春は別れと出会いの季節。当コーナーの4月第1回は、「喪失」と「再生」を描く邦画と洋画の最新作2本を取り上げよう(いずれも4月6日公開)。 『桜、ふたたびの加奈子』は、新津きよみの小説を原作とし、スピリチュアルな要素を織り交ぜて描いたヒューマンドラマ。娘の加奈子を小学校入学式の日に事故で亡くした容子(広末涼子)は、自責の念に駆られて自殺を図るが、それを境に「加奈子が見える」と主張し、娘の世話をするようになる。夫の信樹(稲垣吾郎)は、かたくなな妻を立ち直らせたいと願いながらも、いら立ちを募らせていく。そんなある日、飼い犬に導かれるように出会った女子高生(福田麻由子)が出産間近と知った容子は、その赤ん坊が娘の生まれ変わりだと確信する。 メガホンを取ったのは、デビュー作『飯と乙女』(11)でモスクワ国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞した栗村実監督。大切な人を失った時どう乗り越えるのかという主題に、魂や輪廻といった現代科学では説明のつかない要素をカウンターパート的に配して、ひとの命と生の意味を改めて問い直す稀有なタッチのドラマに仕上げた。象徴的に使われる桜や卵の映像、佐村河内守のエモーショナルな音楽により、重いテーマでありながら不思議な軽やかさと清々しさが残る。広末涼子は『秘密』(99)、『おくりびと』(08)など「死」に近い役どころで好演が多いのも興味深い傾向だ。本作のスピリチュアルな部分に関しては、豪田トモ監督のドキュメンタリー映画『うまれる』(10)を見るとひと味違う印象になるので、合わせて紹介しておきたい。 2本目の『君と歩く世界』(R15+)は、オスカー女優マリオン・コティヤールが両脚を失った女性という難役に挑戦した衝撃的な人生と愛のドラマ。南仏アンティーブの観光名所マリンランドで働くシャチの調教師ステファニー(コティヤール)は、ショーの最中に起きた事故で両脚を失い、気遣う家族らにも心を閉ざしてしまう。退院したステファニーは、事故に遭う前に出会ったナイトクラブの用心棒アリ(マティアス・スーナールツ)に電話をかける。5歳の息子をひとりで育て、貧しい暮らしから抜け出そうと非合法の賭博ファイトに体を張るアリ。不器用だが真っ直ぐなアリの優しさに触れ、ステファニーは次第に生きる喜びを取り戻していく。 『真夜中のピアニスト』(05)、『預言者』(09)の名匠ジャック・オーディアール監督が、カナダ出身の作家クレイグ・デビッドソンの短編集から「素手の非合法ファイトに挑む元格闘家」と「シャチに脚を引きちぎられる調教師」という2つのプロットを得て創作したストーリー。海でサメに片腕を奪われた少女がプロサーファーとして再起を賭ける『ソウル・サーファー』(12)や、障がい者と健常者の本音の交流がお互いに希望をもたらす『最強のふたり』(12)に通じるテーマを取り上げるが、これら2作品と違い、「性」と「暴力」をヒリヒリと痛みを伴うほど切実に描くことで大人向けの傑作に仕上がった。コティヤールが熱演するヒロインが、絶望の淵から再び世界と向き合い前へ進もうとする過程が、海、風、光の映像と音楽により効果的に描写される。現代社会のさまざまな問題も提示しながら、それでも生きること、愛することへの賛歌となっている本作が、人生に迷い悩む多くの観客に届くことを願いたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『桜、ふたたびの加奈子』作品情報 <http://eiga.com/movie/77649/> 『君と歩く世界』作品情報 <http://eiga.com/movie/77842/>(C)Why Not Productions - Page 114 - France 2 Cinema -
Les Films du Fleuve - Lunanime
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ヒリヒリと痛みを伴う“性”と“暴力” 大人向けヒューマンストーリー『君と歩く世界』
春は別れと出会いの季節。当コーナーの4月第1回は、「喪失」と「再生」を描く邦画と洋画の最新作2本を取り上げよう(いずれも4月6日公開)。 『桜、ふたたびの加奈子』は、新津きよみの小説を原作とし、スピリチュアルな要素を織り交ぜて描いたヒューマンドラマ。娘の加奈子を小学校入学式の日に事故で亡くした容子(広末涼子)は、自責の念に駆られて自殺を図るが、それを境に「加奈子が見える」と主張し、娘の世話をするようになる。夫の信樹(稲垣吾郎)は、かたくなな妻を立ち直らせたいと願いながらも、いら立ちを募らせていく。そんなある日、飼い犬に導かれるように出会った女子高生(福田麻由子)が出産間近と知った容子は、その赤ん坊が娘の生まれ変わりだと確信する。 メガホンを取ったのは、デビュー作『飯と乙女』(11)でモスクワ国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞した栗村実監督。大切な人を失った時どう乗り越えるのかという主題に、魂や輪廻といった現代科学では説明のつかない要素をカウンターパート的に配して、ひとの命と生の意味を改めて問い直す稀有なタッチのドラマに仕上げた。象徴的に使われる桜や卵の映像、佐村河内守のエモーショナルな音楽により、重いテーマでありながら不思議な軽やかさと清々しさが残る。広末涼子は『秘密』(99)、『おくりびと』(08)など「死」に近い役どころで好演が多いのも興味深い傾向だ。本作のスピリチュアルな部分に関しては、豪田トモ監督のドキュメンタリー映画『うまれる』(10)を見るとひと味違う印象になるので、合わせて紹介しておきたい。 2本目の『君と歩く世界』(R15+)は、オスカー女優マリオン・コティヤールが両脚を失った女性という難役に挑戦した衝撃的な人生と愛のドラマ。南仏アンティーブの観光名所マリンランドで働くシャチの調教師ステファニー(コティヤール)は、ショーの最中に起きた事故で両脚を失い、気遣う家族らにも心を閉ざしてしまう。退院したステファニーは、事故に遭う前に出会ったナイトクラブの用心棒アリ(マティアス・スーナールツ)に電話をかける。5歳の息子をひとりで育て、貧しい暮らしから抜け出そうと非合法の賭博ファイトに体を張るアリ。不器用だが真っ直ぐなアリの優しさに触れ、ステファニーは次第に生きる喜びを取り戻していく。 『真夜中のピアニスト』(05)、『預言者』(09)の名匠ジャック・オーディアール監督が、カナダ出身の作家クレイグ・デビッドソンの短編集から「素手の非合法ファイトに挑む元格闘家」と「シャチに脚を引きちぎられる調教師」という2つのプロットを得て創作したストーリー。海でサメに片腕を奪われた少女がプロサーファーとして再起を賭ける『ソウル・サーファー』(12)や、障がい者と健常者の本音の交流がお互いに希望をもたらす『最強のふたり』(12)に通じるテーマを取り上げるが、これら2作品と違い、「性」と「暴力」をヒリヒリと痛みを伴うほど切実に描くことで大人向けの傑作に仕上がった。コティヤールが熱演するヒロインが、絶望の淵から再び世界と向き合い前へ進もうとする過程が、海、風、光の映像と音楽により効果的に描写される。現代社会のさまざまな問題も提示しながら、それでも生きること、愛することへの賛歌となっている本作が、人生に迷い悩む多くの観客に届くことを願いたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『桜、ふたたびの加奈子』作品情報 <http://eiga.com/movie/77649/> 『君と歩く世界』作品情報 <http://eiga.com/movie/77842/>(C)Why Not Productions - Page 114 - France 2 Cinema -
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えっ! 缶コーヒーが300円!? 「アニメコンテンツエキスポ」コラボ食品の価格はボッタクリか?
4月から放送予定の新番組をはじめ、最新アニメを扱ったブースが並ぶ「アニメコンテンツエキスポ(ACE)」が3月30日、31日の2日間にわたって千葉県の幕張メッセで開催された。 ACEは、2010年に「東京都青少年健全育成条例」改正問題をめぐって、マンガの表現規制につながると反発した出版社が「東京国際アニメフェア(TAF)」をボイコットしたことを契機に始まった。11年3月に予定された第1回は震災の影響で中止となったが、翌12年には2日間で約4万人を集めた。ビジネス色が強まるTAFに対して、ACEは、いわゆるオタク層に向けた作品紹介と物販、声優のコンサートなどを主体とした祭典の色彩の濃いものだ。今回は、昨年の人気を受けて会場規模も拡大、両日共に閉会時間まで大勢の人で賑わった。 さて、祭りといえば食べ物が欠かせない。昨年、ACEではアニメ作品やキャラクターとコラボした会場限定の食品は大行列となった。中でも『アイドルマスター』のヒロインの一人を使った「高槻やよい家のもやしパーティー」は「やよいの家は貧乏」という設定に合わせて、肉も何も入っていない単なるもやし炒め、それが会場では300円で販売されたのである。もやしの原価を考えると、けっこうな“よいお値段”。だが、ネットではネタ的に話題になることはあっても、「ボッタクリではないか」と批判するような意見はほとんど見られなかった。夏や秋の神社の祭りで香具師の売るたこ焼きやわたあめの価格に文句をつける人なんていない。つまり、来場者の多くは「お祭りなんだから」と、価格すら楽しみの材料にしていたというわけだ。 というわけで、今年はいったいどんなコラボ食品が並ぶのか? もやし炒めを超える、価格と材料の釣り合いの取れなさで笑わせてくれるものがあるかと、期待してフードコーナーに乗り込んだ。
結論から言うと、コラボ食品はいたって真面目なものばかりだった。今年の食品は、劇中に登場するものを再現した「AURA特製 竜天そば」(700円)、無理やり感が漂う「“俺の妹”ならぬ“俺の芋”ポテトフライ」、こじつけの挙げ句に、なんでこんな組み合わせになったのかわからない「ホットケーキとキリストースト」(600円/『聖おにいさん』のコラボ商品)とネタ度はアップしつつも、昨年のもやし炒めほどの衝撃は感じられなかった。
唯一、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の主人公が愛飲しているということで持ち込まれた「マックスコーヒー」が300円なのは、単なる缶コーヒーなのに富士山の山小屋か? みたいな気もしないでもないが、ヒロイン・雪ノ下雪乃のコースターがオマケでついてくるので、ファンにとっては、高くはない様子(筆者も!)。
なお、最も値段が高かったのは『ジョジョの奇妙な冒険』のコラボ食品である「イカスミスパゲッティ」と、『ソードアート・オンライン』のコラボ食品「アスナの愛情たっぷりサンドイッチ」の800円。特に前者は、作り置きでパッケージされているし、温め直す電子レンジもないけれど、よく売れている様子だった。みんな、ジョジョと共感を得たかったのか……?
■ネタ度ではTAFを完全に凌駕
多くのコラボ食品が並んだACEに対して、TAF会場でも各種のコラボ食品の出店は並んだが、ACEに比べてネタ要素は少なめ。TAF会場で販売されていたコラボ食品は『タイムボカン』シリーズとコラボした「おだて豚まん」(400円)、『クリィミーマミ』とコラボした「クリィミークレープ」(480円)など、なんとなく名前をこじつけたスタイルのものが中心であった。会場内のフードコーナーは、コラボ食品よりも、カレー(600円)、フランクフルト(300円)のようにフツーの食品が主体であった。
唯一、異色だったのは1,000円で売られていた「横川駅の釜飯」だ。この釜飯は全国のデパートなどで開催される駅弁大会にもよく出店される、全国的にメジャーな駅弁。そんなにメジャーなのに、意表を突かれたのか買い求める客は多かった(筆者も!)。
しかし、「横川駅の釜飯」をもってしても、ACEのネタ重視なコラボ食品には満足度の点でかなわない。コラボ食品は、祭りという非日常の空間で食すこと自体に意味がある。それに、ウマかろうがマズかろうが「ACEに行って、こんなもの食べちゃったよ……」と、しばらくはネタとして使える。
こうして見ると、ツッコミを入れたくなるような無理やりなこじつけも目立つACEのコラボ食品は、かなり高度に計算しているのではなかろうか。行列に疲れた来場者が小腹を満たす食べ物までをも祭典のギミックに取り込んだACEの企画力は、賞賛に値する。
(取材・文=昼間たかし)
【TAF2013】将来のユーザー獲得のために!『探検ドリランド』アニメ新シリーズ大幅時間変更のワケ
さまざまな新作、新事業の発表が並んだ東京国際アニメフェア。その中でも特に注目を集めたのは、ビジネスデーの初日、3月21日に行われたネットカードダス『探検ドリランド』(仮)&テレビアニメ『探検ドリランド-1000年の真宝(まほう)-』の制作発表記者会見だ。この発表会に並んだのはグリー、テレビ東京、東映アニメーション、バンダイの4社。 『探検ドリランド』は、グリーで配信されているソーシャルゲーム。2012年7月にはテレビアニメ化され、テレビ東京系列で放送された。今回の記者会見でまず重要だったのは、4月から放送される新たなテレビアニメ『探検ドリランド-1000年の真宝(まほう)-』の放送時間だ。昨年7月から放送された『探検ドリランド』の放送時間は毎週土曜日23時30分からだったが、『探検ドリランド-1000年の真宝(まほう)-』は、毎週土曜日10時30分となった。つまり、テレビアニメ前作と今作とは、想定される視聴者が大きく変わったのである。新シリーズがターゲットとするのは、従来とは違う低年齢層なのだ。 想定するターゲットをさらに明白にするのは、同時に発表されたネットカードダス『探検ドリランド』だ。ネットカードダスは、バンダイが提供しているオンライントレーディングカードゲーム。基本プレイは無料で、コンビニエンスストアや玩具店などで購入したトレーディングカードをパソコンや携帯電話を通じてネットに登録して遊ぶシステムである。これまで主なユーザーは中学生だったが、今回のプロジェクトでは、さらに小学校高学年までをユーザーとして取り込むことがもくろまれている。登壇したバンダイの垰義孝氏は、サービスの開始を今夏と表明すると共に「小学生をターゲットにした子ども向けオンラインカードはチャレンジだと思う」と明言。アニメを制作する東映アニメーションの清水慎治氏も「小学校の高学年から中学生がターゲット」であると語った。 つまり、今回のプロジェクトでグリー、テレビ東京、東映アニメーション、バンダイの4社が目指すのは、ネットを利用したカードバトルを、従来よりも低い年齢層に浸透させていくこと。昨年7月の『探検ドリランド』のテレビアニメ放送時間からも明らかなように、従来のゲームのユーザー層の年齢は高かった。ソーシャルゲームに関するデータはさまざまあるが、『2012CESAゲーム白書』によれば、ソーシャルゲームの利用率が最も高いのは10代後半(15~19歳)女性(34.2%)、次いで10代後半の男性(29%)となっており、さらに20代前半(20~24歳)の男女(共に27.9%)、30代後半(35~39歳)の男性(27.7%)と続く。ソーシャルゲームは、10代後半~30代が主なユーザーとなっているわけだ。また、この白書によれば、調査対象者中のソーシャルゲームへの参加者の割合は13.5%となっている。つまり、ソーシャルゲームの普及は、まだまだ端緒についたばかりで、今後も開拓する余地が多く残されていると見ることができる。 その中で、今回の発表から見えてくるのは、将来を見越してユーザーを育てようとする意図が感じられること。年齢ごとに内容を変えながら、ずっとユーザーでいてもらうことに最も成功しているのはマンガ業界だ。「週刊少年ジャンプ」を卒業したら「ヤングジャンプ」に、その後は……といった具合に各年齢層に沿ったコンテンツが揃っている。いまや、日本では老境に入っても当たり前のようにマンガを読む人がいるわけだが、そうなり得た理由は、子どもの時にマンガを読む習慣を植え付けたからにほかならない。ゲームの場合でも、大人までもが当たり前のようにゲームを楽しんでいる理由は、子どもの頃にファミコンなどで遊び、ゲームの楽しさを覚え、習慣となったゆえである。 昨年は、コンプガチャ問題などに揺れたソーシャルゲームだが、徐々に問題は解決されていき、誰もが気軽に楽しめる新たなゲームのスタイルとして普及する過程に入っている。そうした中で、ソーシャルゲームを一時のブームで終わらせないために、さまざまな企業の努力が始まっているのである。 (取材・文=昼間たかし)
イイ話をシェアする情弱が急増中 SNSで感動話を創作して「いいね!」を稼ぐ輩たち
最近、昔ネットで見たことがあるイイ話、もしくはその改変された話がFacebookのタイムラインに流れてくるようになった。シェアしている人は実際に感動し、その情報を発信したいという善意に基づいた行動なのだろうが、そのシェアは多くの人に眉唾でスルーされており、情弱判定を喰らっているということは覚えておきたいところだ。 この手の投稿では、飛行機やバスなどの公共交通機関でマイノリティを差別する人が現れたときに、CAや運転手がその人を懲らしめるという勧善懲悪が有名。一旦、マイノリティを落とすようなことを言いつつ、それが実際には差別する側に向けられている言葉としてカタルシスを得るのだ。その他、東日本大震災に関連するものやビジネスの教訓なども見かけるが、このほとんどは創作だ。本当によくできている話が多く、改変に当たり、さらにブラッシュアップされていることもある。 ネタ話として読むならもちろん問題はないが、情弱はリアルに起きていることとして捉えてしまうのだ。シェアの際に「私も見習いたいです」「世の中捨てたもんじゃない」といったコメントが書かれている場合が多いが、実話だと勘違いしているなら痛いだけ。さらに、それを指摘すれば「創作でもいい話なんだからいいんだ」と自己防衛を張る。そのため、ほとんどの人はスルーするだけ。「いいね!」がついていても、それは機械的に片っ端から押す人がいるだけで、共感を得ているわけではない。 大本の投稿者は、「いいね!」やシェア数を集められてホクホクだ。単に自己顕示欲を満たしたいというだけなら被害はないが、投稿者への「いいね!」やフォローへ誘導しているケースも多い。それによって、多人数への影響力を強めようとしているのだ。実際、コピペを疑うことなく、感動して人に押しつける人たちの集合体がフォローしているなら、確かに影響力は大きいといえる。ネットの中での立場を強くするためには効率のいい手法だし、たくましいとも思う。しかし、皆さんには、そんな道具になってほしくない。ネットの情報はきちんと判断し、収集する必要がある。投稿を拡散する際には、その情報が自分を判断する基準とされるということを肝に銘じたいところだ。 (文=柳谷智宣)Facebookより
東京ビッグサイトが『黒子のバスケ』同人誌即売会を容認へ
昨年12月、コミックマーケットが史上初のジャンル丸ごと中止の決断を余儀なくされた『黒子のバスケ』脅迫事件。今年に入っても東京ビッグサイトの対応は変わらず、『黒子のバスケ』を扱うオンリー即売会の中止、即売会内での関連サークル出展の見合わせが相次いできた。 ところが、4月になり東京ビッグサイトは「漫画『黒子のバスケ』にかかる一連の脅迫事案への対応について」(http://www.bigsight.jp/info130403.html)と題する文書を発表。5月以降のイベントについては「通常の対応」を行うとした。年度が変わった途端、大きく方針が転換された理由は何か? 今年に入り、新たに脅迫状が送付される事態が見られなくなる中で、東京ビッグサイトの方針は混乱していた。3月17日に開催された同人誌即売会「HARU COMIC CITY18」では、主催する赤ブーブー通信社に対して「事態に収束の兆しが見受けられず、依然としてリスクを伴う」として、『黒子のバスケ』関連サークルの出展見合わせを要求し、受諾させていた。 ところが、翌週の3月21~24日に開催された「東京国際アニメフェア」では、会場内に堂々と『黒子のバスケ』のポスターが掲示されていたのである。そのため、一部の関係者からは「東京都主催ならいいのか?」と疑念の声も挙がっていたのである。 消息筋によれば「イベント開催に脅迫状がつきものというのは東京ビッグサイトも理解しており、『黒子のバスケ』を再開するタイミングを探っていた」と話す。『黒子のバスケ』が前例となって、脅迫状が原因で催事が中止になるのは、東京ビッグサイトとしても避けたいところ。ゆえに、年度の替わり目を契機にしたのではないかと見られている。 ここで気になるのは、8月に開催が予定されている「コミックマーケット」が、どのような方針を取るかだ。さまざまな情報から推測すると、「コミックマーケット」でも『黒子のバスケ』の再開は、ほぼ確実と見られている。一部の報道では、再開しても「入場導線の個別化」や「手荷物検査」「警備員の増員」と、「コミックマーケット」の警戒レベルは極めて高くなるのではないかという憶測も流れている。だが、信頼できる情報筋は、そうした憶測に否定的だ。 「コミックマーケットがそこまで警戒レベルを高めるのは非現実的。(以前も、脅迫が原因で行われたことのある)“手荷物検査”くらい」 これまでの騒動の過程でも「脅迫犯に目撃される可能性があるから、会場で『黒子のバスケ』に関するものを見せるな」といった、勝手に参加者の間で警戒レベルが上昇していく動きもあった。まずは、主催者の発表を冷静に判断するのが、参加者の義務。勝手に警戒レベルを増幅させる動きに荷担していないか、我々メディアの側も注意しなくてはならない。 (取材・文=昼間たかし)『黒子のバスケ 21』(集英社)
三陸の海が育んだ新しい生命『ダンゴウオ―海の底から見た震災と再生―』
津波が洗い流した車や家は、見るも無残な形で海の底へと引きずり込まれた。その残骸は今も海の底に残り、静かに波に揺られている。水中写真家の鍵井靖章による『ダンゴウオ―海の底から見た震災と再生―』(新潮社)は、三陸の海の底でダンゴウオというかわいらしい魚に出会ったことをきっかけに、海底が徐々に復興していく様子を切り取った写真集だ。 震災後、わずか3週間で取材のために宮古の海に潜った鍵井。リアス式海岸に育まれた美しい海だったそこは、数メートル先も見渡すことができないほどに濁っていた。地上と同じようにガレキが散乱し、ゆったりと泳ぎまわる魚たちや、潮の流れにゆらめく海藻の姿などは皆無。そのままの形で流された家、転覆したままの漁船、海の中でも、地上と同じように目を背けたくなるような光景が広がっていた。しかし、この絶望的なダイビングの中で、鍵井は親指の爪ほどしかない大きさのダンゴウオに出会う。ぷっくりと丸い形をしたこの魚は、ダイバーから「北の海のアイドル」として人気も高い。ダンゴウオと奇跡的に出会えたことが、鍵井にとって写真集をつくる大きな原動力となった。 鍵井は2年にわたり、定期的に三陸の海に潜った。当初はガレキまみれの海底は濁った色彩のない世界であり、ウニやウミウシなどには出会うことができても、魚に出会うことができなかった。しかし、時が経つにつれ、水は澄みわたるようになり、海藻が生い茂り、ハゼ、カジカ、アイナメなどの魚たちが姿を表わす。少しずつ、海は元の姿を取り戻していったのだ。 「津波にもまれた海で、新しい命の姿を見たときに、『生命を撮影したい』と思うようになりました(略)被災地で生まれる新しい生命から、東北の海の力強さ、底力を感じずにはいられない」 震災から1年。津波にさらわれた海でかわいらしいダンゴウオやリュウグウハゼたちが卵を産み、稚魚を孵化させていく様子は、まさに自然の力強さを実感させるだろう。大津波でも流すことのできなかった生命は、また新しい季節に新しい生命を生み出していく。 本書の中でも特に印象的なのが、車の残骸の写真だ。ワンボックスカーと思われる車の中にはオキアミが集っていた。そのオキアミを求めてシートベルトにはウニ、ワイパーレバーにはヤドカリ、タイヤはカニの家になっている。海の底には不似合いなガレキも、自然はその一部として受け入れて、生き物たちはそこでそれぞれのドラマを紡いでいく。 震災から2年がたち、地上のガレキは撤去され、生活を取り戻しつつある人々も多い。メディアには「復興」という言葉が飛び交っている。しかし、僕が以前取材した福島県に住む被災者は「復興という言葉はピンとこない」と語っていた。ガレキが取り除かれたら復興なのか、建物が元通りになったら復興なのか、それとも避難者がゼロになり仮設住宅が取り壊されれば復興なのか――。メディアが喧伝する「復興」は、時に当事者にとって、まったく実感を得られない空疎な言葉として響いてしまう。 大地震や津波は自然の力によって引き起こされた。だからこそ、その傷跡を回復するのもまた、自然の力なのではないだろうか。ゆっくりと、静かに変化していく海底の景色を眺めていると、「復興」という言葉が少し実感できるような気がする。 (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●かぎい・やすあき 1971年、兵庫県生まれ。オーストラリア、伊豆、モルディブでダイビングガイドを行う傍ら、水中撮影に励む。1998年、モルディブより帰国後、フリーランスとして独立。水中のあらゆる事象を精力的に撮影し、プランクトンからクジラまで、独特の世界観で水中の世界を写し取る。1998年「ミナミセミクジラの海」で第15回アニマ賞受賞(平凡社)、2003年日本写真協会新人賞受賞。『ダンゴウオ―海の底から見た震災と再生―』
(新潮社)
「ゆくゆくはピンのタレントとして……!?」愛され続けて40年・キティちゃんはどこへゆく?
1974年の誕生以来、40年近くの長きにわたって世界中で愛され続けている子ネコのマスコットキャラ「ハローキティ」。世代を超えて女子たちの「かわいい」の声を一身に集め続けているキティちゃんが、最近なんだかすごいことになっている。 90年代末から、「ご当地キティ」と称して日本各地の名物を模した携帯ストラップや、浜崎あゆみ、AKB48ら人気タレントやスポーツチーム、「モンスターハンター」「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」といったゲーム、アニメキャラ。「Forever21」「サマンサタバサ」「リーボック」などの各種ブランドなどと、業種・タイトルを問わない多彩なコラボレーションを展開。毎回、我々を驚かせ続けているキティちゃんだが、近年はスーパーヒーロー・イチゴマンに変身してみたり、自分と同じフォルムのロボット・KITTYROBOTを作ってみたり、バキバキのクラブサウンドをプレイしまくるDJになってみたりと、ますますもってアグレッシブ。 そこで今回、株式会社サンリオの広報・東松一男さんに、キティちゃんに今何が起きているのか? キティちゃんは今後どこを目指すのかを聞いてみた! ■時代を、そして男女の壁を超えるハローキティサンリオ本社に潜入!
まず誰もが気になるのが、なぜキティちゃんはサンリオの大黒柱となるほどの人気コンテンツに成長したのかという点であろう。しかし、東松さんは「それはよく分からない」とキャラクターそのものの人気の秘密についての言及は避けつつ、「ハローキティ」の今までの歩みを語ってくれた。 「“ハローキティ”のみならず、弊社のキャラクターはほとんどが商品にデザインするために生まれます。一般的にキャラクターはアニメや漫画、絵本といった作品から生まれて、それを二次利用する形で商品にデザインすることが多かったので、原作のイメージを変えるのが難しく、そこが当社のキャラクターとの大きな違いです。そんな中でハローキティの開発は74年に始まり、それ以降も時代の価値観に合わせてデザインを変化させつつ、仲間やストーリー、設定を増やしていきました」 さらに、1980年より三代目デザイナーに就任した山口裕子氏によるサイン会の開催や、季節や年ごとにグッズの柄を変えるなどの工夫を凝らした商品展開によって、ハローキティは常にサンリオキャラの中で人気上位を維持し続けていた。 そんなハローキティの歴史の中で、大きなターニングポイントとなったのが、96年から97年のこと。この時期より、それまで主に子ども向けキャラクターとして販売されていたハローキティグッズが、女子中高生やOLを中心に人気を博し始めたそうだ。当時、一部メディアにて「華原朋美が雑誌でキティ好きを公言したところ、女子中高生の間でブームが起こった」という報道が行われたそうだが……。第1号商品 (C) 1976 SANRIO CO.,LTD.
「それも一つの要因だと思いますが、そんなに単純じゃないと思います。80年代以降、高校生くらいの方から『ハローキティがずっと好きだったけれども、どうしても子ども向けのデザインだから、まわりから子どもっぽいと言われる』『自分たちの世代でも持てるものを作ってください』というお手紙をいただくことがあって、すでにいくつか大人向けのグッズも展開していました。しかし、割合としては子ども向けのグッズが大多数でした。それが96~97年ころに弊社に限らず、大人がキャラクター商品を使うというのは子どもっぽいことではない、と考える人が増えてきて、大人向けのキャラクター商品が受け入れられるようになってきました。全人口の年齢の幅を考えれば子どもよりも大人のほうがはるかに割合が多いので、そうなってくるとキティの支持層も圧倒的に大人の割合が多くなってきたわけです」 男子向けグッズに目を向けると、バンダイが高年齢層向けの「ガンプラ」ブランド「MG」シリーズを95年に展開。またアニメファンをターゲットとした深夜アニメの放送が本格化し始めるのも96年頃。偶然かもしれないが、確かにこの頃からそれまで「子ども向け」と捉えられていた娯楽やキャラクターが「大人向け」に展開する動きが活発化してきたようにもみえる。さらに、日本以上にキャラクターグッズを大人が持つということに抵抗のある社会が多い海外でも、2000年以降、日本と同じく大人向けキャラクターグッズが売れるようになる、という価値観の転換が起こったそうだ。 東松さんは、この10年の「ハローキティ」、そしてサンリオの躍進の裏には、社会のキャラクターに対する価値観の転換が大きいと語る。その結果、冒頭にも触れた驚くべきコラボレーションの数々も実現した。 「コラボレーションもキャラクターだけではなくブランドやご当地のものなど多岐にわたることで、キティのファン層が広がっていきました。基本的にサンリオキャラクターは『人と仲良くしていくこと』がコンセプトなので、ほかのキャラクターとのコラボレーションは、コンセプトに合っていると思います」 「人と仲良くしていくこと」をモットーに、まさに「仕事を選ばず」コラボレーションしまくるキティちゃん。彼女にとってのNGは「殺傷能力のある刃物、銃(合法な国であっても)」「タバコ、ワイン以外のお酒」「アダルトグッズ」等だそうだ。 そんな仕事の鬼ことキティちゃん……もといキティさんの今後の展望の一つに、男性向けグッズの定着があるという。 「最初に男性ファッション誌とコラボして誌上限定販売したところ、すごく人気が出まして、原宿のショップで販売するようになったり、吉田カバンさんとコラボしてメンズバッグを出すようになりました。今後は、性を超えて愛されるキャラクターに育ってくれるとうれしいですね」 世代を超えて、今度は性別を超えようとしている「ハローキティ」。彼女の活躍は、まだまだ終わらない。 ■サンリオの考える「キャラクター」と「ソーシャル」の関係 現在サンリオは、国内向けにはキャラクターを使った商品を自社開発して「サンリオショップ」など自社で運営する流通網を使った商品展開と、他社にキャラクターを提供した際のライセンス料を受け取るというライセンスビジネスの両輪をベースに展開しているが、海外に対してはもっぱらライセンスビジネスが主流だという。 「アジアは日本と似ている部分が多いですが、欧米は流通構造や条件も全く異なるため、なかなか自社商品専門ショップを広く展開することが困難でした。そこでライセンス中心のビジネスに転換しました」 例えばH&M、Forever21、ZARAといったすでに大きなマーケットを持っているショップブランドと契約し、各ブランドでサンリオキャラを使った商品を開発。そしてそのブランドショップでのみ販売することで、キャラクター商品のクオリティを維持・管理できるというわけである。 サンリオは自社のキャラクターを海外のブランドにライセンスすることで、グローバルな展開が可能となり、ブランド側もサンリオの持つ強力なキャラクターでオリジナル商品を展開することでプレミア感を演出できる。このビジネスモデルで、サンリオキャラクターは世界中に拡散。現在、サンリオキャラクターは109カ国と地域で公式に展開されているという。最新のキティ「不思議の国のハローキティ」
(C) 1976, 2013 SANRIO CO.,LTD.
ほかにも日本国内でサンリオが展開するテーマパークというと、「サンリオピューロランド」(東京都)、「ハーモニーランド」(大分県)の2カ所が有名だが、昨年はマレーシアの「プテリハーバーファミリーテーマパーク」内に「サンリオ・ハローキティ・タウン」を現地企業がライセンス契約により開園。さらに、台湾の航空会社・エバー航空は2005年より日本~台北間の航路に、機体ペイントのみならず各アメニティや機内食など何もかもがキティ一色のハローキティジェットを就航(中断していた時期あり。現在では日本以外の路線にも)。昨年6月にはアラブ首長国連邦の首都・ドバイに、「ハローキティビューティスパ」という高級スパもオープンするなど、サンリオ──そしてハローキティは国境をも超えて活躍している。DJハローキティ (C) 1976, 2011 SANRIO CO.,LTD.
「昔はキャラクター=子どもというイメージがありました。しかし、オリンピックでもマスコットキャラクターが毎回作られるように、キャラクターは親しみやすさをアピールするために作られます。ただキャラクターグッズの歴史が、アニメや漫画など子どものものから始まったために、たまたま子ども向けというイメージが定着していただけだと思います」 キャラクターの持つ意味合いをそうとらえるサンリオは、起業当初より「ソーシャルコミュニケーションビジネス」を掲げている。 「弊社の事業について、我々は “ソーシャルコミュニケーションビジネス”と呼んでいますが、そこにはキャラクタービジネスではなく、人と人のつながりを円滑にするようなことを事業化していこうという思いがこもっています。その一つの表現方法として、キャラクターとは言葉を使うことなく人と人をつなげるメッセンジャーのようなものと認識しています。 例えばキティちゃんのプレゼントをもらった時、受け取った側はもしかしたらそんなにキティちゃんが好きじゃないかもしれない。でも、少なくとも贈る側のなんらかの好意的な感情をキャラクターデザインから感じることはできると思います。そういうふうに言葉でうまく表現できないことを、キャラクターが代弁してくれるという部分があるんじゃないでしょうか」 ■仕事を選ばないキティさんの今後の展望KITTYROBOT (C) 2013 SANRIO CO.,LTD.
Original concept by Sanrio Wave HK. All rights reserved.
ワールドワイドに、そして世代を超えて活躍する我らがキティちゃんだが、冒頭で触れたように「KITTYROBOT」「イチゴマン」「DJハローキティ」など、さまざまなパフォーマンスに挑戦。毎回、我々を驚かせ、そしてワクワクさせてくれる。 「これからはキティちゃんを一人のエンターテイナーとして育てていこうと考えています。これまでもハーモニーランド、ピューロランドや全国でのショーはやってきたんですが、そうではなく、ピンのタレントとして売り出していきたいですね」 このように語る東松さんが一番楽しそう。キティちゃんの活躍を楽しんでいるのは、誰よりもサンリオのスタッフのようだ。 40年にも及ぶ活動を通じて、名実ともにサンリオを支える大きな大黒柱として君臨するまでに成長したハローキティ。世界中のあらゆる存在とコラボレーションすべく、今日も彼女はみんなのそばで愛嬌をふりまいている。 (取材・文=有田シュン) ●サンリオ <http://www.sanrio.co.jp/>イチゴマン (C) 1976, 2011, 2012 SANRIO CO.,LTD.
大和田伸也が65歳初監督 故郷・福井を舞台にしたヒューマンドラマ『恐竜を掘ろう』
毎週新作映画を紹介する当コーナーでは今回、劇場公開こそ小規模だが、予算などさまざまな制約の中、アイデアと工夫によってユニークな作品に仕上がった2本を取り上げたい(いずれも3月30日公開)。 1本目の『恐竜を掘ろう』は、松方弘樹が珍しく穏やかで少しさびしげな役で主演し、内山理名、鈴木砂羽、ガッツ石松らが共演したヒューマンドラマ。福井市で美術店を営む草介(松方)は、経済的に成功し、仲間と夜な夜な飲み歩く日々を過ごしながらも、空虚な思いを抱えていた。ある日、いつもショーウィンドウ越しに店をのぞいていた少女(小野花梨)から手紙を受け取った草介は、気になって少女の家を訪問。だが、数日前から行く先を告げず家を出ていた少女はその頃、恐竜の卵の化石を発掘することが夢だと語る青年(入江甚儀)に出会っていた。 福井県敦賀市出身の俳優・大和田伸也が故郷の福井を舞台に撮り上げた初監督作品。松方弘樹がにわか探偵になって少ない手がかりで少女の家を探し当てたり、スナックで働く顔見知りの若い女性(内山理名)の車にこっそり乗り込んで自宅を突き止めたりと、見方によってはかなり危ない行動をとるが、テレビのバラエティ番組でおなじみの「オジサンのかわいらしさ」でなんとなく納得させられてしまう。ユーモラスなタッチとヒューマンなストーリー展開が十分になじんでいないところもあるものの、ある種のぎこちなさ、初々しさも味わいではある。山奥に突如出現する巨大な「ハコモノ」の恐竜博物館や、夜ごとスナックに通う男たちがろくに働いていない(ように見える)描写に、原発立地の事情がそれとなく伝わってくるが、現実を見据えた上で内なる希望を「掘り起こそう」という監督からのポジティブなメッセージととらえたい。 もう1本の『UFO 侵略』は、英国発の低予算SFアクションながら、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが重要な役どころで格闘アクションも披露した注目作。ある朝マイケルは、出会ったばかりの恋人キャリーや同居人たちと目覚めると、町一帯で停電が発生し、携帯電話もつながらない。住民らの騒然とした様子に気づいて外に出た彼らは、上空を覆う巨大なUFOを目撃。マイケルたちは車を走らせ、宇宙人の襲来を予見し長年準備してきたせいで変人扱いされていた元特殊部隊兵士の叔父ジョージ(バン=ダム)に助けを求める。 マイケル役にピアース・ブロスナンの息子ショーン・ブロスナン、キャリー役にバン=ダムの娘ビアンカ・ブリーと、二世俳優の共演でも注目。特にビアンカ・ブリーは、端正な顔立ちとグラマラスな肢体に似合わずハードなアクションで「父娘対決」も熱演しており、今後の活躍に期待したいところ。おそらくは予算の都合上で、バン=ダムの出演シーンの多くを別撮りして編集でつないでいるのがバレバレだが、むしろ開き直ったかのような構成が潔い。宇宙船などの視覚効果も「今どきこんな……」とあきれるほどチープだが、そうしたツッコミどころも含め広い心で楽しめるB級SFのファンにおすすめだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『恐竜を掘ろう』作品情報 <http://eiga.com/movie/77803/> 『UFO 侵略』作品情報 <http://eiga.com/movie/78233/>(C)『恐竜を掘ろう』製作委員会
大和田伸也が65歳初監督 故郷・福井を舞台にしたヒューマンドラマ『恐竜を掘ろう』
毎週新作映画を紹介する当コーナーでは今回、劇場公開こそ小規模だが、予算などさまざまな制約の中、アイデアと工夫によってユニークな作品に仕上がった2本を取り上げたい(いずれも3月30日公開)。 1本目の『恐竜を掘ろう』は、松方弘樹が珍しく穏やかで少しさびしげな役で主演し、内山理名、鈴木砂羽、ガッツ石松らが共演したヒューマンドラマ。福井市で美術店を営む草介(松方)は、経済的に成功し、仲間と夜な夜な飲み歩く日々を過ごしながらも、空虚な思いを抱えていた。ある日、いつもショーウィンドウ越しに店をのぞいていた少女(小野花梨)から手紙を受け取った草介は、気になって少女の家を訪問。だが、数日前から行く先を告げず家を出ていた少女はその頃、恐竜の卵の化石を発掘することが夢だと語る青年(入江甚儀)に出会っていた。 福井県敦賀市出身の俳優・大和田伸也が故郷の福井を舞台に撮り上げた初監督作品。松方弘樹がにわか探偵になって少ない手がかりで少女の家を探し当てたり、スナックで働く顔見知りの若い女性(内山理名)の車にこっそり乗り込んで自宅を突き止めたりと、見方によってはかなり危ない行動をとるが、テレビのバラエティ番組でおなじみの「オジサンのかわいらしさ」でなんとなく納得させられてしまう。ユーモラスなタッチとヒューマンなストーリー展開が十分になじんでいないところもあるものの、ある種のぎこちなさ、初々しさも味わいではある。山奥に突如出現する巨大な「ハコモノ」の恐竜博物館や、夜ごとスナックに通う男たちがろくに働いていない(ように見える)描写に、原発立地の事情がそれとなく伝わってくるが、現実を見据えた上で内なる希望を「掘り起こそう」という監督からのポジティブなメッセージととらえたい。 もう1本の『UFO 侵略』は、英国発の低予算SFアクションながら、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが重要な役どころで格闘アクションも披露した注目作。ある朝マイケルは、出会ったばかりの恋人キャリーや同居人たちと目覚めると、町一帯で停電が発生し、携帯電話もつながらない。住民らの騒然とした様子に気づいて外に出た彼らは、上空を覆う巨大なUFOを目撃。マイケルたちは車を走らせ、宇宙人の襲来を予見し長年準備してきたせいで変人扱いされていた元特殊部隊兵士の叔父ジョージ(バン=ダム)に助けを求める。 マイケル役にピアース・ブロスナンの息子ショーン・ブロスナン、キャリー役にバン=ダムの娘ビアンカ・ブリーと、二世俳優の共演でも注目。特にビアンカ・ブリーは、端正な顔立ちとグラマラスな肢体に似合わずハードなアクションで「父娘対決」も熱演しており、今後の活躍に期待したいところ。おそらくは予算の都合上で、バン=ダムの出演シーンの多くを別撮りして編集でつないでいるのがバレバレだが、むしろ開き直ったかのような構成が潔い。宇宙船などの視覚効果も「今どきこんな……」とあきれるほどチープだが、そうしたツッコミどころも含め広い心で楽しめるB級SFのファンにおすすめだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『恐竜を掘ろう』作品情報 <http://eiga.com/movie/77803/> 『UFO 侵略』作品情報 <http://eiga.com/movie/78233/>(C)『恐竜を掘ろう』製作委員会













