マンガの世界では、マンガ家自身の半生をテーマにした「マンガ家マンガ」というジャンルがあります。その中で、最高峰かつバイブル的な存在といえば、藤子不二雄A先生による『まんが道』でしょう。この作品を読んで、マンガ家を志した方も多いのではないかと思います。 ところで、皆さんは梶原一騎という人物をご存じでしょうか? 『空手バカ一代』『巨人の星』『タイガーマスク』『あしたのジョー』『プロレススーパースター列伝』などなど、日本を代表するスポ根マンガの原作者であり、「劇画王」とまでいわれている人物ですが、マンガ作家でありながら、そんじょそこらの格闘マンガの主人公よりも遥かに破天荒な人生を送ったことでも有名です。 そんな梶原先生の人生そのものをマンガにしてしまった、バイオレンスすぎる自伝マンガが『男の星座』なのです。原作は梶原先生自ら担当し、作画は『プロレススーパースター列伝』でコンビを組んだ、原田久仁信先生です。連載中の1987年に梶原先生が逝去したため、未完となってしまいました。 『男の星座』の内容は、妙齢の男性が星座占いやプラネタリウム通いにいそしむ、などといったたぐいの軟弱な話ではなく、「これが男一匹・梶原一騎の人生じゃ! 文句あるか!!」とばかりに、男性ホルモンをフルスロットルで放出し続けています。キーワードは「力道山」「大山倍達」「ケンカ」「女」「酒」の、ほぼ5つのみ。本業のマンガ原作の話は、わりとそっちのけです。 本作における重要人物となる2人の格闘家、力道山と大山倍達についてですが、力道山はご存じ、必殺「空手チョップ」を武器に、戦後のプロレスブームを牽引した「日本プロレス界の父」であり、ジャイアント馬場、アントニオ猪木といった、プロレス界のレジェンドを生んだ師匠でもあります。 一方の大山倍達は極真空手の創始者であり、猛牛を素手で倒したため「牛殺し」の異名を持ち、『空手バカ一代』のモチーフともなった人物です。この2人と梶原先生という、3つの輝く一等星が織りなす人生劇場が『男の星座』なのです。 梶原先生(作中では梶一太)は柔道・空手の有段者であり、格闘技に造詣が深かったことから、取材を通じて力道山や大山倍達と交流するようになります。作中で描かれる格闘界のレジェンドの2人の逸話はとてつもなくディープですさまじいものですが、実は真の主人公である梶原先生自身の武勇伝のほうがすごかったりします。その豪胆すぎるエピソードを、いくつかご紹介しましょう。 まだ駆け出しの小説家だった若き日の梶原先生が、浅草でストリップの女王に一目惚れ。そこからの行動は、今でいうなら、完全にストーカーです。タクシーで尾行し、彼女と同じ店に入って隣の席で飯を食いながら会話を盗み聞きしたり、ファンレターを書きまくったのに返事をもらえず、怒りのあまり楽屋に乗り込んでケツモチの暴力団に襲われるも、得意の柔道で返り討ちにしたり……。しかし、その強引さに女王は心奪われ、2人は同棲することになるのです。ストーキング行為が激しすぎて恋が成就してしまうという、稀有な例です。 続いても、女絡み。酔って入った場末のキャバレー、そこでナンバーワンホステス・夕子とイチャついていたのはいいが、実は暴力団経営のボッタクリ店で、お勘定はなんと30万円。「払えない」と言うと、「指を詰めろ」と脅されます。しかし、逆ギレした梶原先生は、その場で夕子を人質に取り、すごみ返します。 「ヤクザの情婦ふぜいが、ちょっとばっかりツラの印刷がいいからって、大の男をコケにしくさってぇーーー!」 「ヘタな大阪弁で凄むんじゃねえッ、この京浜蒲田のドサヤクザがァ!」 梶原先生、人質を取った途端、めっちゃ強気です。取り囲む数十人のヤクザ相手に、全然ひるんでいません。「ツラの印刷」って表現も斬新すぎる! そして、和服姿で下半身丸出し状態の夕子をジャイアントスイングでブンブン振り回し、取り囲むヤクザをなぎ倒して店を脱出。その後しばらく、ヤクザの刺客たちに命を狙われては返り討ちにする日々を過ごすのですが、その梶原先生の腕っ節の強さに、ヤクザの情婦だったはずの夕子が惚れてしまい、2人は同棲することに(またかよ!)……。どうですか、破天荒でしょう!? 力道山との初対面のエピソードもすごいです。梶原先生の書いたルポの内容が力道山を怒らせてしまい、料亭の太い床柱を空手チョップで叩き割る姿を見せつけられ、周りはみんなチビッているのに、梶原先生だけはまったく動じなかったのです(実は女と別れて、ヤケクソになっていただけ)。それがきっかけで、力道山に気に入られるという、棚ボタラッキーな豪胆エピソードです。 また、銀座のステーキ店「スエヒロ」で見習いとして働いていた時代、皿を割ってコック長に殴られたのに逆ギレし、コック長を一本背負いしてノックアウト。退職金代わりに牛フィレ肉5枚を奪っていくというエピソードなども、キレッキレでシビれます。 これが最後の作品だと腹をくくっていたせいか、力道山が岸恵子と付き合っていたとか、こ●どり姉妹のスポンサーは暴力団だったとか、当時としてはいろいろと外に出してはまずそうな話を、実名で容赦なく暴露しているところも見どころです。まさに、怖いものなし状態。 さらに、梶原先生が浮き名を流した松坂慶子、島田陽子、池上季実子、早乙女愛、志穂美悦子などの女優たちとの関係についても真相を描く……などといった、名前を出された方にとっては戦々恐々の予告がされていたのですが、こちらは残念ながら、本作では描かれる前に絶筆となってしまいました。 というわけで、まだまだネタはあったに違いないのに未完となってしまったのが惜しまれる、梶原一騎自伝マンガ『男の星座』をご紹介しました。男たるもの、こんな豪快な生き方をしてみたいものですが、普通の人には到底無理そうです。先生が数々の大ヒットマンガの原作を発想できたのは、本人の人生がマンガ以上に破天荒すぎたからかもしれませんね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『男の星座』(グループ・ゼロ)
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格闘マンガ以上にバイオレンス! 豪胆すぎる梶原一騎の人生劇場『男の星座』
マンガの世界では、マンガ家自身の半生をテーマにした「マンガ家マンガ」というジャンルがあります。その中で、最高峰かつバイブル的な存在といえば、藤子不二雄A先生による『まんが道』でしょう。この作品を読んで、マンガ家を志した方も多いのではないかと思います。 ところで、皆さんは梶原一騎という人物をご存じでしょうか? 『空手バカ一代』『巨人の星』『タイガーマスク』『あしたのジョー』『プロレススーパースター列伝』などなど、日本を代表するスポ根マンガの原作者であり、「劇画王」とまでいわれている人物ですが、マンガ作家でありながら、そんじょそこらの格闘マンガの主人公よりも遥かに破天荒な人生を送ったことでも有名です。 そんな梶原先生の人生そのものをマンガにしてしまった、バイオレンスすぎる自伝マンガが『男の星座』なのです。原作は梶原先生自ら担当し、作画は『プロレススーパースター列伝』でコンビを組んだ、原田久仁信先生です。連載中の1987年に梶原先生が逝去したため、未完となってしまいました。 『男の星座』の内容は、妙齢の男性が星座占いやプラネタリウム通いにいそしむ、などといったたぐいの軟弱な話ではなく、「これが男一匹・梶原一騎の人生じゃ! 文句あるか!!」とばかりに、男性ホルモンをフルスロットルで放出し続けています。キーワードは「力道山」「大山倍達」「ケンカ」「女」「酒」の、ほぼ5つのみ。本業のマンガ原作の話は、わりとそっちのけです。 本作における重要人物となる2人の格闘家、力道山と大山倍達についてですが、力道山はご存じ、必殺「空手チョップ」を武器に、戦後のプロレスブームを牽引した「日本プロレス界の父」であり、ジャイアント馬場、アントニオ猪木といった、プロレス界のレジェンドを生んだ師匠でもあります。 一方の大山倍達は極真空手の創始者であり、猛牛を素手で倒したため「牛殺し」の異名を持ち、『空手バカ一代』のモチーフともなった人物です。この2人と梶原先生という、3つの輝く一等星が織りなす人生劇場が『男の星座』なのです。 梶原先生(作中では梶一太)は柔道・空手の有段者であり、格闘技に造詣が深かったことから、取材を通じて力道山や大山倍達と交流するようになります。作中で描かれる格闘界のレジェンドの2人の逸話はとてつもなくディープですさまじいものですが、実は真の主人公である梶原先生自身の武勇伝のほうがすごかったりします。その豪胆すぎるエピソードを、いくつかご紹介しましょう。 まだ駆け出しの小説家だった若き日の梶原先生が、浅草でストリップの女王に一目惚れ。そこからの行動は、今でいうなら、完全にストーカーです。タクシーで尾行し、彼女と同じ店に入って隣の席で飯を食いながら会話を盗み聞きしたり、ファンレターを書きまくったのに返事をもらえず、怒りのあまり楽屋に乗り込んでケツモチの暴力団に襲われるも、得意の柔道で返り討ちにしたり……。しかし、その強引さに女王は心奪われ、2人は同棲することになるのです。ストーキング行為が激しすぎて恋が成就してしまうという、稀有な例です。 続いても、女絡み。酔って入った場末のキャバレー、そこでナンバーワンホステス・夕子とイチャついていたのはいいが、実は暴力団経営のボッタクリ店で、お勘定はなんと30万円。「払えない」と言うと、「指を詰めろ」と脅されます。しかし、逆ギレした梶原先生は、その場で夕子を人質に取り、すごみ返します。 「ヤクザの情婦ふぜいが、ちょっとばっかりツラの印刷がいいからって、大の男をコケにしくさってぇーーー!」 「ヘタな大阪弁で凄むんじゃねえッ、この京浜蒲田のドサヤクザがァ!」 梶原先生、人質を取った途端、めっちゃ強気です。取り囲む数十人のヤクザ相手に、全然ひるんでいません。「ツラの印刷」って表現も斬新すぎる! そして、和服姿で下半身丸出し状態の夕子をジャイアントスイングでブンブン振り回し、取り囲むヤクザをなぎ倒して店を脱出。その後しばらく、ヤクザの刺客たちに命を狙われては返り討ちにする日々を過ごすのですが、その梶原先生の腕っ節の強さに、ヤクザの情婦だったはずの夕子が惚れてしまい、2人は同棲することに(またかよ!)……。どうですか、破天荒でしょう!? 力道山との初対面のエピソードもすごいです。梶原先生の書いたルポの内容が力道山を怒らせてしまい、料亭の太い床柱を空手チョップで叩き割る姿を見せつけられ、周りはみんなチビッているのに、梶原先生だけはまったく動じなかったのです(実は女と別れて、ヤケクソになっていただけ)。それがきっかけで、力道山に気に入られるという、棚ボタラッキーな豪胆エピソードです。 また、銀座のステーキ店「スエヒロ」で見習いとして働いていた時代、皿を割ってコック長に殴られたのに逆ギレし、コック長を一本背負いしてノックアウト。退職金代わりに牛フィレ肉5枚を奪っていくというエピソードなども、キレッキレでシビれます。 これが最後の作品だと腹をくくっていたせいか、力道山が岸恵子と付き合っていたとか、こ●どり姉妹のスポンサーは暴力団だったとか、当時としてはいろいろと外に出してはまずそうな話を、実名で容赦なく暴露しているところも見どころです。まさに、怖いものなし状態。 さらに、梶原先生が浮き名を流した松坂慶子、島田陽子、池上季実子、早乙女愛、志穂美悦子などの女優たちとの関係についても真相を描く……などといった、名前を出された方にとっては戦々恐々の予告がされていたのですが、こちらは残念ながら、本作では描かれる前に絶筆となってしまいました。 というわけで、まだまだネタはあったに違いないのに未完となってしまったのが惜しまれる、梶原一騎自伝マンガ『男の星座』をご紹介しました。男たるもの、こんな豪快な生き方をしてみたいものですが、普通の人には到底無理そうです。先生が数々の大ヒットマンガの原作を発想できたのは、本人の人生がマンガ以上に破天荒すぎたからかもしれませんね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『男の星座』(グループ・ゼロ)
自衛隊は実は強い!? ゴジラに東京をめちゃくちゃにされた本当のワケ『シン・ゴジラ』
絶賛大ヒット中の『シン・ゴジラ』。同作品は、アニメ作品『エヴァンゲリオン』でカルト的人気の庵野秀明監督が挑んだ怪獣映画。伝説的シリーズ『ゴジラ』の新作ですね。 すでに多くの映画ファンに語られている同作品。そこで、ちょっと趣向を変えて“武器”という観点から書きます。 あらゆる映画に武器・兵器は出てきます。実在するものだったり、架空のものだったり、誇張されていたりとさまざまですが、それらを知ることで、映画がより面白くなったり、おかしくなったりします。 怪獣映画とは、未知の存在が人類とその社会を蹂躙していくものです。いかに未知の化け物に、現代の兵器が効かないか? それを見せつける映画でもあるわけです。ミリオタの僕としては「その武器、もうちょい強くして!!」って、思ったりするわけですよ。 もちろん、今回のゴジラに、どんな兵器も効きません。「人類の叡知をバカにしてんのか!?」ってくらい効果がありません。それが『シン・ゴジラ』を見たときの恐怖の正体でもあり、面白さでもあるわけですが。 多少のネタバレは含みますが、気にならない程度に書いていきます。 ゴジラと最初に戦ったのは、自衛隊です。自衛隊って、どのくらいの強さでしょう? 「実戦経験が少ない」「平和ボケ」などの言葉を耳にします。つまり、弱いイメージがあると思います。実のところ、自衛隊はめちゃくちゃ強いです。自衛隊と戦ったことがないので断言はできませんが、強いはずです。いや強くなくてはいけないのです。なぜなら、日本の軍事防衛費は世界でもトップレベルですし、現代における最強兵器「イージス艦」の保有数はアメリカに次いで多いので、ゴジラは相手に不足なしですね。 ゴジラへの最初の攻撃は、ヘリコプターからの機関砲射撃でした。登場するのは「AH-1攻撃ヘリ」通称“コブラ”です。アメリカ製のヘリですけど、自衛隊でも配備されています。劇中に出てくるのは「AH-1S」という強化型です。装備している機関砲は、「M197機関砲」。劇中では「20mm機関砲」と言っています。 ちなみに銃と砲の違いですが、多くの軍隊では、ボーダーラインは20mmとされています。20mm以上を砲、それ未満が銃なので、大きさ順に並べると、銃<20mm≦砲となります。『シン・ゴジラ』公式サイトより
話を戻します。コブラの20mm機関砲はゴジラに全弾命中。しかし、ゴジラは微動だにしません。そこで立て続けに、攻撃ヘリ「AH-64」こと“アパッチ”が登場します。おそらく、一番有名な軍事用ヘリではないでしょうか? そのアパッチがM230機関砲で攻撃します。これは30mmです。30mmは一発で戦車の装甲を撃ち抜くほどの威力です。 「20mm砲が効かないなら、30mm砲も効くわけないだろ!」そう思われた皆さん、その通りです。全然、効きません。ただ、この30mm砲が効かないことの意味は、かなり大きいです。30mm機関砲は、世界最大級の機関砲です。この機関砲で効果がないなら、ありとあらゆる機関砲はゴジラに効果なしってことになります。 20mmの砲弾は、マジックペンのマッキーくらいの大きさ。30mm弾は1Lのペットボトルくらいの大きさがあります。その集中砲火をまともに食らっても、歩みを止めないゴジラは「頑丈だな! 分厚いな!」となるわけです。 『シン・ゴジラ』では、自衛隊の装備もしっかり再現されていました。装備していた「89式5.56mm小銃」。これは自衛隊の正式採用小銃です。劇中に登場した「10式戦車」は日本の主力戦車で、天下の三菱重工業の製作の国産戦車です。同じく多摩川防衛線でゴジラを砲撃した「16式機動戦闘車」は、なんと映画史上初の登場です。なんたって16年に配備された最新兵器ですからね。ほかにも“平成の零戦”といわれる「F−2戦闘機」、護衛艦の数々、まさに自衛隊兵器のオンパレードです。それでも、役に立たない、世界上位の戦力が歯が立たないんです。 そこで登場するのがアメリカです。アメリカは何をするかというと、「B-2爆撃機」での空爆を決行します。アメリカさまさまです。B-2爆撃機とは、“ステルス戦略爆撃機”のことです。一番形がキレイな航空機ですよね。いや、誰が何と言おうと、僕はそう思います。 B-2爆撃機による「地中貫通爆弾」、通称“バンカーバスター”でゴジラを爆撃します。バンカーバスターは、コンクリートで6メートル強、地面で50メートル以上の深さまで地中を貫きます。ちなみに、劇中に登場したバンカーバスターは発展型で、実は架空の武器なんです。 これは、どうなんだろう? 僕が見た感じでは、多少のダメージはあった。それで怒ってゴジラは火を噴いて、放射能熱線を発射、あるいは、発射できるように進化したと解釈しました。放射能熱線でB-2爆撃機を撃ち落とすってことは、射程が2万メートルくらいあるってことですよ。それで、ステルス爆撃機をゴジラは何機も落としちゃう。あのすごい戦略爆撃機を! アメリカの秘密兵器! 1機2,000億円以上もするのに! 僕はその光景を見て思いました。「落ちたのは、B-2爆撃機じゃない! アメリカの威信だ!」と。 それと、これは僕らミリオタだけの興奮だと思いますけど、アメリカの軍用無人航空機、「MQ-9リーパー」が出てくる! アメリカ映画では何度も見たことあるけど、日本映画は初出演じゃないだろうか!? 見せ場といえば、「無人在来線爆弾(E231系・E233系)」ですよね。内閣官房副長官の矢口(長谷川博己)とその仲間たちが、打倒ゴジラの名の下展開した“ヤシオリ作戦”で登場します。僕らが普段乗る中央快速線やら山手線やらが、走る爆弾になります。あの電車、目一杯爆弾を積んでいるとしたら、相当な威力です。ちょっと、計算してみましょう。 E231系1車両の定員は162名、乗車率200%になると、倍の人数である約320名乗れるとしましょう。一人当たり、成人男性の平均体重65キロとします。65×320=20,800となります。つまり、約20t。1車両あたり20tの爆弾です。それが10車両を1編成とし、10編成で、走っていきます! 2,000tの爆弾です! 2,000t……! 想像つきませんよね!? 爆弾の威力はTNT爆弾を基準とした“TNT換算”を用います。TNT換算で2,000tを計算すると、なんと爆発から半径1.5キロ内のコンクリートビル群が倒壊するレベルです! 東京大空襲でB29が落とした焼夷弾ですら合計1,700tですよ! 2,000tの火薬量をぶつけても、ゴジラは転倒するだけで、大きなダメージはありません。文字通り“バケモノ”です。 という具合に兵器を知っていれば、映画はより面白くなります。「あの武器」が通じない!「あの兵器」が落とされた! それだけで、より映画の世界に引き込まれるわけです。 『シン・ゴジラ』でいうと、ゴジラから発せられる恐怖感が倍増します。まぁ、ゴジラが核融合の塊みたいな存在なので、それ自体が兵器と言ってしまえば、そうなんですけども……。 それにしても、本当に武器っていいものですね〜。 (文=二木知宏[スクラップロゴス])アパッチ(イメージ画像 photo by Airwolfhound from Flicker.)
自衛隊は実は強い!? ゴジラに東京をめちゃくちゃにされた本当のワケ『シン・ゴジラ』
絶賛大ヒット中の『シン・ゴジラ』。同作品は、アニメ作品『エヴァンゲリオン』でカルト的人気の庵野秀明監督が挑んだ怪獣映画。伝説的シリーズ『ゴジラ』の新作ですね。 すでに多くの映画ファンに語られている同作品。そこで、ちょっと趣向を変えて“武器”という観点から書きます。 あらゆる映画に武器・兵器は出てきます。実在するものだったり、架空のものだったり、誇張されていたりとさまざまですが、それらを知ることで、映画がより面白くなったり、おかしくなったりします。 怪獣映画とは、未知の存在が人類とその社会を蹂躙していくものです。いかに未知の化け物に、現代の兵器が効かないか? それを見せつける映画でもあるわけです。ミリオタの僕としては「その武器、もうちょい強くして!!」って、思ったりするわけですよ。 もちろん、今回のゴジラに、どんな兵器も効きません。「人類の叡知をバカにしてんのか!?」ってくらい効果がありません。それが『シン・ゴジラ』を見たときの恐怖の正体でもあり、面白さでもあるわけですが。 多少のネタバレは含みますが、気にならない程度に書いていきます。 ゴジラと最初に戦ったのは、自衛隊です。自衛隊って、どのくらいの強さでしょう? 「実戦経験が少ない」「平和ボケ」などの言葉を耳にします。つまり、弱いイメージがあると思います。実のところ、自衛隊はめちゃくちゃ強いです。自衛隊と戦ったことがないので断言はできませんが、強いはずです。いや強くなくてはいけないのです。なぜなら、日本の軍事防衛費は世界でもトップレベルですし、現代における最強兵器「イージス艦」の保有数はアメリカに次いで多いので、ゴジラは相手に不足なしですね。 ゴジラへの最初の攻撃は、ヘリコプターからの機関砲射撃でした。登場するのは「AH-1攻撃ヘリ」通称“コブラ”です。アメリカ製のヘリですけど、自衛隊でも配備されています。劇中に出てくるのは「AH-1S」という強化型です。装備している機関砲は、「M197機関砲」。劇中では「20mm機関砲」と言っています。 ちなみに銃と砲の違いですが、多くの軍隊では、ボーダーラインは20mmとされています。20mm以上を砲、それ未満が銃なので、大きさ順に並べると、銃<20mm≦砲となります。『シン・ゴジラ』公式サイトより
話を戻します。コブラの20mm機関砲はゴジラに全弾命中。しかし、ゴジラは微動だにしません。そこで立て続けに、攻撃ヘリ「AH-64」こと“アパッチ”が登場します。おそらく、一番有名な軍事用ヘリではないでしょうか? そのアパッチがM230機関砲で攻撃します。これは30mmです。30mmは一発で戦車の装甲を撃ち抜くほどの威力です。 「20mm砲が効かないなら、30mm砲も効くわけないだろ!」そう思われた皆さん、その通りです。全然、効きません。ただ、この30mm砲が効かないことの意味は、かなり大きいです。30mm機関砲は、世界最大級の機関砲です。この機関砲で効果がないなら、ありとあらゆる機関砲はゴジラに効果なしってことになります。 20mmの砲弾は、マジックペンのマッキーくらいの大きさ。30mm弾は1Lのペットボトルくらいの大きさがあります。その集中砲火をまともに食らっても、歩みを止めないゴジラは「頑丈だな! 分厚いな!」となるわけです。 『シン・ゴジラ』では、自衛隊の装備もしっかり再現されていました。装備していた「89式5.56mm小銃」。これは自衛隊の正式採用小銃です。劇中に登場した「10式戦車」は日本の主力戦車で、天下の三菱重工業の製作の国産戦車です。同じく多摩川防衛線でゴジラを砲撃した「16式機動戦闘車」は、なんと映画史上初の登場です。なんたって16年に配備された最新兵器ですからね。ほかにも“平成の零戦”といわれる「F−2戦闘機」、護衛艦の数々、まさに自衛隊兵器のオンパレードです。それでも、役に立たない、世界上位の戦力が歯が立たないんです。 そこで登場するのがアメリカです。アメリカは何をするかというと、「B-2爆撃機」での空爆を決行します。アメリカさまさまです。B-2爆撃機とは、“ステルス戦略爆撃機”のことです。一番形がキレイな航空機ですよね。いや、誰が何と言おうと、僕はそう思います。 B-2爆撃機による「地中貫通爆弾」、通称“バンカーバスター”でゴジラを爆撃します。バンカーバスターは、コンクリートで6メートル強、地面で50メートル以上の深さまで地中を貫きます。ちなみに、劇中に登場したバンカーバスターは発展型で、実は架空の武器なんです。 これは、どうなんだろう? 僕が見た感じでは、多少のダメージはあった。それで怒ってゴジラは火を噴いて、放射能熱線を発射、あるいは、発射できるように進化したと解釈しました。放射能熱線でB-2爆撃機を撃ち落とすってことは、射程が2万メートルくらいあるってことですよ。それで、ステルス爆撃機をゴジラは何機も落としちゃう。あのすごい戦略爆撃機を! アメリカの秘密兵器! 1機2,000億円以上もするのに! 僕はその光景を見て思いました。「落ちたのは、B-2爆撃機じゃない! アメリカの威信だ!」と。 それと、これは僕らミリオタだけの興奮だと思いますけど、アメリカの軍用無人航空機、「MQ-9リーパー」が出てくる! アメリカ映画では何度も見たことあるけど、日本映画は初出演じゃないだろうか!? 見せ場といえば、「無人在来線爆弾(E231系・E233系)」ですよね。内閣官房副長官の矢口(長谷川博己)とその仲間たちが、打倒ゴジラの名の下展開した“ヤシオリ作戦”で登場します。僕らが普段乗る中央快速線やら山手線やらが、走る爆弾になります。あの電車、目一杯爆弾を積んでいるとしたら、相当な威力です。ちょっと、計算してみましょう。 E231系1車両の定員は162名、乗車率200%になると、倍の人数である約320名乗れるとしましょう。一人当たり、成人男性の平均体重65キロとします。65×320=20,800となります。つまり、約20t。1車両あたり20tの爆弾です。それが10車両を1編成とし、10編成で、走っていきます! 2,000tの爆弾です! 2,000t……! 想像つきませんよね!? 爆弾の威力はTNT爆弾を基準とした“TNT換算”を用います。TNT換算で2,000tを計算すると、なんと爆発から半径1.5キロ内のコンクリートビル群が倒壊するレベルです! 東京大空襲でB29が落とした焼夷弾ですら合計1,700tですよ! 2,000tの火薬量をぶつけても、ゴジラは転倒するだけで、大きなダメージはありません。文字通り“バケモノ”です。 という具合に兵器を知っていれば、映画はより面白くなります。「あの武器」が通じない!「あの兵器」が落とされた! それだけで、より映画の世界に引き込まれるわけです。 『シン・ゴジラ』でいうと、ゴジラから発せられる恐怖感が倍増します。まぁ、ゴジラが核融合の塊みたいな存在なので、それ自体が兵器と言ってしまえば、そうなんですけども……。 それにしても、本当に武器っていいものですね〜。 (文=二木知宏[スクラップロゴス])アパッチ(イメージ画像 photo by Airwolfhound from Flicker.)
ノンフィクション作家・石井光太が迫る、虐待家庭の闇『「鬼畜」の家~わが子を殺す親たち~』
2014年に発覚した「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」を覚えているだろうか? この事件は、東京都足立区に住む、元ホストの皆川忍(当時30歳)と、元ホステスの朋美(27歳)夫婦が、3歳になる玲空斗君を長期にわたり、ウサギ用ケージに監禁。ある日の深夜、玲空斗君が「あー」「うー」と叫ぶので、忍が「静かにしろ!」と怒鳴り、タオルをくわえさせ、窒息死させた。 このような残忍な事件を起こす犯人夫婦とは、いったいどんな人間なのか? おそらく大半の人は、こう思うだろう。人を人とも思わないような“鬼畜”に違いない、と。けれど、彼らは言う。 「愛していたけど、殺してしまいました――」 『「鬼畜」の家~わが子を殺す親たち~』(新潮社)は、ノンフィクション作家・石井光太氏が、わが子を殺してしまった事件の真相を追ったルポだ。扱うのは「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」に加え、未熟な夫婦が5歳の子をアパートに放置、死に至らしめて7年間放置した「厚木市幼児餓死白骨化事件」、奔放な男性遍歴の果てに妊娠を繰り返し、周囲に妊娠を隠したまま二度にわたり出産、嬰児の遺体を自宅の天井裏や押入れに隠した「下田嬰児連続殺害事件」の3件。 石井氏は、本人をはじめ、その両親や祖父母などに会い、どのような家庭環境で育ち、これまでどう生きてきたのか、事件を起こすまでの経緯を2年間かけて徹底的に取材している。 まず驚くのは、彼らの両親にはそれぞれ著しく問題がある、という点だ。中でも「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」を起こした忍の母・桜田亜佐美(仮名)には、絶句する。忍は児童養護施設で育った。亜佐美は育てるつもりがないのに、忍のほかに4人もの子を産み、出産と同時に施設へと預けている。それでも、長男の忍だけは唯一かわいがり、頻繁に一時帰宅させ、一緒に夜の町に出かけ、明け方まで飲み歩いたり、恋人に会わせたりした。中学卒業時には、なんの気まぐれか、忍を家に引き取るも、ソープランドで働いていたので、帰宅は深夜で昼まで眠り、食事もろくに作らなかった。 彼女の行動は、すべて思いつきだった。忍は、その性格をそっくりそのまま受け継いだ。彼には、派遣会社の運送の仕事で月15万円ほどの稼ぎしかなかった。しかし、7年間で7人もの子どもをもうけた。次女が言うことを聞かないので、リードでつないで殴った。同じく次男が言うことを聞かないので、ウサギのケージに入れ、死んでしまったから、バレないように棄てた。彼はこうしたら、こうなるという想像ができない。 また、朋美の母は、子どもを持つ身でありながら不倫し、その男が自分の長男の彼女に手を出し、怒ったところ、男にマンションの3階から突き落とされるような人物であった。 忍と朋美には、いわゆる“世間一般の温かい家庭”のイメージというものが、おそらくない。それでも、なんとかいい家庭を築こうとしていた形跡がある。それが、忍がある窃盗容疑で捕まった時に、朋美が書いた手紙だ。 「子供達は相変わらず面会で見ての通り元気だけど、皆パパが大好きだから、いないのは寂しいんだよ。でも、私がこんなんだから、ああやって元気にふるまってんだ…どんなに小さくても皆が、分かってる。パパがいないとママはダメになっちゃうって(中略)。1人で5人は、とっても大変…やっぱ、パパがいて7人揃ってウチは仲良し家族だよ!!」 実際、石井氏があるルートから手に入れた彼らの家族写真を見ると、Vサインをしたり、笑顔で頬と頬をくっつけたりしている、仲睦まじい家族写真ばかりだった。にもかかわらず、残忍な虐待によって次男を殺し、「埋葬」をするため、“長男と長女とともに”山梨県へと向かうなど、正常な頭では考えられないような行動も起こす。この矛盾が、どうして起きてしまうのか? その点について石井氏は、彼らの過去をできる限りさかのぼることで、丹念に追っている。 最後まで読み終え、思わず深いため息が出た。彼らは、本気で子どもたちを愛していたのかもしれない。だが、あくまで彼らなりに。どの事件も、まったく罪のない子どもが亡くなっているだけに、軽々しく同情はできない。けれど、幼い頃に身につけた感覚というのは、おそらく一生消えない。一体何がどうなったら、このような残酷な事件が起きるのか――。その背景を、この本で知ってもらいたい。 (文=上浦未来) ●いしい・こうた 1977年、東京生まれ。国内外を舞台にしたノンフィクションを中心に、児童書、小説など幅広く執筆活動を行っている。主な著書に『物乞う仏陀』(文藝春秋)、『神の棄てた裸体-イスラームの夜を歩く』『レンタルチャイルド-神に弄ばれる貧しき子供たち』『遺体-震災、津波の果てに』『浮浪児1945-戦争が生んだ子供たち』(新潮社)、『絶対貧困-世界最貧民の目線』(光文社)、『地を這う祈り』(徳間書店)ほか、児童書に『ぼくたちは なぜ、学校へ行くのか。―マララ・ユスフザイさんの国連演説から考える』(ポプラ社)、『幸せとまずしさの教室―世界の子どものくらしから』(少年写真新聞社)、小説『蛍の森』(新潮社)、責任編集『ノンフィクション新世紀』(河出書房新社)などがある。『「鬼畜」の家: わが子を殺す親たち』(新潮社)
AV界に「いらっしゃ~い」!? 桂文枝と“20年不倫”の芸能人・紫艶がKMPからデビュー!
今年2月、落語家・桂文枝との34歳差“20年不倫”を「フライデー」(講談社)で告白した元演歌歌手の紫艶が、AVデビューすることが明らかになった。 紫艶は「フライデー」での告白後、フェイスブックに文枝の全裸写真をアップするなどして話題を提供。さらに、毎月振り込まれていたという20万円、計1,300万円にものぼる振り込み記録が記入された通帳の写真までアップしていた。
「騒動のあと、芸能界引退を発表し、特に目立った活動の見られなかった紫艶ですが、今回のAVデビューには驚きました。騒動の際には“売名行為”などと、吉本側の肩を持つ大手メディアからさんざん叩かれた紫艶ですが、一気に有名になったことは確か。したたかな立ち回りといえるでしょうね」(芸能記者) いずれにしろ、人間国宝も有力紙される大落語家・文枝をトリコにした円熟ボディが白日の下にさらされることになったわけだ。 パッケージに「本編だけに語った師匠とのマル秘衝撃インタビューも完全収録!!」とあるのも気になるところ。文枝としては「オヨヨ!」という気分だろうが……。
“売春島”は本当にあった!? 消えていく外国人娼婦たちの声なき声『娼婦たちから見た日本』
日本のどこかに“売春島”と呼ばれる島がある――。半ば都市伝説のようにささやかれるそれは、本当に存在するらしい。フォトジャーナリスト八木澤高明の『娼婦たちから見た日本』(角川書店)では、著者がその“売春島”をはじめとする色街の隆盛と没落を見つめ続けた10年間のルポ。横浜・黄金町、沖縄、はては海外タイなどの色街を訪ね、そこに生きる娼婦たちとのやり取りや色街の成り立ちなどをしたためている。 “売春島”こと三重県の渡鹿野島は、江戸時代以前より存在し、漁業で賑わう島だったという。江戸と大阪を結ぶ海路上にあることもあり、船乗りたちが風を待つために立ち寄ることが多かった。島の人々は、8人ほどが乗れる小舟「はしりがね」で停泊する帆船に近づいて、娼婦が男たちの相手をすることから、そのまま娼婦たちのことを「はしりがね」と呼んだそう。 島と対岸が船で埋まるほどの人の往来があったそうだが、明治になると、蒸気船が登場し、風を待つ必要がなくなった。娼婦たちは次第に姿を消していく。多い時は島に350人ほどいて、一晩で何百万と稼いだとされる渡鹿野島の娼婦は、現在は18人とされる。ほとんどがタイなどの東南アジアの女たちだ。彼女たちは、紛れもなく1970年代に現れた“じゃぱゆきさん”の名残だ。 明治末期、外貨獲得のために海外の娼館に売り飛ばされた日本の女性たちがいた。“からゆきさん”と呼ばれた彼女たちは、文字通り体を張って外貨を稼いだという。中には騙されて海を渡ったという話もあるが、日本が国際社会に進出していくにつれ、「国家の恥」としてないものとされ、忘れられていった。今現在、色街の街頭に立つ娼婦の多くは、“からゆきさん”の逆輸入版の“じゃぱゆきさん”たち。経済的理由や、祖国の家族を養うために、日本にやってきて身を挺して働く彼女たちの言葉には心を打たれるだろう。 八木澤が横浜・黄金町で出会ったタイ人女性は、父親の病気の治療費を稼ぐために日本に来たという。娼婦を「悪い仕事」と語る彼女は、黄金町の浄化とともにいなくなった。過去250軒ほどのちょんの間があった黄金町は、2005年の摘発により全店舗が営業停止に追い込まれ、現在アートの町として生まれ変わっている。 江戸時代、幕府公認の色街は吉原だけだったとされているが、当時の言葉で「岡場所」と呼ばれた裏風俗が東京に100カ所以上あったという。幕府はそれらを取り締まり潰していったが、形を変えて売買春は行われていった。本書では、10年代に流行したネットを介した売買春や「JKビジネス」にも触れている。秋葉原などで取り沙汰される「JKビジネス」は、今の世に対応した売春の姿だと言えるだろう。八木澤は「売春街をいくら取り締まったところで、またどこからか、むくむくと現れるものなのだ」と語る。 ほか、沖縄現地の風俗事情と米軍基地との関係性や、今はなき色街を歩いた著者だから知り得るルポを347ページにわたって収録。 摘発の強化によって消えた、1,000人を超えるとされる“じゃぱゆきさん”。彼女たちは、今どこで生きているのだろうか。『娼婦たちから見た日本』(角川書店)
後藤健二さんを惨殺したISの処刑人「ジハーディ・ジョン」が生まれるまで
2015年、ジャーナリストの後藤健二さんと湯川遥菜さんがイスラム国(IS)によって殺害された。日本人が初めてISに人質として拘束されたこの事件、IS側は日本政府に対して身代金2億ドルを要求。72時間の猶予を発表したが、その結末は2人の死という最悪のものとなった。 当時、公開されたビデオには、オレンジ色のジャンプスーツを着て、カメラに向かってひざまずく2人の間に、黒ずくめの男が立っていた。ナイフを握り、覆面をかぶったその男のニックネームは「ジハーディ・ジョン」。ISの処刑人として、数々の西側ジャーナリストや活動家たちの首を斬ってきた、残忍極まりない人物だ。 しかし、この極悪非道なジハーディ・ジョンの生い立ちを丹念に読み解くと、彼もまた「対テロ戦争」の被害者だったのか……? と、考えが揺らいでしまうだろう。イギリス人ジャーナリスト、ロバート・バーカイクによる『ジハーディ・ジョンの生涯』(文藝春秋)から、この「処刑人」の半生を見てみよう。 ジハーディ・ジョンことムハメド・エムワジは1988年、クウェートに生まれた。湾岸戦争の戦火に巻き込まれたエムワジ一家は93年、イギリスに亡命。西ロンドンのメイダヴェール地区に移り住んだ。家族はアラビア語で話し、母はヴェールをかぶっていたが、一家は決して敬虔なムスリムというわけではなかった。特に、マンチェスター・ユナイテッドの熱狂的なファンであったエムワジは、幼少期には『シンプソンズ』を愛し、中学から高校にかけては、ジェイ・Zやエミネムなどのヒップホップを愛聴した。ベースボールキャップをかぶり、マリファナを吸い、アルコールに酔うやんちゃな少年だったのだ。 そんな彼の人生の転機となったのは、イスラム過激派グループとの交際。近所に住むムスリム移民のモハメド・サルクは、過激なイスラム思想を持つとしてMI5(イギリスの諜報機関)から徹底的にマークされた人物であり、エムワジの世界観にも多大な影響を与えたと考えられている。折しも、05年のロンドン同時爆破テロ以降、保安当局はイスラム過激派に対して目を光らせ、イスラムグループの若者たちを徹底的にマークしていた。その追及の手は、ウェストミンスター大学で学ぶエムワジにも及ぶようになる。サルクなどの人物を介してイスラムグループに入り浸るようになった彼は、日に4~5回の祈祷を行い、コーランの暗記も始めるなど、徐々に信仰に目覚めていった。また、周囲の仲間だけでなく、インターネットでイスラム過激派の「ジハードに参加せよ」というプロパガンダに触れ、その思想を先鋭化させていったのだ。だが、その頃はまだ過激な思想を持つ、その他大勢のムスリムにすぎなかった。 そして皮肉にも、このMI5のマークが、彼をムスリムから「ジハーディスト」へと脱皮させていった。 MI5は、イスラム過激派グループの若者たちに近づき、MI5のスパイとして働くか、テロリストの認定を受けるかという選択を迫るなど、脅迫のような行為でムスリムたちを追い込んでいく。その申し出を断ったエムワジを待ち受けていたのは、長時間にわたる拷問や、婚約者の家族に対する取り調べの末の婚約破談など、「嫌がらせ」の数々だった……。 MI5によって生活をむちゃくちゃにされた彼は、人生の再スタートを求めて祖国・クウェートに渡る。コンピュータ・プログラマーとしての仕事を見つけ、クウェート人女性との婚約も果たしたエムワジ。しかし、またしても、彼の幸福はMI5によって打ち砕かれた。ロンドンに一時帰国したエムワジは、クウェートに向かう飛行機の搭乗時に、テロリズム法のもとに取り調べられ所持品を没収。さらに、警察官に暴力を振るわれ、イギリスからの出国を禁じられてしまったのだ……。一度ならず二度までも幸福を奪われたエムワジが、怒りに打ち震えたことは想像に難くない。 もちろん、諜報機関としては、イスラム過激思想に触れる人間を監視する必要がある。しかし、その行動は、「嫌がらせ」と言えるような行き過ぎたものだった。ロンドン時代のエムワジは、バーカイクのインタビューに対して「MI5に人生を台無しにされた」と嘆く、紳士的で礼儀正しい青年だったという。 13年、厳しいMI5の目をかいくぐってイギリスを脱出したエムワジは、失うものもないジハーディストへと成長していた。ISに参加すると、人質となった西洋人たちに拷問を加え、カメラの前で人質たちの首を斬り、世界中を震撼させる。ロンドンにおいては、不良のケンカ程度しか暴力の経験がなかった彼は、ムスリムとしてのプライドや、過激思想、そして、MI5に対する恨みなど、さまざまな要因が絡み合って、「ジハーディ・ジョン」へと生まれ変わったのだ。後藤さん、湯川さんをはじめ、カメラの前で殺害した人質や捕虜は数十人にも及ぶ。 アメリカやイギリスなど、対テロ戦争を戦う西側諸国から、最重要指名手配犯として血眼で捜索されたエムワジは、15年11月12日、アメリカ軍のドローンからの空爆を受け、殺害された。 イギリス政府は、イスラム過激主義に対して「ゼロトレランス(不寛容)」という厳しい態度をもって臨んでいる。テロの防止という掛け声のもとに、ムスリムやムスリムコミュニティに所属する多くの人々を「テロリスト」と見なし、時には人権侵害も辞さない振る舞いに及ぶ。エムワジが殺害された翌日には、フランス同時多発テロが起こり、「非常事態宣言」のもとに1万人の「要注意人物」が取り調べられた。現在も、ヨーロッパ各地で「テロリスト」の汚名を着せられているムスリムたちは、西側政府や市民への不満を募らせている。今後も、ヨーロッパ中で、第2・第3のジハーディ・ジョンが誕生するのは、時間の問題だろう。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])『ジハーディ・ジョンの生涯』(文藝春秋)
「普通の汗」「冷や汗」「脂汗」は全部同じ成分だった! 意外と知られていない、汗のメカニズム
まだまだ暑い日が続く日本列島。汗っかきにとっては悩ましい季節だ。日中に外に出ようものなら、一瞬で汗だくになることも多い。噴き出る汗を何度も拭ううちにハンカチもびしょびしょになる。いっそ汗をかかない体がほしい――。そう思う人も少なくないだろう。 しかし、汗の専門医として過去30年近くにわたって多くの患者を診てきた五味クリニック院長・五味常明氏は「汗は大いにかくべき」だと主張する。 「恒温動物であるヒトは、汗をかくことで体温調整をしているんです。もし汗をかかない体になると、代謝で発生した熱によって体温がどんどん上昇し、45℃前後で死に至ります」(同) 五味先生によれば、汗の成分は99%以上が水。そこにわずかな量の塩分が含まれ、さらに微量なカリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、重炭酸イオンなどのミネラルや電解質が混じっているという。 「水に近ければ近いほど、体温調整の効率がよい汗です。よい汗の特徴はサラッとしていて、肌の上ですぐに乾く上に、におわないこと。逆に体温調整の効率が悪く、体に必要なミネラルを多く含むのが悪い汗で、ベトベトしている。舐めると、しょっぱかったり、酸っぱかったりします」 舐めて味がしたら、健康面で黄色信号なのだ。ところで、暑い時にかく汗のほかに、緊張した時にかく冷や汗や脂汗もある。これらも、同じ成分の「汗」なのだろうか? 「汗には、暑い時にかく温熱性発汗、緊張した時にかく緊張性発汗、ストレスを感じた時にかく精神性発汗、辛いものを食べた時にかく味覚性発汗の4種類があります。冷や汗や脂汗は緊張性発汗と精神性発汗に当たりますが、成分はどれも同じですね」 どうやら、サラッとした「よい汗」をかくための体調管理に留意しつつ、暑い夏はあきらめて汗を拭き続けるしかないようだ。 「ちなみに、かいた汗は全部拭いちゃダメですよ。汗は皮膚上で蒸発することで体温を下げる働きを持っています。全部拭いてしまうと余計に多くの汗が出て、いつまでも止まらないことがあるんです」 皮膚面は、常にしっとりとした状態に保つのがベストなんだそうだ。また、制汗剤はワキや足以外の場所に使用すると、熱中症の危険性が高まるそうなので、ご注意を。 (取材・文=石原たきび)イメージ画像(足成より)
女だったら女帝を目指せ! 究極の成り上がりホステスマンガ『女帝』
「日刊サイゾー」の読者の皆さん、こんにちは。皆さんは「成り上がりマンガ」は好きですか? 成り下がってばかりの潜水艦のような人生を送っている僕にとって、「成り上がりマンガ」は最高のカタルシスです。 このジャンルは、男性が主人公の作品が多数を占めています。スポーツマンガ、任侠マンガ、格闘マンガ、ビジネスマンガなど、多くの男性向けマンガは「成り上がる」こと自体が命題となっているので、当然ですね。 では、女性を主人公にしたマンガはあるのでしょうか? もちろんあります。それも、強烈なやつが。今回ご紹介する『女帝』です。 『女帝』は熊本出身の女子高生・立花彩香が、大阪の場末のスナックからスタートして、銀座で「女帝」と呼ばれるようになるまでの半生を描いた、ノンストップホステス成り上がりマンガです。何がノンストップかというと、一度読み始めると次の展開が気になって仕方がない、読んだら最後、You can’t stopなマンガなのです。それだけストーリーが精巧に練り上げられているということなのですが、今回はそんじょそこらの成り上がりマンガに対して『女帝』がどのぐらいすごいのかを、解説していきたいと思います。 ■成り上がる必然性ありまくりな壮絶設定 母子家庭で、スナックをしている母に育てられた彩香。高校では生徒会副会長になるほどの秀才でありながら、水商売の娘というだけで周囲に蔑まれる日々でした。そんな彩香に、ひそかに恋心を抱く男子高校生がいました。杉野健一、生徒会長であり、地元の大手企業、杉野建設の御曹司でもあります。 高校卒業間際、杉野は彩香をレイプ同然で襲うのですが、杉野が父の権力を使って、彩香が誘惑したことにしてしまいます。この頃から、男や権力に対して憎悪を燃やしだす彩香。 加えて実家のスナックは、杉野建設がバックの地上げ屋に嫌がらせをされており、心労で母が倒れてしまいます。さらに、病院の診断結果で末期がんが判明するのです。あまりに悲惨な状態からのスタートです。 ■男たちへの復讐が原動力 母ががんで亡くなり、天涯孤独となって熊本の地を離れ、大阪でホステスとして生きることを決意した彩香。しかし、杉野をはじめとした卑怯な男たちや汚い権力者たちへの復讐心がメラメラと燃え上がっていました。 「学力も力もないわたしだけど一つだけ武器がある!! 女という武器が、この武器を使ってのし上がってやる」 「男の上に君臨する、女帝になってやる…!!」 高卒にして、すでに「女帝」になることを決意します。しかも、野望達成のためなら体を張る気もマンマン。単なるお小遣い稼ぎでポロリと脱ぐのとは、気合が違うという話です。 ■処女であることを最大限に活用 ホステスとして生きることを決意した彩香ですが、実はまだバージン。そして「処女は貴重なはず、高く売れるはず」という信念のもと、女帝になるためのワンステップとして、己の処女までも利用します。 大阪で出会ったスケコマシのヤクザ、伊達直人にバージンを奪われそうになるシーンがあるのですが、こんなセリフでピンチを切り抜けます。 「この肉体をあげる時は勝負する時や! 女として一世一代の勝負する時に処女を捨てるんやッ!!」 「高おに売ったるんや!! だからナオトに抱かせるわけにはいかんのやあッ!!」 ベッドでこんなセリフ言われたら、どんな絶倫男でもシュンとなるってもんですよね。そんな感じで彩香のバージンブレークのエピソードだけでも、前半はめちゃくちゃ盛り上がります。 そんな彩香がバージンを捧げるのは、見た目はキモいけど、超大金持ちの爺さん。ミナミの妖怪と呼ばれる、美濃村社長です。 「どうせ抱かれるなら最初は醜い男がいい!! これから先、いろいろな男たちがわたしの肉体を通り過ぎていくだろう…! なら、最初に一番醜い男に抱かれれば、あとはどんな男でも受け入れられる! わたしは女帝になるんだ…」 こんなポエムをつぶやきつつ、ジジイに抱かれる彩香。しかしそのおかげで、ミナミのクラブでナンバーワンとなり、その勢いで銀座へ進出します。処女を捧げたご利益はメチャクチャありました。 ■ムダに多いシャワーシーン&着替えシーン 十分すぎるほど読ませるストーリーの『女帝』ですが、サービスシーンなのか、なんなのか、毎回のように、彩香のド迫力のシャワーシーンや着替えシーンが出てきます。裸体のゴリ押し、これも、『女帝』ならではの演出なのです。 ■『女帝』という言葉がカジュアルに飛び交う 皆さんは、日常生活で「女帝」って言うシーンはありますか? 普通の人はあまりないと思いますが、このマンガでは日常会話として普通に「女帝」という言葉が飛び交います。 「あの女は女帝なんかじゃない、わたしこそが女帝なのよ!!」 「お前も負けんな、お前は女帝になったれや!!」 「彩香やからでけたことや、さすが女帝・彩香やな…!!」 「彩香という一人の女の力…まさしく女帝にしかできないことだ…女帝・彩香にしか…!!」 「やっぱ彩ちゃん、銀座の女帝だね…!!」 こんな感じで、彩香の周りの人物たちが気軽に「女帝」と口にするので感覚が麻痺してきますが、職場で隣にあだ名が「女帝」の人が座っていたら、僕は結構嫌です。 ■ホステスの老後まで心配してこそ「女帝」 『女帝』という作品のすごいところは、彩香が成り上がった時点で終わりではないところです。引退したホステスの再就職先として割烹を経営したり、クラブを辞めたホステスがみんなで働けるように伊豆の旅館を買ったりします。さらに、結婚せずに年老いたホステスたちがお互い介護し合う環境まで整える彩香。単なる成り上がりマンガだったら、ここまで描かないですよね? っていうか、たぶんそんな話を描き始めたら、普通は打ち切られます。成り上がるだけじゃない、老後まで描き切ってこその『女帝』なのです。 ■究極のどんでん返し設定、実は「総理大臣の娘」 水商売の娘ということで少女時代からさんざん蔑まれてきた彩香ですが、なんと実の父親が時の総理大臣だったことが判明! 大逆転のスーパーチート設定で、彩香を陥れようとしていた周りのライバルたちの度肝を抜きます。女帝のパパが総理大臣。ほかのマンガでは、こんな最強設定は、なかなかお目にかかれないですよ。 *** というわけで、女成り上がりマンガの究極系『女帝』をご紹介しました。このほかに、女帝シリーズとして『女帝 花舞』『女帝 薫子』『女帝 由奈』などがありますので、併せて読んで女帝コンプリートを目指してみるのもオススメです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『女帝』(作:倉科遼/画:和気一作/グループ・ゼロ)










