予算は控えめ、計画は壮大 新たな漫画の潮流を生み出すか?「京都版トキワ荘事業」

 大学、専門学校から塾など多様な形で漫画家を養成することを目指すシステムが、次々と生まれている。そうした中で、京都市が2012年度から新たな事業として「京都版トキワ荘事業(仮称)」を計画している。その内容は、京都市内にある京町家で、漫画家志望の若者たちに共同生活を送りながら執筆に専念してもらおうというものだ。  同様の事業としては、東京都のNPO法人NEWVERYが行っている「トキワ荘プロジェクト」がよく知られている。こちらは06年の活動スタート以来、既に何人かの漫画家をデビューさせることに成功している。全国唯一の「マンガ学部」を持つ京都精華大学をはじめ、京都国際マンガミュージアムといった漫画関係の拠点施設も持つ京都市。そうした中で、行政主導によって新たな事業を行う目的は、どこにあるのか? 「京都精華大学や京都造形芸術大学をはじめとして、漫画について学ぶことのできる大学はいくつもあります。ところが、そこで漫画を学んだ学生たちが卒業後にどうするかといえば、ほとんどが出版社の集まる東京に行ってしまいます。そこで、漫画家志望の方々に京都に留まってもらう方法を考える中で、今回の計画は生まれました」  と語るのは、京都市産業振興室の草木大さん。せっかく漫画について学べる大学がそろい、漫画家志望の若者が集まっているのに卒業したらみんな出て行ってしまう。それでは惜しい、ということが事業の出発点。大学でも漫画の描き方を含めて教えているわけで、やっている内容がかぶる気もするが、京都市の事業は「大学よりも実践的な作品づくりを行ってもらう」ことに目的を絞って計画しているという。  そのため、予定では募集人数は男女計8人と少なめだ。もちろん、単にカンヅメにして執筆させるわけでなく、プロの漫画家による勉強会を行うなど実践的な指導も行っていく予定だという。人数も控えめだが、12年度の予算案に盛り込んでいる予算も約300万円と控えめだ。予算の主な使い道は、まず、市が漫画家育成を行うということを広く知ってもらうための事業だ。現役のプロ漫画家を招いてセミナーを開催するなど、さまざまな形で周知を図っていく予定だという。  本格的な事業の開始は13年度からで、12年度の1年間を事業の周知に充てていることや、控えめな予算案を見ると、かなり慎重に計画を進めている。これが好印象なのか、議会でも特に反対意見はなく、むしろ議員からも応援されているのだという。大企業の工場を誘致して、雇用を生み出し、瞬く間に地域も潤うといったものとは違い、文化産業はジワジワと効果が表れていくもの。いきなり壮大な計画を提示して何億円もの予算を提示したりすれば「そんなの、ウチの地域でやる意味あるのか?」と反発されるのは必至(実際に「漫画で町おこし」をもくろんだはいいが、そうした問題を抱えている自治体もある)。まず、準備にじっくりと時間を取って事業を進める計画を立案するあたり、担当者も漫画のことを「よくわかっている」のだと思われる。  実際、最初から志望者に住んでもらう物件を決めて事業を進める案もあったそうだが「やはり、十分な準備期間が必要」ということに落ち着いたそうだ。ちなみに、物件は京都国際マンガミュージアム周辺で探す予定だそうで、かなり漫画に囲まれた時間を過ごすことができる形になりそうだ。 ■地域の特性を生かして漫画に京都ブランドを  しかし、それでも気になるのは「京都で漫画を描くことにメリットがあるのか?」という点である。 「京都は映画発祥の地でもありますし、神社仏閣も数多い、漫画以外の文化もとても充実している街なんです。ですので、実際に住んでいただくことで、そうしたさまざまな文化に触れて創作活動に役立ててもらうことができると考えているんです」  と、前出の草木さんは話す。地域の持つ文化レベルの高さという点では、京都は東京に匹敵する、あるいは凌駕している街であるのは間違いない。また、地域の特徴として学生が多い、イコール未来を目指している若者が東京よりも狭い地域に密集して暮らしていることも、大きなメリットとして挙げられる。こうした利点を、いかに利用できるかが事業の成功のカギになっているのではないだろうか。  この事業は、単にプロ漫画家を育成するだけでなく、京都を漫画文化発信の一大拠点にまで成長させる壮大な計画のための一環だという。いずれは京都発の漫画が、漫画産業の中のひとつの核となる時代がやって来るのかもしれない。 (取材・文=昼間たかし)
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【関連記事】 ・漫画で"食える食えない"の壁を乗り越える支援を! トキワ荘プロジェクトの試みマンガ学部よりも就職はラク? 全国初のポピュラーカルチャー学部は成功するのか?やっぱり!「コミュ力ない人間は不要」アニメ業界の求める人材はコレだ!

予算は控えめ、計画は壮大 新たな漫画の潮流を生み出すか?「京都版トキワ荘事業」


 大学、専門学校から塾など多様な形で漫画家を養成することを目指すシステムが、次々と生まれている。そうした中で、京都市が2012年度から新たな事業として「京都版トキワ荘事業(仮称)」を計画している。その内容は、京都市内にある京町家で、漫画家志望の若者たちに共同生活を送りながら執筆に専念してもらおうというものだ。  同様の事業としては、東京都のNPO法人NEWVERYが行っている「トキワ荘プロジェクト」がよく知られている。こちらは06年の活動スタート以来、既に何人かの漫画家をデビューさせることに成功している。全国唯一の「マンガ学部」を持つ京都精華大学をはじめ、京都国際マンガミュージアムといった漫画関係の拠点施設も持つ京都市。そうした中で、行政主導によって新たな事業を行う目的は、どこにあるのか? 「京都精華大学や京都造形芸術大学をはじめとして、漫画について学ぶことのできる大学はいくつもあります。ところが、そこで漫画を学んだ学生たちが卒業後にどうするかといえば、ほとんどが出版社の集まる東京に行ってしまいます。そこで、漫画家志望の方々に京都に留まってもらう方法を考える中で、今回の計画は生まれました」  と語るのは、京都市産業振興室の草木大さん。せっかく漫画について学べる大学がそろい、漫画家志望の若者が集まっているのに卒業したらみんな出て行ってしまう。それでは惜しい、ということが事業の出発点。大学でも漫画の描き方を含めて教えているわけで、やっている内容がかぶる気もするが、京都市の事業は「大学よりも実践的な作品づくりを行ってもらう」ことに目的を絞って計画しているという。  そのため、予定では募集人数は男女計8人と少なめだ。もちろん、単にカンヅメにして執筆させるわけでなく、プロの漫画家による勉強会を行うなど実践的な指導も行っていく予定だという。人数も控えめだが、12年度の予算案に盛り込んでいる予算も約300万円と控えめだ。予算の主な使い道は、まず、市が漫画家育成を行うということを広く知ってもらうための事業だ。現役のプロ漫画家を招いてセミナーを開催するなど、さまざまな形で周知を図っていく予定だという。  本格的な事業の開始は13年度からで、12年度の1年間を事業の周知に充てていることや、控えめな予算案を見ると、かなり慎重に計画を進めている。これが好印象なのか、議会でも特に反対意見はなく、むしろ議員からも応援されているのだという。大企業の工場を誘致して、雇用を生み出し、瞬く間に地域も潤うといったものとは違い、文化産業はジワジワと効果が表れていくもの。いきなり壮大な計画を提示して何億円もの予算を提示したりすれば「そんなの、ウチの地域でやる意味あるのか?」と反発されるのは必至(実際に「漫画で町おこし」をもくろんだはいいが、そうした問題を抱えている自治体もある)。まず、準備にじっくりと時間を取って事業を進める計画を立案するあたり、担当者も漫画のことを「よくわかっている」のだと思われる。  実際、最初から志望者に住んでもらう物件を決めて事業を進める案もあったそうだが「やはり、十分な準備期間が必要」ということに落ち着いたそうだ。ちなみに、物件は京都国際マンガミュージアム周辺で探す予定だそうで、かなり漫画に囲まれた時間を過ごすことができる形になりそうだ。 ■地域の特性を生かして漫画に京都ブランドを  しかし、それでも気になるのは「京都で漫画を描くことにメリットがあるのか?」という点である。 「京都は映画発祥の地でもありますし、神社仏閣も数多い、漫画以外の文化もとても充実している街なんです。ですので、実際に住んでいただくことで、そうしたさまざまな文化に触れて創作活動に役立ててもらうことができると考えているんです」  と、前出の草木さんは話す。地域の持つ文化レベルの高さという点では、京都は東京に匹敵する、あるいは凌駕している街であるのは間違いない。また、地域の特徴として学生が多い、イコール未来を目指している若者が東京よりも狭い地域に密集して暮らしていることも、大きなメリットとして挙げられる。こうした利点を、いかに利用できるかが事業の成功のカギになっているのではないだろうか。  この事業は、単にプロ漫画家を育成するだけでなく、京都を漫画文化発信の一大拠点にまで成長させる壮大な計画のための一環だという。いずれは京都発の漫画が、漫画産業の中のひとつの核となる時代がやって来るのかもしれない。 (取材・文=昼間たかし)

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「もはや『ごくせん』しかない?」コケまくる仲間由紀恵に日テレがニンマリしている

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『ごくせん卒業スペシャル'09』
 このところ、各週刊誌で取り上げられているのが女優の仲間由紀恵の仕事の不振ぶりだ。 「コミカルな役を演じた『TRICK』(テレビ朝日)のドラマ・映画で人気女優の仲間入りを果たし、『ごくせん』のドラマ版のヒットで大ブレーク。映画も当たった。ところが、このところ、急に失速し、まだまだCMのギャラは1本4,000万円ほどで数本入っているので事務所の稼ぎ頭ではあるが、勢いでは高橋みなみ、小嶋陽菜らAKB48のメンバーに完全に押されている」(スポーツ紙デスク)  放送中のドラマ『恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方』(TBS系)では彼氏いない歴8年ながら、複数の男性に言い寄られる主人公を演じているが、「まったくリアリティがないため、どんどん視聴者が離れ、初回こそ11.9%だったが、第2話で早くも視聴率が8.6%に落ち込み、第4話は7.1%。最終回まで視聴率1ケタの"低空飛行"が続きそう」(テレビ関係者)。  1月には、池上永一さん原作のベストセラーを仲間主演で昨年舞台・ドラマ化した『テンペスト』の映画版『劇場版テンペスト3D』が公開されたものの、「ドラマが放送されたのはNHKの地上派ではなく、NHK BSプレミアで放送されたので、認知度がいまいちだったためか、公開初週の興業収入ランキングのトップ10にも入らず、おそらく3億円もいっていないのでは」(映画配給会社関係者)と、ドラマ・映画ともに言い訳のできない大コケだったが、プライベートも冴えないようだ。 「2009年11月に俳優の田中哲司と交際が報じられ、事務所は手を尽くしてなんとか別れさせようとしていたが、仲間は受け入れず極秘裏に交際を続けていた。しかし、昨年秋ごろまでに事務所の意向を受け入れてようやく破局したと言われているだけに、いまや仕事に没頭するしかない状態。まるで、破局したダメージがそのまま仕事の失速ぶりにつながっているようだ」(同)  この状況だと、今後、連ドラ・映画の主演オファーはなかなか入らなくなりそうだが、日本テレビにとってはかなりおいしい状況になったという。 「09年に公開された『ごくせん』の映画版『ごくせん THE MOVIE』は興行収入34.8億円のヒット作となった。日テレサイドは映画の続編のオファーを出したが、仲間サイドは『ごくせんの色に染まりたくない』とオファーを蹴った。しかし、この状況だと、仲間サイドが頭を下げて、『ごくせん』のドラマか映画の続編を逆オファーでもしないと、再浮上するのは難しいだろう。事務所がガードしすぎて恋愛経験が乏しいのも仲間の演技の幅を狭めているだけに、新たな恋でもあればひと皮むけそうだが......」(芸能プロ関係者)  仲間が次回作で汚名返上できるかが注目される。
ごくせん卒業スペシャル'09 ヤンクミ最後の卒業式![2枚組・本編+特典ディスク] [DVD] 一生やればいいのに。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・「人気凋落で危機感も......」仲間由紀恵 ついに田中哲司と破局させられた?仲間由紀恵がベタ惚れ中の俳優・田中哲司がカラテカ入江と夜な夜な合コン三昧!?仲間由紀恵と田中哲司の交際に新事実! 実はフライデーされた女性は......

「もはや『ごくせん』しかない?」コケまくる仲間由紀恵に日テレがニンマリしている

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『ごくせん卒業スペシャル'09』
 このところ、各週刊誌で取り上げられている、女優・仲間由紀恵の仕事の不振ぶり。 「コミカルな役を演じた『TRICK』(テレビ朝日系)のドラマ・映画で人気女優の仲間入りを果たし、『ごくせん』(日本テレビ系)のドラマ版のヒットで大ブレーク。映画も当たった。ところが、このところ急に失速している。まだまだCMのギャラは1本4,000万円ほどで数本入っているので事務所の稼ぎ頭ではあるが、勢いでは高橋みなみ、小嶋陽菜らAKB48のメンバーに完全に押されている」(スポーツ紙デスク)  放送中のドラマ『恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方』(TBS系)では彼氏いない歴8年ながら、複数の男性に言い寄られる主人公を演じているが、「まったくリアリティがないため、どんどん視聴者が離れている。初回こそ11.9%だったが、第2話で早くも視聴率が8.6%に落ち込み、第4話は7.1%。最終回まで視聴率1ケタの"低空飛行"が続きそう」(テレビ関係者)。  1月には、池上永一さん原作のベストセラーを仲間主演で昨年舞台・ドラマ化した『テンペスト』の映画版『劇場版テンペスト3D』が公開されたものの、「ドラマが放送されたのはNHKの地上派ではなくNHK BSプレミアで放送されたので、認知度がいまいち。そのため公開初週の興業収入ランキングのトップ10にも入らず、おそらく3億円もいっていないのでは」(映画配給会社関係者)と、ドラマ・映画ともに言い訳のできない大コケだったが、プライベートも冴えないようだ。 「2009年11月に俳優の田中哲司と交際が報じられ、事務所は手を尽くしてなんとか別れさせようとしていたが、仲間は受け入れず極秘裏に交際を続けていた。しかし、昨年秋ごろまでに事務所の意向を受け入れてようやく破局したといわれているだけに、いまや仕事に没頭するしかない状態。まるで、破局したダメージがそのまま仕事の失速ぶりにつながっているようだ」(同)  この状況だと、今後、連ドラ・映画の主演オファーはなかなか入らなくなりそうだが、日本テレビにとってはかなりおいしい状況になったという。 「09年に公開された『ごくせん』の映画版『ごくせん THE MOVIE』は興行収入34.8億円のヒット作となった。日テレサイドは映画の続編のオファーを出したが、仲間サイドは『ごくせんの色に染まりたくない』とオファーを蹴った。しかし、この状況だと、仲間サイドが頭を下げて、『ごくせん』のドラマか映画の続編を逆オファーでもしないと再浮上するのは難しいだろう。事務所がガードしすぎて恋愛経験が乏しいのも仲間の演技の幅を狭めているだけに、新たな恋でもあればひと皮むけそうだが......」(芸能プロ関係者)  仲間が次回作で汚名返上できるかが注目される。
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CIA女性工作員がブッシュ政権と対決  実録サスペンス『フェア・ゲーム』

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実在の元女性工作員とその夫がホワイトハウスとの戦いに挑んだ『フェア・ゲーム』。DVDとブルーレイが3月2日(金)よりリリース。
(c)2010 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
 戦争は一体どのようにして起きるのか? 最初の引き金は、誰がどのようなタイミングで引くのか? ポリティカルサスペンス『フェア・ゲーム』は戦争が始まる瞬間の内幕を描いた実録ドラマだ。フェア・ゲームとは"正しいゲーム"ではなく、"格好の標的"という意味。禁猟期間が開け、ハンターたちが狙いを定めたシカなどの獲物のことを指す。2003年、大量破壊兵器を保有しているという理由からイラク戦争に踏み切ったブッシュ政権に対し、大量破壊兵器は存在しないという"真実"を公表したために、政府側の"標的"となったCIA女性工作員とその夫の孤立無援の戦いを描いたノンフィクションストーリーだ。  本作のモデルとなったのは「プレイム事件」。イラクのフセイン政権が核兵器を開発しているらしいという噂をキャッチした米国政府は、CIAに調査を指示。現地に飛んだCIAの女性工作員ヴァレリー・プレイム(金髪の美女!)は民間人の協力を得て、湾岸戦争後のイラクには核開発する技術はないことを確かめる。さらに中東・アフリカを専門とした元外交官の夫ジョー・ウィルソンも協力し、イラクにイエローケーキ(ウラン燃料)を入手した事実はないという裏付け調査を行なう。だが、イラクとの開戦を既定路線としていたブッシュ政権は、CIA上層部に圧力を掛けた上でプレイム夫妻の調査報告は不十分とし、イラクの脅威を世論に訴え続ける。2003年3月のイラク開戦後、大量破壊兵器が見つからなかったことは周知の事実だ。  同年9月に夫ジョー・ウィルソンが「ブッシュ政権は正しい情報をねじ曲げた」との批判記事をNYタイムスに寄稿したところ、これに怒った副大統領チェイニーの首席補佐官ルイス・リビーらが懇意にしている記者を動かし、ジョーの妻はCIAの工作員であることをマスコミに暴露してしまう。CIAの秘密工作員がその身元を明かされれば、その工作員は社会的に抹殺されたことを意味する。職務が続けられないだけでなく、海外にいる民間の協力者たちを危険にさらし、テロリストから狙われることになる。さらに夫や子どもたちとの家庭生活までも崩壊の危機に瀕する......。  実在の元CIA女性工作員ヴァレリー・プレイム役に扮したのはナオミ・ワッツ。CIA工作員が受ける過酷なトレーニングを体験した上で撮影に参加。職務に対する忠誠心と愛する家庭との板ばさみになるヒロイン像にリアルに迫っている。ナオミ・ワッツと『21グラム』(03)、『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』(04)で共演した演技派ショーン・ペンが、彼女の推薦で夫ジョー役を熱演。プレイム夫妻が驚くほど、ジョーの口調や仕草を完璧にコピーした。末期とはいえ当時のブッシュ政権を敵に回すという危険を冒して、本作に製作から関わったのはダグ・リーマン監督。『ボーン・アイデンティティー』(02)で秘密工作員が生きる冷酷な世界をアクションたっぷりに描き、『Mr.&Mrs.スミス』(05)でスパイ夫婦の家庭生活の悩みをコメディに仕立てたダグ・リーマン監督が、その両作の延長線上にあるようなノンフィクション作品に挑んだことも興味深い。中東ロケパートでは監督自身がカメラを持って撮影したほどの熱の入れようだ。
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(c)2010 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
 秘密工作員の素顔に肉迫した本編同様に注目したいのは、セルDVDの特典。プレイム事件の当事者であるヴァレリー・プレイム&ジョー・ウィルソン夫妻がオーディオコメンタリーに参加しており、「このシーンは本当にあった」など各場面の解説は聴きごたえ充分。ともに交渉術を最大の武器とする工作員、外交官というプロフィールの持ち主だけに、夫妻のあうんの呼吸のトークセンスが光る。前半、CIAのロビーに現われたショーン・ペンがロビーの壁に刻まれている星マークを見つめるシーンがある。ここで、ジョー・ウィルソンがぽつりと呟く。「あの星マークは、殉職したCIA局員の数を示しているんだよね」と。本編だけ見ていると何でもない1シーンなのだが、当事者たちのツボを心得た解説によって、CIAという職務の特殊さ、妻の安否を気遣う夫の心情が濃厚に伝わってくる。  各国の情報を集めるCIA工作員の視点に立った『フェア・ゲーム』を観ることで、戦争が起きる裏事情がよく分かる。権力側にいる人間は自分の考えや意見に固執し、頑として自説を曲げようとしない。少しでも弱気を見せると自国内で足元をすくわれるからだ。本来は政府に対して正しい情報を提供することで国の安全を守ることを目的としているCIAだが、権力側の圧力に屈して、都合のいい情報を提供するイエスマンと化してしまう。CIAのトップもまた自分の立ち場や家庭を守らなくてはならないからだ。そんな密室で起きた茶番劇によって、"正義"だと信じ込んだ若者たちが最前線に次々と送り込まれ、イラクの街はガレキの山となった。特典映像のインタビューで、2児の母親でもあるナオミ・ワッツはこう語っている。「これは米国だけ限ったことではない。どの国、どの政府でも常に起きうることだと思う」と。 (文=長野辰次) ●『フェア・ゲーム』 監督・撮影・製作/ダグ・リーマン 出演/ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン、サム・シェパード、ノア・エメリッヒ、ブルース・マッギル、デヴィッド・アンドリュース 
フェア・ゲーム [Blu-ray] 発売元・販売元:ポニーキャニオン DVD¥3,990(税込) Blu-ray¥4,935(税 込) http://visual.ponycanyon.co.jp/pickup/movie/pcbp52470/ amazon_associate_logo.jpg
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巨匠の溢れんばかりの映画愛がつまった『ヒューゴの不思議な発明』

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(C)Paramount Pictures 2011
 第84回アカデミー賞は、白黒サイレント映画『アーティスト』の作品賞など5冠獲得で幕を閉じた。日本では4月に公開される同作の紹介は別の機会に譲るとして、やはり今年のアカデミー賞に多くの部門でノミネートされた実力も話題性も十分の注目作2本を取り上げたい。  3月1日公開の『ヒューゴの不思議な発明』(2D/3D上映)は、世界中でベストセラーとなった冒険ファンタジー小説を巨匠マーティン・スコセッシ監督が映画化したハートウォーミングな作品。1930年代、パリ駅の時計塔に隠れ住んでいる少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)。亡き父(ジュード・ロウ)が遺した機械人形を修理するため、駅構内の玩具屋で部品やオモチャを盗もうとするが、老店主ジョルジュ(ベン・キングズレー)に見つかってしまう。ジョルジュは機械人形の秘密を知っている様子で、彼の養女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)は機械人形の鍵穴にぴったり合う鍵を持っていた。ついに機械人形が動き出すとき、3人の運命も大きく変わり始める。  映画草創期の監督ジョルジュ・メリエスとその作品群に、スコセッシ監督が心からのオマージュを捧げた作品。溢れんばかりの映画愛に加え、自らの監督人生をジョルジュに託した心情がうかがわれ、何やら切なくもある。当時のパリの街並みや駅構内、時計塔内部を、CGを駆使して味わい豊かに再現。完璧にコントロールされた3D映像は、タイムスリップしてその場に居合わせているかのような臨場感をもたらす。今年のアカデミー賞では最多11部門ノミネート、撮影賞・美術賞・視覚効果賞・録音賞・音響編集賞という『アーティスト』と並ぶ5部門での受賞を果たした。ピュアな存在感が光るヒューゴ役のバターフィールド(『縞模様のパジャマの少年』)、演技面でも身体的にも成長を感じさせるイザベル役のモレッツ(『キック・アス』『モールス』)の2人にももちろん要注目だ。  続いて3月2日に封切られる『戦火の馬』は、1980年代にイギリスで発表された小説をスティーブン・スピルバーグ監督が映画化した感動の歴史ドラマ。第1次大戦前夜のイギリスのある農村。農家の少年アルバートは、父が競り落としてきた美しいサラブレッドにジョーイと名付け、農耕馬として育てて苦楽を共にしてきた。だがある日、ジョーイは軍馬として騎馬隊に売られてしまう。フランスの戦地に赴いたジョーイを探すため、アルバートは徴兵年齢未満で入隊し、ドイツと激戦を繰り広げるフランスの地へと向かう。  主人公アルバート役のジェレミー・アーヴィン、母親役のエミリー・ワトソンらによる好演も光るが、本作の目玉は何と言っても、表情豊かで説得力ある馬の演技。しかも、危険なシーンでごくわずかにCGが使われただけで、ほぼすべて実写で撮影されたというから一層驚かされる。傷を負った仲間の馬を助けるため、自ら苦役を買って出るシーンなど、涙なくして見られない名場面も数多い。英国ダートムアの雄大な景観の中、人と馬が力を合わせて過酷な試練を乗り越えていく姿は、どこか米国の西部開拓史の情景にも似た映画的郷愁を誘う。6部門にノミネートされたアカデミー賞の受賞はならなかったが、戦争で人間同士が傷つけ殺し合うことの愚かさ、厳しくつらい時代にも希望を失わず未来を信じることの素晴らしさを教えてくれるスピルバーグ監督の最新作、どうぞお見逃しなく。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ヒューゴの不思議な発明』作品情報 <http://eiga.com/movie/56064/> 『戦火の馬』作品情報 <http://eiga.com/movie/55976/>
ジョルジュ・メリエスの月世界旅行 他三編/映画創世期短編集 映画界の魔術師。 amazon_associate_logo.jpg
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「感じたことのない新感覚」男性用セクシーランジェリーにブームの兆し!?

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 「楽天市場」の「メンズインナー その他」部門の週間売り上げランキングでトップ10入りし、その斬新さが話題を集めている「メンズ・ボディストッキング」。股間をスッポリと包み込むようなセクシーなデザインで、生地は薄くサラサラとした肌触り。今年1月に発売され、2週間で1,000枚を売り上げた大ヒット商品だ。ユーザーレビューには、「肌に吸いつくようなフィット感がたまらない」「誰にも知られず着ていられる」「ビックリするぐらいワイルド!」などのコメントが寄せられているが、一体どんなコンセプトで作られたものなのだろうか。発売元である「ランジェリーのtiara」に話を聞いた。 ――tiaraさんでは、レディース・メンズ問わず上品でセクシーなランジェリーを世界中から集め、ネット販売しているそうですが、この「メンズ・ボディストッキング」はどういったコンセプトの商品なんですか? 「この商品は、男性でも着られるサイズ、そしてなんと言っても、今まで男性が感じ取ったことのない"抱擁感"が魅力です。日常用として服の下に着られるもので、男性が気になるすね毛までしっかりと隠し、美しいラインを作れます。40~60代の男性をターゲットにしています」 ――シンプルなタイプから、フロント部分とサイドに大きなホールがあるもの、体全体を包み込むタイプなどさまざまな種類があるようですが、一番人気はどのタイプですか?
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「現時点では、シンプルなパンストタイプと、フロントのふくらみを抑え美しいシルエットが魅力の股フロントホール付きのタイプですね」 ――男性用ストッキングに限らず、tiaraさんではTバックやムタンガ、さらにはベビードールやテディなど、さまざまな男性用ランジェリーを取り扱っています。どれも大胆かつセクシーで、美意識が高い男性向けという印象を受けるのですが、いわゆる"プレイ用"なんでしょうか? また、一般的な男性と同性愛者、どちらをメインターゲットにしているのですか? 「"美意識が高い男性向け"というのは間違いありません。ただ、当社では一般的な男性と同性愛者という形では分けていません。"感じたことのない新感覚"というものに興味があるお客様をターゲットにしています」
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――男性用ランジェリーといえば数年前、「男性用ブラジャー」が話題になりました。tiaraさんでもデザイン性が高いブラを多数取り扱っていますが、男性にもセクシーなランジェリーを身につけてほしいという思いがあるのでしょうか? 「そうですね。女性用のセクシーランジェリーというものは昔から数多くありましたが、男性の下着は長年ほったらかしの状況でした。そこで、男性用のセクシーなランジェリーがあってもいいのではないかという思いから、取り扱いを始めたんです。女性でも男性でも、魅力的な人になりたいというのは共通の思いですからね」 ――最近では、化粧品を愛用したり、エステに通うなど"キレイ系男子"と呼ばれる人も増えているようですが、オシャレでセクシーな下着を好む男性は増えているのでしょうか? 「確かに増えていると思います。先ほども触れましたが、女性でも男性でも、魅力的な人になりたいと思う方は多くいらっしゃるので、下着にも気を使える男性が増えていると思いますよ。今では男性も普通に美容院に行きますし、パーマもネイルもします。ランジェリーに限らず、今後も"男性用●●"という商品が浸透していくと思います」
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――2月25日には、新商品「メンズCカップ」が発売されました。こちらもかなり大胆でセクシーなようですが、こちらはどんな商品なんですか? 「メンズCカップは、メンズ・ボディストッキング同様、"今まで感じたことのないような新感覚"が魅力の下着です。体にフィットするようなデザインで露出的。刺激を求めているお客様にピッタリのアイテムですね。これまで女性用はありましたが、男性用はほとんど出回っていなかったんです。おかげさまで、販売開始直後から大変人気です。 今後も、tiaraでは女性はもちろん、男性用の商品にも力を入れていこうと思っています。すべての"美"を求める人へお届けができればと思っています」 ***  なお、tiaraでは第三者には中身がわからないよう商品を発送してくれるそうなので、オシャレランジェリー初心者でも安心とのこと。誰にも知られず、こっそり試してみるのも面白そうだ。 ●ランジェリーのtiara <http://www.rakuten.co.jp/exytiara/
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【関連記事】 ・ブラジャーで発電、パットはミニボトルに トリンプのすごい下着「心も体も満たされたい」冬に向けて"スローセックス"をマスターせよ!オナニーで社会を変える!? TENGAが目指す次なる革命とは?

1991年、ボクらはこんなエロマンガを読んでいた「美少女漫画大百科」

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「美少女漫画大百科」
(辰巳出版/1991年12月)
 今さら言うまでもないが近年、1970年代以降の漫画・アニメを中心とした大衆文化研究が盛んに行われるようになっている。その半面、体系的な史料を手に入れるには困難がともなう。読み捨てられたような昔の漫画やサブカル雑誌は、ごく稀に喉から手が出るほど欲しいというマニアがいる一方、古書業界では「値段がつかない」ことを理由に、ほとんど取り扱ってもらえないからだ。文化研究の中でひとつの重要な軸になるであろう、いわゆるエロ漫画も、10数年前に発行されたものを手に入れようとすると、極めて困難である。書誌情報も明らかでないから、いつ頃、どのような雑誌あるいは単行本が出版されたのか、すべてを知ることは難しい。そのため、96年 91年から始まった成年コミックマーク(黄色い楕円のアレ/90年に出版倫理協議会が導入を決定。マーク付きの第一号は、こばやしてつや、1991/2、『IKENAI!いんびテーション第3巻』講談社 参考資料→橋本健午、2002/11、『有害図書と青少年問題 大人のオモチャだった"青少年"』明石書店・コミック表現の自由を守る会、1993/9、『誌外戦』創出版)が付いていない単行本を見つけたらとりあえず買う。あるいは「Yahoo!オークション」などを丹念にチェックして、やっぱり手当たり次第に買い漁るといった方法しかない。いずれは、明治大学の米沢嘉博記念図書館なんかにまとまって所蔵され、全体像をより簡単に俯瞰できるようになるのだろうけれど、今は手当たり次第買い漁るくらいしか手段はない。  そうした中で今回紹介する「美少女漫画大百科」(辰巳出版)は、全体像を把握する一助になる1冊だ。発行は1991年12月。表紙で「決定版!美少女コミックカタログ」「特選漫画単行本373冊紹介」を謳っている。「特選」とはなっているが、この時点で発行されていた「エロ漫画」単行本の大半を扱っていると思われる。「美少女漫画」とタイトルに銘打っているのに、官能劇画系の単行本も扱っているのだが、やまだのら、永田トマトといった面々も官能劇画のページに分類されているので「定義って難しいなあ......」と考え込んでしまうところだが(実際、迷うよね?)。  定価1,000円とちょっと強気な値段設定をしている本書だが、それだけの価値はある。当時の第一線級の漫画家16人のインタビューがそれだ。
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とにかく、どの写真もみんな若い!
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 掲載されている漫画家を羅列すると、唯登詩樹・亜麻木硅・塔山森(山本直樹)・MEEくん・舞井武依・ITOYOKO・MON-MON・南野琴・飛龍乱・まいなぁぼぉい・幻超二・佐藤丸美・おおぬまひろし・よしだけい・田沼雄一郎・猫島礼の面々である。今でも商業誌やコミケで活躍する面々もいる一方で、すでに鬼籍に入られた方もいるし、まったく作品の発表が途絶えている人も。20年あまりの月日の流れは重い。
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こうした絵柄だとホッ落ち着くのは筆者が歳を取ってしまったからなのか......?
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 それにしても、『魔王の子供達』も『ドラゴンピンク』も『カリーナの冒険』も続きはどうなったんだ。まだ待っているのは筆者だけではないハズ。  ところが、20年の月日を経て、本書で行われているインタビューはむしろ価値があるものになっている。それは、各人にデビューに至る経緯とデビュー作について聞いている部分である。
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わたべ淳の『レモンエンジェル』もアニメ化された時代。
誰が、わたべが『遺跡の人』のような作品を描くと予想できただろうか
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 「明治大学に入学してSF研究会に入ったら、そこにコミケの関係者がいたんです。その人に渋谷のコミケ部屋(4畳半位のアパートの一室に同人誌の見本誌が集めて置いてあった)に連れて行かれて、ロリコンの火つけ役になった"シベール"という同人誌を見せられたんです。それで衝撃を受けまして」と語るまいなぁぼぉい。「コミックホットミルク」(怖マガジン)に読者投稿したら、編集から「仕事を頼む」という手紙をもらったので漫画を描いたという唯登詩樹。デビュー作は森山塔の穴うめだったと語る飛龍乱。はたまたデビュー作は講談社の「モーニング増刊」だったという猫島礼。まさに、人に歴史ありといったところだろう。  さらに、森山塔というか塔山森というか山本直樹が読者に対して「マンガの森ばっかりいってちゃダメだよ。もっと幅広い知識。興味を持ちなさい」とコメントしているのは、ネタなのかマジなのか? このインタビュー、半数近くは顔出ししているのだが、あの漫画家もこの漫画家も昔は若かったんだなと感慨深くなる(猫島礼は除く、念のため)。 ■ここにも忘れられた歴史が眠っている  さらに、本書の価値を高めているのは売れ筋のエロゲーを「美少女パソコンBEST28」として紹介していることだ(パソコン"ゲーム"の誤植かと思うのだが表紙にも目次にも"美少女パソコン"と記載されている、謎だ)。  この時代のエロゲーは、エロ漫画以上にもはや入手するのが困難なものであることは間違いない。『ドラゴンナイト』とか『ランス2』といった有名どころの作品はともかく、全流通やハート電子産業の作品は、今はどうやったら現物を見ることができるのだろうか。念のため、Googleで検索してみたところ、ウィキペディアにはILLUSION(『人工少女』で有名なエロゲーブランド)の項目にハート電子産業の系譜であることが記されていたり、全流通の『艶談』シリーズ(伝説的バカ歴史エロゲー)の項目もあるので、ちゃんと保存しているコレクターがいると信じたいところだ。なお、『電脳学園』の紹介ページで「コミック、アニメ界では著名な人々をスタッフに迎えているシリーズだけに、グラフィック面でも期待大」と記しているのは、ホントに的確だ。
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こうしてみるとヌキゲーって、伝統的に存在してきたジャンルなんだな
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 もうひとつ、巻末に米澤嘉博が「マンガにおける性(SEX)と愛の流れ 戦後"SEXコミック"史試論」と題した文章を寄せていることにも着目したい。ここで米澤は、限られたページの中で昭和20年代からの漫画における性愛表現の変遷を順序立てて解説している。この試論が、後に『戦後エロマンガ史』(2010/青林工藝舎)として結実すると誰が予測し得ただろうか。さらに米澤は、同人誌紹介のページも担当しているが(無署名だが、巻末のスタッフクレジットに阿島俊の表記があるので推定)、ここでは80年代の同人誌の流れについて「(85年頃からのキャプ翼ブームに際して)この女の子たちの圧倒的なパワーの前に、男性のサークルは、衰退していった。それは、クラリス、ラナ、ラムといったロリコンブーム期の少女キャラクターに代わるものを時代が生み出させなかった故でもあるし、商業誌での同人誌的マンガ、エロチックコメディの隆盛のためでもあったろう。なんにしても、85~88年にかけて、男性サークルは元気がなかったのだ。しかし、89年頃よりまた時代は変化し始める。美少女コミック商業誌の衰退、M事件etcがきっかけとなって、男性系創作サークルが増え、従来のサークルが頑張りはじめたのだ」と記されている。
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カタログページを見ると、ゴブリン森口の名前も。諸行無常。
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 どうだろう? この一文の中に「自分たちの知らない歴史が眠っている」と、感じないか?  「『キャプ翼』ブームで、女性向けジャンルが隆盛を極めた」という話は昔語りで聞くこともあるけど、同時期の男性向けジャンルの動向は聞いたことがない。「美少女コミック商業誌の衰退」もどういったものだったのか明瞭に記した文献は見当たらない。失われていく歴史をいかに収集し、整理して保存していくか? それは今でなくてはできないことだと思う。 (文=昼間たかし 文中敬称略)
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夭折した、よしだけい。本気で惜しい才能だったと思う。
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空想美少女大百科―電脳萌え萌え美少女大集合! こちらも90年代アニメ・漫画満載。 amazon_associate_logo.jpg
■「100人にしかわからない本千冊」バックナンバー 【第4回】そして『孤独のグルメ』だけが残った......月刊「PANjA」とB級グルメの栄枯盛衰 【第3回】「いけないCOMIC」1985年1月号大特集 戸川純にただ単にミーハーしたいっ! 【第2回】あの頃、俺たちはこんな本でモテようとしていた『東京生活Qどうする?』 【第1回】超豪華"B級"文化人がロリコンで釣ってやりたい放題『ヘイ!バディー』終刊号

1991年、ボクらはこんなエロマンガを読んでいた「美少女漫画大百科」

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「美少女漫画大百科」
(辰巳出版/1991年12月)
 今さら言うまでもないが近年、1970年代以降の漫画・アニメを中心とした大衆文化研究が盛んに行われるようになっている。その半面、体系的な史料を手に入れるには困難がともなう。読み捨てられたような昔の漫画やサブカル雑誌は、ごく稀に喉から手が出るほど欲しいというマニアがいる一方、古書業界では「値段がつかない」ことを理由に、ほとんど取り扱ってもらえないからだ。文化研究の中でひとつの重要な軸になるであろう、いわゆるエロ漫画も、10数年前に発行されたものを手に入れようとすると、極めて困難である。書誌情報も明らかでないから、いつ頃、どのような雑誌あるいは単行本が出版されたのか、すべてを知ることは難しい。そのため、96年から始まった成年コミックマーク(黄色い楕円のアレ)が付いていない単行本を見つけたらとりあえず買う。あるいは「Yahoo!オークション」などを丹念にチェックして、やっぱり手当たり次第に買い漁るといった方法しかない。いずれは、明治大学の米沢嘉博記念図書館なんかにまとまって所蔵され、全体像をより簡単に俯瞰できるようになるのだろうけれど、今は手当たり次第買い漁るくらいしか手段はない。  そうした中で今回紹介する「美少女漫画大百科」(辰巳出版)は、全体像を把握する一助になる1冊だ。発行は1991年12月。表紙で「決定版!美少女コミックカタログ」「特選漫画単行本373冊紹介」を謳っている。「特選」とはなっているが、この時点で発行されていた「エロ漫画」単行本の大半を扱っていると思われる。「美少女漫画」とタイトルに銘打っているのに、官能劇画系の単行本も扱っているのだが、やまだのら、永田トマトといった面々も官能劇画のページに分類されているので「定義って難しいなあ......」と考え込んでしまうところだが(実際、迷うよね?)。  定価1,000円とちょっと強気な値段設定をしている本書だが、それだけの価値はある。当時の第一線級の漫画家16人のインタビューがそれだ。
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とにかく、どの写真もみんな若い!
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 掲載されている漫画家を羅列すると、唯登詩樹・亜麻木硅・塔山森(山本直樹)・MEEくん・舞井武依・ITOYOKO・MON-MON・南野琴・飛龍乱・まいなぁぼぉい・幻超二・佐藤丸美・おおぬまひろし・よしだけい・田沼雄一郎・猫島礼の面々である。今でも商業誌やコミケで活躍する面々もいる一方で、すでに鬼籍に入られた方もいるし、まったく作品の発表が途絶えている人も。20年あまりの月日の流れは重い。
1000satsu_05_003s.jpg
こうした絵柄だとホッ落ち着くのは筆者が歳を取ってしまったからなのか......?
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 それにしても、『魔王の子供達』も『ドラゴンピンク』も『カリーナの冒険』も続きはどうなったんだ。まだ待っているのは筆者だけではないハズ。  ところが、20年の月日を経て、本書で行われているインタビューはむしろ価値があるものになっている。それは、各人にデビューに至る経緯とデビュー作について聞いている部分である。
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わたべ淳の『レモンエンジェル』もアニメ化された時代。
誰が、わたべが『遺跡の人』のような作品を描くと予想できただろうか
(クリックすると拡大表示します)
 「明治大学に入学してSF研究会に入ったら、そこにコミケの関係者がいたんです。その人に渋谷のコミケ部屋(4畳半位のアパートの一室に同人誌の見本誌が集めて置いてあった)に連れて行かれて、ロリコンの火つけ役になった"シベール"という同人誌を見せられたんです。それで衝撃を受けまして」と語るまいなぁぼぉい。「コミックホットミルク」(怖マガジン)に読者投稿したら、編集から「仕事を頼む」という手紙をもらったので漫画を描いたという唯登詩樹。デビュー作は森山塔の穴うめだったと語る飛龍乱。はたまたデビュー作は講談社の「モーニング増刊」だったという猫島礼。まさに、人に歴史ありといったところだろう。  さらに、森山塔というか塔山森というか山本直樹が読者に対して「マンガの森ばっかりいってちゃダメだよ。もっと幅広い知識。興味を持ちなさい」とコメントしているのは、ネタなのかマジなのか? このインタビュー、半数近くは顔出ししているのだが、あの漫画家もこの漫画家も昔は若かったんだなと感慨深くなる(猫島礼は除く、念のため)。 ■ここにも忘れられた歴史が眠っている  さらに、本書の価値を高めているのは売れ筋のエロゲーを「美少女パソコンBEST28」として紹介していることだ(パソコン"ゲーム"の誤植かと思うのだが表紙にも目次にも"美少女パソコン"と記載されている、謎だ)。  この時代のエロゲーは、エロ漫画以上にもはや入手するのが困難なものであることは間違いない。『ドラゴンナイト』とか『ランス2』といった有名どころの作品はともかく、全流通やハート電子産業の作品は、今はどうやったら現物を見ることができるのだろうか。念のため、Googleで検索してみたところ、ウィキペディアにはILLUSION(『人工少女』で有名なエロゲーブランド)の項目にハート電子産業の系譜であることが記されていたり、全流通の『艶談』シリーズ(伝説的バカ歴史エロゲー)の項目もあるので、ちゃんと保存しているコレクターがいると信じたいところだ。なお、『電脳学園』の紹介ページで「コミック、アニメ界では著名な人々をスタッフに迎えているシリーズだけに、グラフィック面でも期待大」と記しているのは、ホントに的確だ。
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こうしてみるとヌキゲーって、伝統的に存在してきたジャンルなんだな
(クリックすると拡大表示します)
 もうひとつ、巻末に米澤嘉博が「マンガにおける性(SEX)と愛の流れ 戦後"SEXコミック"史試論」と題した文章を寄せていることにも着目したい。ここで米澤は、限られたページの中で昭和20年代からの漫画における性愛表現の変遷を順序立てて解説している。この試論が、後に『戦後エロマンガ史』(2010/青林工藝舎)として結実すると誰が予測し得ただろうか。さらに米澤は、同人誌紹介のページも担当しているが(無署名だが、巻末のスタッフクレジットに阿島俊の表記があるので推定)、ここでは80年代の同人誌の流れについて「(85年頃からのキャプ翼ブームに際して)この女の子たちの圧倒的なパワーの前に、男性のサークルは、衰退していった。それは、クラリス、ラナ、ラムといったロリコンブーム期の少女キャラクターに代わるものを時代が生み出させなかった故でもあるし、商業誌での同人誌的マンガ、エロチックコメディの隆盛のためでもあったろう。なんにしても、85~88年にかけて、男性サークルは元気がなかったのだ。しかし、89年頃よりまた時代は変化し始める。美少女コミック商業誌の衰退、M事件etcがきっかけとなって、男性系創作サークルが増え、従来のサークルが頑張りはじめたのだ」と記されている。
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カタログページを見ると、ゴブリン森口の名前も。諸行無常。
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 どうだろう? この一文の中に「自分たちの知らない歴史が眠っている」と、感じないか?  「『キャプ翼』ブームで、女性向けジャンルが隆盛を極めた」という話は昔語りで聞くこともあるけど、同時期の男性向けジャンルの動向は聞いたことがない。「美少女コミック商業誌の衰退」もどういったものだったのか明瞭に記した文献は見当たらない。失われていく歴史をいかに収集し、整理して保存していくか? それは今でなくてはできないことだと思う。 (文=昼間たかし 文中敬称略)
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夭折した、よしだけい。本気で惜しい才能だったと思う。
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■「100人にしかわからない本千冊」バックナンバー 【第4回】そして『孤独のグルメ』だけが残った......月刊「PANjA」とB級グルメの栄枯盛衰 【第3回】「いけないCOMIC」1985年1月号大特集 戸川純にただ単にミーハーしたいっ! 【第2回】あの頃、俺たちはこんな本でモテようとしていた『東京生活Qどうする?』 【第1回】超豪華"B級"文化人がロリコンで釣ってやりたい放題『ヘイ!バディー』終刊号

"まとめマイスター"で信頼性を認定!? ますます進化する「Togetter」の気になる今後

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 Twitterのつぶやきをまとめるサービス「Togetter」(トゥギャッター)。2009年9月のサービス開始以降、Twitterの広がりとともに発展してきた同サービスは、昨年3月11日に発生した東日本大震災時にも活躍。現在では月間2, 500万PVを誇るサービスに成長した。  今月25日に開催されたリアルイベント「つぶやきメディアサミット2012」では、2011年に注目されたまとめを「メディア」「エンターテインメント」「ドキュメンタリー」「コラムニスト」の4部門で選出。年間大賞である「ゴールデントゥギャり大賞」には、有名人に自身のメルマガの宣伝をお願いするという「公開ステマ」をまとめた「【これはひどい】Twitterで繰り広げられるステマの決定的な証拠」が選ばれ、ツイートした黒田勇樹氏にトロフィーが渡された。  また、東京都の表現規制について子どもの視点で意見をツイートした『ピラメキーノ』(テレビ東京系)出演子役のはるかぜちゃんこと春名風花さんも来場し、おおいに盛り上がった(http://togetter.com/li/79397)。    同イベントでは、「Togetter」の新機能お披露目会も行われ、グループ公開や特定ユーザーのブロック、そして優れたまとめ技術を持つユーザーを対象にした「まとめマイスター」制度などが発表された。  ますます進化する「Togetter」。今後の展開について、開発者・代表の吉田俊明氏にお話を伺った。 ――「Togetter」の誕生から2年が経過し、Twitterユーザーの多くが利用するサービスに成長しました。 吉田俊明氏(以下、吉俊) やはり、Twitterのユーザーが増え、一般化しているということが大きいですね。昨年の東日本大震災ではPVが約1.5倍伸びましたが、これもTwitterの成長に伴っての数字だと認識しています。 ――今回ノミネートされたまとめには、個人が遭遇した面白い事件もありますね。 吉俊 電車に忘れたリュックを、偶然同じ電車に乗り合わせた人が見つける「ツイッタースゲェー」などもそうですし、まとめを使って就職した人もいらっしゃいます。個人が上手に使ってくれているサービスだということがもっと広く認知されてほしいですね。特に企業の方々には、「Togetter」でのPRも想像以上に効果的だとアピールしていきたいと考えています。 ――2010年に宮崎県で起きた口蹄疫のまとめで、Togetterの「メディア」としての価値に気付かれたとのことですが。 吉俊 当時の東国原英夫宮崎県知事や農家の方などが直接Twitterで情報を発信していたため、既存のメディアではなかなか取り上げられない情報がTogetterにまとめられました。そのときに、単に便利なツールとしてだけでなく、ひとつのメディアとしての役割を担っているのではないかと感じました。 ――その一方で「メディア」となると、"信頼性の担保"という問題が出てくると思います。 吉俊 基本的にはそれぞれのコンテンツはまとめた人の判断に拠ることになります。確かに全幅の信頼を置くには心もとないかもしれませんが、かといって無視することもできない。そういった立ち位置が望ましいかな、と考えています。現在では、既存のメディアも2ちゃんねるやTwitterでの情報をソースにしていますし。ただ個人的には、ユーザーには自由にサービスを使ってもらいたいという思いが強いですね。 ――「Togetter」と似たようなサービスとして、「NARVERまとめ」や「Yahoo!くくる」といったサービスも登場しています。差異化をどうお考えでしょうか。 吉俊 「Togetter」はあくまでTwitterのまとめです。それに対し、『NARVERまとめ』などはお役立ち情報が人気を集めている印象がありますね。TIPS(ソフトウエアやハードウエアをうまく使うためのコツや小技のこと)はこれまでもありましたが、「Togetter」は個人がプライベートで自由に使っていけるサービスにしたいと考えています。そして、面白いまとめがあればピックアップして、よりパブリックな情報として引き上げていく、というのが理想的ですね。 ――今回で2回目となるリアルイベントですが、どういった経緯で始まったんですか? 吉俊 まとめた人やまとめられた人に、私が実際に会って話をしてみたい、というのが最大の動機です(笑)。今回で2回目ですが、できれば毎月開催したいですね。私たち運営側とユーザーの皆様との交流をすることによって、より身近なサービスに感じてもらいたいと思っています。 ――新機能も発表されて、「Togetter」を利用するネットメディアも増えています。今後の展開について教えてください。 吉俊 新機能は、ユーザーからのリクエストが多かったので、よりユーザーにとって使いやすいサービスになったのではないかな、と思います。一方で、メディアとしての存在感も大きくなってきているので、「Togetter」から「Yahoo!トピックス」に記事を配信したいですね(笑)。放射線と放射能についてまとめた「うんち・おならで例える原発解説」はマンガ化され、YouTubeに動画が上がり、英語版や中国語版ができるまで広がっていきました。これからもそういった有益な情報の発信元になっていきたいと考えています。 (取材・文=ふじいりょう)
ネット社会の未来像 どんどん進化中。 amazon_associate_logo.jpg
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