バシーン!! ツヨシー! しっかりしなさい!! 姉に平手打ちされるシーンが印象的なマンガ、『ツヨシしっかりしなさい』。皆さんは読んだことがありますでしょうか? 1986年から1990年まで「週刊モーニング」(講談社)で連載され、92年にはアニメ化。フジテレビの日曜夜6時という『ちびまる子ちゃん』と同じ枠で放映され、94年にスーパーファミコンでゲーム化までされている、いわば「国民的マンガ」のひとつともいえる作品です。 先日Twitter上で『ツヨシしっかりしなさい』のアニメ版が話題になり、「見ていたはずなのだが、内容はよく覚えていない」「主題歌だけはよく覚えている」「実は、アニメ化なんかされてなかったんじゃないか?」などといった声が多数ありました。国民的マンガであるはずなのに、この存在感の耐えられない薄さ……。そこで今回は、『ツヨシしっかりしなさい』とは一体どんなマンガだったのか、検証してみたいと思います。 本書の作者は永松潔先生。単行本として全19巻が刊行されているだけでなく、続編として『ツヨシもっとしっかりしなさい』『ツヨシしっかり2しなさい』、小学生時代を描く『ツヨシくんしっかりしなさい』などが出ている人気シリーズです。それにしても、これほどまで執拗に「しっかりする」ことを要求されているマンガのキャラクターって、ほかにいるでしょうか? ほのぼの感あふれる絵柄で、親子そろって楽しめるファミリー向けマンガであるかのようにイメージしがちですが、違います。事実、単行本に書かれている作品キャッチコピーは、このようになっています。 「家庭(ファミリー)という名の戦場で雄々しく生きる男一匹」 戦場、そして男一匹……。家族をテーマとしたマンガにしては、あまりに違和感のあるキーワード。実は『ツヨシしっかりしなさい』とは、気の強い女たちに囲まれた男が家庭内で1人たくましく生きていく姿を描く、サバイバルマンガなのです。 主人公は、井川家の長男である高校生「井川強(ツヨシ)」。井川家は父親が単身赴任しており、同居しているほかの家族は全員女。街で評判の美人だが、気が強く暴力的な長姉・恵子と、恵子ほど気は強くないが、嫌なことはツヨシに押しつける次姉・典子。そして、炊事・洗濯・掃除といった家事を一切やらず、娘には甘いが息子と夫にはやたらと厳しい母・美子。 この女三人衆に逆らえない一番年下のツヨシは、井川家の炊事・洗濯・掃除および家計の管理の一切をやらされている上、ドジったり愚痴ったりすると姉に強烈なビンタを食らうという、舞踏会デビュー前のシンデレラを彷彿とさせる悲惨な状況なのです。日本全国のおっかない姉を持つ男子たちの苦労を代弁する「国民的弟マンガ」といえるのではないでしょうか? それにしても、長姉&次姉&母の女三人衆の理不尽さは特筆に値します。全弟が号泣間違いなしのエピソードを、いくつかご紹介しましょう。 【エピソード1】 女三人衆がスナックで飲んでいたところ、お金が足りなくなったため、高校生のツヨシを呼び出してお金を持ってこさせた上、飲酒させます。そこへ、運悪く警察が巡回に。しかし、ここでツヨシとはアカの他人のふりを決め込む女三人衆。ツヨシだけが警察に詰問されます。こんな見事なトカゲの尻尾切りエピソード、見たことないよ! 【エピソード2】 懸賞で1泊2日の伊豆温泉無料招待券を当てたツヨシ。しかし、行けるのは3名のみ。ツヨシ以外の2人は誰が行けるのか? 姉2人と母は露骨にツヨシに擦り寄り、ご機嫌を取るようになりますが、女同士の醜い争いが次第にエスカレート。このままでは家族が崩壊してしまうことを危惧したツヨシ。家族の絆を取り戻すため、旅行券を破り捨ててしまいます。しかし、これが完全に裏目に出て、ツヨシが女三人衆から代わる代わる猛烈なビンタを食らうハメに。最終的に、旅行券はセロテープでつなげれば有効であることがわかり、ツヨシ抜きの女三人衆で伊豆旅行へ行くことになったのでした。こんなトラウマになりそうな懸賞エピソード、ありえないよ! 【エピソード3】 なんの因果か、クリスマスが誕生日のツヨシ。誕生日兼クリスマスパーティをやるから何も食べずに夜まで待っていろ、食べたら殴るぞ! と女三人衆に脅され、家でじっと待っているツヨシ。しかし、女三人衆は、それぞれイケメンや同僚に声をかけられて飲みに行ってしまい、家でパーティーをやることは完全に忘れていました。理由もわからず腹をすかせたまま、1人待ち疲れてちゃぶ台で眠ってしまうツヨシ……。こんな悲惨なバースデーある? 聞いたことないよ! 実は一番しっかり者なのに、周囲に決して評価されず、理不尽な要求をされても、暴力を恐れて反抗できず、ひたすら家事に従事する。単なるコメディを超えた男の絶望がそこにあります。ツヨシ、頼むから強く生きてくれ……その名の通り強く! 読みながら、そう願わざるを得ないのです。 ……と、こんな感じで作品をご紹介したものの、あらためて作品を読み直すまで、「あれ、『ツヨシしっかりしなさい』ってこんな作品だったっけ?」と、まるで記憶がなかったのも事実。一度読み始めると止まらなくなる不思議な中毒性を持っているのですが、読んだ後、どんな話だったか具体的なエピソードが思い出せるかというと、なぜかよく思い出せないのです。 要するに、全米が泣くようなインパクトのある、120点ぐらいの突き抜けた面白さはないけど、30点ぐらいのクソつまらない回もない。いつ読んでもそこそこ楽しい、常に60点ぐらいの面白さを安定的に維持できることこそが、国民的マンガの秘訣なのかもしれません。そう、『ツヨシしっかりしなさい』とは、偉大なる60点マンガなのであります。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) ◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから『ツヨシしっかりしなさい(1)』(講談社)
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デヴィッド・リンチ『ツイン・ピークス』が26年ぶりに復活! 見逃し厳禁のリバイバル作品3選
いま、日本ではマンガ作品の実写化が次々と制作されているが、何かが当たればそれに続けとなるのはアメリカも同じ。そうした中でひとつの流れになっているのが、人気シリーズのリブートやリバイバル化だ。日本でも一世を風靡した『24-TWENTY FOUR-』が復活して以来、次々と人気作品が復活しているアメリカTV界。中でも注目を集めたのが、90年代にヒットした『ツイン・ピークス』の復活だ(7月22日より、WOWWOW独占放送)。主役のデイル・クーパー捜査官役のカイル・マクラクランやローラ・パーマー役のシェリル・リーら主要キャラクターからサブ・キャラクターまで多くのオリジナル・キャストが再登場することに加え、ナオミ・ワッツら豪華新キャストも登場するとあり、制作のニュースが流れるや、世界中のファンが熱狂。まさに待望の新作といえる。 もっとも、当時の人気をリアルタイムで知るのはアラフォー以上が大半だろう。鬼才デヴィッド・リンチとマーク・フロストが手掛ける本作のオリジナル版は、米ABC局で1990年に放送開始。カナダ国境にほど近い田舎町ツイン・ピークスを舞台に、16歳の女子高生ローラ・パーマー殺人事件をめぐるミステリーを描いた本作は、デヴィッド・リンチらしい独特で奇妙な世界観でもって、他の犯罪ドラマとは一線を画す仕上がりになっている。 その復活版である『ツイン・ピークス The Return』はオリジナル版終了の25年後が舞台となるが、オリジナル以上にリンチ節が炸裂。本来なら、ある程度、筋道立てたストーリーラインをざっくりと紹介するのだが、『ツイン・ピークス The Return』に関しては、それが難しい。通常、リバイバル作品というのは“オリジナル版を見ていなくても楽しめるけど、オリジナル版も見ていたらもっと楽しいよ”という作りがスタンダード。しかし『ツイン・ピークス』に関しては、“オリジナル版を見ていないとわけわからん、しかしオリジナル版を見ていてもやっぱりわけわからん”という作りなのだ。 それでもここでオススメするのは、そのわけのわからなさこそ、このドラマの醍醐味だから。ストーリーがどこに着地するのか、どこに連れて行かれるのかわからないからこそ、この奇妙な世界に引き込まれ、1話見るごとに誰かと話したくなってしまう。ドラマの中にはこれまでのリンチ作品の味わいが凝縮されているので、リンチファンにはそれだけでもたまらない魅力になるはずだ。 個人的には、できればオリジナル版もチェックした上で、梅干しをぶっ刺した木(この説明だけで、もはや意味不明だ)が登場した時の“なぜこうなった感”を味わってほしい。少なくとも、これだけたくさんのドラマが制作される時代になっても、これほどぶっ飛んだ作品を作れるのはリンチしかいないだろう。 今回は『ツイン・ピークス The Return』だけでドラマ3本分くらいの濃厚さなのだが、わけのわからないドラマだけでなく、ある意味でスカッとわかりやすいリバイバル・ドラマとして『プリズン・ブレイク シーズン5』(Amazonプライム、U-NEXTで配信中)もオススメしておきたい。WOWWOWオンラインより
『24』と共に日本での海外ドラマブームをけん引した本作も、リバイバル・ブームに乗って復活。死んだはずのマイケルが実は人知れず生きていたというわかりやすいチートから始まり、中東を舞台に繰り広げられる脱獄劇は、もう単純にハラハラドキドキ、無駄に頭を悩ませることもない。いろいろツッコミどころもあるが、それがどうした! というすがすがしさすら感じさせる。あれこれと策を弄せず、『プリズン・ブレイク』を『プリズン・ブレイク』たらしめる陰謀絡んだ脱獄劇が楽しめればそれでいいのだ! というブレなさは、ある意味、正しいリバイバルの在り方だ。「マイケル生きてたとか、チートじゃん」「サラ、ただの医者だったのに、たくましくなりすぎ」「ティーバッグ、相変わらず変態……」などなど、いろいろと思いを馳せながら、素直にお祭り気分で楽しんでほしいドラマだ。Amazonプライムより
わけのわからないミステリーやハラハラドキドキのサスペンスの後にぜひ見てほしいのが、『ギルモア・ガールズ:イヤー・イン・ライフ』(Netfixにて配信中)だ。オリジナルは7年続いた人気ファミリー・ドラマ。ローレライとローリーという友達母娘を中心に、彼女たちが住む田舎町スターズ・ホローの住民たちの姿を描いたほっこりハートフルな人間ドラマは、あくまでなんでもない日常を描いているだけに、疲れた時ほど染みる。リバイバル版では春・夏・秋・冬の四季ごとにまとめた4エピソードで、オリジナルから10年たった1年間をつづっていく。 口の減らないローレライのおしゃべりには少々イラつく時もあるが、基本的に悪人の出てこない世界の優しさに心癒やされること必至。市民ミュージカルで町おこし(ブロードウェイの実力派を配して、無駄に本格的に仕上げている)など、期待を裏切らない田舎町ドラマに必須のほっこりイベント要素もしっかりと入れ込み、故郷願望を満たしてくれる。オリジナル版には、いまや押しも押されもせぬ売れっ子となったメリッサ・マッカーシーや、『スーパーナチュラル』で10年以上主役を張っているジャレッド・パダレッキなど多くのスターが出演していたが、リバイバル版には彼女たちを含め、ほとんどのオリジナル・キャストが登場。『ツイン・ピークス』や『プリズン・ブレイク』にもいえることだが、やはりオリジナル・キャストがどれだけ出演するかというのは、リバイバルにおいて重要なポイントだ。そのドラマの世界をより深く味わうためにも、リバイバル作品を見る際にはオリジナル版もチェックしてほしい。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charuminNetflixより
単なる“つまらん街”になっていく……「カフェ本」もなくなった本郷の街に、訪れる価値などあるのか?
「なんか、かねやすが閉まってるよ」 そんな話を人づてに聞いたのは春頃のこと。 「本郷も かねやすまでは 江戸の内」 と長らく伝えられ、その言葉を記した看板もある、本郷三丁目角のかねやす。確かめに行くと、確かに閉まっていた。江戸の始まりから400年以上も続く老舗もついに……と感慨深くなりつつも、多くの人はこう言う。「ところで、なんの店でしたっけ?」と。 江戸時代、元禄年間には歯磨き粉の製造販売でにぎわったという店舗。今は雑貨屋だったと思うのだが、「洋品店じゃない?」「カバン屋だったかな」と、人の記憶は曖昧なもの。 筆者もそうだが、店に足を踏み入れたことがあるという人は、まったく見ないのである。ともあれ、店は閉まっても7階建てのビルの名前は「かねやすビル」。掲げられた川柳も容易に失われることはなさそうだ。テナント募集の文字が寂しい……
これが象徴というわけでもあるまいが、いま本郷で起こっているのは「フツーの街」化という現象である。 本郷といえば、まず目立つのが東京大学。それを中心として、味のある店や人々が住まう地域が広がっていた。だが、21世紀、それも2010年代に入ってから、過去のものになろうとしている。 明治時代そのままの建物で下宿屋として営業していた本郷館も、11年に消滅。文化財になる可能性を指摘される建物も、こんな都心にあっては保存よりも土地の有効活用の声にあえなく敗北。 続いて消えているのが、旅館街。元は明治の下宿屋の流れを組むような本郷近辺の旅館。 今どき都心にありながらビジネスホテルとは違う、これぞ商売人が泊まる旅館という雰囲気を味わわせてくれる貴重なスポットであった。それも、ほぼ絶滅危惧種に近い。そんな中で、やたらと味のある鳳明館は頑張っている。ふと泊まろうと思うと、いつも満室が続いているから、はやってはいるのだろう。このまま、末永く続いてほしいものである。この看板だけは残り続けるのか
そんな変貌する本郷の街で、もっとも減ったのは古本屋であろう。かれこれ20年くらい前までの本郷の印象といえば、本郷通りを東大に面して並ぶ古本屋だったはず。通りを一本入っても、まだ古本屋があったりして、神保町、早稲田と共に、本を漁るには欠かせない場所だった。でも、もう古書はネットでピンポイントで探す時代。かつての古本屋も、どんどん飲食店へと姿を変えているではあるまいか。 それどころか、新本のほうも。「ここなら、東大生も多いし流行ってるんだろうな」と思っていたブックスユニ本郷店も昨年消滅し、携帯ショップになってしまったではないか。 やはり少しずつ、このあたりにも進出してきたマンションの影響なのだろうか。次第に本郷は学生街としての色を薄めて、単なる街へと変わっているのである。 今年の4月には近江屋洋菓子店本郷店も消滅。もともとサブカル受けする店だったこともあってか、営業最終日には、必死に写真を撮ってる人たちも多数。でも、飲食関係で「これで、本郷も終わりか……」と思わせたのは14年のカフェテラス本郷の消滅であろう。ひとり気を吐く鳳明館
近江屋洋菓子店のオシャレイラスト
この店、まさに学生街でなければあり得ない店舗。カレーの大盛りを頼めば洗面器サイズ。オムライスを頼めば王蟲の子どもみたいなのが……。それも、もはや幻である。ここで例会していたサークルも多かったハズなのだが、どうなったんだろう? もはやフツーの街として埋没していく本郷。隣接する春日では、超巨大な再開発計画も進行中。その完成によって本郷だけでなく、昭和どころか明治の香りすらあった文京区の味は、どんどん失われていくことになるだろう。 カフェ本(カフェテラス本郷の愛称)もなくなった本郷に、もはや訪れる価値などない……。 (文=昼間たかし)閉店の貼り紙が……
年間被害総額は400億円! バッタ博士の狂気の奮闘記『バッタを倒しにアフリカへ』
『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)の表紙を一瞥すれば、なんとフザけた学者なのか……と、あきれてしまうかもしれない。昆虫学者の前野ウルド浩太郎氏は、幼少期にファーブルに憧れ、夢は「バッタに食べられること」という、バッタを愛してやまない男だ。だが、バッタに触るとじんましんが出てしまうという、どこかキワモノ感が漂っている……。 しかし、彼のアフリカ・モーリタニア共和国でのフィールドワークを記した本書を読めば、彼が一流の昆虫学者であると同時に、純粋な心でバッタと向かい合うひとりの人間であることがわかるはず。ポスドク(博士研究員)として研究費の調達に悩み、バッタの大発生を粘り強く待ちながら、ようやく彼は成功を手に入れたのだ。 本書をもとに、彼の足跡をたどってみよう。 大学を卒業し、晴れて博士号を取得するも、日本にはほとんどバッタの被害がないために、研究の需要はない……。途方に暮れていた前野が飛びついたのが、アフリカでのサバクトビバッタの研究だ。アフリカでは、このバッタがたびたび大量発生し、「神の罰」と恐れられている。農作物を食い荒らし、年間の被害総額は西アフリカだけでもおよそ400億円に上るうえ、深刻な飢饉がもたらされているのだ。前野は「日本学術振興会海外特別研究員」として年間380万円の研究費・生活費を得て、2年間をモーリタニアでの研究に捧げた。 到着早々、バッタの発生が告げられ、意気揚々と調査に繰り出す前野。夢にまで見たバッタの大量発生を目の当たりにし、大興奮する。それまで日本の研究室で研究を行ってきた彼にとって、初となるフィールドワークは、好スタートを切った。しかし、ここからが長い長い道のりだった……。 前野はその熱意を認められ、バッタ研究所の所長から直々にモーリタニアで最高の敬意を込めたミドルネーム「ウルド」の名前を授かり、フィールドワークに赴くための体力づくりにも余念がない。しかしその冬、建国以来といわれる大干ばつに見舞われたモーリタニアにバッタの大群が現れることはなかった。仕方なく、砂漠を代表する昆虫「ゴミムシダマシ」を研究したり、偶然出会ったハリネズミを飼育したりしながら日々を過ごす前野。バッタが発生しなければ、もちろん研究もできない。「一体何しにアフリカにやってきたのか」。バッタ博士は、バッタの存在なくしては無用の長物だった。さらに、バッタの大量発生を解明する論文が書けなければ、研究者としての立場も危うくなる……。 そして、最初の遭遇から1年半、ようやくバッタの大群との邂逅が実現! 車に飛び乗り、バッタの元へと500キロの道程を突き進む彼の前に現れたのは、はるか地平線まで続くバッタの大群だった。大群を目の当たりにした感動に酔いしれながら、調査を始めた前野。しかし、飛び回るバッタを追いかけようとしたその先に待っていたのは、一歩立ち入れば命の保証はない地雷原だった。バッタたちは、前野をあざ笑うかのように、地雷原の上を飛び去っていった。 こうして、前野の2年間は終わった……。 研究期間を終え、無収入状態に陥った前野。しかし、バッタに対する尽きせぬ想いを捨てられない彼は、無収入であっても、その研究を進めていくことを決めた。日本に一時帰国し、バッタ研究の意義を広く知らしめ、バッタ問題の認知度を上げるため、率先して雑誌連載やトークショー、そしてニコニコ超会議などの場での広報活動にいそしんだ。そして、再び彼はいちるの望みをかけて、アフリカの地へと舞い戻ったのだ。 前野にとって3年目のアフリカは、例年にない大雨に見舞われ、各地でバッタの大群が猛威を振るっていた。バッタ発生の一報をつかみ、現場に飛び込んだ前野が見たのは、これまでに遭遇したものとはケタ違いの、空が真っ黒く覆われるほどの大群。念願の再会に、前野は観察ノートにペンを走らせながら、狂ったようにデータを収集していく。数日間にわたってバッタを追いながら、前野の手にはさまざまなデータが蓄積されていったのだ。その詳細な観察は、群れの動く法則すらも見えてくるほどだったという。前野の情熱は、この瞬間にようやく実を結んだ。 バッタへの情熱、自然の前になすすべもない悔しさ、不足する研究費、量産されるポスドクによって就職難にあえぐ苦しみ、そして、そんな苦悩をついに打ち破る瞬間……。かつて、これほどまでドラマティックなバッタ研究についての本があっただろうか? 残念ながらバッタに食べられるという夢こそかなわなかったものの、前野は無事日本での研究者としての椅子を手に入れることにも成功した。バッタ博士は、今日もバッタを観察しながらニヤニヤとした笑みを浮かべていることだろう。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)
『進撃の巨人』に見る、諌山創氏の愛国心と中国の“におい”
こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。今回は大人気漫画を通じて、日本が置かれている状況を解説します。 諌山創氏の『進撃の巨人』は、人をむさぼり食う巨人とそれに立ち向かう人類の戦いを描いた大ヒット漫画で、テレビアニメ、実写映画などメディアミックス展開が行われています。以前、僕はこの作品に対する見解をコラムに寄せたことがあります(「週プレNEWS」2013年10月27日掲載)。当時は、人類が高い壁に囲まれた地域の中で生活しているという作中設定が、現在の中国を反映していると分析したのですが、今回は、同時に日本の現状も描かれている、という点に触れてみたいと思います。 作中設定によると、人類が住む壁に囲まれた地域の総面積は、日本の総面積にほぼ匹敵します。この話は以前より中国のネット掲示板で話題になっていますが、つまり『進撃の巨人』の舞台は日本をモデルにしている可能性があります。2013年には、諌山氏の公式ブログがハングル語で荒らされるという事態が発生しましたが、これは登場キャラの「ミカサ」の名前が旧日本軍の戦艦から取られていたこと、「ピクシス司令」のモデルが明治期の日本軍人・秋山好古であることが原因だったようです。 また、『進撃の巨人』の登場人物の大半は西洋系のイメージで描かれていますが、ヒロイン格のミカサは黒髪の東洋系の人物として描かれています。作中では東洋人は減少しているという設定ですが、その名前といい、僕はミカサには、今後少子化による人口減少が予想される日本人のイメージが投影されていると思います。 諌山氏は、Twitter上で日本の朝鮮統治を支持するような発言を行ったこともあり、こうしたところから推測するに、愛国・保守的な人物なのかもしれません。おそらく、日本という国を重ねて描いているのでしょう。 ■作中で暗示される日本と中国の現状 本作からは日本のみならず、中国の“におい”も感じ取ることができます。 巨人から人類を守る壁は三層存在するのですが、最も外側にある地域は「シガンシナ区」と名付けられています。「シナ」、すなわち「支那」は現代では差別語とされる中国を表す言葉であり、それが最も外にあるという点においても、中国と日本の位置関係を表しているかのようです。 また、人類を統治する政府は、「巨人から人類を守る」という大義を振りかざして腐敗政治を行っているのですが、これは外国を仮装敵国として独裁政治を行う中国政府を連想させます。作中では「壁の外の世界は美しい」と記された書籍が禁書扱いされ、所持したり人に広めようとする人物は捕らえられてしまうのですが、これは中国政府による思想弾圧のようです。 そして、人類を取り囲み襲撃する巨人たちは、日本を取り囲む中国、アメリカ、ロシア、といった大国をイメージしているのかもしれません。日本はこれらの国々と比べると国土、軍事力ともにあまりに脆弱です。しかし、日清戦争や日露戦争時、当時の日本人は努力の末、自国より国土や人口がはるかに勝る相手に打ち勝ちました。日本人は巨大な敵にも果敢に立ち向かう勇気と力を持っており、本作においても、こうしたかつての戦前の日本を重ねているところもあるのかもしれません。 以上のことから『進撃の巨人』が人気作品となった要因は、現在の社会事情が作品の至るところに反映され、その要素が作品の世界観に迫真性をもたらしたからだと、僕は推測しています。『進撃の巨人 悔いなき選択 フルカラー完全版(1) 』(講談社)
●そん・こうぶん 中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)、『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)がある。 <https://twitter.com/sun_koubun>
「佐藤秀峰さんには頭が上らない……」『やれたかも委員会』吉田貴司の屈辱の日々と、ウェブ漫画家としての生きる道
最近ではウェブ上での展開を中心にしている漫画も増えてきたが、その中でも異彩を放つ作風で話題となっているのが『やれたかも委員会』だ。 あの時、もう一歩踏み出していたら、あの娘とやれたんじゃ……。 そんな甘酸っぱ~い思い出を『やれたかも委員会』が「やれた」のか「やれたとは言えない」のか判定するというこの作品は、新作が公開されるたびに「いや、やれただろう!」「ねーよ!」などのザ・不毛な議論がネット上でヒートアップし、作品外での盛り上がりも見せている。 有料サイトで連載され、それをまとめた第1巻が双葉社より6月28日に発売。さらに2巻に向けての制作費を募るクラウドファンディングもスタートと、紙の雑誌で連載して原稿料をもらうという形ではない、ネット発のヒット作となった『やれたかも委員会』。 ネット時代の漫画家は、どうやって生き抜くべきなのか!? そしてネット漫画で本当に食えるの? ……などなど、作者の吉田貴司氏に聞いた。(c)吉田貴司
■「ハンバーグはおいしかったけど、それでいいんですか?」
――まず、どんな漫画を読んで育つと、こういう作風になるのかを聞きたいんですが。 吉田貴司氏(以下、吉田) 小学校の時に初めて買った漫画が『ドラゴンボール』です。それから『幽☆遊☆白書』『3×3EYES』などを読んできて……。19歳でフリーターになり、その期間にすごく漫画を読んでいましたね。星里もちるさんのラブコメとか、福本伸行さんの『カイジ』とか、だんだんと青年漫画を読むようになって。だから、自分で漫画を描く時も青年誌っぽい作品になりました。 ――投稿を始めたのも、その頃? 吉田 21歳で持ち込みを始めました。大阪出身なんで、夜行バスで東京まで出て出版社を回ったんですけど、どこに行っても全然ダメでしたね。そのまま、22歳になっても一向に漫画家になれなくて。彼女にも「漫画あきらめたほうがいいよ」なんて言われて、ハンバーグ屋さんに就職したんです。そしたら福岡県の店に転勤になって、タコ部屋……もとい社員寮で暮らしながら、朝から晩まで働いていました。 ――社員寮じゃ、漫画を描くのは難しいですよね。 吉田 描けなかったですね。フリーター時代に親友が2人いたんですよ。ひとりは音楽やってて、もうひとりが漫画描いてて。誰かの家に行って、この間読んだ本がああだこうだって話をするような仲間だったんです。僕が就職して、九州に行ってしばらくした頃に2人が店に来て、うれしくてハンバーグをごちそうしたんですけど、アンケートに「ハンバーグおいしかったです。でも、吉田くんはそれで本当にいいんですか?」って書いてあって。 ――青春ですね! クリエイター志向の3人だったのに、それでいいのかよと。 吉田 それを伝えに九州まで来てくれたというのに感動したのかなんなのか、その後いろいろ悩んだ末に仕事は辞めることにしました。それで、大阪に戻ってまたバイトをしながら漫画を描いていたんですが、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で初めて「これ面白いね」って言ってもらえたんですよ。その漫画で努力賞1万円をもらって、うれしくって東京に出てきました。 ――え、1万円もらっただけで!? 吉田 編集者も「何しに来たの?」って言ってましたね(笑)。それから日雇いバイトとかやりながらネームを描いたら「増刊に載っけてあげる」ということになってトントン拍子にデビューできて、このまま行けるのかなーと思ってたら……なんともならなかったですね。その頃、担当から「佐藤秀峰さんがスタッフ募集しているけど、行く?」って言われて、作画スタッフになりました。 ――絵柄も何も、全然違うじゃないですか! 吉田 佐藤さんが僕のデビュー作を読んで「すごい面白かった」と言ってくれたらしくて。佐藤さんにはそれから10年以上たった今でも、お世話になりっぱなしですね。絵柄も何も違いますがなんとか雇ってもらえて、ご飯が食べれました。もちろん、仕事は厳しい面もありましたが。 ――佐藤さんのところで、何を描いてたんですか? 吉田 紙コップとか(笑)。お察しの通り、僕は絵がヘタなんで、なんにも描けないんです。佐藤さんのところって、雇用期間が3年間なんですよ。3年たってダメだったら、漫画家の道をどうするか考えなさいという方針で。でも、僕は1年、2年たってもうまくならないし、下にうまいスタッフがドンドン入ってくるし。絵は毎日リテイクの繰り返しだし、2年半たった頃が地獄でしたね。 ――その頃、自分の漫画は描いていたんですか? 吉田 スタッフに入った当初は佐藤さんの原稿を目の当たりにして、自信喪失してしまいました。「こりゃもう何を描いても仕方ないな」と。みんな陥るらしいですけどね。でも、作画スタッフの仕事がまったくうまくいかないので、逃避のために自分の作品を描きたくなるんですよ。それで描いたものを「モーニング」(講談社)に送ったら、ちばてつや賞の準入選をもらえて。その後、『フィンランド・サガ(性)』という作品で連載させてもらえることになりました。 ――おお、初連載ですね。それで、佐藤さんのところから独立できたんですか? 吉田 しばらくは兼業で描いてたんですけど、2年10カ月目くらいで辞めさせていただきました。月刊連載で20ページ、20万円もらえたので、1人で描いてる分には食べていけたので。でも、それも3巻くらいで終わっちゃって。すぐに次が始まると思って余裕かましてたら全然ネームが通らないし、ほかのところに持っていっても、賞には入っても連載できないみたいな、3年ぐらいそんな生活でしたね。■作画家・編集者とモメて泥沼の展開に
――そんな時期に『やれたかも委員会』も描いていたんですよね。 吉田 そうなんですよ。第1話は2013年に描いています。くすぶっている時期に読み切りをたくさん描いていて、その中の1つでした。『やれたかも委員会』は「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で奨励賞をもらったんですが、連載にはならなかったですね。あの形式だと、どうしてもオチがワンパターンになっちゃうと言われて……。 それから別の作品を描き始めて、15年に「これは面白いぞ」というものができたんですね。その『シェアバディ』という作品で連載をやれることになったんです。……絵がダメだから、原作者として。 ――それまでの期間って、何をやって食べていたんですか? 吉田 『フィンランド・サガ(性)』が終わってからは工場で働いていたんですけど、その工場も1年くらいで潰れちゃって。困り果てて、佐藤さんのところに行ったら「ウェブの仕事だったらあるけど、やる?」って言っていただけて。でも、1年くらいたった頃に『シェアバディ』の連載が決まったんで辞めました。 ――勝手ですねー! 吉田田 本当に申し訳ないです。でも初の週刊連載だし、ここは勝負かけようと思ってしまいまして。……その『シェアバディ』も、半年で打ち切られるんですけどね。作画家・編集者とモメるという泥沼の展開になっちゃいまして。 僕は話をじっくり考えたかったんで、持ち込む前に100ページ、連載が始まるまでに200ページ描きためていたんですよ。ところが、始まったら「人気がドベだから話を変えろ」っていうことになって。それまでは絶賛してたくせに。でも、先まで決まってるし、変えられないですよ。別案を作っても、元のクオリティーを下回るのがわかってますから。そしたら、作画家・編集者とで勝手に話を変えちゃったんです。 ――え、そんなことあるんですか! 吉田 そうなんですよ。原作者の僕が知らないキャラを出されても、困るじゃないですか! だから、最後の3巻は読んでもいないですね。……思い出したら、泣きたくなってきました。 それで連載が終わって、また佐藤さんのところに頭を下げに行って……。 ――ええーっ! 吉田 辞めて半年で戻っちゃって(笑)。頭が上がりませんよ、もう。■『やれたかも委員会』が話題になってザマア!
――再び佐藤さんのところで働きつつ、自分の作品も描いていた? 吉田 描いてはいたんですけど、『シェアバディ』の泥沼で心が折れ、もう編集者と何かをするのがイヤになっちゃって。だったら、ネットで描いて自分で電子書籍を出せばいいんじゃないかなと思うようになりました。 ――ネットでの展開というのは、佐藤さんの影響も大きいんじゃないですか? 吉田 そうですね。佐藤さんのところで電子書籍の仕事を担当してたので、電子書籍のストアのことや契約の仕方など、見て勉強させていただきました。それで、自分でネット展開するに当たって、どうすればいいかなと考えて、まあ考えてもわからないので、とりあえずTwitterに1ページ漫画を毎日上げるというノルマを課しました。それが16年の2月くらいのことです。 ――それ、お金にはならないですよね? 吉田 ならないですね。とりあえずいろいろと発信して、フォロワーを増やそうとしました。それから同人誌とか作って、500人くらいに売れるようになれば、別にいいかな……と思ってました。でも、最初はフォロワー700人くらいしかいなかったし、知り合いばっかりだったんで、作品を載せてもぜんぜん反応ないんですよ。毎日スベリ倒しで、心がバキバキに折れました。 ――それでも、編集者と一緒にやるよりはマシだと? 吉田 そうですね。 ――Twitterで初めて反応があったのは、いつ頃ですか? 吉田 『やれたかも委員会』がバズッたのが16年の9月なんですけど、それまでほとんど無反応でしたね。女の子がおじさんの気持ちを言う、みたいな漫画が1000RTいったくらいで。それから、9月に1万RTいったネタがあり、そのタイミングで過去の『やれたかも委員会』をネットの有名人の方が見つけてくれて、おかげでものすごく拡散しましたね。 13年にはブログとnoteに上げていたんですけど、それまではまったく無反応でしたから。16年4月に続編として『やれたかも委員会2』を描いて、noteで100円で販売したんですけど、それも4個しか売れず。 ――400円……。 吉田 振り込み手数料を引かれるから、振り込まれもしないんですよ。 ――でも、Twitterに漫画を上げ続けていたことによって、やっと『やれたかも委員会』に日の目が当たったと。 吉田 はい、「1」が20万PVいって、「2」も300個くらい売れて。「なるほどー、バズると、こういうことになるのか」と。そのタイミングでいろんな版元さんから「連載しませんか?」「書籍化しませんか?」って声をかけていただきました。ただ、連載をして原稿料をもらえるというのは魅力的だったんですが、やっぱり……電子書籍の権利を自分で持ちたかったんですね。それを要求したら、どこも通らなかったです。 ――佐藤秀峰さんレベルが要求したら通るけど……。 吉田 まあ、普通に考えて紙書籍のみで「原稿料が回収できるくらい利益になる」と思われないと、その条件はのんでもらえませんよね。打ち合わせで電子書籍の権利の話を出すと、みんな顔色変わるんですよ。「吉田さんと、そんな話はしたくなかった」と。 ――連載の話がナシになっても、電子書籍の権利は押さえたかった? 吉田 やっぱり、収入面についてももちろんそうですが、いろんな側面から電子書籍の権利を持つのは重要だと思います。実は、『フィンランド・サガ(性)』は佐藤さんの会社経由で電子書籍化してるんですよ。その時は電子書籍のことが出版契約書に盛り込まれていなかったので、自分で権利を持ってたんですね。一度、佐藤さんの漫画がセールでバーンと売れたことがあったんですが、僕の漫画もついでに売れて、100万円くらい収入がありました。その経験があったので、これを他人に渡しちゃう手はないなと。 ――とはいえ、noteの有料課金では、3万円くらいしか入っていないわけじゃないですか。原稿料のほうがよかったんじゃないですか? 吉田 いろんな人がその目先にとらわれて、契約に縛られたり、打ち切られたりしているのを見ているんですよ。権利を自分で持って継続して販売していけば、そのうち原稿料分はペイできるのではないかと思います。最初は苦しいけど、試してみる価値は十分あります。 ――ああー。お金以上に、出版社の都合で打ち切られたりしたくないと。 吉田 そうですね。絶対にあっちの都合で変えられたくないというのもあります。でも単行本って、あくまで出版社の商品なので、例えば「セリフを勝手に変えないで」って言っても、向こうの商品だから変える権利があるという理屈は残念ながら通ります。「じゃあ電子は自分でやりますよ。口出さないでください」となります。「スピリッツ」の担当者の時に散々な目に遭いましたからね。私は復讐鬼と化しています。 ――『やれたかも委員会』が話題になって、ザマアみたいな気持ちも……。 吉田 そりゃ、普通にあります。それからは、noteで自主的に連載する形を続けて、非独占だったらほかのサイトに転載してもらっても構わない、というスタンスでやっています。有料サイトのcakesさんからも話が来たんですが、あそこはPV数によってお金がもらえるんですよ。だからnoteで1話200円で販売しつつ、遅れてcakesで1週間限定で無料展開するというやり方にしたら、それが当たりましたね。noteだと、僕のことを好きな人が課金して読んでくれるだけだったけど、cakesで無料公開にすると話題になって、続きを読みたい人がnoteで課金してくれるという流れを作れたんです。 ――お金的には、どのくらいもらえるもんですか? 吉田 cakesとnote合わせて、月に12万円くらいですね。BuzzFeedさんなどのニュースサイトに取り上げられた時には、noteだけで10万とか15万とかいきました。 ――ああ、結構いいですね! まだ、佐藤さんのところの仕事も続けているんですか? 吉田 本当に申し訳ないのですが、先月末に辞めさせていただきました。 もちろんこのまま簡単にうまくいくとは思っていませんが、『やれたかも委員会』の書籍も出るし、クラウドファンディングも始まるし。忙しくなって、仕事がおざなりになっちゃうと申し訳ないと思ったので。■『やれたかも委員会』は純愛!?
――『やれたかも委員会』の中身の話もしたいんですが、この漫画のフォーマットって、ツッコミのある『BOYS BE...』ですよね。 吉田 確かに。僕は『BOYS BE...』あんまり読んでないんですけど、そういう青春! 純愛!みたいなものをガッツリやりたいのに、照れ隠しでこういう形式で描いているのかも知れませんね。先日対談させていただいた小説家の保坂和志さんに「今、純愛をそのまま描くとバカだと思われるから、みんな避けるんだけど、この形だと読者も純愛を照れずに読めるよね」って言っていただいて、確かにそうかもなーって思いました。 ――いろんな「やれたかも」な体験談が出てきますけど、吉田さん自身が一番好きな体験談はどれですか? 吉田 うーん、2話目の、ママさんバレーをやっている主婦ですかね……ああいう、女性からグイグイ来るタイプに弱いですね。自分からどう迫ったらいいのかわからない、っていうのもありますが。 ――「あの時、自分から行ってればやれたのに……」みたいな後悔が、たくさんある? 吉田 20代の頃はデートが終わって家に帰ってから「何やってんだろー」って、延々と蛍光灯眺めるみたいな、そんなのばっかりでしたよ。いまだに全然女性との距離の取り方がわからないところはあります。例えば、仕事で知り合った女性とプライベートで食事に行く……なんてことになったら、どうしたらいいのかわからないですもん。ファミレスだとあまりにも味気ないですし、ガッツリ間接照明みたいなところだと「口説く気か?」と警戒されて変な空気になるじゃないですか……。普通にご飯を食べたい時は、どこに行くのが正解なんですか!? ――「やれるかも」という期待が100%なければ、喫茶店でいいですもんね。 吉田 僕は、普通にご飯を食べられればいいと思ってるんです。でも、もしも女性側がアリだったとしたら、それはそれで話が変わってくるというか……。別の問題が出てきますよね? もしかして、最低なこと言ってる気がしてきましたが……すみません。 ――最新作では、初めて女性の体験談が出てきますが、そこでいきなり判定がゆるくなっている気がするんですが? 吉田 ゆるくなってますか? そうですか。特に自分では、そういう気持ちはなかったですが。女性が男性の体験談に対して「やれた」判定を出すことって、正直なかなかないと思うんですよ。女性のほうから「あの時やれたよ」って軽々しく言っちゃう作品なんか描いたら、性犯罪を助長しそうだし……。 ――そんなこと心配しているんですか! 吉田 でも、作品を通して、女性の性欲についても無視はしたくないわけです。僕は男なので、しょせん男都合の漫画しか描けないんですが、ギリギリまで女性の気持ちを考慮できたら面白いんじゃないかと思って描いています。 もちろん、女性の体験談でも「やれたとはいえない」ケースも出てくると思います。女性からアピールしたとしても、男側がダメってケースがあるじゃないですか。特に10代男子って「付き合わないと、やっちゃいけない」とか考えてたりするんで。 ――童貞相手だと、なかなか難しいですよね。 吉田 若い頃は「自分の中ルール」みたいなのが、やはり多い傾向がありますからね。 ――今後の展開ですが、自分の好きなことを描いて、読みたい人が課金してくれればいいというスタイルを続けていくんでしょうか? 吉田 そういう方向に行きたいとは思っています。「吉田さんの漫画だったら買います」という人が1000人くらいいてくれたら、ちょいちょい貯蓄しながらやっていけば大丈夫かなと思うんですよ。とりあえず、今年いっぱいは、書籍の印税も入るし、電子印税も入るし、グッズを作ったりスタンプを作ったりもしようと思ってるんで、食べていけるかなと。『やれたかも委員会』の単行本は年内にもう1冊くらい出したいんですけど、それと同時に新企画も立ち上げて、noteで動かしていこうと考えています。 (取材・文=北村ヂン) 『やれたかも委員会 1巻』 本日発売!体罰、セクハラ、長時間拘束……生徒も顧問も悩まされる「ブラック部活」の実態
6月12日、埼玉県の私立武蔵越生高校において、外部コーチがによる体罰の様子を記録した動画がTwitterに投稿され、7万以上のリツイートを記録。新聞、テレビなどのメディアでも広く報道され、同校では、このコーチを解雇。謝罪を行った。 体罰や長時間練習によって、生徒や顧問を追い詰める部活動は「ブラック部活」と呼ばれるようになり、問題視されている。2012年、大阪市立桜宮高校ではバスケットボール部のキャプテンを務めていた2年生の男子生徒が、部活における顧問からの体罰、暴言、理不尽な指導を理由に自殺。神奈川県横浜市の公立中学校では、行きすぎた指導によって柔道の生徒の脳の静脈が切断され、いまでも後遺症が残っている。 いったいなぜ、「ブラック部活」が横行してしまうのだろうか? そして、どのように改善すればいいのだろうか? この問題に迫ったライターの島沢優子による新著『部活があぶない』(講談社現代新書)から、その構造を見ていこう。 特に体育系の部活において、一番の問題となっているのが暴力行為だ。「スポ根」の時代は遠くなったとはいえ、顧問による体罰や暴言は、いまだに数多く行われている。では、いったいなぜ、体罰や暴言はなくならないのだろうか? 生徒の自殺という最悪の結末を迎えた桜宮高校の事件の後でさえ、元アスリートなどから「私たちのころは(体罰が)もっとすごかった」「僕らの時代はこんなもんじゃなかった」「亡くなった子は心が弱かった」など、体罰を正当化する発言が行われている。実際に体罰を行っているという現役顧問は、島沢の取材に対して「叩いてやらせる時代じゃない」と前置きしながらも、このような迷いを口にしている。 「ただ、(暴力のような)刺激を与えずに、選手が伸びるのだろうか。この先、結局は陰で叩いてやらせるコーチが得をするのではないか。教えるほうも、やるからには勝ちたいけど、どう指導していけばいいのかわからない」 また、女子生徒が活躍する部活においては、性暴力の事例も少なくない。16年には横浜市立中学校女子バレーボール部顧問が尻や胸を触る、足や腰をマッサージするなどの行為によって懲戒免職。同年、福岡大付属若葉高校の吹奏楽部男性顧問が「腹式呼吸の練習」と称し、女子生徒の下腹部を触ったり、ブラジャーのホックを外して楽器を吹くように指示をし、諭旨解雇となった。90年代には、九州の高校女子バスケット部顧問が、複数の生徒と性的関係を持っていたことも明るみに出ている。 部活において、暴力に直面した男性は、島沢の取材に対して本音を吐露した。彼は、暴力に対して「みんな我慢しているのに、自分だけチクったら卑怯」「自分が騒動のきっかけにはなりたくない」といった理由で被害を言いだすことができなかったと述懐する。 一方、生徒だけでなく、教師の側もブラック部活に悩まされている。「課外活動」である部活動のために、土日も返上で働く教師は数多い。しかも、土日の練習に参加しても日当はわずか3,000円……。テストの採点や授業で使用するプリントの作成、報告書の作成など、ただでさえ「ブラック」といわれる勤務を行っている教師たちに、部活の負荷は重くのしかかる。本書では、顧問を断ろうとしても「この学校は全員顧問制」と認められず、練習時間を少なくしようとすれば、保護者から「練習を減らして、勝てなくなったらどうしてくれるんだ?」とクレームが飛ぶ事例が報告されている。そんな現状を変えるために、公立中学校に勤務する教師たちが練習時間の縮小を訴えるオンライン署名活動を開始すると2万8,000人以上の署名が集まった。教師にとっても、部活は耐え難いものとなっているのだ。 では、なぜ、ブラック部活が生み出されてしまうのだろうか? 私立校であれば、部活の成績の向上は、学校の知名度の向上や、寄付金の増加、入学者数の増加といった利益をもたらしてくれる。また、「子どもがプロになれるのではないか」あるいは「スポーツ推薦を獲得できるのではないか」という希望から、生徒たちの親が体罰などの暴力を容認したり、長時間練習を是認する姿勢が見えてくる。しかし、すでに最新のトレーニング理論では、体罰よりもモチベーションの向上のほうが、はるかに技術の向上をもたらすことが証明されている。また、06年に全国高校総体でサッカー部を優勝させた元県立広島観音高校顧問の畑喜美夫氏は、平日の練習をたった2日に制限しながら、チームを優勝に導いているのだ。そんな事例を知らず、「勝つためには仕方ない」「強くなるためには仕方ない」といった強迫観念に支配されてしまうことが、部活の「ブラック化」の一因となっているのだろう。 もちろん、青春の1ページとして思い出に残るだけでなく、部活動は学校教育において大きな役割を果たしている。学習指導要領では、部活動について、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環」と記されている。そんな部活動によって追い込まれ、取り返しのつかないケガをしたり命を落としてしまうような「ブラック化」は、絶対に阻止しなければならない。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])『部活があぶない』(講談社現代新書)
原作とは完全別物!? ディープすぎる『聖闘士星矢』派生マンガの世界
『聖闘士星矢』が実写映画化される――先日、こんなニュースが世間を騒がせました。あらためて紹介するまでもありませんが、『聖闘士星矢(セイントセイヤ)』とは「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1985~90年まで連載されていた、車田正美先生による大ヒットマンガです。 リアルタイムで星矢を読んでいた、僕と同じぐらいの世代の皆さんの中には、30年の時を経て、なぜいま実写化なのか? と思う方も多いかもしれませんが、実は『聖闘士星矢』はスピンオフ作品によって、今もなお大変アツい状況なのです。今回は、そんな『聖闘士星矢』スピンオフマンガの世界をご紹介しましょう。 『聖闘士星矢』はギリシア神話をモチーフとした格闘マンガで、聖闘士(セイント)と呼ばれる少年たちが、星座を冠した聖衣(クロス)という鎧を身にまとって闘います。聖闘士には青銅聖闘士(ブロンズセイント)、白銀聖闘士(シルバーセイント)、黄金聖闘士(ゴールドセイント)という階級があり、主人公のペガサス星矢やその仲間であるドラゴン紫龍、キグナス氷河、アンドロメダ瞬たちは、最下層の青銅聖闘士でありながら、友情・努力・勝利というジャンプ的ご都合主義を武器に、本来は絶対にかなわないはずの白銀聖闘士、黄金聖闘士を打ち倒していくのです。 作品中で一番の人気コンテンツといえるのが、12星座を冠した黄金聖闘士たち。全員が最強レベルの戦闘力を持つというのもさることながら、どいつもこいつもキャラのクセが強すぎるのが魅力です。蟹座はクズ野郎だし、魚座はオカマ野郎だし、牡牛座はデブだし、天秤座はジジイだし、双子座は二重人格だし……とにかく個性の宝庫。聖闘士星矢ブーム全盛期の頃、黄金聖闘士のキャラを自分の星座になぞらえるのがはやったため、蟹座や魚座の人は非常に肩身が狭かったのです。ちなみに僕は魚座ですが、3月生まれの自分をこれほど呪ったことはありませんでした。 そんな一世を風靡した聖闘士星矢のスピンオフマンガですが、現在これだけの作品が出ています。 『聖闘士星矢 EPISODE.G』『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝』『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』『聖闘士星矢 セインティア翔』『聖闘士星矢Ω』 いかがでしょう? 皆さんの想像以上の作品数ではないでしょうか。しかも、これらの作品の多くが長期連載となっているのです。すごいことですね。 ちなみに派生作品のほとんどは車田先生の作画ではない上に、やたらと黄金聖闘士推しなのが特徴です。タイトルに冠されている星矢に関しては、ほぼ脇役扱い、白銀聖闘士に至っては完全に空気です。 というわけで、スピンオフ作品の中で特に読んでおくべき作品をピックアップしてご紹介しましょう。 ■『聖闘士星矢 EPISODE.G』(原作:車田正美 作画:岡田芽武)『聖闘士星矢 1』(集英社)
聖闘士星矢スピンオフマンガの元祖にして、ちょっとスピンさせすぎだろという仕上がりなのがこの『エピG』です。 Gとはもちろん、みんな大好き黄金聖闘士(ゴールドセイント)のG。黄金聖闘士・獅子座のアイオリアが主人公の作品なのですが、そういった設定以前に画が原作とは完全に別物になっているのがツッコミどころです。典型的少年マンガな車田画の原作に対して『エピG』では、目のパーツが顔の半分を占め、体が枝のようにひょろひょろのガリもやしな聖闘士ばかりです。正直、最初は違和感しかないのですが、これに慣れるとクセになってきます。 ■聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話(原作:車田正美 作画:手代木史織)『聖闘士星矢EPISODE.G 1』(秋田書店)
『THE LOST CANVAS~』(通称LC)も少女マンガタッチのため車田先生の画の雰囲気とは違いますが、『エピG』ほどの強烈な違和感はなくマイルドで安心して読むことができます。落ち着いて読める、星矢スピンオフマンガといえましょう。 ストーリーはやはり黄金聖闘士がメインですが、原作より243年も昔の前世代の聖闘士たちが活躍する作品となっています。聖闘士は歌舞伎役者の襲名制のごとく、星座ごとに世代交代が行われるのです。例えば魚座のオカマ野郎・アフロディーテの前にもちゃんと先代、先々代の魚座の聖闘士がいて代々受け継がれてきたのです。三代目 J Soul Brothersみたいな感じでしょうか(微妙に違う?)。 ちなみに、よく似たタイトルの『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』(通称ND)という作品があるのですが、こちらは本家の車田先生が描いている正真正銘の星矢続編マンガのため、違和感は限りなくゼロです。当たり前ですが、やっぱり星矢には車田画が一番フィットします。 ■『聖闘士星矢 セインティア翔』(原作:車田正美 作画:久織ちまき)『聖闘士星矢THE LOST CANVAS冥王神話 1』(秋田書店)
元来、聖闘士は女人禁制、もし女子が聖闘士になるのであれば、仮面をかぶり、女であることを捨てなければならないという厳しい掟があります。原作では、魔鈴さんとかシャイナさんといった仮面をかぶった女聖闘士が悲劇のヒロインとして扱われていました。 しかし、このルールには例外がありましてな……というまさかの後付け設定により、顔出しした美少女聖闘士「聖闘少女(セインティア)」が大活躍するマンガが爆誕! セーラームーンのようなノリで楽しめます。 ■『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』(原作:車田正美 作画:岡田芽武)『聖闘士星矢セインティア翔 1』(秋田書店)
タイトルの通り、スピンオフ作品である『エピG』をさらにスピンオフさせて、もはやハンドスピナーみたいな回転力を誇る続編がこの『エピGアサシン』。前作をはるかに上回る超ヤバイ画で、最も異形の聖闘士星矢派生作品となっています。 画はとにかく過剰なまでにキラキラしています。豪華・全ページフルカラーでキラッキラ。キラキラしすぎて、読むのにブルーライトカット眼鏡が必要なレベルです。そして、設定がやたらと現代的。 バトルする場所が新宿西口の地下駐車場や池袋のサンシャイン近辺で、もはやギリシア感はゼロ。かつて活躍した聖闘士達は小宇宙(コスモ)が燃え尽きてしまったらしく、アンドロメダ瞬は練馬で医者やってるし、キグナス氷河は墨田区の飲み屋でバーテンをやっています。星矢は赤いパーカーのフードをかぶったメンタル病みまくりの兄ちゃんだし、「先生が来てくれるなンてッ!!」とか小池一夫風のセリフ回しまで出てくるし……。タイトルでは星矢のスピンオフ作品だとわかっていても、脳がしばらくそうだと認識できません。 *** というわけで、ディープすぎる聖闘士星矢スピンオフ作品の世界をご紹介しました。かつて「ジャンプ」で『聖闘士星矢』を愛読していた皆さんも、当時を思い出しながら、星矢が今どれだけ進化しているか確かめてみてはいかがでしょうか? そして、どうせ星矢スピンオフ作品に手を出すなら、スピンオフの究極系である『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』まで、ぜひ読んでみてください。別物すぎて腰を抜かしますよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) ◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから『聖闘士星矢EPISODE.Gアサシン 1』(秋田書店)
有楽町駅前に巨大リングが登場! 蝶野正洋&苫米地英人が『サイバー防災』呼びかける
6月16日、JR有楽町駅前広場で、プロレスラーの蝶野正洋氏が代表を務めるNWHスポーツ救命協会が主催する都市型・地域防災イベント「STOP THE RISK有楽町~安心・安全な街づくり~」が開催され、途中、認知科学者の苫米地英人氏が出席して、蝶野氏と「災害時のサイバー防災」について熱いトークショーを行った。
有楽町駅前広場に巨大なリングを設置し、半日に渡ってリング上で、防災予防の大切さをさまざまなプログラムを通じて訴えた蝶野氏。プロレスラーの活動と並行して、かねてから「消防応援団」として普段から地域防災啓発活動に積極的に取り組んでおり、苫米地氏は「蝶野君の社会貢献活動が素晴らしいんで応援したい」とそんな蝶野の活動を絶賛。2人はTOKYO MXで放送中のバラエティ番組『バラいろダンディ』でも共演しており、トークが始まると息もぴったり。有楽町駅前に巨大リング!
世界的な情報セキュリティの研究組織であるカーネギーメロン大学の「cylab(サイラボ)」のフェローも務める苫米地氏、2007年頃からサイバーセキュリティに関わる活動を積極的に行っており、イベントに集った消防関係者らや街行くサラリーマンを前に「サイバーセキュリティは消防の分野でも必要。みなさんの意識をもっと高めて欲しい」と呼びかけ。 苫米地氏は「サイバー攻撃は攻撃の側が防衛の側の1,000倍有利。世界中のサーバーだったりパソコンの常時接続されているものが乗っ取られたりすると、全世界から攻撃できるわけですから、それを守ることはものすごく困難なんです」とコメント。「北朝鮮から発進された、『ビットコインを払え』と身代金のように要求する『ランサムウェア』攻撃が問題となっていますが、イスラム国もサイバー攻撃を研究中。北朝鮮に限らず、シリアなど、サイバー攻撃はどこからでもやってくる。日本のサイバーのリスクはますます上がっている」と警笛を鳴らす。 その上で「サイバーに関して皆さんは、ほとんどSFのような世界だと思っているでしょうが、実際に起きていること。その気になれば原子力発電所なんかもサイバー攻撃の脅威の下にある。ビルのシャッターが突然止められる、病院の電気が突然止められる。そういうことが起きるリスクがあり、そのリスクを考える時代がもう来ている」と続けた。苫米地氏の話に蝶野も興味津々
熱弁を振るう苫米地氏
また、コンピューターウィルスが発見されると、『CERT(Computer Emergency Response Team)』という組織にまず登録され、企業の管理者はそれを常にチェックし、アップデートを行っていくというが、『ゼロデー(zero-day)』攻撃など、CERTと連絡を取り合った企業が防げない攻撃が主流になっており、防衛がますます困難になっていると苫米地氏。「『日本は大丈夫ですか?』と聞かれて『大丈夫です』としか公には言うしかない。でも本当を言うと、サイバーは攻撃の側が1,000倍有利なわけですから、守りきれない。企業の中に『CSIRT(Computer Security Incident Response Team)』のようなものを作っていく必要がある」とメッセージ。 蝶野氏のほうは苫米地氏の話に「防ぎようがないようにも感じるのですが」と心配そうに話したが、苫米地氏はこれに「防ぎようがないのは地震が止められないのと同じ」と切り返し、「我々は地震を止めようと研究開発しているわけじゃない。地震が起きるという可能性があるということを認識し、最後は止められないということをわかった上で準備することが大切なんです」と話し、蝶野氏を感心させていた。 そのほか、苫米地氏は脳科学や認知科学の専門家として、災害時に起こりうる集団や個人、それぞれでのレベルでの心理的リスクを紹介。「クライシスサイコロジー」と呼ばれる、災害時における心理的危機管理術の重要性についても駆け足で解説していた。 一見、異色の組み合わせの対談だが、有楽町駅前を行き交う多くの人々が脚を止めて、2人の話に耳を傾けていた。 (取材・文=名鹿祥史)プロレスの時とは違って優しい表情の蝶野氏
ウェブ漫画バブルの韓国から黒船来航! 日本漫画風アレンジで、ヒットの予感?
一見すると、普通の漫画のようにも思えるが、よく見るとちょっとおかしい。6月初め、そんな漫画が、「BookLive!」や「LINEマンガ」をはじめとする電子コミックサイトに掲載された。タイトルは、『24時のイタズラな彼女』だ。 大企業の競争社会になじめず会社を辞め、彼女からバカにされながらも、コンビニを経営する主人公のマコト。そんなコンビニにバイトで応募してきた破天荒な不良少女・セナが、マコトと彼女との間に割って入り、混乱を巻き起こしていくラブコメ風の漫画だ。テンポも良くて画力も高いのだが、どうにも読んでいて違和感が拭えない。 まず、オールカラーという点が引っかかる。『ドラゴンボール』のような人気作を色塗りするならまだしも、通常、新規連載の作品をカラーで仕上げることなどはない。コストもかかるし、手間もかかるためだ。『24時のイタズラな彼女』
女子高生がリュックサックを背負い、スニーカーを履いている。オールカラーだ
そして、漫画の描写もおかしい。女子高生は制服を着ているのに、その靴がローファーではなくてスニーカーだったり、登場人物たちがLINEではなくてカカオトークでやりとりしていたり、主人公の男性が左ハンドルの車に乗っている。どうやら、ここは日本ではなさそうだ。 それもそのはず、この漫画は韓国漫画であり、それを日本風にアレンジしたものだったのだ。版元のTOPCOMICS JAPANに問い合わせてみると、おそらく韓国の方なのだろう、癖のある日本語ながらも丁寧に対応してくれた。 「この作品は、韓国で『コンビニのセッピョル』というタイトルで連載中です。韓国では連載半年ながら、月間300万PV以上、総PV数が2,550万超の大人気作です。韓国と中国ではドラマ化の話も進んでいます。今回、この漫画を日本にも広めたいと考え、日本の漫画形式に編集し直したんです」(担当者)この寄り目の少女がヒロイン。毎回、コンビニで騒動を起こる
■縦スクロールの漫画を無理やり日本漫画に変更 韓国では紙文化が2000年代前半には廃れ、その煽りを食らい、漫画文化も虫の息になった。しかし、スマホの隆盛とともに、2000年代後半から「WEBTOON」と呼ばれる漫画文化が盛り上がる。日本漫画とは違い、オールカラーで、1コマずつ縦に読む形式の漫画だ。この『24時のイタズラな彼女』も、もともとはそんなWEBTOON形式のカラー漫画だったのだという。 「『24時のイタズラな彼女』の作家さんは1コマずつ、縦に並べて描いています。それを日本式ページに組み直すのは大変でした。それから、登場人物の名前も悩みました。韓国人の名前だと頭に入りにくいという意見を頂いたので、日本っぽい名前に変更しました。なるべく読者が読む上でのストレスをなくしたいと考えたからです」(同) それは、ほとんどゼロから構築するようなものだったという。 「韓国では今、WEBTOONバブルが起こっていて、年間1億円以上を売り上げる作品がいくつも生まれています。今回、このようなWEBTOON形式の漫画を完全な日本漫画風に加工したのですが、これは弊社が初めてのケースでしょう。ですが、もしこの漫画が日本の読者に受け入れられるようでしたら、きっと今後、韓国の人気作が日本漫画風に加工されていくと思います」(同) 韓流ドラマは日本でも一大ブームを巻き起こしてきた。しかし、この漫画大国である日本において、果たして韓国漫画は受け入れられるのだろうか? 『24時のイタズラな彼女』は現在、各サイトで6話分のすべてが無料公開中だ。その評価は各読者に委ねたい。 ●LINEマンガ https://manga.line.me/book/detail?id=0027h9odもともとのWEBTOON形式の漫画素材。これを加工したのだという































