“公安の魔物”再び――『外事警察 その男に騙されるな』

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6月2日(土)全国公開  (c)2012『外事警察』製作委員会
 早いもので今年前半の締めくくりとなる6月に突入。ゴールデンウィークと夏休みの谷間ということで、幅広い世代の動員を見込む娯楽超大作やファミリー向け映画の公開が減るかわりに、中規模予算の秀作、大人向けの実力作が続々と封切られる時期でもある。今週はそうした最新作の中から3本をピックアップしたい。  6月2日公開の『外事警察 その男に騙されるな』は、警視庁公安部外事課による国際テロリズムとの戦いをサスペンスフルに描いた2009年放送のNHKドラマを映画化。11年の震災後、混乱に乗じて東北の研究施設から核起爆装置の技術が盗まれ、同じ頃朝鮮半島から日本にウランが持ち込まれたとの情報がCIAから入る。かつて強引な捜査手法が問題になり外事課から追放された住本(渡部篤郎)が呼び戻され、テロ組織の企みを未然に防ぐべく外事4課のメンバーらと活動開始。一方、外事警察の動きを察知した韓国NIS(国家情報院)も、日本に送り込んだ潜入捜査官に極秘作戦を指示。情報戦と実力行使による三つ巴の戦いがエスカレートしていく。  麻生幾の小説『外事警察 CODE:ジャスミン』(NHK出版)を原案に、堀切園健太郎監督ら製作陣が、警察関係者から原子力研究者まで幅広く取材を重ねてリアリティーを追求。知られざる外事警察の世界をはじめ、日本の核技術がテロに悪用される可能性、朝鮮半島との緊張関係など、従来の邦画ではタブー視されがちだった“裏の現実”を緊張感たっぷりに描き出した。真木よう子、尾野真千子、田中泯、遠藤憲一、余貴美子、石橋凌など豪華共演陣が、重厚な映像とスピーディーな展開を支える。扱うテーマはシリアスだが、行き詰まる心理戦と“だまされる快感”にゾクゾクする骨太の力作だ。  6月1日に封切られる『君への誓い』は、実話に基づく奇跡のラブストーリー。幸せな新婚生活を送っていたレオとペイジはある日、交通事故に遭う。昏睡から目覚めたペイジは記憶の一部を失っていて、レオとの出会いも結婚も覚えていない。一向に記憶が戻らないペイジに対し、レオはペイジの心をもう一度射止めようと決意。だが、2人の間にペイジの両親や元婚約者が立ちはだかる。  ペイジ役に『きみに読む物語』(04)、『きみがぼくを見つけた日』(09)など恋愛系作品のヒロインが続くレイチェル・マクアダムス、レオ役に『G.I.ジョー』シリーズのチャニング・テイタム。男性からすれば、相思相愛で結婚した嫁が、事故の後遺症で夫の自分を覚えていないという衝撃の展開だが、実際にこうした体験をした夫婦の手記が原作だというからさらに驚きだ。記憶を失い不安を抱えるペイジを、一途な愛で支えるレオの姿に、パートナーへの想いや感謝を新たにする観客が続出しそう。爽やかな感動を分かち合えるデートムービーとしておすすめしたい。  同じく6月1日公開の『ミッシング ID』は、『トワイライト』シリーズのジェイコブ役で人気のテイラー・ロートナーが主演したアクションサスペンス。高校生のネイサンはある日、たまたまアクセスした失踪者サイトで幼少時の自分の写真を見つけ、愕然とする。ネイサンは隠された過去を両親に問いただすが、秘かに動き出した組織の手が一家に迫り……。  俳優デビューの前は空手の世界ジュニアチャンピオンという経歴を持つロートナーが、天性のアクションセンスを発揮する本作。『ボーン・アイデンティティー』(02)の製作陣が参加し、“自分は誰だ?”との疑念を抱く主人公が敵と戦いながら真実に迫るというプロットを、新たな青春活劇に引き継いだ。ネイサンと行動を共にする幼馴染みのカレンに扮するリリー・コリンズは、フィル・コリンズの実娘で、本作ではどちらかといえば“地味カワ”な印象。とはいえ、ターセム・シン監督最新作『白雪姫と鏡の女王』(9月公開)では主役の白雪姫役に抜擢されるなど、今後さまざまな魅力を見せてくれそうな注目株だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『外事警察 その男に騙されるな』作品情報 <http://eiga.com/movie/57411/> 『君への誓い』作品情報 <http://eiga.com/movie/57842/> 『ミッシング ID』作品情報 <http://eiga.com/movie/57229/>

ネクロフィリアの波がアニメにも!? ゾンビに萌えろ『さんかれあ』

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『さんかれあ』公式サイトより
 ありとあらゆる性癖を貪欲に飲み込み、一般化していく昨今の「萌え」カルチャー。たとえば、三次元でのセクシャリティは一点の曇りもなくノンケな男子が、二次元を消費する際には女装した美少年(いわゆる「男の娘」)に萌え狂っている様子も、もはや珍しい風景ではなくなった。時はまさに性器末、もとい世紀末といった感じである。21世紀はまだ最初の10年を少し過ぎたばかりだけれども。  現在放送中のアニメ『さんかれあ』(TBS系)では、特殊性癖の中でもかなりエクストリーム寄りな、ネクロフィリア(屍体愛好)が作品のテーマになっている。子供の頃からの筋金入りのゾンビ映画オタクで(余談だが、タイトルの元ネタである『サンゲリア』を筆頭に、本作にはゾンビ映画オマージュネタが満載)、ゾンビ化した女の子との恋愛願望を長年抱き続けてきた主人公が、ひょんなことからゾンビになってしまった世間知らずのお嬢様と繰り広げる、甘酸っぱくて少し切ないドキドキ同居ラブストーリーが毎週地上波でオンエアされているというのは、驚くべき事態だというほかない。もともと原作コミック(はっとりみつる作、講談社刊)が人気を集めていたとはいえ、まさに性器(以下略)である。  ……と、ひとくさり良識派ぶってみたものの、ゾンビになってしまったヒロインの散華 礼弥(さんか・れあ)ちゃんは実にかわいいのである。性格も声もかわいいが、なんといっても、ゾンビ化したことが原因の青白い肌と真っ赤な瞳がたまらない。ほかにも、死後硬直してしまったり、ときおり理性を失ってみたり、脳のリミッターが外れているせいで馬鹿力を発揮してみたり、ゾンビならではの魅力がひしひしと作品から伝わってくる。二次元の世界でなら、ネクロフィリアもいけるかもしれない。「匂い」という、リアル死姦での最大のハードルもないし。思わずそんなことを考えてしまうだけの説得力がある。  本作が初監督作である畠山守は、『荒川アンダー ザ ブリッジ』『魔法少女まどか☆マギカ』など、新房昭之監督作品に「小俣真一」名義で参加していた。色でキーアイテムを際立たせる鮮烈な色彩設計や、雄弁に情報を物語る象徴的な画面構成など、どこか新房からの影響を意識させるスタイリッシュさがあることも、ゾンビに萌えることへの抵抗感を薄れさせているように思える。  ここから、日本社会にネクロフィリアがライトなフェティッシュとして根付くのかもしれない……ゾンビ娘ブームに乗り遅れるな!  ぞんび とても いいです  かわゆい  うま (文=麻枝雅彦)

ネクロフィリアの波がアニメにも!? ゾンビに萌えろ『さんかれあ』

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『さんかれあ』公式サイトより
 ありとあらゆる性癖を貪欲に飲み込み、一般化していく昨今の「萌え」カルチャー。たとえば、三次元でのセクシャリティは一点の曇りもなくノンケな男子が、二次元を消費する際には女装した美少年(いわゆる「男の娘」)に萌え狂っている様子も、もはや珍しい風景ではなくなった。時はまさに性器末、もとい世紀末といった感じである。21世紀はまだ最初の10年を少し過ぎたばかりだけれども。  現在放送中のアニメ『さんかれあ』(TBS系)では、特殊性癖の中でもかなりエクストリーム寄りな、ネクロフィリア(屍体愛好)が作品のテーマになっている。子供の頃からの筋金入りのゾンビ映画オタクで(余談だが、タイトルの元ネタである『サンゲリア』を筆頭に、本作にはゾンビ映画オマージュネタが満載)、ゾンビ化した女の子との恋愛願望を長年抱き続けてきた主人公が、ひょんなことからゾンビになってしまった世間知らずのお嬢様と繰り広げる、甘酸っぱくて少し切ないドキドキ同居ラブストーリーが毎週地上波でオンエアされているというのは、驚くべき事態だというほかない。もともと原作コミック(はっとりみつる作、講談社刊)が人気を集めていたとはいえ、まさに性器(以下略)である。  ……と、ひとくさり良識派ぶってみたものの、ゾンビになってしまったヒロインの散華 礼弥(さんか・れあ)ちゃんは実にかわいいのである。性格も声もかわいいが、なんといっても、ゾンビ化したことが原因の青白い肌と真っ赤な瞳がたまらない。ほかにも、死後硬直してしまったり、ときおり理性を失ってみたり、脳のリミッターが外れているせいで馬鹿力を発揮してみたり、ゾンビならではの魅力がひしひしと作品から伝わってくる。二次元の世界でなら、ネクロフィリアもいけるかもしれない。「匂い」という、リアル死姦での最大のハードルもないし。思わずそんなことを考えてしまうだけの説得力がある。  本作が初監督作である畠山守は、『荒川アンダー ザ ブリッジ』『魔法少女まどか☆マギカ』など、新房昭之監督作品に「小俣真一」名義で参加していた。色でキーアイテムを際立たせる鮮烈な色彩設計や、雄弁に情報を物語る象徴的な画面構成など、どこか新房からの影響を意識させるスタイリッシュさがあることも、ゾンビに萌えることへの抵抗感を薄れさせているように思える。  ここから、日本社会にネクロフィリアがライトなフェティッシュとして根付くのかもしれない……ゾンビ娘ブームに乗り遅れるな!  ぞんび とても いいです  かわゆい  うま (文=麻枝雅彦)

パーティ感覚で楽しく仕事ができちゃう!? 日本初のコワーキング本『つながりの仕事術』

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PAX Coworkingでお仕事中の佐谷恭氏。「仕事終わりにコワーキング仲間で一杯
やることが多いですね」とすごく楽しそう。
 これからのビジネスシーンで役立つキーワードになりそうなのが、“コワーキング”。英語でcoworking。一緒に仕事するという意味。これまでにも起業家やフリーランサー向けにレンタルオフィス、シェアオフィスというものはあったが、これは個人が払うオフィス代の負担を軽くするためのもの。それに対し、コワーキングは働く人同士がコミュニケーションすることの効果に着目している。多種多様な業種の人たちが同じオフィスに集まって働き、仕事の合間に交わす雑談などから新しいアイデアを生み出したり、刺激を受けたりしようというのが狙いだ。会話のない静まり返ったオフィスよりも、多少ざわざわしている活気のある職場のほうが仕事がはかどるという人には最適な空間だろう。時間や気が合う仲間が見つかれば、一緒にランチに出掛けたり、仕事帰りに一杯やるのもOK。意外な人的ネットワークが広がる可能性もある。2006年ごろから米国でコワーキングスタイルは生まれ、日本でもこの1〜2年、各地でコワーキングスペースが次々と誕生している。そんなコワーキングの概念と利用方法を紹介した日本初のコワーキング本が、5月11日に発売された『つながりの仕事術 「コワーキング」を始めよう』(洋泉社新書)だ。  『つながりの仕事術』は東京で初となるコワーキングスペース「PAX Coworking」を主宰する佐谷恭氏、『「どこでもオフィス」仕事術』(ダイヤモンド社)の著者・中谷健一氏、仕事はすべてコワーキング関連で受注・参加しているというデザイナーの藤木穣氏の3人による共著。第1章では、佐谷氏がコワーキングというワークスタイルがどのようにして生まれたのかという歴史的背景とコワーキングで働くメリットについて解説。第2章では、仕事の9割をオフィス外で行っているという中谷氏がコワーキングスペースの有効活用方法をレクチャー。第3章では、藤木氏が海外や国内のコワーキングスペースで生まれたビジネス事例をレポート。さらに第4章では、各地のコワーキングスペースを具体的に紹介している。国内では神戸・東京・大阪・上田・金沢・横浜……と広がりつつあるとのこと。都内だけを見ても、会員数110人以上という国内最大級のコワーキングスペース「渋谷co-ba」、英会話教室などの勉強会を積極的に開いている「下北沢オープンソースカフェ」、猫がオフィスで伸び伸びと過ごしている癒し系の仕事場「ネコワーキング」など様々なタイプのコワーキングスペースが運営されている。  特定のオフィスに縛られずに、カフェやレストランなどをオフィス代わりに活用するワークスタイルは、ノマド(遊牧民)ワーカーという呼び名で浸透しつつあるが、ノマドワーカーにとってもコワーキングスペースは魅力的な拠点となっている。また、フリーランサーが陥りがちな孤独感に悩まされることもない。本書では、自分に合ったコワーキングスペースを見つけるために、“ドロップイン”と呼ばれるお試し利用を薦めている。多くのコワーキングスペースは、1日1,000円程度でドロップイン利用ができる。まず、ドロップイン利用してみて、そのコワーキングスペースの雰囲気を気に入れば“メンバーシップ”契約すればいいというわけだ。いくつかのコワーキングスペースに参加して、その日の仕事内容や気分で使い分けることも可能。いろんなコワーキングスペースを無料で行き来できるよう、海外のコワーキングスペースとも連携した“コワーキングビザ”も存在する。また、コワーキングというワークスタイルは“ジェリー”とも呼ばれる。職種や性別・年齢の異なる様々な人たちがひとつに集まる様子を、ビン詰めの砂糖菓子ジェリー・ビーンズに例えたもの。コワーキングスペースやカフェでちょっとしたイベントや勉強会を開く際、フェイスブックなどで「ジェリーしよう!」と呼び掛けると好奇心旺盛な人たちが続々と集まるそうだ。  コワーキングの概念は本書を読むことで理解できるが、実際のところ、コワーキングスペースとはどういう空間なのか。著者のひとりである佐谷氏が主宰する「PAX Coworking」を訪ねてみた。世田谷区経堂の農大通り商店街にある「PAX Coworking」は8人掛けの大テーブルをメーンに小ぶりのテーブルなども置かれた落ち着いた内装のオフィス空間。受付はなく、大テーブルに置かれたノートに名前と連絡先(それと面白いコメント)を記入すればOKとのこと。この日は正午という早い時間帯だったため、人影はまばらだったが、ノートパソコンを前にした佐谷氏がニコニコと待っていてくれた。
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経堂にあるPAX Coworkingの様子。
ひとりで集中して働くのに疲れた人は、気分転
換狙いでコワーキングスペースを利用するといい
かも。
佐谷 「日によって、集まる顔ぶれも人数もバラバラなんです。普段は10〜20人前後で、イベントをやる日は40人くらい集まったこともあります。受付はありません。初めて来た方は戸惑うでしょうから、ボクがここで仕事をしているときは『こちらのテーブルが空いているから、どうぞ』と最初に声を掛けるようにしています。そのくらいですね。ここはしゃべりながら仕事をするのが好きな人たちが集まっているスペース。初めて来た方でも5分もすれば、雰囲気が分かって馴染んでしまう(笑)。オープン前は入会証や会員規約とか作ったほうがいいのかなとも考えたんですけど、そういうのはなしで参加者が自由に自発的にやっていくほうがコワーキングらしいと思い、作らないことにしたんです。メンバーは現在のところIT関係者が多いんですが、他にも農業支援者、雑誌編集者、研究者と様々です。地方の企業に勤めている営業マンで東京での拠点として活用している人もいれば、将来的に起業することを考えて自費で通っているサラリーマンの方もいます。いろんな人がいろんな使い方をしていますね。フリーライターの方はまだ少ないので、もっと集まってくれるとうれしいんですけど(笑)」  佐谷氏によると、コワーキングスペースの運営は登記上は不動産ビジネスに分類されるが、実態はコミュニティビジネスなのだそうだ。学生の頃から海外旅行好きで、いろんな人たちと交流する楽しさを覚えた佐谷氏は、会社員やフリーランスを経験後に世界初のパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を2007年11月に開店。様々な人たちが触れ合えるよう相席を推奨し、誰でも参加できる立食パーティを月に数回開いている。このオープンな雰囲気のレストラン経営をきっかけに、2010年8月に佐谷氏は東京初となるコワーキングスペース「PAX Coworking」を立ち上げた。 佐谷 「意識して明るい内装にしたこともありますが、パクチーハウスで食事をするお客さんたちはニコニコと食事を味わいながら、他のお客さんとの交流も楽しんでいる。お店にいる間はネガティブなことは言わないんですよ。なんでだろうなぁと考えていたら、『食事のときは楽しく過ごしたい』ということだと気づいたんです。そこで、食事時間を楽しく過ごすだけでも幸せな気分になるんだから、1日楽しく仕事をすることができればもっと素晴らしいんじゃないかと思ったんです。そのときはまだ“コワーキング”という言葉を知らず、漠然と“楽しいオフィス”というイメージだけでした。パーティするみたいに、いろんな人たちが集まって賑やかに仕事する場があればいいなと。パクチーハウスを開店したときもそうでしたが、“楽しいオフィス”“パーティするようなオフィス”とかボクが言い出したので周囲は心配したと思いますよ(笑)。そのうち、ネットを見ていたら、すごく楽しそうに働いている人たちの写真が目に留まったんです。それがロンドンのコワーキングスペース。その写真を見て、『自分と同じことを考えている人がいて、すでに実践しているんだ』と感激したんです。ちょうど、パクチーハウスの上のフロアが空いていたので、同じビル内でPAX Coworkingを始めたというわけなんです。まだまだコワーキングという言葉を広く浸透させていかなくちゃいけない段階ですが、『私もコワーキングスペースを開きたいんですけど』という問い合わせが地方も含めてかなりあるんですよ」  どうやらコワーキングスペースとは、廉価で利用できて、初対面の人とも情報交換できるゲストハウスのオフィス版、ソーシャルネットワークのリアル版といったもののようだ(ただし、それぞれのコワーキングスペースで雰囲気がずいぶん違うのでご注意を)。コワーキングスペースで働くことのメリットを、改めて佐谷氏に語ってもらおう。 佐谷 「気になったことを、隣にいる人にその場でサッと訊けることじゃないですか。ネットで調べてもいいんでしょうけど、コワーキングスペースに集まっている人たちはそれぞれの道のプロとして働いている人たちなので、必ずしもその質問に対する専門家じゃない場合でも、しっくりくる答えが返ってくるんです。この本を書いているときも、『コワーキングのメリットって、なんだろうな?』と原稿を書く手が止まったときに、隣にいる人に『どこにメリットを感じてる?』と質問しながら原稿を書き進めたんです(笑)。共著の藤木さんもここで仕事をしていたので打ち合わせがすぐにできたし、編集者もいて目を光らせていたので怠けることもできませんでした(苦笑)。フリーランサーだけでなく、会社勤めの人もコワーキングの良さに気づき始めたみたいです。ある雑誌の編集スタッフが『ここで企画会議をできたら面白いな』と話していましたね。どうしても同じ顔ぶれで企画会議を開いていると煮詰まってしまいますから。その点、コワーキングスペースで企画会議を開けば、たまたま居合わせたメンバーが面白がって無責任なアイデアをいろいろ提案してくると思いますよ(笑)。広く自由なアイデアを募る企画会議なら有効でしょうね。ノマドワーカーやコワーカーが将来的に増えていっても、社会の半数を占めるようなことにはならないと思います。でも、コワーキング的な発想や考え方が、企業や社会でも広まるとすごく楽しくなるんじゃないでしょうか」  どうです、みなさん。パーティするみたいに仕事してみませんか? (取材・文=長野辰次) ●さたに・きょう 1975年神奈川県生まれ。富士通、リサイクルワン、ライブドアを経て、07年に株式会社旅と平和を設立。世界初のパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を経堂にオープン。10年より東京初のコワーキングスペース「PAX Coworking」を主宰している。<http://pax.coworking.jp>

パーティ感覚で楽しく仕事ができちゃう!? 日本初のコワーキング本『つながりの仕事術』

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PAX Coworkingでお仕事中の佐谷恭氏。「仕事終わりにコワーキング仲間で一杯
やることが多いですね」とすごく楽しそう。
 これからのビジネスシーンで役立つキーワードになりそうなのが、“コワーキング”。英語でcoworking。一緒に仕事するという意味。これまでにも起業家やフリーランサー向けにレンタルオフィス、シェアオフィスというものはあったが、これは個人が払うオフィス代の負担を軽くするためのもの。それに対し、コワーキングは働く人同士がコミュニケーションすることの効果に着目している。多種多様な業種の人たちが同じオフィスに集まって働き、仕事の合間に交わす雑談などから新しいアイデアを生み出したり、刺激を受けたりしようというのが狙いだ。会話のない静まり返ったオフィスよりも、多少ざわざわしている活気のある職場のほうが仕事がはかどるという人には最適な空間だろう。時間や気が合う仲間が見つかれば、一緒にランチに出掛けたり、仕事帰りに一杯やるのもOK。意外な人的ネットワークが広がる可能性もある。2006年ごろから米国でコワーキングスタイルは生まれ、日本でもこの1〜2年、各地でコワーキングスペースが次々と誕生している。そんなコワーキングの概念と利用方法を紹介した日本初のコワーキング本が、5月11日に発売された『つながりの仕事術 「コワーキング」を始めよう』(洋泉社新書)だ。  『つながりの仕事術』は東京で初となるコワーキングスペース「PAX Coworking」を主宰する佐谷恭氏、『「どこでもオフィス」仕事術』(ダイヤモンド社)の著者・中谷健一氏、仕事はすべてコワーキング関連で受注・参加しているというデザイナーの藤木穣氏の3人による共著。第1章では、佐谷氏がコワーキングというワークスタイルがどのようにして生まれたのかという歴史的背景とコワーキングで働くメリットについて解説。第2章では、仕事の9割をオフィス外で行っているという中谷氏がコワーキングスペースの有効活用方法をレクチャー。第3章では、藤木氏が海外や国内のコワーキングスペースで生まれたビジネス事例をレポート。さらに第4章では、各地のコワーキングスペースを具体的に紹介している。国内では神戸・東京・大阪・上田・金沢・横浜……と広がりつつあるとのこと。都内だけを見ても、会員数110人以上という国内最大級のコワーキングスペース「渋谷co-ba」、英会話教室などの勉強会を積極的に開いている「下北沢オープンソースカフェ」、猫がオフィスで伸び伸びと過ごしている癒し系の仕事場「ネコワーキング」など様々なタイプのコワーキングスペースが運営されている。  特定のオフィスに縛られずに、カフェやレストランなどをオフィス代わりに活用するワークスタイルは、ノマド(遊牧民)ワーカーという呼び名で浸透しつつあるが、ノマドワーカーにとってもコワーキングスペースは魅力的な拠点となっている。また、フリーランサーが陥りがちな孤独感に悩まされることもない。本書では、自分に合ったコワーキングスペースを見つけるために、“ドロップイン”と呼ばれるお試し利用を薦めている。多くのコワーキングスペースは、1日1,000円程度でドロップイン利用ができる。まず、ドロップイン利用してみて、そのコワーキングスペースの雰囲気を気に入れば“メンバーシップ”契約すればいいというわけだ。いくつかのコワーキングスペースに参加して、その日の仕事内容や気分で使い分けることも可能。いろんなコワーキングスペースを無料で行き来できるよう、海外のコワーキングスペースとも連携した“コワーキングビザ”も存在する。また、コワーキングというワークスタイルは“ジェリー”とも呼ばれる。職種や性別・年齢の異なる様々な人たちがひとつに集まる様子を、ビン詰めの砂糖菓子ジェリー・ビーンズに例えたもの。コワーキングスペースやカフェでちょっとしたイベントや勉強会を開く際、フェイスブックなどで「ジェリーしよう!」と呼び掛けると好奇心旺盛な人たちが続々と集まるそうだ。  コワーキングの概念は本書を読むことで理解できるが、実際のところ、コワーキングスペースとはどういう空間なのか。著者のひとりである佐谷氏が主宰する「PAX Coworking」を訪ねてみた。世田谷区経堂の農大通り商店街にある「PAX Coworking」は8人掛けの大テーブルをメーンに小ぶりのテーブルなども置かれた落ち着いた内装のオフィス空間。受付はなく、大テーブルに置かれたノートに名前と連絡先(それと面白いコメント)を記入すればOKとのこと。この日は正午という早い時間帯だったため、人影はまばらだったが、ノートパソコンを前にした佐谷氏がニコニコと待っていてくれた。
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経堂にあるPAX Coworkingの様子。
ひとりで集中して働くのに疲れた人は、気分転
換狙いでコワーキングスペースを利用するといい
かも。
佐谷 「日によって、集まる顔ぶれも人数もバラバラなんです。普段は10〜20人前後で、イベントをやる日は40人くらい集まったこともあります。受付はありません。初めて来た方は戸惑うでしょうから、ボクがここで仕事をしているときは『こちらのテーブルが空いているから、どうぞ』と最初に声を掛けるようにしています。そのくらいですね。ここはしゃべりながら仕事をするのが好きな人たちが集まっているスペース。初めて来た方でも5分もすれば、雰囲気が分かって馴染んでしまう(笑)。オープン前は入会証や会員規約とか作ったほうがいいのかなとも考えたんですけど、そういうのはなしで参加者が自由に自発的にやっていくほうがコワーキングらしいと思い、作らないことにしたんです。メンバーは現在のところIT関係者が多いんですが、他にも農業支援者、雑誌編集者、研究者と様々です。地方の企業に勤めている営業マンで東京での拠点として活用している人もいれば、将来的に起業することを考えて自費で通っているサラリーマンの方もいます。いろんな人がいろんな使い方をしていますね。フリーライターの方はまだ少ないので、もっと集まってくれるとうれしいんですけど(笑)」  佐谷氏によると、コワーキングスペースの運営は登記上は不動産ビジネスに分類されるが、実態はコミュニティビジネスなのだそうだ。学生の頃から海外旅行好きで、いろんな人たちと交流する楽しさを覚えた佐谷氏は、会社員やフリーランスを経験後に世界初のパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を2007年11月に開店。様々な人たちが触れ合えるよう相席を推奨し、誰でも参加できる立食パーティを月に数回開いている。このオープンな雰囲気のレストラン経営をきっかけに、2010年8月に佐谷氏は東京初となるコワーキングスペース「PAX Coworking」を立ち上げた。 佐谷 「意識して明るい内装にしたこともありますが、パクチーハウスで食事をするお客さんたちはニコニコと食事を味わいながら、他のお客さんとの交流も楽しんでいる。お店にいる間はネガティブなことは言わないんですよ。なんでだろうなぁと考えていたら、『食事のときは楽しく過ごしたい』ということだと気づいたんです。そこで、食事時間を楽しく過ごすだけでも幸せな気分になるんだから、1日楽しく仕事をすることができればもっと素晴らしいんじゃないかと思ったんです。そのときはまだ“コワーキング”という言葉を知らず、漠然と“楽しいオフィス”というイメージだけでした。パーティするみたいに、いろんな人たちが集まって賑やかに仕事する場があればいいなと。パクチーハウスを開店したときもそうでしたが、“楽しいオフィス”“パーティするようなオフィス”とかボクが言い出したので周囲は心配したと思いますよ(笑)。そのうち、ネットを見ていたら、すごく楽しそうに働いている人たちの写真が目に留まったんです。それがロンドンのコワーキングスペース。その写真を見て、『自分と同じことを考えている人がいて、すでに実践しているんだ』と感激したんです。ちょうど、パクチーハウスの上のフロアが空いていたので、同じビル内でPAX Coworkingを始めたというわけなんです。まだまだコワーキングという言葉を広く浸透させていかなくちゃいけない段階ですが、『私もコワーキングスペースを開きたいんですけど』という問い合わせが地方も含めてかなりあるんですよ」  どうやらコワーキングスペースとは、廉価で利用できて、初対面の人とも情報交換できるゲストハウスのオフィス版、ソーシャルネットワークのリアル版といったもののようだ(ただし、それぞれのコワーキングスペースで雰囲気がずいぶん違うのでご注意を)。コワーキングスペースで働くことのメリットを、改めて佐谷氏に語ってもらおう。 佐谷 「気になったことを、隣にいる人にその場でサッと訊けることじゃないですか。ネットで調べてもいいんでしょうけど、コワーキングスペースに集まっている人たちはそれぞれの道のプロとして働いている人たちなので、必ずしもその質問に対する専門家じゃない場合でも、しっくりくる答えが返ってくるんです。この本を書いているときも、『コワーキングのメリットって、なんだろうな?』と原稿を書く手が止まったときに、隣にいる人に『どこにメリットを感じてる?』と質問しながら原稿を書き進めたんです(笑)。共著の藤木さんもここで仕事をしていたので打ち合わせがすぐにできたし、編集者もいて目を光らせていたので怠けることもできませんでした(苦笑)。フリーランサーだけでなく、会社勤めの人もコワーキングの良さに気づき始めたみたいです。ある雑誌の編集スタッフが『ここで企画会議をできたら面白いな』と話していましたね。どうしても同じ顔ぶれで企画会議を開いていると煮詰まってしまいますから。その点、コワーキングスペースで企画会議を開けば、たまたま居合わせたメンバーが面白がって無責任なアイデアをいろいろ提案してくると思いますよ(笑)。広く自由なアイデアを募る企画会議なら有効でしょうね。ノマドワーカーやコワーカーが将来的に増えていっても、社会の半数を占めるようなことにはならないと思います。でも、コワーキング的な発想や考え方が、企業や社会でも広まるとすごく楽しくなるんじゃないでしょうか」  どうです、みなさん。パーティするみたいに仕事してみませんか? (取材・文=長野辰次) ●さたに・きょう 1975年神奈川県生まれ。富士通、リサイクルワン、ライブドアを経て、07年に株式会社旅と平和を設立。世界初のパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を経堂にオープン。10年より東京初のコワーキングスペース「PAX Coworking」を主宰している。<http://pax.coworking.jp>

登壇者もファンも「はいだらー!」 「Z.O.E HD EDITION」プレミアムイベントレポート

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 ハイスピードロボットアクションゲーム『Z.O.E』シリーズのHD版『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』(PlayStation®3/Xbox360®)発売を記念し、その仕様や発売日など、最新情報・未公表情報をエンタテインメント仕立てで発表するお披露目イベント「ZONE OF THE ENDERS HD(はいだら)-NIGHT 宇宙最速~ReBOOT Preview~」が、5月25日夜に東京・新宿バルト9にて行われた。 イベント開始からおよそ1時間40分が経過した終盤、「ずばり『Z.O.E』の続編はどうなっているんでしょうか!?」と司会者に質問された同シリーズプロデューサーの小島秀夫監督は、次のように答えた。 「僕らスタッフも『Z.O.E』をすごく愛しているので、なんとかしようということになっているんですが、なかなかスタッフが割けないということがありまして。今はFOX ENGINEに載せて実験をしています」  その「実験」を担当する鳥山亮介プロデューサーが「百聞は一見に如かずということで、映像をご覧いただきたいと思っています」と言うと、スクリーンにはオービタルフレーム(作品中の自機)のCGモデルとメカニックデザインの新川洋司氏が描いたメカニック、キャラクターのスケッチが映し出された。
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 今の時点では、SFである現行2作『ZONE OF THE ENDERS Z.O.E』(以下『Z.O.E』)『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』(以下『ANUBIS』)に対してファンタジー風の外見を採った方向性を模索中ということしかわかっていないが、「ENDERS PROJECT」と題して研究、開発に着手していることは明言された。  小島監督によると「ゲーム性を変えるつもりはまったくありません」とのことなので、世界観やヴィジュアルの変化がゲーム性、ゲーム画面にどのような影響を与えるかが気になるところだ。  『Z.O.E』シリーズ最新作を体験できるのはまだ先のことになりそうだが、『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』がすぐ近くに迫っている。  この日に発表された発売日は10月25日。『Z.O.E』『ANUBIS』2作をHD化して収録した通常版はパッケージ版が3,980円(税込)と、リーズナブルな価格設定。8,980円(税込)の『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION PREMIUM PACKAGE』には『Z.O.E』『ANUBIS』限定版同梱ブックレットを合本した「CHRONICLE BOOK(歴史の書)」、メイキング要素をふんだんに収録した新規制作のブックレット「ReBOOT BOOK(再起動の書)」、テーマ曲や、リミックス曲を収録した音楽CD「ZONE OF THE ENDERS ReBOOT EDITION」を同梱。また9,980円(税込)の『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION PREMIUM PACKAGE コナミスタイル特別版』には、『~PREMIUM PACKAGE』の内容に加え、新川氏が描き下ろした「IDOLO」イラスト特製スリーブによるBlu-rayディスク 『ZONE OF THE ENDERS Z.O.E 2167 IDOLO』(2001年発売のOVA)が同梱される。  2001年の『Z.O.E』から2年後に発売された『ANUBIS』ではマシンスペックの限界を超えた描写力も手伝い、カルトな人気をほしいままにした。あまりに早すぎた傑作として語り継がれるこのシリーズが1280×720の高精細度HD画質となった『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』は、未体験、未見のユーザーにとっては完全新作にも等しいタイトルとして期待がもてる。  秒間フレームレートの60フレーム化、ワイドスクリーン化、最先端のアップレゾリューション技術によるアニメーションの高解像度化はもちろん、制作スタッフのこだわりでコックピットのモニターCGが描き変えられるなど、グレードアップできることはすべてやり尽くした、リメイクならぬ「ReBOOT」作。イベントのタイトルにもなっているように、単なる移植ではなく、『Z.O.E』に時代が追いついたいま、シリーズそのものを再起動しようという意図が込められたHD版だといえる。
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   「『ブレードランナー』が上映された“聖地”です」と小島監督は冒頭に語ったが、いちゲームソフトの発表会をバルト9で行うのは前代未聞。キャスト、スタッフを集めての思い出トーク、生アフレコがあり、『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』のために新たにつくられた5分間の新オープニングムービーが上映され、最後には「~HD-NIGHT EDITION~」として『ANUBIS』のメインテーマ「BEYOND THE BOUNDS」が生で歌われるなど、過剰なまでに気合が入ったイベントとなった。  なおイベント名にある「はいだら」は、『ANUBIS』の女性キャラクター、ケン・マリネリスが叫ぶ謎のセリフ。この日も結局、その意味は明かされなかったが、登壇者と来場のファンはこぞって「はいだらー!」を連呼、高揚したテンションに包まれ、新宿の夜は更けていった。

登壇者もファンも「はいだらー!」 「Z.O.E HD EDITION」プレミアムイベントレポート

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 ハイスピードロボットアクションゲーム『Z.O.E』シリーズのHD版『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』(PlayStation®3/Xbox360®)発売を記念し、その仕様や発売日など、最新情報・未公表情報をエンタテインメント仕立てで発表するお披露目イベント「ZONE OF THE ENDERS HD(はいだら)-NIGHT 宇宙最速~ReBOOT Preview~」が、5月25日夜に東京・新宿バルト9にて行われた。 イベント開始からおよそ1時間40分が経過した終盤、「ずばり『Z.O.E』の続編はどうなっているんでしょうか!?」と司会者に質問された同シリーズプロデューサーの小島秀夫監督は、次のように答えた。 「僕らスタッフも『Z.O.E』をすごく愛しているので、なんとかしようということになっているんですが、なかなかスタッフが割けないということがありまして。今はFOX ENGINEに載せて実験をしています」  その「実験」を担当する鳥山亮介プロデューサーが「百聞は一見に如かずということで、映像をご覧いただきたいと思っています」と言うと、スクリーンにはオービタルフレーム(作品中の自機)のCGモデルとメカニックデザインの新川洋司氏が描いたメカニック、キャラクターのスケッチが映し出された。
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 今の時点では、SFである現行2作『ZONE OF THE ENDERS Z.O.E』(以下『Z.O.E』)『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』(以下『ANUBIS』)に対してファンタジー風の外見を採った方向性を模索中ということしかわかっていないが、「ENDERS PROJECT」と題して研究、開発に着手していることは明言された。  小島監督によると「ゲーム性を変えるつもりはまったくありません」とのことなので、世界観やヴィジュアルの変化がゲーム性、ゲーム画面にどのような影響を与えるかが気になるところだ。  『Z.O.E』シリーズ最新作を体験できるのはまだ先のことになりそうだが、『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』がすぐ近くに迫っている。  この日に発表された発売日は10月25日。『Z.O.E』『ANUBIS』2作をHD化して収録した通常版はパッケージ版が3,980円(税込)と、リーズナブルな価格設定。8,980円(税込)の『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION PREMIUM PACKAGE』には『Z.O.E』『ANUBIS』限定版同梱ブックレットを合本した「CHRONICLE BOOK(歴史の書)」、メイキング要素をふんだんに収録した新規制作のブックレット「ReBOOT BOOK(再起動の書)」、テーマ曲や、リミックス曲を収録した音楽CD「ZONE OF THE ENDERS ReBOOT EDITION」を同梱。また9,980円(税込)の『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION PREMIUM PACKAGE コナミスタイル特別版』には、『~PREMIUM PACKAGE』の内容に加え、新川氏が描き下ろした「IDOLO」イラスト特製スリーブによるBlu-rayディスク 『ZONE OF THE ENDERS Z.O.E 2167 IDOLO』(2001年発売のOVA)が同梱される。  2001年の『Z.O.E』から2年後に発売された『ANUBIS』ではマシンスペックの限界を超えた描写力も手伝い、カルトな人気をほしいままにした。あまりに早すぎた傑作として語り継がれるこのシリーズが1280×720の高精細度HD画質となった『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』は、未体験、未見のユーザーにとっては完全新作にも等しいタイトルとして期待がもてる。  秒間フレームレートの60フレーム化、ワイドスクリーン化、最先端のアップレゾリューション技術によるアニメーションの高解像度化はもちろん、制作スタッフのこだわりでコックピットのモニターCGが描き変えられるなど、グレードアップできることはすべてやり尽くした、リメイクならぬ「ReBOOT」作。イベントのタイトルにもなっているように、単なる移植ではなく、『Z.O.E』に時代が追いついたいま、シリーズそのものを再起動しようという意図が込められたHD版だといえる。
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   「『ブレードランナー』が上映された“聖地”です」と小島監督は冒頭に語ったが、いちゲームソフトの発表会をバルト9で行うのは前代未聞。キャスト、スタッフを集めての思い出トーク、生アフレコがあり、『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』のために新たにつくられた5分間の新オープニングムービーが上映され、最後には「~HD-NIGHT EDITION~」として『ANUBIS』のメインテーマ「BEYOND THE BOUNDS」が生で歌われるなど、過剰なまでに気合が入ったイベントとなった。  なおイベント名にある「はいだら」は、『ANUBIS』の女性キャラクター、ケン・マリネリスが叫ぶ謎のセリフ。この日も結局、その意味は明かされなかったが、登壇者と来場のファンはこぞって「はいだらー!」を連呼、高揚したテンションに包まれ、新宿の夜は更けていった。

社畜、社内ニート必読!? 働くことの意味を考える写真集『地球のハローワーク』

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『地球のハローワーク』
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
 旅に出ると、「へー、こんな職業があるのか」とか、「あの人何やってるんだろう、暇そうだな」とか、「全然、商品売れてないけど、ちゃんと食べていけるのかな」とか、その土地の仕事について、よく考えさせられる。  インドでは、自分の体に20個ほどカバンを巻きつけ、「カバンいらない?」と、会う人会う人に聞いて回る人がいたり、フランスのエッフェル塔の前では、黒人のお兄ちゃんたちが無表情でひたすら鳩のオモチャを飛ばしていたり、中国の列車の中では、突然、タイガーバームのよさを熱弁し始め、誰か目を合わそうものなら迫ってきて売りつけようとする商売人がいたり……。  また、中には考えられないほど過酷な職業についている人もいる。世界一標高が高い町とされるボリビアのポトシは、少し道を歩くだけでも苦しいのに、さらに空気の薄い鉱山の中で、高山病に効くとされるコカの葉を噛みながら必死に働く人々もいた。  人は生きるために、働く。必ず何かをしながら、生きている。    その姿を世界各地でとらえた写真集が、『地球のハローワーク』(日経ナショナル ジオグラフィック社)だ。著者は、フェルディナンド・プロッツマン。ニューヨークのアート誌「ARTnews」の編集者で、ワシントン・ポスト紙ほか、各紙に評論・エッセイを執筆する作家であり、批評家だ。精神科医のフロイトや、哲学者マルクスの仕事論を巧みに使い、人間にとって仕事とはなんなのか、というちょっとばかり小難しい話を追求しつつ、掲載されている写真の解説に力を注いでいる。  この本は、もともと「ナショナルジオグラフィック協会」という、アメリカのワシントンに本部を置く、地球の姿を人々に紹介する非営利の科学・教育団体が刊行した『ナショナル ジオグラフィック写真集 地球に生きる 仕事と人生』を再編集し、改題したもの。  この団体は1888年に設立され、その長い歴史の中で収められた写真から厳選した180点が掲載されている。  本書の中には、100年前の北米の紡績工場で働く少女がいるかと思えば、現代のパキスタンの薄暗い工場で、銃を組み立ている少年がいる。ほかにも、イギリス・バッキンガム宮殿の衛兵、イエメン・ホデイダで砂漠の緑化のために水やりをする白い伝統衣装を身にまとった男性、南アフリカでサトウキビ畑を野焼きするズールー族……。楽しげに、あるいは苦しげに、時に躍動的に働く彼らの姿が映し出されている。  この100年ほどの間に、世界は大きく動いた。必要がなくなり消えてしまった仕事もあれば、新しく生み出された仕事もある。けれど、ただひとつ言えることは、いつの時代も人々は働いているということ。どの人にも養うべき家族がいて、どうにかこうにか、生きている。  日本では、職がない、職がない、と嘆く人であふれ返っているが、世界にはさまざまな仕事がある。ページを開く度、懸命に働く人々の姿が目に飛び込み、「生きる」ということを、訴えかけてくる一冊だ。 (文=上浦未来) ●フェルディナンド・プロッツマン 米国の作家、批評家。ニューヨークのアート誌「ARTnews」の編集者で、ワシントン・ポスト紙ほか各紙にも評論、エッセイを執筆している。オハイオ州オバーリンに家族と在住。

参加者の意識が問われる時! 存続危機のガタケット会場で意見交換会開催

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意見交換会は予定時間を大幅に超過し、3時間
あまりにも及んで激論が交わされた。
 老舗同人誌即売会・ガタケット(新潟県)主催の「ガタケット121」が4月29日、新潟市産業振興センターで開催された。ガタケットは今年3月末、地域経済の低迷や東日本大震災の影響に加え、会場日程の問題により存続の危機にあることを発表。この時点で、参加サークルが募集スペースの半数にも満たない500~550サークルという厳しい状況だったが、危機を知った多くの人々が参加意思を表明。直接参加860サークル、委託参加183サークルを迎えての開催となった当日を取材した。  ガタケット121の開幕に先立ち、代表の坂田文彦氏は、今回参加してくれた人々へ向けて感謝の言葉を告げる。「ありがとうございました」と繰り返しながら、深々と頭を垂れ涙ぐむ坂田氏に、スタッフはそっとティッシュペーパーを差し出す。開場予定時刻を超過し10分あまり続いた坂田氏のあいさつに対して、会場からは「サカタ! サカタ!」とコールが響き渡り、拍手が送られた。
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開会のあいさつで早くも涙する坂田氏。
 筆者も、ガタケットを訪れるのは、かれこれ4年ぶりのこと。危機的状況にあると聞いていただけに、どれだけ大変なことになっているのかと心配していた。しかし、一般参加者が入場してくると各々のサークルスペースはにぎわい始め、会場の一角に設けられたDJブースの周囲には踊りの輪もできあがっていく。確かに、サークル参加の減少により存続の危機にはあるものの、ガタケットを楽しみにしている人々が減ってはいないことは間違いないようだ。  それがとくに印象づけられたのは、通称「昼の儀式」だ。これは、毎回正午になると、アニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』のテーマ曲が流れ、サビの部分で参加者全員が拍手で調子をとる習慣だ。音楽が鳴り始めると、サークルも一般参加者もコスプレイヤーも揃ってスタンバイを始める。中には早くも踊り始めている人の姿もあるではないか。30年あまりにわたって続いてきたこのイベントが、新潟に「文化」として定着していることは異論を挟む余地がない。また、友人と再会して会話を楽しんでいる人の姿も多く見かけた。ガタケットは、単に同人誌を売り買いするだけではない「場」としての役割を果たしているのだ。 ■サークル参加費を3,000円にはできない  今回、イベント以上に注目したのは、筆者もパネリストとして招かれた(注:自腹)、閉会後の意見交換会だ。この席上、坂田氏は詰めかけた参加者に対して、経営状態を包み隠すことなく説明した。 「イベントの売り上げは3年前に5,600万円あったものが、前回3,600万円まで落ち込みました。ガタケットSHOP(画材販売、コピー、印刷などを提供する常設店舗)の売り上げも、5,000万円から4,000万円まで落ち込みました。13名の常勤スタッフには、3年前から経理をすべて公開しています。また昨年7月からは全員の給与明細を見せ、個々人の業務内容に応じて給与の削減も行っています」
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存続の危機が叫ばれる一方で、多くの
人々がこの日を心待ちにしていることも
明らかなのだ。
 経営努力を続けている坂田氏だが、年6回開催されるガタケットと、ガタケットSHOPは、地元の若い世代にとって同人誌あるいは漫画文化に触れる最初のステップとしての機能も果たしてきた。それゆえに、不採算な部分をカットしたり値上げをすることも容易ではない。坂田氏は経営者として必要以上に利益を追求してこなかったことを自省しつつも、参加のハードルを上げることを懸念する。 「ガタケットは、なんでサークル参加費が2,600円なのか? と問われることもあります。しかし、中高生が参加しにくくなることを考えると、3,000円にはしたくないんです」  参加者からの問いかけに丁寧に答える坂田氏だが、中でも注目されたのは、新潟市長が記者会見でガタケットの支援を考えていると報道された件だ。対して坂田氏は、 「市の発表には驚きましたが、あくまで“支援を検討するように示唆”という、すごく遠い話です」  やはり、行政に頼るのではなく、参加者も含めて考えなければ解決の道筋は立てられない。実は、ガタケットがこうした意見交換会を開催するのは、これまでなかったことだ。その理由は、撤収作業の時に坂田氏自身もフォークリフトを運転したりしなければならないので、時間の調整が困難だったから。今回の意見交換会を皮切りに、参加者が主体的に考える流れが広がっていくことを望んでやまない。ただ残念に感じたのは、ガタケットというイベント自体、中高生と女性が多いイベントにも関わらず、意見交換会の参加者の多くが「ベテラン参加者」だったこと。これからを担う世代も含めて、ガタケットの未来を考える「場」を創造せねばならない。 (取材・文=昼間たかし)

参加者の意識が問われる時! 存続危機のガタケット会場で意見交換会開催

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意見交換会は予定時間を大幅に超過し、3時間
あまりにも及んで激論が交わされた。
 老舗同人誌即売会・ガタケット(新潟県)主催の「ガタケット121」が4月29日、新潟市産業振興センターで開催された。ガタケットは今年3月末、地域経済の低迷や東日本大震災の影響に加え、会場日程の問題により存続の危機にあることを発表。この時点で、参加サークルが募集スペースの半数にも満たない500~550サークルという厳しい状況だったが、危機を知った多くの人々が参加意思を表明。直接参加860サークル、委託参加183サークルを迎えての開催となった当日を取材した。  ガタケット121の開幕に先立ち、代表の坂田文彦氏は、今回参加してくれた人々へ向けて感謝の言葉を告げる。「ありがとうございました」と繰り返しながら、深々と頭を垂れ涙ぐむ坂田氏に、スタッフはそっとティッシュペーパーを差し出す。開場予定時刻を超過し10分あまり続いた坂田氏のあいさつに対して、会場からは「サカタ! サカタ!」とコールが響き渡り、拍手が送られた。
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開会のあいさつで早くも涙する坂田氏。
 筆者も、ガタケットを訪れるのは、かれこれ4年ぶりのこと。危機的状況にあると聞いていただけに、どれだけ大変なことになっているのかと心配していた。しかし、一般参加者が入場してくると各々のサークルスペースはにぎわい始め、会場の一角に設けられたDJブースの周囲には踊りの輪もできあがっていく。確かに、サークル参加の減少により存続の危機にはあるものの、ガタケットを楽しみにしている人々が減ってはいないことは間違いないようだ。  それがとくに印象づけられたのは、通称「昼の儀式」だ。これは、毎回正午になると、アニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』のテーマ曲が流れ、サビの部分で参加者全員が拍手で調子をとる習慣だ。音楽が鳴り始めると、サークルも一般参加者もコスプレイヤーも揃ってスタンバイを始める。中には早くも踊り始めている人の姿もあるではないか。30年あまりにわたって続いてきたこのイベントが、新潟に「文化」として定着していることは異論を挟む余地がない。また、友人と再会して会話を楽しんでいる人の姿も多く見かけた。ガタケットは、単に同人誌を売り買いするだけではない「場」としての役割を果たしているのだ。 ■サークル参加費を3,000円にはできない  今回、イベント以上に注目したのは、筆者もパネリストとして招かれた(注:自腹)、閉会後の意見交換会だ。この席上、坂田氏は詰めかけた参加者に対して、経営状態を包み隠すことなく説明した。 「イベントの売り上げは3年前に5,600万円あったものが、前回3,600万円まで落ち込みました。ガタケットSHOP(画材販売、コピー、印刷などを提供する常設店舗)の売り上げも、5,000万円から4,000万円まで落ち込みました。13名の常勤スタッフには、3年前から経理をすべて公開しています。また昨年7月からは全員の給与明細を見せ、個々人の業務内容に応じて給与の削減も行っています」
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存続の危機が叫ばれる一方で、多くの
人々がこの日を心待ちにしていることも
明らかなのだ。
 経営努力を続けている坂田氏だが、年6回開催されるガタケットと、ガタケットSHOPは、地元の若い世代にとって同人誌あるいは漫画文化に触れる最初のステップとしての機能も果たしてきた。それゆえに、不採算な部分をカットしたり値上げをすることも容易ではない。坂田氏は経営者として必要以上に利益を追求してこなかったことを自省しつつも、参加のハードルを上げることを懸念する。 「ガタケットは、なんでサークル参加費が2,600円なのか? と問われることもあります。しかし、中高生が参加しにくくなることを考えると、3,000円にはしたくないんです」  参加者からの問いかけに丁寧に答える坂田氏だが、中でも注目されたのは、新潟市長が記者会見でガタケットの支援を考えていると報道された件だ。対して坂田氏は、 「市の発表には驚きましたが、あくまで“支援を検討するように示唆”という、すごく遠い話です」  やはり、行政に頼るのではなく、参加者も含めて考えなければ解決の道筋は立てられない。実は、ガタケットがこうした意見交換会を開催するのは、これまでなかったことだ。その理由は、撤収作業の時に坂田氏自身もフォークリフトを運転したりしなければならないので、時間の調整が困難だったから。今回の意見交換会を皮切りに、参加者が主体的に考える流れが広がっていくことを望んでやまない。ただ残念に感じたのは、ガタケットというイベント自体、中高生と女性が多いイベントにも関わらず、意見交換会の参加者の多くが「ベテラン参加者」だったこと。これからを担う世代も含めて、ガタケットの未来を考える「場」を創造せねばならない。 (取材・文=昼間たかし)