「一人一人の言葉に耳を傾けて欲しい」 『FREAKOUT』知的障害者バンドの記録

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鬼才・故石井輝男監督の愛弟子でもある矢口将樹監督。
監督二作目となる本作に込めた思いとは?(取材場所:K's cinema)
 静岡県富士宮市・超教派弘願寺の二代目住職・角田大龍氏が、「頭脳警察」「裸のラリーズ」などの伝説のバンドを支えたミュージシャンたち、そして知的障害を持った3人の僧侶と結成したバンド「ギャーテーズ」。彼らを追ったドキュメンタリー映画『FREAKOUT』が3月5日から公開される。  世界共通語である"音楽"を軸に描かれた本作だが、僧侶たちが生活する寺の創設者である在日朝鮮人・和上が帰国したことをきっかけに、それぞれの歯車が狂い出す。苦境に喘ぐ寺の再建の過程で、和上とバンドのリーダーである大龍との確執が表面化していく。単なる考え方の違いではなく、日韓日朝問題という歴史的背景も複雑に絡み合い、双方の主張は平行線をたどる。はたして、この映画に込められたメッセージとは何なのか? 監督である矢口将樹氏にお話を伺った。 ――監督がギャーテーズを知ったきっかけを教えてください。 「一緒に映画をやっていた友人から『面白そうな題材がある』と教えてもらったことがきっかけです。それで、当時(2002年頃)、病気で入院していたバンドのリーダー・大龍さんに会いに行きました。"障害者"であり"お坊さん"がバンドをやっていれば、ドキュメンタリーとして何かしら形になるんじゃないか、とりあえずやってみようという感じで撮影を始めました」
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――実際に障害者たちが生活する環境に身を置いて、どのように感じられましたか? 「最初はかなりキツい場所をイメージしていたんですが、全然普通だったので驚かされました。みんな普通に会話することもできるし、魅力的な人ばかりです。僕たちが話すよりもまっとうでしたね」 ――「まっとう」というのは? 「頭で考えたことが、ダイレクトに言葉として出てくるんです。それがすごいなと思いました。自分の言葉として、日本語をここまでちゃんと話せる人たちに、それまであまり接したことがなかったんです」 ――フィルムが進むにつれて、障害者バンドから、だんだんと日本と韓国、朝鮮との関係も描かれるようになっていきますね。始めからそちらの問題も取り上げようと考えられていたんでしょうか? 「いえ、もともと朝鮮人住職はいなくて、そういう寺(在日朝鮮人のためのお寺)だということは全然知らなかったんです。撮り始めた当初は『ちょっと面白くないな』と思いながら撮影していたんですが、住職が帰ってきたあたりから、バンドよりもこの住職にシフトした方が面白いなと思ったんです」
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(c) TRICKSTER FILM 
――寺の再建をめぐって、この「和上」という朝鮮人住職と大龍さんとの確執が表面化していく過程で、和上はともするとヒールとして描かれてしまいそうですが、映画の中ではヒールとしてではなく、とても人間くさい人物として扱われているように思います。 「彼にとって日韓日朝問題は、多くの日本人のように『しょうがない』という一言で片付けることはできない問題なんです。それは、自分自身を否定してしまうことになってしまう。明確に提示しているわけではありませんが、日本と韓国、朝鮮のために尽くした人がいるということを少しでも分かってもらえれば」 ――ただ、和上の姿を見ていると、やはり日本と韓国、朝鮮の埋まらない溝を感じてしまいます。 「当時は北朝鮮に対するネガティブな報道が多い時期だったんですが、和上という人物は、そんなマスコミが作るイメージそのものだったんです。韓国や北朝鮮の方は、日本が過去にいかにひどいことをしたかと問いつめる。けれども、戦争を知らない世代の日本人はどうすればいいのか分からない。実際、僕が和上からその質問を突きつけられたときも、結局、彼らがどうして欲しいのか分かりませんでした。和上という人間はとても日韓日朝問題に対して熱い人物ですが、同時に日本のことが好きで、ギャーテーズのことが好きで、みんなと楽しくやりたい人だったと思うんです。けれども、最終的には個人としてのスタンスよりも、国のスタンスを優先しなければならない。そういうジレンマは可哀想だなと思いましたね」 ――完成から8年の歳月を経て無事公開の運びとなったわけですが、公開にあたっての心境は?
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(c) TRICKSTER FILM 
「ちょうど02年、03年の頃は拉致被害者が帰国し、日朝問題が注目されていたので、そのようなタイムリーな時期に公開できればよかったとは思います。完成から2、3年は毎日のように、何とか公開できないかと悶々としていましたね。ただ、そういった感情すらなくなった頃に劇場公開の話が具体化したので、『ラッキー』という感じです。実はこの作品は、大学生の頃に初めて撮ったものなんです。公開が決まって、だいぶ直さなきゃならないんだろうなと思いながら見直したんですが、結局1カット削っただけでした。撮影は下手ですが、編集に関してはこれはこれでいいかな、と」 ――障害者と日朝問題のどちらが、メッセージとしてより残ってほしいですか? 「別にどちらも打ち出したくないし、テーマにしているわけでもありません。登場人物のバックグラウンドが障害者や在日っていうだけで、あまり難しく考えてほしくないんです。それよりも、一人一人の言葉をしっかりと聞いてほしいなと思います。みんな本当に言葉に魅力がある人たちなんです」 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]/撮影=佐久間ナオヒト) ●やぐち・まさき 1978年長野県生まれ。武蔵野美術大学油絵科卒。鬼才・故石井輝男監督に師事し、遺作となった「盲獣VS一寸法師」(04年公開)にスタッフとして参加。05年石井監督の急逝後、同作の撮影風景を収めた「石井輝男FAN CLUB」(撮影・熊切和嘉)を監督。石井監督の最晩年の姿、演出風景が一挙に映るこの貴重なドキュメンタリーは06年に短期公開されたが、 今や幻の作品となっている。本作「FREAKOUT」が監督第二作目。新進気鋭の若手監督である。映像制作チームTRICKSTERFILM所属。現在は映画だけでなく、テレビや舞台、ライブなど、さまざまなジャンルの映像制作に携わっている。 fo05.jpg ●『FREAKOUT』 監督・撮影・編集/矢口 将樹  撮影/菅原 養史、松本 真樹 出演:ギャーテーズ 角田 大龍(Syn Key)、小山 大僑(Vo)、大久保 弘順(Vo)、荒川 大愚(Cl)、高橋 ヨーカイ(Bass ex.裸のラリーズ)、棟居 イズミ(G)、石塚 俊明(Ds from 頭脳警察)、寺田 佳之(Per)、松本 ケンゴ(G from フリーキーマシーン)、釋 弘元 宣伝・配給/ふーてんき 製作/TRICKSTER FILM 公式サイト<http://www.freakout-movie.com> 3/5より新宿K's cinema、渋谷アップリンクにて公開 公開記念イベント開催決定!! ●『FREAKOUT』公開記念!! トーク&ライブ ギャーテーズの角田大龍氏が参戦し、ギャーテーズ秘蔵ライブ映像とともにその軌跡を語ります。また、松江哲明監督と山下敦弘監督のトークや、スペシャルゲストによるミニライブもあり。 ※登壇者は諸事情により当日変更となる場合も御座います。予め御了承ください。 【日時】3月6日(日)OPEN12:00 //START13:00 【場所】ネイキッドロフト(新宿)<http://www.loft-prj.co.jp/naked/> 【出演】角田大龍(ギャーテーズ)、松谷健(CAPTAIN TRIP RECORD 代表)、小林健二(アーティスト)、山下敦弘監督(『リンダリンダリンダ』『天然コケッコー』他)松江哲明監督(『童貞。をプロデュース』『ライブテープ:他)、松本章(ふーてんき音楽・ライター)、ほかスペシャルゲスト来場予定。 【チケット】前売1,300円/当日1,500円(共に飲食代別) 前売りはローソンチケット【L:36779】&ネイキッドロフトHP にて発売中!! ●『FREAKOUT』公開記念ライブ  映画の公開を記念して、ギャーテーズ出演のライブイベント決定! 詳細は近日発表。 【日時】3月23日(水) 【場所】下北沢ガーデン <http://www.gar-den.in/pc/index.php>
盲獣VS一寸法師 異色のキャストです。 amazon_associate_logo.jpg
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【春野さくら】──「より多くの孤児を救いたい」 20歳の新人AV女優の決意

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(写真/有高唯之)
 着エロアイドルからAV女優へ。華麗なる変身を遂げたばかりの春野さくらクン。話を聞いてみると、ほんわかした雰囲気とはウラハラに、一本芯が通った性格の持ち主だ。 「AVには最初抵抗がありました。でもいざ飛びこんでみると、とてもきちんとした世界なんです。みんなすごいプロ意識を持って働いているし、私もそれにこたえたい。自分で決めた道ですから」  そんな彼女はもうひとつの顔を持つ。それは、エチオピアの孤児2人の「母」という顔。 「ボランティア団体を通して、毎月送金しています。そのお金で9歳と10歳の女の子を現地の学校に通わせているんです」  活動のきっかけは、オーストラリアへ留学したときにさかのぼる。そこで、アボリジニの子供たちの貧しい暮らしを目の当たりにしたさくらクン。彼らとの貧富の差にショックを受けたという。 「自分自身が親に愛されて育ったので、その幸せをほかの子供たちにも分けてあげたいんです。このボランティアは送ったお金の流れもわかりやすいし、やりがいを感じます。これからはもっと送金を増やして、もっとたくさんの子供の母親になりたい!」  AV女優として働き、ボランティア活動に役立てる。我々は、「母」として覚悟を決めた彼女に、子供のように無垢な欲望をぶつけたい。 『人間考察 春野さくら』 人の心理の中にあるエロスをかきたてるレーベルとして注目をされている『人間考察』。これまでにもパーフェクトボディなのに顔に自信がない女性に、特殊メイクをさせてセックスをさせるなど、アグレッシブな企画を行って来た同レーベル。その初の専属女優・春野さくらは、現在、ボランティア活動として海外の孤児2名の母親 (募金により)になっている。より多くの孤児の母になるべく、着エロからAVへの転身を決意して稼ぎたいという彼女。果たして、彼女は無事にAVデビューできたのか!? 春野さくら(はるの・さくら)
 1990年、和歌山県生まれ。85センチのDカップロリ巨乳AV女優。10年2月に着エロアイドルとしてデビュー。その後、エチオピアにいる"娘"に送金するためにAV転身を決意し、3月SODからデビュー予定。特技の英語やコスプレを生かした、彼女ならではのプレイが期待大!
春野さくら 決意のAVデビュー 発売予定日は2011年3月19日です。 amazon_associate_logo.jpg
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血塗られたリングに極彩色の華が咲き『THE OUTSIDER第15戦』ラウンドエンジェル大放出!!

TOS15RA07.jpg  先月13日にディファ有明で行われた"不良の格闘技大会"『THE OUTSIDER第15戦』。選手たちの熱い思いはすでに報じたが(記事参照)、選手と同等、あるいはそれ以上に観衆を熱狂させたのが、麗しすぎるラウンドエンジェルたちだ。  今回は、そんなラウンドエンジェルのみなさんをとらえたセクシーショットを一挙大放出! 刮目してクリックせよ! TOS15RA01.jpg TOS15RA02.jpg TOS15RA03.jpg TOS15RA04.jpg TOS15RA05.jpg TOS15RA06.jpg TOS15RA08.jpg TOS15RA09.jpg TOS15RA10.jpg
ジ・アウトサイダー 第十三戦 in 横浜文化体育館 試合もみてね。 amazon_associate_logo.jpg
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「関取なのにキャバレー社長だった」ハチャメチャ力士・元栃桜が角界に喝!

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20歳頃、栃桜時代の高橋氏。
巡業先で一服。
「俺がもし相撲協会の理事長だったら、今すぐ腹かっさばいて責任とってるよ!」  自ら経営する都内の飲食店でそう吼えるのは、自らの力士時代のエピソードを記した『どっこい人生』を上梓した、元関取の栃桜こと高橋満矢氏。昨今の八百長騒動について問うと、冒頭の言葉が返ってきた。  高橋氏の相撲の師匠は、初代若乃花と共に「栃若時代」を築いた昭和の名横綱・栃錦。昭和30年代、山形に地方巡業でやってきた栃錦に「5,000円でスカウト」(高橋氏)され、初土俵を踏んだのは14歳。かの大横綱・北の湖にして「栃桜さんのハチャメチャぶりは、どの力士もかなわなかった」と言わしめるほど、その土俵生活は破天荒だった。  稽古中には先輩力士をぶん殴り、軍配に不服があれば行司を土俵下まで追っかけまわし、弓取式で弓をへし折り、博打や女遊び、侠客との交際も堂々と行い、さらには現役力士でありながら、隠れてキャバレーの社長になるなど、あの朝青龍がかわいく思えるほどの華麗な(?)経歴。事実、朝青龍がガッツポーズをして物議を醸す何十年も前に、観客に笑顔で手を振って厳重注意を受けていたのも高橋氏なのである。  それにしても、キャバレーの社長とはいったいどういうこと? 「当時のタニマチに"ピンク界のドン"と呼ばれてる人がいて、その人が経営するキャバレー10店舗の名義貸しをしてたんだよ。名ばかり社長だな。名義料は1店舗で月7~8万。合わせると月に100万近くはもらってた。当時、十両の月給が8万円。横綱より高給取りだったんじゃないか(笑)。もう時効だから言うけどさ」  時効かどうかはさておき、「名ばかり社長」とはいっても店で問題が起これば新宿署や池袋署へ呼び出され、羽織袴とちょんまげで始末書を書くといったことも。27歳で引退後は新宿歌舞伎町でちゃんこ鍋屋やクラブなどを経営。一方で侠客の大親分の付き人をしたり、NHK大河ドラマへも力士役で出演し、CDデビューも果たしたりと、「人に迷惑をかけることなく」(高橋氏)、自由気儘に生きてきた。  そんな高橋氏による冒頭の"割腹発言"。その裏には相撲界に対する氏の深い愛情が込められている。
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現在の高橋氏。相撲愛は半端じゃない。
「山形から出てきた自分を育ててくれた相撲界を、俺は昔も今もずっと愛しているんだよ。相撲ってのは、他の国には類をみない、深い歴史ある日本の文化なんだ。『どっこい人生』にも書いたけど、どうしてあんな場所で、あんな格好でやるのかなど、一つひとつに神聖な意味があるし、それを分かっていれば、力士は不祥事なんて起こせないはず。俺も独学で勉強したくらいで、相撲界には、教習所にも部屋にも、それを教えられる人間がいなんだよ。今は国じゅうが寄ってたかって相撲を潰そうとしているように見えるけど、本当にそれでいいのかと言いたい。俺が理事長だったら腹を切ってさ、『これからの相撲界を見てくれ!』って国民に心から詫びるよ。そこまでやれば、もう一度チャンスをやろうって思ってくれるだろ。そうやって先頭きって責任とる人間が、今の相撲協会いないんじゃないのかね」  まさに、凄まじいまでの相撲愛。しかし、腹を切る覚悟というのは本気の本気? 「あたりまえだろ。相撲協会が5億円くらいくれたらだけどな」  あ、金取るんですか? 「だって協会は内部留保で何十億円も金があるんだろ? それで問題が解決するなら、安いもんだよ。はっはっはっ(笑)」  どこまで本気でどこから冗談か、いまいち不明な元栃桜こと高橋氏。最後に、不景気で元気のない日本社会へ向けてエールを送ってもらった。 「相撲には"どすこい""どっこい"って言葉があるけどさ。俺はこの"どっこい"って言葉が好きなんだ。語源は独鈷杵(どっこしょ=悪魔退治のための仏具)って説があるけど、要は気合いを入れて体や周囲の邪気を払うわけだな。そうやって、自分の人生に気合を入れてさ、煩悩を振り払って生きていきたいよね。とにかく、自分で何かを起こせってこと! 誰かがしてくれるのを待ってたらだめ。どうせ人間いつかは死ぬんだからさ。死に際に後悔しないように、やりたいことを思い切りやればいいと思うよ」  シンプルなだけに説得力のある高橋氏の言葉の数々。著書『どっこい人生』にも、リクスを恐れず、自身の信じる道を進んできた高橋氏の豪放な土俵人生とハチャメチャなエピソードが綴られている。さらに、知られざる相撲部屋や師弟関係の内幕が描かれ、相撲にまつわるさまざまな知識を得ることができる。こんなときだからこそ、相撲ファンのみならず、「大相撲なんて本当に必要なの?」という人にも読んでもらいたい一冊だ。 ●高橋満矢(たかはし・みつや) 昭和22年2月11日、山形県生まれ。元十両・栃桜。昭和37年1月、14歳で初土俵。十両上位まで番付を上げるも、怪我などの影響で27歳で廃業。その破天荒な力士ぶりは、漫画『のたり松太郎』のモデルになったという説がある。その後、土工、ちゃんこ屋、歌手、俳優、日本屈指の大親分の付き人をするなど、自由気ままに義理堅く人生を謳歌。平成21年、高橋光彌から高橋満矢に改名し、還暦を過ぎた今も絶好調である。現在は、東京・西新宿で日本料理「方屋(かたや)」を切り盛り中。 「方屋」新宿区西新宿5-8-8 TEL03-5371-0057
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アカデミー賞12部門でノミネート 世界が注目する話題作『英国王のスピーチ』

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『英国王のスピーチ』(C)2010 See-Saw Films. All rights reserved.
 当人にとっては人生を左右する深刻な状況が、はたから見るとおかしくてつい笑ってしまう。そんな少々屈折した笑いの要素を巧みに盛り込み、ドラマに仕立てた新作映画2本が2月26日にそろって公開される。  『英国王のスピーチ』は、まもなく発表されるアカデミー賞に最多12部門でノミネートされ、現在最も注目される話題作。現イギリス女王エリザベス2世の父で「英国史上最も内気な国王」と呼ばれたジョージ6世と、あるスピーチ矯正専門家の交流を描く物語だ。  第1次世界大戦後の英国。国王の次男ジョージは吃音障害に苦しんでいた。そして、妻が見つけてきたオーストラリア人ライオネルのもとで、吃音を克服すべく訓練を開始する。まず、ジェフリー・ラッシュ演じる型破りの言語トレーナー、ライオネルがユニーク。平民だが、権威に臆することなくジョージと対等の立場で治療に臨み、その心に隠されたコンプレックスを解きほぐそうとする。対するジョージ役のコリン・ファースの演技も見事の一言。途切れてしまう言葉と苦悩の表情に観客は心を痛めながらも、あの手この手のトレーニングに大真面目に取り組む姿に思わず吹き出し、大一番のスピーチではハラハラドキドキしながら心の中で「がんばれ、がんばれ!」と応援したくなるはず。悩みを抱えている人、現状に壁を感じている人に特におすすめしたい、温かな感動と勇気をもらえる傑作だ。  もう1本の『シリアスマン』は、『ノーカントリー』でアカデミー賞4部門を獲得したジョエル&イーサン・コーエン監督が放つ異色作。降って湧いたような不幸の数々に翻弄される男の運命を描くブラックコメディだ。  1967年のアメリカ中西部。ユダヤ人コミュニティーに暮らす物理学教授のラリーは、真面目だけが取り柄のような男。ひたすら平凡な人生を歩んできたが、ある日妻から突然離婚を切り出される。大学では落第生と、また自宅では隣人との間に、厄介なトラブルが続く。持病がある中年ニートの兄に居候され、妻や娘からは疎まれている。次々に降りかかる災難に困り果てたラリーは、ユダヤ教指導者のラビに助言を求める。個々のトラブルはありがちなものだが、それらが連鎖して真面目なラリーをじわじわと追いつめていく様はなんともシュール。同情を誘う主人公の困惑ぶりもひたすらおかしいが、冒頭と中盤に挿入されたオチが不明瞭な小話、驚天動地の結末という唐突さがやはり笑いを誘う。  まさに人間劇の"王道"を行く「英国王のスピーチ」と、起承転結や因果応報といった定型を拒む不条理劇の「シリアスマン」。好対照な2作品を見比べるのも一興だ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「英国王のスピーチ」作品情報 <http://eiga.com/movie/55750/> 「シリアスマン」作品情報 <http://eiga.com/movie/55320/>
ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション コーエン兄弟、キター! amazon_associate_logo.jpg
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日本映画界期待の新鋭・石井裕也監督「今の時代は、面白いだけじゃダメ」

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1983年生まれの石井裕也監督。
「"中の下"って、バブル以降に育ったボクらの世代に共通する意識。
思った以上に、共感してくれた人が多かった」
 上がる上がるよ消費税、金持ちの友達一人もいない 来るなら来てみろ大不況、そのときゃ政府を倒すまで 倒せ倒せ政府~♪  シジミ工場の社歌とは到底思えない、アナーキーかつ本音むきだしな歌詞で各地の劇場で爆笑を呼んだ石井裕也監督の商業デビュー作『川の底からこんにちは』。劇中でヒロインが口にする「どうせ、中の下ですから」という台詞は、長引く不況にあえぐ今の日本社会の気分とマッチして、本作はスマッシュヒットに。現在28歳の石井監督は本作で「第53回ブルーリボン賞」監督賞を最年少で受賞。さらに、昨年10月にはヒロインを演じた満島ひかりとの入籍を発表したことでも話題を呼んだ。2月26日(土)に『川の底からこんにちは』がDVDリリースされるのを記念して、日本映画界期待の石井監督が日刊サイゾーに登場。気になるあのことも聞いちゃいました。 ――石井監督、この度は入籍に受賞、おめでとうございます! 石井裕也監督(以下、石井) ありがとうございます。
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石井裕也監督の作品では"疑似家族"が描かれる
ことが多い。「ボクは血の繋がりはさほど気に
しない。でも、人と人との繋がりには興味が
ありますね」。
――大阪芸術大学の卒業制作『剥き出しにっぽん』(05)がPFFグランプリを受賞して注目されていた石井監督にとって、『川の底からこんにちは』は念願の商業デビュー作。PFFスカラシップ作品として、企画をプレゼンして製作費を獲得したわけですね。 石井 そうです。ボクの場合は、企画書ではなく、完成した脚本をプロデューサーに読んでもらったんですが、最初の脚本はお蔵入りしました(苦笑)。どん底状態の主人公が開き直ってスゴ味を発揮するというストーリーは『川の底――』と同じだったんですが、最初の脚本では39歳のグラビアアイドルが主人公で、かなりヤバい人という設定でした。生理的にエグい描写もあり、プロデューサーから「これはヤメてくれ」とダメ出しされましたね。けっこう時間をかけて書いた脚本でしたが、今考えるとお蔵入りして良かったと思います(笑)。その後、主人公が男になったり、女になったりして、今の形に収まったんです。 ――39歳のグラビアアイドルのサバイバルものとは強烈ですね(笑)。"中の下"というモチーフは最初からあったんですか? 石井 いえ、最初は考えていませんでした。その後、東京で派遣OLやっていたヒロインが故郷でシジミ工場を建て直すというストーリーに落ち着いたんですが、脚本を書きながらプロデューサーと「何かが足りないよね」という話になったんです。「今は面白いだけじゃ勝てない時代だよね」「面白さに、+αが必要じゃない」と。そこで、すでにヒロインの「私、中の下ですから」という台詞は脚本に書いていたので、これじゃないかと。「これをフックにしていけば、ただの面白いだけの作品じゃなくて、もうひとつ上のステージに行けるんじゃないか」と話したんです。それから"中の下"という価値観を前面に押し出した形ですね。プロデューサーからの指摘は重要でした。 ――これまでも独特なパワーとテイストを放っていた石井作品を、より際立たせたのがヒロイン・佐和子役の満島ひかりさん。おふたりの出会いは? 石井 最初は、この作品の顔合わせですね。主演俳優のキャスティングはプロデューサーに頼んでいたんです。それでプロデューサーから「この人、主演にするから」と言われ、じゃあ一度会おうと。 ――初対面の場で満島さんから「私を使わないと後悔しますよ」と言われたそうですね?
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流れに流されて生きてきた佐和子(満島ひかり)
は父の入院をきっかけに、倒産寸前のシジミ
工場を継ぐことを決意。ひと癖ふた癖ある従業
員たちを束ねられるか?
石井 はい、言われました(笑)。顔合わせの席は、ちょっとお互いにケンカ腰でしたね。いや、ケンカ腰という表現は良くないなぁ(苦笑)。でも、まぁ、フツーじゃねぇなぁと。他の作品でも俳優と顔合わせしましたけど、フツーは初対面から、そういう暴挙に走る人はいませんよね。さすがに、開口一番の言葉が「後悔しますよ」じゃないです。それじゃあ、まんまドラマですよ(笑)。 ――日刊サイゾーでも『愛のむきだし』(09)で満島さんをインタビューしましたが(参照記事)、非常にユニークな方ですね。いつも、あんな感じなんですか? 石井 いや、逆にボクは取材の場で彼女がどんな感じなのかは知りませんから(笑)。 ●石井作品はコンテなし、カット割りもなし! ――ヒロイン・佐和子を演じた満島さんの「中の下ですから」とつぶやく前半のイケてない感じから、社歌をきっかけにシジミ工場を建て直そうとする開き直りぶりへの跳躍がお見事。前半のダメダメ感を漂わせている細かい仕草は、石井監督の演出? 石井 そうですね。前半のキャラクターづくりに関しては細かく演出しました。後半のブチ切れ演技は彼女が得意なことは分かっていたので、東京でのOL生活を前半に撮影して、彼女のテンションをなるべく抑えるように細かく演出しました。逆に後半は、演出はラフなものにしています。前半と後半で演出の仕方は変えましたね。前半抑えていた彼女が後半に感情を爆発させるシーンは、狙い通りに行ったと思います。でも、彼女が開き直る朝礼の場面はこの作品のキモになるものだったので、うまく撮影できるかどうかものすごく心配で、怖くて怖くてたまらなかったんです。 ――満島さんはハードルとなるシーンを鮮やかにクリアして、石井監督の期待に応えてみせたわけですね。佐和子がやる気のない従業員たちに啖呵を切る朝礼シーンは名場面ですが、必ずしも石井監督のイメージの通りではないんでしょうか? 石井 もちろん違います。でも、自分のイメージを強要するのは違うとボクは思うんです。映画って、やっぱりみんなで作るものですから。ボクのイメージと違うから、ここはこう直してくれと言うのは違うんじゃないか。こうした方がもっと面白くなるから、こうしてくれという言い方ですね。ボクはコンテを描かないし、カットも割らないし、脚本の読み合わせもしない。とりあえず、現場に行ってから1回やってみようと。そこから、「あぁ、やっぱりダメか」と悩みながら、細かく細かく撮り直して、現場でできるMAX状態に持っていくんです。朝礼のシーン、ボクはすんなりと2テイクぐらいで撮り終えたつもりだったんですが、DVDの特典のメイキング映像を見ていたら、かなりテイク数を重ねているのが分かって、自分でも驚きました。あんまり細かくテイクし直しているので、彼女(満島ひかり)は退屈しかかってましたね(苦笑)。
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叔父さん(岩松了)から連絡をもらい、5年
ぶりに故郷に帰ってきた佐和子(満島ひかり)。
工場の跡取りと知り、バツイチ子持ちの恋人
(遠藤雅)が強引に付いてきた。
――DVDの特典映像も要チェックですね。石井監督が作詞した「木村水産 新社歌」が大変なインパクト。あの社歌はどのようにして生まれたんですか? 石井 普段はダメな人たちが一生懸命になる姿を描きたかったんです。ボクとしては有意義なことを一生懸命やるよりも、どうでもいいことを懸命にやることのほうが尊いように思えるんです。歌詞はすんなり書けました。歌詞の内容が反体制的であるとも言われましたが、ボクとしてはもちろん風刺的な意味合いはありますが、ナンセンスの範疇に入るものだと思っています。意味のないことをみんなが集まって、熱中していることが感動を呼ぶんじゃないでしょうか(笑)。個人的に社歌とか校歌とかって好きなんです。無意味なものが好き。それに映画なら、歌ったり踊ったりしたほうがいいなと。楽しいじゃないですか。まぁ、下手にやると映画そのものを壊してしまうので、あの社歌がギリギリのレベルだったと思います。あの社歌に振り付けを入れたらアウトだったでしょうね。 ●シンボルとしての汚物、そして疑似家族について ――無意味なことへの情熱が感動を呼ぶ、ですか。石井監督の作品と言えば、『剥き出しにっぽん』もそうでしたが、肥だめやウンコがよく出てきますよね。 石井 はい(笑)。自主制作時代のボクの作品に出てきたウンコは、すべて小児趣味的なものでしたね(苦笑)。海外の映画祭などでも、記者会見や質疑応答などで、「お前の作品に出てくるウンコにはどんな意味があるんだ?」とよく訊かれます。そのときは、まぁ、ボクもマジメに答えるようにしているんですが、さすがにもう短絡的にウンコを出すことはやめようと考えています(笑)。でも、今回の場合は、小輪廻というか、湖とシジミの関係、人間の生と死の関係を含めて、すべては循環しているという意味付けがあったんですけどね。ある種、人の嫌悪感を煽るウンコをまき散らしながらも、ひとつの希望に結実する物語を思い付き、これで行けるなと思ったんです。言葉を換えれば、クソみたいな世の中にも、ほんのちょっとした希望を見つけることができる映画にしたかったんです。 ――自主制作時代は無意味にウンコを出していたけど、商業作品ではきちんと辻褄のあったウンコを出すようになったわけですか。 石井 そうです(笑)。普段は目を背ける人間の汚い部分に目を向けることで、それでも"人間って、やっぱりいいじゃん"と思えるものにしたかったんです。ウンコは言わば、そういう人間の汚い部分のメタファーですね。今回はうまくシンボルになったと思います。でも、まぁ、もういい加減、汚物ネタは本当にやめようと思います(笑)。 ――でも、そういう泥臭さ、人間臭さは、熊切和嘉監督や山下敦弘監督らを輩出した大阪芸術大学出身者のいわば芸風でもありますよね? 石井 そうですね。ボクは熊切監督や山下監督のことは知らずに大阪芸術大学に入ったんですけどね。でも、ボクに"ダイゲイ論"を語らせると、ウルサイですよ(笑)。大阪芸術大学のある南大阪って、遊ぶ場所がなくて、物づくりに励むしかないんですよ。また、地理的に閉鎖的なこともあり、縦の繋がりが強くて、校風というか"ダイゲイ精神"みたいなものが脈々と受け継がれているのは確かですね。それに大学の近くの街で16mmカメラを回していたら、外部の人間が見たら似たような作品にどうしてもなってしまう。ちょっと退廃的でブルージーな感じになるんです(苦笑)。
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工場の経営だけでなく、父親の忠男(志賀
廣太郎)の看病や血の繋がらない加代子の世話
にも追われる佐和子だが、逆に忠男や加代子
に励まされている自分に気づく。
――なるほど。もう少し、石井監督の作風について聞かせてください。『川の底――』のヒロイン・佐和子は寄る辺なき存在から、疑似家族、そして最後には拡大家族の中心へと成長していきます。石井監督の作品は、駆け落ちや血の繋がらない人たちが疑似家族を形成していく物語が多いように思いますが......。 石井 ボクは昔から幼友達や同級生たちでグループを作っちゃうんです。けっこう家族的な繋がりを持つグループで、誰かが他のヤツにバカにされたら、みんなでやり返しに行くみたいな感じなんですよ。ボクが子どもの頃に母親が亡くなり、片親で育ったというのがあるのかもしれません。「石井は疑似家族を作ろうとしているんじゃないか」と友人に指摘されたことがあって、それって当たっているかもしれないなと思いましたね。自分では自分のことを分析したりしないので、自分のことは分からないもの。映画の中でも無意識に描いているのかも知れません。家族の在り方を問う、みたいなことは考えてないですけど、人と人の繋がりに興味あるのは確かですね。駆け落ちに関しては、2つ興味があるんです。1つは駆け落ちに失敗してしまった人に興味が湧くんです(笑)。それと2つめは、理想論なのかもしれませんが、恋とか愛のために、それ以外のものを全部捨てられる心意気ってスゴいなぁと。自分は大切なものを1つだけ選ぶことすら難しいのに、それ以外のものは全部捨ててしまうなんて到底無理。憧れますね。 ――石井監督は、実生活で新しい家庭を持ったわけですね。満島さんとの馴れ初めについて、少し聞かせてください。『川の底――』の製作期間中にどちらかからアクションがあったんですか? 石井 製作中は一切、そういうことはありませんでしたよ。う~ん、その件は『川の底――』の売りにはしてないので、ノーコメントってことにしてもらえませんか(笑)。 ――では今後、満島さんを起用した作品の予定は考えています? 石井 いやいや、それはないんじゃないかと思います。一緒に仕事......、というのは今はちょっと考えられないですね(苦笑)。  石井監督、プライベートな部分にまで踏み込んでスミマセン。でも、作品論に関しては雄弁な石井監督が、奥さまの話題になるとしきりに照れているのが印象的でした。石井監督の言葉をそのまま受け取ると、新鋭監督と話題のミューズとのコラボレーションが満喫できるのは『川の底からこんにちは』だけということに当面はなりそう。数々の奇跡を生み出した『川の底からこんにちは』、見逃すと後悔しますよ! (取材・文=長野辰次) kawanosoko_sub4.jpg ●『川の底からこんにちは』 監督・脚本/石井裕也 出演/満島ひかり、遠藤雅、相原綺羅、志賀廣太郎、岩松了、稲川実代子、菅間勇、猪股俊明、牧野エミ 発売元/IMAGICA TV 販売元/紀伊國屋書店 2月26日(土)DVDリリース 作品公式サイト <http://kawasoko.com> ●いしい・ゆうや 1983年埼玉県出身。大阪芸術大学の卒業制作として『剥き出しにっぽん』(05)を監督。PFF2007グランプリ&音楽賞を受賞。長編第2作『反逆次郎の恋』(06)はゆうばり国際ファンタスティック映画祭などに入選。大阪市の映像文化振興事業として、長編第3作『ガール・スパーク』(07)を制作。長編第4作『ばけもの模様』(07)は香港国際映画祭アジアン・デジタル・アワードにノミネート。さらに香港で開催されたアジアン・フィルム・アワードにて、アジアで最も期待される若手監督に贈られる第1回エドワード・ヤン賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭、および香港国際映画祭にて、上記4作品の特集上映も行なわれ、反響を呼んだ。第19回PFFスカラシップ作品として『川の底からこんにちは』が2010年に公開。同年、『君と歩こう』(09)も公開された。『川の底からこんにちは』(09)はブルーリボン賞監督賞、ヨコハマ映画祭新人監督賞&主演女優賞、モントリオールファンタジア映画祭最優秀作品賞&最優秀女優賞など多数受賞。新作『あぜ道のダンディ』(10)は2011年公開予定。
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69年前の今日、米LAを未曾有のパニックに陥れた未確認飛行物体群の真相とは!?

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当時の画像
 時は太平洋戦争のさなか、しかしそれは、決して日本軍の空襲ではなかった──。  今から69年前の1942年2月25日、アメリカ合衆国カリフォルニア州のロサンゼルス上空に、25機もの飛行物体が突如として出現した。  米陸軍はこれを日本海軍の艦載機による空襲と信じ、すぐさま迎撃体制に入る。打ち上げられた対空砲火は1,440発。その模様は地元のラジオでも生中継され、西海岸はパニック状態に陥ったという。  だが、これほどまでに大規模な砲火にもかかわらず撃墜はゼロ。しかも、実際に日本海軍がそうした本土空襲作戦を行った形跡はなかった。
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当時の事件の様子を伝える新聞
 これが、現在まで語り継がれている"ロサンゼルスの戦い"に関する記録のすべてである。 「民間機と見誤ったのではないか?」 「日本軍以外の連合国による奇襲攻撃だったのでは?」  さまざまな憶測が飛び交ったが、事件の真相は現在に至るまで闇の中にある。  「未確認飛行物体」「地球外生命体」などという言葉さえもなかった当時、この事件の衝撃は計り知れないものだったはずだ。  また、事件の目撃証言も、飛行物体の速度は「時速70キロという超低速飛行だった」というものから「マッハ3に近いものだった」という説までさまざま。  さらに、同時期に南太平洋上でも未確認飛行物体の集団が目撃されるなど、物理的に不可能な事象、当時の科学では説明のつかない現象が相次いだ。  もちろんアメリカ軍にも未知の存在への攻撃を行ったという認識はなかったが、現在では、「アメリカ軍がUFOを迎撃した事件」として、一部の地球外生命体ビリーバーサイトがこの騒動を伝えている。  この事件の情報を伝えるWEBサイトのひとつが、「W.A.T.C.H」 (http://www.reportthreats.jp)だ。「W.A.T.C.H」にはこの"ロサンゼルスの戦い"についての映像に加えて、52年にワシントンD.C上空に現れた70機の謎の編隊や、65年のブエノスアイレス、83年のソウル、91年のロンドンなど、未確認飛行物体や地球外生命体に関する数多くの資料が掲載されており、世界中から注目が集まっているという。  いったい、"彼ら"の目的は何なのか──。  日本でも、90年に山口県で金色の飛行物体が目撃され、県警ヘリや自衛隊機が出動するなど、同様の未確認飛行物体に関する事件が起こるなど、"彼ら"に関する報告は枚挙に暇がない。  69年前に起こった"ロサンゼルスの戦い"が、未確認飛行物体によるものだとしたら、人類が初めて地球外生命体に攻撃を仕掛けた事件だったということになる。4月1日にはこの事件をモチーフにした映画『世界侵略:ロサンゼルス決戦』が公開される。昨年末にNASAが発表した「地球外生命体」についての報告も、瞬く間に全大陸を駆け回り、大きな反響を呼んだことも記憶に新しい。  今再び、"彼ら"に世界中が刮目している。 ◆「W.A.T.C.H」 http://www.reportthreats.jp/ ◆『世界侵略:ロサンゼルス決戦』 http://www.battlela.jp/

6,000円で映画を作る方法を教えます!斬新な"純愛ゾンビ映画"『コリン』

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キヤノンのデジカメを愛用するマーク・プライス監督。
「以前使っていた旧型のキャノンは壊れてしまって、
今はロンドンの映像博物館に収蔵されているんだ」。
映画史を塗り替えた超低予算映画『コリン』、早くも殿堂入り。
 手元に6,000円あったら、あなたならどーする? キャバクラに行けば、軽くビールを飲んだだけで、あっという間に消えてしまう金額ですよ。ところが、イギリスのマーク・プライス監督は、なんと45ポンド、日本円にして約5,800円で長編映画『コリン LOVE OF THE DEAD』を完成させたのだ。低予算映画と言えば、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)が製作費600万円、『パラノーマル・アクティビティ』(07)が同135万円なので、プライス監督の『コリン』がいかに激安プライスで作られているかが分かる。しかも、『ブレア』や『パラノーマル』がフェイクドキュメンタリー形式であるのに対して、『コリン』は正統派ゾンビ映画にして、泣ける純愛ドラマでもあるのだ。何といっても、ゾンビ化した青年を主人公に現代社会の空虚さを描くというアイデアが素晴らしい。  どーすれば、6,000円足らずで、感動作ができたのかと言うと、まずコリン役の主演俳優アラステア・カートンはプライス監督とは旧知の仲で、無償での友情出演。押し寄せるゾンビの大群は、Face BookやMySpaceでエキストラを募集。みんな汚れてもいい服で現場に集まり、白塗りメイクのゾンビ役を嬉々として楽しんだそうだ。カメラは自前の中古のデジカメ。編集や音入れも自前のパソコンで仕上げている。6,000円は撮影用の小道具として必要だった"カナテコ"と、監督が使い回しの撮影テープをうっかり忘れたために新規で購入したミニDVテープ数本。それとエキストラをもてなすための紅茶とビスケット代(英国人らしいなぁ)。では、プライス監督にいかにして6,000円で"泣けるゾンビ映画"を作ることができたのか、その極意を語ってもらおう。 ――6,000円でよくこれだけ高品質な劇映画が作れましたね。6,000円と言えば、かわいい女の子がいる店でビールを数杯飲んだら消えちゃう金額ですよ。
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『コリン』が各国で配給され、ギャラ
をめぐる問題は起きてないか聞いてみ
ると、「みんな、喜んでくれているよ。
大ヒットしたわけではないんで、ボク
が得た報酬はまだわずか。新機材と
次回作に回しているんだ」とのこと。
プライス あはは、確かにそうだね。まぁ、人によってはその方が有意義と感じるかもしれないよね(笑)。 ――プライス監督は商業映画のスタッフを経験することなく、市販のDVDの特典映像を教科書代わりにしてきたそうですね。しかも、ピーター・ジャクソン監督のデビュー作『バッド・テイスト』(87)にインスパイアされたと聞いています。一体、あのC級SF映画のどこが参考になったんでしょうか? プライス 『バッド・テイスト』のどこかが具体的に参考になったというわけじゃないんだ。あの作品全体からインスピレーションを受けたんだ。まぁ、要するに、とにかく友達を掻き集めて、何でもいいから撮り始めれば、映画はできちゃうもんだということだね(笑)。映画製作には意気込みが大事だってことを、あの作品からは学んだよ。もともとボクは小さい頃から映画作りに興味があったんだけど、DVDの特典のメイキング映像を見ることで、映画製作には演出部や制作部があることなど、いろんな知識を身に付けたんだ。インディペンデント映画を作る人間にとっては、DVDの登場は画期的なことだったと思うよ。 ――それにしても、ゾンビを主人公にするという『コリン』の独創的なアイデアはどのようにして生まれたんでしょうか? プライス 昔からゾンビ映画が好きで、いろいろ見ていたんだ。ザック・スナイダー監督が、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』(78)をリメイクした大作『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)なんかも観たよ。もちろんお金があれば、あんな大作映画を作ってみたいけど、何しろ予算がなかったからねぇ(苦笑)。それで、今までになかったような独自のアイデア、独自の視点によるゾンビ映画を作ろうと考え、その中で『コリン』のアイデアが浮かんだんだ。それから、主演のアラステア・カートンも呼んで、2人で意見を出し合いながら作り上げていったんだ。 ●夜勤バイトしながら、週3日ペースでの撮影 ――運送会社で夜勤のアルバイトをしながら、勤務中に脚本を書き上げたそうですね。上司から怒られるなんてことは......?
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ロンドンの小さなアパートで恋人と慎ましくも
幸せに暮らしていたコリン(アラステア・カートン)
だが、親友に噛まれてゾンビ化。薄れゆく記憶
の中、廃墟となったロンドンをさまよい歩く。
(c)2008 NOWHER FAST FILM PRODUCTION
プライス 夜勤の電話番だったんだけど、基本的に夜間はお客さんから電話が掛かってくることはまずなくて、ボクともう一人いたスタッフはずっと暇だったんだ。上司からは「眠くなるだろうから、本とか持ってきて読んでいいよ」と言われたので、「本の代わりにパソコンを持ってきてもいいですか?」と聞いて「いいよ」ということだったので、深夜に脚本を書き上げることができたんだ。撮影は週3日の休みを利用して、じっくりと進めたんだよ。夜勤中は脚本だけでなく、撮影した映像の編集作業もやったよ。運送会社からお金をもらいながら、コツコツと自分の映画を作ることができたってわけさ。エンドクレジットには、スペシャルサンクスとして会社の名前をクレジットしているよ(笑)。 ――創作活動に理解のある素晴らしい職場でしたね(笑)。『コリン』は完成までに18カ月要したそうですが、それだけの長期間、よくキャストやスタッフをキープできたものだと思います。 プライス スタッフといっても、ボクが撮影・演出・録音・照明・編集・音響......とほとんどひとりでやったんだ(笑)。なので、ボク以外に長期間拘束したスタッフはいないんだよ。キャストに関しては、コリン役のアラステアにはがっつりと働いてもらったけど、姉役のデイジー・エイトケンズや恋人役のタット・ウォーリーの撮影は3~5日程度で済んだからね。他のゾンビたちは撮影の度にweb上で募集して、集まってもらったんだ。なので、18カ月フルで働いたのは、ボクだけなんだよ。 ――アイデアと情熱さえあれば、映画はできちゃうんですね。とは言え、撮影現場にトラブルは付き物。予算がない中で、どのようにクリアしたんでしょうか? プライス 確かに撮影現場では、毎日のように予想外のトラブルが起きるもの。でも、その度にクリエイティブな方法で、問題を解決していったんだ。例えば、後半にコリンたちがゾンビ狩りの集団に襲われる乱闘シーンがあるけど、あのシーンでコロコロと転がる手作り爆弾が、どうも爆弾に見えないということで、火を点けようということになったんだ。でも、うまく火を点けることができなかった。そこで、最初に登場するゾンビ役のリー・クロコームは視覚効果と1人2役を請け負ってくれていたんだけれど、彼がトイレットペーパーの紙の芯を使うことで火の点く爆弾を考え出してくれたんだ。そのように、参加してくれたみんなが面白い作品を作るために、問題が起きる度にアイデアを出してくれた。ナイスなアイデアを出してくれたリー・クロコームには何かご褒美をあげようということになり、コリンが顔中血まみれになるシーンで、リー・クロコームは口いっぱいに血のりを含んで、コリンの顔にプハーッと吹きかけたんだ(笑)。 ●シロップとバナナが生み出した惨劇シーン ――愉快な現場だなぁ! 作品内容についても教えてください。ゾンビになったコリンが実家で監禁され、窓の外で家族会議が行なわれているシーンは、無性に切なかったです。『コリン』には宗教の無力化、モラルや家族制度の崩壊といった現代社会の問題点が映し出されているように思います。監督にとって、ゾンビとは何かのメタファーなのでしょうか?
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ゾンビとなったコリンは、姉の手によって
実家に監禁される。窓の外では家族が泣き悲しん
でいるが、コリンにはもう人間としての意識
はない。家族が壊れていく様を、コリンはただ
じっと見つめる。
プライス ヤァ、その通りだよ! 『コリン』で描いたものは、離散する一家、崩壊する家族のメタファーなんだ。そしてそれは、ボクの永遠のテーマでもあるんだ。今後もいろんな作品で、いろんな角度から、このテーマを追っていくつもりだよ。『コリン』のDVDの特典に付く短編『MIDNIGHT』も寓話的な家族を描いているんだ。現在、製作中の新作長編でも、どこか不健康で問題を抱えた家族が描かれることになるよ。 ――『コリン』はフィクションドラマですが、その中には監督が現代社会に感じているリアリティーが投影されているようですね。 プライス そうなんだ、『コリン』で描かれている家族像はとても身近でリアルなものなんだ。自分の家族は幸いにも仲がよく、離散には至っていないけど、子どもの頃に友達の両親が次々と離婚して、家族がバラバラになっていく様子をすぐ近くで見てきたんだ。そのことから、自分の家族もいつかバラバラになってしまうのではないかという恐怖心を、幼いながらに抱えて育ったんだ。『コリン』にはボクの少年時代の心理が映し出されているのかもしれないね。 ――では、監督にとって、映画づくりにいちばん大切なものは何か教えてください。 プライス とにかく、アイデアがいちばん! そして、しっかりとしたストーリーと豊かで奥の深いキャラクターが必要。どちらかが欠けても、いい映画にはならないんじゃないかな。いくらストーリーが面白くても、キャラクターがまるで共感できない、つまらない人間ばかりだったら、つまらない映画になってしまうからね。その逆もしかり。最終的に、その2つがそろった映画は、必ず面白い映画になるとボクは信じているよ。その2つさえクリアしていれば、どんなに安い機材でも、中古のカメラでも、まったく問題ないんじゃないかな。 ――血のりは必需品じゃない? プライス あはは、血のりもあれば、越したことはないよね(笑)。でも『コリン』は見た人が感じているほど、大量の血のりは使ってないんだよ。血みどろのグロテスクなシーンが多いように感じるかもしれないけど、音響効果でうまくごまかしているんだ(笑)。血のりも、すべて手づくりだよ。血のりの主成分は、合成着色料やシロップ。血にもっとトロトロした質感を出したいときは、血のりの中に剥いたバナナをぐちゃぐちゃにして混ぜて、思いっきり壁にぶつければOK。うまく血や内蔵が飛び出したシーンを撮ることができたんだ(笑)。 ――血の惨劇シーンは、シロップとバナナで作られたんですねぇ。『コリン』に触発されて、「自分も映画を」と思うユーザーは少なくないと思います。最後にひと言、メッセージを。 プライス ボクの映画を見て「自分も何か作りたい」と思ってもらえることが、サイコーにうれしいことだね。ぜひ、日本の若者にも『コリン』を見て、刺激を受けてほしいな。テクノロジーに関しては、今の時代は最も恵まれた環境にあると思うよ。それこそ、今は携帯電話でHDのハイデフニション映像が撮れる時代。友達を呼び出せば、すぐにでも映画を撮ることができるってわけ。ボクの次回作は『THUNDER CHILD』という第二次世界大戦を舞台にしたホラー映画なんだけど、予算を集めるために時間が少しばかり掛かっているところ。でも、ただ待っているだけではつまらないので、『コリン』の配給報酬で購入したキヤノンの7Dで別の新作を作っているんだ。機材が高かった昔と違って、今はもう言い訳はできない時代。映画を作りたい人は、今すぐ始めましょう! (取材・文=長野辰次) korin03.jpg 『コリン LOVE OF THE DEAD』 製作・監督・脚本・撮影・編集・録音/マーク・プライス 特殊メイクアップ効果/ミシェル・ウェッブ 視覚効果/リー・クロコーム、ジャスティン・ヘイルズ 出演/アラステア・カートン、デイジー・エイトケンズ、タット・ウォーリー、リアンヌ・ペイメン、ケイト・エルダーマン、ケリー・オーウェン、リー・クロコーム、ジャスティン・ミッチェルーデイヴィ 配給/エデン 3月5日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開 2月26日(土)~3月4日(金)には〈東京国際ゾンビ映画祭2011〉も開催 <http://www.colinmovie.jp> ●マーク・プライス監督 1979年イギリスのサウス・ウェールズ生まれ。9歳の夏にスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(75)を観て、夏休み中ずっとビデオを見続けて、すべての映像・台詞・効果音を丸暗記した。90年代前半、ピーター・ジャクソン監督のデビュー作『バッド・テイスト』(87)のメイキング映像『グッド・テイスト~メイド・バッド・テイスト』を観て、映画製作の決意を固める。2001年にスォンジー大学に入学し、CD-ROMのオーサリング、ウェブ・デザイン、3Dアニメーション、映像や音楽制作に関する基礎を学ぶ。04年にロンドンで上演された舞台『BASH』の舞台用映像を手掛け、俳優アラステア・カートンと出会う。マークが監督した短編『MIDNIGHT』(05)にアラステアは主演。さらにマークが運送会社の夜勤中に脚本を書き上げた『コリン』にも無償で主演した。その後、短編『THE END...』(10)を発表。現在は『コリン』同様に夜勤中に脚本を書き進めた、第二次世界大戦を舞台にしたホラー『THUNDER CHILD』を製作中。こちらにもアラステは主要な役で出演。ハリウッドほか海外から作品のオファーが殺到している。
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"血染めの哲学者"キム・ジウン監督、日韓でR18指定となった衝撃作を語る

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2月9日、キム・ジウン監督はインタビュー終了後、
主演のイ・ビョンホンと共にジャパンプレミアの舞台挨拶に参加。
ジウン監督は舞台俳優だっただけに、ビョンホンと並んでも存在感あり。
 お前が深淵を覗き込む時、深淵もまたお前を覗き込んでいるのだ。  哲学者フリードリヒ・ニーチェの代表作『善悪の彼岸』の一節だが、イ・ビョンホンとチェ・ミンシクという韓流2大スターが競演する『悪魔を見た』は、このニーチェの言葉をモチーフにした深淵なるバイオレンス映画となっている。敏腕捜査官のスヒョン(イ・ビョンホン)は結婚を間近に控えていたが、婚約者が快楽殺人鬼ギョンチョル(チェ・ミンシク)によってバラバラ死体にされてしまう。復讐を誓うスヒョンは違法捜査の末にギョンチョルを見つけ出し、半殺し状態に。だが、スヒョンはギョンチョルを殺さずに、小型マイク付きのGPSを呑み込ませて野に放つ。そして、ギョンチョルが再び性犯罪を起こそうとする度に、寸止めでなぶりものにするのだった......。『オールド・ボーイ』(03)などで知られる韓国きっての演技派ミンシクの怪演に加え、国際的スターであるビョンホンが善悪の見境を失い、復讐鬼へと冷酷に変貌する様を演じ切っている。女性たちが次々と快楽殺人の犠牲となる過激シーンが満載。また、ギョンチョルと犯罪者仲間との談笑場面がカニバリズムを連想させることなどから、韓国の映像物等級委員会(日本の映倫的組織)は問題箇所を含む複数シーンのカットを指示。製作側はトータル1分30秒の部分的なカットに応じることで、なんとかR-18指定という形で公開に至った問題作なのだ。『クワイエット・ファミリー』(98)でデビュー以降、『反則王』(99)、『箪笥』(03)、『甘い生活』(05)、『グッド・バッド・ウィアード』(08)など多彩なヒット作を生み出してきたキム・ジウン監督が日刊サイゾーの単独インタビューに応じてくれた。単なるバイオレンス映画に収まらない、韓流映画の究極の形に触れてみてほしい。
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婚約者を殺された国家情報院捜査官のスヒョン
(イ・ビョンホン)は、快楽殺人鬼ギョン
チョルへの"倍返し"の復讐を誓う。だが、ギョン
チョルを追い詰める過程で、犠牲者が続出する
ことに。
──本作はニーチェの著書『善悪の彼岸』がモチーフになっていますが、ニーチェの言葉をモチーフにしたバイオレンス映画という発想はどのようにして生まれたのでしょうか? ジウン もともとは自分のアイデアから始まった作品ではないんです。2010年に米国で映画を撮る企画があり、その準備を進めていたんですが、そのプロジェクトが延期となり、1年間ブランクができてしまったんです。普通は監督が俳優をキャスティングするものですが、この映画は逆でした。チェ・ミンシクがボクを監督にキャスティングしたんです(笑)。ミンシクに会って、渡された脚本を読んでみると、荒削りのストーリーの中に本能的で原色に満ちたパワーを感じたんです。従来の復讐劇とは違う、新しい何かがあるように感じました。そして、それをどう映画化するか悩んでいたときに、ニーチェの言葉を思い出したのです。それが"怪物と闘う者は自らが怪物と化さぬよう心せよ。お前が深淵を覗き込む時、深淵もまたお前を覗き込んでいるのだ"です。この言葉は、この作品を端的に表していると考えたんです。この深淵なニーチェの言葉を、そのまま登場人物たちの台詞として使うのではなく、映像としてどう表現するのかを考えながら製作を進めました。 ──殺人鬼役のチェ・ミンシクとは、ジウン監督のデビュー作『クワイエット・ファミリー』以来の付き合い。さすがの大熱演ですね。でも、よく国際的スターでもあるイ・ビョンホンがこれだけの問題作に出演をOKしたなと感心しました。 ジウン ははは、イ・ビョンホンが最初に抱いていたイメージとは違う作品になったかもしれませんね(笑)。ビョンホンとは、ある映画の試写で出会ったんです。彼も『G.I.ジョー2』の撮影が延期になって、ボクと同じように1年間ほど時間を持て余していたんです。本当の偶然です。そこでお互いの近況を話しているうちに、「今、こんな作品の準備を進めているところなんだ。普通の復讐劇とはちょっと違う、悪魔より恐ろしい存在になる男の物語だよ」とビョンホンに話したところ、彼は興味を示し、「脚本を読みたい」というので、手渡したんです。それで脚本を読み終えたビョンホンは即座に出演をOKしました。ビョンホンが演じるスヒョンという男は、とても難しい複雑なキャラクターです。ギョンチョルという"純粋な悪"と闘うために、"歪んだ正義"を掲げるという亀裂の生じた男です。しかし、ビョンホンは非常に上質な演技で、しかも情緒的に、この役を的確に演じてくれました。 ■復讐がもたらす快感と悪魔化する恐怖の狭間
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怨恨や金銭目的ではなく、快楽のために殺人を
重ねるギョンチョル(チェ・ミンシク)。本能
の赴くままに生きるギョンチョルは、スヒョン
が考えていた以上にタフで、ずる賢い。
──他人事としてこの作品を見れば、イ・ビョンホンとチェ・ミンシクの対決は、まるで2大怪獣の激突を見ているかのような面白さがあります。でも、パワフルな展開に、瞬く間に作品世界に飲み込まれました。2人が遭遇する中盤以降は、まるで自分の足元がグラグラとぐらつき、床が抜けたような奇妙な感覚に襲われました。 ジウン それは、興味深いですね。ある意味、ギョンチョルは悪の象徴。生きていると運悪く、ギョンチョルのような"絶対悪"に遭遇してしまう可能性もあるわけです。平凡な人間が絶対悪に出会ってしまった場合、どのように絶望し、破滅していくのかをこの作品では描きたかったんです。床が抜けるように感じたと言われましたが、ある意味、スヒョンが足を踏み入れた世界は2度と元には戻れない世界でもあるわけです。 ──スヒョンがギョンチョルと出会って以降の世界は、この世ではないし、あの世でもない。かといって、まだ本当の地獄ではない。ダンテの『神曲』に出てくる"煉獄(れんごく)"を思わせました。 ジウン "煉獄"とは天国と地獄の境界にあるものですよね? 人間にとって人生のある瞬間には、どっちに転ぶか分からない危うい瞬間があると思います。その危うさを、この映画の中に感じたのかも知れませんね。監督であるボクもこの作品を撮っている間は、ずっと悩み続けました。自分なら、どんな復讐をするのか。そして、復讐を遂げることで得られる快感と底なし沼から抜け出せなくなるのではないかという恐怖を感じていたんです。快感と恐怖の両極の間で揺れ動き続けたんです。この映画には、自分が感じたそんな心理状態が反映されているのかも知れません。復讐で得られる快感が強ければ強いほど、罪の意識も強まり、自分は悪魔になってしまうのではないかという恐ろしさから抜け出せなくなっていくんです。
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『悪魔を見た』の撮影現場で、快楽殺人鬼役の
チェ・ミンシクに演出するキム・ジウン監督
(写真左)。韓国、そして日本でもR-18
指定となった犯罪ドラマだ。
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──『復讐者に憐れみを』(02)をはじめとする"復讐三部作"を手掛けたパク・チャヌク監督とは同世代で、懇意にしていると聞いています。 ジウン えぇ、パク・チャヌク監督も『悪魔を見た』を見てくれました。パク・チャヌク監督は「ギョンチョルがGPS入りのカプセルを飲み込むことで、スヒョンや観客はギョンチョルと一心同体化するという側面がある」と話してくれました。確かにGPSを通じて、スヒョンはギョンチョルと行動を共にし、マイクで肉声を聞き続けることで、悪魔と次第に一体化していくわけです。パク・チャヌク監督はとてもうまく、この作品のテーマ性を指摘してくれました。 ■"復讐劇"と韓国の国民性との関係とは? ──観客は、殺人鬼ギョンチョルに恐怖や怒りを感じると同時に、スヒョンに追い詰められても追い詰められてもサバイバルし続けるギョンチョルの旺盛な生命力に驚きも覚えます。 ジウン すべての人間は、普段の生活の中で、社会的なタブーに抵触しそうになる煩わしさや抑圧を感じているのではないでしょうか。また、そういったものを突き破りたいという欲望を持っているはずです。人間に欲望があるとすれば、ギョンチョルは過度に欲望を持った人間です。もし、ギョンチョルに生命力を感じたなら、それは人間が本来持っている欲望の形態がギョンチョルに投影されているということでしょうね。また、この物語では、2人の主人公のうち、一人は命を奪われ、もう一人は心の闇を抱えたまま生きながらえることになります。この映画を見た人は、悪魔的存在が罰せられるのを見て、安堵感を覚えるでしょう。それは、自分の中にも潜んでいる悪魔性に気づいた観客を安心させている行為でもあるんです。でも、これは天使が悪魔に勝利する物語ではありません。この映画は、ある意味では悪魔が勝利する物語です。この映画のラストは、悪魔によって導かれた結果なんです。いや、どうも固い話を続けてしまいましたね(苦笑)。といっても、この映画は、決して重いテーマを重たいまま伝えようとしたものではありません。ゴアスリラーというジャンルが与える強烈なイメージ、ジャンル映画がもたらす快感というものを極限状態にまで描き切ることで、これまでになかった面白い映画を作ろうとしたものです。日本のみなさんには、楽しんで見てもらいたいですね(笑)。
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韓国で問題となった犯罪者が集う山荘シーン。
国際的スターのイ・ビョンホンは、『甘い生活』
『グッド・バッド・ウィアード』で組んだキム・
ジウン監督に全幅の信頼を寄せている。手前の
人物の手にはアイスピックが......。
──まだまだ聞きたいことがあるのですが、そろそろタイムアップのようです。パク・チャヌク監督も"復讐三部作"で世界的に知られています。韓国からこれほどまでに、強烈な"復讐もの"の傑作が次々と生み出されているのは、なぜでしょうか? 韓国特有の国民性と関係するのでしょうか? ジウン (しばらく考えてから)......その質問に関しては、ボクは正しい答えを持ち合わせていません。ただ、韓国の歴史を振り返ってみると、普段の韓国人は平和を愛する温和な性格だと思うのですが、幾度も外国からの侵略を受けて、いろいろなものを奪われ、失ってきた歴史があります。そのような歴史の中で、復讐心を抱えたこともあるでしょう。でも、これはきちんとしたデータに基づいて言っていることではありません。映画監督として間違いなく言えることは、"復讐もの"というジャンルはドラマとしての面白さ、強靭なプロットを持ち得るということです。それに加えて、韓国の観客は、パワフルな演出やストーリーを好むという傾向があるということですね。 ──ジウン監督は恐怖と闘いながらの撮影だったということですが、R-18指定になって観客動員にダメージを受けることは怖くありませんでしたか? ジウン えぇ、それは大変な恐怖でした(苦笑)。韓国ではR-18指定になったことから、『悪魔を見た』は残酷な映画だという噂が国中に広まり、興行的に打撃を受けたことは事実です。映画監督として自分の作品がR-18指定を喰らったということは、ギョンチョルから肉体的暴力を受けることよりも、ずっとずっと痛い経験でしたよ(笑)。  こちらの発したナイーブな質問に対しても、真摯に、またユーモアを交えて答えてくれたキム・ジウン監督。さすが、バイオレンス映画にニーチェの言葉を隠し味に使う知性派監督である。血まみれの暴力シーンを通して、人間の心の中の深淵なる闇を見据えた韓流映画の究極形『悪魔を見た』。息詰まるラストシーンで、あなたは本当の"悪魔"の姿を目撃するはずだ。 (取材・文=長野辰次) ●『悪魔を見た』 監督/キム・ジウン 出演/イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、オ・サナ、チョン・グックァン、チョン・ホジン、キム・ユンソ、チェ・ムソン、キム・インソ 配給/ブロードメディア・スタジオ 2月26日より丸の内ルーブルほか全国ロードショー +R-18 <http://isawthedevil.jp> ●キム・ジウン監督 1964年生まれ。舞台俳優としてキャリアをスタート。つかこうへいの戯曲『熱海殺人事件』の韓国版『熱い海』で舞台演出家デビュー。懸賞金付きの脚本コンクールへの投稿生活を経て、ソン・ガンホ、チェ・ミンシクらが出演したブラックコメディー『クワイエット・ファミリー』(98)で監督デビューを果たす。続くソン・ガンホ主演のアクションコメディー『反則王』(99)も韓国で大ヒット。オムニバスホラー『THREE/臨死』(02)に参加後、韓国の古典的怪談をサイコサスペンスに脚色した『箪笥』(03)を発表。この作品はハリウッドリメイクされた。イ・ビョンホンとは『甘い生活』(05)、『グッド・バッド・ウィアード』(08)でコンビを組んでいる。旧満州を舞台にした西部劇『グッド・バッド・ウィアード』はカンヌ映画祭コンペ部門に選出。新しいジャンルを切り開く革新性と興行的な側面を両立させる希有な監督として、国際的な評価を得ている。
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巨匠の新作はソフトSM!? 『ヒア アフター』の隠れた名場面

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(C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. 
 西部劇や刑事アクションの主演でトップスターの座を確立、監督業を兼ねるようになってからは年を追うごとにヒューマンドラマへシフトしてきたクリント・イーストウッド。『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー賞に2度輝いた巨匠が、最新監督作『ヒア アフター(ワーナー・ブラザース映画配給、2月19日公開)で"死後の世界"にとらわれた人々を扱うと聞けば、意外に思うだろうか。だが本作は、オカルトホラーでも宗教モノでもなく、登場人物らが現実の世界で苦悩する姿を描く切実な人間劇だ。  パリでジャーナリストとして活躍するマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、休暇で訪れていたタイのビーチリゾートで津波に遭遇し、一時的に呼吸が停止する臨死状態に。その際に見た不思議なビジョンが帰国後も気になり、報道番組出演の仕事を休むことになったのを機に、臨死体験についての本を書き始める。  サンフランシスコ在住のジョージ(マット・デイモン)は元霊能者で、手を触れた相手の身近な故人と対話できる。だが、普通の人付き合いの妨げになることから自己の能力を忌み嫌い、過去を隠して工場で働いている。料理教室で知り合ったメラニー(ブライス・ダラス・ハワード)と親しくなりかけるものの、彼女に請われ能力を使ったことで関係は破局。自分を霊能者として復帰させ金儲けしようと企む兄から距離を置くため、ロンドンへ旅に出る。  一方ロンドンでは、小学生のマーカスが双子の兄を交通事故で亡くし、薬物依存の母親から離されて里親に預けられる。いつも支え合っていた兄とまた話したいと願い、霊能者を探し求めて徒労を重ねた末、ジョージの古いウェブサイトを見つける。  マリーは書き上げた本をPRするため、ロンドンのブックフェアに参加。ジョージもディケンズの朗読イベントを聴きに、またマーカスも里親に連れられて、それぞれブックフェアを訪れる。現実との折り合いに苦しむ3人の人生が交錯し、転機が訪れようとしていた。  本作の映像的な見どころはまず、冒頭のリゾート地を襲う津波のシーン。大波がビーチの行楽客を飲み込み、市街を襲う激流が建物を次々に破壊していく様を、押し流される者の視点でとらえた実写と、質の高いCGを巧みに組み合わせて描き出した。イーストウッド作品には珍しい派手なディザスター場面だが、製作総指揮がスティーブン・スピルバーグと聞けば納得だ。  もう1つ、特に男性にオススメの"隠れた名場面"は、料理教室でブライス・ダラス・ハワードが目隠しをされ、口に入れられる食材を言い当てる一連のシーン。香りをかぐ鼻、味わう舌や歯、唇が特大アップになり、これらのパーツが目隠しによって一層強調され、ソフトSMを思わせる倒錯した性的魅力さえ漂う。  実を言うと、物語の重点は死後の世界そのものよりも、主要人物3人がそれぞれ抱える悩み、周囲の無理解だとか、大切な人との別れといった、誰もが普通に経験する人生の問題に置かれている。だからこそ本作は、誰にも訪れ得る理不尽な暴力や死と隣り合わせの「生」が、たとえ孤独や苦悩を伴ってもやはり愛おしく貴重なものだと、静かな感動と共感とともに改めて思い出させてくれるのだろう。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ヒア アフター」作品情報 <http://eiga.com/movie/55325/>
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