期決算で、グリーは営業利益と経常利益共に前期に比べ2.65倍に。最終利益も2.63倍の479億6,000万円となった。ディー・エヌ・エーも、大幅な増収増益を維持。5月の「コンプガチャショック」の影響が限定的だったことを示している。  好調が続くソーシャルゲーム業界だが、注目したいのは昨年11月の「モバマス(アイドルマスター シンデレラガールズ)」配信以降に始まった、いわゆるオタク層への急速な普及である。ソーシャルゲームを扱う『電撃ゲームアプリ』(アスキー・メディアワークス)や『ファミ通Mobage』(エンターブレイン)などの専門誌も好調だ。こうした中で、ソーシャルゲーム発のメディアミックス展開も、本格化している。  7月から放送を開始した『探検ドリランド』など、アニメ化企画も次々と進行しているが、それ以上に注目したいのは、キャラクターを使ったグッズ展開である。8月、グリーで提供されているソーシャルゲーム『煉獄のクルセイド』を運営するエンタースフィアは、ゲームの案内人でもある3人娘のグッズ化を発表した。同作品は、登場する神族・魔族。龍族の女のコを「絶対服従」させるというシステムが好評を博している作品だ。なにより、カードのイラストには数十人のイラストレーターが参加しており、非常にキャラクターの訴求力が高い。まさに、ソーシャルゲームの枠を超えて多面的な展開ができる作品の好例といえるだろう。  実際、今回発表されたグッズは、枕カバーとマウスパッドと、アクリルパネルという構成である。かなり、ユーザー層を見極めて展開を行っていることが伺い知れる。 「カードゲームでは、キャラクターイラストが重要な要素です。ところが、ソーシャルゲームではグッズ展開が、あまり進んでいません。そこに、チャンスがあると考えています」(企画・制作を行った株式会社クロメアの担当者)  「コンプガチャショック」を契機に頭打ちになったと思われたソーシャルゲーム業界だが、まだ新たなユーザーの参入は止まっていない。なにより「好きなものには、出費を惜しまない」、いわゆるオタク層が、当たり前のようにソーシャルゲームで遊ぶようになったことで、ゲーム内のアイテム課金で収益を得るものに加え、メディアミックスでも収益を得る方向へと、ビジネスモデルは確実に変化を遂げている。  また、マンガ・アニメ・ゲームなどで人気を得ている作品を、ソーシャルゲームにして成功を治める事例も見られるが、すでに世間で「人気作」と呼ばれるものの版権は、いくつかの大手企業が押さえているとされる。それゆえに、今後「後発」の企業が目指すのは、自社コンテンツを創造し、ソーシャルゲームから、ほかの媒体へ打って出るというやり方だ。ゆえに、今後、キャラクターが魅力的な作品が増加していくことは、想像に難くない。また、グッズ展開の際に、ゲームそのものにも役立つアイテムカードを特典として付与できるのも、ほかのジャンルにはないメリットだ。  オタク層が、ソーシャルゲームを当たり前に楽しむようになり世界は、さらに盛り上がりつつある。 (取材・文=緑林学) 煉獄のクルセイド http://www.entersphere.co.jp/crusade/

「ネコ」役・小松未可子をゲストに、アニメ『K』赤ワインありの小洒落た先行上映会+α!!

 8月28日夜22時という、やや深い時刻から、大掛かりなプロモーションとミステリアスな雰囲気で話題のアニメ『K』第一話の先行上映会がおこなわれた。  場所は、11月17日に移転オープンするアニメイト池袋本店新店舗のすぐ隣にある、アニメイトカフェ。品のいい内装の、落ち着いた店舗に、正装の給仕がてきぱきと動く。この場所柄もあってか、とても穏やかでゆるやかな空気のイベントとなり、ゲスト登壇の「みかこし」こと声優の小松未可子の舌もよく廻った。  高倍率の抽選を通り、着席できた幸運なファンは50人。赤ワイン(ノンアルコールも選べる)と食事が付いたトーク(+じゃんけんによるプレゼント大会)ののち、第一話の先行上映という構成だった。まだ放映開始前ということで、最大に盛り上がったカットで無情の「一時停止」。先日開催された制作発表会につづく寸止めに一同身悶える結果となったが、言い換えるとそれだけおもしろさが伝わったようでもあった。  男性キャストの豪華さから女性ファンが多い『K』だが、この日は男性ファンが大勢を占めているのが特徴的だった。トークではみかこし演ずるキャラクター「ネコ」の魅力もふんだんに語られ、男性ファン開拓の役に立ったかもしれない。  なおまだオンエア前だというのに会場内限定でのキャラクター人気投票がおこなわれたが、第一位は「ネコ」。空気を読んだ優しい会場でのひとときを過ごしたみかこしが、イベント終了後、報道陣の囲み取材に応えてくれた。その模様をお届けしよう。 ──「ネコ」役を演じた感想は? 小松未可子 ネコちゃんは、自分のなかでは一話から最終話まで、ずっと謎のキャラクターで。でもあきらかにされない分、彼女の抱えている寂しい部分だったり、シロに対する愛情がどこから生まれてくるのか、バックボーンを考えながら演じていました。  こういうかわいいキャラクターは初めてなんですよ。いままでは気が強い役や、少年役が多かったので、初めての挑戦というか。みんなから愛されるキャラクターづくりに苦戦しつつ、媚びないわけではないけれども、あざとくない、自然体でかわいらしいキャラクターにするにはどうしたらいいかを試行錯誤して演じました。 DSC_0018.jpg ──エンディングテーマ曲はどんな曲ですか? 小松 詞や曲調に、あまり本編では出ていなかったネコの内面がすごく現れていて。『K』の世界観がメロディに封じ込められているから。壮大な曲でもあり、寂しい曲でもあり。ネコ目線で『K』の世界観を歌った、という感じの曲ですね。 ──1話の映像を観てびっくりしたところは? 小松 いままでの出演作とはまた違った世界観だったり、物語もそうなんですけど、すごく映画的な撮り方をしているな、と。すごくリアルな、実際の人の視点から映しているというのが、驚いた部分ですね。あとは、アフレコの時点で絵がかなりできていたこと。絵が完成されていると、その分命を吹き込むことが難しくなるんですが、それだけにやりがいがあるというか。どう命を吹き込むか、苦戦しつつ色付けを楽しんでやっていた印象があります。 ──きょうは男性ファンがたくさん詰めかけていたんですけれども、男性に『K』のここを楽しんでよ! というのは、どんなところですか。 小松 そうですね、純粋に世界観に浸れる作品だと思うんですね。ひとつの物語をいろいろな角度から観られる作品なので、女性キャラクターにも魅力がありますけれども、戦う理由、それぞれの信念がいろいろな面から恰好よく描かれているところを、アクション込みで楽しんでいただきたいなと思います。お色気もありつつ、純粋に楽しんでいただけると思うので。あとは、自分のキャラクターになりますが、ネコちゃんの動きも楽しんでいただけたらな、と思います。 ──抜刀にまつわるエピソードを。 小松 意味は知っているんですけれども、アニメでもあまり聞かない言葉で。でもそれを掛け声にするのが、すごく恰好いいな、と。第一話では次々に「セプター4」が剣を抜いていき、最後に宗像礼司が「抜刀!」と言う、あの一連のシークエンスは観ていて締まる、恰好いい印象があります。  アフレコでは男性陣が、ふざけるのが大好きで、ラジオでもそうなんですけれども、みんな思い思いに抜刀という言葉を使っているんですよね。アニメにひとつ必ずある決めゼリフになりつつある、それくらい各キャストが大好きな言葉になっていますね。 ──ファンのみなさんにメッセージをお願いします。 小松 はい。Webラジオでご紹介していても、まだまだ謎が多く、上がっている設定資料を見ただけではわからない作品ですので、本編をご覧いただいて。いろいろと予想を裏切られつつ、楽しみつつ、奇想天外な展開になっていますので。ぜひオンエアを楽しみにしたいただけたらと思います。  アニメ『K』はMBSで10月4日、TBSで10月5日、AT-Xで10月13日から放送を開始する予定。男性向けの多い深夜帯で秋アニメに異色の空気をもたらすか、乞うご期待といったところだ。 (取材・文=後藤勝)

多彩で粒ぞろい! 味わい深い秋の新作映画を一挙紹介!!

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(C)2012『鍵泥棒のメソッド』製作委員会
 9月中旬に入っても残暑が続くが、映画興行はそろそろ芸術の秋、収穫の秋の気配。多彩で粒ぞろい、しっかり中身の詰まった味わい深い新作映画のうち、今週は3本を紹介したい。  『鍵泥棒のメソッド』(9月15日公開)は、堺雅人主演、香川照之・広末涼子共演で繰り広げる笑いとサスペンスと恋の極上エンタテインメント。無名の役者で35歳、安アパート暮らしの桜井(堺)は、銭湯で出会った羽振りのよさそうな男コンドウ(香川)が転倒して記憶を失ったことから、荷物をすり替えてコンドウになりすます。だが、コンドウの正体は伝説の殺し屋で、桜井はヤクザから殺人の依頼を引き受ける羽目に。一方、自分が貧乏役者だと思い込んだコンドウは、演技の勉強と記憶の回復に励む日々。そんなコンドウの姿に、結婚願望のある雑誌編集長の香苗(広末)は好意を寄せるが……。  初メガホンの『運命じゃない人』(05)で国内外の映画賞を多数獲得した内田けんじ監督が、『アフタースクール』(08)以来4年ぶりに放つ最新作。役柄が置かれた状況を疑似体験することで自然な演技を追求するという「メソッド演技法」から着想し、出来心から他人の人生を演じることになったヘボ俳優と、自覚がないまま他人の人生を演じてしまう裏稼業の男がクロスオーバーする筋立てが秀逸だ。浮世離れした役どころで笑わない広末と、やさぐれ感漂う愛人役の森口瑤子も絶妙。人生を回復したい男2人が巻き起こす騒動、ヤクザとの息詰まる対決、そして胸が“キューンキューン”する恋の行方を、どうぞお見逃しなく。  『バイオハザードV リトリビューション』(9月14日公開、2D/3D上映)は、人気ゲーム『バイオハザード』をミラ・ジョボビッチ主演で実写映画化したシリーズの第5作。世界人口の大半をアンデッドに変えたT-ウイルスの開発元、アンブレラ社の極秘施設に潜入したアリス。仮想現実ルームで東京、ニューヨーク、モスクワを舞台にしたアンデッドやクリーチャーとの戦いを勝ち抜き、驚愕の新事実を突き止める。  監督は、第1作と第4作でもメガホンを取ったポール・W・S・アンダーソン。ゲームマニアでミラの夫でもあるアンダーソン監督は、進化した3D映像も駆使して仮想空間バトルをダイナミックに演出し、最強ヒロインが華麗に躍動するゲーム感覚の体感アクションをとことん極めた。前作に続きアンデッド役で登場する中島美嘉が、美しくも恐ろしいミラとの壮絶バトルを披露している点も見どころだ。  『ヴァンパイア』(9月15日公開)は、『リリイ・シュシュのすべて』(01)『花とアリス』(04)の岩井俊二監督が、カナダを舞台に全編英語で撮り下ろした異色作。認知症の母親と暮らす高校教師のサイモン(ケビン・セガーズ)には、誰にも言えない秘密があった。ある掲示板サイトを通じて自殺願望を持つ少女たちと接触し、死を求める彼女らから血を抜き取って飲んでいたのだ。そんなある日、サイモンは図らずも集団自殺に巻き込まれてしまう。  岩井監督がアイデアを思いついた後に、ネットで見つけた「被害者」の自殺を幇助する事件が実際に起きて世間を騒がせたため、製作の延期を余儀なくされたといういわくつきの本作。留学生ミナ役の蒼井優を除く全員が外国人キャスト、ロケもカナダだが、岩井監督ならのではの切ないストーリー、みずみずしい映像美、透明感あふれるピアノソナタが喚起する詩情が本作にもしっかり息づいている。アブノーマルで破滅的な欲求と純愛の間で苦しむ主人公の姿に、生きる意味、愛することの価値を改めて考えさせられる珠玉作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『鍵泥棒のメソッド』作品情報 <http://eiga.com/movie/57323/> 『バイオハザードV リトリビューション』作品情報 <http://eiga.com/movie/56101/> 『ヴァンパイア』作品情報 <http://eiga.com/movie/55961/>