1973年に公開され、社会現象を巻き起こした日本映画の金字塔『仁義なき戦い』シリーズ。近年でも、菅原文太(2014年没)や松方弘樹(17年没)の訃報を伝えるニュースにおいて、今から40年以上も前の同シリーズが彼らの代表作として繰り返し紹介されたのは記憶に新しい。だが、公開から長い年月が経つにつれて、このシリーズが戦後の広島県で実際に起きた暴力団同士の抗争をモデルにしていることを知らない世代も増えている。 本書『仁義なき戦いの“真実” 美能幸三 遺した言葉』(鈴木義昭/サイゾー)は、後に広島抗争と呼ばれた抗争劇の真相を、その中心人物となった元暴力団員・美能幸三の手記とインタビューで解き明かす一冊。美能は10年に83歳でこの世を去ったが、著者は生前の彼のもとを何度も訪ねて聞き取りを重ねていたという。 美能は中学生の頃から非行を繰り返し、ついには人を傷付けて警察に捕まってしまう。警察が保釈の条件として出したのは、軍隊に志願することだった。戦争が終わって外地から復員した彼は、いつしかヤクザと関わっていく。戦後の混乱期は警察に今ほどの力がなく、各地の任侠団体が社会の秩序維持に大きな役割を果たしていた時代。軍隊にはひとつも良い思い出がないと美能は語るが、深層心理では軍隊的な組織や規律を求めていたのかもしれない。 やがて彼は親分にそそのかされ、敵対する組の組長を銃撃してしまう。組長は一命をとりとめたが、美能は逮捕され、懲役8年の刑を受ける。裁判では親分が証人として呼ばれ、被告人を知っているかとの問いに「うちの若い者だ」と答えてしまう。美能は親分の指示であることを隠すため、「こんな人は知らない」とシラを切るが、その配慮がわからない親分は法廷で激高。「この恩知らずが」と吐き捨てたという。美能は後に、ヤクザとしての心構えをこう語った。「どんな親分でも、ひとたび神輿として担いだ親分は親分である」。 彼が獄中にいる間に、地元の新聞記者たちによって広島抗争の真相を書いたとする著作が世に送り出される。「ある勇気の記録」と銘打ったこの本は菊池寛賞を受賞したが、その内容を知った美能は愕然とする。抗争の原因はすべて自分にあるとされ、事実とは異なる仕方で卑怯者に描かれていたからだ。 一連の抗争では20人以上の命が失われたが、物事には何事もそれまでの流れというものがあり、一部分だけを切り取るのはおかしい。自分の罪は認めるが、関わった人誰もが、それぞれの立場で罪の意識を背負う責任があるのではないだろうか。そう考えた美能は獄中で抗争に関する詳細な手記を書き始めた。これが後に、「仁義なき戦い」シリーズの原案になったのである。 出所後ヤクザを辞めた美能は、手記の映画化を了承。出演していた役者たちとも交流を持っていた。だが、公開から30年経ったある日、彼は衝撃の言葉を著者に語る。「ワシは本当に、しとうなかったんや、映画にはのう」。今さら言うか、と突っ込みたくなるところではあるが、美能には美能なりの理由があった。シリーズの監督を務めた深作欣二も、美能が映画を気に入っていないことはわかっていたという。気になるその理由は、ぜひ本書を手にして確かめてほしい。 (文=編集部) 仁義なき戦いの“真実"~美能幸三 遺した言葉 刮目せよ『仁義なき戦いの“真実” 美能幸三 遺した言葉』
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マツコも愛した、バブル臭ムンムンのセクシーダイナマイト女教師マンガ『イオナ』
先日『マツコの知らない世界』(TBS系)を見ていたら、普段全然マンガを読まないというマツコ・デラックスが、学生時代に読んでいた数少ないマンガとして『イオナ』を挙げていました。バブル期を象徴するグンバツなバディのイケイケなナオンが登場する女教師マンガ、それが『イオナ』です。あらためて読んでみると、とんでもなくブッ飛んでいたので、本日はこちらをご紹介しましょう。 『イオナ』は「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に1990~93年まで連載されていた、澤井健先生の作品。当時は、スピリッツ誌面上で「ミス・イオナコンテスト」が開催されるほどの人気作でした。 舞台は、鴻ノ宮小学校5年4組。産休に入った担任の代わりにやって来た教師がなんとびっくり、ハリウッド女優のようなルックスを持つ絶世の美女。その名も五十嵐一女(イオナ)。どのくらいのインパクトなのかというと、典型的な日本人だらけの生徒&教職員に混じって、1人だけメイクばっちりのアンジェリーナ・ジョリーがいる感じ。しかも、そんな美人教師が先陣を切っておバカをやるという、ドタバタ学園コメディなのです。 イオナは、教師としてはあまりに破天荒な言動を連発します。就任初日から二日酔いで、しかも下着の上にトレンチコートを羽織っただけの、痴女スレスレの格好で登場です。タバコを吸いながら授業をしたかと思えば、2時間目からは学校をサボってデパートのバーゲンに行ってしまい、そのまま帰ってこないという、そんじょそこらの不良教師と同じくくりでは言い表せないレベルです。 以降も、毎回パリコレのような奇抜で露出度の高いファッションで登場。大抵は乳や尻が半分飛び出しているため、生徒も目のやり場に困りまくり。 さらに人間性も、とても教育者とは思えないひどさ。学級委員長、菊池まどかを口ゲンカで泣かしたり、父親参観日の展示テーマを「お父さんのオチンチン」にしておチンチンのデッサンを強制したり、お気に入りの生徒、シュウくんをひいきしまくりで、それをほかの生徒に対して隠そうともしません。 「あたしはえこひいきする女なのよ!」 この開き直り……。そんなシュウくんとは、2人で午後の授業をサボってドライブしちゃいます。 「かわいい男の子をさらって、もてあそぶのが趣味なの」 と、ショタコン丸出しのセリフを吐いたと思えば、そのままディスコやバーに連れていったり、ラブホテルに連れていったり、しまいには「オッパイ吸ってみる?」などと誘ってみたり、小学校の教師でありながら、あらゆるタブーを超越した、怖いものなしの存在です。 しかし、その破天荒さとルックスで生徒たちにカリスマ視され、いつの間にか学校で一番愛される教師になってしまいます。極め付きが、6年生となり卒業を迎えることになったイオナのクラスの生徒たちが、イオナとの別れが惜しいあまりに、まさかの卒業ボイコット。クラス全員が留年して、7年4組「スーパーアダルトクラス」として君臨することになるのです。 学園マンガでは作品継続のために、主人公が留年する設定というのはたまに見かけますが、クラス全員留年で小学7年生という設定は、さすがに斬新すぎですね。 そんなイオナはいったい何者なのか、どうしても気になってしまうところですが、作中では一切明らかにされません。正体を暴こうとする者はなぜか交通事故に遭ったり、落雷に遭ったりと、不幸な出来事に巻き込まれる始末。あくまで、ミステリアスな存在であり続けるのです。 というわけで、留年してまで教わりたい謎の美人教師マンガ『イオナ』をご紹介しました。これでもかと言わんばかりに毎回キメてくるイオナのド派手ファッションを見るだけでも十分楽しめる作品で、マツコがハマるのも納得です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) ◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから『イオナ 全9巻完結』(小学館)
「喧嘩上等」「天上天下唯我独尊」はもう古い! 【卒ラン】近年の流行は“自作ポエム”!?
毎年3月にニュース番組をにぎわせるのが“荒れる”卒業式。傍若無人な卒業生たちの振る舞いに、キャスターが苦言を呈するのがお約束だ。しかし、ヤンチャな彼らが着ている特攻服や変形学ランは、ハレの日の一張羅でもある。 調べてみると、発祥はどうやら1970年代初頭。都内の暴走族が着始めたのがルーツのようだ。近年、暴走族はほとんど見かけなくなったが、彼らが作り上げた独自の衣装は、卒業式用の晴れ着として残っている。 そこで気になるのが、デザインや刺繍の内容に、流行はあるのかということ。変形学ラン、特攻服、そしてこれらへの刺繍を手がけて30年以上のプロス通販(岡山県玉野市)に最新事情を聞いた。 「卒業用の学ラン、いわゆる『卒ラン』の定番は、後ろ襟下に『卒業』という文言と菊紋を刺繍で入れるもの。デザインの変化は、ほぼありませんでした。しかし、最近では、色が互い違いになっている『対色ラン』やツインカラーの特攻服など、カラフルになってきています」 文言の内容で、最近のブームは? 「『喧嘩上等』や『天上天下唯我独尊』などの啖呵や故事を刺繍で入れるスタイルは昔からありましたが、近年はこれがオリジナルのポエムに変わりつつありますね。こちらも驚くようなユニークなものが多く、さらに英語にするなど、バリエーションも増えてきました」オリジナル(?)のポエム。見事な七五調である
英語バージョンも人気
「いずれにせよ、先生や仲間への感謝の気持ちをつづったメッセーが多いですね。面白いなと思ったのは、『“○○○○(ファミレスの名前)集合”と入れてくれ』という注文。いつもの集会場でしょうか?(笑)」 気になる価格は「ピンキリなので、なんとも言えない」とのことだが、奮発するケースでは1着に20万円かける者もいるそうだ。 注文は全国から届くが、特に購入者が多い地域は、神奈川、愛知、福岡、大阪、静岡など。ちなみに同社のお膝元の岡山では毎年、式の後に大量の特攻服集団が岡山駅前の噴水に集合し、記念写真を撮るのが恒例行事らしい。 「女性の場合、以前はセーラー服が主流でしたが、最近は男性と同じように学ランを選ぶ人が増えています。当社も女性専用学ラン『ギャルラン』を新商品として販売しています」 女性からの根強い需要を受けて、同社では「C-Style」(http://www.c-style4649.com/)というヤンキーアイドルユニットを通販モデルに起用して、積極的な販促プロモーションも行っているという。実にカラフル!
変形学ランと特攻服。仲間への感謝の気持ちをつづった自作のポエムで、誰よりも目立つのが近年の流行のようだ。今年は、どんな意表を突くデザインが拝めるのか? 期待(?)して待ちたい。 (取材・文=石原たきび) ※取材協力/プロス通販 http://pros-online.jp全国のイベントに出演中
『ゆゆ式』だけではない──BBCで放送された日本の児童ポルノ番組 55分間のあらすじと登場した作品
先日、イギリスBBCが放送し注目されている、日本の児童ポルノの実態を追ったとされるドキュメンタリー。 『STACEY DOOLEY INVESTIGATES:YOUNG SEX FOR SALE IN JAPAN』 というタイトルと予告編。取材班が秋葉原で警察に拘束されるシーンは、日本でも見ることができます。 しかしながら、この番組はイギリス国内限定配信のため、視聴は容易ではありません。 ただ『ラブライブ!』『ゆゆ式』などが、児童ポルノや児童虐待と関連づけて登場したという話だけが伝わっています。 この番組、単なるニューストピックではなく55分間の中編ドキュメンタリーです。そこでは、さまざまな作品や人物が登場しています。 そこで、この記事では日本では視聴することのできない番組の中身を紹介し、簡単に論評したいと思います。 ■冒頭22秒で最大の事実誤認が発覚 55分のドキュメンタリーは、レポーターのStacey Dooleyが路上を歩いているシーンからスタート。この番組、タイトルに『STACEY DOOLEY INVESTIGATES』と記されているように、彼女が見て聞いたものを、彼女の主観で描くというスタイルのようです。 そして、冒頭22秒で事情を知っている人ならば、ひっくり返るであろう字幕が。 UNTIL 2014 IT WAS LEGAL TO OWN CHILD PRNOGRAPHY IN JAPAN 「2014年まで日本では児童ポルノが合法だった」 この時点で心が折れるか、55分間我慢して観賞する覚悟を決めるか、どちらかになるでしょう。 タイトルに続いて、秋葉原の風景、総武線の電車とオノデンの看板に続いて、さまざまなアイコンがカットインされていきます。確認できた範囲だと『ラブライブ!』の映像のほか、オナホールのパッケージ。野上武志さんの『大和撫子〇〇七』の表紙などが確認できます。 そして、ロケ車の中で再び「2014年まで日本では児童ポルノが合法だった」「JK、すなわちハイスクールガールは、ビックビジネスになっている」と語るStacey。降り立ったのは、JKお散歩店の女性たちがビラを手に並ぶ通称・ビラビラ通り。 カメラを回しながら、ビラ配りの女性に「ビラが欲しい」と声をかけていますが、用心棒の男性に「ノームービー」と止められます。「女の子が嫌がっているんで」と日本語で説明されていますが、カメラは依然として回り続けます。 対して英語で「何か法に触れていることをやっているのか」とやりかえすStacey。 らちが明かないとみたのか、警察に通報されてしまいます。用心棒側も増援がやってきて、体を押したとか押さないとか一悶着。 果敢な取材精神ですが、そこはBBC。ちゃんと退路は確保していました。ロケ車に逃げ込むStacey。そこへ、ようやくやってきた警官は、なぜか音声のみの出演で「映像はね、一度消してもらって、ちゃんと撮り直したらどうです?」と。どうも、説得されているようです。
■合法JKカフェでは際どい質問も 2時間にわたり悶着が続いたことを説明して、取材は歌舞伎町へ。 潜入取材かと思いきや、カメラを回しながら堂々と店内へ。どうも、許可を取った上での取材の様子。従業員の女性はもちろん、客も顔出しで取材に答えています。 客の男性に「Does she give you an erection sometimes?」とか聞いちゃうStacey。 なぜかわかりませんが、和気あいあいと進む取材。従業員の女性とハイタッチまでしています。そして「このJKカフェは合法だったね」と看板のアップが……宣伝? でも、まったくの合法だとしながらも「決してきれいな仕事ではない。彼女たちはセックスのオブジェクトなのだ」と、ナレーションでつぶやきます。 そして、このJKカフェを背景に唐突にナレーションで語られるのは「日本では30代以下の半数あまりが正規雇用ではなく、親の金に頼っている」ということ。何かと思ったら「これらのJKも現金を稼ぐための、一つの方法」だというのです。なるほどStaceyの目には、これは若者の貧困の結果と見えたようです。 ■リアルJK売春婦に遭遇 さて、舞台は変わって女子高生のためのシェルター施設へ。そこから、Staceyはいよいよ売春で稼ぐ女子高生に出会うのです。 取材に応じたのは、JKお散歩店で働くという17歳の女子高生。「建前はお散歩店だけど、どこに行くのも自由」つまり表向きは、売春については店はノータッチという暗黙のシステムを説明します。 そんな女子高生にStaceyは、どれくらい客を取っているのかを聞きます。学校もあるので週2回の出勤だという女子高生は「そうですね、私は人気のほうなので、一日に5人、多いときに6人。1回に3万円から多くて6万円」だと語ります。 続いてStaceyが質問したのは、どうして働いているのかというもの。これに対する答えも正直なもの。 「この仕事をしているのは、家庭に問題があったり、寂しかったり、私は自傷行為に近いですね。一時期、自殺願望が止まらなくて、病院に入院していました」 ここで、再びStaceyの語りが挿入されます。 「2016年に公表された国連のレポートでは、日本政府の児童売春・児童ポルノへの取り組みに対して厳しい内容が記された。国連は被害者に対しての適切な保護と取り組みを要求している」
■着エロ制作者がぶっちゃけトーク さて「2014年以降、児童ポルノは非合法になった」という語りと共にやってきたのは、神保町の芳賀書店本店。階段を上りながら、制服もののAVのポスターを見つけたStaceyは、ひどく嫌悪のこもった表情を。そして制服ものやロリ風味なAVの画像と共に「彼女らは18歳を過ぎているのだ」という説明が。 さらに、これも芳賀書店の店内でしょうか。疑似ロリのDVDを漁るStaceyは、さらに嫌悪に満ちた表情で「彼女は何歳に見える? 私には、小学生未満(ready for school)に見える」というのです。 続けて「It’s so surreal!」と。疑似ロリ自体が非現実的だということでしょうか? 「小学生をイメージするアイコンなどを利用しても、それらは成人女性であり、日本ではまったくの合法」だと説明するStacey。 ひとまずは警察庁を訪れて、日本政府の取り組みを取材するのですが、なぜか勝鬨橋を渡って、築地市場に入るカットが挿入。観光してから出かけたのでしょうか? 警察庁への取材を挟んでやってきたのは、朝の住宅地。ベンツの停まっている一軒家。そこで行われていたのは、着エロの取材です。 19歳のモデルの撮影シーンやインタビューを挟んで、制作陣へもインタビュー。取材された男性は「法律が厳しくなって、若い子とエッチができなくなった代替」「単純に日本人はロリコンが多いじゃないか。最低年齢は6歳を撮影している」「単にビジネス」と、隠すことなく語るのです。
■着エロの原因は経済的貧困という主張 ここまで約37分。ようやく後半戦に入って登場したのは、着エロやAV出演強要問題で知られる伊藤和子弁護士です。 このシーンは、まず伊藤弁護士の語りから。 Staceyが取材やインターネット、店頭などで得た情報について触れ「日本のどこでも、児童ポルノのように見えるものが存在する」と語った後、プレゼン用のパワーポイント資料を印刷したものを用いて説明に入ります。 画面上では画像処理がなされていますが、着エロDVDのパッケージ画像を用いた資料の様子。伊藤弁護士は、彼女は15歳であるが、制作会社は胸や性器を隠しているので児童ポルノではないと主張していると説明します。 これを見て、次のような会話が続きます。 Stacey:So is this Chaku Ero? (これは着エロですか?) Ito:Yes, This is Chaku Ero. (これは着エロです) Stacey:that’s awful. (それはひどい) Ito:Chaku Ero is child pornography. That's reality in Japan. (着エロは児童ポルノ。それは日本の現実です) Stacey:That’s so shit. (くそったれ) Ito:Yes. (ええ) さらに別の資料では次のような会話が。 Stacey:Ten years old,max. Lying with her legs wide open.This is so shocking. (最低年齢で10歳の少女が足を大きく開いて横たわっています。これはショッキングです) Ito:Under elementary school,maybe. (多分、小学生以下でしょう) さて、話も佳境に入り話題は、なぜ幼い少女たちが、着エロに出演しているのか。伊藤弁護士は、貧困の結果だといいます。 Ito:Some of the family are so poor and no way other than using children for this kind of industry. (とても貧しい家族の中には、これらの産業に子どもを雇用させる以外に道がない人もいるのです) そして、それを「So this is human exploitation.(人間の搾取)」と表現するのです。
■エロマンガで子どもをレイプするヤツもいる説 さて、取材を続けるStacey。40分あたりから、舞台は再び秋葉原へと移ります。そこで、数々のアニメやマンガの画像と共に語りが入ります。 その語りでは、次のような言葉が並びます。 Stacey:Domestic sales of these Japanese comics topped over £2 billion in 2015. (これらの日本のマンガの国内販売は2015年に20億ポンドを超えました) Stacey:Manga, covers every subject you can imagine, including X-rated erotica. (成人向けのエロを含めて、マンガはあなたが想像できるすべての主題を網羅しています) Stacey:Some include scenes of child abuse, child rape and incest and are so graphic, They've been banned in the UK. (それらは児童虐待や子どものレイプ、近親相姦などのシーンも含まれており、イギリスでは禁止されています) Stacey:The Japanese government have tried to ban it, but Manga artists and publishers have defended it on the grounds of free speech. (日本政府は、それを禁止しようとしていますが、マンガ家や出版社はフリースピーチを理由にそれを守ってきました) ※free speechが言論の自由の概念なのか言論/表現の自由の概念なのか判断つかないので、そのままにしておきます。 さて、多くの読者が気になるのは、このシーンおよび前後のシーンで映し出されるアニメ、マンガ、ゲーム同人誌などがどのようなものだったのかということでしょう。 タイトルだけ列挙しますと『スイセイギンカ』『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『ゆゆ式』『セーラー服と重戦車』『いちごショコラふれーばー』『とつきとおか』『ヤンキーJKボコボコりんっ!』『一日奴隷さん』『ウラオモテ彼女』『監禁嬢』『島風コスの鹿島はなぜ異世界でオークに犯されたのか』などの表紙が確認できます。 さて、ここで取材に答えるのは、表現の自由をめぐる問題でたびたび登場する、翻訳家の兼光ダニエル真氏。 基本、ダニエル氏の説明は、現実と創作表現とは別個だという、日本ではほぼ常識となっている理屈に沿ったものです。それに対して、Staceyは、グサグサと切り込んできます。 最初の質問は、これから。 Stacey:For example, this image would be totally illegal in the UK. (例えば、このイメージはイギリスでは違法です) ※手に取っているのは数冊の同人誌だが、表紙は見えず。 Daniel:Possibly,Yes. (おそらく、そうです) ここから現実と創作表現は別のものであることについて、やりとりが続きます。しかし、Staceyは納得できない様子で「このようなコンテンツを見ることによってファンタジーとは対照的に、実際の子どもに手を出すように誘惑されるのではないか」と、いうのです。 それを言葉を尽くして否定するダニエル氏ですが、Staceyは納得しません。「But this does happen」と、あくまで、創作によって現実の児童虐待を喚起させると考えているようです。 説明を続けるダニエル氏ですが、画面の中の雰囲気はとても悪いです。なにしろ、Staceyからは次のような感想が。 Stacey:My concern would be that this does encourage and normalise real-life child abuse. (私の懸念は、これが実際の児童虐待をけしかけて正当なものにさせることです) 険悪な雰囲気で続いた取材ですが、最後は二人は仲良く握手を。 そして、取材を終えたStaceyは、次のように感想を述べます。 Stacey:For me, there can never be any good to come out of sexualising kids. (性的な快感を得る子どもが出てくることは、決してありません) Stacey:This is clearly a divisive emotive issue, so controversial. (これは明らかにあつれきを生む感情的な問題で、議論の余地があります) Stacey:I believe it could potentially encourage urges. (私は、それが潜在的な衝動を促すと信じています) Stacey:I would prefer these explicit images that use kids to be banned. (私は、明白に子どもを使用している画像が禁止されることを求めます) Stacey:I worry that them cartoons will never be enough and you will have those urges and you will want to move on to the real thing perhaps. That's what scares me. (私は心配しています。彼らはマンガが決して十分でないと考え、衝動を持って、本物に移りたいと思うでしょう。私は、それが不安です) ここまで約40分。番組は、ラブドールを持った、おっさんの取材など、まだまだ続いていきます。
■取材手法は正当。では問題は? 長文を用いて番組の全体像を語りました。その上で、この番組の抱える問題について記していきましょう。 まずStaceyの取材手法ですが、これはまったく問題ありません。55分の番組の中で、Staceyはさまざまな場所で、多くの人に出会っています。 そこでは、硬軟使い分けてさまざまな取材手法を用いているのがわかります。 冒頭のJKお散歩店との悶着は、こうした取材をやれば、用心棒が出てくるのは想定の範囲内と考えたはず。出てくるも何も、いつも明らかに用心棒な雰囲気の男たちが、ケンタッキーの前あたりに立っているわけですし。 続く、合法JKカフェでの取材では、自分も取材者ではあるものの客のように振るまい、胸襟を開きつつ、づけづけと聞いています。 着エロ制作現場の取材も同様で、先に撮影しているところを、ある程度取材し、モデルとも距離を縮めることで、制作サイドの警戒心を解いています。 伊藤弁護士へは、至極真面目に児童の性的搾取の問題を取材に来た海外メディアという立ち位置。 そして、ダニエル氏への取材では、感情むき出しにケンカを売る姿勢で、コメントを引き出しています。 それらの取材手法の中に通底しているのは、獲物に食らいついたら離さない意志です。言論・表現の自由をめぐる問題に至るまで、御用やらエア御用が当たり前の我が国にあって、これは猛省すべきところでしょう。何しろ、大手新聞社やテレビ局でもないというのに、レポーターのごとく「行った・見た・聞いた」で取材をした気になっている。その裏に潜む事実や感情を描こうとする姿勢が見られない書き手ばかりなのですから。 しかし、取材手法には見習うところが多いとはいえ、Staceyには重大な欠点があります。 それは、自身が<予断>に振り回されていること。 通例、取材を行う前に予断、すなわち想定される結論を考えるのは必要な作業です。ですが、それは取材のテーマをブレないものにするためのもの。結果、取材によって得た情報でAだと思っていたらBだった。あるいは、AでもBでもなく、Cだった。そんな右往左往するさまを文章や映像で記録していくのが、取材というものです。とりわけ知らなかったことの発見は、取材が形をなったとき、味を濃いものにします。 ところが、この番組は冒頭22秒から、下調べが不足していることを露呈しています。おまけに取材者自身が予断にすがり続けているので、豊富な取材が単なる、予断の事実確認の記録へと堕ちています。ヨーロッパでも良質のドキュメンタリーは数多く制作されているはずですが、見たことはないのかというほどにひどい。 なんの本質にも迫ることができていない、物見遊山の記録になっているのです。 言い方を変えれば、取材対象として個人を追わずに、状況の表面だけを舐めているということ。このStaceyという人は、個々人がなぜそうしているか、なぜそこに至ったかに、まったく興味を抱かないのでしょう。 この個人の人となりに興味を持てない脆弱性が、Staceyを日本では数年前まで児童ポルノが合法で、女子高生が貧困で売春していて、エロマンガによって児童レイプの犯罪者が生まれている……などの予断から、一歩も動けなくしているのでしょう。 なんにせよ、このようなデキのドキュメンタリーにも予算を出してくれるBBC。そこだけは魅力的だと思いました。 (文=昼間たかし)
スポンサータブー? メディア側の過剰な自粛? 多国籍企業を告発した映画の公開に垂れ込む暗雲
スポンサータブーに抵触するのか、それともメディア側の過剰な自粛(萎縮)なのか。国際的な評価を得ている名監督の力作が日本での劇場公開を控え、宣伝活動に悩まされている。ボスニア紛争を題材にした『ノー・マンズ・ランド』(01)などで知られるダニス・タノヴィッチ監督が2014年に完成させた『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』がその問題の渦中にある作品だ。大手グローバル企業がパキスタンで粉ミルクを販売したところ、不衛生な水で溶いた粉ミルクを飲んだ乳幼児たちが次々と死亡しているという実話を題材にした社会派ドラマ。予告編やチラシなどには企業名は出ていないが、映画本編を観るとモデルとなっている大手グローバル企業がどこか分かるため、乳製品や食品関係のCMが多いテレビやラジオでは『汚れたミルク』が紹介されないという事態となっている。 パキスタンを舞台にした『汚れたミルク』の主人公は、超有名グローバル企業に勤めることになったひとりのセールスマン。1994年、国産の医薬品を地道にセールスしていたアヤン(イムラン・ハシュミ)だったが、妻ザイナブ(ギータンジャリ)に勧められて世界的に有名な大企業への転職に成功する。アヤンは上司の指示に従い、病院の医者たちからお墨付きをもらう形で粉ミルクの営業に尽力する。医者や看護士への贈り物を欠かさないアヤンは病院で気に入られ、粉ミルクは飛ぶように売れていく。大企業に就職でき、経済的にも豊かになり、子宝にも恵まれたアヤン一家は幸せいっぱいだった。ところが1997年、アヤンは自分が売った粉ミルクが招いた惨状を知ることになる。スラム街で暮らす貧民層の母親たちは水道設備の整っていない不衛生な環境で粉ミルクを作り、赤ちゃんに飲ませていた。母乳で育った赤ちゃんに比べ、粉ミルクで育った赤ちゃんには免疫力がなく、痩せ細って次々と死んでいく。衝撃を受けたアヤンは職場を辞め、ドイツのテレビ局でこの問題を訴えようとする。番組が放送されれば、アヤンは英雄として帰国できるはずだったが──。 映画の中では「ラスタ社」と仮名が使われているが、じっくりと本作を観ると粉ミルクを販売している多国籍企業は「ネスレ社」だと分かる。スイスに本社を置く「ネスレ社」は時価総額約26兆円(「週刊ダイヤモンド」2016年10月1日号)という世界屈指の巨大食品会社。インスタントコーヒーのネスカフェ、チョコレート菓子のキットカット、麦芽飲料のミロ、ペットフードのモンプチなど日本でもおなじみの商品が多い。それゆえパキスタンで起きた問題ながら、日本のテレビやラジオは『汚れたミルク』を取り上げることに難色を示しているという。本作を世界に先駆けて買い付けた配給会社ビターズ・エンドの宣伝担当者に内情を聞いた。巨大食品会社の暗部を暴いた『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』。世界に先駆けて日本での劇場公開が決まったが……。
「デビュー作『ノー・マンズ・ランド』がアカデミー賞外国語映画賞に選ばれるなど世界的に知名度のある名匠ダニス監督の作品ということで、マスコミ関係者向けの試写会での反響はすごくいいんです。『パキスタンでこんなことが起きていたなんて驚いた』『家族の幸せか社会正義かで揺れ動く主人公に感情移入した』など賞讃の声をいただいているんですが、『では、ぜひ番組の映画コーナーで取り上げてください』とお願いすると、『それは難しい……』とその場で断られてしまうんです。ある民放の報道番組のスタッフが本作を気に入ってくれ、局内で協議したそうですが、やはりダメでした。モデルとなっている企業がスポンサーになっていない番組でも、局内の他の番組に影響が及ぶことを心配して取り上げることを見送っているようです。乳製品などを扱っている国内の食品メーカーの機嫌も損ねるのではないかと懸念する声もあります。作品がつまらないから紹介されないのなら仕方ないのですが、面白いと言ってもらっているのに紹介してもらえないのは辛い。雑誌の場合も、ママさん雑誌を扱っている出版社からは断られるケースもありました」(ビターズ・エンド社宣伝スタッフ) 本作を観てもらえれば分かるのだが、特定の大企業をやり玉に挙げることをダニス監督は狙っているわけではない。ネスレ社が発展途上国の販売地域の生活環境を考慮せずに粉ミルクを大々的にセールスしたことはもちろん大きな問題だが、医者たちが金品を受け取って粉ミルク販売の便宜を図っていること、スラム街の水道を整備することが遅れた政府側の対応、文字を読むことができないため商品に書かれている注意書きの内容を知らずに粉ミルクを作り続ける貧民層の母親たち……。様々な要因が重なることで、新生児たちの命が失われ続けている。それぞれが自分の非を認めずにいる曖昧な状況こそが無辜の命を奪っていることをダニス監督は問題視している。 複雑な民族問題を抱えるボスニアで生まれ育ち、健康保険証のあるなしによって命を翻弄される一家を描いた『鉄くず拾いの物語』(13)など社会的弱者を主人公にした作品を手掛けてきたダニス監督は、多国籍企業を相手に映画を作ることの難しさを充分理解した上で撮っており、本作がどのような過程を経て映画化されたのかという舞台裏も劇中で描いている。英国の映画会社の雇った弁護士の進言で企業名は実名のネスレ社ではなく仮名のラスタ社に変わった経緯について触れ、主人公アヤンも決して聖人君子としては描いていない。また、病院で苦しんでいる赤ちゃんの映像は一部1989年のものもあるが、本作が撮影された2013年の映像も使用されており、粉ミルク問題は現在も解決していないことを伝えている。子宝に恵まれたアヤン(イムラン・ハシュミ)にとって、粉ミルク問題は他人事では済まされなかった。
「劇映画としての面白さとメッセージ性をきちんと両立させているところが、ダニス監督の名匠たるゆえんでしょうね。本作は日本でもヒットした『めぐり逢わせのお弁当』(13)を製作したインドのプロデューサーが資金を集め、パキスタンでは無理だったので代わりにインドで撮影されたんです。2014年に完成し、トロント映画祭やサン・セバスチャン映画祭で上映されましたが、パキスタンはもちろんインドでも欧州でも劇場公開できずにいます。大手グローバル企業の影響力を気にして、他国のバイヤーたちは買い控えたのかもしれません。今のところ、日本だけが唯一の『汚れたミルク』を劇場公開する国になりそうです。以前、ドキュメンタリー映画『ダーウィンの悪夢』(04)を弊社が買い付け、日本で公開する際に、タンザニアの駐日大使から『アフリカのイメージを損なう』と抗議を受けたことはありましたが、でも今回のように宣伝活動で苦戦したことはあったかどうか。何とか劇場公開に漕ぎ着け、ひとりでも多くの人にパキスタンで何が起きたのかを知ってもらえればと思っています」(同スタッフ) 映画に登場する大手グローバル企業のモデルとなったネスレ社は同社のホームページの「よくある質問」の中で、「映画『汚れたミルク』を知っていますか?」という質問に対して「映画の中の出来事は、1990年代のことであり、ネスレの活動に関する事実を大きく歪めたものです。」と答える文面を掲載している。日本での『汚れたミルク』の劇場公開に関しては、今のところ無言を貫いている状態だ。 (取材・文=長野辰次)アヤンの営業力を認めていた上司のビラル(アディ・フセイン)だが、アヤンが会社を辞めようとすると警告を発する。
『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 監督/ダニス・タノヴィッチ 脚本/ダニス・タノヴィッチ、アンディ・パターソン 出演/イムラン・ハシュミ、ギータンジャリ、ダニー・ヒューストン、カーリド・アブダッラー、アディル・フセイン 配給/ビターズ・エンド 3月4日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開 (c)Cinemorphic,SikhyaEntertainment &ASAP Films 2014 http://www.bitters.co.jp/tanovic ■3月25日(土)からはダニス・タノヴィッチ監督の最新作『サラエヴォの銃声』が新宿シネマカリテにてロードショー公開される。第一次世界大戦のきっかけとなったサラエヴォ事件から100年の記念式典を開くことになった伝統あるホテルで起きる群像劇。戯曲『ホテル・ヨーロッパ』をベースに、地元出身であるダニス監督によるスリリングな演出が見ものだ。
『サラエヴォの銃声』 原作/ベルナール=アンリ・レヴィ 監督・脚本/ダニス・タノヴィッチ 出演/ジャック・ウェベール、スネジャネ・ヴィドヴィッチ、イズディン・バイロヴィッチ、ヴェドラナ・セクサン、ムハメド・ハジョヴィッチ 配給/ビターズ・エンド 3月25日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開 (c)Margo Cinema,SCCA/pro.ba2016
阿部乃みくもエール! 佐倉絆が活動休止のミリオンガールズZの今後を語る
セクシー女優の佐倉絆が17日、昨年12月のライブを最後に活動休止したミリオンガールズZ(MGZ)の足跡を、ファンやMGZの大ファンである阿部乃みくと振り返る「“きずぽん”こと佐倉絆と振り返るMGZ2016~with阿部乃みく(マシュマロ3d+)~」イベントに出席した。
セクシー女優で結成されるアイドルグループが次々に誕生する昨今、活動休止を宣言してしまったMGZ。中心メンバーの一人として活動してきた佐倉は「最初はちょっと寂しいなっていう気持ちもあったんですけど、一人になった分、自由気ままにできる時間が増えました。それを今は自分磨きの時間として使っています」と前向き発言。今後は阿部乃がメンバーとして活動する「マシュマロ3d+」への移籍も考えていることを冗談まじりに明かしつつ「今年は一人で飛躍する年。群れに群れず、一人で頑張りたい!」と意気込み。 ミリガの新規メンバー加入での活動再開については、それほど乗り気ではない様子。「新しい子がいっぱい入ってきても、逆に辛い。わたし、おばさんみたいになっちゃうし……」と苦笑い。「もう一度アイドル活動をしてほしいという人もいますけど、今は『うるさい!』って。まあ、機会があればという感じ。AVの撮影とアイドルなら、やる側はAVの撮影の方がずっと楽しいんです」としみじみ。
阿部乃は「ミリガのいいところは、めっちゃダンスがうまいところ。あとキラキラしていて、トークも面白いところ。キャラも濃くて、いいところしかない。マシュマロで練習するときも、よくお手本にしていました」とMGZの魅力を紹介しつつ、「ミリガが好きなんで、ミリガが休止って聞いた時はわたし、葬式みたいな表情していました。」とミリガの活動休止が残念そう。 ミリガの再結成にもエールを送るが、これに佐倉は「正直わたしは満足しているので、ミリガじゃなくてもマスカッツ(恵比寿マスカッツ)かマシュマロに入るかどちらかを狙っています」ときっぱり。「ミリガはもうやらない。だって、あのメンバーよりいいメンバーはもう来ないので。中途半端に入れても……」と正直な気持ちを打ち明けていた。
プライベートでは「3月で満5年彼氏がいない。助けて!」と「結婚したい願望」が芽生えはじめているという佐倉。「実は一時期、本当にミリガのとあるファンと結婚しようと思っていた時期もあったんです。わたし、すごく一途な人が好きで……。その人、わたしが北海道に行こうが沖縄に行こうが絶対会場に来ている人で、たぶん年収も高いので」とニヤニヤ。 だが、どんなに可愛くても相手が百戦錬磨のセクシー女優だと、自分のエッチを馬鹿にされてしまうんじゃないかと奥手になる男性が多いのも事実。佐倉はプライベートでは全くモテないと嘆きつつ、エッチに関しては「プライベートは全く別。好きだったらテクニックがなくても全然いい。セックスはやっぱり愛なんじゃないかって最近思い始めているくらいです! エッチの時、プロのまねごとして来るほうが嫌!」と、テクニックなどはこだわらない様子。
これに阿部乃も「わたしもセックスに重点置いていないです。ハグしてくれたり、わたしを大切にしてくれる人が好き!」と同意していた。 イベントではこの日、発売されたMGZのライブDVD『MGZ LASTGIGS & OSAKA ONEMAN LIVE』をファンと鑑賞しつつ、思い出話に花を咲かせた2人。会場には佐倉と阿部乃のポケットVRを体験できるVRコーナーも設置。ファンを喜ばせていた。 (取材・文=名鹿祥史)
イベント詳細LINK http://mgz.tokyo/?p=2612『【VR】佐倉絆 VRコキコキ手コキフェラ「じっと見つめて手でいっぱいしてあげる」』(KMPVR)
歴史あり!? エロに情熱を燃やす愛すべきオトコたち『わが青春のマジックミラー号 AV界に革命を起こした男』
一冊の本、一枚のCDによって人生が大きく変わってしまうということがある。 僕の場合、浪人中に手にしたひとつのアダルトDVD(AV)がそれにあたる。 何の気なしにふらりと立ち寄ったブックオフで僕が手にしたアダルトDVD(AV)は、当時、『やりにげコージー』(テレビ東京系)や『ああ探偵事務所』(テレビ朝日系)に出演するなど、もはやAV界“最強”の風格すら漂っていた、女優の夏目ナナがパッケージを飾っていて、夏目ナナの口からは、「10枚も入ってるなんてお得やで~」みたいな吹き出しが飛び出ていた。 夏目ナナが「お得やで~」と言うからには、きっとお得なんだろうと、大学に落ちるのもうなずけるような超短絡思考回路でもって購入したDVDに、僕は打ちのめされた。 「女柔道家とレイプ魔による柔道対決」、「美人女優が豪勢なディナーを堪能している間に、ブスがカップラーメンを食わされる」、「全裸女性数人による引っ越し作業」など、“何のためにそんなことを……”的なパンチのありすぎる映像群がDVD10枚分にわたって展開されていた。 どう考えても受験勉強に差し障りしかないシロモノだと判断した僕は、合格するまでそのDVDを隣のマンションのガレージの隅に封印しておくことに決めた。僕が大学生になるまで、ガレージの隅で眠っていたDVD。 そのDVDこそが、ソフト・オン・デマンドの10周年記念メモリアルBOXだった。 『わが青春のマジックミラー号 AV界に革命を起こした男』(イースト・プレス)は、言わずと知れた名シリーズ「マジックミラー号」の初代監督マメゾウこと、久保直樹氏が、AV界で頭角を現し活躍していくさまを記した自伝的エッセイ。 映画監督を目指していた久保氏が、ひょんなことからAV製作に関わるようになり、その時何を思い、次々に直面する問題をどのように解決していったのかが克明に記されている。 今でこそAVメーカーの大手として知られるソフト・オン・デマンドだが、発足当時から順風満帆というわけではなかったようだ。 高橋がなり氏が率いていた同社は、設立以前から「ビデオ安売王」での販売用として製作していた「全裸バレーボール」、「全裸バスケットボール」が1万本を超えるヒットを記録したことを受け、製作し続けた「全裸スポーツシリーズ」が累計10万本を超える空前の大ヒット。 しかし、“もっと世間にインパクトを”と9,000万円もの制作費をつぎ込んだ『地上20メートル 空中ファック』がまさかの大赤字。クレーンを利用した大掛かりなセットを組み、上空20メートルに設置された透明なアクリル板の上でセックスをするという、“潔さ”しか感じられないこのおバカ企画は、ほとんど売り上げにつながらず、前作の儲けのほとんどを失ってしまう。その損失は、会社の存続が危ぶまれるほどだった。 『全裸スポーツシリーズ』という“二次会で飛び出た面白フレーズ”みたいな作品が10万本の売り上げを上げていること自体どうかしているのに、その儲けを『地上20メートル空中ファック』が吸い取ってしまうという事実。読んでいるだけで、“何が正しくて、何が間違っているか”という感覚が完全に麻痺してしまう。 そんな危機的状況から抜け出すため、同社はできるだけ制作費をかけずにインパクトを与える企画が目下の課題になっていく。 そこで発案されたのが、“合法露出マシーン”こと「マジックミラー号」だったという。トラックの後ろのマジックミラーBOXの中で、ナンパされた女の子が裸になるというこの企画は、スタジオ代、女優のギャラ代も安上がりで済み、それでいて、まるで外で裸になっているような非日常感を演出することもできる、まさに一石二鳥の企画だった。 ご存じの通り、このマジックミラー号シリーズは大ヒット。累計315万本を売り上げ、同社を年商100億を稼ぐ大企業へと発展させる礎となった。 それほどのヒットを生み出すだけあって、マジックミラー号には、女の子の抵抗感をなくすためのプロのこだわりが隠されている。スタッフに女性を混ぜる、繁華街の路上に停車しておくことで女の子の移動距離を短くする、内装を爽やかな青空にすることで、ラブホテルのようないかがわしさを払拭するなど、きめ細やかな心配りが随所に施されている。長年の疑問であったあの青空模様には、そんな意味が隠されていたとは。 ちなみに僕も、一度だけマジックミラー号に乗ったことがある。と言っても、“素人お姉さんに筆下ろしを手伝ってもらう童貞”として乗ったわけではなく、浅草で開催されたファン感謝イベントでマジックミラー号に試乗しただけなのだが、内装は思ったよりもきれいで、作りもしっかりしていた。 しかし、まさにここで、DVDで見た“マッサージからの、いつのまにか挿入”や“オナニーのお手伝いからの、いつのまにか挿入”が繰り広げられていたのかと想像すると、なんとも言えない無言のエロスに興奮したのも事実だ。 そんな社の発展に大きく貢献した久保氏だが、ある日、ソフト・オン・デマンドを追放されてしまう。その後入社したAVメーカーも社長が逮捕され、一年で解散。“制作ができる人間は生きていける”が持論の久保氏は、制作する場所すら失ってしまった。ものづくりに生きた男が、その機会を奪われた時の絶望は想像に難くない。 職を失い食えなくなっていた久保氏が、周囲の力を借り、高橋がなり氏と和解して、自身の映像制作会社「マメゾウピクチャーズ」を設立するまでに至る再起の物語は、まるで一冊の小説を読んだのような清々しい読後感すら残す。 AV業界という特殊な環境に青春を費やした男の物語がここには記されている。僕たちが普段、何気なく見ているAVにも、製作者のこだわりや苦労が隠されている。そんな裏側を知ってから見るAVはまた違った趣があり、格別だ。マジックミラー号をより一層楽しむためのスパイスとして、ご一読をお勧めしたい。 (文=大谷皿屋敷[劇団「地蔵中毒」])『わが青春のマジックミラー号 AVに革命を起こした男』(イースト・プレス)
“怪物”と呼ばれた漫画家の軌跡……谷口ジロー版まんが道『冬の動物園』
2月11日、谷口ジロー先生が逝去されました。心よりご冥福をお祈りいたします。一昨年『孤独のグルメ2』発売記念イベントに出演させていただいた際、関係者の方から谷口先生の体調があまりよろしくないという話を聞いておりました。いつかまた元気になって『孤独のグルメ』の新作を描いていただけるものと思っていましたが……。 フランスの芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受章するなど、海外でも評価が高かった谷口先生ですが、近年の代表作としては『孤独のグルメ』『「坊っちゃん」の時代』といった作品が語られることが多いです。実際、僕も『孤独のグルメ』をきっかけとして谷口先生の作品を読むようになったのですが、ハードな作風の『事件屋稼業』『餓狼伝』『神々の山嶺』、あるいは動物をテーマとした『犬を飼う』『シートン』などの作品に思い入れがある人も多いことでしょう。 実は、そんな谷口先生の自伝マンガがあるのをご存じでしょうか? その名も『冬の動物園』。これ、すなわち谷口ジロー版の「まんが道」というわけです。今回はこの『冬の動物園』から、偉大なる漫画家の軌跡をひもといてみましょう。 主人公は、浜口光夫という19歳の青年。休日に動物園で動物をスケッチするのが趣味で、イケメンだけど、どことなくウブな感じです。 浜口は服飾デザイナーになりたくて京都の織物問屋に就職するのですが、デザインの仕事はまったくやらせてもらえず、浮気がバレて離婚し、出戻ってきた社長の娘・綾子の見張り役をやらされることになります。この綾子、全然懲りておらず、浜口の隙を突いて浮気相手と駆け落ちしてしまうのです。 綾子の駆け落ちで、見張り役だった浜口は会社に居づらくなり、辞めようと思っていたところ、東京にいた友人・田村に、売れっ子漫画家・近藤史郎のアシスタントの仕事を紹介され、浜口のマンガ人生が始まるのです。 谷口先生は実際に京都の繊維会社で働いており、その後に石川球太先生や上村一夫先生のアシスタントとなっています。本作品に出てくる漫画家・近藤史郎は、おそらく石川先生がモデルなのでしょう。 なにしろ、あの谷口先生の「まんが道」ですから、さぞかし漫画家になりたくてメラメラ燃えているのかと思いきや、そうでもありません。 軽い気持ちで漫画アシスタントの見学に行ったら、机とペンを用意され、いきなり実践投入。ベタ塗りだの背景描きだのを徹夜でやらされるハメになるのです。ダチョウ倶楽部でなくても「聞いてないよ!」って言いたくなる状況です。しかし、それがきっかけで、浜口はズブズブとマンガの世界に浸っていくことになるのです。 その後は、しばらくさえないアシスタント生活が続きます。アシスタント仲間の藤田が自分の作品を着実に描き上げ、持ち込みしているのを見て嫉妬する一方、自分はさっぱりマンガが描けず、歌舞伎町のバーで飲み歩いたり、女の子とデートしたり……かなり寄り道の多い「まんが道」です。 そんな浜口に転機が訪れたのが、近藤先生の友人に紹介された18歳の少女・茉莉子との出会いでした。茉莉子は生まれつき病弱で、入退院を繰り返しており、たまに病院の外に連れ出してあげる役目を浜口が引き受けることになります。なんの因果か、女の世話ばかりやらされる人生ですね。女難の相でしょうか。 しかし、茉莉子は浜口のマンガ作りに興味を示し、悩んでいた浜口のマンガのストーリーを一緒に考えてくれます。浜口の得意な動物絵を生かしたファンタジーものにしようとか、とらわれの少女を助ける設定にしようとか、ナイスなアドバイスがバシバシ炸裂。公園デートをしながら一緒にネームを考えているうちに、2人は本当にラブラブになっていくのです。 そんな夢のようなリア充生活も束の間、再び茉莉子の容体が悪化し、面会謝絶状態に。さらに、実家のある仙台の病院に転院してしまい、会えなくなってしまいました。 浜口は茉莉子のために完成させたマンガを見せることができず、会いたいのに会うこともできず、悶々とした日々を送ります。アシスタントの仕事も上の空で、周りに心配かけまくりです。そんな中、何気なく行った動物園で、あの駆け落ち社長令嬢の綾子とまさかの再会。親と絶縁状態にありながらも、愛を信じて力強く生きる綾子の姿を見て、浜口は仙台の茉莉子に会いに行くことを決意します。 そして、仙台の病院でついに茉莉子と再開。腕には点滴が刺さり、すっかりやせ細った茉莉子を抱きしめ…… 「好きだ、君がいたから俺はマンガが描けたんだ」 何このドラマみたいなかっこいいセリフ! このイケメンめ!! 同時に、そのマンガが「少年ホリデー」編集長に気に入られ、増刊号にデビュー作が掲載されることになるのでした。ダブルハッピーで、めでたしめでたし。 というわけで、谷口先生の自伝的マンガ『冬の動物園』をご紹介しました。漫画家の自伝マンガって、娯楽も彼女も何もかも捨て、体もボロボロになりながらストイックにマンガを描いて、持ち込んではボツにされを繰り返してようやっと報われる……みたいなストーリーばかりで、こんなキレイな展開の「まんが道」は正直、見たことないです。もちろん全部がフィクションではないと思いますが、やはり谷口先生の人生は一味違いました。 もし谷口ジロー作品が好きで、本作品を未読の方は、ぜひご一読を。オススメです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) ◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから『冬の動物園』(小学館)
出版界に大旋風! 『夫のちんぽが入らない』こだまが語る、夫とネットと大喜利と
「このタイトルで出せないなら、他社に持っていく」。担当編集者にそこまで言わせる作品は、昨今なかなかないかもしれない。文学フリマで異例の大行列を生んだ同人誌「なし水」。そこに収められた一編のエッセーが、2017年出版界に大波乱を巻き起こしている。ただ衝撃的なタイトルに惹かれて読み進めれば、必ずやいろいろな意味での裏切りに遭う。お涙頂戴路線で読もうとすると、センスあふれる表現力が痛快に感動のはしごを外す。ちんぽが入る人も入らない人も、すべての生きとし生けるものたちへの挽歌『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)。うらやましい、あやかりたい、そして、こだま氏の素顔が知りたい!! *** ――いやー、各所で話題になっていますね! 発売1カ月で「4刷13万部」という数字は、昨今の出版業界においては大事件だと思うのですが、こだまさんご自身は、どういうお気持ちですか? こだま 戸惑いと不安がすごく多くて。こんなタイトルですから、ネット上で見た人が面白がって買ってくれる程度だと思っていたんですよ。これが地元の書店にも並んで……恐怖しかない。いつ家族の手に渡るんだろうと思うと。 ――まだご家族には……。 こだま 言ってないです。 ――『夫のちんぽが入らない』は、もともと「なし水」という同人誌に1万字くらいの短いエッセーとして書いたのが始まりだったそうですね。 こだま 「なし水」は、私を含めて4人で出していたんですけど、その方たちが皆さん面白い文章を書くんですよ。だから最初は「この3人にウケたい」っていうだけの気持ちでした。 ――ウケたい(笑)。 こだま このタイトルも……深刻は深刻なんですけど、でも、この機会に全部出しちゃえば、楽になるかなっていう気持ちでした。最初は100部くらいしか刷らなかったので「100人程度なら、知られてもいいや」って。ただ3人と、買ってくれた100人にウケたかったっていう。 ――その100人が、いまや大変なことに……。 こだま まさか、こんなことになるとは……。ただただ、ウケを狙っていただけなのに。 ――「なし水」の方々とは、どういうお知り合いだったんですか? こだま 引きこもっていた時期に「ネット大喜利」っていう投稿サイトに参加していたんですけど、そこでよく一緒になった4人なんです。それで、「なし水」ではみんなで家族の暴露話や創作を書き合って。メンバーだったのりしろさん(乗代雄介)は「群像」(講談社)の新人賞を取られて今は作家活動していて、爪切男さんはウェブの「日刊SPA!」で連載(https://nikkan-spa.jp/spa_comment_people/%E7%88%AA%E5%88%87%E7%94%B7)されていて……「次はたかさんだね」って、言われてる。たかさんは漫画家志望なんです。面白いです。 ――たかさん、プレッシャーでしょうね……。 こだま 「自分以外は、みんな売れてる」って言ってます(笑)。だから本当に、ただただ面白い人たちに面白いと思ってほしいという気持ちで書いていたのが、いつの間にか「感動する」みたいになっていて、身近な人たちは納得してないんですよ。「ただの笑い話だろ?」って。著者のこだま氏。この日は「友達と旅行」とウソをついて上京。
『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)
◆ネットと出会って、才能が開花
――「ウケたい」っていう気持ちは、ずっと持ってらっしゃったんですか? こだま 小さい頃はまったく……とにかくしゃべらない子だったんで、自己表現をすることもないし。ネットと出会って、そこでブログを書くようになってから、自分もウケれるんだ……と。だって、面白い人しかウケないと思ってたんですよ。だけど、ネットだったら、暗くても評価されることもあるんだなっていうのを、初めて知りました。 ――クラスの人気者的な人がウケるって思い込み、ありますよね。 こだま そう、絶対なれない地位(笑)。 ――ウケるの、気持ちいいですよね……。 こだま そうですね。みんなにっていうよりは、一緒にやっている人たちに認められたいっていう気持ちが強いかもしれない。 ――これは人によるのかもしれませんが、何か書いていると「ほかはどう思われてもいいから、とにかく面白いと思われたい」「ウケたい」みたいな気持ちとの戦いになることがよくあります。 こだま ですね(笑)。この作品を書いていたときは本当に何もやっていない時期で、単なる引きこもりの主婦で、ただブログをやっているだけの。でも、これがきっかけで「クイック・ジャパン」(太田出版)さんに連載のお話をいただいて、「週刊SPA!」(扶桑社)さんからいただいて、すべての始まりが、ただウケたいとだけ思っていた同人誌だったんです。 ――(担当編集の)高石さんにお聞きしてもいいですか? 高石さんが絶対このタイトルに……と会社を説き伏せたと伺いましたが、そこまで強く思ったのはなぜでしょうか? 高石 最初、僕にこの作品の存在を教えてくれたのは、まんしゅうきつこさんだったんですよ(※高石氏は、漫画家まんしゅうきつこさんの担当でもある)。それで、普通の面白エッセーみたいなノリで読むじゃないですか。「ちんぽ」ですし。でも、想像と中身のギャップに驚いた。それを読者にも味わってほしいという気持ちが強かったんです。 ――確かに。「ちんぽ」は何かのたとえなのかなって思いながら読んだら……。 こだま そのまんまの意味(笑)。最初は、ただこの事実を知ってもらいたいというのがあって、タイトルに持ってきたんです。それでこのタイトルにした限りは、何かにつけてこのフレーズを出さねばと。入らない、入らないと連呼して。 ――よく「勃起しない」つらさの話は耳にしますけど、「勃つけど入らない」というのは、あまり表面化してこなかった悩みだと思います。 こだま そう、こうやって書いたことによって「実はうちも入らないんです」っていう声をよく聞いて、そんなに珍しいことじゃなかったというのを初めて知って、それも私にとって大きかったです。 ――“そもそも勃たない”派からしたら「ぜいたくな悩み」って言われそうで、なかなか声にできなかった人もいたのかなぁ……。 こだま 悩みの方向は違うかもしれないけど、できないことは一緒なんですよね。ただ私自身に関しては……普段は家からまったく出ないので、特に何も変化はないんですよ。外側だけ盛り上がっている感じで。Twitterやネットをしているときだけ「あぁ、本当に(本が)出たんだな」っていう実感があって。パソコンから離れると、地味~な山奥での暮らしが待っている。◆売れても素直に喜べない……
――そのギャップを楽しむ気持ちはないですか? 旦那は知らないけど……みたいな。 こだま それ以上にバレたときの恐怖がデカすぎて、楽しめない。毎日高石さんに「今日は無事でした」っていう報告のメールをするんですよ。おそらく私以上に、高石さんはその責任を負ってくださっているというか。 高石 だって、僕が悪いじゃないですか。声かけたし、企画通したし、「ちんぽ」出しちゃったし。だから僕も素直には喜べてなくて。バレないでほしいので……こだまさんからの「無事」メールがくるとホッとする。 ――2人だけノイローゼ(笑)。 高石 売れてほしいけど、売れてほしくない。うれしいけど、うれしくない。ずっと引き裂かれている。 こだま 私が怖がることで、高石さんにも不安を与えてしまっている。周りのみんなは「いっそバレて、きちんと旦那さんにも言ったらいいんじゃない? これなら怒らないと思うよ」って言ってくださるんですけど……。 高石 そうは言いますけどね……。 こだま 内容が内容なので……完全にネタにしてるし……。 高石・こだま ……。 ――(暗くなっちゃった!!)でも、ほら、「キング」じゃないですか。男性にとってキング、相当褒め言葉ですし。 高石・こだま ……。 ――(もっと暗くなっちゃった!!)あの、どうも「ちんぽ」に目がいきがちですが、こだまさんの文章は表現のセンスがすごいな……って。そういうセンスって、どうやって培われてきたのでしょうか? こだま 私が育ったのは集落も集落で、映画館もないですし、本当に文化がないところ。テレビもろくに見せてもらえませんでしたので、子どもの頃は本だけ、推理小説とか。大人になってネットをやるようになって、面白い人の文章を読んだりして、そこで急速に情報を得たんです。やっぱりネット大喜利ですね。 ――なんか、道場みたいですね。 こだま そう! よく投稿していたサイトも「○○道場」みたいな名前で。全国から300~400人くらい一気にお題に投稿して、採点されて順位を付けられるんです。自分の書いたものが点数になるって、引きこもりの主婦にとっては面白くて。小さい頃の抑圧されていた感じが、そこで一気に爆発した、みたいな。ようやく面白いもの見つけた! って。 ――その道場では、「ちんぽ」的なジャンルにも参加していたんですか? こだま いや、私、どちらかという下ネタはあんまり得意じゃなくて……。「ちんこ」でも「ちんちん」でもなくて「ちんぽ」にしたのも、自分から一番遠い言葉だったからなんですよ。下ネタは言ったら怒られるんじゃないかっていう怖さがあって。 ――「下ネタ言うと怒られる」って、なんかわかる気がします。世代的なものかもしれませんが。 こだま でも、私が唯一優勝したのは「下ネタ大喜利」だったんですよね。 ――……今、ちゃぶ台ひっくり返しましたね。 こだま すみません(照)。◆“入らないこと”より、つらかったこと
――こだまさんの文章は、面白いのももちろんですけど、すごく読みやすいんです。 こだま 私、本当に一時ですけど、タウン誌でライターとして働いていたことがあって。そのときに「わかりやすく読ませる」ことを編集さんに教えてもらったから、それがよかったのかもしれません。 ――なるほど。自分のことだけどすごく客観的で、ご自身の気持ちですら「事実」として書かれているなぁと。 こだま そうですね。事実ですね。もうどうしようもない。あまり入り込みすぎないように書こうとはしてました。 ――執筆中はどうでしたか? つらかったですか? こだま つらい時期のことは割と書けるんですけど、付き合っているときの甘い話を書きたくなかった。あまり身内を褒めたくない。だから、同人誌のときは全然書かなかったんですけど、高石さんからは「そこを重点的に書いてください」と言われて。 ――確かに。 こだま 「すごく幸せなんだけど、そういう関係性を持てない」という落差につながるから……だけど、当時のことを書くときは、当時の気持ちにならなきゃいけないじゃないですか。夢中になっている自分を書かなきゃいけない。その恥ずかしさと向き合うのが、つらくて。 ――こだまさんのような、自分の中の「恥ずかしさ」とちゃんと向き合って、作品として笑いに昇華させている方々が今、次々とブレークなさっている気がします。まんしゅうさんもそうですよね。 こだま 恐れ多いです。私、故・雨宮まみさんから「一生に一度しか書けない文章っていうのがあって、これはまさにそれなんだけど、それを書いちゃったら終わりかっていうと、書いたら次も書ける。ビビッて書かない人は、ずっと何も書けない」という言葉をいただいて、これは思い切って出してよかったんだなって、そのとき本当に思いました。この本に全部自分の人生を押し込めちゃったんで、もう書きたいことはないだろうって思ったんですけど、「また書ける」という雨宮さんの言葉が、今すごく励ましになってます。 ――次回作のプレッシャーはありますか? こだま これを機に大きく何かやりたいっていう気持ちは特になくて、今いただいている連載だけは頑張ろうと……。身元が危ないっていうのが、根底にあるので。 ――こだまさんの面白さの根底にいつもある「身元が危ない」(笑)。 こだま それが私の中で、いいバランスになっているのかもしれません。はしゃげない、喜べない。 ――すごく謙虚に見えるけど……。 こだま ただおびえているだけ。◆書籍化自体が“壮大な大喜利”
――でも、「週刊SPA!」のインタビューで松尾スズキさんがおっしゃってましたけど、こだまさん、フェイクの入れ方が微妙だと……。 こだま 創作っていう、イチから作ることに慣れてないんです。自分の原体験を基にしなきゃ書けないので、ほぼありのまま。松尾さんに「ちょっとしかズラしてないんじゃないか」って指摘されてハッとしました。 ――誠実なんだと思います。ひとつ大きなウソが出てくると、そこに引っ張られちゃう。 こだま 大きく変えたら全然詳しくも書けないですし、かなり外れたものになっちゃったと思います。ただこの本は、美談ではなくて、情けない人間の話として読んでもらえるのが一番ありがたいかなぁ。私のやっていることの中には悪いこともありますし。それをいいように捉えられてしまうのはちょっと……。 ――でも、アレですよね。同人誌時代からのお知り合いの、この作品を純粋に面白がっていた人にとっては最高のオチですよね。ただウケたいだけの同人誌が、本になり、13万部売れて、ちょっと感動するみたいな話にもなって……。 こだま で、本人だけがビクビクしてる(笑)。 ――すべてが大喜利のような。 こだま 周りの人が一番喜んでますね。 ――もしも、もしも、旦那さんにバレたらどうしますか? こだま 夫次第ですね。「もうこんなもんやめろ」って言われたら、反省の意味も込めてやめるかな……でも、名前だけ変えて、また書いてそうな気もする……。 高石……こだまさん、絶対やめられないと思う。 こだま そう。怖いけど、それを超えるくらい、書いていて楽しいし。 ――また「こだま」から、そんな離れてないペンネームつけて(笑)。 高石 間違いなく、ひらがな3文字でしょうね。ヘタしたら「こまだ」。 ――ひらがな三文字の作者の面白い作品見つけたら、「あぁ」って思います。 こだま みんな素知らぬふりして、「こだま出直したのか」と迎えてくれたらいいなと思います。 (取材・文=西澤千央)まるで井之頭五郎の老後……? 谷口ジロー作画の『センセイの鞄』がいい味すぎる!
自分より、ひと回りもふた回りも年下の恋人ができる――。ほとんどの男性にとって、憧れのシチュエーションですよね。「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載されている『恋は雨上がりのように』は、17歳の美少女が、さえない45歳のバツイチ子持ちファミレス店長を好きになってしまうという年の差恋愛を描く作品で、僕らのようなアラフォー世代をキュンキュンさせてくれます。 しかし文学の世界には、この『恋は雨上がりのように』をも超越する、ハイレベルな年の差恋愛の世界があります。それが『センセイの鞄』という作品。70歳近いおじいさんと、30代後半独身女性の恋を描く本作。それも、加藤茶クラスの大物芸能人の話などではなく、ごく普通の教師と教え子の関係です。 『センセイの鞄』は、芥川賞作家の川上弘美先生の小説で、ドラマ化もされている有名作品ですが、『孤独のグルメ』の谷口ジロー先生が作画を担当するマンガ版も存在します。純文学などまったく縁のない僕ですが……マンガ版があるのか、そうかそうか、そうなれば話は違う。読んでみると、実にいい味を出しているんですよ。まるで『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎の老後を見ているような、そんな気分で読むことができます。 主人公は、独身OLのツキコさんこと大町月子37歳。お相手はツキコさんが女子高生だった時の古文の先生、松本春綱。ツキコさんより、30歳以上も年上です。30歳の年の差って、冷静に考えるとすごいことですよね。なにしろ、一方が30歳の時に、相手は新生児だったわけですから。 2人の出会いは、お互いの行きつけの居酒屋で、センセイがたまたま隣り合ったツキコさんに声をかけたことが始まりです。 ツキコさんが、「まぐろ納豆」「蓮根のきんぴら」「塩らっきょう」という、女子にしてはゲキ渋なラインナップのメニューを頼むと、隣のセンセイも同じメニューを頼み……。 「大町ツキコさんですね」 「店に出入りするキミに見覚えがあったので」 「名簿とアルバムを見て確かめました」 「あのころキミはおさげにしていたでしょう」 怒涛のセリフ。ちょっ、めちゃくちゃチェック済みじゃないですか! ぶっちゃけ、教え子狙いのナンパじゃないかっていう。センセイもいい年して、なかなかやりますな。しかし、こういうストーカースレスレな行為も、センセイのようなキチンとした身なりの紳士がやると、それっぽく感じさせないのです。 初めは誰だったか思い出せなかったツキコさん。高校時代の先生だったことは思い出したものの、本名が出てこない、そんな流れでセンセイと呼ぶようになります。 それ以来、たびたび行きつけの店で隣り合って飲み、時には2軒目3軒目とハシゴし、時にはセンセイの家に招かれ……次第に、お互い惹かれ合うようになります。それでいて、プラトニックな関係です。 アンチ巨人のツキコさんと巨人ファンのセンセイがナイター中継の最中にケンカして、1カ月も口をきかなかったり、ツキコさんがセンセイの別れた奥さんに嫉妬したり、逆にセンセイがツキコさんの同級生とのデートに嫉妬したり……。しっとりした大人の恋愛だけを描いた作品なのかと思いきや、甘酸っぱい恋の駆け引きもあります。 この作品は、キラキラした若いカップルとも、ギラギラした中年カップルとも違う、適度に枯れた感じで、2人の独特の距離感をほほえましく見守るような、そんな作品なのかもしれません。しかし、僕のように純文学のわからぬ下世話人間にとっては、正直“このカップル、ちょっとキモ……”って思うところもあるんですよ。そんな自分のやさぐれた感情を代弁してくれるキャラが作中に登場します。その名も「名もない酔っ払い」。 この作品きってのヒール役は、おでん屋でセンセイの隣の席に座っており、酔っ払ってベロベロ状態。こんな感じで絡んできました。 「おたくら、どういうんですか」 「年も離れてるんだろうに、いちゃいちゃしちゃってさ」 「いやらしいんだよ、だいたいいい年してさ」 「このじいさんあんたとヤってるの? 月何回くらいヤってるんだよ」 よくぞ言ってくれた! もうド直球ですよ。この男の登場により、作品を読みながらモヤモヤしてた部分がすべて吐き出されるのです。“よかった、自分だけがそう思っていたんじゃないんだ……”。そういう感情とともに。 後半では、年の差恋愛の宿命というのか、センセイの晩年の境遇をツキコさんが悲しむシーンまで描かれており、そのシーンが、またなんとも切ないのです。そう、これは単なる恋愛ではない、究極の愛。「看取ら恋愛(みとらレンアイ)」なのではないでしょうか? ちなみに谷口先生の描く作品中の食事シーンは、『孤独のグルメ』譲りの美麗さです。さらしクジラ、もずく酢、切り干し大根、茄子のしぎ焼き、塩ウニ、トビウオのしょうが醤油などなど。ツキコさんとセンセイによる、渋すぎるセレクションはさすが年の功! それだけでも十分楽しめる作品です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) ◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから『センセイの鞄』(双葉社)






























