今週取り上げる最新映画は、近未来の管理社会でヒロインが“異端者”としての使命に目覚めていくハリウッド製SF大作と、孤独な女子高生とモテ男子のピュアな恋愛を描く邦画の2本。不安と迷い、決断と行動といった揺れ動く思春期を映像で疑似体験できる、夏にふさわしいフレッシュな作品だ(いずれも公開中)。 『ダイバージェント』は、全米ベストセラーのヤングアダルト小説シリーズを、『ファミリー・ツリー』でジョージ・クルーニーの娘を演じたシャイリーン・ウッドリーの主演で映画化したSFアクション。大規模な戦争から100年後、全人類は性格別に5つの共同体(勇敢、無欲、平和、高潔、博学)に分かれて暮らすことで平和を保っていた。16歳になり選択の儀式を控えたトリス(ウッドリー)は、性格テストの結果、抹殺対象である「異端者=ダイバージェント」と判定される。結果を隠して「勇敢」を選択したトリスは、厳しい訓練で徐々に戦闘能力を高めていくが、大がかりな異端者狩りの陰謀が動き出し、その身に危険が迫る。 現在とは異なる区分けの共同体で人々が管理された未来世界に、革命のヒロインとしての宿命を背負った主人公という設定は、やはりヤングアダルト小説から映画化された『ハンガー・ゲーム』と多く共通する。ただし本作のトリスは、「無欲」出身で運動能力も人並み、それでも過酷な訓練に必死で取り組むうちに次第に強くなっていく過程が見る者の共感を誘う。すでに米国で絶大な人気を誇るシャイリーン・ウッドリーと、彼女を指導する「勇敢」のリーダー役、テオ・ジェームズの熱のこもった演技が、4部作シリーズの第1弾としてやや説明傾向の強い本作に活気を与えている。初の悪役に挑むケイト・ウィンスレットのほか、アシュレイ・ジャッド、マギー・Qと共演陣も豪華だ。 『好きっていいなよ。』は、葉月かなえが月刊少女漫画誌「デザート」で連載中の原作を、『桜蘭高校ホスト部』の川口春奈と、NHK朝ドラ『あまちゃん』でブレークした福士蒼汰の主演で実写化した青春恋愛映画。友人も恋人も作らずに生きてきた16歳のめい(川口)はある日、高校一のイケメン・大和(福士)にケガをさせてしまう。だが、大和はめいを気に入り、一方的に友達宣言した上、めいをストーカーから救うためキスをする。モデル事務所からスカウトされるほどの大和に対し、釣り合わないと感じながらも、同級生らとの交流を通じて少しずつ成長するめい。さらには恋のライバルも現れて、めいの心は大きく揺れる。 原作漫画は、コミック史上最速で100万部突破、累計540万部超という“恋愛バイブル”。女性ならではの繊細な描写に定評のある、『森崎書店の日々』の日向朝子が監督・脚本を務めた。こちらも主演カップル2人の好演が光る。特にキスのシーンはいろいろなパターンがあり、ロマンティックに撮れている。心情の変化を映すファッションも見どころで、原作のファンや若い世代の観客を中心に支持を集めそうだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ダイバージェント』作品情報 <http://eiga.com/movie/78223/> 『好きっていいなよ。』作品情報 <http://eiga.com/movie/78995/>『ダイバージェント』(C)2014 Summit Entertainmet, LLC. All Rights Reserved.
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さらば梅田貨物駅……人が乗れない乗り物の裏側に迫った『貨物列車をゆく』
東京の臨海や河川沿いに、膨大な数のコンテナ群を見かけたことがあるだろうか? 今でこそ、ほとんど目にしなくなった貨物列車も、かつては物流の中心を担い、日本の近代化を支えてきた。まさしく縁の下の力持ちと呼べる存在。「機関車トーマス」の世界でも、主に貨車を引っ張るヘンリーは気の優しいイイヤツだ。 近代化の黒子に徹してきた貨物列車とは、いったいどのように集荷され、運行されているのだろうか? 『貨物列車をゆく』(イカロス出版)は、神秘のベールに包まれた貨物列車の裏側に迫ったムック本だ。貨物列車の基礎知識から、貨物列車の歴史、JR貨物の裏側、など、全4章112ページにわたって貨物列車のすべてを余すところなく紹介している。巻末に掲載されている「貨物デートのススメ」は、昭和の青年情報誌の趣きがあり、甘酸っぱい感傷に誘われる。写真の点数も多く、鉄道ファンならずとも楽しい一冊だ。 東京都内には、東京貨物ターミナルと隅田川駅という大規模な貨物駅が二つあり、東京貨物ターミナルは西へ、隅田川駅は北への玄関口となっている。その貨物駅に常磐線・東北本線・武蔵野線などを経由して貨物列車が乗り入れ、荷やコンテナを積み卸しし、また西へ東へと運ばれてゆく。主な品目としてガゾリンや灯油などの石油製品があり、JR貨物宇都宮ターミナル駅では、栃木県内の石油需要の65%に当たる159万キロリットルが取り扱われているというから驚きだ。ほかにも、ヤマト運輸から委託された宅急便を運んだり、また東日本大震災の際には18万トン超のガレキを被災地から運んだりと、貨物列車は知られていないところで私たちの生活に大きく関わっているのだ。 その一方で、廃止される貨物駅もある。1874年(明治7年)に開業された梅田貨物駅は、大阪駅のすぐ北側に位置し、関西では最大級の貨物ターミナルとして栄えてきた。最盛期の1961年には年間360万トンもの貨物を取り扱っていたが、80年代から徐々に取扱量が減少。都心の一等地に17ヘクタールもの広大な敷地に加え、周辺の再開発計画もあり、2013年度末のダイヤ改正をもって廃止。140年の歴史に幕を下ろした。 高度経済成長期を支えた数々のシステムや建物は、静かにその役目を終えようとしている。何気なくそこにあった貨物列車も、徐々に縮小されていく運命を免れ得ない。上述の隅田川駅は、常磐線南千住駅に隣接しているので、近くに立ち寄ったら眺めてみてはいかがだろうか? 本書を読んで、貨物列車の歴史をひも解けば、無骨なコンテナ群もまた違った色を見せてくれることだろう。 (文=平野遼)『貨物列車をゆく』(イカロス出版)
日本のラノベがトム・クルーズ主演でハリウッド実写化『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
今週取り上げる最新映画は、日本の小説とヨーロッパの童話をそれぞれ原作に実写化したハリウッド大作。大スター、壮大な世界観、3Dを含む最新映像技術で、ケレン味たっぷりのビジュアルを楽しめる2作品だ(ともに公開中)。 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2D/3D上映)は、桜坂洋のSF小説「All You Need Is Kill」をトム・クルーズ主演でハリウッド実写化したアクション大作。エイリアンの地球侵略が始まってから5年後の世界で、実戦経験皆無の兵士ケイジ(クルーズ)は、最前線に送られるもあっけなく戦死。だが、時間をリセットする能力を持つエイリアンと接触したことで、死ぬたびに戦闘が始まる前の時間に戻るというタイムループに陥る。かつて同じ体験をした女性兵士リタ(エミリー・ブラント)に導かれ、繰り返される戦いと死の中で戦闘スキルを高めたケイジは、劣勢な戦況を変える糸口をつかむ。 死=ゲームオーバーのたびにスタート地点に戻るが、繰り返される敵の動きと攻撃を読めるようになり、次第に強い戦士=プレイヤーになっていく展開は、シューティングアクションゲームの分かりやすいメタファーになっている。同じシナリオがリピートされるたび主人公がスキルアップする設定という点では、SFサスペンス『ミッション:8ミニッツ』やラブコメ『恋はデジャ・ブ』といった過去作と見比べるのも楽しい。エミリー・ブラントがジャンヌ・ダルクをイメージさせるタフなヒロイン役で魅力全開。目まぐるしい展開の中にも、恋愛要素やユーモラスな場面がちりばめられ、刺激に満ちた娯楽大作に仕上がっている。 『マレフィセント』(2D/3D上映)は、よく知られるヨーロッパの童話『眠れる森の美女』に、新たなエピソードと解釈を加えた実写化作品。人間界と妖精界が隣り合う場所で、青年ステファンと美しい妖精マレフィセントは恋に落ちる。だが王位を狙うステファンの裏切りで翼を失ったマレフィセントは、王女の誕生祝賀パーティーに現れ、オーロラ姫に「16歳の誕生日までに永遠の眠りに落ちる」という呪いをかける。 現在39歳、“美魔女”の代表格と言えそうなアンジェリーナ・ジョリーが、特殊メイクでとがったほお、大きな角をつけて邪悪な妖精を熱演。異形の外見だけでなく、絶望の果ての怒りと憎悪、強い意志、深い母性愛といった極めて人間らしい表情も印象的だ。オーロラ姫を演じるのは、『SUPER8/スーパーエイト』『幸せへのキセキ』の頃よりだいぶ大人びてきたエル・ファニング。キモカワなクリーチャーたちも楽しさいっぱいだ。有名な原作から筋書きを大きく変えて先を読ませない工夫も含め、大人の観客の心に響く感動作になった。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』作品情報 <http://eiga.com/movie/77676/> 『マレフィセント』作品情報 <http://eiga.com/movie/57267/>『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BMI)LIMITED
人工知能は人間を超えるのか――ジョニー・デップ主演『トランセンデンス』
人工知能(AI)という言葉に聞き覚えがなくても、スマートフォンの音声アシスタントを日常的に使っていたり、自走式の掃除ロボットなら知っているという人は多いはず。そんなAIをテーマにした2本の映画が、くしくも日本で同時期に封切られる(いずれも6月28日公開)。近い将来に起こり得る危機的状況や悲喜劇を通じて、「人間ってなんだろう?」とあらためて問いかけてくる作品たちだ。 『トランセンデンス』は、ジョニー・デップ主演によるSFサスペンスアクション。人工知能を研究する天才科学者ウィル(デップ)は、反テクノロジーのテロリストに銃撃されるが、死ぬ間際にその頭脳は、共同研究者で妻のエヴリン(レベッカ・ホール)によってスーパーコンピュータにインストールされる。コンピュータの中でよみがえったウィルの意識は、ネットワークを通じて膨大な知識と情報を吸収し、際限なく進化。金融市場にアクセスして得た資金でハイテク研究所を建設し、再生医療を発展させて不死身の兵士を作り出すまでになる。 製作総指揮は『ダークナイト』シリーズや『インセプション』のクリストファー・ノーラン。主要なノーラン作品で撮影監督を務めてきたウォーリー・フィスターが、本作で監督デビューを果たした。主人公が早々に死んでしまうので、ジョニデのファンならずとも不安になるが、驚くべき方法で復活を果たすのでご心配なく。AIだけでなく、金融取引を行うプログラム、再生医療、ナノロボットなど現実に応用が進んでいるさまざまな先端技術を巧みにストーリーに盛り込んでおり、人間が制御できなくなるハイテクの恐怖を分かりやすいビジュアルで警告する側面も。後半で派手なアクションを見せるために、やや荒唐無稽な筋立てになる点は評価が分かれそうだが、知的好奇心を刺激されつつスリリングな活劇も楽しめる快作だ。 『her/世界でひとつの彼女』は、『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』の奇才スパイク・ジョーンズ監督が手がけた近未来ラブストーリー。手紙の代筆を職業とするセオドア(ホアキン・フェニックス)は、幼馴染みだった妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と別れ、傷心の日々を送っていた。そんな時、最新のAIが搭載されたOSに興味を持ち、自宅PCとモバイル端末にインストール。利用者に最適化されたOS「サマンサ」の魅力的な声にひかれ、セオドアは“彼女”と過ごす時間に幸せを感じ始める。 ジョーンズ監督が長編で初めて単独で脚本も手がけ、今年のアカデミー賞で脚本賞を受賞。ナイーブな「こじらせ男子」の恋物語は、独創的な映画を撮り続ける監督の世界観にぴったりだ。明るくセクシーなサマンサの声は、スカーレット・ヨハンソンが担当。リリカルな映像とドビュッシー風ピアノ曲のBGMで、岩井俊二監督作品に近いテイストも非人間の存在に恋してしまうシチュエーションをユーモラスに描きつつ、普遍的な恋愛の真理、存在と関係性という哲学的命題にも挑んだ意欲作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『トランセンデンス』作品情報 <http://eiga.com/movie/79708/> 『her/世界でひとつの彼女』作品情報 <http://eiga.com/movie/79523/>『トランセンデンス』(c) 2014 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
大島優子、前田健太、黒木メイサ……ゆとり世代の仕事論『「情熱大陸」800回記念 ぼくらは、1988年生まれ』
「ゆとり世代」は、とにかくイメージが悪い。言われたことしかしない、すぐにめげる、飲みニケーションが不得手……と、先行世代は、あたかもその時代に生まれた全員の罪であるかのように断罪し、「これだから『ゆとり』は……」の決めゼリフで、個人の資質をむやみな世代論に広げてゆく。 『僕らは1988年生まれ』(双葉社)は、ドキュメンタリー番組『情熱大陸』(毎日放送)800回記念として放送されたインタビューを書籍の形にまとめた一冊だ。1988年に生まれた彼らは、ゆとり第2世代といわれている。俳優の東出昌大、広島カープの前田健太、女優の黒木メイサ、サッカー日本代表の吉田麻也、先日AKB48を卒業したばかりの大島優子などなど、各界の著名人たちが「1988年に生まれた自分」を語り、「ゆとり世代」とくくられることに対する自分なりの回答を述べてゆく。 それぞれのインタビューに共通しているのは、「ゆとり」として語られることへの違和感だ。 「プライベートで出会う中で、それこそ20歳未満でもしっかりしてる子はたくさんいるし、上の世代でも、どうなんだろうと思う人もいる」(東出) 「う~ん……まぁ、ゆとり世代ということで一括りにするのはよくないな、と思います。人によって仕事に対する姿勢も違うと思いますから」(黒木) 「上の人から僕らの世代を見て『ゆとりだから』と言われるのは、すごくシャクに感じるんです。ゆとりの中でも出てくるヤツは出てくると思うし、別にゆとりじゃない世代にだってどうしようもないヤツなんていっぱいいるわけで、一括りにされるのはちょっと腑に落ちないという気持ちもありますよね」(吉田) 「しらけ世代」「新人類」「ロスジェネ」などなど、世代に対するレッテルは、いつも別の世代から一方的に貼り付けられるもの。彼らが、「ゆとり世代」という言葉遣いに対して疑問を投げかけるのは当然だろう。しかし、そんな乱暴なレッテル張りに対してすらも肯定的に捉えているのが、大島優子だ。 「それが時代の象徴になっているからいいと思うんです。そのとき時の世代で『ゆとり世代』『団塊の世代』って言われてるじゃないですか。 (中略) ゆとり世代というと、一括りにするにはあまりに多くの人たちが含まれているので、一概には言えませんが、世代ごとに特徴があると思うので、その特徴をいかしていけばいいと思うんです。上の世代の良いところはできるだけ踏襲しつつ、別の形で力を発揮していけば大きな力が生まれると思います」 と、「ゆとり世代」に偏見を抱く人々のさらに上を行く、寛容なまなざしを投げかけているのだ。 1988年に生まれた彼らは、今年26歳を迎える。大学を卒業した者であれば、社会人3~4年目。いまや社会の一翼を担う存在になりつつある。では、いったい、その仕事観とはどのようなものだろう? 「仕事とは『仕事じゃない』と思います。野球は仕事ですけど、仕事だと思ってやってないんです。仕事だと思うと、楽しくなくなってしまうと思うから。変な言い方かもしれないですけど、仕事って自分のためにやるものだと思うので」(前田) 「仕事は、自分の人生の中で大きくとらえた時に、豊かにしてくれるもののひとつですね。特に俳優の仕事って、出会いと別れと再会がものすごく多いんですよね。それは人なのか作品なのか、役なのかものなのか、いろいろあるんですけど、その瞬間、その瞬間に自分が受ける感動が、自分を豊かにしてくれるということですかね」(俳優・松坂桃李) と、仕事に「自己実現」を求めている者が多い中、バイオリニストの五嶋龍は、「嫌でもやること」「夢やパッションだけでは仕事はできない」と、その語り口はあくまでドライ。当然のことながら、ゆとり世代の仕事論も、立場によってさまざまなのだ。 彼らへの取材を通じて、1969年生まれのプロデューサーの大島新は、「放っておけば、自分の親世代よりも貧しくなってしまうという、日本の歴史の中でもかつてない時代を生きる若者たちは、自らの将来を先行世代よりも真剣に考えたはずだ。(中略)この世代には地に足をつけて、一歩一歩前に進んでいる若者が多いに違いないと感じた」と、彼らに対する理解を示している。 日刊サイゾー読者の中にも、ゆとり世代の後輩に手を焼いている人は少なくないかもしれない。しかし、「これだからゆとり世代は……」と乱暴な世代論を振りかざすのではなく、彼らの声に耳を澄ましてみてはいかがだろうか。一見クールに見える彼らにも、もしかしたら本書に登場する8人のように、熱い哲学が潜んでいるかも? (文=萩原雄太[かもめマシーン])『僕らは1988年生まれ』(双葉社)
一生働かずに生きていける南の島があった!?『アホウドリの糞でできた国 ナウル共和国物語』
“ナウル共和国”という国を知っているだろうか? この国は、サンゴ礁に集まってきたアホウドリの糞が、長い月日をかけて積もりに積もってできた、全周約19kmの小さな島国。オーストラリアの北、赤道より少し南に位置する。ナウル共和国として独立した1968年から1980年代にかけて「世界で最も豊かな国」と呼ばれ、1981年には国民1人当たりのGNPが、アメリカの1万3,500ドル、日本9,900ドルを抜き、なんと2万ドル(!)と推定された。国民は、税金なし、教育費や病院代、電気代もタダ。誰も働く必要がなく、結婚すると政府から2LDKの家がプレゼントされる――。そんな夢のような国、だった。 その理由は、アホウドリの糞とサンゴ礁が生み出した“リン鉱石”という資源。だが、1990年代に入ると、採掘のしすぎによりリン鉱石はほぼ枯渇してしまい、国家財政はみるみるうちに悪化。2003年2月には、何があったのか、オーストラリア政府が、ナウル共和国との連絡がつかなくなったと発表し、国家がまるごと行方不明という前代未聞の事態に……。 『アホウドリの糞でできた国 ナウル共和国物語』(アスペクト文庫)は、2004年に発売された同タイトルを大幅に加筆編集したもので、ナウル共和国とはどういう国なのかという紹介から始まり、その歴史、「世界で最も豊かな国」と呼ばれていた頃の話、国民がまったく働かなくなってしまったこと、資源がまもなく枯渇することが判明し、政府が資金繰りのために実行した驚くべき対策などがまとめられている。さらに単行本発売から9年、その後、ナウルがどうなったのかについても迫っている。 この本を読んでいるうちに、ナウル共和国政府のあまりにも自由な発想、行動に、一体どんな国なのかとますます興味が湧き、外務省のナウル共和国の紹介ページを調べてみた。 すると、「政府」という項目には「大統領が、公務員大臣、外務・貿易大臣、気候変動大臣、警察・緊急業務大臣、内閣議長を兼務」と書かれ、経済概況については「国家の主要外貨獲得源である燐鉱石がほぼ枯渇し、現在その収入だけでは操業費用すらもまかなえない状況にあるほか、他にナウル経済を支えるめぼしい産業もなく、経済状況はさらに厳しい状態である。国営銀行も機能しておらず、正確な経済活動の動きは把握できない」(一部省略)とあり、“えぇっ、いろいろ大丈夫!?”と、思わずツッコミたくなってしまった。 こんなに不安材料が多いのに、どこかユーモラスで深刻さが感じられないのは、南の島だから? とはいえ、資源に依存し、枯渇間際になってどうしようかと悩むナウル共和国の現状は、そう遠くない将来、石油に頼る中東諸国でも十分起こり得ること。また、富を得るために自然を破壊し続け、取り返しのつかない事態に陥る可能性は、日本だってあり得る。政治が暴走したらどうなるのか? 働くとはなんなのか? 政府のジタバタ具合にちょっと笑わせられながらも、一方で真剣にそんなことを考えさせられる。 なお、本書の最後には、実際にナウル共和国を訪問したことがある日本人5名による対談があり、どうしたら入国できるのか、現地の観光や様子についてなど、写真付きで紹介されているので、行ってみたい! という人はぜひ参考に。 (文=上浦未来) ●ふるた・やすし(文) 1969年愛知県生まれ。ライター。電子雑誌トルタル編集長。名古屋大学工学部電気学科中退。著書に『瀬川晶司はなぜプロ棋士になれたのか』(河出書房新社)、『「アイデア」が生まれる人脈。』(青山出版社)、『新企画は宇宙旅行!』(TAC出版社)ほか。12年4月電子雑誌トルタルを創刊。 ●よりふじ・ぶんぺい(イラスト) 1973年長野県生まれ。アートディレクター。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科中退。近年は広告アートディレクションとブックデザインを中心に活動。著書に『死にカタログ』(大和書房)、『元素生活』(化学同人)、『ラクガキ・マスター』『絵と言葉の一研究』(美術出版社)ほか。『アホウドリの糞でできた国 ナウル共和国物語』(アスペクト文庫)
廃墟から産業遺産へ──未来へ受け継がれていく炭鉱の記憶『未来世紀軍艦島』
廃墟が静かなブーム、なんて話も今はむかし。廃墟ファンも、そうでない人も、軍艦島といえばすっかりおなじみのスポット。廃墟界のスーパースターだ。2009年の立ち入り制限解禁以来、多くの上陸ツアーが組まれるなど、その人気はもはや静かなブームといえないほどの盛況ぶりを見せている。今年1月、政府はユネスコに同島の世界遺産登録に向けて推薦書を提出。先日、富岡製糸場が世界遺産に暫定登録されたことで、「軍艦島も世界遺産に」という機運が高まってきている。「秘境・軍艦島」から「世界遺産 端島(軍艦島)」となる日も、そう遠い未来のことではないかもしれない。 先人たちの生きた記憶は、興隆期の形を留め、未来へと受け継がれていく。『未来世紀軍艦島』(ミリオン出版)は、フリーカメラマンの酒井透氏が撮った軍艦島の写真集だ。全160ページに収められた写真は100点余り。青い海に浮かぶ島の外観は軍艦そのもの、工場の遺構はハードボイルドな雰囲気を漂わせ、住居跡は不思議ともの悲しい。大判サイズで観る遺構写真は圧倒的迫力に満ちている。巻末には島内地図や各写真の詳細な説明が掲載され、この一冊であたかも島内を巡っているような気分に誘われる。 端島(はしじま)は、長崎港から南西約18kmにある無人島で、明治初頭から1974年の閉山まで、海底炭鉱の掘削および製炭の拠点として大いに賑わい、日本の近代化を支えてきた。軍艦島の通称は、島の外観が軍艦に似ていることに由来する。1960年(昭和35年)の最盛期には5000人を超える人々が起居し、世界一の人口密度を誇った。 遺構には、人々が暮らした息吹が今も息づいている。 夜明け間近の鉱業所跡。幾重にも並んだベルトコンベアの支柱が稼働していたころ、活況は如何ばかりであったろうか。『未来世紀 軍艦島』(ミリオン出版)
荒れ果てた民家のふすまには「金魚とことりをおねがいします えさは少しでいい」その家の子どもが、残してきた金魚を案じて書いたのだろうか。脇には金魚と小鳥のイラストが添えられ、涙を誘う。
島唯一の寺院・泉福寺跡。屋根も外壁も破壊されているが、地蔵が海を望み、今も全島を守り続けている。
――足しげく通い、レンズを向けているうちに、そこに立ち現われてくるものがあった。様々なものが、まるで固有の表情を見せ始めたようにも感じられ、それはあたかも遺構や建物が命を吹き返してくるようだった。(本文あとがきより)
遺構は過去のものであるが、今を生きる私たちに、当時より熱く活気を伝え、より新鮮な感動を持って、ありし日を思い起こさせてくれる。忙しくて現地まで行けない人も、この『未来世紀軍艦島』が手元にあれば、居ながらにして軍艦島の息遣いを感じることができるだろう。
(文=平野遼)
勇気と知恵とチームワークで難関に挑む! 佐々木蔵之介主演『超高速!参勤交代』
今週取り上げる最新映画は、江戸時代の過酷な参勤交代に、古代ギリシャの命運を賭けた戦いと、史実を踏まえつつ大胆な創作で現代の観客を楽しませてくれる歴史活劇2作品。ジャンルも場所も大きく異なる2本だが、ほぼ“無理ゲー”な状況に置かれた少数の仲間たちが、勇気と知恵とチームワークで難関に挑むという共通点もある。 『超高速!参勤交代』(6月21日公開)は、佐々木蔵之介主演で、江戸幕府から無理難題を突き付けられた弱小藩の奮闘を描く時代劇コメディ。1万5000石の弱小藩である湯長谷藩(現在の福島県いわき市)は、腹黒い幕府老中・松平信祝(陣内孝則)から、通常なら8日かかる江戸までの行程をわずか4日間で参勤するよう命じられる。湯長谷藩主の内藤政醇(佐々木)は、知恵者の家老(西村雅彦)とともに奇想天外な作戦を練って出発するが、妨害をたくらむ松平も刺客を放っていた。 脚本コンクールの城戸賞で2011年に史上初の審査員オール満点を得た、土橋章宏による傑作シナリオを、『ゲゲゲの鬼太郎』『鴨川ホルモー』の本木克英監督が映画化。次から次へと直面する難局を、家老の知恵と家臣ら各自の得意技で一つひとつ乗り切るさまが痛快だ。時代劇ならではのチャンバラアクションも、ワイヤーやVFXを駆使して、従来の時代劇とは微妙にテイストの異なる活劇に。よく練られたストーリーとあふれるユーモアのおかげで、歴史マニアや時代劇ファンでなくとも間違いなく楽しめる快作だ。 『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』(公開中、2D/3D上映、R15+)は、100万人のペルシア帝国軍にわずか300人で立ち向かったスパルタ兵士たちを描いた『300 スリーハンドレッド』の続編。紀元前480年、多数の都市国家で構成されるギリシャを支配しようと、ペルシャ帝国の神王クセルクセスが大艦隊をエーゲ海に送る。アテナイの若きリーダー、テミストクレス将軍(サリバン・ステイプルトン)は、ギリシャの自由と平和を守る戦いを同胞たちに呼びかけ、3倍の軍勢を擁するペルシャ軍と対峙する。ギリシャに復讐を誓いペルシャ海軍を指揮する女傑アルテミシア(エバ・グリーン)は、テミストクレスを味方に引き入れようと画策するも失敗。怒りと復讐心を募らせ、ギリシャを壊滅すべく進撃を開始する。 フランク・ミラーのグラフィックノベルを原作とし、CMディレクター出身の新鋭ノーム・ムロが映像化。前作を監督して世界中の映画ファンに一躍名を知らしめたザック・スナイダーは今回、製作・脚本にまわっている。剣、盾、槍と肉弾戦のアクションを、再生スピードに緩急つけてよりダイナミックに演出するテクニックは前作を踏襲しており、飛び散る血しぶきが3Dで一層リアルに。エバ・グリーンは、意外なほどサマになっている剣さばき、攻撃的なメイクラブの場面など、まさに渾身の演技で観客を魅了。大胆なフルヌードとエロスで話題を集めたデビュー作『ドリーマーズ』以来、脱ぎっぷりの良さと美しさも変わらない。前作に比べてカタルシスに欠け、映像表現も見慣れてしまったせいかインパクトが若干足りないものの、おそらく第3作でギリシャとペルシャ神王との最終決戦が控えているはず。壮大なスケールの3部作の中継ぎという意味では、やはり見逃せない1本といえるだろう。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『超高速!参勤交代』作品情報 <http://eiga.com/movie/79398/> 『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』作品情報 <http://eiga.com/movie/77929/>(C)2014「超高速!参勤交代」製作委員会
暴言か、暴論か、それとも金言か? ビートたけしを知り尽くした男による『たけし金言集』上梓!
2003年に公開された、北野武監督映画『座頭市』の撮影が行われていた頃、ロケ先・広島のホテルで、たけしは弟子のアル北郷と酒を飲みながらテレビでドキュメンタリー番組を見ていた。 画面では映画監督を志望する青年が、熱い思いを語っていたようだ。すると、たけしが口を開いた。 「なんだ、このバカは!」 いきなりの全否定である。その後も、青年に対する巨匠監督の悪態は止まらず、 「だいたい、はなから映画監督になろうって根性が気にいらないよ!」 と言い放ったかと思えば、 「こいつは、映画は撮れても漫才はできないだろ」 などと、言いがかりに近い毒舌まで炸裂させる始末である。 しまいには、「だいたいこいつは、人前でチ○ポ出せない顔だよ!」 と、映画監督志望の青年がする必要のないことまで持ち出して口撃し続けたという――。 「負けず嫌い」が高じて、理屈抜きでヒートアップしていく、たけしの素の部分がよくわかるエピソードだが、こうした知られざるビートたけしの(秘)言動を書き連ねた単行本『たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録』(徳間書店)が発売された。著者は前述の現場でも師匠に付き添っていた、アル北郷である。 1995年にたけし軍団入りした北郷は、97年から7年間も殿の付き人として過ごしただけではなく、現在も『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)でブレーンを務めるなど、たけしの側近といえる。 それだけに、同著で紹介されている「たけし金言」の数々は、どれも一般のファンでは知らない生々しさ、迫力に満ち溢れているのだ。 テレビなどでも、たけしがカツラの話題になるとはしゃぎ出す姿はよく見かけるが、同著では普段からいかに“カツラLOVE”であるかという詳細を以下のように書き切っている。 <(前略)先日もわたくしが夜、自宅にてテレビを見ていると、携帯の着信音が鳴り、電話に出ると、 「おい、たけしだけどよ、今、NHKに出てるやつ、カツラだぞ。名前メモっとけな」 と、それだけ言うと電話をお切りになりました。(中略)クライアントとその重役の方々が殿の元に挨拶に来られたのですが、その中の、たぶん一番偉いと思われる方が、やっかいなことにカツラでした。(中略)殿はそのカツラに目を止める様子もなく、クライアイアントの方々と挨拶を済ませると、(中略)何も発することなく静かに現場を後にしたのです。 ところが翌日、殿にお会いすると、すぐさまわたくしに、 「おい。昨日の現場にカツラいたな。お前、あのカツラばっかりチラチラ見てたろ。しかし、お前もカツラ好きだな~」 と、ニヤニヤしながら報告されてきたのです(後略)> ほかにも、殿の下半身にまつわる爆弾発言から“ビートきよしいじり”まで、ここまで明かしていいのかという逸話が連発されている。 「すべて“殿公認”だから驚きます。とはいえ、本書発売にあたって『誰がここまで書けって言ったよ、バカ野郎!』との言葉もいただきましたが(笑)」(担当編集者) たけしファンのみならず、全日本人、必読の1冊……のハズである。『たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録』(徳間書店)
彼女に絶対にバレずにエロ動画を買う方法があるって!?
今日も今日とて業務中に日刊サイゾーのエロいバナー(桃谷エリカ嬢)を眺めていると、なにやら新人編集Tが浮かない顔をしている。
「はぁ……」
と聞えよがしに、ため息など吐くものだから、私は特にエロいバナー(桃谷エリカ嬢)から視線を外すこともせず、どうした新入り、悩みがあるなら言ってみろ、と先輩風を吹かしてみるのだ。
「先輩、この桃谷エリカちゃんって……」
ぎくり、と私の肚が跳ねた。こいつ、私が過日よりエロいバナー(桃谷エリカ嬢)にばかり執心していることを見抜いているのか。
「……かわいいですよね。なんでこんなにかわいいんですかね。切なくなっちゃいますね」
なんてことはない。こいつはこいつでエロいバナー(桃谷エリカ嬢)に心奪われていたのだ。案ずるなかれ、ヌケばいい。家に帰ったらレッツ・クリック・アンド・ペイ・アンド・シェイク・アンド・シェイクだ、若者よ。
「あー、ダメなんすよ。最近彼女と同棲始めちゃって。エロ動画見られないんです」
え、彼女いるの?
「でも、かわいいなぁ、桃谷。ああ、かわいい。彼女もかわいいけど桃谷もかわいい」
うるせえな、スマホとかで見ればいいじゃん。
「サンプル動画じゃ我慢できないんでサイトに登録してみたいんですが、クレジットカードの支払いの明細でバレるじゃないですかー。もう結婚するんで、口座も一緒にしちゃったんですよねー。ああー、見たいなー。桃谷。見たいなー」
彼女がいるくせに俺の桃谷までジョイフルしようとするとは、なんたる強欲。平素なら怒髪天を突きグーで殴りつけるところだが、こいつがいないと仕事が回らないのも事実。私が仕事中にエロいバナーばかり眺めて過ごせるのも、こいつの働きがあってこそなのだ。
ここはひとつ、知恵を授けることにしよう。
「若者よ、ブランドプリペイドというのを知っているかい?」
「いやー知らないです」
「ブランドプリペイドというのはVisaやMasterCardなどクレジットカードの国際ブランド付きプリペイドのことだ」
「それどーゆうことですか?」
「要するにVisaやMasterCardのクレジットカードが利用できるサイトであれば、どこでも利用できるが、プリペイド方式だから本人確認や請求書送付などがない支払い方法だ。しかもカード名義はニックネームで登録OK」
「すごいじゃないですか!」
「ブランドプリペイドにもいろいろと種類があるが、特にケータイがドコモであれば『ドコモ口座 Visaプリペイド』がおすすめだ。めんどくさい登録作業もほとんどなく、カードの管理も明細もケータイ・スマホの中だけで解決できるし、余った金額は携帯電話料金に使うこともできるから無駄がない」
「へー」
「これを使えばカードの利用が彼女や嫁さんに決して知られることもないから、安心してエロ動画を見まくることもできるぞ。よって、私が内緒で桃谷の動画を見まくってることは誰にも知られていないのだ! ワハハハハハ!」
「先輩、独身だし別に彼女とかいないじゃないですか。あと、エロ動画見まくってることみんな知ってますよ。っていうか、みんな引いてましたよ。むしろ、僕もいま引いてます」
「ぎゃふん!」
【完】
ドコモ口座








