スポーツ紙は戦々恐々……将棋界のレジェンド“ひふみん”加藤一二三九段「激怒」の裏側

スポーツ紙は戦々恐々……将棋界のレジェンドひふみん加藤一二三九段「激怒」の裏側の画像1
公益社団法人日本将棋連盟公式サイトより
 将棋界のレジェンドで、先月に引退した「ひふみん」こと加藤一二三九段が、テレビやイベントで引っ張りだこだ。大手芸能事務所ワタナベエンターテインメントに所属後、初の公の場となった18日のイベントでは、「ひふみん」の愛称について「柔らかい感じがして、昔は勝負師として不満だった」そうだが、「今は定まった感じがしてうれしい」と喜んだ。  ひふみんといえば、先日こんな“抗議騒動”があった。6月30日に引退会見を開いたが、翌日の今月1日に東京スポーツは「商魂のたくましさは折り紙付き」「ギャラ交渉も自分でやっている」「各局のギャラを比較し、将棋さながらに担当ディレクターに揺さぶりをかけている」と報道。藤井聡太四段に対し「金銭面では、ひふみんほどプロになってほしくない」とまで書いた。  ひふみんはこれを受けて2日、同紙に対し、自身のTwitterで「完全な捏造記事を掲載されて困惑しております。なぜあんなに悪意を持たれるのか理解できない。連盟経由で抗議するしかない」と発信。「ひふみんがブチ切れた!」と話題になった。 「引退会見は晴れの場。それを銭ゲバ的な書き方をされれば、激怒するのも無理はない。将棋に関して知識もないだろうに、しゃしゃり出てあそこまで書くのはどうなのか。付け焼き刃的な記事という印象は拭えない。一般紙や専門誌には、将棋を専門に取材するいわゆる観戦記者がいるが、スポーツ紙にはおらず、スポーツ報知の男性記者が将棋に精通しているくらい。藤井四段ブームに乗っかって安易に取材すると、しっぺ返しを食らう」(テレビ局関係者)  また、ひふみんの“抗議騒動”は、スポーツ各紙を震え上がらせた。 「人気者で世間の関心が高い。もともとひふみんはメディアに協力的なのに、怒らせて“出禁”にされたくないと、スポーツ各紙は戦々恐々としている」(同)  ひふみんはTwitterで、将棋連盟を通じた東スポへの抗議を示唆していたが、ナベプロが間を取り持ったという情報もある。確かに先のイベントについて東スポは記事を掲載しており、取材OKだったとみられる。 「ひふみんは激怒もしたけど、スポーツ紙にこんなこと書かれるんだと驚いた部分もあったらしい。だからTwitterで即座に反応して“先手”を打った」(芸能事務所関係者)  スポーツ紙にクギを刺す、有効な“一手”にはなったようだ。

スポーツ紙は戦々恐々……将棋界のレジェンド“ひふみん”加藤一二三九段「激怒」の裏側

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公益社団法人日本将棋連盟公式サイトより
 将棋界のレジェンドで、先月に引退した「ひふみん」こと加藤一二三九段が、テレビやイベントで引っ張りだこだ。大手芸能事務所ワタナベエンターテインメントに所属後、初の公の場となった18日のイベントでは、「ひふみん」の愛称について「柔らかい感じがして、昔は勝負師として不満だった」そうだが、「今は定まった感じがしてうれしい」と喜んだ。  ひふみんといえば、先日こんな“抗議騒動”があった。6月30日に引退会見を開いたが、翌日の今月1日に東京スポーツは「商魂のたくましさは折り紙付き」「ギャラ交渉も自分でやっている」「各局のギャラを比較し、将棋さながらに担当ディレクターに揺さぶりをかけている」と報道。藤井聡太四段に対し「金銭面では、ひふみんほどプロになってほしくない」とまで書いた。  ひふみんはこれを受けて2日、同紙に対し、自身のTwitterで「完全な捏造記事を掲載されて困惑しております。なぜあんなに悪意を持たれるのか理解できない。連盟経由で抗議するしかない」と発信。「ひふみんがブチ切れた!」と話題になった。 「引退会見は晴れの場。それを銭ゲバ的な書き方をされれば、激怒するのも無理はない。将棋に関して知識もないだろうに、しゃしゃり出てあそこまで書くのはどうなのか。付け焼き刃的な記事という印象は拭えない。一般紙や専門誌には、将棋を専門に取材するいわゆる観戦記者がいるが、スポーツ紙にはおらず、スポーツ報知の男性記者が将棋に精通しているくらい。藤井四段ブームに乗っかって安易に取材すると、しっぺ返しを食らう」(テレビ局関係者)  また、ひふみんの“抗議騒動”は、スポーツ各紙を震え上がらせた。 「人気者で世間の関心が高い。もともとひふみんはメディアに協力的なのに、怒らせて“出禁”にされたくないと、スポーツ各紙は戦々恐々としている」(同)  ひふみんはTwitterで、将棋連盟を通じた東スポへの抗議を示唆していたが、ナベプロが間を取り持ったという情報もある。確かに先のイベントについて東スポは記事を掲載しており、取材OKだったとみられる。 「ひふみんは激怒もしたけど、スポーツ紙にこんなこと書かれるんだと驚いた部分もあったらしい。だからTwitterで即座に反応して“先手”を打った」(芸能事務所関係者)  スポーツ紙にクギを刺す、有効な“一手”にはなったようだ。

日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談

日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談の画像1
 日本映画ってポスターやフライヤーがダサい。そう感じたことはないだろうか? ネットなどで海外の映画のポスタービジュアルを見ていると、すごくオシャレでかっこいいのに、なんでこうも違うのか。そんな疑問に答えてくれたのは、英国出身の映画プロデューサーであるアダム・トレル氏。日本のインディペンデント映画の秀作を海外へ配給する一方、現代版“男はつらいよ”の世界を描いた藤田容介監督の『福福荘の福ちゃん』(14)や原発問題に真正面から斬り込んだ園子温監督の『希望の国』(12)といった話題作をプロデュースしている。単館系でロングランヒットを記録した『下衆の愛』(16)の内田英治監督と再びタッグを組んだ最新プロデュース作『獣道』は、7月15日より東京での公開が始まったばかり。日本映画をこよなく愛するがゆえに辛辣な意見も口から飛び出すアダム氏に、日本映画界のいい面とダメな面について語ってもらった。  東京で暮らし始めたのは2014年からだが、独学で学んだという日本語は流暢で気っ風がいい。まずは日本映画界の“いい面”について。 アダム・トレル「日本人は、みんな映画は映画館へ観に行く。これは素晴しいこと。映画はまず映画館で公開され、半年後にDVD化され、さらにその後にオンデマンド化されるようになっています。日本では昔からのルールが今も守られている。でも、欧米ではNetflixが大きな力を持ち、映画の公開とネットでの配信が同時になっています。みんな自宅で映画を観るようになり、DVDレンタル店はすっかり減り、街から映画館もどんどん消えています。その点、日本では映画館で映画を楽しむという文化が守られている。しかも、日本はインドやハリウッドに次ぐ映画製作本数を誇り、まぁこれは多すぎだと思うけど、『下衆の愛』や今回の『獣道』のような低予算の映画でも、面白い作品は2~3週間やそれ以上上映してくれる。映画館に通って、インディーズ映画を応援する日本の映画ファンは本当に素晴しい」
日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談の画像2
映画プロデューサーのアダム・トレル氏。12~13歳で深作欣二や鈴木清順にハマり、日本映画に魅了されたという。
 ゼロ年代の個性豊かな日本映画を英国で配給してきたアダム氏は、園監督が資金集めに苦戦した『希望の国』をきっかけにプロデューサーとして日本映画の製作現場に足を踏み入れるようになった。だが、そこで驚いたのが“製作委員会方式”という日本映画界ならではのシステム。映画会社だけでなくテレビ局、出版社、ビデオメーカーなど様々な企業が製作費を分担し、興行リスクを減らすために編み出されたものだが、映画の内容に興味のない人たちが委員会に参加していることには違和感を覚えたという。 アダム「人気アイドル事務所の誰々が出演すればファンを動員できるとか、製作委員会の参加者はお金のことしか関心がない。クリエイティヴィティなことには興味を持っていない。映画への愛情が感じられない。何十億円も投じた大作映画なら分かるけれど、2,000万~3,000万円規模のインディペンデント作品でも製作委員会方式になっていることにはびっくりした。製作委員会ではA、B、C、D……とフォーミュラ(慣習的やり方)で仕事が進んでいく。製作委員会方式では面白い映画はつくれないと思う。もし、面白い映画ができたとしたら、それは単なる偶然。製作委員会方式が嫌で、内田監督の『下衆の愛』は自主映画として作った。製作費は5万ドル以下で、俺の家や行きつけの居酒屋で撮影した。お金はなかったけど、愛とパッションで撮った映画。海外の映画祭で上映されたし、米国、ドイツ、台湾、香港、中国、韓国へ配給でき、イタリアでのリメイクも決まった。映画が面白いかどうかは、製作費がどれだけあるかではなく、愛とパッションがあるかどうかだよ」 ■日本人も知らない日本文化を伝えたい  内田監督との2度目のタッグ作『獣道』は、愛とパッションに加え、映画的な面白さが溢れた作品だ。地方都市を舞台に、カルト教団で育った少女・愛依(伊藤沙莉)が自分の居場所を求めて、ヤンキーコミュニティーに溶け込こんでいく姿が描かれる。カルト教団や崩壊した家庭といった要素は、園監督の大ブレイク作『愛のむきだし』(08)を彷彿させる。また、英国人プロデューサーのアダム氏がヤンキーカルチャーを題材にした映画を製作するというのもユニークだ。
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現在公開中の『獣道』。どこにも居場所のない愛依(伊藤沙莉)は髪を金髪にして、ヤンキー一家の一員となる。
アダム「園監督の『愛のむきだし』を海外で配給したところ、大変な人気になった。それまでの園監督は『自殺サークル』(02)などエクストリーム系の監督のひとりくらいにしか欧州では認識されていなかったけど、『愛のむきだし』が大ヒットし、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』(11)も当たった。内田監督から『獣道』の内容を最初に聞いたとき、俺も『愛のむきだし』と似ているなと感じた。海外ではカルト宗教は人気の題材なので、すごくいいと思った。『獣道』の英題は『Love and Other Cults』。ヤンキー文化に関しては、俺は素養があった。『ビー・バップ・ハイスクール』(85)や『スケバン刑事』(フジテレビ系)を子どもの頃に観ていたしね。海外の不良はギャングっぽくて怖いけど、日本のヤンキーはどこか可愛げがある。それにヤンキー文化は英国のモッズカルチャーと通じるところがある。どちらも労働者階級の文化で、彼らは月曜から金曜まで一生懸命働いて、週末は稼いだお金でバイクを改造したりファッションに使って、みんなでツーリングする。モッズは黒人音楽が好きで、ヤンキーは永ちゃんが好き。音楽が重要なのも一緒(笑)。すごく通じるところがある。俺、70~80年代の日本のアイドルグループも大好きで、ピンクレディやキャンディーズのグッズをコレクションしていた。メジャーなアイドルだけじゃなくて、キャンディーズの妹分だったトライアングル、フィーバー、キャンキャンまで集めてた。日本人も知らない日本の文化をみんなに伝えたい。自分でもおかしいと思うよ。ヤバいよね(笑)」
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元人気子役の伊藤沙莉と須賀健太がそのポテンシャルを遺憾なく発揮。閉塞的な社会に喘ぐ若者像をリアルに演じている。
 上映時間237分だった『愛のむきだし』に対し、『獣道』は94分で家族や社会に翻弄されながら生きていくヒロイン・愛依の過酷な青春が濃密に描かれていく。愛依を演じた伊藤沙莉はテレビドラマで活躍した人気子役出身だが、『獣道』では金髪に染めてのヤンキーファッション、清純そうな中流家庭風ファッションなど自分を受けいれてくれる環境に応じて次々と擬態していく。自分の居場所を失いたくないために上半身裸になるシーンもあり、まさに体当たりの熱演で『獣道』を完走してみせた。 アダム「伊藤沙莉は本当にヤバいよ(笑)。彼女は女優としてもちろん人気もあるけど、大事なのは人気よりも演技ができるということ。彼女が脱ぐシーンは、脱ぐことで自分の心を見せる重要な場面だった。逆にSEXシーンでは脱いでない。彼女はちゃんとそのことを理解してくれて演じてくれた。彼女の所属事務所は、タレントではなく俳優をマネージメントしている、映画に対して理解のある会社でよかった。これが製作委員会方式だったら、『もっと有名なアイドルを使え』とか言ってきて、その結果このシーンもなくなっていたかもしれない。もしくはセールスのためにヌードシーンを増やすよう言われたかもしれない。内田監督は女優の演出がうまいし、キャスティングのセンスもいい。今回もすごくいいキャストが集まった。ヤンキー役の吉村界人もいいし、演技は初めてのアントニーも悪くない。子役時代も含めて長いキャリアのある須賀健太は安定していて、もう何も言うことがない(笑)。最初の編集段階での『獣道』はすごく長かったけど、俺は編集に関しては厳しい。最近の日本映画はダラダラしたのが多すぎる。映画は映像と音も大事だけど、テンポをよくしないと海外では観てもらえない。最初から最後まで監督と一緒になって映画をよくするための努力を惜しまない、それがプロデューサー」
日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談の画像6
ヤンキー映画をプロデュースしたアダム氏に「ヤンキー座り、お願いします」と頼んだところ、こんな感じに……。
■日本のコメディは海外にも需要がある  これまで海外では、日本映画といえば三池崇史監督の『オーディション』(00)をはじめとするエクストリーム系か中田秀夫監督の『リング』(98)のようなホラー作品しか知られていなかったが、日本のインディペンデント系のコメディ作品には個性的な作品が多く、海外でも需要があると話す。 アダム「藤田監督の前作『全然大丈夫』(08)はロンドンで劇場公開されるほど人気が高かったから、『福福荘の福ちゃん』もつくった。三木聡監督も英国で人気がある。三木監督の『亀は意外と速く泳ぐ』(05)、『転々』(07)、『インスタント沼』(09)をDVD-BOXにしたら、すごく売れた。三木監督も藤田監督もモンティパイソンを見て育った世代で、彼らのちょっとブラックな笑いは英国人も大好き。日本のインディペンデント系監督のコメディはとても個性的で、海外でもっと売れる可能性がある。藤田監督や三木監督のオリジナル作品を求めているファンは海外に多い。日本には才能のある監督が他にもたくさんいる」  最後になったが、冒頭で触れた「日本映画のポスターがダサいのはなぜか」という問題について。アダム氏が運営する配給会社「Third Window Films」のwebサイトには日本のポスターとは異なる、オシャレな英語版のポスタービジュアルが並んでいる。日本と海外とでポスターがこうも違うのはどうしてなのか? アダム「日本の映画のポスターやフライヤーはすごく説明的。出演者は誰々で、どんなストーリーかも文字でびっしり説明されている。予告編もそう。日本のフライヤーと予告編を見たら、内容がだいたい分かってしまう。『これはどんな映画なんだろう』と見た人がもっとミステリアスに感じ、興味を持たせるようなものにしないとダメ。海外では日本の出演者が誰かということには興味が持たれないので、日本版のポスターをそのままは使えない。今後はますますオンデマンドが主流化していくから、キービジュアルはより重要になってくる。それに映画はアートなんだから、ポスターやフライヤーもアートじゃないとね。日本映画のポスターやフライヤーがダサいのはデザイナーの責任ではなく、ディレクションしている映画会社の宣伝担当者の問題であり、ポスターやフライヤーにまで口を出してくる芸能事務所が大きな問題。主人公だけ映ったポスターを予定していたら、『うちの俳優もポスターに入れろ』『斜めじゃなくて、正面から顔が映ったものにしろ』とか文句を言ってくる。日本映画のポスターがどれもこれも同じように、出演者の顔だらけなのはそのため。映画のクリエイティヴな面にまで口を挟んでくる日本の芸能事務所はおかしい。まぁ、『獣道』のポスターはやり過ぎかもしれないけどね(笑)」  前作『下衆の愛』の上映期間中は、都内の上映館のエントランスにアダム氏が立ち、手作りのポストカードを入場者にひとりずつ配る姿が連日続いた。お客さんと話すことが楽しいし、お客さんから映画の感想や意見を聞いて、次回作はよりよいものにしたいという想いからだった。『獣道』でも都内での上映期間中は基本、映画館でお客さんを出迎え、見送るつもりだという。『獣道』をスクリーンで楽しんだ後は、ぜひアダム氏の生トークにも触れてみてほしい。 (取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢)
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『獣道』 監督・脚本/内田英治 プロデューサー/アダム・トレル 主題歌/餓鬼連合(餓鬼レンジャーwith伊藤沙莉) 出演/伊藤沙莉、須賀健太、アントニー、吉村界人、韓英恵、冨手麻妙、松本花奈、川上奈々美、毎熊克哉、マシュー・チョジック、矢部太郎、でんでん、広田レオナ、近藤芳正、篠原篤、日高七海、大島葉子、アベラヒデノブ、川籠石駿平、根矢涼香、衣緒菜、森本のぶ、水澤紳吾、松井薫平 配給/スタイルジャム 7月15日よりシネマート新宿ほか全国順次公開中 (c)third window films http://www.kemono-michi.com ●アダム・トレル 1982年英国ロンドン生まれ。22歳のときに配給会社「Third Window Films」を立ち上げる。園子温監督の『愛のむきだし』(08)、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』(11)、『ラブ&ピース』(15)などを英国で配給し、園監督の海外での人気を高めた。資金集めが難航した園監督の『希望の国』(12)には共同プロデューサーとして参加。2014年より日本に来日しての映画製作も始め、『福福荘の福ちゃん』(14)や『下衆の愛』(16)をプロデュースしている。

日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談

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 日本映画ってポスターやフライヤーがダサい。そう感じたことはないだろうか? ネットなどで海外の映画のポスタービジュアルを見ていると、すごくオシャレでかっこいいのに、なんでこうも違うのか。そんな疑問に答えてくれたのは、英国出身の映画プロデューサーであるアダム・トレル氏。日本のインディペンデント映画の秀作を海外へ配給する一方、現代版“男はつらいよ”の世界を描いた藤田容介監督の『福福荘の福ちゃん』(14)や原発問題に真正面から斬り込んだ園子温監督の『希望の国』(12)といった話題作をプロデュースしている。単館系でロングランヒットを記録した『下衆の愛』(16)の内田英治監督と再びタッグを組んだ最新プロデュース作『獣道』は、7月15日より東京での公開が始まったばかり。日本映画をこよなく愛するがゆえに辛辣な意見も口から飛び出すトレル氏に、日本映画界のいい面とダメな面について語ってもらった。  東京で始めたのは2014年からだが、独学で学んだという日本語は流暢で気っ風がいい。まずは日本映画界の“いい面”について。 アダム・トレル「日本人は、みんな映画は映画館へ観に行く。これは素晴しいこと。映画はまず映画館で公開され、半年後にDVD化され、さらにその後にオンデマンド化されるようになっています。日本では昔からのルールが今も守られている。でも、欧米ではNetflixが大きな力を持ち、映画の公開とネットでの配信が同時になっています。みんな自宅で映画を観るようになり、DVDレンタル店はすっかり減り、街から映画館もどんどん消えています。その点、日本では映画館で映画を楽しむという文化が守られている。しかも、日本はインドやハリウッドに次ぐ映画製作本数を誇り、まぁこれは多すぎだと思うけど、『下衆の愛』や今回の『獣道』のような低予算の映画でも、面白い作品は2~3週間やそれ以上上映してくれる。映画館に通って、インディーズ映画を応援する日本の映画ファンは本当に素晴しい」
日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談の画像2
映画プロデューサーのアダム・トレル氏。12~13歳で深作欣二や鈴木清順にハマり、日本映画に魅了されたという。
 ゼロ年代の個性豊かな日本映画を英国で配給してきたトレル氏は、園監督が資金集めに苦戦した『希望の国』をきっかけにプロデューサーとして日本映画の製作現場に足を踏み入れるようになった。だが、そこで驚いたのが“製作委員会方式”という日本映画界ならではのシステム。映画会社だけでなくテレビ局、出版社、ビデオメーカーなど様々な企業が製作費を分担し、興行リスクを減らすために編み出されたものだが、映画の内容に興味のない人たちが委員会に参加していることには違和感を覚えたという。 トレル「人気アイドル事務所の誰々が出演すればファンを動員できるとか、製作委員会の参加者はお金のことしか関心がない。クリエイティヴィティなことには興味を持っていない。映画への愛情が感じられない。何十億円も投じた大作映画なら分かるけれど、2,000万~3,000万円規模のインディペンデント作品でも製作委員会方式になっていることにはびっくりした。製作委員会ではA、B、C、D……とフォーミュラ(慣習的やり方)で仕事が進んでいく。製作委員会方式では面白い映画はつくれないと思う。もし、面白い映画ができたとしたら、それは単なる偶然。製作委員会方式が嫌で、内田監督の『下衆の愛』は自主映画として作った。製作費は5万ドル以下で、俺の家や行きつけの居酒屋で撮影した。お金はなかったけど、愛とパッションで撮った映画。海外の映画祭で上映されたし、米国、ドイツ、台湾、香港、中国、韓国へ配給でき、イタリアでのリメイクも決まった。映画が面白いかどうかは、製作費がどれだけあるかではなく、愛とパッションがあるかどうかだよ」 ■日本人も知らない日本文化を伝えたい  内田監督との2度目のタッグ作『獣道』は、愛とパッションに加え、映画的な面白さが溢れた作品だ。地方都市を舞台に、カルト教団で育った少女・愛依(伊藤沙莉)が自分の居場所を求めて、ヤンキーコミュニティーに溶け込こんでいく姿が描かれる。カルト教団や崩壊した家庭といった要素は、園監督の大ブレイク作『愛のむきだし』(08)を彷彿させる。また、英国人プロデューサーのアダム氏がヤンキーカルチャーを題材にした映画を製作するというのもユニークだ。
日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談の画像3
現在公開中の『獣道』。どこにも居場所のない愛依(伊藤沙莉)は髪を金髪にして、ヤンキー一家の一員となる。
アダム「園監督の『愛のむきだし』を海外で配給したところ、大変な人気になった。それまでの園監督は『自殺サークル』(02)などエクストリーム系の監督のひとりくらいにしか欧州では認識されていなかったけど、『愛のむきだし』が大ヒットし、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』(11)も当たった。内田監督から『獣道』の内容を最初に聞いたとき、俺も『愛のむきだし』と似ているなと感じた。海外ではカルト宗教は人気の題材なので、すごくいいと思った。『獣道』の英題は『Love and Other Cults』。ヤンキー文化に関しては、俺は素養があった。『ビー・バップ・ハイスクール』(85)や『スケバン刑事』(フジテレビ系)を子どもの頃に観ていたしね。海外の不良はギャングっぽくて怖いけど、日本のヤンキーはどこか可愛げがある。それにヤンキー文化は英国のモッズカルチャーと通じるところがある。どちらも労働者階級の文化で、彼らは月曜から金曜まで一生懸命働いて、週末は稼いだお金でバイクを改造したりファッションに使って、みんなでツーリングする。モッズは黒人音楽が好きで、ヤンキーは永ちゃんが好き。音楽が重要なのも一緒(笑)。すごく通じるところがある。俺、70~80年代の日本のアイドルグループも大好きで、ピンクレディやキャンディーズのグッズをコレクションしていた。メジャーなアイドルだけじゃなくて、キャンディーズの妹分だったトライアングル、フィーバー、キャンキャンまで集めてた。日本人も知らない日本の文化をみんなに伝えたい。自分でもおかしいと思うよ。ヤバいよね(笑)」
日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談の画像4
元人気子役の伊藤沙莉と須賀健太がそのポテンシャルを遺憾なく発揮。閉塞的な社会に喘ぐ若者像をリアルに演じている。
 上映時間237分だった『愛のむきだし』に対し、『獣道』は94分で家族や社会に翻弄されながら生きていくヒロイン・愛依の過酷な青春が濃密に描かれていく。愛依を演じた伊藤沙莉はテレビドラマで活躍した人気子役出身だが、『獣道』では金髪に染めてのヤンキーファッション、清純そうな中流家庭風ファッションなど自分を受けいれてくれる環境に応じて次々と擬態していく。自分の居場所を失いたくないために上半身裸になるシーンもあり、まさに体当たりの熱演で『獣道』を完走してみせた。 アダム「伊藤沙莉は本当にヤバいよ(笑)。彼女は女優としてもちろん人気もあるけど、大事なのは人気よりも演技ができるということ。彼女が脱ぐシーンは、脱ぐことで自分の心を見せる重要な場面だった。逆にSEXシーンでは脱いでない。彼女はちゃんとそのことを理解してくれて演じてくれた。彼女の所属事務所は、タレントではなく俳優をマネージメントしている、映画に対して理解のある会社でよかった。これが製作委員会方式だったら、『もっと有名なアイドルを使え』とか言ってきて、その結果このシーンもなくなっていたかもしれない。もしくはセールスのためにヌードシーンを増やすよう言われたかもしれない。内田監督は女優の演出がうまいし、キャスティングのセンスもいい。今回もすごくいいキャストが集まった。ヤンキー役の吉村界人もいいし、演技は初めてのアントニーも悪くない。子役時代も含めて長いキャリアのある須賀健太は安定していて、もう何も言うことがない(笑)。最初の編集段階での『獣道』はすごく長かったけど、俺は編集に関しては厳しい。最近の日本映画はダラダラしたのが多すぎる。映画は映像と音も大事だけど、テンポをよくしないと海外では観てもらえない。最初から最後まで監督と一緒になって映画をよくするための努力を惜しまない、それがプロデューサー」
日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談の画像6
ヤンキー映画をプロデュースしたアダム氏に「ヤンキー座り、お願いします」と頼んだところ、こんな感じに……。
■日本のコメディは海外にも需要がある  これまで海外では、日本映画といえば三池崇史監督の『オーディション』(00)をはじめとするエクストリーム系か中田秀夫監督の『リング』(98)のようなホラー作品しか知られていなかったが、日本のインディペンデント系のコメディ作品には個性的な作品が多く、海外でも需要があると話す。 アダム「藤田監督の前作『全然大丈夫』(08)はロンドンで劇場公開されるほど人気が高かったから、『福福荘の福ちゃん』もつくった。三木聡監督も英国で人気がある。三木監督の『亀は意外と速く泳ぐ』(05)、『転々』(07)、『インスタント沼』(09)をDVD-BOXにしたら、すごく売れた。三木監督も藤田監督もモンティパイソンを見て育った世代で、彼らのちょっとブラックな笑いは英国人も大好き。日本のインディペンデント系監督のコメディはとても個性的で、海外でもっと売れる可能性がある。藤田監督や三木監督のオリジナル作品を求めているファンは海外に多い。日本には才能のある監督が他にもたくさんいる」  最後になったが、冒頭で触れた「日本映画のポスターがダサいのはなぜか」という問題について。アダム氏が運営する配給会社「Third Window Films」のwebサイトには日本のポスターとは異なる、オシャレな英語版のポスタービジュアルが並んでいる。日本と海外とでポスターがこうも違うのはどうしてなのか? アダム「日本の映画のポスターやフライヤーはすごく説明的。出演者は誰々で、どんなストーリーかも文字でびっしり説明されている。予告編もそう。日本のフライヤーと予告編を見たら、内容がだいたい分かってしまう。『これはどんな映画なんだろう』と見た人がもっとミステリアスに感じ、興味を持たせるようなものにしないとダメ。海外では日本の出演者が誰かということには興味が持たれないので、日本版のポスターをそのままは使えない。今後はますますオンデマンドが主流化していくから、キービジュルはより重要になってくる。それに映画はアートなんだから、ポスターやフライヤーもアートじゃないとね。日本映画のポスターやフライヤーがダサいのはデザイナーの責任ではなく、ディレクションしている映画会社の宣伝担当者の問題であり、ポスターやフライヤーにまで口を出してくる芸能事務所が大きな問題。主人公だけ映ったポスターを予定していたら、『うちの俳優もポスターに入れろ』『斜めじゃなくて、正面から顔が映ったものにしろ』とか文句を言ってくる。日本映画のポスターがどれもこれも同じように、出演者の顔だらけなのはそのため。映画のクリエイティヴな面にまで口を挟んでくる日本の芸能事務所はおかしい。まぁ、『獣道』のポスターはやり過ぎかもしれないけどね(笑)」  前作『下衆の愛』の上映期間中は、都内の上映館のエントランスにアダム氏が立ち、手作りのポストカードを入場者にひとりずつ配る姿が連日続いた。お客さんと話すことが楽しいし、お客さんから映画の感想や意見を聞いて、次回作はよりよいものにしたいという想いからだった。『獣道』でも都内での上映期間中は基本、映画館でお客さんを出迎え、見送るつもりだという。『獣道』をスクリーンで楽しんだ後は、ぜひアダム氏の生トークにも触れてみてほしい。 (取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢)
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『獣道』 監督・脚本/内田英治 プロデューサー/アダム・トレル 主題歌/餓鬼連合(餓鬼レンジャーwith伊藤沙莉) 出演/伊藤沙莉、須賀健太、アントニー、吉村界人、韓英恵、冨手麻妙、松本花奈、川上奈々美、毎熊克哉、マシュー・チョジック、矢部太郎、でんでん、広田レオナ、近藤芳正、篠原篤、日高七海、大島葉子、アベラヒデノブ、川籠石駿平、根矢涼香、衣緒菜、森本のぶ、水澤紳吾、松井薫平 配給/スタイルジャム 7月15日よりシネマート新宿ほか全国順次公開中 (c)third window films http://www.kemono-michi.com ●アダム・トレル 1982年英国ロンドン生まれ。22歳のときに配給会社「Third Window Films」を立ち上げる。園子温監督の『愛のむきだし』(08)、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』(11)、『ラブ&ピース』(15)などを英国で配給し、園監督の海外での人気を高めた。資金集めが難航した園監督の『希望の国』(12)には共同プロデューサーとして参加。2014年より日本に来日しての映画製作も始め、『福福荘の福ちゃん』(14)や『下衆の愛』(16)をプロデュースしている。

個人的な記憶が染みついた、70枚70通りのTシャツ物語『捨てられないTシャツ』

個人的な記憶が染みついた、70枚70通りのTシャツ物語『捨てられないTシャツ』の画像1
『捨てられないTシャツ』(筑摩書房)
 Tシャツの捨て時とは、いつなのか?  首元がよれよれになって破れたり、イラストがはげたり、「あまりにも」みすぼらしくなった時だろうか。Tシャツは、そう高い代物ではないにもかかわらず、何年も捨てられないことがよくある。 『捨てられないTシャツ』(筑摩書房)は、都築響一氏の有料週刊メールマガジン「ROADSIDE’ weekly」上で毎週連載されていた記事をもとに構成された1冊だ。  都築氏はTシャツについて、いつ頃からか、こんなことに気づく。通常、ファッションは値段が高かったり、有名ブランドだったり、誰が見ても「ヨシ」とされるものがリスペクトされるワケだが、Tシャツは違う。「誰も見たことないもの」や、「ヨシなのかダメなのか判断に迷う」ほうがリスペクトされたりする。そして、「ヨシなのかダメなのか判断に迷う」Tシャツには、着用する本人の確固たる意思や、根拠のない自信、なによりも個人的な記憶が染みついていることが多々あるのだ。  本書に登場するTシャツの持ち主は、年齢、性別、職業だけが記載されている。この話はあの人だな、とわかるようなかなり著名人の場合もあるが、9割方は一般人。けれど、一般人から語られるTシャツ物語にこそ、とてつもないすごみがある。  例えば、福島県出身/デザイナー/33歳女性の場合。  彼女の家はちょっと変わっていた。7人暮らしで、父親と母親は、町で変わり者呼ばわりされているじいちゃんに働いた金をすべて上納し、1カ月約1万円で、家計のやりくりを命じられていた。母親は発狂してはたびたび実家へ帰り、戻ってきては、じいちゃんにコテンパンに叱られる。そんな日々の中、父親がじいちゃんの命を狙って風呂場を襲撃するも、失敗。そこで、家族そろって夜逃げ同然で家を出た。健康ランドで1カ月過ごした後、父親の就職が決まって埼玉へ。学校生活は順風満帆だったが、両親の仲は破綻し、友達に何も告げられないまま、父親と福島へ戻ることに。ところが、福島では“標準語で気取っている”とイジメに遭い、不登校で勉強が遅れ、高校受験も失敗。荒れに荒れた生活の中、父親が再婚。家からも追い出され、16歳で付き合っていた彼氏の家に預けられる。親にも見放された時に、味方してくれていたばあちゃん。そんなばあちゃんを描いたオリジナルTシャツ――。  ものすごく要約してしまったが、このドラマにもなりそうな濃厚さは、なんなのか? 本書には1ページでさらっと書かれた話もあるが、多くは数ページを費やして、Tシャツの持ち主がどんな家庭環境で育ち、青春時代をどんなふうに物事を考えて過ごし、社会へ飛び出して今に至るのかまでつながっていく。そういった人生の回想録のようなものであり、15ページにも及ぶ短編小説レベルのものまである。  音楽を聴くと、あの頃を思い出すように、捨てられないTシャツには、個人の何か強烈な記憶を呼び覚ますスイッチがあるのかもしれない。 (文=上浦未来) ●つづき・きょういち 1956年東京生まれ。編集者。現代美術・建築・写真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。93年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』(ちくま文庫)を刊行。97年、『ROADSIDE JAPAN』(ちくま文庫)で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年より有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS'weekly(http://www.roadsiders.com/)を配信中。Tシャツのサイズは3L。

個人的な記憶が染みついた、70枚70通りのTシャツ物語『捨てられないTシャツ』

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『捨てられないTシャツ』(筑摩書房)
 Tシャツの捨て時とは、いつなのか?  首元がよれよれになって破れたり、イラストがはげたり、「あまりにも」みすぼらしくなった時だろうか。Tシャツは、そう高い代物ではないにもかかわらず、何年も捨てられないことがよくある。 『捨てられないTシャツ』(筑摩書房)は、都築響一氏の有料週刊メールマガジン「ROADSIDE’ weekly」上で毎週連載されていた記事をもとに構成された1冊だ。  都築氏はTシャツについて、いつ頃からか、こんなことに気づく。通常、ファッションは値段が高かったり、有名ブランドだったり、誰が見ても「ヨシ」とされるものがリスペクトされるワケだが、Tシャツは違う。「誰も見たことないもの」や、「ヨシなのかダメなのか判断に迷う」ほうがリスペクトされたりする。そして、「ヨシなのかダメなのか判断に迷う」Tシャツには、着用する本人の確固たる意思や、根拠のない自信、なによりも個人的な記憶が染みついていることが多々あるのだ。  本書に登場するTシャツの持ち主は、年齢、性別、職業だけが記載されている。この話はあの人だな、とわかるようなかなり著名人の場合もあるが、9割方は一般人。けれど、一般人から語られるTシャツ物語にこそ、とてつもないすごみがある。  例えば、福島県出身/デザイナー/33歳女性の場合。  彼女の家はちょっと変わっていた。7人暮らしで、父親と母親は、町で変わり者呼ばわりされているじいちゃんに働いた金をすべて上納し、1カ月約1万円で、家計のやりくりを命じられていた。母親は発狂してはたびたび実家へ帰り、戻ってきては、じいちゃんにコテンパンに叱られる。そんな日々の中、父親がじいちゃんの命を狙って風呂場を襲撃するも、失敗。そこで、家族そろって夜逃げ同然で家を出た。健康ランドで1カ月過ごした後、父親の就職が決まって埼玉へ。学校生活は順風満帆だったが、両親の仲は破綻し、友達に何も告げられないまま、父親と福島へ戻ることに。ところが、福島では“標準語で気取っている”とイジメに遭い、不登校で勉強が遅れ、高校受験も失敗。荒れに荒れた生活の中、父親が再婚。家からも追い出され、16歳で付き合っていた彼氏の家に預けられる。親にも見放された時に、味方してくれていたばあちゃん。そんなばあちゃんを描いたオリジナルTシャツ――。  ものすごく要約してしまったが、このドラマにもなりそうな濃厚さは、なんなのか? 本書には1ページでさらっと書かれた話もあるが、多くは数ページを費やして、Tシャツの持ち主がどんな家庭環境で育ち、青春時代をどんなふうに物事を考えて過ごし、社会へ飛び出して今に至るのかまでつながっていく。そういった人生の回想録のようなものであり、15ページにも及ぶ短編小説レベルのものまである。  音楽を聴くと、あの頃を思い出すように、捨てられないTシャツには、個人の何か強烈な記憶を呼び覚ますスイッチがあるのかもしれない。 (文=上浦未来) ●つづき・きょういち 1956年東京生まれ。編集者。現代美術・建築・写真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。93年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』(ちくま文庫)を刊行。97年、『ROADSIDE JAPAN』(ちくま文庫)で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年より有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS'weekly(http://www.roadsiders.com/)を配信中。Tシャツのサイズは3L。

東京都が本格的なBL規制を開始か!? 東京都の不健全図書指定で異例の一挙に5冊指定

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東京都青少年・治安対策本部ホームページより
 いよいよ、BL(ボーイズラブ)への規制が本格化するのだろうか?  10日に開催された東京都の青少年健全育成審議会で、BLと男性向け合わせて一挙に5冊が不健全図書指定された。  東京都が毎月実施している不健全図書指定だが、近年は毎月2~3冊程度で推移しており、一度に5冊も指定されるのは、極めて異例だ。  指定図書の内訳はBLが3冊、男性向けが2冊。  BLは、藍川いたる『かべアナ 学園入獄編』『かべアナ 学園出獄編』(ともにマガジン・マガジン)と、アンソロジー『カーストBL』(フロンティアワークス)。その他は、早乙女もこ乃『つぐなわれ』、甘乃くぐり『いつの間にか背後にキモいオヤジが…』(ともにジーウォーク)である。  ここで目立つのは、BLが一挙に3冊も指定されていること。とりわけマガジン・マガジンの2冊は、2015年1月に指定された『かべアナ』に続くシリーズ。すでに指定されたシリーズ作がありながら、変わらず発行しているということを鑑みて指定候補に挙げられたと考えられる。  また、昨年から審議会に出席している委員からは「BLに対する風当たりは相当厳しい」という声も漏れてきている。 「指定の候補となる図書は、東京都の職員が店頭で購入している。その中で、BLが明らかに目立っているのは間違いありません。出版社側も、すでにどんなことをやったら指定されるのか、わかっていないはずがないでしょう。事態は、指定されるような表現をやめるか、男性向けのように自主規制マークをつけるかを判断するところまできていると思います」  そう語るのは、不健全図書指定の事情をよく知る業界関係者。  今回、指定されたBLのうちマガジン・マガジンは、大手出版社が多く加盟する日本雑誌協会の加盟社。フロンティアワークスは、言わずと知れたアニメイトグループの重要な一角で、数々のアニメ作品にも関係する業界の大手企業。常々、指定回数の累積を避けるために、発行元を別法人に切り替える手段を取る出版社もあるが、「そうしたテクニックは、東京都にバレバレ」といわれてきた。ゆえに、この指定も単なる店頭で目立っているという事実を超えた意図も感じられる。  なお、今回のBL大量指定について東京都青少年課の重成浩司課長に尋ねたところ「まだ公表前なので、お話は公表後にしていただけると……」と丁寧な対応であった。 (取材・文=昼間たかし)

東京都が本格的なBL規制を開始か!? 東京都の不健全図書指定で異例の一挙に5冊指定

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東京都青少年・治安対策本部ホームページより
 いよいよ、BL(ボーイズラブ)への規制が本格化するのだろうか?  10日に開催された東京都の青少年健全育成審議会で、BLと男性向け合わせて一挙に5冊が不健全図書指定された。  東京都が毎月実施している不健全図書指定だが、近年は毎月2~3冊程度で推移しており、一度に5冊も指定されるのは、極めて異例だ。  指定図書の内訳はBLが3冊、男性向けが2冊。  BLは、藍川いたる『かべアナ 学園入獄編』『かべアナ 学園出獄編』(ともにマガジン・マガジン)と、アンソロジー『カーストBL』(フロンティアワークス)。その他は、早乙女もこ乃『つぐなわれ』、甘乃くぐり『いつの間にか背後にキモいオヤジが…』(ともにジーウォーク)である。  ここで目立つのは、BLが一挙に3冊も指定されていること。とりわけマガジン・マガジンの2冊は、2015年1月に指定された『かべアナ』に続くシリーズ。すでに指定されたシリーズ作がありながら、変わらず発行しているということを鑑みて指定候補に挙げられたと考えられる。  また、昨年から審議会に出席している委員からは「BLに対する風当たりは相当厳しい」という声も漏れてきている。 「指定の候補となる図書は、東京都の職員が店頭で購入している。その中で、BLが明らかに目立っているのは間違いありません。出版社側も、すでにどんなことをやったら指定されるのか、わかっていないはずがないでしょう。事態は、指定されるような表現をやめるか、男性向けのように自主規制マークをつけるかを判断するところまできていると思います」  そう語るのは、不健全図書指定の事情をよく知る業界関係者。  今回、指定されたBLのうちマガジン・マガジンは、大手出版社が多く加盟する日本雑誌協会の加盟社。フロンティアワークスは、言わずと知れたアニメイトグループの重要な一角で、数々のアニメ作品にも関係する業界の大手企業。常々、指定回数の累積を避けるために、発行元を別法人に切り替える手段を取る出版社もあるが、「そうしたテクニックは、東京都にバレバレ」といわれてきた。ゆえに、この指定も単なる店頭で目立っているという事実を超えた意図も感じられる。  なお、今回のBL大量指定について東京都青少年課の重成浩司課長に尋ねたところ「まだ公表前なので、お話は公表後にしていただけると……」と丁寧な対応であった。 (取材・文=昼間たかし)

「会場に行くのが怖い……」でも大丈夫!? “不良の格闘技大会”『THE OUTSIDER』生中継が決定!

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第8戦より
 10年目に突入した“不良の格闘技大会”が生中継される。  11日、アマチュア格闘技大会『THE OUTSIDER』を主催するRINGS・前田日明代表が都内で会見を行い、7月30日に行われる同第47戦(東京・ディファ有明)を生中継すると発表した。  同大会について、「アマチュアとしては一番レベルが高いと思われる試合もある」と自負する前田代表だが、一方でコワモテの選手や関係者が多く訪れる会場に「(一般の格闘技ファンが)行くのが怖いんじゃないか、不良のお兄ちゃんにからまれるんじゃないかというイメージがあると思う」といい、今回の生中継を決意。現状ではニコニコ生放送での配信を予定しているが、他のチャンネルでの配信も調整中だといい、追って公式サイトで情報を発信していくという。
「会場に行くのが怖い……」でも大丈夫!? 不良の格闘技大会『THE OUTSIDER』生中継が決定!の画像2
前田日明代表によれば「純粋な現役の不良は30%くらい。あとは引退した子たちや、医大生、弁護士、いじめられっこなど、アウトサイダーのマッチメークが日本の若者の縮図になっている」とのこと。
 今回の生中継で、初めて『THE OUTSIDER』を目にするファンに対しては、「この大会は、軍鶏のケンカのような試合から、技術力の高い試合まで、いろいろあると思います。選手たちは本当に、純粋で礼儀正しい。試合が終わったら必ず彼らが述べるのは、自分を支えてくれた人たち、応援してくれた人たちへの感謝の言葉なんです。そういう選手たちを見てほしい」と語った。
「会場に行くのが怖い……」でも大丈夫!? 不良の格闘技大会『THE OUTSIDER』生中継が決定!の画像3
ラウンドエンジェルちゃんも見どころです。
 また、この会見では12月10日に大田区総合体育館で『THE OUTSIDER』大会を開催することも発表され、ビッグマッチにふさわしいカードや企画、演出も考えているという。  さらに前田は、「来年はRINGSとしてもチャレンジの年にしたい」とし、夏以降に向けてヘビー級を中心とした総合格闘技のプロ大会を開催することを表明。重ねて、中国進出の意向も明らかにした。 『THE OUTSIDER第47戦』の詳細は以下より。 ■開催日時 2017年7月30日(日)14時会場/15時開始(予定) ■開催会場 東京・ディファ有明 ■販売席種 VIP席/15,000円(最前列・パンフレット付) SRS席/8,000円 RS席/7,000円 S席/6,000円 ※パンフレット付:大会当日に会場内の専用ブースにて、チケットの半券を提示して下さい。 ■チケット発売所 ・チケットぴあ http://t.pia.jp/ (Pコード/836-166) ・ローソンチケット http://l-tike.com/ (Lコード/34813) ・株式会社RINGS「THE OUTSIDER」事務局 TEL 03-3461-6698 ■生中継 当日の模様は「ニコニコ生放送」ほか複数チャンネルにて生中継 ※大会当日、RINGS公式サイト(http://www.rings.co.jp/)からリンク ※詳細はRINGS公式サイト上で発表予定

偉大なる60点マンガ!? 『ツヨシしっかりしなさい』は、こんな内容だった!

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『ツヨシしっかりしなさい(1)』(講談社)
 バシーン!! ツヨシー! しっかりしなさい!! 姉に平手打ちされるシーンが印象的なマンガ、『ツヨシしっかりしなさい』。皆さんは読んだことがありますでしょうか? 1986年から1990年まで「週刊モーニング」(講談社)で連載され、92年にはアニメ化。フジテレビの日曜夜6時という『ちびまる子ちゃん』と同じ枠で放映され、94年にスーパーファミコンでゲーム化までされている、いわば「国民的マンガ」のひとつともいえる作品です。  先日Twitter上で『ツヨシしっかりしなさい』のアニメ版が話題になり、「見ていたはずなのだが、内容はよく覚えていない」「主題歌だけはよく覚えている」「実は、アニメ化なんかされてなかったんじゃないか?」などといった声が多数ありました。国民的マンガであるはずなのに、この存在感の耐えられない薄さ……。そこで今回は、『ツヨシしっかりしなさい』とは一体どんなマンガだったのか、検証してみたいと思います。  本書の作者は永松潔先生。単行本として全19巻が刊行されているだけでなく、続編として『ツヨシもっとしっかりしなさい』『ツヨシしっかり2しなさい』、小学生時代を描く『ツヨシくんしっかりしなさい』などが出ている人気シリーズです。それにしても、これほどまで執拗に「しっかりする」ことを要求されているマンガのキャラクターって、ほかにいるでしょうか?  ほのぼの感あふれる絵柄で、親子そろって楽しめるファミリー向けマンガであるかのようにイメージしがちですが、違います。事実、単行本に書かれている作品キャッチコピーは、このようになっています。 「家庭(ファミリー)という名の戦場で雄々しく生きる男一匹」  戦場、そして男一匹……。家族をテーマとしたマンガにしては、あまりに違和感のあるキーワード。実は『ツヨシしっかりしなさい』とは、気の強い女たちに囲まれた男が家庭内で1人たくましく生きていく姿を描く、サバイバルマンガなのです。  主人公は、井川家の長男である高校生「井川強(ツヨシ)」。井川家は父親が単身赴任しており、同居しているほかの家族は全員女。街で評判の美人だが、気が強く暴力的な長姉・恵子と、恵子ほど気は強くないが、嫌なことはツヨシに押しつける次姉・典子。そして、炊事・洗濯・掃除といった家事を一切やらず、娘には甘いが息子と夫にはやたらと厳しい母・美子。  この女三人衆に逆らえない一番年下のツヨシは、井川家の炊事・洗濯・掃除および家計の管理の一切をやらされている上、ドジったり愚痴ったりすると姉に強烈なビンタを食らうという、舞踏会デビュー前のシンデレラを彷彿とさせる悲惨な状況なのです。日本全国のおっかない姉を持つ男子たちの苦労を代弁する「国民的弟マンガ」といえるのではないでしょうか?  それにしても、長姉&次姉&母の女三人衆の理不尽さは特筆に値します。全弟が号泣間違いなしのエピソードを、いくつかご紹介しましょう。 【エピソード1】  女三人衆がスナックで飲んでいたところ、お金が足りなくなったため、高校生のツヨシを呼び出してお金を持ってこさせた上、飲酒させます。そこへ、運悪く警察が巡回に。しかし、ここでツヨシとはアカの他人のふりを決め込む女三人衆。ツヨシだけが警察に詰問されます。こんな見事なトカゲの尻尾切りエピソード、見たことないよ! 【エピソード2】  懸賞で1泊2日の伊豆温泉無料招待券を当てたツヨシ。しかし、行けるのは3名のみ。ツヨシ以外の2人は誰が行けるのか? 姉2人と母は露骨にツヨシに擦り寄り、ご機嫌を取るようになりますが、女同士の醜い争いが次第にエスカレート。このままでは家族が崩壊してしまうことを危惧したツヨシ。家族の絆を取り戻すため、旅行券を破り捨ててしまいます。しかし、これが完全に裏目に出て、ツヨシが女三人衆から代わる代わる猛烈なビンタを食らうハメに。最終的に、旅行券はセロテープでつなげれば有効であることがわかり、ツヨシ抜きの女三人衆で伊豆旅行へ行くことになったのでした。こんなトラウマになりそうな懸賞エピソード、ありえないよ! 【エピソード3】  なんの因果か、クリスマスが誕生日のツヨシ。誕生日兼クリスマスパーティをやるから何も食べずに夜まで待っていろ、食べたら殴るぞ! と女三人衆に脅され、家でじっと待っているツヨシ。しかし、女三人衆は、それぞれイケメンや同僚に声をかけられて飲みに行ってしまい、家でパーティーをやることは完全に忘れていました。理由もわからず腹をすかせたまま、1人待ち疲れてちゃぶ台で眠ってしまうツヨシ……。こんな悲惨なバースデーある? 聞いたことないよ!  実は一番しっかり者なのに、周囲に決して評価されず、理不尽な要求をされても、暴力を恐れて反抗できず、ひたすら家事に従事する。単なるコメディを超えた男の絶望がそこにあります。ツヨシ、頼むから強く生きてくれ……その名の通り強く! 読みながら、そう願わざるを得ないのです。  ……と、こんな感じで作品をご紹介したものの、あらためて作品を読み直すまで、「あれ、『ツヨシしっかりしなさい』ってこんな作品だったっけ?」と、まるで記憶がなかったのも事実。一度読み始めると止まらなくなる不思議な中毒性を持っているのですが、読んだ後、どんな話だったか具体的なエピソードが思い出せるかというと、なぜかよく思い出せないのです。  要するに、全米が泣くようなインパクトのある、120点ぐらいの突き抜けた面白さはないけど、30点ぐらいのクソつまらない回もない。いつ読んでもそこそこ楽しい、常に60点ぐらいの面白さを安定的に維持できることこそが、国民的マンガの秘訣なのかもしれません。そう、『ツヨシしっかりしなさい』とは、偉大なる60点マンガなのであります。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから