大ヒット中の映画『風立ちぬ』の中で頻出する登場人物たちの“喫煙シーン”に、NPO法人「日本禁煙学会」が要望書を出した問題が波紋を広げている。 12日、日本禁煙学会は『映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて(要望)』という文章を公開。同文書を製作担当者に提出したことを明かした。文書では「教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面など、数え上げれば枚挙にいとまがありません」などとし、同作品が“タバコ広告にあたる”として「タバコ規制枠組み条約」13条違反、また「学生が『タバコくれ』と友人にタバコをもらう場面などは未成年者の喫煙を助長」しているとして「未成年者喫煙禁止法」にも抵触するおそれがあると指弾している。 これを受けて、ネット上では賛否の意見が噴出。掲示板などでは大きな議論を呼んでいるが、映画関係者からは「この要望書そのものがマナー違反だ」という声が聞こえている。 「要望書の中で『肺結核で伏している妻の手を握りながらの喫煙描写は問題』と言っていますが、このシーンで主人公は、妻の手を握りながら喫煙をするかしないかを逡巡するんです。映画は“吸うか・吸わないか”を迷う人物を描写しているのに、この要望書が広まったおかげで、観客は“吸う”ことを事前に知ってしまう。公開中の映画の、クライマックスに近い時間帯での、非常に重要な葛藤が描かれている大切なシーンですよ。その結末を軽々しくネタバレさせるような人たちに、喫煙マナーなんかを語る資格があるんですかね。これから劇場に足を運んでくれるお客さんに失礼ですよ」(映画製作会社関係者) 要望書は「映画制作にあたってはタバコの扱いについて、特段の留意をされますことを心より要望いたします」と締められているが、禁煙学会側にも、要望にあたっては特段の留意が必要だったかもしれない。『風立ちぬ』公式サイトより
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エメリッヒ監督がまたまホワイトハウスをぶっ壊す!『ホワイトハウス・ダウン』
今週紹介する新作映画2作品はいずれも、命を賭して大切なものを守ろうと奮闘する男たちを描くハリウッド製アクション。ただし、片やド派手な破壊シーンが満載の娯楽活劇、他方はリアルな描写を積み上げる骨太のドラマと好対照で、見比べるのも一興だ。 8月16日公開の『ホワイトハウス・ダウン』は、ディザスタームービーの巨匠で“破壊王”の異名を持つローランド・エメリッヒ監督が、アメリカを象徴する建物である米大統領官邸を本格的にブチ壊すアクション大作。議会警察官のジョン(チャニング・テイタム)は、大統領(ジェイミー・フォックス)のシークレットサービスになるため面接試験を受けるが、不採用に。その足で幼い娘とホワイトハウス見学ツアーに参加したところ、運悪く謎の武装集団による襲撃に遭遇してしまう。ホワイトハウスが破壊され占拠されるという極限状況で、ジョンは大統領と娘、そしてアメリカの命運をかけた戦いに身を投じる。 『インデペンデンス・デイ』(96)、『2012』(09)といった過去作でもホワイトハウスを一瞬で壊滅させてきたエメリッヒ監督だが、本作では物語の舞台を同官邸に据え、敵味方のバトルでじわじわと破壊されていく様子をたっぷりと描く。ダンサーの経歴を持ち運動神経抜群のチャニング・テイタムが、迫真のファイトシーンを熱演。大統領がスニーカーをはいた足で敵に蹴りを入れて攻撃したり、大統領の安否が不明なのに死んだと見なして軍がホワイトハウスを攻撃するなど、トンデモな描写もエメリッヒ監督ならでは。6月に公開されたジェラルド・バトラー主演の『エンド・オブ・ホワイトハウス』とストーリー設定がよく似ており、興行成績、評価でどちらに軍配が上がるかも気になるところだ。 続いて8月17日に封切られる『エンド・オブ・ウォッチ』は、ロサンゼルスの犯罪多発地区を舞台に、巡査たちの死と隣り合わせの日常と友情をリアルに描くポリスアクション。恋人ジャネット(アナ・ケンドリック)との結婚を考えている白人巡査テイラー(ジェイク・ギレンホール)と、相棒のメキシコ系巡査ザバラ(マイケル・ペーニャ)は、LAで最も治安の悪いサウスセントラル地区を担当し、日々体を張って職務をこなしている。パトロール中に思いがけずメキシコ麻薬カルテルの秘密に触れた2人は、カルテルから暗殺指令を受けたギャングたちに命を狙われるようになる。 監督は、10代をサウスセントラル地区で過ごし、キアヌ・リーブス主演の刑事ドラマ『フェイク シティ ある男のルール』でもメガホンをとったデビッド・エアー。テイラーが課題の映像制作のため、勤務中にビデオカメラを携帯してパトロール現場を撮影しているという設定が活かされ、記録ビデオの映像が適宜挿入されることで、犯罪が発生する現場や容疑者逮捕の瞬間を至近距離から目撃しているかのよう。緊迫したシーンや殺伐とした描写が続くが、恋人や家族とのやり取りなど和ませる場面も。テイラーとザバラの他愛ない会話と熱い絆、衝撃的な終盤も含め、リアルさに徹底してこだわった力作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ホワイトハウス・ダウン』作品情報 <http://eiga.com/movie/58261/> 『エンド・オブ・ウォッチ』作品情報 <http://eiga.com/movie/77535/>配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
薬局かと思ったらカフェ……? ダイコクドラッグが挑戦する新店舗「アキドラ」がスゴイ!
7月18日、秋葉原の神田明神通り沿いにオープンした新店舗・AKIBAドラッグ&カフェ(アキドラ)。6月末から徐々に店舗の工事が進み、高そうな外車などが中に運び込まれていたので、一体なんの店かと思っていたのだが、なんとダイコクドラッグが運営するドラッグストア+カフェ+イベントスペースだという。
これまで、中央通り一帯はドラッグストアがなく、普通のダイコクドラッグがオープンするだけでも便利この上ない。それが、あえてカフェとイベントスペースも併設する新業態とは!
開店記念イベントめじろ押しの、最初の週末を取材した。
秋葉原のメインストリートである中央通りと交差する神田明神通り。付近には、オタク系ショップやPCパーツ店も多く、平日も週末も、人通りの絶えない通りである。そんな絶好の立地にオープンしたアキドラ。店の前には『ローゼンメイデン』の痛車となったリムジンと、『進撃の巨人』の痛車となったフェラーリ458スパイダーが並んだ(ちゃんとパーキングである、念のため)。
なんとこの車、ダイコクドラッグの所有する社用車なのだという。超高級外車が社用車なのも驚くが、それを惜しげもなくビジネスのために痛車にしてしまうとは、なんて素晴らしい会社だろうか!

長い

4000万くらい?

3人のメンバーからなるこのユニットは、全員がダイコクドラッグの店員だ。なんでも、ダンスができる店員の中から選ばれたメンバーなんだとか。
オープンを前にした7月17日に、秋葉原で定期開催されている街づくりイベント・秋葉原cafeでプレゼンしたアキドラ社長の寛座良基さんは「店舗の集客目標は、一日当たり2,000人です。大都市圏の繁華街と同じくらいの人数ですね」と語ったが、アキバ色を前面に打ち出した策が吉と出るか凶と出るか、注目が集まるところだ。
店舗側の本気の「遊び」を見るに、秋葉原に多くの人々が集まるこの時期、集客目標は軽く超えそうな予感。なお、100円ショップも併設されているので、いろいろ使い勝手がよさそうだ。
(取材・文=昼間たかし)
国旗の数だけ存在する意外な歴史に大興奮!『国旗 その“隠された意味”に驚く本』
じっくりと世界の国旗を眺めたことはあるだろうか? 運動会の時になぜか必ず飾られていたり、地図帳にずらーっと並んでいるのを見て、“世界にはいろんな国があるんだなぁ!”なんて、なんとなくワクワクした記憶はあるのだが、それぞれの国旗がいったい何を意味しているのかまでは考えたことがなかった。 『国旗 その“隠された意味”に驚く本』(河出書房新書)は、約140カ国の国旗について、色使いや模様、その知られざる意味、国旗が誕生するまでの背景がまとめられた1冊だ。 例えば、ブラジル。緑と黄と青の3色で、中央に地球らしきものがあり、星もあったような……とぼんやりと思い浮かぶが、本書の解説もよると、背景の緑は森林を表し、中央の黄色いひし形は鉱山物質、地球のような青い円は天体。天体を横断するようにかかる白い帯は、アマゾン河を表しているという。さらによく見ると、この白い帯の中にはポルトガル語で「ORDEM E PROGRESSO」(秩序と進歩)という哲学者オーギュスト・コントの言葉が書かれている。また、無造作に散りばめられたようにも感じられる星は、こいぬ座をはじめとする9つの星座を表しているという。 さらにインドの国旗を見てみると、サフラン、白、緑の横3色の中央に丸い紋様が配されている。これには宗教的な意味合いが込められており、サフランはヒンドゥー教、緑はイスラム教、白は2宗教の和解とほかの宗教を表す。と、ここで「あれっ?」と思うのが仏教について。いまやヒンドゥー教徒が約80%も占め、仏教徒はたった1%にも満たないものの、インドといえば、仏教発祥の地。何も触れられていないのかと思いきや、やはりそんなことはなかった。中央の丸い紋様には、仏教を象徴する「チャクラ」(サンスクリット語で車輪、円の意)があり、この国での堂々たる威厳を見せている。インドの国旗が制定されたのは1947年の独立時。独立運動の指導者マハトマ・ガンディーが、スワラージ(自治・独立)の象徴として使用した旗が元になっているのだ。 このように、国旗を細かに見ていくと、その国の深い部分が見えてくる。ヨーロッパにはなぜ3色旗が多いのか? ネパールの国旗はなぜ三角を2つ合わせた形をしているのか? また、インドネシアがモナコと同じデザインの国旗を使い続けている理由とは――? 国旗のことを知れば、世界のことがよくわかる! もちろん、日本の国旗についても書かれているので、その由来をぜひ知っておきたい。 (文=上浦未来) ●博学こだわり倶楽部 互いの知識を競い合う博学集団。メンバーは常人が気にもとめない世の森羅万象にこだわり、その解明のために東奔西走して追求している。著書には『絶対にすべらない雑学の鉄ネタ』『常識として知っておきたい科学50の大発見!』『金 知っておきたい大切な知識』(すべて河出書房新書)ほか多数。『国旗 その“隠された意味”に驚く本』(河出書房新書)
メディアの構造云々を語らずとも──喰えないライター稼業の覚悟を知る『竹中英太郎記念館・父子展』探訪
メディアの構造が変化する中で、「フリーライター」が飯を食っていくことが難しくなったといわれて久しい。けれども、筆者は大いに疑問を感じる。業界に足を踏み入れて10年あまり、一度とて楽に飯が食えていると感じたことなどないからだ。 10年ほど前に、えんぴつ無頼で口に糊して暮らそうと考えた時に、まず読んだのが竹中労の『ルポライター事始』(筑摩書房)であった。この本の冒頭で労は言う。 <モトシンカカランヌー、……という言葉が沖縄にある。 資本のいらぬ商売、娼婦・やくざ・泥棒のことだ。顔をしかめるむきもあるだろうが、 売文という職業もその同類だと、私は思っている> そもそも、ライターなぞはマスコミ業界の最底辺にほかならない。そんな理屈を理解して「覚悟は決めている」とうそぶいても、毎日生きているだけでも、腹は減るしカネはかかるものだ。あたりを見渡すと、同業者の中には「実家に帰ろうか」と話す者もいれば、自ら命を絶ってしまった者もいる。死んでしまっても消息がわかるなら、まだマシなほうかもしれない。多くは姿を消して、誰の記憶にも残らないからだ。そうした話を聞くたびに「覚悟」も揺らいでいくものだ。 そんなある日、山梨県の甲府市にある竹中英太郎記念館で、英太郎と労の父子展が開催されているとの話を聞いた。 揺らぐ覚悟を律する意味で、ぜひ訪問してみたいと、筆者は新宿発の高速バスの客となったのである。 記念館は、甲府市の郊外。駅からはバスで15分ほどの湯村温泉の郊外にある。バスを降りて徒歩で5分ほど、温泉街の通りを脇にそれた先のそれは、個人のお宅といった佇まいの、ホッとする雰囲気の建物だ。 靴を脱ぎ、入館料を支払い2階へと案内される。……そこは、情熱の世界であった。 英太郎の絵画、労の著作。筆者がまず見入ったのは、労の著作の背表紙と生原稿であった。 いま「ルポライター」の元祖と称される労の著作を読むことは、甚だ困難である。『ルポライター事始』『美空ひばり』など「主著」と呼ばれる作品は、ちくま文庫で現在も発行されている。しかし、それはあくまで彼の作品の一部にすぎない。『ニッポン春歌行 もしくは「春歌と革命」』(現代ジャーナリズム出版会)、『水滸伝 窮民革命のための序説』(平岡正明との共著/三一書房)などは、古書店で定価の数倍の値段になって売られている。 没後20年には、ムック本『竹中労──没後20年・反骨のルポライター』や、鈴木邦男氏の評伝『【人と思考の軌跡】竹中労──左右を越境するアナーキスト』(共に河出書房新社)が出版されるなど、需要があるにもかかわらず、著作を手に入れることは極めて困難なのだ。 しかし、苦労して手に入れた著作は、時折折れそうになる「覚悟」を押しとどめていてくれると、筆者は確信している。 そんな労の作品群の表紙や本文中を飾る絵画。それは、英太郎の手によるものである。 英太郎は、江戸川乱歩作品の挿絵などで知られる優れた画家だった。だが、思うところがあって、一線を退き、郷里の山梨で新聞社の社員となったという。そんな父が、唯一、労の著作にだけは自身の作品を提供した。『水滸伝』『ニッポン春歌行』『世界赤軍』(潮出版社)等々、筆者の手元にある労の著作は、いずれも英太郎の作品が表紙を飾っている。 『水滸伝』を著したように、一時期は平岡正明・太田竜と共に「世界革命浪人」を自称した竹中労。その父は息子と並んで、あるいは息子以上に革命への情熱を持った人物であった。『芸能界をあばく』の冒頭で労は <戦前左翼運動の修羅場をくぐりぬけてきた父──英太郎は、江戸川乱歩の挿絵を書いて大衆画壇の寵児となってからも、見果てぬ革命の夢を追っていたのだろう> と記す。画壇や文筆の世界で栄誉を得ることだけが人生の目標ではない。そんな世界の枠を越えたスケール。それが、いまだに多くの人々を魅了するのだ。 これまでも、さまざまな人物の記念館を訪れたことのある筆者だが、この記念館はひと味違った。館長でもある、金子紫さん(英太郎の娘、労の妹に当たる)は、リビングのようになっている記念館の一階で、来館者にお茶を勧め、父や兄の思い出話をしてくれるのだ。 金子さんと話をしながら棚を見れば、そこには労がたびたび寄稿していた「新雑誌X」(幸洋出版)、絶筆となった「実践ルポライター入門」が掲載されていた「ダカーポ」(マガジンハウス)などが並んでいる。「ダカーポ」はともかく「新雑誌X」が、こんなに揃っているのは、見たことがない。 聞けば、これらの雑誌は「ファンの人が寄贈してくれた」ものだそうだ。訪問者の中には、一日ずっと、それらの雑誌を読み続ける人もいるという。 金子さんによれば、竹中父子の資料の多くは、さまざまな理由で散逸しているという。 例えば、「週刊明星」(集英社)1969年3月9日号に掲載された、労の「書かれざる美空ひばり」という記事の中に「一昨年、父親は私の羽織の裏に“せめて自らに恥じなく眠れ”と書いてくれ」との一文がある。その羽織の消息を金子さんに尋ねたところ「(労の事務所スタッフが)タクシーに忘れたと聞いたことが……」という。ああ、なんともったいない! そうした散逸した資料は、時折世の中に姿を現す。労の生原稿などが古書店に出品されることもまあれにはあるのだ。しかし、かなり高額なものになる場合がほとんどで、記念館でもなかなか購入は難しい。ところが、そうした資料を入手して「これは、ここにあるべき」と寄贈する人もいるのだとか。そうして、記念館には父子二代のさまざまな資料が、少しずつ集まりつつあるのだ。 小さな記念館に満ちあふれる父子二代の情熱、あるいは革命への狂疾は、とても一度の訪問ですべてを受け止めることはできまい。次第に充実する資料もそうだし、すでに収集されている映像資料を見るだけでも、膨大な時間を必要とする。ここは、文筆で口に糊する者にとってのアジールではないかと、筆者は感じた。蹉跌を繰り返しても、倒れることなく立ち続けた先達がいるというのに、なぜ、早くもあきらめることができるだろうか。 それにしても、労のような文筆を成すのは難しい。未完に終わった「実践ルポライター入門」は、その最初に、読みやすい文章の実践として「泣き別れをしない」ことを挙げる。これひとつをとっても、なかなか成すのは難しい。 今は、さらっと社会を「批評」したフリをする論客たちが脚光を浴び、それに追いつけ追い越せとばかりに、最初からなんかの論客のように振る舞うヤツらが跋扈する時代だ。ここ数年でレーベルの増えた新書に至っては、「専門家」の話したことをゴーストライターがまとめて、センセイの名前で出版するのが当たり前。そんなものが売れている時代に、必死に取材して調べて書くルポライターが、そう簡単にうだつを上げられるはずもない。だが、Googleで検索して得られる情報がすべてだという勘違いはやがて廃れる。だからやっぱり、批評家気取りに堕落することなく、取材しなくては書けない、を貫かなくてはならないのだ。記念館で吸い込んだ空気で「覚悟」を新たにしながら、そう思った。 (取材・文=昼間たかし) 湯村の杜 竹中英太郎記念館 <http://takenaka-kinenkan.jp/>『竹中労---没後20年・反骨のルポライター』(河出書房新社)
「傀儡政権って言うな!」日中戦争が生み出した怪しいワールド満載本『ニセチャイナ』
“誰得”な奇書を世に問い続ける社会評論社から、またまたとんでもない本が出版された。名付けて『ニセチャイナ―中国傀儡政権 満洲・蒙疆・冀東・臨時・維新・南京』。 まず、書店に平積みにされていれば、誰もが手に取ってみたくなりそうな表紙のインパクトがものすごい。本文中に登場する人物たちの顔写真をコラージュするという手法、これを使って大成功した本といえば、平岡正明の『西郷隆盛における永久革命 あねさん待ちまちルサンチマン』(新人物往来社、1973年)を思い出す。表紙で遊ぶ本は、編集者の自信の表れ。すなわち、相当濃い内容になっているのは間違いない。 そして、本書もまたそのセオリーの通りだった。本書で扱われているのは、日中戦争中に中国各地に生まれた、いわゆる「傀儡政権」である。要は、日本軍が占領した地域に誕生した、インチキくさい政府の興亡を追ったものである。蒙古聯合自治政府とか中華民国臨時政府とか、果ては上海市大道政府など、高校の世界史の授業じゃ、まず触れない事項である。漠然と、日本軍が占領地域を支配するために誕生したインチキ政権のように認識されている、これらの政府。ここに関係した人々は、戦後になり日本軍に協力した「漢奸」(対日協力者)として処刑された者も多い。 だが、そこには一筋縄ではいかない事情があった。なにせ、日本軍に占領されても、住んでいる人々には日々の生活はある。かといって、軍隊では警察活動や行政サービスまでは、手が回らない。そこで、地域の有力者が恭順の意思を示して、行政機関として立ち上げたのが、これらのインチキ政権なのだ。このインチキ政権、日中戦争が泥沼化すると、なんと「我々は中国の正統政権だ!」と言って、日本と本気で和平を結ぼうとしていた。その政権の内部はというと、ものすごくドロドロで、純粋に日中の平和と民衆のためを思う人もいれば、敵国日本の顔をうかがいながら、なにがしか利益を得ようとするもの。密かに重慶政府に渡りをつけている者まで……。そこは、多くのフィクションの題材になってきた戦前の満州、上海に匹敵する、怪しさが満ちていたのである。 そんな怪しさを心ゆくまで理解して一冊の本にまとめるとは、相当の「奇人」か「数寄者」に違いない。と、取材の依頼をしたら、なんでも地方在住とか。ならば、電話取材をと思ったら、社会評論社の濱崎誉史朗氏から「いや、ぜひ一度、日刊サイゾーに出てみたかったそうなので……」ということで、上京されるタイミングで会うことになった。 こうして、対面取材とあいなった著者の広中一成氏。「日刊サイゾーに出てみたかった」というのは、別にリップサービスではなく「サイゾー」「ブブカ」「実話ナックルズ」を愛読しているというから、やっぱり「奇人」か「数寄者」の類いであった。 しかし、全身から「奇人」な雰囲気を醸しているわけではなく、非常に謙虚な人物である。最初、筆者が「サブカル本みたいな表紙なのに、学術書っぽいですね」と言ったところ、「いや、学術書じゃなくて一般書ですよ。だって、論文の形式から外れているので」と、言うのだから。 そんな広中さんは、愛知大学大学院出身。愛知大学といえば、戦前に上海にあった東亜同文書院の系譜を受け継ぐ、特殊な伝統校(戦前に日本の中国侵略に協力したとされ、戦後、日本で再興する時に名前をそのまま東亜同文書院大学にしようと試みるも、軍国主義復活を警戒したGHQによって阻止された。なので、法的にはつながりはないが、愛知大学の見解では東亜同文書院が母体となっている)。まさに、中国研究のエキスパートというべき人物である。 広中さんが、これらの怪しげな傀儡政権を研究テーマに選んだのは、修士課程の時。実証を重んじる歴史研究で、なぜか最初から「傀儡政権」という主観的なレッテルが貼られてしまっているという「憤り」が、このテーマに興味を持ったきっかけとのこと。なんでも、汪兆銘政権などは既に研究している人がいるので、ならばまだあまり研究の進んでいないところをと考え、冀東防共自治政府をセレクトしたのだそうだ。 研究テーマを選ぶだけなら、誰でもできる。驚嘆するのは、そこからの情熱である。『ニセチャイナ―中国傀儡政権 満洲・蒙疆・冀東・臨時・維新・南京』(社会評論社)
例えば、近年、日中戦争中の中国人による日本人虐殺事件としてクローズアップされるようになった「通州事件」の現地も訪問し、跡地がどうなったかも、くまなく見てきたのだとか。この事件、本書でも扱われている冀東防共自治政府のあった通州が舞台になったものでもある。とはいえ、わざわざ現地を訪れてみるとは、あまりにも情熱がありすぎる! 「当時と、街路があまり変わっていないので、昔の地図を頼りに歩けば簡単に事件の現場にたどり着くことができるんです。当時、死体を埋めたという場所が、現在は病院になっていたりして……」 ……通州訪問談は、ずいぶん続いたが、ネトウヨしか注目しなさそうなので、自粛しておこう。ちなみに、通州の町は現在、北京のベッドタウンとして栄えているのだとか。 現地を訪問するだけでなく、資料収集も熱心だ。本書には、多数の図版が使われているが、それらのほとんどは広中さんが収集した写真資料・絵はがきを利用したもの。さらに、取材の時にはネットオークションで落札した、勲章まで持参してくれた。 こうした情熱を支えるのも、やっぱり広中さんの怪しいもの好きである。 「正義の味方ぶっている人は、あまり好きじゃないんですよね。怪しい人を見るとゾクゾクしてしまうんです。なんで、こうなっちゃったのか、とね」 今回、広中さんが記述した数々のインチキ政権だが、日本軍に協力していたという事情もあってか、国内にも豊富な資料があり、未解明な部分も多く、研究材料にはうってつけなのだとか。また近年、研究が進む中で「漢奸」のレッテル貼りをはがす努力が進んでいるという。 いわば、今回の本は、そうした研究に興味を持ち、歴史の認識を改めるきっかけにもなる入門書といえるだろう。 「できることなら、この本を多くの学生の方に見てもらって、傀儡政権のあった当時の歴史に関心を持ってほしいですね」というのが広中さんの願い。さらに、研究を進展させるべく、広中さんは今年も中国を訪問する予定だという。……きっと、戦前なら馬賊か大陸浪人になっていたところだろうね。 なお、取材の翌日に本書の発刊に合わせ紀伊國屋新宿本店で開催された「ニセチャイナフェア」を見物に行ったところ、フェアの様子を心配そうに見に来ていた広中さんと再会した。ちょうど、本棚に並んでいた『黒旗水滸伝』(かわぐちかいじ・竹中労/皓星社、2012年)の名シーン……杉山茂丸が頭山満に、大陸狭しと暴れ回ってくれる若者として、小日向白朗・岩田富美夫・江連力一郎を引き合わせたところ、頭山が「悍馬一匹つけてやろう」と伊達順之助を紹介するというシーンで「ねえよ!」としばし盛り上がったのである……(きっと、これで盛り上がれる人が日本にあと100人はいると筆者は信じている)。 近年、どういう社会情勢の結果なのか、軍歌イベントにも、女子が急増中である。きっと、来年あたりには「殷汝耕萌え」とか、「ジェスフィールド76号萌え」女子も誕生し、コミケには女馬賊・中島成子のコスが登場すると願ってやまない。 (取材・文=昼間たかし)著者の広中一成氏
「YouTube削除は、新手の炎上商法!?」悶絶PVが物議を醸す『世界でいちばん強くなりたい!』
10月よりTOKYO MX、YTV、AT-X、ニコニコ動画で放送開始予定の新アニメ『世界でいちばん強くなりたい!』の「悶絶プロモーションビデオ」と称されるPVが、YouTubeのポリシーに違反しているという理由から削除され、アニメファンの間で物議を醸している。 『世界でいちばん強くなりたい!』は、すでにアニメ化済みの『てーきゅう』『まんがーる!』などを掲載する「コミック アース・スター」(アース・スター エンタテイメント)の連載コミックであり、初の30分枠アニメ化作品である。 国民的アイドルグループ「Sweet」のセンターボーカルの座を、4度の「国民投票」で獲得したトップスター・萩原さくらが、いきなりプロレスラーに転向。プロレス界でも頂点を目指すという作品だ。 今年引退したグラビアアイドル兼女子プロレスラー・愛川ゆず季の活躍に代表されるように、実力、ビジュアルともに向上著しい近年の女子プロレスと、全盛期から成熟期へと移行し始めた感のあるアイドル業界ネタを融合した本作は、秋クールアニメの注目作のひとつである。 そんな本作のスタッフとして、キャラクターデザイン・りんしん×アニメ制作・アームスという『クイーンズブレイド』『百花繚乱 サムライガールズ』『百花繚乱 サムライブレイド』などを手掛けた作画チームの名が並ぶほか、女子高生に転生した三国志の英傑たちがセクシーに戦うOVA『一騎当千 集鍔闘士血風録』を彼らと共に制作した久城りおん監督が登板。 このラインナップからすでに「アレ」なノリを期待せざるを得ないのだが、問題の「悶絶プロモーションビデオ」の仕上がりは予想通りというか、予想の斜め上というか。 ちなみに映像の内容は、対戦相手に技をかけられるさくら(声・竹達彩奈)が、あえぎ声を上げながら延々と番組のPRをするというもの。あずにゃん(中野梓)やきりのん(高坂桐乃)などオタ人気の高いヒロインを多数演じ、なおかつ本人も写真集、イメージビデオなどを発売するアイドル声優・竹達が(プロレス技をかけられて)あえぎ声を上げているなんて! シチュエーションを考えれば、エロ要素は皆無のはずなのだが、どうやらYouTubeの担当者の劣情を催してしまったらしく、速攻で削除の憂き目に遭ってしまった。その後、ファン有志によってミラー動画がYouTubeやニコニコ動画にアップされており、非公式ながら閲覧は現在も可能である。この映像にエロスを感じるのか。はたまた痛めつけられる女子の姿に、新たな性癖を見だしてしまうのか。それはあなた次第。児ポ法やら表現規制問題に直面する昨今のオタク事情を考える上で、気になる人は一度動画を見てみてはいかがだろうか。 個人的には、こういうおバカなノリのエロネタは全然アリだと思うし、何度も言うが、動画にはエロ要素は皆無。これがエロなら女子プロ自体がエロいということになるぞ! ネット上では「新手の炎上商法」的な言及をするアニメファンも少なからず存在するが、その真実は闇の中である。 いずれにせよ、このバカエロテイストがアニメ本編ではどのように描かれるのか、という期待感を煽る動画であることは変わりません。『世界でいちばん強くなりたい!』、楽しみにしています。 (文=龍崎珠樹)テレビアニメ『世界でいちばん強くなりたい!』
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