物議を醸すこと必至!? 『BECK』堤幸彦監督が仕掛けた"ある演出"

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(C)2010「BECK」製作委員会
 長く待ち望まれていた人気漫画の実写映画化作品3本が、9月から10月にかけて相次いで公開される。まず先陣を切った堤幸彦監督による『BECK』(松竹配給)は、公開週末の9月4日、5日の2日間で興行収入が3億円を超え、週末興収ランキングでも初登場首位を達成。好調な出足を見せた。  ハロルド作石による原作コミックは、計発行部数1,500万部超を誇る。高校生活に馴染めないでいたコユキが、ニューヨーク帰りの天才ギタリスト竜介と出会ったことでロックに目覚め、新たな仲間たちと結成したバンド「BECK」で夢に向かって突き進んでいく......というストーリー。  コユキが平凡で内向的な高校生から、聴衆を一瞬で魅了するミュージシャンへと成長するさまを、佐藤健が好演。BECKのメンバーを演じる水嶋ヒロ、桐谷健太、中村蒼、向井理も、バンドの"絆"と葛藤をリアルに表現する。女優陣では竜介の妹・真帆役の忽那汐里のほか、益岡弘美役の倉内沙莉のピュアな雰囲気も印象に残る。  まさに今が旬の若手俳優たちが豪華に顔を揃えながらも、やはり人気コミックの映画化『20世紀少年』3部作の成功が記憶に新しい堤監督の演出により、原作のキャラクターの風貌から空気感までもが忠実に再現。観客の想像力を喚起する演奏シーンの「ある演出」は、物議を醸すことさえ計算に入れた監督のしたたかさと言えそうだ。  一方、9月25日公開の『君に届け』(東宝配給)は、現在も連載中ながら単行本が累計1,000万部を突破する椎名軽穂の漫画が原作。純粋で前向きな女子高生だが、見た目の暗さから「貞子」と呼ばれる黒沼爽子(多部未華子)が、人気者のクラスメイト風走翔太(三浦春馬)の優しさに触れ次第に変わっていく姿が描かれる。  こちらは比較的どこにでもありそうな、友情と恋愛を軸とした高校生活が瑞々しく活写される。同世代の若者が共感するのはもちろん、大人世代の観客も過去の体験に重ね合わせて懐かしさを覚えることだろう。監督は『ニライカナイからの手紙』『虹の女神 Rainbow Song』などの熊澤尚人。  前述の2作品とは正反対に、現実とかけ離れた時代と設定を楽しめるのが、よしながふみ原作、金子文紀監督の『大奥』(松竹+アスミック・エース配給、10月1日公開)だ。  謎の疫病がまん延し、男性の人口が激減したことで、女が要職に就き男が体を売る江戸時代。女将軍・徳川吉宗(柴咲コウ)に3000人の美男子が仕える女人禁制の大奥が存在した。貧乏旗本の息子・水野祐之進(二宮和也)は、身分違いで結ばれないお信(堀北真希)への恋心を断ち切るため、大奥へ上がることを決意する。  いわゆる歴史改変ものの原作は、歴史の"IF"に説得力を持たせる緻密な構成が評価され、2009年手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。男女の立場が逆転する世界を映像化した本作で、全長約40メートルの御鈴廊下(大奥を扱った映画では最大最長のセットという)で美装の武士たちがひれ伏し女将軍がその間を闊歩する前代未聞のシーンなどに圧倒されるもよし、現在の男と女の関係を改めて考え直すもよし。  以上3作品、いずれも長期にわたる連載漫画の映画化ゆえ、エピソードやキャラクターの取捨選択は当然ある。また、原作のファンなら一層、キャスティングについても好き嫌いがあるだろう。原作と映画をあれこれ比較して、見終わった後に仲間と語り合うのも楽しいものであり、そうした時間もまた貴重な人生の一コマになることだろう。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『BECK』作品情報 <http://eiga.com/movie/54662/> 『君に届け』作品情報 <http://eiga.com/movie/55448/> 『大奥』作品情報 <http://eiga.com/movie/55179/>
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まるで娼婦…… 男性を挑発してやまない、制服を着たマネキン

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マネキンの下半身は取り外し可能。男女関わらず、作りは一緒。
 大衆文化研究家の町田忍氏が、エロと大衆文化の関係を解き明かす! 【第三回】 「生と死の境界線を生きる人形、マネキン」  人間でも人形でもない存在、マネキン。抜群のプロポーションとその妖艶な表情に、エロスを感じる男性も少なくないはずです。  マネキンは、19世紀後半にパリで登場しました。当時のマネキンは、頭部は蝋製、胴体部分はボール紙製にキルティングや布を貼りつけただけの、いわばハリボテの質素な作りでした。服を着せてしまうので、胴体は美しく見せる必要はないと考えられていたんですね。  20世紀初頭になると、髪の毛や義眼、義歯が付けられ、より人間に近いものになりました。また、この頃から表情にもバリエーションがでてきました。    日本に普及し始めたのは、1928(昭和3)年頃。時を同じくして、百貨店やデパートには「マネキン・ガール」と呼ばれる女性たちが登場しました。彼女たちは綺麗な洋服を身にまとい、マネキンのように静止した状態で売り場やショーウィンドウに立ち、当時まだ高価だったマネキンの代役をしていました。選りすぐりの美人たちがこの仕事を担い、着ている服をより美しく見せようとしたのです。当時、彼女たちの出現は珍しく、最先端の職業として注目されました。  しかし、FRP(繊維強化プラスチック)の採用によってマネキン人形が量産化されるようになると、マネキン・ガールは不用となり、彼女たちは洋服の販売員、あるいはファッションモデルへと変遷を遂げました。  マネキンは、基本となる原型は手作りですが、最近ではコンピューター化されています。顔が左右対称になってしまうと返って冷たい表情になってしまうため、わざと少しずらします。また、中年顔や肥満体形のマネキンも増えてきています。
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 当然のことながら、マネキンは理想的な体系をしています。男目線で見ると、洋服がどうこうより、その内側の肉体が気になってしまいますよね。とくに制服を着たマネキンほどエロチシズムを感じるものはありません。制服という既製品に抑圧された大人の身体、もしくはセ―ラー服のように若い女性の発達期にそれを封じ込めるような制服は、めくるめくその内部にあるであろう若い女性の身体的挑戦に思えてならないのです。それは、あたかも男性を挑発している娼婦にすら見えるのです。彼女たちの目線や厚めの唇......たまりませんね。でも、マネキン特有のエロさは、それだけに起因しているわけではありません。     人間とマネキンの間には、"生"の世界と"死"の世界という、絶対的な境界線があります。しかし、マネキンは人体の模擬物でありながら人体とはかけ離れた肉体を持っているため、人間以上に"生"を感じさせる魅力を持っています。そしてそれは時に、人間とマネキン、どちらが生きているのか分からなくなるほどの錯覚を、私たちに起こさせるのです。生と死の境界線が曖昧になることで、そこに極めて甘美な世界が成立してくるわけです。    最近では顔がないマネキンが増えてきていますが、より人間に近ければ近いほど、そこには人間とマネキンの不思議な世界が作られるのです。 (談=町田忍/構成=編集部) machidasinobu.jpg ●まちだ・しのぶ 1950年東京生まれ。学生時代はヒッピーとしてヨーロッパ各地を放浪。卒業後、警視庁警察官勤務を経て、庶民文化における見落とされがちな風俗意匠を研究。その研究対象は多岐にわたり、銭湯、正露丸、チョコレート、ペコちゃん、コアラのマーチ、蚊取り線香、ハエ取り紙など150以上にのぼる。す。主な著書に『銭湯遺産』(戎光祥出版)、『昭和なつかし図鑑』(講談社)、『東京ディープ散歩』(アスペクト)などがある。現在、文化放送「ドコモ団塊倶楽部」(毎週土曜・午前11:00~)とライブストリーミングサイト「DOMMUNE」に不定期出演中。
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各界のうまい棒好き巨人が大結集! エロと電波でロフトプラスワンは阿鼻叫喚の坩堝に

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好色そうにうまい棒をチュパチュパする青山菜々。
 その昔は駄菓子屋、いまはコンビニで発売中の「うまい棒」。年間売上本数はなんと4億本! 砕くも溶かすも思いのまま、ガンダムと同じ1979年の登場以来根強い人気を誇るこのスナック菓子の感謝祭が今年も開催された! 各界の豪華メンツが集った東京・新宿のロフトプラスワンはえらい騒ぎになっておりました。司会はHEY!たくちゃん。  大量のうまい棒が入場者に振舞われるなか、去年イベントで定めた、うまい棒ファンがうまい棒を食べた時に言う「デリシャシ!」という合言葉でうまい棒乾杯をし、うまい棒の作り方やパッケージコラボの歴史を紹介したうまい棒そのものについてのコーナーが終わると、ステージは前半の目玉「うまい棒でクリエイティブなことした人」の特集へ。モノホンの美術作家・河地貢士による磨崖仏ならぬ「うまい仏」彫刻実演に一同は驚嘆! 精緻なルーター加工後に素手で仏の顔を仕上げ、最後は煩悩に負けておもむろに食べてしまう! もったいない気もするが、欲に勝てない人間の弱い部分をもそこには表現しているように思える。
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ライブでうまい仏を彫る河地貢士。
 続いて、模型サークル「グリフォンズ・ガーデン」のフィギュアモデラー・羽水(うすい)がうまえもん(orうまいもん)フィギュアをワンフェスに出品した際のエピソードを語り、大阪のTシャツブランドMARS 16の代表・北山友之がうまい棒アイテムを創るために訪れた製作元「やおきん」での思い出を開陳すると第1部は終了した。  第2部は錚々たるメンバーがド派手な照明とともに登壇! 「うまい棒が好き」というそれだけで各界から招かれた著名人が、うまい棒への思いを語り合った。  声優・金田朋子、プロレスラー・@uexile、声優・長谷優里奈、L⇔R・黒沢健一、AV女優・青山菜々、映画監督・河崎実(※登壇順)という何が起こるか分からない面々、まずはうまい棒とのかかわりを話しながらの自己紹介となった。 ・河崎実→映画『日本以外全部沈没』でうまい棒が10万円に価格高騰するというエピソードを描いた。現在はうまい棒キャラクターを起用した映画を構想中。キャッチコピーは「誰もが知ってるアイツがついに実写映画デビュー!」 ・青山菜々→Twitterで出演依頼を受ける。ブログで一回「うまい棒が好き」と書いただけなのに......。好きなうまい棒はたこ焼き味と納豆味。 ・黒沢健一→音楽界を代表するうまい棒好き。「工場でできたてのうまい棒シャワーを浴びるのが夢」と、昔ライブのMCなどで語っていたという。分厚く詳細な出演依頼書を読んでいるうちに、うまい棒のことが脳裏から離れなくなり、レコーディングどころではなくなってしまい出演決定。イベントではかっこよく、ロックにうまい棒シャウトを決める。 ・長谷優里奈→貧乏な時代をうまい棒でしのいだという過去を持つ。1時間に50本以上食べたという逸話も。ファンからもうまい棒の差し入れがあったとか。正統派うまい棒アイドル。いま好きなのはコーンポタージュ味。 ・@uexile→うまい棒パフォーマンスで知られるハッスルマンズワールドの救世主。「~っす」が口癖。 ・金田朋子→質より量派なのでうまい棒をたくさん食べるのだと訴える。出演当日は喉の調子がよくなく、「家で筆談ホステスをしている」、「胃もたれが好き」など、うまい棒と関係ないエピソードに脱線しまくった......。
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被り物が脱げなくなってしまった金田朋子。
 さまざまなトピックが飛び交うなか、場内の空気をかっさらったのは青山菜々。貧しい家庭に育ち、うまい棒に助けられたと言いながら「いまは違う"うまい棒"に助けられてます」に始まるエロトークを連発。会場のファンからの要望に応えてうまい棒をペロペロと舐めたり、エコーをかけてエロいセリフ(「あなたのうまい棒、食べさせて......」)を言ってみたり。うまい棒のイベントなのか、違ううまい棒のイベントなのか、もうよく分からないことに......。  もっとも、終盤は「うまい棒と関係のない話をして警告」でイエローカード2枚を出され、レッドカードとなり、罰としてうまみちゃんの頭を被った金田朋子の独擅場に。いつものようにズレまくった話のインパクト(「うまい棒は私にとってガンジー」)と合わせて、うまみちゃんショーの印象を強く残してイベントは幕を閉じたのであった。 (取材・文・写真=後藤勝)
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「サマソニも客席ガラガラ」夏フェス動員にも陰り、どうなる音楽業界

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08年のフジロック
 ここ数年、音楽業界における一大トピックとなっている夏フェス。今年も日本全国で夏フェスが開催されたが、今年は「観客動員数が例年になく落ち込んだ」との声が上がっている。 「記録的な猛暑の影響もあったのか、チケットの売れ行きが伸び悩みました。特に落ち込みがひどかったのが、4大フェスの一角に挙げられるサマーソニックです。スティービー・ワンダーやジェイZなどの海外の大物を招へいしたものの、観客席はガラガラに近い状態で、大幅な赤字を出したのではないか? との推測が流れています」(レーベル関係者)  他のフェスについても、邦楽主体のフェスは比較的堅調であったが、洋楽をメインにしたフェスでは全盛期に比べて落ち込みが目立ったようだ。 「夏フェスの代名詞とも言えるフジロックにも、かつての勢いはありません。洋楽主体のフェスを支えてきた30代を中心とするミドルエイジ層の"フェス離れ"が顕著になってきました。暑すぎるという気候条件に加え、"夏フェスに行く"というライフスタイル自体が飽きられてる面もあります」(音楽雑誌編集者)  そんな中、夏フェスを重要なプロモーションの場ととらえてきたバンドや歌手の間で、「脱・夏フェス」を模索する動きも出ているという。 「地方の夏フェスでは、収支の悪化にともない、運営関係者の中で内紛が起きたりするケースも出始めています。今後、フェスの数自体が減っていくと見られる中、大物バンドの中にはフェスへの出演を控えたり、フェスの開催時期にあえて自前の全国ツアー行う例も目立ってきました。これはフェスの出演料の相場が年々下がっており、出演しても十分な対価が得られないことも一因です」(先のレーベル関係者)  もっとも、CDの売れ行きが減少し続け、音楽ダウンロードの頭打ちが顕在化する中、新たな収益源を見つけられていないのが音楽業界の現状だ。そのため、各レコード会社やマネジメント事務所ではスタッフの人員を減らしたり、バンドの契約自体を見直すなどのリストラが進んでいるという。 「ロックバンドの場合、事務所から払われる給与が数万円ということも多く、日本全国のライブハウスを回って"日銭"を稼がなければ食べていけません。その際は帯同するマネジャーも居なくて、バンドメンバーが交代で機材車の運転手を務めるなど、わりと有名なバンドでも大変な生活を送っていますよ」(先のレーベル関係者)  小室サウンドが栄華を誇った90年代をピークに落ち込みを続ける音楽業界。頼みの「夏フェス」ブームも失速し、長いトンネルを抜けるのは当分先のようだ。 (文=山下道也)
Festival Trip Vol.3 たしかに増えすぎた感はある。 amazon_associate_logo.jpg
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刑事映画へのオマージュ満載!『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』

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(C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. 
公式サイト<http://www.cop-out.jp>
 刑事物のバディ・ムービーはハリウッド映画の定番。そして、アクション映画の刑事役が最も似合うハリウッドスターと言えば、もちろん『ダイ・ハード』シリーズのブルース・ウィリス! 9月4日から公開される『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』(ワーナー・ブラザース映画配給)は、そんなウィリスが主演したポリス・アクション・コメディー最新作だ。  ニューヨーク市警のベテラン刑事ジム(ウィリス)は、相棒のポールと共に麻薬密売ルートを探る捜査の途中で大失態を犯し、停職処分を受ける。給料も止められて金欠の折、離婚した妻とリッチな再婚相手のもとで暮らす愛娘の結婚式代を、実父のプライドに賭けて支払うことに。そこで、超レア物の野球選手カードを換金しようとショップに持ち込むが、遭遇した強盗にカードを盗まれてしまう。ジムが相棒と懸命に探すカードの行方は、麻薬密売を仕切るギャング団のリーダーとつながっていた......。  監督のケビン・スミスは、少々世間からズレた店員たちの日常の描写と、映画・漫画オタクらしいネタを軽妙な会話に盛り込んだ『クラークス』シリーズなどで知られ、マニアックな映画ファンから支持を集めてきた。俳優としての出演作も多く、『ダイ・ハード4.0』では素顔に近い映画オタクなハッカー役でウィリスと共演。本作はスミス監督の自作脚本ではないものの、彼のそうした資質が刑事映画への「オマージュ」という形で発揮されている。  特に冒頭の取調室の場面では、ポール役を演じるトレイシー・モーガンが、代表的な刑事映画の名台詞再現をアクション付きで連発し、コメディアンとしてのキャリアで鍛えた物まね芸を披露。それ以降も、刑事物のお約束を微妙にズラしたネタが、会話シーンやアクション場面の中に次々登場する。  ポールがフランス語由来の「オマージュ」を間違って発音する台詞に象徴されるように、刑事物の定型をスミス監督流の愛で"変奏"した本作。気の合う仲間と鑑賞して、見終わった後にどれだけ元ネタが分かったかで盛り上がる楽しみもある。映画好き、特に刑事物が大好きな人にオススメしたい。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) ・『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』作品情報 <http://eiga.com/movie/54687/>
クラークス こんなコンビニ嫌。 amazon_associate_logo.jpg
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ものづくり大国ニッポンの誇り 三兄弟が支える、日本最後のブリキ玩具メーカー

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日本のブリキ玩具を支える三兄弟。
 日本では昭和初期から中期、具体的には昭和20~30年代にかけて数多く生産されたブリキのおもちゃ。当時を知らない世代にとっては、どことなくノスタルジックな感情を誘うアイテム、熱心なコレクターのいる懐かしの玩具、というイメージだが、かつて日本の需要な輸出産業の一つだったことはあまり知られていない。  戦後日本の経済を支えた、主力商品として一時代を築いたブリキのおもちゃだが、プラスティックの台頭や人件費の高騰によって次第にその市場は縮小。今や、完全に風前の灯の様相を呈しているブリキのおもちゃ市場だが、その火を絶やさぬために孤軍奮闘している企業が東京の下町に存在していた! その名は有限会社メタルハウス。前身となる株式会社マルミヤ工業時代よりロボット一筋で、日本のブリキ玩具シーンを引っ張ってきたメタルハウスは、現存する日本で最後のブリキ玩具メーカーだ。自らの工房「ロボットアート」でも活動するブリキのおもちゃ職人の宮澤眞治さんは、二人の兄とたった三人でこの最後の砦を守っている。また彼は、昭和初期~中期にかけて作られた型を使い、古きよきブリキのおもちゃを現代に蘇らせるだけでなく、最新のラジコン機能を内蔵させ現代風にアップデートするなど、ブリキのおもちゃを今なお進化させ続けている気鋭の職人でもある。そんな宮澤眞治さんに、ブリキのおもちゃの魅力、そしてなぜ彼がブリキのおもちゃに惹かれるのか。そして、ロボットにこだわるわけを聞いてみた。日本最後のブリキ職人の生き様を見届けよ! ──メタルハウスという会社について教えてください。 「父が前身のマルミヤ工業を経営していて、そこで兄弟をはじめいろんな部門の職人さんが仕事をしていたんですが、昭和64年から平成元年に変わるくらいの時に父が死んで会社を維持しきれなくなったので一旦整理したんです。そこで上の兄がメタルハウスって名前にして、新規にスタートしたのが始まりです」 ──そこで廃業するという選択肢も当然あったと思うのですが。
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現在は自身の工房「ロボットアート」
で制作を続ける三男・眞治さん。
「そうですね。まあ、ちょうどその時にアンティークとしてのブリキのおもちゃが注目され始めていたんです。それで(昔のブリキのおもちゃを)リメイクを作ると売れるんじゃないかということになってきたんです。その時に大阪ブリキ玩具資料室の熊谷さんという方から「鉄人28号を作らないか?」と誘われたので実際に作ってみたら、これがよく売れたんですよ」 ──今のブリキの売れ行きは、もてはやされた時期に比べたらやはり減っていますか? 「減ってますが、本当に好きな人の数は変わっていないと思います。ただ、ブリキ玩具が高値で転売できるという理由で買う人は離れたと思います。ブリキのおもちゃって、全部新規で作ろうと思うと500万くらいかかるんですよ。例えば500万かけて500体売るとすると、単純に考えて1万円以上で売らないといけない。だからそんなに楽しい商売じゃない」 ──メタルハウスでは、とりわけロボットのブリキ玩具が数多く制作されているわけですが、ロボットにこだわる理由はなんなのでしょうか。 「自動車はすでに完成した形で世の中にあるけど、ロボットは未来のものだから誰も正しいロボットがどんなものなのか分からない。だからどう作るかは自由、というのが一つかな。それとやっぱり人間って、二本の足で歩くという行為に何かしら感じるものがあるのかもしれない。直立して二本足でレッサーパンダが立っただけでみんな喜んじゃうから(笑)、やっぱり特別なものがあるんじゃない? だからうちの先代の社長もロボットをやりたがったんじゃないかな。これからもロボットを作っていくつもりなんだけど、周りの関連業者とかがみんな元気なくて......」 ──長い間不景気だというのもあるでしょうしね。 「でもブリキのおもちゃの工作教室とかをやると、小さいお子さんは喜んで物作りするんだよね。みんな欲しいおもちゃはゲームとか言うけど、それは物作りの楽しさというものを知らないだけなんだから。偉い人は物作りが大事とか言ってるけど、やっぱり子どもにはナイフとか持たせて何かつくらせないとだめだと思うね。自分の手で作るのが楽しいんだよね」
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──そういうところから「ものづくり」の再評価をすべき? 「そういう下の方から再構築しないと。日本は物を作ってなんぼの国だからね。このままじゃ中国に全部持っていかれそうな気がする。向こうは国策で全部自分の国に持って行こうとするから。そこらの危機感を日本のトップは持っているのかもしれないけど。だけどものづくりをやっている人って、作ることだけで頭がいっぱいなんだよ。『このロボットをどう売ろう』とか『儲けよう』という、お金の話が後回しになってしまう。作る人と売る人が分かれないといけない。どっちが上ってわけじゃなく、こっちは物を作ってうれしいって人種だからね」 ──宮澤さんは3年前に、ご自身の工房である「ロボットアート」を立ち上げられました。そちらには営業職の方はいるのですか? 「全部私ひとりですよ。何から何までコツコツやっていくから、(ブリキのおもちゃは)月産20~30くらいじゃないかな」 ──人員を増やすことはないんですか? 「以前、自分の給料からお金を出して二人ばかり育てたりしたんですよ。でもお金が続かなくてね......」 ──技術者は育てなきゃいけないけど、お金がない。今の日本の状況の縮図みたいですね。 「だから事業仕分けとかも悪いとは言わないけど、残すことが必要なところもあると思う。言っていることも分かるし、やっていることも正しいと思うけど。私、自民党の頃にロボットとかを研究する人の助成金を申請して、それがいいところまでいってたんです。それが自民党が負けちゃって全部だめになっちゃった(笑)。政治のことは分からないけどね。ただ、設計している間は生産性はゼロなんです。設計するのに一年間の生活費とかがかかってしまう」 ──そんな苦労をされてまで、なぜ宮澤さんはブリキのおもちゃを作りたいんですか?
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(上)長男でメタルハウスの社長でも
ある勝政氏。/(下)黙々とと作業を
続ける職人肌、次男の恒利氏。
「5歳の頃からロボットを見て育ってきたので、もうそれが当たり前なんですよね。それに60歳前になって今更何をやるって話しでね(笑)。それでこれからもロボットを触れられるなら(この仕事を)やっていきたいと思ってる」 ──自分の人生の大部分をブリキのおもちゃが占めている。 「物心ついた時からロボットがあったからね。思い出が全部おもちゃにリンクしている。かつては家に帰ったらおもちゃを見るのが嫌だった。家に帰ったらおもちゃのことは忘れたかったんです。それが50歳を過ぎたあたりかな。自分が30年前くらいに作ったものを見ると、年をとったせいかいいなと思えるようになった。もうライフワークでずっとやってるから、思い入れっていうのも強くなったんじゃないかな」 ──宮澤さんにとってロボットとはなんなのでしょうか。 「生きがいでもあり、これがあっての自分かな。ロボットを抜いちゃうと、私の存在価値がなくなっちゃうの。ロボットを抜いた宮澤眞治なんてただのヨレヨレおじさんだもの。だからロボットっていうのは、私にとっては親が残してくれた『いいもの』って感じかな」  ロボットに情熱を注いで道なき道をひた走り続ける男、宮澤眞治さん。そんな彼に対して、兄でありメタルハウス社長の宮澤勝政さんは、「私は社員に仕事を与えないといけないから(会社を続けている)。まあ(市場が)なくなるのは寂しいといえば寂しいけどしょうがないでしょうね」と経営者らしく答える。だが、最後にこうも付け加えた。 「ただ、最後まで見届けたらどうなるのかなとは思いますけどね。こんなこと、他の人にはできないじゃないですか」  そう答える勝政さんの表情は、ブリキに生涯を捧げてきた人間としての矜持に満ちていた。 (取材・文=有田シュン/写真=毛利智晴) ◆ブリキギャラリー(画像をクリックすると拡大されます)
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●メタルハウス 東京墨田区にある、日本で唯一のブリキの玩具メーカー。創業は昭和28年。日本製にこだわったブリキ玩具を生産し続けている。 buriki16.jpg
左:「「メタルランナー」
15万円(税込)
右:「スターパトロール」
1万1,500円(税込)
<http://www.metalhouse-tokyo.com/> ●ロボットアート 埼玉県春日部市にあるブリキの玩具工房。宮澤眞治氏が企画から図面の作製、部品の型取りやブレス加工、内部の電気記録、組み立てまで一人でこなしている。 buriki15.jpg
「MECHANIZED Ⅱ ROBOT
 (LIMITED 200)」
2万5,200円(税込)
<http://www.robotart.jp/>
北原照久の動くロボットをつくろう! 古き良き文化。 amazon_associate_logo.jpg
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3Dで臨場感が倍増! 手に汗握る格闘シーン満載『バイオハザードIV』

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 数多あるゲーム原作のアクション映画の中でも、ミラ・ジョボビッチ主演の『バイオハザード』シリーズは、知名度と興収の点で横綱級の存在。その第4作『バイオハザードIV アフターライフ』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給、9月10日公開)は、シリーズ初の3D映画でもあり、最新の映像技術によるスタイリッシュな格闘アクションを体感できる娯楽作だ。  物語の始まりは、東京・渋谷のスクランブル交差点。T-ウイルスに感染した少女(中島美嘉)が通行人を襲い、人間をアンデッドに変える感染が一気に広がる。4年後、東京の地下でウェスカー(ショーン・ロバーツ)のもと新たな研究を進めるアンブレラ社の本部を、アリス(ジョボビッチ)が急襲。ウェスカーは小型機で脱出して核爆弾で施設もろとも関東一円を破壊し、密かに乗り込んでいたアリスの息の根を止めようとするが、その瞬間、機は山腹に激突――。  事故から生還したアリスは、感染のない安全な場所と生存者たちを求めて、アラスカへ、そしてロサンゼルスへと移動。アンデッドに取り囲まれたロスの刑務所で生存者らと合流したアリスは、沖合に停泊するアルカディア号へ全員で脱出を図るが......。  シリーズ第1作『バイオハザード』(02)でメガホンを取ったポール・W・S・アンダーソンは、2~3作目では製作・脚本に回っていたが、本作で監督に復帰。ジェームズ・キャメロン監督からアドバイスを受け、『アバター』(09)と同じ「フュージョン・カメラ・システム」を採用、全編3D撮影・製作を敢行した(『アリス・イン・ワンダーランド』や『タイタンの戦い』など、今年公開された話題の3D大作は、いずれも2Dで撮影されたものを3Dに変換した作品だった)。3Dでの格闘シーンは、両者の位置関係や距離感がより鮮明になるため従来の方法が通用せず、アクションや演出でリアルに見せるための新たな工夫が盛り込まれたという。  その甲斐あって、ミラの激しくもしなやかな体の動き、飛び交う銃弾や刃物、スクリーンを横切る巨大な斧といった被写体に実体感が伴い、不意に飛び出してくると思わず体をのけぞらせたくなるほど。アクションゲームの映画化ゆえ、観客が作品世界に没入して自らプレイする感覚はシリーズに共通するが、3D映画になったことで臨場感がさらに高まり、敵と戦う場面の興奮と勝利の高揚感も増している。  カプコンの人気ゲームが原作ということも手伝って、日本での興収は1作目が23億円、第2作『バイオハザードII アポカリプス』(04)27億円、第3作『バイオハザードIII』(07)28.5億円と順調に伸ばしてきた同シリーズ。3D化された本作がさらに飛躍できるかどうかも注目される。ゲームファンやアクション映画好きはもちろんのこと、最新の映像技術に触れたいマニアにもぜひ見てほしい意欲作だ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『バイオハザードIV アフターライフ』作品情報 <http://eiga.com/movie/55205/>
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羞恥心がいつしか快感に……? Mにはたまらん『リアル桃鉄』潜入レポ

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『第6回リアル桃鉄』リアルタイムブログより
 ゲームの中に自分が入って冒険を楽しみたい......ゲーム好きならこんな妄想をしたことがある人は多いはず。『リアル桃鉄』は、そんな願望を満たせるイベントである。このイベントは、人気ゲーム『桃太郎電鉄』シリーズを、実際の首都圏JRを使ってやろうというもの。6年前から毎年夏に開催されており、8月21日(土)に行われた『リアル桃鉄2010』に筆者も参加してきた。6年前は1対1の戦いだったのが、年々口コミでファンや参加希望者が増え、今回は過去最多の16チーム(32人)が参戦した。 ■早朝から夕方まで辱められ、その様子をネット上に拡散されるイベント  イベントは7時~17時までぶっ通しで、以下のようなルールで進められる。 1.各チームが任意のJR駅にスタンバイ 2.ゲームマスターがランダムに目的地を決定する 3.各自サイコロを振り、出た目の数だけ駅を移動する 4.移動したら指令カードを引く 5.カードの指令内容を実行する 6.指令カードをやっている様子(写メや動画)を、リアルタイムブログに投稿する 7.目的地に到着するまで3~6を繰り返す 8.目的地に到着したらスコアを計算する(現在地から目的地までのJR運賃をマイナス)。目的地から最も離れた場所にいる下位3チームは貧乏神Tシャツを着用 9.タイムアップ(17時頃)まで2~8を繰り返す 10.タイムアップ時に最もスコアの低いチームは罰ゲーム  指定された目的地に向かって、サイコロの出目の分だけ駅を進む点はゲームの桃鉄と同じ。ただ、『リアル桃鉄』の場合、上記の4~6で行う指令カードが曲者で、【太い眉毛カード】(味付け海苔やマジックなどでまゆげを太くする。幅3cm以上。誰かがゴールするまで)や、【思春期カード】(コンビニでエロ本を買って公園で読む)など、できれば公衆の面前でやるのは御免被りたい内容のものばかり。  また、どこかのチームが目的地に辿り着いた時点で、目的地から遠かった3チームは、"貧乏神"となり、参加者がそれぞれ手作りした恥ずかしいデザインの貧乏神Tシャツを着なければならないのだ。
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なかには"Tシャツ"の形状をしていないゴザ製の貧乏神Tシャツを着たチームも......。
電車内にこんなのがいたら、絶対に関わりたくない。
 それにしても、首都圏JRの駅を眉毛を太くして移動したり、貧乏神Tシャツを着たり、体力的にしんどかったりと、常に恥と疲労と隣り合わせのこのイベント、もはや苦行としか思えない。主催の椎名隆彦さん(しーなねこさん)は、「参加した方はみんな『辛かった』と口を揃えて言います。ただ、あれだけ辛かったり恥ずかしい思いをしたのに『またやりたい』というリピーターが多いので、イタ気持ちいいというか、修行のようなものなのかもしれません。優勝すると何か賞品がもらえるわけでもないですし、自らを辱める行為をひたすらこなすだけの後ろ向きなイベントですね」と淡々とした面持ちで言う。  参加者は、サイコロの出目や指令カードの内容に四苦八苦する様子をそれぞれ写メや動画で撮り、携帯からリアルタイムブログ(http://realmomo.com/round6/blog/)にアップするので、PC前にいるだけで参加者を笑い者に......いや、ともに喜びや苦しみを分かち合うことができる。さらに、今回から初の試みで、下北沢のカフェバー「スローコメディファクトリー」に本部を置き、実況班がリアルタイムブログを見ながら参加者の起こす行動やハプニングをいじりつつ、USTREAMで生中継を行った。それを見ている視聴者がTwitter上で反応することで、リアル桃鉄の実況生中継が拡散していき、ピーク時にはUSTREAM視聴者が150人にも上ったそう。 ■リアル桃鉄の醍醐味は、勝ち負けではない?  ところで、ゲームの桃鉄をやったことのある方なら分かるかと思うが、あのゲームはとにかく"絶対勝ちたい!"という気持ちにさせられる。戯れのつもりで対戦したカップルがいつしか真剣勝負になり、負けた方が不機嫌になって大喧嘩に......という話を何度も聞いたことがある。そのため、『リアル桃鉄』でも、熾烈かつ汚い大人の戦いが繰り広げられるのだろうと思っていた。しかし、いざやってみると、どうやら勝ち負けではなく、いかに恥ずかしい指令カードをこなし、その様子を高みの見物をしているUSTREAM視聴者の皆々様に笑っていただくかという点に、リアル桃鉄の存在意義があるように思えた。もちろん、大変な目に遭う指令カードは、やる側にしてみればたまったものではないし、筆者もイベント開始直後は"笑い"の要素などいらないから、平和にゴールしたいと切に願っていた。だが、人はピエロが好きだ。公衆の面前で愚かな行為をするプレイヤーこそ、観戦者の求めているものである。イベント中、ブログにアップされた自分の醜態を肴に、観戦者の方々がTwitterで盛り上がってくれる様子を、駅の移動中にiPadで見ているうちに、恥がいつしか快感に変わっていったのだった。 ■しーなサイゾーチームが首都圏JRの駅周辺で晒した醜態  そこで、筆者のチーム「しーなサイゾー」(しーなねこさんと筆者のペア)が、身を挺してこなした指令カードの一部を紹介したい。  しーなねこさん担当【沢尻エリカード】@矢向駅:尻を片方出して写真を撮る(銅像の尻とか、桃とか、尻のような何かでも可)。  さすがに誰しも公衆の面前で尻を出したくないだろうという配慮から、"尻っぽい何か"でもよいという逃げ道が用意されている。ただ、他のチームに遅れを取らないためには、タイムロスは少しでも避けたい。尻の代用品を探す時間すら惜しい。嫌がるしーなねこさんの抵抗を押し切り、「早く尻出してくださいよ! 負けるじゃないですか!」と無理矢理尻を出させ、無事指令カードをこなした。
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このカードを引いた時刻は7:48。駅のホームで尻を出す
しーなねこさん(アラサー)の写真をテキパキと撮る私。
これは一体なんのプレイだろうか?
アサイ(=筆者)担当【噴水カード】@吉川駅:噴水を見つけて、手か足を水にひたす。噴水がなければ口から水を噴水のように噴き上げる。  炎天下でうだるような暑さの8月なかば。自ら噴射した水を浴びても、ちっとも気持ちよくなかった。噴水は本物に限る。 アサイ担当【でんぐり返しカード】@日進駅:サイコロを振って出た目の数だけ駅付近ででんぐり返しをする。  駅のホームで3回でんぐり返し。コンクリートが首の骨に当たって非常に痛かった。マット運動はマットのない場所でやるものではない。 しーなねこさん&アサイ担当【いちごカード】@大宮駅:いちごを買ってかわいく食べる。
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しーなねこさんのいちご姿。
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アサイのいちご姿。
 実況班は、しーなねこさんの苺を食べる姿について「好きな子の縦笛を舐めてるみたい」と批評し、アサイについては「自分がかわいく見える角度を完全に心得てる。小憎たらしい!」とのコメント。褒められているんだか、けなされているんだか......。 アサイ担当【ラッコちゃんカード】@浦和駅:地面に仰向けに寝て、お腹の上に乗せた貝を叩いて割るしぐさをしばらくする。かわいく。  イベントも終盤に差し掛かった頃に引いたラッコちゃんカード。疲労と眠気のピークで、筆者の心から"恥じらい"の4文字は消え去さっていた。浦和駅のホームで堂々とラッコちゃんになりきる24才童顔小柄の筆者を、痩せ型メガネのアラサーであるしーなねこさんが黙々と撮影する様子に、周りの人は触れてはいけないものとして視線すら送ってこなかった。  イベント終了後、しーなサイゾーチームはどこのチームよりも珍プレー好プレーが際立っていた、と名誉だか不名誉だか分からないお言葉をいただき、なんだか人間として一皮むけたような気持ちでいっぱいになった。参加者の大半は20代後半~30代前半だとのこと。大の大人が、1日中シラフで奇怪な行動をするイベントが6年も前から続いているなんて、日本は平和で何よりである。今回はUSTREAM&Twitterの効果で、過去最高の盛り上がりを見せたため、来夏からはより規模を拡大して、複数開催も視野に入れているそう。もし、首都圏JR駅周辺でおかしなことをしている大人を見かけ方は、「日本が平和な証拠だ」と生暖かい目でスルーしてあげてほしい。 (取材・文=朝井麻由美) リアル桃鉄2010公式サイト <http://realmomo.com/> リアル桃鉄2010 USTREAM実況録画 <http://www.ustream.tv/channel/realmomo> リアル桃鉄2010 togetter 当日のタイムライン <http://togetter.com/li/44003>
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「やったもん勝ち」なんて当たり前! 海外マンガ・アニメ違法投稿サイトの実情

 「マンガやアニメは好きだけど、中の人は飢え死にしてもいいです」そんな心の中の声が聞こえてきそうだ。  先日、アニメ化もされたマンガ『黒執事』の作者・枢やな氏が公式ブログで「友達からROMで借りて読みました」「1期全部海外動画サイトで見ました」などのメールを送ってくる、「ファン」を称する人々のモラルのなさに非難する文章をアップし注目を集めた。そして、正規のルート以外で違法にアップロードされたマンガやアニメを入手・閲覧している人々の意識は、世界のどこでも同じらしい。  8月にアメリカ・サンディエゴで開かれたマンガ・アニメを中心としたポップカルチャーの祭典「コミコン・インターナショナル」。そこで催された、オンラインの違法コンテンツをめぐるシンポジウムの中で、参加者の一人が客席から次のような発言をしたという。 「出版社はスキャンレーション(後述)のサイトを、(どのマンガが現在ファンの間で流行っているかを見るための)調査に使っているのではないか? 例えば『ヘタリア』(日丸屋秀和による国擬人化コメディ)などはスキャンレーションがあったからこそ、アメリカで出版されることになったのではないか?」  これに対するパネラーの発言は次のようなものだった。 「いったんネットに作品が出回ると、もうそれはネット上から取り下げても意味は無くなるし、実際に日米出版社による共同声明後(後述)に、出版社が多くのスキャンレーションサイトに作品をサイトから取り除くように要請したが、その要請に応えたサイトは少数だった」  ほかにもパネラーは次のように話している。 「調査のためなら、数章掲載するだけでも足りる。例えば『ワンピース』の人気を見るだけなら、最初の2~3章掲載するだけでいい。でも多くのスキャンレーションサイトには『ワンピース』が全章アップされている。それはどう言い訳するのか?」  違法にマンガやアニメをアップロードしたサイトであっても、ビジネスの役に立つ。果たしてそんなことはあるのだろうか?  海外のマンガ・アニメ愛好者にとって違法アップロードサイトは、日本では考えられないほど公然と存在している。違法にアップロードされたマンガやアニメのうち、マンガはスキャンレーション、アニメはファンサブと呼ばれる。その歴史は長く、インターネットが普及した90年代後半から行われていた。それぞれ、日本語が理解できなくても分かるように、英語など(ほかにも各国語がある)の字幕をつけたものが流されるわけだが、驚くべきはその仕事の速さ。日本で放送されたばかりの深夜アニメが、翌日、翌々日には早くも字幕付きでアップロードされていることもあるのだ。  そんなハイスピードで作業を行うことができるのも、日本国内で雑誌をスキャンしたり番組を録画する日本人協力者がいるからだ。海外のファンとネットワークを持っているくらいだから、協力者たちの多くは高学歴だ。でありながら、違法かつモラルのない行為に手を染める理由はなにか。 「アメリカですら、日本で流通しているマンガやアニメのうち英訳され販売されるものは限られている。かりに販売されたとしても、長期間のタイムラグがある。そうしたファンの心情が、スキャンレーションやファンサブを成立させているんです」(ある日本人協力者)  今でも、こうした「愛ゆえの、止むに止まれぬ行為」だというファンは少なからず存在するが、その数は少ない。かつて、「愛ゆえ」にファンサブやスキャンレーションのサイトが運営されていた時代には、自分たちの国で作品がオフィシャルに放映・販売されるようになると削除する「暗黙の紳士協定」があった。しかし、現在はそういうファンはほとんどいない。そして、違法だという意識も薄い。 「大手の違法アップロードサイトは、アフィリエイトや企業広告で収益を得ています。そればかりか、勝手に(c)マークをつけたり、有料配信をしているものもあります。欧米で人気を博している『NARUTO』は、一時期Googleで作品名を入力すると、そうした違法サイトが検索順位のトップに表示される状態になっていた。そのため、年少のユーザーは違法だという意識どころか、それらが公式のものだと思って閲覧していることもあります」 もちろん、権利者の側も黙っているわけではない。日本ではアニメビジネスの情報サイト『アニメ!アニメ!』が報じている(http://animeanime.jp/news/archives/2010/06/42_3.html)が、今年に入り日米の出版社が共同で、違法サイトに警告書を送付する取り組みを行っている。これにより、いくつかのサイトは閉鎖に追い込まれた。その中のサイトの一つは、Googleが発表している世界の上位サイト1000にランクインしていた。それくらい、違法サイトは誰もが気軽にアクセスするものになっている。ユーザーに違法サイトを利用することの問題を知らしめるためにも、権利者のアクションが求められている。 ◆合法に転身した? 違法サイト  消えてもすぐに新たなものが立ち上がる違法アップロードサイト。中には、どういうわけか合法サイトに転身を遂げたものもある。  それが、動画配信サイト「クランチロール(http://www.crunchyroll.com/)」だ。  2006年にカリフォルニア大学バークリー校の出身者らによって立ち上げられたこのサイトは、アニメの違法アップロードサイトとしては異例の急成長。それに目をつけた投資家によって本格的な収益事業を目指すことになった。それは、権利者とライセンス契約を結び合法サイトに転換することだった。09年に日本法人を設立すると、まずテレビ東京との契約に成功。さらに、GDHや東映などとも契約を結ぶに至った。 「当初は、合法だと言いながら違法な動画を混在させていたこともあり、不信感はぬぐえない。それにクランチロールの成功例が、ほかの違法アップロードサイトを正当化する口実となっているんです」  さらに問題なのは、総務省が同社に「お墨付き」を与えてしまっていることだ。同社は昨年開催された、総務省が後援するデジタルメディアのイベント「第15回AMD Award '09」にて「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー'09年間コンテンツ賞/優秀賞」を受賞。いわば、日本政府が存在を公認したかのような構図になっている。このことが、ほかのサイトに「彼らも最初は違法だったのだから、いいじゃないか」という意識を蔓延させている。  性善説で考えれば「改心した」と思いたいところだが、同社からはどうもグレーな印象が漂う。たとえば、同社がどうやって収益を上げているのかも謎だ。今年5月から「黒字化した」と公表しているが月600万人のユニークユーザー(公称)に対して、月7ドルの有料会員は、わずか2万人(公称)にすぎない。そのような企業と、テレビ東京や東映などの大手コンテンツホルダーが手を結び、出資している理由があるとすれば、幾ばくかの出資でアメリカに公式配信サイトをつくり違法サイト撲滅の一助にするという利便性だろう。  いずれにせよ、同社の行いは「成功」というよりも「やったもん勝ち」の印象がぬぐえない。今年6月には凸版印刷の子会社で携帯コミック配信の大手・ビットウェイが同社に75万ドルを出資したことも報じられている。  「合法化」したとはいえ不安の残る外資ベンチャーに期待せねばならぬほど、日本のコンテンツホルダーは追いつめられているのだろうか。 (取材・文=昼間たかし)
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メイド・イン・ジャパンに憧れて…… 香港の文学系コミック作家・智海

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「Sea」(2006) ©Chihoi
 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どもの頃、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。 第8回 コミック・アーティスト 智海(チーホイ)  智海(チーホイ)は、香港随一の「文学系コミック作家」だ。実際の文学作品をモチーフにすることも多く、その静謐なタッチはフランスやイタリアで受け入れられ、今では台湾、中国本土にも人気が広がっている。哲学者のカントと誕生日が同じなのが自慢(?)のチーホイだが、子どもの頃は、思いっきり「メイド・イン・ジャパン」に囲まれて過ごしたのだという。
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『ヤッターマン 1』(松竹)
「うちでは、扇風機やオーブン、掃除機まで、みんな『National』。母親は、昔から"家電といえばNationalよ!"って。日本製は、質が良くて、長持ちだって、みんなが信じてた。日本のモノって、そんな感じで、ずっと僕たちの身近にあったんです」  身近なのは、家電だけではなかった。1980年代、他の香港の子どもたち同様、幼いチーホイは、毎日テレビのアニメ番組を見て過ごした。 「まずは『ヤッターマン (広東語のタイトル:小雙俠)』『ドラえもん』『六神合体ゴッドマーズ (六神合體)』『ユニクロン (宇宙大帝)』『1000年女王 (千年女王)』。そうそう『魔法の天使クリィミーマミ (我係小忌廉)』に、あとそれから......」  と、日本アニメ三昧の日々。
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「Fa Fa World」
(2009) ©Chihoi
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「全部日本製だと気づいたのは大人になってから。でも、子どもは、どこ製のアニメか、なんて気にしないでしょう」 「いい時代でした。今でもすごく懐かしい。あの頃は、いつも、宮崎駿の『未来少年コナン』の主人公になれたら、と、夢想してました」  そんな時代に対する思いが、『花花世界(ファーファーの世界)』という、最近の作品にも現れている。花花(ファーファー)という小さな女の子が主人公の、チーホイの作風には珍しい、ほのぼの系四コママンガだ。08年に新聞で連載されるや、これまでチーホイの作品を知らなかった人たちも含め、たくさんの読者から反響があったという。花花は、今、香港で最も愛されているキャラクターだ。  チーホイの「日本観」はもう少し続く。 「日本人は、みんなが熱心に働いている、というイメージ。すごく集中力があるから、他のことに気を取られない。集中力を保つためには、心を静めることも必要だし、時間もかけなくては。日本の芸術は、そうした、静謐さ、正確さ、注意深さ、繊細さに対するクオリティやメンタリティを表したものだと思う。そこにとても憧れます」  チーホイが敬愛するアーティストは、「竹久夢二、棟方志功、橫尾忠則、橫山裕一(今一番欲しいのが、横山さんのTシャツ!)、辻直之。あとそれから......」
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左:「The Train」(2007)/右:「Papa(爸爸) from Still Life」 (2003) ©Chihoi
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 最近、ドイツのおもちゃ工場の依頼で、花花をキャラクターにしたヴィンテージ・トイ(スライド・ビューTV)を作った。代表作『Still Life(黙示録)』の改訂版や、『花花世界』の簡体字版の発行が決まっているし、友人のライターの本の挿絵も頼まれている。2011年の1月に、フランスのアングレーム国際コミック・フェスティバルで「香港展」が開かれるのに併せ、同年末まで開催される、グループ展へも招待された。 「全てがハイスピードで進む香港で活動していると、集中するということがとても難しい。いろんな情報が入って来て、つい散漫になる。今、自分を集中モードに持っていく必要を感じています。日本スタイルを倣ってね」 (取材・文=中西多香[ASHU]) Chihoi_portrait.jpgチーホイ(智海/CHIHOI) 1977年、哲学者イマヌエル・カントと同じ日に香港に生まれ、長じてはフランツ・カフカをこよなく愛する(いわく「彼は人間の創造性の究極の源だ」)。文学的とも評される作風により、香港のインディペンデント・シーンにとどまらずアジア各国からヨーロッパへと人気が広がっている。主な作品集に、地元香港で出版された『黙示録(Still Life)』(03)、愛らしい四コママンガ集『花花世界』(09)『花花世界2』(10)、台湾で出版された鴻鴻との共著『灰掐(The Train)』(07)、そのイタリア語
『Il Treno』(08)、スイスで出版されたフランス語の『A L'Horizon』(08)などがある。 <http://www.chihoi.net/> 『花花世界(ファーファーの世界)』(2009年 Joint Publishing刊) <http://www.ashu-nk.com/ASHU/shop2_Joint.html> ●なかにし・たか アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com > オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
ヤッターマン 1 ポチッとな。 amazon_associate_logo.jpg
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