読モと竿姉妹がご対~面! 童貞の夢を打ち砕く、「men’s egg」セキララ性生活

menzsi0412.jpg
 新年度のスタート! 今まではクソムシのように扱われていたキミも、イメージチェンジして一発逆転を狙えるチャンスですよ。ボクと一緒にメンズファッション誌を読んで、新学期・進学デビューをしましょう!  ……まあ、今回もファッション的な記事にはほとんど触れてませんが。 【3月のメンズファッション誌・激ヤバ企画ランキング】 1位「神マンアーカイブス・竿姉妹ご対面SP」(men's egg 」5月号) 2位「SとMで悦ばせ方はこんなに違う!! ENJOY HOW TO SEX」(「キラリ!」4月号) 3位ストリート・スナップのキャッチフレーズ対決(「MEN'S KNUCKLE」5月号)(「Men's SPIDER」5月号) ■ストスナ・キャッチフレーズに新星登場!?  「ガイアが俺にもっと輝けと囁いている」などに代表されるカッコよすぎるキャッチフレーズでおなじみの「MEN'S KNUCKLE」のストリート・スナップ。本連載でもちょいちょい紹介していますが、最近ちょっとパワー不足かな……と思っていたところ、メンナクを超えるキレキレなキャッチフレーズ満載の雑誌が現れたのです。  その雑誌とは『ゴルゴ13』でおなじみの出版社・リイド社から発行されている「Men's SPIDER」。メンナクがお兄系のファッション誌なのに対し、メンスパはVホス系。要するに、ビジュアル系バンドマンやホストのようなファッションを多数掲載しているファッション誌なのですが、実はこのメンスパ、元々メンナクのプロデューサーでもあった鮎川優氏が新たに立ち上げた雑誌なんですよね。ある意味、同じDNAを持つ兄弟誌ともいえるんじゃないでしょうか。  そんな両誌のストリート・スナップに添えられたキャッチフレーズを比較してみましょう。  まずは「MEN'S KNUCKLE」から。 「お前ら覚えておけ、オレがムックンだと!」(ムックン……誰だよ!?) 「誰がなんと言おうと高校の体育教師に俺はなる!」(うん、なったほうがいいよ、手堅そうだし。ファッションなんかにうつつを抜かしてないで勉強すべし!) 「資金を貯めて必ず豪華な結婚式をしてみせるぜ…!」(真面目?) 「福島から片道5時間、渋谷に「粋」を届ける男」(片道5時間ってことは高速バスですね。ストリート・スナップのために通ってるのかな? 大変……)  なんちゅうか……全盛期のイケイケだったノリから、比べるとちょっと野暮ったくなってる感じがします。「体育教師」とか「豪華な結婚式」「片道5時間」と、どーにもこーにも田舎ヤンキーのニオイが漏れ出しちゃってるんですよね。  続いて「Men's SPIDER」。 「日本の経済はオレノミクスでまわっている」(意味はまったく分からないが、とにかくいい響き!) 「聞こえないか、ガイアの激しい鼓動が!!」(ちょっとメンナクのパクリっぽいですが) 「ついにオレはファッションサイボーグと化す」(ファッションモンスターならぬファッションサイボーグ!) 「常にライバルはジョニーデップと決めている」(地獄のミサワ的……) 「いつか出会う君主のために己を鍛え続ける」(彼の職業は「土木」とのこと。親方がアナタの君主なのでは?)  やはりメンスパの方がフレーズにキレがある! 今、ノリに乗っている感じがしますね。  さらに特徴的なのが、メンスパのストリート・スナップには時々ホントーの子どもが混ざっているということ(もちろんホストっぽい格好をしている)。そんな子どもたちにつけられたキャッチフレーズがこちら。 mennnaku0412.jpg 「10年後、オレはメンスパの頂点に立つぜ」(職業「保育園児」) 「キッズだって胸元のオシャレは欠かさないぜ」(職業「赤ちゃん」! キッズというか、ベイビーだよ) 「特技は三輪車。私と恋のツーリング行こっ!」(職業「魔の2歳児」)  たぶん、Vホス系なヤンパパ、ヤンママがムリヤリそういう格好させて連れてきてるだけなんでしょうけど、親子二代で参加してしまう辺りからもメンスパのイキオイを感じます。  これは元祖・すごいキャッチフレーズのメンナクも負けていられないでしょう。両誌のキャッチフレーズ対決。今後も注目していきますよ! ■スパンキングは、ほどほどに!  中学~高校生くらいの男子をターゲットにしていると思われる、サワヤカ系ファッション誌「キラリ!」。今号も「はじめてのピアスでおしゃれデビュー!!」「新学期はおもしろ雑貨で目立ち度UP」など、初々しすぎてグッとくる特集がめじろ押し。  中でも思わず読みふけってしまったのが「春だ!!ヘアサロンを100倍楽しむ!!」。まだヘアサロンに行ったことがない男の子たちのために、ヘアサロンは予約をしたほうがいいのか、うまくイメージを伝えるにはどうしたらいいのか、切ってる最中トイレに行きたくなったら……など、気になる疑問を解説してくれています。  かくいうボクも、ヘアサロンなんちゅうものには行ったことがないので「ほーほー、こういうシステムになっているのか。こりゃ一丁ボクも行ってみるかな」と興味深く読ませてもらったんですが「料金の仕組みを理解しよう!」という項目でヘアサロンの値段の一例として紹介されていたのが、カット+ダブルカラーで2万4255円! えーっ、ヘアサロンってそんなにすんの!? ……ボクはまだ当分、高円寺のジプシーウェイ(1000円カット)でいいっすわ。  ま、そんなサワヤカ企画の中に、いきなりエロ特集をぶっ込んでくるのが「キラリ!」のお約束なんですけど、今回ぶっ込まれたエロ特集は「SとMで悦ばせ方はこんなに違う!! ENJOY HOW TO SEX」。要はS女、M女それぞれに対するSEXマニュアルです。 kirari0412.jpg  しかしこのマニュアル、紹介されている内容が極端過ぎます。たとえばM女とSEXする際の豆知識として挙げられているのが「スパンキングはほどほどに!」……スパンキングってそんなにフツーにやるプレイですかね? さらにコードレスローターを使用する「トビッコプレイ」の項では、「人ごみの中で行うのが主流」との解説が。  そしてS女対策では、イカせるための「最強体位」として紹介されているのが、正常位→側位→バック→正常位→座位→騎乗位→正常位……というローテーション。こんなにコロコロ体位を変えなきゃいけないなんて……め、めんどくせぇ! 「はじめてのピアスでおしゃれデビュー!!」しようとしているような読者たちには、ちょっとハイレベル過ぎる内容なのではないでしょうか?  しかし、これらのテクニックもお相手をする女の子がSかMどっちタイプだか分からなければ、活用しようがないってものですよね。この特集では、SかMかの見分け方もちゃんとフォローしてくれています。その極意が……。 「普段と逆だと思っておけば間違いなし」  Mっぽい、おとなしくて甘えん坊そうな子ほどSに。ツンツンしているSっぽい子ほど実はM、とのこと。うーん、漫画やアニメの見過ぎじゃないかい? ■まさかの竿姉妹&ヤッた男による対談企画  「キラリ!」が童貞男子に向けた感じの、どことなく机上の空論感の漂う、夢のあるエロ特集を組んでいるのに対し、容赦なくリアルなドエロ企画を繰り出しているのが我らが「men's egg」!  「女の子を喜ばせる“ちょい足し”SEXマニュアル」では、のっけからマンコ模型の写真を使って、クリトリスや膣口、Gスポットの位置を解説し、クンニ力アップのために冷奴を崩さないように舐めまくる(絹ごし豆腐がベスト!)というトレーニングを勧めています。うん、実用性は高いのかもしれないけど、夢はないですな。  さらに、SEXを盛り上げるちょい足しテクニックとして紹介されているのが「マンコが濡れにくい時は、水やツバなどの水分をチョイ足し」って……。童貞が読んだら、SEXに対する夢も希望も打ち砕かれちゃいそうな特集ですよ。 menegu0412.jpg  それに輪をかけてリアル&下世話なのが「神マンアーカイブス・竿姉妹ご対面SP」。メンエグの読モとヤッたことがあるという女子各2人(竿姉妹)と、ヤッた当人の読モが「性生活丸裸トーク」を繰り広げる信じられない企画。同じ男(読モ)にヤラれた女たちが「電話中に手マンされた」「私はいつも縛られていた」「手マンが鬼のように速かった」「泣くまでフェラさせられた」……と、男の性癖をバラしまくっております。  本連載でも毎回注目している変態読モ・たあはむに至っては「私が乳首を責めた時にはキャンキャン言ってたよ」「私をイカせるために頑張るんだけど、空回りしてメチャ遅い!」「あんな濃い顔してチンコ小さいし、その上に遅漏」などと言われたい放題。昔ヤッた女たちが集まって、自分のSEX話でこんなふうに盛り上がっていたとしたら……死にたいです!  竿姉妹のほうはさすがにマスクをして顔を隠してはいるものの、よくも呼ばれてホイホイ出てきたなと……。そして、読モはもちろん顔丸出し。この特集、誰になんのメリットがあってやってるんでしょうか。……まあ読んでる方は面白いけど。  さらに女側からも、読モを食い荒らしている最強のヤリマンが登場し「プロ級のテクニック」「コイツのピストンは痛かった」「まさかの赤ちゃんプレイでドン引き」などと、今までにヤッた読モのSEXをぶった切りまくり。「未遂に終わったヤツら」で紹介されている「トイレで襲おうとしてきた、バカ企画で一緒になることが多いTくん」って、おそらくたあはむのことでしょ?  ちなみにこのヤリマンお姉さん、一回ヤッた人には興味ナシなので、毎回ヤリ捨てとのこと。うーん、メンエグ界隈は男も女もスゴイです。 (文=北村ヂン)

アキバにセーラー服の美女2人が降臨! アニメ『フォトカノ』広報部創部イベントレポート

1304_photokano1.jpg
声優の鳥部ちゃん(写真右)とM・A・Oちゃん(左)。
 4月10日、放送中のテレビアニメ『フォトカノ』(TBSほか)の広報部創部イベントが、秋葉原の「AKIHABARAゲーマーズ本店」店頭で開催され、女優・声優のM・A・O(市道真央)と鳥部万里子が、セーラー服姿でお目見えした。  当イベントは、『フォトカノ』の舞台となる光河学園の広報部創部イベントとして、彼女たちが、広報活動に臨む意気込みとアニメの見どころなどをアピール。詰めかけたファンは、彼女たちの初々しいスピーチを暖かく見守った。  『フォトカノ』は、エンターブレインから発売されているPlaystationPortable用ソフトを原作としている。同社から発売されたゲームとして、同様にアニメ化もされた『キミキス』『アマガミ』を彷彿とさせるタイトルだ。アニメでは、冴えない男子高校生がふとしたことから写真部に入部することとなり、学園の憧れの的となっている幼なじみや皮肉屋の後輩といった魅力ある女の子たちとの交流を描いている。  今作の広報部として登場した声優のM・A・Oこと市道真央は、女優やタレントとしても活動しており、2011年~12年に放送されていた『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイイエローのルカ・ミルフィ役や、バラエティ番組『サキよみジャンBANG!』(テレビ東京系)にも出演。かたや鳥部万里子は、上智大学のミスコンであるミスソフィア2012グランプリを受賞した才媛で、『石田とあさくら』(TOKYO MXなど)の木下奈々子役など、声優としての活動を始め、今注目の期待株といったところだろう。  そんな彼女たちが、「『フォトカノ』の見どころ」について聞かれると、 「いろんな個性のあるカワイイ女の子たちが、いろんなシチュエーションで写真を撮られていたりとか、キラキラしてカワイかったりするのが、見どころだと思います!」(M・A・O) 「女の子たちがくるくる表情を変えるので、『今がシャッターチャンスだ!』って、自分がカメラを撮っているような気持ちになりながら、アニメを観ていただけたら」(鳥部)
1304_photokano2.jpg
大勢のファンの前で少し緊張? 立派にスピーチをす
るお2人。
 と、満点のお答え。一方で、光河学園の制服としてセーラー服に袖を通したことに関しては「着るとフレッシュな気持ちになれるというか、魔法の洋服みたいな感じで着させていただいてます」(鳥部)と嬉しそう。M・A・Oは、「自分自身ドギマギした感じがありますが、『フォトカノ』の一部になれたかな」なんて、少し恥ずかしそうにしていた。  2人とも大役に緊張していたのか(それともセーラー服のせい?)、控えめなスピーチの音量に、途中、司会者が取材陣を気遣うといった一面もあったが、イベントは無事終了。大役を果たした2人は、安堵の表情を見せていた。アニメ『フォトカノ』と共に、今後広報部として活動を続ける彼女たちにも注目だ。 ■TVアニメ「フォトカノ」公式サイト http://www.tbs.co.jp/anime/photokano/ ■TVアニメ「フォトカノ」公式ツイッター https://twitter.com/anime_photokano ■M・A・O(市道真央)のブログ http://ameblo.jp/ichimichi-mao/ ■鳥部万里子のブログ http://mtoribejapan.wix.com/marikotoribe

100時間に及ぶ独白から浮かび上がる、“連続ピストル射殺事件犯”の素顔『永山則夫 封印された鑑定記録』

41L5MvmBl+L._SS500_.jpg
『永山則夫 封印された裁判記録』
(岩波書店)
 永山則夫という人物は、日本犯罪史にとって、語弊を恐れずに言うならば「特別な」人間だ。横須賀の米軍宿舎から盗み出した拳銃を使用し、1968~69年にかけて東京、京都、函館、名古屋で合計4人を殺害した、「連続ピストル射殺事件」を引き起こす。その事件の凶悪性もさることながら、事件当時まだ19際の少年だったこと、網走や青森の地で貧困にまみれたその生い立ち、そして、逮捕後に発表した小説群の成功……。ある意味で社会に対して多大な影響を残し、97年に彼の死刑は執行された。  『永山則夫 封印された鑑定記録』(堀川惠子著、岩波書店)は、2012年に発見された永山の精神鑑定中の独白テープをもとに、生い立ち、家族関係、事件に至るまでの思考を詳細に追いながら、あまりにも複雑な要因が絡まった彼の内面を丁寧に解きほぐした一冊だ。同じ内容は昨年ETV特集でも放送され、高い反響を獲得した。  74年にこの精神鑑定を行ったのは、精神科医の石川義博。ロンドン大学に留学経験を持つ犯罪精神医学のスペシャリストである彼は、通常1カ月程度の精神鑑定をじっくりと8カ月にわたって行い、その半生をテープに記録した。49本、100時間にも及ぶこのテープには、事件までの19年間が、永山自身の言葉で丁寧に語られている。  北海道・網走の地で、賭博狂の父親と、家計を支えるために行商に精を出す母親との間に生まれた永山。8人きょうだいの7番目の子どもであり、その家庭は極貧を極めた。両親は生まれたばかりの永山を顧みず、永山の記憶にも、その頃の母親の記憶はない。その代わりに、まだ幼い彼の面倒を見たのは、19歳年上の長女セツ。おむつを換え、食事を食べさせ、一緒になって遊んでやる。永山の記憶にあった、最も古い思い出も、セツとともに見た網走の烏帽子岩だった。 石川「セツ姉さんっていうのは、どんな感じなの?」 永山「やさしいっていうか、セツ姉さんにおんぶしてもらったこと覚えてる。あとね、網走湖かな、湖があって、その近くでね(略)そこにセツ姉さん、いたよ」  母親代わりとなって、深い愛情を注いでいた長女はしかし、永山が4歳の頃に忽然と姿を消す。身ごもった子どもを堕胎したのがきっかけで精神を病み、精神病院に入院することとなってしまった。永山は、唯一の頼れる存在を失い、その歯車は狂いだす。母親が、8人きょうだいのうち次女と四女、そして長男が産ませた孫娘だけを連れて青森に逃げたのは、セツの入院から半年後のことだった。そして、置き去りにされたきょうだいたちは、自らの力で氷点下30度にもなる網走の冬を過ごさなければならなかった。この記憶は「抑圧された記憶」として、永山の記憶から抹消されている。  翌春、福祉事務所の手によって母の暮らす青森に移り住むことができたが、極貧生活は変わらず、いじめによる不登校や兄からのリンチなど、苦しい環境は続く。  永山の独白と向き合うことで、著者である堀川が行き当たったのは「家族」というテーマだった。明らかに永山の成育過程においては、愛情となるものが欠落している。事件を引き起こす因子の一つとなった彼の病的な被害妄想は、家族からの愛情や承認といった当たり前のものが欠如したことと無関係ではない。  集団就職で上京した永山は、西村フルーツパーラーの店員、牛乳配達、荷揚げ人夫などの職を転々としながら、自殺念慮に苛まれる。石川医師が確認しただけでも、自殺未遂は18回。また、外国船に不法乗船し、日本脱出を企図するも、あっけなく船員に見つかり、横浜に追い返されてしまう。  事件の一年前、死ぬために永山は青函連絡船に乗った。 永山「もう一度、最後に網走、見たかったんだ。あのね、姉さんと一緒に海辺に行ったでしょう。俺、網走港に行きたかったんだ。セツ姉さんと、海っていうか、貝殻あって、もうそこしか憩うところがなかったんだな……。どこでもよかったんだ、きっと。どこか静かなところ……」    しかし、金が底をつき、網走にもたどり着けなかった永山は、青森の実家に戻る。「死ぬなんて言ってて、また帰ってきたじゃないか!」。母は、甲高い声で永山を罵った。東京に戻った永山はふとしたきっかけで米軍基地に忍び込み、後に犯行に使用するピストルを入手した。社会からも、日本からも、そして命からも逃げきれなかった永山は、結果的に4人を殺害した。  その精神構造を見ながら思い出すのは、例えば秋葉原事件を起こした加藤智大だ。加藤は食うや食わずの貧困ではなかった。しかし、徹底的に社会からの孤立を恐れ、しかしその承認は断ち切られ、秋葉原に向かってトラックを走らせた。 「社会的な死、孤立の恐怖は耐えがたく、それよりも肉体的な死の方がまだ救いがあると思えた」 「刑務所で地獄を見た後に孤立している世の中に放り出されるくらいなら死刑のほうがマシ」 (『解』加藤智大著、批評社)  「同じ青森」というのは、こじつけがすぎる。だが、常に社会からの孤立を恐れた加藤と、常に社会からの逃避を夢見た永山には、どこか共通する感情があったのかもしれない。  凶悪殺人事件が発生すると、「理解不能なモンスターである」と断罪する声と、それに反対して「モンスターではなく、人間だ」という2つの声が聞こえてくる。  「彼ら」が起こした事件は、「我々」に、まったくといっていいほど理解できない。しかし、絡まった糸も始めはまっすぐだったように、「彼ら」は初めから「我々」と異なっていたわけではない。生きていく過程で、「彼ら」のレールはだんだんと社会からそれていき、いつの間にか取り返しのつかない犯罪が引き起こされる。事件から45年を経た今でも、それは変わることはないだろう。本書が丹念に追った永山の長い独白から導き出されるのは、ゆっくりと、しかし確実にレールがそれていく過程だった。  死刑を執行された永山の遺骨は、オホーツクの烏帽子岩付近に散骨された。そこは、永山が長姉セツから、人生のうちでほとんど唯一愛情を与えられた場所だった。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])

「口なら5,000円……」“JK”摘発の余波で秋葉原路上のビラまきが全面禁止の可能性も

82fhc0bu.jpg
 秋葉原の街から、ビラまきが一斉に消えることになるやもしれない。  いまや、世界規模で知名度のある街となった秋葉原。国内はもとより、国外からも多くの人々が訪れる観光地となっている。そして、一時のブームではない永続的な観光地とすべく、活動する人々や団体も多くなっている。  だが、光あるところには影があるもの。観光地化に向けて大きな障害となっているのが、乱立するJK系店舗と、そのビラまきをする少女(いや、街娼か?)たちの姿である。  JR秋葉原駅から中央通りを横断し、一歩裏に入ったパソコンパーツなどを扱う店が軒を連ねる通りは、夕方ともなればビラまきを行う少女たちでいっぱいとなる。その多くはJK(女子高生)を相手に「リフレ(マッサージ)」や「お散歩」などのサービスを楽しむことができる、いわゆる「JK系店舗」と呼ばれる店のものだ。今年1月には警視庁によって秋葉原や新宿など、都内17店舗が一斉に摘発された。容疑は労働基準法違反(危険有害業務の就業制限違反)だ。  しかし、ビラをまく制服の少女たちの姿が消えたのはホンの一瞬。それから数カ月とたっていないのに、ほとぼりが冷めたかのごとく彼女らは復活している。もちろん、以前に比べると警戒心は強い。「JK系店舗」が問題視され始めた昨年の秋頃には「いくら?」と聞けば「口なら5,000円」と、露骨に「援助交際」に応じる少女すら存在した。すべてが「援助交際」に応じるわけではなかったが、「オプション」「裏オプション」といったキーワードで軽く性的なサービスが存在することをアピールするものがほとんどであった。  1月の警視庁による摘発が功を奏したのか、そういった性的なサービス自体は姿を消しているようだ。実際に街頭に立っていた制服姿の少女の何人かに声をかけてみたが、「今はやっていない」「警察にバレたら店長の名前をいわされるから……」などと言う。実のところ、サービスの内容自体には警戒心が旺盛だが、街頭でのビラをまく様子には1月の摘発以降もあまり変化が見られない。  それに加えて、秋葉原の「JK系店舗」が「非発射系風俗」などという呼び方で報道されたことによって「秋葉原は危険なところ」というイメージを持つ人々も増えているという。日常的に秋葉原を利用しているならいざ知らず、地方から初めてやってきた人々にとっては、風俗店とほぼイコールである「JK系店舗」のビラまきは、とてつもなく悪印象なものであろう。  4月に入り警視庁はこうした店舗で働く女子高生を、保護ではなく補導の対象とすることを通達。4日には秋葉原の店舗で11人が補導された。しかし、対象となるのはあくまで18歳未満のみ。翌5日の金曜日には、いつもと変わらず制服姿でビラをまく少女(いや、18歳以上かも)が溢れていたのである。  こうした秋葉原のイメージ悪化に対処すべく、秋葉原に関わる人々の間では、いまやビラまきが全面的に禁止すべきという意見すら、飛び出しているのだ。いわゆる「脱法風俗」に最も頭を抱えているのは、類似すると思われてしまう一般のメイド喫茶などの店舗だ。  3月に開催された「秋葉原cafeトークライブ」でも、この問題は大いに議論された。「秋葉原cafeトークライブ」は、秋葉原UDXのUDXオープンカレッジで毎月開催されている、秋葉原の町おこしなどを考えるイベントだ。3月の例会で登壇した「万世橋メイド系店舗連絡協議会」会長の佐々木俊一氏は、 「2年ほど前から、会員や町会と一緒に道路使用許可を受けていないなどルール違反を行っているビラまきに対して、注意する活動を行っています。ところが、活動を始めて3日目に『セクハラを受けた』『営業妨害だ』と警察に苦情を言われれる事例が相次いだために、万世橋署からも『警察が一緒じゃない時には注意する活動はやめてくれ』ということになった」 と、悪質な店舗を取り締まることの問題点を話す。さらに、佐々木氏は「取材を受けるたびに、何年間も営業しているようなメイド喫茶やリフレとJKとはまったく違うと必ず伝えています。真面目に営業している店舗が被害を受けているんです」とも。  また、デジタルハリウッド大学客員准教授の梅本克氏は少し違った視点からビラまきの問題点を指摘する。 「どんな店舗のメイドさんでも、1時間路上でビラをまいていたら疲れた顔になってしまう。メイドさんは、ミッキーマウスのような非日常の存在です。疲れた顔のメイドさんに“萌え”がありません。結果、萌えは衰退し“野暮な店”だけが残ることになりかねない。ですので、メイド・コスプレ系の店舗勧誘を一切禁止すべきです」  働いている女子高生は「被害者」ではない、と踏み込んだ判断を行って取締りに乗り出している警視庁。だが、前述のように摘発の翌日も街の様子が変わっていなかったあたり、効果は疑問だ。そもそも「JK」と銘打っていても、18歳未満でなければよいわけだから当然だ。もはや、ビラまきを全面禁止して「JK」が壊滅するのを待つ、そんな段階に入りつつあるのだ……。 (取材・文=昼間たかし)

際立つ参加者の「濃さ」──ターゲット層を絞り込んだアニメコンテンツエキスポの費用対効果は?

R0036770.jpg
 昨年に引き続き、大いに賑わった「アニメコンテンツエキスポ(ACE)2013」。会場の拡大からも見られるように、2回目を迎え、春の恒例イベントとして定着しつつある。  常に比較対象にされるイベント「東京国際アニメフェア(TAF)」との違いは、なによりも客層の「濃さ」だ。昨年、震災による中止を経て両イベントが開催される直前に、TAF主催者に取材をした。その際に「濃いオタク層と家族連れが混在している状態は、将来的に改善しなければならないだろうと考えていた」といった趣旨の発言があった。意図せぬ形ではあったものの、アニメ業界の総意としては、2つのイベントに分離したことを歓迎するムードがあった(ただ、震災で中止になった2011年の際には「角川さんやめてよ~と本気で思った」と、あるテレビ関係者に聞いたことも。さすがに同日開催はムチャ)。  物販を中心にしたイベントと見られているACE。会場内を見渡す限りは、来場者の年代は10代後半から上が主体である。ただ、多くの人々が買い物に狂奔するコミックマーケットの企業ブースに比べると、雰囲気はとても穏やかだ。それは、買い物をするのは楽しいが、しなくとも見物だけで楽しむことができるからである。  各ブースでは、春からの新作アニメや今年公開予定の作品のPVを流しっぱなしにしているし、会場限定の配布物も持ちきれないほどもらうことができる。また、会場内ではさまざまな作品の「神回」を見ることができる「神回シアター」、ちょっと堅めの業界トークが行われる「アニメのお仕事」。それに、各ブースでの声優などが出演するミニイベントまで、趣味趣向に応じて楽しめる催しが盛りだくさんなのだ。客層が「濃い」こともあってか、TAFのパブリックデー(一般来場の日)と比べると熱気の高さが感じられた。  また、ビジネス面においてさまざま々な事業者が、出展者と名刺交換をする光景も見られた。「熱気を感じてほしいので、ビジネスデーは設けない」というのがACEのスタンスだが、それがうまく機能していることをうかがわせた。 ■イベントの魅力は費用対効果の高さ  ACEは、イベントとしては、かなりハードルの高いモノといってもよいかも知れない。TAFがファミリー向けを中心に万人受けしそうなコンテンツを扱う出展者が大半なのに対して、明らかにターゲット層が絞られている。  しかし、出展者の側から見れば「だからこそ、出展する意義がある」といえる。実のところ、どんなに売れている作品であっても宣伝広告費が湯水のように使えるところなど、まずあり得ない。各企業は、かなり費用対効果を厳密に計算し尽くしている。中には「雑誌広告は効果が疑問なので、基本的に出稿しない方針」とする企業もある。雑誌でなければネットかといえば、そうではない。ネットも同じく、費用対効果は確実とはいえない。  ACEでの各ブースの熱心な宣伝販促の背景には、媒体に広告を出稿するよりも、費用対効果が高いと見ていることが挙げられる。来場者の多くは、作品のファン、あるいはファンになってくれる人々。露骨にいえば「作品に金を落としてくれる」可能性が高い。確実に買ってくれる層に宣伝できると共に、物販で現金が手に入る一石二鳥の効果があるのだから、出展者側の熱も高くなるのは当然だ。  いまやインターネットの普及によって、処理しきれないほどの大量の情報が流れている。ゆえに、作品を宣伝していくには単なる広告出稿だけではない、アイデアが求められている。テレビアニメを放送開始前に、第一話だけ上映するイベントが恒例化しているのは、その一例だ(先に劇場公開した『宇宙戦艦ヤマト2199』のような手法も)。  おそらく、今後は雑誌やネット等の媒体広告も「○月○日発売!」のようなものじゃない、新たなスタイルが生まれてくるのじゃないだろうか。雑誌広告も、決して古びた時代遅れのやり方ではない。 (取材・文=昼間たかし)

ヒリヒリと痛みを伴う“性”と“暴力” 大人向けヒューマンストーリー『君と歩く世界』

kimitoaruku.jpg
(C)Why Not Productions - Page 114 - France 2 Cinema - 
Les Films du Fleuve - Lunanime
 春は別れと出会いの季節。当コーナーの4月第1回は、「喪失」と「再生」を描く邦画と洋画の最新作2本を取り上げよう(いずれも4月6日公開)。  『桜、ふたたびの加奈子』は、新津きよみの小説を原作とし、スピリチュアルな要素を織り交ぜて描いたヒューマンドラマ。娘の加奈子を小学校入学式の日に事故で亡くした容子(広末涼子)は、自責の念に駆られて自殺を図るが、それを境に「加奈子が見える」と主張し、娘の世話をするようになる。夫の信樹(稲垣吾郎)は、かたくなな妻を立ち直らせたいと願いながらも、いら立ちを募らせていく。そんなある日、飼い犬に導かれるように出会った女子高生(福田麻由子)が出産間近と知った容子は、その赤ん坊が娘の生まれ変わりだと確信する。  メガホンを取ったのは、デビュー作『飯と乙女』(11)でモスクワ国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞した栗村実監督。大切な人を失った時どう乗り越えるのかという主題に、魂や輪廻といった現代科学では説明のつかない要素をカウンターパート的に配して、ひとの命と生の意味を改めて問い直す稀有なタッチのドラマに仕上げた。象徴的に使われる桜や卵の映像、佐村河内守のエモーショナルな音楽により、重いテーマでありながら不思議な軽やかさと清々しさが残る。広末涼子は『秘密』(99)、『おくりびと』(08)など「死」に近い役どころで好演が多いのも興味深い傾向だ。本作のスピリチュアルな部分に関しては、豪田トモ監督のドキュメンタリー映画『うまれる』(10)を見るとひと味違う印象になるので、合わせて紹介しておきたい。  2本目の『君と歩く世界』(R15+)は、オスカー女優マリオン・コティヤールが両脚を失った女性という難役に挑戦した衝撃的な人生と愛のドラマ。南仏アンティーブの観光名所マリンランドで働くシャチの調教師ステファニー(コティヤール)は、ショーの最中に起きた事故で両脚を失い、気遣う家族らにも心を閉ざしてしまう。退院したステファニーは、事故に遭う前に出会ったナイトクラブの用心棒アリ(マティアス・スーナールツ)に電話をかける。5歳の息子をひとりで育て、貧しい暮らしから抜け出そうと非合法の賭博ファイトに体を張るアリ。不器用だが真っ直ぐなアリの優しさに触れ、ステファニーは次第に生きる喜びを取り戻していく。  『真夜中のピアニスト』(05)、『預言者』(09)の名匠ジャック・オーディアール監督が、カナダ出身の作家クレイグ・デビッドソンの短編集から「素手の非合法ファイトに挑む元格闘家」と「シャチに脚を引きちぎられる調教師」という2つのプロットを得て創作したストーリー。海でサメに片腕を奪われた少女がプロサーファーとして再起を賭ける『ソウル・サーファー』(12)や、障がい者と健常者の本音の交流がお互いに希望をもたらす『最強のふたり』(12)に通じるテーマを取り上げるが、これら2作品と違い、「性」と「暴力」をヒリヒリと痛みを伴うほど切実に描くことで大人向けの傑作に仕上がった。コティヤールが熱演するヒロインが、絶望の淵から再び世界と向き合い前へ進もうとする過程が、海、風、光の映像と音楽により効果的に描写される。現代社会のさまざまな問題も提示しながら、それでも生きること、愛することへの賛歌となっている本作が、人生に迷い悩む多くの観客に届くことを願いたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『桜、ふたたびの加奈子』作品情報 <http://eiga.com/movie/77649/> 『君と歩く世界』作品情報 <http://eiga.com/movie/77842/>

ヒリヒリと痛みを伴う“性”と“暴力” 大人向けヒューマンストーリー『君と歩く世界』

kimitoaruku.jpg
(C)Why Not Productions - Page 114 - France 2 Cinema - 
Les Films du Fleuve - Lunanime
 春は別れと出会いの季節。当コーナーの4月第1回は、「喪失」と「再生」を描く邦画と洋画の最新作2本を取り上げよう(いずれも4月6日公開)。  『桜、ふたたびの加奈子』は、新津きよみの小説を原作とし、スピリチュアルな要素を織り交ぜて描いたヒューマンドラマ。娘の加奈子を小学校入学式の日に事故で亡くした容子(広末涼子)は、自責の念に駆られて自殺を図るが、それを境に「加奈子が見える」と主張し、娘の世話をするようになる。夫の信樹(稲垣吾郎)は、かたくなな妻を立ち直らせたいと願いながらも、いら立ちを募らせていく。そんなある日、飼い犬に導かれるように出会った女子高生(福田麻由子)が出産間近と知った容子は、その赤ん坊が娘の生まれ変わりだと確信する。  メガホンを取ったのは、デビュー作『飯と乙女』(11)でモスクワ国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞した栗村実監督。大切な人を失った時どう乗り越えるのかという主題に、魂や輪廻といった現代科学では説明のつかない要素をカウンターパート的に配して、ひとの命と生の意味を改めて問い直す稀有なタッチのドラマに仕上げた。象徴的に使われる桜や卵の映像、佐村河内守のエモーショナルな音楽により、重いテーマでありながら不思議な軽やかさと清々しさが残る。広末涼子は『秘密』(99)、『おくりびと』(08)など「死」に近い役どころで好演が多いのも興味深い傾向だ。本作のスピリチュアルな部分に関しては、豪田トモ監督のドキュメンタリー映画『うまれる』(10)を見るとひと味違う印象になるので、合わせて紹介しておきたい。  2本目の『君と歩く世界』(R15+)は、オスカー女優マリオン・コティヤールが両脚を失った女性という難役に挑戦した衝撃的な人生と愛のドラマ。南仏アンティーブの観光名所マリンランドで働くシャチの調教師ステファニー(コティヤール)は、ショーの最中に起きた事故で両脚を失い、気遣う家族らにも心を閉ざしてしまう。退院したステファニーは、事故に遭う前に出会ったナイトクラブの用心棒アリ(マティアス・スーナールツ)に電話をかける。5歳の息子をひとりで育て、貧しい暮らしから抜け出そうと非合法の賭博ファイトに体を張るアリ。不器用だが真っ直ぐなアリの優しさに触れ、ステファニーは次第に生きる喜びを取り戻していく。  『真夜中のピアニスト』(05)、『預言者』(09)の名匠ジャック・オーディアール監督が、カナダ出身の作家クレイグ・デビッドソンの短編集から「素手の非合法ファイトに挑む元格闘家」と「シャチに脚を引きちぎられる調教師」という2つのプロットを得て創作したストーリー。海でサメに片腕を奪われた少女がプロサーファーとして再起を賭ける『ソウル・サーファー』(12)や、障がい者と健常者の本音の交流がお互いに希望をもたらす『最強のふたり』(12)に通じるテーマを取り上げるが、これら2作品と違い、「性」と「暴力」をヒリヒリと痛みを伴うほど切実に描くことで大人向けの傑作に仕上がった。コティヤールが熱演するヒロインが、絶望の淵から再び世界と向き合い前へ進もうとする過程が、海、風、光の映像と音楽により効果的に描写される。現代社会のさまざまな問題も提示しながら、それでも生きること、愛することへの賛歌となっている本作が、人生に迷い悩む多くの観客に届くことを願いたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『桜、ふたたびの加奈子』作品情報 <http://eiga.com/movie/77649/> 『君と歩く世界』作品情報 <http://eiga.com/movie/77842/>

ヒリヒリと痛みを伴う“性”と“暴力” 大人向けヒューマンストーリー『君と歩く世界』

kimitoaruku.jpg
(C)Why Not Productions - Page 114 - France 2 Cinema - 
Les Films du Fleuve - Lunanime
 春は別れと出会いの季節。当コーナーの4月第1回は、「喪失」と「再生」を描く邦画と洋画の最新作2本を取り上げよう(いずれも4月6日公開)。  『桜、ふたたびの加奈子』は、新津きよみの小説を原作とし、スピリチュアルな要素を織り交ぜて描いたヒューマンドラマ。娘の加奈子を小学校入学式の日に事故で亡くした容子(広末涼子)は、自責の念に駆られて自殺を図るが、それを境に「加奈子が見える」と主張し、娘の世話をするようになる。夫の信樹(稲垣吾郎)は、かたくなな妻を立ち直らせたいと願いながらも、いら立ちを募らせていく。そんなある日、飼い犬に導かれるように出会った女子高生(福田麻由子)が出産間近と知った容子は、その赤ん坊が娘の生まれ変わりだと確信する。  メガホンを取ったのは、デビュー作『飯と乙女』(11)でモスクワ国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞した栗村実監督。大切な人を失った時どう乗り越えるのかという主題に、魂や輪廻といった現代科学では説明のつかない要素をカウンターパート的に配して、ひとの命と生の意味を改めて問い直す稀有なタッチのドラマに仕上げた。象徴的に使われる桜や卵の映像、佐村河内守のエモーショナルな音楽により、重いテーマでありながら不思議な軽やかさと清々しさが残る。広末涼子は『秘密』(99)、『おくりびと』(08)など「死」に近い役どころで好演が多いのも興味深い傾向だ。本作のスピリチュアルな部分に関しては、豪田トモ監督のドキュメンタリー映画『うまれる』(10)を見るとひと味違う印象になるので、合わせて紹介しておきたい。  2本目の『君と歩く世界』(R15+)は、オスカー女優マリオン・コティヤールが両脚を失った女性という難役に挑戦した衝撃的な人生と愛のドラマ。南仏アンティーブの観光名所マリンランドで働くシャチの調教師ステファニー(コティヤール)は、ショーの最中に起きた事故で両脚を失い、気遣う家族らにも心を閉ざしてしまう。退院したステファニーは、事故に遭う前に出会ったナイトクラブの用心棒アリ(マティアス・スーナールツ)に電話をかける。5歳の息子をひとりで育て、貧しい暮らしから抜け出そうと非合法の賭博ファイトに体を張るアリ。不器用だが真っ直ぐなアリの優しさに触れ、ステファニーは次第に生きる喜びを取り戻していく。  『真夜中のピアニスト』(05)、『預言者』(09)の名匠ジャック・オーディアール監督が、カナダ出身の作家クレイグ・デビッドソンの短編集から「素手の非合法ファイトに挑む元格闘家」と「シャチに脚を引きちぎられる調教師」という2つのプロットを得て創作したストーリー。海でサメに片腕を奪われた少女がプロサーファーとして再起を賭ける『ソウル・サーファー』(12)や、障がい者と健常者の本音の交流がお互いに希望をもたらす『最強のふたり』(12)に通じるテーマを取り上げるが、これら2作品と違い、「性」と「暴力」をヒリヒリと痛みを伴うほど切実に描くことで大人向けの傑作に仕上がった。コティヤールが熱演するヒロインが、絶望の淵から再び世界と向き合い前へ進もうとする過程が、海、風、光の映像と音楽により効果的に描写される。現代社会のさまざまな問題も提示しながら、それでも生きること、愛することへの賛歌となっている本作が、人生に迷い悩む多くの観客に届くことを願いたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『桜、ふたたびの加奈子』作品情報 <http://eiga.com/movie/77649/> 『君と歩く世界』作品情報 <http://eiga.com/movie/77842/>

ヒリヒリと痛みを伴う“性”と“暴力” 大人向けヒューマンストーリー『君と歩く世界』

kimitoaruku.jpg
(C)Why Not Productions - Page 114 - France 2 Cinema - 
Les Films du Fleuve - Lunanime
 春は別れと出会いの季節。当コーナーの4月第1回は、「喪失」と「再生」を描く邦画と洋画の最新作2本を取り上げよう(いずれも4月6日公開)。  『桜、ふたたびの加奈子』は、新津きよみの小説を原作とし、スピリチュアルな要素を織り交ぜて描いたヒューマンドラマ。娘の加奈子を小学校入学式の日に事故で亡くした容子(広末涼子)は、自責の念に駆られて自殺を図るが、それを境に「加奈子が見える」と主張し、娘の世話をするようになる。夫の信樹(稲垣吾郎)は、かたくなな妻を立ち直らせたいと願いながらも、いら立ちを募らせていく。そんなある日、飼い犬に導かれるように出会った女子高生(福田麻由子)が出産間近と知った容子は、その赤ん坊が娘の生まれ変わりだと確信する。  メガホンを取ったのは、デビュー作『飯と乙女』(11)でモスクワ国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞した栗村実監督。大切な人を失った時どう乗り越えるのかという主題に、魂や輪廻といった現代科学では説明のつかない要素をカウンターパート的に配して、ひとの命と生の意味を改めて問い直す稀有なタッチのドラマに仕上げた。象徴的に使われる桜や卵の映像、佐村河内守のエモーショナルな音楽により、重いテーマでありながら不思議な軽やかさと清々しさが残る。広末涼子は『秘密』(99)、『おくりびと』(08)など「死」に近い役どころで好演が多いのも興味深い傾向だ。本作のスピリチュアルな部分に関しては、豪田トモ監督のドキュメンタリー映画『うまれる』(10)を見るとひと味違う印象になるので、合わせて紹介しておきたい。  2本目の『君と歩く世界』(R15+)は、オスカー女優マリオン・コティヤールが両脚を失った女性という難役に挑戦した衝撃的な人生と愛のドラマ。南仏アンティーブの観光名所マリンランドで働くシャチの調教師ステファニー(コティヤール)は、ショーの最中に起きた事故で両脚を失い、気遣う家族らにも心を閉ざしてしまう。退院したステファニーは、事故に遭う前に出会ったナイトクラブの用心棒アリ(マティアス・スーナールツ)に電話をかける。5歳の息子をひとりで育て、貧しい暮らしから抜け出そうと非合法の賭博ファイトに体を張るアリ。不器用だが真っ直ぐなアリの優しさに触れ、ステファニーは次第に生きる喜びを取り戻していく。  『真夜中のピアニスト』(05)、『預言者』(09)の名匠ジャック・オーディアール監督が、カナダ出身の作家クレイグ・デビッドソンの短編集から「素手の非合法ファイトに挑む元格闘家」と「シャチに脚を引きちぎられる調教師」という2つのプロットを得て創作したストーリー。海でサメに片腕を奪われた少女がプロサーファーとして再起を賭ける『ソウル・サーファー』(12)や、障がい者と健常者の本音の交流がお互いに希望をもたらす『最強のふたり』(12)に通じるテーマを取り上げるが、これら2作品と違い、「性」と「暴力」をヒリヒリと痛みを伴うほど切実に描くことで大人向けの傑作に仕上がった。コティヤールが熱演するヒロインが、絶望の淵から再び世界と向き合い前へ進もうとする過程が、海、風、光の映像と音楽により効果的に描写される。現代社会のさまざまな問題も提示しながら、それでも生きること、愛することへの賛歌となっている本作が、人生に迷い悩む多くの観客に届くことを願いたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『桜、ふたたびの加奈子』作品情報 <http://eiga.com/movie/77649/> 『君と歩く世界』作品情報 <http://eiga.com/movie/77842/>

ヒリヒリと痛みを伴う“性”と“暴力” 大人向けヒューマンストーリー『君と歩く世界』

kimitoaruku.jpg
(C)Why Not Productions - Page 114 - France 2 Cinema - 
Les Films du Fleuve - Lunanime
 春は別れと出会いの季節。当コーナーの4月第1回は、「喪失」と「再生」を描く邦画と洋画の最新作2本を取り上げよう(いずれも4月6日公開)。  『桜、ふたたびの加奈子』は、新津きよみの小説を原作とし、スピリチュアルな要素を織り交ぜて描いたヒューマンドラマ。娘の加奈子を小学校入学式の日に事故で亡くした容子(広末涼子)は、自責の念に駆られて自殺を図るが、それを境に「加奈子が見える」と主張し、娘の世話をするようになる。夫の信樹(稲垣吾郎)は、かたくなな妻を立ち直らせたいと願いながらも、いら立ちを募らせていく。そんなある日、飼い犬に導かれるように出会った女子高生(福田麻由子)が出産間近と知った容子は、その赤ん坊が娘の生まれ変わりだと確信する。  メガホンを取ったのは、デビュー作『飯と乙女』(11)でモスクワ国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞した栗村実監督。大切な人を失った時どう乗り越えるのかという主題に、魂や輪廻といった現代科学では説明のつかない要素をカウンターパート的に配して、ひとの命と生の意味を改めて問い直す稀有なタッチのドラマに仕上げた。象徴的に使われる桜や卵の映像、佐村河内守のエモーショナルな音楽により、重いテーマでありながら不思議な軽やかさと清々しさが残る。広末涼子は『秘密』(99)、『おくりびと』(08)など「死」に近い役どころで好演が多いのも興味深い傾向だ。本作のスピリチュアルな部分に関しては、豪田トモ監督のドキュメンタリー映画『うまれる』(10)を見るとひと味違う印象になるので、合わせて紹介しておきたい。  2本目の『君と歩く世界』(R15+)は、オスカー女優マリオン・コティヤールが両脚を失った女性という難役に挑戦した衝撃的な人生と愛のドラマ。南仏アンティーブの観光名所マリンランドで働くシャチの調教師ステファニー(コティヤール)は、ショーの最中に起きた事故で両脚を失い、気遣う家族らにも心を閉ざしてしまう。退院したステファニーは、事故に遭う前に出会ったナイトクラブの用心棒アリ(マティアス・スーナールツ)に電話をかける。5歳の息子をひとりで育て、貧しい暮らしから抜け出そうと非合法の賭博ファイトに体を張るアリ。不器用だが真っ直ぐなアリの優しさに触れ、ステファニーは次第に生きる喜びを取り戻していく。  『真夜中のピアニスト』(05)、『預言者』(09)の名匠ジャック・オーディアール監督が、カナダ出身の作家クレイグ・デビッドソンの短編集から「素手の非合法ファイトに挑む元格闘家」と「シャチに脚を引きちぎられる調教師」という2つのプロットを得て創作したストーリー。海でサメに片腕を奪われた少女がプロサーファーとして再起を賭ける『ソウル・サーファー』(12)や、障がい者と健常者の本音の交流がお互いに希望をもたらす『最強のふたり』(12)に通じるテーマを取り上げるが、これら2作品と違い、「性」と「暴力」をヒリヒリと痛みを伴うほど切実に描くことで大人向けの傑作に仕上がった。コティヤールが熱演するヒロインが、絶望の淵から再び世界と向き合い前へ進もうとする過程が、海、風、光の映像と音楽により効果的に描写される。現代社会のさまざまな問題も提示しながら、それでも生きること、愛することへの賛歌となっている本作が、人生に迷い悩む多くの観客に届くことを願いたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『桜、ふたたびの加奈子』作品情報 <http://eiga.com/movie/77649/> 『君と歩く世界』作品情報 <http://eiga.com/movie/77842/>