まさか!? なんでここが都心の幼稚園なんだろう? カメラマンに泥水をかけてくる園児たちを追った『子どもは風をえがく』

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 長編ドキュメンタリー映画とは、膨大な取材量によってはじめて価値を生むものである。  どんなに美しく、力強い映像を幾度となく撮影しようとも、その背後にやむなくカットされた大量のフィルムがなければ、薄っぺらさは透けて見えてしまうのではないだろうか?  ラピュタ阿佐ヶ谷での封切り公開を先月好評の中で終え、現在も全国で巡回上映中の『子どもは風をえがく』(監督:筒井勝彦)は、これでもかという映像取材の成果が強靭に焼き付けられた作品である。  この作品は、杉並の住宅街にある広大な屋敷林を持つ幼稚園・中瀬幼稚園の一年を取材したドキュメンタリー映画だ。  開園50周年を迎えるこの中瀬幼稚園は、園と保護者が共同で敷地内の樹木や自然を保護しながら、子どもたちが駆け回れる空間を長期に渡って維持してきた。都会の喧騒の中ににありながらも、自然に満ちた空間でのびのびとした日常を過ごす子どもたちの姿を、四季を通じてカメラは余すところなく追っていく。作品は115分に編集されてはいるものの、撮影期間は一年間にも及んだ。  筒井監督の揺るぎない意志を本作から感じるのは、子どもたちを撮影するカメラのレンズが必死に子どもたちの目線にまで下がろうと奮闘しているところだ。これは文章でも同様だが、作品を制作するにあたって、まず求められるのは視線をどこに置くかである。  どんな取材対象であっても、俯瞰した視点では紋切型の分析は可能でも人間の本能的な部分までは捉えられない。  映像作品では、より露骨に取材対象者との距離感が鑑賞する者に見透かされてしまう。筒井監督は、そのような部分を深く理解しているからこそ、精一杯目線を下げて子どもたちの表情や動きを余すところなく追いかける。  腰をかがめながら、走り回る子どもたちを縦横無尽に撮影する撮影部も並大抵の体力では務まらない。  作中ではカメラマンが走り回る子どもたちに突然、土や泥水をかけられているのが確認できる。それでも、カメラの焦点は取材対象である子どもたちを追い続けてやまない。  16ミリフィルムで撮影された昭和のドキュメンタリー映画などを鑑賞する度に、何らかの作為や配慮がどこかしこに入りこんでしまっていることに気付かざるを得ない。取材対象者が不自然なほど背筋がピンとしていたり、話し方も妙に丁寧だったり、露骨にカメラのレンズを意識しているのがわかる。撮影機材がよりコンパクトになった現代では、以前ほど取材対象者は取材する側やカメラを意識しないようにはなったものの、それでも作為めいた言動は記録されてしまう。  けれども、中瀬幼稚園の子どもたちはカメラのレンズなど一切気にする素振りも見せず、逆に園の闖入者とでも呼ぶべきカメラマンに天衣無縫な行動で反応するという、とてつもなく予測不能なドキュメンタリー映画となっている。
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 撮影を担当したカメラマンの石崎俊一と秋葉清功が、相当な覚悟と忍耐力を維持して撮影をこなしていく姿勢が素晴らしい。  筒井監督と筆者は、10年ほど前にとある国際映画祭のコンペ部門に監督作とプロデュース作が共に入選して以来交流を持ち、そのプロデュース作の劇場公開初日に駆けつけて頂いたり、本作のマスコミ試写に参加させて頂いたりと、とても人と人との関わりを大切にする映画監督だという印象が強い。  だからこそ、保育士と園児たちとの暖かく繊細な交流をリアルに描いた前作『こどもこそミライ まだ見ぬ保育の世界』と同様に、本作でもそんな和やかな視線が如何なく発揮されたと感じている。  また、撮影を担当した石崎俊一とは筆者がかつて在籍した制作会社の先輩後輩という間柄でもあるために、筆者が関係する様々な作品でチームを組むことが幾度かあり、そのバイタリティーあふれる行動力やアイデアに驚かされたことは一度や二度ではない。  筆者が企画から携わり、先頃刊行されたばかりのルポルタージュ書籍『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)の著者近影撮影を石崎に依頼した際も、衝撃的な書籍内容と個性の際立つルポライター・昼間たかしの著者近影が、ありきたりの写真では意味を為さないであろうと打ち合わせた。  そして、撮影当日は書籍の基本コンセプト“ルポライター=取材対象を追う現代の野良犬”に倣って足早に歩く著者を石崎が様々な方向から狙い、その微妙な動きや表情を連写するという、著者近影としては稀有なロケーション撮影を敢行。  著者の斬新なイメージ創りに読者からの評価も上々で、筒井監督の現場でさらに鍛えられた石崎の成長には目を見張るものがある。  井口佳子園長の語りと共に、園児たちの目線を重ねることによって構築されたメッセージは、「ここにいることが楽しい」という純粋な心。それがスクリーン狭しと濃厚に焼き付けられる強固な長編ドキュメンタリー映画が誕生した。 (文=増田俊樹)
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12月4日まで横浜シネマリンでロードショー http://cinemarine.co.jp/children-draw-the-wind/ 『子どもは風をえがく』公式サイト http://www.kazeoegaku.com/ (C)2015 中瀬幼稚園 オフィスハル

“ニルヴァーナ・トリップ”からバトルまで 読み手を選ぶ、異色のサウナマンガ『フィンランド・サガ』

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『フィンランド・サガ』(吉田貴司/モーニング KC)
「いつだってそう、真実はサウナでつぶやかれる」  今年もいよいよ、さむ~い冬がやって来ます。この季節、温泉や銭湯もいいですけど、体を芯から温めるんだったら、なんといってもサウナじゃないでしょうか。  スーパー銭湯や健康ランドには、必ずといっていいほどサウナが常設されています。それほどまでに、サウナ人口は多いのです。しかし「サウナなんか使ったことない」「熱いし、息苦しいし、いったい誰が得するんだよ、あんなもの」と思っている人もまた、結構多いのではないでしょうか。  今回はそんな、ハマる人とハマらない人がくっきりと分かれてしまう「サウナ」をテーマにしたマンガをご紹介します。  みなさんは、『サ道』(パルコ)という本をご存じでしょうか? 漫画家であり、「コップのフチ子」の発案者であり、そして日本初のサウナ大使でもあるタナカカツキ先生による、サウナエッセイ&マンガです。 『サ道』は、サウナの魅力をまだ知らない人をサウナジャンキーの道へと誘う、入門書といえます。サウナと水風呂の交互のセッションワークを繰り返すことにより、突然ありえないほどの気持ちいい状態、「ニルヴァーナ状態」が訪れるという衝撃的な内容が紹介されています。そう、みんなが苦手なあの水風呂こそ、サウナトリップの秘密! というわけです。さらに現在、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で『マンガ サ道』というコミカライズ作品が月イチ連載されており、サウナブームが静かに、そして確実に訪れているといっていいでしょう。  この『サ道』こそ、日本で唯一のサウナマンガかと思われたのですが、実はもうひとつ、サウナをテーマにしたマンガが存在していました。その名も『フィンランド・サガ』。 『サ道』がサウナのイメージアップをテーマにしているのに対し、『フィンランド・サガ』はもっとストイックで、サウナの「殺伐とした感じ」や「重苦しい雰囲気」が表現されている作品です。  主人公は“プロサウナチャンピオン”本庄丈一郎。この時点で、すでに突っ込みどころ満載なのですが、全裸にフェイスタオル、そして肩にはチャンピオンベルトといういでたちで登場する、マンガの主人公としてはあまりにも斬新なキャラクターです。本庄は悩める現代人の相談役として、あるいは「耐えなければいけないことだらけ」な日常のストーリーテラーとして、サウナの中で語り続けます。圧巻なのは、あまりに誇大なサウナ名言の数々。 「ライフ・イズ・サウナ」 「私の流している汗は…スパンコールなんかじゃない…」 「耐える姿は現代人のフォークロア(民間伝承)」 「耐えることで人とつながる…それがプロサウナ」 「サウナの本質はグローバルコミュニケーション」 「いつだってそう、真実はサウナでつぶやかれる」 「サウナだけが世界を変える」 「君はレストランへ行くのに弁当を持っていくのか? 荷物はいらない…ただ脱ぎ捨てるだけ、それがサウナだ…」 などなど、次から次へと繰り出される意味深なポエム。ここまでいくと、名言というより、迷言レベルです。  こんな感じで、初めは人生相談スタイルだったのですが、何を思ったか、単行本2巻からは唐突に、サウナバトルへ突入。参加国78カ国、世界一のサウニストを決める地下サウナバトルが開催されます。日本代表は、もちろん本庄。ロサンゼルスからやってきた強豪サウニスト「J.D.」と一騎打ちをします。  サウナの世界大会って、いったいどんなスゴいバトルなのかと思うかもしれませんが、“我慢できなくなってサウナから退場したら負け”という、実に単純明快なシステムです。ただし、プロ同士の戦いですから、サウナ内での高度な駆け引きが勝敗を分けます。  常に清く正しい潔癖なサウナスタイルを誇るJ.D.に対し、本庄は幼い頃に好きだった女の子と遊園地でデートした挙げ句に失敗して微妙な空気になった話など、切ない話てんこ盛りでJ.D.のメンタルに揺さぶりをかけます。……全然高度な駆け引きじゃないですね。酔っぱらいの居酒屋トークに近いものがあります。  3巻では、さらに新展開。若者たちの恋愛三角関係にサウナチャンピオンが割り込んできて、状況がさらにややこしくなるという、予想の斜め上を行くストーリーになっています。正直、舞台がサウナである必然性があまりありません。  全体的に「なんだコレ!?」感がスゴいのですが、無理やりサウナに結びつける独特の世界観は、ほかのマンガでは味わえません。読み手を選ぶかなりの異色作であると同時に、ハマる人はハマる、まさしくサウナのようなマンガといえましょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

“ニルヴァーナ・トリップ”からバトルまで 読み手を選ぶ、異色のサウナマンガ『フィンランド・サガ』

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『フィンランド・サガ』(吉田貴司/モーニング KC)
「いつだってそう、真実はサウナでつぶやかれる」  今年もいよいよ、さむ~い冬がやって来ます。この季節、温泉や銭湯もいいですけど、体を芯から温めるんだったら、なんといってもサウナじゃないでしょうか。  スーパー銭湯や健康ランドには、必ずといっていいほどサウナが常設されています。それほどまでに、サウナ人口は多いのです。しかし「サウナなんか使ったことない」「熱いし、息苦しいし、いったい誰が得するんだよ、あんなもの」と思っている人もまた、結構多いのではないでしょうか。  今回はそんな、ハマる人とハマらない人がくっきりと分かれてしまう「サウナ」をテーマにしたマンガをご紹介します。  みなさんは、『サ道』(パルコ)という本をご存じでしょうか? 漫画家であり、「コップのフチ子」の発案者であり、そして日本初のサウナ大使でもあるタナカカツキ先生による、サウナエッセイ&マンガです。 『サ道』は、サウナの魅力をまだ知らない人をサウナジャンキーの道へと誘う、入門書といえます。サウナと水風呂の交互のセッションワークを繰り返すことにより、突然ありえないほどの気持ちいい状態、「ニルヴァーナ状態」が訪れるという衝撃的な内容が紹介されています。そう、みんなが苦手なあの水風呂こそ、サウナトリップの秘密! というわけです。さらに現在、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で『マンガ サ道』というコミカライズ作品が月イチ連載されており、サウナブームが静かに、そして確実に訪れているといっていいでしょう。  この『サ道』こそ、日本で唯一のサウナマンガかと思われたのですが、実はもうひとつ、サウナをテーマにしたマンガが存在していました。その名も『フィンランド・サガ』。 『サ道』がサウナのイメージアップをテーマにしているのに対し、『フィンランド・サガ』はもっとストイックで、サウナの「殺伐とした感じ」や「重苦しい雰囲気」が表現されている作品です。  主人公は“プロサウナチャンピオン”本庄丈一郎。この時点で、すでに突っ込みどころ満載なのですが、全裸にフェイスタオル、そして肩にはチャンピオンベルトといういでたちで登場する、マンガの主人公としてはあまりにも斬新なキャラクターです。本庄は悩める現代人の相談役として、あるいは「耐えなければいけないことだらけ」な日常のストーリーテラーとして、サウナの中で語り続けます。圧巻なのは、あまりに誇大なサウナ名言の数々。 「ライフ・イズ・サウナ」 「私の流している汗は…スパンコールなんかじゃない…」 「耐える姿は現代人のフォークロア(民間伝承)」 「耐えることで人とつながる…それがプロサウナ」 「サウナの本質はグローバルコミュニケーション」 「いつだってそう、真実はサウナでつぶやかれる」 「サウナだけが世界を変える」 「君はレストランへ行くのに弁当を持っていくのか? 荷物はいらない…ただ脱ぎ捨てるだけ、それがサウナだ…」 などなど、次から次へと繰り出される意味深なポエム。ここまでいくと、名言というより、迷言レベルです。  こんな感じで、初めは人生相談スタイルだったのですが、何を思ったか、単行本2巻からは唐突に、サウナバトルへ突入。参加国78カ国、世界一のサウニストを決める地下サウナバトルが開催されます。日本代表は、もちろん本庄。ロサンゼルスからやってきた強豪サウニスト「J.D.」と一騎打ちをします。  サウナの世界大会って、いったいどんなスゴいバトルなのかと思うかもしれませんが、“我慢できなくなってサウナから退場したら負け”という、実に単純明快なシステムです。ただし、プロ同士の戦いですから、サウナ内での高度な駆け引きが勝敗を分けます。  常に清く正しい潔癖なサウナスタイルを誇るJ.D.に対し、本庄は幼い頃に好きだった女の子と遊園地でデートした挙げ句に失敗して微妙な空気になった話など、切ない話てんこ盛りでJ.D.のメンタルに揺さぶりをかけます。……全然高度な駆け引きじゃないですね。酔っぱらいの居酒屋トークに近いものがあります。  3巻では、さらに新展開。若者たちの恋愛三角関係にサウナチャンピオンが割り込んできて、状況がさらにややこしくなるという、予想の斜め上を行くストーリーになっています。正直、舞台がサウナである必然性があまりありません。  全体的に「なんだコレ!?」感がスゴいのですが、無理やりサウナに結びつける独特の世界観は、ほかのマンガでは味わえません。読み手を選ぶかなりの異色作であると同時に、ハマる人はハマる、まさしくサウナのようなマンガといえましょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

人気シリーズついに完結! カットニスたちの運命は……『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』

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Photo Credit Murray Close/TM&(C)2015 LIONS GATE FILMS INC.ALL RIGHTS RESERVED.
 今週取り上げる最新映画は、世界同時公開されるメガヒットシリーズの完結編と、世界初のロボット演劇を映画化した意欲作。どちらも近未来の世界を舞台にしながら、革命の最終決戦をスペクタクル満載で描くハリウッド製アクション大作と、人間存在の内側を見つめる静かなタッチの邦画、好対照な2作品だ。  『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』(11月20日公開)は、人気ヤングアダルト小説を原作にジェニファー・ローレンス主演で映画化した『ハンガー・ゲーム』(2012)シリーズの4作目となる完結編。独裁国家パネムに抵抗する反乱軍は、コイン首相らの思惑通り、カットニス(ローレンス)が革命の象徴となって勢力を増す。大勢の命を奪う戦争を終わらせるため、カットニスは冷酷な独裁者・スノー大統領の暗殺を決意し、ゲイル、ピータらとともに首都進攻を開始。だが、待ち受ける政府軍と無数の罠により、カットニスは一人また一人と仲間を失っていく。  スノー大統領が主催する死のサバイバル競技=ハンガー・ゲームに、妹思いで弓矢の得意なカットニスが出場するところから始まった本シリーズ。完結編では、首都の市街を競技場に見立てた壮絶なラスト・ゲームがスリリングに展開する。矢を放つ姿が凛々しいアクションシーンだけでなく、苦悩や悲しみを経て精神的に成長する過程を繊細に表現したジェニファー・ローレンスは、闘うヒロインとして納得の存在感。2人の男性に愛される三角関係の行方からも目が離せない。反乱軍の参謀・プルターク役のフィリップ・シーモア・ホフマンは、本作が遺作となった。映画ファンに愛された名優の最後の演技を、しっかりと見届けたい。  『さようなら』(11月21日公開、R15+指定)は、劇作家・平田オリザとロボット研究者・石黒浩教授のコラボ作品であるアンドロイド演劇『さようなら』を原作に、『ほとりの朔子』(13)の深田晃司監督が映画化。近未来の日本で原発が相次いで爆発し、国民は放射能で汚染された国土を離れることを余儀なくされる。政府が決めた優先順位の高い順に日本人が国外へ避難する中、外国人難民で病弱なターニャ(ブライアリー・ロング)と、彼女の世話をするアンドロイドのレオナは、穏やかな暮らしを続けながら、やがて訪れる最期を待つ。  劇団青年団の演出部出身である深田監督は、演劇的な対話の味わいと映画らしい映像の表現力を巧みに使い分け、相乗効果をもたらした。レオナ役には、石黒教授が開発した遠隔操作アンドロイド「ジェミロイドF」を起用。歩行機能が備わっていないので、一部故障して車イスを使っている設定にし、自律型AIロボットとして違和感なく演出した。生と死、人間とアンドロイドといった相反する概念として捉えられがちな組み合わせが、寄り添って共存し、ときには等価であるかのように提示される。「アンドロイドが出演する映画」と聞いてマニア向けか色モノのように思われるかもしれないが、実際は人間という存在の根源に迫る、極めて誠実な作品だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション」作品情報 <http://eiga.com/movie/80331/> 「さようなら」作品情報 <http://eiga.com/movie/82572/>

人気シリーズついに完結! カットニスたちの運命は……『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』

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Photo Credit Murray Close/TM&(C)2015 LIONS GATE FILMS INC.ALL RIGHTS RESERVED.
 今週取り上げる最新映画は、世界同時公開されるメガヒットシリーズの完結編と、世界初のロボット演劇を映画化した意欲作。どちらも近未来の世界を舞台にしながら、革命の最終決戦をスペクタクル満載で描くハリウッド製アクション大作と、人間存在の内側を見つめる静かなタッチの邦画、好対照な2作品だ。  『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』(11月20日公開)は、人気ヤングアダルト小説を原作にジェニファー・ローレンス主演で映画化した『ハンガー・ゲーム』(2012)シリーズの4作目となる完結編。独裁国家パネムに抵抗する反乱軍は、コイン首相らの思惑通り、カットニス(ローレンス)が革命の象徴となって勢力を増す。大勢の命を奪う戦争を終わらせるため、カットニスは冷酷な独裁者・スノー大統領の暗殺を決意し、ゲイル、ピータらとともに首都進攻を開始。だが、待ち受ける政府軍と無数の罠により、カットニスは一人また一人と仲間を失っていく。  スノー大統領が主催する死のサバイバル競技=ハンガー・ゲームに、妹思いで弓矢の得意なカットニスが出場するところから始まった本シリーズ。完結編では、首都の市街を競技場に見立てた壮絶なラスト・ゲームがスリリングに展開する。矢を放つ姿が凛々しいアクションシーンだけでなく、苦悩や悲しみを経て精神的に成長する過程を繊細に表現したジェニファー・ローレンスは、闘うヒロインとして納得の存在感。2人の男性に愛される三角関係の行方からも目が離せない。反乱軍の参謀・プルターク役のフィリップ・シーモア・ホフマンは、本作が遺作となった。映画ファンに愛された名優の最後の演技を、しっかりと見届けたい。  『さようなら』(11月21日公開、R15+指定)は、劇作家・平田オリザとロボット研究者・石黒浩教授のコラボ作品であるアンドロイド演劇『さようなら』を原作に、『ほとりの朔子』(13)の深田晃司監督が映画化。近未来の日本で原発が相次いで爆発し、国民は放射能で汚染された国土を離れることを余儀なくされる。政府が決めた優先順位の高い順に日本人が国外へ避難する中、外国人難民で病弱なターニャ(ブライアリー・ロング)と、彼女の世話をするアンドロイドのレオナは、穏やかな暮らしを続けながら、やがて訪れる最期を待つ。  劇団青年団の演出部出身である深田監督は、演劇的な対話の味わいと映画らしい映像の表現力を巧みに使い分け、相乗効果をもたらした。レオナ役には、石黒教授が開発した遠隔操作アンドロイド「ジェミロイドF」を起用。歩行機能が備わっていないので、一部故障して車イスを使っている設定にし、自律型AIロボットとして違和感なく演出した。生と死、人間とアンドロイドといった相反する概念として捉えられがちな組み合わせが、寄り添って共存し、ときには等価であるかのように提示される。「アンドロイドが出演する映画」と聞いてマニア向けか色モノのように思われるかもしれないが、実際は人間という存在の根源に迫る、極めて誠実な作品だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション」作品情報 <http://eiga.com/movie/80331/> 「さようなら」作品情報 <http://eiga.com/movie/82572/>

殺処分寸前の犬たちが人間に復讐する!! ハンガリー映画に込められた社会的弱者たちの叫び

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犬版『猿の惑星』と評されているハンガリー映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』。少女リリと飼い犬ハーゲンは無二の親友だったが……。
 犬と人間との関係を描いた映画がこの秋、次々と劇場公開されている。キアヌ・リーヴス主演の『ジョン・ウィック』は家族同様にかわいがっていたビーグル犬を殺された元殺し屋が復讐に燃えるアクションノワールとして人気を呼び、トルコ原産の大型犬カンガールドッグと孤独な少年との交流を描いたトルコ映画『シーヴァス 王子さまになれなかった少年と負け犬だった闘犬の物語』はロングラン上映中だ。12月から公開される3Dアニメ『I LOVE スヌーピー』では、“永遠のダメ少年”チャーリー・ブラウンが憧れの女の子の気を惹こうと愛犬スヌーピーに見守られながら学芸会の特訓に励む。どの作品も人間と犬との掛け替えのないパートナーシップが描かれている。そんな中で極めつけの犬映画といえるのが、11月21日(土)より公開されるハンガリー映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』。施設に収容されていた犬たちが一斉蜂起し、虐待した人間たちに襲い掛かるという異色の動物パニックムービーなのだ。  2014年のカンヌ映画祭で「ある視点」部門グランプリ&パルムドッグ賞を受賞した本作の舞台となっているのは、純血種の犬だけ残し、雑種の犬には重い税を課して、飼い主が払えない場合は殺処分が待っているという悪法が定められたある国。思春期を迎えた少女リリ(ジョーフィア・プショッタ)は両親の離婚に胸を痛めていたが、リリのことを慕う飼い犬のハーゲンだけが心の拠り所だった。ところが犬嫌いな父親ダニエル(シャーンドル・ジョーテール)は雑種犬に課せられた税金を払うことを拒み、ハーゲンを自宅から離れた高架下に棄ててしまう。愛するリリのもとに帰ろうとするハーゲンだが、途中で野犬ブローカーに捕まり、闇ドッグトレーナーの手で闘犬として調教されるはめに。やがて収容施設送りとなったハーゲンは、狭い檻に押し込められていた犬たちを率いて人間への逆襲に転じる。ハーゲンら総勢250匹の犬たちがブタペストの市街地を集団疾走するクライマックスは、CGなしの大スペクタクルシーンとなっている。  日本で配給収入54億円の大ヒットを記録した『子猫物語』(86)は撮影中に動物虐待を伴う過剰演出が行なわれていたことで悪評を極めたが、動物愛護意識の強い欧州のハンガリーで製作された『ホワイト・ゴッド』だけに出演犬は充分にケアされての撮影となった。闘犬シーンがあるが、1カ月以上のトレーニングを経た犬同士が楽しく取っ組み合う様子を撮ったものだという。また、出演した250匹の犬たちの多くはハンガリーで保護施設にいた野犬が起用されているというのも驚きだ。犬たちは映画に出演したことで話題となり、施設に戻されることなく、新しい里親たちに引き取られていったという美談が残されている。脚本を手掛け、劇中で野犬ブローカー役も演じたコーネル・ムンドルッツォ監督に製作内情について語ってもらった。
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施設から犬たちが大脱走! 街中を大パニックに陥れる。CGには頼らず、動物トレーナーが撮影の4か月前から犬たちと過ごすことで熱演を引き出した。
コーネル監督「いろんな犬と人間との関わりを間近で知ることができて、『ホワイト・ゴッド』の撮影は僕らにとって素晴しい体験だった。それで撮影終了後に、出演犬たちの引き取りを含めたキャンペーンを張ることにしたんだ。撮影クルーの何人かは本当に犬たちと親密になって、その場で引き取ることを決めていたね。ウェブサイトも作って、犬のオーナーになってくれる人たちを募集したんだ。サイトを覗けば、全部の犬を見ることができ、引き取るかどうか決められるようにしてね。驚いたことに、サイトを立ち上げて1週間で30匹の犬たちに新しいオーナーが見つかった。さらにハンガリーでのプレミア上映までに、全部の犬の居場所が確保できたんだ。もし、この映画を作っていなかったら、250匹の犬たちはまだ施設で他の犬たちと一緒に里親が現われるのを待っていたかもしれないね」  日本では熊本県や神奈川県など犬や猫の殺処分ゼロに取り組んでいる自治体が近年増えつつあるが、それでもまだ日本全体では年間12万8000匹もの犬や猫が施設で殺処分に遭っている(2013年度)。コーネル監督によると、ハンガリーでは公的な施設でも民間の施設でも殺処分は行なっておらず、清潔で健康的な施設で保護された犬たちは新しい家族に引き取られる日を待っているそうだ。海外のペット事情に詳しい動物愛護家にも尋ねたところ、ハンガリーに限らず欧州のほとんどの国では施設での殺処分はすでに行なわれておらず、営利目的のペットショップも存在しないとのこと。では、劇中での“雑種は排除”という設定はあくまでも絵空事なのかというと、必ずしもそうではないらしい。
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コーネル・ムンドルッツォ監督(画像右)。「人間の残酷さに対する、少女リリの純真さとハーゲンの知恵とを対照的に描きたかった」と語る。
コーネル監督「2、3年前にハンガリーの保守的な政党から、ピュアなハンガリーの犬種でない犬たちには重い税金を課そうという法案が持ち上がったことがあった。この法案は可決されなかったものの、『ホワイト・ゴッド』はまったくの空想というわけではないんだ。映画の中で描かれた犬たちは、権力者である政府から弾圧される者たちすべてのシンボルでもあるんだ。J・M・クッツェー(南アフリカの作家で差別、偏見、虐待などをモチーフにした小説で知られる)の本も参考にしている。観る人によっては第二次世界大戦時の強制収容所を連想するかもしれないが、ハンガリーやドイツなどのヨーロッパの国々だけに限らず、社会的マイノリティーへの弾圧や排斥はどこの社会やいつの時代でも起きているんじゃないかな。さらにいえば、既得権者たちが弾圧している側にいつか自分たちはリベンジされるのではないかという“恐怖”も描いているんだ」  犬版『猿の惑星』と称される『ホワイト・ゴッド』だが、『猿の惑星』の原作者ピエール・ブールは第二次世界大戦時にビルマで日本軍の捕虜となっていたのは有名なお話。日本兵によって白人兵たちが強制労働に従事させられた体験から、人間と猿との関係が逆転する『猿の惑星』を思いついている。『ホワイト・ゴッド』もまた、人類が21世紀になってもなお繰り返している人種差別や他民族への不寛容さが作品のベースとなっているようだ。『ホワイト・ゴッド』で暴動犬たちのリーダーとなったハーゲンと純真な少女リリとの間で培われた友情は果たしてどうなるのか。ラストシーンにコーネル監督の願いが込められている。 (文=長野辰次)
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『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』 監督・脚本/コーネル・ムンドルッツォ 動物トレーナー/テレサ・アン・ミラー 出演/ジョーフィア・プショッタ、シャーンドル・ジョーテール、ルーク&ボディ 配給/シンカ PG12 11月21日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー 2014(C)Proton Cinema,Pola Pandora,Chimney http://www.whitegod.net

殺処分寸前の犬たちが人間に復讐する!! ハンガリー映画に込められた社会的弱者たちの叫び

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犬版『猿の惑星』と評されているハンガリー映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』。少女リリと飼い犬ハーゲンは無二の親友だったが……。
 犬と人間との関係を描いた映画がこの秋、次々と劇場公開されている。キアヌ・リーヴス主演の『ジョン・ウィック』は家族同様にかわいがっていたビーグル犬を殺された元殺し屋が復讐に燃えるアクションノワールとして人気を呼び、トルコ原産の大型犬カンガールドッグと孤独な少年との交流を描いたトルコ映画『シーヴァス 王子さまになれなかった少年と負け犬だった闘犬の物語』はロングラン上映中だ。12月から公開される3Dアニメ『I LOVE スヌーピー』では、“永遠のダメ少年”チャーリー・ブラウンが憧れの女の子の気を惹こうと愛犬スヌーピーに見守られながら学芸会の特訓に励む。どの作品も人間と犬との掛け替えのないパートナーシップが描かれている。そんな中で極めつけの犬映画といえるのが、11月21日(土)より公開されるハンガリー映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』。施設に収容されていた犬たちが一斉蜂起し、虐待した人間たちに襲い掛かるという異色の動物パニックムービーなのだ。  2014年のカンヌ映画祭で「ある視点」部門グランプリ&パルムドッグ賞を受賞した本作の舞台となっているのは、純血種の犬だけ残し、雑種の犬には重い税を課して、飼い主が払えない場合は殺処分が待っているという悪法が定められたある国。思春期を迎えた少女リリ(ジョーフィア・プショッタ)は両親の離婚に胸を痛めていたが、リリのことを慕う飼い犬のハーゲンだけが心の拠り所だった。ところが犬嫌いな父親ダニエル(シャーンドル・ジョーテール)は雑種犬に課せられた税金を払うことを拒み、ハーゲンを自宅から離れた高架下に棄ててしまう。愛するリリのもとに帰ろうとするハーゲンだが、途中で野犬ブローカーに捕まり、闇ドッグトレーナーの手で闘犬として調教されるはめに。やがて収容施設送りとなったハーゲンは、狭い檻に押し込められていた犬たちを率いて人間への逆襲に転じる。ハーゲンら総勢250匹の犬たちがブタペストの市街地を集団疾走するクライマックスは、CGなしの大スペクタクルシーンとなっている。  日本で配給収入54億円の大ヒットを記録した『子猫物語』(86)は撮影中に動物虐待を伴う過剰演出が行なわれていたことで悪評を極めたが、動物愛護意識の強い欧州のハンガリーで製作された『ホワイト・ゴッド』だけに出演犬は充分にケアされての撮影となった。闘犬シーンがあるが、1カ月以上のトレーニングを経た犬同士が楽しく取っ組み合う様子を撮ったものだという。また、出演した250匹の犬たちの多くはハンガリーで保護施設にいた野犬が起用されているというのも驚きだ。犬たちは映画に出演したことで話題となり、施設に戻されることなく、新しい里親たちに引き取られていったという美談が残されている。脚本を手掛け、劇中で野犬ブローカー役も演じたコーネル・ムンドルッツォ監督に製作内情について語ってもらった。
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施設から犬たちが大脱走! 街中を大パニックに陥れる。CGには頼らず、動物トレーナーが撮影の4か月前から犬たちと過ごすことで熱演を引き出した。
コーネル監督「いろんな犬と人間との関わりを間近で知ることができて、『ホワイト・ゴッド』の撮影は僕らにとって素晴しい体験だった。それで撮影終了後に、出演犬たちの引き取りを含めたキャンペーンを張ることにしたんだ。撮影クルーの何人かは本当に犬たちと親密になって、その場で引き取ることを決めていたね。ウェブサイトも作って、犬のオーナーになってくれる人たちを募集したんだ。サイトを覗けば、全部の犬を見ることができ、引き取るかどうか決められるようにしてね。驚いたことに、サイトを立ち上げて1週間で30匹の犬たちに新しいオーナーが見つかった。さらにハンガリーでのプレミア上映までに、全部の犬の居場所が確保できたんだ。もし、この映画を作っていなかったら、250匹の犬たちはまだ施設で他の犬たちと一緒に里親が現われるのを待っていたかもしれないね」  日本では熊本県や神奈川県など犬や猫の殺処分ゼロに取り組んでいる自治体が近年増えつつあるが、それでもまだ日本全体では年間12万8000匹もの犬や猫が施設で殺処分に遭っている(2013年度)。コーネル監督によると、ハンガリーでは公的な施設でも民間の施設でも殺処分は行なっておらず、清潔で健康的な施設で保護された犬たちは新しい家族に引き取られる日を待っているそうだ。海外のペット事情に詳しい動物愛護家にも尋ねたところ、ハンガリーに限らず欧州のほとんどの国では施設での殺処分はすでに行なわれておらず、営利目的のペットショップも存在しないとのこと。では、劇中での“雑種は排除”という設定はあくまでも絵空事なのかというと、必ずしもそうではないらしい。
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コーネル・ムンドルッツォ監督(画像右)。「人間の残酷さに対する、少女リリの純真さとハーゲンの知恵とを対照的に描きたかった」と語る。
コーネル監督「2、3年前にハンガリーの保守的な政党から、ピュアなハンガリーの犬種でない犬たちには重い税金を課そうという法案が持ち上がったことがあった。この法案は可決されなかったものの、『ホワイト・ゴッド』はまったくの空想というわけではないんだ。映画の中で描かれた犬たちは、権力者である政府から弾圧される者たちすべてのシンボルでもあるんだ。J・M・クッツェー(南アフリカの作家で差別、偏見、虐待などをモチーフにした小説で知られる)の本も参考にしている。観る人によっては第二次世界大戦時の強制収容所を連想するかもしれないが、ハンガリーやドイツなどのヨーロッパの国々だけに限らず、社会的マイノリティーへの弾圧や排斥はどこの社会やいつの時代でも起きているんじゃないかな。さらにいえば、既得権者たちが弾圧している側にいつか自分たちはリベンジされるのではないかという“恐怖”も描いているんだ」  犬版『猿の惑星』と称される『ホワイト・ゴッド』だが、『猿の惑星』の原作者ピエール・ブールは第二次世界大戦時にビルマで日本軍の捕虜となっていたのは有名なお話。日本兵によって白人兵たちが強制労働に従事させられた体験から、人間と猿との関係が逆転する『猿の惑星』を思いついている。『ホワイト・ゴッド』もまた、人類が21世紀になってもなお繰り返している人種差別や他民族への不寛容さが作品のベースとなっているようだ。『ホワイト・ゴッド』で暴動犬たちのリーダーとなったハーゲンと純真な少女リリとの間で培われた友情は果たしてどうなるのか。ラストシーンにコーネル監督の願いが込められている。 (文=長野辰次)
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『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』 監督・脚本/コーネル・ムンドルッツォ 動物トレーナー/テレサ・アン・ミラー 出演/ジョーフィア・プショッタ、シャーンドル・ジョーテール、ルーク&ボディ 配給/シンカ PG12 11月21日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー 2014(C)Proton Cinema,Pola Pandora,Chimney http://www.whitegod.net

ソ連とアメリカが手を組んだ!? 史上最悪の2人が活躍する『コードネーム U.N.C.L.E.』

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 今週取り上げる最新映画は、1960年代のヨーロッパを舞台に、米ソの凄腕スパイが共闘するスタイリッシュな活劇と、問題を抱えたCIA工作員と借金苦のヘタレ男が捏造映像制作で奮闘する異色喜劇。2作品とも、対立していた2人がコンビを組むことから生まれる、緊張感と笑いがストーリーを盛り上げる(いずれも11月14日公開)。 『コードネーム U.N.C.L.E.』は、1960年代の英TVシリーズ『0011 ナポレオン・ソロ』をベースに、『シャーロック・ホームズ』シリーズのガイ・リッチー監督が映画化したスパイアクション。東西冷戦下の60年代前半、核兵器で世界を滅ぼそうとするテロ計画の情報をつかんだ米国とソ連は、それぞれナンバーワンのスパイをベルリンへ送り込む。CIAのナポレオン・ソロとKGBのクリヤキンは当初、テロ組織に拉致された核科学者の娘ギャビーを確保するため激しく対立するが、上層部の意向により、手を組んで組織に潜入することになる。 『007』や『ミッション・インポッシブル』というスパイ物の代表格はいずれも、主人公のエリートスパイがチームに支えられながら活躍するのに対し、本作は互いに反目し合う米ソのスパイがコンビを組む設定が際立って面白い。『マン・オブ・スティール』(2013)のヘンリー・カビルが演じるソロは金庫破りを得意とするスマートなプレイボーイ、『ローン・レンジャー』(13)のアーミー・ハマーが扮するクリヤキンは直情型で真面目な格闘技の達人。好対照なイケメン2人がぶつかり合いながら共闘する展開は、バディムービーとしても秀逸だ。ギャビー役には話題作への出演が続く新進女優アリシア・ビキャンデル、テロ組織を操る悪女ヴィクトリア役に『華麗なるギャツビー』(13)のエリザベス・デビッキと、タイプの異なる美女の競演も60年代ファッションと合わせて楽しめる。 『ムーン・ウォーカーズ』(R15+指定)は、アポロ11号の月面着陸映像がスタンリー・キューブリックによる捏造だったという都市伝説に着想を得たブラックコメディー。1969年、NASAのアポロ計画が失敗続きでソ連に先を越されることを恐れた米政府は、『2001年宇宙の旅』のキューブリック監督に月面着陸映像の捏造を依頼することに。ロンドンに送り込まれたCIA工作員キッドマンは、エージェントオフィスに居合わせた借金まみれの男ジョニーを代表だと思い込み、制作費をだまし取られてしまう。失態に気づいたキッドマンはジョニーを探し出すが、肝心の金は借金取りのギャングに奪われた後だった。 『ハリー・ポッター』シリーズのロン役で知られるルパート・グリントが、急場を口先でしのぐヘタレ男・ジョニーを熱演。『ヘルボーイ』シリーズのロン・パールマンが扮するキッドマンと成り行きで手を組み、捏造映像を制作すべく悪戦苦闘する姿が情けなくも笑える。ヒッピーたちのファッションやドラッグ、サイケデリックアートなど、当時のロンドンの文化がビビッドに再現されている点も見どころ。終盤の銃撃戦では過剰な人体破壊の描写があり、その手の過激な表現も笑いの要素として楽しめるジャンル映画のファンにオススメの怪作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『コードネーム U.N.C.L.E.』作品情報 <http://eiga.com/movie/79810/> 『ムーン・ウォーカーズ』作品情報 <http://eiga.com/movie/82541/>

「蛾は“愛らしい方”」蛾に心酔するアーティスト【蛾売りおじさん】って!?

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 筆者が働いている大阪・中津の「シカク」という書店で、あるイベントのチラシを目にした。表には暗い月夜に羽ばたく毒々しい「蛾」。裏を見ると「蛾売りおじさん個展」とあり、開催日や会場の案内が記されている。どうやら「蛾売りおじさん」という人物の個展案内らしい。そして、そこにはこんな一文が。 「蛾売りおじさんは、蛾の刺繍ブローチや絵画作品を制作しています。蛾の印象向上に努めて参ります」 「蛾の印象向上」に努めているというところにただならぬ迫力を感じて調べてみると、ご本人のTwitterアカウントが見つかった。そこには驚くほど精巧に蛾を模した作品の数々が画像付きで紹介されていて、目を引かれつつ、直視するのが怖いほどだった。おそらく大多数の人と同じく、私は蛾が苦手である……。
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 とはいえ、「蛾売りおじさん」とはいったいどんな人物なのか、気になって仕方がない。そこで、思い切って話を聞いてみることにした。ちなみに「おじさん」と名乗ってはいても、ご本人は20代後半の女性である! ――いつ頃から「蛾売りおじさん」として活動しているのですか? 蛾売りおじさん(以下、おじさん) 4年前のことです。友人にプレゼントするため、蛾ブローチを作ったのがきっかけでした。蛾と布の相性がとてもよく、自分で言うのもなんですが、とてもかわいらしいものができたんです! その友人の勧めもあって、当時通っていた大学の学祭で売ろうということになり、制作を始めました。 ――なぜ「蛾売りおじさん」なのですか? おじさん 数年前に、ヒゲにハマっていた時期がありまして……。『世界ヒゲ選手権』という大会で、世界各国の、ヒゲにとてつもなく深いこだわりを持った人たちの姿を見たのがきっかけでした。その影響で、イベント参加時に付けヒゲをしたいと思いまして、その理由付けとして、おじさんを名乗ることになったんです。 ――なるほど、ヒゲありきの「おじさん」だったんですね。それにしても、「蛾ブローチ」の羽の模様はすごく精巧にできていますが、これはどのように作られているのでしょうか? おじさん ひと針ひと針、手刺繍で制作しています。本物の蛾も、透明の翅を土台に鱗粉が一粒一粒乗っかって、、あの精巧で美しい模様を作っているんですが、鱗粉を糸に置き換えるようなイメージで制作しています。
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――そもそも、蛾に魅入られるきっかけって、なんだったんですか? おじさん もともとは芋虫好きだったのですが、ある時、大きめの蛾に出会って、そのモフモフとした胴体、黒くてクリクリとした瞳、うさ耳のような櫛形触覚、高級絨毯のような美しい翅……! そのすべてに、一目惚れのごとくぞっこんに惚れ込んでしまいました。インターネットや図鑑などで調べていくと、ますます興味が湧き、明かりに集まる蛾を求めて、夜中のコンビニ巡りを始めました。住んでいたところが山に近いこともあり、写真で見てアイドルのように感じていた方たちにぞくぞくと出会うことができて、より一層のめり込んでいきました。
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――蛾を目当てに、夜のコンビニに来ている人がいるとは思いませんでした! 私は蛾が苦手なのですが、同じ意見の人が多いかと思います。そんな世の中をどう思われますか? おじさん 蝶が苦手という人はあまりいないのに、蛾が苦手という人が多いことを不思議に思っています。おそらく、よく知らないことが一番の要因だと思います。「毒がありそう……」とか「鱗粉をまき散らす」など、ネガティブな印象をよく聞きます。でも、実際のところ毒を持っている方はほんの一握りで、ほとんどの方に毒はありません。また、蝶に比べて蛾に鱗粉が多いのは夜に活動するからで、夜は昼に比べて温度が低いため、熱を逃がさないようにしているのだと思います。寒い日に、毛皮のコートをまとうようなものではないでしょうか。予想外のほうに飛んでくるのを怖がる人もいるようですが、実際は飛ぶのがへたっぴな「どじっこさん」なんです。
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――蛾のことを「どじっこさん」と思って見たことがなかったので、新鮮です。蝶より蛾のほうがお好きなのですか? おじさん 蝶も好きですが、蛾のほうに、より魅力を感じます。蛾は日本だけでも6,000種以上いるといわれるくらい、種類が豊富です。蝶は250種類ほどで、むしろ蛾の種類の中に蝶が入っているようなものです。種類が多いこともあって、身近で出会う可能性が高いのも魅力のひとつだと思っています。しかも、蛾は飛ぶのが苦手なためか、一度止まるとじーっとしていまして、観察したい放題なのもいいです。
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――どうしても、蛾をじっと観察するのに、まだ抵抗が……。「蛾売りおじさん」の作品を購入されるのは、蛾が大好きな人ばかりですか? おじさん どちらもいらっしゃいます。蛾がお好きな人はこだわりどころをわかっていただける人が多いですし、実物は苦手でも、制作物としてなら平気だとおっしゃる人もいらっしゃいます。作品をきっかけに、本物の蛾に対しても愛着を感じてくださる人もいらっしゃって、そのような報告を聞くと大変うれしく感じます。
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――最近、イチ押しの蛾はいたりしますか? おじさん 個展のDMにも起用しているのですが、「イボタガ」という方をとても特別に思っています。シックなブラウンを基調とした複雑で精巧な模様は大変美しく、初めてお会いした日を忘れることができません……。最近気になっている方は「フユシャク」の仲間です。冬は虫が少なくなるシーズンですが、蛾にはシーズンオフはありません。冬には冬の蛾がいるのです! ぽってりとしたおなかが大変愛らしい方なんです。これからシーズンなので、お会いできるとうれしいです。 ――「蛾売りおじさん」としての目標や夢などは、ありますでしょうか? おじさん 負のイメージを持たれがちな方たちですが、知ってみると、とても魅力的で素敵な方々です。少しでも、蛾の良さを知っていただけるきっかけを作れたならうれしいです。蛾の印象が向上するよう励んで参ります。たくさんの種類がいるので、一種類でも多くの方を作れたらいいなぁと思います。
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※中央の「猫蛾」は蛾売りおじさんの創作蛾
***  蛾売りおじさんは、蛾のことを「愛らしい方」と呼ぶ。「繊細に織られたマントに毛皮の首巻きや手袋をまとっている蛾のデザインは、まるで紳士淑女のようなのです。高貴な方々のように感じてしまい、なんだか呼び捨てできないんです」と語るところからも、その愛の強さがうかがえる。蛾売りおじさんの個展情報をTwitterの公式アカウントやブログでチェックして、蛾嫌いを克服しに行ってみませんか! (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/蛾売りおじさん - Twitter <https://twitter.com/higenogauri> ガブログ <http://blog.goo.ne.jp/higenogauri>

グダグダすぎる主人公を反面教師に! 全国の浪人生に贈る、予備校生マンガ『冬物語』 

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『冬物語』(原秀則/ヤングサンデーコミックス)
 予備校は受験勉強するところ? いえいえ……恋をするところです!  皆さんは、予備校に通ってましたか? 最近は少子化で、すっかり予備校の存在感は薄れており、目立っているのは「今でしょ!」の林修先生ぐらいですが、1970~90年代前半までは大学受験バブル。大学行くなら浪人して当たり前という、予備校天国の時代でした。かくいう僕も、かつては予備校で浪人生をしてました。  予備校といえば、その代名詞ともいえるのが駿台予備学校、河合塾、代々木ゼミナールのいわゆる3大予備校。「生徒の駿台、机の河合、講師の代ゼミ」なんて言われてました。いま思うと、「机の河合」って、扱いがヒドすぎますね。  そんな浪人、予備校ブームの最中に生まれた『冬物語』というマンガがあります。浪人して予備校に通う受験生たちの、まさしく「冬」な心境を描いた作品です。主人公の森川光は大学入試で、ことごとく不合格。残るはスベり止めに受けた「八千代商科大学」のみという状況。 「バーカ! あそこ(八千代商科大学)落ちたら人間やめるよ!」 「そーよ、あそこならだいじょーぶよ! あんなとこ小学生だって受かるわよ!」 「大学生っても、あそこじゃなあ…」  これぞまさに「Fラン大学」といった趣ですが、光はなんと、その「八千代商科大学」すら不合格。つまり小学生以下、人間やめろ状態です。付き合っていた彼女の和美ちゃん(専修大合格)にはあきれられた挙げ句にフラれ、どん底冬状態で浪人生活がスタートします。  この作品の見どころはなんといっても、主人公・光のすさまじいばかりの優柔不断さ、川の流れのようによどみなく流れていく意志の弱さにあるといえましょう。    浪人が決定し、通い始めた予備校、山の手ゼミナール(代ゼミがモデル)では、なんと「東大専科コース」に申し込む光。Fラン大学すら落ちた男が、なぜに東大専科コースを……? 実は、予備校で見かけたかわいい女の子(ヒロインの雨宮しおり)が東大専科コースに申し込んでいるのを見て、ついフラフラと、うっかり申し込んでしまったのです。なんだコイツは!? いきなりダメすぎる!!  当然、東大レベルの授業に、まったくついていけない光。模試の成績も赤点だらけ。さすがに、しおりちゃんにも心配されてしまいます。もちろん東大を受ける学力がないのは、本人が一番わかっているんです。でも、でも……! 「好きなコがいるんだよ…東大…東大目指してる好きなコが…だから…」  ドサクサに紛れて、しおりちゃんに遠回しな告白をする光。しかし、対するしおりちゃんは、それに気がつくどころか……。 「あたしも…光くんと同じなの…好きな人いるの! 東大に…」  告ったと思ったら返す刀で速攻轟沈。そう、しおりちゃんは、東大に入った彼氏を追いかけて一生懸命勉強している一途な女の子だったのでした。  しおりちゃんに脈がないことが判明したので、さっさと東大専科コースをやめればいいのですが、しおりちゃんに未練タラタラの光。いつまでもクヨクヨして、やめるやめないで悩み続け、ついに私大文系コースへの変更を申し出た時には単行本1巻のラストシーンでした。ここまでほとんど勉強せず。ダメだこりゃ!!  単行本2巻では、やっと夢から覚めた光。私大文系コースで目標を日東駒専に定め、再スタートを切ったのですが……。光の前に、新たなヒロインが登場。その名も、倉橋奈緒子。  天真爛漫で積極的なキャラクターながら、青学、中央を蹴って一貫して慶応を狙う才女です。この奈緒子がダメ男好きなのかなんなのかわかりませんが、光をひと目で気に入り、ちょっかい出しまくり。予備校そっちのけで映画に誘ったり、家に呼んだりと誘惑し、しまいにはキスまでしちゃいます。もともと意志の弱い光、これは勉強どころではありません。  これだけでも十分浪人生としてヤバい状況なのですが、奈緒子の一途な思いを裏切るように、しおりちゃんへの未練が再燃。勉強はできないくせに、恋愛だけはイッチョマエの恋多き予備校生として進化しています。  そんなこんなで迎えた、受験シーズン。一年浪人したその成果は……現役の時に落ちた「八千代商科大学」だけ合格! まあ、一応の成果はあったようです。親御さんも一安心です。  そのまま八千代商科大学でキャンパスライフを送るものの、やっぱり納得できない光。勉強できないくせに、プライドだけは一人前。親に黙って勝手に休学届を出して、再び予備校へ舞い戻ってきます。そう、二浪目突入です。しかし、ほどなくして休学がバレ、家族会議に。弟もこれから受験なのに、二浪させるお金なんてないとカーちゃんが泣いてます。身につまされるシーンです。 弟「俺、大学行く気ねーからさ。ま、がんばってよ」 父「金のことは心配するな、ボーナスとかその他にも多少は貯えあるから」  弟はともかく、父ちゃんのセリフ、明らかにムリしてます。  親を泣かせてまで選んだ二浪の道は、まさに修羅の道。今度こそ心を入れ替えて勉強を……と決意したところ、同じく東大に合格できず二浪目に突入したしおりちゃんと予備校で再会。再び、泥沼のノー勉強ライフへ……。  そんな感じで光のダメっぷりにイライラしたり、俺はさすがにこんなにヒドくなかったわーとか安堵しながら読むのが、この『冬物語』のたしなみ方ではないかと思うのです。  マンガではありえないほど情けなく見える光ですが、実はリアルな予備校生のひとつの姿だともいえます。中学・高校と違い、予備校生は基本的に時間の制約がないため、好きな時に好きなだけ勉強できる代わりに、自己管理ができないと、どんどん落ちていきます。誘惑に負けない意志の強さが求められるんです。  ちょっと最近サボり気味でヤバいなと思っている受験生の皆さんには、ぜひ『冬物語』を読んでいただき、勉強しなかったらコイツみたいになっちゃう! と光を反面教師にしつつ、頑張るのがオススメですよ! (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)