大和田伸也が65歳初監督 故郷・福井を舞台にしたヒューマンドラマ『恐竜を掘ろう』

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(C)『恐竜を掘ろう』製作委員会
 毎週新作映画を紹介する当コーナーでは今回、劇場公開こそ小規模だが、予算などさまざまな制約の中、アイデアと工夫によってユニークな作品に仕上がった2本を取り上げたい(いずれも3月30日公開)。  1本目の『恐竜を掘ろう』は、松方弘樹が珍しく穏やかで少しさびしげな役で主演し、内山理名、鈴木砂羽、ガッツ石松らが共演したヒューマンドラマ。福井市で美術店を営む草介(松方)は、経済的に成功し、仲間と夜な夜な飲み歩く日々を過ごしながらも、空虚な思いを抱えていた。ある日、いつもショーウィンドウ越しに店をのぞいていた少女(小野花梨)から手紙を受け取った草介は、気になって少女の家を訪問。だが、数日前から行く先を告げず家を出ていた少女はその頃、恐竜の卵の化石を発掘することが夢だと語る青年(入江甚儀)に出会っていた。  福井県敦賀市出身の俳優・大和田伸也が故郷の福井を舞台に撮り上げた初監督作品。松方弘樹がにわか探偵になって少ない手がかりで少女の家を探し当てたり、スナックで働く顔見知りの若い女性(内山理名)の車にこっそり乗り込んで自宅を突き止めたりと、見方によってはかなり危ない行動をとるが、テレビのバラエティ番組でおなじみの「オジサンのかわいらしさ」でなんとなく納得させられてしまう。ユーモラスなタッチとヒューマンなストーリー展開が十分になじんでいないところもあるものの、ある種のぎこちなさ、初々しさも味わいではある。山奥に突如出現する巨大な「ハコモノ」の恐竜博物館や、夜ごとスナックに通う男たちがろくに働いていない(ように見える)描写に、原発立地の事情がそれとなく伝わってくるが、現実を見据えた上で内なる希望を「掘り起こそう」という監督からのポジティブなメッセージととらえたい。  もう1本の『UFO 侵略』は、英国発の低予算SFアクションながら、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが重要な役どころで格闘アクションも披露した注目作。ある朝マイケルは、出会ったばかりの恋人キャリーや同居人たちと目覚めると、町一帯で停電が発生し、携帯電話もつながらない。住民らの騒然とした様子に気づいて外に出た彼らは、上空を覆う巨大なUFOを目撃。マイケルたちは車を走らせ、宇宙人の襲来を予見し長年準備してきたせいで変人扱いされていた元特殊部隊兵士の叔父ジョージ(バン=ダム)に助けを求める。  マイケル役にピアース・ブロスナンの息子ショーン・ブロスナン、キャリー役にバン=ダムの娘ビアンカ・ブリーと、二世俳優の共演でも注目。特にビアンカ・ブリーは、端正な顔立ちとグラマラスな肢体に似合わずハードなアクションで「父娘対決」も熱演しており、今後の活躍に期待したいところ。おそらくは予算の都合上で、バン=ダムの出演シーンの多くを別撮りして編集でつないでいるのがバレバレだが、むしろ開き直ったかのような構成が潔い。宇宙船などの視覚効果も「今どきこんな……」とあきれるほどチープだが、そうしたツッコミどころも含め広い心で楽しめるB級SFのファンにおすすめだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『恐竜を掘ろう』作品情報 <http://eiga.com/movie/77803/> 『UFO 侵略』作品情報 <http://eiga.com/movie/78233/>

大和田伸也が65歳初監督 故郷・福井を舞台にしたヒューマンドラマ『恐竜を掘ろう』

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 毎週新作映画を紹介する当コーナーでは今回、劇場公開こそ小規模だが、予算などさまざまな制約の中、アイデアと工夫によってユニークな作品に仕上がった2本を取り上げたい(いずれも3月30日公開)。  1本目の『恐竜を掘ろう』は、松方弘樹が珍しく穏やかで少しさびしげな役で主演し、内山理名、鈴木砂羽、ガッツ石松らが共演したヒューマンドラマ。福井市で美術店を営む草介(松方)は、経済的に成功し、仲間と夜な夜な飲み歩く日々を過ごしながらも、空虚な思いを抱えていた。ある日、いつもショーウィンドウ越しに店をのぞいていた少女(小野花梨)から手紙を受け取った草介は、気になって少女の家を訪問。だが、数日前から行く先を告げず家を出ていた少女はその頃、恐竜の卵の化石を発掘することが夢だと語る青年(入江甚儀)に出会っていた。  福井県敦賀市出身の俳優・大和田伸也が故郷の福井を舞台に撮り上げた初監督作品。松方弘樹がにわか探偵になって少ない手がかりで少女の家を探し当てたり、スナックで働く顔見知りの若い女性(内山理名)の車にこっそり乗り込んで自宅を突き止めたりと、見方によってはかなり危ない行動をとるが、テレビのバラエティ番組でおなじみの「オジサンのかわいらしさ」でなんとなく納得させられてしまう。ユーモラスなタッチとヒューマンなストーリー展開が十分になじんでいないところもあるものの、ある種のぎこちなさ、初々しさも味わいではある。山奥に突如出現する巨大な「ハコモノ」の恐竜博物館や、夜ごとスナックに通う男たちがろくに働いていない(ように見える)描写に、原発立地の事情がそれとなく伝わってくるが、現実を見据えた上で内なる希望を「掘り起こそう」という監督からのポジティブなメッセージととらえたい。  もう1本の『UFO 侵略』は、英国発の低予算SFアクションながら、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが重要な役どころで格闘アクションも披露した注目作。ある朝マイケルは、出会ったばかりの恋人キャリーや同居人たちと目覚めると、町一帯で停電が発生し、携帯電話もつながらない。住民らの騒然とした様子に気づいて外に出た彼らは、上空を覆う巨大なUFOを目撃。マイケルたちは車を走らせ、宇宙人の襲来を予見し長年準備してきたせいで変人扱いされていた元特殊部隊兵士の叔父ジョージ(バン=ダム)に助けを求める。  マイケル役にピアース・ブロスナンの息子ショーン・ブロスナン、キャリー役にバン=ダムの娘ビアンカ・ブリーと、二世俳優の共演でも注目。特にビアンカ・ブリーは、端正な顔立ちとグラマラスな肢体に似合わずハードなアクションで「父娘対決」も熱演しており、今後の活躍に期待したいところ。おそらくは予算の都合上で、バン=ダムの出演シーンの多くを別撮りして編集でつないでいるのがバレバレだが、むしろ開き直ったかのような構成が潔い。宇宙船などの視覚効果も「今どきこんな……」とあきれるほどチープだが、そうしたツッコミどころも含め広い心で楽しめるB級SFのファンにおすすめだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『恐竜を掘ろう』作品情報 <http://eiga.com/movie/77803/> 『UFO 侵略』作品情報 <http://eiga.com/movie/78233/>

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 毎週新作映画を紹介する当コーナーでは今回、劇場公開こそ小規模だが、予算などさまざまな制約の中、アイデアと工夫によってユニークな作品に仕上がった2本を取り上げたい(いずれも3月30日公開)。  1本目の『恐竜を掘ろう』は、松方弘樹が珍しく穏やかで少しさびしげな役で主演し、内山理名、鈴木砂羽、ガッツ石松らが共演したヒューマンドラマ。福井市で美術店を営む草介(松方)は、経済的に成功し、仲間と夜な夜な飲み歩く日々を過ごしながらも、空虚な思いを抱えていた。ある日、いつもショーウィンドウ越しに店をのぞいていた少女(小野花梨)から手紙を受け取った草介は、気になって少女の家を訪問。だが、数日前から行く先を告げず家を出ていた少女はその頃、恐竜の卵の化石を発掘することが夢だと語る青年(入江甚儀)に出会っていた。  福井県敦賀市出身の俳優・大和田伸也が故郷の福井を舞台に撮り上げた初監督作品。松方弘樹がにわか探偵になって少ない手がかりで少女の家を探し当てたり、スナックで働く顔見知りの若い女性(内山理名)の車にこっそり乗り込んで自宅を突き止めたりと、見方によってはかなり危ない行動をとるが、テレビのバラエティ番組でおなじみの「オジサンのかわいらしさ」でなんとなく納得させられてしまう。ユーモラスなタッチとヒューマンなストーリー展開が十分になじんでいないところもあるものの、ある種のぎこちなさ、初々しさも味わいではある。山奥に突如出現する巨大な「ハコモノ」の恐竜博物館や、夜ごとスナックに通う男たちがろくに働いていない(ように見える)描写に、原発立地の事情がそれとなく伝わってくるが、現実を見据えた上で内なる希望を「掘り起こそう」という監督からのポジティブなメッセージととらえたい。  もう1本の『UFO 侵略』は、英国発の低予算SFアクションながら、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが重要な役どころで格闘アクションも披露した注目作。ある朝マイケルは、出会ったばかりの恋人キャリーや同居人たちと目覚めると、町一帯で停電が発生し、携帯電話もつながらない。住民らの騒然とした様子に気づいて外に出た彼らは、上空を覆う巨大なUFOを目撃。マイケルたちは車を走らせ、宇宙人の襲来を予見し長年準備してきたせいで変人扱いされていた元特殊部隊兵士の叔父ジョージ(バン=ダム)に助けを求める。  マイケル役にピアース・ブロスナンの息子ショーン・ブロスナン、キャリー役にバン=ダムの娘ビアンカ・ブリーと、二世俳優の共演でも注目。特にビアンカ・ブリーは、端正な顔立ちとグラマラスな肢体に似合わずハードなアクションで「父娘対決」も熱演しており、今後の活躍に期待したいところ。おそらくは予算の都合上で、バン=ダムの出演シーンの多くを別撮りして編集でつないでいるのがバレバレだが、むしろ開き直ったかのような構成が潔い。宇宙船などの視覚効果も「今どきこんな……」とあきれるほどチープだが、そうしたツッコミどころも含め広い心で楽しめるB級SFのファンにおすすめだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『恐竜を掘ろう』作品情報 <http://eiga.com/movie/77803/> 『UFO 侵略』作品情報 <http://eiga.com/movie/78233/>

福祉大国ノルウェーで起きる“児童虐待”の恐怖! ノオミ・ラパス主演作『チャイルドコール 呼声』

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ノオミ・ラパス主演のサイコミステリー『チャイルドコール 呼声』。
オリジナル版『ドラゴン・タトゥーの女』で注目されたラパスが、今回はシングルマザーに。
 団地やマンションを舞台にした映画に注目作が多い。中村義洋監督の『みなさん、さようなら』では憧れのライフスタイルだった団地生活が時代と共に変容していく様子が描かれた。アカデミー賞外国語賞を受賞したミヒャエル・ハネケ監督の『愛、アムール』では高級アパートメントで暮らす高齢者夫婦の切ない介護生活が綴られた。3月30日(土)より公開されるノルウェー映画『チャイルドコール 呼声』はオスロ郊外にあるマンションを舞台に、現代社会が抱える闇がクローズアップされる。オリジナル版『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(09)でブレイク、リドリー・スコット監督のSF大作『プロメテウス』(12)にも主演した実力派女優ノオミ・ラパスを主人公に、清潔そうに見えるマンションに潜むDV、児童虐待といった問題を浮き彫りにしたサイコミステリーとなっている。  『チャイルドコール』の主人公アンナ(ノオミ・ラパス)は8歳の息子を持つシングルマザー。元夫の暴力から逃げるため、息子の手を引き郊外のマンションへと引っ越してきた。裁判所の保護監視プログラムに従っての転居だった。母子2人で平和に暮らせると喜ぶアンナだが、保護監視員は息子を早くこちらの小学校に通わせろ、寝室は母と子で別々にしろ、と口うるさい。ひとりで寝ることになった息子をアンナは心配して、「チャイルドコール」という音声監視モニターを子ども部屋に設置することに。子ども部屋で異変が起きれば、飛んでいけばいい。その晩、このチャイルドコールから子どもの苦しげなうめき声が聞こえてくる。慌ててアンナは子ども部屋を覗くが、息子はすやすや眠っていた。不思議に思ったアンナがチャイルドコールを買い求めた家電店の親切な店員ヘルゲ(クリストファー・ヨーネル)に尋ねると、どうやらチャンネル設定を誤り、マンションの他のフロアの音声が混線してしまったらしい。この説明を聞いて、ゾッとするアンナ。アンナ親子にとって安住の地と思われた新しいマンションだが、他のフロアでは虐待に苦しんでいる子どもがいるかもしれないのだ。マンションに戻ってチャイルドコールのスイッチを入れると、やはり子どものうめく声が漏れてくる。悩み事を相談する相手のいないアンナの不安が日ごとに膨らんでいく……。  ノルウェーといえば、世界でもっとも男女間の社会格差がないことで知られる高い文化水準を誇る国。社会福祉制度も整っているが、女性の社会進出に伴って夫婦の離婚率も非常に高くなっている。社会制度が整えば整うほど、完備されたシステムと現実の生活との間に深い溝が生じてしまう。大人の都合で振り回される子どもたちがその犠牲となり、ぽっかり開いた溝へと落ち込んでしまうことが少なくない。チャイルドコールのチャンネルを回す度に、子どもたちの誰にも届かない叫び声、そして思い出したくない過去の自分の記憶と接続してしまうアンナ。彼女の顔は、ムンクの『叫び』のように歪んでいく。
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『チャイルドコール』と『隣人』を
撮ったポール・シュレットアウ
ネ監督。アルフレッド・ヒッチコ
ックやロマン・ポランスキーの影
響を受けたと語る。
 本作を撮ったのは、勤労意欲のまるでない郵便局員を主人公にした恋愛サスペンス『ジャンク・メール』(97)でカンヌ映画祭批評家週間最優秀賞を受賞したノルウェーの国際派ポール・シュレットアウネ監督。ユーモラスさを漂わせていたデビュー作『ジャンク・メール』と比べると、『チャイルドコール』はかなり鋭角な作風になった印象がある。2月9日、渋谷ユーロスペースで開催された「トーキョーノーザンライツフェスティバル」に参加するため来日したシュレットアウネ監督は、先行上映された本作のトークショーでこう語った。「チャイルドコールが他の家の電波と混線して、児童虐待が発覚したという事件の記事を読んだのが企画の発端。僕自身が子どもを持つ父親です。子どもに対する愛情は良いことだけれども、過剰な愛情は不安や恐怖を招くもの。本作で描かれる恐怖は、僕自身が体感したものでもあるんです」。
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官能ホラー『隣人 ネクストドア』。隣に住む美人姉妹の淫らな挑発に、
気の弱そうな主人公ヨーンは思わず乗ってしまう。快楽の後には恐怖が待っていた。
 『チャイルドコール』と共に気になるのが、同時レイトショー公開される『隣人 ネクストドア』。こちらはシュレットアウネ監督が2005年に撮った、エロティックサスペンスとなっている。本国ノルウェーでは17年ぶりとなるR18指定となったほどの生々しい性暴力シーンが描かれている。『チャイルドコール』と同様にマンションが舞台。同棲していた恋人に出ていかれて意気消沈している主人公ヨーンが職場からマンションに帰ってくると、初めて見る隣室の美しい女性アンネから「家具を動かすのを手伝ってほしい」と頼まれる。隣室を訪ねると、もう一人セクシーな若い女性キムがいた。どうやら2人は姉妹らしく、妖しい笑顔でヨーンを迎え入れる。  美人姉妹は「家具をドアの前に動かしてほしい」と頼む。そんなことをしたら、ドアが開かなくなってしまうではないか。しかも美人姉妹はヨーンが恋人に棄てられたことを知っていた。薄い壁を通して、ヨーンと恋人とのケンカの一部始終が聞かれていたのだ。ヨーンを挑発するように笑う美人姉妹。閉ざされた部屋の中に充満する淫らな空気。アンネが部屋を出た隙に、ノーブラでパンツ丸見え状態のキムがむちむちした若い肉体でヨーンににじり寄ってくる。頭の中が真っ白になったヨーンはズボンを降ろすと、キムの上にのしかかった。理性を失ったヨーンの意外な性癖があらわになっていく。  美人姉妹の妖艶な罠にハマっていくヨーンを演じたのは『チャイルドコール』で善人そうな家電店の店員を演じたクリストファー・ヨーネル。ノルウェー映画界きっての性格俳優で、ノルウェーに実在した監獄島で起きた暴動事件を描いた『孤島の王』(10)では陰湿な看守役で強烈なインパクトを残した。『隣人』では一見したところ優しそうに見える主人公ヨーンがマンション内の迷宮に迷い込み、精神を錯乱させていく姿を熱演している。こちらもマンション内での引きこもり、汚部屋、性的暴行……といった今日的な題材が盛り込まれた興味深い内容だ。シュレットアウネ監督には、垢抜けたマンション=システムの整った現代社会、と映っているらしい。いくら洗練されたマンションに暮らしていても、ドアを開けるとそこには人間のドロドロした心の闇が広がっている。  親子愛のねじれを描いた『チャイルドコール 呼声』と倒錯的な性愛と暴力を扱った『隣人 ネクストドア』。北欧から届いた2種類のマンション綺談。あなたはどちらを観る? childcall_sub_photo_04.jpg 『チャイルドコール 呼声』 監督・脚本/ポール・シュレットアウネ 出演/ノオミ・ラパス、クリストファー・ヨーネル、ヴェトレ・オーヴェンニル・ヴァリング、スティーグ・R・アンダム、マリア・ボッグ 配給/ミモザフィルムズ 3月30日(土)よりヒューマントラスト渋谷ほか全国順次ロードショー http://childcall.jp Nextdoor_sub_photo_03.jpg 『隣人 ネクストドア』 監督・脚本/ポール・シュレットアウネ 出演/クリストファー・ヨーネル、セシリエ・モリス、ユリア・シャクト、アンナ・バッハ=ウィーグ、ミカエル・ニクヴィスト  配給/ミモザフィルムズ 3月30日(土)よりヒューマントラスト渋谷ほか全国順次ロードショー http://www.rinjin-nextdoor.jp

残酷すぎる退屈な日常から生まれるドラマ アニメ『悪の華』第1回先行上映会レポート

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司会のニッポン放送・吉田アナウンサー(左)と長濱博史監督。
 3月21日、東京・科学技術館にてテレビアニメーション『悪の華』第1回先行上映会が行われた(この作品は、話数を「回」で数える)。上映の前後には長濱博史監督、出演者の植田慎一郎(春日高男役、第24回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストファイナリスト)、伊瀬茉莉也(仲村佐和役)、日笠陽子(佐伯奈々子役)が登壇してトークを繰り広げ、イベント終了後は報道陣の取材に応じた。  『悪の華』は「週刊少年マガジン」(講談社)で連載中の同名漫画(原作・押見修造)のアニメ化。4月から放映を開始する。  技術的には、ロトスコープを採用している点が大きな特徴だ。ロトスコープ自体は既存の手法だが、それを全編、テレビシリーズの頭から最後までやり通した例はほかにない。実写撮影→手描きでアニメ化→アフレコという過程を踏むのは当然として、全編がロトスコープであるため、まず原作者の生地であり、原作の舞台である群馬県桐生市で3カ月間に渡り、実写専門のキャストを起用しての撮影が行われた。その上でアニメの画として描き、音を響かせ、声を載せる。最終的に声優の声が載ると、それは実写でもアニメでもない何かになっていた。  上映前、壇上に立った長濱監督は「ちょっとポカン、としてしまうかもしれない。普通のアニメーションの映像とは違うので」と言った。  ちょっとどころではなかった。  「第1回」はボードレールに心酔する読書好きの少年、春日高男が登下校する何気ない様子に始まり、この物語の発端となる事件の直前までの「何も起こらない時間」を執拗に描いていく。  「うっせぇ クソムシが」。おそらく仲村佐和のその言葉以外は、何も起こらない日常を映しているだけなのに、不吉な音楽、音響と共に、緊迫した濃密な時間が続く。エンドロールでようやく解放されると、ほっとすると同時に、その20数分への充足感も生まれ、早く次を見たいという気にさせられる。  スクールカーストを頭で捉えた程度のものではなく、リアルな学生生活の今、あるいは記憶を、そのまま呼び起こされるような完璧な生々しさがある。放映開始前から問題作と言ってもいいかもしれない。間違いなく、新しい何かを提起している。  すべてにおいてテンションが高い映像の中で、特に光っていたのは実写と声の演技の両方で主人公の春日高男を演じた植田慎一郎の芝居だ。その貢献は、作品が完結していない現時点でも称賛に値する。  この先、春日高男は密かに想い焦がれる佐伯奈々子の体操着に手をかけたところを仲村佐和に目撃され、心の闇を共有する間柄になっていく。そして「いい子」を演じ続けることに違和感を覚える佐伯も、次第に春日に惹かれていく。3人の関係はどうなるのか。この世界の圧力はどこまで高まるのか――。  上映後に再び登壇した長濱監督は最初「原作と一緒です。漫画と一緒です。それしか言わないです(笑)」と言っていたが、徐々に言葉の洪水が止まらなくなっていく。 「(ロトスコープは)コントロールが利かないんですよね。髪の毛とか。服のシワとか。コントロールしようとすればするほど、記号に落ち着けようとすればするほど、ウソになっていく。どこまでやっていくかを一話で感じ取り、模索して、方向性が見えてきている」 「これ以降、どんどん色が変わっていく。カテゴライズされたくないんですとにかく。『悪の華』はなんとかいうジャンルです、とか、あれみたいだとならないようにしようと」 「アニメになりすまそうとしているんです。スターチャイルドから普通のアニメとしてリリースしようとしている」 「桐生の試写会でも司会の松崎(克俊、山田役)さんから、犯行声明みたいだと言われたんですが」 「アニメの世界にしか存在しない仲村とか佐伯にしたかった。原作のキャラクターをそのまま出しても。原作を読めばいいんですよね。そういう意味では原作に戻れるつくりになっている」  そして植田慎一郎、伊瀬茉莉也、日笠陽子が登壇。ここからおよそ1時間、熱の入ったトークが続く。 「2回目すごいですよ。放送を見てほしいですね。1回見ると画に慣れるので」(植田)
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「アフレコをしているときは、いわゆる外画の吹き替えをやっているような感覚だったんですが、これを見たときに“あ、やっぱりアニメだ”と。でも滑らかに動くし、なんだろう、これは。ジャンルがない」(伊瀬) 「私はいい作品やいい曲に出逢うと、胸がキュン♪ とする性癖の持ち主なんですが、これを見た瞬間はキュンとしなかったんですよ。ギューっとして、ずっとざわざわ、ざわざわしているんですよ。なんか、すっごくて……(長濱「要領得ないな、あなたは(笑)」)そうなの、今日はうまく言えないの、衝撃が大きすぎて」(日笠)  あまりに長尺の会話ゆえにそのすべてを起こすことは差し控えるが、異様にも映ったのは、登壇者の姿勢だ。明らかに「お仕事」の域を脱していた。商業用に体裁を整えよう、時間内に収めようといった調整の意識は最低限にとどめ、飾り気のない言葉で熱く語り続ける。心の底から作品に共感し、情熱を持って取り組んでいる様子が伝わってきた。上映後のトークは最初の質問の時点で残りわずかとなっていて、当然、終了予定時刻を大幅に超過する。それを一向に意に介さなかったことからも、『悪の華』が特別な何かであるということはわかる。
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 アフレコの現場はガンマイクが上方から垂らされるように役者に向かってセッティングされ、声優は本を持たずに、実写のように演技をしていた。役に入り込んだ伊瀬と日笠の間には、劇中の仲村と佐伯の間に漂うのに似た空気が張り詰めるのだという。その芝居の迫力は、確かに映像に乗り移っていた。  登壇者4人はイベント終了後も約45分間の囲み取材に応じた。テンションはまったく落ちず、じっくりとわれわれ報道陣に付き合ってくれた。その一部をご紹介しよう。  イベントを終えての感想を問われると、各々、次のように答えた。 日笠 「ちょーお楽しかったです! いつもアフレコが終わると呑み会をするんですけど、今日は(伊瀬)茉莉也がそういう感じで行こうと言っていて。むき出しにしないと『悪の華』に対する思いは伝わらないから、できるだけ変なベールを被せるのはやめようとやっていたら、素で楽しくなっちゃって。でもでも全然しゃべり足りなくて、3時間でも足りないんじゃないかと思っています。会場の様子がわからないほど作品にすい込まれていました」 伊瀬 「しゃべり足りないですね。短いな~! と思いました。だいぶオーバーしてるんだけど、それでもしゃべり足りないということは……いや、もちろん、どの作品にも愛情を持って全力投球なんですよ。だけど、この『悪の華』は特別なんですよね。そう思わせられる原作の力と、監督の熱意と……美術さんだったり音響さんだったり、プロフェッショナルな方々が一切手を抜かないんですよね。だから、私たちキャスト陣も絶対に手を抜けない。ちょっとでも手を抜いた瞬間に負ける気がするので、監督の熱意、画、音、すべてに負けないように立ち向かっていかないと、この作品の本当の意図する、一番奥の深い深い伝えたいところが伝わらないんじゃないかと思うので。それ……ですね……何言いたかったんだろう。(長濱監督「感想だよ(笑)」)感想か。そういう思いで望んでいるので、やっぱりそれは伝えきれない! 短いから。(上映中)後ろで見させてもらったときは、もう映画を見ているような感覚になっちゃって。(日笠「かっこいい~もう」)かっこいい。センスがいい。面白い!(日笠「天才だって!」)それに尽きます」 植田 「ずっと言っているんですけど(トークショー中でも言及した)、2回目を見ると本当にすごい。1度目は「こんな動き方をするんだ」とか画のほうに集中するんですけど、2回目以降だと自然に見ることができて、話がすっと入ってくる。ロトスコープという手法で去年の夏に撮影して、暑い中、実写キャストみんなで必死に頑張りました。声優キャストも合わせて作品に向き合い、全力でぶつかってきたことがこういう形で見られると、間違っていなかったんだという思いで、本当に幸せです。  2人(日笠、伊瀬)から聴く話はすべて刺激になります。こういう言い方をするとよくないのかもしれないけれど、すごい声優さんたちもこんなに悩んで作品に取り組んでいる姿を見ると、自分には今まで(声優経験は)何もないので、全力でぶつかっていくしかない。全力でぶつかっていかないと、関わったみなさんに悪いと思って……話がずれてしまいましたが、(共演が)この2人で本当によかったです。 長濱監督 「たくさんの方と一緒に見られたことが、すごくうれしかったです。先生(押見修造)や、実写キャストのみなさん、声優さん、たくさん来てくださって。みんな「すごかった」と言ってくれました。今まで映像を見ていないので、今日見て『すごかった』と言ってくれたことが、何よりうれしい。みんなが、自分がやった役、自分が参加した作品がどうなるのかを、ここで見てもらえたことと。それに関わった役者の口から、この作品に命をかけているとか、けっこうウソの話も出てきたんですが、死ぬ死なないとか。ただ、そのくらいの気持ちで、わたしたちはこの作品に関わったのだ、ということを、それこそ伊瀬茉莉也や日笠陽子の口から聞けたら、現場のスタッフはますますやらないといけないな、と思うし。  伊瀬がさっき、みんなすごいプロフェッショナルだと言っていたけれども、そのひとりですからね、あなたも。あなた方はその一部なんだから。あなたたちの芝居を見て、だからこそ画を起こしているアニメーターは、佐伯奈々子の顔がぐちゃぐちゃになっちゃいけない、かわいくないように見えてはいけない、と思うし。仲村のちょっとした鋭い視線や立ち居振る舞いというものに、ブレがあってはならないとみんなが思って、つくり上げている、そのピースのひとつなので。植田くんもそうですけれどもね。そういう意味では、みんなが志を同じくするというか、角合わせをする時期だったと思うんですね。ずっと積み重ねてきたものはあったんですけど、ピシっと形を一回合わせる意味でも、今日の試写会はとんとん、と角を合わせて『あー、きれいに揃ってるね。こんなんなっちゃってる』と、一度みんなで再確認できた、素晴らしいイベントだと思います。ありがとうございます」 DSC_0073.jpg  この発言を受けて、長濱監督に質問した。 ――基準を合わせるという意味では、主人公がひとつの基準になると思います。春日の春日らしさ、あるいは、思い返すと決して学校って楽しいことばかりじゃない、学生らしさ、学生の会話のレベルみたいなもののライヴ感を出すにあたり、ちょっと難しいとは思うんですが、実写と声の両方で春日を演じた植田さんへの評価は? 長濱監督 「植田くんの評価ですか。相当難しいですが。植田くんのやった役、春日高男のなんでもないことを追体験するところから始めているんです、1話は。だから何も起こらない。わざわざ2回、同じ登校シーンを繰り返すんですよ。でも見ていただけるとわかるんですが、背景美術は別の日なので、微妙に光の感じも雲の感じも天気も違うんですね。その中で、だけど見ている人間にとっては『同じ日じゃん。同じ画をくり返しているんじゃないの?』と見えてほしかったんです。そのくらい退屈なんです、たぶん。春日にとっては当たり前の生活で、それを、その桐生というところで生きている中学生『春日高男』を、まず知るところから始めないと、春日が仲村と出逢ってどう変わっていくのか、どうしてこうなったんだろうという感情が生まれづらくなるので。そこに持っていくために今回、1話をていねいに、何も起こらない日常をずっとやった。その中で、つくり笑いをしたり、話を合わせたりする春日高男というのは、みんな誰もが身に覚えのある瞬間だったりするし。友だちがいないわけでもない。いじめられているわけでもない。優等生でもない。なんの変哲もないことがどれだけ残酷かものなのか、自分というのはいったいなんなのか、というのをどこに求めていくかと言ったら、本しかなかった。それをずっと見せていき、描きたいことを描こうとしていた一話なんですが、原作には描かれていない、前日談みたいなものを描いているんですけれども。植田くんがやはり、ちゃんと春日高男というキャラクターに寄り添って、春日高男に向き合ったからこそあの表情が出てくるし、あの世界で春日高男がどんな笑い方をして、どんなクラスに、どんなふうに座っているのか。みたいなことを彼がまず1話で示してくれたことで、今後の展開に大きく影響を及ぼしてくる。  全力でぶつかってくれた植田慎一郎という人間は、素晴らしかった……というチープな言い方しかできないですが、素晴らしかったですね。撮影は本当に過酷だったので。参加してくれた役者さんたちはみんな大変な思いをしたんですね、夏の陽射しのもとを歩いたりとか。その先頭を引っ張っていたのが、経験値もなんにもない、ジュノンボーイで、春日高男とはまったく正反対のリア充真っ盛りみたいなね、やつなんじゃないかと言われている植田くんが、いちばん春日高男になっていたという。あの瞬間は、なんだろうな、役者って面白いいな、と思うんですね。自分は役者ではないですけれど、役者という仕事は面白いいな、彼が春日になれるんだものな、と。サッカーをやっていた人間が、本しか読まない、なんの変哲もないやつになれるんだよな、と思って。それを彼は愛しいと思っていると思うんですよ、きっと。一生自分のものだと思って手放したくないと思う(だろう)し。役者はみんな、この役を誰にも渡したくないと思うだろう。春日高男というキャラクターが、そこでやっと人になり、生きているのだと思うと、感慨深いですよね。それにちょっとでも関われたのは、幸せですね」  この上映会と付随する取材だけで、とにかくすごいということはわかった。しかし、まだ本放映が始まったわけでもない。最後まで見届けたい作品になりそうな予感がする。 (取材・文=後藤勝)

“女優・歌手”の松たか子に降って湧いた移籍騒動「事務所HPも2年間更新されず……」

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松たか子 オフィシャルクラブ club.Mより
 芸能界では、野球やサッカー同様に「移籍」が頻繁に繰り返されている。小さい事務所から大手事務所、大手事務所から個人事務所に独立――といったように多種多様な「移籍」があるのだが、今、最も注目されているのが、ある女優だ。 「それは、松たか子さんです。彼女は今、江口洋介さんや瑛太さんが所属する『パパドゥ』に所属していますが、音楽のマネジメントもしている某大手事務所へ移籍するのではないかという話が業界を駆け巡っているんです。もちろん、夫でミュージシャンの佐橋佳幸さんの存在があるのは間違いありません」(芸能事務所関係者)  もともと、女優活動と並行して歌手活動も行っていた松。女優としては数々の賞を受賞しているが、歌手としてはこれといったヒット作もない。 「ですが、小田和正さんと親交があったり、今月発売された奥田民生さんのカバーアルバム『奥田民生・カバーズ2』に参加していたりと、ミュージシャンとの交流は多いんです。もちろん、夫の佐橋さんの影響があることは否めません。松さんはオリジナルアルバムを9枚出していますが、それだけ出せるということは、ある一定の層には支持されているということですからね。マネジメントする事務所も楽でしょうね」(音楽事務所関係者)  移籍のウワサの元になっているのが、現事務所の彼女に対する扱いだというのだ。 「事実、彼女のオフィシャルHPでは、彼女のコメントは2年前から更新されていませんし、彼女ほどのクラスになれば、事務所のマネジメントはあまり関係ないですからね。女優のオファーは黙っていても来るでしょうから、元来好きな音楽をやってみたいという思いが強くなってきて、女優としてしかマネジメントしない今の事務所に不満を持ってるんじゃないかって話です」(前出・芸能事務所関係者)  大物女優の“FA宣言”の行方は――。

30年の時を超えた伝説的ヒロイン“ラムちゃん”『うる星やつら』が愛される3つのワケ

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 1981年から4年半にわたって放送され、絶大な人気を誇ったテレビアニメ『うる星やつら』のBlu-ray Boxが、27日にワーナー・ホーム・ビデオから発売になった。  大御所マンガ家・高橋留美子の人気コミックを原作に、全218話が放送された同アニメ。最高視聴率は27.4%を記録し、6本の劇場映画がつくられるなど、記憶にも記録にも残る作品といえるだろう。  さらに、放送開始から30年以上が経った現在でも、コミケやイベントなどではラムちゃんのコスプレをする若い女性が見られるなど、その人気はまさに世代を超えて語り継がれている。  いったいなぜ『うる星やつら』は、これほどまでに愛されるのか。そこには、3つの理由があるのだという。 「まずひとつ目は、なんといっても登場人物のキャラクターの強さでしょう。セクシーな寅縞のビキニに緑のロングヘアーから生えた小さな角、『~だっちゃ!』という言葉使いに、空を自由に飛び回り、身体から放電する能力。しかも宇宙人。彼女ほど強い印象を残したヒロインは、他に見られません」(アニメライター)  確かに、長い日本のアニメの歴史の中でも、ラムちゃんほどのインパクトと大衆的な人気を得たヒロインは他に思い当たらない。また、原作コミックの段階ではラムちゃんはさほど重用されておらず、ほかの登場人物中心でストーリーが展開していたこともあり、「諸星あたるはもちろん、しのぶや面堂など、ラムちゃん以外の人物に対しても、個性がよく練り込まれている。視点を変えればそれぞれが主人公になれるくらいの深みを持っているキャラばかり」(同)なのだという。 「次に考えられるのが、設定の妙です。『手に負えない美女が常に主人公に気を寄せている』というシチュエーションは、男子にとってはこの上なく心地よい状況。また、単なる恋愛ではなく、誤解によって“婚約者”になってしまったという展開が、ラブストーリーにありがちな湿っぽさを遠ざけている。この点が、女の子からの支持も集められた理由でしょう」(同) RAM002.jpg  さらに、アニメ『うる星やつら』の魅力を生んだのは、いまや大御所となった若き日の押井守監督による、当時としては斬新な演出の数々なのだという。 「押井監督は初期のチーフ演出として関わっていました。ラムちゃんが空を自由に飛び回る動きや、飛ぶときにあてた効果音。また、物語や舞台展開のスピード感など、『うる星やつら』はアニメ演出の世界に大きな影響を与えました。その集大成として作られたのが、映画監督・押井守の名を不動のものにした劇場版『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』なんです」(同)  また声優陣も豪華そのもの。あたる役に古川登志夫、ラムに平野文、面堂終太郎に神谷明と、“レジェンド級”が勢ぞろいしている。  そんな『うる星やつら』のすべてが詰まったBlu-ray Box。最終話まで観終わったころには、きっとまた第1話の、地球に降り立ったばかりのラムちゃんに会いたくなっているはずだ。耳を澄ませば、あのテーマ曲が聞こえてくる。

【TAF2013】熱いブースにやる気を疑うブースも……「アニメ&キャラクター列島JAPAN」で見えた明暗

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 予算が縮小されたものの、今年も無事に閉幕した恒例のイベント「東京国際アニメフェア」。昨年からビジネス主体のイベントへと大きく舵を切ったイベントを、今回も当サイトならではの視点でレポートする。  今回のフェアで目玉のひとつになったのが、土日の一般来場日の2日間にわたって設けられた「アニメ&キャラクター列島JAPAN」だ。  この企画は、全国各地で行われているアニメやマンガ作品、キャラクターを利用した町おこしを一堂に会する目的で行われたものだ。  当初の目的の通り、全国各地の試みが集まったことは間違いない。しかし、それぞれのブースでは温度差がかなり見られた。各ブースでは物販、パネル展示、パンフレットの配布などさまざまな形で工夫を凝らしているところが多かったが、一方で、PRではなくマイナスになってしまうのではないかと心配になってしまうブースも。  中でもその要素が強かったのが「新潟市マンガ・アニメ情報館」「新潟市マンガの家」のブースだ。この2つの施設は展示のほか、体験学習ができる場として新潟市が企画したもの。2月には「新潟市マンガの家」が先行してオープン。「新潟市マンガ・アニメ情報館」は5月オープンを予定している。地域のマンガ大賞である「にいがたマンガ大賞」が開催されるなど、マンガ・アニメ文化が広く受容されている新潟市で初の常設的な施設である。  まさに、本格稼働を前に盛り上がる時期だと思うのだが、肝心の展示はといえば長テーブルの上にチラシが置かれているだけである。説明をする人すら見当たらない(たまたまトイレにでも行っているのかと、幾度か覗いてみたが無人だった)。おそらく限られた予算で出展しているのだろうが、これはひどすぎる。  実のところ、一部の例外を除けばマンガ・アニメを使った町おこしで予算が潤沢なものなど寡聞にして聞かない。昨年、関西の某大都市で(その地方にしては)大規模なアニメ・マンガフェアが実施された。その際、筆者は自治体から実施を受託した事業者に予算を聞いたのだが、驚いた。 「予算は2,000万円なんですけど、会場費が1,200万円だったんです……」  会場は、主催自治体参加の第三セクター。一旦支払ったカネが還流しているような図式だ。残りの800万円で人件費やら何やらを支払ったら、まったく残らない。件の事業者も「スタッフを手弁当で出してもらった企業もあります。毎晩、飲み屋で頭を下げ通しですよ」と、少々渋い顔を。
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 これはまったく極端な事例ではない。どこの地域でも事情は似たようなものだ。各ブースで話を聞いてみたが「ほとんど手弁当です」と話す出展者が多かった。だが「手弁当でもいいからやる」という意気込みの高い出展者も。  秋田県のご当地ヒーローである「超神ネイガー」は、まさにそれ。このヒーローは、県内のほとんどの幼稚園、保育園、保育所などを回って「超神ネイガー交通安全教室」を実施しており、秋田県内限定で圧倒的な認知度を誇る。決して大きく儲かる企画ではないが、企画者に話を聞いたところ、主題歌を歌う歌手の水木一郎氏が「ご当地ヒーローは、ネイガーしかやらない」と言ってくれたという話を、うれしそうに語ってくれた。  マンガやアニメを使った町おこしで重要なのは、この部分に尽きる。観光客がわんさか押しかけて、地域がバブル風味に潤うのなんて、ほんの一握り。多くは、金銭面以外の充実感で成り立っているのだ。ゆえに、マンガやアニメを使った町おこしが、今後もビジネスとして成り立っていくかは、大いに疑問だ。  さらに、マンガやアニメを使った町おこしには「連載や放送が終わったらどうなるか?」という危惧がつきまとう。元祖「聖地」として知られるJR飯田線の田切駅や伊那市周辺には、確かに今でも『究極超人あ~る』のファンがやってくる。でも、それがビジネスに結びつくかといえば、答えはNOだ。今回の出展者にも、そうした危惧を持つ人は多かった。  『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の聖地である秩父市から出展した、秩父アニメツーリズム実行委員会は「昨年は来訪者数がぐっと減りました。今年は、劇場版がありますけれど……」と話す。また、昨年放映された『神様はじめました』の聖地である川越市の出展者は「アニメの放映が終わったので、どうしようかと……」。  結局のところ、マンガやアニメを使った町おこしの多くは、作品のブームに乗っかった一過性のものにすぎない。ゆえに、いかにその後を見通すかが大きな課題といえる。  ブームに乗っかってやってきた人々に地域の魅力を知ってもらい、作品ではなく地域のファンになってもらう方法。地域の特産品を利用して「萌え商品」を売る方法。作品に乗っかるのではなく、独自にコンテンツを開発して地域密着で回していく方法など、やり方はさまざまある。  いずれにしても、地域に愛着を持ち「手弁当でもやる」という人の存在は欠かせない。自己犠牲的な取り組みには批判があるかもしれないが、行政が大金をつぎ込んで大失敗している地域もあることを考えると、どっちがマシだろうか。 (取材・文=昼間たかし)