理解できたらヤバい!? 『東京都北区赤羽』清野とおるが描く、狂気の創作『ガードレールと少女』

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『ガードレールと少女 清野とおるマンガ短変集』(彩図社)
 みなさんは『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン)、そしてその続編『ウヒョッ!東京都北区赤羽』(双葉社)という作品をご存じでしょうか? 僕はこの一連の作品を読んだ時、「赤羽! そういうのもあるのか!!」と、まるで初めて『孤独のグルメ』(扶桑社)を読んだ時と同じような衝撃を受け、それ以来すっかり北区赤羽シリーズの虜になっています。  『東京都北区赤羽』および『ウヒョッ!東京都北区赤羽』は、東京の人以外あまりなじみのない、そして東京の人でも誰もが知ってるというほどの知名度でもない「赤羽」という土地にスポットを当て、赤羽に出てくる変な人や変な店、変なスポットなどを清野とおる先生が面白おかしく紹介しているノンフィクション・エッセイマンガです。もともとカルト的な人気を誇っていた作品ですが、今年1月、山田孝之さん主演のドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)が放送されたことで、いよいよメインストリームに進出してきた感があります。赤羽の地価にもさぞや影響を与えていることでしょう。  ところで、作者の清野先生は、かつてこの日刊サイゾーでも「キ○チ○ガ○イと呼ばないで」という、やたらウ○コの話が出てくる文字通りキチxxな連載をされておりました。これがまためちゃくちゃ面白いコラムで、赤羽に限らずあらゆるノンフィクションな題材を面白く仕上げることができる天賦の才を発揮しています。  しかし『東京都北区赤羽』シリーズをはじめ、『Love & Peace~清野とおるのフツウの日々~』『清野とおるのデス散歩』(共に白泉社)などの一連の清野作品を読んでいて、常に感じていたのは、一見おバカなギャグの中に、ある種の狂気ともいえる、読んでいて背筋がゾクゾクとする「何か」が見え隠れしていることでした。  その清野先生の見え隠れしていた「狂気」の部分を凝縮した作品といえるのが、『ガードレールと少女 清野とおるマンガ短変集』(彩図社)です。この単行本は『東京都北区赤羽』のようなノンフィクションではなく完全なる創作マンガ集で、清野先生が描くかわいらしい画の上に、まったく理解不能なナンセンスギャグと、失禁しそうなほどの狂気が惜しみなく散りばめられており、ほとんどの読者が置いてけぼりにされる「読み手を試しているマンガ」と言えるでしょう。  この『ガードレールと少女』がいかに狂気に満ちているか、その内容を一部ご紹介しましょう(※ネタバレあり)。 ・「ま」  道路に書かれている「止まれ」の「ま」の部分だけを盗んで食べる女子高生の話。「ま」だけでなくカタカナの「止マレ」の「マ」を盗んで食べてみたら、あまりのおいしさにハマってしまい、日本中にあるすべての「止マレ」の「マ」を盗みつくすようになる。……ちょっと何言ってんだかわからないと思いますが、本当にこういう内容のマンガなのです。 ・「曲がれない男」  就職活動中に曲がり角を曲がったらカッパに火をふかれて全身火傷し、髪もアフロのようになってしまったトラウマで、曲がり角が怖くて曲がれなくなった男の話。男のお母さんが息子のトラウマを解消しようと、曲がり角に全裸の美女を設置。電信柱でポールダンスをしながら美女が男にこう語りかけるのです。「SHALL WE SEX?」…ちょっと何言ってんだかわからないと思いますが、本当にこういう内容のマンガなのです。 ・「ロフトの上の人」  賃貸の1LDKマンションを契約してみたら、LDKの「D(ダイニング)」がない物件だった。詐欺じゃないか、騙された! と怒る男。よく見ると、部屋のロフトの上に誰かいる……その男は、実はドッペルゲンガー(もうひとりの自分)だった。なーんだ、LDKの「D」ってドッペルゲンガーのことだったんだ!……ちょっと何言ってんだかわからないと思いますが、本当にこういう内容のマンガなのです。 ・「私のケサランパサラン」  友達の幸代に、手に入れると願いがかなうケサランパサランの都市伝説を教えてもらった由美子。偶然、ケサランパサランを手に入れ、憧れの「先輩と仲良くなれますように」と願う。そして、トラックにはねられそうになったところを憧れの先輩に助けてもらい、急激に2人の仲は親密に……ケサランパサランの噂は本当だったんだ! ・「地獄のケサランパサラン」  ケサランパサランによって由美子と先輩が仲良くなるのを、物陰から見ていた幸代。憧れていた先輩を由美子に奪われ、怒り狂った幸代はケサランパサランにお願いします。「由美子に恐怖を与えたまえ!!!」すると、ケサランパサランはドス黒く変色。黒くてフサフサの謎のバケモノが由美子に襲いかかる……ちょっと何言ってんだかわからないと思いますが、本当にこういう二部構成のマンガなのです。 ・「富士子」  道路を走るカップルの車。道には「危ない!!!子供の飛び出しには注意しましょう。」の看板が。と同時にライフルで武装した小学生ギャングたちが現れ、カップルの車を襲い、男はボコボコに、女はさらわれてしまいます。そう、看板の本当の意味は「『危ない子供』の飛び出しには注意しましょう」だったのでした。ちなみにさらわれた女の名前が富士子です。……ちょっと何言ってんだかわからないと思いますが、本当にこういうマンガなのです。 ・『ガードレールと少女』 少女の家は急な曲がり角の先にあるため、車がしょっちゅう家に突っ込んでくる。家の前に設けられたガードレールはその度に家や命を守ってくれた。父親が浮気をして母が家を飛び出した時も、母がガードレールにつまずいて転んだおかげで家出にならず、夫婦仲が修復された。そんな数々の恩があるガードレールが、度重なるダメージと老朽化で壊れる寸前に……。  今度は私がガードレールをガードする番! そして、少女はガードレールに突っ込んでくるバイクや車や大型バスや脱線した新幹線からガードレールを守るのだった。……ちょっと何言ってんだかわからないと思いますが、本当にこういうマンガなのです。  ちなみに対談企画も収録されており、『東京都北区赤羽』でも登場するコワモテおじさん、ジョージさんとの対談では、ジョージさんがグウの音も出ないレベルの的確な指摘をします。 「こりゃ駄目だな。売れる要素がねえ」 「まず絵がダメだ。薄気味悪くてとっつきにくい。それに何より、話の意味がサッパリ分からねえ。こういうジャンルを不条理っていうのかもしんねえけど、不条理は博打みてえなもんだな。一部のマニアが喜ぶだけで、大衆ウケなんてまずしねえ。売れたきゃこの作風から足を洗え」  はい……メチャクチャ正論です。ただしフォローさせていただくなら、大衆ウケしないというだけで、清野とおる流の高品質なナンセンスギャグがてんこ盛り。分かる人には分かる(ただし分からない人には一生分からない)そういう読者を選ぶ作品がこの『ガードレールと少女』なのです。僕は好きですこの作品集。自分が相当オカシイだけなのかもしれないけど。  ……で、偶然にもそんな『ガードレールと少女』の清野先生の表紙イラストで、偶然にも『ガードレールと少女』を出版した彩図社から、僕のマンガコラム本「このマンガ恐るべし…!!」が4月28日に発売されるのです。……ちょっと何言ってんだかわからない、とかスルーせず、書店で見かけた際には手にとっていただけますよう、よろしくお願いいたします! (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

話題のネット発アニメ『ニンジャスレイヤー』斜め上をゆく演出に、視聴者置いてけぼり

ヲタ系ITライターと日刊サイゾー新米編集者が、ここ最近、ネットで話題になったいろいろな出来事について語るコーナーです。
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■女性の胸を魅力的に見せる神アイテム「例の紐」にネット民大興奮 Dr.T 4月上旬のネットの話題だと、電王戦が衝撃的な終わり方をしたとか、人気ラノベ作家に脱税疑惑とか、シリアスなものもあるんだけど、やっぱりトップに選ぶなら「例の紐」しかないと思うんだよね! アキ 例の紐……? Dr.T 女性の胸を魅力的に見せるための神アイテムだよ! アキ えっ、そんな神アイテムが発売されたんですか!? どこのメーカーから? Dr.T あ、いや、「例の紐」は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』っていう今期のアニメに登場する、ヘスティア様が身につけている紐だよ(http://danmachi.com/)。 アキ ……。 Dr.T あっ、あからさまに軽蔑のまなざし! アキ いや、そういうわけじゃないんですけど……なーんだ、現実のアイテムじゃないんですね。 Dr.T まぁそうなんだけど、これはかなりの発明だと思うんだよ! って、女性のアキちゃんに力説するのもどうかと思うんだけど……ちょっと公式サイトからキャラクター紹介のヘスティア様を見てみて! ほら、二の腕から背中、さらに胸をぐるっと青い紐で覆っているでしょ? これが「例の紐」だよ! アキ え、これだけ……? Dr.T そう! これだけのことなのに、ロリ巨乳であるヘスティア様の胸が強調されているんだ! もともとネットでは、こういうアニメ絵で胸が非現実的に持ち上がった通称「乳袋」っていう表現方法が用いられてたんだけど、この「例の紐」が入るだけでグッとリアリティが増すと思わない? アキ そ、そうかなぁ……? Dr.T さらに、紐が二の腕まで巻かれているところがポイントで、腕の動きに連動して胸が動くんだよ! 単に胸を強調するだけなら体に巻けばいいんだけど、わざわざ腕にまで回すことで連動させているわけ。まさに天才の仕事……! アキ 今日はいつにもまして口数が多いですけど、正直キモいです。 Dr.T や、やっぱり女性には伝わらないのか……。 アキ いや、なんとなく例の紐の魅力はわかったんですけど、Dr.Tの、子どものような邪気のない瞳がキモイ。 Dr.T 個人攻撃かよ! でもこの例の紐、本当にめちゃくちゃブレイクしてるんだ。コスプレ業界でも注目が集まっているんだけど、案外リアルに再現するのが難しくて、みんな試行錯誤しているみたい。よりリアリティを出すための紐の位置を真剣に研究している人もいて(http://togetter.com/li/805884)、これが集合知だよな~と感心したね! アキ ……なんか集合知の使い方、激しくあさっての方向にズレている気がしますけどね…… ■ネットで話題の『ニンジャスレイヤー』がアニメ化されるも、斜め上を行く演出にファン呆然
Dr.T 同じくアニメの話題なんだけど、こっちはなんていうか……またちょっと違った方向で話題になってしまったアニメの話だよ。 アキ 炎上ですか? 炎上ですか? Dr.T ワクワクした顔、やめてくれるかな。炎上ってわけじゃないんだけど、ファンの期待を裏切ったという意味ではそうなるのかな。あ、いや、ある意味では、期待に応えたとも言えなくも……。 アキ なんなんですか! はっきりしないですね! そんなだから、締め切りも守れないんですよ! Dr.T 締め切り関係なくない!? ……ともかく、第1話が公式でニコニコ動画に投稿されているから、そっちをまずは見てほしいな。そうすればきっとわかるはず(http://www.nicovideo.jp/watch/1429172532)。 ~15分後~ アキ ……なんですかね……このアニメは……。 Dr.T ね! そんな反応になるでしょ!? 『ニンジャスレイヤー』は、もともとアメリカ人の二人の作者が発表したサイバーパンク小説で、「ニンジャ」に恨みを持つフジキド・ケンジが自らもニンジャとなり、悪の組織「ソウカイ・シンジゲート」と戦う物語だよ。 アキ なんかもう、名前や世界観からしてうさんくさいですね。アメリカ人が誤解しまくった日本というか。 Dr.T まさにその世界観が日本人にウケて、大勢のファンを獲得しているんだ。ネットから人気に火がついて、有志が翻訳したり、エンターブレインから書籍化されたりと出世街道を上って、ついにアニメ化までしてしまったというわけ。でも、もともとがこういう雰囲気のお話だから、アニメにするのは難しかったと思うんだよね。 アキ 確かに、これをシリアスにアニメ化するのも何か違う気がしますし、かといって、ギャグにしてしまうわけにもいかないし……難しいですね。 Dr.T で、考えた挙げ句、バトルシーンは本気で描いて、それ以外はフラッシュアニメで紙芝居にしてしまうという手法をとったんだろうね。これはこれで面白いし、原作のシュールさをある意味表していると思うんだけど、やっぱりついていけない人もいたみたい。特に、原作を知らずにアニメから入ってしまった人はね。 アキ 確かに『ニンジャスレイヤー』ってタイトルもかっこいいですし、普通にシリアスなアニメを期待して見て、紙芝居が流れたら驚きますよね。 Dr.T 実際、ニコニコ生放送終了後のアンケートでも約半数が番組の感想として「悪い」を選ぶという異常事態になったんだけど、これは賛否両論ということでもあるから、制作サイドとしてはしてやったりなんじゃないかな。『ニンジャスレイヤー』で「無難だ」って思われるほうが失敗なんだよと思う。 アキ 1話になんとかついてきた人たちが、2話以降でどうなるか楽しみですね! ふふふ。 Dr.T なんて邪悪なほほえみ……! ■レモンジーナ公式を騙ったTwitterアカウントに騙される人続出!
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Dr.T Twitterはよくバカッターなんて言われているけど、またリテラシーを試されそうな案件が出てきたよ。アキちゃんは、レモンジーナ知ってる? アキ オランジーナの姉妹品みたいな飲み物ですよね。売れすぎて一時販売休止になっているけど、実際にはお店に在庫が余りまくっているっていうウワサの……。 Dr.T それそれ。ネットでは「土の味がする」なんて不名誉な感想が出回って話題になってしまったよね(笑)。でも、今回はレモンジーナの売行きを問題にしたいんじゃなくて、そんなレモンジーナの知名度に乗っかって、公式アカウントを騙ったユーザーの話だよ。問題のユーザーは@mukuouといって、アカウントからわかる通り、レモンジーナとは何の関係もない単なるTwitterユーザー。このユーザーがあるとき、「レモンジーナ公式」という名前にプロフィールを変更して、レモンジーナの公式アカウントを騙ったつぶやきを始めたんだ(https://twitter.com/mukuou)。 アキ 企業の公式アカウントを騙ったんですか? そんなの、すぐバレるんじゃ……。 Dr.T ところが、信じてしまう人が続出したんだよね。画像もレモンジーナの公式のものを無断で使って、プロフィールも「レモンジーナ公式アカウント」と堂々と書いていたから、よく見ないと確かに騙されそうになるのかも。ただ、公式であることを示すTwitterの認証バッジがついていなかったり、プロフィールを詳しく見ると、「無垢王」という名前のユーザーのものが出てきたりと、騙るにしてもお粗末なものだったみたい。 アキ ネットに詳しい人ならすぐにわかる程度の騙りだったわけですね。で、このユーザーは何をつぶやいていたんですか? Dr.T たとえば「一番最初に「レモンジーナは土の味がする」と言った奴を見つけるまで私は諦めない」みたいな感じで、最近の企業アカウントにありがちな、ちょっとハジけたおもしろ公式アカウントになりきってツイートしていたみたい。ただし、次第に公式ではないことが広まってくると、「レモンジーナbot」に名前を切り替えてごまかしていたけどね。 アキ 逃げ方が最高にダサいですね……。 Dr.T まぁ、この人自体は承認欲求を変な形でこじらせてしまっただけのよくいるタイプのかまってちゃんなんだろうけど、問題はこれにあっさりと騙された人だよね。確かに信じてしまいそうになる要素はあるんだけど、ちょっと調べればわかるわけだから、ある意味、リテラシーを確かめるいいテスト材料だったんじゃないかな。 アキ うーん、単にリツイートなんかで回ってきただけだと、信じちゃうかもですね……。Dr.Tは大丈夫だったんですか? Dr.T もちろんだよ! 僕は誰のことも信じず孤独に生きる男だから……。 アキ Dr.Tがこじらせていたのは、中二病でしたね! (構成=Dr.T)

オスカー獲り損ねたマイケル・キートンの名演が光る!『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

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(C)2014 Twentieth Century Fox
 今週取り上げる最新映画は、ブロードウェイ舞台で再起を図る落ち目の映画俳優の苦闘を虚実織り交ぜた映像で描くアカデミー賞4部門受賞作と、中学生が前代未聞の学校内裁判を敢行する話題作の後編。どちらも興味深いテーマに、見応え十分の演技、緻密な演出が相まって、別格の観賞体験をもたらしてくれる充実作だ。  『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(公開中)は、『バベル』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督がマイケル・キートン主演で描くシニカルなコメディドラマ。かつてスーパーヒーロー映画『バードマン』の主役で人気を博しながらも、いまやすっかり落ち目の俳優リーガン(キートン)は、自ら資金を投じたブロードウェイの舞台で再起を図る。レイモンド・カーバーの短編小説『愛について語るときに我々の語ること』を脚色し演出も主演も兼ねて、稽古も大詰めというとき、共演者が大ケガをして降板。代役に迎えたマイク(エドワード・ノートン)の卓越した才能におびやかされ、リーガンは精神的に追い詰められていく。  フィクションではあれど、演劇界と映画界の実情を皮肉たっぷりに描く内幕物。『バットマン』(1989年)で主演し、近年ぱっとしなかったキートンが本作の主役を演じることが、虚構と現実の境界をあいまいにする最初の「装置」として機能している。凝った編集により全編が長回しに見えるリーガンの主観的映像で、現実世界に妄想がシームレスに描き込まれ、主人公の内面の混迷と高揚を観客にリアルタイムで体験させる仕掛けだ。ザック・ガリフィアナキス、エマ・ストーンらを交えたアンサンブルも見応えあり。今年の第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞を含む4部門を受賞。映画ファンなら必見の傑作で、今後の映像作品に大きな影響を与えるであろう刺激と創造性に満ちた1本だ。  『ソロモンの偽証 後篇・裁判』(4月11日公開)は、宮部みゆきの長編ミステリー『ソロモンの偽証』を、『八日目の蝉』の成島出監督が映画化した2部作の後編。男子生徒・卓也の死から続く事件と騒動に揺れる城東第三中学校で、生徒たちの手で真相を解明することを目指す学校内裁判が始まる。校内裁判を提案した涼子は検事として、告発状で卓也殺害の嫌疑をかけられた被告・俊次の有罪を立証しようとする。一方、卓也の友人という他校生・和彦は俊次の弁護人となり、涼子と対峙。参考人たちの証言から、それまで警察やマスコミの調べでは分からなかった真相が徐々に浮かび上がる。  『前篇・事件』では、校内裁判がスタートする前に「おあずけ」状態で終わってしまったが、ようやく“メインイベント”が開始。いざふたを開けてみると、期待を超えるスリリングな応酬と衝撃の展開に引き込まれる。役名と同じ芸名で女優デビューを飾った藤野涼子が、前編に続き新人とは思えない安定した演技で論戦を主導。ハマリすぎなほどぴったりな「涼子」役のイメージを、今後の出演作で払拭し成長できるかも含め、将来の活躍が楽しみな逸材だ。生徒たちの裁判が現実の法廷を模しているように、学校内のいじめもまた大人社会の人間関係を写す鏡であることを、あらためて突きつける意図も見逃せない。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』作品情報 <http://eiga.com/movie/81227/> 『ソロモンの偽証 後篇・裁判』作品情報 <http://eiga.com/movie/79922/>

こんな刑事はイヤだ!! 恐るべき方法で事件を解決する「特殊スキル刑事マンガ」特集

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 『めしばな刑事タチバナ』というマンガをご存じでしょうか? 立ち食いそば・マイナー牛丼チェーン・カップ焼きそば・ポテトチップス等のB級グルメに異常なこだわりとウンチクを持つタチバナ刑事が、取り調べで容疑者に対し、ガチな「めしばな」をしてB級グルメワールドに引き込み、気がついたら容疑者が自白してしまっているというマンガです。手荒な取り調べはせずに、ほんわかムードで事件が解決します。  世間にはグルメマンガとして認識されている作品ですが、刑事マンガの観点で見ると、これほど異例な存在はありません。実は、今回はこういった一風変わった能力で事件を解決する、特殊スキルを持つ刑事マンガをご紹介したいと思います。  特殊スキル刑事マンガの起源は、『スケバン刑事』にさかのぼります。初代・斉藤由貴、二代目・南野陽子、三代目・浅香唯、四代目・松浦亜弥と、まるで歌舞伎役者のごとく「麻宮サキ」のコードネームを襲名させるドラマシリーズが有名ですが、実のところ原作は「花とゆめ」(白泉社)に連載されていた少女マンガです。「スケバン」+「刑事」という意外性がありすぎるキーワードの組み合わせ、「刑事」と書いて当然のように「デカ」と読ませる語呂のセンスの良さ。銃の代わりにヨーヨーを武器として使うという意味不明なこだわり、あらゆる要素が奇跡的に絡み合った、まさに元祖特殊スキル刑事マンガといえましょう。  では、そのほかに、いったいどんな特殊スキルを持った刑事がいるのでしょうか?  ■『占い刑事』(著:桑沢篤夫/ヤングジャンプコミックス)
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 その名の通り、占い師兼刑事の男が主人公のマンガで、易学の知識で難事件をバンバン解決します。主人公・城戸我宝(きどがほう)は、警察署内にいる時も易者スタイル。誰が見ても、一目で占い師とわかります。むしろ、刑事だとわかる要素はゼロです。  張り込みの際には趣味と実益を兼ねて、町の占い師に扮して張り込みます。しかも、よく当たるという評判で、行列までできてしまいます。もはや、張り込みどころではありません。  取り調べでは、容疑者への聴取そっちのけでいきなり四柱推命占いを開始。続いて姓名判断で画数判断、そして手相……と占いのフルコース。どうやら容疑者の今日の運勢は、最悪の模様です。そりゃそうだろ、捕まって取り調べ受けてるんだから。  次々と容疑者に繰り出される占いがこどごとく的中するため、容疑者のメンタルがかなり揺さぶられます。最後に人相占いをしたところ、女運も最悪でした。ついに観念した容疑者は、女性関係のトラブルが元で金銭を奪ったことを自白してしまうのです。……これこそが、占い刑事の取り調べ術。威圧的な態度も取らず、暴力も使わず……それどころか、証拠さえも必要ありません。ただ占うだけで容疑者を落としてしまうこの能力、まさにスーパー刑事ですね。 ■『キッテデカ』(著:寺沢大介/ビッグコミックス)
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 これまた文字通り、切手マニアな刑事のマンガです。主人公・前島郵雅(まえじまゆうが)は、署内ではいつも切手のコレクションを眺めているだけのグーダラ刑事ですが、切手はもとより郵便に関する知識がものすごく、証拠品で切手や郵便物が押収されると、それを手がかりにほぼ100%難事件を解決してしまうという、特殊スキルを持った刑事です。  ……いやいや、切手が絡んだ事件なんて、そうそう都合よく発生するわけないだろ! と思う方もいるかもしれませんが、これが大変不思議なことに、ストーリー上の不自然さはまったくなく、頻繁に切手絡みの事件が発生するのです。マンガの世界を甘く見てはいけません。 <事例1>  連続窃盗団が盗んだ盗品の中に、1枚の手紙がありました。手紙に貼ってあった切手は、高価な「見返り美人」。この切手を手がかりに、キッテデカが全国の切手商ネットワークへ連絡。「見返り美人」を切手商に売りに来た人間を指名手配し、まんまと窃盗団を芋づる式に逮捕します。 <事例2>  新宿区で身元不明の老人の誘拐され、老人の物とみられるプレミア切手「月に雁」を綴じたアクセサリーが発見されました。この「月に雁」切手の消印日が特殊であったことから、キッテデカがその切手の消印を押した西新宿の郵便局員に聞き込みを行ったところ、老人の身元が判明。その老人を脅していた地上げ屋の強制捜査で、見事老人は救出されたのでした。  そんな感じの、どう考えても普通の人では分かりかねるディープな郵便知識を駆使し、毎回、難事件をバリバリ解決。しかもその過程で…… 「歴代の前島密1円切手の見分け方」 「切手の印刷時に異物が付着して汚れた状態で印刷されたエラー切手を“定常変種”と呼ぶ」「切手の裏糊はポリビニールアルコール製で、微かに甘味があり、身体には無害」  などなど、刑事マンガを読んでいると思ったら、いつの間にか興味のない人にはまったくどうでもいい、切手についてのマニアックなウンチクが身についてしまうという恐るべき作品です。 ■『胸キュン刑事』(著:遠山光/少年マガジンコミックス)
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 作者は遠山光先生です。遠山光先生の代表作といえば、ほかにも『ハートキャッチいずみちゃん』があります。どちらも少年マンガの枠の中でエロ表現のチキンレースを行う、いわゆる「寸止めエッチマンガ」で、多くの小中学生たちをイライラムラムラさせてきました。  主人公は音羽署捜査一課に配属された新人女刑事「皇くるみ」(すめらぎくるみ)です。くるみが生まれつき自分に備わっているある超能力を駆使して難事件を解決していくというストーリーなのですが、その超能力がスゴいのです。  なんと、犯罪者が近くにいると、乳首がピーンと反応するのです。しかも的中率は100%、警察犬よりも優秀です。つまり、もうお分かりですね……? 犯人を見つけると胸の乳首がピーンと立つから、『胸キュン刑事』なのです!  ストーリーの定番は、容疑者に「胸キュン」したくるみが、おとり捜査を敢行。色仕掛けで容疑者に接触し、犯罪のしっぽをつかみます。ところが、途中でおとり捜査がバレて、くるみは拉致。服を脱がされ、“このままじゃ、ヤラれちゃう!”というところで張り込んでいた同僚の刑事が乗り込み、犯人を現行犯逮捕。一件落着、めでたしめでたし。  一方で、くるみが脱がされるシーンでムラムラさせられた挙げ句、寸止めを食らった小中学生読者は全然めでたくない。というのが、毎回のお約束となっています。 ■『大相撲刑事』(著:ガチョン太朗/ジャンプコミックス)
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 こちらもタイトルがそのまま内容を物語っていますが、相撲取りの格好をした刑事が主人公のマンガです。本作品は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載され、そのあまりにブッ飛んだ設定と、インパクトの強すぎる絵柄と、常に滑り気味のギャグセンスで、10週打ち切りとなりながらも、多くのジャンプ読者に「伝説の打ち切りマンガ」と評されました。打ち切りになってなお人々の記憶に残る、ある意味で稀有なマンガです。  主人公「大関」の経歴は元FBI捜査官という輝かしいものですが、普段からチョンマゲにまわし一丁の姿という、刑事のくせにいつ職務質問されてもおかしくない姿をしています。さらに、なぜ普段から力士の格好をしているかについては一切説明がありません。  短気で、破天荒かつ感情的であり、バイオレンス。国際線のファーストクラスに土俵を持ち込んで座ったり、取り調べ時の食事でチャンコを頼まなかった犯人にブチ切れたり(普通、頼まないだろ……)、犯人を張り手でブッ叩こうとして、勢い余って警察署の壁を張り手で破壊するという、北斗の拳のラオウも真っ青の壁ドンの威力を持ちます。  どんな凶悪犯罪でも相撲の力技で解決してしまう凄腕刑事なのですが、このマンガでは悪党を改心させるためのお約束のネタがあります。 「明日までにレポート300枚書いてこい! タイトルは、エレキギターと鼻毛切りについてだ!!」 「え、それを書くと罪が軽くなるんスか?」 「ならん!!!」  これが、大相撲刑事の定番ギャグです。悪党に無茶なテーマと無茶な枚数のレポートを課し、でもそれをやったところで一切メリットはないという……。ちなみに、ほかのレポートのテーマも「木工用ボンドと登校拒否について」とか「アイドルと北方領土」とか、ひどいのばかりです。 ■『ちんぽ刑事』(著:丘咲賢作/アッパーズKC)
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 文字通り、ちんぽがデカい刑事が主人公のマンガ。内容はないに等しく、「ちんぽデカッ!」って言いだけのギャグマンガです。 ***  というわけで、後半に行くに従って特殊スキルでもなんでもなかった気もするわけですが、とにかく刑事マンガはあまりに作品数が多すぎて、もはや平凡な設定の刑事マンガでは目立つことができません。エッジの立ったキャラクターの刑事が登場しなければ、差別化できない状況となっているのです。  きっと今後も、より過激で誰も思いもつかないような特殊スキルを持った刑事が登場することになるのでしょうね。ちなみに最近は、未読の『ボディコン刑事』『火星人刑事』あたりがどんな作品なのか気になってます。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

30~80円なんてザラ!? 大阪「激安自販機」で一番安く売られている飲料はアレだった!

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 東京から大阪に引っ越してみると、飲み物の自動販売機の価格が軒並み安くて驚いた。  我が家の近所では100円の自販機が主流で、120円以上の正規価格の販売機を探すほうが困難なほどである。何から何まで安い大阪だが、自販機価格も例外ではない。  今回は大阪市内をめぐって、激安ドリンクの実態について調査してみた。  まず避けて通れないのが、「またおいでや」というキャッチフレーズが印象的な、冒頭の自販機だ。この自販機、大阪では駅周辺などにポツポツと設置してあり、そのどれも大抵30~80円ほどでドリンクを買うことができる。  「FIRE」「UCC」「WONDA」など、ちゃんとした、メーカーの缶コーヒーが60円や70円で、
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 50円のコーヒー、「三ツ矢サイダー」も。
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 この「おいしさ倍返し!」といったような、誰に向けているのか分からないハイテンションなギャグも、「またおいでや」自販機の特徴である。  取材時にふらっと見つけたこの自販機だが、30円で485gという容量のペットボトル飲料が売られていた。
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 伊藤園の「やわらかフローズンレモン」だ。早速購入して飲んでみたが、暑い日の水分補給によさそうな、おいしいレモンウォーターであった。消費期限が取材日の20日後ぐらいで、その短さが激安価格のネックになっているようだ。とはいえ、買ってすぐ飲む分には、当然なんの問題もない。  次に別のエリアで見つけたのは、「おいなはれ」と書かれた自販機。
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 先ほど30円で購入したのと同じドリンクが同じ価格で売られていたり、商品のラインアップもほぼ同じで、どうも大元は同じ業者だと思われる。 「トロピカーナ」の炭酸飲料や「スコール」のペットボトル入りが50円で売られていて魅力的だが、ここはやはり20円の「伊藤園 野菜スープ ミネストローネ」を!
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 安すぎる……。早速飲んでみると、ちょっとぬるめかなという気はしたが、普通においしい。消費期限は3カ月も先で、まあこれから暖かくなるから季節外れの商品ではあるのだろうが、「何も20円じゃなくても!」と思いつつ、ありがたくいただいた。  20円のドリンクを飲んでぼーっとしていたら、カップルが近くを通った。男性のほうが自販機を見て「ちょっと! これ50円とかあるで! すごない?」と声を上げたが、女性は冷めた口調で「こんなん、西成行ったらいくらでもあんで」と返答していて、さすが大阪だと思った。  さあ、30円、20円ときたら、10円ドリンクを目指すしかない!  というわけでやってきたのがJR環状線・野田駅近くにある「大阪市中央卸売市場」前。こちらは「またおいでや」自販機の最安バージョンが置かれていることで有名なのだ。  これが、その10円自販機。
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 2台置かれていて、どちらも缶のサンプル見本などはなく、「何がでるかお楽しみ!!」とだけ書いてある。おそるおそる10円を入れてボタンを押してみると
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 伊藤園の「レモングラスティー」が出てきた。消費期限は4月7日。取材日の5日後だ。かなり近いが、まあどうせ今飲むし!
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 試しに隣の10円販売機で購入してみると、アサヒ飲料の「クールブレイク」が。こちらもレモンウォーター系のドリンクだ。こういうジャンルの飲み物、大量に売れ残っているのか? ちなみに、左右の自販機ともさらに1本ずつ購入してみたが、それぞれ同じ飲料が出てきた。中身はそれぞれ一種類の様子。4本のペットボトルを購入して40円。これはすごい。
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 私が自販機の前に佇んでいる間、自転車に乗った高校生が買いに来て「あ!この前のと中身違う!」と笑って去って行ったり、中年男性2人が連れ立ってやってきて「これ、おごります」といって10円で恩を着せて行ったりした。近所の名物スポットになっているようだ。  自販機の前にはドリンクの在庫を積んだワゴンカーが停まっており、作業をしている人がいたので声をかけてみると、10円自販機の中身は割と頻繁に変わるらしい。時期をおいて、また来てみよう。  賞味期限間近や、季節外れの見切り商品だからこその激安価格。どうせ廃棄するなら、わずかな額でも元を取ろうとする、大阪人の商売根性を見た気がした! (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/

「Iターンドラマ」ブーム来たる!? 松尾スズキ×松田龍平『ジヌよさらば かむろば村へ』

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(C)2015 いがらしみきお・小学館/『ジヌよさらば~かむろば村へ~』製作委員会
 今週取り上げる最新映画は、演劇・映画・テレビとマルチに活躍する松尾スズキの監督作品と、10代の新進女優2人が映画初主演を飾るフレッシュな感動作(いずれも4月4日公開)。東京で挫折を経験した主人公が地方の村で再起を図るのが共通点で、くしくも今週始まったNHK朝ドラ『まれ』も、東京で自己破産した主人公一家が能登で生活を立て直す話。この春、ちょっとした「Iターンドラマ」のブームが来ているのかも!?  『ジヌよさらば かむろば村へ』は、いがらしみきおの人気コミック『かむろば村へ』(小学館刊)を原作に、松尾スズキ監督、松田龍平主演で実写化したコメディ。銀行員時代の過酷な体験が原因で「お金恐怖症」になり、東京から東北の寒村・かむろば村に移住した武晴(松田)は、お金を1円も使わない自給自足の生活を始める。無謀で頼りない武晴だが、異常に世話好きな村長(阿部サダヲ)とその美人妻(松たか子)、自他ともに認める村の「神様」(西田敏行)ら濃すぎる村人たちに助けられ、少しずつ村の暮らしに慣れてゆく。しかし、ヤクザの青木(荒川良々)が、女子高生・青葉(二階堂ふみ)に武晴を誘惑させて金を脅し取ろうと画策したことがきっかけとなり、村全体を揺るがす大騒動に発展する。  松尾監督と松田のタッグは2004年の『恋の門』以来。松尾が主宰する劇団・大人計画の俳優陣(阿部、荒川のほかにも村杉蝉之介、伊勢志摩、皆川猿時など)が醸し出す独特の「松尾ワールド」に、松田のボケ味が相性抜群だ。のどかな山間の村を背景に、役人や政治家やヤクザも入り乱れるやたら人間くさいドタバタと、神がかりでファンタジックなエピソードが絶妙に混じり合う。タイトルの「ジヌ」は、東北の方言で「銭」の意味。高齢化、過疎化が進む地方の農村を舞台に、Iターン、断捨離、ダウンサイジングといった現代的な要素を盛り込み、たたみかける笑いの先に「人間らしい生き方って、なんだろう」と考えさせる深みも備えた快作だ。  『案山子とラケット 亜季と珠子の夏休み』は、夏の佐渡島を舞台に、ソフトテニスを通じて2人の女子中学生と周囲の人々に起こる変化を描くハートフルなドラマ。中学3年生の亜季は、東京の学校で所属していたソフトテニス部で心に傷を負い、日本海の島で離れて暮らす父の元へやってきた。転校先の同級生・珠子から、ソフトテニスを教えてほしいと熱心に頼まれ、再びラケットを握る亜季。だが、村にはテニスコートがないことから、2人は廃校の校庭にコートを作ろうと奮闘する。  亜季役の平祐奈と珠子役の大友花恋、いずれも映画初主演となる女優2人のピュアな魅力が見どころだ。石原さとみに似た美少女の平(実際、『貞子3D』では石原が演じるヒロインの少女時代を平が演じた)と、天真爛漫な表情が綾瀬はるかを思わせる大友が、海の青と山の緑が美しい島の景観を背景に、ライトでさわやかなスポ根ドラマを繰り広げる。BGMの詩情あふれるピアノも印象的で、岩井俊二監督の『花とアリス』(04年)にも通じる仲良し少女2人の成長物語。限界集落化する前に地域を活性化しようとする、村民の取り組みも現代的だ。課題はいくつかあるが、全体としてとても気持ちのいい作品に仕上がっている。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ジヌよさらば かむろば村へ』作品情報 <http://eiga.com/movie/80317/> 『案山子とラケット 亜季と珠子の夏休み』作品情報 <http://eiga.com/movie/81842/>

芸妓、ラブホ、殺人事件……男女の“欲望”が渦巻く『迷宮の花街 渋谷円山町』

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『迷宮の花街 渋谷円山町』(宝島社)
 本橋信宏氏の前作、『東京最後の異界 鶯谷』(宝島社)は、奇妙な街を追ったノンフィクションだった。博物館や寛永寺などが集まる文化エリアから坂を下ると、そこにはうらぶれたラブホテルやデリヘル事務所が密集する。21世紀にありながら、時代の波を寄せ付けない鶯谷の現実を描き出した本書は、高く評価された。そして、この『異界』シリーズの第2作目として選ばれた土地は、渋谷駅から徒歩10分。道玄坂から神泉にかけて広がる「円山町」という地域だ。  ラブホテルが密集し、風俗の案内所がギラギラした照明を浴びせかける円山町には、ライブハウス「Shibuya O-EAST」や「club asia」「club atom」、映画館「ユーロスペース」が立地する。かと思えば、昭和元年創業の「名曲喫茶ライオン」や、昭和26年創業の老舗インド料理店「ムルギー」などの有名店があり、アクセスのよさからサイバーエージェントをはじめとする企業がオフィスを構えるエリアでもある(実は、「サイゾー」の編集部もここからほど近い道玄坂にある)。時間によって、場所によって、そして足を運ぶ人によって、円山町は玉虫色にその姿を変えていく。  『迷宮の花街 渋谷円山町』(宝島社)は、この不思議な繁華街の歴史を追ったノンフィクションだ。いや、歴史というよりも、「記憶」という言葉のほうが正確かもしれない。100年にわたって、この街はさまざまな変遷を遂げてきた。  江戸時代までは火葬場が設置され、雑木林の広がる丘だった円山町は、明治から大正にかけて料亭と置屋、そして待合の3つがそろった「三業地」に指定されると急速に発展していく。大正10年には、芸妓置屋137戸、芸妓402人、待合96軒を数える都内でも有数の花街へと成長していった。  映画監督の森田芳光は、生まれ育ったこの街を舞台に、デビュー作『の・ようなもの』を撮った。生家のすぐ横にあったトルコ風呂の記憶が、秋吉久美子演じる新たなトルコ嬢の姿として共感を呼んだ。また、『円山・花町・母の町』を歌った三善英史は、「母になれても 妻にはなれず」という歌詞を、円山町で芸者として生計を立てていた母を思い浮かべながら歌い、NHK紅白歌合戦にも出場を果たした。芸者とトルコ風呂、かつてそこは退廃的な物語が似合う街だったのだ。  そのイメージが一変するのが1980年代後半から。バブル経済に向かう狂乱の中で、芸者に代わり、立ち並ぶラブホテルが円山町の代名詞となっていく。現在、70軒あまりのラブホテルが林立する円山町では、固く腕を組んだカップルたちが、昼夜を問わずその路地へと吸い込まれていく。また、カラオケやゲームなどのアミューズメントが充実し、和風やアジアンなどさまざまなコンセプトで内装がしつらえられた設備は外国人の興味も集め、いまや「Love Hotel Hill」として旅行ガイドに紹介されるほどとなっている。  さらに、男たちの欲望を刺激する風俗店も数多い。普通のデリヘルだけでなく、電マ練習場、母乳デリヘル、デブ専門デリヘルなど、男たちのアブノーマルな性癖も、この街は受け入れている。カップルのありきたりなセックスだけではなく、不倫、乱交、スワッピング、SM、フェチ、さまざまな性欲が渦巻き、大量の精液を垂れ流す町、それが円山町の姿となった。  そして、そんな街を震撼させた事件が「東電OL殺人事件」だ。1997年3月19日、ひとりの売春婦が死体で発見された。この町で売春婦が殺されることは、少なくないこと。しかし、彼女は、売春婦であると同時に、慶應大学経済学部を卒業し、東京電力の企画部経済調査室副長にまで上り詰めたエリートだった。年収1,000万円以上の彼女が、なぜわずか2,000円で自らの体を売らなければならなかったのか? その謎は、世間の好奇の目を集め、週刊誌、月刊誌などさまざまな媒体が彼女の素顔を暴こうと躍起になり、この街を舞台に激しい取材合戦が展開された。だが、20年弱の時間を経ても、まだ事件の真相は明らかになっていない……。  丹念に言葉を拾いながら、本橋が記述する100年間にわたる円山町の記憶からは、「欲望」という共通点が見えてくる。表の世界ではおおっぴらにできない種類の欲望は、細い路地が密集する迷宮のようなこの街へと静かに群がってくる。だが、その「異界」は、また変化の波にさらされようとしている。渋谷駅の再開発によって、道玄坂と宮益坂をつなぐ「スカイウェイ」が2027年に完成すれば、この街の姿も大きく変わってしまうことだろう。その時、円山町にはどのような欲望が集まってくるのだろうか? それとも、「異界」としての役割を終え、なんの変哲もない街へと変わってしまうのだろうか? 時代を追うごとにフラットになっていく東京の街で、願わくば、円山町という異界が残されることを期待したい。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])

4月からネット古書「1円本」が消滅!? サラリーマンや主婦に人気の副業“せどり”のカラクリ

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「せどり」会社員宅にあったメール便の束
 ヤマト運輸が3月31日の受付を最後に、「クロネコメール便」を廃止する。そのあおりを受けて、ネット通販大手・アマゾンの名物となっているマーケットプレイスの「1円古本」が存亡の危機に立たされているという。本を古書店やネットで仕入れて転売する「せどり」と呼ばれる業者の利益が目減りし、「値上げもやむを得ない」(業者)というのだ。予告なしの一斉値上げも予想されるだけに、ネットを使って古本を買うなら3月中がよさそうだ。  アマゾンでネットショッピングする際によく見かける1円の古本。だが、実際には送料257円がかかるため、購入者は258円支払うことになり、リアル古書店でよくある100円均一のセール本よりは割高になってしまう。  それでも、なんとなく安いと錯覚する人は後を絶たず、「1円古本」の需要は大きい。アマゾンにはプロの古書店のほか、サラリーマンや主婦が小遣い稼ぎに「書店」を名乗り、数多く出品している。  本体価格1円で収入があるか? 数年来せどりを副業にしている40代会社員は「それなりの数を売れば収入になる」と、内情を明かす。  仕組みはこうだ。1円本が売れると1円+送料257円がアマゾンから出品者に支払われる。ただ、アマゾンは手数料として160円(カテゴリー成約料60円+基本成約料100円)を差っ引くので、出品者の実質的な利益は97円となる。このほか、アマゾンへの販売手数料15%も引かれるが、1円本では“銭”の単位になるため、実質ゼロになる。
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1円本の手数料内訳(アマゾンの出品管理画面より)
 さて、手取り97円の中から、出品者は送料を捻出する必要がある。そこで重宝されてきたのがヤマトのメール便だ。  A4判の大きさで厚み2センチ以内が164円、1センチ以内は82円で発送できる。アマゾン内で小口のせどりをやる場合、2センチサイズは赤字になるので、1センチ以内の書籍“主戦場”にしているという。 「商品の仕入れ値は基本タダ。友人の断捨離を聞きつけて大量に引き取ったり、図書館の放出イベント、時にはマンションのゴミ捨て場にある雑誌、写真集、新書、文庫といった薄手の書籍を狙う。人が捨てるぐらいなので、価値は低い。ほかの業者も出品しているので、価格競争の末、だいたい1円で下げ止まる」(同)
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検索すると約60万6000冊もある1円本
 せどり会社員の熱弁は続く。「すると、メール便は1センチ以内、送料は82円で、手取り15円の利益が出る。ここから発送用封筒の費用を引けば微々たるものだが、月数万円の儲けを手にすることもある」(同)  だが、メール便はまもなく廃止。そこで代替サービスとして日本郵便は「クリックポスト」(長辺34センチ以下、短辺25センチ以下、厚さ3センチ以下、1キロまで164円)を打ち出したが、1センチ以内82円の設定はない。  ちなみに、アマゾンに月4,900円を支払い、大口契約にすれば、基本成約料100円が無料となる。この方法で1冊100円の利益を出すプロの古書店は多いが、いずれにせよ1センチ以内の送料アップの影響は受けざるを得ない。前述の会社員は「もう1円では無理。そもそもセコい商売でした」と、副業の“廃業”を考えているという。 (文=金正太郎)

『ナイト ミュージアム』ついに完結! 故ロビン・ウィリアムズらに加え、あの俳優がカメオ出演!?

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(c) 2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、夜の博物館でろう人形や骨だけの恐竜が動き出すハリウッド製アドベンチャーコメディー連作の完結編と、70代後半の喜劇俳優が老マラソンランナーを熱演するドイツ映画。いずれも単純な笑いだけでなく、主人公の精神的成長や不屈の挑戦に元気をもらえる快作たちだ。  『ナイト ミュージアム エジプト王の秘密』(公開中)は、真夜中になると展示物が動き出す不思議な博物館を舞台にした、ベン・スティラー主演のコメディー『ナイト ミュージアム』シリーズの第3弾。アメリカ自然史博物館の夜警ラリーは、展示物たちに毎夜命を吹き込むエジプト王の石版が、魔力を失いつつあることを知る。いまや仲間となった展示物が2度と動けなくなるのを防ごうと、石版の謎を解く鍵を求めて、仲間たちや息子ニッキーとロンドンの大英博物館へ向かう。  監督は前2作に続きショーン・レビ。14年に他界したロビン・ウィリアムズ(コミカルな演技さえ感傷を誘う)、オーウェン・ウィルソンら続投組に、ベン・キングズレーらも加わり一層豪華なキャストに。映画ファンを喜ばせるパロディーが満載で、カメオ出演のヒュー・ジャックマンによる『ウルヴァリン』ネタなどは爆笑必至だ。ろう人形やミニチュアフィギュア、さらには恐竜の骨格標本までもが動き出すというアイデアは当初、リアルなCG映像と相まって新鮮な驚きだったが、さすがに3作目ともなると若干マンネリの印象も。とはいえ、数々の騒動と冒険で楽しませてくれたシリーズの完結編にふさわしく、フィナーレは華やかで感動的だ。  『陽だまりハウスでマラソンを』(3月21日公開)は、ドイツの国民的喜劇俳優ディーター・ハラーフォルデンが主演した人間ドラマ。半世紀前のメルボルン五輪マラソンで金メダルを獲得し、今は隠居暮らしのパウルは、妻マーゴの病気をきっかけに夫婦で老人ホームに入居する。退屈で窮屈なホームでの生活にうんざりしたパウルは、何十年ぶりかのランニングをホームの庭で再開。周囲の猛反対にも耳を貸さず、ベルリンマラソンへの挑戦を宣言する。  主演のハラーフォルデンは、今作でドイツ映画祭最優秀主演男優賞を史上最高齢の78歳で受賞した。撮影に備え半年近い走り込みで9キロ減量したというスポ根ぶりは、まさに主人公のキャラクターそのもの。あからさまに笑いを取る演技は封印しながらも、黙々と走る姿や入居者たちとのやり取りに穏やかなおかしみをにじませる。高齢者を支える娘や施設職員ら中堅世代の視点も丁寧に描かれ、幅広い年齢層の観客に現実の問題と照らして考える機会を提供してくれる作品でもある。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ナイト ミュージアム エジプト王の秘密』作品情報 <http://eiga.com/movie/79772/> 『陽だまりハウスでマラソンを』作品情報 <http://eiga.com/movie/81397/>

矢沢永吉『成りあがり』のマンガ版が、原作以上にロックしすぎて“ルイジアンナ”な件

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『成りあがり』(角川書店)
 みなさんは、永ちゃんこと矢沢永吉の自伝『成りあがり』(角川書店)を読んだことはありますでしょうか? 永ちゃんの少年時代や青年時代の超貧乏な苦労話に始まり、伝説のバンド「キャロル」の結成から解散までの秘話、そしてソロミュージシャン矢沢永吉として成功する、文字通りロック界のスーパースターの成りあがりの過程が書かれています。  これは幾多のタレント自伝の中でも傑作と言わざるを得ない作品で、永ちゃん独特の「アイラブユーOK」な口調から繰り出される数多くの名言があらゆる世代の心を打つ自伝であり、悩める男たちへの熱いエールであり、ビジネスマン向けの自己啓発本としても役に立つという、すごい名著なのです。 「家に金入れないでヘイベイビーとかって感覚、オレは嫌いなんだよ。ロックンローラーの資格ない」 「マジメなのよ、オレ。えらいマジメ。オレ。えらいマジメなの。結婚前提でどう?」 「バカはダメよ。バカはやめろと言いたい。まわりが迷惑するから。義務教育、ポイントだけ押さえて、あとはファッファッとしてればいい」 「ロックンロールはオレにとっちゃ空気みたいなものなんだから。息を吸って、吐き出せばもうロックンロールができあがってる」 (『成りあがり』より)  などなど、ページをめくるたびにロックなノリの名言連発。自伝物によくある、いかにも“ゴーストライターが書いてます”みたいな小ギレイにまとまった文章じゃなくて、永ちゃんらしい、フィーリングが先行するこの感じが逆に新鮮で、普段本を読まないような人たちでも思わず最後まで読んでしまう、そんな不思議な魅力があります。  その名作『成りあがり』がマンガにもなっていたのは、ご存じでしょうか? 実は本作は過去に2回、マンガ化されています。1度目は1993年、2度目は2008年で、どちらも『成りあがり』を原作としながら、とても同じものとは思えない、まったく別のマンガとなっています。今回は、この2つのマンガ版『成りあがり』をご紹介したいと思います。
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■コミック版成りあがり(作画:江原良道/風雅書房)  93年に発刊されたコミック版『成りあがり』のストーリーは、原作の時系列に沿って忠実に描かれており、原作の細かいセリフの言い回しや解説についても、マンガでありながら相当細部まで再現。名著のコミカライズとしてかなり気を使って描かれているのが感じられます。  そういう意味では非常に自伝マンガらしい構成なのですが、一方で画についてはまさかのギャグテイストでブッ飛んでいます。幼少期、広島時代の永ちゃんは新聞の4コマ漫画に出てきそうなガキンチョで、コボちゃんやサンワリ君あたりを想起させる画のタッチなのですが、純然たるキッズでありながら、なぜか磯野波平のように両サイドの髪を残して頭頂部がスッカスカという非常にかわいそうなルックスで描かれており、貧乏で苦労しているのがビンビンに伝わってきます。  高校生からバンドデビューするまでの永ちゃんは、頭頂部スカスカからフサフサへと無事トランスフォームしたものの、今度はなぜか西川きよし師匠かシンプソンズかというほどに、目玉が飛び出たギョロ目のキャラクターに変貌します。ところどころで普通にリアル永ちゃんの顔になるシーンがあるので、明らかに意図的にギョロ目キャラとして描いているのですが、その意図が全然わかりません。まあシンプソンズは、アメリカではロック色の強いアニメなので、ロックつながりといえばロックつながりですが……。  さらに驚かされるのが、女子キャラです。男子キャラが軒並みギョロ目のシンプソンズ状態なのに対し、女子キャラはなんと『きまぐれオレンジ☆ロード』を彷彿とさせる、昭和な香り漂う美少女です。永ちゃんの初体験のシーンでは、シンプソンズな永ちゃんがオレンジ☆ロードのひかるちゃんみたいな女子キャラとまぐわって、絶頂とともに富士山がドカーンと爆発するという、シュールな様子が描かれています。この世界観は、ちょっとほかに例えようがありません。  通常自伝マンガといえば、多少なりとも美化して描かれるものですが、この作品は完全にその真逆を行っています。あえてこのブッ飛んだキャラクターでの自伝をOKした永ちゃんの器のデカさが、実にロックであるといえます。
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成りあがり 矢沢永吉物語(作画:きたがわ翔/角川グループパブリッシング)  続いて08年、比較的新しめの『成りあがり』コミカライズ作品。こちらは、作画がきたがわ翔先生です。きたがわ翔先生といえば、『19(NINETEEN)』『B.B.フィッシュ』『ホットマン』等の作品でイケメン&美女が多数登場しまくっていますので、この時点で永ちゃんがきっちり美麗イケメンに描かれることは確定路線であり、安心して読むことができる自伝作品であるかのように思われました。  しかし、この『成りあがり 矢沢永吉物語』は、別の意味で壮絶にロックしていました。なにしろこのタイトルですから、普通に考えれば誰もが主人公は永ちゃんだと考えるところですが、実は違うのです。この作品の主人公は「内田忠志」なる、仕事に疲れたサラリーマンなのです。……誰だよ、お前。  忠志の父・平太は熱狂的な永ちゃんファンであり、忠志は子どもの頃から父親・平太に永ちゃんのコンサートに連れて行ってもらっていました。しかし思春期、反抗期となりだんだんと疎遠になってしまい、大人になった今はすっかり話さなくなってしまったのでした。  そんな忠志に、実家からの一本の電話が……。父・平太が病気で亡くなったのです。実家に戻り、父親の形見である永ちゃんのライブビデオや『成りあがり』を発見。忠志が父の遺した『成りあがり』を読み進めるのに合わせて『成りあがり』のシーンがマンガで描かれていくという、非常に凝った構成になっています。  つまり主人公の忠志、父の平太、そして永ちゃんという3人のキーパーソンが作品中に存在し、しかも途中で平太が永ちゃんに影響されてこっそり書いていた手書きの自叙伝『裏・成りあがり』が遺品として見つかるくだりでは、平太の少年・青年時代の回想シーンにさかのぼります。さかのぼったと思ったら現代の忠志の時代に戻ってみたり、今度は永ちゃんのバンド結成時代へ場面転換してみたり……。ちょっとした、バック・トゥ・ザ・フューチャー状態です。  さらにややこしいのは、主人公の忠志、若かりし頃の平太、若かりし頃の永ちゃん……3人とも、きたがわ先生らしいスッキリしょうゆ顔のイケメンとして描かれており、今読んでいるのが3人のうち一体誰の話なのか、だんだんわからなくなってきます。単なる自伝コミカライズにとどまらないこの複雑なギミックこそ、まさにロック……。ロックはロックでも、プログレッシブ・ロック寄りですけど。とにかくナメてかかるとノックアウトされる、ハンパな自伝じゃなかったのです。 ***  というわけで名著『成りあがり』と、そのコミカライズ作品を2作品ご紹介しました。マンガ版はどちらも原作を読んだ後なら超絶楽しめること請け合いであり、逆に原作を読んでなければ、あまりのファンキーモンキーベイビーすぎる展開にお口ポカーンになってしまう可能性がありますが、日本人男子ならば3冊とも必読の作品であることは言うまでもありません。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)