知る人ぞ知る8bitアーティスト・サカモト教授が丸裸に!?『サカモト教授完全攻略本』

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『サカモト教授 完全攻略本』
 近頃、ゴールデン番組などで、頭にファミコンを載せてマントを身に纏った人物を見たことがないだろうか。“サカモト教授”と呼ばれる彼は、2007年頃からニコニコ動画などでファミコン音楽を演奏する姿を発信、その後、ニコニコ生放送や全国各地でのライブを通して徐々にファンを増やしていった。もちろん、本家・坂本龍一氏とは無関係で、名字が坂本だったところからサカモト教授を自称するようになったといわれている。昨年、オリジナルアルバム『SKMT』(LASTRUM)をリリースしてメジャーデビューを果たして以降は、『コネクト』(NHK総合)や、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)など多数のメディアに出演して広く認知されつつある。  サカモト教授の人気の秘密は、大きく分けて3つ。全ファミコン世代の心の琴線に触れるピコピコ音楽の演奏、そのおかしな風貌、そして最大の特徴ともいえる、ファンとの距離の近い交流だ。ライブやニコ生で感動的な演奏を披露しておきながら、Twitter等で「ウ●コ」「おっぱ●」などの言葉を悪びれなく発言してファンと絡む親しみやすいキャラクターが、カルト的な人気を誇っている。そんなファンたちの後押しもあり、『サカモト教授完全攻略本』(徳間書店)が発売されるに至った。
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ライブでは、頭にファミコンを載せて
ゲーム音楽を演奏するサカモト教授。
 本書の目玉は、ファイナルファンタジーシリーズの作曲者・植松伸夫氏とサカモト教授との対談と、サカモト教授ロングインタビューの2つ。植松氏との対談では、2人の原点となる音楽についてや、FFとドラクエ音楽の違い、音楽の制作環境に、2人の考える自己プロデューステクニックなどが語られている。  この調子で、てっきり真面目路線で作られた本なのかと思いながら、対談の次の章「サカモト教授ロングインタビュー」を読み進めると、徐々に様子がおかしくなってきた。「人生で初めてつけられたニックネームは“ウンコ食い”」「自分、小学生の頃、めちゃめちゃウンコが好きだったんです」、小学生のときに描いていた漫画は『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』と、まあ“ウンコ”という単語の出てくる回数の多いこと! サカモト少年はウンコ好きだったため、漫画『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』の設定ではウンコ軍が正義の味方だったという。
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幼きサカモト教授作『“ウンコ軍とバキューム
軍”の戦い』。世界がウンコまみれになる漫画
だったのだろうか……?
 それにしても、小学生という生き物はたいていがウンコ好きと相場が決まっているが、これほどまでに数多くのウンコエピソードを語られると、サカモト教授のウンコ好きは、生半可な気持ちだったわけではないのだとよく分かる。そんな愛に溢れたウンコエピソードの中で、筆者が最も感動を覚えたのは、小学3年生のときに彼が書いた作文である(以下、p38より原文ママ掲載)。 <きのう、あさ、学校に行くとき、うんこが三つならんで、とうせんぼを、していた。でも、しらんぷりして、とおった。ぼくは、学校で、 「帰りもあるかなあ。」 と、思った。ぼくは、しんぱいだった。でも、帰り、ちゃんと、ありました。つぎの日、あさ見に行ったら、うんこがきえていた。ぼくは、 「ほそみちが、さみしくなったな。」>  この作文は、担任の先生に「すごい感性だ!」と言わしめたほどの名作。ある日の登校中、ホヤホヤのウンコが雨に打たれるのを見たサカモト少年。その日の作文の授業で、朝見かけたウンコを心配する気持ちをしたためたのだそうな。ウンコ話ひとつで担任を感激させるとは、おそろしい小学生である。  そして、本の後半は、今までにサカモト教授が出したアルバム3枚のライナーノーツのほか、「サカモト教授のいきつけ 新宿ランチマップ」や、「サカモト教授の処女小説『コタツクロニクル』」(筆名:坂本概阿)、「サカモト教授のコスプレギャラリー」など、サカモト教授ファンに向けた小ネタページがたっぷり。また、ファンからの投稿ページでは、「ちょっとエッチが過ぎる。うらやまけしからん」(ryzさん)、「エロモト教授」(東京都・てんちょさん)、などのイジられ方をしているメッセージが目立っていた。  結局、全体を通して最も印象に残ったのは、ウンコ好きな一面と、エロモト教授な一面。ところが、最後のページについているサカモト教授作曲の未発表音源CD「prof.skmtレアドロップス」を聞くと、今までのウンコやエロモトがすべて帳消しになるくらいのカッコよさに打ち震えたのだった。こんな曲作っちゃうなんて……今まで散々ウンコウンコ言ってたくせに、ズルイ! この、カッコよさとカッコ悪さの絶妙なバランスが、熱狂的なファンの心を掴んで離さないのだろう。ぜひともいつか、これらの曲を使って、『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』のRPGを作ってほしい。 (文=朝井麻由美) ■サカモト教授公式サイト <http://p.sk-mt.com/>

知る人ぞ知る8bitアーティスト・サカモト教授が丸裸に!?『サカモト教授完全攻略本』

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『サカモト教授 完全攻略本』
 近頃、ゴールデン番組などで、頭にファミコンを載せてマントを身に纏った人物を見たことがないだろうか。“サカモト教授”と呼ばれる彼は、2007年頃からニコニコ動画などでファミコン音楽を演奏する姿を発信、その後、ニコニコ生放送や全国各地でのライブを通して徐々にファンを増やしていった。もちろん、本家・坂本龍一氏とは無関係で、名字が坂本だったところからサカモト教授を自称するようになったといわれている。昨年、オリジナルアルバム『SKMT』(LASTRUM)をリリースしてメジャーデビューを果たして以降は、『コネクト』(NHK総合)や、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)など多数のメディアに出演して広く認知されつつある。  サカモト教授の人気の秘密は、大きく分けて3つ。全ファミコン世代の心の琴線に触れるピコピコ音楽の演奏、そのおかしな風貌、そして最大の特徴ともいえる、ファンとの距離の近い交流だ。ライブやニコ生で感動的な演奏を披露しておきながら、Twitter等で「ウ●コ」「おっぱ●」などの言葉を悪びれなく発言してファンと絡む親しみやすいキャラクターが、カルト的な人気を誇っている。そんなファンたちの後押しもあり、『サカモト教授完全攻略本』(徳間書店)が発売されるに至った。
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ライブでは、頭にファミコンを載せて
ゲーム音楽を演奏するサカモト教授。
 本書の目玉は、ファイナルファンタジーシリーズの作曲者・植松伸夫氏とサカモト教授との対談と、サカモト教授ロングインタビューの2つ。植松氏との対談では、2人の原点となる音楽についてや、FFとドラクエ音楽の違い、音楽の制作環境に、2人の考える自己プロデューステクニックなどが語られている。  この調子で、てっきり真面目路線で作られた本なのかと思いながら、対談の次の章「サカモト教授ロングインタビュー」を読み進めると、徐々に様子がおかしくなってきた。「人生で初めてつけられたニックネームは“ウンコ食い”」「自分、小学生の頃、めちゃめちゃウンコが好きだったんです」、小学生のときに描いていた漫画は『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』と、まあ“ウンコ”という単語の出てくる回数の多いこと! サカモト少年はウンコ好きだったため、漫画『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』の設定ではウンコ軍が正義の味方だったという。
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幼きサカモト教授作『“ウンコ軍とバキューム
軍”の戦い』。世界がウンコまみれになる漫画
だったのだろうか……?
 それにしても、小学生という生き物はたいていがウンコ好きと相場が決まっているが、これほどまでに数多くのウンコエピソードを語られると、サカモト教授のウンコ好きは、生半可な気持ちだったわけではないのだとよく分かる。そんな愛に溢れたウンコエピソードの中で、筆者が最も感動を覚えたのは、小学3年生のときに彼が書いた作文である(以下、p38より原文ママ掲載)。 <きのう、あさ、学校に行くとき、うんこが三つならんで、とうせんぼを、していた。でも、しらんぷりして、とおった。ぼくは、学校で、 「帰りもあるかなあ。」 と、思った。ぼくは、しんぱいだった。でも、帰り、ちゃんと、ありました。つぎの日、あさ見に行ったら、うんこがきえていた。ぼくは、 「ほそみちが、さみしくなったな。」>  この作文は、担任の先生に「すごい感性だ!」と言わしめたほどの名作。ある日の登校中、ホヤホヤのウンコが雨に打たれるのを見たサカモト少年。その日の作文の授業で、朝見かけたウンコを心配する気持ちをしたためたのだそうな。ウンコ話ひとつで担任を感激させるとは、おそろしい小学生である。  そして、本の後半は、今までにサカモト教授が出したアルバム3枚のライナーノーツのほか、「サカモト教授のいきつけ 新宿ランチマップ」や、「サカモト教授の処女小説『コタツクロニクル』」(筆名:坂本概阿)、「サカモト教授のコスプレギャラリー」など、サカモト教授ファンに向けた小ネタページがたっぷり。また、ファンからの投稿ページでは、「ちょっとエッチが過ぎる。うらやまけしからん」(ryzさん)、「エロモト教授」(東京都・てんちょさん)、などのイジられ方をしているメッセージが目立っていた。  結局、全体を通して最も印象に残ったのは、ウンコ好きな一面と、エロモト教授な一面。ところが、最後のページについているサカモト教授作曲の未発表音源CD「prof.skmtレアドロップス」を聞くと、今までのウンコやエロモトがすべて帳消しになるくらいのカッコよさに打ち震えたのだった。こんな曲作っちゃうなんて……今まで散々ウンコウンコ言ってたくせに、ズルイ! この、カッコよさとカッコ悪さの絶妙なバランスが、熱狂的なファンの心を掴んで離さないのだろう。ぜひともいつか、これらの曲を使って、『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』のRPGを作ってほしい。 (文=朝井麻由美) ■サカモト教授公式サイト <http://p.sk-mt.com/>

“ふるさとをあきらめない”詩人が耳を傾ける、25人の福島の現実

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『ふるさとをあきらめない—
フクシマ、25人の証言—』(新潮社)
 2011年10月17日、作家・高橋源一郎はTwitter上で展開する「午前0時の小説ラジオ」で、このようにツイートした。 「その分断線は誰が引いたのか。ぼくたちが自分の手で引いたのだ。その、いったん引かれた分断線は、二度と消えることがないのだろうか。分断線を越えること、分断線を消すことは不可能なのだろうか。自分が引いた分断線から、ぼくたちは出ることができないのだろうか」  東日本大震災は、日本中のほとんどすべての人々に深い断絶をもたらした。東日本/西日本、東北/首都圏、原発推進/脱原発、そして、被災者か否か。詩人・和合良一の新刊『ふるさとをあきらめない—フクシマ、25人の証言—』(新潮社)は、福島の「被災者」たちへのインタビューで構成されている。酪農家、アナウンサー、カフェ経営者、主婦、パチンコ店、それぞれ立場の違う25人が、和合に自身の震災の経験を語る。  現在では3万人あまりが県外に流出してしまったものの、震災直前に「福島県民」と呼ばれる人々は200万人を数えた。そのほとんど全員が、あの日を境に「被災者」と呼ばれるようになった。しかし、広大な面積を持つ福島県には、一言では言い表すことができないほど多様な被災者たちが存在する。津波で家を流された者、原発事故により避難生活を強いられている者、風評被害に苦しめられている農家、さまざまなレイヤーによって「福島の被災者」という総体は織りなされているのだ。和合は、そんな違いを持った彼らの声に丹念に耳を傾ける。「3月11日午後2時46分を、どのように受け止めたのか」「どんな生き方をしていきたいのか」という2つの大きな質問を軸に、対話は進んでいく。  福島が直面する「原発事故」に対しても、そのスタンスはさまざまだ。「子どもを守るために」と避難をした者もいる。あるいは「新しい環境は子どものストレスになるから」と福島にとどまった者もいる。「原発は即時撤廃させなければならない」と息巻く被災者も、「仕方がないのではないか」とあきらめ顔の被災者もいる。  松田文は37歳、いわき在住の介護士であり、仕事中に震災に直面した。毎時23マイクロシーベルトの放射線量を恐れ、彼女の勤める作業所は一時東京に避難した。しかし、東京で避難生活を送っていた彼女の気持ちは休まらなかった。 「受ける側というか、被災者の『被』っていう立場でただ何もせずにいる状況はどうなのかな、と。なんかこう、自分の中で擦り切れてくる部分があって。人として失っていく何かが、尊厳っていうか、なんて表現すればいいんだろう」(本文より)  そして、原発事故をきっかけに国やメディアに対しての信頼を失った彼女は、自分が子どもを授かることも「やっぱり厳しいかな」と思っているという。 「遺伝子に傷がつくんじゃないかとか。生んだ子どもが健康だとしても、次の世代、その次の世代を考えた場合、やっぱり何か影響が出てくるんじゃないかとか」(本文より)  そして、「個人的には私は福島、郡山はもう人が住むべきではないと思っている」という率直な気持ちを明かす。活字なので、その語り口はわからないものの、おそらくそこにはさまざまな感情が渦巻いているはずだ。  和合は、「福島県民は福島に残らず『避難したほうがいい』」という、ある文学者の言葉を読み、苛立ったという。その言葉はあたかも、避難する者/しない者の間にきっぱりと線を引き、福島に残ることが無知であると語っているかのように感じたからだ。しかし、詩人はただ苛立っているだけではない。その苛立ちを祈りに変えて、新たな言葉を紡ぎ上げる。あとがきで、和合はこう語る。 「ここに込められているインタビューの集合体に、いつしか私の震災の日々の思考を、他者の言葉であらゆる限りに込めたいと願うようになった。自分ではなく誰かに語ってもらったものに<宿る>何かこそが真実だと確信した」  その意味で、本書のインタビューは、和合にとっての新たな「作品」である。  「被災者ではない」我々は、いとも容易く「被災者の気持ちを考えろ」というような言葉を発してしまう。しかし、それは「被災者」として分断線を引かれた人々を一様にしかとらえられていない。「被災者」などという人間は存在しない。そこには「被災した人間」が存在しているのだ。そんな分断線を乗り越えるために、本書は刊行された。分断線を乗り越えた先には、とても単純ではあるものの、時として忘れがちな「福島の人々」の姿が浮かび上がってくる。 ●わごう・りょういち 1968年福島生まれ。福島市在住。詩人。高校の国語教師。『AFTER』(思潮社)で中原中也賞受賞。『地球頭脳詩篇』(思潮社)で晩翠賞受賞。2011年3月11日、伊達市にある学校で被災。避難所で数日過ごした後、自宅からTwitterで詩を発信し続け大反響を呼ぶ。近著に、『詩の礫』(徳間書店)、『詩の邂逅』(朝日新聞出版)、『詩ノ黙礼』(新潮社)など。Twitterは今も続けられている。

“ふるさとをあきらめない”詩人が耳を傾ける、25人の福島の現実

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『ふるさとをあきらめない—
フクシマ、25人の証言—』(新潮社)
 2011年10月17日、作家・高橋源一郎はTwitter上で展開する「午前0時の小説ラジオ」で、このようにツイートした。 「その分断線は誰が引いたのか。ぼくたちが自分の手で引いたのだ。その、いったん引かれた分断線は、二度と消えることがないのだろうか。分断線を越えること、分断線を消すことは不可能なのだろうか。自分が引いた分断線から、ぼくたちは出ることができないのだろうか」  東日本大震災は、日本中のほとんどすべての人々に深い断絶をもたらした。東日本/西日本、東北/首都圏、原発推進/脱原発、そして、被災者か否か。詩人・和合良一の新刊『ふるさとをあきらめない—フクシマ、25人の証言—』(新潮社)は、福島の「被災者」たちへのインタビューで構成されている。酪農家、アナウンサー、カフェ経営者、主婦、パチンコ店、それぞれ立場の違う25人が、和合に自身の震災の経験を語る。  現在では3万人あまりが県外に流出してしまったものの、震災直前に「福島県民」と呼ばれる人々は200万人を数えた。そのほとんど全員が、あの日を境に「被災者」と呼ばれるようになった。しかし、広大な面積を持つ福島県には、一言では言い表すことができないほど多様な被災者たちが存在する。津波で家を流された者、原発事故により避難生活を強いられている者、風評被害に苦しめられている農家、さまざまなレイヤーによって「福島の被災者」という総体は織りなされているのだ。和合は、そんな違いを持った彼らの声に丹念に耳を傾ける。「3月11日午後2時46分を、どのように受け止めたのか」「どんな生き方をしていきたいのか」という2つの大きな質問を軸に、対話は進んでいく。  福島が直面する「原発事故」に対しても、そのスタンスはさまざまだ。「子どもを守るために」と避難をした者もいる。あるいは「新しい環境は子どものストレスになるから」と福島にとどまった者もいる。「原発は即時撤廃させなければならない」と息巻く被災者も、「仕方がないのではないか」とあきらめ顔の被災者もいる。  松田文は37歳、いわき在住の介護士であり、仕事中に震災に直面した。毎時23マイクロシーベルトの放射線量を恐れ、彼女の勤める作業所は一時東京に避難した。しかし、東京で避難生活を送っていた彼女の気持ちは休まらなかった。 「受ける側というか、被災者の『被』っていう立場でただ何もせずにいる状況はどうなのかな、と。なんかこう、自分の中で擦り切れてくる部分があって。人として失っていく何かが、尊厳っていうか、なんて表現すればいいんだろう」(本文より)  そして、原発事故をきっかけに国やメディアに対しての信頼を失った彼女は、自分が子どもを授かることも「やっぱり厳しいかな」と思っているという。 「遺伝子に傷がつくんじゃないかとか。生んだ子どもが健康だとしても、次の世代、その次の世代を考えた場合、やっぱり何か影響が出てくるんじゃないかとか」(本文より)  そして、「個人的には私は福島、郡山はもう人が住むべきではないと思っている」という率直な気持ちを明かす。活字なので、その語り口はわからないものの、おそらくそこにはさまざまな感情が渦巻いているはずだ。  和合は、「福島県民は福島に残らず『避難したほうがいい』」という、ある文学者の言葉を読み、苛立ったという。その言葉はあたかも、避難する者/しない者の間にきっぱりと線を引き、福島に残ることが無知であると語っているかのように感じたからだ。しかし、詩人はただ苛立っているだけではない。その苛立ちを祈りに変えて、新たな言葉を紡ぎ上げる。あとがきで、和合はこう語る。 「ここに込められているインタビューの集合体に、いつしか私の震災の日々の思考を、他者の言葉であらゆる限りに込めたいと願うようになった。自分ではなく誰かに語ってもらったものに<宿る>何かこそが真実だと確信した」  その意味で、本書のインタビューは、和合にとっての新たな「作品」である。  「被災者ではない」我々は、いとも容易く「被災者の気持ちを考えろ」というような言葉を発してしまう。しかし、それは「被災者」として分断線を引かれた人々を一様にしかとらえられていない。「被災者」などという人間は存在しない。そこには「被災した人間」が存在しているのだ。そんな分断線を乗り越えるために、本書は刊行された。分断線を乗り越えた先には、とても単純ではあるものの、時として忘れがちな「福島の人々」の姿が浮かび上がってくる。 ●わごう・りょういち 1968年福島生まれ。福島市在住。詩人。高校の国語教師。『AFTER』(思潮社)で中原中也賞受賞。『地球頭脳詩篇』(思潮社)で晩翠賞受賞。2011年3月11日、伊達市にある学校で被災。避難所で数日過ごした後、自宅からTwitterで詩を発信し続け大反響を呼ぶ。近著に、『詩の礫』(徳間書店)、『詩の邂逅』(朝日新聞出版)、『詩ノ黙礼』(新潮社)など。Twitterは今も続けられている。

ニコニコ生放送『白石稔のアキバなう!』第3回レポート! from 「小悪魔の宴 LittleBSD」

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左からみずしな孝之、白石稔、桃野はるな
 テレビアニメ『未来日記』の高坂王子役、『日常』のしゃべる猫・阪本さんや『らき☆すた』の本人をモチーフにしたキャラクター・白石みのる役などで味のある演技を聞かせてくれる声優・白石稔が、世界に名だたるサブカルチャーの街・秋葉原のトレンドをお伝えするニコニコ生放送番組『白石稔のアキバなう!』(共演は、みずしな孝之[漫画家]、桃野はるな[声優見習い])。その第3回目の放送が3月19日、公開生放送としてバンブーちゃんねるで行われた。  プライベートで秋葉原探訪をするほどの秋葉原通である白石が今回訪れたのは、今年で開店8周年という老舗コスプレ居酒屋「小悪魔の宴 LittleBSD」。出演者3人は多くの来客と一緒にオリジナルカクテルで乾杯を交わし、まるで気心知れた仲間との飲み会のような気楽なノリで生放送がスタートした。 ■オリジナルカクテルでニコ生スタート!  今回3人が訪れたコスプレ居酒屋「小悪魔の宴 LittleBSD」は、店員が全員コスプレイヤー。店内には常時50着程度の衣装が用意されているほか、店員の中には自前の衣装を持ち込んで接客する「ガチ」なコスプレイヤーもいるという。  そんな生粋のオタクが揃った同店からは美人店員・あげはチャンが、白石たちがオーダーしたオリジナルカクテルを持って出演。 C51C7702.jpg  白石は「暑苦しいかつ爽快な感じ」もしくは「突き抜けた暑苦しさ」。みずしなは「ベイスターズブルーの中に熱い闘志が燃えるカクテル」。桃野は「少女マンガに出てくるようなふんわり優しい王子さまがふいに見せた鬼畜な笑みのような、見た目と味にギャップのあるカクテル」といった、自由気ままなオーダーにもばっちり応えたカクテルをそれぞれ手にして、まずは乾杯!  完全に身内の飲み会のようなノリに、観客も一緒にグラスを掲げて番組に参加した。 ■豊富なメニューでステージはすっかりパーティー会場!?  「LittleBSD」の魅力は、コスプレ店員ばかりではない。ということで、豊富なメニューに目移りする面々。コロッケなどの定番の揚げ物からスイーツなど、一体何が刺さっているのか誰にも分からない「闇串」や、一つだけ辛い味が交じっている揚げ物「ロシアン肉球」など、パーティー気分を盛り上げるオリジナルメニューが続々登場し、ステージ上は大騒ぎとなる。  中でも衝撃的な辛さが食べた者の喉を直撃する「闇スープ」では、辛い物に耐性のある桃野以外の出演者はその味に絶句。このスパイシーな味わいを会場で共有すべく、桃野がフロアに降りて観客に「あ~ん」。燃える辛さと萌えるサービスに、男性客は顔を真っ赤にして悶えるばかりであった。  また、ビッグサイズのコロッケ「ジャンボコ●助」に、白石が演じた人気キャラクターの似顔絵をソースでサラッと描き上げたあげはチャンに、会場からは驚きの声と称賛の拍手が起こった。 C51C7808.jpg  そして番組のラストでは、番組開始当初に注文していた「小悪魔哺乳瓶プリン」が到着。「今日はあんまり下ネタを言ってないな」と、みずしなもぼやいた今回の放送だが、ここで白石はピンク色の哺乳瓶に入れられたプリンを、みずしなの胸元から吸引! しっかりとお下品な画面を日本中のモニタに映し出し、今回の放送は終了となった。  放送3回目にして、初めて観客と絡みながらの放送となった『白石稔のアキバなう!』。放送終了後、「公開収録をお客さんに見てもらうというのはよくあるんですが、絡んでもらうっていうのはあまりない経験だったので新鮮でした」と白石はコメントした。共演者も同様の感想を抱いたらしく、今回はファンと一緒になって番組を楽しめた様子だ。 ■ここがおススメ! レギュラー's チェックポイント! 白石稔「料理はおいしいし、女の子もかわいいのにオタク方面の知識が豊富で、素晴らしいお店ですね。店内もすごく広いので、アニメファンじゃなくても憩いの場として使えると思います。末広町駅のすぐ近くなので、ぜひ皆さんもお越しください」 みずしな孝之「お店のおススメポイントとしては、ご飯がおいしいし、お酒のクオリティーが高いってところですね。とくにオリジナルカクテルは僕好みの味なので、定番メニューに入れてほしいくらいです。次はもうちょっとコスプレ衣装にも注目して、じっくり楽しみたいです」 桃野はるな「お店の魅力は、なんといってもかわいい女の子のコスプレです。自前の衣装を持っている方もいるということで、いつ来ても違う衣装が見られるのかなという楽しみがあると思います。おススメ料理はロシアン肉球ですかね。皆さんもちゃんとリアクションを取って食べてほしいです」

“人妻溺愛文明”の謎が明らかに!? おふざけバラエティ『ジョージ・ポットマンの平成史』

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『ジョージ・ポットマンの平成史Vol.1』「人妻史」より
 この3月まで放送されていた教養風バラエティ番組『ジョージ・ポットマンの平成史』(テレビ東京系)。歴史学部教授で日本近現代史専攻のジョージ・ポットマンなるイギリス人(実在しない)が、平成時代を“歴史”と捉え紹介。「ファミコン史」「巨乳史」「ブログ・ツイッター史」「パワースポット増え過ぎ史」など、さまざまな平成史を、毎週取り上げてきた。  教養風バラエティ番組といえば、1990~91年に放送され人気を博した『カノッサの屈辱』(フジテレビ系)を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、『ジョージ・ポットマンの平成史』のおふざけレベルはその比ではなく、さすがテレビ東京、シャレの分かる大人のための上質な番組といっていいだろう。
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「スカートめくり史」より
 そんな同番組のDVDが、4月18日に2巻同時発売。Vol.1では、放送回から「人妻史」「白ブリーフ史」「性教育史」、Vol.2では「童貞史」「スカートめくり史」「ラブドール史」を収録。とくに人気の高かったエッチな回ばかりが収められている。  「人妻史」では、エロ市場で大きなパイを占める平成の人妻人気を多角度から考察。平成の日本は「一億総人妻溺愛文明」であると定義し、その背景や人妻の魅力を、人妻AV女優や、人妻風俗嬢らに話を聞きつつ探っていく。  また、鹿鳴館外交による「夫人=エロい」という言語イメージの誕生経緯や、「人妻ナース」「人妻女教師」「団地妻」など、「人妻」や「妻」を付けることで途端にエロくなる日本人の言語感覚を紹介。その理由を、原題が『エマニエル』にもかかわらず、わざわざ『エマニエル夫人』という邦題を付けた事例などを取り上げながらひも解いていく。
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「白ブリーフ史」より
 同じくVol.1に収録されている「白ブリーフ史」では、1970年代、サーフィンブームの訪れで「浜辺で着替える際に股間がモッコリするのが恥ずかしい」と、衰退の一途をたどる運命となった白ブリーフを研究。いまや、一部のお年寄りと汁男優くらいしか身に着けることのなくなってしまった絶滅寸前のそれを丁寧に見直していく。  ここではAV界の重鎮・村西とおる監督が登場。「ムスコを強調するベストの下着が、ブリーフでございます」と自ら白ブリーフ姿で熱く訴える。その際、村西の話を真剣に聞きながら、「エキベン?」「ガンメンシャワー?」と聞きなれない日本語をいちいち復唱するジョージ・ポットマン。不覚にも彼のことを、次第に愛らしく感じてしまうことだろう。
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「ラブドール史」より
 さらに、どこから見つけてきたのか、元チェッカーズの鶴久政治が「白いブリーフって、温室育ちの人生のシンボルだよね」と白ブリーフを糾弾し、トランクスを推奨する昔の雑誌記事を紹介。ブリーフ文化衰退の原因として、突然、鶴久が取り上げられるこの場面は、DVDの中でも名場面といえるだろう。  DVD『ジョージ・ポットマンの平成史』には、ほかにも映像特典として、テレビ未放送の「ピンクチラシ史」(Vol.1)などを収録。番組を見ていた人も、そうでない人も、平成時代がもうすぐ四半世紀を迎えようとする今、ジョージ・ポットマンと共に時代を見つめ直してみてはいかがだろうか(半笑いで)。 (文=林タモツ)

「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号

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『夏色キセキ』公式サイトより
 番組改編期の4月に突入し、新たなアニメが続々スタートした今日この頃。眠れぬ夜を過ごしているアニメファンも多いことだろう。  今クールはおよそ40タイトルの新作アニメが放送を開始しており、個性的なキャラクターたちが日々テレビモニターを賑やかに盛り上げている。  その中でも、いろいろな意味でアニメファン注目の一作となっているのが、女子中学生たちのひと夏の物語を描く『夏色キセキ』(MBSほか)である。  本作は、『けいおん!』で一世を風靡した豊崎愛生、寿美菜子も所属する声優アイドルユニット「スフィア」の4人がメインヒロインを演じており、結成当初より実現を目指していた企画でもある。いわば、「スフィアが主演するために作られたアニメ」なのだ。  そのため、キャラクターデザインや性格付けをはじめ、各メンバーのユニット内での立ち位置などパブリックイメージを連想させるような部分が多々あり、声優ファンならずともニヤニヤする箇所が随所に盛り込まれている。  また、素朴な少女たちの友情を描く上で、自然が豊かで懐かしさもある風景が必要、という理由から舞台を静岡県下田市に設定。昨今の聖地巡礼(アニメの舞台となった実際の場所を訪問する行為)ブームを強く意識しているほか、近年、萌えアニメとのコラボに積極的なローソンとのタイアップを実現。劇中に「これでもか」と登場する下田市の風景や、ローソンの店舗が登場するなど、マーチャンダイジングにも積極的に取り組んでいる姿勢がうかがえる。  そんな、“覇権アニメ”として成功することを宿命付けられた『夏色キセキ』だが、地上波での放送に先駆け、ニコニコ動画内で第1話の先行配信が行われた。ここでの視聴者の反応はというと、「微妙」の一言に尽きる。  配信終了後のアンケート結果も「とても良かった」が18.5%、「まぁまぁ良かった」が31.8%、「あまり良くなかった」が27.9%、「良くなかった」が21.9%と実に微妙なもの。その結果を見た本作を手がける水島精二監督も、「賛否両論、受け止めて、最後までがんばりますよー!」(抜粋)と本放送前の作品にしては控えめな表現のツイートを投下していた。  そもそも、なぜ本作がそんな「微妙」な評価になってしまったのだろうか。  考えられる大きな理由としては、「スフィア声優演じる美少女キャラたちがほのぼのした日常を送る、予定調和を前提とした萌えアニメを期待してフタを開けてみたら、ことごとくがその逆をいく作品だった」ことが挙げられるだろう。  第1話のあらすじは、小学校の頃から仲良しだった4人の女子中学生の関係が、少しずつギクシャクしていく……。という物語の導入としては、やや地味でシリアスなものとなっている。  とくに、寿美菜子演じるメインヒロイン・逢沢夏海と高垣彩陽演じる水越紗季の間には、冒頭から不穏な空気が漂っており、物語後半では戸松遥演じる花木優香、豊崎愛生演じる環凛子も巻き込まれ、事態は泥沼化。さらに一生懸命明るい空気にしようとする優香の行動が滑りまくり、見る側としては「これ、どうしたらいいんだよ……」と絶望感すら感じてしまうほどの閉塞感が物語を覆う。  ここから作品のイメージをポジティブな方向に持っていくには、それこそ奇跡が起きない限り無理だと誰もが思ったとき、「4人が同時に同じ願い事をすると叶う」という御石様の力で、いきなり4人は空を飛んでしまうのだ。  なんという奇跡! この予想の斜め上をいく超展開で第1話の幕は下りるのだ。  「萌えアニメ」というよりも、古き良きジュブナイル作品のような趣を感じさせるストーリーである。  事実、本作をSF(すこしふしぎ)ドラマとして見れば、非常にオーソドックスな作りであり、手堅い作風に仕上がっていることに多くの視聴者は気付くはずだ。ただ不幸なことに、「視聴者がそういうものを求めていなかった」ために「微妙な評価」に落ち着いてしまったのではないだろうか。  「スフィア演じるキャラが戯れている姿を見たい」という視聴者からしたら、見たかったのはコレジャナイというわけである。  また、タイアップのせいで劇中で不自然に強調されるローソンや地元の名所も、ステマ臭を感じさせて視聴者を引かせてしまった部分もあるだろう。制作スタッフは王道な作劇を試みたものの、その周辺や視聴者側との微妙なズレが不幸な評価を生んでしまったといえる。  しかし、それをもって本作を「失敗作」と断じてしまうのは早計である。むしろ「スフィア」「萌え」「ご当地アニメ」といったキャッチーなトピックが、『夏色キセキ』という作品の正当な評価を妨げていたとはいえないだろうか。  ここはひとつ、ネット上での評価や過去のスキャンダルといったマイナス要因をとりあえず横に置いて、フラットな気持ちで改めて見てみれば、本作の面白さを感じることができるのではないだろうか。 (文=龍崎珠樹) ■バックナンバー 【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは? 【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

「風俗の割引券でもOK!?」“期限切れクーポンで50円引き”のはなまるうどんに潜入調査!

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いろんなクーポンを持って来たけど……。
 4月某日、日刊サイゾー編集部のK女史から突然電話がかかってきた。「あらっ、デートのお誘いかしらん」と恋の予感を感じながらドキドキ電話を取ったところ、「北村さん、期限切れのクーポン券って持ってますか?」というザ・業務連絡。 「えーっと、財布の中を漁れば2、3枚はあると思いますけど」 「じゃあ、それを持ってきてください!」  トータル会話時間、約50秒……。恋の予感はシュルシュルとしぼんでいくのを感じながら、集合場所である「はなまるうどん・渋谷センター街店」に向かうことに。  渋谷への移動中、財布の中をゴソゴソやってみると案の定、ハンバーガー屋やネイルサロン(なぜもらった!?)、風俗など、とっくに期限が切れているクーポン券をザクザク発見。それにしても、使える期間中だったら非常にお得なクーポン券だけど、期限が切れてたらただの紙キレ同然……こんなのなんに使うんだろう? 「実は、はなまるうどんで期限切れのクーポン券を使えるキャンペーンをやっているんですよ」 「え……でも、ボクが持ってきたのは、はなまるうどんのクーポン券じゃないですよ!? それどころか風俗とかのだし……」 「それが、大丈夫なんですよー!」
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「期限切れクーポン大復活祭」とは一体!?
 と、スタスタ店内に入っていくK女史……何言ってるの!? ちょっと暖かくなってきたからって、頭の中がお花畑状態になっちゃってるんじゃないでしょうね。
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どんな期限切れクーポンでも使えるらしい……ホント!?
 不安になりながらお店に突入したものの、店内にズドーンと貼り出されたポスターには「期限切れクーポン大復活祭」なる文字が! なんと、日本全国どんな期限切れクーポンを持って行っても、お好きなメニューから50円引き(300円以上の注文の場合)となるキャンペーンらしいのだ。  いやいやいや……この不景気の世の中、そんなに甘い話があるハズないだろう。百歩譲って「はなまるうどんの期限切れクーポン券が使えますよ」くらいのキャンペーンなら理解できるけど、他店の期限切れクーポン券なんで持ってこられても、はなまるうどんになんの得があるっていうんだよ!? 「ホラホラ、早く注文して下さいよ。ちゃんとクーポン券を使わなきゃダメですからね!」
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どれを食べようか……。
 K女史にうながされるまま、きつねうどんを注文してしまったが、いくら「どんなクーポン券でも」といったって、風俗のクーポン券じゃダメでしょ、常識的に考えて。うどん屋さんで風俗のクーポン券なんて出した日にゃあ、「なんですかコレ!? アヒャヒャヒャヒャーッ」とか大爆笑されるのがオチだよ……。
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ふ……風俗のクーポン券ですけど……。
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う、受け取ってもらえたーッ
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ちゃんと50円割引になっています。
 眉にツバをべっとりと塗りつけて、半信半疑のまま風俗のクーポン券(期限切れ)をスッと差し出すと……「ありがとうございます」と受け取ってくれた! もちろん、出てきたレシートを確認しても、ちゃんと50円引かれている。ホントに期限切れの、しかもはなまるうどんとまったく関係のないお店のクーポン券を持って行っても割引してもらえるんだ!  行くつもりもなかった、いつもらったのかも忘れちゃったようなクーポン券で50円割引になるなんて、得しちゃったなぁー! ……とは思うものの、正直、まだキツネに騙されてるんじゃないかという気持ちでいっぱい。……きつねうどんだけにね!(ウマイねー)
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いっただきマース!
 しかし、一体なんのために、こんなぶっ飛んだキャンペーンを企画したのだろうか。株式会社はなまる企画・広報担当の伊藤さんに話を訊いてみた。 ――えーっと、この「期限切れクーポン大復活祭」……どうしてやろうと思ったんですか? 「あるリサーチによると、『お財布の中に使用期限が切れた割引券・クーポン券はありますか?』という質問に対して、59%もの人が『ある』と回答したらしいんですね。期限が切れたクーポン券は、もう捨てるしかないじゃないですか。それじゃ資源のムダになるし、もったいないということから今回のキャンペーンを始めることにしました」
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企画・広報担当の伊藤さん。
――他店のクーポン券をもらっても、はなまるうどんさん的には別に得はないですよね? たとえば、店長さんがクーポン券を使って風俗に行くなんてことはないでしょうし……。 「期限が切れてますからね(笑)。単純に、こういう面白いキャンペーンをやることによってお客様に楽しんでもらい、喜んでいただければと思っています。今まではなまるうどんにいらしたことのない方にも、この機会に来店していただければこちらとしてもうれしいですしね」 ――「どんなクーポン券でも」ということになっていますけど、本当にどんなクーポン券でもオッケーなんですか? 「企業や団体が発行したクーポン券・割引券で、(1)期限が切れているもの、(2)回収できるもの、(3)手作りでないもの、(4)未使用のものならなんでもオッケーです。たとえば、期限が過ぎてしまった『青春18きっぷ』などでも大丈夫ですよ。はなまるうどんのFacebookページ( http://www.facebook.com/hanamaruudon.jp )では回収したクーポン券の写真を掲載しているのですが、釣具店やボーリング場などさまざまなクーポン券が集まってきています。『こんなクーポン券でもいいのかな?』と楽しんでいろんなクーポン券を使ってみてください。日本だけでなく海外のものでもお使いいただけますよ」
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ホントにどんなクーポン券でもオッケーなのだ。
――……ほかのうどん屋さんのクーポン券を持って行ってもイヤな顔をされたりしませんよね? 「もちろんです!」  使わないまま期限切れとなってしまったクーポン券を蘇らせることができるキャンペーンは5月6日まで。お財布の中を掘り返して、期限切れのクーポン券を探し出して、お得にうどんを食べてしまおう! (取材・文=北村ヂン)

日米連合軍 VS エイリアンの戦い!『バトルシップ』

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(C)2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 新年度のフレッシュな気分がまだ抜けきらない4月中旬だが、映画興行ではこの時期、ゴールデンウィークを見据えたビッグバジェットの娯楽大作の公開がいよいよ本格化する。今回はその中から、壮大なストーリーと最新の視覚効果を駆使したぜいたくなアクションシーンが見どころのSFスペクタクル巨編2作品を紹介したい。  4月13日に封切られる『バトルシップ』(TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー)は、浅野忠信が海上自衛官役で2作目のハリウッド映画出演を果たしたことでも話題のアクション大作。ハワイ沖で米国、日本をはじめとする各国の艦隊が結集し、大規模な軍事演習を行っていた洋上に、突如として謎の巨大構造物が出現。偵察に出た米海軍の新人将校アレックス(テイラー・キッチュ)らの前に異形の全貌を現したのは、侵略のためにやって来たエイリアンの母船だった。地球側がわずか数隻しかいない海域にシールドを張って攻撃を開始した敵に対し、アレックスや海上自衛隊の指揮官ナガタらは、孤立した状況で圧倒的に不利な戦いに臨む。  私たち日本人にとって何より感慨深いのは、ハリウッド製の大作で我らが浅野忠信が準主役といってもいい、ナガタ役で活躍している点。演習の当初は主人公と反目し合うが、やがて互いの能力を認め、協力して強大な敵に立ち向かうという、オーソドックスであるがゆえに共感しやすいヒーローの一人を熱く、また時にクールに演じている。エイリアンの戦艦がガシャガシャと変形する様子に既視感を覚えるのもある意味当然で、本作の製作を手がけたのはあの『トランスフォーマー』シリーズのハスブロ。日米連合軍 VS エイリアンの戦いはハイテクを駆使した未来的な戦闘になるかと思いきや、「孫子の兵法」が出てきたり、超年代物の“最終兵器”が復活したりと、年季の入った軍事マニアも思わずニヤリとしてしまうはず。『インデペンデンス・デイ』(1996)や『世界侵略・ロサンゼルス決戦』(2011)など、米軍がエイリアン軍と戦う過去の代表作と似通ったストーリー展開ではあるが、多少大ざっぱな作りでも単純でド派手なバトルアクションが好きならきっと楽しめるだろう。  同じく4月13日に封切られる『ジョン・カーター』は、100年前に発表されたSFヒロイックファンタジーの古典で、『スター・ウォーズ』シリーズや『アバター』(09)にも多大な影響を与えた小説『火星のプリンセス』の映画化作品。19世紀後半、アメリカ南北戦争で活躍しながらも愛する妻と娘を失ったジョン・カーターは、不思議な現象によって地球から神秘の惑星バルスームに瞬間移動してしまう。そこで出会った王国の王女や戦士らと心を通わせたカーターは、この星が全宇宙を支配せんとする勢力によって滅亡の危機に瀕していることを認識。愛する者を二度と失いたくないという思いから、バルスームを救うために戦うことを決意する。  ウォルト・ディズニー生誕110周年に合わせて企画され、あの『アバター』をも超える製作費が投じられたとされる本作。バルスームの雄大な景観、キモカワ系の印象的なクリーチャーたち、壮絶なバトルアクションなど、最新のCGと3D技術を駆使してリアルに描かれた映像世界が圧巻だ。メガホンを取ったのは、ピクサーアニメ『ウォーリー』(08)でSFオタクぶりを発揮したアンドリュー・スタントン監督。『ミッション:インポッシブル4/ゴースト・プロトコル』(11)のブラッド・バード監督に続くピクサー出身のアニメ監督が実写アクション超大作に抜擢されたケースとしても注目される。再起と成長の物語にラブロマンス、冒険活劇に愛くるしい(?)クリーチャーと、幅広い層が楽しめる要素が詰まった本作。ぜひ家族や仲間、カップルで連れ立って劇場でご覧いただきたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『バトルシップ』作品情報 <http://eiga.com/movie/56682/> 『ジョン・カーター』作品情報 <http://eiga.com/movie/53180/>

『まだ、人間』東大卒27歳・松本准平が描く“光なき世界への絶望”、そして救済――

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 「東大話法」なる造語が注目を集めている。東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授による発案なのだが、安冨教授は今年初めに出版された『原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―』(明石書店)の中で、「東大話法」なる欺瞞的な物言いを20項目に分類、批判的に分析している。  日刊サイゾーでは、この話題をいち早く取り上げたが(記事参照)、その中で、「そんなこと(東大話法)あるわけないでしょ。この著者は相当、嫌なヤツですね……」と反旗を翻し、予期せぬ脚光を浴びてしまったのが、東大工学部出身者の新人映画監督・松本准平だ。  そんな彼のデビュー作となる『まだ、人間』が5月26日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開される。それに先立ち、マスコミ各社に向けて熱心な営業を行っている松本が、何を思ったのか、一部の批評家や映画評論家に向けた確信的ともいえる妄言を自身のTwitterで突如つぶやいてしまった。 「映画の批評空間は、すでに重箱の隅をつつくような作業にしかなってません。もちろん正当な批評に耐え得る作品がないという作り手の問題もありますが。この時代に、映画のつくりの話ばかりをして、一体どうする。申し訳ないけど、僕たちはまだまだ先が長い予定なので、それどころではないんですよ」(原文ママ)  この超天然というか、どこの巨匠かと思わせる上から目線のつぶやき以降、「世間知らずの東大出が!」「生意気だ!」 との批判を浴びる結果となったワケだが、それでも強気の宣伝活動を続ける松本とは、一体何者なのだろう?  去る1月21日、漫画家・浦嶋嶺至氏の監督デビュー作である『憂恋の花』と、俳優で映画監督の辻岡正人氏の最新監督作である『老獄 OLD PRISON』の成功を祈願したトークライブが、新宿のネイキッドロフトで開催された。  実はこのイベント、両作品の出演者であり、映画監督経験者でもある増田俊樹氏が浦嶋、辻岡の両監督作を後押しする形で企画したものだが、突如、松本から『まだ、人間』の特報上映と共にトークライブにも参加させてほしいと懇願されたため、やむを得ず、4人の異色映画監督によるトークライブという企画になった経緯があった。  ところが、最年少である松本がトーク冒頭で満員の客席へと言い放った言葉は、「僕が東大出身で、27歳という若さで憧れの映画監督になった松本准平です。僕の監督デビュー作の特報を今から上映します、皆さんも必ず劇場で見て下さい……」  苦笑いする浦嶋、辻岡の両氏を尻目に明るく自己紹介しつつ、東大卒のメリットを語り、なんとか客席を沸かせたつもりでいた松本だったが、その胸中にある動揺は隠しきれるものではなかった。波乱に満ちたイベントを企画した増田氏は、 「松本君自身、映画監督と名乗ることへの恐れが相当あったはず。でも、残念なことに、彼の作品はフィルム撮影ではなくビデオ映像なので、先達から見れば取るに足らない新参者でしかなく、映画史に関しても不勉強。批評家に対する妄言も、試写に来てくれない苛立ちから来る反動にしか過ぎません。私自身も経験したことなんですが、公開前から映画監督と名乗るなんて、とても恥ずかしいことなんですよ」  と語ってくれた。  また、『まだ、人間』の主人公を演じた俳優でもある辻岡氏は、自身の公式ブログにて次のような告白を掲載している。 「25歳のとき海外国際映画祭監督賞受賞した。イマだから言えるけど、その時にはたくさんの自分よりも年上の監督から、ヒドいイジメ、メチャクチャあったな」  元暴走族リーダーを経て、23歳で映画監督デビューを果たした辻岡氏らしい本音だが、2月29日に開催された『まだ、人間』の宣伝決起集会の席上では、後輩の松本に向け、熱心に映画業界の礼儀作法を説く辻岡氏の姿が誰よりも印象的だった。  映画監督とは、自己満足を得るツールであるはずがない。ましてや、興行の成功そのものが近代映画史を築いてきた、という認識もないまま、手軽にビデオカメラで撮影し、パソコン上で切り貼りした動画データをデジタル上映可能なホールに持ち込みさえすれば、誰だって“映画監督”と名乗れる時代になってしまった。  唯一、救いがあるとするならば、たとえ低予算のデジタル動画作品であろうとも優れた作品ならば、批評家からの賞賛を得るためにその事実を宣伝に生かせばいいだけのこと。  主演に決まった辻岡正人を筆頭に、ヒロインをリアルに演じきった新進女優・穂花、昨年末から各映画賞の助演男優賞を総ナメにした感のある名バイプレイヤー・でんでん、演技派女優として名高い根岸季衣を自ら説得し、強気で配役した松本ではあったが、積極的な自己アピールが得意の新人監督も、現場では意気消沈することが多かったと聞く。  東大卒・27歳、元芸人、そしてクリスチャン……。新人監督のプロフィールだけがちまたに流布され、作品の評価と交わりつつある昨今、その思想の原点に存在する思いが、光なき世界へと向けた静かな祈りであることだけは、忘れないでいてほしい。 ●まつもと・じゅんぺい 1984年、長崎県西彼杵郡出身。東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了、吉本総合芸能学院(NSC)東京校12期生。カトリックの家庭に生まれ、幼少期からキリスト教の影響を強く受ける。NPO法人を設立し映像製作を開始し、デビュー作となる『まだ、人間』を監督。 ●『まだ、人間』 出演:辻岡正人/穂花/上山学/大澤真一郎/増田俊樹/三坂知絵子/柴やすよ/加藤亮佑/でんでん/根岸季衣 2012年5月26日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開 公式サイト<http://www.madaningen.com/ >