7月1日をもって終了してしまったGoogleリーダー。乱立したRSSリーダーのシェアを、一時はほぼ独占したサービスを終了させてしまうGoogleには、怒りすらこみ上げてくる。 サービス終了が告知されてから、ネット上ではGoogleリーダーの継続を求める運動も行われていたが、Googleは聞く耳を持たないままこの日を迎えた。 筆者も、1日に2回はGoogleリーダーをチェックして、最新のニュースを取得する習慣が身に付いていた。だから、代替のリーダーを探さなければならない。真っ先に代替のリーダーとして名乗りを上げていたのが「Feedly」だが、終了が近づいた6月末、さらなる新手が登場した。北米の面白ニュースサイト(という理解でいいのか?)Diggが提供する「Diggリーダー」と、AOLが提供する「AOLリーダー」がそれだ。提供を開始するニュースが流れたのはいいが、その時点でDiggのサイトにアクセスすると「開発中なので完成したらメールするから、メールアドレスを入力してね。大丈夫! スパムは送らないよ(意訳)」と、メールアドレスの入力を促す画面が。AOLは登録するとメールで「順番待ちだよ(意訳)」という状態。間に合うのかと心配していたら、先週になり、どちらのサービスも利用可能になった。 そこで、まずは「Feedly」「Diggリーダー」「AOLリーダー」を試してみることに。どれも機能についてはリーダーの基本を押さえているが、まず利用する気になれなかったのは「AOLリーダー」だ。理由は単純で、画面に常に広告が表示されるのが邪魔なのだ。加えていえば「AOLリーダー」だけは最初に表示される画面で、Googleリーダーからの移行が表示されない(インポートへのリンクをクリックすると表示)。そうした面で一歩後れを取っているといえる。 残る「Feedly」と「Diggリーダー」を比較してみよう。インターフェースの美しさは「Feedly」が際立っている。通常のリスト表示のほか、画像メインで表示するなど表示方法が多彩なほか、キーボードショートカットなど使い勝手のよい機能を搭載している。また、先行してリリースされていたこともあって、すでに連携しているスマホアプリも多い。利用者の数が多いこともあり、Googleリーダー後継の本命としての地位は揺らいでいない。 対して「Diggリーダー」だが、キーボードショートカットが用意されている点では「Feedly」に劣らない。なにより便利だと感じたのは「Popular」機能だ。これは、登録しているフィードの中から、話題になっている記事を示してくれるというもの。まだ、iOSとAndroid版がリリースされていないのが不便だが、PCで試した限りでは「Feedly」と、どちらを選ぶか迷いそうだ。 このほか「Pulse」「Newsvibe」も試してはみたが、最終的にある程度のユーザーを確保して、順次改良を進めてくれそうなのは「Feedly」と「Diggリーダー」の2つになりそうな感じだ。 乗り換えなきゃいけないと思っているうちに7月を迎えてしまった人は、まず、この2つを試してみてはいかがだろうか。 (文=昼間たかし)Feedlyより
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酔いどれ3人組のドタバタ劇も、ついに見納め!『ハングオーバー!!! 最後の反省会』
今週紹介する新作映画は、おバカで下品なコメディと、禁酒法時代の無法者たちを描いた暴力と愛と復讐のドラマ。いずれもアメリカの端的な一面を切り取って劇的に提示してくれる、ぜいたくなハリウッドエンタテインメントだ。 公開中の『ハングオーバー!!! 最後の反省会』は、世界的大ヒットを記録した人気コメディ『ハングオーバー!』シリーズの完結編。かつて、ラスベガスとタイで泥酔しては騒動を繰り広げてきたフィル、ステュ、アランの3人組は、大人になりきれない息子アランに心を痛めて他界した父親の葬儀で再会する。同じ頃、タイの刑務所に収監されていたアジア系ギャングのチャウが脱獄し、秘かに米国へ渡航してメル友のアランに接触。昔、チャウから金を盗まれたギャングのマーシャルは、3人組の親友ダグを人質にとり、フィルたちにチャウを見つけて金を取り戻すよう要求する。 監督は3作続投のトッド・フィリップス。フィル役のブラッドレイ・クーパー、ステュを演じるエド・ヘルムズ、そしてアランに扮するザック・ガリフィアナキスの3人が困惑顔で同じフレームに収まっているだけで、自然と笑いがこみ上げてくる。ケミストリーを発揮するトリオを振り回す2人のギャング、ケン・チョンとジョン・グッドマンもいい味。特にチャウ役のチョンは、アクションスターばりの本格的なスタントを数多くこなし、物語をダイナミックにリードする。今回の旅を通じてアランが成長し、彼らが織りなすドタバタもとうとう見納め。前2作をDVDなどでしっかり予習して、最後まで心おきなく爆笑していただきたい。 続いて6月29日に封切られる『欲望のバージニア』(R15+)は、アメリカ禁酒法時代の実話を基にしたドラマで、シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ジェシカ・チャステインらの豪華共演も話題の作品。1931年のバージニア州、密造酒ビジネスが最も盛んな無法の地で、荒くれのボンデュラント3兄弟は「不死身」の名を馳せていた。しかし、次男フォレスト(ハーディ)がシカゴから来た女性マギー(チャステイン)に心を奪われ、三男ジャック(ラブーフ)は牧師の娘バーサ(ミア・ワシコウスカ)に恋したことから、兄弟の力関係に変化が。一方、新任の捜査官レイクス(ガイ・ピアース)は高額のワイロを要求するも、兄弟はこれを拒否。非情なレイクスは、兄弟の愛する女性や仲間への脅迫と暴力をエスカレートさせていく。 オーストラリア出身で『ザ・ロード』(09)のジョン・ヒルコート監督がメガホンを取った。1930年代を見事に再現したセットに、古酒のようにしみじみ味わい深い映像。その中で個性豊かなキャストたちが、入魂の演技をたっぷり見せてくれる。とりわけトム・ハーディの圧倒的な存在感と、ジェシカ・チャステインの憂いを帯びた魅力が印象的。大切なものを命懸けで守ることの意味、報復行為の是非を含め、現代のアメリカの状況と照らし合わせても大いに考えさせられる映画だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ハングオーバー!!! 最後の反省会』作品情報 <http://eiga.com/movie/77571/> 『欲望のバージニア』作品情報 <http://eiga.com/movie/77466/>(C)2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND LEGENDARY PICTURES
田中理恵だけじゃない! “悪質イベンター”がアニメイベントで大暴れ中
いまやすっかりアニメ、声優ファンの間に定着したライブイベントだが、ここ最近、ファンのマナー低下による問題が噴出している。 その最たるものが、東京・シネマサンシャイン池袋にて6月22日に開催された、テレビアニメ『超次元ゲイム ネプテューヌ』の先行上映イベントで起きた乱入事件だ。同イベント開催中、突如ステージにナイフを持った男が乱入、その後、現行犯逮捕された。来場者のTwitterから、男がイベントに出演していた声優・田中理恵を名指ししていたことなどが明らかとなっている。 田中理恵といえば、昨年、人気声優・山寺宏一と入籍した人気の女性声優。本業以外にも、歌手活動や水着グラビアを披露するなど、多岐にわたる活動でアニメファンにはよく知られる存在だ。 普段は明るく親しみやすい性格の彼女だが、ステージから避難する際に転倒し、膝を打撲。また、精神的なショックを受けたことが所属事務所・リトリートから発表され、イベント前まで頻繁に更新されていた公式Twitterも休止することになった。 今回の件に関して、アニメのイベント運営関係者は「犯人は、以前からマークされていた田中さんのストーカーではないか」と語る。 「以前から田中さんには、執拗なストーカー行為を行うファンがいることは関係者の間では知られていました。警備の目を盗んで控え室に忍び込んだことも、一度ではありません。犯人の顔も事務所には割れていたので、今までは入り口の段階で入場を拒否するなどして対応していたのですが……」(同) イベントの規模の大きさに比例して、犯人が会場に潜り込む隙が大きくなってしまったということか。ともあれ、一日も早い現場復帰を願いたいところだ。 一方、同日、東京・Zepp DiverCity Tokyoにて開催されたアニソンライブイベント「@JAM2013」会場でも、ファン同士による乱闘騒ぎが起きていた。 「アイドルマスター シンデレラガールズ」「μ's」「藍井エイル」など人気の女性アニソンシンガー・声優ユニットが競演する同イベント会場の最前列に、数名の集団が陣取り、ほかの観客の鑑賞を阻害したのみならず、最前列に近づく自分たち以外の観客を引き剥がす、暴行を加えるなどの迷惑行為を繰り返し、三森すずこ出演時にはついに流血騒ぎまで発生。イベント後、これらの暴力行為に対して、出演者もTwitter上で暗に批判を口にしていたことから、ステージ上からもその混乱具合が確認できていたと思われる。 「あちこちのアニメ系イベントに出没し暴れ回る、いわゆる『悪質なイベンター』集団は、実際に問題になっています。彼らはライブやイベントを楽しむというよりも、『目立ちたい』『暴れたい』という目的でイベントに来ています。ここ最近、イベンターたちの狼藉ぶりはますますひどくなってきており、イベントの進行を邪魔するようなコールや声かけ、イベンター同士で肩車してステージ上に上がろうとしたり……。特に分別がつかない若いファンが集まるイベントは、動物園みたいなノリですよ」(レーベルスタッフ) ここでいう「イベンター」とは、本来の「イベントを主催する人」という意味ではなく、「アニメ・声優系イベントに頻繁に行く人」という意味の、オタク界隈で使用されるスラングである。その中でも、先述のように迷惑行為を行うイベンターたちが「悪質なイベンター」である。 そういった「悪質なイベンター」たちの行動により、タレントにも被害が及びかねない事態も増えてきたことから、客席の最前列を使えないようにしてステージと客席の距離を空ける対応をしたイベントもあったそうだが、もっとステージの近くで応援したいという一般来場者から批判を受けてしまったなど、笑えないエピソードもあるそうだ。 このように、これまでは来場者の善意と彼らへの信頼を元にイベントを運営してきたアニメ・声優業界だが、今後は強硬な対応を取らざるを得なくなるのは必至だろう。早速、6月30日に開催される『変態王子と笑わない猫。』イベントでは、身分証の提示と手荷物チェックの実施が発表され、今後もこの流れは続くと思われる。 ファンとの距離感の近さが魅力の一つだったが、ファン人口拡大と質の低下に応じて、業界側のスタンスも再検討すべき時期にきているのかもしれない。 (文=龍崎珠樹)イメージ画像
バカバカしくも、愛さずにはいられない!『変な協会~協会力が世界を救う!?~』
好きなこと、没頭できることは、人それぞれ。その対象は、食べ物かもしれないし、はたまたアニメやアイドルかもしれない。その“好き”な気持ちが募りに募って、“ひょっとして、こんなに好きなのは自分だけかも?”と思った瞬間、人は勢いあまって協会を作りたくなるらしい……? 『変な協会~協会力が世界を救う!?~』(メタモル出版)は、タイトル通り、マジメな協会を紹介する本ではもちろんない。著者の「日本キョーカイ協会」が、バカバカしさを身にまといながらも、その影響力に驚きと感動がある協会を厳選し、紹介している。 その中でも特に突出しているのが、日本合コン協会、日本ロマンチスト協会、日本鳩レース協会、日本おはじきサッカー協会、日本キャンディーズ協会、日本ふんどし協会、日本モダンガール協会、日本雨女雨男協会、日本唐揚協会の9協会。協会名を見るだけでも、なにやら圧倒されるものがあるが、各会長の口から飛び出す、驚きの活動内容やひと言の破壊力が、どれもすさまじい。 トップを切るのは、日本合コン協会会長、元タレントでグラビアタレントの絵音さん。最も活躍していた時期には、3年間で1000試合をこなしていたという合コンのプロ。時には1日3試合、1試合目は19時から銀行員、2試合目は22時からテレビ局の人、3試合目は深夜2時から芸人と、ストイックに合コンをこなした。その結果、 「本当に東京はもうどこに行っても絶対知っている人がいるので、住みづらくなってますね。だから、最近地方とかに活動の拠点を本当に移そうかと(笑)」 だそう。絵音さんが協会を設立した目的は、なんと世界進出。夢は「合コンワールドツアー」というから、話はデカい。実際に、台湾市内で街コンを開催し、100人以上もの参加者を集める大成功を収め、着々とその野望を果たしているというからすごいではないか。 また、「日本ふんどし協会」の中川ケイジ会長は、ふんどしオンリーで生活している。かつて、日々の激務で体調を崩した時に、ある人からふんどしを強く勧められ、騙されたと思って試しに履いてみたところ「これだ!」とピンと来たという。ものすごく気に入り、“ふんどし商売”を考えるうちに、病は気からで、なんと回復することができたという……。現在、「1億2000万人 総ふんどし化計画」を打ち上げ、ふんどしの普及に努める。その活動の一環として、「ベストフンドシスト」なる賞まで制定し、2013年には、壇蜜が仲間入りしていることも、お伝えしておかなければならない。 このように変な協会は、知らず知らずのうちに、日本、いや、世界を元気にしているのだ。すごいぞ、変な協会力! 本書ではこの9つの協会以外にも、多数の変な協会を紹介し、その名(迷!?)言をまとめ、変な協会カタログまで作成しているので、これを読めば、変な協会のすべてが分かる。ぶっ飛んでるけど、知る価値アリ。変な協会、バンザイ! (文=上浦未来) ●日本キョーカイ協会 日本に増殖中の“協会”に着目し、そのマニアックな世界を探索&応援&世に知らしめるべく設立。会長・杉山ジョージ、GM・オカヒデキはWebラジオ局で放送中の番組『キョーカイ協会』の構成&MCを務める。 『変な協会~協会力が世界を救う!?~』(メタモル出版)は、タイトル通り、マジメな協会を紹介する本ではもちろんない。著者の「日本キョーカイ協会」が、バカバカしさを身にまといながらも、その影響力に驚きと感動がある協会だけ厳選し、紹介している。『変な協会~協会力が世界を救う!?~』(メタモル出版)
バカバカしくも、愛さずにはいられない!『変な協会~協会力が世界を救う!?~』
好きなこと、没頭できることは、人それぞれ。その対象は、食べ物かもしれないし、はたまたアニメやアイドルかもしれない。その“好き”な気持ちが募りに募って、“ひょっとして、こんなに好きなのは自分だけかも?”と思った瞬間、人は勢いあまって協会を作りたくなるらしい……? 『変な協会~協会力が世界を救う!?~』(メタモル出版)は、タイトル通り、マジメな協会を紹介する本ではもちろんない。著者の「日本キョーカイ協会」が、バカバカしさを身にまといながらも、その影響力に驚きと感動がある協会を厳選し、紹介している。 その中でも特に突出しているのが、日本合コン協会、日本ロマンチスト協会、日本鳩レース協会、日本おはじきサッカー協会、日本キャンディーズ協会、日本ふんどし協会、日本モダンガール協会、日本雨女雨男協会、日本唐揚協会の9協会。協会名を見るだけでも、なにやら圧倒されるものがあるが、各会長の口から飛び出す、驚きの活動内容やひと言の破壊力が、どれもすさまじい。 トップを切るのは、日本合コン協会会長、元タレントでグラビアタレントの絵音さん。最も活躍していた時期には、3年間で1000試合をこなしていたという合コンのプロ。時には1日3試合、1試合目は19時から銀行員、2試合目は22時からテレビ局の人、3試合目は深夜2時から芸人と、ストイックに合コンをこなした。その結果、 「本当に東京はもうどこに行っても絶対知っている人がいるので、住みづらくなってますね。だから、最近地方とかに活動の拠点を本当に移そうかと(笑)」 だそう。絵音さんが協会を設立した目的は、なんと世界進出。夢は「合コンワールドツアー」というから、話はデカい。実際に、台湾市内で街コンを開催し、100人以上もの参加者を集める大成功を収め、着々とその野望を果たしているというからすごいではないか。 また、「日本ふんどし協会」の中川ケイジ会長は、ふんどしオンリーで生活している。かつて、日々の激務で体調を崩した時に、ある人からふんどしを強く勧められ、騙されたと思って試しに履いてみたところ「これだ!」とピンと来たという。ものすごく気に入り、“ふんどし商売”を考えるうちに、病は気からで、なんと回復することができたという……。現在、「1億2000万人 総ふんどし化計画」を打ち上げ、ふんどしの普及に努める。その活動の一環として、「ベストフンドシスト」なる賞まで制定し、2013年には、壇蜜が仲間入りしていることも、お伝えしておかなければならない。 このように変な協会は、知らず知らずのうちに、日本、いや、世界を元気にしているのだ。すごいぞ、変な協会力! 本書ではこの9つの協会以外にも、多数の変な協会を紹介し、その名(迷!?)言をまとめ、変な協会カタログまで作成しているので、これを読めば、変な協会のすべてが分かる。ぶっ飛んでるけど、知る価値アリ。変な協会、バンザイ! (文=上浦未来) ●日本キョーカイ協会 日本に増殖中の“協会”に着目し、そのマニアックな世界を探索&応援&世に知らしめるべく設立。会長・杉山ジョージ、GM・オカヒデキはWebラジオ局で放送中の番組『キョーカイ協会』の構成&MCを務める。 『変な協会~協会力が世界を救う!?~』(メタモル出版)は、タイトル通り、マジメな協会を紹介する本ではもちろんない。著者の「日本キョーカイ協会」が、バカバカしさを身にまといながらも、その影響力に驚きと感動がある協会だけ厳選し、紹介している。『変な協会~協会力が世界を救う!?~』(メタモル出版)
全レトロゲームファン必見のミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』初日最速レポート!
ファミコンが発売30周年を迎えたということで、にわかに盛り上がりをみせる2013年のレトロゲーム・シーン。その中心タイトルの一つが、日本のテレビゲーム黎明期を盛り上げたゲームメーカー・ジャレコが1985年に発売したファミコンゲーム『忍者じゃじゃ丸くん』である。 6月20日に、ニンテンドー3DS用ソフト『忍者じゃじゃ丸くん さくら姫と火竜のひみつ』(発売:ハムスター)を発売。さらに今後、実写映画化も企画されているという謎の大フィーバー中の『忍者じゃじゃ丸くん』だが、その映画版に先駆けて6月22日よりミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』の上演が東京・新宿シアターブラッツにてスタートした。 主人公・じゃじゃ丸くん役の服部翼をはじめ、汐崎アイル、寿里などテレビ番組『戦国鍋TV』やミュージカル『テニスの王子様』で活躍するイケメン俳優や、アイドルグループ・アイドルカレッジの重本未紗といったフレッシュな面々が舞台に登場するミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』は、公式発表以降レトロゲームファンの間で話題騒然。かつてゲームをプレーしたことのある人なら誰しも、「一体、あのゲームをどうミュージカルにするんだ?」と疑問に感じたことだろう。 そこで今回は、上演初日のステージに潜入。ミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』の全貌を、この目で確かめてきた! まずは、ボスキャラ・なまず太夫の妻・なまず太夫太夫(山科香絵)がファミコン本体を持って登場。紫色の『忍者じゃじゃ丸くん』のカセットを胸元から取り出し、フッと息を吹きかけて本体にセット! いきなりの先制パンチに、会場は大盛り上がりだ。そしてスタートするのは、『忍者じゃじゃ丸くん』メインBGMをロック調にアレンジしたメインテーマ。全キャストによる、迫力のオープニングでミュージカルの幕は上がった。
物語のあらすじは以下の通り。
藤重政孝演じるなまず太夫(超シブい!)にさらわれたさくら姫を救うべく、じゃじゃ丸くんが旅に出る!
以上!
原作通りのシンプルなストーリーなのだが、ポイントはここに肉付けされるミュージカルならでは設定だ。例えば、本来ならじゃじゃ丸くんの兄・忍○くん(大人の都合で自主規制)が姫を救出に向かうべきなのだが、現在行方不明。そこで、ジャレコ流忍法の後継者となったじゃじゃ丸くんが、兄の代わりに旅立つことになる、という設定はゲーム開発の裏事情を知っているレトロゲームファンならニヤリとせざるを得ないだろう。また、ゲームに2プレイヤー用キャラとして登場する予定だったという没キャラ・かげ丸が、じゃじゃ丸のライバル的存在として登場するなど、とにかくネタがいちいち濃いのである。重箱の隅をつつくような表設定・裏設定を盛り込み、それをちゃんとエンタテインメント的にまとめあげていくシナリオには感心するばかりだ。
また、中盤に差し掛かるあたりで、毎回日替わりのゲストが登場。初日はミュージカル『テニスの王子様』に出演した河原田巧也が先輩忍者役として登場。ニンテンドー3DS用ソフト『忍者じゃじゃ丸くん さくら姫と火竜のひみつ』で、じゃじゃ丸くんたちとステージ上でゲーム勝負を披露してくれた。
このようにコミカルなノリで展開した前半だが、中盤を越えたあたりから物語は急にシリアスな色彩を帯び始める。序盤にちりばめられていた小ネタの数々を伏線として回収していく、後半の怒涛の展開は圧巻。さらに序盤やゲーム勝負で見せた人懐っこい笑顔が印象的な服部翼の眼光も俄然鋭さを増し、舞台狭しと繰り広げられる複雑な殺陣や、忍法ガマパックンのシーンで再現される圧倒的なカタストロフは必見である。そしてゲームシステムを逆手に取った反則技スレスレのオチには、スタンディングオベーションを送るしかない。
結論として、ミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』はレトロゲームへのリスペクトと、同時に原作を破壊することを恐れない勇気に満ちた、一流のエンタテインメント作品だったと言える。
上演終了後、観客に感想を聞いたところ、
「ゲームは知らなかったけど、普通に楽しかった! ファミコンをやってみたくなった」(20代・女性)
「ネタが細かくて、懐かしかった。お話もよくできていて、最後まで飽きることなく楽しむことができた」(40代・男性)
という答えが返ってきたことからも分かるように、ゲームを知らなくても熱いアクション伝奇ミュージカルとして楽しめるし、ゲームを知っていれば懐かしさと原作の世界観とのギャップを味わうことができて、より一層ディープにストーリーを楽しめるはずだ。このように、一つの作品でも異なる価値観を持つ者が見れば、全く異なる印象を与えるミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』は、実はかなり複雑な計算の上に成り立っているのかもしれない。
そういえば、渡部紘士演じるクロベエも劇中でそんなことを言っていたっけ。
「ともあれ“価値観”を揺さぶるミュージカル。それが『忍者じゃじゃ丸くん』なのだ」
なお、本作は6月30日まで東京・新宿シアターブラッツにて毎日上演される予定。まだ当日券も手に入るとのことなので、気になる人はぜひともその目でミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』のすべてを確かめてみてはいかがだろうか。
(取材・文=有田シュン)
●ミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』
6月22~30日まで、東京・新宿シアターブラッツにて上演中。
・企画:三澤友貴
・演出/脚本:吉谷光太郎
・主催:レトロゲームシアター <http://retrogame-theater.com/>
ネタ? 本気のSF? ジェットコースターアニメ『革命機ヴァルヴレイヴ』を再検証
そろそろ4月スタートの春クールアニメの最終回ラッシュに突入する、テレビアニメシーンですね。放送前の下馬評どおりに面白かった作品もあれば、「どうしてこうなった」な作品もあり、百花繚乱な今クールアニメらしく、さまざまな結末が描かれることになると思われます。 そんな中、最終話直前の現在もなお「これは面白いのか?」「いや、面白い!」と、いまひとつ評価が定まらないアニメが『ヴヴヴ』こと『革命機ヴァルヴレイヴ』です。 『機動戦士ガンダム』『コードギアス 反逆のルルーシュ』など、多数のヒット作を世に送り出したアニメ制作会社・サンライズによる超王道にして大作ロボットアニメとして、鳴り物入りでスタートした本作。T.M.Revolutionと水樹奈々というアニソン界のスターがデュエットするオープニング主題歌「Preserved Roses」は10万枚超のヒットを記録し、バンダイから発売された主役ロボット・ヴァルヴレイヴのプラモデルも、店頭に並ぶとすぐさま売り切れになってしまうほどのフィーバーぶりを見せています。 そんなグッズ関連が絶好調な『ヴヴヴ』ですが、唯一、賛否両論なのが肝心のアニメ本編のストーリーだったりします。 以前、この連載で「過去の名作ロボットアニメをオマージュしたシーンが続出!」(http://www.cyzo.com/2013/04/post_13198.html)と書いたように、どっかで見たことがあるような設定やシーンが続出する本作。「二国間の戦争に巻き込まれた中立コロニーに住む主人公が、偶然最新鋭ロボットに乗り込み、エースパイロットになる」という第1話を見た視聴者(っていうか筆者)は、てっきりこの後コロニーから脱出なり軍属になるなりして、主人公たちは刻の涙の一つや二つ見ちゃうのかなと推測したりもしたんですが、まったくそんなこともなく学生だけでコロニーに居座り「国家として独立宣言」しちゃったり、ヴァルヴレイヴのパイロットになった主人公・時縞ハルトはなぜか人に噛み付くと人格ごと乗り移る「ヴァンパイア化」しちゃったり。はたまた、元アイドルでありメインパイロットの一人・流木野サキが歌う挿入歌に合わせてミュージックビデオみたいな映像が流れたり、何かあるとSNSに情報を公開して「イイネ!」的なボタンを世界中の人に押してもらったり、その合間に敵が攻めたり撤退したり……。なんだか妙に緊張感がないというか、全体的に文化祭の催しごとみたいに楽しいアトラクション満載の学園生活っぽい雰囲気すら漂っています。 非常に精緻な作画で描かれるキャラクターたちと、一機ごとに異なる性能を持つヴァルヴレイヴたちによる目の離せないロボットバトル。そのヴィジュアルを支える千住明による緊迫感満点のサウンドトラック(ガンダムファン的には『機動戦士Vガンダム』の人でおなじみですね)。 そんなヴィジュアル&サウンドが醸し出すヘビーな作風に対する期待感とはちょっと違う内容に、ネット上では「何がやりたいのかわからない」「ネタアニメなのか、本気のSFアニメなのかわからない」「なんで敵はいちいち手加減してくれるの?」など、突っ込みどころ満載の内容に酷評も少なくありません。 しかし、その一方で「毎回何が起こるかわからなくて面白い」「キャラのセリフや行動がいちいち斜め上をいってて目が離せない」など、ジェットコースター感覚を楽しむ声もあり、その楽しみ方を裏付けるようにアニメ雑誌では「スタッフそれぞれがロボットアニメの中で『見たい!』と思っているもの」をぶち込んだ、極めて快楽原則にのっとった作りになっていることが明かされています。 その結果が、第7話の櫻井アイナの突然の戦死だったり、第10話のハルトきゅんがサキをいきなり押し倒すレイプシーンだったりしたわけですね。スタッフはそういうシーンを見たかったのかもしれないけど、視聴者としてはいきなりすぎてビックリしましたよ~。しかし、この「いきなり」な展開こそ本作最大の魅力であるジェットコースター感覚の最たるもの。 確かにこれらのシーンはネット上でも賛否両論でしたが、実際のところ放送直後はDVD/Blu-rayのアマゾンランキングが急上昇したそうです。その購入者たちが本作のジェットコースター感覚を楽しめているかどうかは定かではありませんが、楽しみ方を理解するファンは確実に増えつつあるのです(購入者たちが単にエログロ好きだったという可能性も、なきにしもあらずですが)。 また物語も佳境に突入していく中で、どこか牧歌的な空気すら漂わせている主人公たちの住むコロニーや、そこを攻め落としたいのかどうかよくわからない動きをするドルシア軍の裏に何やら大きな秘密が隠されていることも明らかになってきました。なぜ敵軍は、本格的に主人公たち学生を殺しに来なかったのか。なぜ主人公たちの住む学校の下に、最新鋭のロボットが隠されていたのか。そして、なぜ主人公たちは、ヴァルヴレイヴのパイロットに選ばれたのか……。 ご都合主義と思われていたストーリーには、すべてちゃんとした理由が存在していたのです。その謎が徐々に明かされていく快感は、今まで途中下車することなくジェットコースターに乗っていた視聴者だけの特権といえるでしょう。 本作は分割2クール作品なので、とりあえず前半のストーリーは6月で終了しますが、続きは10月からスタート。今年いっぱいは『ヴヴヴ』の先の読めないジェットコースターなストーリーを楽しめそうですね。 (文=龍崎珠樹)『革命機ヴァルヴレイヴ』公式サイトより
ウィル・スミス親子が再共演! 鬼才・シャマラン監督が放つスペクタクル『アフター・アース』
今週紹介する新作映画2本は、ハリウッド製のSFアクションと、和製の人間ドラマ。場面設定は大きく違えど、いずれもメインキャラクター2人の重層的な関係性をじっくり描いたことで、見応えのある作品に仕上がっている。 『アフター・アース』(公開中)は、ウィル・スミスとジェイデン・スミスが『幸せのちから』(06)以来7年ぶりに親子で共演した、SFサバイバルアクション。環境が激変した地球を人類が放棄して別の惑星に移住してから1000年。伝説的な軍司令官サイファ(ウィル)と息子で軍候補生のキタイ(ジェイデン)は、宇宙遠征の途中で見知らぬ惑星に不時着する。大破した船体の一部が落下した100キロ先へ救援要請発信器を求め、重傷で動けない父に代わり、キタイは探索の旅へ。だが、この星こそ過酷な自然環境のなか大型野生動物が支配する変貌した地球であり、実戦経験のないキタイにさまざまな危険が襲いかかる。 息子ジェイデンとの会話を基に原案を作ったウィル・スミスが、『シックス・センス』(99)のM・ナイト・シャマランに脚色と監督を依頼した本作。親と子の葛藤や絆に加え、偉大なる先達とそれに憧れ追いかける後進という構図も、スミス親子の現実の関係性が投影されているようで興味深い。大自然の猛威、凶暴な野獣、そして究極の生物兵器「アーサ」との戦いを通じて、キタイが精神的に成長する過程がスピーディーなアクションと共に楽しめる。シャマラン監督といえば、初期作品のトレードマークだった「どんでん返し」が最近見られないのが寂しくもあるが、「恐怖」を克服することが成長のカギになっているあたりに、インド出身の監督らしい東洋思想のテイストも感じさせる。 続いて6月22日公開の『さよなら渓谷』(R15+)は、吉田修一の同名小説を原作に、真木よう子主演で映画化した大人向けのドラマ。緑豊かな渓谷で母親が幼い息子を殺害する事件が起こり、母子のアパートの隣室に住むかなこ(真木)と俊介(大西信満)も騒動に巻き込まれる。現場で取材を続けていた週刊誌記者の渡辺(大森南朋)は、俊介が15年前にかかわった事件が2人の関係に影を落としていると知り、かなこと俊介の過去と現在をめぐる秘密に迫っていく。 真木よう子が難役のキャスティングに渾身の演技で見事に応えた。吉田修一原作の過去の映画化作品、『パレード』や『悪人』(ともに10)と同様に、本作でも「心の闇」「悪」「罪」の本質にするどく迫り、男女間の「愛と憎しみ」「購(あがな)いと赦(ゆる)し」をヒリヒリするような痛みと共に提示する。メガホンを取ったのは、『まほろ駅前多田便利軒』(11)の大森立嗣監督で、同作に続き実弟の大森南朋を起用したことでも話題だ。切実さとやるせなさが全編に漂いながらも、一筋の希望を内包する穏やかで温かみのある映像が胸にしみる。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『アフター・アース』作品情報 <http://eiga.com/movie/58024/> 『さよなら渓谷』作品情報 <http://eiga.com/movie/77717/>配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
「秋葉原みたいにエロに溢れかえるのはダメ」と宣言する、「阿佐ヶ谷アニメストリート」って……?
JR東日本都市開発が、高円寺駅~阿佐ヶ谷駅間の高架下に予定している「阿佐ヶ谷アニメストリート」計画。これには、単に地元の杉並区だけではない、広い地域の発展が見込まれている。 杉並区は、全国で練馬区に次いで2番目にアニメ関連企業が集中する地域。これまで、日本最初の施設アニメ関連展示施設である「杉並アニメーションミュージアム」や、西武新宿線上井草駅前に作られた「ガンダムモニュメント」が知られるところだ。 今回の計画で使われるのは、高円寺駅~阿佐ヶ谷駅間の、これまで駐車場や倉庫として使用されていたところ。2つの駅の間の高架下は、地元の人にはよく知られた生活道路。どちらも駅からしばらくは、ちょっと味のある飲食店やショップ並ぶ商店街となっている。 ここに新たに登場するストリートの長さは約100メートル、敷地面積は約2,000平方メートルで、そこにフィギュア工房、コスプレ衣装のオーダーメイド店、撮影スタジオ、配信スタジオなどの「クリエイターズ・アンテナショップzone」、キャラクターグッズやCD・DVDなどの「物販zone」、さらには「製作スタジオzone」、展示・イベントスペースを併設した「カフェ」、専門学校のサテライト教室や就業体験ができる「大学・専門学校zone」と多種多様な店舗が軒を連ねることになる。いわば、歩いているだけでも楽しめる、アニメの商店街ができるわけである。 そこで気になるのは、都内のほかの地域との連携だ。本サイトでも幾度か報じているように、秋葉原は従来の利用者を超えて、観光地として国内はもとより国外からの訪問者を増やそうと模索している。高円寺のお隣・中野区の中野駅前商店街からつながる中野ブロードウェイも、オタク文化の中心軸のひとつだ。JR東日本都市開発の担当者は、次のように説明する。 「そうした地域と対抗しようとは思っていません。むしろ、総武線の黄色い電車がアニメ文化のひとつの軸となることを目指しているんです」 と、実はここまでは電話取材で「なるほど」と聞いていたワケなのだが……なぜか電話の向こうの担当者は、聞いてもいないのに、こんなことを言い出した。 「でね、出店にエロはダメなんです」 何を言いたいのか? 「やはり、マンガやアニメにはエロもあるじゃないですか。秋葉原の街なんか、そんなもので溢れ返っている。でもね、阿佐ヶ谷アニメストリートは、エロはダメなんです」 聞いてもないのに、いったいこの人は何を言い出すのだろう。その話の最後に、電話口の担当者は、こう言った。 「私は、もう異動なんですよ」 ううむ、どうせ異動するから何を話しても構わないと思ったんだろうか? いずれにしても「秋葉原にエロが溢れている」なんて思い込んでいる人間が担当していたら、うまくいくハズもない。この人事異動は正解だね! (取材・文=昼間たかし)阿佐ヶ谷駅(Wikipediaより)
教室にはびこる見えない制度 教師も“活用”するスクールカーストがもたらす閉塞感
昨年公開され、大ヒットした映画『桐島、部活やめるってよ』は、高校2年生たちの放課後を追った群像劇である。イケメンの帰宅部、部活に熱心に取り組むバレー部やバドミントン部、ほとんど見向きもされないサエない映画部員や吹奏楽部員、など、クラスの中にある微妙な地位の格差が絶妙に折り込まれた良作だ。 『教室内カースト』(光文社新書)は、『桐島~』に描かれているような微妙な教室内での格差・スクールカーストに対して、東京大学大学院在学中の社会学者・鈴木翔が詳細な分析を加えた一冊だ。 どの“カースト”で毎日を送っていたかは別として、教室内に歴然と存在する「格差」を知らなかった者はいないだろう。イケてるカーストにいるか、サエないカーストに所属しているかで、学校生活は大きく変わる。『桐島~』に描かれていたように、上位にいれば放課後に教室にたむろして大声でしゃべっていることができるが、下位にいれば映画部員のようにぶつかられても一顧だにされない。すべては所属するカーストが決定付けるといっても過言ではない。 本書に収録されている大学生たちのインタビューは、スクールカーストの現実を知る上で、とても興味深い。 「上にいたら楽しいね(略)けっこう自分の言いたいことは通るし、やっぱりそれは楽しいよね」という「上」の風景に対し、「『下』には、騒ぐとか、楽しくする権利が与えられていないので、『下』のくせに廊下で笑ったりしてはいけないんです」と証言される「下」の生活。さらには「『上』の方に文句を言ってもいい権利が与えられていない」「『あいつ見てるだけでむかつくんだよね』とか、存在自体を否定されてしまったりも、わりによくあることなので……」と、スクールカーストはいじめにつながる要素をはらんでいる。 また、スクールカーストは生徒たちだけの問題ではないことを、本書では強調する。 『桐島~』では、授業中の様子や教師などは描かれていなかったが、本書に収録された教師たちへのインタビューからは、彼らもまたスクールカーストの存在を意識し、積極的にこの暗黙の制度を利用している実態が浮かび上がってくる。 「立場(が)強いやつ(を)使って、いい方向に持っていくようなときもある」「(生徒の)勢力関係の把握を外すと、もう学級経営(が)成り立たなくなる」と学級経営を円滑に進めるために、スクールカーストを活用しているという。生徒たちにとっては、権威の失墜した教師よりも、スクールカーストの方がはるかに影響力が大きいのだろう。さらに「いじめを助長するのではないか」という指摘があるにもかかわらず「立場の強弱っていうのをわかっていくことで、世の中にはこういう人がいるっていうのもわかっていかなきゃかなあ」と、全面的にその存在を肯定する教師も存在する。 大人になった今、あらためて思い返してみると、スクールカーストほどくだらないものはない。誰が“上”か、誰が“下”か、そんな実態のない空気の読み合いが、教室を閉塞感の漂う場所にしていたのではなかったか。だが、当事者にとっては、けっして「くだらない」と切り捨てることができるものではない。教室内においてどのように振る舞うかは、単なる比喩ではなく「死活問題」だからだ(教室に居場所がなくなり、不登校という“死”を迎えるクラスメイトは少なくない)。 スクールカーストは、映画の中に一度も姿を現すことなく映画全体に影響を及ぼしている桐島という存在に似ている。 なんの前触れもなく、ある日突然学校を欠席し続けた人気者の桐島が登校したことに沸き立つカーストの上位たち。一方、下位の映画部員たちは、桐島に見向きもせずに映画を撮り続けた。物語のクライマックスで、映画部員たちが起こした「反乱」は、典型的な「弱者が強者にたてついたストーリー」ではない。その反乱によって、カースト=桐島を無効化させ、その実態のなさを暴いたことこそが、映画をより感動的なラストに導いている。 本書のあとがきで、著者の鈴木は「もっと深く踏み込んだ検証が不可欠なことは間違いない」と書く。スクールカーストについての議論が深められれば、教室につきまとう閉塞感も解消されるかもしれない。誰もがくだらないと思いつつも、無視することができないこの仕組みが一刻も早くなくなるよう、鈴木らの研究が進むことを望んでやまない。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])『教室内カースト』(光文社新書)










