今週取り上げる最新映画は、歓楽街のラブホテルに集う面々の人間模様を描く邦画と、米ポップアート全盛期に起きたゴースト画家騒動を描く洋画の2本。両作品に共通するのは、登場人物たちの隠す秘密が明らかになるかどうかが緊張感を生み、物語の展開を効果的に刺激している点だ。 『さよなら歌舞伎町』(1月24日公開、R15+指定)は、『ヴァイブレータ』(2003年)の廣木隆一監督、『寄生獣』(14年)の染谷将太主演で描く、大人の群像ドラマ。新宿歌舞伎町のラブホテルで店長を務める徹(染谷)は、同棲相手でミュージシャン志望の沙耶(前田敦子)や、福島に住む家族には自分が一流ホテルマンだと偽っている。徹がいつものように出勤したラブホで、過去の罪を隠す清掃員(南果歩)、韓国人のデリヘル嬢(イ・ウンウ)、家出少女(我妻三輪子)と風俗スカウト(忍成修吾)、警察官の不倫カップル(河井青葉、宮崎吐夢)ら、ワケありの男女の人生が交錯する。 客と従業員の間の没交渉が基本のラブホテルを舞台に、あえてグランドホテル方式の群像劇を組み立てたオリジナル脚本がユニーク。話題作への出演が相次ぐ染谷、元AKB48の前田、「ニコラ」(新潮社)モデル出身の我妻、韓国人女優のイなど多彩な若手と、大森南朋、田口トモロヲ、村上淳、松重豊ら実力派の中堅によるアンサンブルは、時に軽妙、時に濃密で2時間15分の長尺を飽きさせない。パートナーへの嘘や社会への隠し事で危うく成立しているカップルたちが、秘密の露見を前に決断を迫られる。愛や夢、欲望や虚栄といった、歌舞伎町が象徴するものに別れを告げる、どの登場人物に観客は自分を重ねるだろうか? 『ビッグ・アイズ』(公開中)は、鬼才ティム・バートン監督が、今から半世紀前の米ポップアート界を揺るがしたゴースト画家の実話を映画化したインディペンデント作品。美大で学んだ絵で生計を立てたいシングルマザーのマーガレット(エイミー・アダムス)は、社交的で自信家のウォルター・キーン(クリストフ・ワルツ)と出会い、ほどなく結婚する。彼女が悲しげな大きな目の子どもを描いた『ビッグ・アイズ』シリーズは、ある夜を境に人気が急上昇。だが、ウォルターは自分の作品だと偽って巧みに売り込み、一躍アート界の寵児となる。内気なマーガレットは夫に言われるままキーン名義で絵を描き続けるが、自宅でのトラブルを機に別居。やがて彼女は、自分を取り戻し作品を守るために、真実を公表することを決意する。 風変わりなキャラクターと奇想天外な世界観を描くファンタジーやホラー作品の多いバートン監督だが、今回は実話ベースのため至極真っ当な作り。とはいえ、特撮とメイクで俳優の目を大きく見せるシュールなシーンで、「らしさ」も添える。アダムスは本作で、今年のゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)を獲得。ワルツもペテン師まがいの夫を憎々しく熱演し、ヒロインの苦悩と葛藤を見事に引き立てている。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『さよなら歌舞伎町』作品情報 <http://eiga.com/movie/80641/> 『ビッグ・アイズ』作品情報 <http://eiga.com/movie/80081/>(C)2014『さよなら歌舞伎町』製作委員会
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黄泉の世界から蘇ったバブル広告マンが不況の日本をアツくする『ジェット上司』
消費税法改正による値上げ、円安による値上げ、牛丼が300円から380円に値上げ……値上げ値上げのアゲノミクスなニュースを聞くたびに、日本国民の悲痛な叫びが聞こえてきます。 しかしウン十円、ウン百円の値上げぐらい屁でもねえ、金ならいくらでもあるんだ! そんな豪気な日本人が闊歩する時代がありました。そう、1980年代後半から1990年代初頭にかけてのバブル景気の頃です。あの頃のアホみたいな明るさと空回り気味の元気こそ、憔悴し切った今の日本に必要なのではないでしょうか? 今回ご紹介するマンガ『ジェット上司』こそ、まさに混迷する不況日本における処方箋であり、バブル景気の頃の日本の、バカみたいな明るさを無理やり体感させてくれる劇薬ともいえる作品なのです。 『ジェット上司』の主人公は斉藤誠。大手広告代理店「弁通」の若手社員であり、CMクリエーターを目指す23歳の青年です。両親が他界したため、高校生の妹を一人で養っている頑張り屋でもあります。しかし、時は平成不況まっただ中、誠の勤める弁通も、業績は下降の一途をたどっている状況でした。大手クライアントであるアメリカ最大手のスーパーマーケットチェーン「ボルマート」の女社長には足元を見られて広告費を半額に値切られるなど、苦しい状況に追い込まれていました。 そんな中、突然ボルマートの女社長が絶叫します。 「オウ、クレイジー!?」 「オーマイガーッ!!」 女社長のパイオツを後ろから揉みしだきながら、豪快に登場したうさん臭いチョビヒゲ男。その名は「浅野W」。11年前に事故で死んだと思われていた伝説の広告マンが突如、現世に蘇ったのです。 実は、この男は伝説のスマイケル・ジャクソン湾岸100万人ライブを実現させたり、科学万博を企画してテーマパークブームの仕掛け人として活躍するなど、バブル絶頂期に弁通を業界トップに押し上げた男だったのです。 浅野Wに揉みしだかれた女社長は、なぜか「コノ不況下デモ日本ノ男ニコレダケ迫力ガアルナンテ見ナオシタヨ」「サッキノ宣伝戦略、予算倍増デタノムヨ」などと心変わり。浅野Wが登場して、いきなり弁通のピンチを救ったのでした。さすが、伝説の広告マンですね。女社長のほうも、パイオツ揉みしだかれて心変わりする意味がまったく分かりませんが、とにかくスゴい。これが、バブルが生み出すパワーなのです。 それにしても、「浅野W」って、あからさまに本名じゃなさそう、かつバブル臭漂う名前です。ちなみに、88年に放映されたトレンディドラマ『抱きしめたい!』(フジテレビ系)では浅野ゆう子と浅野温子の2大女優が主演を務め、「W浅野」というバブルを象徴する流行語を生み出しましたが、本作品とはまったく関係ありません。 華々しい復活を果たして浅野Wは、弁通に本格復帰。しかも、なぜか誠の上司になったのです。しかしこの浅野Wという男、思考回路が完全にバブルの頃で停止しており、セリフにいちいちバブル臭漂っています。 「よーし、今夜はみんなでジュリアナ行くかー!」 「俺の極秘プロジェクトで何億倍にもして返してやる!」 「日本を再び世界のトップに押し上げてやる!!」 「知らない女の乳を揉む時も上司の許可をとれーッ!」 さらに、自分の執務室に噴水を設置したり、キャバクラで毎晩数十万円使って経費で落とそうとしたり、CMタレントに「僕は死にましぇーん」とセリフを言わせたり、ランバダを踊らせたり……とにかくバブリーです。ランバダ、懐かしすぎますね。踊ったことある人にとっては、結構な黒歴史なんじゃないでしょうか。 そんな感じで奇跡の復活を果たしたものの、現代のセンスとズレまくった企画がことごとく失敗。社内からの信頼が揺るぎかけていたその時、ついに浅野Wが温めていた超極秘スーパープロジェクトが始動します。そのプロジェクトの内容とは、ズバリ…… 「サッカーワールドカップを日本に招聘すること」 ……そう、浅野Wは、02年にワールドカップが日韓共同開催されていたことを知らなかったのです。 極秘プロジェクトが勘違いで終わった上、膨大なプロジェクト費をほとんどキャバクラ通いで浪費、さらにスマイケル・ジャクソンの来日や科学万博もよく調べてみると、浅野Wの実績ではなかったことがバレ、浅野Wは弁通をリストラ。誠の家に居候として転がり込むことになります。 弁通をクビになってしまった浅野Wは、面接での横柄な態度が災いしてどこの会社にも再就職できず、自ら巨乳ウェイトレスだらけのラーメン屋「巨乳ラーメン浅野屋」開業を目指して近所のラーメン行列店「ラーメン伝説」にバイトとして弟子入りすることにします。そこからは完全にラーメン修業マンガになってしまいます。バブリーな広告代理店マンガだと思っていたら、実はラーメン起業マンガだったとは……。まさかの、斜め上の展開です。 浅野Wは「ラーメン伝説」弟子入り2日目にもかかわらず、独立したいからスープ作りを教えろと店長にすごんだり、女性客のパイオツを揉みしだいたり、店内で勝手に巨乳ウェイトレスオーディションを開いたりと、ムチャクチャな仕事ぶりで何度もクビになりかけますが、最終的には童貞だった店長を巨乳ギャルの色じかけで洗脳。巨乳ラーメンの開業にこぎつけます。それにしてもひどい……。マンガとはいえ、これほどひどい起業ストーリーはなかなかありませんね。 そんなテキトーすぎる巨乳ラーメン「浅野屋」が、まさかの大当たり。全国チェーン展開で浅野Wは社長として再びビジネスの世界に舞い戻ってきます。しかし、これからという矢先に再び事故に遭い、この世を去ってしまいます。 ラストシーンでは浅野Wが広告代理店時代の部下、誠へ一流のCMクリエーターになるためのメッセージを残します。それはズバリ…… 「巨乳を好きになれ!」 ……最後の最後まで、ムチャクチャな内容でした。 こんな感じで前半はバブル全開な広告代理店マンガ、後半はラーメン起業ストーリーとなっている作品ですが、前半後半とも巨乳推しなところだけは終始一貫しています。もしかしたら、日本の復興は巨乳ギャルにかかっているという、浅野Wからのメッセージなのかもしれません(違う気もするけど)。 というわけで、日本の景気回復を願って、バブル時代のいい意味でのアホっぽさ全開のマンガ『ジェット上司』を紹介してみました。ちなみに浅野Wの本名……つまりWと呼ばれる本当の理由が、ラーメン起業編で明らかにされています。ほぼ皆無だと思いますが、もし気になるという奇特な方がいらっしゃいましたら、一度作品を読んでみてはいかがでしょうか? きっと「そんなくっだらねー理由かよ!」「読んで損した!!」と言いたくなること請け合いです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『ジェット上司』(ながしま超助/双葉社)
うどんも、そばも、ハンバーガーも! 全国レトロ系自販機の魅力を詰め込んだ『日本懐かし自販機大全』
全国各地至るところに自販機が存在する“自販機大国”ニッポン。その数、およそ500万台ともいわれる。とくに、飲料やタバコの自販機は揺るぎない地位が確立され、街角や駅、高速道路のパーキングエリアで日常的に利用する人も多いと思う。そんな市民権を得ている自販機とは別に、うどん、そば、ハンバーガーなどが販売される“食品自販機”の存在をご存じだろうか? 「えっ、食品が自販機で出てくるの!?」「腐らないの!?」と驚く読者もいるかもしれないが、その歴史は40年以上もさかのぼり、上記の食品以外にも、トーストサンド、カレーライス、お弁当などバラエティ豊か。昭和59(1984)年の全盛期には25万台も存在していたほど、メジャーな存在だった。当時は、自販機数台をズラリと並べた自販機コーナーが「オートスナック」「コインスナック」「ベンダーショップ」と呼ばれ、郊外で続々とオープン。世の中が24時間営業ではなかった頃、硬貨を入れると、あっという間に熱々の食べ物を提供してくれる食品自販機は、実に重宝された。しかし、24時間営業の店が普及するとともに次第に廃れてしまう。 時を経て、2015年。食品自販機は機械の老朽化もあり、絶滅しかかっているものの、全国にはまだまだ現役で存在している。今ならまだ出合える! と、その魅力を余すことなく伝えている一冊が『日本懐かし自販機大全』(タツミムック)である。著者の魚谷祐介氏は、食品自販機をこよなく愛し、まるで時が止まったような昭和レトロな懐かしさを感じる食品自販機=“懐かし自販機”と名付け、懐かし自販機を求めて全国各地を旅する、この道の第一人者。本書では、食品自販機の歴史、年季の入った名機たちの紹介、気になる内部のメカニズム、実際に訪れることができる全国各地の自販機コーナーの紹介、自販機の神と呼ばれる、島根と山口のめん類の自販機のメンテナンスを一手に引き受けるプロ・田中健一氏へのインタビューなど、実に濃い内容が盛り込まれている。 自販機というと、相手は当然ながら機械。ところが、魚谷氏は自販機の神・田中氏とのインタビューの中で「ファストフードやファミレスと違うのは、機械なのに血が通っている感じがするところですかね。さらに、時代の中で淘汰されながらも、この辺りの店舗みたいにいいもの(おいしい食品を提供する自販機)だけが残っているんだと思う」(本文より)と語る。 「機械」と「温かみ」は、正反対に位置しているように感じるが、食品自販機は飲料やタバコなどと違い、賞味期限が短く、しかも、よりおいしいものを提供しようと考れば、手間がかかる。つまり、食品を提供するために、毎日中身を入れ替え、鮮度をチェックしたりと、裏で支えている人がいるということなのだ。無人なのに感じる人情――。知れば知るほど奥深い、哀愁漂う自販機の世界を、ぜひともこの本で堪能してもらいたい。 (文=上浦未来) ●うおたに・ゆうすけ レトロ系フード自販機の第一人者であり、Webサイト「懐かし自販機」(http://jihanki.michikusa.jp/)を管理運営するマルチクリエーター。ミュージシャン、Webデザイナー、フォトグラファーとして多岐にわたり活動中。本質的には“旅人”。風情と味わいを求めて、現存する全国すべての“懐かし自販機”を訪ねて取材、記録している。『日本懐かし自販機大全』(タツミムック)
はなまるうどん「新あったかフェア」酸辣湯うどん試食会に行ってきた!
今年もはなまるうどんの冬のフェアがやってきた。昨年好評だった「生姜玉子あんかけ」や「明太生姜玉子あんかけ」と共に発表されたのは、新作「酸辣湯うどん」。ラーメンでは定番となりつつある酸辣湯が、うどんにも絶妙にマッチし、その辛さと酸っぱさを味わって欲しいという。 しかし、その外見からは、昨年夏の「鬼おろし冷かけ」や11月の「ジャガバター醤油かま玉」のようなインパクトは見当たらない。ただ、かき玉のだし汁の上にシイタケとタケノコの細切りが乗っかったうどん。これがはなまるうどんのイチオシなのか? 着丼した丼からはたしかに酸っぱさとごま油の香ばしさが漂ってはくるのだが……。見た目はシイタケとタケノコの細ギリが乗った、普通のかき玉うどんぽいが、このままだし汁をすくって飲むと、強烈な酸味と辛味に襲われる。
レンゲでそのスープをすくい、ひとくち飲んだ途端、記者の寝ぼけた頭は丼で殴られたような衝撃を受けた。 スッパーイ! そして、辛ーい! えーと、コレって間違ってないですよね? 「それくらいインパクトある酸辣湯を狙いました」 なるほどと、天地返しすること数回、さらにだし汁をうどんによくからませて、ズズッとすすり上げると……合う! 酸味も辛味もマイルドになり、歯触りのいいうどんとの相性はバッチリ。それに、普通ならむせて当然のスッパさだが、試食している面々も、誰1人としてゲホゲホしている者はいない。 「すっぱくて辛いインパクトはあるけど、むせないように設計しました」 お酢は五穀酢を使用し、ラー油も吟味を重ねた純正ごまラー油を使用しているので、油っぽくなくサラッと酸辣湯が450円で楽しめる。今までこんな酸辣湯があったか!? あ、それで「あったかフェア」? 違うって! 「新あったかフェア」は1月20日から3月下旬までの予定だ。インパクトある酸辣湯のだし汁をうどんによくからませると、酸味、辛味ともにマイルドに。アツアツなのにズズッとすすってうどんの醍醐味を堪能できる。
昨年の好評に応えて、今年も「生姜玉子あんかけ」(奥左)と「明太生姜玉子あんかけ」(奥右)がラインナップしている。
ヒトは、缶入り飲料をどれぐらい飲み残しているのか?
飲み終えたジュースの缶を台所でゆすごうとしたら、思った以上に中身が残っていて驚いたことがある。全部飲んだ気でいたのに、もったいない……。 もしかして、自分は普段から結構な量を飲み残しているんじゃないだろうか。ふと恐ろしくなり、調査に乗り出した。 缶入り飲料を飲んだ際に、残りの水分量を計測するのだ。あの計測する容器、なんて言うんだっけ。ビーカー、フラスコ……ピペット、プレパラート……? 理科の授業を真面目に受けていなかったことを、こんな形で後悔した。 インターネットの力を借り、1ミリリットル単位の目盛りがついた「メスシリンダー」を購入。値段がピンキリで、メスシリンダーの世界の奥深さに目がくらんだ。いま一番売れているメスシリンダーがどれなのか調べてみる、のは、またの機会に譲るとして、購入した計測器を使って早速調べてみた。 まずは、私自身が飲んだ発泡酒で検証。自慢じゃないが私はドケチである。お酒も好きなので、一滴も飲み残したくないと思っている。が、飲み終えた缶を逆さにして残量を調べてみると、8.2ミリリットルも飲み残していた。8.2ミリリットル……、小さじ一杯が5ミリリットルだ。幕の内弁当などについているしょうゆの内容量も、5ミリリットルが平均。ちくわ天をおいしく食べるのに十分すぎる、あのしょうゆよりもはるかに多い飲み残しである。無念。 この結果に衝撃を受け、人に会えば缶コーヒーやお茶をおごり、飲み終えたところでおもむろに計測を始めるという行為を繰り返した。「飲み残し刑事」といった気分だ。計測の対象は缶入り飲料ならなんでも、だが、ボトル缶は対象とせず、プルタブを引き上げて飲む「ステイ・オン・タブ」と呼ばれる缶の飲料とした。 A子さん(缶チューハイ):残量 4ミリリットル B男さん(発泡酒):残量 5.8ミリリットル C子さん(ほうじ茶):残量 2ミリリットル D男さん(CCレモン):残量 4.5ミリリットル ……といった感じでトータル20回ほどの計測を行った結果、一人当たり平均して3.59ミリリットルを飲み残していることがわかった。缶の残量のすべてがメスシリンダーに移せたわけではないので、正確な量はもう少し増えると思われる。私の発泡酒の飲み残しは平均を大きく超えており、今回計測した中でも最大の飲み残し量だった。ショックを隠せない。 飲み残しを計測した相手のリアクションの多くは、「いや、全部飲んだよ! 残ってないと思うよ」からの「お、結構残ってるんだね」という流れで、やっていて非常に楽しかった。街頭で抜き打ち的にヒゲを剃り、「ほらこんなに剃り残しがありますよ」と見せる、昔テレビでよく見かけた電動ヒゲ剃りのCMのようだ。 今回、最も飲み残しが少なかったのは私の妹で、缶ビールでの計測の結果、残量は0.2ミリリットルだった。なんでこんなに飲み残しが少ないのかをたずねると、「私は一回飲み終わったと思っても、飲み残しがあることを知ってるから」だという。飲み残しに対してこんなに意識的な人間が、まさか肉親の中にいるとは思わなかった。 また、ミルクティーを飲んで残量0.6ミリリットルだった知人は、「絶対飲み残さないようにいつも気を付けている」という。コツは唇を突き出し、液体をつたわせるようにして飲み終えることだそう。その知人の父親は、缶ビールを飲み残さぬよう、最後に必ず飲みながらトントンとジャンプするそうだ。親子そろっての努力に頭が下がる。 つまり、日常的に意識をして飲み残さないようにしている人と、私のようにぼーっと生きている人とで差が出るようなのだ。 ちなみに、ペットボトルの飲料でも数回試してみたが、こちらはほとんど計測不可能なぐらい飲み残しが少なかった。これはペットボトルが透明なため、残量が一目でわかること、形状が漏斗状になっていることなどが要因だろう。 今回は調べることができなかったが、家で飲むときと外出先で飲むときの違いや、飲料の種類によっての違いなど、研究の余地はまだまだある。プラスチック製のメスシリンダーは数百円で手に入るので、お暇な方はぜひ私と一緒に「飲み残し刑事」になってみてほしい! (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/)
地方競馬は八百長の温床か? 「金沢競馬八百長糾弾ブログ」の真偽を関係者に直撃
G1レース6勝の歴史的な名牝・ジェンティルドンナが有終の美を飾り、歴代G1勝利数ランキングに肩を並べる7勝目を挙げて幕を閉じた2014年の競馬界。競馬人気の低迷が叫ばれる昨今だが、それでもジェンティルドンナが勝利した有馬記念当日には中山競馬場に11万人もの観客が集まるなど、いまだに日本の競馬は多くのファンを魅了している。 「最近は世界中からトップジョッキーが日本に乗りに来ていますが、賞金未払い問題で存続の危機にあるイタリアをはじめ、アメリカしかり、ヨーロッパしかり、世界中で日本ほど競馬が文化として国民に定着している国はありません。ファンが多いからレースの賞金も高いですしね。インターネットやスマートフォンの普及などで部数減が深刻な日本のスポーツ新聞の売り上げを、なんとか支えているのも事実上競馬ですからね」(スポーツ紙競馬担当記者) とはいえ、日本の競馬がすべて安泰かというとそうではない。 JRAが主催する中央競馬がいまだに隆盛を極めている一方で、各地方自治体が運営している地方競馬は、数年前から存続の危機に瀕している。 「11年には熊本の荒尾競馬が廃止されましたが、それ以前にも高崎競馬や宇都宮競馬、中津競馬などが馬券の売り上げ減で廃止の憂き目に遭っています。東京の大井競馬や神奈川の川崎競馬などの南関東競馬は、都市部の競馬場という立地条件を生かし、夜に行うトゥインクルレースの開催などで仕事帰りの会社員や学生などを集客し、それなりの売り上げを成立させていますが、その他の地方競馬に関しては、経営状況はかなり厳しいのが実情です」(同) そうした中、一昨年の秋には金沢競馬場での八百長レースが告発されて大きな話題を呼んだ。 事の発端は同年9月下旬、インターネット巨大掲示板「2ちゃんねる」の競馬板に突如、「本日金沢9Rで八百長が行われます」という見出しのスレッドが、レース発走直前に立てられたことだった。 こうした自称関係者による“予想スレッド”が立つケースは過去にもよくあったが、ほとんどはガセだった。だが、今回の結果は「1番人気4番 5番人気2番がわざと負けます」という書き込みの通り、1番人気の4番は11着、2番は7着に敗れた。 さらに、このスレッドを立てた人物が「金沢競馬八百長糾弾ブログ」を作成。「馬券の売り上げ」や「馬券ごとのオッズの比較」などから八百長が行われているというレースを徹底的に検証し、しかもこの人物が指摘したレースでの馬券の売り上げが前後のレースに比べて突出したものになったり、単勝馬券の配当が3連単馬券の配当を上回るような通常ではあり得ない現象が起きていることもあって、注目を集めた。 「単勝馬券の配当が3連単馬券の配当を上回るなんて、確率論から言ってもかなり不自然です。2種類の馬券を比べると、的中する確率が雲泥の差ですからね。意図的な大量買いがあったとしか思えません。実際、この人物が“八百長”と指摘するレースの映像を観てみると、騎手がわざとコースを大回りするような騎乗をしたり、突然落馬したりと、不自然な行動も目立つ。ハッキリ言って、八百長を疑われてもおかしくないですよね」(同) 現在も「金沢競馬八百長糾弾ブログ」は日々更新を続けており、管理者は金沢競馬に厳しい視線を向けている。 そこで、告発の真偽を追及すべく金沢競馬の関係者に独自に接触を試みたところ、絶対匿名を条件に重い口を開いた。 「金沢競馬は赤字続きで存続の危機に瀕しており、近い将来の廃止が検討されています。トップジョッキーの吉原寛人騎手が11年から大井や川崎といった南関東競馬にも参戦しているのは、そういった流れが濃厚だからです。そうした中、例の騒動の前には関係者の間で怪文書が流れたこともありました。私の口からハッキリと八百長が行われているとは断言できませんが、廃止となれば調教師や騎手、調教助手といった競馬に携わる多くの関係者が失業することになります。彼らにだって生活があるわけだし、職を失う前にひと稼ぎしておこうと考えても不思議ではありませんよね」 通常、競馬において関係者が馬券を購入することはご法度されている。だが、実際には誰がいつどんな馬券を購入したのかを厳密に調べることはできない。 それこそ馬券購入希望者が信頼できる知人に頼んだり、人を介して購入すれば済むだけの話だ。つまり騎手や調教師といった関係者が組織ぐるみで本気になって八百長をやろうとすれば、試みることは可能というわけだ。 「有馬記念の11万人じゃないですけど、さすがに多くの人の注目が集まる中央競馬ではそこまで大胆な八百長はできないと思います。ただ、昔から地方競馬では怪しいレースがたくさんありましたからね。それなりの技量のあるジョッキーならば、弱い馬を勝たせることはできなくても、強い馬を負けさせることはできる。調教師が調教で手を抜くことで、馬に本調子を出させないこともできるでしょうし。そもそも、地方競馬の馬は中央競馬に比べると全体的な能力が低く、ドングリの背比べのような状況で、ジョッキーや調教師の技量が結果に大きく関わってきますからね」(前出記者) 競馬界にはびこる八百長の闇は、想像以上に深いようだ。
このいじめがスゴい! 『聲の形』だけじゃない、壮絶「いじめマンガ」の世界
毎年、年末に宝島社から発売されるムック本「このマンガがすごい!」。ここで1位にランキングされるマンガは事実上、マンガ読みたちにその年最も面白いと評価されているマンガだといえます。 昨年末に発売された「このマンガがすごい!2015」では、オトコ編第1位が『聲(こえ)の形』、オンナ編第1位が『ちーちゃんはちょっと足りない』でした。 『聲の形』は、作品序盤の先天性聴覚障害を持つ女の子、西宮硝子をめぐる壮絶ないじめシーンがかなりインパクトのある作品です。主人公の石田将也やクラスメイトが、硝子が耳につけている補聴器を引きちぎったり、硝子がコミュニケーションを取るために持っている筆談ノートを池に投げ捨てたり……そして、池に沈んだノートをびしょ濡れになって探す硝子のかわいそうな姿。もちろんいじめのシーンだけではなく、その後の硝子と将也の意外な展開や感動的なラストシーンが評価されている作品でもあります。 ところで、衝撃的ないじめのシーンが掲載されているマンガは過去にもいくつか存在しています。今回はそんな「いじめマンガ」をご紹介しましょう。 ■『元気やでっ』(土屋守、次原隆二、山本純二/集英社)『聲の形』(大今良時/講談社)
この作品は、1995年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で掲載された、いじめをテーマとしたマンガです。当時「いじめ」が社会問題になっていたこと、実体験を元に描かれたリアルな内容だったこと、そして何よりも「ジャンプ」というメジャー誌に掲載されたことで多くの少年少女が目にすることになり、“伝説のいじめマンガ”と呼ばれるようになったのです。 舞台は中学校。おとなしそう、逆らわなさそうという理由でクラスメイトの女子グループにパシリにされていた少女、佐伯幸子(さっちん)。そんなさっちんが次第にパシリからいじめに遭うようになり、どんどんエスカレートしていくというもの。パシリといじめって、紙一重ですよね。非常によくありそうな構図です。 お茶にふりかけを入れられたり、上履きを水の入ったバケツに投げ込まれたり、生徒手帳は盗まれていたずら書きをされ、黒板には教師とホテルに行ったなどとあることないこと書かれ、学校を休んだら机の上に花瓶が置かれ……と、まさに王道いじめが炸裂します。 この作品は『わたしのいじめられ日記』(青弓社)という、実際の中学生のいじめの記録を元に描かれたマンガであり、内容の生々しさ、リアルさが読者の胸を締めつけます。生徒のいじめもさることながら、事なかれ主義でいじめを見て見ぬふりをする先生の態度も、いじめ問題の根深さを象徴しています。 作中に出てくる担任・上沼先生が、いじめられているさっちんに冷たく繰り出す「いじめフェイス」は、まさにいじめ界のクイーンといっても過言ではなく、顔面から漂うネガティブさがハンパじゃありません。一見の価値ありです。 ■『ライフ』(すえのぶけいこ/講談社)『元気やでっ』
いじめがテーマのマンガといえば、すえのぶけいこ先生の『ライフ』を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 単行本全20巻、07年に北乃きい主演でドラマ化もされています。 勉強苦手の主人公、椎葉歩(アユム)は親友で秀才の篠塚夕子(しーちゃん)と同じ高校に行きたいために頑張って受験勉強を始めたところ、成績が急上昇。志望校には自分だけ受かって親友のしーちゃんが落ちてしまうという最悪の展開になり、友情関係が崩壊。そのトラウマでリストカットを覚えてしまうという、冒頭からダウナーな展開のマンガです。 受験のトラウマを抱えつつ、孤独な高校生活を送っていた歩に声をかけてくれたクラスの中心的存在、安西愛海(マナ)と親友関係になり、明るい高校生活の兆しが見えてきます。しかし、彼氏命だったマナが彼氏に別れ話を切り出され、ショックで踏切自殺を図ってしまいます。歩によって事なきを得たものの、メンヘラモードに入ってしまったマナを助けようと、マナの彼氏にヨリを戻すように説得する歩。しかし、それが裏目となって、マナに寝取られ疑惑をかけられます。そして、親友だったはずのマナとその仲間グループから壮絶ないじめを受けることになってしまうという、やることなすこと裏目に出まくる女子高生、歩が卑劣ないじめに立ち向かっていくストーリーです。親友だと思っていた友達が、些細なきっかけで突然自分をいじめる敵に回ってしまう、これも人間関係の難しさですよね。 『ライフ』はいじめに立ち向かう少女がテーマのマンガで、女子特有の陰湿ないじめのシーンが、それはもう壮絶です。自殺未遂とかレイプとか、近年少女マンガでマストとなっている展開がしっかり盛り込まれております。 作中に出てくるリストカットシーンの多さが、また驚異的です。落ち込んだ時には迷わずリスカ、ちょっと気分転換にリスカ、三度の飯よりリスカ……。たまにリストカットをしてない時は、コンパスで手首を刺していたりと、とにかく手首がヤバい。思わず、手首をさすりながら読んでしまうマンガです。 ■『ミスミソウ』(押切蓮介/ぶんか社)『ライフ』
今回ご紹介するマンガの中でも、最も精神的にくる、後味の悪さがハンパないダウナー系いじめマンガの最右翼『ミスミソウ』。作者は『ハイスコアガール』でも有名な押切蓮介先生です。押切先生といえば、薄幸の美少女キャラを描かせたら当代一ですから、いじめがテーマのマンガを描くのは、ある意味、必然かもしれません。 主人公の野咲春花は父の転勤の都合で、過疎化が進行して廃校予定の大津馬中学校に転校してきました。しかし閉鎖的な環境で、都会からの転校生を受け入れられないクラスメイトから陰湿ないじめを受けるようになります。さらに、気が弱い担任の先生も生徒に逆らうことができず、学級崩壊状態へ。 初めは家族に心配をかけまいといじめの事実をひた隠しにする春花ですが、次第にエスカレートしていき、ついにはクラスメイトにより家に放火され、家族を失ってしまうという最悪の悲劇が訪れます。もはや、いじめとか言ってるレベルじゃない、超ヘヴィな展開です。 実際のところ、いじめのシーンはストーリー的には前フリ的な感じで、中盤以降は春花による残忍な復讐劇が中心となっており、殺人鬼となった春花無双な展開がメインとなっていきます。マンガのジャンル的にもサイコホラーという扱いなのですが、閉鎖社会におけるいじめ、家族への危害、そして新しいいじめの対象を生み出さなければ自分がいじめられるといういじめの多重構造を描いているという点では、いじめマンガとしても見逃せない部分があります。 ■『イジメをぶっ飛ばせ!!』(もとはしまさひで/共同プレス)『ミスミソウ』
いじめマンガの中でも最も異色といえるマンガが『イジメをぶっ飛ばせ!!』です。『ヤンキー烈風隊』『コンポラ先生』などのヤンキーマンガの大御所、もとはしまさひで先生が社会問題となっているいじめの実態に正面から挑んだ長編描き下ろし作品。97年の作品ですので、『元気やでっ』の2年後ぐらいに描かれています。 主人公の探偵・日乃本正義が、日本のいじめ問題の原因を探り、その解決法を提言するという内容。いじめマンガといえば、いじめられっ子の視点から描かれることが多い中で、異色の内容となっています。で、主人公の探偵・日乃本、ビックリするぐらい愛国心に満ちあふれた名前ですけど、見た目は完全にヤンキー。さすがもとはし先生。探偵だろうがなんだろうが、主人公はリーゼントでキメるのが基本のようです。ただ、どっちかというと、お前はルックス的にいじめてる側じゃないのかっていう……。 ツッパリ探偵がいじめ問題を解決するという設定はものすごくぶっ飛んでる感じがしますが、ストーリーはこういう感じです。日乃本の中学時代の後輩、永作が探偵の依頼に来ます。依頼内容は、息子が学校でいじめられているようなので調査してほしいというもの。そして、いじめの調査をするうちに、実は日本の社会構造がいじめを生み出しているということに気づいていきます。ズバリいじめの最大の原因は、日本の団塊世代にあるという衝撃の結論に! これは予想の斜め上の展開でした。 さらにイギリス、ノルウェー、スウェーデン等、諸外国におけるいじめ問題と日本のいじめ問題の比較、そして日本の教育制度改革に向けての提言。最後にはいじめ問題の舞台となった学校の教頭先生がブチ切れて爆弾発言。 「しつけもできてない……箸も持てないようなガキ供のめんどうを何から何まで見てられるか!!」 教師側の本音をぶちまけるいじめマンガというのも、ほかに類を見ないですね。 主人公のヤンキー探偵も「安心して子供を預けられる公立校を作ればイジメは消えるのです!!」など、要所要所ですごく良いこと言ってるのですが、どうしても、お前が言うな感が拭えないところがシュールです。ヤンキー探偵が力ずくでいじめを解決するマンガかと思っていたら、本格的すぎるいじめ研究・考察が始まって予想の斜め上を行く展開となる、ものすごいマンガです。 ■『いじめ』(五十嵐かおる/小学館)『イジメをぶっ飛ばせ!!』
最後にご紹介するのは、どストレートすぎるタイトルの『いじめ』という少女マンガです。この作品は「ちゃお」(小学館)で不定期連載されているもので、小中学校で起こるさまざまなケースのいじめが1話完結方式でマンガになっています。単行本も現在10冊出ており、『いじめ』の後につけられるサブタイトルがなかなか強烈です。 いじめ~ひとりぼっちの戦い~ いじめ~生き地獄からの脱出~ いじめ~見えない悪意~ いじめ~勇気をください~ いじめ~静かな監獄~ いじめ~叶わない望み~ いじめ~凍りついた教室~ 「生き地獄からの脱出」とか、「静かな監獄」とか……サスペンス映画のタイトルとしてそのまま使えそうなものばかりです。しかし、いじめを受けている本人からしたら、まさしくそのような心境なのでしょう。 『いじめ』シリーズは1話完結のため、実際に起こりそうないろいろなタイプのいじめがマンガとして紹介されていて、まさにいじめ事典といっても過言ではありません。 例えば、いじめられっ子を助けたら今度は自分がいじめられたり、部活でカッコいい先輩(男子)のお気に入りになった途端に部活内で露骨にいじめられたり、クラスメイトに万引きを強要されて拒否したらいじめられたりなどなど……確かに身近にありそうな事例ばかりです。ただしこのマンガは毎回、最後はいじめから立ち直ってハッピーエンドになるアッパー系いじめマンガなので、読後感がいいのが救いです。やっぱり小学生読者が多い「ちゃお」だけに、内容はポジティブじゃないといけないですよね。 また、脱いじめの啓蒙として単行本内にさまざまコラムがあって、これがまた実に必読な感じです。 「万引きは、とっても卑怯な犯罪だよ!」 「万引きに誘われたらはっきりと断ろう!」 など、万引きに誘われた時の断り方などもバッチリ載っています。知らないうちに誰かをいじめているかもしれない読者のための「いじめチェックシート」などもあります。こんなの全国民がやるべきですよね。そのほかにも、悩んでいるときの相談先として政府のいじめ相談ダイヤル、警視庁少年課や弁護士会の電話番号まで載っていて非常に実践的。まさに「本気の脱いじめマンガ」です。 *** というわけで、いじめマンガ特集いかがでしたでしょうか? ダウナー系からアッパー系、さらに斜め上の展開系まで、さまざまなタイプのものがあることが分かりますね。特に「ちゃお」の『いじめ』は、お子さんがいる家庭では、ぜひ読んでおいたほうがいいんじゃないでしょうか。 ちなみに、いじめマンガは連続して一気に読むと精神的にかなりダメージを食らうので、まとめ読みはしないほうがいいと思います。しばらく寝つきが悪くなりますよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『いじめ』
“無敵オヤジ”が今度は追われる身に! リーアム・ニーソン『96時間 レクイエム』
今回取り上げる最新映画は、スタイリッシュな演出とサスペンスに満ちた展開が見どころのアクション娯楽作2本。いずれも人気シリーズの最新作だが、片やリアルなファイトやチェイスにこだわるノンストップ活劇、片や原作グラフィックノベルの世界を実写とデジタル技術で再現した新世代のフィルム・ノワールと、好対照な2作品だ。 1月9日公開の『96時間 レクイエム』は、リュック・ベッソン製作・脚本、リーアム・ニーソン主演のサスペンスアクション『96時間』シリーズの第3作。パリで拉致された娘キムを救出し、イスタンブールで家族の命を狙う犯罪組織を壊滅させた元CIA秘密工作員ブライアン(ニーソン)は、住み慣れたロサンゼルスで平穏な暮らしを取り戻すことを望んでいた。だがその矢先、自宅で元妻レノーアが殺され、容疑者として警察から追われる身に。ブライアンは警部ドッツラー(フォレスト・ウィテカー)らの追跡をかわしつつ、自分を罠にはめた真犯人を探し、再び狙われた娘を守るために奔走する。 監督のオリビエ・メガトンは、第2作『96時間 リベンジ』(2012年)からの続投。前作では主人公が妻と共に拉致され、娘の助けを得て脱出するまで、スピード感で第1作にやや劣るのが難点だったが、今回は序盤から追われる身となり、疾走感が途切れないままサスペンスを盛り上げる。演技派俳優からアクションスターへと変貌し、“無敵オヤジ”が当たり役になったリーアム・ニーソンも還暦を過ぎ、逃走の途中で息切れする演技が生々しくて哀感を誘う。シリーズ最終章と銘打たれた本作、最強パパの最後の暴走をしっかりと見届けたい。 続いて1月10日に封切られる『シン・シティ 復讐の女神』(R15+指定、2D/3D上映)は、フランク・ミラーによるグラフィックノベルを、ミラー自身とロバート・ロドリゲスの共同監督で映画化した『シン・シティ』(05年)の続編。悪徳に満ちた街シン・シティで、愛する者を奪われた踊り子ナンシー(ジェシカ・アルバ)は復讐を胸に秘め、そんな彼女を怪力大男マーヴ(ミッキー・ローク)が見守る。さらにギャンブラーのジョニー(ジョセフ・ゴードン=レビット)、私立探偵ドワイト(ジョシュ・ブローリン)らアウトサイダーたちが、それぞれのやり方で腐敗した権力者に立ち向かう。 モノクロを基調とし、口紅や金髪、血や炎といった鮮烈な色彩を際立たせるユニークな映像スタイルは前作から踏襲。今作では新たに3Dで制作されたことで、奥行きを持って広がる「罪深い街」のダークな空間に、観客自身も迷い込んでしまったかのような没入感を体験できる。脱がないながらも官能的なダンスを披露するジェシカ・アルバと、『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』(14年)に続き脱ぎっぷりのいい悪女役のエバ・グリーン、人気女優の“競艶”も見逃せない。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『96時間 レクイエム』作品情報 <http://eiga.com/movie/81182/> 『シン・シティ 復讐の女神』作品情報 <http://eiga.com/movie/80084/>『96時間』(c)2014 Twentieth Century Fox
生きるか、死ぬか――自給自足で登る、究極の山旅ハウツー本『サバイバル登山入門』
電気やお金、常識、時には社会のルールからも遠く離れ、太陽の角度で時間の流れを読み、風を感じて天気を予想する。食べるものは自分で殺し、食べられるものと食べられないものは舌で味わい分ける。装備に頼らず、食料や燃料を現地調達しながら、登山道には目もくれず、道なき道を旅して歩く―――。それが、登山家・服部文祥氏独自の登山スタイル“サバイバル登山”だ。 『サバイバル登山入門』(デコ)は、そんな“サバイバル登山”のハウツー本である。辞書のような厚みがあるこの本には、1999年からサバイバル登山を始めた服部氏が身につけた独自のノウハウが、これでもかというほど詰め込まれている。中でも注目は、獲る、殺す、解体する、精肉する、料理する、咀嚼して飲み込む、消化するなど、食にまつわるすべてについて書かれた「食べる」の章。 <舌とはうまい、まずいを判断するものではなく、本来は「食べられる/食べられない」を味わいわける器官だといえる。食べられるものはうまい。食べられないものはまずい。舌をそんなシンプルな道具として使いうることは生命体としての喜びである>(本文より) と服部氏は語り、なんでも食べてみる。キノコや山菜に始まり、カミキリムシの幼虫、マムシ、シマヘビ、アオダイショウ、ヒキガエル、たまたま山で見つけた死んだばかりのモグラ……。発見したら、なんとなくおいしそうと感じるものは少し食べてみて、味や体調を観察、体に異変がなかったらもう少し食べてみる。もちろん、狩りもする。例えば、狩猟でよく標的にするというシカ。出現場所を予測し、撃ち、解体し、食べる。その一連の流れが1から10まで、かなり衝撃的な写真とともに、実にわかりやすく説明されている。 服部氏は“殺しの思想”について、こう語る。 <食べるために生き物を獲るというのは興味深い体験であるが、同時に生き物を殺すというのはけっして気持ちのいいことではない。「生きるために殺す」ということには解消できない矛盾がある。私は日ごろ肉を食べているが、そのための「殺し」はしていない。気の進まない殺しを他人に押しつけて、その代価として金銭を払っているということは、結果として殺しを買っていることにほかならないのではないか。今後やましさを感じることなく、肉を食い続けていくには、自分で大型獣を殺すという経験(=狩猟)が必要ではないかと考えたのである> 撃つたびに、自分もいつか死ぬんだなと覚悟しながら狩りに挑む。もはや、服部氏の登山は、生きるか死ぬかなのだ。 普段、登山も滅多にしない私のような者には、正直、理解しがたい部分も多い。だが、<死のリスクがあるからこそ、生きている実感を得ることもできる。登山者は自分の夢を叶えるために死に近づきつつ、死なないように最大限の努力をしている。登山者はだれよりも「生命」にどん欲なのである>など、過剰ともいえる服部氏の独特の思想は、平和ボケした私たちに、「生きる」ということの意味を深く考えるきっかけを与えてくれる。 (文=上浦未来) ●はっとり・ぶんしょう 登山家。作家。山岳雑誌『岳人』編集者。1969年横浜生まれ。94年東京都立大学文学部フランス文学科卒(ワンダーフォーゲル部)。オールラウンドに高いレベルで登山を実践し、96年パキスタンのK2(8,611m)登頂。国内では剱岳八ヶ峰北面、黒部別山東面などに初登攀が数本ある。99年から長期山行に装備と食料を極力持ち込まず、食料を現地調達する「サバイバル登山」を始める。妻と三児と横浜に在住。『サバイバル登山入門』(デコ)
「そんな偶然あるわけねーだろ!」突っ込まずにはいられない、伝説の超ご都合主義ラブコメ『くおん…』
「週刊少年ジャンプ」(集英社)の黄金期といえば諸説ありますが、一般的には1984年に発行部数が400万部を突破してから94年ごろまでといわれています。当時のヒット作の多くは、いわゆるジャンプ三原則といわれる「友情・努力・勝利」の方程式に則ったものが多く、このルールに反する作品は比較的短命になる傾向にありました。 このルールを適用しづらいラブコメは、ジャンプにおいて最も生き残ることが難しいカテゴリーだったのです。『きまぐれオレンジ☆ロード』は、ジャンプのラブコメの中では大ヒット作といえますが、主人公が超能力を使える+ちょっとエッチ、という、ある意味“ジャンプらしいギミック”が際立つラブコメ作品であったこともまた事実です。 そして時は86年。『北斗の拳』『ドラゴンボール』『キャプテン翼』『キン肉マン』『魁!!男塾』『聖闘士星矢』『シティーハンター』といったジャンプの黄金期を彩るモンスター作品が連載陣に並び、定価もまだわずか170円だった頃に、ジャンプ読者のごく一部だけに熱狂的なファンを生むことになる伝説的なラブコメが連載開始されるのです。その名は『くおん...』という作品。『タッチ』『みゆき』のあだち充先生のマンガを思わせるような男子と女子による正統派の三角関係ラブコメで、そこには超能力もバトルもエッチもありません。ジャンプ連載作品の中では、異色の雰囲気を放っておりました。 この『くおん...』ですが、実は11話で終了しており、本来であれば読者の記憶に残らない打ち切りマンガとして扱われるところなのですが、そのあんまりすぎる設定が一部のジャンプ読者にとてつもないインパクトを与えたのです。 <この街には14歳になる二人の“まこと”がいます。ひとりは男の子で久遠真(くおんまこと)、もうひとりは女の子で香瀬麻琴(こうせまこと)。そして奇しくもこの二人はお隣同士で幼なじみ。> ストーリーはこのように始まります。ここまでなら単なる偶然、それほど不自然ではない設定です。あだち充先生のマンガにだって、バンバン出てきそうです。 しかし偶然にも、久遠真は幼いころに母親を亡くしており、父に育てられていました。また香瀬麻琴は幼いころに父親を亡くしているため、母親に育てられていたのです。つまりどちらも親子2人暮らしの生活をしていました。この辺から、確率的には天文学的なことになってきます。 そして死んだお父さんが忘れられない麻琴の悲しいエピソードなどを経て、突然真の父親が麻琴の母親にプロポーズ! 麻琴の母親もそれを受け入れて結婚し てしまったため、2人の「久遠まこと」が一つ屋根の下に誕生したのです。こ、これはなんという偶然! それまでに2人の親同士が付き合っていたような描写は一切なかったので、読者もそれはもうビックリ仰天です。まるで視聴率ひと桁台の月9ドラマのようなダイナミックなショートカットぶり。そして、一気にラブがコメり出すのです。 麻琴は、普段は真を叩いたり殴ったりしてツンデレぶりを発揮していますが、実際は真のことが好きだったのです。一方、真は学園のマドンナ理乃ちゃんに首ったけで、麻琴の気持ちにはまったく気がつきません。そんな悶々とした状況の中で一つ屋根の下の兄妹になってしまい、好きとは言えない関係に……。どうですか、実によくできたラブコメになってきたと思いませんか? 天文学的な確率の偶然は、まだ続きます。久遠家の隣に、ある一家が引っ越してきます。その家のイケメン少年の名は紅御悠矢(くおんゆうや)。これが意味することが分かりますでしょうか? つまり、ほぼ同一エリア内が「くおん」姓だらけになったのです。どこの村社会ですか、ここは。 この悠矢は真と麻琴が通う学校の同級生となります。イケメンであり、なおかつサッカーも天才的にうまく、女子にモテモテの悠矢は、学園のマドンナ理乃ちゃんを口説こうと接近。つまり、真の恋敵としてレギュラー登場するようになるのです。いやぁ、実にラブがコメッてますねえ……。 この三角関係は理乃ちゃんと真の両想いにより決着するのですが、敗れたイケメン悠矢は、今度は麻琴にちょっかいを出し始め、“自分の妹に、何ちょっかい出してんだ”と心配する真が、次第に麻琴の気持ちに気づいていくという……抜け出せない泥沼のような展開となっていきます。春風のように爽やかな絵柄で、昼ドラのような複雑な人間関係、度重なる天文学的な偶然、加えてほんのちょっとの思い出補正……これらの要素が奇跡的な融合を果たし、知る人ぞ知る伝説のラブコメへと昇華した作品、それが『くおん…』なのです。 ちなみに『くおん…』は、川島博幸先生の名義で出している初期の単行本全2巻と、鷹城冴貴と改名した後の愛蔵版の2種類が存在しますが、川島先生名義の単行本1巻の表紙に描かれている女の子(たぶん麻琴)がボブ・マーリーを凌駕する勢いの毛髪量でものすごいインパクトがあります。これだけでも一見の価値ありですよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『くおん...1』
















