【C84】規制反対にコミケも動く──夏コミ会場でマンガ規制反対をテーマに講演会開催が急遽決定

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東京ビッグサイト
 児童ポルノ法改定問題などをめぐり、危機感の高まるマンガやアニメの表現の自由。8月1日、コミックマーケット準備会が夏コミ2日目の8月11日に、アメリカで漫画表現の自由を求めて活動している「コミック弁護財団(CBLDF)」の事務局長であるチャールズ・ブラウンスタイン氏を招いて、講演会「日本では何ができるのか――北米でのコミック表現規制とCBLDFの取組」を開催することを発表した。コミックマーケット準備会が、会期中にこうした催しを行うことは前例がない。  ブラウンスタイン氏は、アメリカでコミック雑誌編集者・ライターとして活動。また、コミコン・インターナショナルのプログラミングディレクターを務めるなど、アメリカのコミック文化振興に尽力する人物である。彼が事務局長を務める「コミック弁護財団(CBLDF)」は、作者や書店、読者や表現の自由を守るための非営利団体である。これまで、おとり捜査によって逮捕されたコミック店主の弁護をはじめ、検閲やさまざまな側面で起こるマンガ・アニメへの権力の抑圧に抗するべく、実効性のある活動を行っている。ブラウンスタイル氏が来日し、講演するのは昨年に続いて2回目のことだ。今回の講演では、アメリカにおけるマンガなどの表現規制の現状と、それに対する「コミック弁護財団(CBLDF)」の取り組みが話される予定だ。  コミックマーケット準備会では「サークル・一般を問わず、一人でも多くの参加者にお集まりいただければと考えております」としている。  また、コミケ会期後の8月13日には、文京シビックセンターにて、これまでも表現の自由をテーマにシンポジウムを開催してきたNPO法人うぐいすリボンの主催で「マンガ文化の自由を考える国際シンポジウム」が開催される。  こちらは、ブラウンスタイン氏のほか、全米反検閲連盟・事業担当役員のスヴェトラーナ・ミンチェバ氏が「性的ファンタジーに対する法的制限は認められるべきか-合衆国とその他の地域における歴史的、法的、政治的な視点から考察する」の演題で講演する予定だ。  TPPから児童ポルノ法改定問題まで、マンガ・アニメ文化は危機に晒されているといわれるが、新たな規制に反対する声がイマイチ盛り上がりに欠ける状況は、変わっていない。今回の2回にわたる講演を契機に、状況は変化するのだろうか。 (文=昼間たかし) <集会案内> 日本では何ができるのか――北米でのコミック表現規制とCBLDFの取組 チャールズ・ブラウンスタイン氏講演会 日時:2013年8月11日(日)17:00~18:00 会場:東京ビッグサイト西アトリウム http://www.comiket.co.jp/info-a/C84/lecture/ マンガ文化の自由を考える国際シンポジウム 日時:平成25年8月13日(火)13:00~17:00 会場:文京シビックセンター26階・スカイホール http://kokucheese.com/event/index/104499/

大公開! 13年7月度「日刊サイゾー」Amazonで売れたものランキング!!

IMG_0422_0203.jpg  いまや書籍のみならず、あらゆる分野の商品をそろえるネット上のマーケット空間「Amazon」。日刊サイゾーからも、記事の関連商品や人気の商品にリンクを貼り、ちょびっとだけアフィリエイト収入を頂いて、サーバー代やおやつ代をまかなっております。  日刊サイゾーからのリンクで購入されたAmazon商品をランキング形式で毎月発表! 売れ筋商品から、日刊サイゾーという媒体の特性だけでなく、時代の流れまで見えてくるとかこないとか……。 ●本のTOP5 第1位
いびつな絆 関東連合の真実 [単行本]
関東連合強し! 先月トップだったこの暴露本が、今月も1位に輝きました。サイゾー読者は黒いネタがお好きなのですね、ふふふ。
【関連記事】「伊勢谷に続き岡沢も……!」関東連合暴露本で広末涼子 vs 長澤まさみの“一触即発バトル”が勃発!?

第2位
ホームレス大博覧会 [単行本(ソフトカバー)] 「何を食べてるの?」「なぜホームレスになったのかしら?」そんなギモンが分かっちゃう♪ 西は大阪・西成、東は東京・山谷、テント村からドヤ街まで、ホームレス取材の集大成! 【関連記事】「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

第3位
サイゾー 2013年 08月号 [雑誌] [雑誌] 雑誌版サイゾーが3位! 日頃のご愛顧、ありがとうございます! 今月は音楽業界のタブーに切り込んでまーす。 【関連記事】「安室奈美恵はアーティストではない」「エイベックスは音楽業界を舐めてる」話題のMVをふかわりょうが痛烈批判

第4位
珍島巡礼 (イカロス・ムック) [ムック] 日本の離島の数は、ざっと1000以上もあるんだそうですよ。全体が石油備蓄基地の島、「一人相撲」という伝統行事がある島、謎の「レオタード漁」など、面白い島を紹介。 【関連記事】神様相手にひとり相撲!? 日本の“ヘンな島”を訪ねる『珍島巡礼』

第5位
連続テレビ小説あまちゃん Part2 (NHKドラマ・ガイド) [ムック] 5位はファン必読の『あまちゃん』公式ガイドブック。某巨大ネット掲示板で、「公式本くらい読めよ」と一蹴されてる人をよく見かけます。 【関連記事】『あまちゃん』ツートップに明暗!“熱愛・不機嫌”で急降下の橋本愛、能年玲奈は……


●DVDのTOP5 第1位
あまちゃん 完全版 Blu-rayBOX1 トップは『あまちゃん』。芸能界をパロッたコントのような「東京編」が放送中ですが、東日本大震災がどのように描かれるのか、今からドキドキしますな。 【関連記事】能年・橋本ユニットCDデビューも? 『あまちゃん』利権貪るNHK“天下り”構造

第2位
橘梨紗 引退 [Blu-ray] 「あの国民的アイドルユニットの研究生だった、あのコでは?」とウワサが絶えない梨紗ちゃんのAV引退作が2位。はあ、梨紗ちゃん引退かぁ……、考え直してくれないかなぁ……。 【関連記事】男のオナニーを見たがる女性が急増中!? 巷でウワサの珍企画「東京オナニースタイル」ってナニ?

第3位
あまちゃん 完全版 Blu-ray BOX 2(Blu-ray Disc) AVをはさんで、三タビ『あまちゃん』です。じぇじぇじぇ! 最近、松田龍平演じる水口琢磨マネジャーに燃える「ミズタク萌え」女子が増えているとか。 【関連記事】「年末は休みたい」けど……小泉今日子『あまちゃん』挿入歌CD化で、紅白ほぼ確定か

第4位
ビーチボーイズDVD BOX 4位は90年代夏ドラマの代表格がランクイン。当時は、反町隆史と竹野内豊のダブル主演の贅沢さに、じぇじぇじぇ!と驚いたものです。 【関連記事】『ビーチボーイズ』の焼き直し!? 山下智久主演ベタドラマ『SUMMER NUDE』に「もうええわ!」の声

第5位
リーガル・ハイ Blu-ray BOX (2012) 5位には、堺雅人と、ガッキーによる連ドラがイン! それにしても、堺主演『半沢直樹』の視聴率は上がる一方。どこまで上昇するか見ものです。 【関連記事】「もっと長いセリフを……!」TBS『半沢直樹』堺雅人の飽くなき要求に脚本家困惑中!?


●【番外編】高額商品TOP5 販売実数にかかわらず、温かい気持ちにさせてくれた高額商品のランキングです。 第1位
EPSON dreamio ホームプロジェクター 2,300lm 3D対応 Full HD(1080p) スピーカー(10W×2)搭載 ワイヤレス対応 EH-TW6100W 185,163円。奮発しましたね! このモテアイテムさえあれば、あらゆる女の子がイチコロです。

第2位
ハセガワ 多機能専用脚立セレクトステップ LG-15125 27,090円。こんなに多機能な脚立を見たのは初めてです。

第3位
送料無料 「黄色ちゃんちゃんこ(綸子柄・シルク)米寿3点セット」 ちゃんちゃんこ・頭巾・扇子 代引発送OK 16,500円。おじいちゃん(もしくはおばあちゃん)、米寿おめでとうございます! 長生きしてくださいね。

第4位
超像Artコレクション 「ジョジョの奇妙な冒険」 石仮面 [原型・彩色監修/荒木飛呂彦] 14,784円。人間やめるなら、これ!

第5位
熊撃退スプレー 8,900円。「アメリカのイエローストーン国立公園のSteve Braun氏が最も推奨している熊撃退スプレー」だそうです。

まるで『ジョジョ』のスタンド使い!? 異色カンフーアクション『アイアン・フィスト』

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(C)2012 Universal Pictures
 今週紹介する新作映画は、西部劇とカンフーというややレトロな形式をそれぞれベースにしながら、斬新なセンスを加味することで現代的なエンタテインメントに仕上がった痛快アクション2作品だ。  8月2日公開の『ローン・レンジャー』は、1950年代にテレビドラマが日本でも放映されるなど世界的な人気を博した往年の西部劇ヒーローを、ジョニー・デップと『ソーシャル・ネットワーク』(2010)のアーミー・ハマーの主演で新たに映画化したアクション大作。アメリカ先住民コマンチ族のミステリアスな男トント(デップ)は、復讐という悲願を果たすため、悪党一味の待ち伏せ攻撃で瀕死の重傷を負った郡検事ジョン(ハマー)を聖なる力でよみがえらせる。ジョンは黒いマスクで素性を隠し、白馬シルバーにまたがってローン・レンジャーとなり、トントとともに巨悪に立ち向かう。  トント役のジョニー・デップに、監督ゴア・ヴァービンスキー、製作ジェリー・ブラッカイマーと『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのチームが再結集。西部開拓時代のテキサスを舞台に、白塗りメイクにカラスの死骸を頭に乗せた先住民と、法に基づく正義を追求する堅物の白人レンジャーという、異色のコンビがぶつかり合いながら悪党どもを小気味よくやっつける冒険活劇を作り上げた。ちょっとした表情や動作の演技で爆笑を呼ぶデップと、真面目であるがゆえにデップとのやりとりが意外なおかしみを生むハマー、2人の「バディっぷり」が最高だ。暴走する列車を巧みに使ったスピード感あふれるアクションシーンでは、ブラッカイマー組らしい派手さだけでなく、CG合成などの特殊効果を極力意識させないリアルさへのこだわりも感じさせる。テンポ良い最近のアクションを好む若い層から往年の西部劇ファンまで、幅広い世代に支持されそうな娯楽作だ。  続いて8月3日に封切られる『アイアン・フィスト』(R15+)は、ヒップホップ・アーティストで俳優としても活躍するRZAが、クエンティン・タランティーノによるサポート、イーライ・ロスの脚本参加を受けて、監督・主演・脚本・音楽の4役に挑んだ異色カンフーアクション。19世紀中国のとある宿場町で、名もない鍛冶屋(RZA)は、武装組織の抗争に巻き込まれて両腕を切り落とされてしまう。自ら作った鉄製の義手を装着した鍛冶屋は、アイアン・フィストとなって復讐の闘いに立ち上がる。  全身に刀を仕込んだ若き武術家(リック・ユーン)、密命を帯びた不良役人(ラッセル・クロウ)、全身を真ちゅうに変える特殊能力を備えた殺し屋(デヴィッド・バウティスタ)、美しい装いの中に高い武闘能力を秘めた娼館の女主人(ルーシー・リュー)ら、キャラの立った敵味方が入り乱れて、目まぐるしい肉弾戦を繰り広げる。ワイヤーを駆使した空中戦に加え、怪人が瞬時に身体を金属化させたり、拳法の達人が奥義で龍を出現させたりするシーンに至っては、傑作漫画『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの“スタンド使い”を連想させるほど。タランティーノ組の流れを汲む、バカバカしいほどの荒唐無稽さが逆にカッコいいバトルを、ぜひ多くのアクションファンに満喫していただきたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ローン・レンジャー』作品情報 <http://eiga.com/movie/54517/> 『アイアン・フィスト』作品情報 <http://eiga.com/movie/77759/>

最新作『BROTHERS CONFLICT』も好調! “○○萌え”に挑み続ける「電撃系読者企画」の歴史

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テレビアニメ『BROTHERS CONFLICT』公式サイトより
 父親の再婚で、突然ヒロイン・朝日奈絵麻に13人の兄弟ができてしまった! イケメンの兄弟に囲まれて、ドキドキの共同生活を送ることになった絵麻の日常を描くアニメが、現在放送中のアニメ『BROTHERS CONFLICT』(TOKYO MXほか)です。医師、弁護士、作家、美容師、サラリーマン、アイドル、声優、スポーツマン、男の娘、お坊さんなどなど濃すぎるキャラ設定の兄弟が、機関銃のようにノンストップで甘いセリフをヒロインにささやく本作は、ある種、乙女系アニメの最先端をいく作品の一つといえます。  しかし、本作は突然変異的に生まれたわけではありません。  『BROTHERS COFLICT』の原作ノベルを連載する少女漫画雑誌「シルフ」は、アスキー・メディアワークスから刊行されていますが、同社は90年代後半に「電撃G’sマガジン」誌上にて、全国に散らばる幼なじみの美少女との恋模様を描く伝説的恋愛ゲーム『センチメンタルグラフティ』と連動した小説を掲載。  厳密には同作は電撃系作品ではないのですが、『センチメンタルグラフティ』以降、同誌はその影響を大きく受けた主人公一人に対し複数人のヒロイン(しかも、わりと異常な人数と設定の)を用意。さらに読者も参加できるインタラクティブな企画をコンスタントに発表し続けています。  『BROTHERS CONFLICT』は、それまで男性向けに展開していた同社の誌上企画としては初の女性向けコンテンツとなります。ちなみに男性向けの従来路線の最新作は『ラブライブ!』です)。男性向けに展開していた「萌え」メソッドが、そのまま女性にも通用するのか。という挑戦ともいえる本作の出現は、一つの歴史的大事件といえます!  そこで今回は、『BROTHERS CONFLICT』に至るまで数多く制作された「電撃系読者企画」作品の中から、個人的に特に印象深かった作品と共に、同社が追求してきた「○○萌え」の歴史を振り返ってみたいと思います! ■『センチメンタルグラフティ』(1997年頃)  幼い頃より親の都合で、日本各地を転々としていた主人公。高校生になったある日、差出人不明の「あなたに会いたい」という手紙を受け取ります。そこで主人公は、平日はバイトにいそしみ、週末は日本全国に散らばる12人の心当たりあるヒロインたちに会いに行く超ハードスケジュールを送るというトンデモな内容と、キャラデザを手がけた甲斐智久による魅力的なヒロインに話題が集中。一大ムーブメントを巻き起こしました。  「地方キャラ萌え」「幼なじみ萌え」属性作品とでもいうべきでしょうか。この作品がなければ、のちの萌え系コンテンツの多様性は生まれなかった! というのは言いすぎではないはず。 ■『シスター・プリンセス』(99~03年)  12人の妹、という史上最強のコンセプトを生み出し、ゼロ年代におけるオタクシーンの想像力に最大のパラダイムシフトを引き起こした大ヒット作。雑誌連載企画からスタートし、コミック、アニメ、ゲーム、水樹奈々も所属した声優ユニット・Pritsと、さまざまなメディア展開をしました。  「お兄ちゃん」「おにいたま」「兄ちゃま」「兄くん」「兄や」などなど、12種類の「兄」のバリエーションに日本語の持つ豊かさを感じたものです。本作で「妹萌え」に目覚めた読者も少なくないはず! ■『双恋』(02~05年)  5組10人の双子姉妹が登場する、「双子萌え」作品。基本的に、主人公と双子姉妹の三角関係を維持することが最大の目的にして至上のジャスティスという、前代未聞の二股推奨コンテンツ。誌上ゲーム企画やコンシューマゲーム版では、いかに姉妹のどちらかに肩入れしないようにするかのバランス感覚が要求されました。  アニメ化もされましたが、第2作目『フタコイ オルタナティブ』は探偵の主人公と敵組織の戦いを中心とした、ファンもびっくりの内容。今を時めくアニメスタジオ・ユーフォーテーブルが初期に手掛けたタイトルでもあります。 ■『ウルトラC!』(03~04年)  富豪の4姉妹の誰かと結婚しなくてはいけなくなった主人公。しかし、その中の一人は男の娘かもしれない! という「姉妹萌え」と思わせて、「男の娘萌え」を追求した、かなり時代の先をいっていた意欲作。  ただのヒロイン選びに終わらせたくない! というスタッフのサービス精神とアイデアが、三回転半くらいしちゃった感のあるアクロバチックな設定が素敵です。まさにウルトラCな作品でした。  ちなみに読者投票の結果、金髪ツインテのロリキャラ・ひじりが男の娘に決定しました。 ■『Baby Princess』(09~13年)  電撃系読者企画の最終兵器ともいえるのが本作です。幼い頃に生き別れになった母親と再会した主人公は、19人の姉妹との共同生活をスタート。仲を深めていくというストーリーです。  上は18歳から下は0歳という、幅広すぎる年齢層のヒロインたちに誰もが衝撃を受けました。果たして僕らは、何歳までの女子を「妹萌え」の対象とすることができるのか。「幼女萌え」の先をいく「新生児萌え」はあり得るのか――という「萌え」の限界に挑む野心作でした。  ちなみに0歳児の末っ子・あさひちゃんの誕生日には、公式ブログ上で「0歳のお誕生日おめでとう!」という、深く考えると頭が痛くなるようなコメントが掲載され、話題を呼びました。  今回取り上げたタイトルのほかにも、多数の作品が生まれ、そして作品ごとに「新たな萌え」に果敢に挑み続けてきた電撃系読者企画シリーズですが、その最先端『BROTHERS CONFLICT』。そして今後のタイトルでは、どんな「萌え」の最先端を提案してくれるのでしょうか。これからも目を離すことができませんね!

科学者の情熱が生み出した狂気の発明の数々! 兵器開発の封印された黒歴史『陸軍登戸研究所』

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明治大学生田キャンパス内に残る巨大な動物慰霊碑。人体実験の犠牲者たちを慰霊するために建てられたのではないかと言われている。
 宮崎駿監督の新作アニメ『風立ちぬ』が大ヒット公開中だ。第二次世界大戦で日本海軍の主力戦闘機となるゼロ戦を開発した航空技術者・堀越二郎(1903~1982)をモデルに、「美しい飛行機を作りたい」という主人公の夢がアニメーションならではの豊かな色彩によって描かれている。主人公の長年の夢は病気の妻や同僚たちの支えによって叶えられるも、夢の結晶であるゼロ戦はやがて特攻に使われ、日本は敗戦を迎えるという苦い結末が待ち受ける。自分の夢をひたすら追い続けた男のエゴイズムの是非を問い掛ける問題作となっているが、戦争と科学者・技術者の関わりを主題にした“もうひとつの『風立ちぬ』”と言うべき注目作が公開を控えている。8月17日(土)より公開されるドキュメンタリー映画『陸軍登戸研究所』がそれだ。  現在、明治大学生田キャンパスがある神奈川県川崎市多摩区の丘陵地帯に、陸軍登戸研究所は建てられた。日中戦争の最中の1939年のことだった。陸軍最大の謀略・秘密戦の研究機関として、多くの科学者・技術者たちが様々な研究を進めた。秘密厳守が命じられた各研究棟では、ナチスドイツと協力した殺人光線の開発、日本ならではの和紙とコンニャク糊で作った風船爆弾の実用化、石井部隊の暗躍でも知られる生物・化学兵器の研究、さらに中国の経済を混乱させるための偽札作りなどが行われていた。何ともオドロオドロしい研究内容だが、軍部から潤沢な予算が与えられ、所員たちにとっては“理想の職場”でもあったという。ドキュメンタリー映画『陸軍登戸研究所』は登戸研究所に勤めていた元所員や関係者たち35人の証言を6年がかりで集めた貴重な映像資料となっている。
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約1万個が製造され、偏西風に乗せて米大陸に放球された風船爆弾。細菌兵器の搭載が予定されたが、米軍の報復を恐れて中止された。
 秘密施設ゆえに終戦時に証拠品はすべて処分されてしまい、封印された黒歴史となっていた登戸研究所だが、元所員である伴繁雄氏(1906〜1993)は秘密研究の内容を後世に伝えようと尽力した。コンクリート製の研究棟が与えられた伴氏が専門としたのは毒物や爆薬の研究だった。毒物の研究は動物実験だけでは成果が分からないため、中国に渡って死刑囚や捕虜への人体実験にも関与。「最初は嫌だったが、やがて趣味になった」と証言している。戦時下だったとはいえ、研究者の業を感じさせるゾッとする言葉だ。晩年、伴氏は贖罪の意識から『陸軍登戸研究所の真実』(芙蓉書房出版)を執筆し、原稿を書き終えた直後に「晴れ晴れとした気持ちだ」という言葉を残して他界している。  宮崎監督の『風立ちぬ』が二郎と菜穂子の哀しいラブストーリーでもあったように、映画『陸軍登戸研究所』の後半は伴氏とその後妻となった和子さんとの夫婦のドラマとしても見ることができる。1972年にふたりはお見合い結婚するが、伴氏の申し出は「僕は研究所の本を書かなくてはいけないので手伝ってほしい」というものだった。和子さんは結婚してから伴氏の過去の研究内容を知って驚くが、原稿の整理や清書を手伝い、さらに伴氏が亡くなってからも7年越しで校正や資料との照合などの作業に努めた。伴氏と和子さんは甘い恋愛感情で結ばれた夫婦ではなく、戦争の悲惨さ、醜悪さを後世に伝えなくてはならないという義務感、使命感から生活を共にした同志だった。伴氏の最期を看取り、伴氏の遺稿『陸軍登戸研究所の真実』が2001年に出版されるのを見届けた後、和子さんは伸び伸びとひとり暮らしを始める。心の中に葛藤を抱え続けた伴氏との結婚生活は、和子さんにとっても過酷な日々だった。生前は口数が少なかった伴氏だが、亡くなってから「すまなかったな」と和子さんの枕元まで詫びを伝えに現われたそうだ。
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2011年まで明大内に存在していた偽札工場。現在は解体されたが、「登戸研究所資料館」に残された資料類は集められている。
 本作のプロデュースから編集、撮影、ナレーションまで手掛けたのは楠山忠之監督。現在は「登戸研究所資料館」が建てられた明治大学生田キャンパスに近い日本映画学校(現・日本映画大学)の講師を務めていた楠山監督は、授業の一環として生徒たちと一緒に登戸研究所について調べ始め、それが企画の始まりとなった。 楠山「僕が個人的に興味のある題材だったんですが、戦争を知らない若い学生たちを巻き込んだほうがより面白いだろうと思ったんです。生徒たちと取材撮影を始めたものの、取材に時間を要し、6年がかりの作品になってしまった(苦笑)。当時はまだ明治大学生田キャンパス内に『登戸研究所資料館』が建設されることが決まっておらず、キャンパス内で撮影するのにも映画学校の校長の認印が必要だったりするなどの煩わしさがありました。各地を取材して証言を求めた方たちは、取材拒否された方も含めて約40名。取材拒否された方は5名ほどでしたが、本人は研究所のことを話したがっているのに、子どもに反対されてNGになるケースが多かったんです」  戦争と科学者、技術者との関係について楠山監督はこう語る。 楠山 「ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルも、原子力の軍事利用をルーズベルト大統領に促したアルベルト・アインシュタインも、自分の研究や行為によって戦争で多くの人たちが犠牲になったことを悔いたわけです。日本人初のノーベル賞を受賞した物理学者の湯川秀樹は、正力松太郎が原子力委員会を立ち上げた際に参加を求められましたが、『慎重な上にも慎重でなくてはならない』と身を引いています。科学者は自分の研究に没頭することを望みますが、自分の研究が社会に対してどのような影響をもたらすのかを考えることも大切です。それは科学者だけでなく、どの仕事でも同じでしょう。自分はなぜこの仕事をしているのか、自分自身に問い掛けることが大事なんじゃないですか。目先の幸せや自分たちの生活の安定だけを求めていると、恐ろしい結果が待っていることは登戸研究所が充分に証明していると思いますよ」  『陸軍登戸研究所』は決して遠い過去の日本を扱ったものではない。これからの社会について考えさせるドキュメンタリー映画だ。宮崎駿監督もベネチア映画祭に行く前にぜひ本作を観てほしい。 (取材・文=長野辰次) rkgnnbrt04.jpg 『陸軍登戸研究所』 プロデューサー・監督・編集/楠山忠之 撮影/新井愁一、長倉徳生、鈴木麻耶、楠山忠之 録音/渡辺蕗子 編集技術/長倉徳生 朗読/石原たみ 聞き手/石原たみ、渡辺蕗子、宮永和子、楠山忠之 ナレーション/楠山忠之 ムックリ演奏/宇佐照代  配給/オリオフィルムズ 8月17日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開 (c)陸軍登戸研究所 <http://www.rikugun-noborito.com

メジャーとインディーが拮抗した奇跡の年を活写 映画スター・金子正次が輝いた『竜二漂泊1983』

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谷岡雅樹著『竜二漂泊1983 この窓からぁ、なんにも見えねえなあ』(三一書房)
 俳優・金子正次を覚えているだろうか? 1983年10月29日に初主演映画『竜二』が劇場公開され、主人公であるヤクザ者の竜二を演じた金子正次はスクリーンの中で生まれたてのスターとして眩しい輝きを放っていた。『竜二』を観た誰もが松田優作に続くニュースター・金子正次がこれから映画界で大活躍する姿を夢想して興奮した。しかし、多くの観客が脳裏に思い描いたその夢は叶うことはなかった。『竜二』公開直後の11月7日に金子正次は胃ガンのために33歳の若さでこの世を去る。流れ星のように瞬間的な輝きを残して時代を駆け抜けていったスターだった。『竜二漂泊1983 この窓からぁ、なんにも見えねえなあ』(三一書房)は映画評論家・谷岡雅樹氏が公開から30年を迎えた映画『竜二』の色褪せぬ魅力と金子正次がほんの短い期間だがスターとして輝いた“1983年”という時代の特殊性について、400ページ以上にわたって言及した渾身の映画評論となっている。  『竜二』は小市民としてのささやかな幸せにすがりながら生きていくことのできない哀しい男の物語だ。竜二(金子正次)は新宿一帯で顔を利かせているヤクザ者で、舎弟の直(桜金造)とひろし(北公次)に闇ルーレット場を任せ、すこぶる羽振りがいい。だが、冷酷なヤクザにはなりきれない心根の優しさがどこかに漂う。妻のまり子(永島暎子)と幼い娘・あや(金子桃)のために足を洗うことを竜二は決意。カタギの人間として毎月給料をもらう地道な生活を送り始める。竜二が狭いアパートで幸せな日々を噛み締める一方、ヤクザ時代の仲間・柴田(菊地健二)がシャブ中毒で命を落とし、直もシャブに手を出して身を崩していく。だが、竜二は自分の家庭を守ることが精一杯でどうすることもできない。『竜二』のラストシーンは日本映画史に残る名場面だ。仕事を終えた竜二がアパートへ帰ろうとすると、商店街のバーゲンセールの行列に並んでいるまり子とあやの姿が目に入る。慎ましい生活を守るためにバーゲンに並ぶ妻と娘を見てしまった竜二は、無言のまま自分が帰るべきアパートとは逆方向へと足を向けてしまう──。  『竜二』の公開当時、このラストシーンは「小市民になれなかった竜二はヤクザ社会へ戻っていく」と受け止められていた。だが、『竜二漂泊1983』の著者・谷岡氏は「そうではない」と断言する。竜二は一般市民にもヤクザにも、どちらにもなれなかった男なのだと。何者にもなれなかった男の物語ゆえに、今なお谷岡氏は猛烈に心を揺さぶられ続けている。谷岡氏は大学浪人中に『竜二』に出会った。谷岡氏もまた、何者かになりたくて地元・北海道から出ていく。大学には進学せず、映画の世界にのめり込み、大阪、そして東京でレンタルビデオ店などに勤め、さらにVシネマ評論家として執筆活動を開始する。『竜二』の劣化コピーのような作品が粗製濫造されるVシネマを評論する行為を「好きで嫌いで、たまらない」と毒づきながらも、評論活動を続けている。竜二がヤクザにも小市民にもなれなかったように、映画評論家や映画ライターという職種の人間もまた、映画屋にも作家にもなれずにいる人々だ。谷岡氏は初めての著書『Vシネマ魂』(四谷ラウンド)を自身が監督となって映画化しようと奔走するが、映画版『Vシネマ魂』は思うような形には完成せず、谷岡氏は体を壊し、映画製作に協力した仲間たちは去っていく。谷岡氏は金子正次になろうとして、失敗した。そして、命を散らす代わりに『竜二漂泊1983』を書き上げたのだ。  『竜二』が公開された1983年はメジャーとインディーズが拮抗して火花を散らし合った奇跡的な年だったと谷岡氏は振り返る。1980年代前半、日本映画は確実に衰退の道へ向かっていたが、大島渚や深作欣二ら巨匠たちは円熟の境地に達し、その一方では森田芳光が『家族ゲーム』(83)で頭角を現わし、後に『おくりびと』(08)でアカデミー賞外国語映画賞を受賞する滝田洋二郎ら若手監督たちがピンク映画から一般映画へ進出してくる。石井聰亙(現在は石井岳龍)、長谷川和彦、高橋伴明、相米慎二、井筒和幸、池田敏春ら気鋭の監督たちが「ディレクターズ・カンパニー」を立ち上げたのもこの時期だ。そして、低予算自主映画として完成した『竜二』は都内の名画座支配人たちに後押しされ、東映セントラル配給で全国公開される。面白いもの、本物を作りさえすれば、インディーズだろうがメジャー作品と同じように評価されると信じられていた時代だった。だが、やがてその熱気はバブルの騒乱の中へと取り込まれていく。  金子正次は同年生まれのスター・松田優作の背中をずっと追い続け、ほんの一瞬だけ『竜二』の成功によって肩を並べることができた。そして、金子の死を病室で看取った松田も6年後には帰らぬ人となる。ハリウッド進出作『ブラック・レイン』(89)が大ヒットしている最中の訃報だった。金子も松田も病気を隠して映画に出演し、命と引き換えにスクリーンの中で輝きを放った。2人の命日は奇しくも同じ11月6日だ。金子とは劇団仲間で、柴田役を演じた菊地健二も87年に亡くなっている。『竜二』、そして『竜二』の舞台裏をドラマ化した『竜二フォーエバー』(02)に出演した松田優作の付き人・前田哲朗も、舎弟・ひろしを演じた北公次も亡くなった。谷岡氏はさらに書き綴る。『竜二』以前、それまでの任侠映画から実録ヤクザ路線への舵を切った深作欣二は『バトル・ロワイアルII』(03)の撮影中に息を引き取った。深作とのコンビで知られる脚本家・神波史男は谷岡氏に文筆活動のきっかけを与えてくれたが、その恩人ももういない。みんな、映画という魔物に魅入られ、映画を輝かせるために自分の命を削って散っていった殉職者たちだ。『竜二漂泊1983』はエンターテイメントの世界に身を投じ、そのまま彼岸へと渡ってしまった人々の名前を刻んだ紙の墓標でもある。  『竜二』公開時の熱気を知る世代にとって、今の日本映画界は荒涼とした砂漠のように感じられる。劇中で竜二が呟く台詞、「この窓からぁ、なんにも見えねえなあ」という状況ではないか。もっぱらテレビ局が主導する「製作委員会方式」は映画が失敗しても誰もリスクを負わずに済むように生み出されたシステムだ。製作サイドがリスクを負うことはないが、観客の心に強烈な爪痕を残すこともない作品が次々と作られていく。『竜二漂泊1983』を読みながら、もう一度夢想してみる。もしも金子正次がその後も生きていたら、日本映画の風景は変わっていただろうか。テレビ局主導映画に背を向けて、インディーズ映画を作り続けただろうか。それともボロボロになりながらメジャーシーンで格闘を続けただろうか。  『竜二』で監督デビューを果たし、金子正次が亡くなった後も金子が残した脚本を原案にした『チ・ン・ピ・ラ』(84)を撮り上げて人気監督となった川島透だが、『押繪と旅をする男』(94)を最後に新作映画を撮っていない。だが、川島は金子が脚本を書き残して映像化されずにある『盆踊り』の映画化を諦めていないという。『竜二』をめぐる伝説はまだ終わってはいない。 (文=長野辰次)

ずっしりとした夏の“重み”を感じさせる、歴史サスペンス『終戦のエンペラー』

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 今週紹介する新作映画は、日本の1945年と、米フロリダ州の1960年代末、それぞれの特別な夏の出来事を緊張感たっぷりに描き出す2本。ずっしりとした夏の「重み」が印象に残る、見応え十分の力作たちだ(いずれも7月27日公開)。  『終戦のエンペラー』は、『真珠の耳飾りの少女』(2003)のピーター・ウェーバー監督が、太平洋戦争直後の日米の史実をもとに描く歴史サスペンス。日本が連合国に降伏し終戦を迎えた1945年8月、マッカーサー元帥率いるGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が東京に置かれ、米軍統治が始まる。マッカーサーは秘書官のフェラーズ准将に対し、戦争における天皇の役割を10日間で探るよう命令。日本文化を研究し、戦前に日本人留学生のアヤと恋仲だったフェラーズは、東條英機、近衛文麿、木戸幸一ら要人を相手に困難な聞き取り調査を続けるかたわら、消息を絶ったアヤの安否を秘かに調べる。  昭和天皇とマッカーサーが並んだ有名な写真。あのツーショットが実現するまでの歴史秘話が解き明かされる。マッカーサー役にハリウッドスターのトミー・リー・ジョーンズを据え、日本人キャストも西田敏行、中村雅俊、夏八木勲、片岡孝太郎と豪華。クレジット上の製作国はアメリカだが、原作は岡本嗣郎のノンフィクション作品。製作陣にも日米のプロデューサーが名を連ねることから、実質的な日米合作と言っていいだろう。とはいえ、ニュージーランドに再建された空襲後の東京の街並みをはじめ、ハリウッド映画と遜色ないスケール感と質感で終戦後の日本の風景と歴史を動かした人々のドラマがリアルに再現されているのは感無量。アヤ役に抜擢された初音映莉子の清新な魅力が映画にうるおいをもたらしている。  『ペーパーボーイ 真夏の引力』(R15+)は、ザック・エフロンとニコール・キッドマンが危険で刺激的な関係にのめり込む男女を演じた問題作。1969年、フロリダで暮らす青年ジャック(エフロン)は、問題を起こして大学を追われ、父が経営する地方新聞社の配達仕事だけで無気力に過ごしていた。ある夏の日、大手新聞社に勤める兄ウォード(マシュー・マコノヒー)が、4年前の殺人事件の死刑囚をめぐる冤罪疑惑の取材で帰省。ジャックはウォードの調査を手伝う過程で、死刑囚の婚約者で謎めいた美貌のシャーロット(キッドマン)と出会い、心を奪われる。混迷する事件調査、兄の衝撃的な秘密、そしてシャーロットへの恋が、ジャックの人生を大きく変えていく。  『プレシャス』(09)のリー・ダニエルズ監督が、米作家ピート・デクスターのベストセラー小説を映画化。差別や偏見が色濃く残る60年代末の南部フロリダを舞台に、じっとり汗ばむ空気感、徐々に高まる焦燥と狂気、抑えがたい感情と欲望を、粗くぎらついた映像で描き出した。知的で貞淑な役どころも多いニコール・キッドマンだが、今作は『誘う女』(95)、『アイズ ワイド シャット』(99)に連なるエロい美魔女系。エフロンが演じるイケメン童貞、ジョン・キューザック扮する異様な死刑囚とキッドマンが繰り広げる危険な愛の行方から目が離せない。  (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『終戦のエンペラー』作品情報 <http://eiga.com/movie/78092/> 『ペーパーボーイ 真夏の引力』作品情報 <http://eiga.com/movie/58154/>

人気声優・橘田いずみの心の闇がにじみ出る! トラウマ発動しまくりのWEBラジオ『ワタモテRADIO』

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『ワタモテRADIO』
 地味で非モテな中学生時代を送っていたが、女子高校生になればバラ色のモテモテライフが始まるはず! ……そう信じていたものの、相変わらず男子どころか友達すらできずに一人二次元の世界に逃避しつつ、世のリア充どもを敵視しまくる(けど、決して表には出さずに、話しかけるとキョドってしまう)「モテない女」──いわゆる喪女である黒木智子の、笑えるけど切ないコメディアニメ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(『ワタモテ』)が、アニメファンの間で大きな話題となっています。  高校生活が始まってはや2カ月。彼氏どころかクラスメイトと会話したことすらない智子は、「これはやばい!」と一念発起。なんとかモテるための努力を開始するものの、基本的に家族以外と会話できない彼女は、学校の先生に挨拶するだけでも一苦労。かわいくなろうと一生懸命おしゃれしようにも、めったに自分の姿を鏡で見ることがないため、自分の姿にゲロを吐いてしまう始末です。さらに中学時代の数少ない友達だった同じオタク趣味のゆうちゃんは、高校デビューに成功。オタク趣味を持ちながらも恋人を作り、リア充ライフを満喫。弟はサッカー部のレギュラーを務め、風邪をひいた日にはクラスメイトの女子がお見舞いに来るのに、自分が学校を休んでも誰も気にかけてくれない。そしてふてくされて部屋で一人、恋愛ゲームに没頭し二次元の恋人との刹那的な逢瀬を重ね、現実から逃避する日々……。  この「周りはどんどん前に進んでいるのに、自分だけ世界から取り残されている感覚」は、はっきり言って心臓に悪いです。というか、ずっと鍵をかけたまま放置していた、心のトラウマ部屋をバンバン開放されていくような気分です。大なり小なり、似たようなシチュエーションを経験したことのあるオタク趣味人は多いのではないでしょうか?  そんな古傷を自らえぐる自虐的な笑いが魅力の本作ですが、原作コミック、アニメと同じくらい、いやそれ以上に面白く、心理的ダメージを与えてくれるのが、WEBラジオ『ワタモテRADIO』です。  この番組は、アニメ『ワタモテ』と連動したいわゆるアニラジで、パーソナリティを務めるのは黒木智子を演じる声優・橘田いずみ。原作、アニメ自体がトラウマ発動スイッチなだけあって、リスナーの投稿もトラウマ告白ネタ中心ですが、それに負けじと橘田も、毎回これでもかとトラウマを告白。  先日公開された第3回放送では、 「ツインテールとロリータ服で大学に通っていたけど、普通に友達とは付き合えているつもりだったし、『かわいい』って言われていたからみんなに好かれていると思っていたの。でも卒業した後、一番仲の良かった子から“みんなから裏で『超イタい』『オタク』だって言われていたのを、私が仲良くしてあげていたんだよ”って言われて……」(要約) と衝撃のエピソードを公開。この番組のすごいところは、橘田の単独パーソナリティであるため、たとえこんなデカいネタが飛び出したとしても誰も彼女をフォローする人物がいないという点で、原作、アニメ本編同様「誰も彼女の自虐ネタや失敗談を笑ってくれない」絶望感と途方に暮れる感覚が満点です。  橘田といえば声優としてデビューする以前はレースクイーン、グラビアアイドルとして活躍していたこともある長身のモデル系美人といったビジュアル系声優です。近年は声優ユニット「ミルキィホームズ」やバラエティ番組でも活躍するなど一見華やかなイメージの持ち主ですが、この番組の中では次々と彼女の抱える心の闇が晒されていきます。  誰もが楽しい思い出作りにいそしむこの夏(もちろん夏コミ、アニサマなどのオタ系イベントも含まれます!)、部屋にこもって一人きりの夏を謳歌するのもいいんじゃないでしょうか? そのお供には、ぜひ『ワタモテ』。そして『ワタモテRADIO』がおススメだと思います! (文=龍崎珠樹)

白い髪に白い肌……差別を受け続けるアルビノ患者の日々とこれから『アルビノを生きる』

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『アルビノを生きる』(河出書房新社)
 表紙には、白い肌と、サラサラの白い髪の子どもたちの写真。透き通るようなその外見は「まるで天使みたい」という比喩がピッタリだ。あたかも北欧の子どもたちと見紛う彼ら、しかしこの子どもたちはれっきとした日本人であり、「障害者」である。  ジャーナリスト・川名紀美による著書『アルビノを生きる』(河出書房新社)は、生まれつき色素が足りないアルビノたちの生活に密着したノンフィクションだ。  アルビノは、正式には「白皮症」と言われ、1~2万人に1人の割合で生まれる遺伝性疾患。白い肌、白や金色の髪の毛、そして青や茶色などの目を持つ。外見的な特徴だけでなく、メラニン色素が足りないために、弱視の症状が現れたり、強い日差しを浴びるとやけどによって皮膚が腫れ上がる。また、一部には、血が止まりにくくなったり、肺線維症(肺が硬くなり、呼吸不全が起こる)となる「ヘルマンスキー・パドラック症候群」という症状に苦しめられる患者もいる。    外見的な特徴からいじめを受けたり、偏見のまなざしを浴びる。弱視から勉強についていけない。アルビノ患者たちの人生には、さまざまな障害が待ち受けている。しかし、本書が明らかにしているのは、そのような負の側面ばかりではない。この10年ほどで、アルビノ患者を取り巻く環境は大きく変わりつつある。インターネットや、患者たちの集まりを通じて、アルビノの人々がアルビノとして前向きに生きようとする姿こそが本書の特徴だ。    中でも精力的に活動を行っているのが、本書でも中心的に描かれている石井更幸。アルビノ患者として千葉県の袖ヶ浦市に生まれた石井は、インターネットサイト「白い旅人」(http://www.geocities.jp/nizaemon77310/)を運営し、当事者としてアルビノの情報を精力的に発信している。オフ会も定期的に開催し、孤独に生きてきたアルビノ患者たちに情報交換の場を生み出した。  子どもの頃からクラスメイトによるいじめを受けてきたり、不利な就職を強いられてきた石井。祖父は、彼が生まれた時に「世間に対してみっともねえ」と言い放ち、次兄は弟を「白ブタ」と呼んだ。石井は、大人になって、親族が彼を「潰す」ことを検討していたと知らされる。しかし、持ち前の好奇心で南極旅行にまでチャレンジ。アルビノであることを誇りに思い、「アルビノでよかった」と自分を肯定しながら生きている。  もちろん、すべてのアルビノ患者がそうであるというわけではない。髪を黒く染め、目立たないように、ひっそりと生活を送るアルビノ患者も多い。石井がホームページを開設すると、「ひっそりと生きているのに、自分たちに注目が集まるような振る舞いはしないで」「こんなホームページはやめてほしい」と、アルビノ患者からのメールも受けた。  だが、近年では石井らの活動が実り、アルビノとして生まれた子どもに「どうせ見られるんだからかっこよく」と鮮やかな色の服装にサングラスをかけさせる親も現れ、通りすがりの人々は「ベビー服のモデルみたい」と、子どもをはやし立てる。「世間に対してみっともない」「先祖が悪いことをした報いだ」と言われ、世間から姿を隠さざるを得なかった過去に比較すれば、アルビノを取り巻く状況は大きく変化している。  水泳選手としてパラリンピックを目指す者、寺の住職として仏と向き合う者、大学院に進学し、障害者と健常者をつなぐ研究を行っている者、健常者とほとんど変わることなく、さまざまな世界でアルビノ患者たちは活躍をしている。  正確な数字は把握されていないものの、1億3000万人の日本人のうち、おそらく1万人あまりがアルビノとして生活している。アルビノ患者は肌が焼けてしまうために、強い日差しの下に出ることができない。だからといって、彼ら1万人の人生までをも日陰に押し込める必要はないはずだ。 (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●かわな・きみ 1947年生まれ。70年に朝日新聞社入社。大阪本社学芸部、社会部を経て論説委員。社会福祉全般、高齢者や子ども、女性の問題に関する分野の社説を担当。2009年退社。現在、フリージャーナリスト。

ポテチは、酒やタバコの依存症と一緒!?『ポテチを異常に食べる人たち』

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『ポテチを異常に食べる人たち』(WAVE出版)
 時々、なんだか無性に食べたくなるポテチ。ひとたび袋を開けてしまえば、ポリポリパリパリ……わかっちゃいるけど、手が止まらない。気づけば中身は空っぽで、“ヤバイ、胃がめっちゃもたれてる……!”なんてことも。  とはいえ、普通の人ならば時々食べたくなる程度だと思うのだが、『ポテチを異常に食べる人たち』(WAVE出版)に登場する人たちは、まさに“ポテチ依存症”とも言うべき、ポテチへの依存っぷりを発揮している。  小柄で赤いヒールの似合う、美人のKさん(都内在住、28歳会社員)いわく、 「ポテチを食べると、口に入れた瞬間、脳から“何か”が出たー! という実感があって……(中略)。一言でいえば、『おいしいというより、気持ちいい!』という感じで、恍惚状態になれるんです」 とのことで、1日2~3袋は平らげ、仕事でイヤなことがあった時などには飲むようにガーッと食べたくなって、口の中に流し込んでしまうのだという。  また、元保険外交員の主婦で、言葉遣いも丁寧で会話上手なNさんは、 「発病するのはいつも、子どもに添い寝してもうすぐ寝つくというころ。体の奥底からものすごく強烈なイライラした感情がどっと吹き出してたまらなくなる。『もうダメだ!! むしゃくしゃした気持ちを思いっきり吹きっ飛ばしたい!!』という衝動で狂いそうになるんです。ただ、夜中に子どもを置いて遊びに出るわけにはいかないでしょう?(中略)財布をガシッとつかんで、歩いて3分のコンビニに駆け込み、ポテチとチョコレートを買い込むんです」 と語り、旦那さんが帰宅する深夜2~3時まで、ポテチを片手にテレビやDVD、コミックの世界に没頭するという。彼女たちにとって、スナック菓子がまるで酒やタバコのような役割になってしまっているのだ。  著者の幕内秀夫氏は、過激な切り口で現代の食文化を切り取り、世の中に警告を鳴らしてきた管理栄養士。スナック菓子のことを、やめたくてもやめられない緩やかな“ドラッグ”として位置付け、“たかが、ポテチの食べ過ぎでしょ?”という見方を払拭しようとしている。  ポテチ依存症とはなんなのか。どうして依存してしまうのか――。そもそも、ポテチを食べ始めたらやめられない、止まらない理由はなんなのか?    ご飯を抜いてでも、1日に何袋もポテチを食べないと気が済まない! という人は、ひょっとしたら、すでに依存症……かも!? (文=上浦未来)   ●まくうち・ひでお 管理栄養士。東京農業大学栄養学科卒業。フーズ&ヘルス研究所主宰。その土地ならではの食文化を生み出した風土・文化・歴史などを調査し「FOODは風土」を実感、提唱。帯津三敬病院において食事相談を行うほか、全国各地の社員食堂や学校給食の改善活動にも奔走中。近著に『夜中にチョコレートを食べる女性たち』(講談社)、『変な給食』(ブックマン社)、『子どもが野菜嫌いで何が悪い!』(バジリコ)、『なぜ、子どもはピーマンが嫌いなのか?』(西日本新聞社)などがある。