インスタント食品の必需品、フリーズドライ野菜をおなかいっぱい食べる鍋

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アナタ、今夜はフリーズドライ鍋よ!
 カップ麺やカップ焼きそばに入っている乾燥具材が好きだ。あのシャクシャクした歯ごたえ、素材本来の味を残しつつも、どこか独特の風味。  その多くが、「フリーズドライ」という製法で作られたもの。フリーズドライという言葉通り、マイナス30度の低温で食材を一気に凍らせた上で真空状態を作って水分を飛ばすという方法である。  具材の中に水分がほぼ残らないので保存期間が延び、また、軽量になるので携帯性も高まる。考えれば考えるほど、インスタント食品向きだ。  そのフリーズドライの具材ばかりをおなかいっぱい食べてみたい! と、私は常々思ってきた。いつも食べ足りなかったあの具。スープの底を何度も箸でかき回しては、お前を探してきたね。そんな切ない思いとも、今日でお別れである。  今回、寒い季節の定番である鍋料理とフリーズドライ食材を組み合わせた「フリーズドライ鍋」を作って食べてみることにした! フリーズだしドライだし、名前はちょっと鍋ものらしくないが、さあ、おいしいのかどうなのか!   作り方は簡単、水炊き鍋の要領で昆布からダシをとり、そこにフリーズドライ素材を投入するのみ。そして、ポン酢をつけていただく。今回は、このような具材で挑んだ。 ・ねぎ ・白菜 ・油揚げ ・えのき ・キャベツ  フリーズドライに、えのきがあるとは知らなかった。水炊きにキャベツという組み合わせは珍しいかもしれないが、フリーズドライというと、あのカップ焼きそばのキャベツが真っ先に思い浮かぶ私としては外せないところだ。ちなみに、これだけの具材を購入するのに2,000円近くかかった。普段の私の食生活からすれば、ずいぶんなセレブ鍋である。  さて、具材をお皿に開けてみよう。当たり前だが、生の具材と比べて大変コンパクト。会社帰りにお父さんが「おっ、今日は鍋かー! いいな」とは絶対に思わないであろう見た目だ。それにしても、どれも賞味期限までかなり余裕がある。油揚げなんか、ほぼ1年近くもつ。来年の冬も、フリーズドライ鍋ができるぞ。  鍋に具材をサササーッと入れ、しばらくグツグツ煮込むと出来上がり。見た目的にはなんというか、相当地味である。アースカラー主体。にんじんでも入れておくべきだった。どんな角度で写真を撮っても、おいしそうに映らない。
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どうしても、おいしそうに写らない
 さあ、いよいよ食べてみよう! うん……! シャキシャキした歯ごたえが、これでもかと堪能できる。ポン酢の味の強さに具材の味がちょっと隠れてしまうが、白菜には白菜の、ネギにはネギの本来の味わいがある。えのきの主張はかなり弱い。食べていて、どれがえのきなのか分からない。キャベツの甘みはポン酢の酸味によく合う。  しかし、お湯で戻したあとにどれぐらいの分量になるのか想像しないままに具材を投入したため、キャベツの量がすごいことになってしまった。後半は、どこまでも追いかけてくるキャベツの甘みに満腹中枢が連打された。  食べ終わってみると、まあ、なんというか、おいしいけども、鍋は生の具材でやったほうがいいな、と思った。フリーズドライ素材には歯ごたえや味のブレがないため、何口食べても同じ歯ごたえで同じ味、という感じなのだ。鍋のダイナミズムが失われてしまうのである。「もうちょっと煮たほうがよかったかな」ぐらいの白菜の芯の硬さが恋しい。  以下、やってみて分かったこと。 おすすめポイント ・食材を切らなくていい ・賞味期限がずいぶん先なので、好きな食材を食べたい分量だけ食べることができる ・歯ごたえがシャキシャキ 残念だったポイント ・お値段がお高い ・湯もどし後の分量が分かりにくい ・割とすぐ食べ飽きる ・どうやっても、おいしそうな写真が撮れない  うーん、残念ポイントのほうが多くなってしまった。でも、持ち運びに便利なので、「お湯とポン酢はあるんだけど、近所にスーパーも畑もなくて野菜が調達できない……」という状況では非常に便利だろう。  最近ではフリーズドライ食材専門のオンラインショップなども多数あり、手軽にさまざまな種類が手に入る。フリーズドライ好きの皆様に、ぜひ一度はフリーズドライ鍋を味わってみてほしい! (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/

反日マンガの仮面をかぶった壮大な釣り!? 日本で唯一のテコンドーマンガ『テコンダー朴』

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『テコンダー朴』(晋遊舎)
 格闘技をテーマとしたマンガの題材といえば、すぐに思いつくのは空手、拳法、ボクシング、プロレス、総合格闘技といったところでしょうか。日本の国技、相撲のマンガもあるといえばありますが、ちょっとキワモノ感が強いです。平松伸二先生の『どす恋ジゴロ』なんて、実際の相撲のシーンよりもベッドで夜の大相撲をやってるシーンのほうが多いぐらいです。  ところで、お隣韓国の国技「テコンドー」をテーマとした珍しいマンガが存在するのはご存じでしょうか? しかも、日本の雑誌に掲載された日本人向けのマンガであるという、異色すぎる存在。その名も『テコンダー朴』です。  『テコンダー朴』の最大の特徴は、韓国の国技としてのテコンドーを扱ったマンガであると同時に、強烈な反日メッセージを盛り込んだマンガでもあるところです。主人公のテコンドー使いの青年、朴星日(パク・スンイル)が、邪悪で卑怯なチョッパリ(日本人野郎)をブチのめすシーンというのが、この作品の肝となっています。  なにしろ、マンガ内に出てくる日本人がことごとく卑劣なクズ野郎なのです。このマンガを読む限り、日本人はブチのめされてもしょうがない奴らの集まりです。 「薄汚ねえ在日野郎はさっさと韓国に帰って犬でも食ってろよ!」 「在日刈りだぁ?」 「汚ねえ朝鮮■落をブッ潰してやる!!さっさと日本から出て行きやがれー」  こんなセリフを吐きながら韓国屋台料理の店を破壊したり、在日韓国人の女子どもを容赦なく襲う日本人たち。うわぁ……日本人クズすぎる! 日本人って、こんな『北斗の拳』のモヒカン族みたいな国民性だったのか。最悪ですね!!  そんな憎き日本人に、朴の怒りのテコンドー奥義が炸裂します。両手を合わせて人差し指で相手を鋭く突く、その必殺技の名は「重根(チュングン)」。この重根は、伊藤博文を撃ち倒した韓国の英雄、安重根の拳銃をイメージした技(型)です。決してカンチョーではありません。そのほかにもいろいろとテコンドーの奥義が出てきますが、どれもこれもすごいです。 「奉昌(ボンチャン)」昭和天皇に手榴弾を投げつけた韓国の独立運動家、李奉昌をモチーフにした技 「統一(トンイル)」テコンドー最終奥義とされる南北朝鮮の統一の決意をあらわしている技  ……などなど。蹴り技イメージの強いテコンドーのイメージを覆す手技の数々が登場します。このうち、「重根」「統一」は日本国際テコンドー協会でも紹介されている実在のテコンドー型となっています。抗日のシンボル的存在である安重根をモチーフにしたり、南北朝鮮の統一を願った奥義があるとは、なんて政治的意味合いの強い格闘技なんでしょうか……。美女と毎晩夜の千秋楽を迎えまくってる日本の国技マンガとは、シリアスさが全然違いますね。  ちなみに作品中では、テコンドーは5000年の歴史があり、空手、柔道、剣道、相撲などあらゆる日本の格闘技が韓国起源であるとか、金剛力士像はテコンドー武芸者の姿がモチーフになっているなど、日本人なら確実に衝撃を受けそうな起源アピールも盛り込まれております。5000年の歴史を誇っているわりに奥義の名前が「重根」とか「統一」って、えらく現代的な気もしますけど。  本作品の主人公、朴星日の本当の目的は、朴の父親のテコンドー道場を道場破りによって潰した日本人格闘家、覇皇(はおう)を倒すことにあります。この覇皇という男がまた「大東亜共栄拳」なる、身もフタもない感じの名称の必殺技を使う男なのです。それにしても、自分で覇皇って名乗るなんて、なかなかの中二病ですね。  ストーリーは、朴が宿敵である覇皇と闘うことができる格闘技トーナメントの出場権を手に入れる第3話で最高潮の盛り上がりを見せるのですが、それ以降のストーリーは掲載誌である「スレッド」(晋遊舎)が休刊(事実上の廃刊)になったため、お蔵入りとなってしまいました。  実は、この「スレッド」が創刊された2007年は、03年以降に盛り上がった『冬ソナ』ブームや韓流ブームのアンチテーゼとして2ちゃんねるを中心に嫌韓ムーブメントが起こった年で、インターネット上で「嫌韓流」「ネット右翼」「売国奴」などのキーワードが使われるようになったのもこの時期です。「スレッド」もそれに迎合するように、嫌韓流をあおるような記事が多数掲載されている雑誌でした。  つまり、作品だけを読むと、表面的には反日マンガあるように見える『テコンダー朴』ですが、ありえないほど反日的な内容にすることで日本人読者の嫌韓をあおる目的があった可能性が高いのです。作品が途中で終わっているので、真相は闇の中なのですが。  そういうややこしい事情がある『テコンダー朴』ですが、貴重なテコンドーマンガであることには変わりはなく、その無慈悲な反日っぷりも含めて、純粋に面白い作品になっています。この先の展開が気になるところですが、いま再びこの作品を世の中に出したら、せっかく寝た子を起こすようなエラい事態になりそうなので、おそらく永遠に封印されることになるのでしょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

池袋に中華街、錦糸町にリトルバンコク……東京でアジアを感じる案内本『東京のディープなアジア人街』

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『東京のディープなアジア人街』(彩図社)
 かつて一大ブームに沸いた韓流の街・新大久保をはじめ、錦糸町のリトルバンコク、高田馬場のリトルヤンゴン、池袋の新中華街、西葛西のリトルデリー、竹ノ塚のリトルマニラなど、東京には母国を離れて暮らすアジアの人々が独自のコミュニティを形成しているエリアが多数存在する。『東京のディープなアジア人街』(彩図社)は、そんな異国情緒漂うディープなエリアを徹底的に紹介する、アジア好きにはたまらない1冊だ。  著者の河畑悠氏は、学生時代にアジア独特の怪しさや猥雑さの魅力にとりつかれ、バックパッカーとしてアジア全域を放浪した経験を持つ。帰国後、池袋に中華料理を食べに、新大久保に韓国料理を食べに、錦糸町にパクチーを買いにと、あちこち回っているうちに、東京にもアジアが感じられる場所があることに気づく。日本とは言語も風習も異なる在留アジア人は、当然ながら、自分たちの国の食材が欲しくなるし、気兼ねなく訪れられる飲食店、パブやスナックを求める。そして、自然と同郷の人たちが集まり、自国と同じような空気感を形成していく。  たとえば池袋の中華街。私も、かつて池袋の北口に中華系のお店がたくさんあるらしい……との噂を聞きつけ、探してみたことがあるのだが、ぶらぶらと歩く程度ではさっぱり見つけられず、がっかりして帰った記憶がある。ところが、噂だけではなく、どうやら本当に存在しているようで、中華食品店、美容室、書店にカラオケ、ビリヤード店、マッサージ店、ネイルサロン、ガールズバーなど、生活に必要なものがそろっているという。しかも、日本一有名な横浜の中華街とは違う特徴として、池袋には中国東北部からの留学生が多く集まっていることから、彼らをターゲットにした東北料理店が多いという。中でも特筆すべきが、吉林省の朝鮮族自治州の韓国料理と中華料理をミックスした「延辺料理」なる店の多さで、その代表的なメニューは、クミンをふんだんにまぶした羊の串焼きや犬肉料理というから、なかなか衝撃的である。  また、錦糸町に存在するというリトルバンコクの章では、ほかの街でもよく見かけるタイ料理店やタイ古式マッサージ店だけではなく、タイ料理教室やタイ語教室、フルーツや野菜で器を作るタイカービングなど、タイに関すること全般を学べる「タイ教育・文化センター(タイテック)」を紹介。そんな場所があったのかとまず驚いたが、その理事長を務め、さらには、タイ食材輸入会社「ピーケーサイアム」代表、タイ料理店「ゲウチャイ」オーナーも務める、1976年に来日した松本ピムチャイさんにインタビューも試みている。なぜ錦糸町だったのか、リトルバンコクが誕生するきっかけなど、“ほー、なるほど!”と納得できる興味深い内容が記されている。    アジアが大好きだけれど、時間やお金がなくてなかなか行くことができない人、かつてバックパッカーだった人、アジアに興味はあるが未経験の人が興奮する内容に仕上がっている。 (文=上浦未来) ●かわはた・ゆう ライター・編集者。1979年生まれ。学生時代にアジアの魅力にとりつかれ、バックパッカーとしてアジア全域を旅する。大学卒業後、業界紙記者や情報誌の編集などを経験。現在はアジア関連をテーマとするライターとして活動中。好きな場所はタイのバンコク。タイ料理やゲテモノ料理の食べ歩きがライフワーク。

各国でインド映画興収第1位を記録! 奇想天外なアクション娯楽大作『チェイス!』

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『チェイス!』(C)Yash Raj Films Pvt. Ltd. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、人気アイドルグループのメンバー3人が斬新なフォーマットに挑む少々ひねった青春ムービーと、インド発ながらハリウッド超大作に負けないアクションシーンが売りの痛快娯楽作。どちらもコアなマニアだけでなく、一般の映画ファンも楽しめる魅力を備えたオススメの2本だ。  『超能力研究部の3人』(12月6日公開)は、『マイ・バック・ページ』(11年)の山下敦弘監督が、映画初主演となる乃木坂46の秋元真夏、生田絵梨花、橋本奈々未を迎えてユニークな構成で作り上げたアイドルムービー。北石器山高校の超能力研究部に所属し、日々超能力の訓練にいそしむ良子、育子、あずみは、楽々とスプーンを曲げていた同級生の森を強引に入部させる。「自分は宇宙人」と告白した森を故郷の星に帰してあげたいと考えた3人は、UFOを呼び寄せようと奮闘する。  乃木坂46のシングル「君の名は希望」のPVも手がけた山下監督が、同ビデオ内で行われたオーディションで選出した3人を起用。大橋裕之の連作短編漫画『シティライツ』を原作とする学園青春ドラマのパートと、彼女たちが山下監督から演出を受けたりオフの時間を過ごす様子などを収めたメイキング風のパートで構成した。後者はドキュメンタリータッチで描かれ、アイドルから女優へと成長する3人の生の姿が映し出されるのかと思いきや、彼女たちのマネジャーが過剰に干渉するあたりから雲行きが怪しくなり……。フェイクとリアルがあいまいに溶け合うメイキングパートと、ほのぼのとした高校生の日常に過激な言動も飛び出すドラマパートの相互作用もあり、アイドル=偶像の「虚」と「実」にまで迫る稀有な作品に仕上がった。  『チェイス!』(12月5日公開)は、本国インドをはじめ、各国でインド映画興収第1位を記録したアクション娯楽大作。米国シカゴでサーカス団を率いるマジシャンのサーヒル(アーミル・カーン)は、マジックとダンス、バイクの曲乗りを融合させたショーで人気を集めている。だが、彼は裏で金庫破りを繰り返し、かつて父を破滅させた銀行へ復讐する計画を進めていた。そんなサーヒルを追い、インドから敏腕刑事ジャイ(アビシェーク・バッチャン)が渡米。サーヒルの人生をかけた壮大なトリックと、ジャイの執念が激突する。  インド映画史上最大規模の製作費をかけ、シカゴでもチェイスシーンを含む大がかりなロケ撮影を敢行。高層ビルの壁面を垂直に駆け下りたり、バイクで張られたワイヤーの上を逃走したりと、奇想天外で刺激的なアクションが満載だ。クリストファー・ノーラン監督の『プレステージ』(06年)に似た、マジシャンの復讐をモチーフにしたストーリーも興味深く、インドの国民的女優カトリーナ・カイフを交えたダンスシーンの楽しさもボリウッド映画ならでは。ハリウッド映画に負けない、豪華で痛快なエンタテインメント大作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『超能力研究部の3人』作品情報 <http://eiga.com/movie/80953/> 『チェイス!』作品情報 <http://eiga.com/movie/79710/>

鈴木一郎、夏目漱石、織田信長……表札の見本に使われがちな有名人の名前って?

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「丸三タカギ」より
 もしあなたが立派な家を建てたら、次にすることはなんでしょうか?  そう、表札を用意しますよね。できれば表札も、家に見合った立派なものにしたい。表札をオーダーする際、表札屋さんのサンプルを参考にすることになる。するとそこには、迫力のある書体でこう書かれている……「徳川家康」と。  立派な邸宅や表札に一生縁がないことがハッキリしている筆者だが、以前から“表札のサンプルに使用されがちな有名人”については気になっていた(何それ? 見たことないという方は、「表札 開運」というワードで画像検索してみてほしい!)。  歴史上の偉人の名がよく使われているイメージだが……、実際のところどうなんだろう? 今回、インターネットの力と少しの脚力を駆使してさまざまな表札メーカーのサンプルを調査し、出現度の高い有名人のランキングを作ってみた!  表札を扱っているショップのサイトを訪問し、そこにアップされている制作見本の画像を片っ端からチェックしていくという、地道で素朴な作業。それプラス、近所の商店街に表札屋がないかと歩き回った。そうやって調べた、合計70店ほどの表札店のデータを集計した発表します!  まずは第5位から! 「織田信長」得票数10  戦国時代・安土桃山時代からランクイン。武将といえば、まずその名を浮かべぬ人はいないでしょう。表札に書かれた名前をあらためてまじまじと見ると、クールでかっこいい字の並びだなーと思った。  お次の第4位は! 「豊臣秀吉」得票数11  織田信長が来たら、もちろんこの人も! 縦書きの表札では、スーッと縦に一本線が通った感じで、非常にバランスが良く見える。  第3位は! 「福沢諭吉」得票数14  さすが、一万円札経験者! 名前にも重みがある。ちなみに、表札見本は「澤」でなく、「沢」を使ったものばかりだった。面倒だからかな?  第2位は! 「坂本龍馬」得票数15  表札界でもやっぱり大人気の志士。「龍馬」という字の並びの力強さよ! 表札見本に採用したくなる気持ちも分かる気がする。書いていて楽しそうだ。  さてさて、第1位は! 「徳川家康」得票数23  群を抜いて見本に採用されていたのが家康。武将としての人気では織田信長に譲るような印象だが……、堂々とした字面がいいのだろうか。家が栄える、といったイメージ付けもあるのかもしれない。  と、福沢諭吉を除いて武将・武士が独占! 体育会系全盛といった勢いだ。  ちなみに5位以下だと、「夏目漱石」「伊藤博文」「聖徳太子」など文系男子の名も並ぶ。それにしても、「聖徳太子」と書いてある表札って面白い。近所にそんな家があったら、勢いで訪ねてみたくなるではないか。  その他、気になったところでは、「鈴木一郎」という名が結構使われていたのだが、これはあの野球選手のイチローなのかという点だ。イチローであれば「郎」でなく「朗」の字が正しいのだが、私が見つけたものはどれも「郎」のほう。「山田花子」みたいな平凡な名前の例として使っているのか、どっちなのか微妙なところ。また、なぜか「織田裕二」を採用している店が2つあった。「織田信長じゃありふれてるし、裕二いっとく?」という、店長とその妻の会話でもあったのかもしれない  得票数1で並ぶ中には、「中田英寿」「石川遼」といった名前も。今回の調べで見つけられなかっただけで、人気の名には違いないと思われる。「石川遼」と「最上義光」が並ぶ表札見本の世界は奥が深い。「タイガーウッズ」という、カタカナ書きの表札見本もあった。  ちなみに、なぜ歴史上の人物の名がサンプルに使用されがちなのか、とある表札メーカーの方に伺ってみたところ、「特に明確な理由があるわけではありません。誰でも知っている名前のほうが馴染みがある、というレベルのものです。あえて言うなら、歴史上の偉人の名前のほうがインパクトがある、というのはあるかもしれません」との回答が。姓名判断的に強運を持つ名だから、などといった理由はないそうである。  みなさんも、ご近所に表札を扱うお店があったら、ぜひサンプルの名に注意してみてほしい! 地域差なども発見できそうだ。 (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/

戦争とはこういうものだ――ブラッド・ピット主演・製作総指揮の戦争アクション『フューリー』

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『フューリー』(C)Norman Licensing, LLC 2014
 今週取り上げる最新映画は、ブラピが第2次大戦の戦車乗りに扮するハリウッド製アクションと、人間の顔が瞬時にモンスターに変形するVFXが話題の和製ホラーアクション。どちらも衝撃的な映像に目を奪われるが、生きることの意味や仲間・家族の絆を描く人間ドラマの要素も見逃せない。  『フューリー』(公開中)は、ブラッド・ピットの主演・製作総指揮で第2次世界大戦下の戦車バトルを描く戦争アクション。1945年4月、ドイツへ侵攻する連合軍の戦車部隊に、「フューリー」(激しい怒り)と命名されたM4中戦車シャーマンを指揮する米兵ウォーダディー(ピット)がいた。歴戦でチームワークと信頼を築いてきた3人の乗員に、戦闘経験のない新兵のノーマンも副操縦手として加わり、凄惨な戦場を進んでいく。敵の奇襲攻撃に応戦し、ドイツ兵が立てこもる村を制圧した後で、ウォーダディーは戦略の要所となる十字路を確保せよとの新たな任務を受ける。5人が乗ったフューリーは、ほかの3輌の戦車と目的地へ向かう途中、当時世界最強と言われたドイツ軍のティーガー戦車に遭遇する。  監督・脚本は『エンド・オブ・ウォッチ』(2012年)、『サボタージュ』(公開中)のデビッド・エアー。映画業界に入る前は米海軍の潜水艦乗りだった経験を生かし、ストーリーから兵器、兵士たちのドラマまで、戦争のリアリティーに徹底的にこだわった。自走する本物のティーガー戦車が映画史上初めて使用されるなど、軍事マニアを歓喜させるポイントもたくさん。ウォーダディーの的確な判断と指揮の下、フューリーの乗員たちが連携してティーガーに果敢に立ち向かうシークエンスでは、「レッド・オクトーバーを追え!」の潜水艦の攻防のような兵力・知力・胆力を総動員したバトルが展開する。  ただし連合軍の勝利を賛美する映画ではなく、被弾した兵士の胴体や手足が吹っ飛んだり、兵士の遺体を戦車のキャタピラが踏みつぶして進む悲惨な光景もしっかり描き出す。新兵のノーマンが、投降して命乞いをするドイツ兵を射殺するよう命じられ、やがて“殺人マシン”に変わっていく姿にもどこか悲壮感が漂う。勧善懲悪でも戦いの美化でもなく、「戦争とはこういうものだ」と提示する本作は、戦争の記憶が失われつつある日本でも観るべき価値のある力作だ。  『寄生獣』(11月29日公開)は、80~90年代に連載された同名人気コミックを、VFX畑出身の山崎貴監督が実写映画化した2部作の前編。人間の脳を乗っ取って肉体を操り、ほかの人間を捕食する謎の寄生生物=パラサイトが、人知れず増殖していた。高校生の新一(染谷将太)もパラサイトに襲われるが、脳を奪えず右手に寄生した「ミギー」と共生することに。パラサイトたちが静かに勢力を拡大する中、一部のパラサイトが暴走し、新一とミギーも争いに巻き込まれていく。  先に映像化権を獲得していた米配給会社が断念し、連載終了から約20年後にようやく日本での実写映画化が実現した。その間に邦画のVFX技術が進歩したおかげで、顔がパックリ割れて鋭利な刃物のように変形する衝撃的なビジュアルが見事なクオリティーで描かれており、原作ファンも長年待ったかいがあったというもの。深津絵里や東出昌大ら、俳優たちの整った顔が一瞬でおぞましいモンスターに変形する様は強烈だ。染谷将太の冷めたルックスも、ミギーとの奇妙な共同生活を余儀なくされる主人公にぴったりで、相棒のミギーは、阿部サダヲが声とパフォーマンス・キャプチャーによる動きを担当している。  パラサイトと人間が殺し合うというエキセントリックな設定の中に、生きることの意味、共生とは、親子とはといった普遍的なテーマを問う作品でもある。浅野忠信、北村一輝らの暴れぶりが期待できそうな完結編(来年4月公開予定)も今から楽しみだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『フューリー』作品情報 <http://eiga.com/movie/80328/> 『寄生獣』作品情報 <http://eiga.com/movie/79555/>

アダルト業界の元気炸裂! 初の業界横断大型イベント『Japan Adult Expo 2014』を総括する

7b4095e88195e183aea1b28f015.jpg  11月14・15日の2日間、アダルトビデオ業界が一丸となった初の業界横断大型イベント『Japan Adult Expo 2014』が開催された。  このイベントは、今年から復活した本年ナンバーワンのアダルトビデオを決定する「AV OPEN 2014」の授賞式を中心にして、各社がブースを設けて物販やミニイベントを開催するというもの。参加メーカー数は120メーカー。女優数は109人と、アダルトビデオ業界としては最大規模のイベントとなった。  初日の金曜日、会場に到着して驚いたのは、その来場者数である。平日の日中ということで、ビジネスデーの雰囲気を想像していたのだが……。すでに会場内は、一般の来場者による熱気でいっぱいだったのである。  来場していた男性に話を聞いてみたところ、「会社を休んできたのですが……。一度にこんなに多くの女優さんに会うことができるなんて!」と歓喜の声を上げていた。  それもそのはず、ステージでは「AV OPEN 2014」の授賞式をはじめとして、各種イベントが。さらにブースでも、女優との撮影会などが次々と開催。中には、縄で縛られた女優と一緒に会場内を練り歩く監督なんてのもいたりして、ファンにとってはたまらないサービスの連続だったのである。  近年、海賊版やさまざまな事情によって、アダルトビデオ業界は活力を失っているという。しかし、このイベントでわかったのは、いまだにアダルトビデオは民衆から渇望される産業であるということだった。  イベントを主催した知的財産振興協会(IPPA)の担当者は語る。 「金曜日の集客人数は想定外でした。平日ということもあり、もう少し少ないイメージでした。それなのに、こんなに大勢のお客さんが詰めかけてくれ、『AV OPEN 2014』なんて、ステージ周辺がすし詰め状態になるほどでした。本当に、開催して良かったと思っています。あらためて、アダルト業界の現状をPRすることができました。まだまだ業界は元気でした。我々メーカーも、さらなる飛躍を求めて頑張らなければならないですね」  当日出展したメーカーも、同じく喜びを隠せない。 「ちょっと会場が狭かったですが……。それが逆に、お祭りムードを演出していました。来年も開催するなら、ぜひ出展を検討したいですね」  日本が世界に誇る隠れた人気コンテンツの熱気を、あらためて感じさせた今回の見本市。なお、主催の知的財産振興協会は、海外に蔓延する海賊版対策でも熱心に活動する組織。今後もユーザーとメーカーのためになる、一層の取り組みに期待したいところだ。 (取材・文=昼間たかし)

ガチで硬派なロリコンマンガ『あんどろトリオ』に見る、昭和のポジティブ変態

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『あんどろトリオ』(秋田書店)
 マンガの世界では、「ロリコン」という言葉はほとんど見かけなくなりました。しかし、美少女が出てくるマンガは減るどころか、むしろ商業的には活況の一途をたどっています。それはなぜか? おそらくは、2000年以降急速に普及した「萌え」という概念が、「ロリコン」というネガティブワードの隠れみのの役割を果たしているからではないでしょうか。「ロリコン」は、常に変態や犯罪などのネガティブイメージがつきまといますが、「萌え」だとマイルドな語感で、サブカルな香りすら漂います。「ロリコンは死んだほうがいいけど、萌え系はちょっとオシャレだよねー」みたいな。これは言葉のマジックですね。  1982年(昭和57年)から「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)に連載されていた内山亜紀先生の作品『あんどろトリオ』は、昭和の作品らしく萌えマンガとは一線を画した純度100%の正統派「ロリコンマンガ」であるといえます。まさに、真のロリコンを追い求める、硬派のためのロリコンマンガといっていいでしょう。  内山先生はロリコン漫画家の筆頭として多数の作品を世に送り出していますが、『あんどろトリオ』は「週刊少年チャンピオン」という超メジャー少年誌に堂々と、合法的に掲載されていたというのが文化的価値の高いところです。  内山先生の描く少女は、現代の萌えマンガ特有のデフォルメされたアニメ絵とは異なり、大人びた顔立ちに幼児体型をミックスしたような昭和の香りを感じさせる美少女です。いま見ると、尋常じゃない背徳感と不健全さが漂っています。プロも納得するガチのロリコンというのは、こういうものなんだろうなと思わせられるものがあります。  では、『あんどろトリオ』はどんな作品なのでしょうか? ひとことで言うと、女の子が毎回パンツを脱がされるマンガです。実にシンプル。読者の欲望にダイレクトに応えているマンガといえます。  これだけだと作品紹介としてあんまりなので、もう少し詳しく説明しますと、主人公は「つかさ」という小学生風の女の子です。つかさちゃんはデフォルトでパンツが見える上にどのアングルから見てもパンツが見えるという、ちょっとどういう構造になっているのかよくわからない服を着ています。つまり、ほぼ全ページにわたって常にパンツが描かれています。内山先生のパンツへの執念を感じさせますね。  つかさちゃんの取り巻きには、「センパイ」「少年」というキャラクターがおり、3人合わせて「あんどろトリオ」を形成しています。一方で、つかさちゃんのパンツを狙う「紅ガイコツ団」という変態軍団や「イヤラッシー」という変態犬も登場します。イヤラッシー……変態犬にはこれ以上ないほどに、ピッタリの名前です。  つかさちゃんのパンツを狙う「紅ガイコツ団」をガードするために、センパイがいろんなアイテムを発明するのですが、味方であるセンパイも変態なので、結局パンツが見えることには変わらないという変態の多重構造になっています。  ちなみに、センパイがどのくらい変態なのかと言いますと、自分の家がパンツの形をしています。なんというか、インジケーター振り切ってる感じの変態ですね。  そもそも昭和のエッチマンガの特徴として、自ら変態だと公言してはばからないポジティブ変態なキャラが結構登場していました。「変態ですが、何か?」みたいな。それに対して現代の萌えマンガは、どちらかと言うと、一見女子に興味がなさそうな草食系男子がハプニングでエッチなトラブルに巻き込まれるみたいな設定が多い気がします。男らしい凛とした態度の変態は、昭和時代のほうが多かったということですね。  話がそれましたが、センパイがつかさちゃんのために発明したアイテムであるチカン撃退用のパンツ、通称「ニャンコパンツ」はパンツに描かれている猫のプリントに触れると「なめ猫」が飛び出すという仕掛けになっています。このパンツから立体物が飛び出してくる描写は、マンガ誌上類を見ないブッ飛んだ表現と言えます。  この飛び出すパンツにはさまざまなバージョンがあり、かわいい赤ちゃん猫が飛び出すパターンや、おっかない番長が飛び出すバージョンもあります。そのほかにも、尿意をもよおすと股間から卵が生まれるパンツなどもあり、まったくもって意味が分かりません。  さらに、パンツだけではワンパターンと見たか、途中からパンツに変わってオムツの出現回数も増えてきます。素人目には、正直言って何も変わっていないのに等しいのですが、もしかしたらその道のプロが見れば、パンツとオムツは全然別物なのかもしれません。  これだけパンツだオムツだと毎回少女が脱がされているマンガがメジャー誌で掲載されていたというのは、いかに規制が緩い時代とはいえ驚くべき現象ですが、上も下もちゃんと隠すべき部分は巧妙に隠されており、この辺は少年誌掲載マンガとしてのギリギリの良心を感じます。まあ、ギリギリアウトって感じですけど。  というわけで、最近のヌルい萌えマンガに辟易していた古きよき変態の皆様には、ぜひ『あんどろトリオ』をお読みになっていただき、昭和のエロスが醸し出す背徳感を感じ取っていただきたいと思う所存です。読み終わる頃にはきっと、人様に迷惑をかけない一皮むけた硬派の変態になっていることでしょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

クリストファー・ノーラン4年ぶりのオリジナル作品は、自身初の宇宙SF『インターステラー』

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『インターステラー』(C)2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、VFXを駆使した宇宙の描写と人間ドラマが見事に融合したハリウッド製SF超大作と、ヘタレなロッカーがカリスマアイドルと出会って変わろうともがく姿を描いた和製ロックムービー。スケール感はまるで違うが、キャラクターや映像を通じて、スタッフの映画製作に注ぐ情熱がしっかり伝わってくる作品たちだ(いずれも11月22日公開)。  『インターステラー』は、『メメント』(2000年)や『ダークナイト』(08年)、『インセプション』(10年)のクリストファー・ノーラン監督による4年ぶりのオリジナル作品で、自身初となる宇宙SF。近未来、地球規模の環境悪化と食糧難により人類の滅亡が迫る中、NASAは太陽系外で新天地となり得る惑星を探す極秘ミッションを進めていた。経験を買われた元パイロットのクーパー(マシュー・マコノヒー)は、愛する家族に「必ず帰る」と約束し、先遣隊が送ってきたデータを頼りにブランド博士(アン・ハサウェイ)らと惑星間飛行へ旅立つ。  ノーラン監督は理論物理学者キップ・ソーンの協力を仰ぎ、時空の歪みやブラックホールなど最先端の宇宙物理学の理論を反映させつつ、親子や男女の絆と愛を織り込んで壮大な冒険物語を構築。巨匠スタンリー・キューブリックがSF作家アーサー・C・クラークと組んだSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(68年)に、ストーリー面でも映像面でも比肩する傑作を完成させた。  共演陣もジェシカ・チャステイン、マイケル・ケイン、ケイシー・アフレックと演技派がそろい、短い出演ながらマット・デイモンも強い印象を残す。『2001年…』のHAL9000や『エイリアン2』(86年)のアンドロイド「ビショップ」を想起させるAIロボットのTARSや、宇宙飛行士の会話に出てくる「闇の奥」(『地獄の黙示録』の原作小説の題名でもある)など、映画マニアを喜ばせる仕込みもたくさん。映像表現の現在の到達点ともいえる宇宙空間の描写とスペクタクルな惑星間飛行のシーンを体感するためにも、大スクリーンでの鑑賞を強くオススメしたい。  『日々ロック』は、榎屋克優の同名コミック(「週刊ヤングジャンプ」で連載中)を、『SR サイタマノラッパー』(09年)の入江悠監督が映画化した青春ムービー。サエない高校時代の仲間とロックバンドを組んだ日々沼は、ビッグになることを夢見て上京する。ライブハウスで住み込みで働きながら、演奏活動を続けていたある日、ステージに酔った女が乱入して「雨あがりの夜空に」を熱唱。彼女は、デジタルな演出でカリスマ的人気のアイドル・咲だった。咲から「私に曲を書いて」と依頼されたことで、日々沼のロック人生が大きく変わっていく。  映画・テレビドラマの出演が相次ぐ若手注目株・野村周平が、コミュニケーション能力に問題を抱えながらもギターを持つとパワフルに豹変する、ロックバカな主人公を熱演。絶叫系のボーカルは好き嫌いが分かれそうだが、丸裸でギターを抱える姿にロッカーとしての説得力を感じさせる点はさすが。  咲役の二階堂ふみも、大ステージでのアイドルオーラあふれるパフォーマンスから、壊れそうに弱い少女の素顔をのぞかせる場面まで、振り幅の広い好演が光る。ビジュアル系バンドとのライバル関係をはじめ、大ネタ小ネタが次々に繰り出されて笑いっぱなしだが、青春のほろ苦さと夢の切なさと友情の熱さもしっかり描かれた快作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『インターステラー』作品情報 <http://eiga.com/movie/78321/> 『日々ロック』作品情報 <http://eiga.com/movie/80063/>

『アメリ』監督4年ぶりの新作は自身初の3D 天才少年の旅を描く『天才スピヴェット』

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『天才スピヴェット』(C) EPITHETE FILMS - TAPIOCA FILMS - FILMARTO - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA
 今週取り上げる最新映画は、宮沢りえが不倫をきっかけに横領に手を染める難役に挑んだ7年ぶりの映画主演作と、女性を中心に高い支持を集めた『アメリ』(2001年)の監督が天才少年の旅を描く自身初の3D作品。どちらの主人公も特殊な「冒険」に踏み出すが、恋愛や家族のあり方、現実との向き合い方という普遍的なテーマが込められた2本だ(共に11月15日公開)。  『紙の月』は、ベストセラー作家・角田光代の同名小説を、『桐島、部活やめるってよ』(12年)の吉田大八監督が映画化したサスペンスドラマ。夫と2人で暮らす梨花(宮沢りえ)は、銀行の契約社員として外回りの営業を任され、丁寧な仕事ぶりで顧客から信頼を得、職場でも評価されていた。多忙な夫(田辺誠一)との希薄な結婚生活にむなしさを感じていた頃、年下の大学生・光太(池松壮亮)と出会った梨花は、外回りの帰りに化粧品を買おうとして代金が不足し、顧客の預金に手をつけてしまう。最初は1万円を借りただけのつもりが、次第にエスカレートし、顧客の預金証書を偽造する方法で横領を繰り返すようになる。  まじめな兼業主婦の銀行員が若い男との道ならぬ恋をきっかけに、顧客から預かった金を着服し転落していく過程を、宮沢りえが切なく哀しく透明感漂う演技で熱演。行内での横領の手口が緊張感たっぷりに描かれており、観客は主人公に感情移入してハラハラしながら眺めることになる。不倫愛の破局と犯罪の発覚を予感しつつも、ヒロインの幸せを願ってしまうはず。先月開催された東京国際映画祭では、コンペ部門で最優秀女優賞と観客賞を受賞しており、宮沢りえと吉田監督の評価が海外でも高まることを期待したい。  『天才スピヴェット』(2D/3D上映)は、日本でも大ヒットした『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督による4年ぶりの新作。米北西部モンタナの牧場で、発明が趣味の天才少年スピヴェットは、カウボーイの父、昆虫学者の母、アイドル志望の姉と一緒に暮らしている。だがスピヴェットの弟の死で、家族の心はバラバラになっていた。そんな折、スミソニアン博物館に送った発明が権威ある科学賞を受賞。スピヴェットは授与式に出席するため、家族に黙って家を後にし、貨物列車で米東部シカゴを目指して大陸横断の旅に出る。  原作は、ライフ・ラーセンの冒険小説『T・S・スピヴェット君 傑作集』(早川書房刊)。ジュネ監督は自身初となる3D映画で、原作本にある人物画やスケッチなどの挿絵を実写映像から浮遊するように重ねるなど、創意工夫あふれる立体的な映像で表現した。昆虫の標本などの3D描写も絶品で、ウェス・アンダーソン監督の箱庭世界に通じる映像体験を味わえる。主演のカイル・キャトレットは、これが映画初出演ながらピュアで繊細な演技で魅了する。繊細なスピヴェットの冒険と葛藤と成長に触れつつ、家族の関係性と愛情に思いをめぐらせ、胸が温かくなる感動作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『紙の月』作品情報 <http://eiga.com/movie/79885/> 『天才スピヴェット』作品情報 <http://eiga.com/movie/79745/>