堀江由衣「Secret Mission Tour」超巨大メカクマスターとの死闘の果て、追加公演で物語が完結!!

_MG_0646.jpg  6年ぶり3回目となるライブツアー「堀江由衣をめぐる冒険3~Secret Mission Tour~」に臨んだ声優アーティストの堀江由衣。3月に東京、名古屋、福岡、神戸で5公演を行い、演劇仕立ての構成もあって話題を博したが、このほど4月27日に東京国際フォーラムホールAでツアーファイナルとなる追加公演を迎え、ストーリーを完結させた。  3DファンタジーRPG風の森を駆けるCGがスクリーンに映し出され、ライブは始まった。「追加公演なのに、遅刻したぁ~!」「毎回ライブの度に遅刻したり道に迷っている気がする」と、バックステージにいるとおぼしきほっちゃん本人の口からのメタ発言(この後も、こまめにメタ発言で笑いをとっていた)。森を抜けた先、山の頂上で「やっほー」と叫ぶと観客席のレスポンスがやまびことなり、1曲目「YAHHO!!」でいきなり会場の温度を上げる。フロアはこの時点で揺れている!  立て続けに2ビートでノリのいい「Love Countdown」を歌うと、ここでMC──ではなく芝居が入るのが「Secret Mission Tour」の特徴。この後、MCが入るべきタイミングはすべて幕間の芝居となり、すべての楽曲をシームレスにつなげる凝った構成のセットリストになっている。 _MH_0534.jpg _MH_1491.jpg _MH_2488.jpg  やまびこの妖精・エコーちゃんが登場、今いる森がミスモノクロームの侵攻を受けていることが分かり、彼女と戦わなくてはならないと、ライブの目的がはっきりする。ここまでの展開を含め、ストーリーの大部分は3月のツアー時と同様だ。  続く2曲は「ラブリ(ハートマーク)エブリデイ」と「CHILDISH(ハートマーク)LOVE(ハートマーク)WORLD」。芝居に挟まれた恰好の楽曲は、すべて曲の傾向ごとに分類され、美しく整えられている。  エコーちゃんがさらわれた後は「秘密~君を見てた~」。次に「Endless Star」を歌うと、ほっちゃんが大ピンチ。なんと敵につかまり、改造されてしまうハメに……といったところで、ラジオ番組『堀江由衣の天使のたまご』で募集したはがきを使って「ほっちゃん大喜利」が始まった!  おなじみのキャラクター、クマスターが登場して「ほっちゃんをロボットに改造、さてどんな機能が追加された?」というお題で、こんな珍機能があったらいいな……というネタが次々に披露されていく。  「外貨のレートがリアルタイムで分かる」「Wi-Fiのスポットになっている」と、ひとしきりトークを繰り広げると、いよいよ改造されたメカほっちゃんの出番。先ほどまでチェックのドレスにレザーブーツだった衣裳は銀色の光沢があるものとなり、「バニラソルト」「Coloring」「見つめられたら~when I fallin’love with you」「きれいな風が吹いている」の、テクノコンセプト4曲をクールに熱唱。ライブの折り返し地点を締める、とくに聴き応えのあるパートとなった。 _USA0659.jpg  ロボット化したほっちゃんを助けるために、森の動物がやまびこの妖精(観客)の力を借りるという筋書きになり、エコーちゃんの指導に従い、観客全員が振り付けを練習。オーディエンスの“やまびこ”が不可欠な「スクランブル」に始まり、「PRESENTER」「True truly love」、アップ度合いが著しい3曲でメカからの復活を印象づける。フロアのタテノリ具合が半端ではない。 _USA0304.jpg  次は、いよいよミスモノクロームが登場。銀髪ツインテールの3DCGキャラクターが舞台前方の小型スクリーンに投影されるバーチャルアイドル方式で歌い(声はもちろん堀江由衣)、踊る。この世界をモノクロにしてやる、というミスモノクロームが歌うのは「モノクローム」。 _USA0347.jpg  その白黒に抗うように、赤ラメの衣裳に身を包んだほっちゃんがカラフルな仲間を連れ、レーザービームが空間を切り裂く中「MISSION」を歌う。観客も赤いサイリウムで応戦だ。 _MG_1080.jpg  そして難解かつ劇的なプログレッシブ大曲「インモラリスト」を歌うと、ミスモノクロームの弱点を見抜いたほっちゃんは単三電池を抜いて敵の動きを止めてしまう。  めでたしめでたし……かと思ったが、森は元に戻らない。まだメカクマスターが残っていた! ラストバトルは17曲目「ヒカリ」に盛り込まれ、クライマックスを演出する。  ここで追加公演だけのサービス! メカクマスターが「仕方がない。ここは最終形態で戦うしかないようだな」と言うやいなや、舞台の天井から超巨大なメカクマスターの両腕が降り、舞台奥の大型スクリーンに表示した顔と合わせて巨大ロボット形態のメカクマスターを出現させると、詰めかけたファンもびっくりである。 _USA0439.jpg  これを「伝説のヒカリの剣」で倒すと、メカクマスターは「まだだ! まだ終わらんクマよ!!」と抵抗のそぶりを見せるが、単一電池を抜かれて万事休す(ミスモノクロームよりも大きいので、稼働に必要な電池も大きかったようだ)。  解放された森の動物たちがひとしきり、その喜びを表現するドラマ部分は藤原啓治(ライオン)、林原めぐみ(ウサギ)、森久保祥太郎(ヒョウ)、神田朱未(リス)、たかはし智秋(メヒョウ)といった超豪華声優陣によって演じられ、きちんと物語が閉じていく。メヒョウのたかはしはこの追加公演のみのキャスティングで、ヒョウカップルの再会、ジューシーなラブラブぶりが際立つ展開となっていた。 _USA0577.jpg  平和を取り戻した世界で「CHILDISH(ハートマーク)LOVE(ハートマーク)WORLD」「daisy」「Lady Go!」「秘密~待ち合わせ~」を歌い上げると、最後は「おまけコーナー」としてのアンコール。「kiss to you」の後、あみだくじで決めた「I wish」「Love Destiny」の2曲を歌い、ラストは「Happy happy*rice shower」で、文字通り多幸感に会場を包んでエンディングにたどり着いた。  アンコール前のエンドロールではエコーちゃんが単三電池を拾い、ミスモノクロームにセット、彼女がピンク色の頭髪となりカラーを獲得する様子が描かれており、今後に何かがありそうな(orあるといいな?)気配だ。 _USA0908.jpg  また、まとめのMCではアニメ『DOG DAYS』の2期『DOG DAYS'』のエンディングテーマ(タイトル、未定。発売日、未定。どんな曲か、未定。と、しみじみ告知)を歌うことが決まったと発表された。  堀江由衣本人が「変えるところがないくらい気に入っている」と言ったように、非常によくまとまったセットリストで充実の公演となったが、これもコンスタントに良曲をリリースしてきた結果。CVの導入も成功し、今後のライブがいっそう楽しみになってきた。 (取材・文=後藤勝)

堀江由衣「Secret Mission Tour」超巨大メカクマスターとの死闘の果て、追加公演で物語が完結!!

_MG_0646.jpg  6年ぶり3回目となるライブツアー「堀江由衣をめぐる冒険3~Secret Mission Tour~」に臨んだ声優アーティストの堀江由衣。3月に東京、名古屋、福岡、神戸で5公演を行い、演劇仕立ての構成もあって話題を博したが、このほど4月27日に東京国際フォーラムホールAでツアーファイナルとなる追加公演を迎え、ストーリーを完結させた。  3DファンタジーRPG風の森を駆けるCGがスクリーンに映し出され、ライブは始まった。「追加公演なのに、遅刻したぁ~!」「毎回ライブの度に遅刻したり道に迷っている気がする」と、バックステージにいるとおぼしきほっちゃん本人の口からのメタ発言(この後も、こまめにメタ発言で笑いをとっていた)。森を抜けた先、山の頂上で「やっほー」と叫ぶと観客席のレスポンスがやまびことなり、1曲目「YAHHO!!」でいきなり会場の温度を上げる。フロアはこの時点で揺れている!  立て続けに2ビートでノリのいい「Love Countdown」を歌うと、ここでMC──ではなく芝居が入るのが「Secret Mission Tour」の特徴。この後、MCが入るべきタイミングはすべて幕間の芝居となり、すべての楽曲をシームレスにつなげる凝った構成のセットリストになっている。 _MH_0534.jpg _MH_1491.jpg _MH_2488.jpg  やまびこの妖精・エコーちゃんが登場、今いる森がミスモノクロームの侵攻を受けていることが分かり、彼女と戦わなくてはならないと、ライブの目的がはっきりする。ここまでの展開を含め、ストーリーの大部分は3月のツアー時と同様だ。  続く2曲は「ラブリ(ハートマーク)エブリデイ」と「CHILDISH(ハートマーク)LOVE(ハートマーク)WORLD」。芝居に挟まれた恰好の楽曲は、すべて曲の傾向ごとに分類され、美しく整えられている。  エコーちゃんがさらわれた後は「秘密~君を見てた~」。次に「Endless Star」を歌うと、ほっちゃんが大ピンチ。なんと敵につかまり、改造されてしまうハメに……といったところで、ラジオ番組『堀江由衣の天使のたまご』で募集したはがきを使って「ほっちゃん大喜利」が始まった!  おなじみのキャラクター、クマスターが登場して「ほっちゃんをロボットに改造、さてどんな機能が追加された?」というお題で、こんな珍機能があったらいいな……というネタが次々に披露されていく。  「外貨のレートがリアルタイムで分かる」「Wi-Fiのスポットになっている」と、ひとしきりトークを繰り広げると、いよいよ改造されたメカほっちゃんの出番。先ほどまでチェックのドレスにレザーブーツだった衣裳は銀色の光沢があるものとなり、「バニラソルト」「Coloring」「見つめられたら~when I fallin’love with you」「きれいな風が吹いている」の、テクノコンセプト4曲をクールに熱唱。ライブの折り返し地点を締める、とくに聴き応えのあるパートとなった。 _USA0659.jpg  ロボット化したほっちゃんを助けるために、森の動物がやまびこの妖精(観客)の力を借りるという筋書きになり、エコーちゃんの指導に従い、観客全員が振り付けを練習。オーディエンスの“やまびこ”が不可欠な「スクランブル」に始まり、「PRESENTER」「True truly love」、アップ度合いが著しい3曲でメカからの復活を印象づける。フロアのタテノリ具合が半端ではない。 _USA0304.jpg  次は、いよいよミスモノクロームが登場。銀髪ツインテールの3DCGキャラクターが舞台前方の小型スクリーンに投影されるバーチャルアイドル方式で歌い(声はもちろん堀江由衣)、踊る。この世界をモノクロにしてやる、というミスモノクロームが歌うのは「モノクローム」。 _USA0347.jpg  その白黒に抗うように、赤ラメの衣裳に身を包んだほっちゃんがカラフルな仲間を連れ、レーザービームが空間を切り裂く中「MISSION」を歌う。観客も赤いサイリウムで応戦だ。 _MG_1080.jpg  そして難解かつ劇的なプログレッシブ大曲「インモラリスト」を歌うと、ミスモノクロームの弱点を見抜いたほっちゃんは単三電池を抜いて敵の動きを止めてしまう。  めでたしめでたし……かと思ったが、森は元に戻らない。まだメカクマスターが残っていた! ラストバトルは17曲目「ヒカリ」に盛り込まれ、クライマックスを演出する。  ここで追加公演だけのサービス! メカクマスターが「仕方がない。ここは最終形態で戦うしかないようだな」と言うやいなや、舞台の天井から超巨大なメカクマスターの両腕が降り、舞台奥の大型スクリーンに表示した顔と合わせて巨大ロボット形態のメカクマスターを出現させると、詰めかけたファンもびっくりである。 _USA0439.jpg  これを「伝説のヒカリの剣」で倒すと、メカクマスターは「まだだ! まだ終わらんクマよ!!」と抵抗のそぶりを見せるが、単一電池を抜かれて万事休す(ミスモノクロームよりも大きいので、稼働に必要な電池も大きかったようだ)。  解放された森の動物たちがひとしきり、その喜びを表現するドラマ部分は藤原啓治(ライオン)、林原めぐみ(ウサギ)、森久保祥太郎(ヒョウ)、神田朱未(リス)、たかはし智秋(メヒョウ)といった超豪華声優陣によって演じられ、きちんと物語が閉じていく。メヒョウのたかはしはこの追加公演のみのキャスティングで、ヒョウカップルの再会、ジューシーなラブラブぶりが際立つ展開となっていた。 _USA0577.jpg  平和を取り戻した世界で「CHILDISH(ハートマーク)LOVE(ハートマーク)WORLD」「daisy」「Lady Go!」「秘密~待ち合わせ~」を歌い上げると、最後は「おまけコーナー」としてのアンコール。「kiss to you」の後、あみだくじで決めた「I wish」「Love Destiny」の2曲を歌い、ラストは「Happy happy*rice shower」で、文字通り多幸感に会場を包んでエンディングにたどり着いた。  アンコール前のエンドロールではエコーちゃんが単三電池を拾い、ミスモノクロームにセット、彼女がピンク色の頭髪となりカラーを獲得する様子が描かれており、今後に何かがありそうな(orあるといいな?)気配だ。 _USA0908.jpg  また、まとめのMCではアニメ『DOG DAYS』の2期『DOG DAYS'』のエンディングテーマ(タイトル、未定。発売日、未定。どんな曲か、未定。と、しみじみ告知)を歌うことが決まったと発表された。  堀江由衣本人が「変えるところがないくらい気に入っている」と言ったように、非常によくまとまったセットリストで充実の公演となったが、これもコンスタントに良曲をリリースしてきた結果。CVの導入も成功し、今後のライブがいっそう楽しみになってきた。 (取材・文=後藤勝)

新時代の『ルパン三世』は規制緩和の使者?『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』

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『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』
公式サイトより
 モンキー・パンチ原作の人気アニメ『ルパン三世』の、テレビシリーズとしては27年ぶりの新作『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』(日本テレビ系)が放送中だ。  タイトルからもわかるように、本作の主人公はルパン三世ではなく、シリーズの名脇役である峰不二子。監督に山本沙代、シリーズ構成に岡田麿里ら女性スタッフを据え、日本の“ファム・ファタール”を代表するキャラクターの生き様を掘り下げていく。そんな内容からは、新世代の『ルパン三世』を作ろうという企画サイドの強い意気込みが感じられる。一方で本作は、スーパーアニメーター・小池健によるキャラクターデザインを軸に、これまでで最も原作コミックのイメージに近いビジュアルを作り上げたアニメ『ルパン三世』でもある。本作で初めて「新作テレビシリーズとしての『ルパン三世』」に触れる若い視聴者にも、シリーズのコアなファンにも訴求することを目指した、志の高いタイトルだといえよう。  前回のテレビスペシャルから登板の、不二子、石川五ェ門、銭形警部らの新キャストも旧キャスト陣に引けを取らぬ好演で、菊地成孔による音楽も最高にクールな仕上がり。欲をいえばもう少しストーリーには捻りがほしいところではあるものの、現在放送中のテレビアニメの中で、最重要作品のひとつであることは間違いない。  さて、そんな『峰不二子という女』には、もうひとつ注目すべき点がある。  「乳首」だ。  深夜帯に放送されているテレビアニメには、画面に不自然な光や影の入る作品が多い。これらは放送局の基準に則って、放送不可な描写に対してかけるマスクである。主に対象となるのはエログロ描写で、中でも最も厳しく規制されるのが女性の胸である。    たとえば、女性の胸描写に対する強いこだわりで知られるアニメーター・金子ひらくが監督を務めた『聖痕のクェイサー』『魔乳秘剣帖』といった作品では、乳首が描かれているカットに、画面の3分の2以上を覆う真っ白な光が被せられていた。両作ともに、物語の重要なシーンで必然性をもって乳首が描かれるため、放映版ではストーリーの細部が追えなくなるほどだった。このケースは極端だとしても、直近の作品でいえば『境界線上のホライゾン』など、「着衣の上から胸を触る」描写にすら規制がかかった作品も多く、いささかやりすぎの感は否めない。  ところが、『峰不二子という女』では、乳首が堂々と画面に登場するのである。毎回放映されるオープニング映像からバンバンと描かれ、本編でも惜しげもなく晒される。感覚としてはファッションショーでモデルが晒すものに近く、そこまで扇情的な印象は受けないものの、規制の厳しいその他の深夜アニメを見慣れているアニメファンとしては、驚かずにはいられない。さらに第4話では、コミカルで直接的な描写ではないものの、嬌声をあげて交わる不二子と銭形のセックスシーンが放送されもした。  これは「ルパン三世」というブランドの力が可能にした、例外的なことなのだろうか。それとも今後、深夜アニメに規制緩和の波が訪れるのだろうか。モニタの向こうでもこちら側でも、しばらくお騒がせな怪盗たちの行状から目が離せそうにない。 (文=御船藤四郎)

新時代の『ルパン三世』は規制緩和の使者?『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』

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『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』
公式サイトより
 モンキー・パンチ原作の人気アニメ『ルパン三世』の、テレビシリーズとしては27年ぶりの新作『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』(日本テレビ系)が放送中だ。  タイトルからもわかるように、本作の主人公はルパン三世ではなく、シリーズの名脇役である峰不二子。監督に山本沙代、シリーズ構成に岡田麿里ら女性スタッフを据え、日本の“ファム・ファタール”を代表するキャラクターの生き様を掘り下げていく。そんな内容からは、新世代の『ルパン三世』を作ろうという企画サイドの強い意気込みが感じられる。一方で本作は、スーパーアニメーター・小池健によるキャラクターデザインを軸に、これまでで最も原作コミックのイメージに近いビジュアルを作り上げたアニメ『ルパン三世』でもある。本作で初めて「新作テレビシリーズとしての『ルパン三世』」に触れる若い視聴者にも、シリーズのコアなファンにも訴求することを目指した、志の高いタイトルだといえよう。  前回のテレビスペシャルから登板の、不二子、石川五ェ門、銭形警部らの新キャストも旧キャスト陣に引けを取らぬ好演で、菊地成孔による音楽も最高にクールな仕上がり。欲をいえばもう少しストーリーには捻りがほしいところではあるものの、現在放送中のテレビアニメの中で、最重要作品のひとつであることは間違いない。  さて、そんな『峰不二子という女』には、もうひとつ注目すべき点がある。  「乳首」だ。  深夜帯に放送されているテレビアニメには、画面に不自然な光や影の入る作品が多い。これらは放送局の基準に則って、放送不可な描写に対してかけるマスクである。主に対象となるのはエログロ描写で、中でも最も厳しく規制されるのが女性の胸である。    たとえば、女性の胸描写に対する強いこだわりで知られるアニメーター・金子ひらくが監督を務めた『聖痕のクェイサー』『魔乳秘剣帖』といった作品では、乳首が描かれているカットに、画面の3分の2以上を覆う真っ白な光が被せられていた。両作ともに、物語の重要なシーンで必然性をもって乳首が描かれるため、放映版ではストーリーの細部が追えなくなるほどだった。このケースは極端だとしても、直近の作品でいえば『境界線上のホライゾン』など、「着衣の上から胸を触る」描写にすら規制がかかった作品も多く、いささかやりすぎの感は否めない。  ところが、『峰不二子という女』では、乳首が堂々と画面に登場するのである。毎回放映されるオープニング映像からバンバンと描かれ、本編でも惜しげもなく晒される。感覚としてはファッションショーでモデルが晒すものに近く、そこまで扇情的な印象は受けないものの、規制の厳しいその他の深夜アニメを見慣れているアニメファンとしては、驚かずにはいられない。さらに第4話では、コミカルで直接的な描写ではないものの、嬌声をあげて交わる不二子と銭形のセックスシーンが放送されもした。  これは「ルパン三世」というブランドの力が可能にした、例外的なことなのだろうか。それとも今後、深夜アニメに規制緩和の波が訪れるのだろうか。モニタの向こうでもこちら側でも、しばらくお騒がせな怪盗たちの行状から目が離せそうにない。 (文=御船藤四郎)

なぜ発売されなかった? 知られざる事実が明らかになった『封印されたアダルトビデオ』

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『封印されたアダルトビデオ』彩図社
 実話誌で一年に一度は必ず見かけるネタ、「発禁AV」。様々な理由で発売できなくなった作品、店頭から回収された作品、刑事事件になってしまった作品等々、いずれも「発禁」「封印」といった文字が読者の興味を引くのだろうか? そんなAVの数々をまとめたのが『封印されたアダルトビデオ』が出版された。収録されたのは19の作品。しかも、単にウワサを書き連ねるのではなく、綿密な取材もしているではないか。「いったい、どれだけAVが好きなんだ?」と、思いつつ著者の井川楊枝氏を訪ねた。  井川氏は今回の執筆の動機を「実話誌では、内容が薄っぺらすぎる」と思ったことだと話す。これまでも実話誌ライターとして、数多くの分野で活躍している井川氏は、封印されてしまった原因の表現そのものよりも「その向こうにある話」のほうが面白いと気づいたという。 「AVを一本制作するのに数百万円がかかるから、発売できなくなったら制作会社にとっても大変な事態です。ですので、ビデ倫などの審査機関と大げんかしたとか、プロダクションと揉めているといった話をたくさん聞くんですよ。そうした人間模様を書いたら面白いんじゃないかなと思ったんです」  本書の執筆にあたって井川氏は、とにかく関係者から直接話を聞くことを第一に考えて取材を進めたそうだ。とはいえ、扱っている作品からして取材が楽でなかったことは容易に想像がつく。  本書で掲載されているのは、障害者を出演させたことでビデ倫の審査を落とされた『ハンディキャップをぶっとばせ』。自衛隊の駐屯地でロケを行い、隊員たちも盛り上がったのに、突然自衛隊側が「撮影許可を出していない」と手のひらを返して封印された『戦車とAVギャル』。アイドル育成ゲーム『アイドルマスター』を本気でパロディにしたらゲームのファンが元ネタの会社に通報して発売中止になった『アダルトマスター』。さらに、アイドルDVDとは名ばかりの「児童ポルノ」で、児童ポルノ法違反で摘発された『少女のうた』、さらに、ネットでもお騒がせの片桐えりりかまで、硬軟とりまぜた様々な作品だ。そんな作品の知られざる実態に迫るわけだから、取材は困難を極めた。 「際どい取材が多かったですよ。どの作品のエピソードでも、話したくない関係者はいますからね。監督から“これは出さないでくれ”といわれることは多かったですし、メーカーからはもっと強くね……」  結果、どのエピソードを読んでも、当事者にかなりディープなことまでを話させることにも成功。中でも所属事務所の10代の少女を次々と「児童ポルノ」に出演させた「藤軍団事件」の摘発のきっかけとなった『少女のうた』のエピソードでは「ジュニアアイドル業界の片親率はかなり高い」とか、かなり踏み込んだ部分まで語った上で、逮捕された「藤軍団」の人物への取材にも成功している。 「事件が取りざたされていた時にも取材していたのですが、さらに深く取材したいと思い、被害に遭った女優を手当たり次第にあたって、なんとか当時のマネージャーの連絡先を聞き出したんですよ」  かなり熱のこもった取材を行った本書だが、井川氏は、犯罪に関わるものを除けば封印されたAVには真摯に制作されているものが多いと話す。 「審査で落とされた作品の当事者からは、“今でも納得ができない”という言葉をよく聞きました。せっかく制作したのだから、世に出したいのは当然なんでしょう」  まさに「足を使った」という言葉がよく似合う取材の結晶といえる本書。単にキワモノAVを並べただけではない、生の声を知ることができる貴重な資料となるだろう。 (取材・文=昼間たかし)

なぜ発売されなかった? 知られざる事実が明らかになった『封印されたアダルトビデオ』

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『封印されたアダルトビデオ』彩図社
 実話誌で一年に一度は必ず見かけるネタ、「発禁AV」。様々な理由で発売できなくなった作品、店頭から回収された作品、刑事事件になってしまった作品等々、いずれも「発禁」「封印」といった文字が読者の興味を引くのだろうか? そんなAVの数々をまとめたのが『封印されたアダルトビデオ』が出版された。収録されたのは19の作品。しかも、単にウワサを書き連ねるのではなく、綿密な取材もしているではないか。「いったい、どれだけAVが好きなんだ?」と、思いつつ著者の井川楊枝氏を訪ねた。  井川氏は今回の執筆の動機を「実話誌では、内容が薄っぺらすぎる」と思ったことだと話す。これまでも実話誌ライターとして、数多くの分野で活躍している井川氏は、封印されてしまった原因の表現そのものよりも「その向こうにある話」のほうが面白いと気づいたという。 「AVを一本制作するのに数百万円がかかるから、発売できなくなったら制作会社にとっても大変な事態です。ですので、ビデ倫などの審査機関と大げんかしたとか、プロダクションと揉めているといった話をたくさん聞くんですよ。そうした人間模様を書いたら面白いんじゃないかなと思ったんです」  本書の執筆にあたって井川氏は、とにかく関係者から直接話を聞くことを第一に考えて取材を進めたそうだ。とはいえ、扱っている作品からして取材が楽でなかったことは容易に想像がつく。  本書で掲載されているのは、障害者を出演させたことでビデ倫の審査を落とされた『ハンディキャップをぶっとばせ』。自衛隊の駐屯地でロケを行い、隊員たちも盛り上がったのに、突然自衛隊側が「撮影許可を出していない」と手のひらを返して封印された『戦車とAVギャル』。アイドル育成ゲーム『アイドルマスター』を本気でパロディにしたらゲームのファンが元ネタの会社に通報して発売中止になった『アダルトマスター』。さらに、アイドルDVDとは名ばかりの「児童ポルノ」で、児童ポルノ法違反で摘発された『少女のうた』、さらに、ネットでもお騒がせの片桐えりりかまで、硬軟とりまぜた様々な作品だ。そんな作品の知られざる実態に迫るわけだから、取材は困難を極めた。 「際どい取材が多かったですよ。どの作品のエピソードでも、話したくない関係者はいますからね。監督から“これは出さないでくれ”といわれることは多かったですし、メーカーからはもっと強くね……」  結果、どのエピソードを読んでも、当事者にかなりディープなことまでを話させることにも成功。中でも所属事務所の10代の少女を次々と「児童ポルノ」に出演させた「藤軍団事件」の摘発のきっかけとなった『少女のうた』のエピソードでは「ジュニアアイドル業界の片親率はかなり高い」とか、かなり踏み込んだ部分まで語った上で、逮捕された「藤軍団」の人物への取材にも成功している。 「事件が取りざたされていた時にも取材していたのですが、さらに深く取材したいと思い、被害に遭った女優を手当たり次第にあたって、なんとか当時のマネージャーの連絡先を聞き出したんですよ」  かなり熱のこもった取材を行った本書だが、井川氏は、犯罪に関わるものを除けば封印されたAVには真摯に制作されているものが多いと話す。 「審査で落とされた作品の当事者からは、“今でも納得ができない”という言葉をよく聞きました。せっかく制作したのだから、世に出したいのは当然なんでしょう」  まさに「足を使った」という言葉がよく似合う取材の結晶といえる本書。単にキワモノAVを並べただけではない、生の声を知ることができる貴重な資料となるだろう。 (取材・文=昼間たかし)

ジェイソン・ステイサムがまたまたクールな殺し屋に『キラー・エリート』

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(C) 2011 Omnilab Media Pty.Ltd.
 今週紹介する海外アクション映画2本は、いずれもジャンル映画の伝統を活かしながら新趣向を凝らし、ライトな映画ファンからマニアまで幅広い層にじわじわと支持を広げそうな“掘り出し物”的作品だ。  5月12日公開の『ロボット』は、ワイヤーアクション、VFX、ラブコメ、ミュージカルといった娯楽のスパイスが絶妙にブレンドされ、カレーのように刺激的な味わいのインド製SFアクションコメディ。ロボット工学者のバシー博士は長年の研究の末、優れた知能と身体能力を備える自分そっくりのロボット“チッティ”を開発する。改良が加えられ感情を持ったチッティは、博士の婚約者サナに恋心を抱くもあえなく振られ、軍の採用テストにも失敗して廃棄されてしまう。そのスクラップを回収した狡猾なボラ教授の手により、冷酷な殺人マシンに生まれ変わったチッティは、自身のレプリカを量産。サナを拉致し、ロボット軍団を率いて街を破壊し始める。  『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995)のラジニカーントがバシー博士とロボットの2役で主演し、ヒロインはミス・ワールドで優勝歴を持つインドの国民的女優アイシュワリヤー・ラーイ。インド史上最高という37億円の製作費が投入され、『ターミネーター』シリーズ等を手がけたハリウッドの伝説的VFXマン、スタン・ウィンストンのスタジオも協力。本国で2010年に公開されてからすでに世界興収が100億円を超すメガヒット作品だ。SF映画のファンならきっと、『ターミネーター』『マトリックス』『スター・ウォーズ』といった人気シリーズや、アシモフの“ロボット三原則”に基づく『アイ,ロボット』(04)などへのオマージュを楽しめるはず。『スラムドッグ$ミリオネア』(08)でアカデミー賞作曲賞・歌曲賞を獲得したA・R・ラフマーンの音楽でミュージカルシーンが挿入されるあたりは、いかにもインド映画らしく微笑ましいが、終盤でロボット軍団が合体して巨大モンスターになるあたりから、もはや驚かせたいのか笑わせたいのかワケわからん状態。三池崇史監督の『DEAD OR ALIVE』シリーズにも似た趣の本作、特に“珍品アクション”をこよなく愛する方々はお見逃しなきよう。  『ロボット』が異種混合、なんでもありの異端なら、同じく5月12日に封切られる『キラー・エリート』は、元SAS(英国陸軍特殊部隊)隊員によるベストセラー小説を映画化した正統派アクションだ。凄腕の殺し屋ダニー(ジェイソン・ステイサム)は、限界を感じ引退を決意するが、師匠のハンター(ロバート・デ・ニーロ)がオマーンで人質に取られたと知り、現地に飛ぶ。オマーン首長の息子3人を殺した男たちへの報復という依頼を引き継いだダニーだが、標的の男3人は、極秘組織「フェザー・メン」に守られたSASの精鋭兵士だった。困難なミッションを遂行するダニーの前に、フェザー・メンの密命を受けた元SASのスパイク(クライブ・オーウェン)が立ちはだかる。  出世作の『トランスポーター』シリーズに始まり、『エクスペンダブルズ』(10)、『メカニック』(11)など、“凄腕の請負人”がハマり役のジェイソン・ステイサムが、本作でも「超一流の殺し屋=キラー・エリート」をクールに熱演。事故死に見せかけて殺害せよという指令に応えるため、偽装のためのトリックを手際よく仕込んでいく様子も、さすがに原作を元SASが書いているだけにリアルで、スリルを盛り上げる。ステイサムとオーウェン、さらにもう1人の工作員も交えた三つ巴の肉弾戦など、新味のあるアクションも見どころ。名優たちの渋い存在感と、実話に基づくという先の読めないストーリーが、ずっしりと重く響く衝撃作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ロボット』作品情報 <http://eiga.com/movie/57279/> 『キラー・エリート』作品情報 <http://eiga.com/movie/57230/>

ジェイソン・ステイサムがまたまたクールな殺し屋に『キラー・エリート』

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 今週紹介する海外アクション映画2本は、いずれもジャンル映画の伝統を活かしながら新趣向を凝らし、ライトな映画ファンからマニアまで幅広い層にじわじわと支持を広げそうな“掘り出し物”的作品だ。  5月12日公開の『ロボット』は、ワイヤーアクション、VFX、ラブコメ、ミュージカルといった娯楽のスパイスが絶妙にブレンドされ、カレーのように刺激的な味わいのインド製SFアクションコメディ。ロボット工学者のバシー博士は長年の研究の末、優れた知能と身体能力を備える自分そっくりのロボット“チッティ”を開発する。改良が加えられ感情を持ったチッティは、博士の婚約者サナに恋心を抱くもあえなく振られ、軍の採用テストにも失敗して廃棄されてしまう。そのスクラップを回収した狡猾なボラ教授の手により、冷酷な殺人マシンに生まれ変わったチッティは、自身のレプリカを量産。サナを拉致し、ロボット軍団を率いて街を破壊し始める。  『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995)のラジニカーントがバシー博士とロボットの2役で主演し、ヒロインはミス・ワールドで優勝歴を持つインドの国民的女優アイシュワリヤー・ラーイ。インド史上最高という37億円の製作費が投入され、『ターミネーター』シリーズ等を手がけたハリウッドの伝説的VFXマン、スタン・ウィンストンのスタジオも協力。本国で2010年に公開されてからすでに世界興収が100億円を超すメガヒット作品だ。SF映画のファンならきっと、『ターミネーター』『マトリックス』『スター・ウォーズ』といった人気シリーズや、アシモフの“ロボット三原則”に基づく『アイ,ロボット』(04)などへのオマージュを楽しめるはず。『スラムドッグ$ミリオネア』(08)でアカデミー賞作曲賞・歌曲賞を獲得したA・R・ラフマーンの音楽でミュージカルシーンが挿入されるあたりは、いかにもインド映画らしく微笑ましいが、終盤でロボット軍団が合体して巨大モンスターになるあたりから、もはや驚かせたいのか笑わせたいのかワケわからん状態。三池崇史監督の『DEAD OR ALIVE』シリーズにも似た趣の本作、特に“珍品アクション”をこよなく愛する方々はお見逃しなきよう。  『ロボット』が異種混合、なんでもありの異端なら、同じく5月12日に封切られる『キラー・エリート』は、元SAS(英国陸軍特殊部隊)隊員によるベストセラー小説を映画化した正統派アクションだ。凄腕の殺し屋ダニー(ジェイソン・ステイサム)は、限界を感じ引退を決意するが、師匠のハンター(ロバート・デ・ニーロ)がオマーンで人質に取られたと知り、現地に飛ぶ。オマーン首長の息子3人を殺した男たちへの報復という依頼を引き継いだダニーだが、標的の男3人は、極秘組織「フェザー・メン」に守られたSASの精鋭兵士だった。困難なミッションを遂行するダニーの前に、フェザー・メンの密命を受けた元SASのスパイク(クライブ・オーウェン)が立ちはだかる。  出世作の『トランスポーター』シリーズに始まり、『エクスペンダブルズ』(10)、『メカニック』(11)など、“凄腕の請負人”がハマり役のジェイソン・ステイサムが、本作でも「超一流の殺し屋=キラー・エリート」をクールに熱演。事故死に見せかけて殺害せよという指令に応えるため、偽装のためのトリックを手際よく仕込んでいく様子も、さすがに原作を元SASが書いているだけにリアルで、スリルを盛り上げる。ステイサムとオーウェン、さらにもう1人の工作員も交えた三つ巴の肉弾戦など、新味のあるアクションも見どころ。名優たちの渋い存在感と、実話に基づくという先の読めないストーリーが、ずっしりと重く響く衝撃作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ロボット』作品情報 <http://eiga.com/movie/57279/> 『キラー・エリート』作品情報 <http://eiga.com/movie/57230/>

シュール過ぎるにもほどがある!? 名脇役・小池が大活躍『小池さん!大集合』

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『小池さん!大集合』(復刊ドットコム)
 藤子不二雄先生の漫画にちょいちょい登場してくる名脇役・小池さんを知っているだろうか。そう、ラーメンばっかり食べているあの人!  チリチリパーマにメガネ、フニャフニャの口(通称・カレーパンマン口)という特徴だらけのルックスでズルズルーッとラーメンをすすっている姿は、昭和生まれ世代ならば一度は目にしたことがあることだろう。いや、それどころか意外と平成生まれの人たちにも認知されているからビックリなのだ。  脳の半分くらいは藤子不二雄関連のことで埋め尽くされている藤子脳なボクは、すごく若い子たちと漫画の話をしていても「ルフィがさぁ」くらいの感覚で「小池さんがさぁ」みたいな話をしてしまいがち。それでも「あー、ラーメン大好きの!」と、ちゃんと反応してくれるからね。  小池さんが藤子漫画に初登場したのは『オバケのQ太郎』なので、おそらく1960年代頃のこと。その後の作品にも登場しているとはいえ、やはり『忍者ハットリくん』『パーマン』など古い漫画が中心なのに、今のヤングにまで認知されているというのはスゴイ! ある意味、ルフィや悟空級の国民的キャラクターと言っても過言ではないだろう(いや、さすがに過言かそれは!?)。そういや、シャ乱Qの「ラーメン大好き小池さんの唄」なんちゅう曲もあったしねぇ……(ま、あれはかなり表層的にしか小池さんを理解していないビミョーな曲でしたが)。  そんな小池さんですが、一般的に持たれているイメージとしては、いっつもラーメン食ってるだけで、大した活躍もしないのに妙に気になってしまう脇役キャラクター……といったところでしょう。確かに、ほとんどの作品でそんな役回りだというのは事実なんだけど、実は小池さんが主人公となり、あまりラーメンも食わず、アクティブに活動している漫画作品というのもあるのだ。……しかも、結構いっぱい。  で、なんとこの度、復刊ドットコムから、そんな小池さんが主人公となっている藤子不二雄A先生の作品(藤子・F・不二雄先生も『カイケツ小池さん』『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』という小池さんが主人公の作品を描かれているんですけどね)を一挙にまとめた作品集『小池さん!大集合』が刊行されたのだ。  どーしてこのタイミングで小池さん作品をまとめようと思ったのか、そもそも「小池さん」だけの作品集にどのくらい需要があるのか……いろいろと疑問は湧いてくるものの、小池さんファンにとっては(もちろん藤子漫画ファンにとっても)大歓迎な一冊と言わざるを得ないだろう!  なんせ、今回収録された『小池さんの奇妙な生活』『オレ係長補佐』『赤紙きたる』『ある暑中休暇』『ゲゲゲのゲー』『添乗さん』といった作品たちは、60~70年代にかけて発表されたものの、そのほとんどが単行本はもちろん、全集などにも収録されてこなかった作品たちなのだ。……やっぱり、パッとしないルックスのおじさんが主人公だけに、「単行本にするほどでもないか」とか思われてたのかなぁ? なので、どうしても読みたければ古本屋で掲載当時の雑誌を探し回るか、国会図書館にでも行くしかないという、なかなか過酷なハードルが課せられていた。そんな作品たちが新刊で手軽に読めるなんて、秀樹カンゲキッ!(昭和ノリ)  というわけで、藤子ファンを自称しているボクにとっても、ほとんどが未読の作品だったのだけれど、いざ読んでみると、これがまたイイ感じに奇妙な雰囲気を漂わせている怪作ばかりなの。時期的に、『オバQ』をはじめ『怪物くん』や『ハットリくん』など、子ども向けの作品が大ヒットし、その反動で『笑ゥせぇるすまん』『魔太郎がくる!!』といった、やや大人に向けたブラックユーモア路線の漫画を描きはじめていた頃なので、まあどの作品もブラック&シュール全開なのだ。  とくに『ゲゲゲのゲー』なんて、主人公のコイケさんがなんだかんだで酒を飲んで泥酔し、最終的に「ゲゲゲェー」とゲロ吐くだけというシュール過ぎるにもほどがあるストーリーなんだもん。しかも連載で、毎回そんなことやってるんだよ!? さすが藤子不二雄A(アヴァンギャルド)。  まあ、おなじみの小池さんが、売れない漫画家、うだつのあがらないサラリーマン、ツアー添乗員……とさまざまなシチュエーションに身を置いて、奇妙な出来事に巻き込まれていくという、この異色作品集『小池さん!大集合』。描く作品、描く作品がヒットを飛ばしていた脂の乗り切った時期のA先生が、メインストリームな作品ではとても描けない実験的な内容に挑戦している作品群としても、読む価値は高いのではないだろうか。  ただ『小池さん!大集合』と謳うならば、2000年代に入ってから突如としてゴルフ誌で連載がはじまった『ホアー!! 小池さん』も収録して欲しかった……(まあ、単行本が出てるけど)。この作品も「ゴルフ+小池さん+笑ゥせぇるすまん」といった雰囲気のかなり珍妙なゴルフ漫画で、精神集中するといきなり小池さんの顔が超リアルタッチ(超怖い!)に変貌したりと、いろんな意味でみどころの多い作品なので、未読の方は『小池さん!大集合』と併せてこちらもぜひ読んでもらいたいところ。「一体、小池さんって何者なんだぁーッ!?」と、ますます小池ワールドが混乱すること必至だ。  余談だけど、小池さんには実在のモデルがいるというのは有名な話。藤子不二雄先生がかつてトキワ荘に住んでいた頃の漫画家仲間・鈴木伸一さんがモデルとなっているのだ(後にアニメの道へ進み、アニメ界の大御所となっている)。
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杉並アニメーションミュージアムの柱には、
A先生直筆の「小池さん」が!
 しかし、なぜ鈴木伸一さんがモデルなのに「小池さん」なのか。実は、鈴木さんが居候していた家の大家さんの名前が「小池さん」だったのだ。なので、おバケのQ太郎に登場した時も「小池さんの家に居候している鈴木さん」という設定だったのだが、家の表札に「小池」と描かれていたため、ラーメン食ってるあのキャラクター自体が「小池さん」だと勘違いされ、それが定着してしまったということらしい。  ちなみにこの鈴木伸一さん、現在では杉並区にある「杉並アニメーションミュージアム」というアニメ博物館の館長を務めており、ちょいちょいミュージアムにも顔を出しているので、そこに通っていれば、もしかしたらあの「小池さん」の実物に会えるかもしれないぞ! ……それにしても鈴木さん、自分がモデルとなったキャラクターが「ゲゲゲェー」とゲロ吐きまくる漫画を読んで、どう思ってたんだろうなぁ~。 (文=北村ヂン)

シュール過ぎるにもほどがある!? 名脇役・小池が大活躍『小池さん!大集合』

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『小池さん!大集合』(復刊ドットコム)
 藤子不二雄先生の漫画にちょいちょい登場してくる名脇役・小池さんを知っているだろうか。そう、ラーメンばっかり食べているあの人!  チリチリパーマにメガネ、フニャフニャの口(通称・カレーパンマン口)という特徴だらけのルックスでズルズルーッとラーメンをすすっている姿は、昭和生まれ世代ならば一度は目にしたことがあることだろう。いや、それどころか意外と平成生まれの人たちにも認知されているからビックリなのだ。  脳の半分くらいは藤子不二雄関連のことで埋め尽くされている藤子脳なボクは、すごく若い子たちと漫画の話をしていても「ルフィがさぁ」くらいの感覚で「小池さんがさぁ」みたいな話をしてしまいがち。それでも「あー、ラーメン大好きの!」と、ちゃんと反応してくれるからね。  小池さんが藤子漫画に初登場したのは『オバケのQ太郎』なので、おそらく1960年代頃のこと。その後の作品にも登場しているとはいえ、やはり『忍者ハットリくん』『パーマン』など古い漫画が中心なのに、今のヤングにまで認知されているというのはスゴイ! ある意味、ルフィや悟空級の国民的キャラクターと言っても過言ではないだろう(いや、さすがに過言かそれは!?)。そういや、シャ乱Qの「ラーメン大好き小池さんの唄」なんちゅう曲もあったしねぇ……(ま、あれはかなり表層的にしか小池さんを理解していないビミョーな曲でしたが)。  そんな小池さんですが、一般的に持たれているイメージとしては、いっつもラーメン食ってるだけで、大した活躍もしないのに妙に気になってしまう脇役キャラクター……といったところでしょう。確かに、ほとんどの作品でそんな役回りだというのは事実なんだけど、実は小池さんが主人公となり、あまりラーメンも食わず、アクティブに活動している漫画作品というのもあるのだ。……しかも、結構いっぱい。  で、なんとこの度、復刊ドットコムから、そんな小池さんが主人公となっている藤子不二雄A先生の作品(藤子・F・不二雄先生も『カイケツ小池さん』『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』という小池さんが主人公の作品を描かれているんですけどね)を一挙にまとめた作品集『小池さん!大集合』が刊行されたのだ。  どーしてこのタイミングで小池さん作品をまとめようと思ったのか、そもそも「小池さん」だけの作品集にどのくらい需要があるのか……いろいろと疑問は湧いてくるものの、小池さんファンにとっては(もちろん藤子漫画ファンにとっても)大歓迎な一冊と言わざるを得ないだろう!  なんせ、今回収録された『小池さんの奇妙な生活』『オレ係長補佐』『赤紙きたる』『ある暑中休暇』『ゲゲゲのゲー』『添乗さん』といった作品たちは、60~70年代にかけて発表されたものの、そのほとんどが単行本はもちろん、全集などにも収録されてこなかった作品たちなのだ。……やっぱり、パッとしないルックスのおじさんが主人公だけに、「単行本にするほどでもないか」とか思われてたのかなぁ? なので、どうしても読みたければ古本屋で掲載当時の雑誌を探し回るか、国会図書館にでも行くしかないという、なかなか過酷なハードルが課せられていた。そんな作品たちが新刊で手軽に読めるなんて、秀樹カンゲキッ!(昭和ノリ)  というわけで、藤子ファンを自称しているボクにとっても、ほとんどが未読の作品だったのだけれど、いざ読んでみると、これがまたイイ感じに奇妙な雰囲気を漂わせている怪作ばかりなの。時期的に、『オバQ』をはじめ『怪物くん』や『ハットリくん』など、子ども向けの作品が大ヒットし、その反動で『笑ゥせぇるすまん』『魔太郎がくる!!』といった、やや大人に向けたブラックユーモア路線の漫画を描きはじめていた頃なので、まあどの作品もブラック&シュール全開なのだ。  とくに『ゲゲゲのゲー』なんて、主人公のコイケさんがなんだかんだで酒を飲んで泥酔し、最終的に「ゲゲゲェー」とゲロ吐くだけというシュール過ぎるにもほどがあるストーリーなんだもん。しかも連載で、毎回そんなことやってるんだよ!? さすが藤子不二雄A(アヴァンギャルド)。  まあ、おなじみの小池さんが、売れない漫画家、うだつのあがらないサラリーマン、ツアー添乗員……とさまざまなシチュエーションに身を置いて、奇妙な出来事に巻き込まれていくという、この異色作品集『小池さん!大集合』。描く作品、描く作品がヒットを飛ばしていた脂の乗り切った時期のA先生が、メインストリームな作品ではとても描けない実験的な内容に挑戦している作品群としても、読む価値は高いのではないだろうか。  ただ『小池さん!大集合』と謳うならば、2000年代に入ってから突如としてゴルフ誌で連載がはじまった『ホアー!! 小池さん』も収録して欲しかった……(まあ、単行本が出てるけど)。この作品も「ゴルフ+小池さん+笑ゥせぇるすまん」といった雰囲気のかなり珍妙なゴルフ漫画で、精神集中するといきなり小池さんの顔が超リアルタッチ(超怖い!)に変貌したりと、いろんな意味でみどころの多い作品なので、未読の方は『小池さん!大集合』と併せてこちらもぜひ読んでもらいたいところ。「一体、小池さんって何者なんだぁーッ!?」と、ますます小池ワールドが混乱すること必至だ。  余談だけど、小池さんには実在のモデルがいるというのは有名な話。藤子不二雄先生がかつてトキワ荘に住んでいた頃の漫画家仲間・鈴木伸一さんがモデルとなっているのだ(後にアニメの道へ進み、アニメ界の大御所となっている)。
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杉並アニメーションミュージアムの柱には、
A先生直筆の「小池さん」が!
 しかし、なぜ鈴木伸一さんがモデルなのに「小池さん」なのか。実は、鈴木さんが居候していた家の大家さんの名前が「小池さん」だったのだ。なので、おバケのQ太郎に登場した時も「小池さんの家に居候している鈴木さん」という設定だったのだが、家の表札に「小池」と描かれていたため、ラーメン食ってるあのキャラクター自体が「小池さん」だと勘違いされ、それが定着してしまったということらしい。  ちなみにこの鈴木伸一さん、現在では杉並区にある「杉並アニメーションミュージアム」というアニメ博物館の館長を務めており、ちょいちょいミュージアムにも顔を出しているので、そこに通っていれば、もしかしたらあの「小池さん」の実物に会えるかもしれないぞ! ……それにしても鈴木さん、自分がモデルとなったキャラクターが「ゲゲゲェー」とゲロ吐きまくる漫画を読んで、どう思ってたんだろうなぁ~。 (文=北村ヂン)