『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』などの人気漫画家で、文化功労者の水木しげる(本名・武良茂)さんが30日、心不全のため東京都内の病院で死去した。93歳という年齢は「大往生」と呼ぶに相応しい。ネット上では「ショック」「ただただ残念」と悲しみに暮れる声や、「不死身だと思っていた」など、90歳を超えても時折元気な姿をメディアに見せていた水木さんの死に、実感が湧かないといった声も非常に多い。 「妖怪」という用語を『ゲゲゲの鬼太郎』などを通して一般化し、妖怪研究の第一人者でもある水木さんの功績は計り知れず。彼の存在がなければ、ここ数年大ブームの「妖怪ウォッチ」が生み出されることもあり得なかっただろう。 大阪生まれの鳥取育ちである水木さんは、少年時代からその超がつくほどのマイペースぶりで周囲では有名だったようだ。大人になってからもインタビューや対談がつまらない時は、突然散歩に出かけてしまうというハプニングもあったようで、その性格は生涯変わらなかったらしい。 10代後半になってもそのエピソードは目を見張るものばかり。大阪の美術学校では教師よりも自分が上だと思って通わなくなる、定員50名に対し受験者51名の園芸学校でまさかの不合格(面接で園芸や農業に興味はないと答えたため)など、風変わりかつ才気を感じさせる日々を過ごしていたのがうかがえる。そして、水木さんの人生観に大きな影響を与える太平洋戦争に赴いたのは、彼が20代前半のころだった。 南方ニューギニア・ニューブリテン島での壮絶な戦争体験は『水木しげるのラバウル戦記』(ちくま文庫)や多くのインタビューでも語られている。圧倒的な物量を持つ連合軍への特攻そのもの攻撃やゲリラ戦、島の原住民ゲリラに“落ち武者狩り”に遭いそうになって海に逃げ、ジャングルをほぼ裸で三日三晩逃げ続けた、爆撃を受けて左腕を麻酔なしで切断など、想像を絶する体験の数々だ。ただ、それ以上に驚きなのが、島の原住民であるトライ族と交流し、最終的に集落の「仲間」にまでなった点だ。あまりの楽園ぶりに「ここで一生暮らそう」とまで考えるのだから、やはり常人の感覚を飛び越えている。左腕を失ったことも「命があればそれでいい」と特に気にしなかった模様。すごすぎる。 戦火を生き延び、美術学校で学んだ後に紙芝居、貸本を経験して『墓場の鬼太郎』シリーズを刊行。人気作家への道筋を作り、現代漫画の源流の一つとなる「月刊漫画ガロ」(青林堂)の看板作家の一人として活躍した。一時低迷したものの、妖怪漫画の映像化や『ゲゲゲの鬼太郎』が人気を集めて地位を確立。90年代以降は大御所として多くの個性的な作品を送り出し、1991年に紫綬褒章を、2003年に旭日小綬章を受章して偉大な文化人の仲間入りを果たした。 水木さんの才能を表すエピソードとして、『墓場の鬼太郎』を見た“漫画の神様”手塚治虫氏が嫉妬に狂ったというものがある。水木さんに面と向かって「あなたの漫画くらいのことは僕はいつでも描けるんですよ」と強がったという。神様に嫉妬されるという点で、そのすごさが分かるというものだ。手塚治虫氏などを筆頭に、人気漫画家は早世で知られている。水木さんは「2日寝てない、3日寝てない」と自慢する人気作家が60を過ぎて亡くなってしまうことに「どんなに忙しくても8時間寝る」と語ったらしい。 自分のペースで、自分の好きな仕事を思い切りやっての長寿。誰もがうらやむような人生だが、その裏には戦争や極貧生活などの過酷な体験があり、普通なら潰れてしまってもおかしくない日々もあったはずだ。それでも、インタビューでも明るく楽しい受け答え、90歳でもジャンクフードを食べ続けたりと快活でいられたのは、水木さんが常に背伸びすることなく、ひたすらポジティブに生きてきた結果ではないか。 2010年、妻である武良布枝さんが著した自伝『ゲゲゲの女房』(実業之日本社)がドラマ化されてヒットしたが、ストレスが溜まりやすいとされる現代人の多くに、水木さんの柔らかな生き方がかなり響いたということかもしれない。亡くなっても「天国で妖怪と楽しくやってるのかな」と想像させてくれるあたりもさすが。様々な意味で、多くのものを遺してくれた偉人だった。心からご冥福をお祈り申し上げたい。 最後に、水木さんが『わらしべ偉人伝』(扶桑社 03年)で、インタビュアーと交わした伝説のやり取りを追記する。 インタビュアー「水木先生は今でも現役でいらっしゃる」 水木さん「もう10年以上ハレンチなことはしとりませんよ」水木プロダクション公式サイトげげげ通信
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行きたくても行けない!? “本邦初”日本の秘島ガイドブック『秘島図鑑』
島はいい。なんといっても、空気がゆるい。伊豆大島(東京都)や初島(静岡県)のように、首都圏から2時間かからずに行ける島であっても、足を踏み入れた途端、不思議なほどのんびりとした空気や時間が流れる。 そんな魅力的な有人の島を紹介するガイドブックはこれまで何冊もあったが、『秘島図鑑』(河出書房新社)は、本邦初の“行けない島”のガイドブックだ。日本全国に約7,000もあるという島々の中から、興味深い歴史や文化をひもとき、中でも特別感のある“秘島”を絞り、紹介している。登場する島は、全部で33島。女人禁制の伝統を持つ神聖な島として崇められる沖ノ島(福岡県)、太平洋戦争で激闘が繰り広げられた硫黄島(東京都)、北方四島・竹島・尖閣諸島といった領土問題に揺れる島から、アホウドリの生息地としても有名な鳥島(東京都)、トカラ列島のさらに先にある横島(鹿児島県)、フランスの軍艦バイヨネースが発見したベヨネース列岩(東京都)など、ほとんど耳にしたことがない島まで、幅広い。 本書はこれらの島について、例えば沖縄県東部にある沖大東島(ラサ島)であれば、「1543年、スペイン人(B・デ・ラ・トーレ)が島を発見。1807年、フランス軍艦カノリエル号により、「ラサ島」と命名。1900年、日本領に編入。11年にラサ島燐砿合資会社(34年ラサ工業に改称)が設立され、リン鉱石の採取・搬出が始まる。37年、日本政府よりラサ工業に沖大東島が譲渡され、正式にラサ工業の私有地となる。45年、太平洋戦争の激化で、従業員やその家族ら民間人が引き揚げる。58年、在日米海軍が島全体を射撃場として使用開始」などと、見開きの島の写真に基本情報が添えられ、ヒジョーに興味をそそる。これに加え、熾烈を極めた資源採取や島の開拓、男性しか暮らすことができなかった時代、現在の島の様子などが続き、これは本当に日本の話ですか? なんてツッコミたくなるほど、驚きの情報が詰まっている。 また、島紹介とは別に、50ページほどにわたる、行けない島を身近に感じるための「実践編」の章も興味深い。「秘島の“最寄”有人島まで行ってみる」「浜辺の漂着物をチェックする」「マイナー航路に乗って絶海を感じる」など、具体的な提案がされているのだが、中でも気になったのが「本籍を島に移してみる」というもの。都会で暮らしつつ、どんな島に本籍を置くことができるのかなどが詳細に記されており、ちょっとやってみたくなる。 本書を読んでいると、日本の島にはずいぶんいろいろな歴史があって、自分は全然知らないんだな、ということを痛感させられる。行ってみたいけれど、アクセスの方法もないし、行けない――。そんな近くて遠い日本の秘島へ、思いを馳せてみてはどうだろうか? (文=上浦未来) ●しみず・ひろし 1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。テレビ局勤務を経て、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、同大学院新領域創成科学研究科博士課程中退。現在、編集者・ライター。『海に癒される。 働く大人のための「海時間」のススメ』(水中クラブOB高橋啓介と共著、草思社)など。『秘島図鑑』(河出書房新社)
行きたくても行けない!? “本邦初”日本の秘島ガイドブック『秘島図鑑』
島はいい。なんといっても、空気がゆるい。伊豆大島(東京都)や初島(静岡県)のように、首都圏から2時間かからずに行ける島であっても、足を踏み入れた途端、不思議なほどのんびりとした空気や時間が流れる。 そんな魅力的な有人の島を紹介するガイドブックはこれまで何冊もあったが、『秘島図鑑』(河出書房新社)は、本邦初の“行けない島”のガイドブックだ。日本全国に約7,000もあるという島々の中から、興味深い歴史や文化をひもとき、中でも特別感のある“秘島”を絞り、紹介している。登場する島は、全部で33島。女人禁制の伝統を持つ神聖な島として崇められる沖ノ島(福岡県)、太平洋戦争で激闘が繰り広げられた硫黄島(東京都)、北方四島・竹島・尖閣諸島といった領土問題に揺れる島から、アホウドリの生息地としても有名な鳥島(東京都)、トカラ列島のさらに先にある横島(鹿児島県)、フランスの軍艦バイヨネースが発見したベヨネース列岩(東京都)など、ほとんど耳にしたことがない島まで、幅広い。 本書はこれらの島について、例えば沖縄県東部にある沖大東島(ラサ島)であれば、「1543年、スペイン人(B・デ・ラ・トーレ)が島を発見。1807年、フランス軍艦カノリエル号により、「ラサ島」と命名。1900年、日本領に編入。11年にラサ島燐砿合資会社(34年ラサ工業に改称)が設立され、リン鉱石の採取・搬出が始まる。37年、日本政府よりラサ工業に沖大東島が譲渡され、正式にラサ工業の私有地となる。45年、太平洋戦争の激化で、従業員やその家族ら民間人が引き揚げる。58年、在日米海軍が島全体を射撃場として使用開始」などと、見開きの島の写真に基本情報が添えられ、ヒジョーに興味をそそる。これに加え、熾烈を極めた資源採取や島の開拓、男性しか暮らすことができなかった時代、現在の島の様子などが続き、これは本当に日本の話ですか? なんてツッコミたくなるほど、驚きの情報が詰まっている。 また、島紹介とは別に、50ページほどにわたる、行けない島を身近に感じるための「実践編」の章も興味深い。「秘島の“最寄”有人島まで行ってみる」「浜辺の漂着物をチェックする」「マイナー航路に乗って絶海を感じる」など、具体的な提案がされているのだが、中でも気になったのが「本籍を島に移してみる」というもの。都会で暮らしつつ、どんな島に本籍を置くことができるのかなどが詳細に記されており、ちょっとやってみたくなる。 本書を読んでいると、日本の島にはずいぶんいろいろな歴史があって、自分は全然知らないんだな、ということを痛感させられる。行ってみたいけれど、アクセスの方法もないし、行けない――。そんな近くて遠い日本の秘島へ、思いを馳せてみてはどうだろうか? (文=上浦未来) ●しみず・ひろし 1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。テレビ局勤務を経て、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、同大学院新領域創成科学研究科博士課程中退。現在、編集者・ライター。『海に癒される。 働く大人のための「海時間」のススメ』(水中クラブOB高橋啓介と共著、草思社)など。『秘島図鑑』(河出書房新社)
戦争で失った家族の誇り……名画に隠された秘話とは!?『黄金のアデーレ 名画の帰還』
今週取り上げる最新映画は、アカデミー賞女優ヘレン・ミレン主演の実話ドラマと、残酷ホラーの名手イーライ・ロスによる6年ぶりの監督作。華麗な絵画をめぐる物語を美しい映像で描く前者と、強烈な食人シーンと文明風刺が印象に残る後者、それぞれマニア以外にも支持される魅力に満ちた話題作だ。 『黄金のアデーレ 名画の帰還』(11月27日公開)は、クリムトの名画「黄金のアデーレ」をめぐり実際に起きた裁判を描くヒューマンドラマ。オーストリアのユダヤ名家に生まれ育つが、第2次大戦時にアメリカへ亡命し、今や82歳になったマリア。彼女は新米弁護士ランディとともに、かつて伯母アデーレをクリムトが描いた肖像画の返還をオーストリア政府に求める。その絵は、ユダヤ人迫害を強めていたナチスドイツに奪われたが、終戦後母国に寄贈されたことになっていた。膨大な資料を調べたマリアとランディは、わずかな可能性に望みをかけ、同国政府を相手取って裁判を起こす。 世界的に知られる華やかな名画をめぐる、並の創作以上にドラマティックな実話に感嘆させられる。『クィーン』(2006)でアカデミー主演女優賞を獲得したヘレン・ミレンが、不屈の精神とユーモアを備えた主人公マリアを好演。頼りない相棒役のライアン・レイノルズも、最初は金目当てで引き受けるものの、やがて使命に目覚め成長していく若き弁護士を熱演した。監督は『マリリン 7日間の恋』(12)のサイモン・カーティス。高貴な美術品をめぐる物語にふさわしい、格調高い映像と音楽でも楽しませてくれる。 『グリーン・インフェルノ』(11月28日公開、R18+指定)は、『ホステル』(06)の残酷描写で名を馳せた鬼才イーライ・ロスが、アマゾン奥地で米国人学生グループが体験する恐怖を描くホラー。女子大生のジャスティンは、学内の環境活動家たちに誘われ、アマゾンの森林伐採現場を訪れる。過激な抗議行動が問題となり強制送還されるが、帰りの飛行機がジャングルに墜落。生き延びたジャスティンら数名は、先住民のヤハ族に捕らえられる。監禁された彼らが目にしたのは、仲間の1人をヤハ族が生きたまま解体し、その肉片をほおばる異常な光景だった。 ルッジェロ・デオダート監督作『食人族』(83)をはじめ、当時カルト的ブームを巻き起こしたカニバル映画を偏愛するロス監督が、スマホやネット動画を駆使する今どきの若者が遭遇する恐怖譚として再構築。学生たちが次々に惨殺される様子を多彩なバリエーションで描き、同監督ならではのこだわりを感じさせる。一方で、マリファナの思いがけない活用法など、笑える小ネタも。耐性のない人が観たらトラウマ必至の本作は、文明人のごう慢な環境保護運動に対する辛らつな皮肉でもあり、見た目の過激さだけでなく現代社会への風刺も効いた衝撃作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 「黄金のアデーレ 名画の帰還」作品情報 <http://eiga.com/movie/81867/> 「グリーン・インフェルノ」作品情報 <http://eiga.com/movie/79777/>(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015
「オスグッド病」「ヘルニア」は無能な医師の言い訳? 元サッカー日本代表を蘇らせた『足ゆび力』とは
オスグッド・シュラッター病や椎間板ヘルニアという病名は、無能な医師の言い訳なのかもしれない。『足ゆび力~つま先を使うだけで一生健康でいられる~』(ガイドワークス)を読了し、そう感じている。 腰痛の人が病院に行くと、医師に「レントゲンを撮りましょう」と言われる。そして、レントゲンを見せながら「腰の骨が変形して突出したことにより、神経を圧迫させている」と、椎間板ヘルニアと診断されるのがほとんどではないか。 だが、2011年に放送されたNHK『ためしてガッテン』では、「MRI検査でヘルニアを確認、緊急手術が必要とのことで、手術を受けた。手術は成功したが、腰痛は消えず、5年たった現在も腰痛は残っている』とある腰痛患者の様子がリポートされ、椎間板ヘルニアへの疑問が投げかけられている。 さらに、「腰に負担のかかる職業の15人を調べ、うち2人にはMRIでヘルニアがハッキリ確認できたが、2人とも腰痛はまったくなかった。この点について、最新の医学研究では、腰に痛みがない人でも80%にヘルニアが見つかり、ヘルニアが腰痛の真の原因ではないことが判明している。また違うデータでは、ヘルニアを手術した場合としない場合(経過観察)で、2~10年後の痛みの回復状況はほぼ変わらない。もちろん、ヘルニアの症状によっては手術が必要な場合もあるが、ほんの数%のケースでもある」と、真っ向からヘルニアが腰痛の原因とする説を否定している。 近年の医学界では、腰の痛みの原因をヘルニアではなく、「仙腸関節のズレ」と提唱する医師が増え、名医と呼ばれている。本書『足ゆび力』の監修者である夏嶋隆氏も、そのひとりだ。 ただし、夏嶋氏とほかの名医たちには違いがある。夏嶋氏は仙腸関節のズレを治すだけでなく、このズレが生じる原因も正す。本書には、仙腸関節のズレとなる原因が足の内旋であることが詳細に記されており、足の内旋を防ぐために“足指トレーニング”が推奨されている。 実際に夏嶋氏は、サッカー元日本代表であるゴンこと中山雅史氏や、ドラゴンこと久保竜彦氏を再起させている。久保氏は、「自分の人生に影響を与えた人は誰ですか?」という質問に対し、「(山形県にいる)断食(道場)の先生。サッカー関係は、高校の先生と、『FWやってみいや』って言った河内(勝幸)さん。あと、ジーコもうまぁって思ったね。(膝が悪いから)こんな歩き方(ひょこひょこ歩き)してんのに、ミニゲームとかになるとめっちゃうまい。でも、一番は夏嶋先生。命の恩人のような恩人というか。師匠じゃないけど、人間に大事な感覚というのをよみがえらせてくれた。あそこで夏嶋先生に会わんかったら、どんな人生になってしまったんやろって思います」と語っているくらいだ。 そんな本書に記されている理論はもちろんだが、それ以上に興味深いのが夏嶋氏の“物の見方”である。 「今の世の中に出ていることを疑うことも大切ではないでしょうか。常識や通説の中だけで生きていたら、発明や発展は起きません。いろいろな経験者がそれぞれ方法論を持っています。それがテレビや本で世に出るワケです。ただし、そこには経験という主観も入ってくるので、正論もあれば、違う部分もありますよね。伝言ゲームみたいになっていますから。だからこそ、理論の原点には学問がなければいけません」(『足ゆび力』より抜粋) ヘルニアを削ってもなぜ腰の痛みがなくならないのか? オスグッドになると休むしか方法がないのはなぜなのか? その“WHY”がなければ、医療の発達はない。『足ゆび力~つま先を使うだけで一生健康でいられる~』(ガイドワークス)
90年代の子どもカルチャーの変遷が一目瞭然!?『よみがえるケイブンシャの大百科 完結編』
みんなー! ケイブンシャの大百科の大百科だよー! 君はどの大百科を読んだことある? ちなみに僕のファースト大百科は「超新星フラッシュマン大百科」。当時小学生だった僕は、敵の女幹部役の女優さんがにこやかに取材に応じるオフショットやら、少女漫画チックな漫画(いわゆる同人誌的なタッチ)に衝撃を受けたもんだ。「スーパーマリオブラザーズ1・2・3大百科」では、女性モデルさんがマリオのコスプレしてて、生まれて初めて「コスプレ」なるものを知ったのはこれまた大百科……。 この後、僕はオタク道を驀進するようになったんだけど、間違いなくケイブンシャの大百科の影響だろう。 そんな感じで、アラサー以上の世代にサブカルチャーの洗礼を与えまくったケイブンシャの大百科とは、今は亡き出版社・勁文社より1977年から2002年まで発行され続けていた文庫サイズの子ども向け豆事典シリーズである。通し番号は697番。改訂版などを含めれば、700種以上の大百科が世に産み落とされた定番シリーズであった。 その内容は、特撮、アニメ、プラモデル、ゲーム、鉄道、釣り、スポーツなど子どもなら誰もが興味を持ちそうなホビー系から、オカルト、怪談、芸能ネタ、料理、クイズ、マナーまで実に多彩。 ライター陣も、各ジャンルのマニアが集結。専門誌顔負けのコアな情報満載で、その充実した情報には大人のマニアのファンも多くついていたという。 このケイブンシャの大百科の、昭和時代に発売されたラインナップを網羅した『よみがえるケイブンシャの大百科』(いそっぷ社)が上梓されたのが昨年のこと。それからおよそ1年のスパンを経て、平成時代に発売された大百科を集めた続編『よみがえるケイブンシャの大百科 完結編』(同)が、先日満を持して出版された。この2冊でケイブンシャの大百科の全タイトルが明らかとなった! それだけでも当時の読者は感涙ものだが、今回の『完結編』では別冊として出版された「ゴジラマガジン」編集者・野村宏平氏、数多くの大百科を制作した編集プロダクション・ワークハウスの元主宰者・山下幸雄氏などケイブンシャの大百科黄金期を盛り上げた人々へのインタビュー。さらに2000年代以降、ネット上で幻のトラウマ漫画として一世を風靡した「蝉を食べた少年」の作者への取材&漫画の再録も敢行するなど、大百科ファンにはたまらないラインナップが並ぶ。後にも先にも「ケイブンシャの大百科」をここまで丸裸にした書籍なんて、存在しないはずだ。 そんな『完結編』最大の見どころは徐々に子ども向けホビーがテレビゲームとアニメに駆逐されていく姿であろう。90年代初頭までは、ゲーム、アニメ、特撮に混じって鉄道、野球、釣り、料理など幅広く題材を取り扱っていた大百科も、90年代半ばになるとほぼゲーム、アニメの(しかも、かつてのようなライターの遊び心あふれる内容ではなく、お行儀のいい公式感バリバリの!)ラインナップ一色となる。いかに当時、テレビゲームとアニメが強かったのか、ということがうかがえる。と同時に、バブル崩壊の影響か、それまでのように取材や撮影に予算が割けなくなったのでは……という台所事情も、当時の関係者へのインタビューからもうかがい知れる。その点、アニメやゲームは基本的に編集部内でゲームをプレーし、画面を撮影すればいいのだからかなりお手軽である。 シリーズ末期になると、かつて出版された大百科の改訂版ラッシュに突入。そして2002年に勁文社は倒産する。 図らずも前作『よみがえるケイブンシャの大百科』では、サブカルチャー・ホビー文化が一斉に花開く70年代後半から80年代という時代の波に乗って、大躍進する大百科の姿が収められ、今作「完結編」では趣味の細分化の影響か、はたまた経営的な事情なのか、大百科が徐々に縮小し、時代の本流に呑み込まれていく姿が収められている。この2冊には、日本の近代子どもカルチャーの歴史が凝縮しているといっても過言ではない。 掲載されているラインナップから、幼き日の思い出にひたるもよし。徐々に多様性を失っていくタイトルに涙を流すもよし。関係者の証言から、編集部がいかに大百科を作っていたかに思いをはせるもよし。 『よみがえるケイブンシャの大百科 完結編』は、そんな甘酸っぱい思春期の思い出いっぱいの一冊である。『よみがえるケイブンシャの大百科[完結編]』(いそっぷ社)
まずマリオを出せ!? 任天堂・スマホ事業の動きにガッカリ多数も、「マリオカート」と「ポケモン」が……
日本ゲーム業界の「ガリバー」である任天堂が、インターネット企業であるDeNAと業務・資本提携を発表してから、はや半年以上が過ぎている。10月末には任天堂が年内リリースを予定していた初のスマートデバイス向けアプリ『Miitomo(ミートモ)』の発表を来年に延期したと発表し、株価が一時急落していたが……。 そもそもこの『Miitomo』は、社長の君島達己氏がいうには「ネタふりコミュニケーション」だそう。友だちの知らなかった意外な一面や、思いがけない共通点を発見できるアプリということだが、ネット上や期待していたファンの間では「マリオじゃないのか」「ゲームなのかこれは」「アメーバピグの真似事」など散々な意見ばかりが目立つ。リリース延期と合わせ、多くの人が失望を感じたということだろう。 『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』などのような、任天堂が誇るゲーム界の「最強コンテンツ」に多くの人が期待するのは当然のこと。任天堂の動きを“温存”と見る向きもあるが、不満が出るのも仕方なしか。 「『マリオ』がどうというより、ゲーム会社として『Miitomo』のようなコミュニケーションツールよりではなく、純粋なゲームを出すべきだったとは思いますね。『マリオカート』などヒット間違いなしのコンテンツがあるのに出さないのは、自社製品である『NX』『Wii U』などハード機の売上への影響を懸念して、出せないのか……何にせよ、釈然としませんね」(ゲーム記者) そもそも、任天堂はゲーム機とそれに付随するゲームソフトで確固たる地位を築いた企業だが、端的にいえばそれは開発してリリースしたらそれで“終了”ということ。一方、DeNAの主戦場であるスマホゲームは、課金率や売上に応じてスピーディに改良を重ねる必要があるという点で大きく異なる。任天堂としても今はスマホゲーム市場の“常識”をインプットしているころなのかもしれないが、一朝一夕で体制を整えることは難しいに違いない。 「DeNAとしては任天堂の、それこそマリオやゼルダなど圧倒的な知的財産を利用するという点で大きなメリットがあります。最低でも数本、任天堂がこれまで出したゲームのスマホ版をリリースさせることは間違いないでしょうね。ある程度のヒットは問題なく見込めますから」 スマホゲームの帝王である『パズドラ』のガンホーや『モンスターストライク』でV字回復を果たしたmixiも、任天堂という究極のネームバリューは当然無視できないはずだ。 ただ、どうもスマホゲームに挑戦する任天堂の姿からは、不安が消えない。 来年、株式会社ポケモンよりリリースされる、現実の街を舞台に歩き回って「ポケモン」をプレーできる、スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」にも任天堂が開発に参加しているが、腕時計サイズの端末を開発して「歩きスマホ」防止をアピールしているものの、それだけでトラブルを軽減できるのかと疑問の声も多い。さらに、『ニンテンドーDS』や『Wii』を生み出した天才・岩田聡社長が今年3月に没し、その後継となった三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)出身であり、ゲーム業界としては“門外漢”の現・君島社長の手腕にも、心配な声が多いのが現状だ。 過去のヒット作を流用するだけでも、一定の結果を出せるのが想像に容易い任天堂のスマホゲーム。どうせなら、「これぞ任天堂」というゲームを開発して、DeNAとともに業界をひっくり返すところが見たい。任天堂公式サイト
ふなっしーが羽生の「世界キャラさみっと」に登場!ちっちゃいおっさんやイーサキングと仲良し『プルプル』トーク!
国内外の人気ご当地キャラクターが一同に会する毎年恒例のキャライベント「第6回世界キャラクターさみっとin羽生」が21日、羽生市内の羽生水郷公園で行われ、千葉県船橋市在住の非公認キャラクター、ふなっしーが登場。元気いっぱいのパフォーマンスを披露した。 ふなっしーはまた、“友人”を公言する兵庫県尼崎市の公認キャラ、ちっちゃいおっさんや、鹿児島県伊佐市の公認マスコット、イーサキングらを連れ立って、自らメインキャラとして登場する同期型マルチプレイパズルゲーム 『いっしょにプルプル』もご機嫌にPRした。『いっしょにプルプル』は、ふなっしー本人も遊んでます!
会場には全国及び、海外から約400体のキャラクターが集結。キャラたちによるファッションショー「羽生キャラクターズコレクション(はにゅコレ)」やステージパフォーマンス、一般の新郎新婦たちを人気キャラがお祝いする結婚式「キャラコン」が行われたほか、ご当地キャラに絡め、「全国ご当地グルメコーナー」のブース群も設置され、大勢の来場客で賑わった。仲良し3人組登場!
キャラ400体勢揃い
ステージ上もステージ下もキャラだらけ
まさに“プルプル”状態
ふなっしーが実際にキャラとして登場する同期型マルチプレイパズルゲーム『いっしょにプルプル』(iOS、Android対応)のブースではふなっしーやちっちゃいおっさんらと一緒に記念撮影が行われるパネルが設置され、ブースを訪れた本ゲームのインストール客にはオリジナルうまい棒の配布が行われた。ふなっしーらがプリントされたこのオリジナルうまい棒はぜんぶで8種類。両日で4,000本があっというまになくなった。ここにもあそこにも!
プルプルブースの記念撮影パネルと笑顔のお姉さんたち
こちらは配布されたうまい棒8種類
ふなっしー効果でゲームは現在30万ダウンロードを突破!この日も大行列
ほかのキャラたちも遊びにきていました
初日の見所はなんといっても2度行われたふなっしーのスペシャルステージ!「ありがとなっしー!」と踊り狂うふなっしーの愛くるしいパフォーマンスに会場は大興奮だった。実はふなっしー、活動をはじめた当初は“船橋市非公認”のためなかなか認められずこのフェスに参加することができなかったとか、その後、人気があがってようやく参加が認められ、今年で4回目の参加。「最初に申し込んだ時は真っ先に断られたなっしー!あの時はいの一番に断りやがったなっしー!ねちっこいなっしーよ!」と恨み節も。そんな歴史もあってか「このイベントは初号機が一番合うなっしー」とファンにはプレミアな初号機を身にまとって登場。ちっちゃいおっさんも現れました
昔は断られたなっしー!!
今は羽生市大好きなっしー!ステージではノリノリ!
イーサキングとちっちゃいおっさんが駆けつけたステージでは「プルプル」をご機嫌PR。ちっちゃいおっさんは本ゲームの宣伝課長にも就任。「おっさんよかったなっしーな!」とふなっしーに声をかけられると「まあ、簡単に言うと無職やったわしが就職したんや」とニヤニヤ。また「ステレスで禿げてもうてな~」と課長の重圧に少々プレッシャーも感じている様子。イーサキング曰く、ふなっしーもおっさんも実は大のゲーマー。ステージ下ではガチで「プルプル」に夢中なようだ。この人気ぶり!
ふなっしーとおっさん、仲良し
400キャラ、300ブースで盛上がった「第6回世界キャラクターさみっとin羽生」は大盛況のうちに終了。会場には元BiSの『ゆっふぃー』こと寺嶋由芙をはじめ、有名人の姿もちらほら。ふなっしーやひこにゃんをはじめ、大人気キャラに会えてお客さんも大満足の様子だった。ふなっしーのステージが終わると「プルプル」ブースではうまい棒が完配!
人気キャラいっぱい!
ゆっふぃーもスマイル!
ちなみにふなっしーも登場する『いっしょにプルプル』はふなっしー、ちっちゃいおっさん、イーサキングに加え、くまモン、アックマ、さのまる、ぐんまちゃん、しまねっこなど、全国の人気キャラクターが多数登場するパズルゲーム。“Meetsパズル“搭載の同期型マルチプレイが可能で、友達と一緒に協力して遊ぶこともできる内容となっている。現在、ふなっしー効果もあってか、女性を中心に大人気で30万ダウンロードを突破。スマホで手軽に遊べるゲームなので、ふなっしーマニアを自称するなら要チェックだ! (取材・文=名鹿祥史) ●いっしょにプルプル http://puru.jpグルメも充実していました
ふなっしーが羽生の「世界キャラさみっと」に登場!ちっちゃいおっさんやイーサキングと仲良し『プルプル』トーク!
国内外の人気ご当地キャラクターが一同に会する毎年恒例のキャライベント「第6回世界キャラクターさみっとin羽生」が21日、羽生市内の羽生水郷公園で行われ、千葉県船橋市在住の非公認キャラクター、ふなっしーが登場。元気いっぱいのパフォーマンスを披露した。 ふなっしーはまた、“友人”を公言する兵庫県尼崎市の公認キャラ、ちっちゃいおっさんや、鹿児島県伊佐市の公認マスコット、イーサキングらを連れ立って、自らメインキャラとして登場する同期型マルチプレイパズルゲーム 『いっしょにプルプル』もご機嫌にPRした。『いっしょにプルプル』は、ふなっしー本人も遊んでます!
会場には全国及び、海外から約400体のキャラクターが集結。キャラたちによるファッションショー「羽生キャラクターズコレクション(はにゅコレ)」やステージパフォーマンス、一般の新郎新婦たちを人気キャラがお祝いする結婚式「キャラコン」が行われたほか、ご当地キャラに絡め、「全国ご当地グルメコーナー」のブース群も設置され、大勢の来場客で賑わった。仲良し3人組登場!
キャラ400体勢揃い
ステージ上もステージ下もキャラだらけ
まさに“プルプル”状態
ふなっしーが実際にキャラとして登場する同期型マルチプレイパズルゲーム『いっしょにプルプル』(iOS、Android対応)のブースではふなっしーやちっちゃいおっさんらと一緒に記念撮影が行われるパネルが設置され、ブースを訪れた本ゲームのインストール客にはオリジナルうまい棒の配布が行われた。ふなっしーらがプリントされたこのオリジナルうまい棒はぜんぶで8種類。両日で4,000本があっというまになくなった。ここにもあそこにも!
プルプルブースの記念撮影パネルと笑顔のお姉さんたち
こちらは配布されたうまい棒8種類
ふなっしー効果でゲームは現在30万ダウンロードを突破!この日も大行列
ほかのキャラたちも遊びにきていました
初日の見所はなんといっても2度行われたふなっしーのスペシャルステージ!「ありがとなっしー!」と踊り狂うふなっしーの愛くるしいパフォーマンスに会場は大興奮だった。実はふなっしー、活動をはじめた当初は“船橋市非公認”のためなかなか認められずこのフェスに参加することができなかったとか、その後、人気があがってようやく参加が認められ、今年で4回目の参加。「最初に申し込んだ時は真っ先に断られたなっしー!あの時はいの一番に断りやがったなっしー!ねちっこいなっしーよ!」と恨み節も。そんな歴史もあってか「このイベントは初号機が一番合うなっしー」とファンにはプレミアな初号機を身にまとって登場。ちっちゃいおっさんも現れました
昔は断られたなっしー!!
今は羽生市大好きなっしー!ステージではノリノリ!
イーサキングとちっちゃいおっさんが駆けつけたステージでは「プルプル」をご機嫌PR。ちっちゃいおっさんは本ゲームの宣伝課長にも就任。「おっさんよかったなっしーな!」とふなっしーに声をかけられると「まあ、簡単に言うと無職やったわしが就職したんや」とニヤニヤ。また「ステレスで禿げてもうてな~」と課長の重圧に少々プレッシャーも感じている様子。イーサキング曰く、ふなっしーもおっさんも実は大のゲーマー。ステージ下ではガチで「プルプル」に夢中なようだ。この人気ぶり!
ふなっしーとおっさん、仲良し
400キャラ、300ブースで盛上がった「第6回世界キャラクターさみっとin羽生」は大盛況のうちに終了。会場には元BiSの『ゆっふぃー』こと寺嶋由芙をはじめ、有名人の姿もちらほら。ふなっしーやひこにゃんをはじめ、大人気キャラに会えてお客さんも大満足の様子だった。ふなっしーのステージが終わると「プルプル」ブースではうまい棒が完配!
人気キャラいっぱい!
ゆっふぃーもスマイル!
ちなみにふなっしーも登場する『いっしょにプルプル』はふなっしー、ちっちゃいおっさん、イーサキングに加え、くまモン、アックマ、さのまる、ぐんまちゃん、しまねっこなど、全国の人気キャラクターが多数登場するパズルゲーム。“Meetsパズル“搭載の同期型マルチプレイが可能で、友達と一緒に協力して遊ぶこともできる内容となっている。現在、ふなっしー効果もあってか、女性を中心に大人気で30万ダウンロードを突破。スマホで手軽に遊べるゲームなので、ふなっしーマニアを自称するなら要チェックだ! (取材・文=名鹿祥史) ●いっしょにプルプル http://puru.jpグルメも充実していました
まさか!? なんでここが都心の幼稚園なんだろう? カメラマンに泥水をかけてくる園児たちを追った『子どもは風をえがく』
長編ドキュメンタリー映画とは、膨大な取材量によってはじめて価値を生むものである。 どんなに美しく、力強い映像を幾度となく撮影しようとも、その背後にやむなくカットされた大量のフィルムがなければ、薄っぺらさは透けて見えてしまうのではないだろうか? ラピュタ阿佐ヶ谷での封切り公開を先月好評の中で終え、現在も全国で巡回上映中の『子どもは風をえがく』(監督:筒井勝彦)は、これでもかという映像取材の成果が強靭に焼き付けられた作品である。 この作品は、杉並の住宅街にある広大な屋敷林を持つ幼稚園・中瀬幼稚園の一年を取材したドキュメンタリー映画だ。 開園50周年を迎えるこの中瀬幼稚園は、園と保護者が共同で敷地内の樹木や自然を保護しながら、子どもたちが駆け回れる空間を長期に渡って維持してきた。都会の喧騒の中ににありながらも、自然に満ちた空間でのびのびとした日常を過ごす子どもたちの姿を、四季を通じてカメラは余すところなく追っていく。作品は115分に編集されてはいるものの、撮影期間は一年間にも及んだ。 筒井監督の揺るぎない意志を本作から感じるのは、子どもたちを撮影するカメラのレンズが必死に子どもたちの目線にまで下がろうと奮闘しているところだ。これは文章でも同様だが、作品を制作するにあたって、まず求められるのは視線をどこに置くかである。 どんな取材対象であっても、俯瞰した視点では紋切型の分析は可能でも人間の本能的な部分までは捉えられない。 映像作品では、より露骨に取材対象者との距離感が鑑賞する者に見透かされてしまう。筒井監督は、そのような部分を深く理解しているからこそ、精一杯目線を下げて子どもたちの表情や動きを余すところなく追いかける。 腰をかがめながら、走り回る子どもたちを縦横無尽に撮影する撮影部も並大抵の体力では務まらない。 作中ではカメラマンが走り回る子どもたちに突然、土や泥水をかけられているのが確認できる。それでも、カメラの焦点は取材対象である子どもたちを追い続けてやまない。 16ミリフィルムで撮影された昭和のドキュメンタリー映画などを鑑賞する度に、何らかの作為や配慮がどこかしこに入りこんでしまっていることに気付かざるを得ない。取材対象者が不自然なほど背筋がピンとしていたり、話し方も妙に丁寧だったり、露骨にカメラのレンズを意識しているのがわかる。撮影機材がよりコンパクトになった現代では、以前ほど取材対象者は取材する側やカメラを意識しないようにはなったものの、それでも作為めいた言動は記録されてしまう。 けれども、中瀬幼稚園の子どもたちはカメラのレンズなど一切気にする素振りも見せず、逆に園の闖入者とでも呼ぶべきカメラマンに天衣無縫な行動で反応するという、とてつもなく予測不能なドキュメンタリー映画となっている。
撮影を担当したカメラマンの石崎俊一と秋葉清功が、相当な覚悟と忍耐力を維持して撮影をこなしていく姿勢が素晴らしい。 筒井監督と筆者は、10年ほど前にとある国際映画祭のコンペ部門に監督作とプロデュース作が共に入選して以来交流を持ち、そのプロデュース作の劇場公開初日に駆けつけて頂いたり、本作のマスコミ試写に参加させて頂いたりと、とても人と人との関わりを大切にする映画監督だという印象が強い。 だからこそ、保育士と園児たちとの暖かく繊細な交流をリアルに描いた前作『こどもこそミライ まだ見ぬ保育の世界』と同様に、本作でもそんな和やかな視線が如何なく発揮されたと感じている。 また、撮影を担当した石崎俊一とは筆者がかつて在籍した制作会社の先輩後輩という間柄でもあるために、筆者が関係する様々な作品でチームを組むことが幾度かあり、そのバイタリティーあふれる行動力やアイデアに驚かされたことは一度や二度ではない。 筆者が企画から携わり、先頃刊行されたばかりのルポルタージュ書籍『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)の著者近影撮影を石崎に依頼した際も、衝撃的な書籍内容と個性の際立つルポライター・昼間たかしの著者近影が、ありきたりの写真では意味を為さないであろうと打ち合わせた。 そして、撮影当日は書籍の基本コンセプト“ルポライター=取材対象を追う現代の野良犬”に倣って足早に歩く著者を石崎が様々な方向から狙い、その微妙な動きや表情を連写するという、著者近影としては稀有なロケーション撮影を敢行。 著者の斬新なイメージ創りに読者からの評価も上々で、筒井監督の現場でさらに鍛えられた石崎の成長には目を見張るものがある。 井口佳子園長の語りと共に、園児たちの目線を重ねることによって構築されたメッセージは、「ここにいることが楽しい」という純粋な心。それがスクリーン狭しと濃厚に焼き付けられる強固な長編ドキュメンタリー映画が誕生した。 (文=増田俊樹)
12月4日まで横浜シネマリンでロードショー http://cinemarine.co.jp/children-draw-the-wind/ 『子どもは風をえがく』公式サイト http://www.kazeoegaku.com/ (C)2015 中瀬幼稚園 オフィスハル



























