ルポライター鈴木大介の最新刊には、『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版)というセンセーショナルなタイトルが付けられている。犯罪報道などによって、未成年による援助交際の温床というイメージが先行する出会い系サイト。しかし、イメージとは裏腹に、ここで体を売るほとんどが成人女性であり、本書が描くのは、生活に困窮する「シングルマザー」たちが出会い系サイトを通じて売春を行う実態だ。 自ら出会い系サイトに登録し、15名の「出会い系シングルマザー」たちを調査した鈴木。その実態は、本当に現代日本の出来事なのかと疑いたくなるような貧困に満ちている。例えば、こんなふうに。 中井沙耶子さん(仮名)は、小学校2年生の娘を育てている。毎日、病気で寝込んでいる母親の世話をしながら、娘を学校へ送り出している。夫との離婚後、中井さん自身もうつ病による睡眠障害を発症し、看護師の仕事を退職せざるを得なくなった。中井さん名義のカードで借金を重ねて別れた夫からは、当然、慰謝料も養育費も振り込まれることはない。そんな中井さんが携帯をいじっていてたどり着いたのが出会い系サイトだった。彼女は、わずか1万円で自分の体を売った。そして、いまや出会い系サイトに募集をかけるのが日課になっているのだ……。彼女にとって、唯一の支えは愛娘の彩ちゃんしかいない。 「彩だけが救い。死にたくて、でも彩がいるから死なない。彩はこんな私を見て育っているのに、どうして? って思うくらい手間がかからなくていい子に育っている」 「比較的恵まれたポジション」と鈴木が書く中井さんですら、こうなのだ。頼る親もなく、資格も持たないシングルマザーたちは、もっと過酷な状況に追い込まれている。 では、彼女たちがこの貧困を抜け出すことはできないのだろうか? 鈴木は、さまざまな可能性を検証する。けれども、民生委員に相談をすれば、近所の人に売春の事実が知れわたる危険性がある。精神病を抱えていたり、子どもの面倒を見るために新たな仕事を見つけることは難しい。もしも、生活保護を受けていることが知られたら、子どもはたちまちイジメの標的になってしまうだろう。多くのシングルマザーにとって、最後のセーフティネットとなっているのが実家の存在。しかし、それすらも持たないなら……? だが、本書を読み進めていくと、決して金だけが理由ではない「出会い系シングルマザー」の実態もまた浮かび上がってくる。風俗店のように、組織を後ろ盾にできない売春環境で、彼女たちが危険な目に遭ったことは一度や二度ではない。では、なぜ彼女たちは「出会い系サイト」というツールを使うのだろうか? 実は、彼女たちには「売春をしている」という意識は薄い。前述の中井さんは、1万円を「もらった」ではなく「借りた」と表現する。鈴木が接した出会い系シングルマザーのうち、2割にも及ぶ人が、そのきっかけを「寂しかったから」と語っているのだ。いい大人が、寂しさを埋めるために体を売る……。いったい、それはどういうことなのか? シングルマザーの多くが、離婚を経験している。それは女性にとって、精神的に負担がかかることだ。その上、生活苦やうつ病、子育ての悩みなどが加わってくる。彼女たちの話を聞いてくれるのは、「出会い系の男」しか残っていなかったのだ。 「逢えば話を聞いてくれるからね。子供のこととか精神科に患ってることとか、身近な人だったり、失いたくない人だったら逆に話せないことが、出会い系で逢った男になら話せるというのもありますよ。(略)もしかしたら全部包容力でカバーしてくれるような男がいるかもって気持ちもある」 もちろん、その場限りの男が、根本的な解決を与えてくれるはずがない。それでもなお、彼女たちは、それにすがらざるを得ない。「出会い系シングルマザー」に絶望を感じてしまうのは、子育てのために体を売らなければならないからではなく(昔から、そんな境遇のシングルマザーは少なくなかっただろう)、出会い系サイトに救済を求めているからだ。 そんな彼女たちの姿を見て、鈴木は、あるいら立ちにとらわれていく。貧困と、絶望の中で生きるなら、いったいなぜ、子どもを産んだのか? 鈴木は「親による児童虐待のニュースを見た時と同じような気持ち」になる。それは「自己責任」ではないのだろうか? しかし、そんな鈴木のいら立ちを氷解させたのも、また同じシングルマザーの姿だった。 「シングルマザーがシングルマザーである所以は唯一『子どもを手放さないこと』なのだ。思えば、子どもを手放してしまえば、どれほど身軽になるだろう。彼女らにとって合理的な生活・経済の再建を考えるなら、子どもを養護施設等の公的福祉機関に預けるのもひとつの手段なのだ。少なくとも彼女らには、帰属すべき実家や頼れる親族もいないのだから。それでも彼女らは、手放さない。その手に握った小さな手を、決して手放さない」 シングルマザーたちは子どもを愛している。だから、決して子どもを見捨てず、誰の手も借りずに、苦しい環境を生き抜いている。生活保護をもらわないのも、子どものためを理由にする母親は少なくないのだ。鈴木が取材した「NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長は、「出会い系シングルマザー」たちについて、こう語っている。 「とにかく彼女らに言えることは、売春をやっても生き延びてきたことを誉めてやることだと思います。とにもかくにも、子どもも殺さずに本当によくやった、大変だったね、助けは求めてもいいんだよ、と」 「出会い系シングルマザー」の彼女たちは、シングルマザーにおいても特殊事例だろう。けれども「喉元まで出掛かった『助けて!』という叫びを、声にできない」からこそ、彼女たちはそうならざるを得なかった。生活保護受給者に対する辛辣な視線や、シングルマザーは「自己責任」であると見なす風潮こそが、彼女たちから「助けて」という声を奪っているのではないだろうか。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版)
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過剰なスプラッター描写が逆に笑いを誘う! 山田悠介×井口昇『ライヴ』
今週取り上げる最新映画は、人気作家が手がけた話題の小説を映像化した邦画2作品。高校生の淡い恋を描く青春ドラマに、過剰なスプラッター描写が逆に笑いを誘うサバイバルホラーと、趣はまるで異なるが、春らしいフレッシュなキャストと印象的な映像センスという共通点もある(いずれも公開中)。 『百瀬、こっちを向いて。」は、ももいろクローバーの元メンバーで、ドラマ、CM、PV出演と活躍する女優、早見あかりの初主演映画。新人文学賞を受賞した30歳の小説家・ノボル(向井理)は、母校から講演を依頼されて15年ぶりに帰郷し、当時を回想する。地味で女子と無縁な高校生だったノボルは、ある日先輩の瞬から、ショートヘアで鋭い目つきの美少女・百瀬陽(早見)を紹介される。瞬には本命の彼女・神林徹子(石橋杏奈)がいたが、陰で百瀬とも会っていて、一部でウワサになっていた。ウワサを打ち消すため、瞬はノボルに百瀬と付き合うふりをするよう提案。ノボルと百瀬は、校内で手をつないで歩くなど「ウソの交際」を始める。 原作は、人気作家の乙一が別名義の中田永一として発表した短編。CMで女性をキュートに撮ることに定評があり、「NO MORE 映画泥棒」の演出でも注目の耶雲哉治が長編監督デビューを飾った。初主演のヒロインに若手の共演陣、演技や演出の未熟さは認められるものの、初々しさが青春の不器用さを思い出させる効果も。大切な人のために本心を抑え、苦悩しながら恋人同士を装う高校生たちだからこそ、説得力たっぷりではない、ぎこちないくらいのたたずまいが似合う。光、影、風が映像に美しくとらえられ、川辺と高圧線鉄塔の郊外の風景にも雰囲気がある。ともあれ、現在19歳の早見あかりの魅力が全開で、おそらく演技面でも精神的にも猛スピードで成長する時期、今後の出演作にも大いに期待したい。 『ライヴ』は、山田悠介の同名小説を、『片腕マシンガール』「電人ザボーガー」などで国内外にカルト的人気を広げる井口昇監督が映画化。フリーターの直人(山田裕貴)のもとにある日、謎の男から山田悠介の小説「ライヴ」が届けられる。携帯電話には母親が拉致監禁されている動画が届き、「母親を助けたければ、小説の内容をヒントにデスレースのゴールを目指せ」と脅される。直人は、同じように家族や恋人を拉致された人々とレースを開始するが、そこには凶悪な敵と死のトラップが待ち受けていた。 メインキャストはほかに、『高校デビュー』の大野いと、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の森永悠希。原作本がレース攻略本として劇中に登場するというヒネリは、常識を突き抜けた独創性が海外で高く評価される異能の天才・井口監督ならでは。自主映画から商業映画へと移行する過程で、過激な描写が減る傾向にあるが、今作はメジャー配給作品にもかかわらず、わざとらしい状況やありえない展開が笑いを誘うバイオレンスシーンも満載。知名度は低めだがやたら身体能力の高い脇役たち(特に女優陣)によりバトルシーンもいい感じでハジケている。ストーリーにほとんど関係ない微エロのシーンも、男性観客にはうれしいポイントだ。東京のまちなかで展開する不条理なサバイバルレースを、ライブ中継で観戦する感覚で楽しみたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『百瀬、こっちを向いて。』作品情報 <http://eiga.com/movie/78729/> 『ライヴ』作品情報 <http://eiga.com/movie/79996/>(C)2014『ライヴ』製作委員会
夏が来る前に引き締めボディを手に入れろ! 話題のメンズエステ『ONINO 牧原塾』を体験してみた

ぐい~
タイウェアはかなり楽チン。
胸で……
こんな角度まで……
大技も!
紙ショーツはこんな感じ
上半身はもちろん……
リンパも念入りに。
念入りに。
――あっちのほうが(笑)。 牧原 そうすると男性ホルモンも活発になってきてどんどん活発になると思うので、野性的になってくると思うんですね。たくましさとか、雄々しさ、凛々しさを蘇らせていってほしいです。 ――内側から男をつくる、と。 牧原 はい。イケメンをつくる! それが願いであり目的です。 ――ほかのサロンとここがちがうよ、というところでは。 牧原 マッサージをちゃんとするということですね。既存の他店では根本になるマッサージがちゃんとしていないところがあるという不満もよく耳にします。一日、二日の研修でお店に立つこともあるようなんですけれども、ウチは最低でも一カ月はみっちり研修に費やしますから。技術を身につけてからのデビューになるので、リンパのマッサージをするけど、それだけではない、体をリラックスさせて、筋肉をほぐすことをきちんとやるお店として認知されたいんです。見た目はおこのみがあるでしょうけれども(笑)、3級でも技術は高いですから。ハズレがありません。もちろん独自の部分もありますよ。おっぱいを押し付けるのは牧原塾のオリジナルなんですよ、ふつうのタイ古式はあんなことしません(笑)。エレベーターまでお見送りしますし、奉仕の精神で接させていただきます。 ――風俗的なヌキではないんだけれども元気になる、というところもポイントですか。 牧原 そうですね、元気になった活力を持ち帰りいただいて、奥様との営みや、彼女との愛の確認を充実させて、ハッピーになっていただきたいなと。 最近は「キャビテーション」というメスを使わない脂肪吸引など、メニューを増やしつつある「ONINO 牧原塾」。噂が噂を呼んでお客さんが殺到、しかも120分コースを堪能する人が多いとのことで、予約をとるのにちょっと苦労するかもしれないが、あきらめずに問い合わせてみよう。薄暗いムーディな部屋で至福の時間が待っているぞ! ※5月6月限定!今なら日刊サイゾーを見たというと、500円オフ!! 詳しい情報は下記サイトまたは、電話まで! ONINO 牧原塾 http://omj.jp/ TEL 03-6455-1929牧原しほ塾長
怪魚を求めて世界の僻地へ! 衝撃のとんでも写真の数々が詰まった『新・世界怪魚釣行記』
寝ても覚めても、釣り、釣り、釣り! 三度の飯より何より釣りが大好きな、俗に言う“釣りバカ”。世の中には、この“釣りバカ”が意外と多いと思うのだが、『新・世界怪魚釣行記』(扶桑社)の著者で、怪魚ハンターの武石憲貴氏はレベルが違う。もう、人生を捧げちゃってるのだ。 「釣竿片手に、世界の水辺のヌシに会いに行く!」をテーマに、これまでに“釣旅”に費やした総日数は1732日、訪問した国は37カ国。ひたすら怪魚を求め、世界中の辺境を訪れ、戦いに挑んでいる。本書は、2009年に発売された『世界怪魚釣行記』(同)の第2弾で、09~13年の“釣旅”の記録である。 今回登場する怪魚たちは、南米のアマゾン河を代表する、下アゴから長い牙が伸びたカショーロ、秘境パプアニューギニアの密林の奥地に潜む未知の大ナマズ、北米大陸の氷河から流れ出す川の底を徘徊する、最大4メートルを超えるといわれる世界最大の淡水魚・シロチョウザメほか、数え切れぬほど登場するのだが、その見た目は魚というよりも、もはや恐竜! そんな怪魚たちを相手に、子どものように興奮しながらファイトを繰り広げる。 「動きは鈍く、慌てるほどではない。だが、どこか捉えどころがなく、何か底知れぬ力を秘めたような不気味な感じだ」 「竿先が“グゥーン、グゥーン”とゆっくり上下し始め、じれったくなった僕は力を込めて合わせた。“ドスッ!”という衝撃と共に、その魚はゆっくりと潜行を開始した」 「あまりの大きさに一瞬めまいがして頭の中が真っ白になるが、気持ちを持ち直し、『掴んだぞー!』と勇ましく叫ぶが、グローブに穴が開いており、剣山状に並ぶ歯が人差し指に突き刺さる」『新・世界怪魚釣行記』(扶桑社)
など、臨場感たっぷりだ。
また、武石氏が巨大魚を両腕に抱きかかえ、押しつぶされそうになっている記念写真をはじめ、鮮やかな黄色に発色した魚や、水玉模様の魚、やたら目が大きなびっくり顔の魚など、見たこともない魚が次々と登場するので、写真を眺めているだけでも十分楽しめる。
帯は、未確認生物や探検の世界ではコアなファンが多い、ノンフィクション作家・高野秀行氏が担当。「衝撃の写真とユーモアあふれる文章。いや、凄い。面白い。参った!」とコメントを寄せている。
怪魚を求めて世界中を放浪する、男のロマン、そして、男の人生が詰まった一冊だ!
(文=上浦未来)
●たけいし・のりたか
1973年、秋田県生まれ。大学卒業後、会社勤めをするが2年半で退社。99年、まだ見ぬ怪魚を探索するため、インドを訪れたのをきっかけに“釣り旅”を始め、世界各地を釣り歩く。以後、ユーラシア・北米・南米・オーストラリア・アフリカの五大陸の怪魚を追い求め、放浪している。
『ディープ・ブルー』『アース』のBBC EARTH最新作『ネイチャー』で地球を感じろ!
今週取り上げる最新映画は、手つかずの大自然が超リアルな映像で眼前に広がるドキュメンタリーと、虚飾にまみれた元セレブの再起をかけた奮闘がおかしくも哀れなコメディドラマ。普通は直接体験できないテーマだからこそ、映画館でしばし現実を忘れ、別世界のライフに浸ってみたい。 『ネイチャー』(3D上映、公開中)は、『ディープ・ブルー』『アース』のBBC EARTHが、新開発の4K3D撮影機材でアフリカ大陸と近隣の海域に息づく大自然をとらえたドキュメンタリー。熱帯雨林で無邪気に遊ぶマウンテンゴリラの子ども、乾期に水を求めて過酷な旅を続けるアフリカゾウの家族、灼熱の砂漠でサバイバルを繰り広げる爬虫類と昆虫、サンゴ礁がはぐくむカラフルな海生動物といった生き物たちの姿と、火山口の溶岩、巨大な滝、激しく逆巻く波のダイナミックな表情を映し出す。日本語版ナレーションは滝川クリステル。 今なお変化に富む自然環境と多様な希少動植物に恵まれた“魅惑の王国”アフリカに、4K3D用の最新カスタム機材で臨んだ映像が圧巻。小動物や昆虫のクローズアップは、観客自らが小動物になって向き合うかのような臨場感で、トカゲやヘビなどの爬虫類に寄ったショットでは、彼らに表情があるかのように見えてくるから不思議だ。特に技術向上の恩恵が実感できるのは、ハイスピード撮影とスロー再生による水滴、水流、波の美しさ。シャープにフォーカスが合ったパイプライン(波のトンネル)は絶品で、青く透き通って輝く宝石のよう。壮大さを演出しようとしてか、BGMが騒々しいのが玉にキズだが、大自然は人間の作為に頼らずとも十分に劇的で驚きに満ちていることを感じ取れるはずだ。 『ブルージャスミン』(5月10日公開)は、ケイト・ブランシェットが身勝手で痛々しい元セレブに扮する、ウッディ・アレン監督44作目のドラマ。ニューヨークの裕福な実業家ハル(アレック・ボールドウィン)と結婚し、上流階級の優雅な生活を満喫していたジャスミン(ブランシェット)は、結婚生活が破綻し全財産を没収されたため、サンフランシスコに住む妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)の質素なアパートに身を寄せる。庶民的な暮らし、騒々しいジンジャーの子どもと男友達、慣れない仕事にストレスを募らせ、現実逃避してブツブツと独り言をつぶやくほど不安定になったジャスミン。パーティーで洗練された外交官ドワイト(ピーター・サースガード)に出会ったことで、上流階級復帰の妄想を膨らませていく。 本作で第86回アカデミー賞主演女優賞を獲得したケイト・ブランシェット。自分語りばかりで人の話を聞かない冒頭から、酒と薬に依存しヨレヨレにになっていく中盤、いよいよ壊れてボサボサ髪と流れたマスカラとビッショリ脇汗が強烈な終盤まで、実際に身近にいたら黙って離れたくなるに違いない超迷惑なキャラクターを入魂の演技で表現した。自分勝手で薄っぺらいセレブに対する、アレン監督らしいシニカルな視点と辛らつなユーモアが爆笑を誘うが、格差社会の現実を突きつけられた苦さもじわりと残る。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ネイチャー』作品情報 <http://eiga.com/movie/79699/> 『ブルージャスミン』作品情報 <http://eiga.com/movie/79024/>(C) BBC Earth Productions (Africa) Limited and Reliance Prodco EK LLC 2014
ダイナミックなアクションが3Dと相性抜群!『アメイジング・スパイダーマン2』
今週取り上げる最新映画は、若い世代を中心に幅広い層が楽しめるアメコミヒーローアクションと、大人向けの恋愛ドラマ。家族、カップル、友人同士で出かける機会の増えるゴールデンウィーク、好みに合う作品をぜひ劇場でご覧いただきたい。 『アメイジング・スパイダーマン2』(公開中、2D/3D上映)は、マーベルのスーパーヒーロー・コミックを原作に、マーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演でシリーズをリブートした『アメイジング・スパイダーマン』の続編。スパイダーマンとしてニューヨーク市民を守る活躍が続くピーター・パーカー。恋人グウェン(エマ・ストーン)とともに高校を卒業するが、彼女の亡き父との約束が原因で、2人は別れてしまう。そんな頃、感電事故に遭って高圧電流を操る怪人となったエレクトロ(ジェイミー・フォックス)や、難病を克服するために投与した物質のせいで醜く変貌したグリーン・ゴブリンが、次々にスパイダーマンに襲いかかる。 3Dで上映されることが多いスーパーヒーロー映画の中でも、臨場感や奥行き感、被写体がスクリーンから飛び出してくるギミックなど、3D映像の魅力を目いっぱい楽しめる点で屈指の本シリーズ。もともと、摩天楼の間を振り子の要領で移動する「スパイディー・スイング」のような高低差を活かしたダイナミックな動きが3Dと相性が良いことに加え、スパイダーマンの手首から放たれたクモの糸が観客側にグングン伸びてくるショットなど、これぞまさに3D! という映像が満載だ。中盤のエレクトロとの初対戦では、怪人が市街地で放った高圧電流により危機一髪な通行人多数をストップモーションで静止させ、その空間をスパイダーマンが俊敏に動き回って1人1人を救う様子を、移動する視点で見せていくという、『マトリックス』で有名になったバレットタイム技法を発展させたような名場面も。アクションだけでなく、恋愛映画『(500)日のサマー』のウェブ監督らしく、ピーターとグウェンの恋と運命を丁寧に描いている点も見逃せない。グウェン役のエマ・ストーンがアップになると、金髪の立体的なウェーブ、虹彩の奥行きまで感じられ、男性はもちろん女性までうっとりとロマンチックな気分に浸れそうだ。第1作を未見なら、DVD等で鑑賞してから本作に臨むとストーリーを一層楽しめるだろう。 『とらわれて夏』(5月1日公開)は、許されない愛を貫こうとする男女の姿を描く感動のドラマ。アメリカ東部の小さな町で、夫と離婚して13歳の息子ヘンリーと2人で暮らすアデル(ケイト・ウィンスレット)は、1987年9月初めのある日、買い物に出かけたスーパーで脱獄犯のフランク(ジョシュ・ブローリン)に遭遇。強要されるまま、フランクを車に乗せて帰り、自宅にかくまうことになる。フランクはケガをした脚が治れば危害を加えず出て行くと約束し、アデルの家事を手伝い、ヘンリーには野球を教えて過ごす。それぞれつらい過去を抱えたアデルとフランクは、ほどなく互いを強く求め合うようになる。その頃、町では警察によるフランク捜索の手が広げられていた。 J・D・サリンジャーと同棲したことでも知られる女性作家ジョイス・メイナードが2009年に発表した小説を原作に、『JUNO ジュノ』『ヤング≒アダルト』の若き天才、ジェイソン・ライトマン監督が映画化。2人の過去をフラッシュバックで徐々に明らかにする緻密な構成で、緊張をはらむ抑えた演技と演出により濃密な4日間の心の変化を表現した。過去にパートナーとの関係で失敗したことが心の傷になっている男女が、障害を乗り越えて新しい愛に生きようとする姿に、「罪のあがない」が必要と分かっていても思わず応援してしまうはず。過去の罪や悲劇からの再生が描かれると同時に、不安定な母を支える少年の成長物語としても味わい深い。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『アメイジング・スパイダーマン2』作品情報 <http://eiga.com/movie/78257/> 『とらわれて夏』作品情報 <http://eiga.com/movie/57489/>(C) 2013 CTMG. All Rights Reserved.
コリン・ファース×二コール・キッドマン×真田広之『レイルウェイ 運命の旅路』
今週取り上げる最新映画2本の舞台は、昭和の雰囲気が残るさびれた地方都市と、第2次世界大戦で日本軍が連合軍と戦い占領した東南アジア。それぞれの作品が持つ生々しさ、真に迫る力が、私たちが暮らす今ここに地続きでつながっていることを実感させてくれる。 『そこのみにて光輝く』(R15+/4月19日より全国ロードショー)は、『海炭市叙景』(10)で知られる函館市出身の小説家・佐藤泰志が自殺する1年前に発表した唯一の長編小説を、呉美保監督、綾野剛主演で映画化した作品。死亡事故が起きた採石場の仕事を辞め、海に近いある町で無為に過ごしていた達夫(綾野)は、仮釈放中の人懐こい若者・拓児(菅田将暉)とパチンコ屋で知り合う。ついて来るようせがまれ訪れた拓児の家には、寝たきりの父とその世話で疲弊する母、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。昼は塩辛の加工工場で働き、夜は体を売って一家を支える千夏に、達夫はひかれ、やがて互いを求め合う。だが、拓児に仕事を世話している植木農場の社長が、千夏に体の関係を続けるよう強要したことで、ある事件が起こる。 芥川賞をはじめ多くの文学賞で候補になりながら、受賞がかなわず自ら命を絶った“不遇の作家”佐藤泰志による1989年の小説を、現代の物語に置き換えた。格差社会の底辺でもがき、傷つきながら生きる若者たちの姿を、残酷なほど切実で、しかしその中にあたたかな眼差しを感じさせる映像を通じて描き出す。池脇千鶴のほとんど諦めかけた表情、たるんだ肉体のリアリティーに女優魂を実感。暗闇のようなどん底の人生で、苦しみと痛みを経たからこそ輝く「光」は、生前評価されなかった原作者へのレクイエムであると同時に、今の時代に悩めるすべての人へのエールでもある。 オーストラリア・イギリス合作の『レイルウェイ 運命の旅路』(4月19日公開)は、コリン・ファース、二コール・キッドマンという2人のオスカー俳優と、真田広之の共演で実話を映画化したヒューマンドラマ。第2次世界大戦時、英国軍兵士のエリックは、シンガポール陥落時に日本軍の捕虜になり、タイとビルマを結ぶ鉄道を建設現場で過酷な労働と拷問を体験。約50年後、当時の記憶に苦しめられながらも、愛する妻パティ(キッドマン)と静かに暮らしていたエリック(ファース)は、建設現場にいた日本人通訳・永瀬(真田)が今もタイで戦争体験を伝えていることを知る。トラウマに襲われ動揺するエリックだったが、過去と向き合うことを決意し、タイを訪れて永瀬に対面する。 原作は、元英国兵士が実体験をつづったノンフィクション作品。『英国王のスピーチ』(10)でアカデミー主演男優賞を獲得したコリン・ファースの、緊張をはらんだ静と動の演技が味わい深い。地味な髪型と控え目なメイクで脇役に徹しているニコール・キッドマンに好感。後半でようやく登場する真田広之は、出演シーンこそ短いが、捕虜酷使と拷問に立ち会った男の苦悩と贖罪を確かな存在感で印象的に表現している。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『そこのみにて光輝く』作品情報 <http://eiga.com/movie/78908/> 『レイルウェイ 運命の旅路』作品情報 <http://eiga.com/movie/78220/>(C)2013 Railway Man Pty Ltd, Railway Man Limited, Screen Queensland Pty Limited, Screen NSW and Screen Australia
「タモリ学」「有吉本」が大ヒット! 新進気鋭のテレビっ子ライター・てれびのスキマとは何者なのか
当サイトの人気連載「テレビ裏ガイド」(http://www.cyzo.com/cat8/tv_ura/)を執筆する、てれびのスキマこと戸部田誠氏が、『タモリ学』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか』(コア新書)の2冊を上梓した。
前者は、イースト・プレスが運営するウェブ文芸誌「マトグロッソ」の不定期連載をまとめたもの。テレビやラジオ、書籍などでのタモリの発言やエピソードを通して、その哲学や魅力を浮かび上がらせている。一方、後者は、浅草キッド・水道橋博士が編集長を務めるメールマガジン「水道橋博士のメルマ旬報」に連載していた「芸人ミステリーズ」を書籍化。有吉をはじめとする8組の芸人を取り上げ、それぞれの“謎”を通して、芸人の苦悩や、それをいかにして乗り越えていったのかを解き明かす。
戸部田氏は、お笑い、格闘技、ドラマなどをこよなく愛する、いわき市在住の“テレビっ子”だ。ブログ「てれびのスキマ」(http://littleboy.hatenablog.com/)が業界内で話題を集め、あれよあれよという間に、雑誌やウェブで多数の連載を抱える人気ライターに。さらに、そこから時を待たずして、立て続けに2冊上梓。ブックファースト渋谷文化村通り店の週間ランキングで2冊同時にトップ10入りするという、鮮烈なデビューを遂げた。
そんな戸部田氏のコラムの魅力について、あるテレビ誌編集者はこう語る。
「ナンシー関さんが亡くなって以降、“ポスト・ナンシー”を気取るコラムニストが増えましたが、“愛情ある辛口”が売りだったナンシーさんに対し、彼らの多くはやみくもに相手を批判する、ただの悪口でしかないケースが目立つ。それに比べ、“テレビっ子”という視点で、ただただその愛情だけでテレビを語る戸部田さんは、今までにいなかった新しいタイプの書き手ですね。“裏”を読み解くのが主流になってしまったテレビ批評界において、彼の文章にはいつも、番組の作り手や出演者への尊敬のまなざしが感じられます」
戸部田氏の作り手に対する尊敬のまなざしは、かつて、われわれが子ども時代に夢中になってテレビを見つめていたまなざしそのものだ。この2冊は、その頃の気持ちで、もう一度、テレビという魔法の箱をのぞいてみるチャンスを与えてくれる良書といえよう。
飲んべえオッサンたちが大奮闘『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』
今週取り上げる最新映画2作品は、主人公らが世界の危機に立ち向かうというのが共通のテーマ。とはいえ、片や飲んべえのオッサンたちが奮闘する姿を英国らしいシニカルなユーモアを交えて描くコメディ、片やアメリカの名を冠した王道のアメコミヒーローが巨大な陰謀と戦うアクション大作と、それぞれのテイストは大いに異なっている。 『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(4月12日公開)は、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(07)のエドガー・ライト監督と主演サイモン・ペッグ&ニック・フロストの3人組が、母国イギリスを舞台に3度目のコラボで描くSFコメディ。約20年前、一晩でパブ12軒をハシゴするチャレンジの途中で挫折したゲイリー(ペッグ)は、再挑戦するため当時の仲間アンディ(フロスト)ら4人を招集し、故郷の町に舞い戻る。5人はハシゴの途中で、様子がおかしい住民らに襲撃され、異様な光景を目の当たりにするが、困惑しながらも12軒目の「ワールズ・エンド」を目指して飲み続ける。 住民たちがエイリアンに乗っ取られていた――そんな侵略SFの定番の設定をなぞりつつ、人類の命運を握るのがくたびれた酒飲み中年たちという点が、ユニークかつ最高にバカバカしい。前2作と同様、随所に盛り込まれたジャンル映画のオマージュやパロディを見つけるのも楽しいし、エイリアンに操られた住民たちからの必死の逃走、めまぐるしい大乱闘も笑いを誘う。コミカルな要素がはじけるストーリーの中で、グローバル資本主義とインターネット普及によるコミュニティの画一化や個人の疎外感への風刺という、ビターな隠し味が効いている。 『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』(4月19日公開、2D/3D上映)は、マーベルコミック原作のヒーローアクション『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(11)の続編で、引き続きクリス・エバンスが主役を演じる。国際平和維持組織「シールド」に属するヒーロー軍団「アベンジャーズ」のメンバーとして、ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)やニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)らとともに任務に当たっていたキャプテン・アメリカ。だが3人は、シールド内部で全人類を監視する計画が動き出すと同時に、組織の内外から命を狙われ、誰が真の敵なのか分からないまま逃亡者となる。やがてキャプテン・アメリカは、最強の暗殺者ウィンター・ソルジャーに追いつめられるが、マスクが外れてあらわになった敵の素顔に衝撃を受ける。 物語は、マーベルヒーローが集結した超大作『アベンジャーズ』から2年後という設定なので、同作とシリーズ第1作は事前に見ておきたい。『アイアンマン』シリーズや『マイティ・ソー』シリーズがコミカルな要素を強める中、今作はシリアス路線に舵を切り、比較的大人向けのアクション映画となった。日本人にとってやや馴染みの薄いキャプテン・アメリカの内面を丁寧に描く場面も適切に配され、アクションシーンと緩急がつき相乗効果を生んでいる。格闘術や銃火器を巧みに操るクールなスカジョに加え、シールド副長官役のコビー・スマルダーズ、エージェント役のエミリー・バンキャンプらタイプの異なる美女3人の競演も嬉しいポイントだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』作品情報 <http://eiga.com/movie/78979/> 『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』作品情報 <http://eiga.com/movie/77787/>(C)Focus Features
スタローンとデ・ニーロが夢の共演! 異色のスポ根コメディ『リベンジ・マッチ』
今週取り上げる新作映画は、スタローンとデ・ニーロが初老ボクサー役で夢の競演を果たした異色のスポ根コメディと、美少女2人の大胆な性愛描写が話題を呼び、昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞を獲得した愛のドラマ。一度きりの人生、型破りでもやりたいことや好きなものを追求して生きることの大切さを教えてくれる2作品だ(いずれも公開中)。 『リベンジ・マッチ』は、映画史に残る傑作ボクシング映画『ロッキー』と『レイジング・ブル』、それぞれに主演したシルベスター・スタローンとロバート・デ・ニーロがリング上で因縁の対決を演じる娯楽作。80年代のボクシング界でライバル同士だったレイザー(スタローン)とキッド(デ・ニーロ)は、1勝1敗後の第3戦直前にレイザーが突然引退し、以来2人は犬猿の仲に。30年がたち、造船所で働くレイザーと、商売を営むキッドのもとに、プロモーターから遺恨を晴らす試合のオファーが舞い込む。レイザーは旧友の老トレーナーに、キッドは疎遠だった息子に鍛え直され、ついに対戦当日を迎える。 監督のピーター・シーガルは、『裸の銃を持つ男 PART33 1/3 最後の侮辱』(94)、『ゲット スマート』(08)などコメディを得意とし、本作でも数々の映画の引用、パロディでファンを楽しませる。序盤のゲーム制作場面で、モーションキャプチャー収録のはずがリアルな乱闘になってしまう展開は、「本当に面白いアクションは、CGなんかじゃなく生のファイトなんだ」と訴えているかのよう。老トレーナーとの絆、離れていた家族との葛藤と和解のサブストーリーも巧みにからませ、終盤の胸アツな決戦をドラマチックに盛り上げる。本編が終わったあとも、慌てて席を立たないように。エンドロールで超有名な2人のカメオ出演があり、ヘビー級の映画ネタギャグが炸裂する。 『アデル、ブルーは熱い色』(R18+)は、フランスの新進女優アデル・エグザルコプロスと、「マリー・アントワネットに別れをつげて」(12)のレア・セドゥーが、運命的な恋に落ちた2人を演じる愛と人生の物語。文学を愛する高校生アデルは、上級生の男子とのデートに向かう途中、青く髪を染めた美大生エマと目が合い、心を射抜かれる。ほどなくバーで再会した2人は、激しく愛し合うようになる。数年後、教師になったアデルは、画家のエマと同棲生活を送っているが、2人の気持ちは次第にすれ違ってゆく。 フランスの人気コミックを原作に、アラブ系フランス人のアブデラティフ・ケシシュ監督が映画化。2013年・第66回カンヌ国際映画祭では審査委員長のスティーブン・スピルバーグに絶賛され、監督と主演女優2人の3人にパルムドールが贈られるというカンヌ史上初の快挙を達成した。美しく切なく、痛みを伴う愛の行方を、あえて“メロドラマ”にせず、2人を静かに観察するかのような演出で描く。作品世界の中で鳴っている音楽(店内やイベントや路上パフォーマンスなど)を除くとBGMが一切使用されず、登場人物の緊張や興奮が、息づかいやあえぎ声を通じて生々しく伝わってくる。愛の交歓シーンでは、愛し合っている2人に感情移入して高揚する気分と、のぞき見のような背徳感とが混じり合い、複雑な感覚を味わうはず。官能的な映像の魅力もさることながら、愛の意味に哲学を重ね合わせることで、世界観に奥行きが出ている。多民族社会、格差、性的マイノリティーへの偏見と自由化運動など、フランスの今が垣間見られる作品でもある。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『リベンジ・マッチ』作品情報 <http://eiga.com/movie/78100/> 『アデル、ブルーは熱い色』作品情報 <http://eiga.com/movie/79242/>(C)2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.







