依存症にご用心! 電話やメールの着信をうっとうしく感じたら“デジタルデトックス”

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 いまや多くの人がスマホを持ち、電話やメールだけでなく、TwitterやFacebookといったSNSから無料コミュニケーションアプリのLINEなど、さまざまなツールを使いこなしている。ビジネスもプライベートも関係なく、四六時中オンラインになっているのが当たり前の状況だ。地下鉄内で数分圏外になるだけでもイライラし、中には電波の届かない地下のお店などには入らないようにしている人もいるだろう。ここまでは利便性ととらえることもできるが、電話やメールの着信をうっとうしく感じてきたら要注意。完全にデジタル中毒の症状だ。受信するのが気が重く、友人からだとほっとするようだとちょっと危険。心が弱り始めている兆候なので、早めの対処が必要だ。  そこで、お勧めするのが「デジタルデトックス」。これは“デジタル中毒を解毒する”というアメリカから広まり始めたムーブメントで、デジタル機器を家に置いて出かける数泊の旅行プランが人気を集めている。ホテルによっては、チェックインの時にスマホを預けると割引サービスを受けられるところも。デジタル疲れは日本でも同じ、いや、もっとひどいかもしれない。  とはいえ、いきなり旅行というのもハードルが高い。そこで、プチデジタルデトックスから始めてみよう。まずは、休日に電子機器を一切触らないようにする。テレビやビデオもやめて、読書なり散歩なりをしてみよう。食事中に手持ちぶさたになるなら、それは禁断症状。周囲に目を移し、最近見ていないものに注意を向けよう。家族や友人、恋人との会話にも集中できるし、邪魔するものもない。半日だけでも、ずいぶんと心が軽くなるのがわかるはず。できれば、オフの時はずっとデジタルから離れるのも悪くない。  ビジネスに関する緊急の用事が飛び込んでくる可能性があるなら、完全に離れるのは難しいかもしれない。しかし、オフの間は連絡が取りにくくなると事前に連絡しておけば、ほとんど大丈夫。それでも不安なら、上司だけに自宅やホテルの連絡先を教えておけばいい。本当の緊急時にコンタクトが取れるなら問題ないはずだ。チャレンジすればわかるが、ほとんど杞憂。デジタルデトックスから復帰し、メールを見ても特に何も起きていないのが普通だ。  いきなり断ち切るのが難しいなら、デジタルダイエットから始めてもいい。メールはリアルタイムにチェックし、数分おきにTwitterに投稿。移動すれば、foursquareにチェックインする。食事はInstagramで撮影して、複数のSNSに投稿。読書や映画はFacebookに感想を載せるために鑑賞する……というのはやりすぎ。利用するウェブサービスを集約し、不要なサービスは解約してしまおう。今まで複数のアプリを切り替えていたのが、バカらしくなるほど平穏な気持ちになること請け合い。スマホをいじっている時間を減らせるはずだ。  いまやデジタルは意識して利用を制限しないと、体や心を蝕むレベルまで生活に浸透している。デジタルデトックスを活用して、リフレッシュすることをお勧めする。 (文=柳谷智宣)

「どうしてこうなった……」悪意の進化を遂げた自然の脅威『邪悪な虫』『邪悪な植物』

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『邪悪な虫』『邪悪な植物』(朝日出版社)
 男子は、小学生の頃、昆虫採集や植物採集に入れ込む。虫取り網を振り回しながら、雑木林で見つけた見慣れない植物に興味を示す。かつての原風景として、そんなイメージが心に浮かぶ人も多いだろう。あの頃に戻りたい……と、かなわぬ望みを抱くかもしれない。  しかし、朝日出版社から出版された『邪悪な虫』『邪悪な植物』に目を通せば、そのような考えは改めなければならない……。ガーデニング誌の編集にも携わる作家エイミー・スチュワートが記した本書は、毒や害のある虫と植物の数々を解説。そのグロテスクにも思える挿絵と相まって、読者に強烈なインパクトを与え、なんとニューヨークタイムズのベストセラーにまでランクインしてしまった。  世界中に100万種が分類されている昆虫のうち、『邪悪な虫』には34種の恐ろしい虫が掲載されている。日本人にも馴染み深いオオスズメバチをはじめ、西アフリカで3人に1人を失明に追い込んでいたブヨ、新大陸を発見したコロンブス一行を苦しめたスナノミ、ペストを伝染させるケオプスネズミノミなど、そこには目を覆いたくなるばかりの昆虫たちの悪行が記されている。  かみ付き、寄生し、病気を媒介し、化学物質をまき散らし……と、彼らの人間に対する邪悪さは枚挙にいとまがない。世界中であらゆる虫たちが、それぞれ天敵から身を守るために、さまざまな進化を遂げたのだ。  そもそも昆虫は植物の受粉に役立ち、落ち葉やほかの生物を土に還す、生態系の中ではとても重要な存在である。その働きぶりは「昆虫なしでは人間も生きてこられなかった」と著者も認めるところだ。しかし、それを理解した上で、本書では「背筋がゾクゾクするようなスリル」を届けたいというのだから趣味が悪い。虫たちの世界は、解説を読んでいるだけで、常識はずれで、好奇心をそそられ、なおかつ、かなり嫌な気持ちにさせられる。  一方の『邪悪な植物』も負けていない。  摂取すれば、神経麻痺を引き起こすトリカブト、マンドラゴラの異名で知られ、古代ギリシャでは媚薬として用いられたマンドレイク、アメリカに入植したイギリス兵を狂乱状態に陥れたチョウセンアサガオなど、人間にとってささやかではない影響をもたらす植物たちのオンパレード。また、監訳者が、ジャンキー小説家ウィリアム・バロウズの著作翻訳で知られる山形浩生氏とあって、大麻やコカイン、アヤワスカなどのドラッグ系の植物の解説も充実している。ただし、本書を読めば、間違ってもそれらの植物に手を出したくはなくなるだろう。  現代の都市に生活していれば、昆虫も植物も、人間にとっては、ほんのささやかな存在である、という先入観がある。だが、昆虫たちは世界中で人間を襲い、作物を荒らす。植物はその毒で人間を自然から遠ざけ、その身を守っている。彼らの恐るべき邪悪さに比べれば、人間などなんとちっぽけなものかとすら思えるだろう。  「怖がらせて自然を敬遠させるためではない」という著者の意に反して、『邪悪な虫』『邪悪な植物』を読んでいると、どんなに気候がよくても、一歩も家から出ずに、部屋で「本の虫」として過ごすのが、一番なのではないかと思えてくる……。 (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●エイミー・スチュワート ニューヨークタイムズ紙やワシントンポスト紙をはじめとする数々の新聞・雑誌に、主に園芸・自然に関するコラムを寄稿。邦訳書に、『ミミズの話――人類にとっての重要な生きもの』(今西康子訳、飛鳥新社、2010)、『人はなぜ、こんなにも庭仕事で幸せになれるのか――初めての庭の物語』(J・ユンカーマン、松本薫訳、主婦と生活社、2002)がある。

「時代に抗うことなく、静かに消えてゆく」日本最後の見世物小屋一座の生きざま

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 (C) 2012 Yoichiro Okutani
「さぁ、寄ってらっしゃい、みてらっしゃい」  威勢のよい口上が、夜の祭り会場に響きわたる。お化け屋敷というには少しケバすぎる小屋構えに戸惑いながらも、なんだか懐かしいその雰囲気に心奪われ、お客は小屋へと吸い込まれていく。  室町時代に始まり、歌舞伎や人形浄瑠璃と共に京都の四条河原を賑わせた見世物小屋。江戸時代には大衆文化のひとつとして発達し、その後、神社のお祭りや縁日などに仮設小屋を建て、各地を巡業して回るスタイルが確立された。全盛期の江戸後期には全国で300軒の小屋があったが、1950年代末には48軒、1980年代後半には7軒と減少し、1990年代には4軒、2010年以降は1軒のみとなっている。  そんな最後の見世物小屋一座「大寅興行社」の人々との10年間にわたる交流と旅を記録したドキュメンタリー映画が、12月8日より新宿K's cinemaで公開される。  本作の監督・奥谷洋一郎氏が大寅興行社と出会ったのは、2001年。お祭りでお化け屋敷のアルバイトをしたのがきっかけだった。それまで見世物小屋なんて見たこともなかったし興味もなかったが、一座の暮らしと人情に惹かれ、映画美学校の友人たちと撮影を始めた。
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 大寅興行社は、二代目親方の大野初太郎さんと彼の3人の姉妹たち、そして大寅興行社最後の太夫であるお峰さんの家族3人の、計7人で商売を行っている。日本全国をトラック1台で旅し、目的地に着けば一座全員で仮設の小屋の設営にとりかかる。犬や猿やヘビも一座の一員だ。名物の絵看板をかけ、小屋に明かりを灯せば、いよいよ興行が始まる。    見世物小屋の芸人は太夫と呼ばれ、一座の家族以外にも、昔はさまざまな境遇の太夫が集まっていたという。お峰さんも、母と一緒にこの一座にやってきた。 「昔は、よそからもらわれてきた子や体に障害のある人たちが芸をしていたという話もありますが、僕はこの10年の大寅さんのことしか知らないので、実は詳しい歴史はよくわからないんです。でも、見世物小屋の芸って、いきなり『山から出てきました』とか『ヘビを食べます』とか、細かい説明ははしおって始まるので、そういう世界観だというのを受け入れた上で楽しまなければならない。ウソか本当かよくわからない太夫さんの出自も、商売道具のひとつなんです」  演芸は、ヘビ(喰い)女や人間ポンプ、ロクロ首、剣舞、気合術、犬の曲芸など小屋によってさまざまだが、大寅興行社は女性が多く、とりわけ華やかな一座だったという。
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「大寅さんは昔、太夫さんや踊り子を使った『サーカスのレビュー』や、さまざまな動物を使った移動動物園を興行物として手掛けていたそうです。この10年、口から火を吹くというお峰さんの芸は変わっていませんが、小さな子どもからフラっと入ってきた人、酔っぱらいやコワモテの人まで、どんな人に対してもどんな状況でも対応できる芸というのはすごいですよね。それに、口上(呼び込み)もまさにプロのなせる業。お客の想像をかき立てるようなあの巧みなしゃべりは、場数を踏んでいないとできるもんじゃないですよ」  戦前は大衆娯楽として幅広く受け入れられていた見世物小屋だったが、映画やテレビの普及によって、次第に衰退していった。大寅興行社もほかの一座と同様、学生や現地の若者をアルバイトに雇って興行できるお化け屋敷や、短時間で準備ができる射的やピッチングゲームに興行形態を変えて商売を続けてきた。現在、大寅興行社の見世物小屋が見られるのは、新宿区歌舞伎町にある花園神社の酉の市と、そのほか1~2カ所しかない。  ほかの一座が姿を消す中、なぜ、大寅興行社だけがこれまで興行を続けてこられたのだろうか? 奥谷監督は、そこには見世物小屋ならではの世界観があるからだと言う。
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「見世物小屋一座の人たちは、小屋を飾り立てる絵看板や小道具はもちろんのこと、演芸で使う動物も舞台に上がる太夫さんもすべて、一座の長である親方の“荷物”だと考えています。それらを預かる親方は、その荷物に対して責任を負う立場にあり、大寅さんは現在でもそういう生き方や商売の仕方をかたくなに守っている一座なんです。でも、新しく外から入ってくる太夫さんや僕のような人間に対してはそれを押しつけることなく、とても大事にしてくれる。もちろん出ていく人もいるけど、それは追わない。いい意味で、人が循環しているんです」  そして、なりわいが作りだす家族形態こそが、この映画を通して、監督が描きたかったことでもある。 「なくなっていく家族の形とか、古いやり方を守っている人たちが消えていく。そういう姿を残したかったんです。こういう姿って、すごく潔いって思うんです。『もっと自分たちはやれるはずだ』と時代に抗ったり、歴史に名を残そうというつもりは毛頭なくて、『もしかしたら時代に合わないかもしれない。それなら、それで終わりましょう』と。そういう人たちに寄り添って、映画を撮りたいなと思ったんです。ただ撮り始めた頃は僕も若かったので、“なんとかして形に残さなきゃいけない”“終わらせたくない”という単純な気持ちで演出してしまっている部分もあります。でもそれって、ただの勘違いで、何も知らない人間のエゴでもある。でも、大寅さんの潔さもわかるし、そういうところが、僕がかっこいいと思ったところでもあった。だから、“最後の見世物小屋の記録”というよりは、大寅さんの記憶を旅する、僕のための記録ですね」  古いしきたりや商売のやり方を守り続け、時代の流れに抗うことなく静かにその歴史に幕を閉じようとしている見世物小屋。潔い彼らの生きざまを、ぜひスクリーンで見届けてほしい。 DSC_0077.jpg ●おくたに・よういちろう 1978年、岐阜県中津川市生まれ。東京育ち。慶應義塾大学文学部卒業。映画美学校ドキュメンタリー・コース研究科修了。映画作家の佐藤真、筒井武文に師事。山形国際ドキュメンタリー映画祭2011アジア千波万波部門・特別賞を受賞した、東京湾に流れ込む多摩川の河口で船に住み犬を飼う初老の男を見つめたドキュメンタリー映画『ソレイユのこどもた ち』。この作品は佐藤真の遺した企画、ドキュメンタリー映画『トウキョウ』の一編として発想し制作された。現在は、複数の作家によるマルチプロジェクション企画「Documentary Tokyo」を進行中。 ●『ニッポンの、みせものやさん』 監督:奥谷洋一郎 出演:大寅興行社のみなさん 制作協力:映画美学校 撮影・録音:江波戸遊土、遠藤協、奥谷洋一郎、早崎紘平、渡辺賢一 編集:江波戸遊土、奥谷洋一郎 整音:黄永昌 音楽:街角実 監督補:江波戸遊土  2012年/日本/デジタル/カラー/90分/配給:スリーピン 12/8(土)より新宿K's cinemaにてモーニングショー公開 <http://www.dokutani.com/>

『黒子のバスケ』騒動で露呈した、大手同人企業・スタジオYOUの権利意識

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スタジオYOU 公式サイトより
 最近相次いでいる、漫画『黒子のバスケ』の作者・藤巻忠俊氏の母校や出版社、イベント会場などに脅迫状や薬物のようなものが送り付けられる事件。そんな中、脅迫状が届いた同人誌即売会主催企業が、フジテレビの取材を「無断撮影」だとして、撮影した動画などの廃棄を求めて波紋を呼んでいる。  この事件が起きたのは10月21日のこと。この日、フジテレビは東京ビッグサイトで『黒子のバスケ』を扱う同人誌即売会に脅迫状が届いていたことを知り、取材に訪れた。主催者の「スタジオYOU」の説明によれば、会場を通じて取材の申し出があったが、これを断った。ところが当日夕方のニュース番組で、会場の様子を撮影した映像が流れたため、同社に電話で抗議。ところが同社がそれに応じなかったため、弁護士を通じて謝罪と撮影素材の廃棄を求める内容証明を送付したというものだ。  スタジオYOUの要求は、「撮影等によって本件参加者のプライバシー権を侵害したことについて謝罪の意を表明すること」「貴社ウェッブサイト上にアップロードされている本件動画又は静止画像を削除すること」「貴社内に保管されている本件動画及びその静止画像を廃棄すること」といったもの。さらに、イベント参加者のプライバシー権侵害、業務妨害だと激しく指弾している。  これに対してフジテレビは、11月6日「本件撮影等は適法と認識している」「したがって,当該映像データの一切(静止画像,DVDメディア等を含む)は廃棄する必要がないと考えている」と回答し、いまだに両者の主張は平行線をたどっている。  この事件で最も疑問なのは、フジテレビの取材を「無断撮影」だとするスタジオYOUの主張だ。筆者も当日のニュース映像を見てみたが(本編動画は削除されているが、キャプチャ画像は現在でも掲示板やまとめサイトで見ることができる)、映像は少し離れた場所から会場の風景、参加者の首から下を撮影したもの。おそらくは、敷地外から望遠で撮影したものと思われ、スタジオYOUもホームページで、その可能性が高い旨を述べている。  スタジオYOUは、この点も「敷地外なら、主催者が取材を断っているのに、報道としては間違っていないステップを踏んでいると言い切れるのか? もっと踏み込んで言わせていただけるならば、敷地外なら何をしてもいいのか? 理解できない部分です」と、厳しく口撃している。  果たして、敷地の外から見える光景が「無断撮影」になり「個人のプライバシー」を侵害するものになるのか? 日本雑誌協会編集倫理委員長の山了吉さんの答えはNOだ。 「プライバシーの侵害になるケースは、自宅の室内や病室など私的空間に限定されたものです。誰もが訪れることのできる場所、見ることができる場所で群衆を撮影したものは該当しません。ありえるとしたら、群衆の中のひとりをクローズアップして行動を、ことさらに撮影した場合です。今回の件は、それには該当しないのではないでしょうか。(フジテレビの撮影は)東京駅前で朝の通勤風景を撮影した映像にモザイクをかけていないのと、同じです」  スタジオYOUも法人である以上、この程度のことは理解しているはず。  では、同社が執拗に撮影素材の廃棄までを求める理由は、どうしてだろうか。BL作家の水戸泉さんは語る。 「腐女子の中には、自分の趣味を職場や学校など他人に知られることを恐れる人がとても多いのです。そのため、スタジオYOUとしては顧客に対して、ちゃんと抗議している姿勢を示さなくてはならないのでしょう」  なるほど、あくまで客に対してのポーズを示す、ビジネス上の理由が先ということか。  とはいえ、「プライバシーの侵害」「無断撮影」という言い方は、ちょっと過剰ではなかろうか。  同社をめぐっては、2008年に同人誌業界の企業・団体が多く参加した「児童ポルノ法」改正案に反対する署名活動の際、「ウチの客は中高生が多いから」と参加を拒否した件が思い出される。18禁イベントを開催しながらも、そうした発言をするのが同社のスタンス。今回の一件と併せてみれば、スタジオYOUという企業が「言論・表現の自由」をどのように理解しているか、すべてが露呈してしまったと見ることができる。  なお、当日どういった理由で取材を拒否したのか、フジテレビへの今後の対応などを聞くべくスタジオYOUに取材を申し込んだが、「ホームページに掲載していること以外に、お話しすることはありません」との回答であった。 (取材・文=昼間たかし)

伝説のトキワ荘メンバー・森安なおやの傑作幻の『烏城物語』が、まさかの限定復刻!

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 トキワ荘の伝説的メンバーの幻の作品が、まさかの復刊! 藤子不二雄・石ノ森章太郎・ 赤塚不二夫ら多くの漫画家を輩出したトキワ荘。その中で一際異才を放った男・森安なおやの最後の作品『烏城物語』が復刊された。  森安は1934年岡山県生まれ。寺田ヒロオの呼びかけた新漫画党結成に参加した、トキワ荘を語る上で欠かせない人物として知られる。  彼の名が知られるのは、その作品よりも藤子不二雄の自伝的作品『まんが道』(あるいは続編にあたる『愛…しりそめし頃に… 満賀道雄の青春』)などで描かれた奇矯なふるまいだ。これらの作品では、満賀道雄(いわずとしれた『まんが道』の主人公)が朝食と昼食用に置いていたパンを平らげたり、締め切りでヒィヒィいっている満賀に「青春を楽しまなくちゃ」と遊びに連れだそうとしたり、奔放な姿が描かれる。実際の森安も、これに近い人物で、出版社からの前借りや借金も踏み倒し、同居していた鈴木伸一の背広を売り払って食費に充てたりと無頼を貫き、ついには寺田ヒロオから新漫画党の除名処分を受けると共に、「今後一切、森安なおやとは付き合わない」との回状を回されるまでになった。  だが、トキワ荘を知る人々は、この人物を(「キャバ」などの愛称をつけて)愛してやまない。締め切りが絶対な漫画家の世界で、「気が乗らなければ描かない」を貫き、漂泊しながらも死ぬまで漫画を描くことをやめなかった生き様は、決して真似できない憧れである。  今回、復刊された『烏城物語』は1997年に、地元の同級生たちが「漫画家・森安なおやを岡山に呼ぶ会」を結成し出版したもの。しかし、少部数の出版であり、古書市場でも滅多に出回ることはなかった。  それが、11月3日から岡山で開催される芸術祭『岡山芸術回廊』の出品作品として限定2,000部で復刊されたのだ。  筆者が、この情報を知ったのは、11月も下旬に入ってから。これは大変だ! とすぐさま岡山へ向かった筆者は、『岡山芸術回廊』のホームページで案内されていた販売場所(何が後楽館高校跡だよ! 農政局跡だろ、ここは!)に駆け込んだ! 「う、う、う、烏城物語ぃいいい!」  県庁坂を駆け登り、ものすごい勢いで駆け込んできた筆者に、売店のお姉さんは 「まだ、ありますから安心してください」 と、極めてクール(ちょっと引いてる?)。聞けば、幾人かマニアが買いに来たけれど、思ったよりも売れていないのだとか。どうも、地元岡山でも、森安の事績を知る人は限られているらしい……もったいない。しかも、売店のお姉さんによれば、版権でゴニョゴニョあるとかで「もしかしたら、販売中止になるかも」と、気になることを。部数も限定であるし、早めに手に入れるに越したことはない。  無事に念願の1冊を手に入れた筆者は、森安の愛した岡山城と後楽園を望む旭川の川辺に向かった。その一角にある、友人たちの設置した万成石のベンチと桜の木のところで、思いを馳せているのは……筆者だけだった。 (取材・文=昼間たかし)

例えるならば猫カフェ!? ただひたすらに萌えさせる『おにあい』

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テレビアニメ『お兄ちゃんだけど愛さえあれば
関係ないよねっ』
 通称「おにあい」こと『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』(TOKYO MXほか)が、妙に面白い。タイトルを見れば、その内容は一目瞭然。いわゆる「妹もの」のアニメである。  念のためあらすじを解説すると、両親の事故死で別々の親類の家に身を寄せていた双子の兄妹、姫小路秋人と姫小路秋子は、6年ぶりに一緒に生活することになったが、離れ離れの期間に秋子は極度のブラコンになっていた。兄妹の一線を越えるべく、日々秋子は秋人にアタックするが、毎回スルーされてしまう。そんな2人のもとに秋人に思いを寄せる美少女たちが次々と集い、奇妙な共同生活がスタートする、というもの。  どこからどう見ても「妹もの」と「ハーレムもの」のフォーマットを踏襲した設定であり、お察しの通り、毎回何かしらの「ラッキースケベ」イベントが発生。ヒロインたちが若い肢体を惜しげもなくモニターに晒してくれる。  ところが、唯一の男性キャラである主人公・秋人君は、美少女たちのアタックに対して眉一つ動かさず、圧倒的なスルースキルを発動するのだ。甘い言葉を囁こうが、甲斐甲斐しく身の回りの世話をしようが、水着に着替えようが、全裸になろうが、まったく動じることはない。草食系どころか賢者系男子とでも言うべきか。  とりわけ実妹の秋子に対するスルーぶりは群を抜いており、この先、どんなことがあろうとも秋人と秋子の禁断のラブ展開が起こることがないと視聴者に確信させてくれる。ある種、この秋人のリアクションが「本作はあくまでもコメディである」「一線は越えない」「ドロドロのシリアス展開はない」という安心感を作品に与えており、それゆえに難攻不落の主人公にあの手この手で迫るヒロインたちの姿は、よりかわいらしさと滑稽さが強調されるのだ。  通常、この手の作品は主人公がヒロインたちに振り回される一方、ヒロインも主人公に惹かれていくがゆえに挙動不審になっていく。この微妙な駆け引きがドラマを構成する要素となるのだが、本作に関してはそんな要素はほぼ存在しない。基本的にのれんに腕押しな秋人にアタックするヒロインたちが、そのスルースキルの前に一方的に自爆していくコミカルな姿が延々と描かれるのだ。  こういうと、「内容のない作品だ」と思われるかもしれないが、その通りである。例えるならば、猫カフェにて自分の周りで戯れる子猫たちを見てニヤニヤしている感覚とでもいうか。誰も傷つかない世界でじゃれ合う美少女たちの姿を、遠くから「この子たちはおバカでエッチでかわいいなあ」と愛でるのが本作の正しい楽しみ方なのだ。かわいいものを楽しむのに理屈などいらないのである。  もう一つのポイントが、秋子を演じるのは、本作がデビュー作となる現役女子高生声優・木戸衣吹ということだ。はっきり言って、DT男子の妄想と欲望の塊のような本作。もちろん過剰なお色気シーンもあるのだが、そのメインヒロインを、まだまだあどけなさの残る15歳が演じるなんて! どんな状況でアフレコが行われているのだろうか、と想像するだけでもご飯三杯はいけそうである。とはいえ木戸の演技は、とてもデビューしたてとは思えないほど安定感抜群。今後、彼女のさらなる飛躍にも期待がかかる。  このように能天気で、下半身方面への欲望に忠実なエンタメ作品である『おにあい』だが、最終話近くで急にとってつけたようなシリアス展開になりがちなのが、昨今のラブコメアニメの悪いところだ。物語に起伏をつけ、ラストを盛り上げるためには仕方のないことかもしれないが、終盤の唐突なシリアス展開はそれまでの作品の雰囲気をぶち壊しにしてしまう諸刃の剣でもある。  ここは一つ、「ただひたすらに萌えさせる」という初志(勝手に決め付けているが)を貫徹して、最後まで我々視聴者をヌルく楽しませてほしいものである。 (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

読んだ後もずっと怖い! 記憶に入り込むノイズのような不安が襲う『後遺症ラジオ』

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『後遺症ラジオ』(講談社)
 あやふやな記憶に対する恐怖というものがある。僕の場合、やけにだだっ広い空き地みたいな場所(今探しても見つからない……)で誰かと遊んでた記憶とか、山道で親の運転する車が派手に脱輪した記憶(どうやって帰ってきたか覚えてない)とかがそれだ。ヤマもオチもないし、本当にあったことなのかも疑わしいのだけれど、そういう不確かな記憶は、ふとした瞬間に蘇って僕を薄気味悪い気持ちにさせる。  中山昌亮の『後遺症ラジオ』(講談社)は、そんなノイズのような恐怖の記憶を植え付ける作品だ。「ラジオ」にちなんで、「89.27MHz」といった無機質なサブタイトルが付けられた各エピソードには、どれもわずか数ページで、物語というより不可解な体験が描かれている。突然、“何か”に髪を引っ張られたり、不思議なものが見えたりする様子を、ほとんど説明もなく目の前に提示されるのだ。  そうして描かれた断片は徐々に積み重なり、やがてつながりや全体像らしきものをぼんやりと見せ始める。まるで、恐ろしいものの正体に少しずつ迫っているようで、実は相手のほうがジワジワと近づいてきているような……そんな気持ちにさせる読み味だ。  しかし、この作品の真骨頂は、全体像が見えてきたときの恐怖ではなく、全体が見えないまま断片を突きつけられるという、得も言われぬ不安感にある。  人は理解できないものに名前や理屈をつけることで、恐怖や不安を抑えようとする。だから、整合性のある“物語”になればなるほど、読み手も怖さに折り合いをつけやすくなる。だけど、物語化されていない断片は、整合性がないがゆえに不安となる。子ども時代のあやふやな記憶の恐怖と同じように、単体ではヤマもオチもないため、異質なものとして記憶に残り、不条理な恐怖としてこびりつくというわけだ。  この作品を読む人は注意したほうがいい。読んでいる最中や読み終わった直後はもちろんだが、『後遺症ラジオ』はそのずっと後まで怖い作品なのだ。忘れたころに、ふと作中のワンシーン、1コマを思い出してゾクッとさせられる。まさに“後遺症”を読者に与える作品だ。 (文=小林聖)

生きることの意味と価値を教えてくれる対照的な2作品『人生の特等席』『ミロクローゼ』

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(C)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
 今週も続々と封切られる新作映画の中から、生きることの意味と価値を教えてくれる対照的な2作品、直球勝負のハリウッド製ドラマと、意表を突く変化球の和製ラブファンタジーを紹介しよう。    クリント・イーストウッド主演の『人生の特等席』(11月23日公開)は、大リーグの老齢スカウトマンとその娘の葛藤と和解を描く感動ドラマ。かつてメジャー最高のスカウトマンと呼ばれたガス(イーストウッド)は、データ野球全盛の時代にあってコンピューターを毛嫌いし、高齢のため視力も衰え、球団の経営陣からその手腕を疑われ始める。引退の窮地に立たされたガスを、長年離れて暮らしていたひとり娘のミッキー(エイミー・アダムス)が助けることに。拒絶されながらもスカウト現場に同行するミッキーに、ガスはようやく重い口を開き、隠されていた過去を語り始める。    2008年の監督・主演作『グラン・トリノ』の後に俳優引退を口にしたイーストウッドが、4年ぶりに銀幕復帰。長年イーストウッド組で助監督や製作として巨匠に学んだロバート・ローレンツが初メガホンをとった。時代が変わる中「古き良きアメリカ」を守ろうとする姿勢は、確かにイーストウッドからローレンツへと引き継がれている。スポーツ業界の無骨な面々にも臆さない、勝ち気な表情のエイミー・アダムスの魅力は、『ザ・ファイター』(11)でも証明済み。表舞台のスター選手でなく裏方のスタッフ陣にスポットを当てた点や、選手の挫折と引退という影の部分も描いた点で、共通項の多いブラッド・ピット主演作『マネーボール』(11)と見比べるのも一興だろう。  一方、11月24日公開の『ミロクローゼ』は、山田孝之が1人3役、時空を超えた3つの舞台で大立ち回りを演じる愛の物語だ。絵本のような世界で、菩薩のように美しく微笑むミロクローゼ(マイコ)に恋をしたオブレネリ・ブレネリギャー。どんな恋の悩みも電話口で一発解決するプレイボーイの青春相談員・熊谷ベッソン。一目惚れした花屋の店員ユリ(石橋杏奈)を探し求めて現代劇・西部劇・時代劇を渡り歩く浪人タモン。3者3様の奇想天外なストーリーが、ときに交錯しながら、怒濤のクライマックスへと突き進んでゆく。  マネキンを使い、カルト的人気を博した短編ドラマ『オー!マイキー』で知られる石橋義正監督が放つ、ポップでシュールでエキサイティングなトリップムービー。先の読めない展開と圧倒的なビジュアルに身を委ねるうち、愛と人生の素晴らしさに覚醒してしまうはず。熊谷ベッソンの音楽ビデオ風ダンスシーンの高揚感もいいが、タモンの殺陣を歌舞伎風に仕立てた超絶シークエンスは繰り返し見たくなる中毒性さえはらむ。山田孝之と石井監督の才能と魅力がはじける刺激いっぱいの快作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『人生の特等席』作品情報 <http://eiga.com/movie/77444/> 『ミロクローゼ』作品情報 <http://eiga.com/movie/56029/>

「最初から優勝者はほぼ決まっている」水木一郎の苦言で波紋を広げる「アニソングランプリ」選考の内情

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「第6回全日本アニソングランプリ」公式サイトより
「昨日放送のアニソングランプリの評価は観たみなさんの感じたままをきちんと受け止めるべきだろう。審査に関われない大会委員長の立場はもどかしくもあり、今回は俺の意思が審査員に伝わってなかったのかと思うと自分の力のなさを感じてしまう。アニソンの未来のために、原点回帰も必要ではないか」(Twitterより引用)  アニソン界の帝王・水木一郎によるこのツイートが大きな波紋を呼んだのは11月5日のことだ。この発言は前日にテレビ放送された「第6回全日本アニソングランプリ」の決勝大会に関する言及であり、同大会委員長という地位にありながら水木本人には優勝者の審査に関する発言権がないというショッキングな事実を露呈させた。  ネット上では番組放送直後より、今大会の優勝者の歌唱力の低さやビジュアル重視の選考基準について物議を醸していたが、この水木の発言が決定打となり、番組を見ていなかったアニメクラスタにも話題が飛び火。審査委員長「やまちゃんぐ」氏のTwitterアカウントが炎上し、やまちゃんぐ氏が、 「簡単に短く説明出来る話ではないし、一個人として言える限界もあります。ただ、全てきちんと受け止めて、この先に生かして行きますので」(Twitterより抜粋・引用) と、謝罪する事態にまで発展した。   そもそも「全日本アニソングランプリ」とは、アニメ専門チャンネル「アニマックス」が主催するアニメソングシンガーのオーディションであり、優勝者にはアニマックスで放送されるテレビアニメの主題歌でのメジャーデビューが約束されている。審査委員はアニプレックス、ソニーミュージック、エイベックス、ポニーキャニオン、EMIミュージックジャパンなどが参加するほか、ホリプロ、スペースクラフトをはじめとする大手事務所も名を連ねており、次世代のアニメソングシンガーを毎年輩出する一大オーディションである。  特に問題となった第6回は、1万人以上の応募があったという。この記録は第4回から途切れることはなく、名実ともに国内最大規模のオーディションとなっていることから、いかにこの企画が注目を集めているかがわかるだろう。  しかし、「アニソングランプリ」の内情を知る業界関係者はこう語る。 「一般からの応募という名目で行われている『アニソングランプリ』ですが、実のところ最初から優勝者はほぼ決まっているようなものです。毎年、各事務所・レーベルが持ち回りで優勝者を獲得することが決められており、誰を採るか、かなり最初の段階から目星をつけているそうです」  別の関係者によると、「少なくとも準決勝段階にはほぼ優勝者は内定している。場合によっては、優勝者でなくとも、この段階でデビューが決まるファイナリストもいる」そうだ。  つまり、「全日本アニソングランプリ」優勝者は、ほぼ各事務所・レーベルの意向であらかじめ決定されており、決勝戦における関係者以外の意見はあってなきが如し、という状況らしいのだ。歌唱力を重視する事務所・レーベルが獲得権を持っている年はそのような出場者がグランプリを獲得し、ビジュアル・タレント性を重視する年は……ということである。  しかし、アニメソングとは本来裏方であり、いかにアニメの世界観を楽曲で表現するかがシンガーには求められるジャンルだ。水木の苦言は、そのようなアニメソングの、そして「全日本アニソングランプリ」の本来の目的を見失い、ただの新人アイドルオーディションの様相を呈してしまった今回の結果に対するものだったのだろう。  だが、出場者本人には、なんの罪もないことは確かである。 「『アニソングランプリ』で優勝した人には何も責任はありませんし俺は大会委員長としてフォローしていますよ。頑張ってデビューしてアニソン界を牽引してくれたら嬉しいのは確かなことです。アニソン歌手を夢見ている人のためにもみんなに認められ愛される歌手になってほしいと心から願います」(Twitterより引用)  そう水木も冒頭のツイートの後にフォローしているが、アニメソングシンガーとしてのデビューという夢をかなえた優勝者は、この逆境にへこたれることなく、胸を張って次世代のアニソン界を引っ張っていってほしいものだ。 (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

「アニソン紅白」から「アニソンキング」へ――“持ち歌”にこだわる、大みそかの新イベント発表会レポ

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左から富永“TOMMY”弘明、吉田仁美
 12月から2月まで、「BSスカパー!」では3カ月連続で人気声優、アーティストが集結するアニソンライヴを放送する。その中継第1弾となる12月31日開催のイベント「KINGRUN Presents アニソンキング supported by スカパー!」(新宿文化センター、22時開演)の記者発表会が11月21日に都内で行われ、小野澤拓生総合プロデューサー、宮腰裕行実行委員会副委員長、合田英人同事務局長が登壇した。 「アニソンキング」は2009年に「アニソン紅白」としてスタートし、以降、毎年大みそかに開催してきたアニソンライヴイベントを改題したもの。紅白にタイトルで対抗するのではなく、王道を往きたい──との狙いから、イベントタイトルを変更したという。  新年を迎えるカウントダウンには、現代にふさわしいリブート成功作として話題沸騰の『宇宙戦艦ヤマト2199』の上映スタートにちなみ、オリジナル版『宇宙戦艦ヤマト』のささきいさおと、『宇宙戦艦ヤマト2199』の第1章エンディングを歌う結城アイラ、そして第2章のエンディングを歌う美郷あきの「ヤマト対決」を用意。  また、昨年から導入の、A(nison)ROCKと題したパート(23時30分頃予定)には、川添智久(ベース)、EARTHSHAKERの西田“MARCY”昌史、小野正利、田村直美、ECHOS/LINDBERGの小柳“CHERRY”昌法(ドラムス)、PERSONZ/fringe tritoneの本田毅(ギター)、maniac studioの大槻隆(ギター)、高山和芽(キーボード)が参加することが決まっている。同様に、いくつかのゾーン(時間帯)にテーマを分けて演出していく。  初登場アーティストは紅組8組、白組6組に及び、初年度から4回連続出場するのは松本梨香だけ。陣容にかなりのテコ入れがあったようだ。  文化放送のインターネットラジオ「超!A&G+」では、「アニソンキング」の宣伝ともなっている『アニキン~Skytree Radio』を7月7日から隔週で放送中。この楽しげなノリをそのまま持ち込もうとの理由から、同番組の司会を務める鷲崎健、砂山けーたろー、三澤紗千香、上坂すみれの4人が、そのまま「アニソンキング」の司会に決定した。 「『アニキン』に毎回アニソン歌手/アーティストを招いていたおかげで、早い時期からブッキングを始めることができるメリットがあった」とは、小野澤総合プロデューサーの弁だ。紅組キャプテンは松本梨香、白組キャプテンはきただにひろしが務める。また、演奏はすべて生バンド。A(nison)ROCKのみ、特別編成のバンドが出演することになる。  タイトルは変わっても紅白2組の勝敗を投票で決する大会方式は変わらず。昨年に引き続き審査委員長を務める田中公平などプロの審査員のほか、一般審査員もホームページ上で1票を投じることができるシステムを構築中だという。また、投票方法は考案中だが、会場のファンにも投票権があり、審査員票+インターネット投票+会場での決着となり、実際の視聴者、入場者の1票が大きく影響しそうだ。このほか、 ・入場者特典として放送終了後に、出演者からのお年玉プレゼント ・入場できない未成年のために、31日昼、小学校6年生以下の児童を対象に無料ライヴ(募集定員200名を超えた場合は抽選)「アニキン mini」を開催 ・公式サイトでの投票によって、今年度の神曲各部門を選出 ・『アニキン~Skytree Radio』の最終回として、文化放送にてサテライト放送「A&G年越しスペシャル~儀武ゆう子の本気!アニソンキング☆ラブ」を実施 といった施策が発表された。
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DSC_0130.jpg  このあと、ゲストに吉田仁美と富永“TOMMY”弘明が登場。吉田仁美は『スマイルプリキュア!』前期エンディングテーマ「イェイ!イェイ!イェイ!」、富永“TOMMY”弘明は『ジョジョの奇妙な冒険』オープニングテーマ「ジョジョ~その血の運命(さだめ)~」(TVサイズ)をそれぞれ熱唱し、互いの健闘を誓い合った。  吉田のエンディング振り付け完全再現ぶりのキュートさ、まさしく腹の底からの発声がすばらしい富永のたくましさが全開となり、早くも火花を散らした格好だ。  コアなアニメファン受けも良好ながら、一般層への浸透度も高い『スマイルプリキュア!』『ジョジョの奇妙な冒険』のテーマ曲を担当した2人がゲストとして現れたことからも、「アニソンキング」が目指す独自のカラーが透けて見えるようだが、アーティスト選出の基準はどの辺りにあるのか。記者発表会終了後、小野澤総合プロデューサーに訊ねると、次のような答えが返ってきた。  「アニソンイベントが乱立する中で、個性を出すにはどうしたらいいかを考えたときに、幅広く支持される方たちを出したいと思いました。こたつに入りながら、『これ誰?』『これ知ってる!』と言い合えるものですね。アニソンイベントは流行の歌に偏る傾向があり、お父さんお母さんがわからない。そこで、わざと幅を広くとりました。閉鎖的にするのではなく、もっと裾野を拡げていく。一方で、J-POPは通り過ぎると忘れられやすい」  J-POPのように忘れられずに聴く者、見る者にひっかかり、かつ、アニソンとして閉じてしまわない中間の領域を目指すという方向性が、確かにできてきているようだ。 「串田アキラさんは『会場に元気づけられる』とよくおっしゃるのですが、これを逆にしないといけない。アニサマを目指しているわけではないので、今後は流行の歌以外でも、もう一回聴きたいというリクエストに応えていけるようにしたいと思っています。もうひとつ、テレビ番組でよくあるようなコラボレーションではなく、持ち歌にこだわっているのも特徴だと思います。アニソンのジャンルでの持ち歌をそれぞれのアーティストが歌うから、EARTHSHAKERの西田“MARCY”昌史さんも田村直美さんも、喜んで出ると言ってくれました」  過去3年の試行錯誤から、「アニソンキング」はどうやら独自の境地を見極めつつあるようだ。この日の楽屋ではスクワットで備えるなどして、吉田と富永の間にいい意味の緊張感が漂っていたという。パフォーマンスの精度を高めて、本番の日を迎えてもらいたいものだ。 (取材・文・写真=後藤勝) ◆「アニソンキング」「アニソンキングmini」の入場方法やランキング投票などはこちらから <http://anisonking.jp>/