“ダサイタマ”をメッタ斬り!! 伝説の埼玉ディスマンガ『翔んで埼玉』

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『翔んで埼玉』(宝島社)
 皆さんは、埼玉県について、どのような印象をお持ちでしょうか? 僕のようなサラリーマンですと、都心へのアクセスもよく、お手頃な物件がある住みやすい県、という印象です。結構レジャーも充実してますし、ハマっ子神奈川や、ディズニー千葉と比べて気取った感じがしないところも好印象です。  そんな素晴らしい彩の国・埼玉県にお住まいの皆様に、本日は大変うれしくないマンガをご紹介したいと思います。いや、むしろここから先は読まないほうがいいかもしれません。これを読んでしまったら、あなたは絶望のあまり埼玉県から引っ越してしまいたくなるかもしれない、そんな恐るべき埼玉県の真実を描いた作品『翔んで埼玉』(宝島社)をご紹介しましょう。 『翔んで埼玉』は、もともとは『パタリロ!』を生んだ巨匠、魔夜峰央先生の短編集『やおい君の日常的でない生活』(白泉社)に収録されている作品でした。連載が増え、上京しようと考えていた魔夜先生が、「花とゆめ」(同)の編集長の勧めで新潟県から埼玉県の所沢市に引っ越したところ、それが実は恐ろしいワナで、所沢には編集長と編集部長が住んでおり、精神的に完全に勾留状態だった……という極限のストレスから生まれた作品なのです。なるほど、埼玉でそんなにひどい目に遭ったから、このような作品を。おいたわしや……。  あまりに過激な内容で、発表当時から賛否を呼んだ本作ですが、昨年11月に『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で紹介されるや否や、ネット上を中心に話題沸騰。ついには、宝島社より、単行本として復刊されるに至ったのです。  舞台は、埼玉県民が徹底的に迫害される都市、東京。主人公は、都内の名門校白鵬堂学院に転校してきたアメリカ帰りの美少年、麻実麗(あさみ・れい)。容姿端麗、スポーツ万能の秀才である麗は、学校でも一躍注目の存在になるのですが、実は、本名を西園寺麗といい、所沢生まれで、アメリカに留学後、麻実家の養子になるという徹底的な出身地ロンダリングを経て入学していたのでした。  しかし、東京での埼玉県民のひどい仕打ちに、麗の所沢出身者としての怒りが爆発。埼玉県民の権利を取り戻すためのレジスタンス、「埼玉県解放連盟」のリーダーとして活動することになるのでした。  ……さて、ストーリーがざっくりわかったところで、この漫画の肝である、悲惨な埼玉差別ネタをいくつかご紹介していきましょう。 「最近やっと電気が通うようになった、まだテレビは珍しい」 「県知事に年貢を納めている」 「埼玉から東京に行くには通行手形が必要」 「埼玉にタクシーはない、あるのは牛車か馬車のみ」 などなどは、まだ序の口。 「三越は東京都民の行く所だ! 埼玉県民は星友(せいゆう)へ行け!」  なんと、埼玉県民は三越へ行くのも禁止のようです でも、星友(西友?)はOKって……。  埼玉県民への侮辱は、まだまだ続きます。麗の転校先では、父親の仕事の関係などで今は都内に住んでいる元埼玉県民の生徒は皆、Z組に集められ、学内でのけ者にされる始末。制服はなんと、モンペにゲートル、地下足袋です。  麗に学内を案内する役を買って出た女生徒は、 「だめよ!あんな物(Z組)なんて見ちゃ目がけがれるわ!」 「ああ、いやだ、埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」  学校で急に腹痛を訴える生徒に、学園の自治会長は、 「医務室を利用できるのは東京都民だけだ 出て行け!」 「そこらへんの草でも食わせておけ! 埼玉県民ならそれで治る!」  草食うだけで治すって、ドラクエ並みの薬草の効能ですね。  さらに東京のレストランは、どうやら都民向けのメニューと埼玉県民向けのメニューに分けられているようです。  都民用は、和風ステーキ、ヒレカツ定食、刺身定食、うな重といったメニューがずらりと並ぶのに対し、埼玉県民用は「残飯定食」「サンマの骨定食」「下水ライス」「犬のよだれご飯」……といった、見るからに吐き気をもよおすメニューばかり。  魔夜先生はいったい、所沢でどんなひどい目に遭ったんでしょうか……。  こんな感じで、散々な扱いを受けてきた埼玉県民の皆様のダメージは計り知れないことと思いますが、他県民だって油断してはいけません。実は、作品中で埼玉よりもひどい扱いを受けている県がひとつだけ存在するのです。それは、「気の弱い女性は、その地名を聞いただけで卒倒してしまう」という茨城県です。 「茨城では納豆しか産出しないから貧乏」 「茨城の原住民の食事は一日一回、水と納豆のみ」 「若者の夢は、白米にしょうゆをかけて食べること」 などなど、ボロクソです。  というわけで、埼玉県だけでなく、茨城県も巻き込んでエライことになっている悪夢のケンミンSHOW『翔んで埼玉』、いかがだったでしょうか? 実はこの作品、3話目の中途半端なところでストーリーが中断しています。その理由がなんと、魔夜先生が「横浜に引っ越し、悪口を書きづらくなったから」だそうです……。ちなみに関連作品として、『パタリロ』で、“日本のノースダコタ”こと千葉県をディスっている話もあるので、埼玉・茨城ディスだけでは飽き足らない皆さんには一読をお勧めします(http://blog.livedoor.jp/textsite/archives/55417447.html)。  レビューしておいてなんですが、この作品が広く知られることで、埼玉県(と茨城県)の人口がごっそり減らないことを祈るばかりです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

アブラカス、ホルモン、焼肉……差別された人々のソウルフードとは?『被差別のグルメ』

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『被差別のグルメ』(新潮新書)
“被差別部落”という言葉を聞いたことはあるだろうか? 現代の日本社会では、あまりピンとこないかもしれないが、身分的、社会的に差別された人々が集まって暮らす地区のことだ。  今回紹介する『被差別のグルメ』(新潮新書)は、そんな被差別部落=“路地”で生まれた“ソウルフード”を追ったノンフィクションである。著者で作家の上原善広氏は、大阪の更池(現・松原市南新町)という路地出身で、2005年に海外の被差別グルメを中心に紹介した『被差別の食卓』(新潮新書)でデビューした。その当時は、国内の路地について書くには、まだあまりにもタブーが多かったため、海外を中心にした内容となった。しかし、今回は時代の移り変わりや、長年の調査の結果、自分なりの答えが出たということで、被差別グルメの国内版として発売された。  第1章には、上原氏が生まれ育った大阪の路地で食べられてきた“アブラカス”という食べ物が登場する。これは、牛の腸をカリカリになるまで炒り揚げたもので、見た目はまさに腸そのもの。しかも、よそ者を寄せつけないほど、独特の味と風味を持つ。これが路地では、煮物などの風味付けに使われてきた。だが、このアブラカスはかつて食卓に並べるだけで出自がばれ、離婚騒動にまで発展することもあるほど、危険をはらんだ料理だった。  そもそも、死んだ牛を解体したり、屠殺することは、汚穢(おわい)意識から、身分の低いものが行っていた歴史があるという。1820年代頃の文政時代、更池では牛を密殺した罪に問われた「落とし牛の罪」で数人が捕縛された記憶も残っている。今でこそ「ホルモン」と名づけられた内臓を食べる習慣も、実は肉や魚を購入することが困難だった路地ならではの食文化だったのだ。そんな歴史を経て生まれた日本の焼肉のルーツには、路地と在日韓国・朝鮮人の食文化が大きく関わっているという。本書では、その成り立ちや経緯、精肉だけでなく内臓まであますことなく使い、タレをつけて食べるというスタイルになった理由などが深く掘り下げられている。  このほかにも、アイヌ料理や、現在の樺太やサハリン南部に住んでいた北方少数民族の料理、沖縄本島から“島差別”を受けていた沖縄の島々の食文化についても綴られている。差別を受けてきた人々の歴史とそれに付随した食文化とは、一体どのようなものなのか? 食に対する見方が大きく変わる、一冊になるはずだ。 (文=上浦未来) ●うえはら・よしひろ 1973年大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクション作家となる。2010年『日本の路地を旅する』(文藝春秋)で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。著書に『被差別の食卓』『聖路加病院 訪問看護科―11人のナースたち』『異形の日本人』(すべて新潮新書)、『私家版差別語辞典』(新潮選書)など。

2016年のスタートを飾る名作がめじろ押し! トム・ハンクス『ブリッジ・オブ・スパイ』ほか

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(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.
 今週の当コーナーは特別編として、「オススメの2016年年明け公開映画」を取り上げたい。映画館に居ながらにして、時間と空間を超える旅や冒険を体験できる必見の3作品だ。 『ブリッジ・オブ・スパイ』(1月8日公開)は、スティーブン・スピルバーグ監督3年ぶりの新作で、米ソ冷戦時代の実話に基づくサスペンスドラマ。ニューヨークで保険法を専門とする弁護士ジェームズ(トム・ハンクス)は、FBIに逮捕されたソ連スパイ・ルドルフの弁護を引き受ける。正義の原則を貫き、死刑確実だったルドルフに懲役30年の判決をもたらす。これがきっかけとなり、ジェームズは5年後、米ソがそれぞれ捕らえたスパイの交換を実現するための交渉役として、東ベルリンへ派遣される。 『ファーゴ』(1996)、『ノーカントリー』(2007)でアカデミー賞計4冠のジョエル&イーサン・コーエンが脚本を担当し、米ソそれぞれで進行するドラマをこまめに切り替えるなど巧みな構成で緊張感を高める。「アメリカの良心」を演じさせたら当代随一のハンクスに、スピルバーグ監督による円熟の演出が相まって、ジェームズの葛藤と勇気、ルドルフとの心の交流が感動的に再現された。音楽の録音も素晴らしく、要所を的確に盛り上げている。
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(C) Universal Pictures.
『クリムゾン・ピーク』(1月8日公開、R15+指定)は、『パンズ・ラビリンス』(06)の鬼才ギレルモ・デル・トロ監督によるゴシックホラー。20世紀初頭のニューヨーク州で、10歳の時に死んだはずの母親を目撃して以来、幽霊を見るようになったイーディス(ミア・ワシコウスカ)。父親の不審死の後、英国から来た青年トーマス(トム・ヒドルストン)と結婚したイーディスは、トーマスとその姉ルシール(ジェシカ・チャステイン)と一緒に英国の「深紅の山頂=クリムゾン・ピーク」に建つ古い屋敷で暮らし始める。  往年の怪奇映画の舞台を思わせるゴシック建築の荘厳な屋敷が、デル・トロ監督ならではの映像美で鮮明に、ムード満点で蘇る。実際、幽霊をはじめさまざまな怪奇現象が起きるが、本当に恐ろしいのは人間のほう。ワシコウスカ、ヒドルストン、チャステインの古風な美貌もゴシック様式の背景によく似合う。三者三様の愛憎が哀しくも恐ろしい、妖しい魅力に満ちた衝撃作だ。
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(C) 2015 Galatee Films - Pathe Production - France 2 Cinema - Pandora Film - Invest Image 3 - Rhone-Alpes Cinema - Winds - Pierre et Vacances
『シーズンズ 2万年の地球旅行』(1月15日公開)は、『オーシャンズ』(10)のジャック・ペラン監督が、地球上の動物の進化や人間との共生を映像で語るドキュメンタリー。2万年前の氷河期から姿を変えずに極寒地で生きるジャコウウシ。1万年前に気温が急上昇し、緑が広がった地上に誕生する多種多様な生命。四季が始まり、森が動物たちの楽園だった時代を経て、人間が集落を形成。一部の動物たちは家畜となり、姿を変えながらたくましく生き続ける。  今の時代に撮影した映像で、2万年の動物進化の歴史を表現するというアイデアがいい。『WATARIDORI』(01)で開発した軽量飛行機の改良版をはじめ、無音電動バギー、スタジアム等に導入されているケーブル移動式カメラの応用など、動物撮影に最適な機材を投入し、求めるシーンを得るまでスタッフが根気強く待ち続けた。「よくこんな映像が撮れたな」と驚かされるシーンが満載。森の自然音がサラウンド音響でリアルに再現され、森林浴を疑似体験できるオマケつきだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ブリッジ・オブ・スパイ』作品情報 <http://eiga.com/movie/82155/> 『クリムゾン・ピーク』作品情報 <http://eiga.com/movie/83321/> 『シーズンズ 2万年の地球旅行』作品情報 <http://eiga.com/movie/81861/>

80年代エッチマンガのレジェンド後編『やるっきゃ騎士』『いけない!ルナ先生』

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左『いけない!ルナ先生』(上村純子/講談社)、右『やるっきゃ騎士』(みやすのんき/集英社)
『Oh!透明人間』『ハートキャッチいずみちゃん』『やるっきゃ騎士』『いけない!ルナ先生』……1980年代に少年誌に連載され、少年達の股間を熱くした伝説のエッチマンガ4作品。前回(参照記事)はそのうちパイオニア的存在の2作品『Oh!透明人間』『ハートキャッチいずみちゃん』をご紹介しました。  今回は、レジェンドエッチマンガ紹介の後編として、前2作品よりさらにエッジが利いている2作品、『やるっきゃ騎士』と『いけない!ルナ先生』をご紹介します。 『やるっきゃ騎士』(集英社)の作者は、みやすのんき先生。青年誌では『冒険してもいい頃』『AVない奴ら』などのエッチなマンガも描かれていますが、メジャー誌でのデビュー作は本作です。 『やるっきゃ騎士』がほかの3作品と違うのは、掲載誌が「月刊少年ジャンプ」(集英社)だったことです。『Oh!透明人間』『ハートキャッチいずみちゃん』により、エッチな少年マンガ誌としての確固たる地位を築いていた「月刊少年マガジン」(講談社)に対し、このジャンルで後塵を拝していた「月刊少年ジャンプ」がエッチマンガの起爆剤として送り込んだ刺客が『やるっきゃ騎士』だったというわけです。  当時の多くのエッチマンガが1話完結型になっていたのに対し、『やるっきゃ騎士』の場合は複数話にまたがるストーリー仕立てが中心となっています。キャットファイト的なバトルマンガ色が強いのも特徴です。  そして、なんといってもこの作品の魅力は、学園を仕切る気高い女リーダー・美崎静香を、主人公・誠豪介をはじめとしたスケベな男子キャラクターたちが陵辱するシーン。手がつけられないほど気が強い女の子を、すっぽんぽんにして手込めにする……男子の思い描く願望のひとつが、この作品でかなえられているのです。  みやす先生の描くプルンとした体つきの美少女と背徳的なストーリーの絶妙なバランスが、大ヒットの要因だったと分析するわけですが、個人的に衝撃的だったのは、静香ちゃんがパンツを脱がされ、股間があらわになったシーン。なんと、股間部分が真っ白でした。男子が一番気になる女の子のアソコの部分が、実は真っ白だったことは当時の僕にとってかなりのトラウマでした。まあリアルに描いちゃうと少年誌に掲載できないわけですから、当然といえば当然なのですが……。  エッチマンガ“ファンタスティック・フォー”最後の刺客は、86年から「月刊少年マガジン」に連載された、上村純子先生の『いけない!ルナ先生』(講談社)です。  主人公は、勉強が大嫌いなダメ中学生の神谷わたる。わたるは幼い頃に母を亡くしており、さらに父親が海外に転勤することになったため、わたるの勉強や身の回りの世話まですべてやってくれる美人女子大生・葉月ルナ先生が住み込みでやって来ることになったのです。そして、夜な夜なムチムチプリンなボディを装備したルナ先生による手取り足取りおっぱい取りな過激なレッスンが行われる……そんな作品です。 イ  住み込みで身の回りの世話までする人を先生と呼ぶのが適切かどうかはともかく、これは男子にとっては理想的すぎるシチュエーションですよね。まさに、究極の女教師エロス。これでエッチな妄想をするなという方が無理というものです。まあ、現実にこんなことが起こる確率は宝くじよりも低そうですけど。 『いけない!ルナ先生』は、考えようによっては若者の持つリビドーを偏差値アップに変換するための巧妙に計算された学習メソッドが紹介されている、歴史的に見ても大変意義深いマンガであるといえます。すなわち、ルナ先生=学習マンガ、とすら言えるのです。では、具体的にはどのようなレッスンが行われていたのか、ご紹介しましょう。  テスト0点→落第→退学→人生の落伍者→孤独な人生→自殺 「たっ大変~! わたしがなんとかしなくっちゃ」 というルナ先生の意味不明な思考回路によりレッスンが開始されます。 ・数学の授業では分数の問題を出題。分母がパンティで分子がブラジャー、答えはパンティの中に書かれている。 ・物理の授業では、穴あき磁石をルナ先生の乳首に装着。おっぱいをくっつけたり離したりして、N極とS極の勉強。 ・体育の授業では風呂場で野球の特訓。紙の下着をつけたルナ先生に向かって、濡れたスポンジボールを投げます。ちなみに左のブラがアウトコース高め、右のブラがインコース高め、そしてパンティが真ん中低めです。 ・家庭科の授業では、エビフライを揚げる練習。エビになるのは、もちろんルナ先生。セリフは「うふ、じょうずにむいてね」。 などなど。驚いたことに、ルナ先生ひとりで数学から体育まで全科目を担当するという多才さを発揮しています。しかも、すべての授業で男子がやる気を出さざるを得ないエッチな創意工夫が満載。ルナ先生はある意味、究極の教師だったのです。  というわけで、1980年代の見えそうで見えない、やってそうでやってない寸止めエッチな少年マンガの代表作をご紹介しました。当時はそのほかにも、井沢まさみ先生の『どっきんロリポップ』、川原正敏先生の『パラダイス学園』、小原宗夫先生の『瞳ダイアリー』などもあり、巨人のV9時代に匹敵するエッチマンガの層の厚さだったといえます。まさに、エッチマンガが栄華を誇った素晴らしき黄金時代だったのです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) ※「月刊サイゾー1月号」でも、「マンガのマル禁事情」という特集で80年代エッチマンガを紹介しています。

80年代エッチマンガのレジェンド前編『Oh!透明人間』『ハートキャッチいずみちゃん』

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左『Oh!透明人間』(中西やすひろ/講談社)、右『ハートキャッチいずみちゃん』(遠山光/講談社)
『Oh!透明人間』『ハートキャッチいずみちゃん』『やるっきゃ騎士』『いけない!ルナ先生』……1980年代に少年誌に連載され、少年たちの股間を熱くした伝説のエッチマンガ4作品。日刊サイゾー読者の中にも、お世話になった人がいるんじゃないでしょうか。僕はこの4作品を80年代エッチマンガの“ファンタスティック・フォー”と勝手に命名しているわけですが、今回はそのうち『Oh!透明人間』と『ハートキャッチいずみちゃん』について、どんな作品だったっけ? と皆さんに思い出していただくべく、ご紹介します。 『Oh!透明人間』(講談社)の作者は中西やすひろ先生。中西先生のその他の代表作としては『温泉へゆこう!』『めぐり愛ハウス』などがありますが、圧倒的知名度を持つ作品といえば、やはりこの『Oh!透明人間』をおいてほかにありません。  もし、男の子が透明人間になる能力を持っていたとしたら……。とりあえず、女子更衣室とか女風呂に潜入するに決まってますよね。そんな健全な男子の願望をダイレクトにかなえたエッチなマンガ……これはヒットしないはずがありません。実際、本作品は当時の「月刊少年マガジン」(講談社)の部数を爆発的に底上げした立役者でもありました。  作品の設定は、女だらけの家に居候する高校生の主人公、荒方透瑠(あらかたとおる)が、イクラを食べると透明になれるという超能力をフル活用し、ヒロインの良江ちゃんをはじめとした女子たちにエッチないたずらをしまくるというドタバタラブコメディです。透瑠という、いかにも透けそうな名前もナイスですよね。  しかし、この透明人間には、興奮すると元に戻ってしまうという致命的な弱点があります。あまりにハイリスクハイリターンな能力。しかし男子たるもの、そんな危険を冒してでも女風呂がのぞきたいもの。この男子が持つピュアなリビドーこそが、『Oh!透明人間』という作品のパワーの源なのです。  やはり特筆すべきは、透明人間だからこそ実現可能な、伝説のエッチシーンの数々。女子更衣室、女風呂に潜入するのは日常茶飯事として……。 ・日焼けマシーンの中に侵入し、素っ裸でいたずらする ・獅子舞の中に潜り込んで、おっぱいを触りまくる ・コインランドリーの中に閉じ込められた状態でグルングルン回る などなど、ハイレベルすぎるシチュエーションも登場。長期連載作品だけあって、エッチなシーンのインフレが半端じゃありません。  作品後半では、ヒロインの良江ちゃんが強盗に襲われる、吊り橋が崩落する、ロープウェイのゴンドラが墜落するなど、さまざまなトラブルに遭遇。透明になった透瑠君による『ダイ・ハード』顔負けの救出劇があるのですが、ここで手を放したら落ちる! という状況にありながら、「これはパンツを脱がすチャンス!」という衝動が抑えられず、「脱がす→手が離れる→落ちる」といった様式美が展開されます。自分の命よりもエロを優先する透瑠君の姿勢は、今どきの草食系男子にぜひ見習ってほしいハングリーさです。 『ハートキャッチ』(講談社)といえば、平成女子にとってはプリキュアですが、昭和男子にとっては遠山光先生の『ハートキャッチいずみちゃん』ですよね。『Oh!透明人間』と共に、80年代の「月刊少年マガジン」を盛り立てた作品で、主人公の原田いずみと幼なじみのエッチな男子・明智菊丸を中心としたドタバタラブコメディです。  ヒロインのいずみちゃんは、人の心が読めるというエッチマンガとしては反則すぎる超能力を持っており、いずみちゃんにエッチなことをしようとするスケベな男子たちは最後の最後に超能力で心を読まれ、ことごとく寸止めで涙をのむのです。 『いずみちゃん』の特徴は、エロ男子・菊丸による趣向を凝らしたオールラウンドな女体いじりで、エッチなシチュエーションのバラエティの多彩さはある意味、『Oh!透明人間』をも凌いでいるといえます。具体例を挙げると、 ・女体をゴルフコースに見立てて、グリーン、バンカー、池などを設置する「女体ゴルフコース」 ・車のフロントガラスに張り付いたおっぱいがワイパーで左右に揺らされる「おっぱいワイパー」 ・乳首に針をつけて壁にはめ込こんだ「おっぱい壁時計」 ・数珠つなぎになった豆電球で大事なところを隠す「豆電球水着」 ・股間と股間の間に張り付いた餅をはがそうとして、押したり引いたりしている間に餅がつきあがる「股間餅つき」 などなど、思春期男子にとっては神シチュエーションのオンパレード。とにかく女体のエロ表現に対する情熱は、計り知れません。  ちなみに遠山先生の代表作としては、犯人が近くにいると乳首がピキューンと立つ女刑事のマンガ『胸キュン刑事』もあります。乳首を使って犯人解決という設定は画期的すぎて、特許申請してもいいレベルです。  こうやって紹介してみると、今だったらわりとシャレになってないような過激なシーンがてんこ盛りなわけですが、80年代少年マンガにおいてはエロ描写の免罪符となる重要なキーワードがありました。それは「寸止め」。少年誌においては、裸は出てくるけど性行為シーンはない、女性器は描かないといった「寸止め」が鉄則なのです。『Oh!透明人間』における興奮すると元に戻るギミックや、『ハートキャッチいずみちゃん』のスケベ心が読めてしまう超能力などの設定が、ここで効いているのです。  作品を読めば、絶対に見えてなきゃおかしい女性の股間部分が、他のキャラの頭や、お風呂の泡、お尻側からのアングルなどで巧みにカバーリングされていることがわかると思います。少年エッチマンガの巨匠は「股間隠しの匠」といっても、決して過言ではなかったのです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) ※「月刊サイゾー1月号」でも、「マンガのマル禁事情」という特集で80年代エッチマンガを紹介しています。

実在した“神の一手”天才チェスプレイヤーを、トビー・マグワイアが好演!『完全なるチェックメイト』

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(C)2014 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. Photo Credit: Tony Rivetti Jr.
 今週取り上げる最新映画は、米ソ冷戦下で代理戦争として世界が注目したチェス対決と、1世紀前のアルメニア人大虐殺をそれぞれ描くドラマ2作品。主人公の生き様を通じて知られざる歴史の裏側を照らし出す、名監督たちの手腕を堪能できる力作だ。  『完全なるチェックメイト』(公開中)は、トビー・マグワイア主演で天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの半生を描く伝記ドラマ。ニューヨークで幼少時代からチェスの才能を開花させたボビーは、15歳で史上最年少のグランドマスターに。何度も引退と復帰を繰り返したり、突飛な言動で周囲を振り回すボビーだったが、20代後半に国際大会で勝利を重ね、ソ連が誇る世界王者ボリス・スパスキーへの挑戦権を獲得。時は米ソ冷戦期の1972年、全24局の「世紀の対決」は、両国の威信をかけた代理戦争の様相を帯び、世界中にテレビ中継される。だがボビーは、極限のプレッシャー下で始まった第1局を凡ミスで落とし、第2局をボイコットして、2連敗と追い込まれる。  監督は『ラスト サムライ』(2003)、『ブラッド・ダイヤモンド』(06)の名匠エドワード・ズウィック。フィッシャー対スパスキーの頭脳戦を、表情や目の動き、立ち居振る舞いの繊細な描写でスリリングに再現した。今なお「神の一手」と語り継がれる勝負がハイライトだが、チェス自体の魅力や指し手の独創性が伝わってこないのが少々もどかしい。とはいえ、不世出の天才が挑んだ大勝負が、米ソ両首脳の思惑を含む舞台裏も交えて展開し、思わず手に汗握る観賞になること請け合いだ。 『消えた声が、その名を呼ぶ』(12月26日公開)は、トルコ系ドイツ人の若き巨匠ファティ・アキンが、トルコ最大のタブーといわれる100年前のアルメニア人大虐殺を背景に、生き別れた家族を探す男の過酷で壮大な旅路を描いたドラマ。第1次大戦下の1915年、オスマン帝国辺境の町マルディンで、鍛冶業を営むアルメニア人ナザレット(タハール・ラヒム)は、妻や双子の娘たちと幸せに暮らしていた。だがある日突然、憲兵によって家族と引き離され、砂漠に強制連行される。奴隷同然の労働、無慈悲な処刑をかろうじて生き延びるが、ナイフの傷で声を失ったナザレットは、家族との再会を願い、レバノン、キューバ、アメリカを旅してゆく。  声を奪われた主人公ナザレットは、歴史に埋もれたアルメニア人被害者たちを象徴すると同時に、チャップリンの『キッド』の上映シーンで示唆されるように無声映画へのオマージュでもある。身ぶり手ぶりと筆談で家族の居場所を尋ね、灼熱の砂漠をさまよい、大海を渡り、雪の荒れ地を歩く旅は重苦しく悲痛だが、雄大な景観と美しい音楽による浄化作用も見逃せない。アキン監督が“愛、死、悪に関する3部作”として、『愛より強く』(06年公開、ベルリン国際映画祭金熊賞)、『そして、私たちは愛に帰る』(08年公開、カンヌ国際映画祭脚本賞)に続く最終章と位置づける本作。善と悪の間で揺らぐ人々を見つめる視点は、民族対立や移民の問題、テロ攻撃などの理不尽な暴力に揺れる現在の世界でさらに価値を増している。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『完全なるチェックメイト』作品情報 <http://eiga.com/movie/80083/> 『消えた声が、その名を呼ぶ』作品情報 <http://eiga.com/movie/82696/>

実在した“神の一手”天才チェスプレイヤーを、トビー・マグワイアが好演!『完全なるチェックメイト』

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(C)2014 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. Photo Credit: Tony Rivetti Jr.
 今週取り上げる最新映画は、米ソ冷戦下で代理戦争として世界が注目したチェス対決と、1世紀前のアルメニア人大虐殺をそれぞれ描くドラマ2作品。主人公の生き様を通じて知られざる歴史の裏側を照らし出す、名監督たちの手腕を堪能できる力作だ。  『完全なるチェックメイト』(公開中)は、トビー・マグワイア主演で天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの半生を描く伝記ドラマ。ニューヨークで幼少時代からチェスの才能を開花させたボビーは、15歳で史上最年少のグランドマスターに。何度も引退と復帰を繰り返したり、突飛な言動で周囲を振り回すボビーだったが、20代後半に国際大会で勝利を重ね、ソ連が誇る世界王者ボリス・スパスキーへの挑戦権を獲得。時は米ソ冷戦期の1972年、全24局の「世紀の対決」は、両国の威信をかけた代理戦争の様相を帯び、世界中にテレビ中継される。だがボビーは、極限のプレッシャー下で始まった第1局を凡ミスで落とし、第2局をボイコットして、2連敗と追い込まれる。  監督は『ラスト サムライ』(2003)、『ブラッド・ダイヤモンド』(06)の名匠エドワード・ズウィック。フィッシャー対スパスキーの頭脳戦を、表情や目の動き、立ち居振る舞いの繊細な描写でスリリングに再現した。今なお「神の一手」と語り継がれる勝負がハイライトだが、チェス自体の魅力や指し手の独創性が伝わってこないのが少々もどかしい。とはいえ、不世出の天才が挑んだ大勝負が、米ソ両首脳の思惑を含む舞台裏も交えて展開し、思わず手に汗握る観賞になること請け合いだ。 『消えた声が、その名を呼ぶ』(12月26日公開)は、トルコ系ドイツ人の若き巨匠ファティ・アキンが、トルコ最大のタブーといわれる100年前のアルメニア人大虐殺を背景に、生き別れた家族を探す男の過酷で壮大な旅路を描いたドラマ。第1次大戦下の1915年、オスマン帝国辺境の町マルディンで、鍛冶業を営むアルメニア人ナザレット(タハール・ラヒム)は、妻や双子の娘たちと幸せに暮らしていた。だがある日突然、憲兵によって家族と引き離され、砂漠に強制連行される。奴隷同然の労働、無慈悲な処刑をかろうじて生き延びるが、ナイフの傷で声を失ったナザレットは、家族との再会を願い、レバノン、キューバ、アメリカを旅してゆく。  声を奪われた主人公ナザレットは、歴史に埋もれたアルメニア人被害者たちを象徴すると同時に、チャップリンの『キッド』の上映シーンで示唆されるように無声映画へのオマージュでもある。身ぶり手ぶりと筆談で家族の居場所を尋ね、灼熱の砂漠をさまよい、大海を渡り、雪の荒れ地を歩く旅は重苦しく悲痛だが、雄大な景観と美しい音楽による浄化作用も見逃せない。アキン監督が“愛、死、悪に関する3部作”として、『愛より強く』(06年公開、ベルリン国際映画祭金熊賞)、『そして、私たちは愛に帰る』(08年公開、カンヌ国際映画祭脚本賞)に続く最終章と位置づける本作。善と悪の間で揺らぐ人々を見つめる視点は、民族対立や移民の問題、テロ攻撃などの理不尽な暴力に揺れる現在の世界でさらに価値を増している。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『完全なるチェックメイト』作品情報 <http://eiga.com/movie/80083/> 『消えた声が、その名を呼ぶ』作品情報 <http://eiga.com/movie/82696/>

“幻の地下施設”松代大本営跡とは!? めくるめく地下の魅力を語り尽くす『地下をゆく』

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『地下をゆく』(イカロス出版)
 地下といっても、身近に感じるのは地下鉄ぐらいだろう。主要な交通手段である地下鉄は、全国45路線が網目のように私たちの足の下を走り、のべ1605万人が毎日利用しているとされる。  この『地下をゆく』(イカロス出版)は、そんな我々と切っても切れない地下と、その地下施設ができる工程を全5章110ページにわたって解説するムック本だ。 「驚愕の地下世界」と銘打って、直径30m、深さ70mにおよぶ巨大な立筒が何本と連なる巨大な水槽である、埼玉県春日部市の首都圏外郭放水路にはじまり、栃木県宇都宮市の大谷石採掘場、黒部ダムの地下にある巨大な発電所などを写真入りで紹介。第2章では、首都圏の地下鉄開通から現在までの90年をまとめ、さまざまな店が軒を連ねる地下街特集、駅名の英語表記でみかける“sta.”と“stn.”の違いなど、地下に関連するありとあらゆる事柄を語り尽くす。  地下の魅力は、それだけではない。同書ではマニアも唸る“幻の地下施設”も網羅。  その“幻の地下施設”というのが、長野県長野市にある「松代大本営跡」だ。  内部に仮の皇居も存在するというこの施設は、戦争末期に造られた巨大な地下塹壕で、本土決戦を覚悟した当時の政権幹部らが1944年にのべ300万人を動員して工事を始めたもの。毎日定時にダイナマイトで岩盤を爆破し、その際に出る石クズをひたすら運び出す。石クズは、日本橋から品川にいたる国道1号線沿いに撒くかたちで処分され、その一部は皇居の砂利になった。  結局、この塹壕は一度も使用されることのないまま終戦を迎えたが、現在は地震計が設置され、その情報は国連に提供されている。太平洋戦争で最後の砦となるはずだったこの基地が、国連、いわば連合軍のために運用されるとは奇妙なものだ。  また、テレビ番組などで密かに注目されつつある、「廃駅」も取り上げられている。廃駅というと山奥にあって、駅員が1人もいないひっそりとしたものを想像するが、都内には区画整理の関係で使われなくなった地下鉄の駅が、7カ所存在するという。  かつて存在した、京成本線博物館動物園駅。上野公園の地下を走り、国立博物館や上野動物園の入場客に好んで利用されていたが、ホームが狭く4両しか止められないことと、施設の営業時間に合わせて18時台には閉まってしまうことが原因で、乗客の足が遠のき、97年に営業停止、2007年に完全廃止となった。現在でも当時の時刻表やベンチはそのままに、京成本線上野駅を出て左右の窓からその姿を確認できる。  巻末には産業、軍事施設、鉱山、自然と4つのジャンルに分け、全国28ヵ所の地下施設を解説した「行ける地下カタログ」を収録。  地下を知れば知るほど、昭和を生き抜いた先人たちの息遣いが聞こえてきそうだ。この本を片手に、普段は立ち入ることのできない地下に思いを馳せてみてはどうだろうか?

“幻の地下施設”松代大本営跡とは!? めくるめく地下の魅力を語り尽くす『地下をゆく』

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『地下をゆく』(イカロス出版)
 地下といっても、身近に感じるのは地下鉄ぐらいだろう。主要な交通手段である地下鉄は、全国45路線が網目のように私たちの足の下を走り、のべ1605万人が毎日利用しているとされる。  この『地下をゆく』(イカロス出版)は、そんな我々と切っても切れない地下と、その地下施設ができる工程を全5章110ページにわたって解説するムック本だ。 「驚愕の地下世界」と銘打って、直径30m、深さ70mにおよぶ巨大な立筒が何本と連なる巨大な水槽である、埼玉県春日部市の首都圏外郭放水路にはじまり、栃木県宇都宮市の大谷石採掘場、黒部ダムの地下にある巨大な発電所などを写真入りで紹介。第2章では、首都圏の地下鉄開通から現在までの90年をまとめ、さまざまな店が軒を連ねる地下街特集、駅名の英語表記でみかける“sta.”と“stn.”の違いなど、地下に関連するありとあらゆる事柄を語り尽くす。  地下の魅力は、それだけではない。同書ではマニアも唸る“幻の地下施設”も網羅。  その“幻の地下施設”というのが、長野県長野市にある「松代大本営跡」だ。  内部に仮の皇居も存在するというこの施設は、戦争末期に造られた巨大な地下塹壕で、本土決戦を覚悟した当時の政権幹部らが1944年にのべ300万人を動員して工事を始めたもの。毎日定時にダイナマイトで岩盤を爆破し、その際に出る石クズをひたすら運び出す。石クズは、日本橋から品川にいたる国道1号線沿いに撒くかたちで処分され、その一部は皇居の砂利になった。  結局、この塹壕は一度も使用されることのないまま終戦を迎えたが、現在は地震計が設置され、その情報は国連に提供されている。太平洋戦争で最後の砦となるはずだったこの基地が、国連、いわば連合軍のために運用されるとは奇妙なものだ。  また、テレビ番組などで密かに注目されつつある、「廃駅」も取り上げられている。廃駅というと山奥にあって、駅員が1人もいないひっそりとしたものを想像するが、都内には区画整理の関係で使われなくなった地下鉄の駅が、7カ所存在するという。  かつて存在した、京成本線博物館動物園駅。上野公園の地下を走り、国立博物館や上野動物園の入場客に好んで利用されていたが、ホームが狭く4両しか止められないことと、施設の営業時間に合わせて18時台には閉まってしまうことが原因で、乗客の足が遠のき、97年に営業停止、2007年に完全廃止となった。現在でも当時の時刻表やベンチはそのままに、京成本線上野駅を出て左右の窓からその姿を確認できる。  巻末には産業、軍事施設、鉱山、自然と4つのジャンルに分け、全国28ヵ所の地下施設を解説した「行ける地下カタログ」を収録。  地下を知れば知るほど、昭和を生き抜いた先人たちの息遣いが聞こえてきそうだ。この本を片手に、普段は立ち入ることのできない地下に思いを馳せてみてはどうだろうか?

一瞬で人生が変わる!? 往年の名作のオマージュが光る、大人のおとぎ話『マイ・ファニー・レディ』

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 今週取り上げる最新映画は、一風変わった愛が巻き起こす騒動を描く「大人のおとぎ話」ともいうべき2作品。片や往年のハリウッド恋愛喜劇を想起させるウェルメイドの娯楽作、片や幸福と不幸のはざまを独特のユーモアで描く新感覚の邦画と、対照的な2本でもある(いずれも、12月19日公開)。 『マイ・ファニー・レディ』は、『ペーパームーン』(1974年)の名匠ピーター・ボグダノビッチ監督による群像コメディ。演出家のアーノルド(オーウェン・ウィルソン)は舞台公演を控えたある夜、初対面のコールガール・イジー(イモージェン・プーツ)をデートに連れ出し、今の仕事を辞めることを条件に3万ドルをプレゼントする。女優になる夢を取り戻したイジーが新作舞台のオーディションに行くと、そこにはアーノルドと、彼の妻で主演女優のデルタ(キャスリン・ハーン)がいた。アーノルドの困惑に反し、イジーが役を得たことで、思わぬ騒動が繰り広げられる。  有名ブランドのモデルに抜擢される抜群のスタイル、派手な目鼻立ちの美女なのに天然のファニーな愛らしさも備えるプーツに、イジーは、まさにハマり役。ウィルソンとハーン、セラピスト役のジェニファー・アニストンも、少しずつズレたキャラクターを熱演して笑わせる。往年の名作やスターたちへのオマージュがちりばめられ、カメオ出演の顔ぶれも豪華。私生活では婚約者と死別したボグダノビッチ監督、自殺未遂歴のあるウィルソン、ブラッド・ピットと離婚したアニストンら、どん底からの再起を果たした面々が贈る、愛に満ちた人生賛歌としても味わい深い。 『友だちのパパが好き』(R15+指定)は、CM、演劇など多方面で活躍する山内ケンジ監督の長編第2作となる風変わりなラブコメディー。女子大生の箱崎妙子(岸井ゆきの)は、自分の父親・恭介(吹越満)に対する恋心を親友のマヤ(安藤輪子)から突然告白される。その話を聞き、母のミドリ(石橋けい)は笑い飛ばすが、恭介はうれしさを隠しきれない。しかし、恭介には長年の愛人がいて、そのため夫婦は離婚を決めていた。マヤが恭介へ猛アタックを開始したことで、箱崎家の3人と周囲の人間関係が大きく揺らぎ、崩れ始める。  不倫していながら第3の女性に心ときめかせるダメ男、父親の不実を許せない娘、常識外れのアプローチを仕掛ける人物といった具合に、山内監督のデビュー作『ミツコ感覚』(2011年)と多くの要素が共通する。それでいて、まったく異なるストーリーに仕立て、予想外の展開で観客を驚かせる手腕が見事。女たちの薄幸そうな表情を淡々と描き、そこに生まれる微妙な空気を笑いへ転化するセンスが抜群だ。数々の恋愛エピソードもカリカチュアライズされつつ、どこかしら普遍性を残していて共感を呼ぶ。愛人役の平岩紙、ミドリに言い寄る同僚役の宮崎吐夢という2人の大人計画所属俳優も、いいアクセントになっている。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『マイ・ファニー・レディ』作品情報 <http://eiga.com/movie/81148/> 『友だちのパパが好き』作品情報 <http://eiga.com/movie/83128/>