「読者をナメている」!? 『HUNTER×HUNTER』休載中の冨樫義博“次回作”言及に猛反発!

humter0906
『HUNTER×HUNTER 33 (ジャンプコミックス)』(集英社)
 人気コミック『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博の発言が、反響を呼んでいる。8月20日発売のコミック誌「ジャンプGIGA VOL.2」(集英社)誌上で行われた『NARUTO -ナルト-』の作者・岸本斉史との対談でのことだが、司会者から次回作の構想について問われると、冨樫は「僕めちゃくちゃあるんですよね。描きたいやつ」と返答。  冨樫といえば、「週刊少年ジャンプ」(同)で1998年から『HUNTER×HUNTER』を連載するも、何度となく休載を繰り返してきた悪名高いマンガ家。対談相手の岸本の『NARUTO』のほうが後から連載がスタートしたのにもかかわらず、『NARUTO』が単行本が全72巻であるのに対し、『HUNTER×HUNTER』は現33巻という体たらく。同作は現在も休載中だけに、ネットユーザーらは冨樫の発言に、「『HUNTER×HUNTER』の連載に飽きたんだろ」「お前は秋本(治)先生を見習うように、マジで」などと猛反発。 「まったく、どの口が言うのでしょうか。現在連載中の作品すら全うできてないのに、よく次回作の構想なんて口にできますよね。これまで休載を重ねてきた挙げ句、この4月に1年8カ月ぶりに連載を再開したと思ったら、わずか3カ月後には再び休載ですからね。読者をナメているとしか言いようがない」(コミック誌編集者)  冨樫の度重なる休載の背景には持病の腰痛があるようだが、連載時には巻末コメントで腰痛のつらさを訴えてばかりいた。 「百歩譲って腰痛が原因だとしても、休載中に兄弟誌で次回作について語ったりするのは、ちょっと無神経ではないでしょうか。そして、こんなことを許しているジャンプの担当編集者は、冨樫を甘やかしすぎです。まずは腰痛を完治させて、連載を再開できるよう努めるべきです。現状を見る限り、腰痛なんて遅筆をごまかすための仮病としか思えません」(同)  対談で冨樫が明かした次回作のテーマの1つがカードバトル。同じテーマでは同じジャンプに連載されていた高橋和希による『遊☆戯☆王』がおなじみだが、「(連載終了から)だいぶ経ってるから、もうやってもいいんじゃ」と語り、かなり本気の様子。だが、『HUNTER×HUNTER』の再開のメドが立たない現状では、次回作など絵に描いた餅と言うしかないだろう。

「読者をナメている」!? 『HUNTER×HUNTER』休載中の冨樫義博“次回作”言及に猛反発!

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『HUNTER×HUNTER 33 (ジャンプコミックス)』(集英社)
 人気コミック『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博の発言が、反響を呼んでいる。8月20日発売のコミック誌「ジャンプGIGA VOL.2」(集英社)誌上で行われた『NARUTO -ナルト-』の作者・岸本斉史との対談でのことだが、司会者から次回作の構想について問われると、冨樫は「僕めちゃくちゃあるんですよね。描きたいやつ」と返答。  冨樫といえば、「週刊少年ジャンプ」(同)で1998年から『HUNTER×HUNTER』を連載するも、何度となく休載を繰り返してきた悪名高いマンガ家。対談相手の岸本の『NARUTO』のほうが後から連載がスタートしたのにもかかわらず、『NARUTO』が単行本が全72巻であるのに対し、『HUNTER×HUNTER』は現33巻という体たらく。同作は現在も休載中だけに、ネットユーザーらは冨樫の発言に、「『HUNTER×HUNTER』の連載に飽きたんだろ」「お前は秋本(治)先生を見習うように、マジで」などと猛反発。 「まったく、どの口が言うのでしょうか。現在連載中の作品すら全うできてないのに、よく次回作の構想なんて口にできますよね。これまで休載を重ねてきた挙げ句、この4月に1年8カ月ぶりに連載を再開したと思ったら、わずか3カ月後には再び休載ですからね。読者をナメているとしか言いようがない」(コミック誌編集者)  冨樫の度重なる休載の背景には持病の腰痛があるようだが、連載時には巻末コメントで腰痛のつらさを訴えてばかりいた。 「百歩譲って腰痛が原因だとしても、休載中に兄弟誌で次回作について語ったりするのは、ちょっと無神経ではないでしょうか。そして、こんなことを許しているジャンプの担当編集者は、冨樫を甘やかしすぎです。まずは腰痛を完治させて、連載を再開できるよう努めるべきです。現状を見る限り、腰痛なんて遅筆をごまかすための仮病としか思えません」(同)  対談で冨樫が明かした次回作のテーマの1つがカードバトル。同じテーマでは同じジャンプに連載されていた高橋和希による『遊☆戯☆王』がおなじみだが、「(連載終了から)だいぶ経ってるから、もうやってもいいんじゃ」と語り、かなり本気の様子。だが、『HUNTER×HUNTER』の再開のメドが立たない現状では、次回作など絵に描いた餅と言うしかないだろう。

“ピンク映画の巨匠”が若松孝二、可愛かずみらと過ごした日々を語る『つわものどもが遊びのあと』

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ピンク映画50年の歴史を語る渡辺護監督。とりわけ若松孝二監督たちと競い合った黄金時代のエピソードは語りにも熱が入る。
“ピンク映画のクロサワ”と呼ばれた男がいた。ピンク映画とは1962年に歴史が始まったインディペンデント系の成人映画を指した呼び名だが、ピンク映画の黎明期にあたる1965年にデビューし、生涯200本以上ものピンク映画を撮り上げた渡辺護監督がその人である。ピンク映画全盛期には年間12本ペースで作品を量産し、連続暴行殺人魔・大久保清をモデルにした『日本セックス縦断 東日本篇』(71)は大久保逮捕の翌月に撮影され、大ヒットを記録した。美保純のデビュー作『制服処女のいたみ』(81)、可愛かずみのデビュー作『セーラー服色情飼育』(82)を撮ったのも渡辺監督だ。2013年12月、ピンク映画50周年記念作『色道四十八手 たからぶね』(14)の撮影直前に大腸がんで亡くなった渡辺監督だが、生前に自身の生涯とピンク映画の歴史を語っており、「渡辺護監督自伝的ドキュメンタリー」(全10部)として記録されている。中でも第2部『つわものどもが遊びのあと』は、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)など数多くの社会派作品を放った若松孝二をはじめとする奇才たちと競い合ったピンク映画の黄金期が語られ、見逃せない内容となっている。  第1部『糸の切れた凧』は渡辺監督の少年期から始まり、ピンク映画『あばずれ』(65)で監督デビューを果たすまでが語られたが、第2部『つわものどもが遊びのあと』で渡辺監督の口から飛び出す名前は錚々たる顔ぶれだ。『壁の中の秘事』(65)などの問題作で世間を騒がせた若松監督とはお互いに監督デビューする以前からの知り合いだった。センセーショナルな作風でいち早く注目を集めた若松監督に対し、渡辺監督は新劇出身らしい理論的な演出で、しかも男女の絡みもエロチックに撮ることから、次第に評価を高めていく。ほぼ同時期にデビューした若松監督と渡辺監督はライバルであり、ピンク映画というインディペンデントな製作現場で共に闘う同志でもあった。「若ちゃんと新宿で呑むと、『革命が成功したら、新宿御苑はナベさんにあげるよ』なんて言うんだよ。あいつは革命を何だと思ってるんだ(笑)」といった若松監督との交流が語られる。また、『トゥナイト』(テレビ朝日系)の風俗レポートで人気を博す山本晋也監督の作品はすべて“客観カット”で撮られていることに気づき、渡辺監督は大いに触発されたという。多忙を極めた向井寛監督からは、「ギャラは弾むから」と 内緒で監督代行を頼まれたことを明かす。  本作の配給を手掛けているのは、ピンク映画専門誌『PG』の編集人である林田義行氏。本作の資料的価値をこう語る。 林田「ピンク映画のほとんどはフィルムもスチールも処分されており、ビデオ化やDVD化されている作品はごく僅か。渡辺監督のデビュー作『あばずれ』も処分されていたと思われていたんですが、最近になって神戸映画資料館が発見したんです。ピンク映画は資料もほとんど残っていない状況なので、渡辺監督が語るピンク映画界の内情はとても貴重なもの。僕自身もピンク映画を見始めたのは80年代後半に入ってからなので、ピンク映画最盛期の熱気は体感していないんです。渡辺監督が若松監督たちと過ごした、ピンク映画がいちばん活気があった頃のエピソードの数々は感慨深いものがあります」
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演出中の渡辺監督。女優を美しく撮り、男女の絡みをエロチックに描くことで配給会社と観客からの信頼は厚かった。
『つわものどもが遊びのあと』の後編では、荒井晴彦、高橋伴明、小水一男(ガイラ)、滝田洋二郎ら若手の台頭が語られる。多士済済な才能を育んできたピンク映画だったが、80年代に入ると代々木忠監督によるアダルトビデオ作品が爆発的ヒットとなり、AV時代が到来。ピンク映画は徐々に衰退の道を辿ることになり、渡辺監督の製作ペースも落ちていく。そんな中で出会ったのが、82年に劇場公開された『セーラー服色情飼育』に主演することになる可愛かずみだった。デビュー前から周囲の人たちが立ち止まるほどの美少女だった可愛かずみに、渡辺監督はぞっこんだったことがその口調からうかがえる。可愛かずみには人を惹き付ける不思議な魅力があった。「脱ぐのはかまわないけど、男との絡みはいや」と撮影を拒んでいた可愛だが、「監督がモノをつくるときは狂気の世界。いい映画を撮ろうとは思わない、この子で撮るんだということしか考えない」という渡辺監督の熱情に寄り切られることになる。自分のもとを去ったかつての恋人との蜜月の日々を振り返るような、そんな哀歓の交じった表情を渡辺監督は浮かべる。  全10部という大長編のドキュメンタリーを1年がかりで撮り上げたのは、脚本家であり、『たからぶね』で渡辺監督が亡くなった後のバトンを受け継いで監督デビューを果たした井川耕一郎氏。渡辺監督との出会いと渡辺監督の自伝ドキュメンタリーを思い立った経緯についてこう語る。
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シナリオタイトルは『ロリータ』だった『セーラー服色情飼育』の台本。ところどころに、渡辺監督が記したスケッチやメモが残されている。
井川「1993年に亡くなった大和屋竺さん(『荒野のダッチワイフ』の監督、アニメ『ルパン3世』などの脚本家として有名)のシナリオ集を編纂した際に、大和屋さんと付き合いのあったピンク映画の監督たちを訪ね、そのときに渡辺さんにもお会いしたのが最初でした。その後、僕は脚本家になり、渡辺さんとも仕事をするようになるんですが、仕事がないときも渡辺さんの自宅にお邪魔して、いつも映画の話を楽しく聞いていたんです(笑)。『たからぶね』は当初は国映製作で2011年ごろに渡辺さんが撮るはずだったんですが、国映が製作本数を減らしたことから撮影延期となり、せっかくだからと渡辺さんにピンク映画の歴史を語ってもらうことにしたんです。渡辺さんのしゃべりは話芸と呼べるくらい達者だったことに加え、渡辺さんが独特の世界観を持っていたことも大きかったですね。渡辺さんの代表作『夜のひとで』(70)などの作品にも通じるんですが、どんなに楽しい時間もやがて終わるときがくるという悲哀が感じられるんです。そして、自分もその例外ではないと。しゃべりは軽妙ですが、物事をすごく冷静に見つめている人でした。そんな渡辺さんだからこそ、ピンク映画全体を客観 視して語ることができたんだと思うんです」  井川氏によると、渡辺監督にはピンク映画よりも予算が潤沢な日活ロマンポルノからのオファーもあったそうだが、自由度の高いピンク映画の現場を愛していた渡辺監督はこの話を断ったそうだ。メジャー作品とも一般映画とも異なる、インディペンデントな世界で輝きを放つ男たち女たちがいた。『つわものどもが遊びのあと』にはそんな彼らの残光が記録されている。 (文=長野辰次)
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渡辺護監督自伝的ドキュメンタリー 『つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史』 監督/井川耕一郎 撮影/松本岳大 録音/光地拓郎 製作・編集/北岡稔美 出演/渡辺護 前編は9月5日(月)~11(日)、後編は9月13日(火)~19日(月)、ラピュタ阿佐ヶ谷にてレイトショー上映 ※期間中に井川耕一郎監督とゲストによるトークショーあり  http://watanabemamoru-documentary.com

“ピンク映画の巨匠”が若松孝二、可愛かずみらと過ごした日々を語る『つわものどもが遊びのあと』

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ピンク映画50年の歴史を語る渡辺護監督。とりわけ若松孝二監督たちと競い合った黄金時代のエピソードは語りにも熱が入る。
“ピンク映画のクロサワ”と呼ばれた男がいた。ピンク映画とは1962年に歴史が始まったインディペンデント系の成人映画を指した呼び名だが、ピンク映画の黎明期にあたる1965年にデビューし、生涯200本以上ものピンク映画を撮り上げた渡辺護監督がその人である。ピンク映画全盛期には年間12本ペースで作品を量産し、連続暴行殺人魔・大久保清をモデルにした『日本セックス縦断 東日本篇』(71)は大久保逮捕の翌月に撮影され、大ヒットを記録した。美保純のデビュー作『制服処女のいたみ』(81)、可愛かずみのデビュー作『セーラー服色情飼育』(82)を撮ったのも渡辺監督だ。2013年12月、ピンク映画50周年記念作『色道四十八手 たからぶね』(14)の撮影直前に大腸がんで亡くなった渡辺監督だが、生前に自身の生涯とピンク映画の歴史を語っており、「渡辺護監督自伝的ドキュメンタリー」(全10部)として記録されている。中でも第2部『つわものどもが遊びのあと』は、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)など数多くの社会派作品を放った若松孝二をはじめとする奇才たちと競い合ったピンク映画の黄金期が語られ、見逃せない内容となっている。  第1部『糸の切れた凧』は渡辺監督の少年期から始まり、ピンク映画『あばずれ』(65)で監督デビューを果たすまでが語られたが、第2部『つわものどもが遊びのあと』で渡辺監督の口から飛び出す名前は錚々たる顔ぶれだ。『壁の中の秘事』(65)などの問題作で世間を騒がせた若松監督とはお互いに監督デビューする以前からの知り合いだった。センセーショナルな作風でいち早く注目を集めた若松監督に対し、渡辺監督は新劇出身らしい理論的な演出で、しかも男女の絡みもエロチックに撮ることから、次第に評価を高めていく。ほぼ同時期にデビューした若松監督と渡辺監督はライバルであり、ピンク映画というインディペンデントな製作現場で共に闘う同志でもあった。「若ちゃんと新宿で呑むと、『革命が成功したら、新宿御苑はナベさんにあげるよ』なんて言うんだよ。あいつは革命を何だと思ってるんだ(笑)」といった若松監督との交流が語られる。また、『トゥナイト』(テレビ朝日系)の風俗レポートで人気を博す山本晋也監督の作品はすべて“客観カット”で撮られていることに気づき、渡辺監督は大いに触発されたという。多忙を極めた向井寛監督からは、「ギャラは弾むから」と 内緒で監督代行を頼まれたことを明かす。  本作の配給を手掛けているのは、ピンク映画専門誌『PG』の編集人である林田義行氏。本作の資料的価値をこう語る。 林田「ピンク映画のほとんどはフィルムもスチールも処分されており、ビデオ化やDVD化されている作品はごく僅か。渡辺監督のデビュー作『あばずれ』も処分されていたと思われていたんですが、最近になって神戸映画資料館が発見したんです。ピンク映画は資料もほとんど残っていない状況なので、渡辺監督が語るピンク映画界の内情はとても貴重なもの。僕自身もピンク映画を見始めたのは80年代後半に入ってからなので、ピンク映画最盛期の熱気は体感していないんです。渡辺監督が若松監督たちと過ごした、ピンク映画がいちばん活気があった頃のエピソードの数々は感慨深いものがあります」
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演出中の渡辺監督。女優を美しく撮り、男女の絡みをエロチックに描くことで配給会社と観客からの信頼は厚かった。
『つわものどもが遊びのあと』の後編では、荒井晴彦、高橋伴明、小水一男(ガイラ)、滝田洋二郎ら若手の台頭が語られる。多士済済な才能を育んできたピンク映画だったが、80年代に入ると代々木忠監督によるアダルトビデオ作品が爆発的ヒットとなり、AV時代が到来。ピンク映画は徐々に衰退の道を辿ることになり、渡辺監督の製作ペースも落ちていく。そんな中で出会ったのが、82年に劇場公開された『セーラー服色情飼育』に主演することになる可愛かずみだった。デビュー前から周囲の人たちが立ち止まるほどの美少女だった可愛かずみに、渡辺監督はぞっこんだったことがその口調からうかがえる。可愛かずみには人を惹き付ける不思議な魅力があった。「脱ぐのはかまわないけど、男との絡みはいや」と撮影を拒んでいた可愛だが、「監督がモノをつくるときは狂気の世界。いい映画を撮ろうとは思わない、この子で撮るんだということしか考えない」という渡辺監督の熱情に寄り切られることになる。自分のもとを去ったかつての恋人との蜜月の日々を振り返るような、そんな哀歓の交じった表情を渡辺監督は浮かべる。  全10部という大長編のドキュメンタリーを1年がかりで撮り上げたのは、脚本家であり、『たからぶね』で渡辺監督が亡くなった後のバトンを受け継いで監督デビューを果たした井川耕一郎氏。渡辺監督との出会いと渡辺監督の自伝ドキュメンタリーを思い立った経緯についてこう語る。
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シナリオタイトルは『ロリータ』だった『セーラー服色情飼育』の台本。ところどころに、渡辺監督が記したスケッチやメモが残されている。
井川「1993年に亡くなった大和屋竺さん(『荒野のダッチワイフ』の監督、アニメ『ルパン3世』などの脚本家として有名)のシナリオ集を編纂した際に、大和屋さんと付き合いのあったピンク映画の監督たちを訪ね、そのときに渡辺さんにもお会いしたのが最初でした。その後、僕は脚本家になり、渡辺さんとも仕事をするようになるんですが、仕事がないときも渡辺さんの自宅にお邪魔して、いつも映画の話を楽しく聞いていたんです(笑)。『たからぶね』は当初は国映製作で2011年ごろに渡辺さんが撮るはずだったんですが、国映が製作本数を減らしたことから撮影延期となり、せっかくだからと渡辺さんにピンク映画の歴史を語ってもらうことにしたんです。渡辺さんのしゃべりは話芸と呼べるくらい達者だったことに加え、渡辺さんが独特の世界観を持っていたことも大きかったですね。渡辺さんの代表作『夜のひとで』(70)などの作品にも通じるんですが、どんなに楽しい時間もやがて終わるときがくるという悲哀が感じられるんです。そして、自分もその例外ではないと。しゃべりは軽妙ですが、物事をすごく冷静に見つめている人でした。そんな渡辺さんだからこそ、ピンク映画全体を客観 視して語ることができたんだと思うんです」  井川氏によると、渡辺監督にはピンク映画よりも予算が潤沢な日活ロマンポルノからのオファーもあったそうだが、自由度の高いピンク映画の現場を愛していた渡辺監督はこの話を断ったそうだ。メジャー作品とも一般映画とも異なる、インディペンデントな世界で輝きを放つ男たち女たちがいた。『つわものどもが遊びのあと』にはそんな彼らの残光が記録されている。 (文=長野辰次)
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渡辺護監督自伝的ドキュメンタリー 『つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史』 監督/井川耕一郎 撮影/松本岳大 録音/光地拓郎 製作・編集/北岡稔美 出演/渡辺護 前編は9月5日(月)~11(日)、後編は9月13日(火)~19日(月)、ラピュタ阿佐ヶ谷にてレイトショー上映 ※期間中に井川耕一郎監督とゲストによるトークショーあり  http://watanabemamoru-documentary.com

ヤクザもツラいよ!? 任侠の世界に押し寄せる“ゆとり世代”と、おかしな兄貴たち『ヤクザライフ』

893life0825
『ヤクザライフ』(双葉社)
 警察当局の取り締まりが厳しくなり、ヤクザの“シノギ”がなくなったことで構成員の数は軒並み減っている。当局の努力の賜物だが、一方のヤクザはどうなのだろう? ヤクザといえど家族や恋人だっているだろうし、何よりドラマでみかける毎月の上納金や事あるごとに必要になる“カネ”。彼らはどんな生活を送っているのだろうか?  本書『ヤクザライフ』(双葉社)は、長い間ヤクザと密接に関わり取材を続ける上野友行の一冊だ。ひとえにヤクザといっても、さまざまな形で不特定多数の人間が関わっている。若い衆を多く抱える兄貴や、その若い衆と親分との間に挟まれる中間管理職的ポジションで日夜苦悩する中堅のヤクザ。さらには、入社した企業がたまたま組のフロント企業だったせいで、劣悪な環境下で働く30代の男。また、ヤクザ映画になくてはならない“愛人”だが、本書でも“ヤクザ専門の愛人”として数々のヤクザを渡り歩く女や極妻まで登場。まさに“2010年代の任侠の世界”を網羅している。  上野が取材した“ゆとり世代”の若い衆を抱える、とあるヤクザ。ある日、路地裏でリンチの現場に鉢合わせてしまう。袋叩きにされていたのは身内で、最悪なことにこちらは2人、相手方は5人だった。もともと犬猿の仲だった相手方とは乱闘になり、彼はあっという間に抑えこまれてしまった。 引き連れていた若い衆に視線を向けると、路地を抜けた先でまったく関係のないサラリーマンと揉めていた。「なにやってんだ、この野郎!」と叫び声をあげると、若い衆は「こいつら、動画撮ってやがったんスよ!」と答えたという。目の前で自分の兄貴が殺されかけているのもかかわらず、これである。しかも、かなり真剣な剣幕でだ。  ヤクザの世界にもSNSが爆発的に広まっている。フェイスブックやTwitterにインスタグラム。躊躇なく本名で登録し、刺青や事務所の内部を撮影して無邪気にアップしているという。昨年のパリ同時多発テロの際に、自分の写真をフランスの国旗と同じトリコロールカラーにするのが流行したが、例外なくヤクザの間でもこれが大流行。刺青などの上にトリコロールカラーが上乗せされた意味不明な写メがタイムラインを埋め尽くし、さらに義理堅い彼らは続々といいね! を押しまくる。ヤクザが、である。難癖を付けてみかじめ料を巻き上げ、不祥事を起こせば己の指を切り落とすヤクザが、である。  その“指を詰める”場面にも、上野は立ち会ったという。任侠映画で想像するような、ドスを用い、苦悶の表情で切り落とす。そんなものを想像していたが、道具を買いにヤクザが向かったのは、なんと100円ショップ。  指を詰めることになったヤクザは、ある理由から兄貴分を病院送りにしてしまったらしい。現在の業界では、慰謝料としていくばくかの金銭を支払うことが主流。切り落とした指を組長に渡しても突き返されることが常という、なんとも世知辛い話だが、指を後でくっつけるために長さを計算しているんだとか。そんな昔ながらのヤクザらしいケジメの付け方を選んだ彼の手には第一関節から先がない指が、すでに1本あった。その理由を聞くと「親父の愛人とヤっちゃったんですよ」と、間抜けな答えが返ってきたそう。  ほかにも、定時きっかりに実家に帰るヤクザや、上野に「モンハン一緒にやりましょうね!」と喜々として誘う親分など、知られざる業界の素顔を437ページ、全5章にわたって紹介。人間味溢れる彼らに思わず笑ってしまうだろう。

ヤクザもツラいよ!? 任侠の世界に押し寄せる“ゆとり世代”と、おかしな兄貴たち『ヤクザライフ』

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『ヤクザライフ』(双葉社)
 警察当局の取り締まりが厳しくなり、ヤクザの“シノギ”がなくなったことで構成員の数は軒並み減っている。当局の努力の賜物だが、一方のヤクザはどうなのだろう? ヤクザといえど家族や恋人だっているだろうし、何よりドラマでみかける毎月の上納金や事あるごとに必要になる“カネ”。彼らはどんな生活を送っているのだろうか?  本書『ヤクザライフ』(双葉社)は、長い間ヤクザと密接に関わり取材を続ける上野友行の一冊だ。ひとえにヤクザといっても、さまざまな形で不特定多数の人間が関わっている。若い衆を多く抱える兄貴や、その若い衆と親分との間に挟まれる中間管理職的ポジションで日夜苦悩する中堅のヤクザ。さらには、入社した企業がたまたま組のフロント企業だったせいで、劣悪な環境下で働く30代の男。また、ヤクザ映画になくてはならない“愛人”だが、本書でも“ヤクザ専門の愛人”として数々のヤクザを渡り歩く女や極妻まで登場。まさに“2010年代の任侠の世界”を網羅している。  上野が取材した“ゆとり世代”の若い衆を抱える、とあるヤクザ。ある日、路地裏でリンチの現場に鉢合わせてしまう。袋叩きにされていたのは身内で、最悪なことにこちらは2人、相手方は5人だった。もともと犬猿の仲だった相手方とは乱闘になり、彼はあっという間に抑えこまれてしまった。 引き連れていた若い衆に視線を向けると、路地を抜けた先でまったく関係のないサラリーマンと揉めていた。「なにやってんだ、この野郎!」と叫び声をあげると、若い衆は「こいつら、動画撮ってやがったんスよ!」と答えたという。目の前で自分の兄貴が殺されかけているのもかかわらず、これである。しかも、かなり真剣な剣幕でだ。  ヤクザの世界にもSNSが爆発的に広まっている。フェイスブックやTwitterにインスタグラム。躊躇なく本名で登録し、刺青や事務所の内部を撮影して無邪気にアップしているという。昨年のパリ同時多発テロの際に、自分の写真をフランスの国旗と同じトリコロールカラーにするのが流行したが、例外なくヤクザの間でもこれが大流行。刺青などの上にトリコロールカラーが上乗せされた意味不明な写メがタイムラインを埋め尽くし、さらに義理堅い彼らは続々といいね! を押しまくる。ヤクザが、である。難癖を付けてみかじめ料を巻き上げ、不祥事を起こせば己の指を切り落とすヤクザが、である。  その“指を詰める”場面にも、上野は立ち会ったという。任侠映画で想像するような、ドスを用い、苦悶の表情で切り落とす。そんなものを想像していたが、道具を買いにヤクザが向かったのは、なんと100円ショップ。  指を詰めることになったヤクザは、ある理由から兄貴分を病院送りにしてしまったらしい。現在の業界では、慰謝料としていくばくかの金銭を支払うことが主流。切り落とした指を組長に渡しても突き返されることが常という、なんとも世知辛い話だが、指を後でくっつけるために長さを計算しているんだとか。そんな昔ながらのヤクザらしいケジメの付け方を選んだ彼の手には第一関節から先がない指が、すでに1本あった。その理由を聞くと「親父の愛人とヤっちゃったんですよ」と、間抜けな答えが返ってきたそう。  ほかにも、定時きっかりに実家に帰るヤクザや、上野に「モンハン一緒にやりましょうね!」と喜々として誘う親分など、知られざる業界の素顔を437ページ、全5章にわたって紹介。人間味溢れる彼らに思わず笑ってしまうだろう。

「いんばいになるか、死をえらぶか、といわれたら、死ぬんだった」“からゆきさん”として体を売った少女たち

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『からゆきさん 異国に売られた少女たち』(朝日文庫)
 中村淳彦の『日本の風俗嬢』(新潮新書)、坂爪真吾の『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、そして鈴木大介の『最貧困女子』(幻冬舎新書)など、性産業を描いた書籍は近年、新書を中心に好調な売れ行きを見せている。現代の格差社会を背景にした売春を描いたこれらの書籍には、「エロ」だけでは語れない女性たちの姿がつづられている。  作家・詩人である森崎和江の『からゆきさん 異国に売られた少女たち』は、今から40年前の1976年に刊行された書籍であり、今年8月に朝日文庫より復刊された。本書を一読すれば、この海を渡って売春を行った「からゆきさん」たちの境遇が、驚くほど現代に似ていることがわかるだろう。  シベリア、朝鮮、大連、上海、シンガポールなどのアジア各国から、アメリカ、オーストラリアまで、海を渡って世界各地で売春を行った女性たちは「からゆきさん」と呼ばれた。明治維新によって開国した日本からは、新天地を求める男たちだけでなく、それを慰撫するための少女たちが海外へと連れて行かれたのだ。本書の軸となるのは、明治29年に天草に生まれ、朝鮮へと売られたおキミ。作者は、偶然知り合ったおキミの養女である綾から、その壮絶な体験と、老婆になっても悔い続ける姿を知る……。  よく知られているように、もともと日本は、性に奔放な土地だった。田舎の村々には夜這いの風習が近代以降も残り、当時の福岡の新聞には「13歳以上の者にして男と関係せざるものはない」と書かれているほど。キミの育った天草地方でも、日露戦争の頃までは夜這いの風習が残されていて、心の通った男とは妊娠してからの婚姻が当たり前だったという。  しかし、おキミたち「からゆきさん」が男たちから求められるセックスは、そんな牧歌的な日常とは程遠かった。口減らしのために、浅草の見世物小屋の養女となったおキミは、16歳の頃、再び李慶春という男のもとに養女として出された。しかし、李の目的は、彼女に売春をさせることだった。ほとんど誘拐に近い形でおキミは神戸に連れて行かれ、貨物船に乗せられた。そして、その船内で李をはじめ数々の船員たちと「おショウバイ」をさせられたのだ。それを断れば、食事すらも与えられず、おキミはただただ男たちを受け入れるしかなかった。おキミと共に貨物船に乗せられた14人の少女たちは、昼も夜も「おショウバイ」を強要され、誰もが泣いていた。そして、貨物船が朝鮮半島南端の漁港木浦(もっぽ)に着くと、少女たちは北朝鮮の鉄道敷設現場につくられた娼楼へと送られる。  娼楼での暮らしは、さらに過酷を極めた。少女を買う男たちは、工事現場の人夫として集められた荒くれ者であり、日本人工夫は、背中一面に刺青を持った粗暴な男が多かった。一方、朝鮮人の中には、日本人に対する恨みを晴らそうという者もいたという。おキミは、朝鮮人の性欲を満たすことには耐えられた。けれども、人間としての尊厳を奪われることには耐えられなかった。朝鮮人の男4~5人に囲まれ、限界まで尿意を耐えさせられた挙げ句、小便を漏らし、笑われた。この記憶が蘇るとき、おキミは朝鮮語で叫び声を上げた。その屈辱は、すでに老いたおキミの心の中で、いまだ癒えぬ傷となっていたのだ。 「いんばいになるか、死をえらぶか、といわれたら、死ぬんだった。うちは知らんだったとよ、売られるということが、どげなことか……」  おキミは、養女の綾に何度もこう語った。  綾と2人きりになった時、おキミは「夜叉のよう」に狂ったという。綾の実母は、おキミと同じ娼楼で体を売っていた。そんな綾に向けて、数々の男にされてきたのと同じような口調で、おキミは綾が淫売の血を引いていることを口汚く罵った。綾は、森崎に向かって「売られた女とは一代のことではない」「身を売るっていうことはいちばんふかい罪なの」と語り、「いのちにかえても、すべきことではない」とつぶやく。背負いきれない過去のトラウマに押しつぶされたおキミは、精神科の病院で死んだ。 「からゆきさん」たちは、貧しい家の生まれだった。家族が生きるために、彼女たちは養女として出され、貨物船に詰め込まれ、見知らぬ土地で男たちの性欲の相手をさせられた。それから100年あまり――。いま再び貧困から売春をする女性たちの存在が取り沙汰されており、中村淳彦によれば、韓国人はもちろんのこと、脱北者や中国朝鮮族の女性たちまでも体を売るために来日しているという(『日本人が知らない韓国売春婦の真実』宝島社)。貧困、格差、越境……「からゆきさん」少女たちの姿は、現代の女性たちに重なるだろう。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])

国内約223万人! メディアが報じない外国人“奴隷労働”の実態『ルポ ニッポン絶望工場』

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『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社)
『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社)は、日本にやってきた外国人留学生たちが陥る“奴隷労働”の実態に迫ったルポだ。24時間営業のコンビニ、早朝の新聞配達、工場内での単純作業など、日本人が好んでやらなくなった仕事に従事する彼らは、日本に対して何を思うのだろうか?  著者の出井康博は、新潮社のウェブメディア「フォーサイト」での連載をきっかけに、外国人労働者への取材を始める。今現在、日本で一番多いのはベトナムからの留学生だという。  ベトナムでは、現在空前の日本ブームだ。さまざまな面で融通が利くので、多くが留学生として日本に入るが、文字通り勉強し大学に進学する者と、出稼ぎのために来日する2種類の留学生がいる。そんな彼らに現地で「カイシャ」と呼ばれるブローカーたちが留学を斡旋。ブローカーたちは紹介料として、ベトナムの一般的な家庭の7年分の収入に相当する150万円ほどを請求し、家族は泣く泣く先祖代々の農地を質に入れるなどして、費用を工面する。“留学の斡旋”とは形だけで、実際は日本語学校と現地のブローカーがグルになった悪徳ビジネスと化している。  晴れて日本にやってきた留学生たち。日本語の習得に勤しみながら卒業後は大手企業の戦力として活躍する……そんな夢を閉ざす現実が待っている。留学生の多くは日本にやってきた時点で、負債を抱えているからだ。さらに、母国からの仕送りもなく、借金の返済や月々の家賃、食費に学費など生活に関わる一切を稼がなくてはならない。  しかし、政府は留学生に対して“週28時間以内”の労働しか許可しておらず、日に働ける時間は約4時間。ブローカーから「日本に行けば月20~30万円稼げる」と騙された留学生の中には、違法就労をする者も多い。  違法就労を行う彼らの労働環境は、最悪だ。働き口を2カ所掛け持ちし、“週28時間”を超える“週50時間”働く者も。職場も人手が足りないこともあり、違法就労に目をつぶる。留学生の間で情報が共有され、同じ境遇の者が集まり、日本語の能力が全く伸びないという悪循環が出来上がってしまう。  ほかにも、給料のピンハネはもちろんだが、精神的に追い込まれることが多いという。現地では、優秀な人材として海外へ留学した彼らが、自分より能力の劣る日本人に“外国人だから”という短絡的な理由で侮蔑を受けるのが日常的だそうだ。憧れを持ってやってきた外国の若者は、“奴隷労働”の中で反日感情を募らせていく。  15年9月、埼玉県・熊谷市で日系ペルー人による、小学生を含む6人が殺害される事件が起きた。出井は、またこのような凄惨な事件が必ず起こると断言する。なぜなら、この犯人もまた“奴隷労働”の犠牲者だったのだから。

気が狂っている……! B級ヒーロー“犬溶接マン”とゴッサム・シティの変態的な仲間たち『HITMAN』

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『ヒットマン2』(KADOKAWA/エンターブレイン)
 アメリカンコミックス原作の映画がヒットを連発している昨今、『バットマンvsスーパーマン』をはじめ、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』、『デッドプール』(すべて2016年公開)などのアメコミファンが見たかった大作や、知る人ぞ知るマイナー作の実写化が相次いでいる。  アメコミの双璧マーベルコミックとDCコミックが中心となり、今後数年先までさまざまな作品を実写化すると発表しているが、ここでは何があっても“実写化不可能”なアメコミヒーローを紹介したいと思う。  今回、紹介するのはDCコミックが出版する『HITMAN』という作品に出てくる犬溶接マン。そんなバカなと思う名前だが、原作を翻訳した海法紀光氏によると、それでオッケーとのこと。 『HITMAN』は1996年から2001年まで続いた全60話の作品。同作品は、『バットマン』に登場するゴッサム・シティを舞台にアウトローな連中が2流・3流のヒーローや悪役、犯罪者を巻き込んで、ドンパチしあうハードボイルドな物語。その中に登場するB級ヒーローチーム、セクション8に所属するのが犬溶接マンだ。アメリカ国内でも超マイナーな存在だった同作品だが、犬溶接マンという頭のおかしいキャラクターがいることは、マニアの間では古くから話題になっていた。  溶接工のようなコスチュームを身にまとい、ガス切断機と犬の死体を駆使して戦うヒーロー。ガス切断機であるにもかかわらず溶接できるのは、劇中では“スーパーパワー”で片付けられてしまっている。どう見ても出で立ちは悪役だが、同作品ではヒーローとして扱われている。  アメコミヒーローの中でも、特に変わった能力を持ったヒーローの実写化に成功した例は今まで何度もあったが、犬溶接マンの能力は、とにかくめちゃくちゃだ。それは文字通り、“犬の死体を敵の顔に溶接する”というもの。  しかも、犬の死体を溶接された相手は必ず死ぬ。犬も死に(もともと犬溶接マンによって殺されているが)、敵も死ぬというなんともいたたまれない結果になる。  犬溶接マンの“実写化不可能”なポイントは3つある。まず、動物保護団体がマジギレするのが、容易に想像できる点。2つ目は、全く映像化に向いてないキャラクター設定。最後に、ヒーローチームとしてかっこ悪すぎる点だ。  まず、犬の死体を溶接するクレイジーな能力には、多くの動物保護団体からお叱りの声をいただくに違いない。そんな犬溶接マンは、罠を仕掛けて自分で犬の死体を調達しており、必要に応じて予備も持ち歩くという人間っぽさ溢れる設定がおかしくもあり、私が好きなところでもある。  2つ目の問題は、犬溶接マン自身にある。先ほど紹介したコスチュームや、“犬の死体を溶接して相手を倒す”という設定に、無口という特徴も上乗せ。久しぶりに再会した仲間に、無言で犬の死体を溶接しようとするなど、気が狂っている。実写化した場合、無口で120分持つのか? 疑問である。  最後の問題は、彼の所属するヒーローチーム、セクション8の存在である。犬溶接マンのほかに、「シックスパック(酔って酒瓶で頭を殴るマン)」、「デフェネストレイター(窓から投げ捨てるマン)」「フレンドリー・ファイア(誤射マン)」「ブエノ・エクセレンテ(変態性欲マン)」「ジャン・ドゥ・バトン(フランス人マン)」「シェイクス(貧乏揺すりマン)」「フレムジェム(痰吐くマン)」と、聞いただけで気になるヒーローが勢ぞろい。『アベンジャーズ』のような華麗なヒーローチームとは、ほど遠い。  はっきり言って、イケメンは一人もいないおっさんの集まりだ。『エクスペンダブルズ』ばりに、かっこいいおっさんたちの集まりだったらまだよかったが、能力も相まって悪人面ばかり。  実写化しても奇天烈さが話題になるだろう彼らだが、バットマンたちの代わりにマフィアのボスや、最強のエイリアン、ゾンビ、はてはサンタクロース相手に戦いを挑み、日夜ゴッサム・シティの平和を守っている。  昨年12月にセクション8を主人公にした単行本が新たに発売されたり、シックスパック(酔って酒瓶で頭を殴るマン)と犬溶接マンの2人が旅に出る番外編が発売されるなど、アメリカ国内でも現在人気急上昇中。 『HITMAN』は、アメコミ初心者でもすんなりと入り込め、面白い作品であることは間違いない。コメディとハードボイルドが入り混じった同作品は、現在翻訳版が2冊発売されており、ボリュームとしても読みやすい一作だ。 (文=大野なおと)

気が狂っている……! B級ヒーロー“犬溶接マン”とゴッサム・シティの変態的な仲間たち『HITMAN』

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『ヒットマン2』(KADOKAWA/エンターブレイン)
 アメリカンコミックス原作の映画がヒットを連発している昨今、『バットマンvsスーパーマン』をはじめ、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』、『デッドプール』(すべて2016年公開)などのアメコミファンが見たかった大作や、知る人ぞ知るマイナー作の実写化が相次いでいる。  アメコミの双璧マーベルコミックとDCコミックが中心となり、今後数年先までさまざまな作品を実写化すると発表しているが、ここでは何があっても“実写化不可能”なアメコミヒーローを紹介したいと思う。  今回、紹介するのはDCコミックが出版する『HITMAN』という作品に出てくる犬溶接マン。そんなバカなと思う名前だが、原作を翻訳した海法紀光氏によると、それでオッケーとのこと。 『HITMAN』は1996年から2001年まで続いた全60話の作品。同作品は、『バットマン』に登場するゴッサム・シティを舞台にアウトローな連中が2流・3流のヒーローや悪役、犯罪者を巻き込んで、ドンパチしあうハードボイルドな物語。その中に登場するB級ヒーローチーム、セクション8に所属するのが犬溶接マンだ。アメリカ国内でも超マイナーな存在だった同作品だが、犬溶接マンという頭のおかしいキャラクターがいることは、マニアの間では古くから話題になっていた。  溶接工のようなコスチュームを身にまとい、ガス切断機と犬の死体を駆使して戦うヒーロー。ガス切断機であるにもかかわらず溶接できるのは、劇中では“スーパーパワー”で片付けられてしまっている。どう見ても出で立ちは悪役だが、同作品ではヒーローとして扱われている。  アメコミヒーローの中でも、特に変わった能力を持ったヒーローの実写化に成功した例は今まで何度もあったが、犬溶接マンの能力は、とにかくめちゃくちゃだ。それは文字通り、“犬の死体を敵の顔に溶接する”というもの。  しかも、犬の死体を溶接された相手は必ず死ぬ。犬も死に(もともと犬溶接マンによって殺されているが)、敵も死ぬというなんともいたたまれない結果になる。  犬溶接マンの“実写化不可能”なポイントは3つある。まず、動物保護団体がマジギレするのが、容易に想像できる点。2つ目は、全く映像化に向いてないキャラクター設定。最後に、ヒーローチームとしてかっこ悪すぎる点だ。  まず、犬の死体を溶接するクレイジーな能力には、多くの動物保護団体からお叱りの声をいただくに違いない。そんな犬溶接マンは、罠を仕掛けて自分で犬の死体を調達しており、必要に応じて予備も持ち歩くという人間っぽさ溢れる設定がおかしくもあり、私が好きなところでもある。  2つ目の問題は、犬溶接マン自身にある。先ほど紹介したコスチュームや、“犬の死体を溶接して相手を倒す”という設定に、無口という特徴も上乗せ。久しぶりに再会した仲間に、無言で犬の死体を溶接しようとするなど、気が狂っている。実写化した場合、無口で120分持つのか? 疑問である。  最後の問題は、彼の所属するヒーローチーム、セクション8の存在である。犬溶接マンのほかに、「シックスパック(酔って酒瓶で頭を殴るマン)」、「デフェネストレイター(窓から投げ捨てるマン)」「フレンドリー・ファイア(誤射マン)」「ブエノ・エクセレンテ(変態性欲マン)」「ジャン・ドゥ・バトン(フランス人マン)」「シェイクス(貧乏揺すりマン)」「フレムジェム(痰吐くマン)」と、聞いただけで気になるヒーローが勢ぞろい。『アベンジャーズ』のような華麗なヒーローチームとは、ほど遠い。  はっきり言って、イケメンは一人もいないおっさんの集まりだ。『エクスペンダブルズ』ばりに、かっこいいおっさんたちの集まりだったらまだよかったが、能力も相まって悪人面ばかり。  実写化しても奇天烈さが話題になるだろう彼らだが、バットマンたちの代わりにマフィアのボスや、最強のエイリアン、ゾンビ、はてはサンタクロース相手に戦いを挑み、日夜ゴッサム・シティの平和を守っている。  昨年12月にセクション8を主人公にした単行本が新たに発売されたり、シックスパック(酔って酒瓶で頭を殴るマン)と犬溶接マンの2人が旅に出る番外編が発売されるなど、アメリカ国内でも現在人気急上昇中。 『HITMAN』は、アメコミ初心者でもすんなりと入り込め、面白い作品であることは間違いない。コメディとハードボイルドが入り混じった同作品は、現在翻訳版が2冊発売されており、ボリュームとしても読みやすい一作だ。 (文=大野なおと)