朝日新聞までもが危惧し始めた「世界に広がるオタク文化」の幻想と危機的状況

 もう「世界に広がるオタク文化」の幻想を見る時代は終わった。2月7日付の朝日新聞の別冊紙面「GLOBE」が「MANGA、宴のあとで」と題して、日本のマンガ・アニメが持て囃されているはずのフランスとアメリカで売り上げが伸び悩んでいる現状をレポートしている。  秋葉原で外国人観光客を見かけることは珍しくなくなった。世界のあちこちでオタクイベントが開催されていることはニュースにもなる。YouTubeなどの動画投稿サイトでは、世界のあちこちで、コスプレしてダンスするオタクたちの姿を見ることができる。  それなのに売り上げが伸び悩むとは、どういうことか? 「newsweek日本版」が「萌える世界」と題して世界に広がる萌え文化を紹介したのは2007年3月のこと。それから4年余りの間に何が起こったのか?  答えは簡単である。最初から日本のマンガ・アニメが世界のあちこちで持て囃されているというのは、幻想に過ぎなかったのだ。  そもそも、「クールジャポン」なんて言葉が流行した07年頃、アメリカでもヨーロッパでも、アニメ関連の市場は縮小が始まっていた。アメリカで、日本のアニメおよび関連商品の売り上げがピークに達したのは03年頃。テレビでのアニメ放映時間も07年9月をピークに減少を続ける一方だ。  フランスでは日本のマンガが数多く翻訳出版されているが、とにかく売れない。先の朝日の記事では、『デトロイト・メタル・シティ』が5,000部程度しか売れなかったことを記している。もちろん、これはヒドイ例だ。ジャンプ作品はある程度人気を博しているが、それでも08年に発売された『NARUTO』の単行本が22万部売れた程度に過ぎない。  と、読者の皆さんは「ちょっと、データーが古いのではないか?」と思ったかも知れない。その通りである。  ところが、そもそもアメリカやヨーロッパにマンガやアニメの市場がどの程度の規模で存在しているのかを知るのは、かなり難しい。こうしたデータを収集している組織としてはJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)が有名だろう。ところが、この記事を書くにあたって久しぶりにサイトを覗いてみたのだが、欧米圏に関しては新しい調査報告が、あまりなされていない。こうした状況を見ても、あたかも日本のマンガ・アニメが巨大なブームを引き起こしているような状況は、幻想としか思えない。  一方で、日本のマンガ・アニメを求める「濃い」ファンもちゃんと存在する。彼らの存在は大きく見えるが、数は限られたものに過ぎないのだ。  フランスで開催されたオタク系イベントの日本側窓口となったコーディネーターからは、こんな話も。 「日本のオタク事情に極めて詳しいファンは存在します。例えば、『東方』のファンはフランスにもいるんです。ただ、フランスで『東方』を知っている人は200人程度じゃないでしょうか」  筆者は一昨年に、ある週刊誌で「日本のマンガ、実は世界でウケてない!」という少々煽り気味のタイトルで日本国内での幻想と海外での現実とをレポートした。しかし、この記事の反響の多くは批判的なものだった。  だが、今となっては、このレポートは正しかったと言わざるを得ない。  国内需要が縮小していく中で、海外に活路を見出すのはビジネス上、当たり前のことである。だが、海外には、まだ山と溢れる日本産のマンガやアニメを受け入れるだけのすそ野が出来上がっているとは言えない。  例えば、日本ではオタクだけでなく幅広い客層を集めるスタジオジブリの作品群も、欧米では、さほど興行収益を上げてはいない。国内ではさまざまな海外映画祭での受賞が派手に報じられているが、それが集客には結びついていないのが現状なのだ。  だからといって、縮小する一方の国内の需要に頼っていては、マンガ・アニメの壊滅は必至だ。これまで、多くの人は、海外には既に作物が豊富に実る豊かな土壌の楽園があるち勘違いしていた。だが実態は、これから畑を耕してまだ日本のマンガ・アニメを消費する人々を育てていく段階だったのだ。  カギとなるのは、日本のように子供から大人まで、年齢を重ねてもマンガやアニメを消費するライフスタイルをどうやって普及させていくかということ。サブカルチャーの一分野として、日本のマンガ・アニメを消費する人々だけをアテにしていては、先はない。  別段、批判するわけではないが『朝日新聞』が、多くのページを割いて、海外のマンガ・アニメの不況を記すということは、状況は更に先に(悪く)進んでいるということだ。日本のマンガ・アニメの未来を考えるならば、もう、夢を見ている暇はない。 (文=昼間たかし)
世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」 はい、幻想! amazon_associate_logo.jpg
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「日本人+オタク」で出会い放題!? Facebookは最強のナンパツールだった!?

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Facebookより
 映画『ソーシャル・ネットワーク』の効果もあって、注目を集めているSNSサイト・Facebook。  先頃のチュニジアの動乱では、Twitterと共に民衆蜂起の呼びかけに活用されたとも言われているソーシャルメディアだ。  今年に入ってから「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)や「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)が特集を組むなど、ビジネス活用としても注目を集めている。  だが、重要なのは、男女の出会いに利用できるかというところ。mixiを初期から使っていた人は記憶しているかも知れないが、初期のmixiは入れ食い状態だった。  日記にちょっとコメントしただけで、マイミク申請はどんどん受けてくれるし、オフ会も盛んに開かれて、当時は最強の出会いツールだったと言ってよい。  では、Facebookはかつてのmixiのように使えるのか? 結論から言えば、使える。それも、国内に限らない世界の男女の出会いに使えるのだ。なにしろ、mixiが国内のみで2,000万人程度(昨年4月時点)なのに対して、Facebookは国内ユーザーこそ300万人程度(今年1月時点)と言われているが、世界で利用者は5億人を超えているのである。  いったい、どうすれば出会いツールとして活用できるのか。基本的な利用方法は専門のサイトに任せておいて、キモの部分を解説しよう。  出会いのターゲットは、日本文化に興味のある非英語圏の国の男女だ。なぜかというと、こちらの英語能力が低くても問題にならないから。フランス人やイタリア人も英語は理解できるが、さほどレベルは高くない。日本の中学生と同程度といってよいだろう。なので、こちらが翻訳サイトを使いながら作った英文でも、違和感なく受け入れてくれるからだ。  そうした国の人々が興味を持っている日本文化とは、歌舞伎とか芸者ではなくOTAKUとAnimeである。検索すれば、関連するグループ(mixiのコミュニティに相当)が、どんどん出てくる。特にヨーロッパ圏の人々はプロフ写真に自分のスナップを平気でアップしているので、顔写真を確認しながら手当たり次第に友達リクエストを送信すればいい。  あとは「私は日本人でオタクである」とアピールするだけで、放っておいても興味を持って食い付いてくる。「ウチから秋葉原まで電車で30分くらいかな」と言っただけで尊敬されるんだから、スゴイ!  というわけで「日本人」「オタク」の二つのキーワードだけで、興味を持ってもらえる可能性が高い。そこから関係を深める手段として有効なのが、チャット機能。デフォルトでログインしている相手を「チャット可能なユーザー」として表示してくれるんだから、Facebook自体が、出会いをサポートしているとしか思えない。 先に記したように、翻訳サイトを使えば会話は問題なくできるのだが、けっこう高い確率で「skypeかMSNで話さない?」と誘われることも。というわけで、語学力があるに越したことはない。  使い方は以上のように簡単なんだが、Facebookが優れているのは、mixiのように、特定されないように話をごまかしたりすることが皆無だから、生の感覚が伝わってきて「絶対に出会うぞ!」とやる気が出てくるのがポイントだ。  なにせ、ハイティーンの女性が平気で「バカンスに行ってきたよ!」と友達と一緒に水着の写真をアップしていたりするんだから。  相手が海外なので容易に会うことができないが、いざ出会えるとなれば距離なんて関係ないハズ。Facebookが成し遂げたムーブメントは、民衆革命なんかじゃない。性欲による国境突破だ!?
裏モノJAPAN (ジャパン) 2009年 08月号 エンドレス! amazon_associate_logo.jpg
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ビターな味わいが広がるスイーツムービー『洋菓子店コアンドル』

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(C)2010『洋菓子店コアンドル』製作委員会
 2月14日のバレンタインデーから3月14日のホワイトデーに至る期間は、女子・男子ともに年間を通じて"スイーツ感度"が最も高くなる1カ月。江口洋介と蒼井優が初共演の映画『洋菓子店コアンドル』(アスミック・エース配給、2月11日公開)は、この時期にぴったりの"目で味わうご馳走"だ。  鹿児島のケーキ屋の娘・なつめ(蒼井)は恋人を追って上京し、有名洋菓子店「パティスリー・コアンドル」を訪ねる。恋人は辞めた後だったが、なつめはオーナーでシェフパティシエの依子(戸田恵子)に頼み込み、店で働くことに。一方、コアンドルに時折現れる元天才パティシエ・十村(江口)は、過去のある事件のせいでケーキを作れなくなっていた。  依子ら店のパティシエたちからケーキ作りを学びながら、十村や常連客との出会いを通じて、自分の生き方や夢を見つめ直していくなつめ。十村もまた、何事にもまっすぐな気持ちをぶつけるなつめに、心を揺さぶられていく。そんな折、晩さん会のデザートを作る契約を取った依子が倒れて大けがを負ってしまい、コアンドルは最大のピンチを迎える。  実際に名店のシェフパティシエが提供したという優美なスイーツの数々が、瑞々しくつややかな映像で映し出され、出来たてのケーキから漂う甘い香りや、口の中に広がる繊細な風味までもがスクリーンから伝わってくるかのよう。  一方で、なつめや十村が経験する人生は決して甘くない。失恋に挫折、取り返しのつかない過ち。それでも、そうしたビターな味わいがあるからこそ、苦悩と努力を経て手にする「幸せ」が一層甘美なものになるのかも。  メガホンを取ったのは若手実力派の深川栄洋監督。堀北真希が悪女を演じたサスペンス『白夜行』(公開中)がベルリン国際映画祭のパノラマ部門に出品されることが決まったほか、櫻井翔・宮崎あおい共演の医療ヒューマンドラマ『神様のカルテ』も8月公開が予定されるなど、タイプの異なる話題作が目白押しだ。  エンディングに流れる主題歌「明日、キミと手をつなぐよ」でメジャーデビューを果たしたのは、福岡在住のシンガーソングライター、ももちひろこ。フレッシュなさわやかさと素材の良さを感じさせる歌声は本作との相性も抜群。最後までしっかり"美味しい感動"を味わっていただきたい。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「洋菓子店コアンドル」作品情報 <http://eiga.com/movie/55511/>
洋菓子店コアンドルの幸せレシピ 激甘。 amazon_associate_logo.jpg
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ヘタレ漫画家の半実録漫画がまさかの書籍化! アラサー男子の心をくすぐる『ハナムラさんじゅっさい』

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『ハナムラさんじゅっさい』(銀杏社)
 「30歳」と言うと、「節目の年」だの「人生の岐路」だのなにかとうっとうしいフレーズがつきまといがち。そんなプレッシャーのかかる年齢を目前に控えた売れない漫画家が、1円にもならないイラスト投稿SNS「pixiv」に趣味で投稿した半実録漫画が先ごろ単行本化された。その名も『ハナムラさんじゅっさい』(銀杏社)。  主人公の漫画家・ハナムラは、某メジャー少年誌の新人賞に入選したはいいものの、連載とはまったく縁がないまま早6年、気がつけばもうすぐ30歳。連載を目指し日々ネームを切るもことごとくボツにされ、単発の読切りやアシスタント仕事でくすぶり続けている自分をよそに、同期や年下の作家たちは次々と連載デビューを飾っていく。 「もう漫画家、やめようかな......」  そんな崖っぷちの状況から物語ははじまり、さらに「新人コンペ」に落ちた翌朝に1歳年上の彼女にこっぴどくフラれるというありさまで、ページをめくるたびに胃のあたりがキリキリする。このようなイタい身の上話をpixivにコツコツ投稿するのは結構しんどかったのではないかと思いきや、当のご本人にお話をうかがってみると、意外とあっさりしている。
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©ハナムラ/銀杏社
〈この年(作品の舞台は2009年)は僕にとってさまざまなことが起こった濃密な1年でした。ひとつひとつは何気ない些細な出来事でも、まとめてみると山あり谷ありで「実はすごい面白かったんじゃないか?」とふと思ったんです。それを誰かに話したい。でも、そんな長い話は誰も聞いてくれませんし、なにより自分は漫画描きですから、漫画にしてしまおうと〉  ハナムラ氏が描く「些細な出来事」のうち、自身の漫画家ライフにとって大きな転機となったのが、18禁ケータイサイトでエロ漫画の仕事だ。そこで出会ったのが白井さんという美人編集者。しかも、彼女は巨乳な上にかなり天然ちゃんで、喫茶店での打ち合わせで大声で「痴漢モノがいいですね!!」なんて言い放ったり、まったく警戒心なしにハナムラ氏の仕事場(=自宅)に来ちゃったりする始末。
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©ハナムラ/銀杏社
 この白井さんの(一見思わせぶりな)言動に主人公は振り回される、というか、勝手に戸惑ったり変な期待をするわけで、うだつの上がらない漫画家の日常に彼女が彩りを添えるカタチになっている。また、30歳を迎えてなお童貞マインド溢れるハナムラ氏の脳内で繰り広げられる妄想もなかなかの痛々しさだ。  一方で、基本的にはヘタレな主人公が抱えるリアルな不安や苦悩が描かれていく中、たとえばアシスタント先でふと「漫画を描くのは、やっぱり楽しかった」「何でもいいから(自分の)漫画が描きたい......!」といったモノローグがこぼれるなど、たまに見せる前向きな一面にホッとするし、つい応援したくもなってしまう。
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©ハナムラ/銀杏社
 かくして、地道な投稿がとある有名ブログに取り上げられたことで閲覧数が一気に伸び、無料コミックサイト「漫画街」(http://www.manga-gai.net/)での連載を経てまさかの単行本化。現在も同サイトにて連載中で、原則ウェブのみの販売だった単行本も書店での取り扱いが増え、pixivから生まれた新しいタイプの漫画家として注目されるに至っている。が、まだ不安もあるという。 〈僕は知識が浅く視野も狭いので、漫画で使える引き出しが少なくて苦労しています。唯一、連載・単行本化したのが自伝的漫画というのもそれを端的に表しています〉  作中の姿と同様にヘタレな......もとい控えめなコメントだが、単行本が発売されてむしろこれからが本番。今後についてはどう考えてらっしゃるのか。
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©ハナムラ/銀杏社
〈まず、『ハナムラさんじゅっさい』を最後まで描き切ること。それでしっかり読者の評価を得た上で、また少年誌の連載に挑戦したいです。今まで描いた漫画はほとんどがボツになっていて、正直、僕の「面白い」と世間の「面白い」は違うんじゃないかとずっと悩んでいました。でも、こうして『ハナムラ』が支持されたことで、自分のスタイルをもう一度考え直してみようかなと。その先に少年誌連載があると思っています〉  ハナムラさん、心配しないで! ちゃんと面白いですから! と思わず檄を飛ばしたくなるくらい、やっぱり謙虚な姿勢は変わらないが、思わぬカタチで崖っぷちから脱した現在、充実した日々を送られているようだ。最後に、世の30歳前後の男性に向けてメッセージをいただいた。 〈僕みたいな、ある意味で世間の同世代とは乖離した生活をしている漫画家の日常に、読者から「まるで自分のことのようだ」といったコメントが寄せられるたび、「悩んでいるのは僕だけではない」と気づかされます。また新たな気概を得て、勇気と自信を持って再スタートを切れる、そういう状況に喜びを感じています。30歳というのはいろいろな変化のある年齢だとは思いますが、「ハナムラがわりかし大丈夫だったんだから、みんな大丈夫なんじゃないか?」そんな感じで乗り切ってみてください〉 (文=須藤輝) hanamuraport.jpg ●ハナムラ 東京都江東区出身。 2003年某週刊少年誌新人賞入選、同作が週刊少年誌に読み切り掲載。現在、漫画街にてweb漫画「ハナムラさんじゅっさい」を連載中。
ハナムラさんじゅっさい 早くも第2巻発売決定! amazon_associate_logo.jpg
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既存の思考をブチ破るインタラクティブPV SOUR「映し鏡」クリエイターの川村真司に訊く

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「インタラクティブすぎる」と話題のPVを手掛ける川村さんの考えるPV論とは?
 これをミュージックビデオと呼んでいいのだろうか。昨年の12月初旬のある日、TwitterのTLが大騒ぎとなった。SOURの新曲「映し鏡」のローンチのカウントダウンが始まったからだ。このPVを手がけるのは、NYの広告代理店でクリエイティブディレクターを務める川村真司氏。同じくSOURの「日々の音色」でご存知の方も多いだろう。  PVの内容は一見に如かずなので、見ていただくのが一番だが、簡単に説明しよう。まず「日本語/英語」のどちらかをクリックすると7つのウィンドウが開き、事前にFacebookまたはWebcamまたはTwitterに接続してみることをおすすめされる。アプリへの承認を済ませ「Click to Start」をクリック! するとGoogleのトップページが現れ、検索窓には自分の名前が入力されWeb検索、画像検索の結果が現れた。すると、その画像たちが魂を得たかのように動き出し人間の形になって歩き出す。次にTwitter画面に切り替わりTLに歌詞が流れたかと思うと、Google マップに飛ぶとSOURのボーカルhoshijimaさんの画像がまた人型になって歩き出し......。ええい! もうあとはご自身で見ていただきたい、とにかくすごいのだ。FacebookやTwitterにある個人情報がPVにリンクし次から次へと動き出す、アクセスしたその人だけが体験できる、そんな仕組みの誰も見たことがないPVが誕生した。  今回はNYに住む川村氏にメールインタビューを敢行。「映し鏡」の成り立ちから、制作のプロセス、川村氏が目指す次のPV像について伺った。 ――前作「日々の音色」が文化庁メディア芸術祭でエンタテインメント部門の大賞を受賞されていますが、新作「映し鏡」はまずどんなところから映像の企画を考えていったのでしょう? 曲のイメージから構想された部分などを教えてください。 川村真司氏(以下、川村) ミュージックビデオを作るときはいつもそうするのですが、まずは歌をすごく聞き込みました。SOURの「映し鏡」は、あなたの身の回りにあるモノや人、そのすべてがあなたを映す鏡であり、そこに映った自分の姿を通して自分自身が誰であるのかを知ることができる、といったことを歌っています。この歌詞を聞いたとき、オンライン上での他者とのつながりを通して自分自身を見つける旅ができたら、といったイメージが浮かびました。そのイメージを膨らませて、インターネットのソーシャルネットワーク上に存在する個人のデータを集めて、それを活かしたインタラクティブミュージックビデオを作れないだろうかと考えました。結果として、Facebook、Twitter、Webcamに接続することで、ソーシャルネットワークの状況に応じて見る人ひとりひとりが、自分自身にカスタマイズされた映像を体験することができる作品となりました。
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――川村さんは今NYを拠点に活動されていますが、メンバーとの打ち合わせ、制作において、距離的な支障はなかったのでしょうか? 簡単なチーム編成と制作プロセスを教えてください。 川村 今回のプロジェクトはたくさんの才能ある人々の協力がなければ完成しなかったと思っています。そんなチームの中でメインのディレクターをしていたのは僕と清水幹太(http://www.shiroari.com/)さん、Saqoosha(http://saqoo.sh/)さん、そして大野大樹さんです。まずこのアイデアを思いついたとき、真っ先に清水幹太さんに相談しました。世界を見回しても彼ほどのテクニカルディレクターはほとんどいないので、彼にアイデアを送ってストーリーボードを精査しつつ、技術的に実現可能かをプロトタイプしていきました。そしてSaqooshaさんにも加わっていただいて、以前彼がプロトタイプしていたTwitterアイコンのアイデアを改良して後半部分を作っていってもらいました。大野さんには実写パートの撮影と編集をお願いしています。  僕がNY、清水さんと大野さんが東京、Saqooshaさんが大阪なので、メンバー間での打ち合わせは、ほぼ全てスカイプだけで行っていました。前回の「日々の音色」のときにも感じたことなのですが、もはや世界のどこにいてもインターネットによって距離的な制約をあまり気にせず制作作業ができるようになってきていると感じます。基本は僕がNYでアイデアを考え、スケッチやスペックに基づいた具体的なデザインを送って、それを日本で組み上げていってもらいました。 ――制作中に一番困難だったことは何でしょう? 
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川村 そもそものアイデア自体がかなり新しい試みだったので、ともかく実際にそれが可能かどうかを検証するためのプロトタイプを作っていくのに時間がかかりました。結果作ってみたけど、これはいまいちだ、ということで使わなかったシーンもたくさんあります。またブラウザによって見え方が大きく違うことも悩みでした。結果的にはSafariとChromeという制限された環境でしか見られない作品になりましたが、今回は「日々の音色」のように万人がパッシブに見て共感してくれるというモノではなく、少し狭かったとしてもよりパーソナルでインタラクティブな体験を目指していたのでしょうがないとしました。 ――「日々の音色」の際には予算が限られていた中でWebcomを使うという発想が出てきたとの経緯が語られていましたが、今回は予算的には前よりは潤沢だったのでしょうか?「Kickstarter」【註】を使った経緯などをお聞かせいただけると。 川村 今回も「日々の音色」と同じ状況でした。さらには映像だけの前回と違って、すごく複雑なプログラミングを必要としていたので、これはそもそも予算的にNGな企画なんじゃないかとはじめは思っていました。でもNYで最近スタートしたKickstarterのことを知って、これは素晴らしいサービスだと思い、試してみる意味でもそこで制作資金を募りました。もちろんお金を集めるという目的もあったのですが、何より早い段階からファンの人たちに関わってもらえるのがとても素敵だと思ったんです。制作者としても、支援されていく様がどんどん見えることで、たくさんの人に応援されていることが判ってすごく良いモチベーションをもらえました。
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 「日々の音色」の後、今度は自分も参加したい! と言ってくれる人がたくさんいて、大きなテーマとしてファンの人が参加できる作品を目指していたので Kickstarterの利用はすごくぴったりだったんです。同じような意図で、SOURのオフィシャルTwitterアカウント@SOUR_officialをフォローするだけで、後半のTwitterアイコンで作られた映像のシーンに参加できる仕組みも作りました。これらは共にローンチ前のバズを生むのにも貢献してくれました。 ――不況が続く音楽業界において今や立派な商品と化し、楽曲同等の価値をつけられるようになったPVを、作品、もしくは広告など、どのような位置づけとして考えていらっしゃるのでしょうか? 川村 PVはプロモーションビデオという呼び名の通り、その音楽を広めるためのコンテンツだと思っています。だから僕はいつもどうやってその音楽の世界を視覚化できるか、そしてどうやってその音楽とかけ算してもっとリッチな体験が作れるかということを考えています。音楽業界やアーティストの間で、最近こういった音楽の拡張に価値を見いだしてくれる方々が現れているように感じますが、まだまだもっと増えていってほしいですね。いつでもご協力しますので。 ――「映し鏡」は完全にWeb媒体(ネットワークを経由した)を使ったPVの形で、いわゆる既存の放送局で放映されるPVとは形態がまったく異なります。今後のPVはどういう方向に向かっていくと思われますか?
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川村 今までのように純粋に放送局で放映されるPVも普通に存在し続けると思います。ただ、今はインターネットを含めさまざまなデジタル技術が身近なモノとなってきているので、それらを使って新しい音楽の体験の仕方を提示してくれるような作品が増えてくるのではないかと思います。「映し鏡」でもよく言われるのですが、それはもはや「ビデオ」という枠では括りにくいものになるんじゃないかな。でもそれは「音楽の世界をどう視覚化するか」というPVの本質に立ち返ると極めて正当な進化のような気がします。ただ、何もやみくもに新しいテクノロジーを使えばいいかといったらそういうことじゃなくて、もっと自由に枠を取っ払って、どのメディアでどのように表現すればいいのかからきちんと考えるということだと思います。 ――私は「映し鏡」を初めて見た時、まさに開いた口がふさがりませんでした。反応はいかがでしたか? 川村 まず数字だけの話をすると、サイトをローンチしてから初日の数時間だけで4万人以上のアクセスがあり、その後も順調に数を伸ばしています。滞在時間も平均で3分以上と、普通じゃ考えられないような結果が出ていたり。最初の数日間はTwitterのTL上ですごい量のツイートが流れているのを見て、チームみんなで盛り上がりに圧倒されました。  多くの人からは「どうなってんのか分からないけどすごい!」という反応をもらうことが多いですね。ちょっとやりすぎたかなと思うこともありますが、ソーシャルネットワークと個人データを活かしてどこまでいけるかが自分に課していたチャレンジだったので、分からないけど置いてきぼりをくわずに楽しんでくれてるという状況がうれしいです。前回の「日々の音色」に引き続き今回も日本語詞の歌にも関わらず、海外からもたくさんのアクセスやコメントをもらっていて、いい音楽とアイデアがあれば言葉の壁は越えられるんだなぁとすごく実感しています。
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川村さん著の『RAINBOW IN YOUR 
HAND
』(ユトレヒト)。全く同じ大き
さの7色の四角形が印刷された、36枚
の真っ黒なページをパラパラとめくる
と、小さな虹を作り出すことができる。
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 あとこれは知らなくても別にいいことなんですが、よく「html5作品すげー!」と書かれるけど実はこれFlashとhtmlで作っているんです。今回の複雑な構成を実現するには知見の多いFlashの方が良いという判断でした。 でも次は何かhtml5でも作ってみたいですね。 ――今回の作品で得た新たな問題・課題があったら教えてください。 川村 今回は間口の広さよりも、多少狭くてもよりパーソナルで深いインタラクティブ体験を目指していたのでそれでもやろう! という判断をしたのですが、ブラウザがSafariとChromeにしか対応できなかったのはやはり少し残念でした。このような変わった表現をする場合は仕方がないのですが、「日々の音色」と比べるとやはり少しギークな作りになってますよね。今回のラーニングを元に、また別のやり方で見ている人が参加できるようなアイデアを考えたいです。 ――今後やりたいことを教えてください。具体的なプロジェクトではなく抽象的な話でもかまいません。 川村 今は会社(Wieden + Kennedy New York)で何組かのミュージシャンのためにインタラクティブなプロモーションコンテンツを作っています。「映し鏡」同様かなりぶっ飛んでるので実現するかどうか不安ですが。基本的には新しいことにチャレンジするのが好きなので、最近多かった映像やインタラクティブの表現だけではなく、もっとプロダクトやインスタレーションのようなアイデアも実現していきたいです。 (取材・文=上條桂子) 【註】Kickstarter:クリエーターが少額の出資を広く募るためのオンラインプラットフォーム。 ●かわむら・まさし 1979年東京生まれ。慶応義塾大学佐藤雅彦研究室にて「任意の点P」「ピタゴラスイッチ」といった作品の制作に携わり、卒業後、2002年よりCMプランナーとして博報堂に入社。2005年よりBBH Japanの立ち上げに参加し、2007年よりアムステルダムの180、BBH New York、そして現在はWieden & Kennedy New Yorkのクリエイティブディレクター。Adidas、PlayStation、Nissan、Axe、Googleといったブランドのグローバルキャンペーンを手がけつつ、「Rainbow in your hand」といったブックデザイン、SOUR「日々の音色」ミュージックビデオのディレクションなど活動は多岐に渡る。主な受賞歴に、カンヌ国際広告祭、メディア芸術祭、アヌシー国際アニメーションフェスティバル、NY ADC、One Show、D&AD等。 <http://www.masa-ka.com/> ●SOUR「映し鏡」公式ページ <http://sour-mirror.jp/>
映像作家100人 2010 これが最前線。 amazon_associate_logo.jpg
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堀江由衣が新宿東口を急襲! ステーションスクエアで新曲発売記念ライブ

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 ほっちゃんが冬の新宿に降臨! 2月6日、やや薄曇りながら気温11度と好天に恵まれた午後2時。詰めかけたおよそ2,000人ほどとみられるギャラリーが「ほっちゃーん!」と呼びこみをすると、堀江由衣が東京・新宿ステーションスクエアに姿をあらわし、とたんに大歓声が上がった。 「内緒だったのに(やや棒読み、場内・笑)。よく見つけてくださいましたね」 「Twitterを見たら"今から探しに行きます"みたいなのがあって、間に合わないんじゃないかなと思っているんですけど」  この日は新曲「インモラリスト」発売記念ライブ。一週間前の1月29日には、復活した黒夢のシークレットライブ「黒夢 1/29 X-DAY Supported by VANQUISH」が同所にて行われ、開始1分で中止になるという"事件"があったばかり。  所轄の警察からは一切の事前告知をしないよう求められ、看板の設営も開始1時間前からという制限がついていた。警備員も30人体制。万全の構えでの「ゲリラライブ」だったのだ。 horieyui020602.jpg  もっとも新宿東口に出たとたん、アニメファンではなさそうな、いたって普通の人々から「ここで堀江由衣がライブやるんだってよ」という会話が漏れ聞こえてきたので、相当広い範囲に情報が出廻っていたのは確かであるようだ。  実は10年前にも新宿ステーションスクエアにて堀江由衣のライブイベントが行われていた。ただしそのときは想定していなかったほど大勢の人々が押し寄せてしまい、出だしをちょっと歌っただけですぐに中止になってしまった。堀江由衣が同所でしっかりと歌を歌いきったのは、今回が初めてである。  その割になぜ新宿でやることになったかは曖昧で、久しぶりだし、ドカンやっちゃう? というノリで、直近に開催が決まったようだ。 horieyui020603.jpg  曲順はよく考えられていて、将棋倒しなどの事故が起きないよう、シングル「インモラリスト」収録中もっともノリのいい「True truly love」をラストの三曲目に配置。実際の収録順では三曲目にあたる「HOLIDAY」を二曲目に持ってくる構成になっていた。  こうした努力のおかげで!? 約28分間のライブは無事、進行した。音階が飛び、展開が複雑で、方々から"激ムズ"と評判の「インモラリスト」はアニメ『ドラゴンクライシス!』のOP曲。清竜人が手がけたプログレッシブかつシアトリカルな楽曲で、人前で披露するのは初めてだったが、しっかりと歌いきった。  難曲を歌い終えて肩の荷が下りた堀江由衣は「今日が2月6日ということで、特に何もない日なんですけど」と苦笑しつつ、節分とバレンタインデーを合わせ、二曲目の「HOLIDAY」では「事件にならない程度にね」と、チョコの包みを30~40ほどギャラリーの只中へと投げ込んむ。 horieyui020604.jpg  ポロポロと何包みかこぼれてしまったが、壇上に落ちたチョコは「なんか大惨事なんですけど。いやーん、もう」とつぶやきつつ優しく女子のファンに届けられた。  ここまでで予定のほとんどを消化。「(もう最後の曲で残り数分ということで)きっとおまわりさんも目を瞑ってくれると思うので、ちょっとだけ盛り上がりに行けたらと思います」と、事故が起きないよう配慮したMCを挟み、三曲目の「True truly love」を歌い終えるとライブはつつがなく終わった。  なお、タワーレコードでは『堀江由衣「インモラリスト」発売記念コラボパネル展』を開催中。新宿店の7Fと10F、渋谷店の4Fでは、「インモラリスト」のジャケット用衣装の写真や、タワーレコードのエプロン着用写真、等身大パネルを展示。撮影自由とのことなので、ファンは押しかけてみてはいかがか。開催期間は新宿店が2月28日まで、渋谷店は未定。 (取材・文・写真=後藤勝) <セットリスト> 1. インモラリスト 2. HOLIDAY 3. True truly love
インモラリスト(初回限定盤) 約1年半ぶりのリリースです。 amazon_associate_logo.jpg
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格闘技団体SRC「雑誌のせいで」大会中止に見る格闘技興行の窮状と疲弊する現場

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SRCを痛烈批判した「ゴング格闘技」
2011年3月号(イースト・プレス)
 前代未聞の大会中止だ。以前は「戦極」の名称で大会を開催していた総合格闘技団体SRCが、専門誌の記事に抗議、4月23日に予定されていた有明コロシアム大会を"白紙撤回"と発表したのだ。  問題となったのは専門誌「ゴング格闘技」(イースト・プレス)が掲載した、昨年12月大会への批判記事だ。 『SRCのあの日のイベントは、プロモーションとして問題点がありすぎました。実際、試合当日になって契約を結ぶような試合があったようですし、勝負論の掛かった試合と、勝負論からかけ離れた顔見せマッチが入り混じっていました』(一部抜粋)  SRCを主催するワールドビクトリーロード社は、公式ホームページで、この記事により「設立以来最大の窮地に立たされております」とコメント。試合当日に契約を結んだということを事実無根とし「訂正、謝罪を強く求める」としている。  通常なら記事に対する抗議は、編集部との直接対話で解決されるだけのことだが、SRC側はスポンサー企業のドン・キホーテから「こうした偏った論調が堂々と大手をふるうようなら、すべての支援活動からの撤退も辞さない」(原文ママ)と通達されたことを明かし、この件で大会中止となったとしている。  過去、週刊誌の告発記事が発端で、人気団体PRIDEが、暴力団との癒着が疑われた末にテレビ契約を失い消滅した事態はあったが、今回の記事は批判の内容に具体性もなく、大きな社会的ダメージがあるとも考えにくい。別の格闘技雑誌のフリーライターも「大会を中止するほどの内容だろうか」と首を傾げている。 「ただ、記事を書いたライターの高島学氏はやたら大手団体に厳しい論調が目立つ人で、関係者でも嫌っている人は少なくありません。少し前に高島氏を嫌う格闘技関係者がSRCの協力者となったので、その影響とも考えられます」(同ライター)  しかし、個人的な感情でのものならば、当の高島氏を取材拒否にすればいいだけの話という感じもする。当のSRCに関わってきた選手関係者に聞いてみたところ「スタッフが業界の冷たい空気に疲れきっていることも理解してあげてほしい」と内情を明かす。 「興行の収支は赤字覚悟。そうなると収益よりも将来につながるクオリティの格闘技イベントにしているかどうかが焦点なんです。そうなると雑誌記事を判断材料にされることもあります。もちろん、SRCはまだ若い団体で、スタッフが手慣れていない部分はありますが、何か決定的な落ち度があるなら直接指摘してくればいいこと。それを現場では何も取材してこないまま、後で鬼の首を取ったように"問題点がありすぎた"などと一方的に書かれれば、スポンサーからも"ちゃんとやっていないのか"と言われる。板挟みとなるスタッフは疲弊する一方で、大会の準備どころじゃなくなります。こんな厄介な世界だと格闘技界にお金を落とす企業もいずれなくなりますよ」(同関係者)  こうした小競り合いにはの根源は「格闘技興行自体が苦しいこと」と前出ライター。 「スポンサー頼みの苦しい状況ということが一番の問題で、このままでは、来年までに大手団体がサッパリ消えてなくなるということもあるでしょう。大晦日の『DYNAMITE!!』も今年は開催されない方向で動いていると聞きましたし」(同)  それこそ主催者と記者がケンカしている場合ではないのではないか。
GONG (ゴング) 格闘技 2011年 03月号 格闘技界も出版界もたいへんです。 amazon_associate_logo.jpg
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現場は大混乱!? 『あたらしいみかんのむきかた』イベントに潜入!

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絵と文を担当したイラストレーター・神谷圭介氏手作りの「むきおくん」。
 今、空前の「みかんむきブーム」が到来している。ちまたでは、みかんをむく喜びに目覚め、とりつかれたようにみかんをむき続ける人が後を立たない、らしい。  そのきっかけとなったのが、昨年11月に発売された『あたらしいみかんのむきかた』(小学館)という児童書。Twitterやネットなどでじわじわと人気を集め、『めざましテレビ』(フジテレビ系)や朝日新聞ほか、数多くの媒体で紹介され、児童書としては異例の5万部の大ヒットを記録中だ。  内容は、みかんのむき方のハウツー本で、ペンで線を書き、カッターで切り、1つのみかんの皮から動物を作り出すというもの。ただ単に作り方を載せても面白くないということで、主人公「むきおくん」がみかんの皮をむきながら、人間としても成長していくコメディタッチのストーリーに仕立てられている。  登場する動物たちは虎や龍など、どれもえらく難易度が高く、本当に子どもたちでもむくことができるのだろうか......。そんな疑問を持っていたところ、渋谷のタワーレコードで、ワークショップを行うという情報をキャッチし、編集担当Kとふたりで乗り込むことに成功した。  当日、タワーレコード6階の一角に設置された会場を訪れると、マスコミ関係者がズラリ。  某テレビ局数社に雑誌等のカメラマン数十名が、会場をぐるっと一周埋め尽くしている。お客さんの人数の倍はいるであろう彼らのただならぬ熱気で、会場内には一種独特の空気が漂う。完全に居心地の悪そうなお客さんたちだが、親子連れや30代の夫婦、学生など年齢層はバラバラ。みんな純粋にみかんむきを楽しみに来ているのだろうか? 
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当日参加者に配られた工作キット。
 みかんむき作家の岡田好弘氏と、絵と文を担当したイラストレーターの神谷圭介氏が登場するやいなや、報道陣がふたりを取り囲み、ものすごい勢いでカメラのシャッターが切られた。ふたりとも面くらいながら、挨拶もそこそこに、岡田氏がさっそく今日のみかんむきのテーマ"しらさぎ"の見本を作るため、みかんの皮をカッターで切り出す。見事な手さばきであっという間に"しらさぎ"を作り上げた。すると、この完成したしらさぎをめぐり、報道陣の仕事魂はますます加熱。岡田氏も神谷氏も、唖然としている。 
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コントのような光景です。
「今日はお客さんが主役のはずですが、マスコミのみなさんの勢いがすごいですね......」  そう苦笑いしつつも、報道陣のためにしらさぎを持ち上げ、180度少しずつ向きを変えながら作品を披露してくれた。  撮影が一段落すると、いよいよお待ちかねの実践工程に入る。  最初こそ、「みかんの真ん中に赤道のように線を引いて、図のように顔と首を書いてください。コツは顔を大きくしないことです」などど岡田氏によるレクチャーがあったものの、その後はなぜか放置プレイ。会場のお客さんたちはたちまち混乱状態に陥った。編集Kも当日渡された「しらさぎの線の描き方本」を頼りに、不安げにペンでみかんに線を描きつける。
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線を描きます。
 誰もが戸惑いながら作業に徹している中、何の前ぶれもなく、会場の片隅では神谷氏と劇団員の女性・山口さんによる朗読で『みかんのむきかた』の朗読劇が始まった。
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立ち見客のためのパフォーマンスだったようです。
「むきおくんが、だいすきなみかんをたべずにじっと見つめています。なにやらしんけんなかおでかんがえています。このままでいいのだろうか? だいすきなみかんをただむくだけでいいのだろうか? もっとすてきなむきかたはないものだろうかと......」  その淡々とした口調は、お客さんをさらに混乱の渦へと巻き込む。見事なまでに集中力を妨げ、みんなどんどん、みかんの線の迷子になっていく。  やっと朗読が終わったかと思えば、続いて、本日のイベントでみかんを提供してくれた、"三ケ日みかん"の生産農家の方々の紹介が始まった。
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たしかにすごく甘くておいしいみかんでした。
 予想外のパフォーマンスに目を奪われている間に、黙々と作業を続けていた人が線を描き終え、カッターでみかんに切り込みを入れ始めていた。  「これ、書いた線全部切っていいのかな?」などと隣同士確認しながら、みんなおそるおそる刃を入れていく。だが、編集Kの隣に座る少年は、いまだ線を描いている段階。完全にお手上げ状態で、線がぎっしり描かれたみかんを絶望の表情で見つめている。
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カッターで切れ目を入れます。
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むきます。
 そんな少年を一人残し、大多数の人は完成に近づいていた。編集Kも胴体が無残にもちぎれてしまったが、岡田氏に助けてもらい、なんとか完成した。だが、隣の少年は線描きすらフィニッシュしておらず、「むけないよ~!」とさびしそうに叫ぶ声が会場に響いた。やはり、子どもには難しすぎるようだ。
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出来ました。
 1時間程度のイベントだったが、想像以上に盛りだくさんの内容だったため、「むけた!」という達成感よりも妙な疲労感が残った。  帰りにもらったマスコミ用のお土産には、イベントで使用した鳩のカッターや、むきおくんシール、三ケ日みかんなどと一緒に一枚のリリース入っていた。  内容をよく読んで見ると、【収録用のみかんのごあんない】の一文を見つけた。 「みかんをむく場面をスタジオ等で収録したい場合は、みかんに切り込みを入れたものを、食品用のラップフィルムで巻いた状態でお送りすることが可能です。札幌よりクール便での発送となるため、3日前までにご連絡ください。収録時に簡単にむけます」  なんという気配り! もうみかんを普通にはむけない、かも。 (取材・文・写真=上浦未来) ●おかだ・よしひろ 1965年大阪府生まれ。札幌市在住。大阪芸術大学芸術学部美術学科卒。Estandarte para las naciones聖書学校卒。キリスト協会牧師。日本の伝統文化の折り紙は、1枚の四角い紙をただ折るだけで作品を作り出すことができる。同じような考え方で、みかんの皮をむくだけでも作品ができるのではないか? とひらめいたことから秀逸なみかんの皮アートを次々に生み出している。オフィシャルブログhttp://ameblo.jp/artes/ ●かみや・けいすけ 1979年千葉県生まれ。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科卒。「おとなのおりがみ」「生き物の持ち方大全」(山と渓谷社)などのイラストと文章を手がける。スガタデザイン研究所所属。また、コントユニット「テニスコート」のメンバーとして活動している。<http://tenusugawa.com/>
あたらしいみかんのむきかた お試しあれ。 amazon_associate_logo.jpg
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ついに"ミニシアター文化"の終焉!? シネセゾン渋谷閉館、業界は再編成へ

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2003年に東京テアトルに入社し、09年から「シネセゾン渋谷」の支配人となった野崎千夏さん。「最前列でも壁際の席でも、非常にスクリーンが見やすい劇場。座席もお尻が痛くならない高級シートです。ミニシアターに親しまれた方たちに、ぜひもう一度来ていただき、思い出を焼き付けて欲しいですね」
 映画興行界の再編成が、地響きを立てながら進んでいる。ミニシアターの激戦区だった都内渋谷地区で、その変動が顕著に現われた格好だ。角川シネプレックスが経営する「恵比寿ガーデンシネマ」が1月29日(土)で実質上閉館。東京テアトルが経営する「シネセゾン渋谷」も2月27日(日)で26年間の歴史に幕を降ろす。2009年10月には「ヒューマントラストシネマ文化村通り」(旧「シネ・アミューズ」)が閉館。エッジの効いた作品を上映することで知られた「シネマライズ渋谷」は10年6月にそれまでの3スクリーンから1スクリーンに縮小し、同年9月には「渋谷シアターTSUTAYA」(旧「Q-AXシネマ」)がわずか2年で閉館となった。国内にいながら世界各国の秀作映画を見ることができると言われた日本の"ミニシアター文化"は危機的状況に追い込まれている。厳しいのは都内のミニシアターだけではない。全国でシネコンを運営する東映系のティ・ジョイはすでに全劇場の全スクリーンのデジタル化を終え、TOHOシネマズも全スクリーンのデジタル化を11年内に完了する。劇場のデジタル化には1,000万~2,000万円を要すると言われ、設備投資できない個人経営の既成館は淘汰されることになる。  リュック・ベッソン監督の『レオン 完全版』(96)、岩井俊二監督の『PiCNiC』(96)、山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』(05)など幾つものロングランヒット作を送り出し、渋谷文化の一角を支えてきた「シネセゾン渋谷」だが、どのような経緯で閉館が決まったのか。支配人・野崎千夏さんと同劇場の他にも「テアトル新宿」「銀座テアトルシネマ」「テアトルダイヤ」「キネカ大森」などを運営する東京テアトルの広報担当・高原太郎さんに、ミニシアターの現状と今後の在り方について語ってもらった。
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シネセゾン渋谷の最後を飾る『デュー・デート
出産まであと5日! 史上最悪のアメリカ横断』。
日本でもスマッシュヒットした『ハングオー
バー!』(09)のトッド・フィリップス監督
の最新コメディーだ。最後はホロリとするよ。
(c)2010 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
野崎「08年4月にテアトル新宿からシネセゾン渋谷に移り、支配人になったのは09年6月なので、まだあまり日は経ってないんです。ミニシアターの興行が難しくなっていることは分かっていましたが、09年は年間を通して観客動員は好調だったので、『大丈夫、まだまだ行ける』と思っていました。でも10年になるとジワジワと厳しさを実感しました。閉館することを本部から聞かされたのは、ほんと最近なんです。支配人の私が落ち込むと、スタッフに影響が出るし、それに忙しいので落ち込むヒマもなかったんですけど、内心は正直ヘコみましたね(苦笑)。12月に上映した『キック・アス』は平日も満席になるほど大盛況でしたが、年末に閉館の噂を聞きつけたお客さまから『閉館するって本当ですか?』という問い合わせをツイッターなどで多数いただき、正式発表が1月6日と決まっていたのでお答えできずに申し訳ない気持ちでした」  閉館の内情を説明してくれたのは、東京テアトルの経営企画室に所属する高原さん。高原さんも以前、シネセゾン渋谷の劇場スタッフとして勤務していたこともあり、思い入れのある劇場である。 高原「シネセゾン渋谷は90年代には年間30万人を動員していましたが、00年代に入ってからは15万~18万人と動員数が減っている状態でした。私たちとしては、"ミニシアター文化"はすでに終わったという認識なんです。シネセゾン渋谷の動員数はミニシアターとしては、かなり良い安定した数字でした。しかし、当社としてはこれからの時代、お客さまのニーズに応えていくには複数スクリーンの上映館が渋谷には必要だと考え、08年12月に3スクリーンを有する『ヒューマントラストシネマ渋谷』(旧『アミューズCQN』)を当社の傘下に加えました。従来の形での1スクリーンでの単館上映は難しくなっているという流れの中で、シネセゾン渋谷とヒューマントラストシネマ渋谷を統合するという形に踏み切ったんです」
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クロージング特別上映作品として2月19日
(土)と22日(火)にレイトショー上映される永作
博美&松山ケンイチ主演作『人のセックスを
笑うな』(07)。19日には井口奈己監督が
ゲストとして登壇予定。
(c)2008『人のセックスを笑うな』製作委員会
 シネセゾン渋谷はセゾングループのミニシアターとして、フェデリコ・フェリーニ監督作『そして船は行く』(83)をオープニング作品として85年11月に開館。その後、テアトルシネマ系列となってからも良質のアート系作品を上映してきた。90年代後半に入ってからは、コメディー映画『オースティン・パワーズ』(97)などエンタテインメント系の作品に軌道修正し、ゲストを呼んでのレイトショーやオールナイト特集上映にも力を入れてきた。しかし、ここに来て興業形態そのものを見直す必要に迫られることに。高原さんはミニシアター興行の変容をこう分析する。 高原「80年代~90年代にいわゆる"ミニシアター文化"と呼ばれたものは、監督の名前や海外の映画祭で賞を獲ったという作品を、ひとつの劇場であまり宣伝費を掛けずに長期間にわたって上映するという形だったと思います。しかし、洋画の買い付け価格が上昇し、シネコンも増え、それに伴って宣伝費も掛かるようになりました。そのため、なるべく短期間で費用を回収しようとスクリーン数を増やし、作品が短命化するようになっていったんです。ひとつの劇場でのロングラン上映という従来の形態が難しくなった。それに加え、お客さまの嗜好が変わってきたこともあるかと思います。若い方はアート系作品よりもストーリー性の強い作品を好まれる方が増えてきています。お客さまの年齢層が上がってきたこともあり、以前のようなレイトショーやオールナイト上映も難しくなっていました」  また、新宿地区に07年2月に「新宿バルト9」(ティ・ジョイとTOHOシネマズの共同運営、9スクリーン)、08年7月に「新宿ピカデリー」(松竹運営、10スクリーン)と大型シネコンが出来て以降、渋谷地区の観客動員が年々10%減り、逆に新宿地区は10%ずつ増えていると東京テアトルでは調査分析している。シネコンが全国に有するスクリーン数は10年12月の時点で2,774。日本の総スクリーン数3,412の8割以上を占めるまでになっている。インディペンデント作品を上映するミニシアターが生き残る道はないのだろうか?
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こちらは、2月6日(日)と9日(水)にレイト
ショー上映される『END OF THE CEN
TURY』(03)。ラモーンズの音楽ドキュ
メンタリー。9日にはファンクラブ日本代表者
としてロックフォトグラファー畔柳ユキさん
の登壇あり。(c)2004 Cugat, Inc.
高原「当社では系列の劇場を使ってチェーン公開することが多くなっていますが、ミニシアター的な興行の可能性が今後もないわけではありません。テアトル新宿で10年に公開した若松孝二監督の『キャタピラー』、銀座テアトルシネマで公開したミヒャエル・ハネケ監督の『白いリボン』は予想を上回るヒットを記録しています。シネセゾン渋谷で公開した『キック・アス』や『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』のようなこれまで"洋画のコメディーはヒットしない"と言われていた作品もヒットするようになってきています。今のお客さまは、良い意味で、宣伝では騙せない。本当に良い作品を、きちんと選定して上映することが大事だと考えています。また、『四畳半神話体系』(フジテレビ系)といったアニメ作品はシネセゾン渋谷でのオールナイト上映が満席になるほどの反響がありました。アニメや音楽作品は、コアなファンが少なくない。そのためにも複数スクリーンが必要だと考えています。シネコンの100~200席あるスクリーンでは上映できない作品でも、ヒューマントラストシネマ渋谷には200席、183席、60席と3スクリーンあるので、コアなファンに対応できますし、良質の作品を長く上映することも可能なはず。当社としては大手チェーンとは違った独自色を出してくつもりです」  もう一度、野崎支配人にコメントを求めよう。野崎支配人は、学生時代に「銀座テアトル西友」(現「銀座テアトルシネマ」)で大ヒットしていた『ユージュアル・サスペクツ』(95)を鑑賞して、そのとき劇場で感じた熱気を東京テアトルでの入社面接の際に語っている。お客との距離が近いミニシアターの空間を愛する支配人なのだ。 野崎「満席の劇場で見ると、同じ映画でも印象がまるで変わりますよね。『ユージュアル・サスペクツ』は通路に座っての鑑賞だったんですけど、お尻の痛さが気にならないくらいスクリーンに夢中になりました(笑)。特にコメディーは劇場で見ると、面白さが倍増します。『キック・アス』の盛り上がりは本当に素晴らしかった。現在上映中の『デュー・デート 出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断』も脚本がよく練られている良質のコメディーです。観客動員は苦戦していますが、見た方の満足度はかなり高いはず。DVDやケータイの配信で映像を見ることができる時代ですが、劇場で映画を見る楽しさを思い出して欲しいです。『シネセゾン渋谷の閉館、残念です。でも、自分もここ10年ほど行ってなかったなぁ』という声をツイッターでいただいています。そういう方たちにも、ぜひもう一度足を運んでいただきたいですね」  2月5日(土)~27日(日)、シネセゾン渋谷では「クロージング特別上映」と銘打って、シネセゾン渋谷で上映された代表作を中心に、ミニシアター系作品を上映する。閉館が決まってから、野崎支配人が本部の編成担当と相談してセレクトしたもの。閉館を聞きつけて連絡してきたシネセゾン渋谷の元従業員たちのアイデアも盛り込まれているという。 野崎「1週目が音楽もの、2週目がインディペンデント系の洋画、3週目が日本を代表する若手監督たちの青春映画、そして最後の2日間がベスト・オブ・ベストというプログラムです。時間がない中で考えたものですが、26年の歴史を持つ当館に相応しい作品をそろえることができたんじゃないかと満足しています(笑)。『人のセックスを笑うな』は19日に井口奈己監督、『リンダ リンダ リンダ』は23日に山下敦弘監督が登壇してくれることが決まっている他、多彩なゲストにお声を掛けているので、楽しみにしてください。"映画館で映画を見るのは、やっぱり面白いなぁ"と思ってもらえるよう、明るく楽しいクロージングにしたいと思っています」  後日、東京テアトルのおふたりとは別に、他社の配給関係者に映画興行界の今後について聞いてみた。 「業界では、シネコン=アミューズメントパーク化、ミニシアター=美術館化という方向性で生き残りを図っていくことになると言われています。そう考えると、シネコンとミニシアターでは営業形態が大きく異なるので、必ずしもシネコンがミニシアターを制圧するということにはならないはず。もちろん美術館は美術館同士、アミューズメントパークはアミューズメントパーク同士の競争になるので、それぞれの作品選びが重要。業界最大手のTOHOシネマズが3月から入場料を試験的に値下げするように、料金設定も作品ごと、劇場ごとに見直されることになってくるんじゃないですか。シネコンほどの規模もなく、ミニシアターでもない地方の既成館は、厳しい状況になるのは間違いないですね。自治体からデジタル化のための助成金を受けられない映画館は、かなり辛いでしょう」  劇場のデジタル化が進むことで、プロジェクターの規格はどうなるのか、上映素材の保存方法はどうなるのか、劇場の裏方として活躍した映写技師たちの去就は......といったことも懸念される。映画業界が大きく変わろうとしている。 (取材・文=長野辰次) ●シネセゾン渋谷公式サイト <http://www.ttcg.jp/cinesaison_shibuya/> ●シネセゾン渋谷公式ツイッターアカウント <http://twitter.com/cine_saison>
映画館(ミニシアター)のつくり方 もはや死語? amazon_associate_logo.jpg
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再起のチャンスを生かせるか!? 犯罪アクションムービー『ザ・タウン』

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(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES
 スリリングで骨太な犯罪アクションとエモーショナルで繊細な人間ドラマが絶妙に絡み合い、先に公開された米国で批評家やメディアから大絶賛された話題作が、いよいよ日本の映画館を襲撃する。ベン・アフレックが監督・脚本・主演を務めた『ザ・タウン』だ(ワーナー・ブラザース映画配給、2月5日公開)。  全米一銀行強盗発生率の高い街、ボストン北東部のチャールズタウン。通称"タウン"で生まれ育ったダグ(アフレック)は、当然のように強盗を生業としてきた。ダグが率いる強盗一味は、裏社会の黒幕を介して内部情報を入手し、綿密な計画を立て、犯行現場に一切の痕跡を残さない完璧なプロ集団だ。  彼らがある銀行を襲撃した際、予定外に支店長クレアを人質に取る。無傷で解放したクレアに何か見られたかどうかを探るため、素顔を知られていないダグがさりげなく近づく。ダグは正体を隠したまま、またクレアも相手が強盗犯だと気づかぬまま、互いに惹かれ合い、愛し合う仲に。  街を出てクレアとの新しい人生を切望するダグは、仲間や裏社会とのしがらみを断ち切るための最後の仕事として、タウン史上最大の犯罪となるレッドソックススタジアム襲撃に臨む。  監督としては『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(07年、日本未公開)に続いて2作目となる本作で、アフレックが徹底的にこだわったのは「本物のリアル」。地元住人や現職警官に加え、元銀行強盗や服役囚も撮影に参加。FBIや警察の協力も得たことで、強盗団とパトカーの激しいカーチェイスや、犯人一味と包囲した警察官らとの銃撃戦に真実味が増し、迫力満点のシーンの数々に思わず手に汗握ってしまうはず。  スピーディーに展開するアクションシーンと好対照なのが、ダグとクレアの関係を軸とした人間模様の丁寧な描写。ダグの父親、幼馴染みの強盗仲間、元恋人らとのやり取りを通じて、ダグがかつて夢に破れ、タウンという環境の中で犯罪に染まっていったことが明かされる。やがてクレアへの純粋な想いと、人生のセカンドチャンスに賭ける意志を知る頃には、多くの観客が主人公に感情移入し、絶体絶命の危機をどうにか乗り切ってほしいと願わずにはいられないだろう。  演技派で固めた共演陣のアンサンブルも見どころだ。強盗仲間でキレやすい激情タイプのジェム役には、『ハート・ロッカー』の主演で脚光を浴びたジェレミー・レナー。『それでも恋するバルセロナ』でスカーレット・ヨハンソンやペネロペ・クルスと共演したレベッカ・ホールは、クレア役でキャリアウーマンの知性と恋する女の純粋さを巧みに表現。1月に惜しまれつつ他界した英国出身の名バイプレーヤー、ピート・ポスルスウェイトも、穏やかだが凄みのあるタウンの黒幕ファーギーを怪演。  人生は往々にして理不尽で、思うようにいかないもの。それを宿命として受け入れ諦めるのか、それとも、希望を失わず再起のチャンスに賭けるのか。現状に悩み迷っている人ならきっと、本作のメッセージに「一歩を踏み出す勇気」をもらえることだろう。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ザ・タウン」作品情報 <http://eiga.com/movie/55398/>
ゴーン・ベイビー・ゴーン アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞ノミネート作品です。 amazon_associate_logo.jpg
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