
日本動画協会が行う文化庁の支援事業「アニメ・クリエイター育成ビジョンづくり」。そのシンポジウムの様子は以前、当サイトでもお伝えしたが(記事参照)、「東京国際アニメフェア2012」(以下TAF)のビジネスデー2日目、アニメ業界を志す学生を対象に、ずばり「業界への就職」を主題としたセミナーが開催された。このセミナー、TAFの会場で開催されるにもかかわらず、なぜか告知は「育成ビジョンづくり」のサイト上程度。登壇した『アニメビジネスがわかる』(NTT出版)の著者でもある増田弘道氏(日本動画協会データベースWG座長/映画専門大学院大学教授)は、「TAFでも告知されていないイベントにわざわざお越し下さってありがとうございます」とあいさつをした。
このセミナーの趣旨は、アニメ業界を志望する学生に向けて、アニメ業界には具体的にどのような仕事があるのか紹介するというもの。通常、アニメに関わる仕事としてまず思い浮かべるのは、実際の制作に携わるアニメーター。あるいは、指揮を執るアニメプロデューサーといったものだが、実際、アニメ業界の仕事の種類は多種多様だ。単に作品を作って自分の世界を表現したいなら、アーティストになるのが手っ取り早い。これなら、儲けなど考えずにやりたい放題ができる。しかし、多くの人が携わりたいと思っているアニメ業界が扱うのは、アニメーションではなくてアニメ。1960年代に始まった日本式リミテッド・アニメーションによる商業目的の作品だ。要はビジネスが目的なのだから、必要なのは採算と生産性と継続性。中でも生産性はもっとも重要な要素だと、増田氏は説明する。新海誠氏をはじめ、個人で活動するアニメーション作家もいるが、ビジネスを目的とするならば、やはり集団作業は欠かせないのだ。ゆえに、アニメーションではなく、アニメに携わるなら、まずはどこかの会社に所属することから始まるのである。
「制作=作ること」「製作=プロデュースすること」等々、細かい用語の違いまで説明しながら、増田氏は「作るだけなら誰もできる」という。ビジネスである以上、でき上がった作品を運用し、投入した資金を回収、分配することは必然だ。さらに、作品を流通させる過程もあることを考えると、アニメ業界に関わる仕事は無数に存在するのだ。
「制作と製作は無数に入り組んでいます。バンダイやアニプレックスのように製作を主としながら制作にも深く関わる企業があります。かと思えば、アニメイトのように小売りから作る側へとシフトする企業もあります。実は、業界に入るにもいろいろな道があるし、さまざまな形で関わることができるんです」
■意外に仕事が豊富なアニメ業界
かつては、アニメ制作会社は「誰でも就職できる企業」だったという話はよく知られる。面接に行ったらその場で採用決定、翌日から出社というエピソードはよく聞かれるところ。中には、アニメのことなど何も知らず、資格は運転免許だけなのに、制作進行に採用されて、社長になった人もいる。今ではそこまで「ザル」ではなくなったとはいえ、それでも「なんでもいいからアニメに関わる仕事を」と思うのならば、難関ではない。
とはいえ、気になるのは「ちゃんと給料をもらえるのか」というところだろう。増田氏は、制作会社では一般的な初任給は15~20万程度(ボーナスなし)と、一般に考えられているほど悪いものではないと指摘する。一方、アニメ業界の薄給の代表格といえば、アニメーターだが……。
「アニメーターは、本質的にミュージシャンなどと同じ自営業です。そして職業としての“アニメーター”は“原画”の仕事から。“動画”(原画に中割りを加えて清書した線画)は見習い期間で、本来ならばお金がもらえるような存在ではありません」
と、厳しい意見も。ちなみに、動画を3年やって原画になれないならば、適性がないとの指摘も。逆に、制作の現場で「オイシイ仕事」は、著作権があるので印税が入るメリットのある脚本家なのだとか……。さらに、求人数が増加しているのはCG制作だという。
いずれにせよ、アニメーターへの道は厳しいのだが、実写に比べて優遇されているという側面もある。というのは、アニメーターの場合は、制作スタジオが機能し、そこで職業人として育ててくれるからだ。アニメに関わる仕事がしたい学生に向け、増田氏がひとまずの結論として述べたのは、「とりあえず、何か仕事に就いてから目指す方向性について考えていけばよいでしょう」というものだ。
ただし、アニメ業界を志望する人の多くは、アニメファンということになるだろうが、実際に業界で成功するのは、冷静にビジネス的な感覚で携われるタイプの人々だ。いまや小売りから製作にまで携わる、アニメイトの創業陣の前身が家具屋だったように、他業種から転身した人々が成功する理由もこの部分だ。
いずれにしても、単に消費者として終わりたくないけれど、絵も描けないし、なんの技術もないという人であっても、一旦、業界の端っこに入り込むことができれば道は自ずと開けるはず。結局、必要なのは自分が好きではない作品でも「これは面白いんですよ!」と、作ったり売ったりできる、メンタルの強さなのではなかろうか。
(取材・文=昼間たかし)
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【TAF2012】「まずは、入ってから考えろ」アニメ業界に就職する方法は、これだ!

日本動画協会が行う文化庁の支援事業「アニメ・クリエイター育成ビジョンづくり」。そのシンポジウムの様子は以前、当サイトでもお伝えしたが(記事参照)、「東京国際アニメフェア2012」(以下TAF)のビジネスデー2日目、アニメ業界を志す学生を対象に、ずばり「業界への就職」を主題としたセミナーが開催された。このセミナー、TAFの会場で開催されるにもかかわらず、なぜか告知は「育成ビジョンづくり」のサイト上程度。登壇した『アニメビジネスがわかる』(NTT出版)の著者でもある増田弘道氏(日本動画協会データベースWG座長/映画専門大学院大学教授)は、「TAFでも告知されていないイベントにわざわざお越し下さってありがとうございます」とあいさつをした。
このセミナーの趣旨は、アニメ業界を志望する学生に向けて、アニメ業界には具体的にどのような仕事があるのか紹介するというもの。通常、アニメに関わる仕事としてまず思い浮かべるのは、実際の制作に携わるアニメーター。あるいは、指揮を執るアニメプロデューサーといったものだが、実際、アニメ業界の仕事の種類は多種多様だ。単に作品を作って自分の世界を表現したいなら、アーティストになるのが手っ取り早い。これなら、儲けなど考えずにやりたい放題ができる。しかし、多くの人が携わりたいと思っているアニメ業界が扱うのは、アニメーションではなくてアニメ。1960年代に始まった日本式リミテッド・アニメーションによる商業目的の作品だ。要はビジネスが目的なのだから、必要なのは採算と生産性と継続性。中でも生産性はもっとも重要な要素だと、増田氏は説明する。新海誠氏をはじめ、個人で活動するアニメーション作家もいるが、ビジネスを目的とするならば、やはり集団作業は欠かせないのだ。ゆえに、アニメーションではなく、アニメに携わるなら、まずはどこかの会社に所属することから始まるのである。
「制作=作ること」「製作=プロデュースすること」等々、細かい用語の違いまで説明しながら、増田氏は「作るだけなら誰もできる」という。ビジネスである以上、でき上がった作品を運用し、投入した資金を回収、分配することは必然だ。さらに、作品を流通させる過程もあることを考えると、アニメ業界に関わる仕事は無数に存在するのだ。
「制作と製作は無数に入り組んでいます。バンダイやアニプレックスのように製作を主としながら制作にも深く関わる企業があります。かと思えば、アニメイトのように小売りから作る側へとシフトする企業もあります。実は、業界に入るにもいろいろな道があるし、さまざまな形で関わることができるんです」
■意外に仕事が豊富なアニメ業界
かつては、アニメ制作会社は「誰でも就職できる企業」だったという話はよく知られる。面接に行ったらその場で採用決定、翌日から出社というエピソードはよく聞かれるところ。中には、アニメのことなど何も知らず、資格は運転免許だけなのに、制作進行に採用されて、社長になった人もいる。今ではそこまで「ザル」ではなくなったとはいえ、それでも「なんでもいいからアニメに関わる仕事を」と思うのならば、難関ではない。
とはいえ、気になるのは「ちゃんと給料をもらえるのか」というところだろう。増田氏は、制作会社では一般的な初任給は15~20万程度(ボーナスなし)と、一般に考えられているほど悪いものではないと指摘する。一方、アニメ業界の薄給の代表格といえば、アニメーターだが……。
「アニメーターは、本質的にミュージシャンなどと同じ自営業です。そして職業としての“アニメーター”は“原画”の仕事から。“動画”(原画に中割りを加えて清書した線画)は見習い期間で、本来ならばお金がもらえるような存在ではありません」
と、厳しい意見も。ちなみに、動画を3年やって原画になれないならば、適性がないとの指摘も。逆に、制作の現場で「オイシイ仕事」は、著作権があるので印税が入るメリットのある脚本家なのだとか……。さらに、求人数が増加しているのはCG制作だという。
いずれにせよ、アニメーターへの道は厳しいのだが、実写に比べて優遇されているという側面もある。というのは、アニメーターの場合は、制作スタジオが機能し、そこで職業人として育ててくれるからだ。アニメに関わる仕事がしたい学生に向け、増田氏がひとまずの結論として述べたのは、「とりあえず、何か仕事に就いてから目指す方向性について考えていけばよいでしょう」というものだ。
ただし、アニメ業界を志望する人の多くは、アニメファンということになるだろうが、実際に業界で成功するのは、冷静にビジネス的な感覚で携われるタイプの人々だ。いまや小売りから製作にまで携わる、アニメイトの創業陣の前身が家具屋だったように、他業種から転身した人々が成功する理由もこの部分だ。
いずれにしても、単に消費者として終わりたくないけれど、絵も描けないし、なんの技術もないという人であっても、一旦、業界の端っこに入り込むことができれば道は自ずと開けるはず。結局、必要なのは自分が好きではない作品でも「これは面白いんですよ!」と、作ったり売ったりできる、メンタルの強さなのではなかろうか。
(取材・文=昼間たかし)
“覇権”夢幻の如くなり……平成の世に現れた偉大な討死アニメ『ギルティクラウン』

『ギルティクラウン』公式サイトより
「覇権アニメ」というネットで生まれたジャーゴンがある。
ある期間内に放映されたアニメ作品の中で、もっともDVD・BDを売り上げたタイトルのことを指す言葉で、たとえば「『魔法少女まどか☆マギカ』は2011年の覇権アニメ!」のように使う。
「覇権アニメ」が何もないところから生まれてくるケースは極めて珍しい。大ヒット原作のアニメ化(ないしは人気シリーズの最新作)、集客力のあるスタッフ、実力派のスタジオ、人気声優中心のキャスティング、十分な準備期間、入念な広報活動、それらを可能にする潤沢な予算……といったさまざまな要素を積み重ねて整えた下地に、「運」というコントロール不可能な最後の力が加わったとき、アニメファンは大きく揺り動かされ、「覇権アニメ」が生まれる。「努力した者が全て報われるとは限らん/しかし!/成功した者は皆すべからく努力しておる!!」(by鴨川会長@『はじめの一歩』)というヤツである。
先日放送を終えた『ギルティクラウン』(フジテレビ系)は、「覇権アニメ」になるための要素を、必要をはるかに上回る水準で積み上げたタイトルだった。
『マクロスF』を成功に導いたキーパーソンのひとりである吉野弘幸がシリーズ構成を務め、『プラネテス』の大河内一楼が副シリーズ構成として参加するというシナリオの布陣(ちなみにスマッシュヒットを飛ばした『コードギアス 反逆のルルーシュ』では、大河内がシリーズ構成、吉野が副シリーズ構成を担当)。監督は『DEATH NOTE』『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』で名を馳せる俊英・荒木哲郎。制作会社は『攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL』など数々の国際的ヒット作で知られる、世界に冠たる実力派スタジオのプロダクションI.Gキャストも梶裕貴、茅野愛衣、花澤香菜、竹達彩奈といったいずれも主演級の声優を集め、広報やパッケージの展開は「覇権アニメ」の大半を送り出しているアニプレックスが担当。さらにはゲーム会社・ニトロプラスも企画に参加し、『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄と並ぶ同社のメインライターである鋼屋ジンが各話のシナリオとして参加し、キャラクターデザイン原案はpixivを中心にネットで絶大な支持を集めるredjuiceが手がけ、主題歌はこれまたネットユーザーを中心に若者に高い人気を誇るsupercellのryoが書き下ろす。放送枠も『のだめカンタービレ』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などを送り出してきたノイタミナ。どこをとっても失敗するはずのない布陣になっていた。
ところが蓋を開けてみれば、DVD・BD1巻の初動売上枚数は、オリコン等のデータ調べでは1万枚強にとどまった。累計売上が3,000枚を超えればペイライン、5,000枚を超えればヒット作と言われる昨今だが、上述した通りの豪華な布陣から考えて、関係者の期待値は相当高かったことだろう。あわよくば『まどか☆マギカ』級くらいには考えていたかもしれない。その数字は、多少の誤差を考慮しても、大きく下回ってしまった。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
当然の前提として、作品の出来栄えや評価は、売り上げなどの目に見える数字と必ずしも連動するものではない。かの『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』とて、本放送時には打ち切られている。
しかしながら『ギルティクラウン』の場合はどうか。
映像のクオリティは高かった。テレビシリーズとは思えない破格のビジュアルをほぼ毎週堪能することができた。
ところがストーリーがよくわからない。序盤は、アポカリプスウィルスという謎の奇病が蔓延したことで、超国家間で組織された“GHQ”からの武力介入を受け、実質的な自治権を失った近未来の日本を舞台に、「日本の解放」を目指すレジスタンス“葬儀社”にひょんなことから参加することになった平凡な高校生・桜満集(おうま・しゅう)の成長物語の体裁をとって話が進む。だが、集が何を考え、何に迷い、どうなりたいのかがさっぱりわからない。かわいい女の子に振り回されるまま、偶然手にした、他人の心を“ヴォイド”として具現化し、道具として用いる超能力で場当たり的に行動するだけなのだ。
中盤を過ぎ、葬儀社の活動が大きな転換を迎え、その中心に集が位置するようになってから、ようやく彼の行動は視聴者にも理解可能なものになる。弱さを捨て、強いリーダーとなることを目指す少年の姿は、前半の迷走ぶりをすっかり頭から追いやってしまえば魅力的に見えなくもない。ところが、今度は周囲の仲間たちがそんな彼に対して場当たり的なリアクションを繰り返す。あるときは誉めそやすかと思えば、あるときは強硬路線に反対する。まるで現実の政治に対する日本国民の反応を見るかのようで、悪意のある戯画と捉えれば面白くはあるが、そうした裏目読みを試みなければ見ていて混乱するばかりだ。
そして終盤になると、集を中心とする、極めてプライベートな人間関係のいざこざに話は収斂されてしまう。社会や政治に対する要素を後景に追いやり、キャラクターたちの愛憎劇に絞りこむことは、わかりやすい盛り上がりは生むものの、作品に真摯に向き合ってきたファンであればあるほど、怒りを覚えるものだったのではないか。
ようするに、売り上げがいまひとつ伸びなかったのは、作品としての出来の悪さ――主にストーリー展開の難――に起因していると言えそうなのだ。
誤解のないようにして欲しいが、これは吉野・大河内コンビが悪いという話では、おそらくない。誰も主導権を握れず(監督も、プロデューサーも、他のスタッフ陣も、最初から実際に形になったような『ギルティクラウン』が作りたかったようには思えない)、全体の総意から生まれる最適解も作れないまま、企画が迷走してしまった結果なのではないか。もしこの想像が当たっているとしたら、なんとも残念な話である。
「覇権アニメ」を目指し、鉄壁の陣容を揃えながらも、「運」を味方にできなかったために天下は獲れなかった。いうなれば『ギルティクラウン』は、織田信長の如き豪快な討ち死にっぷりを平成の世に示した逸品なのである。そう見立て、無常を噛み締めながら見る分には、『ギルティクラウン』は悪いアニメではない。
滅びの美学に飢えているあなたは、ぜひ手を伸ばしてみてほしい。
(文=麻枝雅彦)
交通網が大混乱でも来場者多数! 「アニメコンテンツエキスポ2012」ついに開催

角川書店やアニプレックスなど55社の企業が出展するイベント「アニメコンテンツエキスポ(ACE)2012」が3月31日(土)、幕張メッセ国際展示場で開幕した。アニメ業界最大級のイベントということで前売り券は売り切れ、わずかな枚数の当日券を求める人で会場は混雑することが予測されていた。しかし、会場に到着するまで、多くの人が長い戦いを強いられることになるとは、誰も予想しなかった……。
当日の午前9時20分頃、筆者は地下鉄日比谷線からJR京葉線八丁堀駅へ向かった。そこで流れるのは無情なお知らせ。

京葉線はもはや動く気配すらなかった。
「強風のため速度を落として運転している」という旨のアナウンスが繰り返し流されているのだ。強風ならば仕方がない。ひとまず駅を出てタバコを一服。さらに、牛丼屋でゆっくりと朝食をとって駅に戻ると、事態はさらに悪化していた。いよいよ運転が中止となり、幕張メッセだけでなく、東京ディズニーランドへ向かう家族連れも多い八丁堀駅の窓口には振替乗車券を求め長い行列ができていたのである。

幕張本郷駅前には次々バスがやってくるが、それでも長い行列が。
こうして幕張メッセまでの長い旅路が始まった。八丁堀駅から地下鉄日比谷線で茅場町駅へ。地下鉄東西線に乗り換えて西船橋駅。ここからJR総武線に乗り換えるも、なかなか列車はやってこない。ようやく列車がやってきたかと思えば、「次の列車は運転を見合わせているので必ずこちらにご乗車下さい」とのアナウンスが。きっと、次の列車に乗ったまま、身動き取れなくなった人が数多くいたことは想像に難くない。そして、ようやく到着した幕張本郷駅。ここから、本来の目的地・京葉線の海浜幕張駅までは臨時バスも運行。次々とバスはやってくるのだが、長大な行列はすぐには動かない。かくて、ようやく会場にたどり着いた時には、時計は12時半を回っていたのである。
もちろん、帰り道も事態は変わっていなかった。海浜幕張駅には、バスを待つ長い長い行列ができていたのだ。さすがに疲れ果てたのか、駅の改札周辺には萌え袋の傍らに、満足そうにぐったりと座り込む人々も見られた。

電車の動かない京葉線・海浜幕張駅で戦利品を手にぐったりとする人々。
■会場は大混雑だが……
ただでさえ都心から離れた幕張メッセ。それに加えて、遠回りを強いられてかなりの人が苦労したはず。それでも、会場内は足の踏み場もないほど大混雑であった。販売ブースによっては2時間待ちになっているところも見られた。コスプレのスペースに至っては、人が多すぎて、コスプレイヤーがどこにいるのかよくわからないほどの混雑に。出展している作品をテーマにしたメニューが並ぶ、フードコーナーは90分待ちの大混雑にも関わらず、一人で何品も買い込む人が多かった。詳細なレポートは、専門のニュースサイトなどで報じられるだろうが、ある程度の額の資金を持っていけば、十分に楽しめるイベントだったのは間違いない。

会場内は大混雑で各ブース共に長い行列ができていた。
そもそもこのイベントは、一昨年に漫画やアニメの表現の自由を侵害する可能性があると批判を浴びた「東京都青少年健全育成条例」の改正問題が発端となったものだ。
この条例正案が可決されるに至り、小学館や集英社などで構成するコミック10社会は、東京都が主催する「東京国際アニメフェア(TAF)」のボイコットを決定。この状況の中でアニプレックスや角川書店などを中心としてACEが立ち上がった経緯がある。その後、昨年は、両イベントの同日開催が注目を集めるものの、東日本大震災によって両イベントとも中止。今年は一週間ずらした日程での開催となった。
以前から双方の主催者共に「分裂」という見方を避け、「棲み分け」というスタンスを示していたが、そのことは会場を訪れてよく理解できた。TAFは、アニメもアニメーションも包括して扱う、ビジネスを主体にした見本市志向。対してACEは、アニメのプロモーションとファンサービスを目的としたお祭りである。都条例がきっかけだったとはいえ、TAFの低年齢・家族向けアニメやアニメーションにオタク向けまで、ごった煮でやっていた状況はうまく整理できたのは確かだろう。来年以降、今年のような別開催になるのか、あるいは再びTAFに統合されるのかはわからない。それはアニメ業界にとって、どちらが利益があるか次第であろう。先に開催されたTAFの側は、前回よりも来場者数は減ったものの、海外からの来場者数は増加するという結果となった。ACEの側も、単に来場者数だけでなく、属性なども含めて、どのような結果を示すのか気になるところだ(印象で語ると、全体的に若年層が多い印象を受けた)。

海浜幕張駅から幕張本郷駅にも再び行列が。
ちなみに、ACEで配布されたパンフレットにも、会場内の出展にも都条例や表現の自由に関するものは、一切存在しなかった。あくまで「ファンに向けたお祭り」であることを考えれば、そうしたものはなくて一向に構わない。仮に、会場内に「表現規制反対!」なんて横断幕が垂れ下がっていたとしたら、多くの来場者が無粋に感じるに違いない。
まだ、多少不備な点も見られたが、ファンに向けたお祭り、番組改編期にあたっての総合的なプロモーションイベントとしては、大変充実したものになっているといえる。来年以降どうなるかも注目していきたい。
(取材・文=昼間たかし)
交通網が大混乱でも来場者多数! 「アニメコンテンツエキスポ2012」ついに開催

角川書店やアニプレックスなど55社の企業が出展するイベント「アニメコンテンツエキスポ(ACE)2012」が3月31日(土)、幕張メッセ国際展示場で開幕した。アニメ業界最大級のイベントということで前売り券は売り切れ、わずかな枚数の当日券を求める人で会場は混雑することが予測されていた。しかし、会場に到着するまで、多くの人が長い戦いを強いられることになるとは、誰も予想しなかった……。
当日の午前9時20分頃、筆者は地下鉄日比谷線からJR京葉線八丁堀駅へ向かった。そこで流れるのは無情なお知らせ。

京葉線はもはや動く気配すらなかった。
「強風のため速度を落として運転している」という旨のアナウンスが繰り返し流されているのだ。強風ならば仕方がない。ひとまず駅を出てタバコを一服。さらに、牛丼屋でゆっくりと朝食をとって駅に戻ると、事態はさらに悪化していた。いよいよ運転が中止となり、幕張メッセだけでなく、東京ディズニーランドへ向かう家族連れも多い八丁堀駅の窓口には振替乗車券を求め長い行列ができていたのである。

幕張本郷駅前には次々バスがやってくるが、それでも長い行列が。
こうして幕張メッセまでの長い旅路が始まった。八丁堀駅から地下鉄日比谷線で茅場町駅へ。地下鉄東西線に乗り換えて西船橋駅。ここからJR総武線に乗り換えるも、なかなか列車はやってこない。ようやく列車がやってきたかと思えば、「次の列車は運転を見合わせているので必ずこちらにご乗車下さい」とのアナウンスが。きっと、次の列車に乗ったまま、身動き取れなくなった人が数多くいたことは想像に難くない。そして、ようやく到着した幕張本郷駅。ここから、本来の目的地・京葉線の海浜幕張駅までは臨時バスも運行。次々とバスはやってくるのだが、長大な行列はすぐには動かない。かくて、ようやく会場にたどり着いた時には、時計は12時半を回っていたのである。
もちろん、帰り道も事態は変わっていなかった。海浜幕張駅には、バスを待つ長い長い行列ができていたのだ。さすがに疲れ果てたのか、駅の改札周辺には萌え袋の傍らに、満足そうにぐったりと座り込む人々も見られた。

電車の動かない京葉線・海浜幕張駅で戦利品を手にぐったりとする人々。
■会場は大混雑だが……
ただでさえ都心から離れた幕張メッセ。それに加えて、遠回りを強いられてかなりの人が苦労したはず。それでも、会場内は足の踏み場もないほど大混雑であった。販売ブースによっては2時間待ちになっているところも見られた。コスプレのスペースに至っては、人が多すぎて、コスプレイヤーがどこにいるのかよくわからないほどの混雑に。出展している作品をテーマにしたメニューが並ぶ、フードコーナーは90分待ちの大混雑にも関わらず、一人で何品も買い込む人が多かった。詳細なレポートは、専門のニュースサイトなどで報じられるだろうが、ある程度の額の資金を持っていけば、十分に楽しめるイベントだったのは間違いない。

会場内は大混雑で各ブース共に長い行列ができていた。
そもそもこのイベントは、一昨年に漫画やアニメの表現の自由を侵害する可能性があると批判を浴びた「東京都青少年健全育成条例」の改正問題が発端となったものだ。
この条例正案が可決されるに至り、小学館や集英社などで構成するコミック10社会は、東京都が主催する「東京国際アニメフェア(TAF)」のボイコットを決定。この状況の中でアニプレックスや角川書店などを中心としてACEが立ち上がった経緯がある。その後、昨年は、両イベントの同日開催が注目を集めるものの、東日本大震災によって両イベントとも中止。今年は一週間ずらした日程での開催となった。
以前から双方の主催者共に「分裂」という見方を避け、「棲み分け」というスタンスを示していたが、そのことは会場を訪れてよく理解できた。TAFは、アニメもアニメーションも包括して扱う、ビジネスを主体にした見本市志向。対してACEは、アニメのプロモーションとファンサービスを目的としたお祭りである。都条例がきっかけだったとはいえ、TAFの低年齢・家族向けアニメやアニメーションにオタク向けまで、ごった煮でやっていた状況はうまく整理できたのは確かだろう。来年以降、今年のような別開催になるのか、あるいは再びTAFに統合されるのかはわからない。それはアニメ業界にとって、どちらが利益があるか次第であろう。先に開催されたTAFの側は、前回よりも来場者数は減ったものの、海外からの来場者数は増加するという結果となった。ACEの側も、単に来場者数だけでなく、属性なども含めて、どのような結果を示すのか気になるところだ(印象で語ると、全体的に若年層が多い印象を受けた)。

海浜幕張駅から幕張本郷駅にも再び行列が。
ちなみに、ACEで配布されたパンフレットにも、会場内の出展にも都条例や表現の自由に関するものは、一切存在しなかった。あくまで「ファンに向けたお祭り」であることを考えれば、そうしたものはなくて一向に構わない。仮に、会場内に「表現規制反対!」なんて横断幕が垂れ下がっていたとしたら、多くの来場者が無粋に感じるに違いない。
まだ、多少不備な点も見られたが、ファンに向けたお祭り、番組改編期にあたっての総合的なプロモーションイベントとしては、大変充実したものになっているといえる。来年以降どうなるかも注目していきたい。
(取材・文=昼間たかし)
早くも「漢」が立ち上がった――老舗同人誌即売会・ガタケット存続の危機を救え!

あのガタケットが危ないって!?
新潟県で1983年以来続く、全国でも指折りの老舗同人誌即売会・ガタケットが存続の危機に陥っている。新潟県は、全国でも珍しい自治体の主催による「にいがたマンガ大賞」が行われており、応募作の表現の豊かさは全国的にも注目を集めている。新潟にそうした豊かな文化が育った背景に、主催団体にも名を連ねるガタケットの存在があることは間違いない。また、イベントを運営するガタケット事務局代表の坂田文彦氏(マンガ大賞実行委員会の副会長でもある)は、同人誌即売会の唯一の全国組織である「全国同人誌即売会連絡会」の発起人にも名を連ね、同会の連絡先はガタケット事務局になっている。
筆者も拙著『マンガ論争』(マイクロマガジン社)シリーズの共著者・永山薫氏と共に何度か訪問しているし、坂田氏にも幾度も取材を行っている。理念もあり、地域に根ざしたイベントであることは間違いないし、坂田氏の冷めることのない熱気にも触れている。そんなガタケットが存続の危機とは! 「寝耳に水」とは、まさにこういうこと。さっそく、坂田氏に話を聞くことに。
いきなり携帯に電話して取材を試みた筆者に、坂田氏は丁寧に対応してくれた。やはり、もっとも気になるのは、危機に至った経緯だ。
坂田氏によれば、原因は2007年の新潟県中越沖地震までさかのぼるという。この地震に加え水害があったことで、この年のガタケット来場者は減少した。さらに、2つの災害から立ち直っていない08年には、リーマンショックによって新潟県内の経済状況もかなり悪化した。このことはいまだに尾を引いていて、上越・中越地域からの来場者が、ごっそりと減ってしまったのだという。
リーマンショックによって、それまで無借金経営だったガタケットは、銀行からの借り入れを行う。そこに追い打ちをかけるように襲ったのが、昨年の東日本大震災だ。直接的な被害はなかったものの、震災直後の3月21日に予定されていた「ガタケット114」は中止となる。これによって、資金繰りがかなり困難になったという。ガタケットは例年、年6回の開催だ。うち、ひとつが中止になるということは、実質、2カ月分の運転資金が吹き飛んでしまうといってよい。
こうした状況の中で、坂田氏は公式サイトに「サークルの皆さんヘ」と題した文章を発表。この中で、坂田氏は「ここ数年の参加サークル数でこのまま推移していくとなると、ガタケットの運営維持は向こう1年以内に行き詰まります」と記す。これに加え、例年のスケジュールならば5月半ばから5月末に予定されていた開催日が、会場の都合で4月29日にせざるを得なかったことも述べている。翌30日は、東京で大規模な同人誌即売会が開催される予定もあり、参加サークル数は危うい。そうした状況を述べた上で坂田氏は「事ここに至り、参加者の皆さんのお力添えをお願いしなければならない状況となり、ガタケットの深刻な現状をありのままにお伝えさせて頂く事としました。もし皆さんが今後のガタケットの存続を願い、ご協力を頂けるのであれば、不都合の多い日程である事は十二分に承知していますが、どうか『ガタケット121』へのサークル参加をお願い致します」と呼びかける。
坂田氏は。ガタケットの危機的状況を、公にした理由を次のように語る。
「ガタケットもコミックマーケットと同じく古い歴史を持ち、運営スタッフ、サークル、一般参加者が一体になって作ってきたイベントです。ですから、運営状況が深刻になっていることは伝えなくてはならないと判断したんです。新潟市にも、こうした発表を行っても市に不都合はないか確認した上での発表です。参加者と一緒になって、これからどうすべきかを考えたいと思っています」
この危機に、いち早く立ち上がったのが同人誌専門印刷会社「有限会社ねこのしっぽ」の内田朋紀社長だ。内田氏は、即座にTwitterで「ねこのしっぽを利用したことがあるお客様でこれから4/29開催のガタケット121にサークル参加をしたいと考えている方は当社経由で参加申込をして頂けましたら即売会参加費を当社が負担します。2600円と微々たる支援ですが是非よろしくお願いします」とツイートした。内田氏は話す。
「(坂田氏は)“お気持ちだけいただきます”とおっしゃいましたが、何かしら支援したいと思っています。ガタケットは首都圏でも少なくなった、誰でも気軽に足を運ぶことができるオールジャンルの同人誌即売会です。今回だけでなく、今後も支援をしていかなければならないと思いますが、せっかくの機会ですので多くの参加者に足を運んでほしいと思っています」
詳細は3月30日に同社サイトに公開された。ちなみに、過去に利用したことがある人ならば、今回は同社へ同人誌の印刷を申し込まなくてもよい。なんとも太っ腹な支援だ。
新潟に豊かな漫画文化の土壌を育てたガタケットは、さまざまな点で魅力の尽きないイベントだ(コスプレイヤーにストッキング着用必須の規制がない点も含む)。直接参加が難しい人には、委託参加(同人誌の販売を運営に委託すること)という方法もある。でも、ぜひ一度は訪れて昼の儀式(正午になるとアニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』のテーマ曲が流れ、サビの部分で、参加者が拍手で音頭を取る)も味わってほしいぞ。
(取材・文=昼間たかし)
●ガタケット公式サイト
<http://gataket.com/>
●有限会社ねこのしっぽ
<http://www.shippo.co.jp/neko/>
大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは?

『機動戦士ガンダムAGE』公式サイトより
2011年10月、ゲーム界のヒットメーカー「レベルファイブ」とアニメ制作会社「サンライズ」がタッグを組み、鳴り物入りでスタートした『ガンダム』シリーズ最新作『機動戦士ガンダムAGE』(MBS・TBS系)の不振が止まらない。
『ガンダムAGE』は放送開始当初より、高年齢層のガンダムファンに向けた歴代ガンダムをオマージュしたような設定やストーリーが繰り広げられる一方、子ども向けを狙ったキャラクターとシリアスなキャラが同居するちぐはぐな画面や、ご都合主義な展開や矛盾点が多数。大人向けと子ども向けの“いいとこ取り”を狙いつつも、いまひとつ練り込みの足りない作品の仕上がりに、熱心なガンダムファンから多くの批判と落胆の声が上がっていた。
しかし、小学生男児向けの漫画雑誌「コロコロコミック」(小学館)とのタイアップを行っていることからもうかがえるように「従来のガンダムファンから子どもまで幅広い層をターゲットとしたガンダム」という路線を打ち出す同作だけに、ネット上では「大人のガンダムファンではなく子どもに受けているはず!」と主張する擁護派と批判派の対立がしばしば発生している。
ところが実際に量販店や模型店を覗いてみると、どの店頭でも『ガンダムAGE』関連のプラモデルやおもちゃの箱がうず高く積み上げられており、『ガンダムAGE』のプラモデル「アドバンスドグレード」をゲーム筺体にセットすることで対戦が楽しめるゲーム機「ゲイジングバトルベース」は常にガラガラ。子どもに大ヒットしているとは言い難い光景が繰り広げられている。
だが、1月4日にはフジテレビ系列の情報バラエティ番組『めざにゅ~』にて、「日経トレンディ」誌の編集者・渡辺敦美氏が「2012年にヒットするグッズ」の一つとして、プラモデル「アドバンスドグレード」を挙げていたことから、「もしかして本当は『ガンダムAGE』は売れているのか?」といった戸惑いがネット上で噴出していた。
また、レベルファイブ社長兼シリーズ構成の日野晃博氏による、ガンダムファンを挑発するようなツイートもしばしば炎上。アニメ放送開始から半年近くが経過しながらも、アニメ本編よりも周辺事情のほうが「面白い」という本末転倒な状況が長らく続いている。
■低迷するソフト売上
そんな『ガンダムAGE』論争に大きな波紋をもたらしたのが、2月10日に発売された初回限定生産のBlu-ray『機動戦士ガンダムAGE 第1巻 【豪華版】』の売り上げ枚数である。3,000~4,000枚売れればヒットといわれるアニメのBlu-ray&DVD市場において、常に数万枚規模の初動売り上げを記録し続けるドル箱的存在の『ガンダム』テレビシリーズ作品だが、Blu-ray『機動戦士ガンダムAGE 第1巻 【豪華版】』はなんと初動売上枚数1,991枚を記録。累計枚数も2300枚超と見事に大コケしてしまったのだ。
また、某レンタルチェーン店関係者は、
「通常『ガンダム』シリーズのタイトルは非常に高い回転率を記録するため、かなりの本数を各店舗に入荷しますが、『ガンダムAGE』はあまり入荷しませんでした。ランクとしてはほとんど回転しない、マニア向けアニメと同じくらいですね。それでも商品が足りないという意見は聞きません」
とコメント。その滑りっぷりは相当深刻なようだ。
■子どもの意見が反映された第2部
玩具やプラモデルなどのグッズ販促番組としての性格が強い子ども向けアニメは、ソフト売り上げがそのまま作品の人気につながっているとは言い難い。逆にいうと、いくら高い年齢層のアニメファンにソフトが売れたとしても、メインターゲットたる子どもたちに受けて、彼らにグッズを買ってもらえなければ、そのコンテンツが成功したとはいえないのだ。
しかし『ガンダムAGE』の世代別視聴率を見てみると、4~12歳の男女を対象としたKID層は常に低く、「測定不能」を記録することもしばしば。お世辞にも「『ガンダムAGE』が子どもに受けている」とは言い難い状況である。
実際のところ、玩具やプラモデルなどグッズの売り上げも不振らしく、メインスポンサーたる株式会社バンダイも『ガンダムAGE』の展開にかなりの危機感を放送開始直後より察知。かなり早い段階でKID層の子どもたちに「『ガンダムAGE』がなぜ面白くないのか」というアンケートを取っていたそうだ。
「メインターゲットである子どもたちに受けていないのは、放送開始直後から感じていました。そこで、実際にアンケートを取ってみたのですが、子どもたちからは『そもそも戦争という題材がよく理解できない』『コロニーや宇宙での生活というものに親しみが持てない』という意見が多く出てきたんです」(『ガンダムAGE』制作関係者)
この「戦争がわからない」「コロニーや宇宙での生活というものに親しみが持てない」という子どもたちの意見を受けて生まれたのが、第2部冒頭に盛り込まれた学園ドラマだという。
「学園ドラマを描くことで、子どもたちが主人公の生活に親しみを持ってほしい」というスタッフの思惑が、そこにはあったそうだが視聴率は相変わらず低迷。KID層の支持も上向いているとは言い難い状況は続いている。
■求められる「異端のガンダム」
そもそも「戦争」や「コロニー」「宇宙」というキーワードは「ガンダム」という作品を形成する重要な概念である。
それらが子どもたちに受け入れられなくなりつつある、ということは「ガンダム」というブランドが今後子どもたちに受け入れられなくなる、という可能性も示唆しているともいえる。
時代性を取り入れつつ、シーズンごとにドラスティックな変化を続けるゼロ年代以降の『仮面ライダー』シリーズのように、『ガンダム』シリーズも変革をする時が近づいているのではないだろうか。
これまでも「ガンダム」シリーズが低迷した時、格闘技を取り入れた熱血少年マンガ風なストーリーが展開した『機動武闘伝Gガンダム』、世界名作劇場を思わせる牧歌的な世界観で深い人間ドラマを描いた『ターンエーガンダム』など、異端と呼ばれる「ガンダム」が、ガンダムファンに衝撃をもたらし、新たな「ガンダム像」を提示しシリーズを存続させてきた。
「ガンダム」というタイトルに思い入れのない子どもたちが増えつつある今、旧態依然とした「ガンダム」を提示する『ガンダムAGE』が彼らに受け入れられないのは当然ともいえる。
そんな子どもたちに「ガンダム」をアピールするために、そして今後も「ガンダム」ブランドを存続させるためにも、今こそ新たな「異端のガンダム」が求められているのかもしれない。
(文=龍崎珠樹)
映画マニアもうなるスタイリッシュな映像美『ドライヴ』

(C)2011 Drive Film Holdings, LLC. All rights reserved.
今週は、新進俳優たちによる見応えたっぷりの演技が楽しめる話題作2本を紹介したい。ともに小説を原作とするフィクションのドラマ映画だが、アメリカ社会のリアルな面を映し出す秀作でもある。
3月31日公開の『ヘルプ 心がつなぐストーリー』は、人種差別が根強い1960年代初頭の米国南部ミシシッピ州を舞台に、白人女性の熱意と黒人メイドたちの勇気が旧態依然とした町を変える様子を描く感動のドラマ。作家になることを夢見て、地元新聞社に就職したスキーター(エマ・ストーン)。白人上流社会によるメイドへの扱いに疑問を抱いた彼女は、「黒人メイドの現実を伝える本を書こう」と思い立つ。黒人が差別に抗議すると身の危険を招く時代だけに、スキーターの取材に応じるメイドはなかなか現れない。だが、エイビリーン(ビオラ・デイビス)がインタビューを受ける決意をしたことで、状況は少しずつ変わり始める。
本作は第84回アカデミー賞で作品賞にノミネートされたほか、ビオラ・デイビスが主演女優賞候補に。さらに、エイビリーンのメイド仲間ミニーを演じたオクタビア・スペンサーが助演女優賞を受賞、ミニーを雇う白人女性シーリア役のジェシカ・チャスティンも助演女優賞にノミネートされた。シリアスなテーマが描かれているものの、ミニーが繰り広げる騒動などユーモアもほどよく配分され、泣いたり笑ったりしながら女優陣の競演を堪能できる。題名の『ヘルプ』は“お手伝いさん”を指すが、本の出版で彼女らの立場を改善しようと奮闘するスキーターの“援助”にも重なる。悩み苦しみながらも自分が正しいと信じることをやり抜く、その想いが人々をつなげることで、やがて大きな力になる。悩める現代の私たちを、優しく励まし、助けてくれる温かな作品だ。
同じく3月31日に封切られる『ドライヴ』(R15+指定)は、ライアン・ゴズリング(『ラースと、その彼女』)が主演のクライムサスペンス。天才的な運転テクニックを持つ“ドライバー”は、昼は映画のカースタント、夜は強盗の逃走を請け負う寡黙な男。同じアパートに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)と出会い、互いに引かれ合うが、ほどなくアイリーンの夫スタンダードが服役を終え戻ってくる。多額の借金を負ったスタンダードに懇願され、彼の強盗実行を助けることにしたドライバーだったが、押し入った店で予期せぬ事態が発生する。
口数が少なく、どんな状況下でもポーカーフェイスを保ち、名前さえ明かされない謎めいた男という難役を、ゴズリングが見事に演じきっている。クールに車を操るアクション、アイリーンとその息子に垣間見せる優しさ、そして内なる衝動に駆られるかのように爆発させる暴力。スタイリッシュな映像でゴズリングの新境地を引き出したのは、デンマーク出身の新鋭ニコラス・ウィンディング・レフン監督。疾走感を巧みに表現したカーチェイスシーンと、静かなシークエンスで不意に訪れる過激なバイオレンス描写は、卓越した映像センスを確かに感じさせる。昨年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した本作は、娯楽アクション大作のような過剰な派手さこそないものの、映画マニアもうならせる実力派の1本だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』作品情報
<http://eiga.com/movie/56860/>
『ドライヴ』作品情報
<http://eiga.com/movie/57216/>
映画マニアもうなるスタイリッシュな映像美『ドライヴ』

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今週は、新進俳優たちによる見応えたっぷりの演技が楽しめる話題作2本を紹介したい。ともに小説を原作とするフィクションのドラマ映画だが、アメリカ社会のリアルな面を映し出す秀作でもある。
3月31日公開の『ヘルプ 心がつなぐストーリー』は、人種差別が根強い1960年代初頭の米国南部ミシシッピ州を舞台に、白人女性の熱意と黒人メイドたちの勇気が旧態依然とした町を変える様子を描く感動のドラマ。作家になることを夢見て、地元新聞社に就職したスキーター(エマ・ストーン)。白人上流社会によるメイドへの扱いに疑問を抱いた彼女は、「黒人メイドの現実を伝える本を書こう」と思い立つ。黒人が差別に抗議すると身の危険を招く時代だけに、スキーターの取材に応じるメイドはなかなか現れない。だが、エイビリーン(ビオラ・デイビス)がインタビューを受ける決意をしたことで、状況は少しずつ変わり始める。
本作は第84回アカデミー賞で作品賞にノミネートされたほか、ビオラ・デイビスが主演女優賞候補に。さらに、エイビリーンのメイド仲間ミニーを演じたオクタビア・スペンサーが助演女優賞を受賞、ミニーを雇う白人女性シーリア役のジェシカ・チャスティンも助演女優賞にノミネートされた。シリアスなテーマが描かれているものの、ミニーが繰り広げる騒動などユーモアもほどよく配分され、泣いたり笑ったりしながら女優陣の競演を堪能できる。題名の『ヘルプ』は“お手伝いさん”を指すが、本の出版で彼女らの立場を改善しようと奮闘するスキーターの“援助”にも重なる。悩み苦しみながらも自分が正しいと信じることをやり抜く、その想いが人々をつなげることで、やがて大きな力になる。悩める現代の私たちを、優しく励まし、助けてくれる温かな作品だ。
同じく3月31日に封切られる『ドライヴ』(R15+指定)は、ライアン・ゴズリング(『ラースと、その彼女』)が主演のクライムサスペンス。天才的な運転テクニックを持つ“ドライバー”は、昼は映画のカースタント、夜は強盗の逃走を請け負う寡黙な男。同じアパートに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)と出会い、互いに引かれ合うが、ほどなくアイリーンの夫スタンダードが服役を終え戻ってくる。多額の借金を負ったスタンダードに懇願され、彼の強盗実行を助けることにしたドライバーだったが、押し入った店で予期せぬ事態が発生する。
口数が少なく、どんな状況下でもポーカーフェイスを保ち、名前さえ明かされない謎めいた男という難役を、ゴズリングが見事に演じきっている。クールに車を操るアクション、アイリーンとその息子に垣間見せる優しさ、そして内なる衝動に駆られるかのように爆発させる暴力。スタイリッシュな映像でゴズリングの新境地を引き出したのは、デンマーク出身の新鋭ニコラス・ウィンディング・レフン監督。疾走感を巧みに表現したカーチェイスシーンと、静かなシークエンスで不意に訪れる過激なバイオレンス描写は、卓越した映像センスを確かに感じさせる。昨年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した本作は、娯楽アクション大作のような過剰な派手さこそないものの、映画マニアもうならせる実力派の1本だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』作品情報
<http://eiga.com/movie/56860/>
『ドライヴ』作品情報
<http://eiga.com/movie/57216/>
映画マニアもうなるスタイリッシュな映像美『ドライヴ』

(C)2011 Drive Film Holdings, LLC. All rights reserved.
今週は、新進俳優たちによる見応えたっぷりの演技が楽しめる話題作2本を紹介したい。ともに小説を原作とするフィクションのドラマ映画だが、アメリカ社会のリアルな面を映し出す秀作でもある。
3月31日公開の『ヘルプ 心がつなぐストーリー』は、人種差別が根強い1960年代初頭の米国南部ミシシッピ州を舞台に、白人女性の熱意と黒人メイドたちの勇気が旧態依然とした町を変える様子を描く感動のドラマ。作家になることを夢見て、地元新聞社に就職したスキーター(エマ・ストーン)。白人上流社会によるメイドへの扱いに疑問を抱いた彼女は、「黒人メイドの現実を伝える本を書こう」と思い立つ。黒人が差別に抗議すると身の危険を招く時代だけに、スキーターの取材に応じるメイドはなかなか現れない。だが、エイビリーン(ビオラ・デイビス)がインタビューを受ける決意をしたことで、状況は少しずつ変わり始める。
本作は第84回アカデミー賞で作品賞にノミネートされたほか、ビオラ・デイビスが主演女優賞候補に。さらに、エイビリーンのメイド仲間ミニーを演じたオクタビア・スペンサーが助演女優賞を受賞、ミニーを雇う白人女性シーリア役のジェシカ・チャスティンも助演女優賞にノミネートされた。シリアスなテーマが描かれているものの、ミニーが繰り広げる騒動などユーモアもほどよく配分され、泣いたり笑ったりしながら女優陣の競演を堪能できる。題名の『ヘルプ』は“お手伝いさん”を指すが、本の出版で彼女らの立場を改善しようと奮闘するスキーターの“援助”にも重なる。悩み苦しみながらも自分が正しいと信じることをやり抜く、その想いが人々をつなげることで、やがて大きな力になる。悩める現代の私たちを、優しく励まし、助けてくれる温かな作品だ。
同じく3月31日に封切られる『ドライヴ』(R15+指定)は、ライアン・ゴズリング(『ラースと、その彼女』)が主演のクライムサスペンス。天才的な運転テクニックを持つ“ドライバー”は、昼は映画のカースタント、夜は強盗の逃走を請け負う寡黙な男。同じアパートに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)と出会い、互いに引かれ合うが、ほどなくアイリーンの夫スタンダードが服役を終え戻ってくる。多額の借金を負ったスタンダードに懇願され、彼の強盗実行を助けることにしたドライバーだったが、押し入った店で予期せぬ事態が発生する。
口数が少なく、どんな状況下でもポーカーフェイスを保ち、名前さえ明かされない謎めいた男という難役を、ゴズリングが見事に演じきっている。クールに車を操るアクション、アイリーンとその息子に垣間見せる優しさ、そして内なる衝動に駆られるかのように爆発させる暴力。スタイリッシュな映像でゴズリングの新境地を引き出したのは、デンマーク出身の新鋭ニコラス・ウィンディング・レフン監督。疾走感を巧みに表現したカーチェイスシーンと、静かなシークエンスで不意に訪れる過激なバイオレンス描写は、卓越した映像センスを確かに感じさせる。昨年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した本作は、娯楽アクション大作のような過剰な派手さこそないものの、映画マニアもうならせる実力派の1本だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』作品情報
<http://eiga.com/movie/56860/>
『ドライヴ』作品情報
<http://eiga.com/movie/57216/>





