
『トータル・リコール』
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
今年の夏はアメコミ映画とSF映画という2大ジャンルが熱い。海外で歴代興収記録を更新した超大作、名監督が手がける注目作、往年の傑作のリメイクが続々と封切られている。今週はそうした両ジャンルの最新話題作を紹介したい。
アメコミヒーロー物では、アンドリュー・ガーフィールド主演でリブートした『アメイジング・スパイダーマン』、クリストファー・ノーラン監督によるバットマン3部作の完結編『ダークナイト ライジング』に続き、マーベル・コミックのヒーローが大集合する“真打ち”的なアクション超大作が、8月14日公開の『アベンジャーズ』だ。国際平和維持組織シールドが保管していた強大なパワーを秘める四次元キューブが、邪悪な神ロキの手に渡り、地球侵略へのカウントダウンが始まった。自ら発明したパワードスーツをまとい、アイアンマンとして戦う経営者トニー・スターク、第2次世界大戦中の極秘計画で超人兵士となり70年間の眠りから覚めたキャプテン・アメリカ、神々の国アスガルドから追放されたソー、怒りにより緑色の巨人ハルクに変身する科学者ブルース・バナー、女スパイのブラック・ウィドウ、弓の名手ホークアイは、人類の危機に立ち向かう特殊能力者たちのチーム「アベンジャーズ」として召集される。だが、心の傷に囚われた彼らはチーム内で反発し、パワーをぶつけ合っては周囲を危険にさらす始末。一度は捕らえられたものの機を見て脱出したロキは、地球外から強力な軍勢をマンハッタン上空に呼び寄せる。果たしてアベンジャーズは、力を合わせて地球を救うことができるのか……。
各ヒーローの単体作品で主役を張ったロバート・ダウニー・Jr.、クリス・エヴァンス、クリス・ヘムズワースに加え、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、マーク・ラファロ、サミュエル・L・ジャクソンといったスターたちが豪華に集結。ヒーロー側の充実ぶりに比べると悪玉のキャラ立ちが弱いのが難点だが、ヒーロー同士のバトルも適宜挿入して中盤を持たせつつ、ニューヨーク市街を破壊しまくる終盤の総力戦までしっかり楽しませてくれる。先に公開された米国では週末3日間オープニング記録で歴代1位、全世界では歴代最速10億ドル突破を記録するなど、興行面でも最強ぶりを発揮している本作。アメコミ映画ファンはもちろん、家族やカップルにもオススメしたい痛快な娯楽アクションだ。マーベルヒーロー映画のお約束、エンドロール後のおまけ映像もお見逃しなく。
一方のSF映画で取り上げるのは、フィリップ・K・ディック原作で2度目の映画化となる『トータル・リコール』(8月10日公開)。科学戦争後の汚染で地球の大部分が居住不可能になった21世紀末、工場労働者のダグ(コリン・ファレル)はある日、人工記憶を売るリコール社を訪れる。希望した「諜報員の記憶」がダグに植えつけられようとしたその時、武装した警官隊が突入。体が勝手に反応して警官らを次々に倒し、自宅まで逃げ切ったダグに、今度は妻のローリー(ケイト・ベッキンセール)が豹変して襲いかかる。やがてダグは、現在の自分の記憶が偽物で、かつて支配層対レジスタンスの戦いの鍵を握る諜報員だったことを知らされる。
ディックが1966年に発表した短編SF小説『追憶売ります』の最初の映画化は、ポール・バーホーベン監督版『トータル・リコール』(90)。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の同作が大仰でケレン味あふれる視覚効果が印象的だったのに対し、今作はファレルとベッキンセール、そしてダグを助ける役どころのジェシカ・ビールらが繰り広げるスピーディーなチェイスと格闘アクションが目玉。メガホンを取ったのは、『アンダーワールド』(03)で監督デビューし、同作で主演したベッキンセールの夫でもあるレン・ワイズマン。90年版を意識したシーンもいくつかあり、前作を見た人ならニヤリとさせられるはず。SF物ではほかに、ディック原作の『ブレードランナー』(82)も手がけた巨匠リドリー・スコット監督の最新作、『プロメテウス』が8月24日の公開を控える。今夏のSF話題作は、視覚効果を駆使した壮大な映像やスタイリッシュなアクションだけでなく、空想科学の知的興奮も味わいたい大人の観客にオススメだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『アベンジャーズ』作品情報
<http://eiga.com/movie/54262/>
『トータル・リコール』作品情報
<http://eiga.com/movie/56068/>
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『アベンジャーズ』明日から先行上映! 往年の傑作リメイクも続々 この夏はアメコミ&SF映画が熱い!

『トータル・リコール』
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
今年の夏はアメコミ映画とSF映画という2大ジャンルが熱い。海外で歴代興収記録を更新した超大作、名監督が手がける注目作、往年の傑作のリメイクが続々と封切られている。今週はそうした両ジャンルの最新話題作を紹介したい。
アメコミヒーロー物では、アンドリュー・ガーフィールド主演でリブートした『アメイジング・スパイダーマン』、クリストファー・ノーラン監督によるバットマン3部作の完結編『ダークナイト ライジング』に続き、マーベル・コミックのヒーローが大集合する“真打ち”的なアクション超大作が、8月14日公開の『アベンジャーズ』だ。国際平和維持組織シールドが保管していた強大なパワーを秘める四次元キューブが、邪悪な神ロキの手に渡り、地球侵略へのカウントダウンが始まった。自ら発明したパワードスーツをまとい、アイアンマンとして戦う経営者トニー・スターク、第2次世界大戦中の極秘計画で超人兵士となり70年間の眠りから覚めたキャプテン・アメリカ、神々の国アスガルドから追放されたソー、怒りにより緑色の巨人ハルクに変身する科学者ブルース・バナー、女スパイのブラック・ウィドウ、弓の名手ホークアイは、人類の危機に立ち向かう特殊能力者たちのチーム「アベンジャーズ」として召集される。だが、心の傷に囚われた彼らはチーム内で反発し、パワーをぶつけ合っては周囲を危険にさらす始末。一度は捕らえられたものの機を見て脱出したロキは、地球外から強力な軍勢をマンハッタン上空に呼び寄せる。果たしてアベンジャーズは、力を合わせて地球を救うことができるのか……。
各ヒーローの単体作品で主役を張ったロバート・ダウニー・Jr.、クリス・エヴァンス、クリス・ヘムズワースに加え、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、マーク・ラファロ、サミュエル・L・ジャクソンといったスターたちが豪華に集結。ヒーロー側の充実ぶりに比べると悪玉のキャラ立ちが弱いのが難点だが、ヒーロー同士のバトルも適宜挿入して中盤を持たせつつ、ニューヨーク市街を破壊しまくる終盤の総力戦までしっかり楽しませてくれる。先に公開された米国では週末3日間オープニング記録で歴代1位、全世界では歴代最速10億ドル突破を記録するなど、興行面でも最強ぶりを発揮している本作。アメコミ映画ファンはもちろん、家族やカップルにもオススメしたい痛快な娯楽アクションだ。マーベルヒーロー映画のお約束、エンドロール後のおまけ映像もお見逃しなく。
一方のSF映画で取り上げるのは、フィリップ・K・ディック原作で2度目の映画化となる『トータル・リコール』(8月10日公開)。科学戦争後の汚染で地球の大部分が居住不可能になった21世紀末、工場労働者のダグ(コリン・ファレル)はある日、人工記憶を売るリコール社を訪れる。希望した「諜報員の記憶」がダグに植えつけられようとしたその時、武装した警官隊が突入。体が勝手に反応して警官らを次々に倒し、自宅まで逃げ切ったダグに、今度は妻のローリー(ケイト・ベッキンセール)が豹変して襲いかかる。やがてダグは、現在の自分の記憶が偽物で、かつて支配層対レジスタンスの戦いの鍵を握る諜報員だったことを知らされる。
ディックが1966年に発表した短編SF小説『追憶売ります』の最初の映画化は、ポール・バーホーベン監督版『トータル・リコール』(90)。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の同作が大仰でケレン味あふれる視覚効果が印象的だったのに対し、今作はファレルとベッキンセール、そしてダグを助ける役どころのジェシカ・ビールらが繰り広げるスピーディーなチェイスと格闘アクションが目玉。メガホンを取ったのは、『アンダーワールド』(03)で監督デビューし、同作で主演したベッキンセールの夫でもあるレン・ワイズマン。90年版を意識したシーンもいくつかあり、前作を見た人ならニヤリとさせられるはず。SF物ではほかに、ディック原作の『ブレードランナー』(82)も手がけた巨匠リドリー・スコット監督の最新作、『プロメテウス』が8月24日の公開を控える。今夏のSF話題作は、視覚効果を駆使した壮大な映像やスタイリッシュなアクションだけでなく、空想科学の知的興奮も味わいたい大人の観客にオススメだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
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「アートには本当に力があるのか?」アートセンターから避難所へ 被災地の劇場・いわきアリオスの挑戦

いわきアリオス
福島県いわき市にある公共劇場「いわきアリオス」は2008年4月にオープンした公共劇場だ。4つのホールとともに16のリハーサル施設、キッズルーム、交流施設などを備えた総合的なアート施設として、常に市民に開かれた活動を行ってきた。2011年3月11日、開館からの延べ来館者数が200万人を突破するであろう記念すべきその日、アリオスは震度6弱の地震に見舞われた。『文化からの復興 市民と震災といわきアリオスと』(水曜社)は、開館から震災後までのいわきアリオスの活動をまとめた一冊だ。
2008年の開館より、一貫して市民のための運営を行ってきたアリオス。公共劇場には珍しいマーケティング部を設置し、市民にとって何が必要なのかをリサーチしながら運営されてきた。世界的に有名なオーケストラや劇団のステージ、有名なアーティストのライブ、そして、市民参加型のアートプロジェクトなど、その活動は多方面に及ぶ。しかし、3月11日を境に、その活動は大きな変更を余儀なくされた。
3月11日からアリオスに与えられたのは、被災者の避難所としての役割だ。もともと、避難所に指定されていたのはアリオスの前庭だけだったが、「屋根のある公園」というコンセプトのためか、自然と屋根のあるアリオス内部が避難所として使用されるようになった。間断なく強い余震が襲い、およそ50km離れた福島第一原発では水素爆発が発生する中、避難所の人々は人生で味わったことのないような不安に苛まれている。「アートには本当に力があるのか?」これまで、市民とともに活動を行い続けてきたアリオスは、アートの現実に直面した。
「いわきアリオスは『アートセンター』として、何も期待されていないことだけは明らかだった。(中略)そもそも、避難所暮らしをしていたスタッフたちすら、舞台芸術に触れようとする意欲が失せ、舞台芸術の持つ『力』が信じられなくなっていた」(本書より)
アートに関わる人間だけでなく、日本中のほとんどの人々が「今、自分に何ができるか」を考えただろう。原発から50km、“被災地の劇場”として、アリオスはその最前線に立たされた。そんな混乱した状況の中、支配人の大石時雄はこのように語った。
「まずは、これからここに暮らし、生きようとしている人たちが、今本当に何を必要としているのかを、見て、考えるべきではないか。それなしに、自分たちの『思い』だけで走れば、断言するが、アリオスは市民にとって『要らないもの』と思われるはずだ」
そして、震災後のアリオスの活動は、リサーチから始まった。東京23区の2倍という広大な面積を持ついわき市。同じ市内とはいえ、津波に襲われた小名浜地区をはじめとする海岸沿いと山間部では、被災の状況がまったく異なっている。その被災格差を熱心にリサーチしながら、要望のあった地域に向けて、出張コンサートやワークショップなどを行う「おでかけアリオス」を再開。劇場そのものは、安全性の確認が取れるまで長期休業となるが、それ以外の場所ならば活動が可能だ。音楽家や劇団、落語家などを招聘して行われた「おでかけアリオス」のプロジェクトは2011年度に90回を数え、震災後を生きる多くの市民にとっての希望となった。
アリオスのマーケティングマネージャー・森隆一郎が掲げるのが、「OS」としての劇場だ。これまでの文化施設はアプリケーションとしての「作品」の提供に主眼が置かれていた。しかし、OSという考え方を導入すれば、ロビーの運営というインターフェース、市民に向けてソースコードを公開し、新たなアプリの開発を促すなど、これまでの公共劇場が見えていなかった部分が明らかになってくる。
震度6の地震に襲われても、この軸はブレなかった。アリオスはOSとして、市民たちが震災後のモヤモヤとした感情を話し合う「いわき復興モヤモヤ会議」を開催したり、市民からは映画の巡回上映会や、原発事故によって外で遊ぶことのできない子どもたちに遊び場を提供する「こどもプロジェクト」などが提案され始動した。アリオスというOSにのっとって、市民からさまざまなアプリが開発され、それをまた別の市民が楽しむ。一時はビジー状態だったOSは、1年半を経て、復興に向けて徐々に起動を開始している。
パソコンを例にすれば、「パソコンがあればなんでもできろんだろ?」と、PCを使えないおじさんたちが言う言葉にイラッとするように、「アートはなんでもできる」と、関係者ですら考えがちだ。しかし、パソコンにもできることとできないことがあるように、アートは万能薬ではない。そのユーザーの使い方によってもまた、効果は異なってくる。だからこそ、アリオスでは熱心に市民にリサーチを行い、マーケティングを実施しながら「必要な」アートを模索し、それが本当に効果を上げるための施策に頭を悩ませてきた。その結果、未曾有の災害が襲ってきても、アリオスは「今すべきこと」と「今すべきでないこと」を冷静に選択できた。
「震災のおかげで、『いわきアリオスはこうあらねばならない』という固定概念は、さらに取り払われた。いわきアリオスの未来の台本は、このまちに住む人たちが、日々、少しずつ描き足していくのだ。
大震災から1年の経験は、いわきアリオスのこれからに、確かなビジョンを与えてくれた」(本書より)
今年7月にいわきの街を訪れると、あたかも平静を取り戻しているように感じた。しかし、夏休みの子どもたちが外で遊ぶ姿は見られず、ところどころ地震によって歪んだアスファルトがそのままになっている。建物だけではなく、そこに住む人々の心が復興を遂げるためには、まだまだ多くの時間がかかることだろう。その中で、200万人目の来館者に被災者を迎えたアリオスが果たす役割は大きいはずだ。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
リアル・マカオ・ノワールの衝撃作『ルーレットシティ』がついに日本上陸!

今週末より、全国順次劇場公開される衝撃作『ルーレットシティ』。2010年のシンガポール国際映画祭、マカオ国際映画祭で注目を浴びた衝撃作だ。
監督、脚本を手掛けるのは、中国や香港のテレビドラマ、映画などで活躍するシンガポール出身の若手俳優、トーマス・リム。第一回監督作品にもかかわらず、監督・脚本・主演という離れ業を演じ、さらに全編マカオ・ロケで製作されたもの。しかも、アジア圏の国際映画祭で続々と招待上映も決まっているばかりか、その勢いに乗ってシンガポール国内では早くも劇場公開を果たし、スマッシュ・ヒットを記録しているというから、目を見張るものがある。日本公開にあたって、来日したリム監督に話を聞いた。
日頃のトーマス監督は、作品とは対照的に物静かで穏やかな人物だ。やはり気になるのは、全編をマカオでロケしたということ。対岸の香港は映画の都として知られるが、マカオで映画と聞いてピンと来るものがないのは、筆者だけではないだろう。
リム監督によれば、基本的にマカオには映画業界というものがないという。
「たまに香港のジョニー・トー監督がマカオで撮影する映画などはありますが、私が知る限り、ここ5~6年の間にマカオで製作された劇場長編映画は、この『ルーレットシティ』だけです」
そんなマカオに日本人が抱くイメージといえば、本作のテーマにもなっているカジノ。シンガポール出身であるリム監督にとっても、やはり魅力ある題材だったのだろうか?
「マカオのカジノ業界が収益的にピークを迎えたのは2007年なのですが、たくさんの中国人が国境を越えてマカオにやってきました。それと同時に、カジノをめぐるさまざまな事件が起き、私もこの問題に非常に興味を持ち、取材をしたんです」
このように本作の第一の魅力は、日本と同じ東アジアに位置しながら、あまり情報の入ってこないマカオの、今まさに起こっている出来事を題材にしていることにある。しかも、テーマの魅力だけでなく、ストーリーも、とても第一回監督作品とは思えないほど練られている。いったい、どのような過程を経て、本作を完成に導いたのだろうか?
「私は俳優から映画監督になるために、ラブストーリー作品の脚本を書こうと決めていました。中国人の男とマカオの女がカジノをめぐってトラブルに巻き込まれる、というストーリーを考えたわけですが、この映画の男女のラブストーリーは、ある種の暗喩だと考えています。つまり、一攫千金を夢見て大陸から来た男・タクと、マカオに住み、カジノで働くことで高収入を得ている女・アマンダというキャラクターは、同じ中国人でありながらマカオでは違う存在なのです。マカオで実際に取材した要素をラブストーリーにプラスすることで、このラブストーリー自体がカジノにおける中国人同士のギャップを象徴するものになったと思います。それを脚本として書くために1年近くかかりました」
リム監督は俳優業の傍ら、映像編集や映画監督としての勉強を重ねてきた来歴の持ち主。今回の作品も脚本執筆に1年を要したばかりか、撮影準備に入ったのは2008年から。そして2009年にようやくクランクイン。本人も「危険だった」と語るマカオ・ロケを経て、自ら編集してなんとか完成させることができたという。
2010年のシンガポール国際映画祭とマカオ国際映画祭で初上映され、劇場公開も果たせて幸運だったと笑顔で語るリム監督だが、演技力も目を見張る。主人公のタクを演じている時の鬼気迫る緊張感は素晴らしい。叔父のワイを演じた香港演劇界のベテラン俳優であるキュー・ポウチョンとの激しい競演シーンは特におすすめだ。一方で、後半になるにつれてさまざまな駆け引きに対処する際のポーカーフェイスも実にサマになっているなど、柔軟な演技力の持ち主なのである。
本作にはミス・マカオ出身のエニー・ロイ、香港の演劇・映画で活躍するジョセフィン・チャイなどの女優陣のほか、アジア映画界で勝負する個性派俳優たちが数多く出演している。ルーレット、カジノ、ギャンブル等々、日本人の日常生活からは見事にかけ離れたイメージで全編構成されるノワール的な無常観を、監督であるトーマス・リムがマカオの深い闇へと身を投じ、リアリティー満点に描写する傑作なのは、間違いないだろう。
なお、『ポチの告白』『GOTH』の監督・高橋玄が、本作の日本語字幕の翻訳監修を手掛けている。
『ルーレットシティ』
監督:トーマス・リム(林毅煒)
出演:トーマス・リム キュウ・ポウチョン ジョセンフィン・チャイ チョン・ユーシン エニー・ロイ
2011年製作/上映時間76分
2012年8月11日(土)より、新宿バルト9にて東京公開
その後、梅田ブルク7、横浜ブルク13、T・ジョイ京都、T・ジョイ博多にて順次劇場公開
<作品のご紹介 & 劇場情報>
KINEZO PREMIERE 公式HP http://premiere.kinezo.jp/lineup/movie5.html
リアル・マカオ・ノワールの衝撃作『ルーレットシティ』がついに日本上陸!

今週末より、全国順次劇場公開される衝撃作『ルーレットシティ』。2010年のシンガポール国際映画祭、マカオ国際映画祭で注目を浴びた衝撃作だ。
監督、脚本を手掛けるのは、中国や香港のテレビドラマ、映画などで活躍するシンガポール出身の若手俳優、トーマス・リム。第一回監督作品にもかかわらず、監督・脚本・主演という離れ業を演じ、さらに全編マカオ・ロケで製作されたもの。しかも、アジア圏の国際映画祭で続々と招待上映も決まっているばかりか、その勢いに乗ってシンガポール国内では早くも劇場公開を果たし、スマッシュ・ヒットを記録しているというから、目を見張るものがある。日本公開にあたって、来日したリム監督に話を聞いた。
日頃のトーマス監督は、作品とは対照的に物静かで穏やかな人物だ。やはり気になるのは、全編をマカオでロケしたということ。対岸の香港は映画の都として知られるが、マカオで映画と聞いてピンと来るものがないのは、筆者だけではないだろう。
リム監督によれば、基本的にマカオには映画業界というものがないという。
「たまに香港のジョニー・トー監督がマカオで撮影する映画などはありますが、私が知る限り、ここ5~6年の間にマカオで製作された劇場長編映画は、この『ルーレットシティ』だけです」
そんなマカオに日本人が抱くイメージといえば、本作のテーマにもなっているカジノ。シンガポール出身であるリム監督にとっても、やはり魅力ある題材だったのだろうか?
「マカオのカジノ業界が収益的にピークを迎えたのは2007年なのですが、たくさんの中国人が国境を越えてマカオにやってきました。それと同時に、カジノをめぐるさまざまな事件が起き、私もこの問題に非常に興味を持ち、取材をしたんです」
このように本作の第一の魅力は、日本と同じ東アジアに位置しながら、あまり情報の入ってこないマカオの、今まさに起こっている出来事を題材にしていることにある。しかも、テーマの魅力だけでなく、ストーリーも、とても第一回監督作品とは思えないほど練られている。いったい、どのような過程を経て、本作を完成に導いたのだろうか?
「私は俳優から映画監督になるために、ラブストーリー作品の脚本を書こうと決めていました。中国人の男とマカオの女がカジノをめぐってトラブルに巻き込まれる、というストーリーを考えたわけですが、この映画の男女のラブストーリーは、ある種の暗喩だと考えています。つまり、一攫千金を夢見て大陸から来た男・タクと、マカオに住み、カジノで働くことで高収入を得ている女・アマンダというキャラクターは、同じ中国人でありながらマカオでは違う存在なのです。マカオで実際に取材した要素をラブストーリーにプラスすることで、このラブストーリー自体がカジノにおける中国人同士のギャップを象徴するものになったと思います。それを脚本として書くために1年近くかかりました」
リム監督は俳優業の傍ら、映像編集や映画監督としての勉強を重ねてきた来歴の持ち主。今回の作品も脚本執筆に1年を要したばかりか、撮影準備に入ったのは2008年から。そして2009年にようやくクランクイン。本人も「危険だった」と語るマカオ・ロケを経て、自ら編集してなんとか完成させることができたという。
2010年のシンガポール国際映画祭とマカオ国際映画祭で初上映され、劇場公開も果たせて幸運だったと笑顔で語るリム監督だが、演技力も目を見張る。主人公のタクを演じている時の鬼気迫る緊張感は素晴らしい。叔父のワイを演じた香港演劇界のベテラン俳優であるキュー・ポウチョンとの激しい競演シーンは特におすすめだ。一方で、後半になるにつれてさまざまな駆け引きに対処する際のポーカーフェイスも実にサマになっているなど、柔軟な演技力の持ち主なのである。
本作にはミス・マカオ出身のエニー・ロイ、香港の演劇・映画で活躍するジョセフィン・チャイなどの女優陣のほか、アジア映画界で勝負する個性派俳優たちが数多く出演している。ルーレット、カジノ、ギャンブル等々、日本人の日常生活からは見事にかけ離れたイメージで全編構成されるノワール的な無常観を、監督であるトーマス・リムがマカオの深い闇へと身を投じ、リアリティー満点に描写する傑作なのは、間違いないだろう。
なお、『ポチの告白』『GOTH』の監督・高橋玄が、本作の日本語字幕の翻訳監修を手掛けている。
『ルーレットシティ』
監督:トーマス・リム(林毅煒)
出演:トーマス・リム キュウ・ポウチョン ジョセンフィン・チャイ チョン・ユーシン エニー・ロイ
2011年製作/上映時間76分
2012年8月11日(土)より、新宿バルト9にて東京公開
その後、梅田ブルク7、横浜ブルク13、T・ジョイ京都、T・ジョイ博多にて順次劇場公開
<作品のご紹介 & 劇場情報>
KINEZO PREMIERE 公式HP http://premiere.kinezo.jp/lineup/movie5.html
「売りスレ」では計測不能!? アニメDVDの売り上げを陰で支えるレンタル市場

※イメージ画像
今回は、一部の業界では当たり前のことだが、意外と知られていないパッケージ商品の売り上げに関する話をしよう。
ここ最近、ネット上でアニメ関連の情報を収集していると、しばしば見かけるのが「覇権アニメ」というワードである。これは「最も売れた新作アニメ」を指すワードであり、「年間覇権」は一年間を通して最も売れたアニメ、「クール覇権」は各クールで最も売れた、そのクールを代表するアニメという感じで使用される。
もともと、ネット掲示板にある「売りスレ」と呼ばれる「アニメDVDの売り上げデータを収集・分析し、それをネタに雑談をする」ことが趣旨のスレッドから発祥したワードらしく、当初は「天下」「ベスト」などさまざまな類義語が存在していたところ、2010年、テレビアニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のネット番組配信中に、アニプレックス広報の高橋祐馬氏が、「このアニメで秋の覇権を握りますよ」と発言したことから現在の「覇権」というワードに統一されたという経緯がある。
くだんの「売りスレ」では、アマゾンランキングやオリコンチャート、映画の興行収入。また、視聴率や話題性、ネット掲示板のスレッド数など、さまざまな要素を踏まえた分析が行われており、業界関係者も密かにチェックしているとかいないとか。2011年には『IS』のヒロインを元ネタにしたマスコットキャラ「モッピー」が誕生し某漫画でネタにされるなど、現在アニメを語る上で無視することのできない存在となりつつあるのだ。
そんな非常に優秀なデータ収集力を持つリサーチャーが集う「売りスレ」だが、そこでどうしても集めることのできないデータがあるのはご存じだろうか? それは「レンタル商品の数字」である。
通常、一般流通に流されるセル商品とTSUTAYA、GEOなどに代表されるレンタルショップに流されるレンタル商品は別物となっており、レンタル商品が各店舗に卸される数は非公開となっている。そのため、現在の「売りスレ」では、全国に数千店舗存在するレンタルショップに卸されるレンタル商品の売り上げ枚数は計上されていないのだ。また、「売りスレ」では、「○○制作のアニメは毎回売り上げ枚数が少ない。資金は回収できているのか」といった会話が飛び出すこともあるのだが、レンタル商品の価格はセル商品の数倍に設定されている。
このことを考慮すると、(すべてのレンタルショップで、すべてのアニメがレンタルされるとは限らないが)売りスレで出てくる数字をはるかに上回る枚数のレンタル商品が市場に出回り、それらが予想以上の利益をアニメ業界にもたらしていることが想像できるだろう。
つまり、現在アニメ業界において、レンタル業界は非常に大きな存在となっているのだ。
「最近は、レンタル業界がアニメのプロモーションに口を出すことが増えましたね。レンタルショップがセル商品に先行して、アニメのDVDや主題歌CDをレンタルすることも増えてきました。話題作を先行してレンタルできれば、レンタルショップも大きな利益を得ますし、アニメ業界としてもタイアップによって確実に利益を見込むことができるということで、win-winの関係なんじゃないでしょうか」
とはレンタル業界関係者の弁だ。
確かにレンタル業界、アニメ業界共に潤う素晴らしいタイアップといえるが、とはいえヒットを見込んでレンタル業界側がプッシュした作品が、フタを開けてみたらそんなに大コケだった……なんてこともないとはいえない。「本当にヒットしている作品」なのか、「レンタルショップが推したい作品」なのか。そういった思惑も踏まえてアニメDVDの売り上げを分析してみると、さらに業界の表と裏が見えてくるのではないだろうか。
(文=龍崎珠樹)
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あのゲーム『人狼』が著名声優大集結でドラマCD化! 過去最大のブームに乗り遅れるな!?

『人狼』というパーティーゲームをご存じの方も多いかもしれない。人間の村に人狼が忍び込み、村人を殺めていく。昼フェイズでは村人たちが人狼をあぶり出すために誰かを「吊り」、狩人による護衛以外に村人の防御手段がない夜フェイズには人狼が誰かを「噛む」。この繰り返しで数を減らしていき、人狼が全滅するか、村人の数が人狼の数を下回れば勝敗が決着する。プレーヤーが各自に与えられた役割をCO(カミングアウト)しないかぎり正体はわからず、そのCOも信用できるかどうかはわからない。誰が本当のことを言っているのかを探る心理戦が醍醐味だ。言うなれば、かなり手の込んだ「本物は誰だ」。推理のスリルを押し出したゲーム性の塊のようなこの『人狼』が、今ブームになっているという。
「んん? 人狼? 前にもブームになったのでは?」
その通り、このゲームルールは前世紀から存在しているし、代名詞ともなっている輸入カードセット『汝は人狼なりや?』(原題『Are You a Werewolf?』、Looney Labs.)のアメリカ発売は2001年だ。今ではBBS、チャット、Skypeを駆使したネット人狼もあるし、iPhoneアプリにもなっている。しかし、そうした諸々をひっくるめ、『人狼』は過去何度目かのブームを迎えている。各種の媒体で紹介されるケースが増えていることにお気づきだろうか?
となれば、メディアが活気づかないわけがなく、この度『人狼 -Chaotic Time-』と題したドラマCDが株式会社MFSよりリリースされることが決定した。9月26日からの一般発売に先駆け、8月10日~12日のコミックマーケット82で先行販売する。
なぜ、今ブームなのか。自身も愛好者である、『人狼 -Chaotic Time-』の脚本を執筆した酒井啓之氏に訊いた。
──この盛り上がりを、どうご覧になっていますか?
酒井 そうですね、今までも何度か『人狼』ブームが来ていたのですが、今回のブームは特に大きな波が来ていると感じます。個人的には、昨今の電力不足から来る非電源系ゲームの見直し、そして推理ブームと重なっていることも後押しになっているのではないかと……。この機会に、より多くの方に『人狼』というゲームを知っていただけるといいですね。
──その答えと関連してきそうですが、ドラマ化の狙いはどの辺りに?
酒井 『人狼』は初めてプレーする人にとって、決して敷居が低いゲームではありません。長きにわたってプレーされてきたことによるセオリーの確立や、熟練プレーヤーと初心者の壁など、プレー人口の増加にストップをかけている要因はいくつもあります。しかし、ゲーム自体は人が集まらないと成り立たないという矛盾……。今までのブームはこのこともあり、波が収まっていったように思えます。僕らは、今回のドラマCDを通じて、まだ『人狼』という素晴らしいゲームを知らない人たちに、このゲームの楽しさを広めるとともに、熟練プレーヤーの方々に対しても、もう一度『人狼』というゲームを見つめ直していただける機会になればと考えています。
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オーディオドラマを盛り上げる声優陣は、豪華のひとことに尽きる。小野友樹、江口拓也、岡本信彦、小林直人、三森すずこ、東山奈央、茅野愛衣、日高里菜、たみやすともえ、小松未可子など、人気声優が集結した。
ストーリーの詳細は公表されていないが、ユウキ役を演ずる小野友樹の以下の自己紹介コメントからすると、この方が主役のような気も。

ユウキ役の小野友樹。
「ユウキ役をやらせていただいた小野友樹です。名前が一緒ですが、性格も似ているかというと、正義感が強くて、リーダーシップを発揮していたので……似てる……かな?(笑) 全体の進行役を買って出たりして、みんなを引っ張っていく位置にいるキャラクターです。時にはちょっと残酷に見える部分も……」
プライベートで小野とともに『人狼』をプレーしたことがあるという江口拓也(信頼厚い神父モリソン役)と岡本信彦(自分を守る発言をしない青年ライル役)は、それぞれ『人狼 -Chaotic Time-』の作品性をこう語っている。
「台本を読んで、『人狼』をオーバーに表現すると、こういうふうになるんだなと思いました。ストーリーはとても『人狼』らしくて、『ザ・人狼』と言えるんじゃないでしょうか」(江口)
「人狼は難しいので、知らない人が聞いてどこまでわかってもらえるか心配ではあるんですが、音声化の難しい作品をここまで作ったことにはびっくりしています」(岡本)
パーティーゲームである『人狼』には芝居にも似たライヴ感があり、たとえば東山奈央の経験談からは、ゲームの経験が今回の出演に役立っていそうなニュアンスも伝わってくる。
「演劇部の友人に誘われて、一度混ぜてもらったことがあります。当時はルールがわからなくて、見学しようと思っていたら、『やっているうちにわかるから!』と言われて参加することに。村人だったのですが、周りの空気に合わせてウソをつきまくった結果、人狼と間違われて殺されてしまいました(笑)。黙っていればよかったです……(笑)」
一方、「今回収録をしてみて、実際にゲームをやるなら、やってみたい役職はありますか?」と問われた小野は、次のように答えている。
「人狼ですね。普段はウソをついたりしないので……だからこそ、ゲームではほかのプレーヤーをダマせる自信があります。以前プレーしたときに、人狼をやっていて、隣の人が自分のことをひたすら信じてくれているのに、ほかの人狼と、『この人どうする?』みたいなやりとりをしたことがありました。今回のドラマCDをやったことで、ひとりひとりを掘り下げていくと、それぞれにドラマがあることがわかったので、次にやるときは発言だけでなく、態度に注目したいと思います」
うーん、恐ろしい! 日本的儒教的な善悪観だけでは測りきれない心理戦の果てに、生き残るのは誰か。このドラマCDを聞いてからゲームをやったほうが、生存率が上がるかもしれない。
(取材・構成=後藤勝)
●自己紹介キャストコメント
たみやすともえ/アニー役
アニー役をやらせていただきました。アニーちゃんは15歳の女の子なんですが、感情的にならないよう、冷静に演じさせていただきました。年齢のわりに鋭い発言をぼそっと言うところがあります。また、人狼退治経験があるという裏設定があるので、ほかの人に比べて、今回の事態に慣れている感じがあります。
小松未可子/ソフィア役
ソフィア・ハイン役で出演しました。ソフィアは親が人狼に殺されていて、人狼をすごく憎んでいます。人の意見にわりと左右されやすいのですが、まっすぐな部分もあり、気の強い女の子です。
東山奈央/ステイシー役
ステイシー役の東山奈央です。ステイシーは、お兄ちゃんのライルのことが好きな女の子です。病弱なのですが、だからといって引っ込み思案ではなく、明るい子です。周りの人たちに愛されて育ってきました。
小林直人/ファン役
今回、ファン・ユージスを担当させていただきました。一番最初は目立たないのですが……。
三森すずこ/メイ役
私の演じるメイちゃんは、14歳なのに雑貨屋を営んでいる経営者であるという、若いながらもしっかりしている女の子です。話し合いの時は、いろんな人に話を振ったりしていて、仕切りたがり屋な一面も。まだ子どもらしいところもあったりする、かわいい子です。
江口拓也/モリソン役
神父をやらせていただきました。モリソンはみんなから信頼されていて、ユウキの次くらいに作品を引っ張っているんじゃないかと思います。
日高里菜/サーシャ役
サーシャ役をやらせていただきました。サーシャは優しい男の子です。人が死ぬシーンでは相手を思いやっていて、優しい子だなって思いました。今まで男の子をやったこともなく、オーディションを受けたこともなかったので、演じることができてうれしいです。
岡本信彦/ライル役
ライル役を演じさせていただきました。ライルはぶっきらぼうというか、自分を保守するような発言をあまりしない、ある意味率直な青年です。
茅野愛衣/アロナ役
アロナ役をやらせていただきました。普段、話をしている感じを取り入れつつ、大人の人を意識して演じました。寡黙なキャラクターだと思っていたら、結構意見をしっかり言っていて認識が変わりました。
コミックマーケット82(8月10日~12日)では企業ブース内ブースNo.421「音泉」とブースNo.633「株式会社sunset creative」にて販売。
キャストなど作品の情報は< http://www.koepota.jp/wearwolf/ >まで。
スマイレージが“コワイレージ”になっちゃった!? 思春期ホラー『怪談新耳袋 異形』を巡る不思議体験

個性派俳優としても活躍する井口昇監督。
スマイレージ主演作『怪談新耳袋 異形』を“思春期ホラー”に仕立てている。
スマイレージ主演作『怪談新耳袋 異形』を“思春期ホラー”に仕立てている。
井口 『怪談新耳袋 異形』の撮影1週間前まで、『デッド寿司』の撮影だったんです。『怪談新耳袋 異形』の製作チームがわざわざ『デッド寿司』のロケをしていた那須まで来てくれて、撮影の合間に打ち合わせをしました。正直、時間がない状況で製作が進んだんですが、その分あまり余計な“遊び”を入れずに、ストレートなホラー映画になったんじゃないかと思います。といっても、まァ、ボクの作品なんで多少はギャグが入ってますけど。『新耳袋』シリーズは原作者の木原浩勝さんも言ってますが、幽霊ものではなく、実話系の現代の妖怪目撃談なんです。恐怖の正体が分からないまま投げっ放し。得体の知れない、何も解決しない不気味さを描いてるんです。「安易に使うとチープになるので、CGは極力使
ってないんです」と井口監督。低予算なれど、ホ
ラー映画にはこだわりがあるのだ。

第1話『おさよ』。新人アイドル・しおり(和田彩花)はグラビア撮影で山奥の旅館に宿泊。
優しくナイーヴな性格ゆえに、とんでもない目に遭う。
優しくナイーヴな性格ゆえに、とんでもない目に遭う。

井口昇ファンのためにサービスカットを掲載。巨匠・野村芳太郎監督の
『影の車』(70)もお薦めホラーだそうです。
『影の車』(70)もお薦めホラーだそうです。

第4話『和人形』はスマイレージが全員集合。怯えた表情は
演技ではなく、廃屋での撮影中に恐怖体験をしたためだった……。
演技ではなく、廃屋での撮影中に恐怖体験をしたためだった……。
巨匠・コッポラ監督作からハロプロ初主演作まで 猛暑も吹っ飛ぶ、納涼映画3連発!

(C)Zoetrope Corp.2011
夏休み映画に欠かせない納涼ジャンルといえばもちろん、予想のつかない恐怖に肝を冷やしてゾクゾクするホラー映画。というわけで、今回は8月上旬に封切られるオススメのホラー新作3本を取り上げたい。
『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(公開中)は、南極大陸の隔絶された基地で研究者らが遭遇する恐怖を描くSFホラー。南極の氷の中で太古の生命体が発見され、米国の考古生物学者ケイト(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)が調査のためにやって来た。氷漬けの状態で基地に運び込まれた生命体はその夜、氷から飛び出し、人間を襲い始める。その“物体”は、接触した相手の細胞を複製して人間になりすまし、突如恐ろしい姿に変形して新たな標的を攻撃。ケイトと隊員らは、誰が乗っ取られているのかすら分からず疑心暗鬼に陥り、絶望的な状況で敵との戦いを強いられる。
SF映画の古典『遊星よりの物体X』(51)を、ホラー界の巨匠ジョン・カーペンター監督がリメイクした『遊星からの物体X』(82)。その前日譚として製作されたのが本作だ。長編デビューとなるマティス・バン・ヘイニンゲン・Jr監督は、カーペンター版で後のホラー作品に大きな影響を与えた特殊メイクのインパクトを尊重しながら、最新のCG技術で異形のクリーチャーに変身する過程を衝撃的かつグロテスクに表現。寒々とした空間、孤立した環境で、仲間の中に潜む偽物を必死で探そうとする緊迫のシーンも、過去作の雰囲気を巧みに再現した。『ファイナル・デッドコースター』(06)の絶叫クイーンで世界に注目され、『ダイ・ハード4.0』(07)、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(10)で演技の幅を広げてきたウィンステッドが、本作では知的な大人の魅力でヒロインに扮している。
フランシス・フォード・コッポラ監督の最新作『Virginia/ヴァージニア』(8月11日公開)は、『モルグ街の殺人』などで知られる19世紀の小説家エドガー・アラン・ポーをモチーフに描くホラー風味のゴシックミステリー。次回作に悩む小説家ホール(ヴァル・キルマー)がサイン会のために訪れた郊外の街では、身元不明の少女が胸に杭を打たれ殺されていた。保安官に殺人の謎解きと小説の共著を持ちかけられたホールは、夢の中で謎の少女ヴィー(エル・ファニング)とエドガー・アラン・ポーに導かれながら、現在と過去に街で起きた事件の秘密に迫っていく。
『ゴッドファーザー』3部作や『地獄の黙示録』(79)といった大作で有名なコッポラ監督だが、92年の『ドラキュラ』以来2度目のバンパイア物でもある本作は、インディペンデント作品に近いパーソナルな雰囲気が特徴。モノクロに近いダークブルーの色調で表現された月明かりの夜に、ファニングのイノセントではかない美しさが映える。ダコタ・ファニングの妹で、『SOMEWHERE』(10)、『SUPER 8 スーパーエイト』(11)、『幸せへのキセキ』(11)と話題作への出演が続く彼女が、霊的な役どころで新境地を開いている点も見どころだ。
邦画ホラーの注目は、ハロー!プロジェクトの人気アイドルグループ、スマイレージが主演する『怪談新耳袋 異形』(8月11日公開)。新人アイドルのシオリ(和田彩花)がグラビア撮影で訪れた山奥の旅館で女の霊に襲われる「おさよ」、アイリ(竹内朱莉)とハルカ(勝田里奈)の姉妹が自宅で真っ赤な怪人に遭遇する「赤い人」、両親と部屋を替えたモモカ(福田花音)が古い三面鏡に映った謎の老婆に追いつめられる「部屋替え」と、これら3話の前日譚として、シオリのデビューを祝して廃墟に集まったミサキ(田村芽実)ら6人組が体験する恐怖を描く「和人形」の計4話で構成される。
メガホンをとったのは、『片腕マシンガール』(07)、『電人ザボーガー』(11)などの作品で海外でもカルト的な人気を誇る鬼才・井口昇監督。アイドルグループの初主演作ということで、監督本来の過激描写は控えつつも、じわじわ来る恐ろしさとシュールな笑いで観客を楽しませてくれる。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『遊星からの物体X ファーストコンタクト』作品情報
<http://eiga.com/movie/56722/>
『Virginia ヴァージニア』作品情報
<http://eiga.com/movie/58243/>
『怪談新耳袋 異形』作品情報
<http://eiga.com/movie/57986/>
「求められるのは声優ソングばかり……」表舞台を追われたアニソン歌手の現在

「Animelo Summer Live」公式サイトより
アニメファン、アニメソングファンにはお待ちかねの8月がやってきた。今年も例年通り、毎週のように全国各地でアニソン系のイベントやライブが行われる予定だ。中でもとくに注目を集めているのが、埼玉県のさいたまスーパーアリーナにて2日間にわたって開催される日本最大のアニソンフェス「Animelo Summer Live 2012」(アニサマ)だが、今年は“声優フェス”と揶揄されるほど、そのラインナップは声優で占められていることは既報の通り(※記事参照)。
もう一つの目玉イベントが、8月3日から5日かけて大阪で開催される「nonstop アニソントレイン 祭 2012 in 大阪」である。こちらは、徹底的にアニソン歌手にこだわったラインナップとなっており、アニソン原理主義なファンからは「こちらのほうがアニソンフェスとしては正しいのではないか」という意見も飛び出している一方、「人が来るのか?」「ガラガラじゃね?」と集客を不安視する声もネット上では上がっている。その答えは「アニソントレイン」が終わってみないとなんとも言えないところではあるが、実際のところ、現代はアニソン歌手にとって非常に厳しい時代のようだ。
「最近のアニソンは、タイアップ曲か声優ソングが大半で、アニソン歌手の出番はますます減ってきています」
このように語るのは、アニソン業界に携わるA氏だ。A氏もまた、楽曲制作やコーラスなど、多くのアニソンに関わっている人物だが、年を追うごとにアニソンシンガーの現場は減っていく一方だという。
「今はアイドルが求められる時代ですからね。職人気質の裏方的存在であるアニソン歌手よりも、アイドル性の強い声優のほうがお金になるんでしょう」
では、仕事の場を奪われたアニソン歌手は、どこで活動しているのだろうか?
「仕事がないアニソン歌手は、イメージソングを集めたアルバムに参加したり、小さいライブハウスでファン向けのイベントを自主企画したりと、地道な活動を数多くこなしていますね。曲や詞を書ける人は、作家としてアニソンに携わったり、地下アイドルのプロデュースをするなど、裏方として活躍していることも少なくないです。あとは表のメディアで活躍する名前とは別の名義を使ったりして、パソコンのアダルトゲームの主題歌を歌う人もいますね」
華やかな声優アイドルとは違い、このようにアニソン歌手は日々涙ぐましい地道な活動を積み重ねているのだ。アニソン界の帝王こと水木一郎も、アニソン歌手デビュー当初は悲惨な扱いに歯を食いしばりつつ、地道なドサ回りを繰り返してきたことは、彼自身がさまざまなメディアで語っている。
「子どもたちに夢を与えるアニソンをやれるなら、どんなことでもやりますよ」
そうA氏が語るように、アニソンに携わるプロたちは、今日も夢を歌に託して歌い続ける。アニソンを歌い続けることをなりわいとする彼らが正当に評価され、より多くの活躍の場が与えられることを願うばかりである。(文=龍崎珠樹)
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