今週取り上げる最新映画は、あのシュワちゃんが「アイルビーバック」の決め台詞と共に帰ってきた人気シリーズのリブート作と、トリンドル玲奈・篠田麻里子・真野恵里菜のトリプルヒロインが話題の園子温監督作。方向性は異なるが、激しいアクションと予想外の展開で、ジメジメした梅雨どきの気分をスカッと晴らせてくれる2作品だ。 『ターミネーター:新起動 ジェニシス』(公開中、2D/3D上映)は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の大ヒットSFアクション「ターミネーター」(82)のシリーズ第5作。2029年に人類抵抗軍が機械軍に勝利を収める目前、抵抗軍主導者ジョン・コナーの母サラを歴史から抹消するため、機械軍は殺人マシン「T-800ターミネーター」を1984年に送り込む。ジョンの部下カイルがサラ抹殺を阻止するため1984年に到着すると、液体金属型T-1000に急襲され、さらに中年姿のT-800も現れる。 シュワルツェネッガーだけでなく、ジェームズ・キャメロン監督にとっても出世作となった『ターミネーター』。『マイティ・ソー ダーク・ワールド』のアラン・テイラー監督をはじめとする本作のスタッフ陣は、キャメロンがメガホンをとった第1作、第2作を大いにリスペクトしつつ、過去が書き換えられたことでタイムラインが変わるという解釈で新たなストーリーを展開。シュワちゃん扮するT-800が、CGと特殊メイクも駆使され青年・中年・初老と「3世代」のルックスで活躍するほか、ファンにはお馴染みの主要キャラクターたちも微妙に設定が変わって興味をかき立てる。シリーズの過去作を未見の人、観たけど忘れたという人は、少なくとも1作目と2作目は予習しておくと、本作とのさまざまなリンクをより一層楽しめるはずだ。 『リアル鬼ごっこ』(7月11日公開、R15+指定)は、山田悠介の同名ベストセラー小説を原作に、『新宿スワン』『ラブ&ピース』と新作公開が相次ぐ園子温監督がオリジナル脚本で新たに映画化したアクションホラー。女子校の旅行で級友らと貸切バスに乗っていたミツコ(トリンドル玲奈)は、偶然かがんだ瞬間にバスが見えない力で上下真っ二つに切断され、ただ一人生き残る。逃げた先の学校でも、教師らが機関銃で女子高生たちの皆殺しを開始。結婚式を控えたケイコ(篠田麻里子)、マラソン大会で出走中のいづみ(真野恵里菜)も、理不尽な大量虐殺が繰り広げられる中、生き残るため必死に逃走する。 原作の「全国の佐藤さんが鬼に殺される」という設定を、「全国のJKが殺される」筋書きへと大胆に変更。トリプルヒロインにアイドルタレント3人を配したにもかかわらず、スプラッター全開、「切り株」満載という、園監督らしい過激な娯楽作に仕上がった。トリンドル玲奈の、小鹿のような細長い手足を持て余し気味に走る姿がいい。思えば「鬼ごっこ」とは、鬼と子の役をそれぞれ演じる原始的なロールプレイングであり、演劇や映画、RPGの先祖のようなもの。そう考えると、ラストで明らかになる園監督の翻案のキモは、理にかなった帰結であるとともに、映画の原点を見つめ直す試みといえるのかもしれない。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ターミネーター:新起動 ジェニシス』作品情報 <http://eiga.com/movie/80340/> 『リアル鬼ごっこ』作品情報 <http://eiga.com/movie/81818/>(C)2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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『孤独のグルメ』の原作コンビが描く、究極散歩マンガ『散歩もの』
この世で最も奥が深く、老若男女が楽しめるアウトドアスポーツといえば、ズバリ「散歩」ではないでしょうか。健康診断で肉体年齢が60代と診断された、筋金入りのインドア派を自称する僕でも可能なスポーツ、それが散歩。散歩・イズ・ビューティフル。まあ……散歩がスポーツなのかどうかは、別途議論が必要なところですが。 今回は、そんな散歩がテーマのマンガ『散歩もの』をご紹介します。「散歩」がテーマのマンガなんて、一体どうやってオチをつけるんだ? と思う方もいらっしゃるかと思うのですが、そこは心配ご無用。実は、本作品は『孤独のグルメ』の名コンビ、谷口ジロー先生と久住昌之先生の作品なのです。本作品も『孤独のグルメ』同様、毎回これといったオチはなく、フワッとした感じで終わりますが、それでいてちゃんとした作品として成立しているのです。 『散歩もの』は通常のマンガ雑誌ではなく、「通販生活」(カタログハウス)という雑誌に掲載されていました。この掲載誌の渋さこそが、「散歩」というニッチなテーマのマンガを実現できる理由だともいえます。 テーマが違うとはいえ、谷口先生と久住先生のコンビ作品ですから、当然『孤独のグルメ』のテイストが色濃く出ており、読めば読むほどに『孤独のグルメ』のスピンオフ作品ともいえる雰囲気を感じます。特に、作品中に出てくる食事のシーンなどは、かなり孤独のグルメっぽいです。 ただし『散歩もの』は、あくまで散歩マンガなので、グルメではなく散歩がメイン。主人公である中堅文具メーカーの部長、上野原譲二が休日や仕事中にいろいろな場所をフラッと散歩して、古い町並みを見たり、雑貨を見つけたりしてはその心象風景をつづるという、これが全盛期のジャンプだったら、3話目ぐらいで強制的に途中からバトルものに方向転換させられかねない地味な内容です。もし散歩バトルマンガがあれば、それはそれで読んでみたい気もしますけど。 でもまあ、読者層はきっと「散歩の達人」(交通新聞社)とか「おとなの週末」(講談社)とか読んでいそうなアダルティな人たちを狙ってるわけですから、これでいいわけです。そういう意味では、孤独のグルメ以上にディープで読み手を選ぶ作品といえましょう。 主人公、上野原は妻帯者、中小企業の中間管理職という設定で、独身貴族の孤独のグルメ・井之頭五郎とは異なり、なかなかのリア充っぽさが漂います。しかし、作品が醸し出す雰囲気が酷似しているのは、どっちの主人公も頑固で結構変わった性格をしているからなんだと思います。 上野原は、とにかく散歩にかける情熱が人並み以上のものがあります。奥さんの頼まれ物の途中とか、仕事中の出先とかでもお構いなしにガンガン脇道にそれて、散歩モードに突入してしまいます。 自分のことを「散歩の天才」って言うぐらいの散歩好き。自称、散歩の天才……。うーん、実に微妙な響きです。さらに、頑固なまでの懐古主義者でもあります。 「俺は街を上へ上へ開発していくのって嫌いなんだよ」 上野原は、高層ビルなどの建築が大っ嫌い。それこそ、六本木ヒルズとか東京ミッドタウンは最悪なんでしょうね。その一方で、大正とか昭和の香りのするノスタルジックな建物は大好きな模様です。 そんな古めかしい店に入っては、普通の人が興味を示さないような渋い雑貨を衝動買いして帰ってくるという、奇妙な性癖(?)もあります。 慶応元年からやっている草履屋に興味を示して、いきなり草履を衝動買いしたり、ちょっとイイ感じの雑貨屋を発見して、エジソン電球なるレトロな電球を衝動買いしたり。いきなりエジソン電球とか買ってきて家に取り付けられても……そりゃ奥さんもあきれちゃいますよね。 そのほかにも、仕事途中に昔ながらの井戸を見つけて、テンション上がってしまい、井戸水をガンガンくみ出していたら、住人に怒られてしまったり。一企業の部長としてはなかなか行動がアレですよね。 そんな上野原の散歩にかける熱い思いがヒシヒシと伝わってくる、散歩原理主義者ともいえる数々の名言(しかも、ほとんどが独り言)をご紹介しましょう。 「テレビや雑誌で見た場所へ出かけていく散歩は、散歩ではない」 後でも出てきますが、散歩にガイドブックは不要というのが上野原の持論です。迷ったら、それはそれでいいじゃないか的な。つまり、「東京ウォーカー」(角川マガジンズ)、「るるぶ」(JTBパブリッシング)あたりで下調べしてから行くのは観光であって、散歩ではありません。もちろん、ネットで調べるというのもアウトです。 「理想的なのは、『のんきな迷子』」 どうやら、積極的に迷うのを推奨している模様です。確かに、散歩は無計画なぐらいなほうが楽しいかもしれません。もはや、この男にカーナビは不要に違いありません。 上野原の散歩論はさらにディープに、坂道についても熱く語ります。 「あー、いいねえ坂道だ」 「わあ、素晴らしいスロープだ」 目白の坂道に感動しまくり! 確かに、すごい坂道を見つけるとテンションが上がってしまうのは、なんとなく理解できますが……。 「こっちの坂もいいぞ」 別の坂道にも食いつく上野原。坂道がいいとか悪いとか……基準がよくわかりませんが、これは相当な坂道マニアですね。もしかしたら、坂道にエクスタシーを感じるタイプなのかもしれません。 「傾斜した道は使いにくい」 「だから工夫しなきゃならない」 「そういうのが街の味になってるんだな」 坂道文化を語り続けます。もはや、オッサンが散歩の最中に発する単なる独り言とは思えないほどのクオリティ。散歩の天才と呼ばれるには、このぐらいの域に達していなければならないようです。そういえばタモリさんも「日本坂道学会」なるものを設立しているぐらいですし、坂道にはどこか人を惹きつけてやまない魅力があるのかもしれません。 続いて、東京・吉祥寺の路地裏「ハーモニカ横丁」の日本一狭いカレー屋での一幕。路地裏文化に興味を示す若者カップルとの会話で、たいそうご機嫌な上野原です。 「吉祥寺の良心ですよ」 吉祥寺の良心……こういうクサいセリフは、相当吉祥寺ラブでないと言えないセリフです。しかし、若者たちがハーモニカ横丁のガイドブックを作りたいなどという発言をした途端、説教モードに。 「こういう路地はガイドなんかに頼らないでただ歩くのが楽しいんじゃない?」 独自の路地論を展開。ガイドに頼るのは散歩じゃないんだ、邪道だ、と。とにかく路地は自力で散策するのが粋なのだと力説します。まさに、散歩原理主義ならではですね。 「ちょっと不安なぐらいがいいんじゃない? 歩けば必ず面白い店やものが発見できる、そんな路地ですよ」 若者は完全にキョトン顔です。言いたいことはわかりますが、ここまでいくと老害……いやいや、日本の明日を担う若者たちに散歩の本当の楽しさを伝えたい一心での発言ですよね。わかります。この若者も今後はきっと改心して、ガイドなど持たずに路地裏を徘徊することでしょう。 というわけで、かつてないほどに硬派な散歩論が展開される究極の散歩マンガ『散歩もの』。いかがだったでしょうか? たまに散歩する程度の人からディープな坂道マニアの人まで、散歩をする人にはぜひ一度手に取って読んでいただきたい、そんな奥深い作品です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『散歩もの』(作画・谷口ジロー、著・久住昌之)
『孤独のグルメ』の原作コンビが描く、究極散歩マンガ『散歩もの』
この世で最も奥が深く、老若男女が楽しめるアウトドアスポーツといえば、ズバリ「散歩」ではないでしょうか。健康診断で肉体年齢が60代と診断された、筋金入りのインドア派を自称する僕でも可能なスポーツ、それが散歩。散歩・イズ・ビューティフル。まあ……散歩がスポーツなのかどうかは、別途議論が必要なところですが。 今回は、そんな散歩がテーマのマンガ『散歩もの』をご紹介します。「散歩」がテーマのマンガなんて、一体どうやってオチをつけるんだ? と思う方もいらっしゃるかと思うのですが、そこは心配ご無用。実は、本作品は『孤独のグルメ』の名コンビ、谷口ジロー先生と久住昌之先生の作品なのです。本作品も『孤独のグルメ』同様、毎回これといったオチはなく、フワッとした感じで終わりますが、それでいてちゃんとした作品として成立しているのです。 『散歩もの』は通常のマンガ雑誌ではなく、「通販生活」(カタログハウス)という雑誌に掲載されていました。この掲載誌の渋さこそが、「散歩」というニッチなテーマのマンガを実現できる理由だともいえます。 テーマが違うとはいえ、谷口先生と久住先生のコンビ作品ですから、当然『孤独のグルメ』のテイストが色濃く出ており、読めば読むほどに『孤独のグルメ』のスピンオフ作品ともいえる雰囲気を感じます。特に、作品中に出てくる食事のシーンなどは、かなり孤独のグルメっぽいです。 ただし『散歩もの』は、あくまで散歩マンガなので、グルメではなく散歩がメイン。主人公である中堅文具メーカーの部長、上野原譲二が休日や仕事中にいろいろな場所をフラッと散歩して、古い町並みを見たり、雑貨を見つけたりしてはその心象風景をつづるという、これが全盛期のジャンプだったら、3話目ぐらいで強制的に途中からバトルものに方向転換させられかねない地味な内容です。もし散歩バトルマンガがあれば、それはそれで読んでみたい気もしますけど。 でもまあ、読者層はきっと「散歩の達人」(交通新聞社)とか「おとなの週末」(講談社)とか読んでいそうなアダルティな人たちを狙ってるわけですから、これでいいわけです。そういう意味では、孤独のグルメ以上にディープで読み手を選ぶ作品といえましょう。 主人公、上野原は妻帯者、中小企業の中間管理職という設定で、独身貴族の孤独のグルメ・井之頭五郎とは異なり、なかなかのリア充っぽさが漂います。しかし、作品が醸し出す雰囲気が酷似しているのは、どっちの主人公も頑固で結構変わった性格をしているからなんだと思います。 上野原は、とにかく散歩にかける情熱が人並み以上のものがあります。奥さんの頼まれ物の途中とか、仕事中の出先とかでもお構いなしにガンガン脇道にそれて、散歩モードに突入してしまいます。 自分のことを「散歩の天才」って言うぐらいの散歩好き。自称、散歩の天才……。うーん、実に微妙な響きです。さらに、頑固なまでの懐古主義者でもあります。 「俺は街を上へ上へ開発していくのって嫌いなんだよ」 上野原は、高層ビルなどの建築が大っ嫌い。それこそ、六本木ヒルズとか東京ミッドタウンは最悪なんでしょうね。その一方で、大正とか昭和の香りのするノスタルジックな建物は大好きな模様です。 そんな古めかしい店に入っては、普通の人が興味を示さないような渋い雑貨を衝動買いして帰ってくるという、奇妙な性癖(?)もあります。 慶応元年からやっている草履屋に興味を示して、いきなり草履を衝動買いしたり、ちょっとイイ感じの雑貨屋を発見して、エジソン電球なるレトロな電球を衝動買いしたり。いきなりエジソン電球とか買ってきて家に取り付けられても……そりゃ奥さんもあきれちゃいますよね。 そのほかにも、仕事途中に昔ながらの井戸を見つけて、テンション上がってしまい、井戸水をガンガンくみ出していたら、住人に怒られてしまったり。一企業の部長としてはなかなか行動がアレですよね。 そんな上野原の散歩にかける熱い思いがヒシヒシと伝わってくる、散歩原理主義者ともいえる数々の名言(しかも、ほとんどが独り言)をご紹介しましょう。 「テレビや雑誌で見た場所へ出かけていく散歩は、散歩ではない」 後でも出てきますが、散歩にガイドブックは不要というのが上野原の持論です。迷ったら、それはそれでいいじゃないか的な。つまり、「東京ウォーカー」(角川マガジンズ)、「るるぶ」(JTBパブリッシング)あたりで下調べしてから行くのは観光であって、散歩ではありません。もちろん、ネットで調べるというのもアウトです。 「理想的なのは、『のんきな迷子』」 どうやら、積極的に迷うのを推奨している模様です。確かに、散歩は無計画なぐらいなほうが楽しいかもしれません。もはや、この男にカーナビは不要に違いありません。 上野原の散歩論はさらにディープに、坂道についても熱く語ります。 「あー、いいねえ坂道だ」 「わあ、素晴らしいスロープだ」 目白の坂道に感動しまくり! 確かに、すごい坂道を見つけるとテンションが上がってしまうのは、なんとなく理解できますが……。 「こっちの坂もいいぞ」 別の坂道にも食いつく上野原。坂道がいいとか悪いとか……基準がよくわかりませんが、これは相当な坂道マニアですね。もしかしたら、坂道にエクスタシーを感じるタイプなのかもしれません。 「傾斜した道は使いにくい」 「だから工夫しなきゃならない」 「そういうのが街の味になってるんだな」 坂道文化を語り続けます。もはや、オッサンが散歩の最中に発する単なる独り言とは思えないほどのクオリティ。散歩の天才と呼ばれるには、このぐらいの域に達していなければならないようです。そういえばタモリさんも「日本坂道学会」なるものを設立しているぐらいですし、坂道にはどこか人を惹きつけてやまない魅力があるのかもしれません。 続いて、東京・吉祥寺の路地裏「ハーモニカ横丁」の日本一狭いカレー屋での一幕。路地裏文化に興味を示す若者カップルとの会話で、たいそうご機嫌な上野原です。 「吉祥寺の良心ですよ」 吉祥寺の良心……こういうクサいセリフは、相当吉祥寺ラブでないと言えないセリフです。しかし、若者たちがハーモニカ横丁のガイドブックを作りたいなどという発言をした途端、説教モードに。 「こういう路地はガイドなんかに頼らないでただ歩くのが楽しいんじゃない?」 独自の路地論を展開。ガイドに頼るのは散歩じゃないんだ、邪道だ、と。とにかく路地は自力で散策するのが粋なのだと力説します。まさに、散歩原理主義ならではですね。 「ちょっと不安なぐらいがいいんじゃない? 歩けば必ず面白い店やものが発見できる、そんな路地ですよ」 若者は完全にキョトン顔です。言いたいことはわかりますが、ここまでいくと老害……いやいや、日本の明日を担う若者たちに散歩の本当の楽しさを伝えたい一心での発言ですよね。わかります。この若者も今後はきっと改心して、ガイドなど持たずに路地裏を徘徊することでしょう。 というわけで、かつてないほどに硬派な散歩論が展開される究極の散歩マンガ『散歩もの』。いかがだったでしょうか? たまに散歩する程度の人からディープな坂道マニアの人まで、散歩をする人にはぜひ一度手に取って読んでいただきたい、そんな奥深い作品です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『散歩もの』(作画・谷口ジロー、著・久住昌之)
「人はそれぞれ自由に生きればいい」蛭子能収の最強の生き方を学ぶ
クズだなんだと言われようともテレビに引っ張りだこで、大人気の蛭子能収。最近では、自由に生きる蛭子さんの人生哲学も注目されている。そんなノッてる蛭子さんが読者の人生相談に答える、週刊誌「女性自身」(光文社)のコーナーが書籍化された。『蛭子能収のゆるゆる人生相談』がその本。 ゆるゆるとはいえ、中にはヘビーな相談内容もある。そんな悩みに対し「はっきり言ってめんどくさいです」と言いつつも、的確な回答や金言を連発している。 「上に立つ立場になっても実力がないのなら、立派なことをしようと力まない方がいいですよ。(中略)上司に適しているかどうかなんて自分じゃ決められないし、ダメだと思われたっていいじゃないですか」(店長を任されるプレッシャーに悩むエステティシャンへの回答) 「オレは、仕事をしている間は、雇い主に自分の考えも時間も拘束されていると割り切っているので、嫌なことがあっても我慢できますね」(職場のわがままな上司に悩む女性への回答) どうだろう、蛭子さんの、この職業観。できないものはできない。自分ができることを、自分のやり方でやるしかないのだ。ダメな自分を受け入れられる上司なら、ダメな部下への理解もあるだろう。結果的に全員がハッピー。なんなの、この名回答。 そして、仕事は自分の考えさえも拘束されることを理解していれば、煩わしい人間関係の悩みからも解放される。ただ仕事をして、お金をもらうのみ。余計なことは考えない。つまり、自我を捨てよということだろうか。すごすぎる……。悟りを開いていらっしゃるのでしょうか、蛭子さんは。 ほかにも、 「自由で楽しく生きるためには、後ろめたい気持ちにならないことも大事。そのためには、しっかりルールを守らなければいけません」(厳しい校則に納得がいかない女子高生への回答) など、「おっしゃる通り」と感心する回答ばかり。まったく、誰よ、蛭子さんのことをクズだなんていう人は。失礼よ! とはいえ、やっぱりクズかも……というエピソードもちゃんとある。 「事務所には美人マネージャーとワンランク下のマネージャーがいたんです。美人には「どうせオレなんか」と思い、美人じゃないほうのマネージャーに結婚しようと付きまとったことも。でも、すぐに彼女も辞めちゃったんです。このときに「ブスに限って、いい男を求めている」と気づけたのですが、それも彼女を作ろうと行動したからこそ」(交際経験のない49歳女性への回答) 付きまとわれて仕事も続けられなくなった女性マネージャーをブス呼ばわりした挙げ句、教訓を得るという身勝手さ……! ドイヒー! しかし、本人はいいことを言っているとか、ひどいこと言っているとか考えずに、ただ自由に楽しく生きているだけ。そんな蛭子さんに、誰が文句を言えましょうか。蛭子さんのように生きられたら、どんなにいいことだろう。そんな蛭子さんの生き方を学べる本書は、今よりちょっとだけかもしれないけれど、人生をラクにしてくれるはずだ。 (文=ナカダヨーコ)『蛭子能収のゆるゆる人生相談』(光文社)
「ギャンブルはステップにすぎない!!」クレイジーじゃない、とってもクレバーな旅人
“ギャンブラー”と聞いて、誰もが想像するのは、やさぐれた、ある意味クレイジーなヤカラに違いない。しかし、そこにいたのは、ギャンブルを論理的にビジネスチャンスに結びつける、非常にクレバーな男だった。 日本人で唯一のプロギャンブラー・のぶき氏が、6月下旬、下北沢の旅カフェ「ステイハッピー」で、自身2冊目の著書となる『ギャンブルだけで世界6周』(幻冬舎文庫)の出版発表とトークショーを開催した。 長髪をうしろで束ねた浅黒い肌のその男は、うさんくさいパチプロや雀士とは違って、優しく、しかし鋭い目つきで話し始めた。 「自分が生きるスタンスは、『思いやり』です。自分にしてほしいことを、相手にもしてあげたい」 冒頭に語られたこの言葉も、最初こそ、「ありがちな自己弁護」程度にしか聞こえない客もいただろう。しかし、並のギャンブラーの単なる武勇伝とは一線を画す内容だということはすぐにわかった。 今回のテーマは、彼自身が経験した、「ギャンブルと世界6周の経験をいかにビジネスにつなげたか」をもとに、「旅をどうビジネスチャンスに結びつけるか」というもの。一般的には結びつかないものを結びつける理論が、のぶき氏ならではの視点で語られた。現在は講演や作家活動、広告塔、タレントとして活動している。他に著書『勝率9割の選択』(総合法令出版)がある。
「旅が好きだから、旅しながらできる仕事としてギャンブルを選んだ。初ギャンブルは、大学の卒業旅行のべガスで、そのときは1日で100万円勝った。その次、べガスに行った時は、30分で30万負けた。自分をプロギャンブラーとして自覚したのは、べガス中のカジノで出入り禁止になった時」 そう語るが、勝つようになるための修練の2年間は、重く暗いタールの海を泳ぐような暗黒の日々が続いたという。 「旅やギャンブルをビジネスに活かすには、その経験や知識を、相手がお金を出してもいいと思えるレベルにまで昇華させること。それには、旅の期間と同じくらい資料集めや準備に時間を割き、旅の最中には写真やメモをとりまくる。そして、帰ってきたあとも同じだけ時間をかけて、ブログやホームページ、YouTubeなどにアップして告知するのが重要」 その言葉も、言ったり聞いたりするだけなら簡単だが、実際にやるとなると途方もない労力がつきまとう作業ということはすぐにわかる。 その結果、現在は作家、カジノインストラクター、カジノをはじめとする海外諸事情の調査員、広告塔として収入を得、さらに芸能事務所に所属してタレントとしても活動しているという。 しかし、のぶき氏のゴールはまだ先にある。おおよそ、ギャンブラーとは思えない論理的な展開のトークが進んでいく。実体験がもとにあるだけに、話もおもしろい。
「ゆくゆくは政治やボランティアの方に進みたいんです。プロギャンブラーとして有名になるのは、そのためのステップ。メディアに出て、自分を知ってもらう必要があるんです」 果たして、そこまで将来のビジョンを持つギャンブラーが過去にいただろうか? いや、まっとうに働くサラリーマンとて、将来の自分の姿を想像できる人間はそう多くはいないはずだ。 単なる夢追い人と思っていた“プロギャンブラー”の素顔は、あまりにもロジカルでステディなビジョンの持ち主だった。のぶき氏のトークショーは随時開催中だ。 詳細はhttps://www.facebook.com/nobuki.progamblerまで! (取材・文=関口ヒサヨシ)学生時代にバイトで1000万円貯めたというバイタリティーにも頭が下がる。
ジュリアン・ムーアの圧倒的な演技力は必見! 今週末公開『アリスのままで』
今週取り上げる最新映画は、アカデミー賞主演女優賞を獲得したジュリアン・ムーアの名演が光るハリウッド作品と、世界遺産の絶景と辛辣な対話の応酬が印象的なカンヌ・パルムドール受賞作。娯楽大作が相次ぎ封切られるゴールデンウイークと夏休みの谷間にあたるこの時期、人間の内面に向き合うドラマ映画をじっくり味わうのも一興だ(いずれも6月27日公開)。 『アリスのままで』は、認知症研究者が著した全米ベストセラー小説を、ジュリアン・ムーア主演で映画化したドラマ。言語学者で大学教授のアリスは50歳になった頃、講演中に言葉を思い出せなくなったり、いつものジョギングコースで道に迷うといった異変を経験。検査を受けたところ、若年性アルツハイマー症と診断される。家族の介護も空しく、徐々に記憶と知識を失い、講義に支障を来たして大学も辞めることになったアリス。ある日彼女は、かつて自分宛てにパソコンに保存した動画メッセージを見つけ、「自分のままで」いるためのある行動を実行しようとする。 言語の権威が言葉と知性を失っていくという残酷かつ劇的な過程を、ジュリアン・ムーアが圧倒的な演技力でリアルに表現。アカデミー賞をはじめ、各国で22の主演女優賞を獲得する快挙となった。自身も難病ALS(筋委縮性側索硬化症)を抱えるリチャード・グラッツァーと、英国出身のウォッシュ・ウエストモアランドが共同で監督。アリス以外の風景がぼやけた映像で、見当識を失ったときの不安と恐怖を表現するなど、優れたカメラワークと編集で登場人物の内面を活写した。夫役のアレック・ボールドウィン、娘役のケイト・ボスワースとクリステン・スチュワートら、家族のアンサンブルも見応え十分だ。 『雪の轍』は、トルコの巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督が、2014年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール大賞を受賞した重厚な人間ドラマ。親から莫大な資産を受け継いだ元舞台俳優のアイドゥンは、奇岩群で知られるカッパドキアで洞窟ホテル・オセロのオーナーとして、何不自由なく暮らしている。しかし、慈善活動に打ち込む若く美しい妻や、何かと批判的な出戻りの妹との会話は、互いの神経を逆なで、溝が深まるばかり。家賃を滞納する貧しい一家との関係も、アイドゥンと妻に暗い影を投げかけていく。 世界遺産カッパドキアのエキゾチックな景観と、胎内を思わせる洞窟ホテルの部屋が、人間の本質をむき出しにするかのような会話劇の舞台として秀逸。何もそこまで言わなくても、と思わず止めたくなるほどの攻撃的な批判の応酬が物語を駆動し、雪に刻まれた轍のようにどこまでも平行線をたどる。対話の強度と、秋から冬にかけてのカッパドキアの魅力的な表情が、3時間16分という長尺を感じさせない。ジェイラン監督作で日本での劇場公開はこれが初めてだが、日本の映画ファンにも広く支持されるに違いない傑作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『アリスのままで』作品情報 <http://eiga.com/movie/81382/> 『雪の轍』作品情報 <http://eiga.com/movie/80441/>(C)2014 BSM Studio. All Rights Reserved.
キングオブコメディ高橋健一“不朽の野球アニメ”『キャプテン』を語り尽くす!

キングオブコメディ高橋健一、44歳。
――全然関係ないですよ! 部活動もやっていないから『キャプテン』のような努力をすることもなく? 高橋 そうですねぇ~。クラスの人気者でもヤンキーでもない、端っこの方のポジションでしたし……。ヤンキーから『ボタンよこせよ』とか言われてましたからね。 ――えっ、それは好きだから第2ボタンが欲しいっていうことではなく? 高橋 違います! 学生服のボタンをストーブで黒く焼くのがヤンキーの間で流行ってたんですよ、威厳がつくから。でもヤンキーたちも自分のボタンは焼きたくないから、クラスの下層にいるヤツらからボタンを奪ってたんですね。みんな泣き寝入りしてたんですけど、俺だけは「返せよ~返せよ~」って泣きながら1時間つきまとって返してもらって、「なんかあいつヤベエぞ!」っていう感じになってました。そういう面では谷口に通じてるのかもしれませんね。 ――決してあきらめないという点では! 高橋 そうです。「がんばる、がんばる」です。ボタン取り返すために「がんばらなくっちゃ!」って思いましたもん。でも真面目な話、谷口みたいな地味で日の当たらなかった人が全国大会で優勝しちゃう……みたいなところには憧れましたね。「こういうこともあり得るんだ!」って。最初はなんの才能もないし、真面目なだけで筋肉がすごいとかもない。親もただの建設業の方ですし。……自分の家もただの運送業でしたから、ちょっとシンクロしてしまいました。 ――とはいえ、谷口はものすごく努力してますよ。 高橋 僕はなんにもしてませんでしたけどね。 ■丸井はダメだけど印象に残っている ――『キャプテン』の特徴として、年ごとにキャプテンの座を引き継いでいって、主人公も変わっていくというのがありますが、高橋さんの好きなキャプテンは誰ですか? 高橋 その質問は来ると思ったんだよなー。でもそれは難しいですよ。牛肉と豚肉と鶏肉どれがいいか、みたいな話なんで。性格が全員違うからなぁ~……。憧れるのはイガラシですね、天才タイプですから。野球技術的な才能は一番あるじゃないですか。しかも、最初は憎まれっ子みたいな感じで入ってきたのに、ツボとなるところで谷口のことを悪く言っている先輩に刃向かったり、丸井のことを一番理解していたり。一番チームのことを思っているキャプテンですからね。逆に一番ダメなのは丸井。谷口は「がんばる」っていう才能が開花するし、近藤も剛力だし。最初から最後までダメなのが目立っているのが、丸井。 ――墨谷二中野球部への情熱だけって感じですからね。 高橋 もちろん練習して技術も身につけるんですけど、同じくらい欠点が目につくんですよね。後輩のイガラシから「ダメですよ丸井さん」「丸井さん何やってるんですか」とか言われたりして。……ただ、一番印象に残っているのも丸井なんですよ。卒業してからもずっと部活に顔を出して、監督みたいになってますから。ちばあきおさんも、丸井みたいなキャラが必要で卒業後も出し続けてたんじゃないかな。こういう、感情を思いっきり出すキャラっていないじゃないですか。等身大の中学野球が描かれた。(C) ちばあきお・エイケン
――一方、谷口は卒業後全然出てこないですもんね。アニメでは最終回にチョロッと出てきましたけど。 高橋 漫画はキャプテンの引き継ぎもあっさりしてますからね。「えっ、もう出てこないの?」って感じで。アニメだと次のキャプテンを誰にするか悩むところなんかも描かれてて、またいいんですよ。丸井が全然自分じゃないと思っていたら、谷口に神社へ連れて行かれて「野球部を頼むぞ、次期キャプテンとしてな」って。そこにイガラシもやってきて「お願いしますよ丸井さん」なんていって、3人のキャプテンが集結するシーンとかすごい好きですね。そこでも肝となっているのは丸井だし、ストーリーも丸井の目を通して見ちゃう部分ってありますよね。結局自分に一番近いのが丸井だし、我々はなんだかんだ丸井と共に成長したんだと思います。 ――ちなみに、他の野球漫画って読んだりするんですか? 高橋 まあ『巨人の星』は読んでましたし、後に『名門!第三野球部』や『県立海空高校野球部員山下たろーくん』とかも。 ――あ、やっぱり努力する系の野球漫画が好きなんですね。 高橋 『第三野球部』『山下たろーくん』あたりは、おそらく『キャプテン』ありきじゃないですか。ああいう等身大の野球漫画のパイオニアですからね。実際に、いろんな野球選手が『キャプテン』を読んでいたっていうのも納得できますよ。『巨人の星』だけ読んでたら、大リーグボールが投げられないって分かった時点で野球やめちゃいますもん。『必殺仕事人』を見て、三味線の糸を投げる練習をしていた俺としては。 ――『キャプテン』を読んでいれば、神社で練習さえすれば結果を出せると思えると。 高橋 『キャプテン』を読むと野球をやりたくなるっていうのはすごく分かりますね。……俺はやってなかったですけど。 ■これなんだなあ……社長がみんなをひっぱる力は…… ――アニメの話に戻しますけど、『キャプテン』って声優さんがすごく特徴的じゃないですか? 高橋 みんな超・棒読みですからね。イガラシが「なんにもわかってないんだなぁ、キャプテンが……(棒読み)」とか。声質も真っ直ぐで抑揚のない感じで、当時はヘタとか思わなかったけど、今見るとものすごい棒読み! 丸井の声優さんも今聞くと、……俺がいうのもなんですけど、滑舌が悪いんですよ。わざと純朴な感じで過剰に抑揚をつけたりしないようにしてるのかな? と思ったら、全員児童劇団の人が演じてたらしいですね。丸井のキャラがパーケンにも影響を?(C) ちばあきお・エイケン
――しかも、イガラシは小学生だったらしいですよ。近藤だけはイメージに合わなかったから大人の声優を連れてきたみたいですけど。 高橋 そう『ドラゴンボールZ』のフリーザ(中尾隆聖)なんですよ。『あしたのジョー2』のカーロス・リベラもやってて、「どこかで聞いたことがあるな~」と思ってたら「カーロス・リベラだ!」って! ――ジブリアニメでは声優以外の人が声を当てているケースが多いですけど、ある意味その先駆けともいえますよね。 高橋 『耳をすませば』のお父さん(立花隆)とかね。「わが図書館もついにバーコード化するんだよ(棒読み)」。あと『風立ちぬ』の庵野(秀明)さんとか(笑)。『キャプテン』の場合、子どもが演じているから、段々と上手くなってくるんですよ。イガラシなんかは特に、技術的にもつたなくて声も出てなかったのが、途中で声変わりしたのか、声ができてくるのがわかるんですよ。それがイガラシの成長ともシンクロしているんですよね。ただ、イガラシの声優さんはWikipediaを見てもその後の活動が一切わからなくて……。おそらく、これ以降目立った活動はしていないんでしょうね。普通に会社員とかになってて「これなんだなあ……社長がみんなをひっぱる力は……(棒読み)」とか言っててほしいな! ■人力舎のイガラシは相方・今野!? ――お笑いの世界も先輩後輩の上下関係が厳しい世界ですけど、先輩になって欲しいキャラクターって誰ですか? 高橋 そこはやっぱり谷口でしょうね。男って背中を見せられるのが一番グッとくるじゃないですか。つべこべいわずに自分でやる。厳しい練習で他の部員たちが「キャプテンがうらやましいぜ……ただノックさえしてりゃあいいんだからな」とか言って抗議しに行こうとすると、上手い具合に谷口が神社で特訓してるんですよね。それでイガラシが「これなんだなあ……キャプテンがみんなをひっぱる力は……(棒読み)」みたいな(笑)。アニメだから都合良く秘密の特訓を見られちゃうんですけど、そうやって背中で語るのが一番伝わるから、憧れの先輩としてはやっぱり谷口ですね。キャプテンとしては別格ですもん。丸井もイガラシも、自分がキャプテンになってからも谷口のことは意識していたと思います。 ――それに比べて谷口の前のキャプテンの影の薄さときたら……。 高橋 ホントですよ! でも、ちょっと練習を見ただけでヘタクソだった谷口をいきなりキャプテンに抜擢した選球眼は卓越してる! まさに「ナイスセン!」。あの名もなきキャプテンが谷口に任せなかったら、墨谷二中の快進撃もなかったわけですから。あのキャプテンが最高のキャプテンですよ。 ――それじゃあ、プロダクション人力舎における谷口といえば誰ですか? 高橋 こんないい人いるわけないじゃないじゃないですか! こんな人は芸人になんてならないですよ。 ――じゃあ丸井は? 高橋 ダメキャラなんだけど熱い部分もあり、実はがんばっているということで……ドランクドラゴンの鈴木さんとか。一番後輩に近いというか、昔からよく一緒に遊んでくれたんです。まあ、ただ単に釣り行く後輩がいなかったってだけかもですけども。神社で練習する谷口。(C) ちばあきお・エイケン
――丸井も、高校に友達いるのかっていう問題がありますからね。 高橋 中学の部活に顔出してばっかりですから。そういう意味でも鈴木さんに似ていますね。なにかと後輩目線で話を聞いてくれたり。それに鈴木さん、鼻は黒くないですけど腹黒いですから。 ――天才肌のイガラシは? 高橋 イガラシは、なぜか後輩っていうイメージがあるんですよ。生意気なんだけど「こいつにはかなわないな」っていう。そう考えると……相方の今野とかじゃないですかね。年下だし、憎たらしいけど、ここ一番で「かなわないな」ってことをいわれちゃう。養成所に入ってきたときの雰囲気とかも似ていたかな。顔もちょっと似ている気もしますし。あの淡泊な顔というか。 ――一番問題児の近藤は? 高橋 うーん、鬼ヶ島のアイアム野田とか……。ものすごいバカキャラなんだけど、その面ではやっぱりかなわない。人なつっこくて、みんなから愛されてる感じも似ていますね。まあ、野田はものすごく打算的に愛されようとしている部分もありますけど。「俺はかわいがられているからこれでいいんだ」とか自分でいっちゃいますから。 ――近藤が「外野を守ってるの見られたら恥ずかしい」とかいっちゃうみたいな。 高橋 そうそう。それも悪気なくいってますからね。そういう自分のことしか考えていない感じも似ています。 ■『キャプテン』は腐女子にもオススメ!? ――『キャプテン』は連載開始が1972年という古い漫画ですけど、それが2007年に実写映画になったり、今年Blu-rayになったり、いまだに愛され続けている理由はなんだと思いますか? 高橋 まあやっぱり……等身大の野球漫画としての完成形だから古びないんでしょうね。昔の漫画やアニメって、やっぱり今見ると変な部分が多くて、つっこんだり、揚げ足取りなが見ちゃうじゃないですか。でも『キャプテン』は本当に素直に見られるんですよ。たぶん、今の野球部の人が見ても「野球部員はこうあるべき」みたいな部分は変わっていないと思います。それは野球の人も、サッカーの人も、僕のような芸人でも通じるものがあるんじゃないかな。僕がやたらとコントの練習をしたがるのは間違いじゃなかったんだ! ――練習は裏切らないと。 高橋 まあ僕はキングオブコントの決勝前に7時間も練習したせいで口が回らなくなって本番で盛大に噛みましたけど……。野球でも、練習し過ぎて肩壊しちゃうとかもあるんで、やたら練習すればいいってわけじゃないですけどね。 ――谷口も無茶しすぎて指をケガしてましたから……。 高橋 あとは、僕の独自の見解ですけど、丸井とイガラシの関係なんかは、今で言う“萌え”的な見方もできるんじゃないかと思います。 ――ああー、分かります。 高橋 反発しながらも、最終的に認め合ったり。憎まれ口を叩きながらも、イガラシのことを一番買っているのは丸井だったり……。今の女の子が読んでも興奮できるんじゃないかと。イガラシ=キンコメ今野? そういえば『ニコニコキングオブコメディ』で、こんなシーンを見たことがあるような……。(C) ちばあきお・エイケン
――BLになっていてもおかしくないと。 高橋 そういう雰囲気、俺でも感じますもん。近藤のことで丸井が怒って部室に帰っちゃうんですけど、イガラシが迎えに行って『そのうちキャプテンも近藤とウマがあうようになりますよ、きっと!』『ぼくだって最初はキャプテンにきらわれたじゃないですか』っていうんですよ。それに対して丸井は『お前なんか、いまでも好きじゃねえよ』って。要はそんなことを言い合えるまでの関係になっているってことですからね、キュンとしましたよ! しかも部室にふたりっきりなんですよ! 時代が時代だったらよからぬ方向に行ってますよ。 ――腐女子の人たちにも是非見てもらいたいと。 高橋 野球部とか関係なく、いろんな人の心に響くと思います。俺なんて帰宅部なのに泣いてましたからね。あれ、何に対する涙なのかまったくわからないですけど。考えてみれば野球部を真面目にやっていたら夕方のアニメなんて見られないですからね。帰宅部のバイブルですよ。まあ、今回Blu-rayになったので野球部員の方たちも練習が終わった後に見られますから、是非! (取材・文=北村ヂン) ●高橋健一(たかはし・けんいち) 2000年にプロダクション人力舎のお笑い養成所「スクールJCA」同期生の今野浩喜と「キングオブコメディ」結成。2005年「第3回お笑いホープ大賞」受賞、2010年「キングオブコント2010」優勝。 著書に『卑屈の国の格言録』(サイゾー/小明との共著)。 サイゾーテレビ『ニコニコキングオブコメディ』出演中。 ●キャプテン コンプリートBlu-rayBOX http://www.odessa-e.co.jp/cont/captain/index.htmlイガラシ×丸井でBLもアリ?(C) ちばあきお・エイケン
10年分のギネス記録が、この1冊に!『人はなぜ世界一が好きなのか?』
「世界一」は響きがいい。世界一の何々と聞くと、なんだかものスゴイ偉業を成し遂げているように聞こえる。たとえ、その内容が口にストローを400本詰め込んだり、洗濯ばさみを顔に161本とめたり、耳毛が18.1cmも伸びている、というだけだとしても――。 『一歩踏み出す人のためのビックリ挑戦・記録図鑑 ギネス世界記録 人はなぜ世界一が好きなのか?』(KADOKAWA)は、数々の世界一の記録が収められた『ギネス世界記録』年鑑本の過去10年分をひもとき、独自の目線でギネス世界記録をまとめた1冊である。選者には「デイリーポータルZ」の関係者、作家の宮田珠己氏、書籍デザイナーの早川いくを氏らが名を連ね、1分間勝負、集まる、おもしろ夫婦、ギネス記録男、走る家具、スプーン系、からだ自慢など、様々な切り口のギネス世界記録がピックアップされている。 また、実際に世界一になった個人や企業・団体のサクセスストーリーのインタビューも充実し、冒頭にはなんと「高須クリニック」の高須克弥院長が登場。まさか、整形の回数でギネス世界記録か!? と思いきや、そうではない。高須院長いわく「自分の体で実施した整形回数」というのを出そうかと思ったけれど、もう数が多すぎちゃって。初めのうちは全部テレビでオンエアしたり、動画を撮ったりして記録してたけれど、今はもう気が向いたらやっちゃいますからね。いちいち記録に残ってない」とのことで、じゃあなんの記録かというとゴルフなのだ。一体ゴルフでどんな記録を打ち立てたのか、はたまたなぜ記録に挑戦したのか、高須院長にとってギネス世界記録とは? などが語られ、普段とは違う高須院長の一面を知ることができる。 また、消しゴムの削りカスをヒモにして、9.19mつなげた「最も長い消しゴム削り」でギネス世界記録を打ち立てた田中優光君のインタビュー内容には心ゆさぶられる。1999年生まれの田中君は、中学2年生の時にギネス世界記録に挑んだ。これまでに消しゴムを使った記録がないことを事前に確認し、10種類以上の消しゴムを使い比べて、どの消しゴムが削りカスが長くつなげられるのかを実験。当日は「公共の場所で記録挑戦を実施すること」という規定にのっとり、どんな状況でも安定した削りカスが出せるようにと、まな板を持参して記録に挑み、9m超えの大記録を打ち立てた。写真の印象では物静かで控えめな見た目の彼だが、インタビューでは「正直、目立ちたいという気持ちもありました」という若者らしい本音も垣間見せる。ギネス世界記録取得後、担任の先生から「やったな!」と握手を求められ、教室のみんなに拍手してもらい、記念撮影もした。図書室に置かれた『ギネス世界記録』には、“田中君が達成した”とふせんが貼ってあり、それまで話したこともなかった生徒から質問攻めに遭ったりもしたという。これぞ、まさに青春。世界一を成し遂げたことで人気者になれる、という素晴らしいエピソードではなかろうか。 本書には本気ですごいと驚く記録よりも、圧倒的に「なんだって、こんな記録に挑戦しようと思ったんだろう?」「なんだソレ!?」とツッコミどころ満載の記録が次々に登場する。ひょっとしたら自分も挑戦できるかもという内容も多数あり、ギネス世界記録の申請&挑戦の仕方もまとめられているので、いっちょ世界一に挑んでやろうかと意気込んでみるのもいいかもしれない。 (文=上浦未来)『人はなぜ世界一が好きなのか?』(KADOKAWA)
金、女、野望、復讐……柳沢きみお『青き炎』と『DINO』に学ぶ、アウトローな生き方
女性にとって、結婚したい男と付き合いたい男は違う。金持ちで優しい男が結婚相手としては理想だけど、付き合うんならどこか翳があって、ちょっと危険でワルな感じのする男がいい、というのが昔からの定説ですよね。もちろん、男目線で見ても憧れるのは後者のような男じゃないでしょうか。 今回ご紹介する柳沢きみお先生の『青き炎』と『DINO(ディーノ)』は、まさにそんな主人公が登場します。どちらもイケメンで高学歴、スポーツ万能という誰もがうらやむ天賦の才能を持ちながら、自らの野望達成のため、あえてドス黒い悪の道に進んでいくというピカレスク・ロマンです。 『青き炎』は、金と権力を手に入れるために徹底的に女を利用し、時には殺人も厭わない。そんなダークネスな男の一代記です。 主人公は海津龍一という高校生。成績優秀、スポーツ万能、おまけにイケメンという三拍子そろった男子なのですが、高校では友達を作らず、部活にも所属せず、おまけに家族とも折り合いが悪く、父親に「何を考えてるのかさっぱりわからん」と見捨てられている状態。筋金入りの一匹狼です。愛想がないので「氷のような人間」として男子からは嫌われていますが、イケメンでクールなので女子からは人気があるのです。性格が激悪でもイケメンならモテるという、実にわかりやすい事例です。 そんな龍一がどれだけ危険でワルな男なのか、ダイジェストで紹介しましょう。個人的には、絶対友達になりたくないタイプです。 高校生なのにホステスを愛人に持ち、しかもその女に貢がせている。 ホステスと二股をかけて、カネ目当てで大病院の娘と付き合う。娘の父親を脅して、手切れ金1,000万円を請求。 頭がいいので、ちゃっかり慶応義塾大学に合格。テニスサークルに入部して、モテモテ。 入部早々、速攻で部長の彼女に手を出して部長の怒りを買い、テニスの試合でボコボコにされるが、サークルを休んでテニススクールで1カ月特訓を積み、部長にリベンジ。今度は龍一が圧倒的な勝利を収め、部長に赤っ恥をかかせてサークルから追い出します。 テニサーと並行して、ディスコの黒服バイトを始めます。女殺しテクに磨きがかかり、ホストやヤクザとも付き合いだして、さらにタチが悪くなります。 究極のお金持ち、住菱財閥のお嬢様に目をつける。お嬢様がラグビー好きと見るや、ラグビー部にサクッとくら替え。運動神経バツグンなので、すぐに大学の代表選手に選ばれる。もちろん龍一の狙いは、住菱財閥に婿入りしてカネと権力をゲットすることです。 住菱財閥の婿入りが不可能と見るや、6つのビルを所有する未亡人オバさんにターゲットを変更。オバさんを言葉巧みに口説き落とし、結婚にこぎ着けた後、速攻で交通事故に見せかけて殺してしまい、念願のビルオーナーとなります。そしてババア殺しの疑いをかけてきた親戚は、ヤクザを使って脅して黙らせます。 資産ゲットでついに野望達成かと思いきや、その後の展開では、予想外の転落が待っているわけですが……。 「大企業の社長になれた!? ふん、それがどうだって言うんだ。しょせんサラ公じゃねーか! そんなのになって大喜びしてるヤツもしょせん三流野郎だ!」 「本当のエリートってヤツを教えてやろう。自由に生きていて、若くして成功したヤツだ。それがエリートだ」 龍一のこんなセリフに象徴されるように、社会の歯車たるサラリーマンを徹底的に蔑み、イケメンと明晰な頭脳を徹底的に悪い方へ利用するという、バブルが生んだドス黒いアンチヒーローなのです。『青き炎』(実業之日本社)
一方、『DINO』は老舗デパートが舞台であり、主人公の家族を不幸に追い込んだ奴らへの復讐をテーマにした壮大なストーリーです。 主人公の菱井ディーノは丸菱デパート7代目社長、菱井丈一郎の息子です。しかし丈一郎は、丸菱デパートの番頭格であった樽谷一族にクーデターを起こされ、追放されてしまいます。その後、丈一郎は酒に溺れて死亡、母は家を出ていき、ディーノは親戚をたらい回しにされる不遇な少年時代を送ります。 高校に入学したディーノは、父が遺品として、1軒の家とフェラーリ・ディーノ206GTを遺してくれていたことを知って感激し、亡き父のために樽谷一族へ復讐して丸菱デパートを取り返すことを決意します。 いきなりオープニングの「お父さん、いよいよだよ」というセリフのあと「天罰を与えるべき者」という復讐リストがドバーンと出てきます。そこには樽屋一族をはじめ、クーデターに参加した当時の重役たちの名前がズラッと並んでいます。丸菱デパートに潜入して、このリストに載っている奴らに一人ずつ復讐していこうというのです。 復讐のため、養子先の杉野姓を名乗り、杉野ディーノとして東大を卒業後、トップの成績で丸菱デパートに入社。早速、幹部候補生となります。もちろん、イケメンでスタイルも抜群なので、デパート内の女子にモテまくり。新卒のくせに、配属された売り場内の女主任を速攻で口説く手の早さ。さすが、東大卒イケメン。 「なにもこんな30にもなったオバさんを抱かなくても、キミならいくらでもいるでしょ」 「ふう、僕はアナタくらいの年上の人が好きなんだ」 甘いピロートークで、女主任から丸菱デパートの内部事情を夜な夜な聞き出します。もちろんこの女主任は、ディーノが復讐するための情報源にすぎません。そして主任から得た情報を元に、矢継ぎ早に復讐を実行していきます。 最初のターゲットは曽根崎専務。専務に復讐する足がかりとして、コネ入社の息子・曽根崎フロア長を狙います。深夜のオフィスで女子社員とエッチする性癖のある曽根崎フロア長を背後から襲い、素っ裸のまま縛り上げ、翌朝フロア中の晒し者に。 息子の失態により、流通センターに左遷された曽根崎専務。しかし、ディーノの怒りはその程度では収まりません。追い打ちを掛けるように流通センターへ忍び込んで、放火するディーノ。曽根崎専務はショックで心筋梗塞を起こし、再起不能に。そう、これがディーノ流の天罰なのです! 2人目のターゲットは登戸副社長。登戸には溺愛する一人娘・恵がいます。ディーノは松野という偽名で恵に接近し、口説き落とします。そう、東大卒イケメンなら、どんなにうさん臭い偽名でもナオンを口説けるんです! 自宅に呼び寄せ、酒でベロベロに酔わせた恵の裸体を撮影。その写真を登戸副社長宅に送りつけます。登戸は怒りのあまり、朝帰りの娘の首を絞めて殺してしまい、そのまま失脚です。天罰……怖すぎですね。 このようにディーノは女から得た情報を元に、ターゲットのウィークポイントを徹底的に突く、ヤクザ顔負けの発想で冷徹に復讐を実行していきます。なんというガチすぎる復讐。東大卒イケメンのくせに、とんだ大悪党です。 この先も、ラスボスである樽谷会長を目指して着々と復讐を敢行していくのですが、ツッコミどころも豊富な作品です。 まず気になるのが、主人公の菱井ディーノというキラキラネームっぷり。名字を変えて杉野ディーノになっているので、先代社長の息子だとはバレていない、という設定なのですが、そもそもディーノっていう名前が個性的すぎて、普通にバレるだろという気がします。しかし作品の後半になるまでそのキラキラネーム問題はスルーで、散々復讐しまくった「え、今さら?」というタイミングで、ディーノという名前は目立つからマズい……となり、杉野一郎へと強引に改名します。一郎って……急に変えすぎだろ! そのディーノという名前は、ディーノの父親・丈一郎の遺品でもあったフェラーリ・ディーノ206GTから取られているのですが、息子にスーパーカーの名前をつけるという発想もすごいですよね。そんな作品なので、本編の復讐ストーリーとは関係なく、柳沢きみお先生のフェラーリ偏愛ぶりが遺憾なく発揮されています。作品中にまったく脈絡なく「フェラーリの名車たち」というミニコーナーが割り込んできたり、「この車は男が一人で走らせるためにある。この車は男の汗だけを求める」みたいな、イケてるフェラーリポエムが突然挿入されたりするのも特徴となっています。特にフェラーリに興味がない人には読んでいて違和感がすごいのですが、これが逆にクセになってくるのです。 こんな感じで、最初から全力で悪の道を行く『青き炎』と、復讐という大義名分がありつつも結局人を殺しまくる『DINO』。対照的な2作品なのですが、どちらもダークな主人公を軸としたストーリーがとてつもない面白さで、やっぱりクールでワルな男の生き様はどこまでいっても魅力的なのだ、ということを証明してくれています。今さらながらアラフォーの僕も、『LEON』あたりを熟読してクールなワルを目指さなければ、と思うようになりました。まあ、厄年なので、すでに運勢は十分にワルいんですけどね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『DINO』(ゴマブックス)
生ビールサーバーから子ども用プールまで! サービス満点「大阪の銭湯」をめぐる
東京から大阪へ引っ越して1年近くになるが、生活してみてたびたび感じるのが過剰といえるほどの銭湯のサービスの良さである。 ふらっと入ってみると、やたらお風呂の種類が多い。電気風呂にうたせ湯、ジェット風呂に薬草風呂。露天風呂がある銭湯も少なくない。どこも、それほど広いとはいえないスペースを効率的に使いながら、工夫してたくさんのお風呂を用意している感じだ。 また、休憩スペースに飲み物や食べ物が充実している銭湯も多く見かける。生ビールサーバーを置いている銭湯はザラにあるし、おつまみや軽食などが販売されていて、ほとんど居酒屋のようになっているところもある。 それらがみな「スーパー銭湯」ではなく、あくまで通常の銭湯料金で堪能できるのだ。今回は、そんな大阪のサービス満点銭湯を代表するような浴場を3カ所めぐってみた。 最初にやってきたのは、大阪市生野区にある「ニュー清滝温泉」。ちなみに大阪では通常の銭湯の屋号に「温泉」が付くことが多い。JR環状線の桃谷駅から徒歩10分ほどでたどり着いた。 看板によれば、電気風呂、超音波風呂、露天風呂など11のお風呂があるようだ。特別に許可をいただき、浴場内を見せていただく。男湯に入ると、向かって右手にカランが並び、左側には各種のお風呂が。
気泡風呂、椅子風呂、寝風呂などが並ぶ。 奥へ進むと左手にサウナ、正面の水風呂には滝が流れている。右の「マイナスイオン」と書いてあるのはラドン温泉のようなもので、高濃度のマイナスイオンをたっぷり浴びることができるそうである。
一番人気は露天風呂。
またがずに入れる本格的な造りも、人気の秘密だとか。 ニュー清滝温泉は、30年前に改築して以来、このスタイルで営業を続けているとのこと。お湯はすべて電気で沸かしており、30年前にその設備を導入するためには数千万という工事費がかかったそうである。銭湯にサウナが併設されている場合、サウナのみ別料金がかかるところが多いが、ここはなんと無料。ご主人にその理由を尋ねると「この辺りでは、サウナが無料のところが多いんでね」というシンプルなお答え。 風呂数の多さに、インターネット上ではよく間違って「スーパー銭湯」にくくられることもあるほどの充実ぶりだが、「特にサービスしているというわけでなく、お客さんに喜ばれる形にしようと思って……」と、謙虚に語る。30年前、生野区には95軒もの銭湯があったが、今は半減しているそう。この規模の銭湯も、この辺りでは珍しいものになりつつあるようだ。キレイなお花が飾られている清潔で明るい雰囲気のロビーなど、隅々に気遣いが感じられる素晴らしい銭湯だった。
次に訪れたのは、大阪市旭区の「神徳温泉」。 活気あふれる千林大宮商店街にある大きな建物だ。こちらも許可をいただき、浴場内を取材させていただいた。正面のガラスから日射しが差し込む、広々とした空間である。
左手には超音波風呂や薬湯。
正面には露天風呂があり、
その脇には鯉の泳ぐ水槽も。
ほかにも、薬草風呂やエステバスなるお風呂がある上、脱衣所には「乾燥室」という部屋があり、ここに入ればバスタオルを使わずとも温風で体を乾かすことができるという。神徳温泉が掲げる「21世紀の公衆浴場」というキャッチフレーズも納得の充実具合である。 創業60年余りになるという神徳温泉、平成14年に改築を行い、今の形になったとか。広いロビースペース脇にはカウンターがあり、生ビールやうどん・そばまで販売されている。
最後に向かったのは、大阪市城東区の「白玉温泉」。JR京橋駅からも徒歩10数分の距離だ。 一階の下駄箱スペースで靴を脱いで二階へ上がると受付がある。特別に許可をいただき、お客さんにお断りした上で浴場を見せてもらった。
各種のお風呂が配置され、突き当たりにドーンと露天風呂と水風呂がある。 なんといってもすごいのは、子ども専用プールがあること。
「子どもは湯船で騒ぐでしょ。『やめろ』ゆうても子どもは騒ぎたいものです。だったら、子ども専用の場所を造ってしまおう」という発想で造られたものらしく、水中メガネをつけて泳ぎまくる元気な子どもたちの姿が見られる。 テレビを見ながら入れる露天風呂や、パワフルなジェットが気持ちいいエステバス。
水風呂ならぬ氷風呂は、20~30分おきにパイプから氷が落下してくるというすごい仕組みだ。
ロビースペースにはソファやテーブル席が多数用意されていて、売店には生ビールやおつまみも豊富に取りそろう。
平成元年に今の形に改築されたという白玉温泉のご主人いわく、「老若男女、誰でもくつろげる場所にしたいんです」とのこと。朝6時から午前2時まで、元旦も含めて年中無休でオープンし続けるのも、「白玉温泉ならいつでも入れると思ってもらえる場所にしたい」という思いからだという。 つい先日には建物の隣に「しらたま鍼灸整骨院」をオープンさせ、体の具合がちょっと悪い時に整体とお風呂を気軽にセットで利用できる環境を作った。今後は「湯治」が行える施設を目指し、改良をしていく予定だそうだ。そのあくなきサービス精神に頭が下がる。 大阪の銭湯のサービス精神、感じていただけただろうか! どこの銭湯でも工事費やメンテナンス費が相当額だとおっしゃっていた。それらが大人440円という銭湯料金で利用できるというのは心底ありがたいではないか。では、今日も風呂上がりの生ビールを飲みに行こうかな! (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/) ●「ニュー清滝温泉」 所在地:大阪市生野区勝山北5-14-18 営業時間:午後2:00~午前2:30 土日祝 午前6:00~午前2:30 ●「神徳温泉」 <http://www.shintoku-onsen.jp/> 所在地:大阪市旭区大宮3-6-19 営業時間:午前6:30~午前2:00 ●「ユートピア白玉温泉」 所在地:大阪市城東区蒲生2-7-36 営業時間:午前6:00~午前2:00






























